(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二色性物質を配向させたポリビニルアルコール系樹脂から成る厚みが10μm以下の偏光膜と、前記偏光膜の片面に接着層を介して配置された熱可塑性樹脂から成る透明保護フィルムとを含む光学フィルム積層体であって、
前記透明保護フィルムは、厚みが40μm以下であり、100mm×100mmの試験片を85℃の環境下に48時間放置した後の、前記偏光膜の吸収軸に直交する方向における、下記によって定義される寸法変化率の収縮方向の値が0.2%以上である、
(寸法変化率)
100mm×100mmの透明保護フィルムの試験片の4辺の中点近傍に標点を設け、25℃50%RHの室温環境下にて、向かい合う辺同士の標点間距離「a」を測定し、次に85℃の乾燥オーブンに48時間投入し、85℃の環境試験機内から測定前と同じ25℃50%RHの室温環境下に取り出した後、30分後に、同様に向かい合う辺同士の評点間距離「a’」を測定したとき、{(a’−a)/a}×100(%)によって求められる値、
光学フィルム積層体。
前記偏光膜の吸収軸に直交する方向において、前記透明保護フィルムの寸法変化率と前記偏光膜の寸法変化率の比が0.05以上1以下である、請求項1に記載の光学フィルム積層体。
前記透明保護フィルムは、アクリル系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム、又はポリオレフィン系樹脂フィルムのいずれかである、請求項1乃至3のいずれかに記載の光学フィルム積層体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な一つの実施形態について説明する。
偏光膜と透明な保護フィルムとの界面に生じる応力は、主に、加熱、冷却に伴う偏光膜の収縮方向における寸法変化率と保護フィルムのそれとの差によって生じるものと考えられる。この知見に基づき、先ず、様々な厚みの偏光膜について、加熱、冷却に伴う寸法変化率を測定した。この測定には、セイコーインスツル社製TMAを用いた。なお、この偏光膜の寸法変化率の測定方法は、後述する「(3)保護フィルムの寸法変化率」の測定方法とは異なるが、これらの測定方法は、実質的に互換できるものである。偏光膜を、後述の「(3)保護フィルムの寸法変化率」の方法で測定するのは困難なため、代替手法として用いただけのものである。
先ず、厚み5μmの偏光膜を、その吸収軸方向(以下、MD方向とする)に4mm、吸収軸と直交する方向(以下、TD方向とする)に25mmの短冊状に切り出した後、チャック間距離20mmとして試料をTD方向に引っ張るように設置し、引張荷重が19.6mg重を維持するように荷重制御し、雰囲気温度を25℃から85℃に10℃/分の速さで昇温させ、10分間85℃のまま保持した。その後、10℃/分の速さで降温させ、これを繰り返し48時間行った後、TMAによってその寸法の変化率を測定した。この結果、収縮方向における寸法変化率はおよそ3.0%に達した。尚、寸法変化率の値は、大きい程より大きく収縮していることを意味する。
【0012】
この寸法変化率は、後述する「2.偏光膜の作製」によって作製された厚み5μmの偏光膜についてのものであるが、後述する比較例1や比較例4に記載されている、例えば、厚み12μmの偏光膜のTD方向における寸法変化率についても、同様の方法で寸法変化率を測定した。この結果、厚み12μmの偏光膜については、4.0%という値を得た。この厚み12μmの偏光膜は、例えば、特許4913787号に開示されているような公知の作製方法、即ち、PVA単層のフィルムをそのまま染色及び延伸する方法で得たものである。明らかなように、偏光膜の寸法変化率は、その厚みだけで決まるものではなく、例えば、延伸倍率等の延伸条件によっても変化するものと考えられるが、寸法変化率に最も大きな影響を及ぼし得る要因として、偏光膜の厚みが考えられる。なぜなら、偏光膜の膜厚が大きくなる場合、つまり、偏光膜の厚み方向に対して垂直な方向に中立面を考えた時にその中立面から偏光膜と透明保護フィルムの接着境界面までの距離が大きくなる場合には、接着境界面における応力は中立面から接着境界面までの距離に比例して大きくなり、この応力が偏光膜の破壊応力を超えた場合にクラックが発生することになると考えられるからである。従って、例えば、12μmの偏光膜は、5μmの偏光膜に比して寸法変化率が大きいことから、その分、クラックが発生しやすいということができる。但し、実験の結果、厚みが10μm以下の偏光膜のTD方向における寸法変化率は、その作製方法等によって若干の差はあるものの、厚み5μmの偏光膜と同様に3.0%以下であり、12μmの偏光膜よりも収縮しないことが明らかとなった。
【0013】
これに対し、従来の保護フィルム、即ち、40〜80μmのTAC(トリアセチルセルロース系)フィルムの寸法変化率は、同様の方法で測定した時、約0.01〜0.5%程度であって、偏光膜の寸法変化率との間には10倍もの開きがあることが明らかとなった。
【0014】
明らかなように、偏光膜と保護フィルムとの界面に生じる応力を軽減させるには、両者の寸法変化率を接近させる(換言すれば、それらの間の比の値を「1」に近づける)必要がある。しかしながら、今日の技術では、10μm厚とした薄型の偏光膜の寸法変化率を制御することは容易でない。そこで本発明では、偏光膜の寸法変化率はそのままとし、代わりに偏光膜の片面に接着層を介して配置された保護フィルムの寸法変化率に注目した。具体的には、保護フィルムの寸法変化率を、主に、2つの観点で検討し、薄型の偏光膜に最適な保護フィルムの寸法変化率を求めた。1つの観点は、光学フィルム積層体に所定のヒートサイクルを与えた後のクラックの有無であり、もう1つの観点は、光学フィルム積層体に所定深さのクラックが生じるまでに要したヒートサイクルの回数である。以下、詳細に説明する。
【0015】
1.保護フィルムの作製
本発明の光学フィルム積層体に用いることができる保護フィルムの作製方法の一例を説明する。尚、この作製方法は、単なる一例にすぎず、その他の作製方法を用いてもよいことは勿論である。上に説明したように、保護フィルムに求められる条件は、偏光膜の寸法変化率を許容するような寸法変化率を有することであって、それ以外の条件は、ここでは問題としない。
例えば、保護フィルムは、溶融押出法、即ち、高温でポリカーボネートのような熱可塑性樹脂を溶融した溶融物を、Tダイリップから押出し、冷却ロールで巻き取る方法によって作製することができる。
また、保護フィルムの材料も特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエチレンテレフタレート系樹脂、光学フィルム用途として用いられているシクロオレフィン系ポリマー(COP)のようなポリオレフィン系樹脂などを用いることもできる。PETは、例えば、下記「積層体作成工程(A)」に記載された非晶性PET基材を含む。COPは、例えば、「商品名:ゼオノア(ZEONOR)、日本ゼオン(株)製」、「ゼオネックス(ZEONEX)、日本ゼオン(株)製」、「商品名:アートン、JSR(株)製」、「商品名:Topas、TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH社製」、「商品名:アペル、三井化学(株)製」などの市販品を含む。
更に、アクリル系樹脂に関して、本願では、主に耐熱性の向上を目的として、ラクトン環やグルタルイミド環などの環状構造をこのアクリル系樹脂の主鎖中に組み込むこととしているが、これらは任意のものであり、それらを含まないものであってもよい。主鎖にグルタルイミド環又はラクトン環を有するこれらのアクリル系樹脂は、例えば、以下の方法で作製される。
【0016】
(1)グルタルイミド環単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を利用した保護フィルムの作製
