(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の主題の1つまたは複数の具体的な実施形態を以下に説明する。これらの実施形態に関する簡潔な説明を提供するために、実際の実装態様に関するすべての特徴について本明細書に説明するわけではない。いずれのそのような実際の実装態様の開発において、任意のエンジニアリングもしくは設計プロジェクトの場合と同様に、多数の実装形態特有の決定を、実装態様ごとに異なる可能性のある、システム関連の制約およびビジネス関連の制約との適合などの、開発者の特定の目的を達成するために行わなければならないことを認識すべきである。さらに、そのような開発努力は、複雑であり、時間を消費するものであろうが、本開示の利点を有する当業者とって、設計、製作、および製造の日常的な仕事であろうことを認識すべきである。
【0011】
本発明の主題の様々な実施形態の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、1つまたは複数の要素が存在することを意味するように意図されている。「備える(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、記載された要素以外の追加の要素が存在する可能性を含む、および意味することを意図する。
【0012】
前述したように、タービンシステムの性能および正常動作は、その構成要素の劣化によって影響を受ける可能性がある。例えば、1つまたは複数の入口フィルタが余分な粒子を溜め込んだ場合、入口ダクトの圧力が望ましくないレベルに低下する可能性があり、濾過効率が低下する可能性がある。非効率なフィルタは、より多くの粒子がそのフィルタを通って流れ、圧縮機に到達し、それによって、圧縮機ブレードおよびベーンの汚染を引き起こす。しかしながら、フィルタにおける溜め込みは場所ごとに大きく異なる。例えば、降水量がより多い環境にあるいくつかの場所は、入口フィルタがより湿潤でより粘着性になり、より乾燥した気候にある入口フィルタよりも早く粒子を溜め込む可能性がある。同様に、海水が近くにある環境に配置された入口フィルタは、空気がタービンシステム内に引き込まれるときに、フィルタで集められる空気中の塩のために粒子をより早く溜め込む可能性がある。さらに、フィルタを通過して入口ダクトに入る粒子は、タービンシステムの圧縮機の1つまたは複数のブレードに最終的に付着する可能性があり、それにより、タービンシステムの性能に影響を及ぼす可能性がある。多くの場合、圧縮機および/または入口フィルタは、予め設定された静的スケジュールに基づいて維持または交換される。しかしながら、そのような静的スケジュールに基づく監視は、少なくとも、上述の理由により非効率的である可能性がある。
【0013】
したがって、本開示のいくつかの実施形態は、劣化予測ロジックを使用するタービンシステムの構成要素の状態に基づいた監視に関する。劣化予測ロジックは、フィルタ劣化予測モデルおよび圧縮機劣化予測モデルなどの1つまたは複数のモデルを生成することができる。モデルは、経時的な測定データに基づいて予測の忠実度を改善することができることを理解されたい。
【0014】
上述したように、フィルタの劣化は、タービンシステムの非効率的な動作および濾過効率の低下をもたらす望ましくない圧力降下をもたらす可能性がある。したがって、フィルタ劣化予測モデルは、1つまたは複数の予防動作を実行するためにフィルタの劣化速度を予測することができる。フィルタ劣化予測モデルは、ある条件が存在する場合のフィルタハウスのいくつかの濾過段階における1つまたは複数の入口フィルタの寿命に関する性能データ(例えば、試験データ)の入力、センサからの構成要素の実際の状態、および/または監視されているタービンシステムが配置されている環境の局所的状態を受信することができる。フィルタ劣化予測モデルは、フィルタの残りの有効寿命を判定するために使用することができる各濾過段階における各フィルタの劣化速度の予測を出力することができる。予測は、タービンシステムの停止、1つまたは複数のフィルタの維持もしくは交換のスケジューリング、ならびに/もしくは吸気のフィルタのセルフクリーニングシステムの駆動などの、1つまたは複数の予防動作を実行するために使用することができる。そのような予防動作は、タービンシステムに対する予期せぬ停止時間の可能性を低減することができ、および/または入口ダクト内の望ましくない圧力降下を低減することによってタービンシステムの性能を改善することができる。
【0015】
また、上述したように、圧縮機の劣化は、タービンシステムの非効率的な動作、サージマージンの減少、および過度の振動をもたらす可能性がある。したがって、圧縮機劣化予測モデルは、1つまたは複数の予防動作を実行するために圧縮機の劣化速度を予測することができる。圧縮機劣化予測モデルは、ある条件が存在する場合の圧縮機健全性に関連する性能データ(例えば、試験データ)、センサからの構成要素の実際の状態、監視されるタービンシステムが位置する環境の局所的状態、および/またはフィルタ劣化予測モデルからの1つまたは複数のフィルタ劣化速度予測を受信することができる。圧縮機劣化予測モデルにより、圧縮機劣化速度を予測することができる。圧縮機劣化速度予測は、圧縮機から粒子を洗浄するためのオンラインおよび/またはオフラインの水洗浄のスケジューリング、スケジューリングされた水洗浄の実行、タービンシステムの停止、圧縮機の修理、ならびに/もしくは圧縮機ブレードおよび/またはベーンの交換などの1つまたは複数の予防動作を行うために使用することができる。そのような予防動作は、とりわけ、圧縮機が粒子で汚れた場合に出力を失う可能性を低減することができる。本明細書に開示される予防動作は、予防動作が、とりわけ、タービンシステムの構成要素の実際の状態、ある状態が存在する場合の構成要素の有効寿命に関する履歴性能データ、および/または環境の局所的状態に基づくので、反応的動作による単なる静的なスケジュールに基づく監視よりも本質的により動的であることを理解されたい。
【0016】
ここで図面を参照すると、
