特許第6983552号(P6983552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983552
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】電気掃除機用ホース
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/24 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   A47L9/24 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-129097(P2017-129097)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-10368(P2019-10368A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】築野 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】祷 康裕
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−190474(JP,A)
【文献】 特開2009−268612(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102052528(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0277525(US,A1)
【文献】 特開平10−110869(JP,A)
【文献】 特開2003−164398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/24
F16L 11/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のホース壁と複数条の螺旋補強線材とが一体化された、無負荷状態において収縮状態に維持される電気掃除機用ホースであって、
ホース壁は樹脂帯が螺旋状に巻かれた形態の帯状壁と螺旋をなす襞状壁との交互の繰り返しに形成されており、
帯状壁と襞状壁はそれぞれ螺旋補強線材と同条数に設けられて、帯状壁には螺旋補強線材が1つずつ一体化されており、
帯状壁の幅はホース伸縮に伴って実質的に変化せず、
襞状壁は互いに隣接する帯状壁の間にまたがるように設けられると共に、
互いに隣接する帯状壁のうち、ホース一端側に位置するものを第1帯状壁とし、ホース他端側に位置するものを第2帯状壁として、
襞状壁は、第2帯状壁のホース一端側の側縁と、第1帯状壁のホース他端側の側縁とを互いに接続しており、かつ
帯状壁はホース一端側の側縁の周径がホース他端側の側縁の周径よりも小さく、
襞状壁は、ホース伸長時には展開され、ホース収縮時には、前記帯状壁のホース一端側の側縁よりも半径方向内側に襞状に折り込まれるように、襞状壁自体が変形して伸縮可能とされている、
電気掃除機用ホース。
【請求項2】
帯状壁の幅はホース軸方向に螺旋補強線材の径の2倍以上である請求項1の電気掃除機用ホース。
【請求項3】
螺旋補強線材は、帯状壁の小周径側の側縁近傍の内壁面、又は、帯状壁の大周径側の側縁近傍の外壁面に一体化されている請求項1又は2記載の電気掃除機用ホース。
【請求項4】
帯状壁は、襞状壁を構成する樹脂よりも硬質な樹脂を含む請求項1から3いずれか一項に記載の電気掃除機用ホース。
【請求項5】
帯状壁は平坦シート状である請求項1から4いずれか一項に記載の電気掃除機用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース壁と複数条の螺旋補強線材とが一体化された、無負荷状態において収縮状態に維持される電気掃除機用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気掃除機用ホースとしては、軟質の合成樹脂からなるホース本体のホース壁を、1又は複数条の補強線材で補強したものが広く用いられている。
【0003】