この製法は、特許文献2に開示された製法に準拠する。先ず、原料の樹脂としてメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(スチレン量11モル%)、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いて、イミド化樹脂を製造した。
【0017】
使用した押出機は口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230〜250℃、スクリュー回転数は150rpmとした。メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(以下、「MS樹脂」ともいう)を2kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して16重量部のモノメチルアミン(三菱ガス化学株式会社製)を注入した。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、イミド化MS樹脂(1)を得た。
【0018】
次いで、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機にて、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpmとした。ホッパーから得られたイミド化MS樹脂(1)を1kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して0.8重量部の炭酸ジメチルと0.2重量部のトリエチルアミンの混合液を注入し樹脂中のカルボキシル基の低減を行った。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化し、酸価を低減したイミド化MS樹脂(2)を得た。
【0019】
さらに、イミド化MS樹脂(2)を、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機に、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpm、供給量1kg/hrの条件で投入した。ベント口の圧力を−0.095MPaに減圧して再び未反応の副原料などの揮発分を除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた脱揮したイミド樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、イミド化MS樹脂(3)を得た。
【0020】
なお、イミド化MS樹脂(3)は、上説の実施形態に記載した一般式(1)で表されるグルタミルイミド単位と、一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位と、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位とが共重合したグルタルイミド樹脂に相当する。
【0021】
イミド化MS樹脂(3)について、上記の方法に従って、イミド化率、ガラス転移温度、およびSp値を測定した。その結果、イミド化率は70モル%、ガラス転移温度は143℃、酸価は0.2mmol/g、Sp値は9.38であった。
【0022】
こうして得られたイミド化MS樹脂(3)100重量%と、SEESORB151(シプロ化成製、紫外線吸収剤、1%重量減少温度:341℃、Sp値:11.33)1.0重量%とを単軸押出機を用いてペレットにした。
【0023】
その後、このグルタルイミド環単位を有する(メタ)アクリル樹脂ペレットを、100.5kPa、100℃で12時間乾燥させ、単軸の押出機にてダイス温度270℃でTダイから押し出してフィルム状態に成形した。さらに当該フィルムを、その搬送方向(MD方向)に樹脂のガラス転移温度(Tg)より10℃高い雰囲気下で2倍に延伸し、次いでフィルム搬送方向と直交する方向(TD方向)に、樹脂のTgより7℃高い雰囲気下で2倍に延伸し、厚み40μmの二軸延伸フィルム、即ち、保護フィルムを得た。尚、よく知られているように、グルタルイミド環単位を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgは126℃である。
【0024】
(2)ラクトン環単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を利用した保護フィルムの作製
この製法は、特許文献3に開示された製法に準拠する。攪拌装置、温度計、冷却器、窒素導入管を備えた1000L反応釜に、メタクリル酸メチル40部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル10部、トルエン50部、アデカスタブ2112(ADEKA製)0.025部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させ、還流したところで、開始剤とt−アミルパーオキシイソノナノエート(アトフィナ吉富製、商品名:ルパゾール570)を0.05部添加すると同時に、0.10部のt−アミルパーオキシイソノナノエートを2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜110℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
【0025】
上記重合体溶液に、リン酸ステアリル(堺化学工業製、商品名:Phoslex A−18)を0.05部加え、還流下(約90〜110℃)において2時間環化縮合反応を進行させた。
【0026】
次いで、上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、240℃に加熱した多管式熱交換器を通して環化縮合反応を完結させた後、バレル温度240℃、回転数120rpm、減圧度13.3〜400hPa、リアベント数1個、フォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)第3ベントと第4ベントの間にサイドフィーダーを有するベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=44mm、L/D=52.5)に、樹脂量換算で20kg/時間の処理速度で導入し、脱揮を行った。そのとき、別途準備しておいた酸化防止剤・失活剤混合溶液を、第2ベントの後から高圧ポンプを用いて0.3kg/時間の投入速度で注入した。また、第1ベントの後およびサイドフィーダーの後から高圧ポンプを用いてイオン交換水をそれぞれ0.33kg/時間の投入速度で注入した。
【0027】
また、サイドフィーダーからAS樹脂(旭化成ケミカルズ製、商品名:スタイラックAS783L)を2.12kg/時間の供給速度で添加した。
【0028】
さらに、溶融混練した樹脂をリーフディスク型のポリマーフィルター(長瀬産業製、濾過精度5μm)でろ過した。
【0029】
酸化防止剤・失活剤混合溶液はアデカスタブAO−60(ADEKA製)50部、オクチル酸亜鉛(日本化学産業製、ニッカオクチクス亜鉛3.6%)40部をトルエン210部に溶解して調製した。
【0030】
上記脱揮操作により、熱可塑性アクリル樹脂組成物(A−1)のペレットを得た。樹脂部の重量平均分子量は132000、ガラス転移温度は125℃であった。
【0031】
その後、このラクトン環単位を有する(メタ)アクリル樹脂ペレットを、グルタルイミド環単位を有する(メタ)アクリル系樹脂と全く同様に、100.5kPa、100℃で12時間乾燥させ、単軸の押出機にてダイス温度270℃でTダイから押し出してフィルム状態に成形した。さらに当該フィルムを、その搬送方向(MD方向)に樹脂のTgより10℃高い雰囲気下で2倍に延伸し、次いでフィルム搬送方向と直交する方向(TD方向)に、樹脂のTgより12℃高い雰囲気下で2.65倍に延伸し、厚み20μmの二軸延伸フィルム、即ち、保護フィルムを得た。尚、よく知られているように、ラクトン環単位を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgは127℃である。
