特許第6983550号(P6983550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983550振れ補正機能付き光学ユニットおよび振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983550
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】振れ補正機能付き光学ユニットおよび振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20211206BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20211206BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G03B5/00 J
   H04N5/225 400
   H04N5/225 430
   H04N5/232 480
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-127276(P2017-127276)
(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公開番号】特開2019-12117(P2019-12117A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】南澤 伸司
(72)【発明者】
【氏名】五明 正人
(72)【発明者】
【氏名】須江 猛
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−116836(JP,A)
【文献】 特開2017−083582(JP,A)
【文献】 特開2010−266545(JP,A)
【文献】 特開2016−100573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00 − 5/06
G02B 7/02 − 7/16
H04N 5/222 − 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
前記撮像素子を搭載する基板と、
前記撮像素子の被写体側に配置された光学素子と、
前記光学素子を保持するホルダ部材と、
前記撮像素子への光入射領域を規定するアパーチャが形成された端板部と、前記アパーチャの外周側において前記端板部から前記被写体側へ立ち上がる筒部と、前記撮像素子に光軸と交差する方向から当接する当接部と、を備えるカバー部材と、
前記基板が固定された回転部材と、
前記回転部材を前記光学素子の光軸回りに回転可能に支持する回転支持機構と、
前記回転支持機構を介して前記回転部材を支持する固定部材と、
前記回転部材を回転させるローリング用磁気駆動機構と、
前記光軸方向において、前記固定部材と前記ホルダ部材との間に配置された弾性部材と、
前記固定部材と前記ホルダ部材との間に前記弾性部材を挟み込んだ状態で、前記ホルダ部材と前記固定部材とを締結する複数のねじと、
を有し、
前記カバー部材は、前記当接部を前記撮像素子に当接させた状態で当該撮像素子に固定されており、
前記基板は、前記回転支持機構によって支持された前記回転部材の回転中心と前記カバー部材の前記筒部の軸線とを一致させて前記回転部材に固定されており、
前記ホルダ部材は、前記筒部の外周面と隙間を隔てて対向するホルダ筒部、および、前記筒部の外周側において前記端板部と隙間を隔てて対向するホルダ板部と、を備え、
前記光学素子は、前記ホルダ筒部に同軸に保持されており、
前記固定部材には、前記筒部と前記ホルダ筒部とを同軸に位置させた状態で前記ホルダ部材が固定されており、
前記複数のねじは、前記光軸方向で前記固定部材から前記ホルダ部材に締め付けられていることを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項2】
前記端板部は、前記被写体側から前記撮像素子に当接していることを特徴とする請求項
1に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記端板部の前記筒部とは反対側に正方形または長方形の開口を備える枠部を備え、
前記当接部は、前記枠部において前記開口の各辺を規定する4つの内壁面のうち互いに直交して隣り合う第1内壁面および第2内壁面にそれぞれ設けられており、
前記撮像素子は、前記枠部の内側に挿入されていることを特徴とする請求項1または2に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項4】
前記カバー部材は、その表面が黒色の非光沢面であることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項5】
前記端板部を前記光軸方向から見た場合の輪郭形状は、正方形または長方形であることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項6】
前記端板部を前記光軸方向から見た場合の輪郭形状は、円形であることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法において、
前記カバー部材の前記当接部に前記撮像素子を当接させて当該カバー部材を前記撮像素子に固定するカバー部材固定工程と、
前記カバー部材の前記筒部の軸線と前記回転支持機構によって回転可能に支持された前記回転部材の回転中心とを一致させて、前記回転部材に前記基板を固定する基板固定工程と、
前記ホルダ部材の前記ホルダ筒部と前記カバー部材の前記筒部とを同軸に配置する配置工程と、
前記複数のねじのねじ締め状態を調節しながら、前記固定部材に対する前記ホルダ部材の傾きを調節して、前記ホルダ部材と前記固定部材とを固定する固定工程と、
を備えることを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法。
【請求項8】
