特許第6983525号(P6983525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983525シート端部部材、浴室床構造及び浴室床の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983525
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】シート端部部材、浴室床構造及び浴室床の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20211206BHJP
   E03C 1/20 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   E04F15/00 J
   E03C1/20 A
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-60713(P2017-60713)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162604(P2018-162604A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2020年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥丸 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】古谷 伸一
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0014009(US,A1)
【文献】 米国特許第03238554(US,A)
【文献】 特開2006−233727(JP,A)
【文献】 米国特許第03234577(US,A)
【文献】 特開2015−110883(JP,A)
【文献】 実開平6−25446(JP,U)
【文献】 特開昭52−116617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
E03C 1/20
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の床上に床シート材を施工する際に用いるシート端部部材であって、
該シート端部部材は、可撓性を有する長尺状に形成されており、
上部及び前記上部が開閉可能に連結された下部を有し、床シート材の端部と隣り合う本体部と、
前記上部において前記本体部から側方に突き出て床シート材の端部が配置される凹みを下方に形作るカバー部と、を少なくとも備え
前記上部は、浴室の床上に配置される床シート材が該シート端部部材上に乗り上がることができるまで前記下部に対して上方に開くことが可能であるシート端部部材。
【請求項2】
前記下部において前記本体部から側方に突き出て前記カバー部と上下対をなす支持部をさらに備え、
前記支持部は、前記凹みに配置された床シート材の端部が載置される請求項1に記載のシート端部部材。
【請求項3】
前記下部は、前記凹みに隣接する壁部を有する請求項1又は2に記載のシート端部部材
【請求項4】
浴室の床と、
請求項1〜3のいずれかに記載のシート端部部材と、
前記床上に施工される床シート材と、を備え、
前記床シート材の端部が前記シート端部部材の前記凹みに配置されて前記カバー部で覆われている浴室床構造。
【請求項5】
浴室の床上に、接着剤又は両面テープを介して、可撓性を有しかつ長尺状に形成されたシート端部部材を設置するシート端部部材設置工程と、
床シート材の端部を、前記シート端部部材の本体部から側方に突き出るカバー部の下方に形成された凹みに配置して前記カバー部で覆うシート端部部材装着工程と、を少なくとも有する浴室床の施工方法であって、
前記本体部は、上部及び前記上部が開閉可能に連結された下部を有し、前記上部において前記カバー部が側方に突き出ており、
該浴室床の施工方法は、前記シート端部部材設置工程の後、前記上部が開いた状態の前記シート端部部材上に前記床シート材が乗り上がるようにして前記床シート材を床上に配置する床シート材施工工程をさらに有し、
前記シート端部部材装着工程は、前記シート端部部材上に乗り上げた前記床シート材をカットした後に前記上部を閉じることで、前記カバー部により前記床シート材の端部を覆う浴室床の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の床上に床シート材を施工する際に用いるシート端部部材、このシート端部部材が用いられた浴室床構造、及び、浴室床の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一戸建て、マンション、寮、ホテル、老人保健施設、介護福祉施設、病院などでは、部屋、廊下、トイレ、浴室などのリフォームが盛んに行われている。ここで、浴室のリフォームを行う場合、浴室全体を取り壊して新規に浴室を施工したりユニットバスを設置する方法、既設のユニットバスを新規のユニットバスに取り替える方法が従来から行われている。しかし、これらの方法は施工に多大なコスト及び時間を要するため、出願人は、簡易な浴室のリフォームとして、既設の床の表面に新しい床シート材を施工する方法を提案している(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5977312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した既設の浴室の床面に床シート材を施工する方法により、リフォームの施工時間及びコストは低減される。しかし、上記方法では、まず、床シート材の端部を水の浸入を防止する目的のためにシール剤で埋めていた。水の浸入防止のためにはシール剤を高精度に塗布する必要がある。シール剤の塗布精度は施工者の技量によるため、施工後の浴室床の仕上がりにばらつきが生じ、未熟な作業者では時間を要するという課題がある。そのうえ、シール剤が露出しているので、シール剤が硬化するまで、浴室を使用できないという課題もある。
