特許第6983527号(P6983527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983527
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】電流検出用抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 1/032 20060101AFI20211206BHJP
   H01C 13/00 20060101ALI20211206BHJP
   H01L 23/58 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01C1/032
   H01C13/00 J
   H01L23/56 C
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-68955(P2017-68955)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-170478(P2018-170478A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年2月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲村 圭史
(72)【発明者】
【氏名】井口 憲一
(72)【発明者】
【氏名】豊田 進
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 成浩
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−249475(JP,A)
【文献】 特開2015−128104(JP,A)
【文献】 特開2003−070230(JP,A)
【文献】 実開平04−046501(JP,U)
【文献】 特開2012−099744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/032
H01C 13/00
H01L 23/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の主電極を備える半導体素子と、
前記半導体素子に配置され、導電性の金属材からなる第1端子および第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に配置された抵抗体と、を有し、
前記抵抗体、前記第1端子、および、前記第2端子は、厚み方向に積層体を構成した電流検出用抵抗器を構成し
前記主電極の少なくともいずれか一方に、前記電流検出用抵抗器の前記第1端子又は前記第2端子を接続した、
電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体等における電流検出で使用するのに好適な電流検出用抵抗器および電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、一般的なシャント抵抗器の構成例を示す斜視図((a))と断面図((b))である。平板状の抵抗体5の両端に、第1端子1及び第2端子3が接合されている。第1端子1及び第2端子3は、段部を有する持ち上がり構造である。このようなシャント抵抗器の持つ自己インダクタンス値は、抵抗体5の長さに比例して大きくなる。
【0003】
近年、電子機器で使用される電流が大電流化されている中で、パワーモジュールと呼ばれる、パワー半導体のスイッチングにより電力の変換や制御を行うモジュールが盛んに開発されている。パワーモジュールには、アルミナ基板に直接、銅を結合する方法で形成されたDBC基板と呼ばれるセラミック基板など、大きな電流も流せる様な高放熱の基板が使用されることが多くなっている。また、銅板等からなる板状配線(リードフレーム)にパワー半導体やシャント抵抗器などの部品を直接搭載して使用することもある。
【0004】
また、パワー半導体としてはSiCやGaNなどの素子が開発されている。この素子により使用できる温度範囲が高くなり、高周波でのスイッチングが可能になる。
【0005】