図1は、一実施形態による、タービンシステム10の1つまたは複数の構成要素の状態に基づく監視を可能にするタービンシステム10のブロック図である。タービンシステム10は、タービン12および後処理システム14を含む。特定の実施形態では、タービンシステム10は、発電システムとすることができる。タービンシステム10は、タービンシステム10を動作させるために、天然ガスおよび/または富水素合成ガスなどの液体または気体燃料を使用することができる。図示のように、タービンシステム10は、吸気部16、圧縮機18、燃焼システム20、およびタービン12を含む。タービン12は、シャフトを介して圧縮機18に駆動可能に連結することができる。動作中、空気は、(矢印17によって示される)吸気部16を介してタービンシステム10に入り、圧縮機18内で加圧される。
【0017】
吸気部16は、入口フィルタのいくつかの濾過段階を含むフィルタハウスを含むことができる。各段階の入口フィルタは、異なるペースまたは速度で劣化する(例えば、粒子が付着する)。例えば、前の濾過段階の入口フィルタ(例えば、入ってくる空気にさらされた第1の入口フィルタ)は、後の濾過段階における続く入口フィルタよりも多くの粒子がこれらの入口フィルタに付着するため、最も早く劣化する可能性がある。そのために、フィルタハウス内の最終濾過段階の入口フィルタは、先行段階の入口フィルタと比較して、最も遅い速度で粒子を溜め込み、それにより、寿命が最長となる可能性がある。また、入口フィルタは、それらが位置する環境に基づいて異なる速度で劣化する可能性がある。例えば、海岸または塩水の近くに配置された入口フィルタは、内在する入口フィルタよりも粒子をより迅速に溜め込み、劣化する可能性がある。また、湿度の高い気候や降水量が多い気候にある入口フィルタは、入口フィルタが濡れて粘着性になると、より乾燥した気候にある場合よりもより早く劣化する可能性がある。入口フィルタが粒子を溜め込むにつれて、吸気部16を通過する空気が少なくなり、入口ダクト構造で圧力降下が生じる可能性がある。圧力降下は、タービンシステム10の性能低下を引き起こす可能性がある。したがって、本開示のいくつかの実施形態は、各濾過段階における複数の入口フィルタの劣化速度を予測して、入口フィルタの有効寿命を判定し、1つまたは複数の予防動作(例えば、セルフクリーニングシステムの駆動、メンテナンスおよび/または交換のスケジューリングなど)を実行することを可能にする。
【0018】
圧縮機18は、シャフトに連結されたいくつかの圧縮機ブレードを含むことができる。シャフトの回転は、圧縮機ブレードの回転を引き起こし、それにより、圧縮機18内に空気を引き込み、燃焼システム20に入る前に空気を圧縮する。圧縮機ブレードは、吸気部16のフィルタハウスを通過する粒子を集めて、劣化する(例えば、汚れる)可能性がある。タービンシステム10によって生成される作業出力の量は、圧縮機ブレードの劣化が悪化するにつれて、負の影響を受ける可能性がある。したがって、本開示のいくつかの実施形態は、圧縮機18の劣化速度を予測し、それに応じて1つまたは複数の予防動作(例えば、圧縮機18のオンラインおよび/またはオフライン水洗浄のスケジューリング)を実行することを可能にする。
【0019】
圧縮空気17が圧縮機18を出て燃焼システム20に入ると、圧縮空気17は、1つまたは複数の燃焼缶内の燃焼のために燃料19と混合することができる。例えば、燃焼缶は、最適な燃焼、排出物、燃料消費、および動力出力などのために適切な速度で燃焼缶に燃料−空気混合物を噴射することができる1つまたは複数の燃料ノズルを含むことができる。空気17および燃料19の燃焼は、高温加圧排気ガスを生成し、その後、タービン12内の1つまたは複数のタービンブレードを駆動するために利用することができる。動作中、タービン12に流入する燃焼ガスは、タービンブレードに対して、タービンブレードの間を流れ、それにより、タービンブレードを駆動し、したがって、シャフトを回転させて、発電プラントの発電機などの負荷21を駆動する。上述したように、シャフトの回転はまた、圧縮機18内のブレードに吸気部16によって受け入れられた空気を引き込み、加圧させる。
【0020】
タービン12を通って流れる燃焼ガスは、排気ガスの流れとしてタービン12の下流端15から出ることができる。排気ガス流は、後処理システム14に向かって下流方向に流れ続けることができる。例えば、下流端15は、後処理システム14に流体的に結合することができる。燃焼処理の結果として、排気ガスは、窒素酸化物(NO
x)、硫黄酸化物(SO
x)、炭素酸化物(CO
x)、および未燃焼炭化水素などの特定の副産物を含む可能性がある。特定の規制のために、後処理システム14は、排気ガス流を大気中に放出する前に、そのような副産物の濃度を低減または実質的に最小限にするために使用することができる。
【0021】
1つまたは複数のセンサ22は、タービンシステム10の特定の構成要素に含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のセンサ22を吸気部16の構成要素に含めることができ(例えば、フィルタハウス内、フィルタハウスの前、フィルタハウスの中間、フィルタハウスの後)、フィルタハウスの下流であるがサイレンサの前および/またはサイレンサの下流にある入口ダクトに含めることができる。いくつかの実施形態では、センサ22は、任意のタイプの圧力センサ、ダストセンサ(例えば、光学式)、温度および湿度センサ、加速度計、またはひずみゲージなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、圧力センサは、圧力信号または波をそれぞれの位置における任意の望ましい振幅および周波数範囲で感知するよう構成することができる。センサ22は、圧力から生じる電気信号を生成する圧電材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、センサ22は、マイクロ電気機械システム(MEM)センサ、ホール効果センサ、磁気抵抗センサ、または振動もしくは圧力などを感知するように設計された他の任意のセンサを含むことができる。いくつかの実施形態では、センサ22は、吸気部16に含まれるマイクロフォンまたはマイクロフォンのアレイを含むことができる。いくつかの実施形態では、マイクロフォンまたはマイクロフォンのアレイは、フィルタハウス全体の正常性(例えば、フィルタハウス構造の保全性)を示す検出された音をコントローラ24に送信することができる。
【0022】
