(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料が載置されるとともに、一面から他面にかけて貫通する複数の貫通孔が設けられた基板と、導電性材料からなり、少なくとも前記一面において前記貫通孔が設けられていない部分を覆う導電層と、を備える試料支持体が、複数の前記貫通孔と前記試料とが重なると共に前記他面が前記試料に対向するように載置されるように構成された試料台と、
前記一面における複数の前記貫通孔を含むイメージング対象領域に一括でレーザが照射されるように、前記レーザの照射を制御するレーザ照射部と、
前記レーザの照射によりイオン化された前記試料を、前記イメージング対象領域における前記試料の位置関係が維持された状態で検出する検出部と、
を備える、質量分析装置。
前記レーザ照射部は、毛細管現象によって前記試料を前記他面から前記一面に移動させるための領域として機能する前記試料支持体の実効領域の一部又は全部を前記イメージング対象領域として、前記レーザの照射を制御する、
請求項1又は2に記載の質量分析装置。
一面から他面にかけて貫通する複数の貫通孔が設けられた基板と、導電性材料からなり、少なくとも前記一面を覆う導電層と、を備える試料支持体が用意される第1工程と、
試料が試料台に載置され、且つ、複数の前記貫通孔と前記試料とが重なると共に前記他面が前記試料に対向するように前記試料支持体が前記試料上に配置される第2工程と、
前記一面における複数の前記貫通孔を含むイメージング対象領域に一括でレーザが照射されることにより、毛細管現象によって前記他面側から前記貫通孔を介して前記一面側に移動した前記試料がイオン化される第3工程と、
前記第3工程においてイオン化された前記試料が、前記イメージング対象領域における前記試料の位置関係が維持された状態で検出される第4工程と、
を含む、
質量分析方法。
前記第3工程では、毛細管現象によって前記試料を前記他面から前記一面に移動させるための領域として機能する前記試料支持体の実効領域の一部又は全部を前記イメージング対象領域として、前記レーザが照射される、
請求項4又は5に記載の質量分析方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面に示される各部材(又は部位)の寸法又は寸法の比率は、説明をわかり易くするために、実際の寸法又は寸法の比率とは異なることがある。
【0020】
図1を用いて、本実施形態に係る質量分析方法(表面支援レーザ脱離イオン化法を含む)の概要について説明する。
図1の(a)に示すように、上記質量分析方法では、まず、質量分析の対象となる一の試料10が試料台1に載置される。さらに、複数の貫通孔が設けられた基板を備える試料支持体2が、試料10の上に配置される。ここで、分析対象となる試料10は、例えば組織切片等の薄膜状の生体試料(含水試料)である。
【0021】
続いて、
図1の(b)に示すように、試料10は、毛細管現象によって、試料支持体2の下面側から貫通孔を介して試料支持体2の上面側に移動する。そして、試料10は、試料支持体2の上面側に表面張力によって留まる状態となる。
【0022】
続いて、
図1の(c)に示すように、試料支持体2の上面側に紫外線レーザが照射されることにより、試料支持体2の上面側に移動した試料10は、イオン化されて真空中に放出される。具体的には、紫外線レーザのエネルギーを吸収した試料支持体2から、試料支持体2の上面側に移動した試料10にエネルギーが伝達される。そして、エネルギーを獲得した試料10は、気化するとともに電荷を獲得することにより、試料イオン(イオン化された試料)11となる。このようにして空気中に放出された試料イオン11が検出器3によって検出され、検出された試料イオン11の測定が行われる。このようにして、試料10の質量分析が行われる。
【0023】
本実施形態に係る質量分析方法は、一例として、飛行時間型質量分析法(TOF−MS:Time-of-Flight Mass Spectrometry)を利用する。TOF−MSの概要を以下に示す。TOF−MSでは、試料支持体2と検出器3との間に、グランド電極(不図示)が設けられるとともに、試料支持体2に対して所定の電圧が加えられる。これにより、試料支持体2とグランド電極との間に電位差が生じ、試料支持体2の上面側で発生した試料イオン11は、当該電位差によってグランド電極に向かって加速しながら移動する。その後、試料イオン11は、グランド電極から検出器3までの間に設けられた電場及び磁場が存在しないドリフト空間(Drift Space)を飛行し、最終的に検出器3に到達する。ここで、試料支持体2とグランド電極との間の電位差はどの試料イオン11に対しても一定であるため、各試料イオン11に与えられるエネルギーは一定である。このため、分子量の小さい試料イオン11ほどドリフト空間を高速で飛行し、短時間で検出器3に到達することになる。TOF−MSでは、このような試料イオン11の検出器3への到達時間差に基づいて質量分析が行われる。
【0024】
次に、
図2〜
図5を用いて試料支持体2について説明する。