【0005】
また、浴室の床面に床シート材を施工するためには、施工者が床シート材を浴室の床の大きさに合わせてカットして、床シート材の端部を浴室の排水溝や壁面に沿わせて固定する必要がある。ここで、床シート材を事前にカットする場合には、施工者の技量によって床シート材の端部のカット精度にばらつきが生じる。床シート材の端部のカット精度が悪いと、床シート材の端部にうねりや凹凸、傾斜が生じ、排水溝や壁面に綺麗に沿わない、あるいは、床シート材の端部と排水溝や壁面との隙間にバラツキが生じたり、隙間が大きくなる場合がある。そのため、施工後の浴室床の仕上がりの低下を招くという課題がある。そのうえ、上記したシール剤による施工方法を用いた場合に隙間が大きくなると、隙間を埋めるシール剤の幅が広くなってシール剤が目立ち、さらに浴室の美観を大きく損ねるという課題もある。一方で、床シート材を浴室内にてカットする場合には、床シート材を床面の排水溝や壁面に当てた状態で定規などを用いて排水溝や壁面に沿ってカットすることで、床シート材の端部を比較的精度よく効率的に形成できる。しかし、狭い浴室においては長い定規は使い難く、また、短い定規ではカットに手間を要するため、施工作業を容易かつ効率よく行うことができないという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、施工者の技量に関わらず一様に良好な仕上がりで床シート材を浴室の床面に施工することができるシート端部部材、浴室床構造及び浴室床の施工方法を提供することを第1目的とする。また、効率よく短時間でかつ容易に床シート材を浴室の床面に施工することができるシート端部部材、浴室床構造及び浴室床の施工方法を提供することを第2目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシート端部部材は、浴室の床上に床シート材を施工する際に用いるシート端部部材であって、該シート端部部材は、可撓性を有する長尺状に形成されており、床シート材の端部と隣り合う本体部と、前記本体部から側方に突き出て床シート材の端部が配置される凹みを下方に形作るカバー部と、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るシート端部部材は、前記カバー部と上下対をなすように前記本体部から側方に突き出る支持部をさらに備え、前記支持部は、前記凹みに配置された床シート材の端部が載置されることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るシート端部部材は、前記本体部は、上面に前記カバー部とは反対側に向けて下る傾斜面を有することがさらに好ましい。
【0010】
また、本発明に係るシート端部部材は、前記カバー部の厚みは、0.2mm以上1.0mm以下であることがさらに好ましい。
【0011】
また、本発明に係るシート端部部材は、前記カバー部の幅は、3mm以上10mm以下であることがさらに好ましい。
【0012】
また、本発明に係るシート端部部材は、前記本体部は、前記カバー部が設けられた上部と、前記上部が開閉可能に連結された下部とで構成されることがさらに好ましい。
【0013】
また、本発明に係るシート端部部材は、前記上部及び前記下部は、互いに係脱可能に係合して前記上部が閉じた状態を維持する第1係合部及び第2係合部をそれぞれ有することがさらに好ましい。
【0014】
また、本発明に係るシート端部部材は、前記下部は、前記凹みに隣接する壁部を有することがさらに好ましい。
【0015】
また、本発明に係るシート端部部材は、前記壁部は、上端部が鉤状に折れ曲がった断面視L字状をなしており、前記上部の断面視L字状をなす前記第1係合部と係脱可能な前記第2係合部を兼ねていることがさらに好ましい。
【0016】
また、本発明に係るシート端部部材は、前記上部は、前記下部と連結される根元側の一部分が残部分よりも軟質であることがさらに好ましい。
【0017】
また、本発明に係るシート端部部材は、前記上部及び前記下部の連結部分には、前記本体部の長さ方向に延びる断面視円形状の空洞が設けられていることがさらに好ましい。
【0018】