前記配置工程では、前記光軸方向から前記ホルダ部材のホルダ筒部と前記カバー部材の前記筒部とを観察して前記ホルダ筒部と前記筒部との中心を合わせることを特徴とする請求項7に記載の振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法。
【請求項9】
前記回転支持機構として、前記回転部材に回転軸を設けるとともに、前記固定部材に前記回転軸を支持する軸受部を設けておき、
前記基板固定工程では、前記カバー部材の前記筒部と前記回転軸とを同軸に配置して前記回転部材に前記基板を固定し、
前記配置工程では、前記回転軸と前記ホルダ筒部とを同軸に配置することを特徴とする請求項7に記載の振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法。
【請求項10】
前記配置工程では、前記カバー部材の前記筒部の内径と、前記ホルダ部材の前記ホルダ筒部とを同軸に配置することを特徴とする請求項7に記載の振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光軸回りの振れを補正するローリング補正を行う光学ユニットに関する。また、このような振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や移動体に搭載される光学ユニットの中には、携帯端末や移動体の移動時の撮影画像の乱れを抑制するための振れを補正機能を備えるものがある。特許文献1には、光学素子(レンズ)に対して撮像素子を回転させることにより、光軸回りの振れを補正するローリング補正を行う振れ補正機能付き光学ユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−210392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学素子に対して撮像素子を回転させる振れ補正機能付き光学ユニットでは、光学素子と撮像素子とが異なる部材に搭載されるので、光学素子の光軸と撮像素子の中心とを一致させることが容易ではないという問題がある。また、光学素子と撮像素子とが異なる部材に搭載されるので、光学素子が搭載される部材と、撮像素子が搭載された部材との間から、塵埃などの異物が侵入して、撮像素子に付着する恐れがある。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、異なる部材に搭載された光学素子の光軸と撮像素子の中心とを一致させることが容易であり、撮像素子への異物の付着を抑制できる振れ補正機能付き光学ユニットを提供することにある。また、かかる振れ補正機能付光学ユニットの製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の振れ補正機能付き光学ユニットは、撮像素子と、前記撮像素子を搭載する基板と、前記撮像素子の被写体側に配置された光学素子と、前記光学素子を保持するホルダ部材と、前記撮像素子への光入射領域を規定するアパーチャが形成された端板部と、前記アパーチャの外周側において前記端板部から前記被写体側へ立ち上がる筒部と、前記撮像素子に光軸と交差する方向から当接する当接部と、を備えるカバー部材と、前記基板が固定された回転部材と、前記回転部材を前記光学素子の光軸回りに回転可能に支持する回転支持機構と、前記回転支持機構を介して前記回転部材を支持する固定部材と、前記回転部材を回転させるローリング用磁気駆動機構と、前記光軸方向において、前記固定部材と前記ホルダ部材との間に配置された弾性部材と、前記固定部材と前記ホルダ部材との間に前記弾性部材を挟み込んだ状態で、前記ホルダ部材と前記固定部材とを締結する複数のねじと、を有し、前記カバー部材は、前記当接部を前記撮像素子に当接させた状態で当該撮像素子に固定されており、前記基板は、前記回転支持機構によって支持された前記回転部材の回転中心と前記カバー部材の前記筒部の軸線とを一致させて前記回転部材に固定されており、前記ホルダ部材は、前記筒部の外周面と隙間を隔てて対向するホルダ筒部、および、前記筒部の外周側において前記端板部と隙間を隔てて対向するホルダ板部と、を備え、前記光学素子は、前記ホルダ筒部に同軸に保持されており、前記固定部材には、前記筒部と前記ホルダ筒部とを同軸に位置させた状態で前記ホルダ部材が固定されており、前記複数のねじは、前記光軸方向で前記固定部材から前記ホルダ部材に締め付けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、アパーチャおよび筒部を備えるカバー部材は、撮像素子に光軸と交差する方向から当接する当接部とを備え、この当接部を撮像素子に当接させた状態で撮像素
子に固定される。これにより、カバー部材と撮像素子とは光軸と交差する方向で位置決めされているので、撮像素子の中心と、アパーチャの中心と筒部の中心とを一致させることができる。また、基板は、カバー部材の筒部の軸線と回転支持機構により回転可能に支持された回転部材の回転中心とを一致させて回転部材に固定されているので、回転部材の回転中心と撮像素子の中心とを一致させることができる。さらに、光学素子を同軸に保持するホルダ筒部とカバー部材の筒部とを同軸に位置させた状態でホルダ部材が固定部材に固定されているので、光学素子の中心と撮像素子の中心とを一致させることができる。また、カバー部材の筒部とホルダ部材のホルダ筒部とを同軸に配置しているので、カバー部材の筒部の外周面とホルダ筒部との間の隙間を微細な寸法に管理できる。これにより、カバー部材の筒部の外周面とホルダ筒部との間の隙間およびカバー部材の端板部とホルダ板部との間にラビリンスシールを構成できるので、カバー部材とホルダ部材との間に塵埃などの異物が侵入して、撮像素子に付着することを防止あるいは抑制できる。
【0008】
本発明において、前記端板部は、前記被写体側から前記撮像素子に当接していることが望ましい。このようにすれば、撮像素子と端板部との間に隙間が形成されないので、異物がこれらの間に進入することがない。また、端板部と撮像素子とが当接すれば、カバー部材と撮像素子との位置精度が向上するので、アパーチャと撮像素子との位置精度が出しやすい。
【0009】
