特許第6983471号(P6983471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンプトン ローズ サニテーション ディストリクトの特許一覧 ▶ ディー.シー ウォーター アンド ソウアー オーソリティーの特許一覧

特許6983471外部選別を用いる排水処理の方法および装置
<>
  • 特許6983471-外部選別を用いる排水処理の方法および装置 図000002
  • 特許6983471-外部選別を用いる排水処理の方法および装置 図000003
  • 特許6983471-外部選別を用いる排水処理の方法および装置 図000004
  • 特許6983471-外部選別を用いる排水処理の方法および装置 図000005
  • 特許6983471-外部選別を用いる排水処理の方法および装置 図000006
  • 特許6983471-外部選別を用いる排水処理の方法および装置 図000007
  • 特許6983471-外部選別を用いる排水処理の方法および装置 図000008
  • 特許6983471-外部選別を用いる排水処理の方法および装置 図000009
  • 特許6983471-外部選別を用いる排水処理の方法および装置 図000010
  • 特許6983471-外部選別を用いる排水処理の方法および装置 図000011
  • 特許6983471-外部選別を用いる排水処理の方法および装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983471
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】外部選別を用いる排水処理の方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/30 20060101AFI20211206BHJP
   B03B 5/28 20060101ALI20211206BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20211206BHJP
   C02F 11/12 20190101ALI20211206BHJP
【FI】
   C02F3/30 A
   C02F3/30 C
   B03B5/28 A
   B03B5/28 B
   C02F3/34 101B
   C02F11/12
【請求項の数】30
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-575761(P2016-575761)
(86)(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公表番号】特表2017-519630(P2017-519630A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】US2015038620
(87)【国際公開番号】WO2016004082
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2017年1月27日
【審判番号】不服2019-5905(P2019-5905/J1)
【審判請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】62/019,210
(32)【優先日】2014年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515069794
【氏名又は名称】ハンプトン ローズ サニテーション ディストリクト
(73)【特許権者】
【識別番号】515143326
【氏名又は名称】ディー.シー ウォーター アンド ソウアー オーソリティー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ウェット、ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ボット、チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ムールティー、サディアー
(72)【発明者】
【氏名】ディクリッペレイア、ヘイディー
【合議体】
【審判長】 日比野 隆治
【審判官】 末松 佳記
【審判官】 後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−501845号公報(JP,A)
【文献】 特開昭58−104696号公報(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0000836号明細書(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F3/12
C02F3/28-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物排水処理装置であって、
排水と再循環バイオマスとを混合することでバイオマス廃棄流を排出する生物反応器であって、
前記バイオマス廃棄流中には顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体が含まれており、
この顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体は、基質および電子受容体が前記バイオマス廃棄流の他の部分よりも高い濃度で含まれ、嫌気性核とこの嫌気性核の外側に好気性層とを有するコアシェル様構造を有するものであり、これによりフロック(floc)およびフィラメント(filament)形成よりも顆粒形成を促進するバイオマス機能を奏するものである、
前記生物反応器と、
前記生物反応器から排出されるバイオマス廃棄流を受け取ることができるように配置された分離装置であって、前記バイオマス廃棄流は前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を含むものである、前記分離装置と、
前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を含む沈殿流を前記分離装置から移送するポンプおよび移送路と、
液体サイクロンまたはスクリーン装置を有する外部選別装置であって、前記分離装置から移送された前記沈殿流を受け取り、前記沈殿流に作用して前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を回収するとともに、前記沈殿流中のフロックおよびフィラメントを廃棄するように構成されているものである、前記外部選別装置と、
返送活性汚泥(RAS)流を供給するように配置された返送活性汚泥(RAS)用ポンプおよびポンプ流出流路であって、返送活性汚泥(RAS)流は前記回収された前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を含むものである、前記返送活性汚泥(RAS)用ポンプおよびポンプ流出流路と、
を有し、
前記外部選別装置は、前記生物反応器内における顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体のさらなる形成のために、前記再循環バイオマスとして、前記回収された顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を前記返送活性汚泥(RAS)用ポンプおよび前記ポンプ流出流移送路を介して前記生物反応器に返送するように作動するものである、