【0032】
(3)
図2は、上記「(2)ラクトン環単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を利用した保護フィルムの作製」で得られた保護フィルムについて、延伸温度を一定(Tg+12℃)としたときの、TD延伸倍率と寸法変化率との関係を示す図、また、
図3は、同じく(2)で得られた保護フィルムについて、延伸倍率を一定(MD方向については2倍、TD方向については2.65倍)としたときの、TD延伸温度と寸法変化率との関係を、それぞれ示したものである。
図2から明らかなように、TD延伸倍率と寸法変化率は略比例関係にある。尚、グラフには示されていないが、延伸倍率が2.0倍付近(後述する実施例1で用いた)においても同様の関係が成り立つと考えてよい。
また、
図3から明らかなように、
収縮方向における寸法変化率は、TD延伸温度の上昇とともに小さくなり、所定の温度に達した時点で最小値となり、それ以下には下がらない。従って、所定の延伸倍率の下において、TD延伸温度を、所定の温度、例えば、Tg以上に設定することによって、
収縮方向における寸法変化率を、例えば、0.2%以上に維持することができる。
原理的には、高温であるほど高分子の熱運動によって分子配向が等方的になるため、延伸倍率を上げても分子配向度は比較的低いと考えられる。寸法変化率には最終的に出来上がったフィルムの分子配向度が大きく依存していると考えられ、配向度が高ければ再度加熱時に等方的になろうとして収縮の寸法変化率が大きくなり、配向度が低ければ再度加熱してもさほど大きく収縮しようとしない。この結果、例えば、
図2に示すように、TD延伸温度は一定でTD延伸倍率を変えた場合、延伸倍率が大きい方が
収縮方向における寸法変化率は大きくなり、一方、
図3に示すように、TD延伸倍率は一定でTD延伸温度を変えた場合、延伸温度が低い方が
収縮方向における寸法変化率
は大きくなると考えられる。
【0033】
2.偏光膜の作製
次に、本発明の光学フィルム積層体に用いることができる偏光膜の作製方法の一例を、その偏光膜を作製する際に用いられる熱可塑性樹脂の一般的材料特性とともに説明する。但し、この作製方法は、単なる一例にすぎず、その他の作製方法を用いても勿論よい。
【0034】
熱可塑性樹脂は、高分子が規則正しく配列する結晶状態にあるものと、高分子が規則正しい配列を持たない、あるいは、ごく一部しか規則正しい配列を持たない無定形又は非晶状態にあるものとに大別できる。前者を結晶状態といい、後者を無定形又は非晶状態という。これに対応して、結晶状態にはないが、条件次第では結晶状態をつくることができる性質をもった熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂と呼ばれ、そうした性質をもたない熱可塑性樹脂は非晶性樹脂と呼ばれる。一方、結晶性樹脂であるか非晶性樹脂であるかを問わず、結晶状態にない樹脂又は結晶状態に至らない樹脂をアモルファス又は非晶質の樹脂という。ここでは、アモルファス又は非晶質という用語は、結晶状態をつくらない性質を意味する非晶性という用語とは区別して用いられる。
【0035】
結晶性樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)を含むオレフィン系樹脂と、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)を含むエステル系樹脂がある。結晶性樹脂の特徴の一つは、一般的に加熱及び/又は延伸配向によって高分子が配列して結晶化が進む性質を有することである。樹脂の物性は、結晶化の程度に応じて様々に変化する。一方で、例えば、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレンテレフタレート(PET)のような結晶性樹脂でも、加熱処理や延伸配向によって起こる高分子の配列を阻害することによって、結晶化の抑制が可能である。結晶化が抑制されたこれらのポリプロピレン(PP)及びポリエチレンテレフタレート(PET)を、それぞれ非晶性ポリプロピレン及び非晶性ポリエチレンテレフタレートといい、これらを、それぞれ総称して非晶性オレフィン系樹脂及び非晶性エステル系樹脂という。
【0036】
例えばポリプロピレン(PP)の場合、立体規則性のないアタクチック構造にすることによって、結晶化を抑制した非晶性ポリプロピレン(PP)を作成することができる。また、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の場合、重合モノマーとして、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジメタノールのような変性基を共重合すること、すなわち、ポリエチレンテレフタレート(PET)の結晶化を阻害する分子を共重合させることによって、結晶化を抑制した非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)を作成することができる。
【0037】
図1は、10μm以下、例えば、5μm以下の偏光膜をも作製することができる製造工程の概要図である。
【0038】
[積層体作成工程(A)]
偏光膜を塗工する基材となる熱可塑性樹脂基材として、厚み200μmのイソフタル酸を6mol%共重合させたイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「非晶性PET)と記載する)の連続ウェブの基材(三菱樹脂(株)製 商品名:ノバクリア SH046 200μm)を用いた。この熱可塑性樹脂は、非晶性であり、熱を加えても結晶化しにくく、延伸倍率が低下しにくい。また、このポリエチレンテレフタレートの連続ウェブの基材は、ガラス転移温度が75℃である。なお、PVA層のガラス転移温度は、80℃である。
【0039】
重合度1200、ケン化度99%、アセトアセチル変性度4.6%のアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業(株)製 商品名:ゴーセファイマー Z200)を1重量%添加した、重合度4200、けん化度99.2%のPVA粉末を水に溶解した4〜5%濃度のPVA水溶液を準備した。次に、塗工手段21、乾燥手段22及び表面改質処理装置23を備えた積層体作成装置20において、非晶性PET基材1にPVA水溶液を乾燥後の膜厚が12μmとなるように塗布し、60℃の雰囲気下において熱風乾燥により10分間乾燥して、基材上にPVA系樹脂を製膜した積層体を作成した。以下、このようにして得られた積層体を「非晶性PET基材にPVA層が製膜された積層体」、「PVA層を含む積層体」又は、「積層体7」と記載する。
【0040】
PVA層2を含む積層体7は、空中補助延伸及びホウ酸水中延伸の2段延伸工程を含む以下の工程を経て、最終的に5μm厚の偏光膜3として製造される。但し、非晶性PET基材1上に製膜されるPVA系樹脂層の厚み及び後述の延伸倍率を適宜変更することによって、厚み10μm以下の任意の厚み、例えば、6μm、4μm若しくは3μmや、逆に、10μm以上の厚み、例えば、12μmの偏光膜を作成することもできる。
【0041】
[空中補助延伸工程(B)]
第1段の空中補助延伸工程(B)によって、12μm厚のPVA層2を含む積層体7を非晶性PET基材1と一体に延伸し、PVA層2を含む「延伸積層体8」を生成した。具体的には、オーブン33内に延伸手段31が配備された空中補助延伸処理装置30において、PVA層2を含む積層体7を、PVA層及び基材のガラス転移温度より高い120℃の延伸温度環境に設定されたオーブン33内で延伸手段31に通し、延伸倍率が2.0倍になるように、自由端一軸延伸し、厚み8μmの延伸積層体8を生成した。この段階で、オーブン33に併設させた巻取装置32に巻き取って延伸積層体8のロール8’を製造することができる。本実施形態では、空中補助延伸の延伸倍率を2.0倍としているが、目的の厚みや偏光度に応じて、本工程の3.5倍まで延伸倍率を上げることが可能である。