本発明において、前記カバー部材は、前記端板部の前記筒部とは反対側に正方形または長方形の開口を備える枠部を備え、前記当接部は、前記枠部において前記開口の各辺を規定する4つの内壁面のうち互いに直交して隣り合う第1内壁面および第2内壁面にそれぞれ設けられており、前記撮像素子は、前記枠部の内側に挿入されているものとすることができる。このようにすれば、枠部の内側において撮像素子の位置と光軸回りの姿勢を規定できる。
【0010】
本発明において、前記カバー部材は、その表面が黒色の非光沢面であることが望ましい。このようにすれば、カバー部材で反射して撮像素子に入射する不要な光を抑制できる。
【0011】
本発明において、前記端板部を前記光軸方向から見た場合の輪郭形状は、正方形または長方形であるものとすることができる。例えば、端板部の輪郭形状が正方形の場合には、2辺が対向する2方向で、カバー部材の端板部とホルダ板部との間に形成される隙間(ラビリンスシールの一部分)の長さを、同一とすることができる。これにより、ラビリンスシールの長さの差に起因して、異物の侵入を抑制する効果が低下することを抑制できる。また、例えば、端板部の輪郭形状が長方形の場合には、対向する2方向で形成される隙間の長さに差があるが、長さの短い方の隙間を必要とする長さ以上に設定しておけば、ラビリンスシールの長さの差に起因して、異物の侵入を抑制する効果が低下することを抑制できる。
【0012】
本発明において、前記端板部を前記光軸方向から見た場合の輪郭形状は、円形であるものとすることができる。このようにすれば、光軸と直交する方向で、カバー部材の端板部とホルダ板部との間に形成される隙間(ラビリンスシールの一部分)の長さを、同一とすることができる。これにより、ラビリンスシールの長さの差に起因して、異物の侵入を抑制する効果が低下することを抑制できる。
【0013】
次に、本発明は、上記の振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法において、前記カバー部材の前記当接部に前記撮像素子を当接させて当該カバー部材を前記撮像素子に固定するカバー部材固定工程と、前記カバー部材の前記筒部の軸線と前記回転支持機構によって回転可能に支持された前記回転部材の回転中心とを一致させて、前記回転部材に前記基板を固定する基板固定工程と、前記ホルダ部材の前記ホルダ筒部と前記カバー部材の前記筒部とを同軸に配置する配置工程と、前記複数のねじのねじ締め状態を調節しながら、前記固定部材に対する前記ホルダ部材の傾きを調節して、前記ホルダ部材と前記固定部材とを固定する固定工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明では、アパーチャおよび筒部を備えるカバー部材は、撮像素子に光軸と交差する方向から当接する当接部とを備えており、当接部を撮像素子に当接させた状態で撮像素子に固定される。これにより、カバー部材と撮像素子とが光軸と交差する方向で位置決めされるので、撮像素子の中心と、アパーチャの中心と筒部の中心とを一致させることができる。また、撮像素子を搭載する基板を回転部材に固定する際には、回転支持機構により回転可能に支持された回転部材の回転中心とカバー部材の筒部の軸線とを一致させるので、回転部材の回転中心と撮像素子の中心とを一致させることができる。さらに、ホルダ部材を固定部材に固定する前に、ホルダ部材のホルダ筒部とカバー部材の筒部とを同軸に配置するので、ホルダ部材が光学素子を同軸に保持したときに光学素子の光軸と撮像素子の中心とを一致させることができる。また、ホルダ部材のホルダ筒部とカバー部材の筒部とを同軸に配置しているので、カバー部材の筒部の外周面とホルダ筒部との間の隙間を微細な寸法に管理できる。これにより、カバー部材の筒部の外周面とホルダ筒部との間の隙間およびカバー部材の端板部とホルダ板部との間にラビリンスシールを構成できるので、カバー部材とホルダ部材との間に異物が侵入して、撮像素子に付着することを防止あるいは抑制できる。
【0015】
本発明において、ホルダ部材のホルダ筒部とカバー部材の筒部とを同軸に配置するためには、前記配置工程では、前記光軸方向から前記ホルダ部材のホルダ筒部と前記カバー部材の前記筒部とを観察して前記ホルダ筒部と前記筒部との中心を合わせるものとすることができる。
【0016】
本発明において、前記回転支持機構として、前記回転部材に回転軸を設けるとともに、前記固定部材に前記回転軸を支持する軸受部を設けておき、前記基板固定工程では、前記カバー部材の前記筒部と前記回転軸とを同軸に配置して前記回転部材に前記基板を固定し、前記配置工程では、前記回転軸と前記ホルダ筒部とを同軸に配置するものとすることができる。このようにすれば、回転支持機構の回転中心となる回転部材の回転軸を基準として、カバー部材の筒部およびホルダ筒部を同軸に配置できる。
【0017】
本発明において、前記配置工程では、前記カバー部材の前記筒部の内径と、前記ホルダ部材の前記ホルダ筒部とを同軸に配置するものとすることができる。このようにすれば、カバー部材の筒部の内側に治具を嵌合させて、当該治具とホルダ筒部との位置合わせを行うことにより、カバー部材の筒部とホルダ筒部を同軸に配置することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットによれば、アパーチャおよび筒部を備えるカバー部材は、撮像素子と位置決めされた状態で当該撮像素子に固定されるので、撮像素子の中心と、アパーチャの中心と筒部の中心とを一致させることができる。また、基板は、カバー部材の筒部と回転支持機構により回転可能に支持された回転部材の回転中心とを一致させて回転部材に固定されているので、回転部材の回転中心と、撮像素子の中心とを一致させることができる。さらに、カバー部材の筒部と光学素子を同軸に保持するホルダ筒部とを同軸に位置させた状態でホルダ部材が固定部材に固定されているので、光学素子の中心と撮像素子の中心とを一致させることができる。また、カバー部材の筒部とホルダ部材のホルダ筒部とを同軸に配置しているので、カバー部材の筒部の外周面とホルダ筒部との間の隙間を微細な寸法に管理できる。これにより、カバー部材の筒部の外周面とホルダ筒部との間の隙間およびカバー部材の端板部とホルダ板部との間にラビリンスシールを構成できるので、カバー部材とホルダ部材との間に異物が侵入して、撮像素子に付着することを防止あるいは抑制できる。
