(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリンダ油を前記シリンダライナ表面またはピストンに供給した後に、シリンダ油供給量及び分布の評価を行い、その評価結果に基づいて再びシリンダ油供給量及び分配の算出を行ない、シリンダ油供給量及び分配を調整させることを特徴とする請求項1に記載の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法。
前記シリンダ油供給量及び分布の評価はドレン油の分析、及び、シリンダ表面の観察により行なうことを特徴とする請求項2に記載の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法。
前記注油量算出手段は、前記シリンダ油を前記シリンダライナ表面またはピストンに供給した後に、シリンダ油供給量及び分布の評価を行い、その評価結果に基づいて再びシリンダ油供給量及び分配の算出を行ない、シリンダ油供給量及び分配を調整させるように構成されたことを特徴とする請求項4に記載の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置。
前記注油量算出手段は、前記シリンダ油供給量及び分布の評価をドレン油の分析、及び、シリンダ表面の観察により行なうように構成されたことを特徴とする請求項5に記載の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置。
【背景技術】
【0002】
2ストロークエンジンのシリンダ油供給は、シリンダライナとピストンの間におけるピストンの往復動による摺動摩擦低減の目的以外に、燃料油中に含まれる硫黄等の燃焼により発生した酸性物と、吸入空気中に含まれる水分、及び燃料の燃焼による燃料中の水素成分の燃焼により生成される水分がシリンダ壁面での結露により発生した液体の水と結びつくことにより生成されるシリンダ内の腐食摩耗の原因となる酸性物の中和を行う目的がある。また、それ以外にも分散清浄効果により、燃焼残渣物による部品の汚損防止などの目的もある。
【0003】
シリンダ内の腐食摩耗の原因となる酸性物は、主に燃料中の硫黄分の燃焼により生成される二酸化硫黄(SO
2)および三酸化硫黄(SO
3)が、液体の水と接触し生成される亜硫酸(H
2SO
3)と硫酸(H
2SO
4)である。
【0004】
従来技術では、シリンダ下部室からのドレン油の残留塩基価、磁性鉄粉濃度、イオン化した鉄を含む全鉄分の濃度、シリンダの表面状態の目視検査結果に基づいて、エンジンの出力当たりのシリンダ油供給量(シリンダ油注油率)を手動で設定することが行われていた。尚、ドレン油中の磁性鉄粉の増加は、ピストンの往復動摺動摩擦の増加を示し、イオン化した鉄分の増加は、腐食摩耗の増加を示すことが判っている。
【0005】
これと関連して、鉄分濃度値の計測結果に基づいて注油器によるシリンダ油供給量を増減させ、シリンダ油供給量を最適な値に収束するように制御する方法の一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【0006】
また、シリンダ油注油率は、燃料中の硫黄分や機関出力率にもとづいたパラメータに従って補正され、その補正されたシリンダ油注油率にエンジン出力を乗算してシリンダ油供給量を算出することが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のシリンダ油供給量調整方法では、燃料中の硫黄分については考慮されているが、液体の水分については考慮されておらず、最適とは言えない。
【0009】
また、従来の方法では、シリンダ内に発生する液体の水の量と分布を考慮していないため、シリンダ内の腐食摩耗の原因となるシリンダ壁面へ付着する亜硫酸(H
2SO
3)と硫酸(H
2SO
4)の量を算出することがリアルタイムでできないため、その中和に必要なシリンダ油供給量とシリンダ油分配の算出ができず、安全サイドでの設定となり、必要以上のシリンダ油供給を行うこととなり経済的ではなかった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、常にエンジンが健全に運転できる必要最小量のシリンダ油供給量を算出することができ、シリンダ油使用量を減らすことを可能にし得る2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、エンジン運転中の各種計測データを収集するとともに、燃料に含まれる成分とシリンダ油の塩基価データを取得し、収集された各種計測データに基づいて、シリンダ内の結露の量と分布を算出し、該結露の量と分布に基づいてシリンダ内の腐食摩耗原因となるシリンダ壁面へ付着する酸性物の量と分布を推定し、推定された酸性物の量と分布に応じて中和に必要なシリンダ油の注油量と分布を推定し、推定されたシリンダ油の注油量と分布に応じ