このうち、特に収納性等を改善する観点から、ホース本体の管壁に複数条の螺旋補強線材を配置し、各補強線材の収縮方向の付勢力によって、ホースが無負荷状態で収縮状態に維持されるものが知られている。このような電気掃除機用ホースは、無負荷状態では補強線材の付勢力により、ホース壁の一部が螺旋補強線材同士の間に襞状に折り込まれて収縮状態をとる。一方、使用時などにおける伸長力が負荷された状態では、螺旋補強線材が伸長し、管壁の襞状壁が展開して、ホースが伸縮状態となるものである。このような複数条の螺旋補強線材を備えた伸縮性電気掃除機用ホースの例としては、たとえば特許文献1のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−69031
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような複数条の螺旋補強線材を備えた伸縮性電気掃除機用ホース中において、個々の螺旋補強線材は、螺旋の中心軸が概ね一致するように揃えられている。
【0006】
しかしながら、個々の螺旋補強線材は基本的に各条ごとに独立して管壁に固定されているため、各条ごとの螺旋補強線材の中心軸は必ずしも一致せず、螺旋補強線材ごとの中心軸のずれも生じ得る。このようなずれが発生した場合、たとえば図1に示すようにホース管壁外観に凹凸を生じ、見栄え悪化につながるおそれがある。
【0007】
図1に示した電気掃除機用ホース10は、複数条の螺旋補強線材を備える伸縮性ホースの従来例である。電気掃除機用ホース10は、螺旋補強線材103Aと螺旋補強線材103Bの2条の螺旋補強線材を備えるものである。図1には、実質的に同径の螺旋補強線材103A,103Bに中心軸ずれが生じ、見栄えが悪化した状態を示している。電気掃除機用ホース10が収縮状態にあるとき、ホース外周には、ホース壁102の螺旋補強線材に一体化された部分が露出する。このため、螺旋補強線材103A,103Bの中心軸のずれが著しくなると、図1に示すように、ホースの外観においてホース壁の凹凸の段差が顕著に現れることになる。このような状態は、電気掃除機用ホースの見栄えを損ねるため、好ましくない。
【0008】
特に、近年は電気掃除機用ホースの取扱い性向上の要求等から、電気掃除機用ホースの可撓性を増すべく、ホース壁をより薄く柔軟にすることが検討されている。しかしながら、ホース壁の比較的柔軟な箇所、特に襞状壁等の伸縮性部分を薄くすると、ホースの保型力が低下し、上記中心軸ずれが起こりやすくなる。
【0009】
本発明の目的は、上記のような螺旋補強線材の中心軸ずれを抑制できる電気掃除機用ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、複数条の螺旋補強線材を備えた伸縮性電気掃除機用ホースにおいて、ホース壁の伸縮性に乏しい部分を特定の形態にすることにより、螺旋補強線材の中心軸ずれを効果的に抑制できることを知見し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、合成樹脂製のホース壁と複数条の螺旋補強線材とが一体化された、無負荷状態において収縮状態に維持される電気掃除機用ホースであって、ホース壁は樹脂帯が螺旋状に巻かれた形態の帯状壁と螺旋をなす襞状壁との交互の繰り返しに形成されており、帯状壁と襞状壁はそれぞれ螺旋補強線材と同条数に設けられて、帯状壁には螺旋補強線材が1つずつ一体化されており、帯状壁の幅はホース伸縮に伴って実質的に変化せず、襞状壁は互いに隣接する帯状壁の間にまたがるように設けられると共に、互いに隣接する帯状壁のうち、ホース一端側に位置するものを第1帯状壁とし、ホース他端側に位置するものを第2帯状壁として、襞状壁は、第2帯状壁のホース一端側の側縁と、第1帯状壁のホース他端側の側縁とを互いに接続しており、かつ帯状壁はホース一端側の側縁の周径がホース他端側の側縁の周径よりも小さく、襞状壁は、ホース伸長時には展開され、ホース収縮時には、前記帯状壁のホース一端側の側縁よりも半径方向内側に襞状に折り込まれるように、襞状壁自体が変形して伸縮可能とされている、電気掃除機用ホースである(第1発明)。第1発明においては、帯状壁の幅はホース軸方向に螺旋補強線材の径の2倍以上であることが好ましい(第2発明)。また、螺旋補強線材は、帯状壁の小周径側の側縁近傍の内壁面、又は、帯状壁の大周径側の側縁近傍の外壁面に一体化されていることが好ましい(第3発明)。また、帯状壁は襞状壁を構成する樹脂よりも硬質な樹脂を含むことが好ましい(第4発明)。また、帯状壁は平坦シート状であることが好ましい(第5発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電気掃除機用ホース(第1発明)によれば、多条の螺旋補強線材の中心軸ずれを抑制できる。さらに、第2発明のように帯状壁が構成されていると、螺旋補強線材の中心軸を揃えやすくなる。第3発明のように螺旋補強線材が特定の位置に一体化されていれば、螺旋補強線材の中心軸を揃えやすくなる。第4発明のように帯状壁が硬質な樹脂層を備えるものであれば、ホース壁の剛性が高まり螺旋補強線材の中心軸を揃えやすくなる。第5発明のように帯状壁が平坦シート状であれば、螺旋補強線材の中心軸ずれをホース外観上で目立ちにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来の電気掃除機用ホースにおける2条の螺旋補強線材の中心軸がずれた状態を示す断面図である。
