(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記のように、偏光子の両側で、異なる透湿度の透明保護フィルムを用いた偏光フィルムにおいても、高透湿度の透明保護フィルムの透湿度が高すぎる場合には、加湿環境下において外部からの水の侵入によって偏光子が吸湿して偏光度劣化を引き起こす問題があった。一方、前記高透湿度の透明保護フィルムについて、加湿環境下における外部からの水の侵入を防ぐため、透湿度を低く設定すると、水系接着剤を用いて偏光フィルムを製造する場合に、当該接着剤の乾燥不足によって、偏光フィルムの偏光機能が低下することが分かった。
【0006】
本発明は、偏光子の両面に、水系接着剤層を介して、低透湿および高透湿の透明保護フィルムを有する偏光フィルムであって、加湿環境下での偏光度低下を抑制することができる偏光フィルムを提供することを目的とする。
【0007】
さらに本発明は、前記偏光フィルムを用いた液晶パネルを提供すること、さらには前記偏光フィルムまたは液晶パネルムを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を下記偏光フィルム等により、上記課題を解決できることを見出だし本発明を完成するに到った。
【0009】
即ち本発明は、
偏光子の両面に、水系接着剤層を介して、第1透明保護フィルムおよび第2透明保護フィルムを有する偏光フィルムであって、
前記第1透明保護フィルムは、透湿度(p1)が370〜430g/m
2/24hであり、
前記前記第2透明保護フィルムは、透湿度(p2)が1〜15g/m
2/24hあることを特徴とする偏光フィルム、に関する。
【0010】
前記偏光フィルムにおいて、前記偏光子の厚みが5〜25μmであることが好ましい。
【0011】
前記偏光フィルムにおいて、前記第1透明保護フィルムが、セルロース樹脂フィルムを有することが好ましい。
【0012】
前記偏光フィルムにおいて、前記第1透明保護フィルムは、表面処理層を有することができる。
【0013】
前記偏光フィルムにおいて、前記第1透明保護フィルムの厚みが25〜47μmであることが好ましい。
【0014】
前記偏光フィルムにおいて、前記第2透明保護フィルムが、環状ポリオレフィン樹脂フィルムを有することが好ましい。
【0015】
前記偏光フィルムにおいて、前記第2透明保護フィルムの厚みが10〜25μmであることが好ましい。
【0016】
また本発明は、液晶セル、並びに、前記液晶セルの視認側および背面側に偏光フィルムが配置された液晶パネルであって、
前記液晶セルの視認側の偏光フィルムとして、前記偏光フィルムが、当該偏光フィルムの第1透明保護フィルムが視認側、第2透明保護フィルムが液晶セル側になるように配置されていることを特徴とする液晶パネル、に関する。
【0017】
また本発明は、前記液晶パネルが用いられていることを特徴とする液晶表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の偏光フィルムは、偏光子の片面に高透湿度の透明保護フィルムを、他の片面に低透湿度の透明保護フィルムを、それぞれ有し、いずれの透明保護フィルムも水系接着剤層を介して設けられている。さらに、本発明の偏光フィルムでは、高透湿度の透明保護フィルムとして透湿度(p1)が370〜430g/m
2/24hであるものを選択し、かつ、低透湿度の透明保護フィルムとして透湿度(p2)が1〜15g/m
2/24hを選択し、これらを組わせて用いている。かかる制御された低透湿および高透湿の透明保護フィルムの使用によって、加湿環境下での偏光フィルムの加湿耐久性を向上させて、偏光度低下を抑制している。
【0019】
前述のように、高透湿度の透明保護フィルムと低透湿度の透明保護フィルムを水系接着剤により貼り合わせて得られる偏光フィルムでは、高透湿度の透明保護フィルムにおいて透湿度が低く(例えば、透明保護フィルムの厚みを大きく)なるように設定した場合には、加湿環境下での偏光子の劣化による偏光度の低下が見られた。これは、高透湿度の透明保護フィルムを用いた場合であっても、透湿度が比較的に小さい場合には、乾燥時に偏光子が蒸し焼き状態となって、結晶度が低く耐水性の弱い偏光子となってしまうことによるものと考えられる。その一方で、本発明のように、高透湿度の透明保護フィルムにおいて透湿度を高くなり過ぎない(例えば、透明保護フィルムの厚みを薄くなり過ぎない)ように設定することで、乾燥時の蒸し焼き状態を防ぐことができ、結晶度が高い耐水性の強い偏光膜が得られたと考えられる。
【0020】
このように、本発明は、加湿環境下における偏光フィルム中の偏光子の劣化メカニズムを鋭意調査し、偏光子の劣化には、偏光子が充分に乾燥されているか否かの影響が大きいことが分かったとの検討結果に基づくものである。本発明は、前記検討結果から、前記のように透湿度(p1)および透湿度(p2)の前記所定範囲を満足する透明保護フィルムをそれぞれ選択することが、実使用環境下において光学加湿耐性の強い偏光フィルムを作製することに貢献しているものと推察している。
