(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係るモータ101のドライバ100について、
図1〜
図8を参照して説明をする。
【0024】
図1は、本実施形態に係るドライバ100を正面側から視た斜視図である。
図2は、モータ101にドライバ100が設置された状態を示す概略構成図である。
【0025】
図2に示されるモータ101は、例えば、ファンモータとして使用される。モータ101は、ベースとなる支持体1と、支持体1に突設された回転シャフト3と、回転シャフト3に軸受部材2を介して回転自在に支持された略有底筒状のロータ7と、ロータ7の径方向内側に固定されたステータ5と、を備えている。
ステータ5には、巻線4が巻回されている。ロータ7の内周面には、ロータマグネット6が設けられている。巻線4とロータマグネット6とは、径方向に間隔をおいて配置されている。また、ロータ7の外周面には回転により冷却風を発生させる冷却ファン8が設けられている。
【0026】
上記のようなモータ101では、コントローラとなるドライバ100からの制御信号に基づき各相の巻線4への給電を切り替え、これによりステータ5に回転磁界を発生させる。そして、上記モータ101では、ステータ5で発生した回転磁界がロータマグネット6に作用することでロータ7が回転し、このロータ7とともに冷却ファン8も回転する。このような冷却ファン8の回転により、
図2の矢印Aで示される冷却風が生じる。
なお、
図1及び
図2のドライバ100は、冷却ファン8を駆動するモータ101のコントローラとして用いる場合を示しているが、これは一例であって様々な用途のモータに適用可能である。
【0027】
次に、
図1及び
図3、
図4、
図5A、
図5Bを参照してコントローラとなるドライバ100の構成について説明する。
ドライバ100は、
図2、
図3及び
図5Aに示されるように、筐体の一面を形成するアルミ基板10と、アルミ基板10の表面に形成された絶縁層11と、絶縁層11上の銅箔層12(
図5A参照)に接合された複数の電子素子13と、これら電子素子13が接合された側の面を覆う樹脂部材14とを有する。
絶縁層11上の銅箔層12及び電子素子13は、
図5Aに示されるように、アルミ基板10の上面に順次積層されている。また、絶縁層11はエポキシ樹脂により構成されている。
【0028】
なお、アルミ基板10は、
図4及び
図5Aに示されるように単体のアルミニウム層10Aから構成しても良い。また、このアルミ基板10は、
図5Bに示されるようにアルミニウム層10A上に、外面側にアルマイト処理を施すことにより酸化アルミニウム被膜からなる絶縁酸化膜10Bを一体に形成しても良い。そして、このような絶縁酸化膜10Bの形成により、外部から静電気が印加されることを遮断し、耐絶縁性の向上を図ることができる。
【0029】
上記複数の電子素子13では、ドライバ部品(例えば、マイコン、制御IC(Integrated Circuit)、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、コンデンサ、チョークコイルなど)を、ワンパッケージに集約したiDU(Integrated Driver Unit)を形成する。
また、iDUを形成する複数の電子素子13の内部にはメモリ機能が設けられている。
メモリ内に対しては、個体を特定できるコード、製造工程履歴、出荷検査データなどがデジタルデータとして書き込み/読み出し可能である。
【0030】
樹脂部材14は、
図3に示されるように電子素子13を上面から被覆するモールド樹脂部20と、電子素子13に電気的に接続されるコネクタ21と、モータ101に取り付けるための取付け部22とが一体化された構成である。
取付け部22は、アルミ基板10の周縁部に固定されてその内部に電子素子13が収容される枠体23と、枠体23の両側に外方に突出するように設けられた取付孔24とを有する。
そして、枠体23は、取付孔24に挿入した取付ねじ(図示略)を介してモータ101に脱着自在に取り付けられる。
【0031】
また、モールド樹脂部20は、アルミ基板10に設置した取付け部22の枠体23内に被覆樹脂を充填することにより形成される。
また、枠体23は他部材と別体に設けられているので、アルミ基板10の大きさ、取付位置に対応して適宜変更可能である。
【0032】
また、コネクタ21として、図中上部にモータ3相線(U,V,W)用コネクタ21Aが設けられ、図中下部に電源、GND、モータ駆動及びモータ停止のための指令DUTY用コネクタ21B及びCAN(Controller Area Network)通信が可能なコネクタ21Cがそれぞれ設けられている。
【0033】
そして、以上のように構成されたドライバ100では、電子素子13で発生した熱を、筐体の一面を形成するアルミ基板10を通じて効率良く外部に放出することができる。
また、上記ドライバ100では、モールド樹脂部20、コネクタ21及び取付け部22を一体化してなる樹脂部材14をアルミ基板10に設置可能とすることで、電子素子13のモールド、電子素子13への電気的接続、及びモータ101への取付け/取外し/位置調整を一括して行うことができ、モータ101への脱着を自在に行うことができる。
【0034】
また、上記ドライバ100では、樹脂部材14の取付け部22として電子素子13を収納可能な枠体23を備え、枠体23内にモールド樹脂部20を充填させるようにしている。そして、このような構成により、枠体23を通じて、モータ101へのドライバ取付け及びモールド樹脂部20の充填を容易に行うことができる。
【0035】
また、上記ドライバ100では、複数の電子素子13の内にメモリを有し、コネクタ21としてCAN(Controller Area Network)通信が可能なコネクタ21Cが設けられている。
そして、このような構成により、コネクタ21Cを通じて、電子素子13の内のメモリに各種データ(例えば、シリアル番号、製造工程履歴、出荷検査データなど)を容易に書き込む/読み出すことができる。