生物排水処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の生物排水処理装置において、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体は、当該バイオマスの凝集体内にポリリン酸蓄積細菌が存在する場合、当該ポリリン酸蓄積細菌が、リンを細胞内にポリリン酸として蓄積することでリンが回収および除去されるものである、生物排水処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の生物排水処理装置において、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体のコアシェル様構造は、さらに、無酸素性核を有するものであって、前記嫌気性核およびこの無酸素性核により特定の微生物のためのニッチ環境の形成進されるものである、生物排水処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の生物排水処理装置において、前記ニッチ環境により、好気性および脱窒ポリリン酸蓄積細菌、グリコーゲン蓄積、脱窒無酸素メタン酸化剤、脱窒生物硫黄または硫化物酸化、およびメタン産生を含む、生物脱リンのための特定の微生物の成長が促進されるものである、生物排水処理装置。
【請求項5】
請求項1記載の生物排水処理装置において、前記顆粒状または高密度化した凝集体によって行われる生物的処理により、脱リンが達成されるものである、
生物排水処理装置。
【請求項6】
請求項1記載の生物排水処理装置において、
前記生物反応器において好気性ゾーンの前段階として、リンを除去するための無酸素性ゾーンを有し、
前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体は、硝酸塩が核内へ侵入する物質移動に対する抵抗を提供するものである、
生物排水処理装置。
【請求項7】
請求項1記載の生物排水処理装置において、前記外部選別装置は、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリリン酸塩、無機リン含有鉱物またはアルギネートを前記バイオマス廃棄流から回収するものである、生物排水処理装置。
【請求項8】
生物排水処理方法であって、
生物反応器内で排水と再循環バイオマスとを混合することでバイオマス廃棄流を生成する工程であって、
前記バイオマス廃棄流中には顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体が含まれており、
この顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体は基質および高電子受容体が前記バイオマス廃棄流の他の部分よりも高い濃度で含まれ、嫌気性核とこの嫌気性核の外側に好気性層とを有するコアシェル様構造を有するものであり、これによりフロックおよびフィラメント形成よりも顆粒形成を促進するバイオマス機能を奏するものである、
前記生成する工程と、
前記生物反応器から前記バイオマス廃棄流を排出する工程であって、前記バイオマス廃棄流は前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を含むものである、前記排出する工程と、
前記生物反応器から排出された前記バイオマス廃棄流を分離装置に供給する工程と、
前記分離装置から沈殿流を分離して、分離された沈殿流を外部選別装置に供給する工程であって、
前記外部選別装置は、液体サイクロンまたはスクリーン装置を有するものであり、
前記分離された沈殿流は、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を含むものである、前記供給する工程と、
前記外部選別装置を前記沈殿流に作用させて、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を回収する工程と、
前記再循環バイオマスとして前記回収された顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を前記外部選別装置から前記生物反応器に返送する工程と、
前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体よりも軽量のフロックおよびフィラメントを前記外部選別装置から廃棄する工程と、
前記分離装置から返送活性汚泥(RAS)流を前記生物反応器に返送する工程であって、当該返送活性汚泥(RAS)流は前記外部選別装置によって回収された顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を含むものである、前記返送する工程と
を有する、方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、さらに、
前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体内にポリリン酸蓄積細菌が存在する場合、当該ポリリン酸蓄積細菌が、リンを細胞内にポリリン酸として蓄積することでリンを回収および除去する工程を有するものである、方法。
【請求項10】
請求項8記載の方法において、さらに、
前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体内における電子受容体および基質の濃度を前記バイオマス廃棄流の他の部分よりも高めるために、前記外部選別装置から前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を前記再循環バイオマスとして前記生物反応器に供給する工程を有し、これにより、特定の微生物のためのニッチ環境を形成する、前記コアシェル様構造の前記嫌気性核とともに無酸素性核が生成されるものである、方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記ニッチ環境により、好気性および脱窒ポリリン酸蓄積細菌、グリコーゲン蓄積、脱窒無酸素メタン酸化剤、脱窒生物硫黄または硫化物酸化、およびメタン産生を含む、生物脱リンのための特定の微生物の成長が促進されるものである、方法。
【請求項12】
請求項8記載の方法において、さらに、
前記生物反応器において好気性ゾーンの前段階として、リンを除去し、前記顆粒状または高密度化したバイオマス内に凝集体構造を促進する無酸素性処理装置または無酸素性ゾーンを提供する工程を有し、
前記無酸素性生物処理装置または無酸素性ゾーンにより、硝酸塩が核内へ侵入する物質移動に対する抵抗が提供されるものである、方法。
【請求項13】
請求項8記載の方法において、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を分離する工程は、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリリン酸塩、無機リン含有鉱物またはアルギネートを回収する外部重量選別工程を有するものである、方法。
【請求項14】
請求項1記載の生物排水処理装置において、前記生物反応器は、顆粒形成の核となる粒状物質を受け取るものであり、前記顆粒は前記核となる粒子状物質を包み込むバイオマスを有するものである、生物排水処理装置。
【請求項15】
請求項1記載の生物排水処理装置において、前記外部選別装置は、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体内における電子受容体および基質の濃度を前記バイオマス廃棄流の他の部分よりも高めるために、前記沈殿流に作用するものであってこれにより特定の微生物のためのニッチ環境を形成する、前記コアシェル様構造の前記嫌気性核とともに無酸素性核生成されるものである、生物排水処理装置。
【請求項16】
請求項1記載の生物排水処理装置において、前記外部選別装置は、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体内における電子受容体および基質の濃度を前記バイオマス廃棄流の他の部分よりも高めるために、前記沈殿流に作用するものであり、これによりニッチ環境全体にわたって基質または代謝物の近接移動を可能とするものである、生物排水処理装置。
【請求項17】
請求項1記載の生物排水処理装置において、前記外部選別装置は、前記バイオマス廃棄流に作用して沈殿したリンの回収および除去を促進するものである、生物排水処理装置。