図2は、試料支持体2の外観(基板21及び枠体22)を示す斜視図である。なお、実際には、基板21には複数の貫通孔Sが設けられており、試料支持体2は、基板21及び枠体22を接着する接着層Gと、基板21及び枠体22の表面(貫通孔Sの内面を含む)を覆う導電層23と、を備える。しかし、これらは基板21及び枠体22に対して非常に小さいため、
図2においてはこれらの図示を省略している。一方、
図2のIII−III線に沿った断面図である
図3においては、貫通孔S、導電層23、及び接着層Gの配置構成を説明するために、貫通孔S、導電層23、及び接着層Gの寸法を実際の寸法よりも大きく図示している。
【0025】
図2及び
図3に示すように、試料支持体2は、表面支援レーザ脱離イオン化法(SALDI:Surface-Assisted Laser Desorption/Ionization)用の試料支持体であって、一面21aから他面21bにかけて複数の貫通孔Sが設けられた矩形板状の基板21と、基板21の一面21aの外縁部に取り付けられた枠体22と、を有する。
【0026】
基板21の一面21a及び他面21bの形状は、例えば一辺の長さD1が1cmの正方形である。基板21の一面21aから他面21bまでの厚さd1は、1〜50μmである。本実施形態では一例として、基板21は、絶縁性材料からなっている。基板21は、例えばAl(アルミニウム)を陽極酸化することによって孔径がほぼ一定の貫通孔Sが複数形成されたアルミナポーラス皮膜である。なお、基板21は、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Zn(亜鉛)、W(タングステン)、Bi(ビスマス)、Sb(アンチモン)等のAl以外のバルブ金属を陽極酸化することにより形成されてもよいし、Si(シリコン)を陽極酸化することによって形成されてもよい。
【0027】
枠体22は、基板21の一面21aの外縁部に沿って四角環状に設けられている。枠体22の幅D2は、例えば2mmである。枠体22の厚さd2は、例えば10〜500μmである。基板21の一面21aのうち枠体22に覆われていない実効領域Rは、0.6mm四方の正方形領域となっている。実効領域Rは、後述する毛細管現象によって試料10を他面21bから一面21aに移動させるための領域として機能する。枠体22が基板21の外縁部に設けられることにより、基板21のしなりが抑制される。また、枠体22が設けられた部分を固定したり把持したりすることが可能となるため、試料支持体2を支持したり移動させたりする際の取扱いが容易となる。なお、本実施形態では、枠体22は四角環状に設けられているが、基板21の外縁部に沿って円環状に設けられていてもよい。枠体22を円環状に設けることで、枠体22を四角環状に設けた場合よりも基板21のしなりがより一層抑制される。
【0028】
図3に示すように、枠体22は、接着層Gを介して基板21の表面(一面21a)に接着されている。接着層Gの材料としては、例えば低融点ガラスや真空用接着剤等の放出ガスの少ない接着材料を用いることができる。なお、本実施形態では一例として、枠体22は、基板21の一面21aにおいて貫通孔Sが設けられた部分と重なるようにして、基板21に接着されている。このため、基板21において枠体22が設けられた部分と枠体22が設けられていない部分との境界面のしなりが貫通孔Sによって許容される。これにより、当該境界面で基板21が割れることが抑制される。
【0029】
枠体22は、基板21と略同等の熱膨張係数を有する。枠体22は、例えば基板21と同様の組成を有するセラミック部材等である。枠体22は、例えばガラスや金属等である。このように基板21及び枠体22の熱膨張係数を近づけることにより、温度変化に起因する変形(例えば熱膨張時における基板21及び枠体22のひずみ)等を防止することができる。
【0030】
図3及び
図5に示すように、試料支持体2は、基板21の一面21a、他面21b、及び貫通孔Sの内面、並びに枠体22の表面を覆う導電層23を備える。導電層23は、絶縁性の基板21に導電性を付与するために設けられた導電性材料からなる層である。ただし、基板21が導電性材料からなる場合であっても導電層23を設けることは妨げられない。導電層23の材料としては、以下に述べる理由により、試料10との親和性(反応性)が低く、導電性が高い金属が好ましい。
【0031】
例えばタンパク質等の試料10と親和性が高いCu(銅)等の金属で導電層23を形成した場合、後述する試料10のイオン化の過程において、試料分子にCu原子が付着した状態で試料10がイオン化する場合がある。すなわち、検出器3によって検出された試料イオン11の分子量を測定する際に、付着したCuの質量分だけ実際の試料10の分子量からずれてしまうため、正確な測定が行えなくなってしまう。従って、導電層23の材料としては、試料10との親和性が低い金属が好ましい。
【0032】
