(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983435
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】自己結紮歯列矯正ブラケット組立体
(51)【国際特許分類】
A61C 7/16 20060101AFI20211206BHJP
A61C 7/28 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
A61C7/16
A61C7/28
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-174403(P2020-174403)
(22)【出願日】2020年10月16日
(65)【公開番号】特開2021-176473(P2021-176473A)
(43)【公開日】2021年11月11日
【審査請求日】2020年10月26日
(31)【優先権主張番号】10-2020-0054830
(32)【優先日】2020年5月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520404193
【氏名又は名称】ジーエヌアイ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドグ ス
【審査官】
土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−500053(JP,A)
【文献】
特表2019−510611(JP,A)
【文献】
特開2006−320726(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0081936(US,A1)
【文献】
国際公開第2009/057937(WO,A2)
【文献】
韓国公開特許第10−2019−0008708(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジンによって歯牙表面に付着されてアーチワイヤ(W)を選択的に結紮又は結紮解除する自己結紮歯列矯正ブラケット組立体であって、
歯牙表面に対応する曲面形状の底面を有するベース(110)、アーチワイヤ(W)が着座される着座溝(140)が形成された陷沒型のスライド部(131)を前記ベース(110)の上側前方に形成するように、前記ベース(110)の上側前方の左右側に備えられた一対のガイド壁(130、130)、及び前記ベース(110)の上側後方に形成されて前記スライド部(131)を仕上げるストッパー壁(120)を一体的に含む本体ブロック(100)と、
前記着座溝(140)にスライド可能に挿入及び着座された前記アーチワイヤ(W)を着座状態で選択的に結紮するか又は結紮解除するように、前記スライド部(131)にスライド可能に結合され、底面から上方に陷沒して形成された結合溝(250)及び前記結合溝(250)の一側端部から一定距離だけ離れて段差を形成するように上方に陷沒して形成されたガイド溝(260)を有する結紮ブロック(200)と、
前記スライド部(131)上に連続的に形成された仮組立突起(135)及び完組立突起(137)、及び前記仮組立突起(135)及び前記完組立突起(137)と共同して前記アーチワイヤ(W)を選択的に結紮及び結紮解除するリテーナー(300)を含む結紮手段とを備え、
前記リテーナー(300)は中央に固定孔(330)が形成された中空の四角板状に形成され、前記固定孔(330)の一側のストッパー片(350)が前記結合溝(250)に結合固定され、前記固定孔(330)の他側の係止遊動片(310)は中央の分割孔(320)によって一対に分割され、
前記結紮ブロック(200)が前記スライド部(131)上でスライドしながら前進するとき、前記係止遊動片(310)は前記ガイド溝(260)側に弾性的に変形及び復元しながら前記仮組立突起(135)及び前記完組立突起(137)を順次越え、
前記ベース(110)の底面は、縁部(111)と、前記縁部(111)の内側中央に形成された中央陷沒部(112)と、前記縁部(111)の内側の外郭に形成され、前記中央陷沒部(112)とともに二重段差構造を形成する外郭陷沒部(113)と、前記中央陷沒部(112)の底面又は前記外郭陷沒部(113)の底面から突出した複数の接合突部(114、115、116、117、118)とを含み、