【0019】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法によれば、アパーチャおよび筒部を備えるカバー部材は、撮像素子と位置決めされた状態で当該撮像素子に固定されるので、撮像素子の中心と、アパーチャの中心と筒部の中心とを一致させることができる。また、回転支持機構により回転可能に支持された回転部材の回転中心とカバー部材の筒部の軸線とを一致させて撮像素子を搭載する基板を回転部材に固定するので、回転部材の回転中心と撮像素子の中心とを一致させることができる。さらに、ホルダ部材を固定部材に固定する前に、ホルダ部材のホルダ筒部とカバー部材の筒部とを同軸に配置するので、ホルダ部材が光学素子を保持したときに光学素子の光軸と撮像素子の中心とを一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用した光学ユニットを被写体側から見た場合の斜視図である。
図2図1の光学ユニットを反被写体側から見た場合の斜視図である。
図3図1のA−A線における光学ユニットの断面図である。
図4】光学ユニットを被写体側から見た場合の分解斜視図である。
図5】光学ユニットを反被写体側から見た場合の分解斜視図である。
図6】撮像ユニット、回転台座、回転支持機構および固定部材を被写体側から見た場合の斜視図である。
図7】撮像ユニット、回転台座、回転支持機構および固定部材を反被写体側から見た場合の斜視図である。
図8】撮像ユニットを被写体側から見た場合の斜視図である。
図9】撮像ユニットを反被写体側から見た場合の斜視図である。
図10】ローリング用磁気駆動機構および姿勢復帰機構と、回転支持機構の一部を示す平面図および断面図である。
図11】光学ユニットの組み立て動作のフローチャートである。
図12】光学ユニットの組み立て動作の説明図である。
図13】変形例1、2の光学ユニットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した振れ補正機能付き光学ユニットの実施形態を説明する。本明細書において、光軸を光学ユニットの軸線Lとする。L1方向は軸線L方向の被写体側であり、L2方向は軸線L方向の反被写体側である。
【0022】
図1は本発明を適用した振れ補正機能付き光学ユニットを被写体側から見た場合の斜視図である。図2は、図1の振れ補正機能付き光学ユニットを反被写体側から見た場合の斜視図である。図3図1のA−A線における振れ補正機能付き光学ユニットの断面図である。図4は振れ補正機能付き光学ユニットを被写体側から見た場合の分解斜視図である。図5は振れ補正機能付き光学ユニットを反被写体側から見た場合の分解斜視図である。
【0023】
図1図2に示すように、本例の振れ補正機能付き光学ユニット1(以下、光学ユニット1という)は、レンズユニット2と、レンズユニット2を保持するレンズホルダ3(ホルダ部材)と、レンズホルダ3の反被写体側L2の端部に固定される固定部材4と、を備える。また、図3に示すように、光学ユニット1は、回転支持機構5を介して固定部材4に回転可能に支持された回転台座6(回転部材)と、回転台座6に固定されて当該回転台座6と一体に回転する撮像ユニット7と、を備える。回転台座6および撮像ユニット7はレンズホルダ3と固定部材4とによって区画された空間内に位置する。さらに、光学ユニット1は、回転台座6および撮像ユニット7を軸線L回りに回転させるローリング用磁気駆動機構8と、回転台座6を予め定めた基準回転位置に復帰させるための姿勢復帰機構9と、を備える。ここで、レンズユニット2、レンズホルダ3および固定部材4は固定体1
1を構成し、回転台座6および撮像ユニット7は固定体に対して可動する可動体12を構成する。
【0024】
(固定体)
図3図4および図5に示すように、レンズユニット2は、レンズ15(光学素子)を鏡筒16に組み付けて構成されている。鏡筒16の被写体側L1の先端には、円筒状のキャップ17およびカバーガラス18が取り付けられる。鏡筒16およびキャップ17は樹脂製であり、黒色の非光沢樹脂材料から形成されている。従って、鏡筒16およびキャップ17の表面は黒色の非光沢面となっている。
【0025】
図4および図5に示すように、レンズホルダ3は、円筒状のホルダ筒部21と、ホルダ筒部21の反被写体側L2の端部から径方向外側に拡がるホルダ板部22と、ホルダ板部22の外周縁から反被写体側L2に筒状に延びる側板部23を備える。レンズホルダ3は、樹脂製であり、黒色の非光沢樹脂材料から形成されている。従って、レンズホルダ3の表面は黒色の非光沢面となっている。レンズホルダ3は、ホルダ筒部21の内周側にレンズユニット2の鏡筒16を保持する。レンズユニット2がホルダ筒部21に保持された状態では、レンズユニット2の軸線Lは、レンズホルダ3のホルダ筒部21の中心軸線と一致する。従って、レンズ15はホルダ筒部21に同軸に保持される。
【0026】
ホルダ板部22は、軸線L方向から見た場合の形状が、正方形の4箇所の角部が切り欠かれた形状である。側板部23には、一方の側面およびその両側の角部に設けられた面取り面の反被写体側L2の縁を所定の高さで切り欠いた切り欠き部24が形成されている。また、側板部23には、切り欠き部24が形成された側面を除く他の3方向の側面にそれぞれ1箇所ずつボス部25が設けられている。レンズホルダ3は、固定部材4との間にシート状の弾性部材26を挟み込んだ状態で、ねじ27によって固定部材4にねじ止めされる。
【0027】
固定部材4は全体として板状であり、軸線L方向に対して垂直に配置される。図5に示すように、固定部材4は、側板部23を軸線L方向から見た形状の一方側(切り欠き部24の側)の縁を切り欠いた形状である。従って、図2に示すように、側板部23の反被写体側L2の端部に固定部材4が固定されると、切り欠き部24と固定部材4との間に軸線L方向の反被写体側L2および軸線L方向と直交する方向に開口する開口31が形成される。この開口31から、後述するフレキシブルプリント基板32、33が光学ユニット1の外部へ取り出される。
【0028】
固定部材4の外周縁は、切り欠き部24の側の縁を除き、レンズホルダ3の側板部23の反被写体側L2の端面と軸線L方向で対向する。図3に示すように、固定部材4の外周縁と、側板部23の端面との間には弾性部材26が挟まれている。図4に示すように、弾性部材26は、開口31が形成された範囲を除く周方向の全範囲に配置されている。従って、開口31が形成された範囲を除き、弾性部材26によって側板部23と固定部材4との隙間がシールされる。