さらに、ダストセンサは、ダスト濃度、タイプ、および/またはサイズを光学的に測定することによって、環境中の空気質の指標を提供するよう構成された光学センサを含むことができる。センサ22は、無線(例えば、Bluetooth(登録商標)Low Energy、ZigBee(登録商標)、WiFi(登録商標))または有線接続(例えば、Ethernet)を介して、センサ22をコントローラ24および/またはコンピューティングデバイス26に通信可能に結合することを可能にする通信回路を含むことができる。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス26は、ラップトップ、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、またはヒューマンマシンインターフェイスなどを含むことができる。
【0023】
センサ22は、コントローラ24および/またはコンピューティングデバイス26に圧力(例えば、静的、動的)、ダスト粒子特性(例えば、濃度、タイプ、サイズ)、温度、または湿度などを示す信号を送信することができる。コントローラ24および/またはコンピューティングデバイス26は、フィルタ劣化予測ロジック28および/または圧縮機劣化予測ロジック30におけるパラメータとして信号に基づいて測定値を受信することができる。したがって、コントローラ24および/またはコンピューティングデバイス26は、それぞれ、フィルタ劣化予測ロジック28および/または圧縮機劣化予測ロジック30を実装するコンピュータ命令を記憶する1つまたは複数の有形の非一時的なコンピュータ可読媒体(例えば、メモリ32および34)を含むことができる。フィルタ劣化予測ロジック28および圧縮機劣化予測ロジック30は、コンピューティングデバイス26のメモリ34に記憶されているように示されているが、いくつかの実施形態では、予測ロジック28および30の一方または両方をさらにコントローラ24のメモリ32に記憶してもよいし、または予測ロジック28および30の一方または両方だけをコントローラ24のメモリ32に記憶してもよいことが理解されよう。さらに、コントローラ24および/またはコンピューティングデバイス26は、信号を受信してプロセッサ36および38に送信するよう構成されたネットワークインターフェイスなどの通信回路を含むことができる。
【0024】
プロセッサ36および38は、コンピュータ実行可能コードを実行することができる任意のタイプのコンピュータプロセッサまたはマイクロプロセッサとすることができる。さらに、プロセッサ36および38は、複数のプロセッサまたはマイクロプロセッサ、1つまたは複数の「汎用」プロセッサまたはマイクロプロセッサ、1つまたは複数の専用プロセッサまたはマイクロプロセッサ、および/または1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASICS)またはそれらの何らかの組み合わせを含むことができる。
【0025】
メモリ32および34は、プロセッサ実行可能命令、コード、またはデータなどを格納するメディアとして機能することができる任意の適切な製品とすることができる。これらの製品は、本開示の技術を実行するために各プロセッサ36および38によって使用されるプロセッサ実行可能コードまたはルーチンを記憶することができるコンピュータ可読媒体(例えば、任意の適切な形態のメモリまたはストレージ)を表すことができる。例えば、メモリ32および34は、揮発性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM))、不揮発性メモリ(例えば、読み出し専用メモリ(ROM))、フラッシュメモリ、ハードドライブ、または、他の任意の適切な光学的、磁気的、もしくは固体状態の記憶媒体、またはそれらの組み合わせを含むことができる。メモリ32および34はまた、任意のデータ(例えば、性能データ、センサデータ、タービンシステム10が位置する環境の局所的状態、劣化速度予測、メンテナンスおよび/または修理のスケジュール)、データの分析、フィルタ劣化予測ロジック28、および圧縮機劣化予測ロジック30などを格納するために使用することができる。
【0026】
一般に、プロセッサ36および/または38は、入口フィルタおよび圧縮機18のそれぞれの劣化速度を判定し、1つまたは複数の予防動作を実行することができるフィルタ劣化予測ロジック28および/または圧縮機劣化予測ロジック30を実行することができる。フィルタ劣化予測ロジック28および圧縮機劣化予測ロジック30は、どちらも、各フィルタおよび圧縮機18の劣化速度を予測するためのモデル(例えば、物理ベース、数学的)を生成することができる。劣化速度予測を判定するために、モデルは1つまたは複数のパラメータを考慮することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、パラメータのいくつかが他のパラメータよりも予測に大きな影響を及ぼすように、パラメータに異なる重み付けをすることができる。例えば、一実施形態では、入口ダクト42に入るダストの粒径および/またはフィルタハウスの前の湿度は、周囲温度よりも重く重み付けすることができる。1つまたは複数のパラメータは、フィルタ前のセンサ22によって取得された圧力、フィルタ内の圧力、サイレンサの前後のフィルタの下流の圧力、フィルタ前の周囲温度および相対湿度、圧縮機18の入口前の温度および相対湿度、フィルタ前後のダスト粒径分布(例えば、粒径、タイプ、量)、フィルタ劣化(例えば、付着)速度試験室モデル、局所条件(例えば、タービンシステム10の位置、典型的なタイプの粒子化学組成、気象予測データ)、タービンシステム10の動作モード、タービンシステム10の負荷および効率、入口ブリード熱のオン/オフ、パワー増強手段(例えば、湿式圧縮、霧化、蒸発冷却、冷却)、粒子負荷(例えば、サイズ、タイプ、量)に関連するような圧縮機ブレード付着速度、およびタービンシステム10の動作時間などを含むことができる。これらのパラメータは、それぞれフィルタの劣化に影響を与える可能性があり、他のパラメータと共に存在する場合には、複合効果を有することもある。したがって、モデルは、これらのパラメータに基づいて個々に、および全体として劣化する可能性があると判断することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、タービンシステム10が動作している間、モデルはリアルタイムで動作することができる。