本発明に係る浴室床構造は、浴室の床と、上記構成のシート端部部材と、前記床上に施工される床シート材と、を備え、前記床シート材の端部が前記シート端部部材の前記凹みに配置されて前記カバー部で覆われていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る浴室床の施工方法は、浴室の床上に接着剤又は両面テープを介して可撓性を有しかつ長尺状に形成されたシート端部部材を設置するシート端部部材設置工程と、床シート材の端部を、前記シート端部部材の本体部から側方に突き出るカバー部の下方に形成された凹みに配置して前記カバー部で覆うシート端部部材装着工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る浴室床の施工方法は、前記本体部は、前記カバー部が設けられた上部と、前記上部が開閉可能に連結されかつ壁部を有する下部とで構成されており、前記シート端部部材装着工程は、前記上部を開いた状態で前記床シート材を前記下部の壁部に沿ってカットすることで前記床シート材の端部を前記壁部に沿わせた後、前記上部を閉じて前記カバー部により前記床シート材の端部を覆うことが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る浴室床の施工方法は、前記上部及び前記下部は、互いに係脱可能に係合して前記上部が閉じた状態を維持する第1係合部及び第2係合部をそれぞれ有し、前記シート端部部材装着工程では、前記上部を閉じた際に、前記第1係合部及び前記第2係合部を係合させることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、シート端部部材のカバー部が床シート材の端部を上方から覆うので、施工者の技量によって床シート材の端部のカット精度にばらつきが生じても、カット精度の良し悪しに関わらず一様に浴室床を良好に仕上げることができる。また、浴室壁面と床シート材の端部との間にシート端部部材が設けられるため、両者の隙間をシール剤で埋める必要がない。よって、従来技術のように、施工者の技量によって浴室床の仕上がりにばらつきが生じて浴室の美観を損ねることがなく、短時間で浴室床を安定して良好に仕上げることができる。加えて、従来技術のように、シール剤が硬化する時間を待つ必要もなく、施工後、短時間で浴室を使用することができる。
【0023】
さらに、シート端部部材を、上部が下部に対して開閉可能な構造とし、下部に壁部を設けることで、壁部をガイドにして床シート材を当て切りすることができる。よって、床シート材の端部を真っ直ぐ直線状にカットするために、わざわざ定規などを用いる必要がなく、施工作業を容易かつ効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るシート端部部材の平面図である。
図2】(a)本発明の一実施形態に係るシート端部部材の縦断面図であり、(b)本発明の他の実施形態に係るシート端部部材の縦断面図である。
図3】床シート材の施工前の浴室の床の平面図である。
図4】床シート材を浴室の床に施工する手順を示す説明図である。
図5】床シート材を浴室の床に施工する手順を示す説明図である。
図6】床シート材を浴室の床に施工する手順を示す説明図である。
図7】床シート材を浴室の床に施工する手順を示す説明図である。
図8】床シート材を浴室の床に施工する手順を示す説明図である。
図9】床シート材を浴室の床に施工する手順を示す説明図である。
図10】床シート材を浴室の床に施工する手順を示す説明図である。
図11】床シート材の施工後の浴室の床の平面図である。
図12】本発明の他の実施形態に係るシート端部部材の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において、各部材又は各部の大きさ(長さ、幅、高さ、厚み)は、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るシート端部部材1の平面図であり、図2は、図1の縦断面図(A−A断面図)である。シート端部部材1は、浴室のリフォームなどで、浴室の既設の床上(床面)に床シート材を貼り付ける際に用いられるものであり、床面の周囲に接着剤又は両面テープなどの貼り付けにより設置されかつ床シート材6の端部60(図9図10に示す)に装着される。
【0027】
以下の説明では、浴室として、図3の平面図に示すような、浴槽10、洗面台11及び便器12が床13、壁面(浴室壁面)14、天井(図示せず)などと一体になっている3点ユニットバスを例にしている。3点ユニットバスは、浴槽10、洗面台11及び便器12の3つが一体となったものをいい、2点ユニットバスは、浴槽10及び洗面台11の2つ又は浴槽10及び便器12の2つが一体となったものをいう。図3において、浴室の床13には、図4図3のB−B断面図)にも示すように、浴槽10の壁面(浴槽壁面)17に隣接する位置に排水溝15が設けられ、排水溝15の長さ方向中央位置に排水口16が設けられている。なお、排水溝15は浴室壁面14に沿っても延びていて、床13を全周にわたって取り囲むように設けられていてもよい。また、浴槽壁面17に隣接する位置に排水溝15がなく、浴室の床13が浴槽壁面17と繋がっていてもよい。また、本発明の適用範囲は必ずしも3点ユニットバスに限られるものではなく、2点ユニットバス、浴槽10のみのユニットバスの他、在来工法で造られた浴室についても、本発明の適用範囲に含まれる。特に、本発明は、狭い空間での施工の作業性に優れるので、2点ユニットバス及び3点ユニットバスにおいて好適に用いることができる。
【0028】
シート端部部材1は、図1及び図2に示すように、所定の長さを有する長尺状に形成されている。長尺状とは、一方向における長さが、前記一方向と直交する他の方向における長さよりも十分に長い形状をいう。長尺状の便器廻り部材1は、施工に際して適切な長さに切断され、図3(a)に示す床13上の排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面17との境界に、排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面17に沿って配置される。また、シート端部部材1は、可撓性を有していて人手で容易に曲げることが可能であり、図3(b)に示すように排水溝15などが曲面状である場合には排水溝15などに沿うように曲げて床13上に配置することができる。なお、シート端部部材1は、曲げた後、力を解除すると元の状態に復帰しようとする弾性を有することが好ましい。
