特許第6983412号(P6983412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983412
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】走行リフト装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/14 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   A61G7/14
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-190004(P2018-190004)
(22)【出願日】2018年10月5日
(65)【公開番号】特開2020-36866(P2020-36866A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2020年5月28日
(31)【優先権主張番号】特願2018-160770(P2018-160770)
(32)【優先日】2018年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514161419
【氏名又は名称】株式会社ビック・バン
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀山 貞義
(72)【発明者】
【氏名】亀山 義弘
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3215690(JP,U)
【文献】 特開2016−112151(JP,A)
【文献】 特開2016−202712(JP,A)
【文献】 特開2016−064082(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3100260(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/00 − 7/16
A61G 5/00 − 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベース上に立設した支柱と、
前記支柱の上端部に回動自在に取付けたアームと、
前記支柱と前記アームとの間に介装した前記アームを回動するための電動駆動手段と、
前記ベースに適宜間隔を開けて、水平方向に回動自在に、基端部を枢着した一対の棒状の脚と、
前記一対の脚の間に介装した一対の脚を対向回動するための電動駆動手段と、
前記一対の脚の各脚の先端部に取り付けられた前輪と、
前記ベースの後方下部に取り付けられた一対の後輪と、
を備えた行リフト装置であって、
前記ベースに回動自在に枢着した前記一対の脚は、平行状態から対向する内側へ窄める方向及び平行状態から外側へ開く方向に回動自在にかつ対向回動するように設けられ
前記一対の脚には、各脚の略中央部位の外側横方向に張り出した各支腕の先端部に設けられた補助輪が取り付けられ、
前記一対の脚が最小に窄められたとき、両補助輪の間隔は、前記ベースに取り付けた両後輪の外側面間の巾と同じ又は小さいことを特徴とする走行リフト装置。
【請求項2】
前記ベースに取り付けた電動駆動モータにより、前記ベースに取り付けた後輪を駆動するように設けたことを特徴とする請求項1に記載の走行リフト装置。
【請求項3】
前記アームを回動するための電動駆動手段の先端を前記アームから外し、前記アームを回動するための電動駆動手段と前記アームとを前記支柱に沿わせ、該支柱を、前記支柱を固定したソケットから引き出して、前記一対の脚に沿わせ、前記アームを前記支柱に対し回動して前記支柱に沿わせて折り畳み可能に設けてなり、前記アームの先端部にはハンガーを取付け・取外し可能に設けられ、折り畳まれた本体装置の長さと、高さと、巾とで形成する体積内にすべての構成要素が収まることを特徴とする請求項1に記載の走行リフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護を受ける者(以下、「被介護者」という。)を移乗するための走行リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2に記載された走行リフトは、収納スペースの狭小化及び一般家屋内での取り回しの容易化に関連して、主に、被介護者のためのベッドが置かれた居室内に設置されており、例えば、ベッドと車椅子との間で、被介護者を移乗するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−245784号公報