【0042】
ここで、自由端延伸と固定端延伸について概説する。長尺フィルムを搬送方向に延伸すると、延伸する方向に対して垂直方向すなわち幅方向にフィルムが収縮する。自由端延伸は、この収縮を抑制することなく延伸する方法をいう。また、縦一軸延伸とは、縦方向にのみに延伸する延伸方法のことである。自由端一軸延伸は、一般に延伸方向に対して垂直方向に起こる収縮を抑制しながら延伸する固定端一軸延伸と対比されるものである。この自由端一軸の延伸処理によって、積層体7に含まれる12μm厚のPVA層2は、PVA分子が延伸方向に配向された8μm厚のPVA層2になる。
【0043】
[第1不溶化工程(C)]
次に、第1不溶化工程(C)において、ロール8’を装着した繰出装置43から繰り出される延伸積層体8に不溶化処理を施し、不溶化された延伸積層体9を生成した。当然のことながら、この工程で不溶化された延伸積層体9は、不溶化されたPVA層2を含む。以下、これを「不溶化延伸積層体9」という。
【0044】
具体的には、第1ホウ酸不溶化水溶液41を備えた第1不溶化処理装置40において、延伸積層体8を液温30℃の第1ホウ酸不溶化水溶液41に30秒間浸漬する。この工程に用いられる第1ホウ酸不溶化水溶液41は、水100重量部に対してホウ酸を3重量部含む(以下、「第1ホウ酸不溶化水溶液」という。)ものである。この工程は、少なくとも直後の染色工程(D)において、延伸積層体8に含まれるPVA層を溶解させないための不溶化処理を施すことを目的とする。
【0045】
[染色工程(D)]
次に、染色工程(D)によって、PVA分子が配向された8μm厚のPVA層2に二色性物質のヨウ素を吸着させた着色積層体10を生成した。具体的には、染色液51の染色浴52を備えた染色装置50において、第1不溶化処理装置40から繰り出される不溶化延伸積層体9を液温30℃のヨウ素及びヨウ化カリウムを含む染色液51に、不溶化延伸積層体9の配向されたPVA層2にヨウ素を吸着させた着色積層体10を生成した。
【0046】
本工程において、染色液51は、延伸積層体8に含まれるPVA層2を溶解させないようにするため、ヨウ素濃度が0.08〜0.25重量%の範囲内とし、ヨウ化カリウム濃度を0.56〜1.75重量%の範囲内とし、ヨウ素とヨウ化カリウムの濃度の比は1対7とした。本工程における、ヨウ素濃度及びヨウ化カリウム濃度、並びに、浸漬時間が、PVA層に含まれるヨウ素元素の濃度に大きく影響すると考えられる。そのため、本工程のヨウ素濃度及びヨウ化カリウム濃度と浸漬時間とを調節することにより、最終的な偏光膜の単体透過率を調節することが可能である。例えば、本実施形態においては、上記のヨウ素濃度及びヨウ化カリウム濃度の範囲で、ヨウ素とヨウ化カリウムの濃度を調節すると共に、浸漬時間を調節することにより、最終的に生成される偏光膜3を構成するPVA層の単体透過率が45.0%になるように、延伸積層体8の配向されたPVA層2にヨウ素を吸着させることができる。尚、単体透過率は45.0%に限らず、44.0%、44.3%若しくは、44.5%或いは、45.5%に調整することも可能である。
【0047】
[第2不溶化工程(E)]
以下に説明する第2不溶化工程(E)は、以下の目的によりなされる。本工程は、第1に、後工程のホウ酸水中延伸工程(F)において、着色積層体10に含まれるPVA層2を溶解させないようにする不溶化と、第2に、PVA層2に着色されたヨウ素を溶出させないようにする着色安定化と、第3に、PVA層2のPVA分子同士を架橋することによって結節点を生成する結節点の生成とを目的とし、第2不溶化工程は、この第1と第2の目的を特に達成するものである。
第2不溶化工程(E)は、ホウ酸水中延伸工程(F)の前工程として行われる。染色工程(D)において生成された着色積層体10に不溶化処理を施すことによって、不溶化された着色積層体11が生成される。以下、これを「不溶化着色積層体11」という。不溶化着色積層体11は、不溶化されたPVA層2を含む。具体的には、ホウ酸とヨウ化カリウムとからなる水溶液(以下、「第2ホウ酸不溶化水溶液」という)61を収容する第2不溶化処理装置60において、着色積層体10を40℃の第2ホウ酸不溶化水溶液61に60秒間浸漬し、ヨウ素を吸着させたPVA層のPVA分子同士を架橋することによって、不溶化着色積層体11が生成される。この工程で使用される第2ホウ酸不溶化水溶液は、水100重量部に対してホウ酸を3重量部含み、水100重量部に対してヨウ化カリウムを3重量部含む。
[ホウ酸水中延伸工程(F)]
第2段のホウ酸水中延伸工程によって、ヨウ素を配向させたPVA層2を含む、不溶化着色積層体11をさらに延伸し、5μm厚の偏光膜3を構成するヨウ素を配向させたPVA層を含む積層体12を生成した。具体的には、ホウ酸水溶液71のホウ酸浴72と延伸手段73を備えたホウ酸水中延伸処理装置70において、第2不溶化処理装置60から連続的に繰り出された、不溶化着色積層体11をホウ酸とヨウ化カリウムを含む液温70℃の延伸温度環境に設定されたホウ酸水溶液71に浸漬し、次にホウ酸水中処理装置70に配備された延伸手段73に通し、延伸倍率が2.7倍になるように自由端一軸に延伸することによって、積層体12を生成した。本実施形態の総延伸倍率は、5.5倍であるが、空中補助延伸工程の延伸倍率及びホウ酸水中延伸工程の延伸倍率を調整することによって、5.0倍以上6.5倍以下としてもよい。
【0048】
より詳細には、ホウ酸水溶液71は、水100重量部に対してホウ酸を6.5重量部含み、水100重量部に対してヨウ化カリウムを5重量部含むように調整した。本発明の偏光膜は、透過率が高く、ポリヨウ素イオンがPVAに吸着する架橋点の量が少ないため、本工程及び後の洗浄工程において、ポリヨウ素イオン及びヨウ素イオンが、溶出しやすくなる。そこで、従来技術よりも、本工程のホウ酸水溶液のホウ酸濃度を高くすることにより、PVAに吸着したポリヨウ素イオン(及びヨウ素イオンやカリウムイオン)の溶出量を低減し、着色の安定化を図っている。
【0049】
本工程においては、ヨウ素吸着量を調整した、不溶化着色積層体11を、まず5〜10秒間ホウ酸水溶液71に浸漬した。次いで、その不溶化着色積層体11をそのままホウ酸水中処理装置70の延伸手段73である周速の異なる複数の組のロール間に通し、30〜90秒かけて延伸倍率が2.7倍になるように自由端一軸に延伸した。この延伸処理によって、架橋した着色積層体11に含まれるPVA層は、ポリヨウ素イオン(I
3-やI
5-)がPVAに吸着したPVA−ヨウ素錯体として一方向に高次に配向した5μm厚のPVA層へと変化した。このPVA層が積層体12の偏光膜3を構成する。
【0050】
[洗浄工程(G)]
不溶化着色積層体11は、ホウ酸水中延伸工程(F)において延伸処理され、ホウ酸水溶液71から取り出される。取り出された偏光膜3を含む積層体12は、洗浄工程(G)に送られる。洗浄工程(G)は、薄型高性能偏光膜3の表面に付着した不要残存物を洗い流すことを目的とする。具体的には、積層体12を洗浄装置80に送り込み、薄型高性能偏光膜3のPVAが溶解しないように、液温30℃のヨウ化カリウムを含む洗浄液81に1〜10秒間浸漬する。洗浄液81中のヨウ化カリウム濃度は、水100重量部に対して、4重量部である。
【0051】
[乾燥工程(H)]
洗浄された積層体12は、乾燥工程(H)に送られ、ここで乾燥される。次いで、乾燥された積層体12は、乾燥装置90に併設された巻取装置91によって、連続ウェブの積層体12として巻き取られ、薄型高性能偏光膜3を含む積層体12のロールが生成される。乾燥工程(H)として、任意の適切な方法、例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥を採用することができる。本実施形態においては、オーブンの乾燥装置90において、60℃の温風で、240秒間、乾燥を行った。
以上の工程により、5μm厚の偏光膜3が作製される。
【0052】
3. 光学フィルム積層体の作製