前記複数の接合突部(114、115、116、117、118)は、4個の直線部が90度で交わる一つ以上の十字形接合突部(114)と、3個の直線部が90度で交わる一つ以上のT形接合突部(115)と、2個の直線部がおよそ90度で交わる一つ以上のL形接合突部(116)とを含み、
前記ベース(110)の底面と歯牙表面との間のレジンのうち中央領域のレジンが外郭領域のレジンより少なく圧縮されるように、前記中央陷沒部(112)の陷沒深さは前記外郭陷沒部(113)の陷沒深さより大きいことを特徴とする、自己結紮歯列矯正ブラケット組立体。
【請求項2】
前記リテーナー(300)を覆った状態で前記結紮ブロック(200)の下面に付着され、前記結紮ブロック(200)が前記スライド部(131)にスライド可能に結合されるまで前記リテーナー(300)を前記結紮ブロック(200)の下面に付着状態で維持させる接着フィルム(2)をさらに備え、
前記スライド部(131)には、前記リテーナー(300)が組み立てられた前記結紮ブロック(200)が前記スライド部(131)上でスライドするとき、前記接着フィルム(2)を長手方向にカットするカットエッジ(3)が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の自己結紮歯列矯正ブラケット組立体。
【請求項3】
前記十字形接合突部(114)、前記T形接合突部(115)及び前記L形接合突部(116)のそれぞれは二つの直線部が交わる領域に内側交差角部及び外側交差角部が形成され、前記十字形接合突部(114)、前記T形接合突部(115)及び前記L形接合突部(116)のそれぞれは、底面に形成されたままで前記内側交差角部(7)と前記中央陷沒部(112)又は前記外郭陷沒部(113)の底面が交わる点付近に隣接するように形成されたレジン排出口(9)まで連結されたレジン流入孔(8)を含み、前記縁部(111)には、前記縁部(111)の外側面から前記縁部(111)の内側面まで連結されるようにレジン流出入通路(6)がさらに形成されることを特徴とする、請求項1に記載の自己結紮歯列矯正ブラケット組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己結紮歯列矯正ブラケット組立体に関するもので、より詳しくは結紮が容易であり、調整要求の際、簡便に結紮状態を解除した後、再び結紮させることができ、また本体ブロックのベースと歯牙表面との間に最適量のレジンが均一な分布で十分に介在され、堅牢に歯牙に付着されることができる歯列矯正ブラケット組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上顎及び下顎の歯牙が一様ではないか正常にかみ合わない状態を不正咬合と言う。不正咬合の場合、外観が良くないだけでなく、機能的にも飲食物をよく噛むことを妨げ、発音に悪い影響を及ぼす。さらに、不正咬合をずっと放置すれば、虫歯又は歯茎疾患を引き起こし、身体の他の部分にも悪影響を及ぼして様々な他の疾病を引き起こすか悪化させることができる。
【0003】
このような不正咬合の治療のために歯列矯正術を用いる。歯列矯正術は、歯列矯正器を用いて不規則的に配列された歯牙に持続的な力を加えることにより、歯牙を所望の位置に少しずつ動かして歯牙の配列を正常にする矯正方法を言う。歯列矯正器は、歯牙の表面に直接付着されるブラケット(bracket)と、ブラケットに結合されて歯牙に所定の圧力又は張力を提供するアーチワイヤ(archwire)とを含む。歯列矯正のために、前記アーチワイヤに加わる圧力及び張力とその方向を多様に調節することができ、その調節された圧力及び張力とその方向によって前記対象の歯牙を徐々に移動させることができるものである。
【0004】
図1は通常的な歯列矯正方法を説明するための概念図であり、歯牙の矯正方式を全体的に示す。
図1に基づき、近来一般的に行われている歯列矯正方式を説明する。
【0005】
まず、歯牙矯正の対象となる対象歯牙10を中心として、対象歯牙10の表面にはブラケット20が付着されている。
【0006】
前記ブラケット20はアーチワイヤ30によって連結され、前記対象歯牙10に対して持続的な張力を与えるために、アーチワイヤ30に弾性部32を形成するか、輪ゴム40を用いて張力の方向を調整することもできる。