て、シリンダ油供給量と、シリンダライナに複数装備されている各注油ノズルへの分配とを算出し、算出された注油量のシリンダ油を算出されたシリンダ油供給量と
前記各注油ノズルへの分配でシリンダライナ表面またはピストンに供給することを特徴とする2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法にかかるものである。
【0012】
前記2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法において、前記シリンダ油を前記シリンダライナ表面またはピストンに供給した後に、シリンダ油供給量及び分布の評価を行い、その評価結果に基づいて再びシリンダ油供給量及び分配の算出を行ない、シリンダ油供給量及び分配を調整させることができる。
【0013】
前記2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法において、前記シリンダ油供給量及び分布の評価はドレン油の分析、及び、シリンダ表面の観察により行なうことができる。
【0014】
また、本発明は、シリンダライナ表面またはピストンにシリンダ油を供給
し得るよう前記シリンダライナに複数装備された注油ノズルと、エンジン運転中の各種計測データを収集するとともに、燃料に含まれる成分とシリンダ油の塩基価データを入力されるデータ収集手段と、該データ収集手段に収集された各種計測データに基づいてシリンダ内の結露の量と分布を算出する凝縮水量算出手段と、該凝縮水量算出手段により算出された結露の量と分布に基づいてシリンダ内の腐食摩耗原因となるシリンダ壁面へ付着する酸性物の量と分布を算出する酸性物量算出手段と、該酸性物量算出手段により算出された酸性物の量と分布に応じて中和に必要なシリンダ油の注油量と分布を算出するとともに、中和に必要なシリンダ油の注油量と分布に応じたシリンダ油供給量と
前記各注油ノズルへの分配を算出する注油量算出手段と、該注油量算出手段により算出された注油量と分配のシリンダ油を前記注油ノズルに供給する注油器とを備え、前記注油ノズルは、シリンダ油を前記注油量算出手段により算出されたシリンダ油供給量及び分配でシリンダライナ表面またはピストンに供給するように構成されたことを特徴とする2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置にかかるものである。
【0015】
前記2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置において、前記注油量算出手段は、前記シリンダ油を前記シリンダライナ表面またはピストンに供給した後に、シリンダ油供給量及び分布の評価を行い、その評価結果に基づいて再びシリンダ油供給量及び分配の算出を行ない、シリンダ油供給量及び分配を調整させるように構成することができる。
【0016】
前記2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置において、前記注油量算出手段は、前記シリンダ油供給量及び分布の評価をドレン油の分析、及び、シリンダ表面の観察により行なうように構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法及び装置によれば、例えば夜間と昼間などの外環境の変化に応じて、常にエンジンが健全に運転できる必要最小量の注油量を算出することができ、シリンダ油の使用量を減らすことを可能にし得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1〜
図3は本発明の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置
に関連する参考例である。
【0021】
図1(a)
は2ストロークエンジンの一例を示すもので、
図1(a)中、1はエンジン、2はシリンダライナ、3はピストン、4はクランクシャフト5に連結されてピストンピン6を介しピストン3を昇降させるコネクティングロッドである。尚、
図1(a)にはユニフロー式の2ストロークエンジンが図示されているが、掃気の方式はユニフロー式に限定されるものではなく、横断掃気式やループ掃気式であってもよい。
【0022】
シリンダライナ2には、シリンダライナ2及びピストン3との間にシリンダ油7を供給する注油ノズル8が取り付けられており、注油ノズル8にはシリンダ油タンク9のシリンダ油7を注油ノズル8に供給する注油器10が接続されている。尚、シリンダライナ2に注油ノズル8を取り付ける箇所は、
図1(b)に示す如く、シリンダライナ2の周方向に複数設けることができる。また、シリンダライナ2に注油ノズル8を取り付ける箇所は、シリンダライナ2の高さ方向にも複数設けることができる。
【0023】
注油器10には、シリンダ油タンク9のシリンダ油7を所定の注油量、シリンダ油供給量で注油ノズル8からシリンダライナ2表面またはピストン3に供給するように注油器10を制御する注油量制御手段11が接続されている。