【0036】
また、上記ドライバ100は、冷却ファン8を駆動するモータ101の制御部として用いることで、冷却ファン8の効率的な駆動が可能となる。
【0037】
上記実施形態に示されるドライバ100は以下のように構成を変形しても良い。
【0038】
(変形例1)
上記ドライバ100では、絶縁層11と反対側に位置するアルミ基板10の背面を、黒色又は黒に近い暗色に着色すると良い。そして、このように構成することで、アルミ基板10の黒色表面により輻射率を向上させ、電子素子13の放熱性をさらに向上させることができる。
【0039】
(変形例2)
上記ドライバ100では、取付け部22として枠体23の両側に取付孔24を設ける構成を示したが、これに限定されず、枠体23を設けず、モールド樹脂部20の両側に直接、取付孔24を形成しても良い。
【0040】
(変形例3)
上記ドライバ100では、
図6に示されるように、絶縁層11とは反対側に位置するアルミ基板10の背面にヒートシンク30を設けても良い。
ヒートシンク30はアルミ基板10の背面に多数の突状体30Aがマトリックス状に配置された構成としても良い。なお、これら突状体30Aは、アルミ基板10の背面全面に設けても良いし、冷却ファン8からの冷却風Aが当たる送風域に部分的に設けても良い。
そして、上記のように構成することで、アルミ基板10及びヒートシンク30を通じて、電子素子13からの効率良い熱放出が可能となる。
【0041】
(変形例4)
上記ドライバ100では、ドライバ100のアルミ基板10を、モータ101のベースとなる支持体1側に配置した。しかし、これに限定されず、
図7に示すように、支持体1に基板支持部材31を設置し、この基板支持部材31を介してアルミ基板10がモータ101に対して反対側を向くように位置させても良い。なお、
図7では、モータ101は、有底筒状のケース50内に配置されており、ケース50の開口部を支持体1が閉塞している(以下の
図8も同様)。
このとき、アルミ基板10の背面側にヒートシンク30を設置し、ヒートシンク30にファンからの冷却風A´を導くようにしても良い。
【0042】
(変形例5)
上記ドライバ100の樹脂部材14では、コネクタ21のモータ3相線(U,V,W)用コネクタ21Aを、
図1、
図3、
図4及び
図6に示されるように枠体23の図中上部に位置するようにした。
しかし、これに限定されず、
図9に示されるように、コネクタ21のモータ3相線用コネクタ21A´を、枠体23からモールド樹脂部20が位置する前方側に突出するようにしても良い。
このとき、コネクタ21のモータ3相線用コネクタ21A´では、枠体23から前方側に垂直方向又は傾斜方向に突出させることで、コネクタ接続の自由度を増すことができ、配線のレイアウトを自在に行うことが可能となる。
【0043】
(変形例6)
また、アルミ基板10は例えばセラミック基板等の高熱伝導性基板であっても良い。また、コネクタ21CはCAN通信以外の通信仕様として、SPI通信や、その他規格化されていないオリジナル通信であっても良い。
【0044】
また、これに限定されず、
図8に示されるように、ドライバ100のアルミ基板10を、モータ101のベースとなる支持体1側でかつ回転シャフト3の近傍に配置しても良い。このとき、アルミ基板10に伝達された電子素子13の熱を、支持体1を通じて背面側に伝達した後、支持体1内を流通する循環風Bにより外部に排出しても良い。なお、この循環風Bは、ロータ7の回転によりケース50と支持体1の間隙部1Aを通じて吸排気すると良い。
また、
図7及び
図8は概略構成図であり、絶縁層11及び銅箔層12の記載は省略されている。
【0045】
以下、上記iDU(段落[0029]に記載のiDU)に相当するユニットとして、複数の(7つの)IPD(Intelligent Power Device)の構成および機能について説明する。
【0046】
まず、IPD200について説明する。
図10は、IPD200の構成を示すブロック図である。
IPD200は、IPDに入力される入力電力およびIPDが出力する出力電力を任意に制限することが可能なデバイスである。
IPD200は、入力ブロック201と、制御部202と、プリドライバ203と、三相モータ駆動出力ブロック204と、保護判定論理回路205と、を含んで構成される。
【0047】
入力ブロック201は、入力端子21B3に入力されるモータ駆動およびモータ停止のための指令を、モータ制御指令として制御部202に出力する。
【0048】
制御部202は、入力ブロック201からのモータ制御指令に基づいて、プリドライバ203へ指示信号を出力する。
【0049】
プリドライバ203は、制御部202からの指示信号に応じて、三相モータ駆動出力ブロック204を構成する各トランジスタへ駆動信号を出力し、各トランジスタのオン/オフ制御を行う。
【0050】
三相モータ駆動出力ブロック204は、三相インバータであり、電源(バッテリ)からの入力電力が供給されるコネクタ21B1と接続されており、プリドライバ203からの駆動信号に応じて、モータ101の3相コイルに接続されているU相出力端子21A1、V相出力端子21A2、W相出力端子21A3への通電を行う。
【0051】
保護判定論理回路205は、メモリ205aおよび電力演算器205bを含んで構成される。
メモリ205aは、所定の入力電力制限値、所定の出力電力制限値を書き込み、記憶し、読出すことが可能な電子素子である。ここで、所定の入力電力制限値、所定の出力電力制限値は、例えば、コネクタ21Bあるいはコネクタ21CによりIPD200のユーザによって、入力が可能な構成となっている。
【0052】
電力演算器205bは、入力電流モニタ回路206aが計測した入力電流、入力電圧モニタ回路206bが計測した入力電圧が入力され、入力電力を演算する。また、電力演算器205bは、出力電流モニタ回路207aが計測した出力電流、出力電圧モニタ回路207bが計測した出力電圧が入力され、出力電力を演算する。