一方、導電性の高い金属の方が一定の電圧を容易に且つ安定して付与することができる。このため、導電性が高い金属を導電層23とすることにより、上述したグランド電極と基板21との間に一定の電位差を生じさせるために基板21に一定の電圧をかけることが容易となる。また、導電性の高い金属ほど熱伝導性も高い傾向にあるので、基板21に照射されたレーザのエネルギーを、導電層23を介して試料10に効率的に伝えることが可能となる。従って、導電層23の材料としては、導電性の高い金属が好ましい。
【0033】
上記観点から、導電層23の材料としては、例えばAu(金)及びPt(白金)等が用いられる。例えば、導電層23は、メッキ法、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)、蒸着法、及びスパッタ法等を用いて、Au又はPtを基板21の一面21a、他面21b、及び貫通孔Sの内面、並びに枠体22の表面に成膜することによって形成することができる。なお、導電層23の材料としては、上述したAu及びPt以外にも、例えばCr(クロム)、Ni(ニッケル)、及びTi(チタン)等を用いることもできる。
【0034】
図4は、試料支持体2の実効領域Rの拡大平面図である。
図4において、黒色の部分は貫通孔Sを示し、白色の部分は貫通孔Sが形成されていない隔壁部分を示す。
図4に示すように、基板21の表面には、略一定の大きさの貫通孔Sが複数形成されている。複数の貫通孔Sは、後述する毛細管現象による試料10の他面21bから一面21aへの移動(上昇)が可能な大きさに形成されていればよい。
図4の例のように、貫通孔Sの大きさが不揃いになっていてもよいし、複数の貫通孔S同士が互いに連結している部分が存在していてもよい。実効領域Rにおける貫通孔Sの開口率(貫通孔Sが形成されている部分の面積/全体面積)は、実用上10〜80%であり、特に60〜80%であることが好ましい。
【0035】
図5に示すように、貫通孔Sは、基板21の一面21a側から他面21b側に延在している。貫通孔Sの幅d3は、1〜700nmである。また、導電層23の厚さd4は、例えば1〜25nm程度である。ここで、貫通孔Sの幅d3は、貫通孔S内に導電層23が形成された後の孔幅である。孔幅が1〜700nmの貫通孔Sを有する基板21を用いることにより、上述した毛細管現象による試料10の移動をよりスムーズに行わせることができる。本実施形態のように貫通孔Sの断面形状が略円形である場合、貫通孔Sの幅d3とは、孔の径を意味する。一方、貫通孔Sの断面形状が円形以外の場合には、貫通孔Sの幅とは、貫通孔Sに収まる仮想的な円筒の径(有効径)を意味する。
【0036】
次に、
図3及び
図6を用いて、試料支持体2の製造工程について説明する。まず、
図6を用いて、基板21の製造工程について説明する。
図6の(a)に示すように、基板21の材料となるAl基板50が用意される。続いて、
図6の(b)に示すように、Al基板50を陽極酸化することにより、Al基板50が表面から酸化され、複数の凹部51aを有する陽極酸化皮膜51が形成される。続いて、
図6の(c)に示すように、陽極酸化皮膜51をAl基板50から剥離し、剥離された陽極酸化皮膜51の底部51bを除去或いは貫通処理することにより、一面21aから他面21bにかけて貫通する複数の貫通孔Sが設けられた基板21が得られる。
【0037】
上述のようにして基板21が製造された後、基板21の外縁部に、低融点ガラスや真空用接着剤等の接着層Gを介して枠体22が取り付けられる。これにより、
図3に示した試料支持体2のうち導電層23が形成される前の状態となる。最後に、基板21の一面21a、他面21b、及び貫通孔Sの内面、並びに枠体22の表面を覆うように、Au又はPtからなる導電層23が設けられる。上述した通り、導電層23は、メッキ法や原子層堆積法等で、Au又はPtを基板21の一面21a、他面21b、及び貫通孔Sの内面、並びに枠体22の表面に成膜することによって形成される。以上により、
図3に示した試料支持体2が製造される。
【0038】
なお、上記のAlの陽極酸化処理においては、基板21の厚さd1が1〜50μmとなり、貫通孔Sの幅d3が1〜700nmとなるように調節される。具体的には、最初に用意するAl基板50の厚みや陽極酸化における温度及び電圧等の条件を適切に設定することにより、基板21の厚さd1及び貫通孔Sの幅d3は、予め定められた大きさ(上記範囲に含まれる大きさ)に形成される。
【0039】
次に、
図7〜
図9を用いて、試料支持体2を用いた質量分析方法の手順について説明する。なお、
図7〜
図9においては、導電層23、貫通孔S、及び接着層Gの図示は省略している。
【0040】
まず、
図9を用いて、試料支持体2を用いた質量分析を実行する質量分析装置100について説明する。質量分析装置100は、試料10が載置される試料台1と、レーザ照射部4と、検出器(検出部)3と、を備える。
【0041】
レーザ照射部4は、試料台1に載置された試料10上に試料支持体2が配置された状態で、照射位置を変えながら一面21aにレーザLを照射する。ここで、試料支持体2は、他面21bが導電層23を介して試料10と接触するように、試料10上に載置される。レーザ照射部4によって照射されるレーザLは、例えば波長337nmの窒素レーザ(N2レーザ)等の紫外線レーザである。
