【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船体上の生物付着は、
図1に図示の通り、抗力の深刻な増加をもたらし、従って燃料消費の増大をもたらす。燃料消費の最大40%の増加は生物付着に起因する可能性があると推定される。大型オイルタンカー若しくはコンテナ輸送船は1日あたり最大200.000ユーロの燃料を消費し得るので、生物付着防止の有効な方法によりかなりの節約が可能である。
【0005】
ここで光学的方法に基づく、特に紫外線光(UV)を用いるアプローチが提示される。ほとんどの微生物は、'十分な'UV光で死滅、不活性化、若しくは生殖不能にされることが周知である。この効果は主にUV光の総線量によって支配される。特定微生物の90%を死滅させる典型的な線量は10mW‐時間毎平方メートルであり、詳細はUV光に関する以下の段落及び添付の図面に含まれる。
【0006】
一般的な紫外線光
紫外線(UV)は可視スペクトルの低波長極端とX線放射線帯域によって境界される電磁光の部分である。UV光のスペクトル域は、定義により100〜400nm(1nm=10
−9m)であり、人の目には見えない。CIE分類を用いてUVスペクトルは三つの帯域にわけられる:
315〜400nmのUVA(長波)
280〜315nmのUVB(中波)
100〜280nmのUVC(短波)
【0007】
実際には多くのフォトバイオロジストはUV暴露から生じる皮膚効果を320nmを超える及び下回る波長の加重効果と言うことが多く、故に代替定義を提供する。
【0008】
強力な殺菌効果は短波UVC帯域における光によって提供される。加えて紅斑(皮膚の発赤)及び結膜炎(目の粘膜の炎症)もこの形式の光によって引き起こされ得る。このため、殺菌UV光ランプが使用されるときは、UVCの漏れを除外し、そしてこれらの効果を回避するようにシステムを設計することが重要である。水中光源の場合、水によるUV光の吸収は十分に強い可能性があるので、UVCの漏れは液体表面より上の人にとって問題にならない。
【0009】
言うまでもなく明らかに、人はUVCへの暴露を回避すべきである。幸運にもこれは、UVCがほとんどの製品によって吸収され、標準平面ガラスでさえ実質的に全てのUVCを吸収するので、比較的単純である。例外は例えば石英及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)である。やはり偶然にも、UVCは壊死した皮膚によってほとんど吸収されるので、紅斑は限られ得る。加えてUVCは目のレンズを貫通しない。それにもかかわらず、結膜炎は起こる可能性があり、一時的ではあるがこれは非常に痛い。同じことは紅斑効果に当てはまる。
【0010】
UVC光への暴露が起こる場合、閾値レベル基準を超えないように注意を払うべきである。
図2はCIE UVスペクトルの大部分についてこれらの値を示す。実際の問題として、表1は時間に関する人体暴露についての米国産業衛生専門家会議(ACGIH)のUV許容閾値実効照度を与える。現時点では240nm未満の放射波長が空気中の酸素からオゾンO
3を形成することは注目に値する。オゾンは毒性で高反応性であり、従って人及び特定材料への暴露を避けるための予防措置が取られる必要がある。
【表1】
【0011】
短波UV光の発生及び特徴
最も効率的なUVC発生源は低圧水銀放電ランプであり、平均で入力ワットの35%がUVCワットに変換される。放射はほとんど254nmのみで、すなわち最大殺菌効果の85%で生成される(
図3)。Philipsの低圧管状蛍光紫外線(TUV)ランプはオゾン形成放射、この場合185nm水銀線をフィルタ除去する特殊ガラスのエンベロープを持つ。このガラスのスペクトル透過は
図4に示され、これらのTUVランプのスペクトルパワー分布は
図5に与えられる。
【0012】