本発明の光学フィルム積層体は、「1.保護フィルムの作製」で得られた保護フィルムと、「2.偏光膜の作製」で得られた偏光膜の組み合わせから成る。例えば、
図1の工程(I)、即ち、[貼合せ/転写工程(I)]によって、光学フィルム積層体を作ることができる。この場合、偏光膜3は、該偏光膜3が製膜された熱可塑性基材、例えば非晶性PET基材1上にそのまま残された状態で、保護フィルム4(その他の光学フィルムを含んでいてもよい)を貼合せながら巻き取られる。この巻き取り工程において、偏光膜3を保護フィルム4に転写しながら非晶性PET基材1を剥離することにより、光学フィルム積層体13が生成されることになる。具体的には、貼合せ/転写装置100に含まれる繰出/貼合せ装置101によって積層体12がロールから繰り出され、繰り出された積層体12の偏光膜3が、巻取/転写装置102によって保護フィルム4に転写され、その過程で、偏光膜3が基材1から剥離されて、光学フィルム積層体13が生成される。特に図示していないが、偏光膜3と保護フィルム4との間には接着層が設けられる。この接着層は、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)40重量部とアクリロイルモルホリン(ACMO)60重量部と光開始剤「IRGACURE 819」(BASF社製)3重量部を混合することによって調整された、光硬化性の接着剤によって構成される。調整した接着剤は、硬化後の接着層の厚みが0.5μmとなるように偏光膜3の上に塗布され、この塗布側を保護フィルム14の易接着層側に貼り合わせ、活性エネルギー線として紫外線を照射し、接着剤を硬化させた。紫外線照射は、ガリウム封入メタルハライドランプ、照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製のLight HAMMER10、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm2、積算照射量1000/mJ/cm2(波長380〜440nm)を使用し、紫外線の照度は、Solatell社製のSola−Checkシステムを使用して測定した。
また、上記「積層体作成工程(A)」に記載されているように非晶性PET基材1とは別個に設けた保護フィルムを用いるのではなく、この非晶性PET基材1を保護フィルムとして利用してもよい。例えば、非晶性PET基材1を偏光膜3から一旦剥離し、所望の厚みに延伸した後に、保護フィルムとして偏光膜3と貼り合わせてもよい。また、偏光膜3と非晶性PET基材1を剥離せずに、そのまま所望の厚みに延伸して、光学フィルム積層体13を生成することもできる。
【0053】
4.光学フィルム積層体の評価方法
保護フィルムや、偏光膜、及び光学フィルム積層体について、以下の各評価を行った。
(1)保護フィルムの厚みの測定
作製した保護フィルムの厚みを、偏光膜と貼り合わせる前の状態において、ダイヤルゲージ(尾崎製作所製)を用いて幅方向5点で測定した。
【0054】
(2)偏光膜の厚み測定
作製した偏光膜を、保護フィルムと貼り合わせる直前の状態、即ち、
図1の繰出/貼合せ装置101によって、積層体12がロールから繰り出されたときにサンプリングし、熱可塑性樹脂から剥離した後、(1)に記載のダイヤルゲージを用いて偏光膜の厚みを測定した。
【0055】
(3)保護フィルムの寸法変化率
偏光膜と貼り合わせる前の保護フィルム、即ち、
図1の繰出/貼合せ装置101において、偏光膜3を転写するために繰り出された保護フィルム4について、以下の寸法変化率測定を行った。
作製された保護フィルムサンプルから、試験片を、保護フィルムの搬送方向(MD方向)について100mm、保護フィルムの搬送方向に対して垂直な方向(TD方向)について100mmの正方形形状に切り出し、4辺の中点近傍に標点を設け、25℃50%RHの室温環境下にて、向かい合う辺同士の標点間距離「a」を測定した。次に85℃の乾燥オーブン(espec社製)に48時間投入し、85℃の環境試験機内から測定前と同じ25℃50%RHの室温環境下に取り出した後、30分後に、平面二軸寸法測定機(ミツトヨ製QV606)にて、同様に向かい合う辺同士の評点間距離「a’」を測定した。このとき、
{(a’−a)/a
}×100(%)をそれぞれMD方向の寸法変化率とした。
【0056】
(4)光学フィルム積層体のクラック評価
得られた光学フィルム積層体について、以下のクラック評価を行った。
(4−1)所定のヒートサイクルを与えた後のクラックの有無に関する評価
作製した光学フィルム積層体のサンプルを、MD方向に200mm、TD方向に150mmの長方形型に切り出し、粘着剤側を長さ250mm、幅170mm、厚み1mmの無アルカリガラス板の中央部に貼り付けた。次に加圧脱泡装置(栗原製作所製)を用いて、0.5MPaの圧力下で、50℃で15分間の加圧脱泡装置を施した。その後、ガラスに貼りつけたままサンプルを環境試験機に投入し、−40℃から85℃までの冷熱衝撃を100サイクル与え、MD方向にクラックが発生するかどうかを確認した。
(4−2)所定深さのクラックが生じるまでに要したヒートサイクルの回数に関する評価
作製した光学フィルム積層体のサンプルを、積層方向を紙面に対して垂直に見た時に、TD方向を長辺として
図4に示す形状に切り出した。尚、偏光膜と保護フィルムは紙面に対して垂直方向に積層されている。切り出し加工にはレーザー加工機を用いた。次に粘着剤側を長さ250mm、幅170mm、厚み1mmの無アルカリガラス板の中央部に貼り付け、加圧脱泡装置(栗原製作所製)を用いて、0.5MPaの圧力下で、50℃で15分間の加圧脱泡処理を施した。その後、ガラスに貼りつけたままサンプルを環境試験機に投入し、−40℃から85℃までの冷熱衝撃を10サイクル与え、
図4中「a」部に発生するクラックの長さを比較した。冷熱衝撃試験は合計で最大100サイクルまで与え、クラックが辺「b」まで達するのに必要なサイクル数をカウントした。
【0057】
5.保護フィルムの寸法変化率と偏光膜の寸法変化率の比
偏光膜と保護フィルムとの界面に生じる応力を軽減させる観点から、保護フィルムの寸法変化率(εf)と偏光膜の寸法変化率(εp)との比(εf/εp)を求めた。明らかなように、これらの寸法変化率の差は小さければ小さい程よい、つまり、比の値は1に近い程、好ましい。後述する表1では、実際に実験に用いた偏光膜の寸法変化率に対する保護フィルムの寸法変化率の比を求めた。
【0058】
[実施例1]
上記「(1)グルタルイミド環単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を利用した保護フィルムの作製」に記載された方法で、厚み40μmの保護フィルムを得た。また、上記「2.偏光膜の作製」に記載された方法で、厚み5μmの偏光膜を得た。これら保護フィルムと偏光膜とから構成される光学フィルム積層体について評価を行った。
この結果、保護フィルムのTD方向における
収縮方向の寸法変化率は、0.21となり、また、クラックの発生は無く、所定深さのクラックに達するまでに要したヒートサイクルは、70回と、良好な結果が得られた。また、厚み5μmの偏光膜の寸法変化率との比は、0.07となった。
【0059】
[実施例2]
基本的に実施例1と同じであるが、保護フィルムの作製時にTD方向の延伸倍率を30%上げて2.65倍とし、厚み20μmの保護フィルムを得た。この保護フィルムを、上記「2.偏光膜の作製」に記載された方法で得た厚み5μmの偏光膜と接着し、得られた光学フィルム積層体について評価を行った。
この場合、保護フィルムの
収縮方向における寸法変化率は、0.42となり、また、クラックの発生は無く、ヒートサイクルを100回以上繰り返しても所定深さまでクラックは達せず、実施例1よりも良好な結果が得られた。また、厚み5μmの偏光膜の寸法変化率との比は、0.14となった。
【0060】
[実施例3]
保護フィルムの作製時におけるTD方向の延伸温度が実施例1より3℃高いこと以外は、実施例2と同様である。
この場合の保護フィルムの