【0029】
固定部材4には、外周縁の3箇所に径方向外側に突出する突出部34が形成されている。突出部34は、レンズホルダ3の側板部23に形成されたボス部25と軸線L方向で対向する。固定部材4とレンズホルダ3に固定するねじ27は、突出部34に形成された貫通穴34aに通されてボス部25に設けられたネジ穴にねじ止めされる。ねじ27による固定箇所は、弾性部材26が挟まれた位置より径方向外側である。
【0030】
ここで、貫通穴34aの内径寸法は、ねじ27の軸部の外径寸法よりも大きい。従って、固定部材4とレンズホルダ3とを締結する際に、軸線Lと直交する方向において、固定
部材4とレンズホルダ3との相対位置を調節できる。また、固定部材4とレンズホルダ3との間には、弾性部材26が介在するので、3箇所のねじ27のねじ締め状態を調節することにより、固定部材4に対するレンズホルダ3(レンズユニット2)の軸線Lの傾きを調節することができる。
【0031】
(可動体)
図6は撮像ユニット7、回転台座6、回転支持機構5および固定部材4を被写体側L1から見た場合の分解斜視図である。図7は撮像ユニット7、回転台座6、回転支持機構5および固定部材4を反被写体側L2から見た場合の分解斜視図である。図8は撮像ユニット7を被写体側L1から見た場合の分解斜視図である。図9は撮像ユニット7を反被写体側L2から見た場合の分解斜視図である。図3に示すように、レンズユニット2の反被写体側L2には、被写体側L1から反被写体側L2に向かって、撮像ユニット7と回転台座6とがこの順に配置されている。図8に示すように、撮像ユニット7は、撮像素子41と、撮像素子41が搭載された基板42と、撮像素子41を被写体側L1から覆うように被せられたカバー部材43と、を備える。図4に示すように、撮像ユニット7は、基板42が回転台座6に固定されることにより、回転台座6に固定される。これにより、撮像ユニット7は回転台座6と一体に回転する。図3に示すように、回転台座6と固定部材4との間には、ローリング用磁気駆動機構8が設けられている。
【0032】
図8に示すように、撮像素子41は軸線L方向から見た場合の形状が長方形である。撮像素子41は被写体側L1から反被写体側L2に向かってカバーガラス45、センサー受光部46、基板部47がこの順に積層されている。センサー受光部46の4つの側面46a〜46dにおいて互い直交して交わる2つの側面46a、46bには、センサー受光部46の受光面と直交する基準面48が設けられている。基準面48は、2つの側面46a、46bのうちの一方の側面46aに2つ、他方の側面46bに1つ設けられている。一方の側面46aに設けられた2つの基準面48は、軸線L回りの周方向で互いに離間している。他方の側面46bに設けられた1つの基準面48は、2つの側面46a、46bの間の角部から離間する位置に設けられている。
【0033】
カバー部材43は樹脂製であり、黒色の非光沢樹脂材料から形成されている。従って、カバー部材43の表面は黒色の非光沢面である。カバー部材43は、撮像素子41への光入射領域を規定するアパーチャ51が形成された端板部52と、アパーチャ51の外周側において端板部52から被写体側L1へ立ち上がる筒部53と、端板部52の外周縁から反被写体側L2に延びる角筒状の枠部54と、を備える。アパーチャ51は、端板部52に設けられた長方形の開口である。端板部52を軸線L方向から見た場合の形状は長方形である。枠部54は、軸線L方向から見た場合に端板部52と同一の輪郭形状を備えており、図9に示すように、内側に長方形の開口55を備える。ここで、撮像素子41を軸線L方向から見たときの形状が正方形の場合には、枠部54の内側の開口55を正方形としてもよい。なお、撮像素子41の形状に拘わらず端板部52の形状を正方形としてもよく、内側の開口55の形状に拘わらず、軸線L方向から見た場合の枠部54の輪郭形状を端板部52と同一の正方形としてもよい。
【0034】
枠部54の長方形の開口55には、基板42に固定された撮像素子41が反被写体側L2から挿入される。カバー部材43は、接着剤によって、撮像素子41に固定される。ここで、枠部54において長方形の開口55の各辺を規定する4つの内壁面55a〜55dのうち互いに直交して隣り合う第1内壁面55aおよび第2内壁面55bは、撮像素子41の基準面48に軸線Lと直交する方向から当接する当接部である。撮像素子41は、当接部(第1内壁面55aおよび第2内壁面55b)に基準面48を当接させることにより、カバー部材43に対する姿勢が軸線L回りで規定される。また、撮像素子41は、当接部(第1内壁面55aおよび第2内壁面55b)に基準面48を当接させることにより、
カバー部材43における軸線Lと直交する方向の位置が規定される。さらに、枠部54に挿入された撮像素子41は、端板部52に反被写体側L2から当接した状態とされる。これにより、カバー部材43における撮像素子41の軸線L方向の位置が規定される。
【0035】
図7に示すように、回転台座6は、軸線Lに対して垂直な板状の基板支持部61と、基板支持部61の中央から反被写体側L2に突出する回転軸62と、を備える。図6に示すように、基板支持部61の被写体側L1の面には、基板42より1回り小さい凹部63が形成されている。凹部63の底面には板状の放熱部材64が固定され、放熱部材64の基板42の側の面には熱伝導性シート65が貼り付けられている。放熱部材64は、アルミや銅などの金属製の板材である。ここで、基板42は基板支持部61の被写体側L1の面に固定される。基板42が基板支持部61に固定されると、基板42は、熱伝導性シート65と接触する。従って、撮像素子41による発熱は、基板42から熱伝導性シート65を経由して放熱部材64に伝達され、回転台座6を介して外部に放出される。
【0036】