【請求項18】
請求項1記載の生物排水処理装置において、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体は、生物脱リン、脱窒メタン酸化剤、生物硫黄または硫化物酸化、または、メタン産生のために選択される微生物を有するものである生物排水処理装置。
【請求項19】
生物排水処理装置であって、
排水と再循環バイオマスとを混合することでバイオマス廃棄流を生成する生物反応器であって、前記バイオマス廃棄流中には顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体が含まれており、この顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体は基質および電子受容体が前記バイオマス廃棄流の他の部分よりも高い濃度で含まれ、さらに、嫌気性核とこの嫌気性核の外側に好気性層とを有するコアシェル様構造を有するものであってこれによりフロックおよびフィラメントの形成よりも顆粒形成を促進するバイオマス機能を奏するものである、前記生物反応器と、
前記生物反応器に連結され、前記生物反応器から排出される前記バイオマス廃棄流を受け取って前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を含む沈殿流を排出する分離装置と、
前記分離装置に連結され、前記沈殿流を受け取るポンプおよび移送路と、
液体サイクロンまたはスクリーン装置を有する外部選別装置であって、前記沈殿流を受け取ることができるように配置され、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を回収するように構成されているものである、前記外部選別装置と、
前記分離装置から前記生物反応器に返送活性汚泥(RAS)を返送するように配置された返送活性汚泥(RAS)用移送路であって、前記返送活性汚泥(RAS)は前記外部選別装置によって回収された前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を含むものである、前記返送活性汚泥(RAS)用移送路と、
を有し、
前記生物反応器は、顆粒形成の核となる粒子状物質を受け取るものであり、前記顆粒は前記核となる粒子状物質を包み込むバイオマスを有するものである、
生物排水処理装置。
【請求項20】
請求項19記載の生物排水処理装置において、前記粒子状物質は、灰、藻類、植物の種、アルギネート、スツルバイト、または固形物リン酸カルシウムを有するものである、生物排水処理装置。
【請求項21】
請求項19記載の生物排水処理装置において、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体は、当該バイオマスの凝集体内にポリリン酸蓄積細菌が存在する場合、当該ポリリン酸蓄積細菌が、リンを細胞内にポリリン酸として蓄積することでリンが回収および除去されるものである、生物排水処理装置。
【請求項22】
請求項19記載の生物排水処理装置において、前記外部選別装置は、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体内における電子受容体および基質の濃度を前記バイオマス廃棄流の他の部分よりも高めるために、前記沈殿流に作用するものであってこれにより特定の微生物のためのニッチ環境を形成する、前記コアシェル様構造の前記嫌気性核とともに無酸素性核生成されるものである、生物排水処理装置。
【請求項23】
請求項22記載の生物排水処理装置において、前記ニッチ環境により、好気性および脱窒ポリリン酸蓄積細菌、グリコーゲン蓄積、脱窒無酸素メタン酸化剤、脱窒生物硫黄または硫化物酸化、およびメタン産生を含む、生物脱リンのための微生物の成長が促進されるものである、生物排水処理装置。
【請求項24】
請求項22記載の生物排水処理装置において、さらに、
前記生物反応器において好気性ゾーンの前段階として、リンを除去するための無酸素性ゾーンを有し、
前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体は、硝酸塩が核内へ侵入する物質移動に対する抵抗を提供するものである、生物排水処理装置。
【請求項25】
請求項19記載の生物排水処理装置において、前記外部選別装置は、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリリン酸塩、無機リン含有鉱物またはアルギネートを回収するものである、生物排水処理装置。
【請求項26】
請求項8記載の方法において、前記外部選別装置を前記分離された沈殿流に作用させて、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体を回収する工程は、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体内にポリリン酸蓄積細菌が存在する場合、当該ポリリン酸蓄積細菌が、リンを細胞内にポリリン酸として蓄積することでリンを回収および除去する工程を有するものである、方法。
【請求項27】
請求項8記載の方法において、前記外部選別装置を前記沈殿流に作用させる工程は、前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体内における電子受容体および基質の濃度を前記バイオマス廃棄流の他の部分よりも高めるために、前記沈殿流に作用させる工程を有し、当該方法は、さらに、
前記顆粒状または高密度化したバイオマスの凝集体内に特定の微生物のためのニッチ環境を形成する、前記コアシェル様構造の前記嫌気性核とともに無酸素性核を生成する工程を有するものである、方法。
【請求項28】
請求項8載の方法において、さらに、
前記ニッチ環境により、好気性および脱窒ポリリン酸蓄積細菌、グリコーゲン蓄積、脱窒無酸素メタン酸化剤、脱窒生物硫黄または硫化物酸化、およびメタン産生を含む、生物脱リンのための微生物の成長が促進されるものである、方法。
【請求項29】
請求項27記載の方法において、さらに、
硝酸塩が核内へ侵入する物質移動に対する抵抗を提供する工程と、
リンを除去するために前記生物反応器において好気性ゾーンの前段階として、無酸素性ゾーンを動作させる工程と
を有する、
方法。
【請求項30】
請求項8記載の方法において、前記スクリーン選別装置は、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリリン酸塩、無機リン含有鉱物またはアルギネートを回収するものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体を参照として本明細書に援用する、2014年6月30日付けで出願された「Method and Apparatus for Wastewater Treatment Using External Gravimetric Selection(外部重量選別を用いる排水処理の方法および装置)」と題する米国仮特許出願第62/019,210号の優先権およびその恩恵を主張する。
【0002】
本開示は、一般的に、排水処理用の方法および装置に関し、特に、サイズ選別または重量選別を用いた排水処理用の方法および装置に関している。
【背景技術】
【0003】
好気性顆粒汚泥処理
