特許第6983411号(P6983411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983411
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20211206BHJP
   H03F 1/26 20060101ALI20211206BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20211206BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H03F1/32 123
   H03F1/26
   H03F3/68
   H03F3/45
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-169326(P2018-169326)
(22)【出願日】2018年9月11日
(65)【公開番号】特開2020-43466(P2020-43466A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2020年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】391030583
【氏名又は名称】アキュフェーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093506
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 洋二
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】宮島 貴幸
【審査官】 渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−098565(JP,A)
【文献】 特開昭61−203708(JP,A)
【文献】 特開昭57−101405(JP,A)
【文献】 特開昭57−129508(JP,A)
【文献】 特開昭57−038008(JP,A)
【文献】 特開昭57−164602(JP,A)
【文献】 米国特許第05856758(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/32
H03F 1/26
H03F 3/68
H03F 3/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主増幅器の増幅出力における信号歪と雑音を低減して高品質の増幅信号を得るための増幅回路であって、
増幅する信号を入力する主増幅器反転入力端子と、増幅回路の共通電位に接続した主増幅器非反転入力端子、および増幅された信号を出力する主増幅器増幅出力端子を有し、前記主増幅器増幅出力端子の信号を前記主増幅器反転入力端子にフィードバックする主増幅器帰還回路を有する主増幅器と、
前記増幅回路の共通電位に接続した副増幅器反転入力端子と、前記主増幅器の主増幅器反転入力端子の入力信号を入力する副増幅器非反転入力端子、および増幅された信号を出力する副増幅器増幅出力端子を有し、前記副増幅器増幅出力端子の信号を前記副増幅器反転入力端子にフィードバックする副増幅器帰還回路を有し、前記主増幅器反転入力端子に現れる電位と前記共通電位との差分を増幅して副増幅器増幅出力として出力する副増幅器とを有し、
前記副増幅器の副増幅器増幅出力端子に現れる信号を前記主増幅器の主増幅器反転入力端子に接続する誤差信号帰還回路を備え、
前記主増幅器の主増幅器増幅出力端子に現れる出力を回路の出力としたことを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
前記副増幅器反転入力端子と前記共通電位との間に増幅率設定用の抵抗を有することを特徴とする請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記誤差信号帰還回路に帰還量を設定する抵抗を有し、前記主増幅器の主増幅器反転入力端子を加算点として、当該主増幅器を加算器として動作させることで主増幅器に発生するノイズ及び歪を自身に加算して、打ち消すことを特徴とする請求項1又は2に記載の増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路に係り、特にフィードフォワードを用いた反転増幅回路の出力におけるノイズ・歪成分を低減した増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ機器や測定器などの増幅回路の出力に残留する歪成分は、当該オーディオ機器や測定器などの商品価値を著しく低下させる。この種の増幅回路には、演算増幅器(差動増幅器、オペアンプ)を用いるのが一般的である。演算増幅器はFETなどの増幅素子を含む複数素子で構成され、これら素子が有する非直線性が増幅出力に歪成分として現れる。この歪成分を減少させるため、従来からいわゆる、フィードフォワードやフィードバックなどの利得制御が行われている。この種の従来技術を開示したものとしては、例えば、特許文献1、特許文献2を挙げることができる。