基板42が基板支持部61に固定された状態では、図3に示すように、基板42上の撮像素子41に固定されたカバー部材43の筒部53と、回転軸62とが同軸に位置している。また、カバー部材43の筒部53の外周面は、ホルダ筒部21の内周面と軸線Lと直交する径方向で所定の隙間を隔てて対向する。さらに、カバー部材43の端板部52は、筒部53の外周側において、レンズホルダ3のホルダ板部22と軸線L方向で所定の隙間を隔てて対向する。これにより、レンズホルダ3とカバー部材43との間には、屈曲した狭い隙間67(ラビリンスシール)が形成される。
【0037】
なお、本例では、レンズホルダ3のホルダ板部22の形状が正方形の4箇所の角部を切り欠いた形状であるのに対して、カバー部材43の端板部52を軸線L方向から見た場合の形状は長方形である。従って、端板部52の長方形の2つの長辺が対向する方向と、端板部52の長方形の2つの短辺が対向する方向とでは、隙間67(ラビリンスシール)の長さに差が生じている。すなわち、端板部52の2つの長辺が対向する方向では、端板部52とホルダ板部22との間の隙間(ラビリンスシールの一部分)の長さは、短辺の長さに対応するものとなる。一方、2つの短辺が対向する方向における端板部52とホルダ板部22との間の隙間(ラビリンスシールの一部分)の長さは、長辺の長さに対応するものとなる。従って、端板部52の2つの長辺が対向する方向の隙間67(ラビリンスシール)の長さは、端板部52の2つの短辺が対向する方向の隙間67(ラビリンスシール)の長さよりも短い。このため、本例では、端板部52の2つの長辺が対向する方向の隙間67(ラビリンスシール)の長さを、カバー部材43とレンズホルダ3との間に塵埃などの異物が侵入することを防止するのに必要な長さに設定している。
【0038】
ここで、図8に示すように、撮像素子41が搭載された基板42には、撮像素子41用のフレキシブルプリント基板32が接続されている。フレキシブルプリント基板32が接続される基板42の縁は、図2に示すように、レンズホルダ3の切り欠き部24と固定部材4との間に形成される開口31に面している。フレキシブルプリント基板32は、基板42から開口31を通って径方向外側へ引き出された後、U字状に折り返されて固定部材4の反被写体側L2に引き回される。フレキシブルプリント基板32は、開口31の外側で、U字状に折り返された直後の部分が回転台座6に固定されている。図6および図7に示すように、回転台座6には、基板支持部61の開口31側の縁から反被写体側L2に突出する突出部68が形成されており、突出部68の反被写体側L2の端面は、フレキシブルプリント基板32を固定する固定面となっている。
【0039】
(回転支持機構)
図6に示すように、固定部材4には、軸受保持部71が形成されている。軸受保持部71は、固定部材4を軸線L方向に貫通する保持孔72を備える。固定部材4の反被写体側
L2の面には、図7に示すように、保持孔72を囲んで反被写体側L2に突出する環状突出部73が形成されている。ここで、回転支持機構5は、図3に示すように、軸受保持部71に保持される軸受部75と、軸受部75の径方向外側で固定部材4と回転台座6との間に構成される回転支持部76を備える。すなわち、回転支持機構5は、軸受部75および回転支持部76の2組の回転支持部によって構成されている。
【0040】
軸受部75は、保持孔72の内周面に固定される外輪78と、回転軸62の外周面に固定される内輪79と、外輪78と内輪79との間に配置されるボール80と、を備える。回転軸62の軸線L方向の先端は、固定部材4の反被写体側L2に露出している。より詳細には、回転軸62は、軸受部75の内輪79から反被写体側L2に突出しており、固定部材4に形成された環状突出部73より反被写体側L2に突出している。
【0041】
図6図7に示すように、回転支持部76は、固定部材4の被写体側L1の面に形成された固定部材側環状溝82と、回転台座6の基板支持部61の反被写体側L2の面に形成された回転台座側環状溝83と、固定部材側環状溝82と回転台座側環状溝83との間に配置された転動体84と、固定部材側環状溝82と回転台座側環状溝83との間で転動体84を保持するリテーナ85を備える。固定部材側環状溝82は、軸受部75の外輪78の外周面より径方向外側に形成されている。
【0042】
(ローリング用磁気駆動機構)
図10はローリング用磁気駆動機構8および姿勢復帰機構9と、回転支持機構5の一部を示す平面図および断面図である。図10(a)は軸線L方向の被写体側L1から見た平面図であり、回転台座6が基準回転位置にある場合の平面図である。また、図10(b)は図10(a)のB−B線における断面図である。回転台座6の回転軸62が軸受保持部71に取り付けられた軸受部75を介して回転可能に保持されると、回転台座6の基板支持部61と固定部材4との間にローリング用磁気駆動機構8が構成される。ローリング用磁気駆動機構8は、回転台座6の回転軸62を間に挟んで径方向の両側に配置された一対のコイル91と、固定部材4の軸受保持部71を間に挟んで径方向の両側に配置された一対の磁石92と、を備える。コイル91と磁石92とは、軸線L方向で所定のギャップを空けて対向する。
【0043】
図10(a)に示すように、磁石92は周方向に2分割されており、コイル91と対向する面の磁極が径方向に延びる着磁分極線93を境にして異なるように着磁されている。コイル91は空芯コイルであり、径方向に延びる部分が有効辺として利用される。一方のコイル91の内側にはホール素子94が配置される。ホール素子94は、コイル91への給電用のフレキシブルプリント基板33に固定される。ホール素子94は、回転台座6が予め定めた基準回転位置にあるときに、磁石92の着磁分極線93と対向する。ローリング用磁気駆動機構8は、ホール素子94の信号に基づいて検出されたローリング方向の原点位置に基づいて制御され、回転台座6に撮像素子41および基板42を固定した可動体12を軸線L回りに回転させてローリング補正を行う。
【0044】
ローリング用磁気駆動機構8のフレキシブルプリント基板33は、撮像素子41用のフレキシブルプリント基板32と同様に、U字状に折り返されて固定部材4の反被写体側L2に引き回される。フレキシブルプリント基板33は、開口31の外側で、U字状に折り返された直後の部分が回転台座6から突出する突出部68に設けられた固定面に固定されている。従って、図5に示すように、突出部68には、フレキシブルプリント基板32、33が重なった状態でまとめて固定される。
【0045】