【0007】
また、前記弾性部32は、アーチワイヤ30の一部をU字形、P字形、R字形などの多様な形状に曲げることによって形成することができ、固定点(fixed point)と歯牙10との間に微細な張力又はねじり(torsion)を付与することにより、歯牙10の位置を移動させることができ、歯牙10の姿勢を変更させることができる。
【0008】
一方、歯列矯正を進めているうち、アーチワイヤ30は固定点(fixed point)に連結されており、所定の圧力及び張力を提供するアーチワイヤ30によって前記ブラケット20及び歯牙10が微細に移動するようになる。
【0009】
ここで、歯牙10が動く方向に歯牙10を取り囲んでいる骨の骨組職は徐々に吸収され、反対側では新しい骨組職が形成されて空間を満たすようになる。
【0010】
このように、骨細胞の消滅及び生成の過程が繰り返され、その過程で前記対象歯牙10が微細に移動するのに従い、歯牙が徐々に矯正される。
【0011】
前記のような矯正方式で行われる歯列矯正は前述したような生物学的治療を伴うものなので、その治療に長期間、概して2年前後を必要とすると知られている。
【0012】
一方、前記のように歯列矯正に長期間を必要とする反面、他人との対話の際に対象歯牙の表面に付着されたブラケット20が外部に現れるので、従来の金属ブラケットは徐々になくなり、透明な素材のブラケットを好んでいる趨勢である。
【0013】
最近、歯列矯正過程でアーチワイヤを上から覆って外部から観察されないようにする自己結紮歯列矯正ブラケットが紹介されたことがある。
【0014】
前記のようなブラケットは外部からアーチワイヤがよく観察されなくて美的満足感を付与する利点があるが、歯牙の矯正状態によって、前記アーチワイヤの位置を異にするか、アーチワイヤの引張力を異にするか、他の必要によって、前記アーチワイヤを補修しなければならない場合、操作しにくい問題があった。したがって、アーチワイヤの結紮が容易であるとともに、アーチワイヤの最初結紮又は調整が必要であるとき、簡便に結紮状態を解除した後、再び結紮させることができ、これにより歯列矯正治療及び手術の効率性をもっと向上させることができるようにした自己結紮歯列矯正用ブラケット組立体に対する研究及び開発が要求される実情である。
【0015】
一方、自己結紮歯列矯正ブラケット組立体は、歯列矯正を行っているうち歯牙の表面から易しく脱落されてはいけない。また、歯列矯正が完了した後には、歯列矯正ブラケット組立体が歯牙の表面を損傷させずに歯牙の表面から容易に分離されなければならない。歯列矯正中に歯列矯正ブラケット組立体が歯牙の表面によく付いているためには、最適量の接着用レジンが均一な分布で歯列矯正ブラケット組立体の本体ブロックのベースと歯牙の表面との間に介在されていなければならない。ベースと歯牙表面との間の十分な接合力を得るために、ベースの底面に規則的な一定のパターンの突出部を形成した技術が従来に提案されたことがある。このような従来技術において、突出部は歯牙表面に対応する接合表面を有する。そして、突出部の下側の陷沒部は歯牙との間にもっと大きな厚さのレジンが介在されることを許す。ところで、突出部は位置によって歯牙表面によって異なる接合条件を有しなければならないが、形状が全部一定であって多様な接合条件や多様な接合環境を満たしにくい。また、ブラケット組立体を歯牙表面から分離するとき、歯牙表面が損傷されないことが良い。ところが、従来には、ベースの底面の外郭は歯牙表面の損傷なしに歯牙表面からよく分離されることができるが、ベースの中央領域では強く圧縮されたレジンが歯牙表面からなかなか分離されないから、無理やりに分離させれば歯牙表面を損傷させる場合が多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2012−0110982号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10−2015−0106403号公報