様々なPhilips殺菌TUVランプにとって、電気的及び機械的特性はそれらの可視光用の同等照明と同一である。これはそれらが同様に、すなわち電子若しくは磁気バラスト/スターター回路を用いて操作されることを可能にする。全ての低圧ランプと同様に、ランプ動作温度と出力の間に関係性がある。低圧ランプにおいて254nmにおける共鳴線は放電管内の特定水銀蒸気圧において最も強い。この圧力は動作温度によって決定され、約25℃の気温に対応する40℃の管壁温度において最適化する。ランプ出力はランプ全体の気流(強制若しくは自然)、いわゆる体感温度によって影響されることも認識されるべきである。読者は、一部のランプの場合、気流の増加及び/又は温度の低下が殺菌出力を増加させ得ることに留意すべきである。これは高出力(HO)ランプ、すなわちその線寸法のために通常より高いワット数を持つランプにおいて満たされる。
【0013】
第二のタイプのUV源は中圧水銀ランプであり、ここでより高い圧力はより多くのエネルギーレベルを励起し、より多くのスペクトル線及び連続(再結合放射)を生じる(
図6)。石英エンベロープは240nm未満を透過するので空気からオゾンが形成され得ることに留意すべきである。中圧源の利点は、
・高パワー密度
・高パワー、同じアプリケーションで使用される低圧タイプよりも少ないランプをもたらす
・環境温度への低感受性
である。ランプは壁温度が600〜900℃になり、ピンチが350℃を超えないように操作されるべきである。これらのランプは低圧ランプが可能なように調光されることができる。
【0014】
さらに、誘電体バリア放電(DBD)ランプが使用され得る。これらのランプは様々な波長で、高電気‐光パワー効率で非常に強力なUV光を提供し得る。
【0015】
上記の殺菌線量は既存の低コスト低パワーUV LEDで容易に実現されることもできる。LEDは一般に比較的小型パッケージに含まれることができ、他のタイプの光源よりも少ないパワーを消費する。LEDは様々な所望の波長の(UV)光を発するように製造されることができ、それらの動作パラメータ、中でも注目すべきは出力パワーは、高度に制御されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の根底にある基本的なアイデアは、汚染を避けてきれいに保つべき保護表面のかなりの量を、好適には保護表面全体、例えば船体を、殺菌光、特にUV光を発する層で覆うことである。
【0017】
従って、添付の請求項にかかる、保護表面の防汚の方法及び保護表面の防汚のための照明モジュール及びシステムが提供される。
【0018】
方法は防汚光を供給するステップと、保護表面から離れる方向に防汚光を発するステップを有し、光の少なくとも一部は保護表面から離れる方向に発せられる前に光学媒体によって保護表面の大部分にわたって配光される。実施形態において、方法は光学媒体の実質的に平面の発光面から防汚光を発するステップを有する。実施形態において方法は保護表面の大部分にわたって光を配光する光ガイドを使用し、シリコーン材料及び/又はUVグレードシリカ材料、特に石英を有する。方法は好適には保護表面が少なくとも部分的に液体環境に沈んでいる間に実行される。
【0019】
保護表面の防汚のための照明モジュールは防汚光を生成するための少なくとも一つの光源と、光源からの防汚光を配光するための光学媒体とを有する。少なくとも一つの光源及び/又は光学媒体は、保護表面から離れる方向に防汚光を発するように、少なくとも部分的に保護表面の中に、上に及び/又は付近に配置され得る。照明モジュールは好適には保護表面が少なくとも部分的に液体環境に沈んでいる間に防汚光を発するように構成される。一実施形態において、光学媒体は光ガイドでありシリコーン材料及び/又はUVグレードシリカ材料を有する。
【0020】