特許文献1は、抵抗金属体を電流端子によりサンドイッチ状に挟んで電流検出用シャント抵抗器を構成している。これにより、放熱性が良く、かつ、信頼性の高い電流検出用シャント抵抗器を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−358283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の電流検出用シャント抵抗器は、放熱性と信頼性を向上させること、配線長を短くすることを目的としているが、今後は、電流検出用シャント抵抗器の性能として次の要求が増えていくことが予想される。まず、DBC基板や板状配線などに直付けできる構造であり、ヒートサイクルによるクラックの発生を抑えることができる構造が求められる。従って、ワイヤーボンディングなどを用いて導通を確保できる構造が求められる。また、大電流の検出が必要となる。従って、シャント抵抗器の抵抗値はより低いことが要求される。また、20kHz以上の高周波での使用が想定されるため、自己インダクタンスを極力低減させる構造が求められる。また、機器の小型化のため、シャント抵抗器等の部品はできるだけ実装面積を小さくすることが要求される。
【0008】
本発明は、パワーモジュール等に使用するのに好適な、小型で、インダクタンスの小さいシャント抵抗器の構造および電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電極と抵抗体を積層したシャント抵抗器の構造である。ワイヤーボンディングによる接続に好適な電極を有し、実装する基板等に対して縦型の電流経路となり、実装面積を小さくして、自己インダクタンス値を小さくすることができる。
【0010】
本発明の一観点によれば、導電性の金属材からなる第1端子および第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に配置された抵抗体と、を有し、前記抵抗体、前記第1端子、および、前記第2端子は、厚み方向に積層体を構成し、前記積層体のサイズは5mm以下である、電流検出用抵抗器が提供される。前記積層体の厚みは0.5mm以下であることが好ましい。また、前記第1端子および前記第2端子のそれぞれの厚みは、前記抵抗体の厚みよりも薄い、ことが好ましい。
【0011】
前記積層体の外周に絶縁材を備えると良い。前記積層体の厚み方向の前記第1端子および前記第2端子の少なくとも一方の表面に金属薄膜層を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記第1端子と前記第2端子の面積が異なるようにしても良い。前記第1端子は貫通孔を有するリング形状であっても良い。
【0013】
また、本発明は、一対の主電極を備える半導体素子と、前記半導体素子に配置され、導電性の金属材からなる第1端子および第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に配置された抵抗体と、を有し、前記抵抗体、前記第1端子、および、前記第2端子は、厚み方向に積層体を構成した電流検出用抵抗器と、前記主電極の少なくともいずれか一方に、前記電流検出用抵抗器の前記第1端子又は前記第2端子を接続した、電流検出装置である。
【0014】
また、導電性の金属材からなる第1端子および第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に配置された抵抗体と、を有し、前記抵抗体、前記第1端子、および、前記第2端子は、厚み方向に積層体を構成し、前記積層体のサイズは5mm以下である、電流検出用抵抗器と、前記電流検出用抵抗器を実装する配線と、を備え、前記配線に、前記電流検出用抵抗器の前記第2端子を接続した、電流検出装置である。
【0015】
上記において、前記配線とは別の配線を備え、前記別の配線と前記第1端子とをワイヤーにより接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、非常に小型且つ低背で、実装性に優れ、高周波特性も良好なシャント抵抗器の構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態による電流検出用抵抗器の一構成例を示す図であり、図1(a)は斜視図、図1(c)は断面図である。図1(b)は、本発明の第2の実施の形態による電流検出用抵抗器の一構成例を示す斜視図である。
図2図2(a)から図2(d)までは本発明の第1の実施の形態による電流検出用抵抗器の製造方法の一例を示す図であり、図2(e)及び図2(f)は、その変形例であって第2の実施の形態による電流検出用抵抗器の製造方法の一例を示す図である。
図3図3(a)から図3(c)までは本発明の第1の実施の形態による電流検出用抵抗器の基板への実装構造の一例を示す図である。
図4】本発明の第3の実施の形態による電流検出用抵抗器の一構成例を示す図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は断面図である。