図2】第1実施形態の電気掃除機用ホースを示す一部断面図である。
図3】第1実施形態の電気掃除機用ホースを強く収縮変形させた状態を示す一部断面図である。
図4】第1実施形態の電気掃除機用ホースの製造工程を示す模式図である。
図5】第2実施形態の電気掃除機用ホースを示す一部断面図である。
図6】第3実施形態の電気掃除機用ホースを示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しながら、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0015】
図2図4に発明の第1実施形態にかかる具体的構成を示す。図2は第1実施形態の電気掃除機用ホース1を示す一部断面図であり、図の上半分を断面図で、下半分を外観で示している。なお、ここに示す図2はホースに外力が作用していない無負荷状態のホースを示すものである。
【0016】
本実施形態の電気掃除機用ホース1は、ホース壁と2条の螺旋補強線材である螺旋補強線材13A及び螺旋補強線材13Bとが一体化されたものである。螺旋補強線材13A,13Bはホースが収縮する方向に付勢されている。これら2条に配置された螺旋補強線材13A,13Bの付勢力により、本実施形態の電気掃除機用ホース1は、外力が作用しない無負荷状態において収縮状態に維持される。
【0017】
本実施形態の電気掃除機用ホース1において、ホース壁は樹脂帯が螺旋状に巻かれた形態の帯状壁11と、螺旋をなす襞状壁12との交互の繰り返しに形成された形態である。ここで、それぞれの帯状壁11と襞状壁12は螺旋補強線材13と同条数に設けられ、各帯状壁には、螺旋補強線材が1つずつ一体化されている。なお、それぞれの帯状壁11や襞状壁12は、ピッチや巻き径や断面形状等が実質的に同じに形成されている。本実施形態では、螺旋補強線材が2条であるため、帯状壁も襞状壁もそれぞれ2条に設けられている。
【0018】
帯状壁11は、所定の幅のテープ状の帯を、軸体に2条の螺旋状に巻きつけたような形態である。本実施形態では、ホース中心軸に沿う帯状壁11の断面は、ホースの長さ方向に長い矩形状の断面となっており、帯状壁11の断面の長手方向は、概ねホース中心軸mと平行にされている。帯状壁の具体的な断面形状は、後述する他の実施形態のような、他の形状であってもよい。
【0019】
襞状壁12は互いに隣接する帯状壁11の間にまたがるように設けられると共に、ホースの内側に折り込まれている。かかる形態により、襞状壁12は、ホース伸長時には展開され、かつ、ホース収縮時には再び折り込まれて収納されることで、容易に伸縮可能である。
【0020】
帯状壁11と襞状壁12とを比べると、帯状壁11は伸縮性に乏しく、襞状壁12は伸縮性に富むように形成されたものである。帯状壁11が伸縮性に乏しいとは、帯状壁11の幅がホース伸縮に伴って実質的に変化しない形態であり、帯状壁11の変形が実質的にホースの伸縮に寄与しないことを意味する。一方、襞状壁12が伸縮性に富むとは、上記のとおり容易に伸縮可能であり、ホースの伸縮や曲げが、実質的に襞状壁12の変形によりなされることを意味する。
【0021】
通常、帯状壁は、その断面を略矩形形状に形成するなど、襞状壁よりも剛性を高めることにより、伸縮性に乏しいものとすることができる。本実施形態においては、帯状壁11が襞状壁12よりも厚肉にされて、両者の伸縮性の差が特に際立つものとなっているが、本発明の電気掃除機用ホースはこれに限定されない。
【0022】
帯状壁11の幅はホース伸縮時に実質的に変化しないため、ホース収縮時のホース長は帯状壁11間の接触により実質的に規定される。帯状壁11は、ホース一端側の側縁11Aの周径がホース他端側の側縁11Bの周径よりも小さい形状である。個々の帯状壁11がこのような形状であることにより、本実施形態のホース壁において隣接する帯状壁11同士は、互いの小周径の側縁11Aと大周径の側縁11Bとが対向するように配置される。帯状壁11は上記構成を有することで、後述するように、螺旋補強線材13の中心軸を揃える効果を発揮する。