保護表面の防汚のための照明モジュールは保護表面に適用するためのフォイルとして提供されてもよく、フォイルは防汚光を生成するための少なくとも一つの光源と、フォイルにわたって防汚光を配光するためのシート状光学媒体とを有する。実施形態においてフォイルは2〜3ミリメートルから数センチメートルの桁の厚さを持つ。実施形態において、フォイルは数十若しくは数百平方メートルの桁のサイズを持つ実質的に大きなフォイルを提供するよう、厚さ方向に垂直ないかなる方向にも実質的に制限されない。フォイルは防汚タイルを提供するよう、フォイルの厚さ方向に垂直な二つの直交方向に実質的にサイズ制限され得る。別の実施形態においてフォイルは防汚フォイルの伸長ストリップを提供するよう、フォイルの厚さ方向に垂直なただ一つの方向に実質的にサイズ制限される。
【0021】
照明モジュールは、保護表面の中、上、及び/又は付近に配置されるか、或いは個別フォイルとして提供されるかを問わず、光学媒体から環境へ防汚光を発するための発光面と、照明モジュールを保護表面へ適用する若しくは配置するための、発光面に対向する適用面とを有する。好適な実施形態において照明モジュールの発光面は、汚染の種となり得るピット及びインデントを回避するように、及び保護表面に適用されるときに構造によって生じる抗力の量を制限する隆起を回避するように、実質的に平面である。インデント及び隆起を有する若しくは実質的な表面粗さを持つ表面に対する、実質的に平面の表面の利点は、特に液体環境における抗力効果と組み合わせて、粗面若しくは当該面に含まれるピットに対して付着するより、実質的に平面の表面に微生物が付着することがより困難であることである。'実質的に平面'の発光面という語は本明細書において
、照明モジュールの中に埋め込まれる若しくは取り付けられる配線接続
及び光源の厚さをマスクする若しくは覆い隠す表面をあらわす。'実質的に平面'という語は、保護表面の何らかの構造的不均一性をマスクすること若しくは覆い隠すこともあらわし、それによって液体環境における保護表面の抗力特性をさらに改良する。保護表面の構造的不均一性の例は、接合部、リベットなどである。'実質的に平面'という語は25%未満、好適には10%未満の照明モジュールの平均厚さにおける変動をもたらすものと定量化され得る。従って'実質的に平面'とは機械表面仕上げの表面粗さを必ずしも必要としない。
【0022】
好適な実施形態において照明モジュールは防汚光を生成するための光源の二次元格子を有し、光学媒体は、照明モジュールの発光面から出る防汚光の二次元分布を提供するよう、防汚光の少なくとも一部を光源の二次元格子から光学媒体全体に配光するように構成される。光源の二次元格子は金網構造、密充填構造、行/列構造、若しくは任意の他の適切な規則的若しくは不規則構造で配列され得る。格子内の近傍光源間の物理的距離は格子全体で固定され得るか、又は例えば防汚効果を提供するために必要な光出力パワーの関数として、若しくは保護表面上の照明モジュールの位置(例えば船体上の位置)の関数として、異なり得る。光源の二次元格子を設ける利点は、防汚光が防汚光照明で保護されるべき領域の近くで生成され得ること、及び光学媒体若しくは光ガイドにおける損失を減らすこと、及び配光の均一性を増大することを含む。好適には、防汚光は一般に発光面全体に均一に配光され、これは、さもなければ汚染が起こり得る照明不足の領域を削減若しくは防止さえしながら、同時に防汚のために必要以上の光による他の領域の過剰照明によるエネルギー消費を削減若しくは防止する。
【0023】
好適な実施形態において、光源はUV LEDである。少なくとも一つのUV LED若しくはUV LEDの格子は液密カプセル化に封入され得る。実施形態において少なくとも一つのUV LED若しくはUV LEDの格子は光学媒体に埋め込まれ得る。複数のUV LEDは格子に組織化され、直列/並列金網構造において電気的に接続される(後に説明される)。LEDと金網接続は光透過性コーティングにカプセル化され、光学媒体に取り付けられ得るか若しくは光学媒体に直接埋め込まれ得る。他の実施形態においてUV LEDの格子は樹脂構造に埋め込まれる電子テキスタイルの層に含まれ得る。一部の実施形態においてUV LEDはパッケージ化LEDであってもよく、この場合それらは広い放射角度にわたってLEDパッケージから発せられる光を配光する光学素子を既に含んでいてもよい。