【実施例】
【0064】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0065】
〔実施例1〕 PM-Qプローブ発現ベクターの構築
すべての実験において、MilliQ (ミリポア)にて精製し、オートクレーブにより滅菌処理した水を用いた。以下、滅菌水と表記する。通常の試薬を特に表記のあるもの以外は、シグマ、ナカライテスク、和光純薬、関東化学のものを使用した。
【0066】
プロテインM(
図1)の残基番号78-468をコードする遺伝子配列(配列番号2)を合成した(Eurofin Genomics)。これを発現ベクターpET32a (Novagen)に挿入するため、合成配列と発現ベクターをそれぞれ制限酵素NcoIとNotIで切断し、常法に従いライゲーション、形質転換とアンピシリン培地での選択を行った。得られたコロニーを培養し、プラスミドを抽出して挿入配列を持つものを選択した。
【0067】
次に、プロテインMのC末端にリンカーを介してシステイン(Cys)残基を持つタグ配列を挿入するため、以下の操作を行った。なお、抗原結合に影響が考えられるC末端側ドメインを削ったもの(以後PMdと呼ぶ)も作製した。PMdおよびPMのC末側に(SGGG)
2Cを挿入するため、プライマーDeltaC_SGGG2C_back (5'-GAGAACTATTATCCCTCAGGTGGAGGGAGCGGC-3'、配列番号3)あるいはC-term_SGGG2C_back (5'-CTGAAACGTGCGGCCTCAGGTGGAGGGAGCGGC-3'、配列番号4)とSGGG2For(5'-TGCTCGAGTGCGGCCGTTATTAACAACCTCCGCCGCTCCCTCCACC-3'、配列番号5)のペアと、KOD-Plus-Neo ポリメラーゼ(Toyobo)を用いて、まず94℃で2分間インキュベートしDNAを変性させた。その後、94℃ 30秒、55℃30秒、68℃1分の反応を30サイクル行い、増幅断片をSmaI-NotIあるいはNotIで切断したベクターとIn-Fusion HD cloning kit (Clontech, 宝バイオ)を用いて接続させた。これらをT7 terminatorプライマー(5'-CTAGTTATTGCTCAGCGGTG-3'、配列番号6)を用いて配列を確認し、それぞれpET32-PMdQならびにpET32-PM-Qとした。
【0068】
〔実施例2〕 PM-Qプローブ発現ベクター中のチオレドキシンからのCys残基除去
pET32は、タンパク質の可溶性を向上させるためチオレドキシン(以下Trx)がN末に融合した形でタンパク質が発現されるよう設計されている。しかし、Trx中には蛍光色素修飾される可能性のあるCys残基が2個(残基番号33および36)隣接して存在するため、これらをそれぞれセリン(Ser)に変異させた。プライマーTrxMutCS2-top (5'-GGGCAGAGTGGTCCGGACCGTCCAAAATGATCGCC-3'、配列番号7)とTrxMutCS2-bottom (5'-GGCGATCATTTTGGACGGTCCGGACCACTCTGCCC-3'、配列番号8)を用いてQuikChange mutagenesis kit (Stratagene, Agilent)を用いて変異導入をおこない、T7promoterプライマー (5'-TAATACGACTCACTATAGGG-3'、配列番号9)を用いて配列を確認した。この作業をpET32-PMdQおよびpET32-PM-Qについて行い、それぞれpET32d-PMdQおよびpET32d-PM-Qを得た。
【0069】
〔実施例3〕 融合タンパク質の発現と精製
pET32-PMdQ、pET32-PM-Q、pET32dC-PMdQ及びpET32dC-PM-Qを用いて、大腸菌 SHuffle T7 lysYを形質転換した。その後、プラスミドを保持した大腸菌を100 mLのLBA培地(10 g/L トリプトン、5g/L 酵母、5g/L NaCl、100 μg/mLアンピシリン)で30℃でOD