【0029】
シート端部部材1は、可撓性を有していればその素材は特に限定されないが、耐水性、耐摩耗性、耐衝撃性など、浴室の床に用いるために必要な耐久性を満足する材料で形成されていることが好ましい。シート端部部材1の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)などの軟質又は半硬質樹脂材料を挙げることができる。特に、加工性に優れ、硬度の調整が容易でコストにも優れるため、ポリ塩化ビニル樹脂でシート端部部材1を形成することが好しい。シート端部部材1は、上述した構成材料を用いた押出成形などにより形成することができる。
【0030】
シート端部部材1は、長尺状の本体部2と、本体部2の前記一方向(長さ方向)の全長にわたって本体部2に一体形成される薄板状のカバー部3と、本体部2の長さ方向の全長にわたって本体部2にカバー部3と上下対をなすように一体形成される薄板状の支持部4と、を備えている。
【0031】
カバー部3は、本体部2の上部において、本体部2から側方に略水平に突き出ており、上面が本体部2の上面20と面一で連続している。また、支持部4は、本体部2の下部において、本体部2から側方に略水平に突き出ており、下面が本体部2の下面21と面一で連続している。本体部2の側方のカバー部3の下方には、床シート材6の端部60が配置される凹み5が形作られている。凹み5に配置された床シート材6の端部60は、支持部4上に載置され、カバー部3により上方から覆われる。
【0032】
本体部2は、図2(a)に示すように、中身の詰まった中実形状であってもよいし、図2(b)に示すように、内部に空洞Oを有する中空形状であってもよい。シート端部部材1を曲げ易く、また、カバー部3を上方へ持ち上げ易い点で、本体部2は中空形状のほうが好ましい。本体部2は、上面20、下面21及び垂直面22を有している。
【0033】
本体部2の下面21は、平坦な面で浴室の床面と接着剤又は粘着テープなどを介して当接する。本体部2の垂直面22は、凹み5に配置された床シート材6の端部60と対向する。
【0034】
本体部2の上面20は、図2(a)に示すように、本実施形態では、平坦面20Aと、カバー部3とは反対側に向けて下る傾斜面20Bとが連設された構成であり、本体部2は、断面視三角形状のスロープ部23を有している。スロープ部23は、傾斜面20Bと下面21とのなす角度αが鋭角であり、例えば、5°以上60°以下であり、好ましくは15°以上40°以下である。このスロープ部23(傾斜面20B)により、床シート材6上の水をスムーズにシート端部部材1を介して排水溝15などにスムーズに流すことができる。加えて、スロープ部23(傾斜面20B)により本体部2を先端の角部を尖らせた断面視略三角形状とすることで、上面20が平坦面でスロープ部23(傾斜面20B)がなく先端の角部が直角となる断面視矩形状の本体部2よりも、シート端部部材1を床面の排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面17との境界に貼り付けた際に、先端の角部が容易に捲れることを防止できる。これによって、段差を解消し、側方からの圧力付与を低減させ、シート端部部材1を床面から剥がれ難くすることができる。また、本体部2が断面視略三角形状であり、本体部2の先端部に歩行者の足先が当たっても、足先をスロープ部23(傾斜面20B)の斜面に沿って滑らせることができるため、違和感なく歩行を進めることができる。なお、傾斜面20Bの傾斜角度αは、下り勾配であれば、平面状であっても曲面(凹曲面、凸曲面)状であっても構わない。
【0035】
なお、本体部2は、図2(b)に示す実施形態のように、上部2Aと下部2Bとを有し、上部2A及び下部2Bが開閉可能に連結されるように構成することができる。この図2(b)の実施形態では、上部2Aにカバー部3が設けられ、下部2Bに支持部4が設けられている。上部2A及び下部2Bは、本体部2内の空洞Oと、凹み5から空洞Oに延びる空隙Gとで分割されており、図5に示すように、上部2Aの下部2Bと連結される根元側の部分を折り曲げの支点(ヒンジ)にして上部2Aが折れ曲がることで、上部2Aが下部2Bに対して開閉可能である。
【0036】
ここで、上部2Aを開閉し易くするためには、上部2Aの下部2Bと連結される根元側の一部分24を、上部2Aの残部分よりも軟質とすることが好ましい。これにより、上部2Aの根元側の部分が折れ曲がり易くなり、上部2Aが開閉し易くなる。
【0037】
この場合、上部2Aの上記一部分(軟質部分)24の硬度は、特に限定されるものではないが、上部2Aが閉じた状態において、上方からの荷重で容易に軟質部分24が変形することを防止できる程度の硬さが必要である。一方で、軟質部分24を硬くしすぎないことで、上部2Aが開き易くなる。そのため、軟質部分24の硬度は、例えば、ショアD硬度で20以上60以下とすることが好ましく、35以上45以下とするのがさらに好ましい。また、上部2Aの軟質部分24以外の残部分及び下部2Bは、軟質部分24よりも硬ければ、その硬度は特に限定されるものではないが、硬くしすぎないことによって、排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面17が曲面状である場合にシート端部部材1を浴室壁面14などに沿うように曲げて配置することが容易になる一方で、浴室壁面14などが平面状である場合にシート端部部材1を浴室壁面14などに沿って真っ直ぐ直線状に配置するためには適度な硬さが必要である。そのため、上部2Aの軟質部分24以外の残部分及び下部2Bの硬度は、ショアD硬度で40以上80以下とすることが好ましく、55以上65以下とするのがさらに好ましい。ショアD硬度は、JIS K7215によって、デュロメーター型式Dのアスカーゴム硬度計(高分子計器株式会社製)を用いて測定することができる。