【0042】
検出器3は、レーザ照射部4によるレーザLの照射によってイオン化された試料10(試料イオン11)を照射位置毎に検出する。具体的には、レーザ照射部4は、試料支持体2の実効領域Rを予め定められた移動幅及び移動方向に従って2次元走査し、各走査位置においてレーザLの照射を行う。検出器3は、各走査位置でのレーザLの照射によって発生する試料イオン11を検出する。これにより、実効領域R上の位置毎に質量分析を行うことが可能となる。このようにして得られる試料10中の各位置における質量分析結果を総合することにより、試料分子の二次元分布図を画像化するイメージング質量分析を行うことが可能となる。以下、
図7〜
図9を用いて、質量分析装置100による質量分析手順について詳細に説明する。
【0043】
まず、上述した試料支持体2が用意される(第1工程)。試料支持体2は、質量分析装置100を用いて質量分析を実行する者が自ら製造することにより用意されてもよいし、試料支持体2の製造者及び販売者等から取得することにより用意されてもよい。
【0044】
続いて、
図7の(a)に示すように、質量分析対象となる試料10が試料台1の載置面1aに載置され、且つ、
図7の(b)に示すように、他面21bが導電層23(
図3参照)を介して試料10と接触するように試料支持体2が試料10上に配置される(第2工程)。ここで、分析対象となる試料10を毛細管現象によって基板21の一面21a側に移動させるために、試料支持体2は、平面視において実効領域R内に試料10が含まれるように、試料10上に配置される。なお、後述する毛細管現象による試料10の移動をスムーズにするために、試料10の粘性を低くするための溶液(例えばアセトニトリル混合液等)を試料10に混ぜてもよい。
【0045】
続いて、
図8の(a)に示すように、試料支持体2は、試料台1に固定される(第2工程続き)。ここでは一例として、カーボンテープ等の導電性を有する粘着テープTによって、試料支持体2の四辺(枠体22の上面及び側面、並びに基板21の側面)が、試料台1の載置面1aに対して固定される。このように、試料台1に対して試料支持体2を固定することにより、試料10と試料支持体2とを密着させ、後述する毛細管現象による試料10の移動をよりスムーズに行わせることができる。また、試料10上に配置された試料支持体2の横滑りが防止され、試料支持体2の横滑りによって試料10の位置情報が失われることを抑制できる。
【0046】
ここで、試料台1が導電性を有している場合、試料台1と試料支持体2とは、導電性を有する粘着テープTによって電気的に接続される。従って、
図8の(a)に示すように粘着テープTで試料支持体2を試料台1に固定した状態で、試料台1に所定の電流を流すことにより、基板21に所定の電圧をかけることができる。これにより、上述したグランド電極と基板21との間に一定の電位差を生じさせることができる。また、本実施形態では、導電層23が枠体22を覆っており、粘着テープTが枠体22上の導電層23に接触しているため、試料支持体2と電源(試料台1に電流を流す所定の電源)とのコンタクトを、枠体22上で取ることができる。すなわち、基板21上の実効領域Rを減らすことなく、試料支持体2と電源とのコンタクトを取ることができる。
【0047】
図8の(b)に示すように、上述のように試料支持体2が試料10上に配置されることにより、毛細管現象によって、試料10が基板21の他面21b側から貫通孔Sを介して一面21a側に向かって移動(上昇)する。そして、試料10は、試料支持体2の一面21a側に表面張力によって留まる状態となる。ここで、試料台1の載置面1aと基板21の一面21a及び他面21bとは、互いに略平行に配置される。従って、試料台1に載置された試料10は、毛細管現象によって、試料台1の載置面1aに直交する方向に沿って、基板21の他面21b側から貫通孔Sを介して一面21a側に移動することになる。これにより、毛細管現象による移動の前後において、試料10(試料10を構成する各試料分子)の位置情報が維持される。言い換えると、試料10を構成する各試料分子の2次元座標(試料台1の載置面1aと平行な2次元平面における位置)は、毛細管現象による移動前後において大きく変化しない。従って、このような毛細管現象によって、試料10の位置情報を維持したまま、試料10を基板21の他面21b側から一面21a側に移動させることができる。
【0048】
続いて、
図9に示すように、レーザ照射部4によって、基板21の一面21aにレーザLが照射され、毛細管現象によって他面21b側から貫通孔Sを介して一面21a側に移動した試料10がイオン化される(第3工程)。そして、検出器3によって、イオン化された試料10(試料イオン11)が検出される(第4工程)。第3工程でのレーザLの照射、及び第4工程での試料イオン11の検出は、レーザLの照射位置を変えながら当該照射位置毎に行われる。具体的には、レーザ照射部4が、実効領域Rを予め定められた移動幅及び移動方向に従って走査し、レーザLの照射位置を変えながら、各照射位置においてレーザLを照射する。そして、各照射位置でのレーザ照射部4によるレーザLの照射によって真空中に放出された試料イオン11を検出器3が検出する。その結果、各照射位置において検出された試料イオン11の測定結果に基づいて、試料分子の二次元分布図を画像化するイメージング質量分析を行うことが可能となる。