排水処理用の顆粒バイオマス工程は、元々、上向流嫌気性汚泥床法(upflow anaerobic sludge blanket process:UASB)等の嫌気性処理に限定されており、その場合、UASBは、特殊製造の上向流反応器を用いて設定される顆粒バイオマスに依存しており、それは発酵微生物、酸生成微生物、酢酸生成微生物、メタン生成微生物を含む数種類の異なる綱に属する微生物の共生成長を可能にするものである。好気性顆粒汚泥法の基礎となる追加の開発が、1997年には既に文献に報告されている(Morgenroth E,Sherden T,van Loosdrecht MCM,Heijnen JJ,Wilderer PA.Aerobic granular sludge in a sequencing batch reactor.Water Res 1997;31:3191−4)。斯かる方法は、綿状バイオマスよりも高密度で粒子径も大きいバイオマスを特徴としており、今日では、逐次回分反応器および上向流カラム反応器または高剪断条件を提供する反応器と関連した特殊製造の反応器で全て達成されている。顆粒バイオマスは約0.1mmから5mmの範囲の粒子径、35〜50mL/g未満の汚泥容量指標(SVI30min)およびSVI30minに類似のSVI5minを有している。同様に、綿状バイオマスの沈降速度は約1m/hであるが、好気性顆粒のそれは10m/h超である。綿状バイオマスと比較した顆粒汚泥の改善された沈降性は、当該開示の方法および装置の重要な特長の1つである。
【0004】
好気性顆粒汚泥の重要な利点の1つは、分離された物理的タンク容量に必要なあらゆる条件下で、顆粒内にニッチ条件を生成できることである。フロックや従来の活性汚泥は拡散抵抗の影響を受ける(Shaw等)が、好気性顆粒汚泥は顆粒の内部および外部の相対拡散抵抗を利用し、物理的タンク構成内ではなく、当該顆粒の内部および外部に、異なる個体群を同時に成長させることができる。好気性顆粒汚泥に関して主張されている利点は、顆粒のサイズの故に基質および電子受容体グラジエントが顆粒内に生じ、その結果、ポリリン酸蓄積細菌(PAO)、グリコーゲン蓄積細菌(GAO)、嫌気性アンモニア酸化細菌(アナモックス)および脱窒性従属栄養細菌は顆粒の中心近くに蓄積するが、好気性細菌は、硝化細菌や好気性従属栄養細菌も含めて、顆粒の外側近くに蓄積することである。
【0005】
斯かる方法の1例が脱リンに関して以下で更に説明される。
【0006】
脱リン
排水の脱リンは、一般的に、鉄塩またはアルミニウム塩を用いた化学的沈殿、あるいは生物脱リンを提供するポリリン酸蓄積細菌の蓄積を可能にする嫌気性選別装置の適用により達成される。斯かる方法はいずれも、本明細書に開示される方法およびシステムと比較して欠点を有している。本明細書記載の方法およびシステムによれば、本式の嫌気性選別装置を必要とせず、化学的沈殿も伴わずに、安定で信頼の置ける脱リンおよび脱窒が達成できる。
【0007】
化学脱リン
沈殿物形成により脱リンするのに使用される化学物質としては、アルミニウム、第三鉄および第二鉄の硫化物または塩化物が挙げられる。斯かる化学物質は、主要浄化の前の生物処理(通常活性汚泥)中に添加してもよいし、あるいは三次浄化処理または濾過処理の前の主要浄化処理中に添加してもよい。次に、沈殿したリンは、主要浄化器を出る固形物流れ、廃棄物バイオマス、三次浄化器の固形物、またはフィルタの逆流廃棄物と一緒に、排水からそれぞれ除去される。斯かる方法の問題点としては、化学物質の購入、アルカリ分の添加を潜在的に必要とする斯かる化学物質の添加によるアルカリ分の消費および更なる化学物質の購入、追加の汚泥の発生、更なる処理および廃棄の必要性等が含まれる。
【0008】
生物脱リン
排水処理の分野においては、生物脱リン(bioP)が公知であり、化学物資の購入コストの減少、アルカリ分の需要および汚泥の発生の点で化学脱リンよりも有利であるが、境界を設定した本式の嫌気性ゾーンの必要性、溶解酸素または窒素の酸化形態(亜硝酸塩および硝酸塩)の汚染のない期間の必要性、揮発性脂肪酸(VFA)濃度の点で適切な排水特性の必要性、および工程の信頼性の低下および混乱が頻繁に発生するという点で欠点を有している。一般的に、bioPは、リン酸塩蓄積細菌(PAOs)の蓄積により達成されるが、斯かる微生物は、リンをポリリン酸塩(poly−P)の形でエネルギー源として保存する。嫌気性条件下で、POAsはpoly−Pからリン酸塩を切断し、リン酸塩をバルク液体に放出し、それによりVFA摂取に必要なエネルギーを獲得する。VFAはポリヒドロキシブチレート(PHB)等の細胞内高分子として貯蔵される。PAOsは、嫌気性条件下でグリコーゲンの分解から還元性当量体も取得する。PAOsは、好気性条件下で、リン酸塩を摂取して細胞内のpoly−Pプールを改質し、蓄えられたPHBを分解し、通常の異化および同化経路を通して成長源およびエネルギー源とする。グリコーゲンも好気性条件下で改質される。従って、bioP処理は、一般的に、綿状バイオマスを図1に概略図で示す代替嫌気性条件および好気性条件に移すことにより達成される。図1は、一般的にA2/O(またはPhoredox)として知られる処理を表すもので、両方のbioPすなわち硝化および脱窒が可能である。斯かる処理に必要なのは、酢酸塩またはより一般的にVFAの形態の適切な分解可能有機材料を有する本式の嫌気性選別装置ゾーンである。
【0009】
VFAとリンの比率が適切であれば、PAOsは嫌気性ゾーンに放出されるリン酸塩および排水中の追加のリン酸塩の全てを取り込むことができ、それによりバイオマス廃棄物を通してリン酸塩の正味の除去が達成できる。図1に示されるA2/O処理に関連する1つの問題点は、戻り活性汚泥(RAS)流に含まれる硝酸塩が嫌気性ゾーンに侵入可能なことであり、これがbioP処理を妨害することが知られている。斯かる開示に関連する別の側面は、一部のPAOsによる脱窒能力であり(dPAO)、それにより硝酸塩が酸素の代わりに電子受容体として機能し、その結果、無酸素ゾーンでリンが取り込まれることである。dPAOによるリンの取り込みは好気性条件下における取り込みよりはるかに緩慢であることが知られているが、斯かる代謝を最大限にする重要な利点は、流入する排水に含まれる同じ有機炭素プールを用いて、bioPと脱窒の両方が達成できることである。bioP処理の限界は、流出全リン限度を首尾一貫して低くするという点で信頼度が低いこと、流入する排水中の適量のVFAの利用可能性に厳密に依存していること等が挙げられる。
【0010】
好気性顆粒バイオマス用の反応器の構成
斯かる反応器の1つが米国特許第5,985,150号明細書(Biothane Systems International B.V.に譲渡されたように見える)に記載されている。この特許において、顆粒汚泥を排水処理に使用して向上した剪断力を提供するエアリフト反応器が開示されている。顆粒汚泥は上向きに流れるガスと共に運ばれて沈降領域に入り、顆粒バイオマス選別処理における相対オーバーフロー率を助けると共に、底流は反応器の通気部分に戻される。
【0011】
米国特許第6,566,119号明細書は、逐次回分反応器によって達成される好気性顆粒汚泥処理を記載しているが、該逐次回分反応器は、優れた沈降特性を有する顆粒バイオマスを選別するために、極めて短い沈降期間およびデカント期間で操作される。
【0012】
米国特許第6,793,822号は、顆粒が例えば(特許文献2)の方法により逐次回分反応器で作られ、拡散バブル通気システムのガス空塔高速度が提供する剪断力で改善された、好気性顆粒汚泥処理を記載している。
【0013】
米国特許出願公開第2006/0032815号明細書は、Royal Haskoning DHVによりフルスケールのNereda(登録)プロセスとして市販されているように見える、好気性顆粒汚泥処理を記載している。この逐次回分反応器による好気性顆粒汚泥処理の特徴は、緩慢に沈降するバイオマス部分をプロセス自体から廃棄し、排水を淀んだ嫌気性の沈降顆粒層を通して上向流として供給する点にある。その結果、PAOおよびGAOが定着している顆粒内にVFAを拡散できる。このプロセスは、次に通気され、硝化/脱窒およびdPAOによる脱窒を同時に達成する。
【0014】
国際公開第2013/151434号は、Royal Haskoning DHVに譲渡されているようにみえるが、活性汚泥処理における沈降性並びに脱窒および脱リンの点で恩恵を得るため、(特許文献4)に開示されているような顆粒汚泥処理から通常の活性汚泥処理等の綿状バイオマス処理へ廃棄バイオマスを移すことを記載している。
【0015】
国際公開第2012/175489号は、米国特許出願公開第2006/0032815号明細書に類似しており、嫌気性条件下で顆粒床を流動化することにより該処理を改善しているように見えるが、通気の前の嫌気性期間中に更なる混合を提供している。