【特許文献2】特開2000−152963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、走行リフトは、居室内に設置されかつ居室内で使用されることを想定した構造等を有することから、被介護者を、居室のベッドから、例えば、居室の出入口、または、居室以外の狭い場所(例えば、トイレ室、浴室、また、乗用車で移動する場合の乗用車の車内)への移乗のとき、上記した居室、乗用車等の構造等に起因して、移乗させる目的の場所等に円滑に近付くことができないため、移乗を行うことができ難いという問題があった。
【0005】
上記した課題に鑑み、本発明は、狭い場所であっても、容易に搬入することが可能であり、しかも、転倒し難い、又は電動駆動モータにより走行させることができる走行リフト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る請求項1に記載の走行リフト装置は、ベースと、前記ベース上に立設した支柱と、前記支柱の上端部に回動自在に取付けたアームと、前記支柱と前記アームとの間に介装した前記アームを回動するための電動駆動手段と、前記ベースに適宜間隔を開けて、水平方向に回動自在に、基端部を枢着した一対の棒状の脚と、前記一対の脚の間に介装した一対の脚を対向回動するための電動駆動手段と、前記一対の脚の各脚の先端部に取り付けられた前輪と、前記ベースの後方下部に取り付けられた一対の後輪と、を備えた行リフト装置であって、前記ベースに回動自在に枢着した前記一対の脚は、平行状態から対向する内側へ窄める方向及び平行状態から外側へ開く方向に回動自在にかつ対向回動するように設けられ、前記一対の脚には、各脚の略中央部位の外側横方向に張り出した各支腕の先端部に設けられた補助輪が取り付けられ、前記一対の脚が最小に窄められたとき、両補助輪の間隔は、前記ベースに取り付けた両後輪の外側面間の巾と同じ又は小さいことを特徴とする。
【0007】
上記の構成からなる走行リフト装置は、一対の脚が窄めた位置と開いた位置との範囲で回動することができるので、一対の脚を窄めた状態で狭い場所等に人力又はモータ駆動によって、容易にかつ円滑に進入し、その間、補助輪が横倒れを防止し、目的の場所において、脚を開き、本装置を安定した状態にしておいて、アームに懸垂した被介護者を目的の場所に移乗させることができる。
【0008】
本発明に係る請求項2に記載の走行リフト装置は、請求項1に記載する構成に加え、前記ベースに取り付けた電動駆動モータにより、前記ベースに取り付けた後輪を駆動するように設けたことを特徴とする。
【0009】
上記の構成からなる走行リフト装置は、本装置の走行をベースに取り付けた車輪を電動モータにより駆動するように設けたので、その移動は迅速であると共に脚の窄めとか開脚に影響を与えないので、請求項1の作用効果を十分達成することができる。また、被介護者自身がリモートコントローラーを操作して、ベッドから車椅子に移乗したり、トイレ室、浴室又は乗用車で移動する場合の乗用車の室内への移動または移乗が容易となる。
【0010】
本発明に係る請求項3に記載の走行リフト装置は、前記アームを回動するための電動駆動手段の先端を前記アームから外し、前記アームを回動するための電動駆動手段と前記アームとを前記支柱に沿わせ、該支柱を、前記支柱を固定したソケットから引き出して、前記一対の脚に沿わせ、前記アームを前記支柱に対し回動して前記支柱に沿わせて折り畳み可能に設けてなり、前記アームの先端部にはハンガーを取付け・取外し可能に設けられ、折り畳まれた本体装置の長さと、高さと、巾とで形成する体積内にすべての構成要素が収まることを特徴とする。
【0011】