【特許文献3】韓国公開特許第10−2019−0008708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、結紮が容易であり、本体ブロックのベースと歯牙表面との間に最適量のレジンが均一な分布で十分に介在され、堅牢に歯牙に付着されることができ、歯牙表面の損傷なしに歯牙表面からよく分離されることができる歯列矯正ブラケット組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一側面によって、レジンによって歯牙表面に付着されてアーチワイヤを選択的に結紮又は結紮解除する自己結紮歯列矯正ブラケット組立体が提供される。前記組立体は、歯牙表面に対応する曲面形状の底面を有するベース、アーチワイヤが着座される着座溝が形成された陷沒型スライド部を前記ベースの上側前方に形成するように、前記ベースの上側前方の左右側に備えられた一対のガイド壁、及び前記ベースの上側後方に形成されて前記スライド部を仕上げるストッパー壁を一体的に含む本体ブロックと、前記着座溝にスライド可能に挿入及び着座された前記アーチワイヤを着座状態で選択的に結紮するか又は結紮解除するように、前記スライド部にスライド可能に結合され、底面から上方に陷沒して形成された結合溝及び前記結合溝の一側端部から一定距離だけ離れて段差を形成するように上方に陷沒して形成されたガイド溝を有する結紮ブロックと、前記スライド部上に連続的に形成された仮組立突起及び完組立突起、及び前記仮組立突起及び前記完組立突起と共同して前記アーチワイヤを選択的に結紮及び結紮解除するリテーナーを含む結紮手段とを備え、前記リテーナーは中央に固定孔が形成された中空の四角板状に形成され、前記固定孔の一側のストッパー片が前記結合溝に結合固定され、前記固定孔の他側係止遊動片は中央の分割孔によって一対に分割され、前記結紮ブロックが前記スライド部上でスライドしながら前進するとき、前記係止遊動片は前記ガイド溝側に弾性的に変形及び復元しながら前記仮組立突起及び完組立突起を順次越え、前記ベースの底面は、縁部と、前記縁部の内側中央に形成された中央陷沒部と、前記縁部の内側の外郭に形成され、中央陷沒部とともに二重段差構造を形成する外郭陷沒部と、前記中央陷沒部の底面又は前記外郭陷沒部の底面から突出した複数の接合突部とを含み、前記複数の接合突部は、4個の直線部が90度で交わる一つ以上の十字形接合突部と、3個の直線部が90度で交わる一つ以上のT形接合突部と、2個の直線部がおよそ90度で交わる一つ以上のL形接合突部とを含み、前記ベースの底面と歯牙表面との間のレジンのうち中央領域のレジンが外郭領域のレジンより少なく圧縮されるように、前記中央陷沒部の陷沒深さは前記外郭陷沒部の陷沒深さより大きい。
【0019】
一実施例によって、前記リテーナーを覆った状態で前記結紮ブロックの下面に付着され、前記結紮ブロックが前記スライド部にスライド可能に結合されるまで前記リテーナーを前記結紮ブロックの下面に付着状態で維持させる接着フィルムをさらに備え、前記スライド部には、前記リテーナーが組み立てられた前記結紮ブロックが前記スライド部上でスライドするとき、前記接着フィルムを長手方向にカットするカットエッジが形成される。
【0020】
一実施例によって、前記十字形接合突部、前記T形接合突部及び前記L形接合突部のそれぞれは二つの直線部が交わる領域に内側交差角部及び外側交差角部が形成され、前記十字形接合突部、前記T形接合突部及び前記L形接合突部のそれぞれは、底面に形成されたままで前記内側交差角部と前記中央陷沒部又は前記外郭陷沒部の底面が交わる点付近に隣接するように形成されたレジン排出口まで連結されたレジン流入孔を含み、前記縁部には、前記縁部の外側面から前記縁部の内側面まで連結されるようにレジン流出入通路がさらに形成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体は、本体ブロックのベースと歯牙表面との間に最適量のレジンが均一な分布で十分に介在され、堅牢に歯牙に付着されることができ、歯牙表面の損傷なしに歯牙表面からよく分離されることができる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】通常的な歯列矯正方法を説明するための概念図である。
【
図2】本発明の一実施例による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体の自己結紮中の状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施例による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体の自己結紮完了状態を示す断面図である。