他の実施形態においてUV LEDはLEDダイであってもよく、典型的には光学素子を有しないがパッケージ化LEDより顕著に薄い。一実施例として、LEDダイは光学媒体の表面上にピック&プレースされ(好適にはアプリケーション面、ただし発光面は当該面の発光機能とほとんど干渉しない構成要素の小さいサイズのために、同様に役立つだろう)、導電性ペーストのプリントを介して電気配線され、最終的にLEDダイと配線は光学媒体の薄層/コーティング又は照明モジュールを保護表面に適用するための任意の他のバッキング層でカプセル化され得る。埋め込み光源の様々な実施形態は、提示した防汚技術が船体上に適用するためのフォイルとして商品化されることを可能にする。
【0024】
保護表面の防汚のためのシステムは、保護表面の実質的に全領域にわたって防汚光を供給するように保護表面上に配置するための、本明細書に開示の複数の照明モジュールを有し得る。
【0025】
シリコーン材料は他の材料と比較して少ない損失でUV光の光学透過を提供し得る。これは特に短波長光、例えば300nm未満の波長を持つUV光に当てはまる。特に効率的なシリコーン材料のグループは、一般化学式CH
3[Si(CH
3)
2O]
nSi(CH
3)
3に従ういわゆるメチルシリコーンであるか、若しくはそれを少なくとも有し、"n"は有機化学の慣例により任意の適切な整数を示す。このタイプのシリコーン材料は偶然にも、少なくとも他のシリコーン材料と比較して少ない損失で優れたUV透過特性を示す。さらに、シリコーン材料は柔軟で弾性なので、頑丈で耐久性があり、表面に対する物体のぶつかり、衝突、例えば岸壁に対する船の衝突などに起因する圧縮に耐えることができる。さらに、温度変動、打ち寄せる波、うねりによる船の屈曲などに起因する船の表皮の変形が適応され得る。また、シリコーン材料は表面の中若しくは上の、表面構造:接合部、リベットなどの上に適用され形成されることができる。シリコーン材料は金属及び塗料によく付着する傾向もあるので、表面の上に保護コーティングが形成される。目に見えて透明なシリコーン材料はシリコーン材料によって覆われる下地マーキング(例えば塗装されたシンボル)の読み取りを可能にする。さらに、それらは一般に撥水剤であり摩擦と抗力を軽減し得る。一方でシリコーンは層への生物付着生物の付着を減らすため、及び流水に対する摩擦を減らすために非常に滑らかに作られ得るが、他方で材料は、同様に周辺の水に対して十分な速度で水中の摩擦を軽減することが知られている鮫肌を模倣するように精巧に構造化され得る。光学媒体の構造化表面、特に光ガイドは、内部全反射のための条件の破棄を生じ、それによって他の方法で内部にキャプチャされ、内部全反射で透過された光ガイドからの光のカップリングアウトを生じ得ることが留意される。従って、光のカップリングアウトが確実に局所化され得る。
【0026】
UVグレードシリカはUV光に対して非常に低い吸収を持ち、従って光学媒体及び光ガイド材料として非常によく適している。比較的大きな物体は、大きな物体でもUV透過特性を維持しながら、UVグレードシリカの複数の比較的小さなピース若しくは部分を一緒に、及び/又はいわゆる"溶融石英"を用いることから作られ得る。シリコーン材料に埋め込まれるシリカ部分はシリカ材料を保護する。このような組み合わせにおいてシリカ部分は光学媒体を通る光の(再)配光のため及び/又は光ガイドからの光のアウトカップリングの促進のため、その他シリコーン材料光学媒体においてUV透明散乱体を提供し得る。また、シリカ粒子及び/又は他の硬質なUV半透明材料の粒子はシリコーン材料を強化し得る。特にフレーク形状のシリカ粒子が使用され、またシリコーン材料中のシリカが最大50%、70%若しくはさらに高いパーセンテージの高密度で、衝撃に耐えることができる強固な層を提供し得る。光学媒体若しくは光ガイドの少なくとも一部は、例えば光学及び/又は構造的特性を変えるために、シリコーン材料に少なくとも部分的に埋め込まれる空間的に異なる密度のUVグレードシリカ粒子、特にフレークを備え得ることが考慮される。ここで、"フレーク"とは三つのデカルト方向にサイズを持つ物体をあらわし、三つのサイズのうち二つは相互に異なり得るが、各々は三つ目のサイズよりも顕著に大きく、例えば倍数10、20、若しくは顕著にそれ以上、例えば100の倍数であり得る。