【0049】
上記表面支援レーザ脱離イオン化法(第1〜第3工程)によれば、複数の貫通孔Sが設けられた基板21が試料10上に配置されることで、毛細管現象によって、基板21の他面21b側から貫通孔Sを介して一面21a側に向けて試料10を上昇させることができる。これにより、試料10の位置情報(試料10を構成する分子の二次元分布)を維持したまま、試料10を基板21の他面21b側から一面21a側に移動させることができる。そして、レーザLが基板21の一面21aに照射され、一面21a側に移動した試料10に導電層23を介してエネルギーが伝達されることにより、試料10がイオン化される。その結果、試料10の位置情報を維持したまま試料10のイオン化を行うことができる。従って、上記方法によれば、複数の貫通孔Sが設けられた基板21を試料10上に載置する簡単な操作によって、試料10の位置情報を維持したまま試料10のイオン化を行うことができる。
【0050】
また、Alを陽極酸化することで複数の貫通孔Sが設けられた基板21を備える試料支持体2を用いることにより、上述した毛細管現象による試料10の移動を適切に実現することができる。ここで、Alの代わりにAl以外のバルブ金属又はSiを陽極酸化することで得られた基板21を備える試料支持体2を用いても、同様の効果が得られる。
【0051】
また、孔幅d3が1〜700nmの貫通孔Sを有する基板21を用いることにより、上述した毛細管現象による試料10の移動をよりスムーズに行わせることができる。
【0052】
また、試料支持体2が、基板21の一面21aの外縁部に取り付けられた枠体22を備えているので、枠体22によって基板21のしなりが抑制されるとともに、試料支持体2を支持したり移動させたりする際の取り扱いが容易となる。このため、第2工程における試料支持体2の試料10上への配置を容易に行うことができる。
【0053】
また、上記質量分析方法(第1〜第4工程)によれば、試料10上に試料支持体2を配置する簡単な操作で、試料10の位置情報を維持したまま試料10のイオン化を行うことができる。そして、レーザLの照射位置を変えながら、イオン化された試料10(試料イオン11)を当該照射位置毎に検出することにより、試料分子の二次元分布を把握することができる。従って、上記質量分析方法によれば、簡単な操作で、試料分子の二次元分布図を画像化するイメージング質量分析を行うことができる。
【0054】
また、質量分析装置100によれば、試料10上に試料支持体2を配置する簡単な操作で、試料10の位置情報を維持したまま試料10のイオン化を行うことができる。そして、レーザ照射部4が照射位置を変えながらレーザLを照射し、検出器3がイオン化された試料10(試料イオン11)を当該照射位置毎に検出することにより、試料分子の二次元分布を把握することができる。従って、質量分析装置100によれば、簡単な操作で、試料分子の二次元分布図を画像化するイメージング質量分析を行うことができる。
【0055】
なお、質量分析装置100の用途は、イメージング質量分析に限られない。例えば、質量分析装置100は、実効領域R内の一部にのみレーザLを照射し、当該レーザLによってイオン化された試料10(試料イオン11)を検出することで、質量電荷比毎の信号強度を取得してもよい。このような質量分析方法によっても、試料10の質量分析を行うことができる。また、この質量分析方法によっても、従来のMALDIにおけるマトリックスに由来するノイズのない信号を得ることができる。なお、実効領域R内の一部に対するレーザLの照射による試料10のイオン化が不十分な場合には、質量分析装置100は、引き続き実効領域R内の他の部分にレーザLを照射してもよい。すなわち、質量分析装置100は、試料10のイオン化が十分となり、質量電荷比毎の信号強度を適切に取得できるまで、実効領域R内のレーザLの照射位置を変更してもよい。
【0056】
また、質量分析装置100はいわゆる走査型と呼ばれる方式のものだが、イメージング質量分析を行う質量分析装置としては、いわゆる投影型と呼ばれる方式の質量分析装置200が用いられてもよい。質量分析装置200は、試料イオン11の到達位置(すなわち、元の試料10の試料分子の二次元分布)と到達時刻(すなわち、飛行時間)とを同時に測定可能であるという特徴を有する。また、従来のMALDIではマトリックスの結晶サイズに画像分解能(空間分解能)が制限されるのに対し、試料支持体2を用いて投影型のイメージング質量分析を行う質量分析装置200によれば、画像分解能が貫通孔Sの孔径に依存するため、従来のMALDIよりも高い画像分解能(例えば数十nm以下の画像分解能)を得ることができる。
【0057】