【0023】
以下、本実施形態の電気掃除機用ホース1の各要素についてより詳細に説明する。
【0024】
ホース壁を構成する合成樹脂としては、従来の電気掃除機用ホースに用いられるものと同様な材料によって構成できる。たとえば、ポリプロピレン(PP)樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、軟質塩化ビニル樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマ(TPE)、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂等の熱可塑性樹脂やゴムなどが使用できる。
【0025】
なお、帯状壁と襞状壁を構成する合成樹脂は、同一であっても異なっていてもよい。少なくとも襞状壁は、伸縮性に富むよう、軟質の合成樹脂によって形成されることが好ましい。一方、帯状壁はホースの保型性を高めるため観点から、襞状壁よりも硬質の樹脂を含んで形成されることが好ましい。たとえば、帯状壁11を高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂や硬質塩化ビニル樹脂を含む樹脂組成物により形成し、襞状壁12を低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、軟質塩化ビニル樹脂などにより形成してもよい。
【0026】
襞状壁12は、伸縮性を重視する場合、帯状壁11に比べ薄肉に形成されることが好ましい。かかる構成によれば、襞状壁12の柔軟性が向上し、電気掃除機用ホース1の可撓性が向上する。
【0027】
螺旋補強線材13は、たとえば、硬鋼線の外周を合成樹脂の被覆層で被覆した補強線材からなり、これを所定ピッチの螺旋状に成形したものである。螺旋補強線材13の材質は特に限定されるものではなく、樹脂製であってもよい。
螺旋補強線材13は、各条毎に所定の配置で、電気掃除機用ホース1を収縮方向に付勢するように帯状壁11と一体化されている。
【0028】
電気掃除機用ホース1が収縮方向に付勢されると、隣接する帯状壁11同士は、図2のホース壁の外周面同士がほぼ密接された状態から、図3に示すようなさらにお互いに圧接された状態に変化しようとする。このとき、帯状壁11は上記の形状を有するため、帯状壁11の大周径側の側縁11Bに対して、隣の帯状壁11の小周径側の側縁11Aが入り込もうとする。ホースが収縮方向に付勢されると、このような入り込み作用がホース全周にわたって発揮され、帯状壁11同士が互いにセンタリングされる作用が生じる。なお、図3には、ホースに強い収縮力を与え、強制的に上記入り込み作用を生じさせたホースの収縮変形状態を示している。
【0029】
側縁11Aと側縁11Bとの周径差は、ホース壁の形状、材質等も考慮の上、適宜設定すればよいが、特に、本実施形態のように小周径側の側縁11Aの外周径が大周径側の側縁11Bの内周径よりも小さいことが好ましい。この場合における外周径と内周径の周径は、図2に示すように、ホース中心軸断面において、側縁11A近傍の外壁面及び側縁11B近傍の内壁面を基準として測定すればよい。すなわち、中心軸mから小周径側の側縁11A近傍の外壁面までの垂直距離Xが、中心軸mから大周径側の側縁11B近傍の内壁面までの垂直距離Yよりも小さいものとされることが好ましい。
側縁11Aと側縁11Bとの周径差がこのように設定されている場合には、特に、帯状壁11の上記入り込み作用が得やすくなるため好ましい。すなわち、一方の帯状壁11の側縁11Bに対して、他方の帯状壁11の側縁11Aが入り込もうとする作用を帯状壁の厚みが阻害しにくくなる。
【0030】
帯状壁11の幅は、上記入り込み作用を効果的に発揮させる観点から、ホース軸方向に螺旋補強線材13の径の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることがさらに好ましい。帯状壁11の幅とは、図2中に示すように、ホース中心軸断面において、1つの帯状壁11における側縁11Aと側縁11Bとの直線距離Lのことであり、帯状壁11を帯に見立てた際の幅のことである。本実施形態では、帯状壁11の幅は、ホース中心軸に沿う断面で見て、ホース軸方向に螺旋補強線材13の径の5倍程度に形成されている。
【0031】
本実施形態のように、帯状壁11の幅がホース軸方向に螺旋補強線材13の径よりも十分に大きいものである場合には、帯状壁11の側縁11Bの内壁側に別の帯状壁11の側縁11Aが入り込む空間が確保されやすく、上記入り込み作用が螺旋補強線材13により阻害されにくくなるため好ましい。