【0003】
図6は、従来のフィードフォワードを用いたオーディオ信号増幅回路の基本構成例を説明する回路図で、特許文献1に開示された回路である。図6において、信号入力端子10の入力信号Sは、入力側合成回路(入力側加算器)11の一方の入力端子(第1入力端子)と差動増幅器(副増幅器)14の一方の入力に接続される。入力側加算器11の出力は増幅器(主増幅器)12の入力端子に入力され、増幅されて出力側合成器(出力側加算器)15の一方の入力となる。また、主増幅器12の出力は帰還率β1の帰還回路13を経由して入力側加算器11の一方の入力に印加されると共に、副増幅器14の他方の入力に接続される。そして、副増幅器14の出力は出力側加算器15の他方の入力に接続される。
【0004】
以下、図6に示した従来技術における歪成分の低減メカニズムについて説明する。主増幅器12は利得(裸利得)A1で、その出力に歪成分Nを含む。帰還回路13によって帰還率β1のフィードバックがかけられている。これにより、主増幅器12の歪は、略々[N/(1+β1・A1)]となる。帰還率β1の帰還回路13を経由して戻った信号には出力のβ1倍の歪が含まれているので、副増幅器14で入力信号と帰還信号の差をとり、逆相の歪成分を増幅し、出力側加算器15で主増幅器12の出力と加算することで歪成分を打ち消している。
【0005】
副増幅器14の利得をA2とすると、出力側加算器15の出力における歪レベルは、
[N/(1+β1・A1)]−β1[N/(1+β1・A1)]・A2
=(1−β1・A2)・[N/(1+β1・A1)]
となって、A2≒1/β1のときに歪は大幅に低減する。
【0006】
一方、入力信号をSとしたとき、
主増幅器12の出力=A1/(1+β1・A1)・S
帰還回路13の出力=[β1・A1/(1+β1・A1)]・S
副増幅器14の出力={S−β1・[A1/(1+β1・A1)]・S}・A2=[A2/(1+β1・A1)]・S
であり、
出力側加算器15の出力={[A1/(1+β1・A1)]・S}+{[A2/(1+β1・A1)]・S}=[(A1+A2)/(1+β1・A1)]・S
となる。
【0007】
しかし、上記したような増幅回路では、加算器15や低歪の副増幅器は複数の差動増幅回路を含む多数の回路素子で構成しなければならないため、フットプリントの縮小に限界があった。また、歪性能の改善限界は個々の増幅器の持つ歪性能と同等であり、これを超える歪性能の改善は困難であるという課題を擁していた。本願の発明者は、上記の課題を解決するため特許文献2に開示されている増幅回路を提案した。
【0008】
図4は、図6で説明した従来の増幅回路の課題を解消した本願の発明者によるノイズ・歪除去機能を備えた増幅回路の構成例で、上記した特許文献2に記載された回路例である。図4において、この増幅回路は、入力端子10からの増幅する信号Vi(S)を入力する主増幅器反転入力端子12aと、接地に接続した主増幅器非反転入力端子12b、及び増幅された信号を出力する主増幅器増幅出力端子12cを有する主増幅器12を具備する。主増幅器12は、その主増幅器出力端子12cの信号を前記主増幅器反転入力端子12aにフィードバックする主増幅器帰還回路121を有する。なお、図1における主増幅器帰還回路121は、図6で説明した帰還率β1の帰還回路13に対応する。
【0009】
そして、主増幅器12の主増幅器反転入力端子12aと主増幅器非反転入力端子12bに現れる電位との差分を増幅して副増幅器増幅出力として出力する副増幅器14を備える。また、主増幅器12の主増幅器増幅出力端子12cに接続されて、当該主増幅器12の主増幅器増幅出力から前記副増幅器14の副増幅器増幅出力を減算する出力合成回路(出力側加算器)15を具備し、この出力側加算器15の出力を増幅回路の出力としている。
【0010】
この構成によれば、増幅回路の共通電位を基準として主増幅器反転入力端子と非反転入力端子の差分を取り出す構成としたことで、副増幅器の歪率が主増幅器のそれよりも低歪である必要がなく、採用する増幅器(オペアンプ)の歪特性に特別な配慮をする必要がない。また複雑な回路構成とならず、全体として低コスト化を図ることができる。
【0011】