【0021】
本発明の偏光フィルムは、例えば、モバイル向けの偏光フィルムに有用である。モバイル向けの偏光フィルムの要求特性は低収縮性かつ高耐久性である。偏光フィルムの低収縮化は偏光子の厚みを薄くすることにより図れるが、一方、加湿環境下での光学特性および機械特性は著しく低下し易く、偏光度の低下(ΔP)として現れる。本発明の偏光フィルムでは、薄型偏光子を用いた場合においても、加湿環境下での光学特性の劣化を抑制することができる。
【0022】
また、本発明の偏光フィルムは、例えば、液晶セル(例えば、IPSモードの液晶セル)の視認側において好適に適用することができる。このように視認側に適用された偏光フィルムにおいて、低透湿度(かつ低位相差)の透明保護フィルムは液晶セル側に、高透湿度の透明保護フィルムは視認側になるように配置される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の偏光フィルムの実施形態について、以下に図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1Aに示すように、本発明の偏光フィルム(P)は、偏光子(a)の両面に、水系接着剤層(c1、c2)を介して、第1透明保護フィルム(b1)および第2透明保護フィルム(b2)を有する。本発明の偏光フィルム(P)は、液晶セルの視認側において好ましく適用され、第1透明保護フィルム(b1)が視認側になり、第2透明保護フィルム(b2)が液晶セル側になるように配置される。
図1Aに示す偏光フィルム(P)では、第1透明保護フィルム(b1)が1層の場合を示している。また、
図1Bに示す偏光フィルム(P)ように、第1透明保護フィルム(b1)としては、基材フィルム(b11)に表面処理層(b12)を有するものを用いることができる。
【0026】
図2に示すように、
図1A(
図1Bについても同様)の偏光フィルム(P)は、液晶セル(C)の視認側に配置されて液晶パネルを形成することができる。
図2では、粘着剤層(A)を介して、前記偏光フィルム(P)が視認側に配置されている。なお、
図2では、図示していないが、液晶セルの背面側には、他の偏光フィルムが配置される。
【0027】
<偏光子>
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエン系配向フィルムなどが挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。
【0028】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0029】
前記偏光子の厚みは水分による膨張を抑える観点から5〜25μmのものを用いるのが好ましい。前記厚みは薄型化の観点から23μm以下であるのが好ましく、さらには20μm以下、さらには15μm以下であるのが好ましい。一方、偏光子の厚みは光学特性、耐久性の観点から5μm以上、さらには7μm以上であるのが好ましい。
【0030】
<透明保護フィルム>
前記のように、第1透明保護フィルム(b1)には、透湿度(p1)が370〜430g/m
2/24hであるものを用いる。前記透湿度(p1)は水系接着剤を用いて偏光フィルムを製造する場合に、当該接着剤の乾燥不足によって、偏光フィルムの偏光機能が低下する観点から、390〜410g/m
2/24hであるのが好ましい。前記透湿度(p1)が370g/m
2/24h未満の場合には加湿環境下での耐久性が十分ではなく、偏光度の低下を十分に抑制することができない。一方、前記透湿度(p1)が430g/m
2/24hを超える場合にも、加湿環境下での耐久性が十分ではなく、偏光度の低下を十分に抑制することができない
【0031】
一方、第1透明保護フィルム(b2)には、透湿度(p2)が1〜15g/m
2/24hであるものを用いる。前記透湿度(p2)は光学信頼性の観点から、10〜14g/m
2/24hであるのが好ましい。前記透湿度(p2)が15g/m
2/24hを超える場合には、加湿環境下での耐久性が十分ではなく、偏光度の低下を十分に抑制することができない。
【0032】
本発明の偏光フィルムは、一方の第2透明保護フィルム(b2)には透湿度を極力に低く制御した低透湿度(p2)のものを用いるとともに、もう一方の第1透明保護フィルム(b1)には透湿度を所定範囲の高透湿度(p1)に制御したもの用いることにより、加湿環境下での偏光度低下を抑制したものである。前記抑制をより有効に行うには、例えば、高透湿度(p1)と低透湿度(p2)との比(p1/p2)が33〜90を満足するように制御するのが好ましい。
【0033】
第1、第2透明保護フィルム(b1,b2)を構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0034】