【0038】
本体部2の上部2Aに軟質部分24を設ける場合は、軟質部分24と上部2Aの軟質部分24以外の残部分及び下部2Bとで同一の材料同士の組み合わせで形成することが、強固に一体成形加工し易くて好ましい。例えば、軟質ポリ塩化ビニル樹脂及び半硬質ポリ塩化ビニル樹脂などを好適な組み合わせとして挙げることができる。軟質ポリ塩化ビニル樹脂及び半硬質ポリ塩化ビニル樹脂を組み合わせた場合、一体成形加工を容易に行なうことができ、かつ接合面が強固であるので、特に好適である。
【0039】
なお、図2(b)の実施形態のシート端部部材1は、本体部2の上部2Aに軟質部分24が設けられているが、軟質部分24を設けることなく構成することもできる。
【0040】
上部2A及び下部2Bの連結部分には、曲面が形成されており、例えば、本体部2の長さ方向に延びる断面視円形状の空洞25が設けられている。これにより、上部2Aの開閉時に作用する応力を緩和させることができるので、上部2Aの耐久性を向上することができる。空洞25は、断面視円形状である必要はなく、断面視惰円形状であってもよい。
【0041】
なお、図2(b)の実施形態のシート端部部材1は、本体部2の上部2A及び下部2Bの連結部分に空洞25が設けられているが、空洞25を設けることなく構成することもできる。
【0042】
下部2Bは、凹み5に配置される床シート材6の端部60が対向する壁部26を有している。壁部26は、凹み5と隣接する位置に本体部2の長さ方向の全長にわたって設けられ、壁部26の凹み5側の端面が本体部2の垂直面22をなしている。この壁部26は、詳細は後述するが、床シート材6を本体部2の長さ方向に沿ってカットして床シート材6の端部60が凹み5内からズレ出ないようにするために、図7に示すように、カッターCなどの切断器具を当てて床シート材6をカットすることが可能な切断用のガイドとして機能する。なお、図2(b)の実施形態では、壁部26は、下部2Bの一部として形成されているが、上部2Aの一部として形成されていてもよい。
【0043】
また、壁部26は、図2(b)の実施形態では、上端部が鉤状(直角)に折れ曲がった断面視L字状をなしており、上部2Aが有する第1係合部27と互いに係脱可能に係合する第2係合部としても機能する。すなわち、上部2Aは、閉じた状態で下部2Aの壁部26(第2係合部)と空隙Gを介して隣り合う第1係合部27を有している。第1係合部27は、下端部が鉤状(直角)に折れ曲がった断面視L字状をなしており、簡易な構成で第2係合部である壁部26に係合させることができる。上部2Aが閉じた状態で、端部同士が引っ掛かることで第1係合部27及び壁部26(第2係合部)が互いに係合することで、上部2Aは閉じた状態が維持される。
【0044】
上記構成のシート端部部材1において、カバー部3の厚みは、特に限定されるものではないが、薄すぎると耐久性が劣る一方、厚すぎると床シート材6上を流れ落ちてくる水がカバー部3との境界における段差で滞留し、スムーズにシート端部部材1から排水溝15に排出できなくなる。そのため、カバー部3の厚みは、好ましくは0.2mm以上1.0mm以下であり、さらに好ましくは0.3mm以上0.5mm以下である。
【0045】
また、カバー部3の幅3aは、特に限定されるものではないが、狭すぎると、床シート材6の端部60のカット精度が悪い場合に床シート材6の端部60が凹み5からはみ出て隙間が生じてしまい、施工不良となるおそれがある一方、広すぎると、シート端部部材1の見栄え悪くなる。そのため、カバー部3の幅3aは、好ましくは3mm以上15mm以下であり、さらに好ましくは5mm以上10mm以下である。
【0046】
また、支持部4の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは0.2mm以上1.0mm以下であり、さらに好ましくは0.3mm以上0.5mm以下である。下限値以上であると、支持部4の耐久性が十分となる一方、上限値以下であると、床シート材6が支持部4へ無理なく乗り上がり、床シート材6と床13との間の隙間を小さくすることができる。なお、支持部4は、先端に向けて厚みが次第に薄くなるようにテーパー状に形成されていてもよく、床シート材6が浴室の床面から支持部4へスムーズに乗り上げることができる。
【0047】
また、シート端部部材1の下面の幅L(本体部2の下面21の幅2a及び支持部4の幅4aの合計)は、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは10mm以上50mm以下であり、さらに好ましくは15mm以上25mm以下である。下限値以上であると、シート端部部材1と床13との接着面積が十分となり、シート端部部材1が床13から剥がれ難くなる。一方、上限値以下であると、それに伴い床13に塗布あるいは貼る接着剤や両面テープの幅を広げる必要がなくなり、接着層19(図4に示す)の形成が容易になり、また浴室内の作業スペースを確保することができるため、施工時の作業効率が良好となる。