図5】本発明の第4の実施の形態による電流検出用抵抗器の一構成例を示す図であり、図5(a)は斜視図、図5(b)は断面図である。図5(c)は分解図および製造方法を示す図である。
図6図6(a)及び図6(b)は本発明の第4の実施の形態による電流検出用抵抗器の基板への実装構造の一例を示す図である。
図7】本発明の第5の実施の形態による電流検出用抵抗器の一構成例を示す斜視図である。
図8】本発明の第5の実施の形態による電流検出用抵抗器の製造方法を示す図である。
図9】本発明の第5の実施の形態による電流検出用抵抗器の基板への実装構造の一例を示す図である。
図10】一般的な電流検出用のシャント抵抗器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態による電流検出用抵抗器の一構成例を示す図であり、図1(a)は斜視図、図1(c)は断面図である。
【0020】
図1(a)、図1(c)に示すように、本実施の形態による電流検出用のシャント抵抗器Aは、円板状の抵抗体5と、抵抗体5の両面に形成され、抵抗器に電流を流すための、円板状の第1電極(端子)1及び第2電極(端子)3を備える。抵抗体5はCu−Ni系、Cu−Mn系等の電流検出に適した金属材料から成る。第1電極1および第2電極3は、Cuなどの高導電性の金属材料からなる。第1及び第2電極1,3の厚さは、それぞれ厚さt、tとして示す。抵抗体5の厚さは、厚さtとして示す。これにより、厚さ(高さ)h(=t+t+t)の薄い円柱状の積層体が形成される。積層体の半径はrである。
【0021】
シャント抵抗器Aの例示的なサイズは、以下の通りである。
電極: t=t=0.1mm
抵抗体: t=0.2mm
積層体: h=0.4mm
積層体: r=1.5mm
【0022】
このとき、抵抗体5の固有抵抗値ρ=1mΩ・cmであれば、シャント抵抗器Aの抵抗値は、0.3mΩである。また、抵抗体5の厚みtを0.1mmまで薄くすると、全体高さhは0.3mmとなり、シャント抵抗器Aの抵抗値は150μΩとなる。
【0023】
シャント抵抗器Aのサイズは5mm以下が好ましい。ここでサイズとは具体的には、図1(a)においてシャント抵抗器Aの直径2rである。また、図1(b)に示すシャント抵抗器Aにおいて、サイズとは、辺bである。シャント抵抗器Aの平面形状が楕円形等である場合や、長方形である場合は、最大の幅である。即ち、シャント抵抗器Aにおいて幅、長さ、高さのいずれか(特には平面形状における幅もしくは長さ)における最大のサイズが5mm以下である。外形サイズが5mm以下ということもできる。また、積層体としてのシャント抵抗器Aの厚みは、全体として0.5mm以下が好ましい。このようなサイズにすることで、配線への実装に適し、パワー半導体等との実装もし易く、特性上も好適なシャント抵抗器を構成することができる。また、前記第1端子および前記第2端子のそれぞれの厚みは、前記抵抗体の厚みよりも薄くしている。このためシャント抵抗器を低背化しつつ、所定の抵抗値とすることが可能となる。
【0024】
図1に示す構造では、シャント抵抗器Aの実装面積も小さく、体積も小さくすることができる。また、シャント抵抗器Aを縦型の構造にすることによって、上下面は平らな面を確保することが可能となる。即ち、シャント抵抗器Aにおいて、上面および/または下面が最大の面を構成しており、且つ、平坦面である。このため、配線等への接続において実装が安定する。また、ワイヤー接続の領域も確保でき、好適である。後述のように、シャント抵抗器Aを、何かの部品の上に実装したり、シャントの上に電子部品等を実装して使用したりすることが可能である。従って、シャント抵抗器Aのより有効な面積利用が可能になる。尚、第1電極(端子)と第2電極(端子)との面積が異なるようにしても良い。例えば、上側の面積を小さくしても良い。
【0025】
図2(a)から(d)までは、本実施の形態によるシャント抵抗器の製造工程の一例を示す図である。まず、円板状の電極材1a、3aと、円板状の抵抗材5aと、を準備する。次いで、円板状の電極材1a、円板状の抵抗材5a、円板状の電極材3aの順番に重ねる(図2(a))。これらを、例えば圧接などにより面で接合することより、図2(b)に示す積層構造Bを形成することができる。
【0026】
次いで、積層構造Bを、パンチなどにより例えば円形状に打ち抜くとで、1つ1つのシャント抵抗器Aを形成することができる(図2(c)、図2(d))。
【0027】
図3(a)から図3(c)までは、シャント抵抗器Aの実装構造の例を示す斜視図である。シャント抵抗器Aは図1(a)に示す構造であり、図1(a)を援用して説明する。
【0028】
(第1の実装構造例)