【0016】
国際公開第2008/141413号は、顆粒化並びに脱リンおよび脱窒を促進させるように操作される逐次回分反応器を記載しており、追加される特徴として、嫌気性のリン放出期間後、反応器の内容物の一部を反応器から廃棄し、化学的にリン酸塩を沈殿させている。
【0017】
アナモックス顆粒形成および蓄積のための外部重量選別
米国特許出願公開第2011/0198284号明細書は、顆粒を含む嫌気性アンモニア酸化細菌(アナモックス)の形成および蓄積のために、外部重量選別装置を処理に適用している旨を記載している。この開示において、選別装置は、液体サイクロン、遠心分離機あるいは高オーバーフロー率重力沈降装置のいずれであっても良いように見える。この開示は、主流処理あるいは副流処理のいずれかにおいて、アナモックスバイオマスを選別するにあたり、外部重量選別装置を使用する正当性を証明しているように見える。
【0018】
沈降性改善のための外部重量選別
米国特許出願公開第2014/0144836号明細書は、バイオマスの沈降性を改善するため、浮遊生物処理法において顆粒バイオマスを選別するための外部重量選別装置の使用を記載している。この開示において、選別装置は、液体サイクロン、遠心分離機あるいは高オーバーフロー率重力沈降装置のいずれであっても良いように見える。この開示は、優秀な沈降特性を有するバイオマスを選別するにあたり、外部重量選別装置を使用する正当性を証明しているように見える。
【0019】
スツルバイト沈殿による脱窒および脱リン
スツルバイトは、高レベルのリン酸塩およびアンモニア並びに制限されているが十分量のマグネシウムの故に、嫌気性消化中並びに汚泥配管、脱水設備および汚泥脱水液配管内において頻繁に形成される。低pHがスツルバイトの沈殿を制限する場合が多い。スツルバイトの沈殿および回収は、脱窒および脱リンを達成するのに使用でき、これは、例えば、米国特許第7622047号明細書に記載されているように、マグネシウムおよびアルカリ分を添加する上向流の流動層反応器を用いて行われている。更に、嫌気的に消化された汚泥から過剰のマグネシウムおよびリンを、アルカリ分を添加することにより、あるいは通気して過剰の二酸化炭素を除きpHを上げることにより除去し、その後沈殿したスツルバイトを回収すれば、下流における意図しないスツルバイトの生成およびそれに関連する保守点検の必要性を減らすことができる。
【0020】
選別装置または方法は、重量選別の代わりに、サイズに基づいて選別するフィルタまたはスクリーンであってもよい。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 国際公開第2014/085662号
(特許文献2) 米国特許出願公開第2007/144965号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2010/170845号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2013/196403号明細書
(特許文献5) 国際公開第2013/151434号
(特許文献6) 国際公開第2008/141413号
(特許文献7) 米国特許出願公開第2005/087480号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本開示の観点によれば、特殊目的で製造された反応器で顆粒(granule)汚泥処理を実施することにより、効率的な生物脱リンが達成できることが知られており、更に、バイオマス高密度化および/または顆粒化を達成するため、浮遊生物活性汚泥処理に外部重量選別装置を適用できることも知られており、従って、活性汚泥処理に外部重量選別装置を適用することにより、高密度化または顆粒化を通し、生物脱リンが達成できる、あるいは改善できる。重量選別装置は、液体サイクロン、遠心分離機、重量沈降装置、あるいは密度に基づいて選別可能なあらゆる重量装置であってよい。サイズ選別装置はスクリーン、フィルタまたは膜であってよい。更に、外部選別装置は高密度のバイオマス凝集体および顆粒汚泥の蓄積を提供し、それにより基質および電子受容体の濃度グラジエントが達成され、その結果、顆粒の中心近くにPAO、dPAO等の微生物用の嫌気性空間の蓄積が可能となり、従って、嫌気性選別装置ゾーンおよび好気性選別装置ゾーンを有する意図的に構築されたタンクや時間系列なしに、生物脱リン等の処理を効率的に達成できる。本式の嫌気性ゾーンとは、溶解酸素および酸化形態の窒素の量は最小限であるが、VFAは高濃度であることを意味する。しかし、顆粒の形成および高密度化されたバイオマス凝集体は、嫌気性反応器の区画部の適用と良く適合する。嫌気性の環境を要求する改善された処理は、戻り活性汚泥(RAS)または内部混合液再循環(MLR)流を通して斯かるゾーンに導入される酸素または硝酸塩に余り影響を受けなくなっているからである。
【0022】
本開示の1観点によれば、生物排水処理用の装置が開示される。当該装置は生物的選別装置および物理的選別装置を含んでいる。当該装置は、内部生物反応器であって、該内部生物反応器において排水および再循環バイオマスが組み合わされ、高基質および高電子受容体グラジエントが提供されることにより、フロック(floc)およびフィラメント形成よりも顆粒形成を好む形態学的バイオマス特徴が生成されるものである、前記内部生物反応器と、外部重量選別装置またはサイズ選別装置であって、バイオマス廃棄物の流れに作用し、高密度顆粒選択物またはより大きい顆粒選択物を含む高密度バイオマス凝集体またはより大きいバイオマス凝集体を収集および保持し、より小さいまたは軽量のフィラメントおよびフロックを廃棄するものである、前記外部重量選別装置またはサイズ選別装置と、を含む。
【0023】
重量選別装置は、液体サイクロン、遠心分離機、外部重量沈降装置、または高密度の汚泥凝集体を分離するためのあらゆる重量方法を含んでよい。
【0024】
サイズ選別装置は、大きい汚泥凝集体を分離するためのスクリーン、フィルタまたは膜装置を含んでよい。
【0025】
外部物理的選別装置は、析出したリン、またはポリリン酸蓄積細菌の場合は細胞内ポリリン酸の収集および除去を促進する。
【0026】
重量選別装置は、特定の微生物を成長させるためのニッチ環境を発達させる嫌気性核または無酸素性核を生み出すため、高密度化したバイオマス中に電子受容体および基質グラジエントを促進してもよい。
【0027】
好気性および脱窒ポリリン酸蓄積細菌、グリコーゲン蓄積、脱窒無酸素メタン酸化剤、脱窒生物硫黄または硫化物酸化、およびメタン産生を含む、生物脱リンのための微生物の環境が選択されてよい。
【0028】
高密度化した凝集体が提供する生物的選別により、脱リンを達成するために本式の嫌気性選別装置は必要としないが、本式の嫌気性選別装置を含む場合、脱リン機能および信頼性が更に改善される。
【0029】
前段階の無酸素選別装置または無酸素ゾーンは、脱リンおよびバイオマスの高密度凝集体構造を達成し、硝酸塩が核内へ侵入する物質移動に抵抗するのに十分である。
【0030】
本開示の更なる観点によれば、マグネシウム、カルシウムまたはアルカリ分の補足追加により、あるいは補足追加なしに、重量選別を用いて、スツルバイトまたは固形物リン酸カルシウムの形態で析出したリンを、嫌気的に消化した、または消化しつつある固形物から分離する装置が開示され、その場合、該装置は重量選別装置を含む。重量選別装置は、液体サイクロン、遠心分離機、外部重量沈降装置、または高密度の汚泥凝集体を分離するためのあらゆる重量方法を含んでよい。サイズ選別装置は、スクリーン、フィルタ、膜装置、または大きい凝集体を分離するための他のあらゆる選別方法を含んでよい。
【0031】
外部重量選別装置は、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリリン酸塩、無機リン含有鉱物またはアルギネートを優先的に回収するのに使用してよい。