【0053】
保護判定論理回路205は、演算した入力電力と、所定の入力電力制限値との比較を行い、入力電力判定結果を制御部202に対して出力する。また、保護判定論理回路205は、演算した出力電力と、所定の出力電力制限値との比較を行い、出力電力判定結果を制御部202に対して出力する。
【0054】
制御部202は、入力電力判定結果が、演算した入力電力≧所定の入力電力制限値のとき、例えばプリドライバ203が出力する駆動信号の電圧レベルを下降させる指示信号を出力する。これにより、三相モータ駆動出力ブロック204への入力電力を、所定の入力電力制限値に近づける制御を行うことが可能となる。
また、制御部202は、入力電力判定結果が、演算した入力電力<所定の入力電力制限値のとき、例えば不図示の警告表示回路により、ユーザに入力電力が所定の入力電力制限値に達していないことを知らせる。これにより、所定の入力電力制限値を再度設定することにより、三相モータ駆動出力ブロック204への入力電力を、所定の入力電力制限値に近づける制御を行うことが可能となる。
【0055】
また、制御部202は、出力電力判定結果が、演算した出力電力≧所定の出力電力制限値のとき、例えばプリドライバ203が出力する駆動信号のデューティー(DUTY)を下降させる指示信号を出力する。これにより、三相モータ駆動出力ブロック204からの出力電力を、所定の出力電力制限値に近づける制御を行うことが可能となる。
また、制御部202は、出力電力判定結果が、演算した出力電力<所定の出力電力制限値のとき、例えばプリドライバ203が出力する駆動信号のデューティー(DUTY)を上昇させる指示信号を出力する。これにより、三相モータ駆動出力ブロック204からの出力電力を、所定の出力電力制限値に近づける制御を行うことが可能となる。
【0056】
従来においては、電流制限をするためには、シャント抵抗の電圧降下をLSIで検出し、基準電圧を比較することで実施していた。
これに対して、IPD200では、入力電流、入力電圧をモニタし、入力電力を算出する。また、メモリ205aも追加して任意の入力電力制限値を決定(変更)できる。同様に、出力側にも出力電力を算出できる構成とすることで、入力側電力での電力制限、出力側での電力制限を製品により選択することが可能となる。
【0057】
すなわち、IPD200内部での電力算出機能追加、かつ、それをフィードバックすることで電力制限を行うことが可能となる。また、メモリ機能を追加する事により、カーメーカの要求ごとに、電力制限の値を変えることが可能になる。
【0058】
次に、IPD300について説明する。
図11は、IPD300の構成を示すブロック図である。
従来のIPDでは、過熱保護のため、サーミスタで温度を測定し、測定した温度を電圧に変換し、基準電圧値と比較することにより、過熱保護が必要か否かを判定していた。しかしながら、基準電圧値である加熱保護しきい値を変更するには、基準電圧値を供給するための電源が固定電源であるため、当該固定電源をハードとした場合、ハード変更せざるを得なかった。このため、カーメーカや車種ごとにIPD過熱保護しきい値を変えることが容易でなかった。そこで、IPD300では、メモリ機能を追加する事により、カーメーカ毎、あるいは製品機種毎に、過熱保護しきい値を変えることを可能にする。
【0059】
IPD300は、
図11に示すように、論理回路+プリドライバ3025と、保護判定論理回路305と、メモリ機能305aと、温度検出回路305bと、を含んで構成される。
なお、
図10に示した入力ブロック201と、三相モータ駆動出力ブロック204とは、
図11において省略している。
【0060】
論理回路+プリドライバ3025は、
図10に示す、入力ブロック201からのモータ制御指令に基づいて、プリドライバ203へ指示信号を出力する制御部202と、制御部202からの指示信号に応じて、三相モータ駆動出力ブロック204を構成する各トランジスタへ駆動信号を出力し、各トランジスタのオン/オフ制御を行うプリドライバ203と、から構成される。
【0061】
メモリ機能305aは、所定の過熱保護しきい値を書き込み、記憶し、読出すことが可能な電子素子である。ここで、所定の過熱保護しきい値は、例えば、不図示のコネクタ21CによりIPD300のユーザによって、入力が可能な構成となっている。
【0062】
温度検出回路305bは、抵抗素子3051と、サーミスタ3052と、可変電圧回路3053と、コンパレータ3054と、を含んで構成される。
【0063】
抵抗素子3051の一端は電源端子(
図10に示すコネクタ21B1)に接続され、他端はサーミスタ3052の一端およびコンパレータ3054の(−)入力端子に接続される。
【0064】
サーミスタ3052は、一端が抵抗素子3051の他端およびコンパレータ3054の(−)入力端子に接続され、他端が接地される。サーミスタ(thermistor)とは、温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体のことである。この現象を利用し、温度を測定するセンサとしても利用される。センサとしてはふつう−50℃から150℃程度までの測定に用いられる。
コンパレータ3054は、(−)入力端子が、抵抗素子3051の他端およびサーミスタ3052の一端の共通接点に接続され、サーミスタ3052の検出した電圧(サーミスタ検出電圧と呼ぶ)が入力され、(+)入力端子が、可変電圧回路3053に接続され、可変電圧回路3053の電圧(所定の過熱保護しきい値)が入力される。
【0065】
コンパレータ3054は、サーミスタ検出電圧≧所定の過熱保護しきい値となると、例えばL(ロー)レベルからH(ハイ)レベルとなる論理信号(判定結果)を保護判定論理回路305に出力する。
一方、コンパレータ3054は、サーミスタ検出電圧<所定の過熱保護しきい値の場合、Lレベルの論理信号(判定結果)を保護判定論理回路305に出力する。
【0066】