【
図4】自己結紮歯列矯正ブラケット組立体の結紮ブロックとリテーナーを分解して示す分解図である。
【
図6】本発明の一実施例による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体をベースの底面が見えるように示す底面斜視図である。
【
図7】本発明の一実施例による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に基づいて本発明による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体の好適な実施例を詳細に説明する。
【0024】
図2は本発明の一実施例による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体の自己結紮中の状態を示す断面図、
図3は本発明の一実施例による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体の自己結紮完了状態を示す断面図、
図4は自己結紮歯列矯正ブラケット組立体の結紮ブロックとリテーナーを分解して示す分解図、
図5は
図4に示したリテーナーの平面図、
図6は本発明の一実施例による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体をベースの底面が見えるように示す底面斜視図、
図7は本発明の一実施例による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体の底面図である。
【0025】
図2〜
図7に示すように、本発明の一実施例による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体は、歯列矯正の際に、歯牙表面に付着され、アーチワイヤWを選択的に結紮又は結紮解除することができるようにするものであり、本体ブロック100と、結紮ブロック200と、結紮手段とを含む。
【0026】
ここで、前記本体ブロック100は、接着性レジン(又は接着剤)によって歯牙表面に付着され、歯牙の配列方向にアーチワイヤWが着座できるように歯牙表面に対応する曲面形状の底面を有するベース110と、一つの陷沒型スライド部131を前記ベース110の上側前方に形成するように、前記ベース110の上側前方の左右側に備えられた一対のガイド壁130(一つのみ図示)と、前記ベース110の上側後方に形成されて前記スライド部131を仕上げるストッパー壁120とを一体的に含む。詳細に示されてはいないが、前記一対のガイド壁130、130の内面には前後方向に沿ってレール溝が形成されることができる。また、前記一対のガイド壁130、130及び前記スライド部131を含む上側前方構造物と前記ストッパー壁120との間には、正方形又は長方形断面を有するアーチワイヤWが着座される着座溝140が形成される。
【0027】
一方、前記結紮ブロック200は、前記着座溝140にスライド可能に挿入及び着座された前記アーチワイヤWを着座状態で選択的に結紮するか又は結紮解除するように、前記スライド部131にスライド可能に結合される。前記結紮ブロック200の上面は前記ガイド壁130の上端内側角面に対応する形状を有し、前記結紮ブロック200が前記一対のガイド壁130、130の内側のスライド部131に完全に型合してアーチワイヤWを結紮させたときには、前記結紮ブロック200の上部球面と前記本体ブロック100の外側球面が合致してより大きな球面を形成することができる。前記結紮ブロック200の両側面は前記一対のガイド壁130の内側面にスライド可能に接する平面からなる。
【0028】
一方、前記結紮手段は、前記結紮ブロック200のスライド結合の際、順次的な仮組立、完組立及び完組立解除の過程により、前記本体ブロック100に対して選択的に前記結紮ブロック200が前記アーチワイヤWを結紮又は結紮解除するように構成される。本実施例で、前記結紮手段は、仮組立突起135と、完組立突起137と、リテーナー300とを含むことが好ましい。
【0029】
具体的に、前記仮組立突起135と前記完組立突起137は前記本体ブロック100のスライド部131上に一定の間隔で突設される。
【0030】