【0032】
本実施形態では、帯状壁11の形状は平坦シート状に形成されている。ここで、平坦シート状とは、平坦なシートが螺旋状に巻かれたように、帯状壁11のホース中心軸断面において、帯状壁11の外周面が、ホース長手方向に直線状に延在していることをいう。かかる構成であれば、帯状壁11の外壁がホース長手方向に対して一定の傾斜を有することになり、螺旋補強線材の中心軸ずれが外観上目立ちにくく、見栄えが悪化しにくいため好ましい。
【0033】
帯状壁11に補強線材13が一体化される具体的形態は特に限定されないが、本実施形態では、螺旋補強線材13は帯状壁11の小周径側の側縁11A近傍の内壁面に一体化されている。螺旋補強線材13がこのような配置であると、帯状壁11の上記入り込み作用を得やすくなるため好ましい。すなわち、帯状壁11の大周径側の側縁11Bに対して、帯状壁11の小周径側の側縁11Aが入り込もうとする際、螺旋補強線材が入り込みを邪魔しにくくなる。
【0034】
なお、螺旋補強線材の配置はこれに限定されるものではなく、帯状壁11の形状等に応じて適宜決定すればよいが、本実施形態同様、螺旋補強線材が小周径側の側縁11Aの入り込みの邪魔にならない配置とすることが好ましい。たとえば、補強線材13が大周径側の側縁11B近傍の外壁面に一体化されたものとしてもよい。
【0035】
必須ではないが、本実施形態では、帯状壁11は襞状壁12に比べて厚肉に形成されている。このため、帯状壁11は剛性が高くなり、収縮時に帯状壁11の側縁同士が接触する際に、上述した入り込み作用がより効果的に働き、螺旋補強線材の中心軸を揃えやすくなる。帯状壁11の厚みは特に限定されないが、たとえば襞状壁12の厚みの2倍以上することが好ましく、3倍以上とすることがより好ましい。
【0036】
以下、図4を参照しながら、上記実施形態の電気掃除機用ホース1の製造方法の例について説明する。図4は第1実施形態の電気掃除機用ホース1の製造工程を示す断面図である。電気掃除機用ホース1は、たとえば、スパイラル法とも呼ばれる公知の製造方法によって製造することができる。この方法では、所定の径とピッチで螺旋状の回転送り運動が可能なホース成形軸SFTに、順次ホースの材料を供給し、一体化していくことにより、不定長のホースが連続して形成されていく。
【0037】
まず、螺旋補強線材13A,13Bが、所定の径とピッチで公知の方法により準備される。収縮方向に付勢できるよう補強線材13A,13Bを引張ばね状にするには、通常のコイルばね状に成形した螺旋補強線材を、ホース成形軸SFTに乗り移らせる際に、ばねを反転させるように乗り移らせればよい。収縮力が小さくてもよければ、密なピッチに巻いた螺旋補強線材をそのまま用いればよい。
【0038】
回転送り運動を行うホース成形軸SFTに対し、準備した螺旋補強線材13A,13Bをホース長さ方向に引き伸ばした状態で供給し、2条の螺旋状に配置する。すなわち、この製造方法においては、電気掃除機用ホース1は、伸長した状態で製造される。
【0039】
ホース壁となるべき軟質樹脂を、半溶融状態で所定の断面に押し出して条帯T12を作製する。ホース壁において帯状壁11,11となるべき厚肉部と襞状壁12,12となるべき薄肉部とを備える1本の条帯T12により、2条の帯状壁11と2条の襞状壁12が形成される。図4において、条帯T12のうち、半径方向内側に凹入した部分が、ホースになった際に襞状壁12,12となる。条帯T12が螺旋補強線材13A,13Bを覆うように、条帯T12をホース成形軸SFTに供給し、螺旋補強線材13A,13Bと同一のピッチの螺旋となるように螺旋状に巻回させる。条帯T12と螺旋補強線材13A,13Bは、接着もしくは融着される。条帯T12の両側縁を互いに融着し、軟質樹脂により気密性のあるチューブが完成する。
【0040】
ホース壁を形成する条帯は、上記実施形態のように帯状壁に対応する帯形状部と襞状壁に対応する襞形状部とを備えるように、所定の断面にて押出形成されたものを用いてよい。一方、帯状壁に対応する帯形状の第1条帯と、襞状壁に対応する襞形状の第2条帯とを併用するなど、ホース壁を部分ごとに分割した形状に対応する複数の条帯を併用してもよい。
【0041】
条帯T12をホース成形軸に供給する際には、その形状が適切に維持されるよう、適宜冷却が行われることが好ましい。また、螺旋補強線材13A,13B、条帯T12の間の接合は、接着であっても溶着であってもよく、接着する場合には、接着箇所に適宜接着剤が塗布される。
【0042】