第1、第2透明保護フィルム(b1,b2)の透湿度(p1,p2)は、各透明保護フィルムを形成する材料および厚みにより制御することができる。
透明保護フィルムの厚みは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜200μm程度である。特に1〜100μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、さらには5〜80μmの薄型の場合に好適である。
【0035】
前記第1透明保護フィルム(b1)を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シクロオレフィン系樹脂フィルム等が挙げられるが、これらのなかでもセルロース樹脂が透湿度の点から好ましい。また、前記透湿度(p1)の制御の観点から、前記第1透明保護フィルム(b1)の厚みは25〜47μmであることが好ましい。
【0036】
前記第1透明保護フィルム(b1)は、
図1Aに示すように、単独フィルムとして、前記透湿度(p1)を満足してもよく、
図1Bに示すように、前記基材フィルム(b11)に表面処理層(b12)を設けた表面処理層付き透明保護フィルムとして前記透湿度(p1)を満足してもよい。即ち、前記表面処理層付き透明保護フィルムは、表面処理層を含む全体として、370〜430g/m
2/24hの透湿度(p1)を満足するものが用いられる。また前記表面処理層付き透明保護フィルムは、前記第1透明保護フィルム(b1)と同様の厚みであることが好ましい。即ち、前記表面処理層付き透明保護フィルムは、表面処理層の厚みを含めて、32〜47μmであること好ましい。
【0037】
前記第1透明保護フィルム(b1)として、前記表面処理層付き透明保護フィルムを用いる場合には、前記基材フィルム(b11)は前記透湿度(p1)を満足する必要はない。むしろ、基材フィルム(b11)は、透湿度が650〜1200g/m
2/24hの高透湿度のものを用いることが好ましい。当該高透湿度の基材フィルム(b11)と表面処理層(b12)の組み合わせにより、全体として前記透湿度(p1)を満足するように制御した表面処理層付き透明保護フィルムを用いることが好ましい。前記表面処理層付き透明保護フィルムとしては、表面処理層付きセルロース樹脂フィルムが好ましい。前記基材フィルム(b11)の厚み25〜40μmであるのが好ましい。
【0038】
表面処理層としては、ハードコート層、アンチグレア機能付きハードコート層、反射防止機能付きハードコート層等が挙げられる。これらハードコート層は、水分に対するバリア層として機能することから好ましい。また、表面処理層としては、ハードコート層等の表面処理層を別途設けた基材フィルムを、前記表面処理層が視認側になるように、粘着剤層を介して、他の基材フィルムに貼り合わせることにより設けることもできる。
【0039】
ハードコート層の鉛筆硬度は、カール、耐クラック性の観点から4H以下であるのが好ましい。なお、ハードコート層は耐擦傷性を有するものであればよく、鉛筆硬度H以上の比較的硬いものであってもよく、H未満(HB以下)の比較的軟らかいものであってもよい。ハードコート層の鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4の引っかき硬度試験(鉛筆法)に準じて加荷重500gにより測定される。
【0040】
前記ハードコート層の形成材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線や光で硬化する電離放射線硬化性樹脂があげられる。前記形成材料のなかでも、紫外線硬化性樹脂が好ましい。
【0041】
前記紫外線硬化型樹脂としては、例えば、光(紫外線)により硬化するアクリロイル基およびメタクリロイル基の少なくとも一方の基を有する(メタ)アクリル系硬化型化合物が好ましい。例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
前記紫外線硬化型樹脂には、例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等が挙げられる。
【0043】
前記表面処理層(例えば、ハードコート層)の厚みは0.5〜30μmにあるのが好ましく、さらには1〜20μmであるのが好ましい。
【0044】
前記ハードコート層は、例えば、前記第1透明保護フィルム(b1)にハードコート層形成材料を塗工して、例えば、紫外線照射により硬化させることにより形成することができる。なお、他の表面処理層は各種手段により形成することができ、例えば、アンチグレア機能付きハードコート層、反射防止機能付きハードコート層の場合には、周知手段により適宜に、アンチグレア機能、反射防止機能を付与することができる。
【0045】
一方、前記第2透明保護フィルム(b2)を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられるが、これらのなかでも環状ポリオレフィン樹脂が透湿度の点から好ましい。また、前記透湿度(p2)の制御の観点から前記第2透明保護フィルムの厚みは10〜25μmであることが好ましい。