収縮方向における寸法変化率は、0.3であった。また、クラックの発生は無く、所定深さのクラックに達するまでに要したヒートサイクルは、90回であった。また、このとき厚み5μmの偏光膜の寸法変化率との比は、0.1となった。
【0061】
[実施例4]
保護フィルムの作製時におけるTD方向の延伸温度が実施例1より6℃高いこと以外は、実施例2と同様である。
この場合の保護フィルムの
収縮方向における寸法変化率は、0.22であった。また、クラックの発生は無く、所定深さのクラックに達するまでに要したヒートサイクルは、70回であった。また、厚み5μmの偏光膜の寸法変化率との比は、0.073となった。
【0062】
[実施例5]
基本的に実施例1と同じであるが、保護フィルムの作製時にTD方向の延伸倍率を30%上げて延伸し、これに伴ってMD方向の延伸倍率を調整することにより保護フィルムの厚みを40μmとした。また、上記「2.偏光膜の作製」に記載された方法で、厚み5μmの偏光膜を得た。これら保護フィルムと偏光膜とから構成される光学フィルム積層体について、評価を行った。
この結果、保護フィルムの
収縮方向における寸法変化率は、0.53となり、また、クラックの発生は無く、所定深さのクラックに達するまでに要したヒートサイクルは、80回となり、実施例1よりも良好な結果が得られた。また、厚み5μmの偏光膜の寸法変化率との比は、0.177となった。
【0063】
[実施例6]
上記「(2)ラクトン環単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を利用した保護フィルムの作製」に記載された方法で、厚み20μmの保護フィルムを得た。この場合のTD方向における延伸温度(139℃)と延伸倍率(2.65倍)は、実施例4と同じである。また、上記「2.偏光膜の作製」に記載された方法で、厚み5μmの偏光膜を得た。これら保護フィルムと偏光膜とから構成される光学フィルム積層体について、評価を行った。
この結果、保護フィルムのTD方向における
収縮方向の寸法変化率は、0.36となり、また、クラックの発生は無く、所定深さのクラックに達するまでに要したヒートサイクルは、70回であり、良好な結果が得られた。また、厚み5μmの偏光膜の寸法変化率との比は、0.12となった。
【0066】
[比較例1]
基本的に実施例6と同じであるが、偏光膜の厚みを12μmとした点で相違する。この12μm厚みの偏光膜は、上記の通り、PVA単層のフィルムをそのまま染色及び延伸する方法で得られたものである。この場合、保護フィルムの寸法変化率は、+0.36と良好な結果が得られたが、所定深さのクラックに達するまでに要したヒートサイクルは、10回であり、実用に耐えないものであることが判明した。また、厚み12μmの偏光膜の寸法変化率との比は、0.09となった。尚、クラックの有無については、所定深さのクラックに達するまでに要したヒートサイクルの回数や比較例2、3等の結果から明らかであるため、つまり、クラックが生じることは明らかであるため、特に実験を行っていない(比較例
4についても同様)。
【0067】
[比較例2]
保護フィルムの作製時におけるTD方向の延伸温度が実施例6より12℃高いこと以外は、実施例6と同様である。この場合、保護フィルムの寸法変化率は、+0.18であり、クラックが発生し、所定深さのクラックに達するまでに要したヒートサイクルも、10回と悪化が見られた。また、厚み5μmの偏光膜の寸法変化率との比は、0.06となった。
【0068】
[比較例3]
保護フィルムの作製時におけるTD方向の延伸温度が実施例5より12℃高く、延伸倍率が2.05倍であること以外は、実施例5と同様である。
この場合、保護フィルムの寸法変化率は、+0.1であったが、クラックが発生し、所定深さのクラックに達するまでに要したヒートサイクルも、30回と悪化が見られた。また、厚み5μmの偏光膜の寸法変化率との比は、0.033となった。
【0069】
[比較例4]
保護フィルムの作製時におけるTD方向の延伸温度が実施例6より11℃高く、偏光膜の厚みを12μmとしたこと以外は、実施例6と同様である。尚、厚み12μmの偏光膜は、比較例1と同様の方法で得た。この場合、保護フィルムの寸法変化率は、+0.18であったが、クラックが発生し、所定深さのクラックに達するまでに要したヒートサイクルも、10回と悪化が見られた。また、厚み5μmの偏光膜の寸法変化率との比は、0.06となった。
【0072】
実施例1乃至
6、及び比較例1〜
4の試験結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
上の表から明らかなように、アクリル系樹脂については、例えば、グルタルイミド環を含有したものであっても、ラクトン環を含有したものであって、偏光膜の厚みが10μm以下、例えば、5μmであって、保護フィルムの厚みが40μm以下、例えば、40μmや20μmであり、且つ、その収縮方向における寸法変化率が0.2%以上の場合には、光学フィルム積層体に所定のヒートサイクルを与えた場合であってもクラックは発生せず、また、光学フィルム積層体に所定深さのクラックが生じるまでに要するヒートサイクルの回数は70回以上と良好な結果が得られた。また、クラックの発生及びヒートサイクルについて良好な結果が得られたときの、透明保護フィルムの寸法変化率と偏光膜の寸法変化率の比は、0.07(誤差を考慮すると0.05以上)以上となった。
尚、本実施例では、ラクトン環についての実施例は実施例6のみであるが、ラクトン環のTg(126℃)とグルタルイミド環のTg(127℃)は略同じであることから、寸法変化率の観点、言いかえれば、分子配向性の観点からみれば、両者は実質的に同じものと考えることができる。よって、たとえ実施例が存在しなくとも、ラクトン環を含有したアクリル系樹脂については、基本的に、グルタルイミド環を含有したそれと同様に考えることができる。更に、グルタル酸無水物構造を導入した場合や、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、メチルマレイミドなどのN−置換マレイミドを共重合した場合も、同様の結果が得られることは当業者には明らかであろう。
【0074】
上の表から明らかなように、アクリル系樹脂については、例えば、グルタルイミド環を含有したものであっても、ラクトン環を含有したものであって、偏光膜の厚みが10μm以下、例えば、5μmであって、保護フィルムの厚みが40μm以下、例えば、40μmや20μmであり、且つ、その寸法変化率が0.2%以上の場合には、光学フィルム積層体に所定のヒートサイクルを与えた場合であってもクラックは発生せず、また、光学フィルム積層体に所定深さのクラックが生じるまでに要するヒートサイクルの回数は70回以上と良好な結果が得られた。また、クラックの発生及びヒートサイクルについて良好な結果が得られたときの、透明保護フィルムの寸法変化率と偏光膜の寸法変化率の比は、0.07(誤差を考慮すると0.05以上)以上となった。
尚、本実施例では、ラクトン環についての実施例は実施例6のみであるが、ラクトン環のTg(126℃)とグルタルイミド環のTg(127℃)は略同じであることから、寸法変化率の観点、言いかえれば、分子配向性の観点からみれば、両者は実質的に同じものと考えることができる。よって、たとえ実施例が存在しなくとも、ラクトン環を含有したアクリル系樹脂については、基本的に、グルタルイミド環を含有したそれと同様に考えることができる。更に、グルタル酸無水物構造を導入した場合や、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、メチルマレイミドなどのN−置換マレイミドを共重合した場合も、同様の結果が得られることは当業者には明らかであろう。