条帯T12,T12が巻回一体化された下流側で、水や空気により、ホースを冷却して、ホース壁の細部の形状を固定する。
【0043】
以上の工程が同時進行で行われると、ホース成形軸SFTの端部から完成した電気掃除機用ホース1が連続して取り出される。取り出されたホース1は、収縮方向に付勢する螺旋補強線材の収縮力により、図2に示すような収縮形態に収縮する。収縮は、ホース1の用途や仕様に応じて、ホース1に外力が働かない無負荷状態で、帯状壁11の側縁11A,11Bが互いに密着するようなされてもよいし、側縁11A,11Bの間に隙間が残るようになされてもよい。
【0044】
本実施形態の電気掃除機用ホースの作用及び効果について説明する。本実施形態の電気掃除機用ホースによれば、螺旋補強線材の中心軸ずれを効果的に抑制することができる。
【0045】
本発明の電気掃除機用ホースは、多条の螺旋状補強線材を備え、かつ、伸縮性に乏しい帯状壁と伸縮性に富む襞状壁とが交互の繰り返しに形成されたホース壁を備えるものである。本発明者らは、このような電気掃除機用ホースにおける螺旋補強線材の中心軸ずれの抑制を鋭意検討した結果、帯状壁11のホース一端側の側縁11Aの周径をホース他端側の側縁11Bの周径よりも小さい形状とすることが有効であることを見出した。
【0046】
図1に示したような従来技術における電気掃除機用ホースの螺旋補強線材103A,103Bは、それぞれが独立しているが、ホース壁に固定されることにより、互いの位置、たとえば、中心軸の位置が揃えられる。しかし、ホース壁の柔軟性や伸縮性を高めるためにホース壁に柔軟な襞が設けられると、ホース壁の剛性が低下し、各条の螺旋補強線材103A,103Bを揃える効果は弱くなる。このように、従来技術では、襞状壁の柔軟性が高く、ホースが周方向にも変形しやすい場合などは、螺旋補強線材103A,103Bの中心軸がずれ得る。従来の電気掃除機用ホースでは、このような螺旋補強線材の中心軸ずれの対策は何ら考慮されていない。
【0047】
一方、本発明の電気掃除機用ホースは、ホースが収縮し、隣接する帯状壁11同士が接近して圧接される際に、一方の帯状壁11の大周径側の側縁11Bに他方の帯状壁の小周径側の側縁11Aが入り込もうとする。
【0048】
上記入り込み作用により、隣接する帯状壁11同士は、圧接されることでお互いの螺旋の中心軸を揃えるように挙動する。この結果、それぞれの帯状壁11に一体化された螺旋補強線材13A,13Bの中心軸も揃えられることになる。以上から、本発明の電気掃除機用ホースは、多条の螺旋補強線材の中心軸ずれを抑制できるものであり、ホース壁自体に各条の螺旋補強線材の中心軸の維持矯正機能を備えたものということができる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0050】
図5に発明の第2実施形態にかかる具体的構成を示す。図5は第2実施形態の電気掃除機用ホース2を示す一部断面図であり、図の上半分を断面図で、下半分を外観で示している。なお、ここに示す図5はホースに外力が作用していない無負荷状態のホースを示すものである。本実施形態においては、帯状壁21の形状と螺旋補強線材23A,23Bの配置が第1実施形態と異なっている。襞状壁22は、第1実施形態と同様である。
【0051】
帯状壁21は、段差を有する階段状に形成されている。かかる形状により、帯状壁21の一方の側縁21Aは、他方の側縁21Bよりも径が小さいものとなっている。このように、帯状壁は段差を有するものであってもよく、かかる形状であっても、帯状壁は第1実施形態と同様な入り込み作用を得られるものである。
【0052】
帯状壁がこのような段差を有する形状の場合であっても、帯状壁21の幅は、第1実施形態と同様、ホース中心軸断面における1つの帯状壁11における小周径側の側縁11Aと大周径側の側縁11Bとの直線距離Lとして扱ってよい。また、帯状壁21の両側縁の外周径又は内周径についても、第1実施形態と同様、中心軸mから小周径側の側縁21A近傍の外壁面までの垂直距離Xが、中心軸mから大周径側の側縁21B近傍の内壁面までの垂直距離Yよりも小さくなるようにされることが好ましい。
【0053】
第2実施形態における螺旋補強線材23A,23Bは、帯状壁21の段差部の外壁面に一体化されたものである。このように、螺旋補強線材は、必ずしも帯状壁のいずれかの側縁近傍に一体化されたものでなくてもよく、帯状壁の幅方向中央部に一体化されていてもよい。螺旋補強線材がこのような配置であっても、帯状壁21の入り込み作用は得られるものである。
【0054】