【0046】
また、前記第1、第2透明保護フィルムは、面内位相差値が小さいものを用いることができる。特に、本発明の偏光フィルムをIPSモードの液晶セルに適用する場合には、前記第2透明保護フィルムは面内位相差が小さいものが好ましく、面内位相差値が5nm以下のものが好適である。
【0047】
<水系接着剤層>
前記第1、第2透明保護フィルム(b1,b2)と偏光子(a)は、水系接着剤層(c1,c2)を介して積層される。
【0048】
水系接着剤層は水系接着剤により形成される。水系接着剤の種類は特に制限されず、種々のものを用いることができる。前記接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されない。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。水系接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。
【0049】
水系接着剤の塗工方式は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等が挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
【0050】
また、前記水系接着剤の塗工は、最終的に形成される水系接着剤層の厚みが30〜300nmになるように行うのが好ましい。前記水系接着剤層の厚みは、さらに好ましくは60〜250nmである。
【0051】
<介在層>
前記第1、第2透明保護フィルム(b1,b2)と偏光子(a)は、水系接着剤層(c1,c2)の他に、さらに易接着層、下塗り層(プライマー層)などの介在層を介して積層することができる。
【0052】
易接着層は、例えば、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、シリコーン系、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリビニルアルコール骨格などを有する各種樹脂により形成することができる。これらポリマー樹脂は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また易接着層の形成には他の添加剤を加えてもよい。具体的にはさらには粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤などを用いてもよい。
【0053】
易接着層は、通常、透明保護フィルムに予め設けておき、当該透明保護フィルムの易接着層側と偏光子とを水系接着剤層により積層する。易接着層の形成は、易接着層の形成材を透明保護フィルム上に、公知の技術により塗工、乾燥することにより行われる。易接着層の形成材は、乾燥後の厚み、塗工の円滑性などを考慮して適当な濃度に希釈した溶液として、通常調整される。易接着層は乾燥後の厚みは、好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.02〜2μm、さらに好ましくは0.05〜1μmである。なお、易接着層は複数層設けることができるが、この場合にも、易接着層の総厚みは上記範囲になるようにするのが好ましい。
【0054】
下塗り層(プライマー層)は、偏光子と透明保護フィルムとの密着性を向上させるために形成される。プライマー層を構成する材料としては、透明保護フィルムと偏光子との両方にある程度強い密着力を発揮する材料であれば特に限定されない。たとえば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂などが用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0055】
<粘着剤層>
前記粘着剤層の形成には、適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。
【0056】
これら粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとしてアクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0057】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤を剥離処理したセパレータなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を形成した後に転写する方法、または粘着剤を直接塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0058】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の粘着剤を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を加熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0059】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜10分、特に好ましくは、10秒〜5分である。
