特許第6983418号(P6983418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983418流動内の自動化された単一細胞の細胞学的分類のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983418
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】流動内の自動化された単一細胞の細胞学的分類のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20211206BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20211206BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20211206BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20211206BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20211206BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20211206BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   C12M1/34 D
   G01N33/48 M
   G01N33/483 C
   G01N37/00 101
   B81B1/00
   G01N21/05
   G01N21/27 A
【請求項の数】22
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-560222(P2018-560222)
(86)(22)【出願日】2017年5月19日
(65)【公表番号】特表2019-518448(P2019-518448A)
(43)【公表日】2019年7月4日
(86)【国際出願番号】US2017033676
(87)【国際公開番号】WO2017201495
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2020年4月22日
(31)【優先権主張番号】62/339,051
(32)【優先日】2016年5月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】マサエリ, マードフト
(72)【発明者】
【氏名】アシュリー, ユアン エー.
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0063664(US,A1)
【文献】 特表2010−538241(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102014205535(DE,A1)
【文献】 特表2009−536313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞学的分類システムであって、
前記細胞学的分類システムは、撮像システムフローセルと灌流システムとを備え、
前記フローセルは、
入口と、
出口と、
前記入口と前記出口とに流体連通し、かつ、前記入口と前記出口との間で流体連通するマイクロ流体チャネル
を備え、
前記マイクロ流体チャネルは、
サンプルからの複数の細胞を単一の流線の中に集束させるように構成されている集束領域であって、前記集束領域は、前記集束領域の長手方向軸に沿って複数の収縮区分および複数の拡張区分を備え、前記集束領域の壁の少なくとも一部は、(i)前記長手方向軸に沿って対称的に収縮することにより、前記複数の収縮区分を形成し、(ii)前記長手方向軸に沿って対称的に拡張することにより、前記複数の拡張区分を形成し、前記複数の収縮区分および前記複数の拡張区分は、歪められた非対称のパターンを形成する、集束領域と、
前記単一の流線内で前記複数の細胞を離間させるように構成されている秩序化領域と、
前記単一の流線内で前記複数の細胞を回転させるように構成されている細胞回転領域と、
前記撮像システムによって前記複数の細胞の1つ以上の画像を捕捉するように構成されている撮像領域と
を備え、
前記灌流システムは、前記入口を介して前記フローセルの中に前記サンプルを注入するように構成されている、細胞学的分類システム。
【請求項2】
前記フローセルの中に注入された前記サンプルは、1×10個/mL〜5×10個/mLの範囲内の濃度で前記複数の細胞を含む、請求項1に記載の細胞学的分類システム。
【請求項3】
前記フローセルの中に注入された前記サンプルは、複数の固定細胞および有色色素で染色された複数の細胞から成る群から選択される前記複数の細胞を含む、請求項1に記載の細胞学的分類システム。
【請求項4】
前記フローセルは、マイクロ流体デバイスとして実装されている、請求項1に記載の細胞学的分類システム。
【請求項5】
前記撮像システムは、前記マイクロ流体チャネルの前記撮像領域を照明するように構成されている光源を備える、請求項1に記載の細胞学的分類システム。
【請求項6】
前記撮像システムは、前記マイクロ流体チャネルの前記撮像領域を通過する前記複数の細胞を拡大するように構成されている対物レンズシステムをさらに備える、請求項5に記載の細胞学的分類システム。
【請求項7】
前記撮像システムは、100,000フレーム〜500,000フレーム/秒で画像を捕捉するように構成されている高速カメラシステムをさらに備える、請求項5に記載の細胞学的分類システム。
【請求項8】
前記マイクロ流体チャネルは、前記撮像システムが、前記細胞の完全360°視野を提供する前記マイクロ流体チャネルの前記撮像領域内の前記複数の細胞のうちの回転する細胞の一続きの画像を捕捉するように形成されている、請求項1に記載の細胞学的分類システム。
【請求項9】