さらに、または代替的に、モデルは、(例えば、タービンシステム10が最後に動作していたときから)記憶されたセンサデータを用いてタービンシステム10がオフラインまたは停止している間に動作することができる。モデルは、新しいデータ(例えば、ダストセンサ22、圧力センサ22、温度および湿度センサ22、タービンシステムの出力および効率など)に基づいてモデルのパラメータを更新するという点で適応性であるとすることができる。例えば、センサ22からの測定値を含む信号は、タービンシステム10がモデルの適応能力を可能にするよう動作している間に、コンピューティングデバイス26および/またはコントローラ24を循環することができる。信号は、定期的に、オンデマンドで、測定値が変化する場合などに送信することができる。モデルは、タービンシステム10の動作が継続し、さらなるセンサデータが蓄積され、処理されるにつれて、忠実度を向上させ続けることができる。さらに、後の時点のセンサデータを使用して、モデル予測を検証することができる。すなわち、30稼働時間内にフィルタが劣化するとモデルが予測する場合、モデルが正確かどうかを判定するために圧力センサデータを30時間読み取ることができる。そうでない場合、モデルはそれに応じて調整される。
【0029】
各タービンシステム10は様々な物理的位置に配置することができるので、タービンシステム10の構成要素の劣化速度は、局所的状態が変化するために変化する可能性がある。例えば、海岸に近い場所にあるフィルタは、空気中の塩分によって内陸部にあるフィルタよりも早く劣化する可能性がある。さらに、建設現場または砂漠付近の場所にあるフィルタは、建設現場または砂漠の近くの空気中の余分なダスト粒子のために、建設現場または砂漠から離れた場所にあるフィルタよりも早く劣化する可能性がある。また、湿度の高い場所に設置されたフィルタは、粒子をより早く溜め込む可能性があり、非湿潤な気候にあるフィルタよりも早く劣化する可能性がある。したがって、フィルタ劣化予測ロジック28および圧縮機劣化予測ロジック30は、各それぞれのタービンシステム10のセンサデータおよび局所条件に基づいて、タービンシステム10ごとに個別に調整することができる。
【0030】
しかしながら、いくつかの実施形態では、クラウドベースのシステムは、タービンシステム10によって共有されるデータについて解析を実行することができる。例えば、クラウドベースのシステムは、各タービンシステム10からのセンサデータおよび局所的状態、ならびにセンサデータおよび局所的状態に基づいて検証された劣化速度を受信することができる。クラウドベースのシステムは、センサデータおよび局所的状態に関連する検証された劣化速度を送信することによって、モデルの忠実度を向上させることを可能にすることができる。すなわち、類似のセンサデータおよび局所的状態を有する他のタービンシステム10からの他の検証された劣化速度に基づくクラウドベースのシステムを使用して、フィルタ劣化予測ロジック28および圧縮機劣化予測ロジック30によって予測される劣化速度を改善することができる。このようにして、クラウドベースのシステムは、特定のデータ(例えば、試験室データ、センサデータ、局所的状態データ、劣化速度)のセントラルレポジトリとして、およびフィルタ劣化予測ロジック28および/または圧縮機劣化予測ロジック30を実行する様々なコンピューティングデバイス26および/またはコントローラ24と通信する中央処理システムとして、機能することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス26および/またはコントローラ24は、ディスプレイを含むことができる。ディスプレイは、予測されたフィルタ劣化速度などに基づいて残っているフィルタ寿命の仮想的なバロメータなどの様々なグラフィック要素を表示するために使用することができる。さらに、ディスプレイは、予測されたフィルタ劣化速度、予測された圧縮機劣化速度、および/または1つもしくは複数の予防動作(例えば、予測された圧縮機劣化速度に基づく圧縮機の水洗浄スケジュール、予測されたフィルタ劣化速度に基づくフィルタのメンテナンスおよび/または交換など)の結果を表示するために使用することができる。
【0032】
図2は、一実施形態による、様々な入力を受信するフィルタ劣化予測ロジック28を含む、
図1のタービンシステム10のブロック図である。図示されているように、タービンシステム10の吸気部16は、フィルタハウス40および入口ダクト42を含む。入口ダクト42の構造は、タービンシステム10の性能が損なわれる前に、あるレベルの負圧をとるよう設計することができる。入口ダクト42内の圧力は、フィルタハウス40内の1つまたは複数の濾過段階において1つまたは複数のフィルタに堆積した粒子によってフィルタハウス40が劣化する場合に低下する可能性がある。したがって、フィルタ劣化予測ロジック28は、フィルタ劣化予測モデルを使用して様々な入力に基づいて劣化速度を予測することによって、1つまたは複数の濾過段階のそれぞれにおけるフィルタの有効寿命を判定することができる。
【0033】
特に、入力は、フィルタ負荷率試験室モデルを使用して導出される性能データを含むことができる。性能データおよび/またはフィルタ負荷率試験室モデルは、コンピューティングデバイス26のメモリ34に記憶され、コントローラ24のメモリ32から検索され、クラウドベースのシステムから検索され、または外部サーバから検索されることができる。フィルタ負荷率試験室モデルは、タービンシステム10の試験中に取得された特定の測定されたセンサデータ(例えば、ダスト、圧力、温度、湿度)に基づいてフィルタの負荷率を経時的にモデル化することができる。いくつかの実施形態では、フィルタ劣化予測ロジック28は、フィルタ劣化予測モデルを初期化するために性能データを使用することができる。
【0034】
入力はまた、1つまたは複数のダストセンサ42、22からのセンサデータと、1つまたは複数の圧力センサ44、22からのセンサデータとを含むことができる。図示のように、ダストセンサ42、22は、フィルタハウス40の前方に(例えば、上流に)配置され、フィルタハウス40に入る空気中のダスト粒子(例えば、サイズ、タイプ、濃度)を測定するように構成することができる。ダスト粒子の濃度は、粒子がフィルタにより早く堆積することを示す指標をもたらすことができる。また、より大きなダスト粒子は、フィルタによってフィルタリングされる可能性がより高くなる可能性があるが、より小さいダスト粒子は、体積速度をより早く増加させる可能性がある。さらに、特定のタイプのダスト粒子は、粒子をより粘着質で、またはより湿潤させるなどのような特性のために、フィルタに体積する可能性がより高い。