ここで、図7に示すように、回転台座6には、基板支持部61から固定部材4に向けて突出する回転規制用凸部95が形成されている。また、固定部材4には、図6に示すよう
に、回転規制用凸部95の先端が挿入される回転規制用凹部96が形成されている。回転規制用凹部96は周方向に所定の角度範囲にわたって延在する。回転規制用凸部95および回転規制用凹部96は、固定部材4に対する回転台座6の回転範囲(ローリング補正の回転範囲)を規制する回転規制部を構成する。
【0046】
(姿勢復帰機構)
姿勢復帰機構9は、回転台座6に固定された一対の磁性部材98と、ローリング用磁気駆動機構8を構成する2個の磁石92によって構成される2組の磁気バネである。図6に示すように、各磁性部材98は、基板支持部61の被写体側L1の面において凹部63を間に挟んだ両側に形成された一対の凹部99に固定されている。各磁性部材98は、軸線L方向でコイル91を間に挟んで磁石92と反対側に位置する。図10(a)に示すように、磁性部材98は周方向の寸法が径方向の寸法より大きい長方形である。回転台座6が基準回転位置に位置するとき、磁性部材98の周方向の中心98aは、軸線L方向から見て、磁石92の着磁分極線93と重なる位置にある。
【0047】
回転台座6が基準回転位置から回転すると、磁性部材98の中心98aが、磁石92の着磁分極線93から周方向にずれるので、磁性部材98と磁石92との間には、磁性部材98の中心98aと、磁石92の着磁分極線93の角度位置を一致させる方向の磁気吸引力が働く。すなわち、回転台座6が基準回転位置からずれると、姿勢復帰機構9は、回転台座6を基準回転位置に復帰させる方向の磁気吸引力が働く。なお、本形態では、磁性部材98と磁石92からなる磁気バネを2組用いているが、磁気バネは1組であってもよい。すなわち、磁性部材98は1個のみであってもよい。また、ローリング用磁気駆動機構8は、コイル91と磁石92を少なくとも1組備えていればよい。
【0048】
(光学ユニットの製造方法)
図11は光学ユニット1の製造方法のフローチャートである。図12は光学ユニット1の製造方法の説明図である。図11に示すように、光学ユニット1の組み立て動作は、カバー部材固定工程ST1、基板固定工程ST2、レンズホルダ配置工程ST3(配置工程)、レンズホルダ固定工程ST4、レンズユニット保持工程ST5を備える。
【0049】
カバー部材固定工程ST1では、カバー部材43の枠部54の開口55に、基板42に固定された撮像素子41を挿入する。そして、図12に示すように、当接部(第1内壁面55aおよび第2内壁面55b)に撮像素子41の基準面48を当接させる。また、カバー部材43の端板部52の反被写体側L2の面を撮像素子41のカバーガラス45に当接させる。そして、接着剤により、カバー部材43を撮像素子41に固定する。
【0050】
基板固定工程ST2では、カバー部材43の筒部53の軸線と回転支持機構5による回転台座6の回転中心とを一致させて、回転台座6に基板42を固定する。なお、基板固定工程ST2では、回転台座6は、既に、回転支持機構5を介して固定部材4に回転可能に支持された状態とされている。また、固定部材4と回転台座6との間には、ローリング用磁気駆動機構8および姿勢復帰機構9が構成されている。ここで、本例では、カバー部材43の筒部53と回転軸62とを同軸に位置させることにより、カバー部材43の筒部53の軸線と回転支持機構5により回転可能に支持された回転台座6の回転中心とを一致させて、回転台座6に基板42を固定する。すなわち、基板固定工程ST2では、回転軸62とカバー部材43の筒部53とを基準に、撮像ユニット7を回転台座6に固定する。
【0051】
レンズホルダ配置工程ST3では、レンズホルダ3のホルダ筒部21とカバー部材43の筒部53とを同軸に配置する。本例では、回転軸62とホルダ筒部21とを同軸に配置することによって、レンズホルダ3のホルダ筒部21とカバー部材43の筒部53とを同軸に配置する。すなわち、回転軸62を基準にホルダ筒部21を位置決めする。
【0052】
レンズホルダ固定工程ST4では、回転軸62を基準にホルダ筒部21を位置決めした状態で、レンズホルダ3と固定部材4とを固定する。すなわち、ねじ27を固定部材4の貫通穴34aに貫通させて、レンズホルダ3のボス部25に設けられたネジ穴に捩じ込み、レンズホルダ3と固定部材4とを締結する。ここで、貫通穴34aの内径寸法は、ねじ27の軸部の外径寸法よりも大きい。従って、回転軸62を基準にホルダ筒部21を位置決めした状態で、レンズホルダ3を固定部材4に固定できる。
【0053】
レンズユニット保持工程ST5では、レンズホルダ3にレンズユニット2を固定する。本例では、レンズユニット2の鏡筒16の反被写体側の部分がレンズホルダ3のホルダ筒部21の内周側に挿入され、レンズユニット2がホルダ筒部21に同軸に保持される。ここで、レンズ15はホルダ筒部21に同軸に保持される。すなわち、レンズ15の光軸とホルダ筒部21の軸線とが一致した状態とされる。これにより、光学ユニット1の組み立てが完成する。
【0054】
このような製造方法によれば、カバー部材固定工程ST1において、カバー部材43と撮像素子41とが軸線Lと交差する方向で位置決めされるので、撮像素子41の中心と、アパーチャ51の中心と筒部53の中心とを一致させることができる。また、基板固定工程ST2において、回転支持機構5により回転可能に支持された回転台座6の回転中心(回転軸62の回転中心線)とカバー部材43の筒部53の軸線とを一致させるので、回転台座6の回転中心と撮像素子41の中心とを一致させることができる。さらに、レンズホルダ配置工程ST3において、レンズホルダ3のホルダ筒部21とカバー部材43の筒部53とを同軸に配置するので、レンズユニット保持工程ST5においてレンズホルダ3にレンズユニット2(レンズ15)を同軸に保持させたときに、レンズ15の光軸と撮像素子41の中心とを一致させることができる。また、レンズホルダ3のホルダ筒部21とカバー部材43の筒部53とを同軸に配置するので、カバー部材43の筒部53の外周面とホルダ筒部21との間の隙間67を微細な寸法に管理でき、ラビリンスシールを構成できる。
【0055】
なお、レンズホルダ配置工程ST3では、軸線L方向からレンズホルダ3のホルダ筒部21とカバー部材43の筒部53とを観察して、ホルダ筒部21の中心と筒部53との中心とを、位置合わせしてもよい。