また、前記リテーナー300は前記結紮ブロック200の下部から上方に結合固定され、一端を基準に他端が弾性的に上下に変形してから復元しながら前記仮組立突起135と完組立突起137を順次越えて係止された後、選択的に前記完組立突起137を越えて仮組立突起135に係止されることにより、前記アーチワイヤWを選択的に結紮及び結紮解除することができる。
【0031】
前述したような構成を有する本発明による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体において、特に前記結紮ブロック200は前記本体ブロック100の上部にスライド結合され、前記リテーナー300が下部から上方に結合固定され、一端を基準に他端が弾性的に上下に変形及び復元するようにすることが重要である。
【0032】
このために、前記結紮ブロック200は底面から上方に陷沒して結合溝250が形成され、前記結合溝250の一側端部から一定距離だけ離れて段差を形成するように、ガイド溝260が上方に陷沒して形成されることが好ましい。
【0033】
一方、前記リテーナー300は、中央に固定孔330が形成された中空の四角板として提供され、前記固定孔330の一側ストッパー片350が前記結合溝250の段差側に結合固定され、前記固定孔330の他側の係止遊動片310は前記結合溝250の段差側の反対側に結合固定され、このような結合固定は締まりばめ方式で結合固定されることが好ましい。
【0034】
言い換えれば、前記のような固定孔330の一側と他側にそれぞれストッパー片350と係止遊動片310が備えられるリテーナー300は、前記係止遊動片310が選択的に前記ガイド溝260側に弾性的に変形及び復元しながら前記仮組立突起135と完組立突起137を順次越えるように構成される。
【0035】
前記リテーナー300が前記結合溝250に締まりばめ方式で挿入されて組み立てられるが、前記リテーナー300が組み立てられた前記結紮ブロック200が前記本体ブロック100のスライド部131にスライド可能に結合されるまでは前記リテーナー300が離脱するおそれがある。前記結紮ブロック200が前記スライド部131にスライド可能に結合され、前記一対のガイド壁130に形成されたレール溝に前記結紮ブロック200の側面のレール突部がスライド可能に挿入された状態では前記リテーナー300が離脱するおそれがない。したがって、本実施例では、前記結紮ブロック200が前記スライド部131にスライド可能に結合されるまで前記リテーナー300を前記結紮ブロック200の下面に付着状態で維持させる接着フィルム2を備える。前記接着フィルム2は前記リテーナー300を覆った状態で前記結紮ブロック200の下面に付着されて前記リテーナー300を前記結紮ブロック200の結合溝250に一層確かに維持させる。一方、スライド部131にはカットエッジ3が形成され、前記リテーナー300が組み立てられた前記結紮ブロック200が前記スライド部131上でスライドするとき、前記接着フィルム2を長手方向にカットして前記リテーナー300が前述したようなリテーナー300の本来の役割をすることができるようにする。2片に分割された接着フィルム2は容易に除去可能な状態となる。
【0036】
前述したような構成を有する本発明による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体において、特に前記仮組立突起135は、前記本体ブロック100に対する前記結紮ブロック200のスライド結合によるアーチワイヤWの結紮のためのスライドの際、前記リテーナー300の係止遊動片310が越えるように案内するとともに、前記結紮ブロック200の結紮解除のために逆にスライドさせるとき、前記リテーナー300の係止遊動片310が係止されるようにすることが重要である。
【0037】
したがって、前記仮組立突起135は、一側に傾斜面部135aが形成され、他側には垂直面部135bが形成されることが好ましい。
【0038】
また、前記完組立突起137は、前記本体ブロック100に対する前記結紮ブロック200のスライド結合によるアーチワイヤWの結紮及び結紮解除のためのスライドの際、前記リテーナー300の係止遊動片310が越えることを案内するように両側に傾斜面部137a、137bが形成されることが好ましい。
【0039】