600が0.6となるまで培養した後、0.4 mM となるようIPTGを添加し、16℃でさらに16時間培養した。遠心分離によって集菌した。10 mlのExtraction buffer(50 mM リン酸ナトリウム, 300 mM 塩化ナトリウム, pH 7.0)に懸濁した大腸菌を菌体破砕装置One Shot Disruptor, Constant Systems)によって破砕した後、1000 g、20分遠心を行い、上清を集め、固定化金属アフィニティクロマトグラフィーにより精製を行った。具体的には適量のTALON (Clontech社,宝バイオ)アガロースゲルを上清に加えて、30分間撹拌した。その後ゲルをカラムに移して10 mlのExtraction bufferで3回洗浄を行い、2.5 mLの150 mMイミダゾールを含むExtraction bufferを用いてゲルに結合したタンパク質を溶出した。SDS-PAGEによって分析を行った結果を
図4に示す。想定された分子量のバンドが確認された。Nanosep Centrifugal-3k Ultrafltration Device (Pall)を用いて緩衝液をPBST(PBS+0.05% Tween20)に変更・濃縮し、終濃度15%のグリセリンを加えて-80℃で分注、保存した。なお、C末端側ドメインを含まないpET32dC-PM-Q及びpET32dC-PMdQの発現産物に比べ、C末端側ドメインを含むpET32-PM-Q及びpET32-PMdQの発現産物の方が、収量が高く、安定的に発現させることができた。
【0070】
〔実施例4〕 融合タンパク質の蛍光色素標識
精製タンパク質75μgに対し、まずCys残基の還元のため等量のImmobilized TCEP gel (Thermo)で室温30分処理した。遠心し上清を回収した後、20倍モル量のマレイミド色素を加え、遮光して4℃2時間、ゆっくりと回転させながらタンパク質中のCysと色素マレイミドを反応させた。なお色素としては5(6)TAMRA-C6 (AAT Bioquest)、 5(6)TAMRA-C5 (Biotium)、 ATTO520-C2(ATTO-Tech)を用いた。反応後、Nanosep限外ろ過膜(Pall)を用いて500 μLのPBSTで3回遠心洗浄を行い、未反応色素を除去した。さらに必要に応じてTALONあるいはHis SpinTrapカラム(GE Healthcare)を用いて更に精製し、色素を完全に除去した。最後にNanosep 限外ろ過膜を用いて緩衝液をPBSTに変更・濃縮し、終濃度15%のグリセリンを加えて-25℃で分注、保存した。なお、これらの蛍光標識タンパク質の濃度は、既知濃度のTAMRA色素を同時に用いて蛍光分光光度計(日本分光 FP-8500)を用いて545 nmで励起し、580 nm付近のピーク波長で蛍光強度の測定を行い、それらを比較し決定した。
【0071】
〔実施例5〕 蛍光測定
このようにして得られた蛍光標識プローブ(以下PMdQ, PM-Q, dPMdQ, dPM-Qと記す)を250μLのPBSTで希釈し、蛍光分光光度計で540 nmで励起し580 nm付近の蛍光強度を測定した(
図5)。測定開始30分後に、終濃度10 nMの抗BGP Fab断片(2-10μL)を加えたところ、その後数分にわたり蛍光強度の減少が観察された。これに対し、Fabの代わりにPBSTを加えた場合には顕著な減少は見られなかった。抗BGP Fab断片を加えた後、更に抗原(BGP-C7)を加えたところ、PMdQを用いた場合を除き、蛍光強度の増加が観察された。抗BGP Fab断片存在下、及び抗BGP Fab断片と抗原存在下における蛍光強度の測定結果を
図6に示す。
【0072】
次に、dPM-Qに抗BGP Fab断片を加えたサンプルに対し、更に抗原濃度が3、10、30、100、300、1000 nMになるよう各10 μLの抗原溶液、あるいは各10 μLのPBSTを段階的に加え、蛍光強度変化を測定した(
図7)。さらにこれを抗原投入時の蛍光強度で規格化し、抗原投入の有無での比として表したところ(