【0048】
また、凹み5の高さH(本実施形態ではカバー部3及び支持部4の間の高さ)は、特に限定されるものではなく、床シート材6の厚みに対応して種々の高さとすることができるが、床シート材6の厚みよりも、0.2mm以上0.6mm以下の範囲で高く設定されることが好ましく、0.3mm以上0.5mm以下の範囲で高く設定されることがより好ましい。これによって、床シート材6の端部60の凹み5への嵌めこみが容易になり、かつ、水が浸入し難くなる。なお、床シート材6は、防滑性を高めるために、表面にエンボスが形成されていることが多いが、凹み5の高さHを上記範囲に設定することで、床シート材6の端部60の嵌めこみの容易さと水の浸入抑制を両立させることができる。
【0049】
また、シート端部部材1の長手方向(図1における上下方向)の長さは、特に限定されるものではなく、床13の配置箇所に対応して種々の長さとすることができる。
【0050】
次に、上述したシート端部部材1を用いて床シート材6を床面に施工する浴室床の施工方法について図4図10を用いて説明する。なお、本実施形態では、シート端部部材1として、図2(b)に示す実施形態のものを用いている。
【0051】
床シート材6は、浴室の床13上に施工されて浴室の意匠性や機能性を向上させるシート材である。機能性としては、防滑性、クッション性、遮熱性、接触温熱感の向上などが挙げられる。床シート材6の素材は、浴室の床13上に施工可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂などの柔軟性を有する樹脂製シートを用いることができるが、加工性、耐久性、コストに優れることから、塩化ビニル樹脂が好ましい。また、床シート材6の表面形状は、特に限定されるものではないが、例えば防滑性を有する凹凸形状などとすることができる。
【0052】
本発明に係る浴室床の施工方法は、(i)浴室の床13上に接着剤又は両面テープを用いて接着層19を形成する接着層形成工程と、(ii)浴室の床13上の排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面17との境界Bにシート端部部材1を接着層19を介して設置するシート端部部材設置工程と、(iii)接着層19を介して床シート材6を床13上に貼り付ける床シート材施工工程と、(iv)床シート材6の端部60をシート端部部材1の凹み5に配置してカバー部3で覆うシート端部部材装着工程と、(v)床シート材6を押圧する押圧工程と、を有する。なお、本発明に係る浴室床の施工方法は、(i)〜(v)の工程が必ずしもこの順に行わるものに限定されるものではない。
【0053】
具体的には、まず、図4に示すように、浴室の床13上に、接着剤又は両面テープを塗布又は貼り付けて接着層19を形成する(接着層形成工程)。なお、本実施形態では、浴室の床13上の排水溝15及び浴室壁面14との境界Bにシート端部部材1が設置され、図4及び以降の図5図9では、浴室の床13上の排水溝15との境界Bを例にしているが、浴室壁面14との境界B、さらには浴槽壁面17との境界Bにシート端部部材1を設置する場合でも同様である。接着層19は、床13の全面に形成してもよいし、床面の一部分だけに形成してもよい。
【0054】
接着剤を塗布する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。接着剤や両面テープとしては、下地である床13とシート端部部材1及び床シート材6とを接着することができるものであれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、尿素樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤を挙げることができる。耐水性及び接着性に優れる点ではウレタン系接着剤が好適である。また、床シート材6を剥がして張り替えが容易な点ではアクリル系接着剤や変性シリコーン系接着剤が好適である。具体的には、ウレタン系接着剤の「バスナウォールセメント(東リ株式会社製)」、アクリル系接着剤の「エコGAセメント(東リ株式会社製)」、変性シリコーン系接着剤の「MPX−1(東リ株式会社製)」などが挙げられる。
【0055】
例えば、両面テープとしては、耐水性、接着性、下地不陸追従性、耐可塑剤性、クリープ性、剥離容易性などに優れるものを用いることが好ましく、具体的には、「CFテープ(東リ株式会社製)」などを好適に挙げることができる。
【0056】
また、接着剤と両面テープのいずれを用いても、施工完了後、短時間で浴室が使用可能となるが、特に、両面テープを用いて床13とシート端部部材1及び床シート材6とを接着すると、硬化・乾燥時間が不要となるので、さらに短時間で浴室が使用可能となる。
【0057】
接着層19は、床面の一部分だけに形成する場合には、少なくとも床13の周縁部を含むように、つまりは、床13上の排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面17との境界Bにおいて、その長さ方向に沿いかつ境界Bからシート端部部材1の幅を超えて形成される。
【0058】
この場合、接着層19の幅は、特に限定されるものではないが、床シート材6の床13との接着面積を十分にして床シート材6が床13から剥がれ難くする必要がある。一方、接触面積を大きくしすぎないことによって、接着層19の形成を容易にし、また、浴室内の作業スペースを十分に確保することができるため、施工時の作業効率が良好となる。例えば、接着層19の幅は、両面テープを用いる場合には、好ましくは25mm以上80mm以下であり、さらに好ましくは40mm以上60mm以下とすることができる。