前記撮像システムは、前記マイクロ流体チャネルの前記撮像領域内の前記複数の細胞のうちの1つの細胞の少なくとも10枚の画像を捕捉する、請求項1に記載の細胞学的分類システム。
【請求項10】
前記細胞学的分類システムは、前記撮像システムに動作可能に結合されているコンピュータシステムをさらに備え、前記撮像システムは、少なくとも1,000個/秒の細胞の画像を捕捉し前記コンピュータシステムは、少なくとも1,000個/秒の細胞を分類する、請求項1に記載の細胞学的分類システム。
【請求項11】
前記マイクロ流体チャネルは、濾過領域をさらに備える、請求項1に記載の細胞学的分類システム。
【請求項12】
前記集束領域の前記壁の小区分は慣性揚力を使用してサンプルからの複数の細胞を細胞の前記単一の流線の中に集束させるように形成されている、請求項1に記載の細胞学的分類システム。
【請求項13】
前記慣性揚力は、層流が生じるレイノルズ数において前記複数の細胞に作用する、請求項12に記載の細胞学的分類システム。
【請求項14】
前記複数の収縮区分または前記複数の拡張区分は、周期構造で配置されている、請求項に記載の細胞学的分類システム。
【請求項15】
前記複数の収縮区分および前記複数の拡張区分は、周期構造で配置されている、請求項1に記載の細胞学的分類システム。
【請求項16】
前記秩序化領域は、慣性揚力および前記複数の細胞に抗力を及ぼす第2の流動を使用して前記単一の流線内で前記複数の細胞を離間させるように形成されている、請求項1に記載の細胞学的分類システム。
【請求項17】
前記秩序化領域は、少なくとも1つの断面縮小領域を形成する、請求項16に記載の細胞学的分類システム。
【請求項18】
前記秩序化領域は、一続きの湾曲チャネルおよび断面縮小領域を形成する、請求項16に記載の細胞学的分類システム。
【請求項19】
前記マイクロ流体チャネルは、セルの前記単一の流線内の前記複数の細胞に速度勾配を印加することによって前記複数の細胞を回転させるように構成されている前記細胞回転領域を備える、請求項1に記載の細胞学的分類システム。
【請求項20】
前記細胞回転領域は、並行流を使用して複数の細胞に速度勾配を印加する、請求項19に記載の細胞学的分類システム。
【請求項21】
前記細胞回転領域は、前記チャネルの少なくとも1つの寸法を増加させることによって複数の細胞に速度勾配を印加する、請求項19に記載の細胞学的分類システム。
【請求項22】
細胞学的分類システムであって、
前記細胞学的分類システムは、2層のフローセル灌流システムと撮像システムとコンピュータシステムとを備え、
前記2層のフローセルは、
入口と、
出口と、
マイクロ流体チャネル
を備え、
前記マイクロ流体チャネルは、
サンプルからの複数の細胞を単一の流線の中に集束させるための集束領域であって、前記集束領域は、前記集束領域の長手方向軸に沿って複数の収縮区分および複数の拡張区分を備え、前記集束領域の壁の少なくとも一部は、(i)前記長手方向軸に沿って対称的に収縮することにより、前記複数の収縮区分を形成し、(ii)前記長手方向軸に沿って対称的に拡張することにより、前記複数の拡張区分を形成し、前記複数の収縮区分および前記複数の拡張区分は、歪められた非対称のパターンを形成する、集束領域と、
前記単一の流線内で前記複数の細胞を離間させるため秩序化領域と、
前記単一の流線内で前記複数の細胞を回転させるため細胞回転領域と、
前記回転する複数の細胞の視野を提供す撮像領域
を備え
前記灌流システムは、前記入口を介して前記フローセルの中に前記サンプルを注入するように構成されており、
前記撮像システムは、
前記撮像領域の画像を収集するように構成されているカメラと、
前記撮像領域を照明するため光源と、
前記撮像領域の拡大を提供するように構成されている対物レンズシステム
を備え、
前記コンピュータシステムは、前記撮像システムから画像を受信し、かつ前記受信された画像を分析するように構成されている、細胞学的分類システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本願は、概して、流動内の細胞の撮像に関し、より具体的には、自動化高処理能力の流動内単一細胞の細胞学的分類に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
細胞の物理的および形態的特性が、長い間、細胞タイプならびに細胞状態を調査し、疾患を診断するために使用されてきた。細胞形状は、細胞周期のマーカの1つである。出芽または細胞核分裂を経験する酵母細胞等の真核細胞は、細胞周期に左右され得る形状の物理的変化を示す。形状はまた、細胞状態のインジケータであり、臨床診断のために使用されるインジケーションとなり得る。血液細胞形状は、寄生虫感染症から結果として生じる赤血球の形態の変化等、多くの臨床状態、疾患、および薬物治療に起因して変化し得る。細胞膜、細胞核と細胞質の比率、核膜形態、およびクロマチン構造の特徴等の他のパラメータもまた、細胞タイプならびに疾患状態を識別するために使用されることができる。血液では、例えば、細胞サイズおよび細胞核形状等の要素によって、異なる細胞タイプが、区別される。
【0003】
生物学者および細胞病理学者は、慣用的に、細胞サイズならびに形態を使用し、細胞タイプを識別し疾患を診断する。これは、主に、いくつかの種類の顕微鏡撮像および画像の手動分析によって行われる。結果として、既存の方法は、時間がかかり、主観的であり、定性的であり、誤差が生じやすい。細胞病理学者は、例えば、光学顕微鏡を使用して異なる組織から調製されたスライドを精査し、疾患の特性に似ている特徴を探す。このプロセスは、適時であり、結果は、主観的であり、かつ染色された細胞の配向、スライドが調製された方法、および細胞病理学者の専門知識によって強い影響が及ぼされる。細胞学的スミア塗抹標本の分析を自動化するために、近年努力がなされているが、依然として、難題が、存在する。塗抹標本の分析の主な問題の1つは、回避することが困難であり、かつ疾患の希少細胞または具体的な特徴特性を検出することを困難にする汚染細胞の存在である。他の課題は、細胞タイプまたは状態の識別のための本質的な情報を隠蔽し得る、染色もしくは汚された細胞の角度である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