図6に発明の第3実施形態にかかる具体的構成を示す。図6は第3実施形態の電気掃除機用ホース3を示す一部断面図であり、図の上半分を断面図で、下半分を外観で示している。なお、ここに示す図6はホースに外力が作用していない無負荷状態のホースを示すものである。本実施形態においては、帯状壁31や襞状壁32の構成が第1実施形態と異なっている。螺旋補強線材33A,33Bの配置は第1実施形態と同様である。
【0055】
帯状壁31は、積層構造に形成されており、内壁層31sと外壁層31hとを有する。内壁層31sは、襞状壁32と連続に形成されており、襞状壁32と同一の樹脂より構成される。一方、外壁層31hは、襞状壁32よりも硬質な樹脂により構成される。かかる構成によれば、帯状壁31の剛性が向上され、ホースを収縮させる際の螺旋補強線材の中心軸を揃える作用が高められたものとなる。
【0056】
襞状壁32に比べ、帯状壁31の剛性を効果的に高くする手段は、第3実施形態のように、襞状壁32を構成する樹脂よりも硬質な樹脂で形成された層を含む積層構造とする方法でもよいが、これに限定されない。たとえば、第1実施形態のように、帯状壁の肉厚を襞状壁に比べ厚くしてもよい。あるいは、帯状壁31を襞状壁32とを別材料として構成し、帯状壁31を構成する樹脂が襞状壁32を構成する樹脂よりも硬質な樹脂とすることが好ましく、帯状壁31を構成する樹脂に、襞状壁32よりも硬質な樹脂を含む樹脂組成物を用いることも好ましい。
【0057】
ホース壁において、帯状壁に対応する部分が本実施形態のように複数の樹脂層を含む積層構造である場合、内壁層と外壁層の両者を一体として帯状壁と扱ってもよい。この場合の帯状壁の側縁は、ホース収縮時に中心軸を揃える作用が高められるよう、特に硬質な層を重視して決定すればよい。本実施形態では、図6に示すように、外壁層31hの側縁部に注目して、帯状壁31に小周径側の側縁31Aと大周径側の側縁31Bが設けられるようにしている。
【0058】
又、第3実施形態において、襞状壁32は、図6で左から右に向かう方向、すなわち、帯状壁31の小周径側の側縁31Aから大周径側の側縁31Bに向かう方向に倒れるように折り込まれた形状である。本実施形態のように、襞状壁32はホースの内側に折り込まれる際、ホース長手方向のいずれか一方に倒れこむように折り込まれたものであってもよい。かかる構成によれば、襞状壁32の半径方向への突出を抑制しつつ、ホースの伸縮性を向上させやすい。
【0059】
上記各実施形態では、いずれもホースに負荷が与えられていない状態で、隣接する帯状壁は、その側縁同士、すなわち、小周径側の側縁と大周径側の側縁とがほぼ密接する位置関係とされている。隣接する帯状壁11がこのような位置関係にあることで、電気掃除機用ホース1が収縮方向に付勢されると上記入り込み作用を生じさせやすい。
【0060】
ただし、隣接する帯状壁11の位置関係は、これに限定されず、ホースに負荷が与えられていない状態で隣接する帯状壁の間に一定の隙間を有するものであってもよい。ホースの可撓性を重視する場合は、一定の隙間を有するものであることが好ましい。
【0061】
また、帯状壁の側縁の断面形状は、第1〜3実施形態のように、ホースの半径方向に沿って延在する直線状であってもよいが、他の形態であってもよい。たとえば、帯状壁の側縁の断面形状は、小周径側の側縁で、ホース外周側が、面取り若しくはRがけされていて、ホース外側に向いた傾斜面を有することが好ましい。一方、大周径側の側縁で、ホース内周側が、面取り若しくはRがけされていて、ホース内側に向いた傾斜面を有することが好ましい。
このような傾斜面が設けられていると、ホースが収縮方向に付勢された際に、この傾斜面がガイドのように働いて、ホース壁や螺旋補強線材の中心軸を揃える作用がより効果的に生じる。
【0062】
上記各実施形態では、各螺旋補強線材は1つの硬鋼線のみを有するものであったが、螺旋補強線材は複数の硬鋼線や金属線を有するものであってもよい。また、螺旋補強線材は扁平な形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の電気掃除機用ホースは、高い伸縮性により取扱い性に優れ、しかも螺旋補強線材の中心軸がずれにくいため、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0064】
1,2,3 電気掃除機用ホース
11,21,31 帯状壁
11A,21A,31A 小周径側の側縁
11B,21B,31B 大周径側の側縁
12,22,32 襞状壁
13,23,33 螺旋補強線材
L 側縁間距離(帯状壁の幅)
図1
図2
図3
図4
図5
図6