図5は、図4に示した増幅回路における出力側加算器の構成例を説明する回路図である。主増幅器12が接地電位を基準として出力を取り出す場合、出力側加算器15として第3の増幅器(差動増幅器)19で構成した減算回路としている。主増幅器12と副増幅器14の増幅出力を合成する第3の増幅器19で構成した出力側加算器15は、主増幅器12の主増幅器増幅出力を入力とする第3の増幅器反転入力端子19aと、副増幅器14の副増幅器増幅出力を入力とする第3の増幅器非反転入力19bと、第3の増幅器帰還回路191、及び回路出力となる第3の増幅器増幅出力端子19cを有する減算回路である。
この減算回路を構成する第3の増幅器19はフィルタや他の入力信号の加減算器を兼ねることができるため、後段にこのような機能を必要とする回路設計の応用に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平04−6129号公報
【特許文献2】特許第6310045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した従来の増幅回路の構成では、取り出したノイズ・歪成分を減算する加算器を増幅回路の後段に設ける必要があることから、このような構成を最終段の増幅回路に採用することは困難である。そのため、前段の増幅回路で効果的なノイズ・歪除去あるいは低減ができても、最終段の増幅回路の性能がその機器全体の性能に影響を与えることになる。ノイズの低減にあたって、最終段にマイナスゲインを持たせ、前段のノイズ圧縮を図ることがあるが、この場合最終段のノイズが増幅回路の性能に大きく関係する。特に、グラウンド基準(接地電位基準)で信号を出力する必要のあるシングルエンド出力の最終段には使用できない。
【0014】
また、上記したノイズ・歪除去構成を備えた従来及び先行の増幅回路は、取り出したノイズ・歪成分を後段に設けた加算器で減算する必要がある。図5に示されたように、出力側加算器15は第3の増幅器(差動増幅器)19と複数の回路素子で構成されるため、複雑な回路構成となり、フットプリントの縮小を妨げる要因の一つになっている。
【0015】
本発明の目的は、前記従来技術が持つ諸課題を解決してノイズ・歪性能を向上させるとともに、最終段の増幅回路にも使用できるノイズ・歪除去機能を備えた増幅回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、取り出したノイズ・歪成分を主増幅器自身に加算して打ち消す構成とした。すなわち、主増幅器を構成する反転増幅回路の反転入力端子に現れるノイズ・歪成分を副増幅器で増幅し、これを再度主増幅器に入力することで、主増幅器のノイズ・歪を打ち消すようにした。主増幅器のノイズ・歪の適正な打ち消し量は副増幅器の増幅度(増幅率)の設定で行うように構成した。
【0017】
本発明の代表的な構成を記述すれば、次のとおりである。すなわち、
本発明に係る増幅回路は、主増幅器の増幅出力におけるノイズ・歪成分(雑音と信号歪)を低減して高品質の増幅信号を得るための信号増幅回路である。以下では、後述する実施例の参照符号を付して本発明の構成を明確にする。
【0018】
[1]本発明に係る増幅回路は、入力端子10からの増幅する信号を入力する主増幅器反転入力端子12aと、増幅回路の共通電位に接続した主増幅器非反転入力端子12b、及び増幅された信号を出力する主増幅器増幅出力端子12cを有し、前記主増幅器増幅出力端子12cの信号を前記主増幅器反転入力端子12aにフィードバックする主増幅器帰還回路121を設けた主増幅器12を有する。
【0019】
そして、前記増幅回路の共通電位に接続した副増幅器反転入力端子14aと、前記主増幅器12の主増幅器反転入力端子12aの入力信号を入力する副増幅器非反転入力端子14b、及び増幅された信号を出力する副増幅器増幅出力端子14cを有し、前記副増幅器増幅出力端子14cの信号を前記副増幅器反転入力端子14aにフィードバックする副増幅器帰還回路141を有し、前記主増幅器反転入力端子12aに現れる電位と前記共通電位との差分を増幅して副増幅器増幅出力として出力する副増幅器14を有する。
【0020】
上記の構成において、前記副増幅器14の副増幅器増幅出力端子14cに現れる信号を前記主増幅器12の主増幅器反転入力端子12aに接続する誤差信号帰還回路142を備え、前記主増幅器12の主増幅器増幅出力端子12cに現れる出力を回路の出力としたことを特徴とする。
【0021】
[2]上記[1]における前記副増幅器反転入力端子14aと前記共通電位(一般的には接地電位)との間に増幅率設定用の抵抗R3を有することを特徴とする。
【0022】
[3]上記[1]又は[2]における前記誤差信号帰還回路142に帰還量を設定する抵抗R5を有し、前記主増幅器12の主増幅器反転入力端子12aを加算点として、当該主増幅器12を加算器として動作させることで主増幅器12に発生するノイズ及び歪を自身に加算して、打ち消すことを特徴とする。