図10は、質量分析装置200による質量分析方法の概略を示す図である。質量分析装置200は、レーザ照射部4の代わりにレーザ照射部201を備える点で、質量分析装置100と相違する。レーザ照射部201は、基板21の一面21aにおけるイメージング対象領域R1にレーザLが照射されるように、レーザLの照射を制御する。イメージング対象領域R1とは、イメージング質量分析によって試料分子の二次元分布を把握したい領域として予め定められた領域である。これにより、レーザLが照射されたイメージング対象領域R1内の試料10は同時にイオン化される。したがって、質量分析装置200によれば、走査型の質量分析装置100のように多くの位置を走査する必要がなくなる。
【0058】
また、質量分析装置200は、検出器3の代わりに、静電レンズ202と検出器203とを備える点で、質量分析装置100と相違する。静電レンズ202は、試料イオン11を検出器203に結像させるためのレンズである。静電レンズ202によって試料イオン11が検出器203に結像されることにより、検出器203において、試料イオン11の位置情報(二次元分布)が把握される。
【0059】
図10に示される例では、試料10に含まれる3種類の試料イオン11(ここでは、質量電荷比が互いに異なる試料イオン11A,11B,11C)が、検出器203への到達時刻によって特定される。また、元の試料10の試料分子の二次元分布が、検出器203における各試料イオン11の到達位置によって特定される。
【0060】
質量分析装置200によれば、試料10上に試料支持体2を配置する簡単な操作で、試料10の位置情報を維持したまま試料10のイオン化を行うことができる。そして、レーザ照射部201が一面21aにおけるイメージング対象領域R1にレーザLを照射し、検出器203がイオン化された試料10(試料イオン11)をイメージング対象領域R1における試料10の位置関係が維持された状態で検出することにより、試料分子の二次元分布を把握することができる。また、イメージング質量分析における画像分解能は、試料支持体2の貫通孔Sの孔径に依存する。従って、質量分析装置200によれば、試料分子の二次元分布図を画像化するイメージング質量分析において高い画像分解能を得ることができる。
【0061】
また、質量分析装置200において、レーザ照射部201は、試料支持体2の実効領域Rの一部又は全部をイメージング対象領域R1として、レーザLの照射を制御してもよい。この構成によれば、実効領域R内でイメージング質量分析を適切に行うことが可能となる。
【0062】
なお、質量分析装置200による質量分析方法においては、上述した第3工程において、一面21aにおけるイメージング対象領域R1にレーザLが照射されることにより、毛細管現象によって他面21b側から貫通孔Sを介して一面21a側に移動した試料10がイオン化される。また、第4工程において、第3工程においてイオン化された試料10が、イメージング対象領域R1における試料10の位置関係が維持された状態で検出される。上記質量分析方法によれば、試料10上に試料支持体2を配置する簡単な操作で、試料10の位置情報を維持したまま試料10のイオン化を行うことができる。そして、一面21aにおけるイメージング対象領域R1にレーザLを照射し、イオン化された試料10をイメージング対象領域R1における試料10の位置関係が維持された状態で検出することにより、試料分子の二次元分布を把握することができる。また、イメージング質量分析における画像分解能は、試料支持体2の貫通孔Sの孔径に依存する。従って、上記質量分析方法によれば、試料分子の二次元分布図を画像化するイメージング質量分析において高い画像分解能を得ることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0064】
例えば、基板21は、半導体等の導電性材料からなっていてもよい。この場合、試料支持体2は、基板21に導電性を付与するための導電層23を省略することができる。試料支持体2が導電層23を備えない場合には、上記第2工程において、他面21bが直接試料10と接触するように試料支持体2が試料10上に配置されることになる。このように基板21が導電性材料からなり、導電層23が省略された試料支持体2を用いる場合にも、上述した導電層23を備える試料支持体2を用いる場合と同様の効果を得ることができる。
【0065】
また、上記表面支援レーザ脱離イオン化法(第1〜第3工程)による試料10のイオン化は、本実施形態で説明した試料10のイメージング質量分析のみならず、イオンモビリティ測定等の他の測定・実験にも利用できる。
【0066】
また、導電層23は、少なくとも基板21の一面21aを覆うように、蒸着等によって設けられてもよい。すなわち、導電層23は、基板21の他面21b及び貫通孔Sの内面に設けられなくともよい。この場合、上記第2工程において、他面21bが試料10に対向するように試料支持体2が試料10上に配置され、他面21bが直接試料10に接触する。また、導電層23が少なくとも基板21の一面21a及び枠体22の表面を覆うように設けられていれば、基板21と電極とのコンタクトを枠体22上で取ることができる。