本発明の種々の実施形態による、自動化された、流動内単一細胞の細胞学的分類のためのシステムおよび方法が、例証される。1つの実施形態は、細胞学的分類システムであって、撮像システムと、フローセルであって、出口と、撮像領域を含むマイクロ流体チャネルを含み、マイクロ流体チャネルは、入口を介して流動を受容し、かつサンプルからの細胞を単一の流線の中に集束させ、細胞を単一の流線内で離間させ、細胞を単一の流線内で回転させるように形成される壁を有する、マイクロ流体チャネルとを含むフローセルと、サンプルを入口を介してフローセルの中に注入するように構成される灌流システムとを備えるシステムを含む。
【0005】
別の実施形態では、フローセルの中に注入されたサンプルは、1×10個/mL〜5×10個/mLの範囲内の細胞濃縮物を含む。
【0006】
さらなる実施形態では、フローセルの中に注入されたサンプルは、固定細胞と、有色色素で染色された細胞とから成る群からの細胞を含む。
【0007】
さらに別の実施形態では、フローセルは、マイクロ流体デバイスとして実装される。
【0008】
さらにさらなる実施形態では、撮像システムは、マイクロ流体チャネルの撮像領域を照明するように構成される、光源を備える。
【0009】
さらに別の実施形態では、撮像システムは、マイクロ流体チャネルの撮像領域を通過する細胞を拡大するように構成される、対物レンズシステムをさらに備える。
【0010】
さらにさらなる実施形態では、撮像システムは、100,000〜500,000フレーム/秒で画像を捕捉するように構成される、高速カメラシステムをさらに備える。
【0011】
別の付加的な実施形態では、マイクロ流体チャネルは、撮像システムが、細胞の完全360°視野を提供するマイクロ流体チャネルの撮像領域内の回転する細胞の一続きの画像を捕捉するように形成される。
【0012】
さらに付加的な実施形態では、撮像システムは、マイクロ流体チャネルの撮像領域内の細胞の少なくとも10枚の画像を捕捉する。
【0013】
別の実施形態では、さらに、撮像システムは、少なくとも1,000個/秒の細胞の画像を捕捉し、かつコンピュータシステムは、少なくとも1,000個/秒の細胞を分類する。
【0014】
さらなる実施形態では、さらに、マイクロ流体チャネルは、濾過領域をさらに含む。
【0015】
なおもさらに別の実施形態では、チャネル壁の小区分は、サンプルからの細胞を、慣性揚力を使用して細胞の単一の流線の中に集束させるように形成される、集束領域を含む。
【0016】
なおもさらにさらなる実施形態では、慣性揚力は、層流が生じるレイノルズ数において細胞に作用する。
【0017】
さらに別の付加的な実施形態では、集束領域は、収縮区分と拡張区分とを含む。
【0018】
なおもさらなる付加的な実施形態では、収縮区分および拡張区分は、非対称の周期構造を有する。
【0019】
さらに別の実施形態では、さらに、チャネル壁の小区分は、慣性揚力および細胞に抗力を及ぼす第2の流動を使用して細胞を単一の流線内で離間させるように形成される、秩序化領域を含む。
【0020】
なおもさらなる実施形態では、さらに、秩序化領域は、少なくとも1つの断面縮小領域を形成する。
【0021】
さらに別の付加的な実施形態では、秩序化領域は、一続きの湾曲チャネルおよび断面縮小領域を形成する。
【0022】
さらにさらなる付加的な実施形態では、チャネル壁の小区分は、セルの単一の流線内の細胞に速度勾配を印加することによって細胞を回転させるように形成される、細胞回転領域を含む。
【0023】
さらに別の実施形態では、さらに、細胞回転領域は、並行流を使用して細胞に速度勾配を印加する。
【0024】
さらにさらなる実施形態では、さらに、細胞回転領域は、チャネルの少なくとも1つの寸法を増加させることによって細胞に速度勾配を印加する。
【0025】
別の付加的な実施形態では、さらに、細胞学的分類システムは、フローセルであって、入口と、出口と、サンプルからの細胞を単一の流線の中に集束させるための、集束領域と、細胞を単一の流線内で離間させるための、秩序化領域と、細胞を単一の流線内で回転させるための、細胞回転領域と、回転する細胞の視野を提供する、撮像領域とを含むマイクロ流体チャネルとを含む2層のフローセルと、入口を介してフローセルの中にサンプルを注入するように構成される灌流システムと、撮像領域の画像を収集するように構成される、カメラと、撮像領域を照明するための、光源と、撮像領域の拡大を提供するように構成される、対物レンズシステムとを含む、撮像システムと、コンピュータシステムであって、撮像システムから画像を受信し、かつ受信された画像を分析するように構成される、コンピュータシステムとを含む。
【0026】
付加的な実施形態および特徴は、後続の説明内の一部に記載されており、部分的に、本明細書の考察の結果、当業者に明白となるか、または本発明の実践によって習得され得る。本開示の一部を形成する、本明細書の残りの部分および図面を参照することによって、本発明の性質および利点のさらなる理解が、実現され得る。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
細胞学的分類システムであって、
撮像システムと、
フローセルであって、前記フローセルが、
入口と、
出口と、
撮像領域を備えるマイクロ流体チャネルであって、前記マイクロ流体チャネルは、前記入口を介して流動を受容し、かつ
サンプルからの細胞を単一の流線の中に集束させ、
細胞を単一の流線内で離間させ、
細胞を単一の流線内で回転させる、
ように形成されるチャネル壁を有する、マイクロ流体チャネルと、
を備える、フローセルと、
サンプルを入口を介してフローセルの中に注入するように構成される灌流システムと
を備える、システム。
(項目2)
前記フローセルの中に注入されたサンプルは、1×10個/mL〜5×10個/mLの範囲内の細胞濃縮物を含む、項目1に記載の細胞学的分類システム。
(項目3)