【0024】
注油量制御手段11は、エンジン1運転中の各種計測データ12を収集するとともに、燃料に含まれる成分とシリンダ油7の塩基価データ13を入力されるデータ収集手段14と、データ収集手段14に収集された各種計測データ12に基づいてシリンダ内の結露の量を算出する凝縮水量算出手段15と、データ収集手段14に収集された各種計測データ12に基づいてシリンダ内の腐食摩耗原因となるシリンダ壁面へ付着する酸性物の量を算出する酸性物量算出手段16と、酸性物量算出手段16により算出された酸性物の量に応じて中和に必要なシリンダ油7の注油量を算出するとともに、中和に必要なシリンダ油7の注油量に応じたシリンダ油供給量を算出する注油量算出手段17とを備えている。ここで各種計測データ12は、エンジン運転中の吸入空気温度、吸入空気湿度、過給空気圧力、過給空気温度、過給空気湿度、シリンダ壁面温度分布、シリンダ内圧力などのシリンダ内の結露の量の推定に有用なデータであり、また他のデータを追加してもよい。
【0025】
注油量算出手段17は、シリンダ油7をシリンダライナ2表面またはピストン3に供給した後に、シリンダ油供給量の評価を行い、その評価結果に基づいて再びシリンダ油供給量の算出を行ない、シリンダ油供給量を増減させるようになっている。
【0026】
シリンダ油7は、エンジン1に取り付けられた注油器10からシリンダライナ2表面またはピストン3に対して注油ノズル8を介して供給される。このとき、注油量は注油量算出手段17からの信号により制御されている。そして、注油ノズル8からシリンダライナ2に注油されたシリンダ油7は、シリンダライナ2の下部から図示しない排油管を介して排油タンク等に戻されるようになっている。
【0027】
このようにして、本
参考例では、エンジン1運転状態における各種計測データ12に基づき、算出したエンジン1運転中のシリンダ内の腐食摩耗原因となる壁面へ付着する酸性物の量に応じてその中和に必要である最適な注油量となるようにシリンダ油供給量を制御することができる。
【0028】
次に、本
参考例における注油量算出の際の各データの流れを
図2を参照して説明する。
【0029】
注油量を算出する際には、まず、エンジン1運転中に取得した各種計測データ12がデータ収集手段14に格納されるようになっている。
【0030】
次いで、その中から、過給空気の圧力、過給空気の温度、過給空気の湿度、シリンダ温度分布、ピストン温度分布などの結露量分布算出引数データ18を抽出し、次に、ピストン3がBDCから上昇するに従い圧縮されていく各工程でのシリンダ内の圧縮空気の状態を算出する。圧縮空気の状態と、シリンダ壁温度分布、ピストン温度分布から、シリンダ壁面に発生する結露の量に、ピストン3の表面に発生する結露がシリンダ壁面に付着することを加味して、シリンダ壁面の液体の水の量と分布を推定する。ピストン下降工程においても、燃料の燃焼による温度上昇と燃料中の水素成分の燃焼により生成される水蒸気による絶対湿度の上昇を考慮したうえで、前記同様の計算を行い、1サイクルにおける各クランクタイミングでのシリンダ壁面の結露の量、分布を得る。
【0031】
次いで、燃料中の硫黄分データ19より推定される燃焼により生成される二酸化硫黄(SO
2)と三酸化硫黄(SO
3)の量と、シリンダ壁面の結露の量に反応時間と反応温度を加味し亜硫酸(H
2SO
3)と硫酸(H
2SO
4)などの酸性物の量が算出されるようになっている。
【0032】
そして、算出されたシリンダ内の腐食摩耗原因となるシリンダ壁面へ付着する酸性物量データ20とデータ収集手段14に格納されたシリンダ油7の塩基価データ13に基づき、注油量算出手段17において中和に必要となる注油量が算出されるようになっている。
【0033】
次に、上述の本
参考例による2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置を用いた2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法を、
図3を参照しながら説明する。
【0034】
処理ステップS1として、エンジン1運転中に取得した各種計測データ12と、シリンダ壁面への結露の量の推定モデルに基づき、シリンダ壁面への結露の量と分布を算出する。ここで推定モデルは、実験やシミュレーション等からシリンダ壁面に結露する水分の量と分布を求め、モデル化したものである。また同時に、エンジン1運転中に取得した各種計測データ12と、酸性ガスの濃度と量の推定モデルに基づき、酸性ガスの濃度と量の推定を行なう。ここで推定モデルは、実験やシミュレーション等から酸性ガスの濃度と量を求め、モデル化したものである。尚、上記酸性ガスは、SO
2或いはSO
3であることが好ましい。
【0035】