保護判定論理回路305は、コンパレータ3054の出力する判定結果を波形整形して波形整形された判定結果信号を論理回路+プリドライバ3025に対して出力する。
【0067】
論理回路+プリドライバ3025の論理回路は、判定結果信号が、サーミスタ検出電圧≧所定の過熱保護しきい値のとき、例えばプリドライバ203が出力する駆動信号のデューティー(DUTY)を下降させる指示信号を出力する。これにより、三相モータ駆動出力ブロック204からの出力電力を下降させ、サーミスタの検出電圧を所定の過熱保護しきい値に近づける制御を行うことが可能となる。
【0068】
また、論理回路+プリドライバ3025の論理回路は、判定結果信号が、サーミスタ検出電圧<所定の過熱保護しきい値のとき、例えばプリドライバ203が出力する駆動信号のデューティー(DUTY)を上昇させる指示信号を出力する。これにより、三相モータ駆動出力ブロック204からの出力電力を上昇させても、サーミスタの検出電圧を所定の過熱保護しきい値に近づける制御を行うことが可能となる。
【0069】
従来のIPDにおいては、上述の通り、過熱保護のため、サーミスタで温度を測定し、測定した温度を電圧に変換し、基準電圧値と比較することにより、過熱保護が必要か否かを判定していた。しかしながら、基準電圧値である加熱保護しきい値を変更するには、基準電圧値を供給するための電源が固定電源であるため、当該固定電源をハードとした場合、ハード変更せざるを得なかった。このため、カーメーカや車種ごとにIPD過熱保護しきい値を変えることが容易でなかった。
【0070】
そこで、IPD300では、メモリ機能を追加する事により、カーメーカ毎、あるいは製品機種毎に、過熱保護しきい値を変えることが可能となる。
【0071】
次に、IPD400について説明する。
図12は、IPD400の構成を示すブロック図である。
従来のIPDでは、制御部の機能を特定のモータ(例えばファンモータ)向けに特化しているため、当該IPDを他のモータに適用することができなかった。例えば、制御部の機能として、ファンモータの起動はゆっくりさせるが、オイルポンプの起動は急でなければならないため、当該IPDをオイルポンプに適用することができなかった。このように、当該IPDを適用できるモータが限られるため、製造する際の数量メリットが出せずコスト低減ができないという問題があった。
そこで、IPD400では、メモリ機能を追加する事により、様々なモータに適用できるため、同じIPDを製造する際の数量メリットをだしやすくすることを可能にする。
【0072】
IPD400は、
図12に示すように、制御部402と、プリドライバ403と、パワーデバイス404と、メモリ機能405aと、を含んで構成される。
なお、
図10に示した入力ブロック201は、
図12においては省略している。
【0073】
制御部402は、
図10に示す、入力ブロック201からのモータ制御指令に基づいて、プリドライバ403へ指示信号を出力する。
【0074】
プリドライバ403は、制御部402からの指示信号に応じて、パワーデバイス404を構成する各トランジスタへ駆動信号を出力し、各トランジスタのオン/オフ制御を行う。
【0075】
パワーデバイス404は、三相インバータであり、プリドライバ403からの駆動信号に応じて、モータ101の3相コイルに接続されているU相出力端子21A1、V相出力端子21A2、W相出力端子21A3への通電を行う。
【0076】
メモリ機能405aは、所定の機能を選択する設定データを書き込み、記憶し、読出すことが可能な電子素子である。ここで、所定の機能を選択する設定データは、例えば、コネクタ21B4によりIPD400のユーザによって、入力が可能な構成となっている。
本実施形態においては、設定データは機能ONと機能OFFの2種類がある。そして、
図12に示すように、メモリ機能405aが、機能OFFを制御部402、およびプリドライバ403に出力することにより、パワーデバイス404が第1の通電モードで動作し、モータ101の3相コイルに接続されているU相出力端子21A1、V相出力端子21A2、W相出力端子21A3への通電を行う。
【0077】
一方、メモリ機能405aが、機能ONを制御部402、およびプリドライバ403に出力することにより、パワーデバイス404が第2の通電モードで動作し、モータ101の3相コイルに接続されているU相出力端子21A1、V相出力端子21A2、W相出力端子21A3への通電を行う。
【0078】
ここで、第1の通電モードにおいては、制御部402は、例えばプリドライバ403が出力する駆動信号のデューティー(DUTY)を所定のDUTYとする第1指示信号を出力する。これにより、パワーデバイス404からの出力電力を、所定の出力電力値に近づける制御を行う(ここでは、モータ101の起動をゆっくりさせる)ことが可能となる。
【0079】
また、第2の通電モードにおいては、制御部402は、例えばプリドライバ403が出力する駆動信号のデューティー(DUTY)を上昇させる指示信号を出力する。これにより、パワーデバイス404からの出力電力を、第1の通電モードにおける所定の出力電力値よりも大きな出力電力値に近づける制御を行う(ここでは、モータ101の起動を急にさせる)ことが可能となる。
【0080】
従来のIPDにおいては、上述の通り、制御部の機能を特定のモータ(例えばファンモータ)向けに特化しているため、当該IPDを他のモータに適用することができなかった。例えば、制御部の機能として、ファンモータの起動はゆっくりさせるが、オイルポンプの起動は急でなければならないため、当該IPDをオイルポンプに適用することができなかった。このように、当該IPDを適用できるモータが限られるため、製造する際の数量メリットが出せずコスト低減ができないという問題があった。
【0081】
そこで、IPD400では、メモリ機能を追加する事により、様々なモータに適用できるため、同じIPDを製造する際の数量メリットをだしやすくすることが可能になる。
【0082】
次に、IPD600について説明する。
図13は、IPD600の構成を示すブロック図である。