【0035】
さらに、圧力センサ44、22は、フィルタハウス40の下流に配置されているように示されているが、いくつかの実施形態では、圧力センサ44、22または追加の圧力センサ44、22は、フィルタハウス40の正面、フィルタハウス40の内部、および/またはサイレンサの後のフィルタハウス40の下流に配置することができる。特定の実施形態では、2つ以上のダストセンサ42、22および/または圧力センサ44、22を使用することができることに留意されたい。
【0036】
いくつかの実施形態では、入力はまた、フィルタハウス40の前方(例えば、上流)の1つまたは複数の温度および湿度センサ46、22からの温度および湿度データを含むことができる。理解されるように、高湿度は、湿度によってフィルタが湿って粘着性になる可能性があるため、フィルタが粒子をより早く蓄積する可能性があるという指標であり得る。さらに、高温により、粒子の表面特性が変化する可能性があり、それによって、粒子がフィルタに堆積する可能性が減少する。
【0037】
ダストセンサ42、22、圧力センサ44、22、ならびに/もしくは温度および湿度センサ46、22は、コントローラ24に通信可能に接続することができ、測定されたダスト粒子、圧力、温度、および湿度などを示す信号をコントローラ24に送信するように構成することができる。いくつかの実施形態では、フィルタ劣化予測ロジック28を実行するコンピューティングデバイス26のプロセッサ38は、コントローラ24からダストセンサデータ、圧力センサデータ、ならびに/もしくは温度および湿度センサデータを受信することができる。いくつかの実施形態では、ダストセンサ42、22、圧力センサ44、22、ならびに/もしくは温度および湿度センサ46、22は、フィルタ劣化予測ロジック28を実行するコンピューティングデバイス26と無線で直接結合することができる。
【0038】
さらに、入力は、局所的状態データ48も含むことができる。局所的状態データ48は、タービンシステム10が配置されている場所の位置を含むことができる。例えば、その位置は、その場所が海岸の近くにあるか、または内陸にあることを示すことができる。上述したように、海岸近くの場所(または塩濃度が高い他の地域)にあるフィルタは、近くの水からの空気中の塩分のためにより速い速度で劣化する可能性がある。さらに、その位置は、フィルタをより早く劣化させる可能性のある建設現場からのダスト、汚れ、および破片などを空気が含む可能性のある建設現場付近にその場所があることをその位置が示す可能性がある。局所的状態データ48はまた、その場所が位置する環境において見出される典型的なタイプの粒子化学組成を含むことができる。局所的状態データ48はまた、その場所が位置する領域の気象予測データを含むことができる。したがって、局所的状態データ48は、気象サービスまたは外部サーバから受信することができる。気象予測データは、周囲温度、周囲圧力、相対湿度レベル、砂嵐レベル、ならびに降水または嵐の可能性などを示すことができる。そのような気象指標は、フィルタ劣化予測ロジック28が、粒子の堆積を増加または減少させるある種の気象条件を説明するためにフィルタ劣化予測モデルを調整することを可能にすることができる。
【0039】
タービンシステム10が動作すると、フィルタ劣化予測ロジック28は、タービンシステムのセンサ22から測定されたセンサデータおよび/または変化する局所的状態データ48を用いてフィルタ劣化予測モデルを更新することができる。すなわち、履歴データ(例えば、圧力、湿度、温度、ダストなど)をセンサ22からフィルタ劣化予測ロジック28に送信して、フィルタ劣化予測モデルが正確であるかどうかを判定することができる。したがって、フィルタ劣化予測ロジック28は、タービンシステム10の変化した条件および/または局所条件に基づいて、リアルタイムまたはほぼリアルタイムでフィルタ劣化予測モデルを更新することができる。さらに、フィルタ劣化予測ロジック28は、フィルタ劣化予測モデルが正確であるかどうかを判定するために、後で取得されるセンサデータを使用することができる。結果的に、フィルタ劣化予測モデルは、経時的な測定データ(例えば、センサおよび/または局所的状態)に基づいてその予測の忠実度を改善することができる。フィルタ劣化予測モデルは、予測劣化速度を出力することができ、および/または、劣化速度に基づいて予防動作を行うことができる。
【0040】
図3は、フィルタ劣化予測モデルを使用して1つまたは複数のフィルタ劣化速度を予測するのに適した処理50のフロー図である。処理50の以下の説明は、コンピューティングデバイス26のプロセッサ38を参照して説明されるが、処理50は、コントローラ24またはクラウドベースシステムなどの他のデバイス上に配置された他のプロセッサによって実行することができることに留意されたい。さらに、以下の処理50は、実行され得る多数の動作を記述するが、処理50は様々な適切な順序で実行してもよく、すべての動作が実行されなくてもよいことに留意されたい。処理50は、コンピューティングデバイス26によって完全に実行してもよく、または実行がコンピューティングデバイス26および/またはコントローラ24の間で分散されてもよいことを理解されたい。
【0041】
ここで処理50を参照すると、プロセッサ(例えば、
図1のプロセッサ38)は、性能データ、センサデータ、および/または局所的状態データ48を受信することができる(ブロック52)。上述のように、性能データは、試験中に得られたセンサデータに基づいてフィルタ負荷率試験室モデルから導き出すことができる。センサデータは、フィルタハウス40の上流および下流のダスト粒子データ(例えば、タイプ、サイズ、濃度)を含むことができる。センサデータはまた、フィルタハウス40の上流、フィルタハウス40内、フィルタハウス40の下流であるがサイレンサの前、およびサイレンサの下流の圧力データを含むことができる。また、センサデータは、フィルタハウス40の上流の周囲温度および相対湿度を含むことができる。
【0042】