図9)、標識プローブとFabの混合物(複合体)への抗原添加により、蛍光強度が増加したことがわかる。すなわち、本標識プローブが、Fabと結合してQ-bodyとしての性質を示しうる事が明らかとなった。
【0073】
なお、抗BGP FabとしてはN末に修飾用のタグ配列を持たないKTM-219由来のV
H/V
Lを持ち、ヒトIgG1由来のCH1/Ckを持つもの(Dong et al., J. Biosci. Bioeng. 122, 125-130, 2016)を文献の方法で調製して用いた。
【0074】
〔実施例6〕 全長抗体を用いた抗原検出
10 nMの蛍光標識プローブ(ATTO520-C2又はTAMRA C5で標識されたdPM-Q)に5 nMの抗オステオカルシン全長抗体(KTM219 IgG)を加え、更に1μMの抗原(BGP-C7)を加えた。抗体添加前、抗体添加後、及び抗原添加後に、励起光を照射し、蛍光強度の測定を行った。この結果を
図10に示す。
【0075】
ATTO520-C2、TAMRA C5のいずれの蛍光色素を用いた場合も、抗体の添加により蛍光強度が減少し(ATTO520-C2:27%減少、TAMRA C5:38%減少)、抗原の添加により蛍光強度が増加した(ATTO520-C2:10%増加、TAMRA C5:13%増加)。この結果から、本発明の蛍光標識プローブは、抗体の断片だけでなく、全長抗体に対しても、抗原を検出可能な複合体を形成できることが明らかとなった。
【0076】
〔実施例7〕 全長ヒトBGPの測定
5 nMの蛍光標識プローブ(TAMRA-C5又はTAMRA-C6で標識されたdPM-Q)に5 nMの抗BGP Fab断片を加えた。これに種々の濃度の全長(49アミノ酸)ヒトBGPを抗原として加え、蛍光強度変化を測定した。全長ヒトBGPの抗原濃度は、3、10、30、100、300、又は1000 nMとし、添加量は10μLとした。また、抗原溶液の代わりに等量のPBSTを加え、同様に蛍光強度変化を測定した。この結果を
図11及び
図12に示す。
【0077】
これらの図に示すように、蛍光強度は、全長ヒトBGPの濃度に依存して上昇した。この結果から、本標識プローブにより、7アミノ酸からなるBGP-C7だけでなく、分子量の大きい(約6 kDa)全長ヒトBGPも測定できることがわかった。また、TAMRA-C5で標識した場合(
図11)よりも、TAMRA-C6で標識した場合(
図12)の方が、応答がよく、より高感度で全長ヒトBGPを測定できると考えられる。
【0078】
〔実施例8〕 pET32-PMEGFPの構築
I 実験方法
1.1 実験材料
本実施例で用いた滅菌水は全て、Milli Q水製造装置(Millipore)で精製したのち、オートクレーブで滅菌処理した水(Milli Q水)を用いた。オリゴヌクレオチドは、ユーロフィンジェノミクスに合成依頼したものを使用した。制限酵素はNew England Biolabs JapanまたはTakaraから購入した。
【0079】
1.1.1 オリゴヌクレオチド
使用したオリゴヌクレオチドの塩基配列を以下に示す。
PM_AgeFor : 5’-CCGGTGGCCGCACGTTTCAGGATTTC-3’(配列番号10)
pET_EagBack : 5’-GGCCGCACTCGAGCACCAC-3’ (配列番号11)
GSCGS_For : 5’-ACCGCCGCTGCCTCCACCACAACCTCCGCCGCTCCCTCC-3’(配列番号12)
Age_P2GSCGS_Back : 5’-ACGTGCGGCCACCGGTCCACCTGGAGGGAGCGGCGGA -3’(配列番号13)
EGFP_Back : 5’-GGAGGCAGCGGCGGTGGATCGATGGTGAGCAAGGGCGAGG-3’ (配列番号14)
EGFP_XhoI_For : 5’-GGTGGTGGTGCTCGAGCTTG-3’ (配列番号15)
【0080】
1.1.2 大腸菌
使用した大腸菌を以下に示す。
XL10-Gold (Kan
r): Tet