前記フローセルの中に注入されたサンプルは、固定細胞と、有色色素で染色された細胞とから成る群からの細胞を含む、項目1に記載の細胞学的分類システム。
(項目4)
前記フローセルは、マイクロ流体デバイスとして実装される、項目1に記載の細胞学的分類システム。
(項目5)
前記撮像システムは、前記マイクロ流体チャネルの撮像領域を照明するように構成される、光源を備える、項目1に記載の細胞学的分類システム。
(項目6)
前記撮像システムは、前記マイクロ流体チャネルの撮像領域を通過する前記細胞を拡大するように構成される、対物レンズシステムをさらに備える、項目5に記載の細胞学的分類システム。
(項目7)
前記撮像システムは、100,000フレーム〜500,000フレーム/秒で画像を捕捉するように構成される、高速カメラシステムをさらに備える、項目5に記載の細胞学的分類システム。
(項目8)
前記マイクロ流体チャネルは、前記撮像システムが、前記細胞の完全360°視野を提供する前記マイクロ流体チャネルの撮像領域内の回転する細胞の一続きの画像を捕捉するように形成される、項目1に記載の細胞学的分類システム。
(項目9)
前記撮像システムは、前記マイクロ流体チャネルの撮像領域内の細胞の少なくとも10
枚の画像を捕捉する、項目1に記載の細胞学的分類システム。
(項目10)
前記撮像システムは、少なくとも1,000個/秒の細胞の画像を捕捉し、かつ前記コンピュータシステムは、少なくとも1,000個/秒の細胞を分類する、項目1に記載の細胞学的分類システム。
(項目11)
前記マイクロ流体チャネルは、濾過領域をさらに備える、項目1に記載の細胞学的分類システム。
(項目12)
前記チャネル壁の小区分は、サンプルからの細胞を、慣性揚力を使用して細胞の単一の流線の中に集束させるように形成される、集束領域を備える、項目1に記載の細胞学的分類システム。
(項目13)
前記慣性揚力は、層流が生じるレイノルズ数において細胞に作用する、項目12に記載の細胞学的分類システム。
(項目14)
前記集束領域は、収縮区分と拡張区分とを含む、項目12に記載の細胞学的分類システム。
(項目15)
前記収縮区分および拡張区分は、非対称の周期構造を有する、項目14に記載の細胞学的分類システム。
(項目16)
前記チャネル壁の小区分は、慣性揚力および前記細胞に抗力を及ぼす第2の流動を使用して細胞を単一の流線内で離間させるように形成される、秩序化領域を備える、項目1に記載の細胞学的分類システム。
(項目17)
前記秩序化領域は、少なくとも1つの断面縮小領域を形成する、項目16に記載の細胞学的分類システム。
(項目18)
前記秩序化領域は、一続きの湾曲チャネルおよび断面縮小領域を形成する、項目16に記載の細胞学的分類システム。
(項目19)
前記チャネル壁の小区分は、セルの前記単一の流線内の前記細胞に速度勾配を印加することによって細胞を回転させるように形成される、細胞回転領域を備える、項目1に記載の細胞学的分類システム。
(項目20)
前記細胞回転領域は、並行流を使用して細胞に速度勾配を印加する、項目19に記載の細胞学的分類システム。
(項目21)
前記細胞回転領域は、前記チャネルの少なくとも1つの寸法を増加させることによって細胞に速度勾配を印加する、項目19に記載の細胞学的分類システム。
(項目22)
細胞学的分類システムであって、
2層のフローセルと、灌流システムと、コンピュータシステムとを備え、
前記2層のフローセルが、
入口と、
出口と、
マイクロ流体チャネルであって、
サンプルからの細胞を単一の流線の中に集束させるための、集束領域と、
細胞を単一の流線内で離間させるための、秩序化領域と、
細胞を単一の流線内で回転させるための、細胞回転領域と、
回転する細胞の視野を提供する、撮像領域とを備え
前記灌流システムが、前記入口を介して前記フローセルの中にサンプルを注入するように構成され、
前記撮像システムが、
前記撮像領域の画像を収集するように構成される、カメラと、
前記撮像領域を照明するための、光源と、
前記撮像領域の拡大を提供するように構成される、対物レンズシステムとを備え、
前記コンピュータシステムが、
前記撮像システムから画像を受信し、かつ前記受信された画像を分析するように構成される、システム。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本明細書および請求項は、本発明の例示的実施形態として提示され、かつ本発明の範囲の完全な列挙として解釈されるべきではない図ならびにデータグラフを参照して、より完全に理解される。
【0028】
図1図1Aは、本発明の実施形態による細胞学的分類システムを概念的に図示する。図1Bは、本発明の実施形態による、フローセルのマイクロ流体設計を概念的に図示する。
図2図2は、本発明の実施形態による、フローセルの濾過領域を概念的に図示する。
図3図3Aは、本発明の実施形態による、フローセルの集束領域を概念的に図示する。図3B−3Dは、本発明の実施形態による、フローセルの集束領域の、上流区分、収縮区分、拡張区分、および下流区分を概念的に図示する。
図4図4Aは、本発明の実施形態による、フローセルの秩序化領域を概念的に図示する。図4Bは、本発明の実施形態による、フローセルの秩序化領域のチャネル横断面の流体力学を概念的に図示する。
図5-1】図5Aおよび5Bは、本発明の実施形態による、並行流を利用するフローセルの細胞回転領域を概念的に図示する。