【0023】
なお、本発明は上記の構成及び後述する実施例の構成に限定解釈されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0024】
上記した本発明に係る増幅回路によれば、次のような効果が得られる。(1)最終段とした増幅回路はもとより、後段にノイズ・歪成分を減算する加算器を置けない回路にも適用できる。(2)歪率が主増幅器のそれよりも良い副増幅器とする必要がない。(3)採用する副増幅器の歪特性に特別な配慮をする必要がない(4)足し込まれるノイズは副増幅器ひとつ分のみである。(5)フットプリントが小さいため、実装基板の占有面積が極小化でき、全体としてのコスト引き下げに資する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る増幅回路の1実施例を説明する回路図である。
図2図1に示した本発明に係る増幅回路の歪低減の機能と動作を詳細に説明するための回路図である。
図3図1に示した本発明に係る増幅回路のノイズ低減の機能と動作を詳細に説明するための回路図である。
図4図6に示す従来の増幅回路の課題を解消した本願の発明者によるノイズ・歪除去機能を備えた増幅回路の構成例を説明する回路図である。
図5図4に示した増幅回路における出力側加算器の構成例を説明する回路図である。
図6】従来のフィードフォワードを用いたオーディオ信号増幅回路の基本構成例を説明する回路図で、特許文献1に開示された回路である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る増幅回路の実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明に係る増幅回路の実施例1を説明する回路図である。図1において、この増幅回路は主増幅器12と副増幅器14とからなる。参照符号10はこの増幅回路の入力端子、同16は増幅された信号の出力端子である。主増幅器12は、入力端子10からの増幅すべき信号Viを入力する主増幅器反転入力端子12aと、増幅回路の共通電位に接続した主増幅器非反転入力端子12b、及び増幅された信号を出力する主増幅器増幅出力端子12cを有する。また、主増幅器増幅出力端子12cの信号を主増幅器反転入力端子12aにフィードバックする主増幅器帰還回路121を有する。
【0028】
また、副増幅器14は、前記増幅回路の共通電位に接続した副増幅器反転入力端子14aと、前記主増幅器12の主増幅器反転入力端子12aの入力信号を入力する副増幅器非反転入力端子14b、及び増幅された信号を出力する副増幅器増幅出力端子14cを有する。そして、前記副増幅器増幅出力端子14cの信号を前記副増幅器反転入力端子14aにフィードバックする副増幅器帰還回路141を有し、前記主増幅器非反転入力端子12aに現れる電位と前記副増幅器反転入力端子14aに現れる電位との差分を増幅して副増幅器増幅出力として出力する。
【0029】
上記の構成において、前記副増幅器14の副増幅器増幅出力端子14cに現れる信号を前記主増幅器12の主増幅器反転入力端子12aに接続する誤差信号帰還回路142を備え、前記主増幅器12の主増幅器増幅出力端子12cに現れる出力を回路の出力Vsとして出力端子16に出力する。
【0030】
図2は、図1に示した本発明に係る増幅回路の歪低減の機能と動作を詳細に説明するための回路図である。図1と同一符号は同一機能部分に対応する。図2において、参照符号20で示した"X"は主増幅器12で発生する歪成分を、参照符号21で示した"Y"は副増幅器14で発生する歪成分をそれぞれ模式的に示したものである。
【0031】
主増幅器12は反転増幅器(増幅器A1)であり、この増幅器が理想的な増幅器であるとすると、入力Viに対するその出力VOは(1)式で表わされる。ただし、帰還率β1は(2)式、β2は(3)式とする。
O=−{(1−β1)Vi/β1}−{(1−β2)VOE/β2}……(1)
β1=R1/(R1+R2)……(2)
β2=R5/(R2+R5)……(3)
【0032】
現実には、増幅器A1(主増幅器12)が理想的な特性を持たないため、出力に歪が発生する。この歪は理想的な出力VOに対しXの割合で発生するものとして表せるので、歪成分をVOXと示す。
従って、実際の出力VSは理想的な出力VOにVOXを加算して(4)式で表わせる。
S=VO+VOX……(4)
【0033】
ここで、実際の出力VSを、電流を用いて求めることにする。式中の電圧、電流は図2中に示された記号に対応する。
主増幅器帰還回路121の抵抗R2に流れる電流i2は(5)式で表される。
2={(Vi−V-)/R1}+{(VOE−V-)/R5}……(5)