プロセッサ38は、性能データ、センサデータ、および/または局所的状態データ48に基づいてフィルタ劣化予測モデルを生成することができる(ブロック54)。いくつかの実施形態では、プロセッサ38は、フィルタ劣化予測モデルを初期化するために性能データを使用することができる。例えば、様々なパラメータ(例えば、湿った領域での高粒子蓄積など)に関するフィルタの履歴データおよびその関数を判定することができる。
【0043】
さらに、プロセッサ38は、フィルタ劣化予測モデルを使用して、フィルタハウス40の各濾過段階における各フィルタの劣化速度の予測を生成することができる(ブロック56)。すなわち、フィルタハウス40の各濾過段階におけるフィルタの劣化速度を判定することができ、監視されたデータ(例えば、圧力、温度、湿度、ダスト粒子、局所的状態)を経時的に追跡し、メモリ34に記録することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ38は、劣化速度を使用して、フィルタハウス40の各濾過段階における各フィルタの残りの有効寿命を予測することができる。タービンシステム10の動作時間を、追跡し、メモリ34に記録することができる。例えば、プロセッサ38は、入ってくる空気に直ちにさらされる第1の濾過段階のフィルタの残りの有効寿命が30時間であると劣化速度から予測することができ、中間濾過段階のフィルタの残りの有効寿命が35時間であると劣化速度から予測することができ、および最終濾過段階のフィルタの残りの有効寿命が48時間であると劣化速度から予測することができる。
【0044】
測定されたデータおよび動作時間が追跡されるので、予測された劣化速度は、プロセッサ38によって検証することができる。例示のために、プロセッサ38は、フィルタ劣化予測モデルを使用して、ある濾過段階のフィルタが、入口ダクト42内の圧力降下を30時間で閾値量にすることができる速度(例えば、劣化速度)で粒子を堆積すると予測することができる。30時間に達すると、圧力センサが入口ダクト42内の圧力を読み取って、モデルが劣化速度に基づいて正確に圧力降下を予測したかどうかを判定することができる。このようにして、フィルタ劣化予測モデルの予測を検証することができる。時間の経過と共に、測定されたセンサデータおよび/または局所的状態に基づく予測の忠実度を改善することできる。
【0045】
さらに、プロセッサ38は、フィルタ劣化速度の予測を出力し、および/または予測されたフィルタ劣化速度に基づいて1つまたは複数の予防動作を実行することができる(ブロック58)。前述のように、予測された劣化速度に基づいてフィルタ寿命を確認することができる。劣化速度および/または有効寿命は、仮想バロメータまたは任意の好適なグラフィック要素として表示することができる。
【0046】
また、予防動作は、劣化速度に関連して変化させることができる。例えば、劣化速度が特に高く、フィルタの残りの有効寿命がほぼ終了している場合、プロセッサ38は、タービンシステム10を停止させることができ、劣化したフィルタのメンテナンスおよび/または交換をできる限り早く行うことができる。いくつかの実施形態では、予防動作は、劣化フィルタのメンテナンスおよび/または交換のスケジューリングを含むことができる。一部のタービンシステム10には、吸気部16内にセルフクリーニングシステムを含むことができる。セルフクリーニングシステムは、フィルタハウス40内のフィルタから粒子を吹き飛ばすことを試みるために、運転中に空気が吸気部16に流入する方向とは反対の方向に高速で空気を断続的に吹き付けることができる。セルフクリーニングシステムは予防動作のためのメンテナンスの一形態としてスケジュールすることができる。したがって、セルフクリーニングシステムは、圧力降下測定のみではなく、センサデータ(例えば、圧力、ダスト)および/または局所的状態(例えば、湿度、温度)に基づいて駆動することができる。
【0047】
さらに、プロセッサ38は、フィルタハウス40の各濾過段階における各フィルタの劣化速度を予測するためにフィルタ劣化予測モデルを使用することができるので、予防動作は、濾過段階におけるフィルタのメンテナンス動作および/または交換動作のスケジュールを決定することを含むことができる。例えば、最も多い量のダスト粒子にさらされる段階のフィルタは、予測された劣化速度に基づき、残りの寿命が比較的短い可能性があり、メンテナンスを実行し、および/またはフィルタを交換するための第1の日付をスケジュールすることができる。最小量のダスト粒子にさらされる第2段階(例えば、最終段階)のフィルタは、予測された劣化速度に基づくと、残りの寿命が比較的長い可能性があり、メンテナンスを実行し、および/またはフィルタを交換するための、第1の日付よりも遅い第2の日付をスケジュールすることができる。フィルタハウス40内の様々な他の濾過段階の交換および/またはメンテナンスを最適化することによって、最後の濾過段階における最終フィルタの寿命が強化される(例えば、最大化される)ようにスケジューリングを実施することができる。
【0048】
場合によっては、タービンシステム10を停止して、フィルタハウス40の最終段階でフィルタを交換またはメンテナンスすることができる。したがって、様々な他の濾過段階の交換および/またはメンテナンスを最適化することによって最終濾過段階の寿命を延ばすことにより、タービンシステム10の稼働時間を改善することができる。さらに、プロセッサ38は、毎回同じ順序ではなく、フィルタハウス40の段階、領域、またはゾーンによってセルフクリーニングシステムの実行を駆動することができる。さらに、またはあるいは、セルフクリーニングシステムは、予め設定された順序で実行してもよい。
【0049】
プロセッサ38は、タービンシステム10が動作している間に、性能データ、センサデータ、および/または局所的状態データ48を受信し続け、受信したデータを使用してフィルタ劣化予測モデルを更新することができる。このようにして、フィルタ劣化予測モデルは、タービンシステム10の変化する条件およびタービンシステム10の周囲の環境の局所的状態に適応する。理解されるように、開示技術は、より細かいレベル(例えば、濾過段階による)で、より良好なフィルタメンテナンスおよび/または交換スケジューリングを可能にすることができる。また、開示技術は予防メンテナンスを可能にすることができる。さらに、開示技術は、入口ダクト42に望ましくない圧力降下が生じる前に劣化したフィルタをメンテナンスおよび/または交換することにより、タービンシステムのより高い信頼性を提供することができる。