【0067】
図11〜
図14は、貫通孔Sの孔幅と上記質量分析方法によって測定されたマススペクトルとの関係を示す。ここで、試料支持体としては、導電層23(ここではPt)を基板21の他面21b及び貫通孔Sの内面には設けずに一面21a及び枠体22の表面を覆うように設けたものを用いた。また、基板21の厚さd1は10μmであり、測定対象の試料は「質量電荷比(m/z)=1049」のペプチドである。
図11〜
図14において、(a)は貫通孔Sの孔幅を50nmとした場合の測定結果であり、(b)は貫通孔Sの孔幅を100nmとした場合の測定結果であり、(c)は貫通孔Sの孔幅を200nmとした場合の測定結果であり、(d)は貫通孔Sの孔幅を300nmとした場合の測定結果であり、(e)は貫通孔Sの孔幅を400nmとした場合の測定結果であり、(f)は貫通孔Sの孔幅を500nmとした場合の測定結果であり、(g)は貫通孔Sの孔幅を600nmとした場合の測定結果であり、(h)は貫通孔Sの孔幅を700nmとした場合の測定結果である。
図11〜
図14において、縦軸は、ピーク値を100(%)として規格化された信号強度(Intensity)を示す。
【0068】
図11〜
図14に示すように、基板21の貫通孔Sの孔幅が50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、及び700nmのいずれの場合にも、ピークを観測可能な適切なスペクトルが得られた。このように、少なくとも一面21aに導電層23が設けられた基板21を備える試料支持体を用いることで、質量分析を適切に行うことができる。
【0069】
図15は、基板21の厚さd1(Thickness)と上記質量分析方法によって測定されたピークの信号強度との関係を示す。
図15において、縦軸は、基板21の厚さd1が10μmのときの信号強度を“1”とした場合の相対的な信号強度(Relative intensity)である。ここで、試料支持体としては、上述のように導電層23(ここではPt)を基板21の他面21b及び貫通孔Sの内面には設けずに一面21a及び枠体22の表面を覆うように設けたものを用いた。貫通孔Sの孔幅は200nmである。また、測定対象の試料は「質量電荷比(m/z)=1049」のペプチドである。
【0070】
上記測定結果において、基板21の厚さd1が10μmの場合における信号強度は、質量分析において十分な大きさであった。また、
図15に示すように、基板21の厚さd1が小さい程信号強度が大きくなる傾向があり、基板21の厚さd1が3〜10μmの範囲にある場合に、十分な信号強度が得られた。一方、基板強度を確保する観点からは、基板21の厚さd1は大きい方がよい。このことから、基板21の厚さd1は、5〜10μmとされてもよい。これにより、基板21の強度を保つとともに、質量分析において十分な信号強度を得ることができる。
【0071】
また、上記実施形態では、試料支持体2の枠体22を粘着テープTによって試料台1に固定する形態について説明したが、試料支持体2を試料台1に固定する形態は上記形態に限定されない。以下、
図16〜
図18を用いて、試料支持体2の第1〜第3の変形例とともに、試料支持体2を試料台1に固定する形態のバリエーションについて説明する。なお、
図16〜
図18においては、導電層23及び貫通孔Sの図示を省略している。また、
図17及び
図18においては、枠体と基板とを接着する接着層Gの図示についても省略している。
【0072】
(第1の変形例)
図16に示すように、第1の変形例に係る試料支持体2Aは、基板21に枠体22が設けられておらず、基板21の一面21aに粘着テープTが直接貼り付けられている点で、試料支持体2と主に相違する。粘着テープTは、粘着面Taが基板21の一面21aに対向し、且つ、基板21の外縁よりも外側に延在する部分を有するように、一面21aの外縁部に貼り付けられている。これにより、
図16に示すように、粘着面Taを基板21の外縁及び試料台1の載置面1aに貼り付けることができる。その結果、試料支持体2Aは、粘着テープTによって試料台1に対して固定される。試料支持体2Aによれば、例えば表面に凹凸を有する試料10の質量分析を行う場合等において、試料10に対する基板21の追従性を向上させることができる。
【0073】
また、試料台1が導電性を有している場合、試料台1と試料支持体2A(具体的には、基板21の一面21a上に設けられた導電層23)とは、導電性を有する粘着テープTを介して電気的に接続される。従って、
図16に示すように粘着テープTを介して試料支持体2を試料台1に固定した状態で、試料台1に所定の電流を流すことにより、基板21に所定の電圧をかけることができる。
【0074】
なお、試料支持体2Aは、基板21の外縁に粘着テープTが貼り付けられ、且つ、基板21の外縁よりも外側に延在する部分の粘着面Taに粘着保護シートが設けられた状態で流通させられてもよい。この場合、試料支持体2Aの使用者は、試料支持体2Aを試料台1に固定する直前に粘着保護シートを剥がし、粘着面Taを載置面1aに貼り付けることで、試料10の質量分析の準備を容易に行うことができる。