図5-2】図5Cは、本発明の実施形態による、チャネル寸法の変化を利用するフローセルの細胞回転領域を概念的に図示する。図5Dは、本発明の実施形態による、フローセルの細胞回転領域の回転粒子のビデオのオーバレイ画像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本発明の種々の実施形態によるシステムおよび方法は、細胞形態特性に基づいて細胞サンプルの迅速な分析および分類を行うことが可能である。いくつかの実施形態では、流体媒体中に懸濁された細胞は、単一の流線(stream line)に集束し連続的に撮像される、マイクロ流体チャネルを通過される。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネルは、個々の細胞がそれぞれ、短時間で複数の角度において撮像されることを可能にする流動を確立する。パターン認識システムは、本システムを通して流動する細胞の高速度画像から捕捉されたデータを分析し、標的細胞を分類することができる。このように、自動化されたプラットフォームは、臨床現場サービス(但し、限定ではない)等の研究および臨床用途の幅広い範囲にわたる新たな可能性を創造する。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によるシステムおよび方法は、小型化された流体デバイス内の慣性揚力を利用し、細胞を流動内に位置付け、細胞を単一の側方の位置に移送する。細胞は、次いで、撮像の間、単一のフレーム内における複数細胞の到着を防止するように、秩序化され得る。このように、画像セグメント化の必要性が、回避され得る。いくつかの実施形態では、細胞が、回転させられる一方で、それらが、複数の角度において個々の細胞の画像を捕捉するよう撮像される。
【0031】
多くの実施形態では、細胞学的分類システムは、細胞がマイクロ流体システムを通過するにつれてそれらを検出かつ追跡し、細胞毎に異なる角度における複数の画像を捕捉することができる。いくつかの実施形態では、システムは、他の小型化されたプラットフォームと容易に統合され、染色を自動化し、かつ手動のサンプル調製をすべて一緒に排除することができる。ある実施形態では、細胞学的分類システムは、相互から所望される距離において細胞を秩序化させることによって、細胞の個別の分類を可能にする。細胞がこのように撮像されるとき、細胞学的分類システムは、異なる角度において撮像された細胞の画像から、3次元画像を再構成することができる。さらに、分析は、(限定ではないが)細胞質および核膜の形態を含む撮像された細胞の特徴を基に実施されることができる。
【0032】
本発明の種々の実施形態による流動内の細胞学的分類を実施するための細胞学的分類のシステムおよび方法が、下記にさらに議論される。
細胞学的分類システム
【0033】
本発明の実施形態による細胞学的分類システムが、図1Aに図示され、マイクロ流体設計が、図1Bにさらに詳細に示される。動作時、サンプル102が、調製され、シリンジポンプ104によってフローセル106またはフロースルーデバイスの中に注入される。多くの実施形態では、フローセル106は、マイクロ流体デバイスである。図1Aは、シリンジポンプを利用する細胞学的分類システムを図示するが、(限定ではないが)重力供給方式、蠕動方式、またはいくつかの圧力システムの任意のもの等のいくつかの灌流システムの任意ものもまた、使用され得る。多くの実施形態では、サンプルは、固定および染色によって調製される。容易に理解され得るように、サンプルが調製される具体的な様式は、主として、具体的な用途の要件に依存する。
【0034】
いくつかの実施形態では、細胞懸濁サンプルが、1×10〜5×10個/mLの範囲に及ぶ濃度で調製される。所与の細胞学的分類システムにおいて利用される具体的な濃度は、典型的には、システムの能力に依存する。細胞は、固定され、有色色素を用いて(例えば、Papanicolaou法およびWrighta Giemsa法で)染色されてもよい。本発明の種々の実施形態による細胞学的分類システムは、生存しているか、固定されたか、そして/またはWright Giemsa法で染色された細胞を用いて動作することができる。染色は、核細胞小器官のコントラストの増加および分類の正確度の改良を促進する。調製の後、(限定ではないが)管等の導管および(限定ではないが)シリンジポンプ等の灌流システムを使用して、細胞懸濁サンプルが、マイクロ流体デバイスの中に注入されることができる。多くの実施形態では、シリンジポンプは、約100μL/分でサンプルを注入する。容易に理解され得るように、所与の細胞学的分類システムに適切である、(限定ではないが)蠕動方式システムおよび重力供給方式システム等の任意の灌流システムが、利用されることができる。
【0035】
上記に記載されるように、フローセル106は、サンプルからの細胞を、連続的に撮像される単一の流線の中に集束させる流体デバイスとして実装されることができる。図示された実施形態では、光源108、および光をフローセル106の撮像領域138上に指向させる光学システム110によって、細胞株が、照明される。対物レンズシステム112は、光を高速カメラシステム114のセンサに向かって指向させることによって細胞を拡大する。ある実施形態では、40倍、60倍、または100倍の対物レンズが、細胞を拡大するために使用される。当業者によって容易に理解され得るように、利用される具体的な拡大率は、大幅に変動し得、主として所与の撮像システムおよび着目細胞タイプの要件に依存する。
【0036】
いくつかの実施形態では、細胞からの画像シーケンスが、高速カメラを使用して100,000〜500,000フレーム/秒で記録され、これはカラー、モノクロ、および/または(限定ではないが)近赤外線スペクトルを含む種々の撮像モダリティの任意のものを使用して撮像されてもよい。図示された実施形態では、撮像面積は、細胞のモーションブラーの防止を促進するように1μs未満の露光時間を伴う高電力LEDを用いて照明される。容易に理解され得るように、露光時間は、異なるシステムに渡って異なり得、主として所与の用途の要件と、限定ではないが、流量等の所与のシステムの限界とに依存する。画像が、取得され、分析アルゴリズムを使用して分析されることができる。多くの実施形態では、画像は、取得され、そして捕捉後に分析される。他の実施形態では、画像は、リアルタイムに連続的に取得かつ分析される。単一細胞は、カメラの視野内にある間、物体追跡ソフトウェアを使用して検出かつ追跡されることができる。バックグラウンド除去が、次いで、実施されることができる。いくつかの実施形態では、フローセル106は、細胞が撮像されるにつれて、それらを回転させ、各細胞の複数の画像が、分析のためにコンピュータシステム116に提供される。流量およびチャネル寸法は、同一細胞の複数画像ならびに細胞の完全360°視野(例えば、細胞が、連続するフレームの間で90°回転する4つの画像)を得るために決定され得る。個々の細胞の複数の画像を重畳させることによって、細胞の2次元の「ホログラム」が、生成されることができる。「ホログラム」は、(限定ではないが)細胞の形態的特徴を含む特徴に基づいて細胞の特性を自動的に分類するように分析されることができる。多くの実施形態では、10またはそれを上回る画像が、細胞毎に捕捉される。容易に理解され得るように、捕捉される画像の数は、所与の用途の要件に依存する。