r, Δ(mcrA)183, Δ(mcrCB-hsdSMR-mrr)173, endA1, supE44, thi-1, recA1, gyrA96, relA1, lac, Hte, [F', proAB, lacI
qZΔM15, Tn10 (Tet
r), Tn5 (Kan
r), Amy]
大腸菌の培養にはLB培地をオートクレーブ滅菌した後、抗生物質を添加した。抗生物質として100 μg/mLアンピシリン (Amp)または50 μg/mLカナマイシン(Km)となるよう調製した。
【0081】
1.2 pET32-PMEGFPの構築
pET32-PMEGFP(
図13)の構築には、三宅千絢氏によって構築されたプラスミドであるpET32-PM(
図14)をベクターとして用いた。pET32-PM を鋳型としてプライマーPM_AgeFor及びpET_EagBackを用いてPCRで増幅し、精製した。インサートは、EGFP及びリンカーの2種類を用意した。前者はpET32-VL(HEL)-EGFP(
図15)を鋳型としてプライマーEGFP_Back及びEGFP_XhoI_Forを用いてPCRで増幅し、精製した。後者は塩基数が少ないため鋳型を用いず、プライマーGSCGS_For及びAge_P2GSCGS_Backを用いてPCRで増幅し、精製した。
増幅した3つのDNA断片をそれぞれアガロースゲル電気泳動と切り出し精製によって取得した。次に2つのインサート同士を鋳型としてEGFP_XhoI_For 及びAge_P2GSCGS_Back でoverlap PCRを行った。これについてもPCR後にアガロースゲル電気泳動と切り出し精製を行った。最後にベクターとインサートをIn-fusion反応によって融合させた。プラスミドの構築概略について
図16に示す。得られたプラスミドを用いてXL10-Goldへのトランスフォーメーションを行い、培養後にプラスミドを抽出し、プラスミドのシークエンスを解析した。
【0082】
II 結果・考察
pET-PMをPCRで増幅した後のアガロースゲル電気泳動結果を
図17に示す。この結果より、目的のベクターの取得が確認できた。また、EGFP及びリンカーをそれぞれPCRで増幅し、両者をoverlap PCRで増幅した後のアガロースゲル電気泳動結果を
図18に示す。コントロールとして置いたEGFPのみのバンドよりも大きい分子量のDNAが確認できた。ベクターとインサートのIn-fusion反応による融合で得られたpET32-PMEGFPのシークエンス解析結果を配列番号16に示す。この結果より、pET32-PMEGFPの取得を確認した。
【0083】
〔実施例9〕 PMEGFPプローブの作製及び評価
1.1 実験手順
1.1.1 タンパク質発現
タンパク質発現用大腸菌SHuffle T7 Express LysY 20 μL (BioLabs)に目的プラスミドを1 μL加え、42℃で1分ヒートショックを行った。1分間氷上静置した後、SOC培地200 μLを加え、30℃でインキュベートした。その後、培地のうち20 μLをLBA寒天培地に播種し、30℃で一晩培養した。翌日、単一コロニーを4 mL LBA液体培地に植菌し、30℃で一晩振盪培養した。培養した大腸菌4 mL全量をLBA 液体培地400 mLを加え30℃でOD = 0.6〜0.8となるまで培養し、タンパク質発現誘導を行うためにIPTGを0.4 mMとなるよう添加した。そして16℃で一晩振盪培養し、タンパク質を発現させた。
【0084】
1.1.2 His-tagによるタンパク質精製
本実施例で使用したプラスミドにはHis×6が含まれている。この配列を認識してHis-tag融合タンパク質を精製するため、TALON(登録商標) Metal Affinity Resin (Clontech)を用いた固定化金属アフィニティ精製 (IMAC) を行った。手順を以下に示す。
1) 振盪培養した大腸菌培養液を500 mLチューブに200 mLずつ分注し、4℃, 5000 Gで20分遠心し、上清を除く。