処理ステップS2として、処理ステップS1で求めた結露の量と、酸性ガスの濃度と量を加味して、シリンダ内の腐食摩耗原因となる酸性物の量の推定モデルに基づき、シリンダ内の腐食摩耗原因となる酸性物の量の推定を行なう。ここで推定モデルは、実験やシミュレーション等から酸性物の量を求め、モデル化したものである。
【0036】
処理ステップS3として、処理ステップS2で求めた酸性物の量の推定値にシリンダ油7の塩基価データ13を加味して、シリンダ内の腐食摩耗原因となる酸性物の中和に必要な注油量の推定モデルに基づき、シリンダ内の腐食摩耗原因となる酸性物の中和に必要な注油量の推定を行う。ここで推定モデルは、実験やシミュレーション等から酸性物の中和に必要な注油量を求め、モデル化したものである。
【0037】
処理ステップS4として、処理ステップS3で求めた注油量の推定値を元にシリンダ油供給量を算出し、算出結果に基づき注油器10にシリンダ油7をシリンダライナ2表面またはピストン3に供給する指令を与える。更に、ドレン油の分析、及び、シリンダ表面の観察によりシリンダ油供給量の評価を行なう。そして、ドレン油の分析、及び、シリンダ表面の観察の評価結果を元に各モデルとモデルに与えるパラメータを最適化し、シリンダ油供給量を最適な値としていく。
【0038】
このように、本
参考例を実施することによって周囲環境、燃料、エンジン1の運転状態に応じて最適なシリンダ油供給量をリアルタイムで設定することができる。
【0039】
図4、
図5は本発明の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置の
一実施例を示すもので、図中、
図1〜
図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0040】
この実施例において、本発明の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置を適用した2ストロークエンジンの全体構成は、
図1に示される構成と同様であり、その詳細については既に
図1〜
図3の参考例で説明してある通りである。
【0041】
本
実施例の特徴とするところは、凝縮水量算出手段15が、データ収集手段14に収集された各種計測データ12に基づいてシリンダ内の結露の量と分布を算出し、酸性物量算出手段16が、データ収集手段14に収集された各種計測データ12に基づいてシリンダ内の腐食摩耗原因となるシリンダ壁面へ付着する酸性物の量と分布を算出し、注油量算出手段17が、酸性物量算出手段16により算出された酸性物の量と分布に応じて中和に必要なシリンダ油7の注油量と分布を算出するとともに、中和に必要なシリンダ油7の注油量と分布に応じたシリンダ油供給量と分配を算出する点である。また、本
実施例の特徴とするところは、注油量算出手段17が、シリンダ油7をシリンダライナ2表面またはピストン3に供給した後に、シリンダ油供給量及び分布の評価を行い、その評価結果に基づいて再びシリンダ油供給量及び分配の算出を行ない、シリンダ油供給量及び分配を調整させるようにした点である。
【0042】
ここで、各種計測データ12は、エンジン1運転中の吸入空気温度、吸入空気湿度、過給空気圧力、過給空気温度、過給空気湿度、シリンダ壁面温度分布、シリンダ内圧力などのシリンダ内の結露の量と分布の推定に有用なデータであり、また他のデータを追加してもよい。
【0043】
また、シリンダ油分配には、空間的分配とタイミング分配の2種類がある。空間的分配は、
図1(b)に示す如く、シリンダライナ2に複数装備されている注油ノズル8において、それぞれの注油ノズル8からのシリンダ油供給量に差異を設けることである。タイミング分配とは、往復動しているピストン3と注油ノズル8の位置関係に基づき、大きく区分してピストン3が注油ノズル8より下の位置関係のタイミング、ピストン3と注油ノズル8が概一致しているタイミング、ピストン3が注油ノズル8より上の位置関係のタイミングのうち、それぞれのタイミングでのシリンダ供給量に差異を設けることである。
【0044】
シリンダ油7は、エンジン1に取り付けられた注油器10からシリンダライナ2表面またはピストン3に対して注油ノズル8を介して供給される。このとき、注油量と分配は注油量算出手段17からの信号により制御されている。そして、注油ノズル8からシリンダライナ2に注油されたシリンダ油7は、シリンダライナ2の下部から図示しない排油管を介して排油タンク等に戻されるようになっている。
【0045】
このようにして、本
実施例では、エンジン1運転状態における各種計測データ12に基づき、算出したエンジン1運転中のシリンダ内の腐食摩耗原因となる壁面へ付着する酸性物の量と分布に応じてその中和に必要である最適な注油量と分布となるようにシリンダ油供給量及び分配を制御することができる。
【0046】
次に、本
実施例における注油量及び分布を算出する際の各データの流れを
図4を参照して説明する。
【0047】