【0059】
また、接着層19の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは0.5mm以下であり、さらに好ましくは0.1mm以上0.4mm以下である。上限値以下にすることによって、床面の接着層19が存在する領域と存在しない領域との間の段差が床シート材6の表面側に伝わり難くなり、床シート材6の足触りに違和感が生じることを抑制できる。下限値以上にすることによって、床シート材6と床面との接着を強固にし、また両面テープの場合、施工時の両面テープの意図しない切断を防止し、施工性が向上する。
【0060】
次に、図5に示すように、浴室の床13上の排水溝15との境界Bに、シート端部部材1を排水溝15の長さ方向に沿って配置して、接着層19により床13上に貼り付ける(シート端部部材設置工程)。シート端部部材1は、本体部2を境界B側に向けて設置される。なお、上部2Aが開いた状態でシート端部部材1を床13上に貼り付けてもよいし、上部2Aが閉じて下部2Bと係合した状態でシート端部部材1を床13上に貼り付けた後、上部2Aを上方へ開いてもよい。
【0061】
次に、図6に示すように、床シート材6を、接着層19を介して床13上に貼り付ける(床シート材施工工程)。なお、床シート材6は、便器12に当たる部分については、予め便器の外形に合わせて切り抜かれている。この工程において、本実施形態では、床シート材6を、上部2Aが開いた状態のシート端部部材1上に乗り上げるようにして配置し、床13上に固定する。
【0062】
次に、床シート材6の端部60にシート端部部材1を装着する(シート端部部材装着工程)。この工程においては、まず、図7に示すように、カッターCなどの切断器具を下部2Bの壁部26に当てながら壁部26に沿わせて床シート材6をカットすることにより、図8に示すように、床シート材6の端部60を支持部4上に配置させる。そして、図9に示すように、シート端部部材1の上部2Aを閉じて、上部2Aの第1係合部27及び下部2Bの第2係合部(壁部26)を係合させることで、床シート材6は、その端部60がシート端部部材1の凹み5に配置されてカバー部3により覆われた状態となる。浴室の床13上の浴室壁面14、浴槽壁面17との境界Bについても、同様の工程を行うことで、図10に示すように、床シート材6は、その端部60がシート端部部材1の凹み5に配置されてカバー部3により覆われた状態となる。
【0063】
なお、図2(a)に示す実施形態のシート端部部材1を用いた場合には、フックカッターなどを用いて、シート端部部材1の上方で、床シート材6を所望の寸法にカットすることができる。その後、床シート材6の端部60を、側方から凹み5に挿入することで、端部60がシート端部部材1の凹み5に配置されてカバー部3により覆われた状態となる。なお、床シート材6を予め所望の寸法にカットしておいてもよい。
【0064】
最後に、押圧ローラーやしごき棒によって、カバー部3により覆われていない領域において、床シート材6を押圧し(押圧工程)、床シート材6と床面と間の空気を抜くことで、床シート材6と床面との接着を強固なものとする。この押圧は、必ずしも最後でなくてもよく、床面にシート端部部材1を設置し、床シート材6を載置した後であれば、任意のタイミングで行うことができる。以上説明した施工方法により、図11に示すように、浴室の床13の全面にシート端部部材1を用いて床シート材6が施工された浴室床構造が完成する。
【0065】
なお、本実施形態では、浴室の浴室壁面14に隣接する位置に排水溝がない場合の浴室床の施工方法を説明しており、浴室壁面14に隣接して排水溝がない浴室では、図10に示すように、浴室壁面14から隙間dを空けて、シート端部部材1を設置後、床シート材6を施工し、排水部を設置することが好ましい。この浴室壁面14とシート端部部材1の間の隙間dは、3mm以上20mm以下とすることができ、好ましくは5mm以上10mm以下とすることができる。また、本実施形態では、浴室の浴槽壁面17に隣接する位置排水溝15がある場合の施工方法を説明しているが、排水溝15がない浴室では、図示は省略するが、図10に示す浴室壁面14と同様に、浴槽壁面17から隙間dを空けて、シート端部部材1を設置後、床シート材6を施工し、排水部を設置することが好ましい。この浴槽壁面17とシート端部部材1の間の隙間dも、3mm以上20mm以下とすることができ、好ましくは5mm以上10mm以下とすることができる。この範囲で隙間dを設けることによって、隙間dを排水溝として機能させて排水機能を高めることができ、また、埃やゴミを取り易い形状となるので清掃性が向上する。
【0066】
また、本実施形態では、浴室の浴室壁面14に隣接する位置に排水溝がない場合の浴室床の施工方法を説明しているが、浴室壁面14に隣接して排水溝がある浴室では、図示は省略するが、図9に示す浴槽壁面17と同様に、床13上の浴室壁面14と隣接する排水溝との境界にシート端部部材1を設置後、床シート材18を施工する。
【0067】