上記構成からなる走行リフト装置は、大きく分解することなく各部材を積み重ねるようにして折り畳み可能に設けたので、これを締結すれば、本装置全体の移動・搬送・格納が容易となり、ハンガーもアームから取外しができることから、ぶらぶらして扱いずらい部材であるが、本装置に組み付けるか別に取り除いておくことができ、取扱いが便利となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一対の脚を開きかつアームが下方に回動した状態を示す本発明の装置の斜視図である。
図2図1における一対の脚が閉じ、かつアームが上方に回動した状態を示す本発明の装置の斜視図である。
図3】(a)は、アームの先端部にハンガーを取り付けた状態を示す断面図であり、(b)は、ハンガーの取り付け方法を示すアーム先端部の断面図である。
図4】カバーを外して示すベース付近の前方からの斜視図である。
図5】本発明の実施の態様における、ベース及び後輪付近の構成を説明する平面図である。
図6】調節部材の説明図である。
図7】本発明の別の実施の態様を示す斜視図である。
図8】本発明装置のトイレ室に進入状況を示す図である。
図9図8に続く進入状況を示す図である。
図10図9に続く使用状況で、被介護者を便器に降ろすことができる場所まで装置が進行した状態を示す図である。
図11】本発明の本装置を折り畳む手順を示す説明図である。
図12図11の手順に続く手順を示す説明図である。
図13】折り畳みを完了した状況を示す図である。
図14】折り畳まれた状態における本発明の本装置の収納時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の態様について図1及び図2に基づいて説明する。
【0014】
走行リフト装置LFは、ベース4と、ベース4に直立した支柱3と、支柱3の上端部に回動自在に取り付けた基部付近が湾曲したアーム2と、アーム2の先端に着脱自在に懸垂したハンガー1と、ベース4に間隔を置いて水平方向に回動自在にかつ対向作動するように、取り付けた一対の棒状の脚6A,6 Bと、ベース4及び一対の脚6A,6 Bの先端部下部に取り付けた複数の車輪とから概略構成されている。以下、順次各構成について説明する。
【0015】
なお、説明において、「前方向」または「後方向」とは、図1において、支柱3から一対の脚が大きく開いた側を前方向と称し、その反対側(後側)、すなわち、支柱3から後方の車輪側を後方向と称する。一対の脚の間の中央を前後方向に通る仮想線を中央線とし、中央線を横方向から直交する方向を左・右方向と称する。
【0016】
先ず、アーム2は、角柱状のパイプ材で形成され、その基部2s付近は、上方かつ前方に向かって湾曲しており、湾曲部2Aから先端部2tまで直線状に形成されている。また、その基部2sは、支柱3の上端部3sに水平方向のボルト3Pにより前後方向に、回動自在に枢着されている。アーム2の基部付近に形成した湾曲部2Aの湾曲の度合いは、アーム2の直線部2Bが水平位置へ回動したときのハンガー1の懸垂高さに関連する。乗用車に人を移乗させるときには、車の入口の高さがほぼ決められており、室内も狭いので、アーム2の直線部2Bが略水平姿勢を維持した状態で本装置を移動させて移乗を行うことが望ましい。そのような条件を前提として、本装置LFの全高を含めてアーム2の湾曲度を決める。また、アーム2の中央下面には受け皿2bが前後方向に回動自在に取付けられており、後述のアクチエ―タ14aの先端が嵌合される。アクチエ―タ14aの先端がアームの受皿2bに嵌合されていない状態では、アーム2はボルト3pを中心として支柱3に沿うように折り畳むことができる。
【0017】
アーム2の先端2tにはハンガー1が着脱自在に取り付けられている。 ハンガー1は、全体が弓形に湾曲した主フレーム1aと、主フレームの両端に形成した小さく湾曲したフック部1bと、主フレームの中央部に回動自在に取り付けた懸垂棒1cとからなる。
懸垂棒1cの先端は、湾曲したフック部となっており、図3(a)に示すように、アーム2の先端に固設した水平方向のバー2aに引っ掛けて取付ける。取り付け方は、図3 (b)に示すように、懸垂棒1cの先端のフック部の開いた側を上にしてバー2aに向い合せ、その位置から矢印方向に引っ張れば容易に取付けることができる。ハンガー1のフック部1b、1bには、図2に示されるように、被介護者を懸下する布製の吊り部材HGが引っ掛けて取り付けられる。