このような完組立突起137は、特に前記係止遊動片310が越えた後に係止される側の前記傾斜面部137aがその反対側の傾斜面部137bより大きな傾きを有するように斜めに形成されることが好ましく、これにより、前記係止遊動片310が越えた後、前記傾斜面部137aによって係止される係止遊動片310は一定の荷重以上の力を加えるときにのみ逆方向に前記係止遊動片310が越えていくことができるようになる。
【0040】
一方、前記のような本発明による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体の前記リテーナー300の係止遊動片310は中央に所定長さにわたって分割孔320が形成されて一対に分割されることが好ましい。
【0041】
すなわち、前記係止遊動片310の中央に所定長さにわたって分割孔320が形成されて一対に分割されることにより、前記仮組立突起135と完組立突起137に対して前記リテーナー300の係止遊動片310が越える過程で小さな力のみでも弾性的な変形及び復元が可能である。前述したスライドの際、前記分割孔320により、前記カットエッジ3と前記リテーナー300との間には衝突や干渉が発生しない。
【0042】
さらに、前述したような構成を有する本発明による自己結紮歯列矯正ブラケット組立体は、前記本体ブロック100が歯牙表面に付着されるとき、堅固に付着されることが重要である。
【0043】
したがって、前記本体ブロック100は、歯牙表面への付着の際に付着面積が増大するように、前記本体ブロック100の歯牙表面に対する接合面、すなわち前記ベース110の底面は歯牙表面に対応する曲面を有する。
【0044】
一方、接着性を有するレジン(又は接着剤)により、前記自己結紮歯列矯正ブラケット組立体の本体ブロック100が歯牙表面に付着される。本体ブロック100の下部、より具体的にはベース110の底面は、縁部111と、前記縁部111の内側中央に形成された中央陷沒部112と、前記縁部111の内側の外郭、すなわち前記縁部111と前記中央陷沒部112との間に形成された外郭陷沒部113とを含む。前記中央陷沒部112と前記外郭陷沒部113が前記ベース110の底面に二重段差構造を形成する。
【0045】
前記中央陷沒部112の陷沒深さは前記外郭陷沒部113の陷沒深さより大きい。前記ベース110の底面と歯牙表面との間にレジンを介在させて自己結紮歯列矯正ブラケット組立体を歯牙表面に付着するに際して、自己結紮歯列矯正ブラケット組立体を歯牙表面に対して加圧することにより、ベース110の底面と歯牙表面との間のレジンが圧縮され、陷沒深さが最大である中央陷沒部112でレジンが最も小さく圧縮される。
【0046】
二重段差構造を適用しなければ、ベースの外郭領域で歯牙表面との付着強度が低くてこの部分で歯牙表面から取り外されるおそれが高く、一方、中央領域では歯牙表面との付着強度が不必要に高くなり、自己結紮歯列矯正ブラケット組立体を歯牙表面から分離しようとするとき、歯牙表面を損傷させることになる。
【0047】
しかし、本実施例によれば、中央陷沒部112ではレジンが少なく圧縮されて付着強度が相対的に低下し、一方、外郭陷沒部113ではレジンがもっと圧縮されて付着強度が相対的に高くなることにより、ベース110の底面全領域にわたって歯牙表面に対する付着強度がより均一になることができる。
【0048】
また、前記ベース110の底面は、前記縁部111の内側に位置し、前記中央陷沒部112の底面又は前記外郭陷沒部113の底面から突出した複数の接合突部114、115、116、117、118を含む。前記複数の接合突部114、115、116、117、118のそれぞれは歯牙表面に相応する接合表面を有し、接合突部114、115、116、117、118の接合表面と歯牙表面との間にレジンが介在される。前述したように、前記縁部111の底面と歯牙表面との間にもレジンが介在される。
【0049】
既存には、歯牙表面の曲面形態にかかわらず、同じ形態(パターン)を有する接合突部がベースの底面に一定のパターンに規則的に形成されるので、むしろ均一な付着強度を得ることが難しかった。本発明によれば、歯牙表面の条件などの多様な条件に応じて均一な付着強度を得ることができるように、多様な形状(パターン)を有する接合突部114、115、116、117、118が多様な条件に応じて非規則的にベース110の底面に提供される。
【0050】