電流i2を用いて出力VSを求めると、
S=−i22
={R2(V-−Vi)/R1}+{R2(V-−VOE)/R5}+V-
……(6)
(6)式から主増幅器12の主増幅器反転入力端子12aの電圧V-を求めると(7)式となる。ただし、帰還率β1、β2は前記した(2)式、(3)式に示したとおりである。
-=VOX[β1β2/{β2(1−β1)+β1(1−β2)+β1β2}]
……(7)
【0034】
一方、副増幅器14は増幅器AEを用いて構成した非反転増幅器であり、その入力は主増幅器12の反転入力端子(主増幅器反転入力端子)12aの電圧V-である。
増幅器AEを理想的な増幅器とした場合、その出力VEは(8)式で表される。帰還率β3は(9)式とする。
ただし、主増幅器の場合と同様に、実際の出力VOEはVEに対してYの割合で歪が付加され、(10)式となる。
E=(1/β3)V-……(8)
β3=R3/(R3+R4)……(9)
OE=VE+VE
=(1/β3)V-+(1/β3)V-Y……(10)
【0035】
(10)式に(7)式を代入し、(1)式と(4)式より回路出力VSを求めると次のようになる。
S=−[(1−β1)Vi/β1]−(1/β3)[(1−β2)/β2
・[β1β2/{β2(1−β1)+β1(1−β2)+β1β2}]・VO
−(1/β3)[β1β2/{β2(1−β1)+β1(1−β2)+β1β2}]
・VOXY+VOX……(11)
【0036】
ここで、1/β3を次の(12)式となるように設定することで、増幅回路の出力端子16における出力(回路全体の出力)VSは(13)式のとおりに求められる。
1/β3={β2/(1−β2)}・[{β2(1−β1)+β1(1−β2
+β1β2}/β1β2]……(12)
S=−{(1−β1)Vi}/β1−VOXY
=VO−VOXY……(13)
【0037】
(13)式より、回路全体の出力VSについて、第一項は主増幅器12の理想的な出力を示し、第二項は出力の歪を示す。主増幅器12の歪に対して副増幅器14の歪の割合が掛け合わされている。通常、増幅器の出力に対する歪の割合は1を大きく下回る値であるから、主増幅器の歪と副増幅器の歪が掛け合わされることで、回路全体の出力VSに現れる歪は主増幅器のみの場合より大幅に低減される。歪の低減効果は、副増幅器の歪の割合が1未満の時に現れる。本実施例により、回路全体の出力端子に歪の除去された、あるいは大幅に軽減された増幅出力VSが得られる。
【0038】
図3は、図1に示した本発明に係る増幅回路のノイズ低減の機能と動作を詳細に説明するための回路図である。図1と同一符号は同一機能部分に対応する。図3において、参照符号20で示した“VN”は主増幅器12で発生するノイズ成分を、参照符号21で示した“VNE”は副増幅器14で発生するノイズ成分をそれぞれ模式的に示したものである。
【0039】
ノイズは、主増幅器12、副増幅器14の出力電圧に関係なく現れるものであるから、主増幅器12のノイズをVN、副増幅器14のノイズをVNEと置き、それぞれの出力に加算する。これを上記した歪の場合と同様に解析すると、回路出力VSは(14)式で表わされる。
S=VO+VNE……(14)
【0040】
(14)式から判るように、回路出力に現れるノイズは副増幅器14のノイズのみであり、主増幅器12は自身が減算器として動作することでノイズが打ち消されて出力VSには現れない。
したがって、VNE<VNであれば回路のノイズは除去又は低減することができる。増幅回路の回路素子のパラメータを設定して副増幅器14のノイズVNEが小さくなるように設定することで、ノイズを解消又は大幅削減することができる。
【0041】
図2図3で説明したように、本実施例により、主増幅器自身が減算器として機能することで、前記した従来技術における後段の減算器に起因する増幅性能の劣化はない。
【0042】
また、出力部分に加算器(出力合成回路:減算器)を有しないので、本発明に係る増幅器を電力増幅回路の最終段に用いることが可能であり、従来技術のように最終段の増幅器による増幅性能の劣化が回避でき、信号増幅路全体のノイズ・歪成分の低減もしくは現実的解消が可能となる。
なお、本発明に係る増幅回路は、高忠実度で高品質のオーディオ再生装置に限らず、精密測定機器等の高品質信号処理機器の増幅手段に適用して高信頼性の結果を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
10・・信号入力端子
12・・主増幅器(反転増幅器)
13・・帰還率β1の帰還回路
14・・副増幅器(差動増幅器回路)
142・・誤差信号帰還回路
15・・出力合成回路(加算器)
20・・主増幅器の増幅誤差成分(ノイズ・歪成分)
21・・副増幅器の増幅誤差成分(ノイズ・歪成分)
図1
図2
図3
図4
図5
図6