従来のIPDでは、指令パルス入力周波数については固定の設定(例:5〜80Hz)しか出来ていなかった。ところが、車両上位ECUとIPDとの間では、指令パルス仕様として、例えば、A社仕様を例に挙げると、25Hz±2Hzのように周波数範囲が決められている。しかしながら、IPD側の指令パルスを受け付ける設定が上記のように、固定(例:5〜80Hz)であるため、上位ECUの指令が、例えば他社仕様として50Hzであるときは、車両上位ECUとIPDとの間で決められた指令パルス仕様としての「周波数範囲25Hz±2Hz」から逸脱してしまう。
しかし、当該上位ECUの指令は、指令パルス入力周波数としての固定の設定(例:5〜80Hz)の範囲であるため、システム(IPD)としては、異常と判断できずに動作してしまう。例えば、結果として、IPDは、IPD異常の状態でも動作し続けることで、ファンモータを駆動する場合はエンジン冷却過大となり車両燃費を低下させてしまう。
また、カーメーカ毎に指令パルス入力周波数は異なるため、各カーメーカ毎に指令パルス仕様を設定しなければならず、派生機種展開が出来なかった。
そこで、IPD600では、メモリ機能を追加する事により、指令パルス入力周波数を可変できるようにする。
【0083】
IPD600は、
図13に示すように、入力回路601と、指令範囲判定回路605と、メモリ機能605aと、を含んで構成される。
なお、
図10に示した制御部202と、プリドライバ203と、三相モータ駆動出力ブロック204とは、
図13においては省略している。
【0084】
入力回路601は、
図10に示す入力ブロック201に対応し、入力端子21B3に入力される上位ECU650からの指令である指令パルス入力周波数をモータ制御指令として指令範囲判定回路605に出力する。
【0085】
指令範囲判定回路605は、モータ制御指令として入力される指令パルス入力周波数が、メモリ機能605aに設定された指令範囲内にある場合、当該モータ制御指令を、
図10に示す制御部202へ出力する。
【0086】
制御部202は、指令範囲判定回路605からのモータ制御指令に基づいて、
図10に示すプリドライバ203へ指示信号を出力する。
【0087】
プリドライバ203は、制御部202からの指示信号に応じて、
図10に示す三相モータ駆動出力ブロック204を構成する各トランジスタへ駆動信号を出力し、各トランジスタのオン/オフ制御を行う。
【0088】
ここで、指令パルス入力周波数とは、上記駆動信号(指令パルス)の周波数を表す値である。プリドライバ203は、制御部202からの指示信号に応じて、駆動信号のデューティー(DUTY)を0%〜100%の範囲で変動させる。ここで、DUTYとは、当該駆動信号のHレベルの期間/当該駆動信号の1周期(=当該駆動信号のHレベルの期間×当該駆動信号の1周波数)として定義される値である。
【0089】
プリドライバ403は、制御部202からの指示信号に応じて、駆動信号の周波数、およびDUTYを決定し、駆動信号を、三相モータ駆動出力ブロック204を構成する各トランジスタへ駆動信号を出力し、各トランジスタのオン/オフ制御を行う。
【0090】
メモリ機能605aには、各カーメーカ毎の指令パルス仕様に所定の上限/下限(例えば±8%)を加えた指令範囲が、設定されている。ここで、
図13に示すように、設定された指令範囲を選択するために、コネクタ21B4が設けられている。ユーザは、コネクタ21B4を介して、いずれの指令範囲を選択することが可能となっている。
【0091】
指令範囲判定回路605は、モータ制御指令として入力される指令パルス入力周波数が、選択された指令範囲内にある場合、当該モータ制御指令を、制御部202へ出力する。
【0092】
制御部202は、指令範囲判定回路605からのモータ制御指令に基づいて、プリドライバ203へ指示信号を出力する。
【0093】
プリドライバ203は、制御部202からの指示信号に応じて、駆動信号の周波数、およびDUTYを決定し、駆動信号を、三相モータ駆動出力ブロック204を構成する各トランジスタへ駆動信号を出力し、各トランジスタのオン/オフ制御を行う。
【0094】
従来のIPDにおいては、上述の通り、指令パルスを受け付ける設定が固定であったため、指令範囲から逸脱してしまっても異常と判断できずに動作してしまった。これに対して、本実施形態におけるIPDにおいては、異常時に動作させたくないIPD600に対して、異常時の動作(フェールセーフ)へ移行することができるようになった。例えば、指令範囲判定回路605は、モータ制御指令として入力される指令パルス入力周波数が、メモリ機能605aに設定された指令範囲内にない場合、当該モータ制御指令に示す周波数を変えずに、駆動信号のDUTYが0%に近くなるような指示信号を制御部に出力させるようにして、モータを停止に近い状態にさせてしまうなどである。
また、従来のIPDでは、各カーメーカ毎に指令パルス仕様を設定しなければならず、派生機種展開が出来なかった。IPD600では、予め各カーメーカ毎の指令パルス仕様をメモリに設定してあるので対応が容易になり汎用性が増すようになった。
【0095】
すなわち、IPD600では、IPD内部にメモリ機能を追加することで、指令パルス入力周波数を可変できるようになった。
【0096】
次に、IPD700について説明する。
図14は、IPD700の構成を示すブロック図である。
IPD700は、IPDにメモリ機能を追加する事により、1つのハードで12V仕様、48V仕様を可変できるようにするデバイスである。
【0097】
IPD700は、12V/48V系共用電源回路706と、入力ブロック701と、制御部702と、12V/48V系可変プリドライバ703と、12V/48V系共用三相モータ駆動出力ブロック704と、保護機能回路705と、メモリ機能705aと、を含んで構成される。
【0098】
入力ブロック701は、入力端子21B3に入力されるモータ駆動およびモータ停止のための指令を、モータ制御指令として制御部702に出力する。