【0050】
さらに、圧縮機劣化予測ロジック30は、フィルタ劣化予測ロジック28と併用して、圧縮機18の劣化速度を予測することができる。それに応じて、
図4は、一実施形態による、様々な入力を受信する圧縮機劣化予測ロジック30およびフィルタ劣化予測ロジック28を含む、
図1のタービンシステム10のブロック図である。
図4に示すタービンシステム10は、吸気部16(例えば、フィルタハウス40、入口ダクト42)、圧縮機18、燃焼システム20、タービン12、コントローラ24、フィルタ劣化予測ロジック28などを含む
図1および
図2と同様の構成要素を多く含む。しかしながら、
図4はまた、水洗浄部60と圧縮機劣化予測ロジック30とを含む。いくつかの実施形態では、フィルタ劣化予測ロジック28および圧縮機劣化予測ロジック30は、メモリ34に記憶され、コンピューティングデバイス26のプロセッサ38によって実行することができることに留意されたい。さらに、またはあるいは、フィルタ劣化予測ロジック28および圧縮機劣化予測ロジック30のいずれかまたは両方をメモリ32に記憶し、コントローラ24のプロセッサ36によって実行することができる。
【0051】
理解されるように、圧縮機18の性能は、粒子が圧縮機18のブレードに堆積され、ブレードが汚れると劣化する可能性がある。水洗浄部60は、粒子を洗い流して圧縮機18を洗浄するよう機能する。水洗浄にはオンラインとオフラインの2種類がある。比較的軽い付着物が存在する場合、または初期段階の圧縮機ブレードが汚れた場合に、オンライン水洗浄を行うことができる。オンライン水洗浄は、タービンシステム10が作動している間に行うことができる。実質的にまたは比較的多くの汚れが存在する場合、または後期段階の圧縮機ブレードが汚れた場合に、オフライン水洗浄を行うことができる。オフライン水洗浄は、タービンシステム10が停止している場合に行うことができる。
【0052】
本実施形態のいくつかは、様々な圧縮機段の実際の汚染状態を監視し、圧縮機劣化予測ロジック30を使用して圧縮機18の劣化速度を予測することを可能にする。圧縮機劣化予測ロジックは、圧縮機劣化速度を予測する圧縮機劣化予測モデルを生成することができる。圧縮機劣化予測モデルは、上述したように、1つまたは複数の重み付きパラメータを含む圧縮機関数を提供するモデル(例えば、物理学ベースの数学モデル)とすることができる。
【0053】
圧縮機劣化予測モデルは、フィルタ劣化予測ロジック28のフィルタ劣化予測モデルからの出力などの、1つまたは複数の入力を受信することができる。すなわち、圧縮機劣化予測モデルは、フィルタハウス40の濾過段階における1つまたは複数のフィルタの予測された劣化速度を判断することができる。したがって、フィルタ劣化予測ロジック28は、フィルタ劣化速度の予測に局所的状態データ48を含むので、圧縮機劣化予測モデルは、圧縮機劣化速度の予測における局所的状態データ48も考慮する。
【0054】
圧縮機劣化予測モデルへの追加入力は、ダストセンサ44、22、ダストセンサ62、22、圧力センサ44、22、ならびに/もしくは温度および湿度センサ46、22からのデータなどのセンサデータを含むことができる。図示のように、ダストセンサ44、22は、フィルタハウス40の上流に配置され、ダストセンサ62、22は入口ダクト62、22のフィルタハウスの下流に配置される。したがって、プロセッサ38は、フィルタハウス40を通過して入口ダクト42に入る粒子の濃度、タイプ、および/またはサイズなどの、吸気部16に入るダスト粒子に関連するデータを追跡することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ38は、過去の測定値を分析することによって、ある時間にわたるダスト粒子データの傾向を判定することができる。
【0055】
さらに、圧力センサ44、22は、フィルタハウス40の下流に配置されているように示されているが、いくつかの実施形態では、圧力センサ44、22または追加の圧力センサ44、22は、フィルタハウス40の正面、フィルタハウス40の内部、および/またはサイレンサの後のフィルタハウス40の下流に配置することができる。特定の実施形態では、追加のまたはより少ないダストセンサおよび/または圧力センサを使用してもよく、
図4に示される場所とは異なる場所に配置してもよいことに留意されたい。
【0056】
いくつかの実施形態では、入力はまた、圧縮機18の前方(例えば、上流)の1つまたは複数の温度および湿度センサ64、22からの温度および湿度データを含むことができる。温度および湿度センサ64、22は、圧縮機入口の前の温度および相対湿度を取得することができる。理解されるように、高湿度は、湿度によってブレードおよび/または粒子が湿って粘着性になる可能性があるため、圧縮機ブレードが粒子をより早く蓄積する可能性があるという指標であり得る。さらに、高温は、粒子の表面特性を変化させる可能性があり、それによって、粒子がブレードに堆積する可能性が減少する。さらに、入力には、タービン動作モード、タービンシステム10の負荷および効率(例えば、質量流量)、入口抽気熱オン/オフ、ならびに湿式圧縮、霧化、および蒸発冷却などの動力補助手段などを含むことができる。
【0057】
フィルタ劣化予測モデルからのフィルタの予測される劣化速度、趨勢ダスト粒子データ(例えば、粒子サイズ、量、および/またはタイプ)、湿度、温度、ならびに/もしくはタービン質量流量に基づいて、圧縮機劣化予測モデルは、圧縮機18の圧縮速度を出力することができる。劣化速度は、粒子が堆積することによって圧縮機が汚れる速度に近い可能性がある。圧縮機劣化速度を使用して、以下に詳細に説明するように、1つまたは複数の予防動作を実行することができる。
【0058】
図5は、一実施形態による、圧縮機劣化速度を予測するのに適した処理70のフロー図である。処理70の以下の説明は、コンピューティングデバイス26のプロセッサ38を参照して説明されるが、処理70は、コントローラ24のプロセッサ36などの他のデバイス上に配置された他のプロセッサによって実行することができることに留意されたい。さらに、以下の処理70は、実行され得る多数の動作を記述するが、処理70は様々な適切な順序で実行してもよく、すべての動作が実行されなくてもよいことに留意されたい。処理70は、コンピューティングデバイス26によって完全に実行してもよく、または実行がコンピューティングデバイス26および/またはコントローラ24の間で分散されてもよいことを理解されたい。