図3(a)に示すシャント抵抗器Aの第1の実装構造例は、シャント抵抗器Aを配線7上に配置している。なお、配線7におけるシャント抵抗器Aが搭載される部位をパッドと称する。シャント抵抗器Aの第2電極3は配線7(パッド)に接続されている。
【0029】
また、シャント抵抗器Aが配置された配線7とは分離した配線59、60、61を備える。配線7,59,60,61は銅板等からなる板状の配線材であり、例えばリードフレームである。配線は、セラミック基板や樹脂基板に形成されたCu等の配線でもよい。これ以降説明する実施例においても同様である。シャント抵抗器Aと配線7は、はんだ等により接続固定される。シャント抵抗器Aの第1電極1と配線60との間は、ボンディングワイヤーW1により電気的に接続されている。シャント抵抗器Aの第1電極1と配線61は、ボンディングワイヤーW4により電気的に接続されている。配線7におけるシャント抵抗器Aの実装部位の近傍と配線59とは、ボンディングワイヤーW3により電気的に接続されている。配線7、シャント抵抗器A、ボンディングワイヤーW1および配線60により電流経路が構成される。この電流経路においてシャント抵抗器Aにおける電圧降下が、ボンディングワイヤーW3,W4により取り出される。よって、図3(a)の実装構造によれば、配線59と配線61との間の電圧を電圧計71により測定することができる。シャント抵抗器Aの実装構造によれば、図10に示す構造と比べて、配線と電極との間の応力を緩和でき、また、従来に比べて小型であるため、ヒートサイクル等に対しても良好な接続状態を維持することができる。このような配線、シャント抵抗器A及びワイヤーを、モールド樹脂により封止することもある。
【0030】
(第2の実装構造例:電子部品上への実装)
図3(b)に示すシャント抵抗器Aの第2の実装構造例は、シャント抵抗器Aを配線7に搭載した電子部品51上に配置している。電子部品51とは、例えば、パワーMOSトランジスタなどの半導体素子である。シャント抵抗器Aと電子部品51は、はんだ等により接続固定される。電子部品51には、2つの独立した主電極が設けられている。その一つが主電極43であり、もう一方の主電極(図示せず)は、配線7と対峙するように電子部品51の裏面側に形成され、配線7と接続されている。また、符号45は、例えば電子部品51に入力される信号用の端子である。シャント抵抗器Aの第2電極3は電子部品51の主電極43上に接続されている。ボンディングワイヤーW1は、第1電極1と配線60とを接続している。ボンディングワイヤーW4は、第1電極1と配線61とを接続している。ボンディングワイヤーW3は、シャント抵抗器Aが搭載された主電極43と配線59とを接続している。ボンディングワイヤーW2は、信号用端子45と配線57とを接続している。
【0031】
図3(b)の実装構造において、配線7と配線60とは、電子部品51、シャント抵抗器A及びボンディングワイヤーW1を介在させて電流経路を構成している。例えば電子部品51は、その電流を制御し、信号用端子45にはそのための制御信号が入力される。シャント抵抗器Aにおける電圧降下はボンディングワイヤーW3,W4より取り出され、配線59と配線61において電圧計71により測定することができる。即ち、この実装構造では、電子部品51の電極43と基板の配線60との間にシャント抵抗器Aを接続した構造において、シャント抵抗器Aに流れる電流を検出することができる。また、電子部品51の発熱を配線側に逃がすことができるという利点がある。
【0032】
(第3の実装構造例:電子部品下への実装)
図3(c)に示すシャント抵抗器Aの第3の実装構造は、シャント抵抗器Aを絶縁基板等に形成された配線7に配置している。
【0033】
さらに、シャント抵抗Aの第1電極1上に電子部品51を配置している。電子部品51には、2つの独立した主電極が設けられている。その一つが主電極43であり、もう一方の主電極(図示せず)は、電子部品51の裏面側に形成され、第1電極1と接続されている。また、符号45は、例えば電子部品51に入力される信号用の端子である。ボンディングワイヤーW1は、主電極43と配線60とを接続している。ボンディングワイヤーW4は、第1電極1と配線61とを接続している。ボンディングワイヤーW2は、配線7におけるシャント抵抗器Aの実装部位の近傍と配線59とを接続している。ボンディングワイヤーW2は、信号用端子45と配線57とを接続している。
【0034】
この実装構造では、配線7と配線60とは、シャント抵抗器A、電子部品51及びボンディングワイヤーW1を介在させて電流経路を構成している。例えば電子部品51は、その電流を制御し、信号用端子45にはそのための制御信号が入力される。シャント抵抗器Aにおける電圧降下はボンディングワイヤーW3,W4より取り出され、電子部品51の電極43と基板の配線7との間にシャント抵抗器Aを接続した構造において、シャント抵抗器Aに流れる電流を検出することができる。