【0027】
実施形態において、光学媒体から防汚光を発するための発光面に近い光学媒体の部分において、シリコーン材料中のUVグレードシリカ粒子の密度は光学媒体の内部から光学媒体の発光面へ向かって増加し得るので、発光面若しくはその付近において比較的高密度のシリカ粒子が提供される。多かれ少なかれ球状及び/又はランダム形状の粒子が使用され得るが、サブミリメートル長スケールの、例えば典型的には数マイクロメートルに下がるまでのサイズのシリカフレークが密集して配列され得るので、傷、裂け目などを含む、先端の鋭い物体からのポイント衝撃、及び/又は鈍器からの局所的衝撃など、非常に局所的な力の影響下で、フレークはいくらかの、わずかでも、フレーク自体をわずかに再配列することができる柔軟なシリコーンにおける移動の自由度を持ち、衝撃エネルギーを消散させ光ガイド全体への損傷を軽減することができる。従って、特性が両立されることができ、頑丈かついくらか変形可能な層をもたらし、さらにまた所望の光学品質を提供する。一実施形態において光学媒体におけるシリコーン材料の特性は光学媒体の片側から反対側へ約100%(すなわち実質的に純粋なシリコーン材料)から約5%未満(ほとんどシリカ)に段階的に変化する。
【0028】
シリカ以外の材料の粒子、特にフレーク形状粒子、例えばガラス若しくはマイカが使用されてもよいことが留意される。このような他の材料は防汚光に対する散乱体にもなり得る。異なる材料の粒子の混合物も提供され、これは半透明、不透明、及び/又は光学的活性粒子の混合物を有し得る。このような混合物の組成は、例えば防汚光に対する光ガイドの透過性を調節するために、特に一部の部分において比較的多量の低透過性粒子が使用される場合、光ガイドにわたって異なり得る。
【0029】
光学媒体を製造するために、シリコーン材料の一連の層が形成され、各々はシリカ粒子の量及び/又は密度に関して異なる組成を持つ可能性がある。層は非常に薄く、少なくとも一部はウェットオンウェット技術で適用され得る、すなわち所望の層に硬化するはずの液体若しくはゼラチン形式の層にシリコーン材料を供給するが、その後の層は前の層が完全に硬化される前に前の層に適用される。従って、層間の良好な付着が促進され、最終製品において異なる層はほとんど識別不可能であり、組成における段階的な変化が実現され得る。異なる層は層材料の噴霧によって適切に形成及び/又は適用され得る。層状材料は良好な品質管理を伴って任意の適切な厚さに形成され得る。照明モジュールの表面の大部分を構成する光学媒体は、接着を含む任意の適切な方法で保護表面に取り付けられ得ることに留意されたい。シリコーン材料はセラミック、ガラス状物質及び金属物質への強力な付着を示す傾向があり、従ってシリコーン材料を噴霧する若しくは塗り付けることは基板に光学媒体を形成し取り付ける非常に適した方法である。噴霧された及び/又は塗り付けられた光学媒体は異なる所望の形状で、例えば水線、特定マーキング及び/又は表面形状に従って、容易に作られることもできる。積層技術はシリコーン材料中の粒子の配向、例えばフレークを層及び層で被覆された表面の拡張方向に概して平行に配列させることも促進し得る。
【0030】