2) ペレットをPhophate buffer (+NaCl) (以後PBと表記) 5 mLで懸濁させ、フレンチプレス(Constant Systems Ltd.)で細胞破砕する。
3) 4℃, 8000 Gで10分遠心し、上清を回収する。
4) ここでTALON(登録商標) Metal Affinity Resinビーズ(Clontech) 200 μL (bed volume:100μL) を用意する。ビーズを1.5mLチューブに移して4℃ , 100Gで遠心後、上清を捨てる。PBを500 μL添加、遠心、上清除去を3回繰り返し、ビーズを洗浄する。
5) 3)の上清に4)のビーズを加え、小型ロータリーミキサーNRC-20D (NISSIN)を用いて室温で1時間回転させる。
6) 4℃, 100 Gで1分間遠心し、上清を除く。
7) TALON(登録商標) 2mL Disposable Gravity Column (Takara) にビーズを移し、上清を排出する。
8) His Spin Trap binding buffer 500 μLの添加を3回繰り返し、ビーズを洗浄する。
9) His Spin Trap elution buffer を200 μL加えて目的タンパク質を溶出させ、1.5 mLチューブに回収する。
【0085】
1.1.3 illustra
TM Microspin
TM G-25 ColumnsによるBuffer交換
溶出バッファーに含まれるイミダゾールはタンパク質を失活させるおそれがあり、サンプルの長期保存に適していない。また、この後に行う蛍光色素修飾においても目的タンパク質の溶出にイミダゾールを用いるため、この時点でイミダゾールを除かなければならない。そこで、illustra
TM Microspin
TM G-25 Columns (GE Healthcare)を用いてタンパク精製後のバッファーをPBSへと交換した。手順を以下に示す。
1) カラム内を再懸濁後、下蓋を除き、上蓋を緩ませた状態で2 mLチューブにセットし、735 G、室温で1 分間遠心する。遠心後、保存液を捨てる。
2) PBS 200 μLを加えて再度懸濁させ、735 G、室温で1 分間遠心する。遠心後、洗浄液を捨てる。
3) カラムを1.5 mLチューブにセットし、サンプル約200 μLを加えて、735 G、室温で1 分間遠心する。遠心後のサンプルを回収する。
【表1】
【0086】
1.1.4 SDS-PAGE
精製したタンパク質が目的物かどうかを確認するため、SDS-PAGEを行った。まず、タンパク質を1〜2 μgになるよう調整し、DTTを加えたのち、95℃で5分間加熱し変性させた。その後、ウェルにタンパク質溶液をアプライし、電気泳動させた。電気泳動後の染色はCoomassie Brilliant Blue (CBB)によって行った。具体的には、固定液、染色液、MilliQ水の順にそれぞれ30分ほど振盪浸漬した。
【0087】
1.1.5 蛍光色素標識
得られたタンパク質に蛍光色素を修飾した。本実施例では5(6)-TAMRA C6-maleimide (AAT Bioquest)を蛍光色素として用いた。この蛍光色素をタンパク質と混合することで、タンパク質内に存在するCys残基と蛍光色素がマレイミド-チオール反応を起こし、結合する。
【0088】
タンパク質0.5 nmolにTCEPを2.5 mMとなるよう添加し30分室温で回転させることで、Cys残基の還元反応を行った。次に、4-Azidobenzoic Acid (Tokyo CHEM. INDU.)を10 mMとなるよう添加し、氷上で10分静置後、5(6)-TAMRA C6-maleimideを50 μMとなるよう添加し、遮光した状態で2時間回転させた。反応後、His Spin Trapカラム (GE Fealthcare)を用いてタンパク質精製を行い、未反応の蛍光色素を除去した。手順を以下に示す。
1) カラム内の溶液を懸濁後、2 mLチューブに入れて、4℃, 100Gで30秒遠心し濾液を除去する。
2) カラムにbinding buffer 600 μLを加えて4℃, 100Gで30秒遠心し、濾液を除去する。