【0018】
支柱3は、角柱状のパイプ材で構成され、べース4の上面4pに突出するように固定した角筒状のソケット4a(僅かに後方に傾いた状態で取り付けられている)の中に下端部を挿入し、ソケット4aと支柱3を水平横方向から貫通するボルト4bで緊締する。4iは、ボルト4b一端に一体に固定されたレバーである。ソケット4aの前方上部並びに後部は、切り欠かれて、夫々切欠き部4d, 4eが形成されている(図4図5参照)。支柱3の下端部の左右側面には、図2及び図5に示されるように、縦方向に延びる長溝3a、3aが形成されており、この長溝3aにソケット4bを貫通したボルト4bが挿通され、反対側の外部でナット4cにより締結する。支柱3は、ボルト・ナットを緩めることで、その下端部を、長溝3aに沿ってかつその長溝3aの下端部まで、ソケット4aから引出すことができ、その状態において、ソケット4aの前後の切欠き部4d,4eに沿って前方に倒すことができ、支柱3及びソケット4aとは、ボルト4bと長溝3aによって連係状態を維持した状態で折り畳まれる。なお、この実施例においては、支柱3の対向する左右側面に長溝3a,3aを形成しているが、ソケット4aに長溝を設けてもよく、この場合、支柱3にはボルト挿通孔が貫通形成されることになる。
また、支柱3には、図1に示されるように、その上部左右両側にコ字状の把持部3b、3bを相対するように固定し、把持部3b、3bの位置する支柱3の前面には、緩衝栓3cを担持する突起部20aが取り付けられている。更に、支柱3の下部には、伸縮自在なロッドを有する電動アクチエータ14aが前後方向に移動するように、その基部が回動自在に取り付けられており、電動アクチエータ14aの伸縮ロッドの先端は、アーム2の中央下面に取り付けた前述の受皿2aの中に着脱自在に嵌合され、ボルトで固定される。
【0019】
ベース4は、本実施態様においては、略箱型のカバーで覆われているが、上面4p、側面4q等を有している。ベース4は、図1及び図2に示されるように、上面4pにソケット4aを備え、上面4pの左右側面4q,4qには夫々フランジ4h, 4hが突設されている。このフランジ4h, 4hに一対の脚6A.6Bが枢着されている。
【0020】
一対の脚6A, 6 Bは、角柱状のパイプからなり、その基端部において、夫々ベース4のフランジ4h, 4h,に垂直方向のボルト4g、4gにより水平方向に回動自在に枢着されている。各脚6A,6Bは、開脚という場合は、一対の脚6A,6Bが中央線から外側に向かって回動する状態を指し、脚を窄めるという場合は、一対の脚6A,6Bが中央線に向かって回動する状態を指す。脚の形状は、図示した形状に限定されるものではなく、その先端部と枢着点との中間部位の形状は自由であってよい。
【0021】
各脚6A, 6Bには、先端部6At,6Bt及びその先端部近傍の下面に前輪8A,8B,9A,9Bが取り付けられている。ベース4の後方下部には大径の後輪7A、7Bが取り付けられる。これらの前輪8A,8B, 9A,9Bは、本装置LFの前後動並びに左右方向への移動を円滑にするために、車輪の支持軸の周りで回転するキャスタ―タイプの車輪を採用することが望ましい。また、大径の後輪7A、7Bは、水平に伸びた車軸を備え、ベース4に搭載した電動駆動モータMによって駆動される。両後輪7A,7Bの外側面間の巾W(図5)は、例えば、通常家屋のトイレ室の入口の巾、廊下の巾等を勘案し、また、一対の脚の長さを含む本装置の長さはトイレ室等の奥行を勘案して設定される。
【0022】
一対の脚6A、6B間には、図4に示すように、電動アクチエータ14bが取り付けられ、電動アクチエータ14bのロッドの伸縮作動で、一対の脚6A、6Bは、水平方向にかつ対向方向に、両前脚が平行な状態から開らく方向へ、又は平行な状態から窄む方向へと回動する。電動アクチエータ14bの制御は、リモートコントロール(図示せず。)により行われる。また、駆動源となる電池等の図示を省略した。
【0023】
一対の脚6A、6Bには、図1に示すように、少なくとも夫々1個の補助輪10A、10Bが支腕11A、11Bを介して夫々脚6A、6Bの略中央部位の外側部に取り付けられている。