【0032】
外部サイズ選別装置は、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリリン酸塩、無機リン含有鉱物またはアルギネートを優先的に回収するのに使用してよい。
【0033】
上記装置は、更に、沈降機および通気タンクを含み、内部生物的選別装置は沈降機と通気タンクとの間にある区画部に構築されており、沈降した汚泥は、沈降機から、例えばタンクの底部にある排水管によって、排水が導入される上記選別装置区画部へ再循環され、混合液体は、接触ゾーンである該区画部から、例えばタンクの底部にある配水管へ供給される。
【0034】
本開示の更なる観点によれば、生物的選別装置および物理的選別装置を組み合わせる生物排水処理方法が開示されており、該方法は、内部生物反応器内で排水と再循環バイオマスを混合して、高基質および高電子受容体グラジエントを提供することにより、フロックおよびフィラメント形成よりも顆粒形成を好む形態学的バイオマス特徴を生成する工程と、外部重量選別装置をバイオマス廃棄物の流れに作用させ、高密度顆粒選択物を含む高密度または大きいバイオマス凝集体を収集および保持し、より軽いフィラメントおよびフロックは廃棄する工程と、を含む。
【0035】
上記方法は、析出したリンまたはポリリン酸蓄積細菌の場合は細胞内ポリリン酸の収集および除去を促進するために、外部重量選別を実施する工程を更に含んでよい。
【0036】
上記方法は、更に、特定の微生物を成長させるためのニッチ環境を発達させる嫌気性核または無酸素性核を生み出すため、高密度化したバイオマスまたは大きいバイオマスに電子受容体および基質グラジエントを促進する重量選別処理またはサイズ選別処理を実施する工程を含んでよい。
【0037】
好気性および脱窒ポリリン酸蓄積細菌、グリコーゲン蓄積、脱窒無酸素メタン酸化剤、脱窒生物硫黄または硫化物酸化、およびメタン産生を含む、生物脱リンのための微生物の環境を選択してよい。
【0038】
更なる観点では、マグネシウム、カルシウムまたはアルカリ分の補足追加により、あるいは補足追加なしに、重量選別を用いて、スツルバイトまたは固形物リン酸カルシウムの形態で析出したリンを、嫌気的に消化した、または消化しつつある固形物から分離する方法が開示されている。
【0039】
更なる観点では、生物的選別装置および物理的選別装置を含む生物排水処理装置が開示されており、該装置は、内部生物反応器であって、排水および再循環バイオマスが組み合わされ、高基質および高電子受容体グラジエントが提供されることにより、フロックおよびフィラメント形成よりも顆粒形成を好む形態学的バイオマス特徴が生成されるものである、前記内部生物反応器と、外部スクリーン選別装置であって、バイオマス廃棄流に作用して、非圧縮可能な顆粒選択物を好む前記廃棄流から大きいサイズの汚泥凝集体を収集および保持し、圧縮可能なフィラメントおよびフロックを廃棄するものである、前記外部スクリーン選別装置と、を含む。
【0040】
特定の微生物を成長させるためのニッチ環境を発達させる嫌気性核または無酸素性核を生み出すため、前記形態が、電子受容体および基質グラジエントを促進する。
【0041】
ニッチ環境全体にわたって基質または代謝物の近接移動を可能にするため、前記形態が、電子受容体および基質グラジエントを促進する。
【0042】
上記選別が、析出したリンの収集および除去を促進する。
【0043】
本開示の更なる観点によれば、マグネシウム、カルシウムまたはアルカリ分の補足追加により、あるいは補足追加なしに、外部スクリーン選別装置を通して、スツルバイトまたは固形物リン酸カルシウムの形態で析出したリンを、嫌気的に消化した、または消化しつつある固形物から分離する装置が開示されており、該装置は、非圧縮可能な顆粒選択物を好む廃棄流から大きいサイズの汚泥凝集体を収集および保持し、圧縮可能なフィラメント
およびフロックを廃棄する外部スクリーン選別装置を含んでいる。
【0044】
生物脱リン、脱窒メタン酸化剤、生物硫黄または硫化物酸化、メタン産生のための微生物の環境が選択される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、既知のA2/Oシステムの工程系統図の一例を示す。
図2図2は、本開示の一態様による、液体サイクロン形態の外部重量選別装置を有するA2/Oシステムの一例を示す。
図3図3は、本開示の更なる態様による、液体サイクロン形態の外部重量選別装置を有するMLEシステムの一例を示す。
図4図4は、本開示の更なる態様による、液体サイクロン形態の代替外部重量選別装置を有するMLEシステムの一例を示す。
図5図5は、嫌気性選別装置と液体サイクロン形態の外部重量選別装置を有する、複合一体型浄化器/生物活性汚泥システムの一例を示す。
図6図6は、本開示の原理に基づく、bioPへの液体サイクロン操作の影響および化学的リン沈殿から生物脱リンへの移行の一例を示す。
図7図7は、本開示の原理に基づく、bioPへの液体サイクロン操作の影響、および化学脱リンのための金属添加をゼロ用量へ段階的に減少させる場合の一例を示す。
図8図8は、本開示の原理に基づく、bioPへの液体サイクロン操作の影響の一例を示すもので、活性汚泥バイオマス中のリン含有量は、主流中の混合液揮発性浮遊物質(MLVSS)に2.8%から4.5%の範囲で含まれており、副流処理において1.3%から2.3%の範囲で含まれていることを示している。
図9A図9Aから図9Cは、本開示の外部重量選別装置の代わりにサイズ選別用に含めてもよいスクリーニング装置の、1実施形態における3つの斜視図を示す。
図9B図9Aから図9Cは、本開示の外部重量選別装置の代わりにサイズ選別用に含めてもよいスクリーニング装置の、1実施形態における3つの斜視図を示す。
図9C図9Aから図9Cは、本開示の外部重量選別装置の代わりにサイズ選別用に含めてもよいスクリーニング装置の、1実施形態における3つの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示、その種々の特徴および有利な点の詳細は、添付の図面で記載および/または図示され、以下の記載および添付書類で詳細に記載される非制限的な実施形態および実施例を参考にして、以下に更に詳細に説明される。図面および添付書類で図示される特徴は必ずしも縮尺通りではなく、本明細書で明示されていなくても、当業者は認識しているように、1つの実施形態の特徴は他の実施形態でも利用可能である。本開示の実施形態を不必要に曖昧にしないようにするため、周知の構成要素および処理技術の記載は省略してある。本明細書に使用される実施例は、本開示の実施方法の理解を助け、当業者が本開示の実施形態を実施できるようにするためのみを意図して記載してある。従って、本明細書に記載の実施例および実施形態は、本開示の範囲を制限するように解釈されるべきではない。更に、いくつかの図面全体に亘って、類似の符号は類似の構成部分を示している。
【0047】
本開示で使用される「含めて」、「含んでなる」と言う用語およびそれらの変形は、他に特別な記載がない限り、「限定されないが、含めて」と言う意味である。
【0048】
本開示で使用される不定冠詞(「a」および「an」)並びに定冠詞(「the」)は、他に特別な記載がない限り、「1若しくはそれ以上」を意味する。
【0049】
互いに連通している装置は、他に特別な記載がない限り、互いに連続して連通している必要はない。加えて、互いに連通している装置は、1若しくはそれ以上の中間体を通して、直接または間接に連通していてもよい。
【0050】
処理工程、方法工程、アルゴリズム等は順番に記載されていても、斯かる処理、方法およびアルゴリズムは、異なる順番で機能するように構成可能である。すなわち、順番や工程順が記載されてあったとしても、工程をその順番通りに実施しなければならないと言う意味では必ずしもない。本明細書記載の処理、方法またはアルゴリズムの工程は、実用的な順番で実行してよい。更に、いくつかの工程は同時に実行してもよい。
【0051】