【0060】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0061】
粘着剤層の厚みは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは、2〜50μm、より好ましくは2〜40μmであり、さらに好ましくは5〜35μmである。
【0062】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0063】
<液晶パネル>
本発明の偏光フィルム(P)は、
図2に示すように、液晶セル(C)の視認側の偏光フィルムとして好適に用いられて、液晶パネルを形成する。本発明の偏光フィルム(P)は、第1透明保護フィルム(b1)が視認側、第2透明保護フィルム(b2)が液晶セル(C)側になるように配置される。液晶パネルでは、液晶パネルの背面側にも偏光フィルムが配置されるが、当該偏光フィルムに特に制限はない。
【0064】
液晶セルは、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうるが、本発明の液晶パネルには、IPSモードの液晶セルが好適に用いられる。
【0065】
液晶パネルの形成には、前記偏光フィルムの他に、他の光学層を適用することができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶パネルの形成に用いられることのある光学層を、液晶セルの視認側および/または背面側において1層または2層以上用いることができる。
【0066】
<液晶表示装置>
液晶表示装置には、上記液晶パネルが用いられ、必要に応じて照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成される。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。また、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。
【実施例】
【0067】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0068】
<偏光子の作製:厚み12μm>
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%、厚さ30μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に浸漬し、膨潤させながらPVA系樹脂フィルムの長さが元長の2.0倍となるように一軸延伸を行った。次いで、0.3重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=0.5/8)の30℃のヨウ素溶液中に浸漬し、PVA系樹脂フィルムの長さが元長の3.0倍となるように一軸延伸しながら染色した。その後、6ホウ酸4重量%、ヨウ化カリウム5重量%の水溶液中で、PVA系樹脂フィルムの長さが元長の6倍となるように延伸した。さらに、ヨウ化カリウム3重量%の水溶液(ヨウ素含浸浴)でヨウ素イオン含浸処理を行った後、60℃のオーブンで4分間乾燥し、厚さ12μmの偏光子を得た。
【0069】
上記偏光子の作製において、ポリビニルアルコールフィルムの厚み、総延伸倍率を制御して、厚み22μmの偏光子を得た。
【0070】
<第1透明保護フィルム(b1)>
≪表面処理層付き透明保護フィルム(b1−1)≫
基材フィルム(b11):厚み25μmのトリアセチルセルロースフィルムにケン化処理を施したものを用いた。当該基材フィルムの透湿度は1200g/m
2・24hであった。
アクリル系ハードコート樹脂(大日本インキ化学工業(株)製,ユニディック17−813)をイソプロピルアルコールに分散させた固形分濃度25重量%の塗工液を前記基材フィルム(b11)の片面に塗布し、80℃で2分間乾燥させ、さらに紫外線処理することにより、厚さ7μmのハードコート層(鉛筆硬度3H)を形成し、ケン化処理を施して用いた。得られた表面処理層付き透明保護フィルム(b1−1)の厚みは32μm、透湿度は400g/m
2・24hであった。
【0071】
≪表面処理層付き透明保護フィルム(b1−2)≫
表面処理層付き透明保護フィルム(b1−1)において、基材フィルム(b11)の代わりに、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムにケン化処理を施したもの(当該基材フィルムの透湿度は650g/m