【0035】
図3(b),(c)の例では、電子部品51に入力される電流、或いは電子部品51より出力される電流を検出する構成において、機器の小型化が可能となる。また、シャント抵抗器Aの構造は、実装面積が小さく、抵抗体距離も小さいため、自己インダクタンスを小さくすることができ、例えばスイッチング素子等において好適である。
【0036】
(第2の実施の形態)
図1(b)は、本発明の第2の実施の形態による電流検出用抵抗器の一構成例を示す斜視図である。このような、四角形の形状を形成しても良い。図2(e)に示すように、図2(b)の積層構造を形成した後に、符号2a、2bに示すように、カットを行うことで、図2(f)に示す四角形のシャント抵抗器Cを形成することができる。その他、実装構造などは、第1の実施の形態と同様である。
【0037】
(第3の実施の形態)
図4(a)は、本発明の第3の実施の形態による電流検出用抵抗器の一構成例を示す斜視図である。図4(b)は、図4(a)の円の中心を通る線に沿って切った断面図の一例である。
【0038】
本実施の形態によるシャント抵抗器Aは、第1電極1と第2電極3に例えばNi、NiP、NiW、Auなどの金属薄膜層を形成する。メッキの方法は、電解メッキ、無電解メッキ、スパッタリングなどでよい。このようなメッキ膜(金属薄膜層)23を形成することで、高温はんだ等での実装と、アルミ等のワイヤーボンディングが可能な表面処理に耐える電極構造とすることができる。
【0039】
図4(b)に示すように、抵抗体5の側面には、メッキ工程の前に絶縁膜(側壁)17を形成しておくことで、側面でのメッキ膜による第1電極1と第2電極3との短絡を防止することができる。なお、メッキ膜23を形成しない場合においても、絶縁膜17を形成することにより、第1および第2電極間の絶縁を図ることができるので、好適である。また、メッキ膜23を備えるが、絶縁膜17を備えない構造でもよい。
【0040】
(第4の実施の形態)
図5(a)は、本発明の第4の実施の形態による電流検出用抵抗器の一構成例を示す斜視図である。図5(b)は、図5(a)の円の中心を通る線に沿って切った断面図の一例である。図5(c)は、分解斜視図である。
【0041】
本実施の形態によるシャント抵抗器Aは、貫通孔を有するリング形状の第1電極1及び抵抗体5と、その下に形成される凸形状を有する円板状の第2電極3とを有する。第1電極1と第2電極3とではシャント抵抗器の外表面に現れる面積が異なり、第1電極の面積が、第2電極の面積に比べて小さい。第2電極3の凸部3aは、リング形状の第1電極及び抵抗体5の内側の空間部において突出している。そして、第2電極3の凸部3aとリング形状の第1電極及び抵抗体5との間には、溝部Oが形成される。この溝部Oは、図5(b)に示すように、絶縁体17を埋めると良い。絶縁体17の例としては、エポキシ樹脂、セメント材、セラミックペーストなどを溝部Oに充填したり、セラミック等の絶縁材を溝部Oに嵌め込める形状に加工した部材を溝部O内に収容して接着剤で固定する等があげられる。
【0042】
図5(c)に示すように、リング形状の第1の電極1及び抵抗体5の積層構造を形成し、空間部に第2電極3の凸部3aを、隙間を空けて挿入する。そして、それぞれの部材を、例えば、圧接して一体化する。その後必要に応じて溝部Oを絶縁体17で埋める。
【0043】
本実施の形態によるシャント抵抗器Aにおいては、その上面において、第1電極1とともに、第2電極3の一部が露出しているため、上面側からのみ電圧を引き出すことが可能になる。この形状は、下面の第2電極3の接続部を絶縁させ(電気的に浮かせ)、上面の第1の電極1から図示しないボンディングワイヤーでのみ電流経路を確保する。すると、電流の流れが磁束を相殺する流れになり、インダクタンスの影響を相殺することも可能になる。
【0044】
図6(a)は、そのような実装構造例を示すものであり、第4の実施の形態による電流検出用抵抗器の実装構造の例を示す図である。図6(a)に示すように、基板11上にはCuによる配線パターン(電流線、主経路)7,7が形成されている。パターン7xは電流経路とは切り離された金属パターンである。パターン7xに第2電極3が、はんだ等により接続固定される。パターン7xは電流経路とは切り離されているため、パターン7xは、例えば第2電極3を固定するためのもの、搭載されるシャント抵抗器や電子部品の放熱を促進するものである。なお、パターン7xを設けず、シャント抵抗器Aの下面の第2電極3を基板に接着する等も可能である。ワイヤーW2は、配線パターン7aと第1電極1を接続する。ワイヤーW1は、配線パターン7bと凸部3aを接続する。