【0099】
制御部702は、入力ブロック701からのモータ制御指令に基づいて、12V/48V系可変プリドライバへ指示信号を出力する。
【0100】
12V/48V系可変プリドライバ703は、制御部702からの指示信号に応じて、12V/48V系共用三相モータ駆動出力ブロックを構成する各トランジスタへ駆動信号を出力し、各トランジスタのオン/オフ制御を行う。
【0101】
12V/48V系共用三相モータ駆動出力ブロック704は、三相インバータであり、電源(バッテリ)からの入力電力が供給されるコネクタ21B1に接続された12V/48V系共用電源回路706と接続されており、プリドライバ203からの駆動信号に応じて、モータ101の3相コイルに接続されているU相出力端子21A1、V相出力端子21A2、W相出力端子21A3への通電を行う。
【0102】
保護機能回路705は、メモリ機能705aに接続されて構成されている。
【0103】
メモリ機能705aは、12V/48V系における過電流検出の閾値、および12V系と48V系における過電流検出閾値の差分に相当するヒステリシス値を書き込み、記憶し、読出すことが可能な電子素子である。ここで、12V/48V系における過電流検出の閾値、12V系と48V系における過電流検出のヒステリシス値は、例えば、コネクタ21Bあるいはコネクタ21CによりIPD700のユーザによって、入力が可能な構成となっている。また、メモリ機能705aは、12V/48V系における過電圧検出の閾値、および12V系と48V系における過電圧検出閾値の差分に相当するヒステリシス値を書き込み、記憶し、読出すことが可能な電子素子である。
【0104】
また、メモリ機能705aは、12V/48V系における低電圧検出の閾値、および12V系と48V系における低電圧検出閾値の差分に相当するヒステリシス値を書き込み、記憶し、読出すことが可能な電子素子である。また、メモリ機能705aは、12V/48V系における電力制限検出の閾値、および12V系と48V系における電力制限検出閾値の差分に相当するヒステリシス値を書き込み、記憶し、読出すことが可能な電子素子である。
【0105】
メモリ機能705aは、IPD700が12Vと48Vのいずれの電圧系で動作するのかを表す動作電圧データと、12V系検出の際に用いる閾値(過電圧検出閾値、過電流検出閾値、低電圧検出閾値および電力制限検出閾値)と、ヒステリシス値(48V系と12V系との過電圧検出閾値、過電流検出閾値、低電圧検出の閾値および電力制限検出閾値の差分に相当する値)を保護機能回路705へ出力する。
【0106】
また、メモリ機能705aは、IPD700が12V系から48V系に、あるいは48V系から12V系へ切り替えられたときに、切り替えに伴う第2指示信号を12V/48V系可変プリドライバ703に出力する。そして、メモリ機能705aは、12V/48V系可変プリドライバ703に対して、制御部702からの指示信号に同期させて、12V/48V系共用三相モータ駆動出力ブロック704を構成する各トランジスタへ12V系または48V系に対応する駆動信号を出力させ、各トランジスタのオン/オフ制御を行わせる。
【0107】
保護機能回路705は、例えば、メモリ機能705aから入力される動作電圧データが12Vを示す場合、12V/48V系共用三相モータ駆動出力ブロック704と12V/48V系共用電源回路706との間に設けられた電圧測定部が測定した電圧値(電圧検出値)が、メモリ機能705aから入力される12V系検出の際に用いる過電圧検出閾値との大小を次のように比較し、過電圧検出判定結果を制御部202に対して出力する。
【0108】
制御部202は、過電圧検出判定結果が、電圧検出値≧過電圧検出閾値のとき、例えばプリドライバ203が出力する駆動信号のデューティー(DUTY)を下降させる指示信号を出力する。これにより、電圧検出値を過電圧検出閾値に近づける制御を行うことが可能となる。
【0109】
また、制御部202は、出力電力判定結果が、電圧検出値<過電圧検出閾値のとき、例えばプリドライバ203が出力する駆動信号のデューティー(DUTY)を上昇させる指示信号を出力する。これにより、電圧検出値を過電圧検出閾値に近づける制御を行うことが可能となる。
【0110】
一方、保護機能回路705は、例えば、メモリ機能705aから入力される動作電圧データが48Vを示す場合、上記電圧測定部が測定した電圧検出値が、メモリ機能705aから入力される12V系検出の際に用いる過電圧検出閾値およびヒステリシス値との大小を次のように比較し、過電圧検出判定結果を制御部202に対して出力する。
【0111】
制御部202は、過電圧検出判定結果が、電圧検出値≧(過電圧検出閾値+ヒステリシス値)のとき、例えばプリドライバ203が出力する駆動信号のデューティー(DUTY)を下降させる指示信号を出力する。これにより、電圧検出値を過電圧検出閾値に近づける制御を行うことが可能となる。
【0112】
また、制御部202は、出力電力判定結果が、電圧検出値<(過電圧検出閾値+ヒステリシス値)のとき、例えばプリドライバ203が出力する駆動信号のデューティー(DUTY)を上昇させる指示信号を出力する。これにより、電圧検出値を過電圧検出閾値に近づける制御を行うことが可能となる。
【0113】
従来においては、IPDは12V系電源専用のハードウェア設計になっており、欧州で対応が始まってきている48V系電源には対応出来ておらず、別のハードウェアを改めて設定する必要があった。
これに対して、IPD700では、従来の12V系と欧州対応の48V系とは、別々のものとして検討を行う必要がない。例えば、過電圧検出の閾値(過電圧検出閾値)、ヒステリシス値を12V/48Vで設定変更をすることが可能になる。なお、過電流検出の閾値(過電流検出閾値)および、ヒステリシス値、低電圧検出の閾値(低電圧検出閾値)および、ヒステリシス値、電力制限検出の閾値(電力制限検出閾値)および、ヒステリシス値を12V/48Vで設定変更をしてもよい。
【0114】