2・24hであった)を用いたこと以外は、同様の操作を行った。得られた表面処理層付き透明保護フィルム(b1−2)の厚みは47μm、透湿度は350g/m
2・24hであった。
【0072】
<第2透明保護フィルム(b2)>
フィルム(b2‐1):厚さ13μmの環状ポリオレフィンフィルム(日本ゼオン社製:ZEONOR)にコロナ処理を施して用いた。当該フィルム(b2‐1)の透湿度は12g/m
2・24hであった。
フィルム(b2‐2):厚さ23μmの環状ポリオレフィンフィルム(日本ゼオン社製:ZEONOR)にコロナ処理を施して用いた。当該フィルム(b2‐2)の透湿度は5g/m
2・24hであった。
【0073】
<透湿度>
JIS Z0208に記載の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に基づいて測定した。
【0074】
実施例1
上記偏光子(厚み12μm)の両面に、水系接着剤層の厚さが0.1μmになるようにポリビニルアルコール系接着剤を塗布しながら、上記第1透明保護フィルム(b1−1:表面処理層を設けていない側)および第2透明保護フィルム(b21)を貼合せたのち、50℃で5分間の乾燥を行って偏光フィルムを作製した。
【0075】
実施例2〜4、比較例1〜2
実施例1において、偏光子の種類(厚み)、第1、2透明保護フィルムの種類を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。
【0076】
<粘着剤層の形成>
(アクリル系ポリマー(A1)の調製)
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート74.8部、フェノキシエチルアクリレート23部、N−ビニル−2−ピロリドン1.5部、アクリル酸0.3部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.4部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー]混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)160万、Mw/Mn(数平均分子量)=3.7のアクリル系ポリマー(A)の溶液を調製した。
【0077】
前記アクリル系ポリマー(A)溶液の固形分100部に対して、イソシアネート架橋剤(三井化学社製のタケネートD160N,トリメチロールプロパンヘキサメチレンジイソシアネート)0.1部、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)0.3部、およびγーグリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製のKBM−403)0.2部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。上記粘着剤溶液を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)からなる離型シート(セパレータ)の表面に、乾燥後の厚みが25μmになるように塗布し、乾燥して、粘着剤層を形成した。
【0078】
実施例および比較例で得られた偏光フィルムについて、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
<加湿耐久性:偏光度変化の測定>
各例で得られた偏光フィルムの第2透明保護フィルム側を、上記の粘着剤層を介してガラスに貼り合わせたものをサンプルとした。当該サンプルを、85℃/85%R.H.の恒温恒湿機に500時間投入した。投入前と投入後の偏光フィルムの偏光度を、積分球付き分光光度計(日本分光(株)製のV7100)を用いて測定し、偏光度の変化量ΔP(%)=(投入前の偏光度(%))−(投入後の偏光度(%))、を求めた。偏光度の変化量ΔPは、0.05%以下であることが好ましく、さらには0.03%以下であることが好ましく、さらには0.02%未満であることが好ましい。
なお、偏光度Pは、2枚の同じ偏光フィルムの第2透明保護フィルム側(ガラス側)同士を両者の透過軸が平行となるように重ね合わせた場合の透過率(平行透過率:Tp)および、両者の透過軸が直交するように重ね合わせた場合の透過率(直交透過率:Tc)を以下の式に適用することにより求められるものである。偏光度P(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}
1/2×100
各透過率は、グランテラープリズム偏光子を通して得られた完全偏光を100%として、JIS Z8701の2度視野(C光源)により視感度補整したY値で示したものである。測定波長は、波長410nmであった。得られた410nmにおける直交透過率を光学特性評価の指標とした。
【0080】
【表1】