【0037】
いくつかの実施形態では、フローセルは、細胞を集束、秩序化、かつ回転させるための異なる領域を有する。集束領域、秩序化領域、および細胞回転領域は、具体的なシーケンス内のサンプルに影響を及ぼすものとして議論されるが、当業者は、サンプル内の細胞の集束、秩序化、および回転が、任意の順序で実施され得るように、種々の領域が、異なるように配列され得ることを理解するであろう。本発明の実施形態に従って実装されたマイクロ流体デバイス内の領域が、図1Bに図示される。フローセル106は、濾過領域130を含み、凝集塊/破片または塵粒によるチャネル閉塞を防止する。細胞は、次いで、秩序化領域134によって離間される細胞の単一の流線を形成するために「慣性集束」を利用する集束領域132を通過する。撮像に先行して、回転領域136によって細胞に対し回転が、加えられることができる。回転する細胞は、次いで、フローセルからの退出に先行して、細胞が撮像のために照明される撮像領域138を通過することができる。これらの種々の領域が、下記にさらに詳細に説明かつ議論される。
【0038】
本発明の種々の実施形態による細胞学的分類システムが、単一細胞を撮像のために送達するにつれて、システムが、オペレータの専門知識に依拠する、スライドの手動調製内に関わる変動性を排除する。さらに、画像セグメント化が、回避され得る。細胞学的分類システムが、慣性効果に依拠するため、比較的に高い流量および高い処理能力(例えば、1,000個を上回る細胞/秒の分析)が、達成され得る。多くの実施形態では、細胞学的分類システムは、少なくとも1,000個/秒の細胞の画像を捕捉することができる撮像システムと、少なくとも1,000個/秒の細胞を分類することができるコンピュータシステムとを含む。撮像システムは、とりわけ、カメラと、対物レンズシステムと、光源とを含むことができる。いくつかの実施形態では、上記に説明されたものと同様のフローセルは、最小限の製作時間およびコストを要求する標準的な2次元マイクロ流体製作技術を使用して製作されることができる。
【0039】
特定の細胞学的分類システム、フローセル、およびマイクロ流体デバイスが、図1Aならびに1Bに関して上記に説明されているが、細胞学的分類システムは、本発明の種々の実施形態に従って、具体的な用途の要件に適切な種々の方法の任意のもので実装されることができる。本発明の多くの実施形態による細胞学的分類システム内で利用され得るマイクロ流体デバイスの具体的要素が、下記にさらに議論される。
マイクロ流体デバイス製作
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によるマイクロ流体デバイスは、種々の方法を使用して製作されることができる。多くの実施形態では、マイクロ流体デバイスを製作するために、フォトリソグラフィと型鋳造との組み合わせが、使用される。従来のフォトリソグラフィは、典型的には、フォトレジストおよびパターン化光の使用を伴い、基板、典型的には、シリコンウエハの上面上に所望されるマイクロ流体パターンの凸面レリーフを含有する型を作成する。フォトレジストは、フォトリソグラフィで使用され、約マイクロメータのオーダーの特徴サイズを伴う構造を創造し得る光硬化性材料である。製作の間、フォトレジストは、基板の上に置かれ得る。基板は、回転され、標的とされた所望される高さを伴うフォトレジストの層を創造することができる。フォトレジスト層は、次いで、フォトレジストの硬化パターンを創造するためのパターン化マスクを通して、光、典型的には、紫外線光(フォトレジストのタイプに応じて)に暴露され得る。残りの非硬化部分は、除去され、マイクロ流体デバイスを製作するために使用され得る凸面レリーフ型を残すことができる。
【0041】
鋳型から、材料が、鋳造され、凹面レリーフパターンを含有する層を創造することができる。入口孔および出口孔が、適切な領域に形成されることができ、本デバイスが、次いで、基材に接合され、マイクロ流体チャネルを伴うフロースルーデバイス、すなわち、フローセルを創造することができる。回転区分を利用する多くの実施形態では、2層製作プロセスが、使用され、細胞が回転するにつれてそれらの撮像が、細胞特徴のより正確な表現を伴う、異なる角度における細胞の画像を提供するように、回転区分を配向させ得る。容易に理解され得るように、マイクロ流体デバイスは、所与の用途の要件に適切であるような種々の材料を使用して製作されることができる。撮像用途では、マイクロ流体デバイスは、典型的には、(限定ではないが)ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)等の光透過性材料から作製される。
【0042】
マイクロ流体デバイス製作の具体的な方法が、議論されるが、種々の方法の任意のものが、実装され、本発明の種々の実施形態に従って、所与の要件に適切であるように利用されるマイクロ流体デバイスを製作することができる。
マイクロ流体フィルタ
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によるマイクロ流体デバイスは、マイクロ流体デバイスの入口またはさらにその下流において、チャネル閉塞を防止するための1つもしくはそれを上回るマイクロ流体フィルタを含み得る。他の実施形態では、濾過が、デバイスから離れて生じ得る。本発明の実施形態によるマイクロ流体フィルタシステムが、図2に示され、マイクロ流体デバイスの入口に位置し、凝集塊/破片または塵粒によるチャネル閉塞を防止する2層のマイクロ流体フィルタを含む。図示される実施形態では、マイクロ流体フィルタは、あるサイズを上回る粒子を濾過し除去するような、具体的な定寸された間隙で散開する構造のリングとして実装される。フィルタおよびマイクロ流体チャネルの具体的な寸法ならびにパターンが、図示されるが、フィルタおよびマイクロ流体チャネルの具体的な寸法ならびにパターンは、変動し得、主として着目細胞のサイズと、所与の用途の要件とに依存する。