また、本実施形態では、(iv)シート端部部材装着工程において、床シート材6を、シート端部部材1の下部2Bの壁部26に沿ってカットすることで床シート材6の端部60を壁部26に沿わせている。しかし、本発明の浴室床の施工方法においては、浴室に持ち込む前に予め床13の形状・大きさに合わせて床シート材6をカットし、シート端部部材1の上部2Aを開いた状態で床シート材6の端部60を支持部4上に載置させながら下部2Bの壁部26に沿わせるようにしてもよい。そして、シート材端部1の上部2Aを閉じて、上部2Aの第1係合部27及び下部2Bの第2係合部(壁部26)を係合させることにより、床シート材6は、その端部60がシート端部部材1の凹み5に配置されてカバー部3により覆われた状態となる。これによって、床シート材18のカットを、緻密に行なう必要がなく、作業効率が向上し、作業時間が短縮される。
【0068】
また、本発明に係る浴室床の施工方法においては、シート端部部材装着工程において、図9に示すシート材端部1の上部2Aを閉じる前に、図示は省略するが、床シート材6の端部60とシート端部部材1の本体部2との間がコーキング剤で充填されるとともに、床シート材6の端部60とカバー部3との間にコーキング剤が充填されるように、床シート材6の端部60上にコーキング剤を塗布してもよい。
【0069】
また、本発明に係る浴室床の施工方法においては、(i)接着層形成工程及び(ii)シート端部部材設置工程を行った後、(iv)シート端部部材装着工程を行い、その後、(iii)床シート材施工工程を行って、最後に、(v)押圧工程を行ってもよい。具体的には、図2(a)に示す実施形態のシート端部部材1を用い、浴室に持ち込む前に予め床13の形状・大きさに合わせてカットされた床シート材6の端部60を、シート端部部材1の本体部2から側方に突き出るカバー部3の下方に形成された凹み5に挿入してカバー部3で覆った後、接着層19を介して床シート材6を床13上に貼り付けるようにしてもよい。
【0070】
以上説明したシート端部部材1、シート端部部材1を用いて床シート材6を既設の床13上に施工した浴室床構造及び浴室床の施工方法によれば、カバー部3が床シート材6の端部60を上方から覆うので、施工者の技量によって床シート材6の端部60のカット精度にばらつきが生じても、カット精度の良し悪しに関わらず一様に浴室床を良好に仕上げることができる。また、浴室壁面14と床シート材6の端部60との間にシート端部部材1が設けられるため、両者の隙間をシール剤で埋める必要がない。よって、従来技術のように、施工者の技量によって浴室床の仕上がりにばらつきが生じて浴室の美観を損ねることがなく、短時間で、浴室床を安定して良好に仕上げることができる。加えて、従来技術のように、シール剤が硬化する時間を待つ必要もなく、施工後、短時間で浴室を使用することができる。
【0071】
さらに、シート端部部材1を、上部2Aが下部2Bに対して開閉可能な構造とすることにより、カバー部3を有する上部2Aを開いた状態とすることで、床シート材6をその端部60がシート端部部材1に乗り上げた状態で床13上に施工することができる。これにより、接着層19に接着剤を用いた場合、床シート材6の位置決めをする際に、床シート材6の床面との接着面積を減らすことができるので、床シート材6を横にずらして位置調整したり、床シート材6の位置決めをやり直したりすることができる。よって、床シート材6の位置決めを容易に行うことができ、施工作業を効率よく行うことができる。
【0072】
さらに、シート端部部材1の下部2Bに壁部26が設けられているので、壁部26をガイドにして床シート材6を当て切りすることができる。よって、床シート材6の端部60を真っ直ぐ直線状にカットするために、わざわざ定規などを用いる必要がなく、施工作業を容易かつ効率よく行うことができる。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないため、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、上記実施形態のシート端部部材1では、下部2Bの壁部26が断面視L字状をなすことで、上部2Aの断面視L字状をなす第1係合部27と係脱可能な第2係合部を兼ねている。しかしながら、図12に示すように、下部2Bの壁部26に隣接する位置に、第2係合部として本体部2の長さ方向に延びる凹溝28を設け、凹溝28に上部2Aが有する第1係合部27を嵌め込むことで、互いに係脱可能に係合させてもよい。なお、図12のシート端部部材1においても、上記実施形態と同様、本体部2に空洞O及び空洞25を設けたり、上部2Aに軟質部分24を設けてもよい。
【0075】
また、上記実施形態のシート端部部材1では、本体部2は上面20に傾斜面20B(断面視三角形状のスロープ部23)を有しており、傾斜面20B(スロープ部23)がカバー部3とは反対側に向けて下っているが、傾斜面20B(スロープ部23)がカバー部3とは反対側に向けて上る(カバー部3側に向けて下る)ように本体部2が形成されていてもよい。なお、本体部2は必ずしも上面20に傾斜面20B(スロープ部23)を有している必要はなく、上面20が平坦面でスロープ部23のない断面視矩形状に形成されていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態のシート端部部材1では、支持部4を備えているが、必ずしも支持部4を備える必要はない。
【符号の説明】
【0077】
1 シート端部部材
2 本体部
2A 上部
2B 下部
3 カバー部
4 支持部
5 凹み
20 本体部の上面
20B 傾斜面
24 軟質部分
25 空洞
26 壁部(第2係合部)
27 第1係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12