照明モジュールの別の態様において、光学媒体はそこを通して光をガイドするための空間、例えば気体及び/又は透明液体、例えば水で充填されるチャネルを有し、関連する方法は光学媒体におけるこうした空間を通して光の少なくとも一部を配光するステップを有する。気体、特に空気を通るUV光の光学的透過は、一般に、いくらか半透明若しくは透明であるとわかっていても、ミリメートルあたり最大数パーセントまでの吸収損失を示し得る、固体材料を通る光の透過よりも著しく優れていることがわかっている。透明液体はほとんど散乱をもたらさず、UV光をよく輸送し、気体で空間を充填することに比較して光学媒体における空洞の構造的ロバストネスも提供し得る。水、中でも注目すべきは淡水は、比較的高く適切なUV透過性を持つことがわかっている。汚染及び/又はUV吸収は蒸留、脱イオン化、及び/又は他の方法で精製された水が使用される場合も同様に及び/又はさらに削減され得る。従って、気体及び/又は液体充填空間を通じて光を透過することが特に有益であるとみなされる。保護表面にわたる光の配光のために、気体及び/又は液体充填空間は好適にはよく定義されるべきであり、チャネルは光学媒体に設けられ得る。最終的にチャネルの壁に衝突する光は光学媒体に入り、保護表面から液体環境の方向に光学媒体から発せられ、防汚光を提供する。それ自体防汚光をよく透過する、中に空気チャネルが定義される光学媒体は、光学媒体が漏れて、液体媒体が光学媒体に入る場合に、生成された防汚光が依然として光学媒体を通って適切に透過され得ることをさらに保証する。チャネルは変化する直径を有し得る。例えばブランド名"Bubble Wrap"で販売されている包装製品と同様に、局所チャネル部分若しくはポケットは、各壁部分のサイズ及び/又は厚さよりも(かなり)大きい個別ボリュームを定義する及びカプセル化する壁部分によって提供され得る。
【0031】
特定の実施形態において、このような気体含有光学媒体は、気体及び/又は液体充填チャネル及び/又は他の空間を定義するシリコーン材料を有し、シリコーン材料は複雑な構造を定義するようにうまく成形され得る。シリコーン材料のさらなる利点は、シリカ粒子などの追加物体を伴うか否かを問わず、上記されている。
【0032】
一実施形態において、チャネル及び/又は他の空間は、距離、例えば層間の空隙を作るシリコーン材料の壁部分及び/又は柱で所望の距離離れて維持されるシリコーン材料の二つの対向する層を形成することによって提供される。このような壁部分及び/又は柱は、光学媒体(の中のチャネル)を通じた(再)配光のため、並びに/或いは、気体及び/又は液体充填空間からシリコーン材料へ光をガイドするための散乱中心となり得る。これは光学媒体から防汚光が利用される液体環境への発光の局所化を促進する。
【0033】
一つ以上の光源によって発せられる防汚光の少なくとも一部は、保護表面に実質的に平行な、若しくは照明モジュールがフォイルとして設けられるときはフォイルの適用面に実質的に平行な成分を持つ方向に発散され得る。これは保護表面、若しくはフォイルの適用面に沿ってかなりの距離にわたって配光を容易にし、これは防汚光の適切な強度分布を得るのに役立つ。
【0034】
波長変換材料が光学媒体に含まれてもよく、防汚光の少なくとも一部は、波長変換材料に別の波長において防汚光を発光させる第一の波長を持つ光で、波長変換材料を光励起することによって生成され得る。波長変換材料はアップコンバージョン蛍光体、量子ドット、一つ以上のフォトニック結晶ファイバなどの非線形媒質などとして設けられ得る。異なる、主にUV光より長い波長の光に対する光学媒体中の吸収及び/又は散乱損失は、光学媒体中であまりはっきりしない傾向があるので、非UV光を生成しそれを光学媒体を通じて透過し、その所望の使用(すなわち表面から液体環境への発光)場所若しくはその付近においてUV防汚光を生成することがよりエネルギー効率が良い可能性がある。また、若しくは代替的に、少なくとも一つの光源はLED若しくはOLED、DBDランプ及び/又は金属蒸気ランプ(例えば低圧水銀ランプ)の少なくとも一つを有し得る。適切な防汚光は約220nmから約420nmのUV若しくは青色光の波長帯域、特に約300nmより短い、例えば約240nmから約280nmの波長である。
【0035】