【0044】
具体的なマイクロ流体フィルタシステムが、図2に図示されるが、種々のマイクロ流体フィルタシステムの任意のものが、本発明の種々の実施形態に従って、所与の流動用途の要件に適切であるように利用されるマイクロ流体デバイス上に実装されることができる。
集束領域
【0045】
マイクロ流体デバイス上の集束領域は、細胞の無秩序な流動を得、慣性揚力(壁効果および剪断勾配力)を利用して流動内の細胞を細胞の単一のラインに集束させることができる。図3Aは、本発明の実施形態によるマイクロ流体チャネルの集束領域300を図示する。上流区分302、収縮区分304、拡張区分306、および下流区分308が、図3B−3Dにさらに詳細に示される。
【0046】
集束領域300は、上流区分302を介して、無作為に配列された細胞の流動を受容する。細胞は、無作為に配列された細胞が、細胞の単一の流線の中に集束される、収縮区分304および拡張区分306の中に流動する。集束は、1を上回るレイノルズ数における細胞に作用する慣性揚力(壁効果および剪断勾配力)の作用によって駆動され、チャネルレイノルズ数は、Re-=ρUW/μ(式中、Uは、最大流体速度であり、ρは、流体密度であり、μは、流体粘度であり、Wは、チャネル寸法である)と定義される。いくつかの実施形態では、約10〜20μmの粒子を集束させるために、約20〜30のレイノルズ数が、使用されることができる。多くの実施形態では、レイノルズ数は、マイクロ流体チャネル内に層流が生じるようにである。容易に理解され得るように、具体的なチャネルレイノルズ数は、変動し得、主としてマイクロ流体デバイスが設計される細胞の特性、マイクロ流体チャネルの寸法、および灌流システムによって制御される流量によって決定される。
【0047】
多くの実施形態では、集束領域は、周期的パターンを形成する曲線のある壁を伴って形成される。いくつかの実施形態では、パターンは、一連の四角形の拡張区分と収縮区分とを形成する。他の実施形態では、パターンは、正弦波である。さらなる実施形態では、正弦波パターンは、歪められ、非対称のパターンを形成する。図3A−3Dに図示される集束領域は、流量の幅広い範囲にわたる細胞を集束させる上で有効であり得る。図示される実施形態では、非対称的な正弦波類似構造が、矩形の拡張区分および収縮区分とは対照的に使用される。これは、粒子流線の背後の第2の渦および第2の流動の形成防止を促進する。このように、図示される構造は、細胞の単一の側方平衡位置へのより迅速かつより正確な集束を可能にする。渦巻状かつ湾曲されたチャネルはまた、慣性領域内で使用されることができるが、これらは、他のモジュールとの統合を複雑にさせ得る。最後に、チャネル幅がチャネル高を上回る真っ直ぐなチャネルもまた、細胞を単一の側方の位置上に集束させるために使用され得る。しかしながら、この場合では、z平面内に、1つを上回る平衡位置が、存在するため、撮像は、撮像焦点面が、好ましくは固定されるため、問題となり得る。容易に理解され得るように、マイクロ流体チャネルの長さに沿って拡張かつ収縮する横断面を提供するか、または細胞を集束させることができる種々の構造の任意のものが、具体的な用途の要件に適切であるように利用されることができる。
【0048】
マイクロ流体チャネル内の集束領域の具体的な実装が、図3A−3Dを参照して上記に説明されるが、細胞を単一の流線の中に集束させる種々のチャネル構成の任意のものが、本発明の種々の実施形態に従って、具体的な用途の要求に適切であるように利用されることができる。
秩序化領域
【0049】
マイクロ流体チャネルは、本発明のいくつかの実施形態に従って、集束領域によって形成される細胞の単一の流線上に秩序化を課すように設計されることができる。本発明の多くの実施形態によるマイクロ流体チャネルは、断面縮小領域と、湾曲されたチャネルとを有する、秩序化領域を含む。秩序化領域は、細胞を秩序化させ、単一の細胞を相互から距離を置き、撮像を促進する。いくつかの実施形態では、秩序化は、細胞に慣性揚力およびディーン抗力を印加するためにマイクロ流体チャネルを形成することによって達成される。ディーン流れは、流体慣性によってもたらされる回転流動である。マイクロ流体チャネルは、第2の流動の速度に比例するディーン抗力を印加する第2の流動を創造するために形成され得る。ディーン抗力は、
【数1】
(式中、ρは、流体密度であり、U、は、最大流体速度であり、
【数2】
は、チャネル水力直径であり、αは、粒子寸法であり、Rは、曲率半径である)で増減する。慣性応力とディーン抗力との間の力平衡が、粒子平衡位置を決定する。
【0050】
図4Aおよび4Bは、本発明の実施形態による、一続きの湾曲されたチャネル402と、断面縮小領域404とを有する、マイクロ流体チャネルの秩序化領域400を図示する。粒子サイズに応じて、チャネルの曲率(R1in,out)の相対的な内部および外部の半径ならびにマイクロ流体チャネルのチャネル高(Hc)が、所望される場所において平衡に到達するように決定されることができる。湾曲された領域402および断面縮小領域404(ならびにそれらのパラメータ)の異なる組み合わせもまた、粒子間の所望される距離を達成するために使用されることができる。断面縮小領域内のチャネル幅は、細胞がチャネルを通して圧搾されず、細胞膜に可能な損傷をもたらさないように調節されることができる(しかしながら、細胞は、断面縮小領域を通して進行する間、チャネル壁に接触することなく僅かに変形され得る)。加えて、圧搾は、チャネルの物性を変化させる、チャネル壁上に残される細胞膜からの破片/残留物をもたらし得る。断面縮小領域内の秩序化は、細胞/粒子の到着時のチャネル流体抵抗の瞬時の変化によって駆動される。この領域のチャネル幅が、細胞/粒子寸法に近接するため、細胞が、断面縮小領域に到着するとき、チャネル抵抗が、増加する。システム全体が、圧力制御されるため(一定圧力)、これは、流量、したがって、細胞の間隔の瞬時の減少をもたらし得る。断面縮小領域の長さおよび幅は、細胞間の所望される間隔に到達するように調整されることができる。湾曲されたチャネル構造はまた、細胞の単一のz位置への集束を促進し、撮像を促進することができる。チャネル内のディーン流れおよび慣性揚力の影響が、図4Bに概念的に図示される。