1つの装置または物品が本明細書に記載してあった場合、1つの装置または物品の代わりに、2つ以上の装置または物品が使用可能であることは明白である。同様に、2つ以上の装置または物品が本明細書に記載してあった場合、2つ以上の装置または物品の代わりに、1つの装置または物品が使用可能であることは明白である。1つの装置の機能または特徴は、斯かる機能または特徴を有しているとは明記されていない1若しくはそれ以上の他の装置により置き換えることが可能である。
【0052】
図1は既知のA2/O活性汚泥処理システム100(および処理)の一例を示す。システム100は、主要浄化器110、嫌気性ゾーン120、無酸素ゾーン130、好気性ゾーン140、分離装置または第二浄化器150および複数のポンプ160、170、180を含む。
【0053】
システム100は、前処理(図示しない)を含んでもよく、前処理は、バースクリーン(図示しない)、沈砂除去機(図示しない)、前処理チャンバ(図示しない)および流入水ポンプ(図示しない)を含んでもよい。システム100は、例えば下水システム等の外部源(図示しない)から排水105を受け取り、前処理段階で該排水105を処理し、缶、ぼろ布、棒、プラスチック袋等の大きい物体を排水105から除去してもよい。前処理段階は前処理チャンバ(図示しない)を含んでもよく、該チャンバは流入する排水105の速度を調整するために砂チャンバまたは沈砂チャンバを含んでもよく、それにより砂、沈砂、石、破損ガラス等の沈降を可能にしてもよい。前処理段階は、脂肪や脂質等を除去するタンク(図示しない)を更に含んでもよい。
【0054】
前処理段階(図示しない)後、残った固形物/液体混合物105は、蓄積固形物を有する過剰の排水を含んでいるが、重力沈降のために主要浄化器110に送られてもよい。主要浄化器110は、例えば長方形、円錐形、円形、楕円形等の種々の形状のうちの1つを有するタンク(例えば浄化器タンク、堆積物タンク等)を含んでもよい。主要浄化器110は、固形物除去を改善するため、化学素材またはバラスト素材を有していてもよい。その結果得られる底流(underflow)は、主要浄化器110から出て、当業者には周知の濃縮処理、安定化処理、コンディショニング、脱水処理、汚泥処理等の更なる処理を行うために固形物処理へ送られてもよい。その結果得られる主要浄化器からの流出流(output)115は、流れ145として分離装置150に送られる前の更なる処理として、嫌気性ゾーン120、無酸素ゾーン130および好気性ゾーン140に送られてもよい。好気性ゾーンからの流出流145は、MLRポンプ160によりMLRポンプ流出流165を経て無酸素ゾーン130に送られてもよい。分離装置150からの底流は、RASポンプ170によりRASポンプ流出流ライン175を経て嫌気性ゾーンの流入口へ送り戻されてもよい。該底流は、分離装置150から出て、当業者には周知の濃縮処理、安定化処理、コンディショニング、脱水処理、汚泥処理等の更なる処理を行うために、WASポンプ180を経て固形物処理へ送られてもよい。
【0055】
システム100は、生物脱リン、硝化および脱窒を行うことができる。嫌気性ゾーン120に送られる戻り活性汚泥流175(RAS)に含まれる硝酸塩の移送の故に、斯かるシステムにおけるbioPの信頼性には問題が残るかもしれない。
【0056】
図2は、本開示の原理に基づくA2/O活性汚泥処理システム200(および処理)の一例を示す。図1に示されるシステム100の追加部分として、システム200は、ポンプ250およびライン245、265を経て好気性ゾーン140と流体連通している重量選別装置260を含んでいる。重量選別装置(gravimetric selector)の流出流285は、濃縮処理、安定化処理、コンディショニング、脱水処理、汚泥処理等の更なる処理を行うために、更なる処理成分と一緒にされてもよい。
【0057】
図2に示されるように、廃棄流245は、好気性ゾーン140から直接(例えば反応器タンク(図示しない)から直接)受け取られ、顆粒高密度バイオマス生産のために、ポンプ250を経て外部重量選別装置260に送られてもよい。重量選別装置260としては、例えば、液体サイクロン等が挙げられる。より高密度で大きい粒子265は重量選別装置285から好気性ゾーン(例えば反応器(図示しない))に戻され、より軽い画分285は廃棄固形物を代表するものとしてシステム200から取り出されてもよい。重量選別装置260を含み実行することにより、bioPの性能は向上し、(図1に示される)システム100の信頼性が改善される。
【0058】
図9Aから図9Cは、外部サイズ選別装置であり本開示の外部重量選別装置260に含めてもよいスクリーン装置、フィルタ装置または膜装置10の1例示的実施形態を示す3つの斜視図である。
【0059】
図9Aから図9Cを参照すると、重量選別装置260はスクリーン装置、フィルタ装置または膜装置10を含んでもよく、該装置は、廃棄流1(または図2の排水流245)を受け取り、該流れを内部粒子/固形物分離装置2を経て廃棄成分に分け、廃棄流3(または図2のWAS285)へ流出し、上記廃棄成分は4(または図2の265)に保持される。スクリーン装置、フィルタ装置または膜装置10は、密度の代わりにサイズと圧縮可能性に基づいて流れを分ける。
【0060】
スクリーニング処理を更に助けるため、ガス、液体または物質の組み合わせを用いるスクリーンウォッシュ5を任意に加えてもよい。スクリーンウォッシュ5は、固形物保持時間に異なる影響を及ぼすように、様々な方向からスクリーン2に向けることができ、該方向には、限定されないが、縦軸に沿った方向(図9A)、スクリーンの垂直方向に角度を与えた方向(図9B)または水平軸に沿った方向(図9C)が含まれる。
【0061】
図1に示す)システム100または(図2に示す)システム200において、凝集体の形成を促進するための核を提供する粒子を加えてもよく、その場合、核となる粒子は該凝集体に包み込まれる。粒子は、顆粒形成を開始させるため、あるいはその核となるため、例えば生物反応器に種々の物質として加えてもよく、その場合、それは次に外部重量または外部スクリーンにより分離できる、またはそれと一体化できる。
【0062】
更に、生物脱リン、脱窒メタン酸化剤、生物硫黄または硫化物酸化、メタン産生のために、微生物をシステム100(または200)において選択してもよい。
【0063】
全体を参照として本明細書に援用する米国特許出願公開第2014/013273号は、排水処理を改善するため、本開示の重量選別装置260に使用可能なスクリーンを用いて、活性汚泥処理用の固形物を選別しそれを保持するための方法および装置の1例を開示している。
【0064】
図3は、本開示の原理に基づくMLE活性汚泥処理システム300(および処理)の1例を示す。図2に示すシステム200と異なり、システム300は嫌気性ゾーン120を含んでいない。従って、主要浄化器110からのアウトプット流115は無酸素ゾーン130に直接送られる。重量選別装置260がなければ、システム300は硝化と脱窒しかできず、bioP活動は限定されるか存在しないことになる。システム300に(例えば図3に示す構成の)重量選別装置260を用いることにより、該システムは顆粒バイオマス生産を提供し、より高密度で大きい粒子265は好気性ゾーン140(例えば反応器(図示しない))へ戻し、廃棄固形物を代表する軽い画分285はシステム300から取り出される。システム300は、例えばPAOおよびdPAOが蓄積できる顆粒バイオマス粒子の中心近くに生態学的ニッチを提供することにより、信頼でき首尾一貫性のあるbioPを提供する。
【0065】
図4図3に示されるシステム300に類似したシステム400の1例を示しており、同じ利点を全て有しているが、外部重量選別装置260は、好気性ゾーン140(例えば好気性ゾーン140の通気タンクバイオマス(図示しない))ではなく、戻り活性汚泥流175に適用される。
【0066】
図5は、嫌気性選別装置および液体サイクロン形態の外部重量選別装置を有する複合一体型浄化器/生物活性汚泥処理の1例を示す。追加された外部重量選別装置は、標準嫌気性選別装置を使用する生物的選別と外部重量選別装置の新規適用を用いる物理的選別とを組み合わせることにより、bioPの性能を改善する。