補助輪10A、10Bは、一対の脚6A,6Bのそれぞれの回動方向の外側であって、脚の先端部6At,6Btと各脚の枢着部(4g,4g)との間の略中央部位から横外方向に張り出して取り付けられる。また、一対の脚が最少に窄められたとき、両補助輪10A,10Bの間隔は、両後輪間の巾Wと同じ又は小さく設定することが望ましい。
【0024】
本装置の後輪7A,7B付近の構成について図5に基づいて更に説明する。後輪7A、7B は、支柱3が立設された後方のベース4に直接フランジ等を介して回転自在に取り付けられている。各後輪7A,7Bの左右方向に延びる軸には、夫々ギヤボックスG,Gを介して駆動モ―タM,Mに接続されている。駆動モータM,Mの各車輪の駆動操作はリモートコントローラ(図示省略)により行う。脚6Aと脚6Bとの間には、両者を水平方向にかつ対向回動するための電動アクチエータ14bが介装される。また、一対の脚6A,6Bが、電動アクチエ―タ14bにより駆動されたとき、円滑に対向回動するように調節部材12が両脚間に介装されている。
図6に示すように、調節部材12は、一対の脚6A,6Bに回動自在に取り付けた長・短の連結杆12a,12bの端部を、ベース4に取り付けた主軸12cに回転自在に取り付けた回転竿12dの両端部に夫々に連結してなる。これにより一対の脚の円滑な対向作動が行われる。
【0025】
駆動モータM,M及びこれに駆動される後輪7A,7Bが、ベース4に取り付けられているので、前脚を窄める動作又は開脚する動作を邪魔することなく狭い場所に円滑に進行又は後退させることができ、補助輪10A, 10Bも一対の脚6A,6 Bの中間部位の外側に取り付けているので、各車輪が一対の脚の枢着部とで形成する三角形の頂点に位置するので、走行・作動において安定すると共に駆動モータMにより駆動される場合も後輪が接地して空回りせず有効に作動する。
【0026】
本発明の他の実施態様について図7に基づいて説明する。
上述の先の実施態様においては駆動モータMにより後輪を駆動することによって本装置を走行していたのに対し、図7に示す走行リフト装置は、手押しによって走行させる構成になっている。したがって、ベース4に搭載した駆動モータMを除去し、ベース4の後部左右にはキャスタータイプの後輪7’A、7'Bを回動自在に取り付けたものである。
図7の実施態様のその他の構成は、先の実施態様と相違するところはないので、先の実施態様と同等の構成については同じ番号を付すことによって、その説明は省略する。
【0027】
本発明の走行リフト装置の使用例を説明する。
先ず、図1に示す位置において、被介護者をベッドから本装置に移乗させるために、被介護者を吊り部材HGに包み、その端部をハンガー1に引掛けて吊るす。次に、電動アクチエ―タ14aを作動させて、アーム2の水平部が水平又はそれ以上に傾斜する程度まで回動させて、ハンガー1の位置を床から上昇させて、被介護者をハンガー1に取り付けた吊り部材HGによって宙吊り状態にする。
【0028】
この状態で、本装置LFの駆動モータMを駆動し、ベース4に取り付けた後輪7A,7B及び脚6A,6Bに取り付けた前輪8A、8B、9A、9B及び補助輪10A、10Bを利用して所望の場所へ走行移動する。
所望の場所がトイレの部屋TLであれば、一般にその部屋の入口は狭く、かつ、図8に示すように、入り口に対し、便器が横にずれて位置する部屋(a)と、便器が真正面に位置する部屋(b)とがあるので、夫々に進入の状況を図示した。入り口に入るためには、一対の脚6A、6Bを窄めてからトイレの部屋TLに進入する(図8参照)。このとき、脚6A、6Bが窄められていることにより、トイレの部屋TLへの進入を円滑かつ容易に行うことができ、補助輪10A,10Bは侵入の邪魔にならず、また、補助輪10A、10Bが存在することにより、本装置LFが横方向に転倒することを阻止することができる。トイレの部屋に入った後においては、図9に示されるように、一対の脚を少しづつ開脚する。被介護者(ハンガー1の位置)が便器BNの上方に達したならば、図10に示すように、アーム2の先端を下げて、被介護者が吊り部材HGから出やすくし、被介護者を便器BNに着座させることができる。このとき、脚6A、6Bが開脚されていることにより、被介護者の吊り下げを安定にすることができる。被介護者のトイレの部屋TLからの搬出は、逆の動作を行うことで達成される。