【0051】
細胞間の間隔を秩序化し制御する、湾曲されたチャネルと粒子断面縮小領域との具体的な組み合わせが、図4Aおよび4Bに図示されるが、異なる幾何学形状、順序、および/または組み合わせもまた、使用されることができる。他の実施形態では、断面縮小領域は、湾曲されたチャネルを使用することなく集束チャネルから下流に配置されることができる。湾曲されたチャネルの追加は、より迅速かつ制御された秩序化、ならびに粒子が下流に移動するにつれてそれらが単一の側方位置を辿る可能性の増加を促進する。容易に理解され得るように、秩序化領域の具体的な構成は、主として所与の用途の要件に基づいて決定される。
細胞回転領域
【0052】
マイクロ流体チャネルは、本発明のいくつかの実施形態に従って、秩序化された細胞に対し回転を加えるように構成されることができる。本発明の多くの実施形態によるマイクロ流体チャネルの細胞回転領域は、粒子を含まない緩衝剤の並行流を使用し、並行流の使用によって細胞回転を誘発し、細胞を横切って差速勾配を印加する。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネルの細胞回転領域は、回転軸が、細胞の下流移動の軸に垂直であり、かつ細胞の側方移動に平行であるように、2層製作プロセスを使用して製作される。細胞は、下流に移動するにつれて、転動かつ回転する間、この領域内で撮像される。これは、細胞の異なる角度における撮像を可能にし、単一画像またはいかなる有意な程度にも回転していない細胞の一続きの画像に捕捉され得るよりも、細胞特徴に関するより正確な情報を提供する。これはまた、画像を横切る回転の角度が、把握されているため、利用可能なソフトウェアを使用した、細胞の3次元再構成をも可能にする。多くの実施形態では、細胞を横切る速度勾配の同様の変化が、チャネル高(すなわち、マイクロ流体チャネルの横断面と、撮像平面に垂直な寸法との2つの寸法のうちの小さい方である寸法)の変化を提供することによって達成される。チャネル高のこの増加は、幅が、チャネルの高さを上回り続けるようであるべきである。また、チャネル高を増加させる場合、細胞集束位置の高さ寸法に、シフトが、存在し得、これは、撮像および撮像焦点面の調製の間、考慮されるべきである。
【0053】
本発明の実施形態による、撮像領域以前に注入される並行流を組み込むマイクロ流体チャネルの細胞回転領域が、図5Aおよび5Bに図示される。図示される実施形態では、細胞を回転させるために、並行流が、(撮像平面に垂直である)z平面内に導入される。撮像が、x−y平面内で行われるため、y軸に平行な軸の周囲の細胞の回転が、以前の画像内で閉塞され得た細胞の部分を各後続画像で見えるように回転させることによって付加的な情報を提供する。点xにおけるチャネル寸法の変化に起因して、速度勾配が、細胞を横切って印加され、細胞を回転させ得る。細胞の角速度は、チャネルおよび細胞の寸法と、Q1(主要チャネル流量)とQ2(並行流流量)との間の比率とに依存し、所与の用途の要件に適切であるように構成されることができる。多くの実施形態では、細胞回転領域は、マイクロ流体チャネルの1つの寸法の増加を組み込み、細胞を横切る速度勾配の変更を開始し、細胞に対し回転を加える。本発明の実施形態に従って、撮像領域以前のマイクロ流体チャネルの横断面のz軸寸法の増加を組み込むマイクロ流体チャネルの細胞回転領域が、図5Cに図示される。チャネル高の変化は、マイクロ流体チャネルのz軸で細胞を横切る速度勾配で変更を開始し得、図5Aおよび5B内の並行流を使用することと同様に細胞を回転させることができる。図5Cに図示される細胞回転領域と同様の細胞回転領域を組み込むマイクロ流体チャネルの撮像領域内で捕捉される回転する棒形状粒子からのビデオのオーバレイ画像が、図5Dに図示される。
【0054】
細胞上に速度勾配を加えるための具体的な技術が、図5A−5Dを参照して上記に説明されているが、種々の技術の任意のものが、回転を細胞の単一の流線上に加えるために、本発明の種々の実施形態に従って、具体的な用途の要件に適切であるように、利用されることができる。
撮像および分類
【0055】
種々の技術が、本発明の種々の実施形態に従って、細胞学的分類システムによって捕捉される細胞の画像を分類するために利用されることができる。いくつかの実施形態では、撮像が、1秒あたり約100,000枚程度の非常に高いフレームレートで捕捉され、分類が、リアルタイムで実施される。血液中の細胞は、明白に異なる形態的特性を有するため、本発明の種々の実施形態による細胞学的分類システムを使用して異なる角度から個々の細胞を撮像するための能力は、多種多様な分類子および/または他の応用が、開発され、血液中の異なる細胞タイプ識別することができることを意味する。画像分析ソフトウェアを使用して、異なる細胞タイプが、分類され得る。
【0056】
本発明は、ある具体的な側面において説明されているが、多くの付加的な修正および変形例が、当業者に明白となるであろう。したがって、本発明は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、具体的に説明される以外の方法で実践され得ることを理解されたい。したがって、本発明の実施形態は、全ての点で例証であり、制限的なものではないと見なされるべきである。故に、本発明の範囲は、図示された実施形態だけではなく添付された請求項およびその均等物によって決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】