また、ポリエチレンテレフタレート系樹脂については、偏光膜の厚みが10μm以下、例えば、5μmであって、保護フィルムの厚みが40μm以下、例えば、20μmであり、且つ、その延伸倍率が2.0(以上)の場合には、光学フィルム積層体に所定深さのクラックが生じるまでに要するヒートサイクルの回数は80回以上と良好な結果が得られた。また、ヒートサイクルについて良好な結果が得られたときの、透明保護フィルムの寸法変化率と偏光膜の寸法変化率の比は、0.59以上となった。尚、本実施例では、ポリエチレンテレフタレート系樹脂としてPETを例示しているが、ポリエステル系樹脂であるから、PET以外の、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等についても、同様の結果が得られることは当業者には明らかであろう。
更に、ポリオレフィン系樹脂については、偏光膜の厚みが10μm以下、例えば、5μmであって、保護フィルムの厚みが40μm以下、例えば、25μmであり、且つ、その延伸温度がTg+30(以下)の場合には、光学フィルム積層体に所定深さのクラックが生じるまでに要するヒートサイクルの回数は70回以上と良好な結果が得られた。また、ヒートサイクルについて良好な結果が得られたときの、透明保護フィルムの寸法変化率と偏光膜の寸法変化率の比は、0.08以上となった。
【0075】
6.装置構成
図5及び
図6に、本発明による光学フィルム積層体を用いた光学的表示装置(層構成)の実施形態を示す。
【0076】
図5(a)は、本発明の光学フィルム積層体を用いた光学的表示装置の最も基本的な構成を示す断面図であり、この光学的表示装置200は、例えば液晶表示パネル又は有機EL表示パネルとすることができる光学的表示パネル201を備え、該表示パネル201の一方の面に、光学的に透明な粘着剤層202を介して偏光膜203が接合される。該偏光膜203の外側の面には、光学的に透明な樹脂材料からなる保護フィルム(以下、「保護層」という)204が接着層(図示されていない)を介して接着される。任意ではあるが、光学的表示装置の視認側となる保護層204の外側には、破線で示すように、透明なウインドウ205を配置することができる。
【0077】
層や膜などを接合又は接着させる材料としては、上述した光硬化性の接着剤の他、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系、イソシアネート系、ポリビニルアルコール系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステルなどのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。
【0078】
この構成において、粘着剤層202として、拡散機能を備えた材料を使用するか、或いは、粘着剤層と拡散剤層の2層構成とすることもできる。
【0079】
粘着剤層202の接着力を向上させる材料として、例えば特開2002−258269号公報、特開2004−078143号公報、特開2007−171892号公報に記載のあるようなアンカー層(図示されていない)を設けることもできる。バインダー樹脂としては粘着剤の投錨力を向上出来る層であれは特に制限はなく、具体的には、例えば、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、分子中にアミノ基を含むポリマー類、エステルウレタン系樹脂、オキサゾリン基などを含有する各種アクリル系樹脂などの有機反応性基を有する樹脂(ポリマー)を用いることが出来る。
【0080】
また、上記アンカー層には、帯電防止性を付与するために、例えば特開2004−338379号公報に記載のあるように帯電防止剤を添加することもできる。帯電防止性付与のための帯電防止剤としては、イオン性界面活性剤系、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリン等の導電性ポリマー系、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム等の金属酸化物系などがあげられるが、特に光学特性、外観、帯電防止効果、および帯電防止効果の加熱、加湿時での安定性という観点から、導電性ポリマー系が好ましく使用される。この中でも、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの水溶性導電性ポリマー、もしくは水分散性導電性ポリマーが特に好ましく使用される。帯電防止層の形成材料として水溶性導電性ポリマーや水分散性導電性ポリマーを用いた場合、塗工に際して有機溶剤による光学フィルム基材への変質を抑えることができる。
【0081】
保護層204の偏光膜203を接着させない面には、表面処理層として、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。また、表面処理層には紫外線吸収剤が含有していても良い。更に、表面処理層は偏光膜の加湿耐久性を向上させる目的で透湿度の低い層であることが好ましい。ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護膜の表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた、例えば、特開2005−248173号公報に記載のあるような光の干渉作用による反射光の打ち消し効果を利用して反射を防止する薄層タイプや、特開2011−2759号公報に記載のあるような表面に微細構造を付与することにより低反射率を発現させる構造タイプなどの低反射層の形成により達成することができる。スティッキング防止処理は隣接層(例えば、バックライト側の拡散板)との密着防止を目的に施される。アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。前記ハードコート層としては、鉛筆硬度が2H以上となるハードコート層が好ましい。
【0082】
図5(b)に示す光学的表示装置の構成は、
図5(a)に示すものとほぼ同一の構成であるが、偏光膜203と保護層204との間に拡散層206が配置された構成を有する。
図5(c)に示す構成では、拡散層206は粘着層202と偏光膜203の間に配置される。
図5(d)に示す光学的表示装置は、基本的に
図5(a)に示すものと同一であるが、偏光膜203は、接着を容易にする易接着層207を介して保護層204に接着される。易接着層としては、例えば、特開2010−55062号公報に開示された材料を用いることができる。
【0083】
図5(e)に示す光学的表示装置は、保護層204の外側の面に帯電防止層208が設けられている点のみで、
図5(d)に示す光学的表示装置と異なる。
図5(f)に示す光学的表示装置200においては、
図5(e)に示す光学的表示装置の構成において、保護層204と帯電防止層208との間に1/4波長位相差膜209が配置される。また、1/4波長位相差膜は帯電防止層よりも視認側に配置することもできる。この構成によれば、偏光膜203よりも視認側に1/4波長位相差膜が配置されているため、表示パネル201から偏光膜203を経て出射する光は、1/4波長位相差膜を出るときに円偏光に変換される。この構成の光学的表示装置は、例えば視聴者が偏光サングラスを着用している場合にも、視認に支障がなくなる、という利点をもたらす。
【0084】
図6(a)は、光学的表示パネルとして透過型液晶表示パネル301を備える光学的表示装置300の実施形態を示す。液晶表示パネル301より視認側のパネル構成は、
図5(f)に示す光学的表示装置200における構成とほぼ同一である。すなわち、液晶表示パネル301の視認側の面に、粘着剤層302を介して第1の偏光膜303が接合され、該第1の偏光膜303に易接着層307を介して保護層304が接合される。保護層304には1/4波長位相差層309が接合される。1/4波長位相差層309には、任意ではあるが、帯電防止層308が形成される。1/4波長位相差層309の外側には、これも任意であるが、ウインドウ305が配置される。
図6(a)に示す実施形態においては、液晶表示パネル301の他方の面に、第2の粘着剤層302aを介して第2の偏光膜303aが配置される。第2の偏光膜303aの裏側には、透過型液晶表示装置において周知のように、バックライト310が配置される。
【0085】