すなわち、IPD700メモリ機能を追加する事により、1つのハードで12V仕様、48V仕様を可変できるようになる。
【0115】
次に、IPD800について説明する。
図15は、IPD800の構成を示すブロック図である。また、
図16は、IPD800が出力するオーバラップ可変矩形波通電パターンを示す図である。
IPD800は、IPD800が通電する対象先であるモータ101が回転する際に発生する音量を静音化するためのデバイスである。
【0116】
IPD800は、入力ブロック801と、制御部802と、プリドライバ803と、三相モータ駆動出力ブロック804と、を含んで構成される。
【0117】
入力ブロック801は、入力端子21B3に入力されるモータ駆動およびモータ停止のための指令を、モータ制御指令として制御部802に出力する。
【0118】
制御部802は、入力ブロック801からのモータ制御指令に基づいて、プリドライバ803へ指示信号を出力する。
【0119】
プリドライバ803は、制御部802からの指示信号に応じて、三相モータ駆動出力ブロック804を構成する各トランジスタへ駆動信号を出力し、各トランジスタのオン/オフ制御を行う。
【0120】
三相モータ駆動出力ブロック804は、三相インバータであり、電源(バッテリ)からの入力電力が供給されるコネクタ21B1(
図15において不図示)と接続されており、プリドライバ803からの駆動信号に応じて、モータ101の3相コイルに接続されているU相出力端子21A1、V相出力端子21A2、W相出力端子21A3への通電を行う。
【0121】
制御部802は、メモリ802aを含んで構成される。
メモリ802aは、所定のオーバラップ(以下、可変オーバラップという)を書き込み、記憶し、読出すことが可能な電子素子である。ここで、所定のオーバラップは、例えば、コネクタ21Bあるいはコネクタ21CによりIPD800のユーザによって、入力が可能な構成となっている。
【0122】
なお、オーバラップとは、例えば、U相出力のHレベルと、W相出力のHレベルおよびV相出力のHレベルが、重複している期間を言う。当該オーバラップは、従来においては、150℃矩形波通電の場合、例えば15°に固定されていた。しかし、メモリ802aは、可変オーバラップを記憶しているので、150℃矩形波通電の場合、オーバラップを0°から75°の間で可変することが可能であり、静音化が最も図れる可変オーバラップの値に設定することが可能である。
【0123】
制御部802は、当該可変オーバラップを含んだ指示信号をプリドライバ803へ出力する。
【0124】
プリドライバ803は、制御部802からの指示信号に応じて、三相モータ駆動出力ブロック204が、
図16に示す矩形波通電パターンに従って、モータ101の3相コイルに接続されているU相出力端子21A1、V相出力端子21A2、W相出力端子21A3への通電を行うための駆動信号を出力する。
【0125】
これにより、IPD800は、各相への通電を、静音化を目的とする矩形波通電パターンにより行うことが可能となる。
【0126】
従来のIPDにおいては、モータ駆動に関して三相矩形波通電手法を選択した時、例えば目的を静音化とすると、150℃矩形波通電が考えられていた。従来のIPDは、オーバラップが固定されたパターンの通電をさせるドライバであり、ラップ量については固定の設定(例えば、上述の15°)しか出来ず、静音への効果に対して最適化が出来なかった。
これに対して、IPD800では、メモリ機能を追加し、モータの仕様に合わせてオーバラップの量を変え、最適な静音の設定ができる。
【0127】
すなわち、IPD800では、IPDにメモリ機能を追加する事により、オーバラップを固定設定から可変設定できるようになる。
【0128】
次に、IPD900について説明する。
図17は、IPD900の構成を示すブロック図である。
図17においては、IPD900を部品として有するASSEMBLY(アッセンブリー)910を示している。
従来のASSEMBLYでは、上位パワー系リレーの制御手段(オン/オフ制御)を持っていないため、上位ECUに上位パワー系リレーの制御を頼っていた。すなわち、上位ECUが、電源(バッテリ)からモータへ電力を供給する際に用いる複数のパワー系リレー全ての制御を行っていた。
かかる構成では、上位ECUに機能を多く持たせる必要があり、特にエンジンECUのような高機能なECUの場合はリレー制御が負担になってくることが予想される。
そのため、ASSEMBLY910では、IPD内部にリレー駆動回路とメモリ機能を追加し、上位パワー系リレーを制御(オン/オフ)できるようにすることを目的とする。
【0129】
図17に示すように、IPD900は、メモリ機能905aと、フェールセーフ機能905bと、リレー駆動回路906と、を含んで構成される。
また、上位ECU950は、リレー駆動回路950aを含んで構成される。
また、電源960は、プリチャージ用リレー921、ASSEMBLY910のコネクタ21B11から構成される電力供給パスを介してモータへ電力供給を行う。また、電源960は、上位パワー系リレー922、ASSEMBLY910のコネクタ21B12から構成される電力供給パスを介してモータへ電力供給を行う。
【0130】
ここで、上位ECU950のリレー駆動回路950aは、プリチャージ用リレー921に対してオン/オフを制御するために、H/Lとなる第1制御信号を出力するものとする。
また、IPD900のリレー駆動回路906は、上位パワー系リレー922に対してオン/オフを制御するために、H/Lとなる第2制御信号を出力するものとする。
【0131】
これにより、上位ECU950が制御する上位パワー系リレーが、2つ(プリチャージ用リレー921および上位パワー系リレー922)から1つ(プリチャージ用リレー921)になるので、カーメーカの車両設計において、上位ECUの上位パワー系リレーの制御機能を削減することができ、結果として、上位ECUの負荷を軽減することができる。
【0132】