【0045】
この構成により、配線パターン7a、7b間に電流を流した場合、上述の通り磁束を相殺し、インダクタンスの影響を少なくすることが可能となる。また、シャント抵抗器Aの上面側で、第1電極1および凸部3a(第2電極)に電圧を検出するためのワイヤーを接続することができるため、好適である。このように、シャント抵抗器Aの上面側を電圧の検出に利用し、下面は放熱経路にするようにしても良い。
【0046】
図6(b)に示す例では、基板11のパターン(配線)7bに第2の電極3を接続し、第1電極1はワイヤーW2でパターン7aと接続することで構成している。このような構成において、配線パターン7a、7b間に電流を流した場合、電圧センシングは上面側のみを利用することができる。
【0047】
(第5の実施の形態)
図7は、本発明の第5の実施の形態による電流検出用抵抗器の一構成例を示す斜視図である。第4の実施の形態と本実施の形態では、第1電極1と抵抗体5(図7では現れていない)が、リング状である点は共通する。本実施の形態では、第2電極3が凸部3aを有しておらず、平坦部3bを構成している。また、本実施の形態では、平面形状において矩形状にしている。また、本実施の形態では、電極1と抵抗体5の内周部分(平坦部3bを取り囲む周壁部分)と、電極1と抵抗体5の外周部分に、絶縁材17を形成している。
【0048】
図8は、図7の構造の製造工程の一例を示す図である。図8(a)に示すように、第1電極1、抵抗体5及び第2電極3となる積層体を構成する。第2電極(電極材)3は、所定厚みを有する銅板である。この銅板に薄膜形成法(スパッタリング等)によって、抵抗材料の薄膜5を形成する。次いで、抵抗材料5に重ねて、電極材料の薄膜1を形成する。このため、電極3の厚みに比べて、抵抗材料5と電極材料1の厚みはかなり薄いものとなる。電極3は板状の形態を保持するための基材を兼ねている。次いで、図8(b)に示すように、第1電極1の上部に、第1電極1と抵抗体5をパターニングするためのリング形状のレジスト膜R1を形成する。次いで、レジスト膜R1をエッチングマスクとして、例えば、Arのイオンミリング法などにより、第1電極1、抵抗体5をリング形状に加工する。レジスト膜R1を剥離することで、図8(c)や図7に示すように、第1の電極1、抵抗体5をリング形状とすることができる。
【0049】
次いで、図8(d)に示すように、例えば、SiOなどの絶縁材からなる絶縁膜17を全面に堆積した後に、例えば、CHFなどのガスを利用して反応性イオンエッチング(異方性のエッチング)を行う。すると、SiOなどの絶縁膜17が、リングの内周側面および外周側面のみに残る。以上は、大判の銅板(電極)3にマトリクス状に多数の電極1及び抵抗体5が形成されており、図8(e)に示すように、これを1単位のシャント抵抗器に切断して完成する。必要に応じて、電極1や電極3の表面に前述の金属薄膜層を形成する。
【0050】
図9に示すように、配線7a,7bを備えた基板上に、上記のシャント抵抗器Aを配置する。そして、第1の電極1と一方の配線7aとをボンディングワイヤーW1により結線する。また、リングの内側に露出する第2の電極3の表面(平坦部3b)と配線7とを、ボンディングワイヤーW2により結線する。
【0051】
この際、第1の電極1と抵抗体5の内側面は絶縁膜17により覆われているため、ボンディングワイヤーW2と短絡するおそれが少ない。従って、ボンディングワイヤーW2による第2の電極3と配線7との結線を確実にすることができる。
【0052】
以上のように、縦型で薄いシャント抵抗器を用いると、自己インダクタンスが極めて低くできる(例えば0.1nH以下)。図10に示すように従来の抵抗体長さ5mmとした場合と比べて、本発明の実施例では約1/25の0.2mmであり、インダクタンス値は小さくなる。従って、高周波で使用する際に電流検出の誤差を小さく使用することが可能になる。
【0053】
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0054】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、電流検出用抵抗器に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
A…シャント抵抗器
1…第1の電極(端子)
3…第2の電極(端子)
5…抵抗体
7…配線
17…絶縁膜(絶縁体)
23…メッキ膜
51…電子部品
Wn…ボンディングワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10