【0056】
また、レンズホルダ配置工程ST3では、カバー部材43の筒部53の内径と、レンズホルダ3のホルダ筒部21とを同軸に配置してもよい。この場合には、カバー部材43の筒部53の内側に治具を嵌合させて、当該治具とホルダ筒部21との位置合わせを行うことにより、カバー部材43の筒部53とホルダ筒部21を同軸に配置することができる。
【0057】
(作用効果)
本例によれば、アパーチャ51および筒部53を備えるカバー部材43は、撮像素子41に光軸と一致する軸線Lと交差する方向から当接する当接部(第1内壁面55aおよび第2内壁面55b)を備え、この当接部を撮像素子41に当接させた状態で撮像素子41に固定される。これにより、カバー部材43と撮像素子41とは軸線Lと交差する方向で位置決めされているので、撮像素子41の中心と、アパーチャ51の中心と筒部53の中心とを一致させることができる。また、基板42は、カバー部材43の筒部53の軸線と回転台座6の回転中心とを一致させて回転台座6に固定されているので、回転台座6の回転中心と撮像素子41の中心とを一致させることができる。さらに、光学素子を同軸に保持するホルダ筒部21とカバー部材43の筒部53とを同軸に位置させた状態でレンズホルダ3が固定部材4に固定されているので、レンズ15(レンズユニット2)の中心と撮像素子41の中心とを一致させることができる。
【0058】
また、カバー部材43の筒部53とレンズホルダ3のホルダ筒部21を同軸に配置しているので、カバー部材43の筒部53の外周面とホルダ筒部21との間の隙間67を微細な寸法に管理できる。これにより、カバー部材43の筒部53の外周面とホルダ筒部21との間の隙間およびカバー部材43の端板部52とホルダ板部22との間にラビリンスシールを構成できる。よって、カバー部材43とレンズホルダ3との間に塵埃などの異物が侵入して、撮像素子41に付着することを防止あるいは抑制できる。
【0059】
さらに、本例では、カバー部材43の端板部52は、被写体側L1から撮像素子41に当接している。これにより、撮像素子41と端板部52との間に隙間が形成されないので、異物がこれらの間に進入することがない。また、端板部52と撮像素子41とが当接すれば、カバー部材43と撮像素子41との位置精度が向上するので、アパーチャ51と撮像素子41との位置精度が出しやすい。
【0060】
また、カバー部材43は、その表面が黒色の非光沢面である。すなわち、カバー部材43の表面は低反射面とされている。従って、カバー部材43で反射して撮像素子41に入射する迷光を抑制できる。
【0061】
(変形例)
図13は変形例1、2の光学ユニットの説明図である。図13(a)は、変形例1の光学ユニット1Aのレンズホルダ3およびカバー部材43を被写体側L1から見た場合の平面図である。図13(b)は、変形例2の光学ユニット1Bのレンズホルダ3およびカバー部材43を被写体側L1から見た場合の平面図である。上記の光学ユニット1では、カバー部材43の端板部52を軸線L方向から見た場合の輪郭形状は長方形であるが、変形例1の光学ユニット1Aでは、図13(a)に示すように、カバー部材43の端板部52を軸線L方向から見た場合の輪郭形状が正方形である。なお、変形例1の光学ユニット1Aは、端板部52の輪郭形状を除き、他の部分の構成は上記の光学ユニット1と同一である。このようにすれば、正方形の2辺が対向する2方向で、カバー部材43の端板部52とホルダ板部22との間に形成される隙間67(ラビリンスシールの一部分)の長さD1を、同一とすることができる。これにより、ラビリンスシールの長さの差に起因して、異物の侵入を抑制する効果が低下することを抑制できる。
【0062】
変形例2の光学ユニット1Bでは、図13(b)に示すように、カバー部材43の端板部52を軸線L方向から見た場合の輪郭形状が筒部53と同心の円形である。なお、変形例2の光学ユニット1Bは、端板部52の輪郭形状を除き、他の部分の構成は上記の光学ユニット1と同一である。このようにすれば、軸線Lと直交する方向で、カバー部材43の端板部52とホルダ板部22との間に形成される隙間(ラビリンスシールの一部分)の長さD2を、同一とすることができる。これにより、ラビリンスシールの長さの差に起因して、異物の侵入を抑制する効果が低下することを抑制できる。
【符号の説明】
【0063】
1・1A・1B…光学ユニット(振れ補正機能付き光学ユニット)、2…レンズユニット、3…レンズホルダ(ホルダ部材)、4…固定部材、5…回転支持機構、6…回転台座、7…撮像ユニット、8…ローリング用磁気駆動機構、9…姿勢復帰機構、11…固定体、12…可動体、15…レンズ(光学素子)、16…鏡筒、17…キャップ、21…ホルダ筒部、22…ホルダ板部、23…側板部、24…切欠き部、25…ボス部、26…弾性部材、31…開口、32…フレキシブルプリント基板、33…フレキシブルプリント基板、34…突出部、34a…貫通穴、41…撮像素子、42…基板、43…カバー部材、45…カバーガラス、46…センサー受光部、46a〜46d…側面、47…基板部、48…基準面、51…アパーチャ、52…端板部、53…筒部、54…枠部、55…開口、55
a〜55d…内壁面、61…基板支持部、62…回転軸、63…凹部、64…放熱部材、65…熱伝導性シート、67…隙間、68…突出部、71…軸受保持部、72…保持孔、73…環状突出部、75…軸受部、76…回転支持部、78…外輪、79…内輪、80…ボール、82…固定部材側環状溝、83…回転台座側環状溝、84…転動体、85…リテーナ、91…コイル、92…磁石、93…着磁分極線、94…ホール素子、95…回転規制用凸部、96…回転規制用凹部、98…磁性部材、98a…中心、99…凹部、L…軸線(光軸)、L1…被写体側、L2…反被写体側、ST1…カバー部材固定工程、ST2…基板固定工程、ST3…レンズホルダ配置工程、ST4…レンズホルダ固定工程、ST5…レンズユニット保持工程
図1
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図3
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図13