【0029】
図1及び図2並びに図7に示す走行リフト装置は、折り畳み可能に構成されている。
まず、図11に示すように、ハンガー1をアーム2から取りし、次に、受け皿2bのボルトを緩めてからアーム2が少しだけ上方へ持ち上げられることにより、アクチュエータ14aの先端を、アーム2の受け皿2bから外し、アクチュエータ14aの中間部を支柱3の前面に固定した緩衝栓3cに押し付けながら収納皿3fにその先端を係合させる。
次に、アーム2は、ボルト3pを中心として前方下方向へ回動することにより、図12に示すように、アーム2の直線部2Bと支柱3とを略平行な状態にする。そして、取り外したハンガー1は、支柱3の側面に設けられた2つの突起部20a、20bに引掛けることにより、支柱3の前面に保持させる。
次に、図12に示す状態において、ベース4のソケット4aと支柱3との締結をレバー4iを回すことにより緩め、長溝3aに沿って支柱3をベース4のソッケト4aから上方に引き上げ、長溝3aの下端において、支柱3をベース4のソケットの切欠き部4d、4eに沿って前方に倒すように回動させる。これにより、図13に示すように、支柱3と、アーム2と、一対の脚6A,6Bと、ベース4とが略平行になって夫々が重なり合う状態となる。折り畳まれた本装置LFは、図13に示すように、テープ及び紐等の束ね部材30a、30bで結束する。
【0030】
折り畳まれた本装置LFの各部の長さについては、図14に示すように、「アーム2の長さLam」を、アーム2の端部2sから端部2tまでの長さであると定義し、「支柱3の長さLpo」を、支柱3の上端部3sから下端部3tまでの長さであると定義し、「一対の脚6A、6Bと、ベース4との合計の長さLabr(以下、「2部材の合計の長さLabr」と略称する。)」を前脚6A、6Bの端部6At、6Btからベース4の端部5At、5Btまでの長さであると定義する。
また、図14に示すように、折り畳まれた本装置LFの高さH、即ち、支柱3の上側の面から、前輪8A,8B、9A,9B、後輪7A,7B、補助輪10A,10Bの接地面までの長さと定義する。そして、本装置LFの巾を後輪7A、7Bの巾Wと定義する。
上記二部材の合計の長さLabrと、高さHと、巾Wとで形成する体積内にすべての構成要素が収まるようにしてある。
【0031】
さらに、図14に示すように、支柱3の端部3tと、後輪7Aの外側面2箇所が、略鉛直方向の仮想平面Pprに整列することが望ましい。
【0032】
また、折り畳まれた本装置LFは、上記2箇所が、仮想平面Pprに近接していることから、地面に縦置きをすることができる(図14)。
【0033】
本発明の作用効果は以下のとおりである。
本発明の走行リフト装置LFは、人力又は動力により、走行することができ、上述したように、一対の脚6A、6Bは、その先端6At、6Btが拡がった位置から、両脚が平行となる位置を通り、その先端6At、6Btが対向する内側へ接触する程まで窄めることができ、また、一対の脚6A、6Bを狭めることにより、狭い場所(例えば、トイレの部屋)へ搬送装置LFを進行又は後進するとき、一対の脚6A、6Bの略中央部の外側に張り出すように設けられた補助輪10A,10Bの協力のもと倒れることなく円滑に行うことができ、また開脚することで被介護者の吊り上げ、吊り降ろしをするとき安定した状態で行うことができる。
【0034】
また、本発明の走行リフト装置LFは、支柱3をベースのソッケト4aから引き出して両者の連携を保った状態で、一対の脚6A、6Bに沿わせ、アームを支柱に対して沿わせて折り畳み、かつ積み重ねることができ、格納のための折り畳み又は再使用のための再組立てが極めて容易であり、また、ハンガーをアームの先端部の着脱自在に取付けてあるので、本装置に組み付けるか又は取り除いて置くことができる。
【符号の説明】
【0035】
LF 走行リフト装置、 1 ハンガー、 2 アーム、 3 支柱、 4 ベース、 4a ソッケト、 6A、6B 一対の脚、 7A、7B 後輪、 8A、8B、9A、9B 前輪、 10A、10B 補助輪、 11A、11B 支腕、 M,M 駆動モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14