【0075】
(第2の変形例)
図17に示すように、第2の変形例に係る試料支持体2Bは、基板21の外縁よりも外側に延在する部分を有する枠体122を備える点で、試料支持体2と主に相違する。このような枠体122により、試料支持体2Bを持ち運ぶ際等において、基板21の端部の破損を適切に抑制することができる。さらに、
図17に示すように、枠体122において基板21の外縁よりも外側に延在する部分には、ネジ30を挿通させるための挿通孔122aが設けられている。この場合、例えば挿通孔122aに対応する位置にネジ孔1bを有する試料台1Aを用いることで、ネジ留めによって試料支持体2Bを試料台1Aに確実に固定することができる。具体的には、挿通孔122a及びネジ孔1bにネジ30を挿通させることで、試料支持体2Bを試料台1Aに固定することができる。
【0076】
また、試料台1Aが導電性を有し、且つ、ネジ30が導電性を有する場合、試料台1Aと試料支持体2B(具体的には、枠体122の表面に形成された導電層23)とは、ネジ30を介して電気的に接続される。従って、
図17に示すようにネジ30を介して試料支持体2Bを試料台1Aに固定した状態で、試料台1Aに所定の電流を流すことにより、基板21に所定の電圧をかけることができる。
【0077】
(第3の変形例)
図18に示すように、第3の変形例に係る試料支持体2Cは、基板21の他面21bの外縁部に設けられ、一面21aから他面21bに向かう方向を向く粘着面24aを有する粘着層24を備える点で、試料支持体2と主に相違する。粘着層24は、例えば測定対象の試料10の厚みに応じて予め設定された厚さを有する両面テープ等である。例えば、粘着層24の一方の粘着面24bは、予め基板21の他面21bの外縁部に貼り付けられており、粘着層24の他方の粘着面24aは、試料支持体2Cを試料台1に固定する際に、載置面1aに貼り付けられる。試料支持体2Cによれば、試料支持体2Cを試料台1に固定する構成を単純化することができる。
【0078】
また、試料台1が導電性を有し、且つ、粘着層24が導電性を有する場合、試料台1と試料支持体2C(具体的には、基板21)とは、粘着層24を介して電気的に接続される。従って、
図18に示すように粘着層24を介して試料支持体2Cを試料台1に固定した状態で、試料台1に所定の電流を流すことにより、基板21に所定の電圧をかけることができる。
【0079】
なお、試料支持体2Cは、粘着層24の粘着面24bが基板21の他面21bの外縁部に貼り付けられ、且つ、粘着面24aに粘着保護シートが設けられた状態で流通させられてもよい。この場合、試料支持体2Cの使用者は、試料支持体2Cを試料台1に固定する直前に粘着保護シートを剥がし、粘着面24aを載置面1aに貼り付けることで、試料10の質量分析の準備を容易に行うことができる。
【0080】
また、上記実施形態及び変形例に係る試料支持体2,2A,2B,2Cは、導電層23が形成された後に、焼成されてもよい。すなわち、上記実施形態における試料支持体の製造工程において、導電層23が形成された後の試料支持体を焼成する焼成工程が含まれてもよい。枠体22が設けられる場合には、基板21、枠体22、及び導電層23を備える試料支持体に対して焼成工程が実施される。また、枠体22が省略される場合には、基板21及び導電層23を備える試料支持体に対して焼成工程が実施される。
【0081】
このような焼成工程の実施により、導電層23(例えばPt)の結晶性を向上させることができ、質量分析に一層適した試料支持体を得ることができる。ここで、試料支持体の焼成は、焼成後の導電層23(試料支持体)に対するX線回折(XRD:X-ray diffraction)測定において、当該導電層23を形成する導電性材料(ここではPt)の結晶の回折ピークが示されるように、実施されるのが好ましい。ここで、「導電性材料の結晶の回折ピークを示す」とは、焼成前の試料支持体に対するX線回折測定によって得られる測定結果よりも、導電性材料の結晶の回折パターン(ピーク強度等)を明確に示すことを意味する。
【0082】
図19の(a)は、焼成前の試料支持体を有する質量分析装置100によって測定されたマススペクトルを示す。一方、
図19の(b)は、焼成温度400℃での焼成後の試料支持体を有する質量分析装置100によって測定されたマススペクトルを示す。なお、
図19の(a)及び(b)の間で、焼成の有無以外の測定条件(試料の種類及び試料支持体の構成等)は同一である。また、
図19の(a)及び(b)の縦軸は、焼成後の試料支持体を用いた場合のピークの信号強度(すなわち、
図19の(b)のグラフのピーク値)を“100”とした場合の相対的な信号強度を示す。
図19に示すように、焼成後の試料支持体を用いることにより、焼成前の試料支持体を用いる場合よりも、質量分析における信号強度を向上させることができる。このように、上述の焼成工程を実施することにより、質量分析に一層適した試料支持体を得ることができる。