図6(b)は、表示パネルとして反射型液晶表示パネル401を備える光学的表示装置400の実施形態を示す。この実施形態において、液晶表示パネル401より視認側のパネル構成は、
図6(a)に示す光学的表示装置300における構成とほぼ同一である。すなわち、液晶表示パネル401の視認側の面に粘着剤層402を介して第1の偏光膜403が接合され、該第1の偏光膜403に易接着層407を介して保護層404が接合される。保護層404には、1/4波長位相差層409が接合される。1/4波長位相差層409には、任意ではあるが、帯電防止層408が形成される。1/4波長位相差層409の外側には、これも任意であるが、ウインドウ405が配置される。
【0086】
図6(b)に示す実施形態においては、液晶表示パネル401の他方の面に、第2の粘着剤層402aを介して第2の偏光膜403aが接合され、該第2の偏光膜403aに易接着層407aを介して第2の保護層404aが接合される。第2の保護層404aには、任意ではあるが、帯電防止層408aが形成される。第2の保護層404aの裏側には、液晶表示パネル401を透過した光を該液晶表示パネル401に向けて反射するためのミラー411が配置される。この構成においては、視認側から入射する外光がミラー411により反射されて液晶表示パネル401を透過し、外に出ることにより、視認側から表示を見ることができる。
【0087】
この構成においては、ミラー411は、入射光の一部を透過させるハーフミラーとすることができる。ミラー411をハーフミラーとして構成する場合には、
図6(b)に想像線で示すように、ミラー411の背後にバックライト410を配置する。この構成によれば、外光が暗いときに、バックライト410を点灯させることによって表示を行うことが可能である。
【0088】
図6(c)に他の実施形態を示す。この実施形態が
図6(b)に示す実施形態と異なる点は、第1の偏光膜403と液晶表示パネル401との間に1/4波長位相差層409aが配置され、第2の偏光膜403aと液晶表示パネル401との間に1/4波長位相差層409bが配置されていることである。具体的に述べると、該第1の偏光膜403に1/4波長位相差層409aが接合され、該1/4波長位相差層409aが粘着剤層402を介して液晶表示パネル401の視認側の面に接合される。同様に、第2の偏光膜403aに1/4波長位相差層409bが接合され、該1/4波長位相差層409bが粘着剤層402aを介して液晶表示パネル401の裏側の面に接合される。
【0089】
このような構成においては該1/4波長位相差層409aおよび該1/4波長位相差層409bは、"SID Digest of Tech. Papers、2000、pp902〜905、「Improvement of Transmitted Light Efficiency in SH-LCDs Using Quarter-Wave Retardation Films」、Y. Iwamoto他"に記載されているように、表示装置の表示輝度を向上させる機能を有する。
【0090】
上述した各実施形態において、各保護層は、前述した材料により形成することができる。
【0091】
図6(d)は、有機EL表示パネル又は反射型液晶表示パネルとして構成される光学的表示パネル501を使用した光学的表示装置500の例を示す。表示パネル501の視認側の面には粘着剤層502を介して位相差膜512が接合され、該位相差膜512に偏光膜503が接合される。偏光膜503は、易接着層507を介して保護層504に接合され、該保護層504には1/4波長位相差層509が接合される。任意ではあるが、1/4波長位相差層509には帯電防止層508を形成することができる。該1/4波長位相差層509の外側には、任意ではあるが、ウインドウ505を配置することができる。位相差膜512は偏光膜503の視認側から内部に入射した光が内部反射して視認側に射出されることを防止するために用いられる。
【0092】
偏光膜503と表示パネル501の間に配置される位相差膜512は、1/4波長位相差層とすることができる。この場合において、遅相軸方向の屈折率をnxとし、それと直交する面内方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、これらの屈折率がnx>nz>nyの関係を有する2軸位相差膜とすることができる。この構成では、位相差膜512は、遅軸方向が偏光膜503の吸収軸に対して45°の関係になるように配置する。この構成によれば、斜め方向の反射防止機能も得ることができる。図には示していないが、表示パネル501の裏側には、通常は、ミラーが配置される。
【0093】
図6(e)に本発明のさらに別の実施形態による光学的表示装置600を示す。この実施形態においては、光学的表示パネルは、透過型のIPS液晶表示パネル601により構成され、該表示パネル601の視認側の面には粘着剤層602を介して位相差膜612が接合され、該位相差膜612に偏光膜603が接合される。偏光膜603は、易接着層607を介して保護層604に接合され、該保護層604には、パターン位相差層613が接合される。このパターン位相差層613は、「EKISHO」Vol.14、No.4、2010、pp219〜232「Xpolとその3D−TVへの応用」、松廣憲治に記載されているような、パターン位相差膜を形成する。パターン位相差層とは3D表示を可能にする為に表示パネルから出力された右眼用の画像と左眼用の画像をそれぞれ別々の偏光状態へ変化させる機能を有する。該パターン位相差層613の外側には、任意ではあるが、ウインドウ605を配置することができる。尚、上記のIPSモードは、V字型電極又はジグザグ電極等を採用した、スーパー・インプレーンスイッチング(S−IPS)モードや、アドバンスド・スーパー・インプレーンスイッチング(AS−IPS)モードを包含する。
【0094】
液晶表示パネル601の裏側の面には、第2の粘着剤層602aを介して位相差膜612aが接合され、該位相差膜612aに、第2の偏光膜603aが接合される。該第2の偏光膜603aには、易接着層607aを介して第2の保護層604aが接合される。第2の保護層604aには、任意ではあるが、帯電防止層608aが形成される。液晶表示パネル601が反射型液晶パネルである場合には、第2の保護層604aの裏側には、液晶表示パネル601を透過した光を該液晶表示パネル601に向けて反射するためのミラー611が配置される。該ミラー611がハーフミラーとして構成される場合には、該ミラー611の背後にバックライト610が配置される。液晶表示パネル601が透過型である場合には、ミラー611は省略され、バックライト610のみが配置される。
【0095】
この構成において、これら位相差膜612、612aの各々、或いは一方は、遅相軸方向の屈折率をnxとし、それと直交する面内方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、これらの屈折率がnx>nz>nyの関係を有する2軸位相差膜とすることができる。また、位相差膜612aは、屈折率がnx>nz>nyの関係を有する2軸位相差膜と、nx>ny>nzの関係を有する2軸位相差膜との2層構成とすることができる。これらの構成においては、位相差膜は、遅相軸の方向が偏光膜の吸収軸の方向に対して、0°又は90°の関係となるように配置する。この配置は、斜め方向から見たときの偏光膜交差角の補正に効果がある。
【0096】
図6(e)のパネル構成は、液晶表示パネル601が透過型のVA液晶である場合にも適用できる。この場合には、位相差膜612、612aは、屈折率がnx>nz>nyの関係を有する2軸位相差膜、或いは、nx>ny>nzの関係を有する2軸位相差膜とする。或いは、これら位相差膜612、612aは、屈折率がnx>ny≒nzの関係を有する位相差膜、又は、nx≒ny>nzの関係を有する位相差膜とする。いずれの場合においても、位相差膜は、遅相軸の方向が偏光膜の吸収軸の方向に対して、0°又は90°の関係となるように配置する。この配置は、斜め方向から見たときの偏光膜交差角の補正に加えて、液晶のもつ厚み方向の位相差補償に効果がある。