【0059】
ここで処理70を参照すると、ブロック72、74、および76は、
図3の処理50のブロック52、54、および56と同様である。すなわち、プロセッサ38は、性能データ、センサデータ、および/または局所的状態データ48を受信し(ブロック72)、性能データ、センサデータ、および/または局所的状態データ48に基づいてフィルタ劣化予測モデルを生成し(ブロック74)、フィルタ劣化予測モデルを用いて1つまたは複数のフィルタ劣化速度予測を生成する(ブロック76)ことができる。そのようなステップは、フィルタ劣化予測ロジック28に含まれるコンピュータ命令として実施することができる。
【0060】
図5の処理70はまた、圧縮機劣化予測ロジック30に含まれるコンピュータ命令として実施することができる圧縮機劣化速度を予測することに関連する追加のステップを含む。例えば、プロセッサ38は、性能データ、センサデータ、および/またはフィルタ劣化速度に基づいて圧縮機劣化速度モデルを生成することができる(ブロック78)。いくつかの実施形態では、初期化中に、プロセッサ38は、試験中のセンサ測定値から得られた性能データ(例えば、圧力、ダスト粒子、温度、湿度)を使用して、圧縮機劣化予測ロジック30を生成することができる。さらに、いくつかの実施形態では、タービンシステム10が作動している間に得られたセンサデータを使用して、圧縮機劣化予測モデルを生成することができる。例えば、趨勢ダスト粒子データを使用することができる。趨勢ダスト粒子データは、フィルタハウス40を通過し、経時的に入口ダクト42に入るダスト粒子の濃度、タイプ、および/またはサイズの履歴変化を示すことができる。また、圧縮機入口前の温度および相対湿度、および/または質量流量などの、他のセンサデータを圧縮機劣化予測モデルで説明することができる。いくつかの実施形態では、局所的状態データ48を、圧縮機劣化予測モデルにおいて考慮してもよい。
【0061】
プロセッサ38はまた、圧縮機劣化速度モデルを使用して圧縮機劣化速度の予測を生成することができる(ブロック80)。プロセッサ38は、予測された圧縮機劣化速度を出力することができ、および/または予測された圧縮機劣化速度に基づいて1つまたは複数の予防動作を実行することができる(ブロック82)。例えば、プロセッサ38は、予測された圧縮機劣化速度に基づいて圧縮機18の残りの有効寿命を確認することができる。プロセッサ38は、1つまたは複数のグラフィック要素(例えば、グラフ、ゲージ、および/またはチャート)を使用して、圧縮機18の予測された劣化速度および/または残りの有効寿命を表示することができる。
【0062】
1つまたは複数の予防動作は、オンラインおよび/またはオフラインの水洗浄のスケジューリング、オンラインおよび/またはオフラインの水洗浄のスケジュールの実行、タービンシステム10の停止、または圧縮機ブレードおよびベーン18のメンテナンスおよび修理/交換のスケジューリングなどを含むことができる。例えば、プロセッサ38は、フィルタに粒子が堆積すると出力を変化させるフィルタ劣化予測モデルに基づいて圧縮機劣化速度を最適化するために水洗浄を開始することができる。すなわち、水洗浄は、タービンシステム10内の条件(例えば、ダスト粒子データの趨勢)を監視することによって、および/またはフィルタ劣化速度予測に基づいて、動的にスケジュールすることができる。水洗浄は、タービンシステム10が作動すると同時に瞬間的に(例えば、リアルタイムで)吸気部16に摂取される粒子のタイプ、濃度、および/またはサイズに基づくことができる。プロセッサ38は、比較的少ない量のダスト粒子が圧縮機入口近くの圧縮機ブレードの段に堆積した場合に、より頻繁にオンライン水洗浄をスケジュールすることができる。プロセッサ38は、圧縮機18の後段のブレードがより深く洗浄されることが望ましいと判断された場合、またはかなりの量のダスト粒子が圧縮機18のブレードに堆積したと判定された場合、オフライン水洗浄をスケジュールすることができる。したがって、プロセッサ38は、タービンシステム18を停止する時間をスケジュールして、オフライン水洗浄を実行することもできる。
【0063】
本発明の技術的効果には、フィルタハウス40および圧縮機18内のフィルタの状態ベースの監視を可能にすることが含まれる。特に、性能データ、センサデータ、および/または局所的状態データに基づくフィルタ劣化予測モデルを使用して、フィルタハウスの濾過段階のフィルタについて、1つまたは複数のフィルタ劣化速度を予測することができる。フィルタ劣化速度予測に基づいて、セルフクリーニングシステムの制御、メンテナンスおよび/または交換のスケジューリング、タービンシステム10の停止などの1つまたは複数の予防動作を実行することができる。また、性能データ、センサデータ、および/またはフィルタ劣化予測モデルによって出力された予測フィルタ劣化速度に基づく圧縮機劣化予測モデルを使用して、圧縮機劣化速度を予測することができる。圧縮機劣化速度に基づいて、タービンシステム10のダウンタイムの量を低減するために何らかの最適な方法でオンラインおよび/またはオフラインの水洗浄をスケジュールすること、圧縮機18のメンテナンスおよび/または交換をスケジューリングすること、ならびに/もしくはタービンシステム10を停止することなどの、1つまたは複数の予防動作を実行することができる。このように、開示した実施形態は、メンテナンススケジューリングおよびタービンシステム効率を向上させ、予防メンテナンスを可能にし、タービンシステム10のダウンタイムを低減する(例えば、信頼性をより高める)効果を有する。
【0064】
本明細書は最良の形態を含む発明の主題を開示するため、および、あらゆるデバイスまたはシステムを製作し、ならびに使用し、およびあらゆる組込方法を実行することを含む任意の当業者が本発明の主題を実施することを可能にするための例を用いる。本発明の主題の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。このような他の例が特許請求の範囲の文字通りの言葉と異ならない構造要素を有する場合、または、それらが特許請求の範囲の文字通りの言葉と実質的な差異のない等価な構造要素を含む場合には、このような他の例は特許請求の範囲内であることを意図している。