実施形態において、光学媒体は、保護表面に実質的に平行な成分を持つ方向に少なくとも一つの光源によって発せられる防汚光の少なくとも一部を発散させるために、防汚光を生成するための少なくとも一つの光源の前に配置される光発散体を有する。光発散体の一実施例は、光学媒体において、少なくとも一つの光源と反対の位置に配置される'対向'円錐であり得、対向円錐は保護表面の垂線に45°の角度の表面積を、当該表面に垂直な光源によって発せられる光を当該表面に実質的に平行な方向に反射するために持つ。実施形態において光学媒体は防汚光を生成するための少なくとも一つの光源の前に配置される光ガイドを有し、光ガイドは少なくとも一つの光源からの防汚光をカップリングインするための光カップリングイン面と、保護表面から離れる方向に防汚光をカップリングアウトするための光カップリングアウト面を持ち、光ガイドは、防汚光の少なくとも一部が、アウトカップリング面においてアウトカップルされる前に保護表面に実質的に平行な方向に内部全反射を介して光ガイドを通じて伝搬されるように、液体環境の屈折率よりも高い屈折率を持つ光ガイド材料を有する。一部の実施形態は光発散体と光ガイドを組み合わせる光学媒体、又は光ガイド機能とともに光学媒体に組み込まれた光発散機能を有し得る。実施形態において、光発散体及び/又は光ガイドは保護表面上に被覆される。他の実施形態において、光発散体及び/又は光ガイドは保護表面上に適用するためにフォイルの形状因子で設けられる。
【0036】
汚染防止のためのシステムの一実施形態は以下を有し得る:
‐防汚光を生成するための一連のUV LED;
‐保護表面にわたってLED点光源から防汚光を発散させるための光発散体;
‐防汚光が表面にわたって発散され得るようにさらにガイドする/発散させるための光ガイド、光ガイドはシリカ粒子又は一つ以上のシリカ被覆部分の有無を問わず、UV光に透明なシリコーン材料の薄層を有する。
【0037】
実質的に保護表面全体が防汚光を発する光学媒体で覆われるとき、これはこの媒体上の微生物の成長を実質的に低減する。微生物は光学媒体の発光面上で死滅するので、船体は破片を船から離して輸送する船体に沿った水流を通じて持続的に洗浄され、微生物は船体上に付着するチャンスがない。
【0038】
目下提供される方法の利点は、既知の毒性分散剤コーティングの場合のように、微生物が汚染表面上に付着し根付いた後は殺されないが、汚染表面上へ微生物が根付くことが防止されることである。大きな微生物構造による既存の汚染を除去する光処理と比較して、微生物が汚染表面に接触する直前若しくは直後に積極的に殺す方がより効率的である。この効果は微生物が付着することができないほど滑らかなナノ表面を用いることによって作られる効果と同様であり得る。
【0039】
初期発根段階において微生物を殺すために必要な光エネルギーの量が少ないので、システムは極端な電力要件を伴わずに大きな表面にわたって防汚光を持続的に供給するように操作され得る。
【0040】
照明表面を作るLEDの格子は例えば埋め込み太陽電池、水中で動作する小型タービン、圧力波に作用する圧電素子などといった環境発電手段を備え得る。
【0041】
目下提供される技術のいくつかの利点は、清浄表面の保持、腐食処理のコスト削減、船の燃料消費の削減、船体の保守時間短縮、CO
2排出量削減、環境中の毒性物質の使用軽減などを含む。実質的に平面の滑らかな発光面はそれ自体による抗力を追加しないという利点をさらに持ち、光学媒体の下にある保護表面の既存の不均一性(リベット、接合部など)を覆うことによって抗力をなおさらに削減し得る。
【0042】
本開示に記載の照明モジュールの文脈において開示される特徴は、記載に明示的に述べられることなく、保護表面の防汚のための方法における対応するプロセスステップも持ち、逆もまた同様であり得る。対応する特徴は一般に同じ技術的効果を生じる。
【0043】
開示の方法と照明モジュールは船体上の汚染を防止するために適用され得るが、これらは固定された(パイプ、マリンステーションなど)及び/又は動く海洋物体(潜水艦など)を含む全ての海洋物体に適用可能である。開示の防汚法は水路、運河、若しくは湖で動作する物体にも、及び例えば水槽にも適用され得る。