本実施例で、前記複数の接合突部114、115、116、117、118は、4個の直線部がおよそ90度で交わる一つ以上の十字形接合突部114と、3個の直線部がおよそ90度で交わる一つ以上のT形接合突部115と、2個の直線部がおよそ90度で交わる一つ以上のL形接合突部116と、1個の直線部のみからなる一つ以上のI形接合突部117と、円形又は正方形の断面を有するドット形接合突部118とを含む。十字形接合突部114は、4個の直線部によって同じ面積に4分割された領域にレジンが均一に分布されるので、付着条件が相対的に均一な領域でレジンを均一に分布させるのに非常に有利である。直線部が90度ではない他の角度で交わる接合突部もあり得るが、この場合、二つの直線部間の角度が90度を超える領域では問題がないが、二つの直線部間の角度が90度未満の領域が発生し、この領域ではレジンの表面張力によって直線部が交わるコーナー付近までレジンが十分に供給されにくいので不利である。T形接合突部115とL形接合突部116は十字形接合突部114を適用しにくい領域に提供することができる。T形接合突部115とL形接合突部116も直線部が交わる角度が90度に決定され、これもレジンがコーナーまで均一に供給されるようにするためのものである。I形接合突部117とドット形接合突部118は補完的に適用されるものであり、省略することができる。
【0051】
十字形接合突部114、T形接合突部115及びL形接合突部116のような直交型接合突部は二つの直線部が交わる領域に内側交差角部7と外側交差角部が形成される。ここで、前記内側交差角部7が前記中央陷沒部112の底面又は前記外郭陷沒部113の底面と交わるコーナー領域までレジンが円滑に供給されにくい。よって、十字形接合突部114、T形接合突部115及びL形接合突部116のような直交型接合突部の底面、すなわち接合領域にはレジン流入孔8が形成され、前記レジン流入孔8は前記内側交差角部7と前記中央又は外郭陷沒部112及び/又は113の底面が交わる点付近に隣接するように形成されたレジン排出口9まで連結されている。前記本体ブロック100のベース110がレジンによって歯牙表面に付着されるとき、十字形接合突部114、T形接合突部115及びL形接合突部116の底面、すなわち接合表面と歯牙表面との間に介在されていたレジンが前記レジン流入孔8を通して流入し、前記レジン排出口9を通して前記内側交差角部7と前記中央及び/又は外郭陷沒部112及び/又は113の底面が交わるコーナー付近に供給されることにより、形状のためレジンの供給が容易でなかったコーナー領域にまでレジンを円滑に供給することが可能である。また、前記レジン流入孔8はベース110と歯牙表面との間の付着力を高める役割をすることができる。
【0052】
また、前記縁部111の外側面から前記縁部111の内側面まで連結されるレジン流出入通路6がさらに形成される。前記レジン流出入通路6は、前記本体ブロック100のベース110を歯牙表面に付着するとき、前記レジン流出入通路6を通してレジンが流出するかどうかを確認することができるようにする。レジン流出がある場合、レジン供給量が十分であると判断する。ただ、レジン流出がない場合、レジン量が十分ではないものなので、前記レジン流出入通路6を通してレジンを補充することができる。前記ベース110の領域を前記レジン流出入通路6に隣接している領域とその反対側の領域とに分けて見るとき、前記レジン流出入通路6に隣接している領域の接合突部114、115、116、117、118の密度が低いことが好ましい。これはレジンが円滑に補充されることを助ける。また、前記レジン流出入通路6に最も隣接した外郭陷沒部113の深さが残りの外郭陷沒部113の深さより大きく、前記レジン流出入通路6の反対側の外郭陷沒部113の深さが最も小さいことが好ましい。
【0053】
以上で本発明の具体的な実施例を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって多様な変形実施が可能であり、このような変形は本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0054】
2 接着フィルム
3 カットエッジ
6 レジン流出入通路
8 レジン流入孔
9 レジン排出口
100 本体ブロック
110 ベース
111 縁部
112 中央陷沒部
113 外郭陷沒部
114、115、116、117、118 接合突部
300 リテーナー
310 係止遊動片
320 分割孔
330 固定孔
350 ストッパー片
W アーチワイヤ