3) タンパク質溶液を加え、4℃, 100Gで30秒遠心し、濾液を除去する。
4) binding buffer 600 μLを加えて4℃, 100Gで30秒遠心し、濾液を除去する。この作業はwash用であり、これを10回繰り返すことで未反応の蛍光色素を可能な限り除去する。
5) 1.5 mLチューブにカラムを入れ、elution bufferを200 μL加え、タッピングを挟みながら5分間氷上で静置する
6) 4℃, 100Gで30秒遠心してタンパク質を溶出させる。
溶出後のタンパク質濃度はSDS-PAGEで測定した。
【0089】
1.1.6 蛍光測定
蛍光測定にはFP-8500 分光蛍光光度計(日本分光)を用いた。蛍光色素や蛍光タンパク質に適する励起波長を照射し、得られる蛍光の強度変化を測定した。以下に測定条件を示す。
温度 : 25 ℃
励起バンド幅 : 5 nm
蛍光バンド幅 : 5 nm
走査速度 : 500 nm / min
レスポンス : 2 sec
感度 : High
励起波長、測定波長 : 各々の実験で記述
【0090】
タンパク質プローブを光路長5×5 mm の石英マイクロセル 4本に250 μLずつ加えた。また、同時にスターラーもマイクロセルに入れ攪拌させることで、測定中の溶液の均一化を図った。4本のうち3本には、さらに抗体もしくはFab断片、抗原を順に添加し、それぞれ添加後に蛍光測定した。残り1本はこれらを添加する代わりに同溶液量のPBSTを加えてコントロールとして測定し、希釈や蛍光色素の褪色による蛍光強度の変化を確認した。また、マイクロセルに各溶液を添加後、20分以上経過してから測定を行った。
【0091】
1.2 各プローブのタンパク質発現及び蛍光色素修飾
pET32-PMEGFPをSHuffle T7 Express lysYに形質転換し、培養後にTalonビーズを用いたIMAC精製を行った。その後、蛍光色素TAMRA-C6を各プローブに修飾し、SDS-PAGEにて確認した。
【0092】
1.3 各プローブのBGPペプチドを用いた蛍光測定
TAMRA-C6を修飾した各プローブ を5 nMとなるようPBSTで希釈し、セルに入れて蛍光測定した。その後、マウスヒトキメラ(可変領域はマウス由来だが定常領域はヒトIgG1由来配列のもの)あるいはマウス型の抗BGP抗体Fab断片(BGP Fab)、BGP-C7を順に加え、それぞれ添加20分後に測定した。励起波長は460 nm、蛍光波長は500-600 nmとした。これにより、用意した3つのプローブについて蛍光強度変化の比較を行った。
【0093】
II 実験結果・考察
2.1 各プローブのタンパク質発現及び蛍光色素修飾
蛍光標識したPM-EGFP (約90 kDa)のSDS-PAGEの結果を
図19に示す。この結果より、プローブの取得を確認した。
【0094】
2.2 各プローブのBGPペプチドを用いた蛍光測定
TAMRA-C6を修飾した各プローブの蛍光測定の結果を
図20〜22に示す。
図20及び
図21には、プローブとしてプロテインMを使用した場合の結果が示されており、
図22にはプローブとしてEGFP結合プロテインMを使用した場合の結果が示されている。
【0095】
図22に示すように、EGFP結合プロテインMを使用した場合においても、プロテインMを使用した場合と同様、580nm付近(TAMRA-C6の蛍光波長)での消光(Fab断片添加時)及び消光の解除(抗原添加時)が確認された。一方、EGFPの蛍光波長である515nm付近では、抗原添加時において、FRETによる蛍光強度の低下が観察された。
【0096】
Fab断片としてマウスヒトキメラ抗BGP抗体Fab断片(
図20及び
図22)とマウス型抗BGP抗体Fab断片(
図21)を使用したが、マウス型抗BGP抗体Fab断片を添加した場合は、マウスヒトキメラ抗BGP抗体Fab断片を添加した場合ほど、蛍光強度は低下しなかった。
【0097】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。