【0067】
図6は、例えばシステム300(または200または400)における外部重量選別装置の影響の1例を示す。特に、図6は、ストラス排水処理工場(液体サイクロンバイオマス廃棄システムを含めて、図3に示すMLE処理を使用する)におけるbioPへ及ぼす液体サイクロン重量選別装置の影響を示している。データは、生物脱リン効率/信頼性への段階的増加に伴う、化学脱リンへの依存の減少を示している。化学脱リンにおけるアルミン酸ナトリウムの添加は完全に排除された。
【0068】
図7は、バイオマス廃棄にシステム200(または300または400)を用いた、ストラス排水処理工場におけるアルミン酸ナトリウム用量の減少の1例を示す。
【0069】
図8は、例えばシステム200(または300または400)を用いた、ストラス排水処理工場における液体サイクロン操作の影響の1例を示す。実験中、回収されたバイオマスサンプルのリン含有量は、従来のbioP工場の典型的な値まで増大した。ストラス工場は嫌気性選別装置を有していないので、この点は重要である。従来の非bioPバイオマスには、約1.5%から2.0%のP/MLVSSが含まれていると予想される。図8のデータは、活性汚泥バイオマス中のリン含有量が、副流処理において、主流に2.8%から4.5%の範囲のP/MLVSSで含まれていることを示している。
【0070】
従って、前述の記載から明らかなように、嫌気性選別装置を有しない工場において、外部重量選別装置がbioPを達成できている。しかし、既に嫌気性選別装置を有しbioP(生物的選別を有する)の設計がなされている工場においては、外部重量選別装置を加えることにより、bioPの信頼性および効率が改善できる。
【0071】
本開示は、(嫌気性選別装置を有する)生物的選別と(外部選別装置を有する)物理的選別を組み合わせたシステムを提供する。
【0072】
本開示の原理によれば、外部重量選別装置使用の結果、更に高密度の顆粒が選別され、それがdPAOおよびPAOに適した生態学的ニッチを提供し、dPAOおよびPAO自体がポリリン酸塩顆粒の故に更に密度を増すので、外部重量選別装置を用いた顆粒形成は、PAOおよびdPAOを蓄積させ物理的に選別させる別の能力を提供しており、PAOおよびdPAOはポリリン酸塩顆粒の故に更に高い密度を有しているので、重量選別装置(例えば液体サイクロン)は、斯かる微生物を更に効率よく選別できる。
【0073】
通気期間または通気ゾーンにおいて、顆粒の内部は高バルクDO(溶存酸素)から保護されているが、硝化により生じた硝酸塩が存在し顆粒の内部に拡散するので、例えば図1に示されるシステム100と比較し、外部重量選別装置はPAOよりもdPAOを優先的に選択する。硝酸塩はdPAOに利用可能となり、その結果、VFAが脱窒と脱リンの両方に使用されるという恩恵が提供され、ひいては通常dPAO活性がPAO活性のほんの僅かでしかない従来の処理と比べて、排水中の炭素がより効率的に脱窒および脱リンに利用できる。
【0074】
本開示の原理に従ってWWTPストラス工場で行われている実験では、主要生物処理において、上流A段階(図示しない)で低汚泥保持時間(SRT)により高率の脱炭素が提供され、下流の低SRTシステム(B段階、図示しない)で主に脱窒が提供される。B段階は2つの処理レーンから成っており、各レーンが連続した2つの回転式タンクを有しており、そのすべてに拡散器が備わっている。活性汚泥タンクの流出水におけるオンライン測定アンモニアおよび硝酸塩の値に基づいて、特定のDO設定値および硝化効率を達成するように通気が制御される。連続タンクの第二タンク(図示しない)は、硝化されたバイオマスに酸素を供給するため主に通気され、連続タンクの第一タンク(図示しない)は、従属栄養バイオマスに無酸素環境を提供し再循環された硝酸塩(MLEモード)を脱窒するため、ほとんど通気されない。アンモニア濃度が限界値近くまで上昇したら、第一タンクは通気され、追加硝化機能を有するスイングゾーンとして機能させてもよい。
【0075】
WWTPストラス工場における最初の設計では金属添加による化学脱リンが見込まれており、嫌気性ゾーンは実施されていないので生物脱リンは目標ではなかったし、ほとんどの有機酸はA段階で既に除去されているので、bioP活動は全く欠如している。最近、脱窒処理の効率を改善するため、アナモックス顆粒が汚泥液(DEMON(登録)処理)の副流処理システムにおいて増強され、全体を参照として本明細書に援用する米国特許公開出願第2011/0198284 A1の開示による液体サイクロンの使用により、主流システムにおいてそれが保持されている。上記公開特許出願に記載されているように、サイクロンは、アナモックス顆粒を保持するためだけでなく、PAOsおよびdPAOsに環境ニッチを提供しbioP活動を向上させる目的で、更に高密度の活性汚泥フロックを形成および選択するのに使用してよい。次に、流出水アンモニア濃度を限界値(例えば1mgP/L)未満の低い値に維持しながら、金属添加率を段階的に減らしてもよい。少なくとも1つの実験では、添加率はゼロに設定され、その結果、重量選別装置の連続操作による生物処理のみで、濃度が約5mgP/Lから1mgP/Lに減少した。バイオマスのVSS中のリン含有量3%から4.5%を示す測定値により、高いリン蓄積能力がはっきりと確認された。
【0076】
本発明の原理によれば、重量選別装置(例えば液体サイクロン)によって選別される更に高密度の汚泥凝集体のbioP活動は、専用の嫌気性反応器ゾーンがなくても、大幅に改善できる。更に、重量選別装置および生物的選別装置として機能する嫌気性ゾーンを組み合わせることにより、bioP活動は、例えば更に高密度のバイオマス凝集体が下水または全処理プロセスから直接送られる高濃度の排水と接触する場所において、更に向上する。嫌気性のVFAの取り込みおよび貯蔵により更に高密度のバイオマスの発生が促進され、その結果、斯かる凝集体は、廃棄流の物理的選別処理によって蓄積される。斯かる嫌気性ゾーンは、上流側、例えば排水が活性汚泥システムに供給される生物処理の前部末端(例えば図2に示されるような場所)において、実施されてよい。
【0077】
あるいは、例えば図5に示されるように、嫌気性ゾーンは、沈降機と1若しくはそれ以上の通気タンクとの間に位置する区画部に構築されてもよい。沈降した汚泥は、例えばタンクの底部に提供される排水管により沈降機から再循環してもよい。沈降した汚泥は、例えば排水管によって、排水が導入される嫌気性区画部に供給され、混合液体は、この接触ゾーンから、例えば最終的に(例えば図5に示されるような)タンクの底部にある配水管へ供給されてもよい。斯かる実施は、例えば、国際特許出願第PCT/AT00/00322号(国際公開第2001/046075号)および/または国際特許出願第PCT/AT2011/000001号(国際公開第2011/091452号)に記載のBIOCOSプロセスと両立できるものである(いずれも参照として本明細書に援用され、沈降機の底部の汚泥再循環パイプおよび上記排水管に吸引圧力を提供するエアリフト(マンモスポンプ)を有する、交互使用設定の沈降タンクを既に含んでいる)。
【0078】
加えて、上記システムは、例えば混合液を通気タンクの底部に供給するのに使用されるエアリフトポンプ(図示しない)の供給ヘッドまたは圧力ヘッドと高濃度になった汚泥とが接触する場所に別の区画部を提供するため、沈降機と通気タンクの間に複数の壁(例えば二重壁)を有してもよい。エアリフトポンプが作動していないサイクル段階中にも、連続した供給流れを当該接触区画部に導入でき、固形物の多い液体に基質が供給できる。
【0079】
本開示は例示的実施形態により記載されているが、当業者は本開示が添付の特許請求の項の精神および範囲内で改変可能であることを認識するであろう。斯かる例は単なる例示に過ぎず、本開示の可能な設計、実施形態、適用または改変の全てを網羅したものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C