また、IPD900内に、リレー駆動回路906とリレー制御機能を持たせたメモリ機能905aを取り込んだことで、ASSEMBLY910が任意のタイミングで、上位パワー系リレー922を制御(オン/オフ)できるようになった。任意のタイミングとは、例えば、フェールセーフ時に上位パワー系リレー922をオフすることが考えられる。
【0133】
このように、フェールセーフ機能905bと組み合わせることでモータへの電源供給を完全に遮断でき、より安全な保護状態をつくることができる。なお、モータへの電源供給を完全に遮断するには、上位ECU950のリレー駆動回路950aが、プリチャージ用リレー921をオフさせる必要があるため、フェールセーフ時に上位パワー系リレー922をオフしたことを上位ECU950に対して知らせる連絡信号を出力する。
【0134】
ただし、全てのフェールセーフで上位パワー系リレーをオフする訳ではなく、フェールセーフ項目毎に必要に応じてリレー制御(オン/オフ)設定ができるようにしておくように、メモリ機能905aで設定しておくのが望ましい。
【0135】
従来のASSEMBLYにおいては、上述の通り、上位ECUに機能を多く持たせる必要があり、特にエンジンECUのような高機能なECUの場合はリレー制御が負担になってくることが予想される。そこで、ASSEMBLY910では、IPD900内部にリレー駆動回路906とメモリ機能905aを追加し、上位パワー系リレー922を制御(オン/オフ)できるようにする。
【0136】
これにより、カーメーカの車両設計において、上位ECU950の上位パワー系リレー922の制御機能を削減することができ、結果として、上位ECU950の負荷を軽減することができる。
【0137】
以上で、7つのIPD(IPD200、300、400、600、700、800、900)の構成および機能について説明したので、引き続き、上記iDUの変形例として、2つのiDU120、iDU130の構成および機能について説明する。
【0138】
まず、iDU120について説明する。
従来のiDUでは、市場不具合などで返却された製品の不良特定に時間がかかってしまう。原因特定までの解析手順が多いためである。
また、不具合品を車両から取り出すときの扱い方が悪く、製品状態を悪化させてしまったなどの情報がこない場合がある。
【0139】
これに対して、iDU120では、解析スタート時のタイミングでおおよその不良原因が確認できるように、iDU120内のメモリに過電流、過電圧、過熱、低電圧などフェイル情報を残す。
また、衝撃、振動、落下(例えばジャイロセンサで見る)、車速異常(例えば風速検出を圧力で見る)、水侵入の検出など、車両環境の異常を残す。
【0140】
このように、iDU120では、メモリに様々なフェイル情報を残し、読み出しできる構成を有する。
これにより、iDU120では、市場不具合などで返却された製品の故障原因がメモリの情報を読み出すことで、確認することができる。また、不具合品を車両から取り出すときの扱い方が荒い場合(衝撃、落下をしてしまった)があるので、メモリ情報に衝撃や落下のフェイルを確認すれば、不良解析時に切り分けができる。また、カーメーカやTire1(完成車メーカに直接部品を供給するメーカ)へ早急に一報を伝えることができる。
【0141】
最後に、iDU130について説明する。
図18は、iDU130の構成を示すブロック図である。
自動車セキュリティの脅威として、自動車機能の乗っ取り、遠隔操作および、それに伴う人命被害など様々なリスクが想定されている。
近年は車載電子機器に起因する情報セキュリティを脅かす事件や事故などが確認されており、情報セキュリティの強化が必要となっている。情報セキュリティを脅かす事件や事故はソフトの脆弱性を利用することが多い。
iDU内のメモリはCAN通信を使用し、書き込みや読み出しを想定しており、情報セキュリティの観点からハード、ソフト両方で対策が必要となる。
【0142】
そこで、iDU130では、メモリ134はハード、ソフト両方の対策でセキュリティ強化を図る。
ハード対策としては、ショートピンや、電圧入力端子などで物理的にメモリアクセスの制限をする。つまり、
図18に示すように、ショートピン(コネクタ21C1)と電圧入力端子(コネクタ21B2)との間にショート線を配置しておく。なお、
図18においては、iDU130の外部にショート線が配置されているが、iDU130の内部に配置されてもよい。
【0143】
メモリ書き込み読み出し装置131は、iDU130が備える回路であって、ショート検出回路132と、通信入出力回路133と、メモリ134と、を含んで構成される。
【0144】
ショート検出回路132は、コネクタ21B2にノイズが発生した場合に、ノイズを検出したことを示す検出信号を通信入出力回路133に出力する。
【0145】
これにより、通信入出力回路133は、メモリ134が記憶するデータの通信ピン(コネクタ21C)を介した外部とのやりとり(入出力)を禁止する。なお、検出信号が入力されていない期間は、メモリ134が記憶するデータのコネクタ21Cを介した外部とのやりとりは禁止されることなく、実行可能である。
【0146】
このように、ハード対策としては、物理的にメモリアクセスの制限を行う。
また、ソフト対策としては、不正アクセスできない様に、通信情報を暗号化するなどにより、操作制限を設ける。
【0147】
すなわち、iDU130では、ソフトとハード両方で対策することにより、従来よりセキュリティ強化できる。
【0148】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記実施形態では、モータ101は、例えば、ファンモータとして使用される場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、モータ101から冷却ファン8を取り除き、モータ101をさまざまな用途に用いることができる。これに併せてドライバ100をさまざまな用途に使用されるモータ101に適用することができる。