注油量及び分配を算出する際には、まず、エンジン1運転中に取得した各種計測データ12がデータ収集手段14に格納されるようになっている。
【0048】
次いで、その中から、過給空気の圧力、過給空気の温度、過給空気の湿度、シリンダ温度分布、ピストン温度分布などの結露量分布算出引数データ18を抽出し、次に、ピストン3がBDCから上昇するに従い圧縮されていく各工程でのシリンダ内の圧縮空気の状態を算出する。圧縮空気の状態と、シリンダ壁温度分布、ピストン温度分布から、シリンダ壁面に発生する結露の量に、ピストン表面に発生する結露がシリンダに付着することを加味して、シリンダ壁面の液体の水の量と分布を推定する。ピストン下降工程においても、燃料の燃焼による温度上昇と燃料中の水素成分の燃焼により生成される水蒸気による絶対湿度の上昇を考慮したうえで、前記同様の計算を行い、1サイクルにおける各クランクタイミングでのシリンダ壁面の結露の量、分布を得る。
【0049】
次いで、燃料中の硫黄分データ19より推定される燃焼により生成される二酸化硫黄(SO
2)と三酸化硫黄(SO
3)の量と、シリンダ壁面の結露の量、分布に反応時間と反応温度を加味し亜硫酸(H
2SO
3)と硫酸(H
2SO
4)などの酸性物の量と分布が算出されるようになっている。
【0050】
そして、算出されたシリンダ内の腐食摩耗原因となるシリンダ壁面へ付着する酸性物量データ20とデータ収集手段14に格納されたシリンダ油7の塩基価データ13に基づき、注油量算出手段17において中和に必要となる注油量と分配が算出されるようになっている。
【0051】
次に、本
実施例による2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置を用いた2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法を、
図5を参照しながら説明する。
【0052】
処理ステップS11として、エンジン1運転中に取得した各種計測データ12と、シリンダ壁面への結露の量と分布の推定モデルに基づき、シリンダ壁面への結露の量と分布を算出する。ここで推定モデルは、実験やシミュレーション等からシリンダ壁面に結露する水分の量と分布を求め、モデル化したものである。また同時に、エンジン1運転中に取得した各種計測データ12と、酸性ガスの濃度と量と分布の推定モデルに基づき、酸性ガスの濃度と量と分布の推定を行なう。ここで推定モデルは、実験やシミュレーション等から酸性ガスの濃度と量と分布を求め、モデル化したものである。尚、上記酸性ガスは、SO
2或いはSO
3であることが好ましい。
【0053】
処理ステップS12として、処理ステップS11で求めた結露の量と分布と、酸性ガスの濃度と量と分布を加味して、シリンダ内の腐食摩耗原因となる酸性物の量と分布の推定モデルに基づき、シリンダ内の腐食摩耗原因となる酸性物の量と分布の推定を行なう。ここで推定モデルは、実験やシミュレーション等から酸性物の量と分布を求め、モデル化したものである。
【0054】
処理ステップS13として、処理ステップS12で求めた酸性物の量の推定値にシリンダ油7の塩基価データ13を加味して、シリンダ内の腐食摩耗原因となる酸性物の中和に必要な注油量の推定モデルに基づき、シリンダ内の腐食摩耗原因となる酸性物の中和に必要な注油量の推定を行なう。同時に、処理ステップS12で求めたシリンダ内の腐食摩耗原因となる酸性物の量と分布の推定値を元に、シリンダ内の腐食摩耗原因となる酸性物の中和に必要な分布を推定する。ここで推定モデルは、実験やシミュレーション等から酸性物の中和に必要な注油量と分布を求め、モデル化したものである。
【0055】
処理ステップS14として、処理ステップS13で求めた注油量と分布の推定値を元にシリンダ油供給量及び分配を算出し、算出結果に基づき注油器10にシリンダ油7をシリンダライナ2表面またはピストン3に供給する指令をあたえる。更に、ドレン油の分析、及び、シリンダ表面の観察により、シリンダ油供給量及び分布の評価を行なう。そして、ドレン油の分析、及び、シリンダ表面の観察の評価結果を元に各モデルとモデルに与えるパラメータを最適化し、シリンダ油供給量及び分配を最適な値としていく。
【0056】
このように、本
実施例を実施することによって周囲環境、燃料、エンジン1の運転状態に応じて最適なシリンダ油供給量及び分布をリアルタイムで設定することができる。
【0057】
以上のように、本
実施例の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法においては、エンジン1運転中の各種計測データ12を収集するとともに、燃料に含まれる成分とシリンダ油7の塩基価データ13を取得し、収集された各種計測データ12に基づいて、シリンダ内の結露の量と分布を算出し、該結露の量と分布に基づいてシリンダ内の腐食摩耗原因となるシリンダ壁面へ付着する酸性物の量と分布を推定し、推定された酸性物の量と分布に応じて中和に必要なシリンダ油7の注油量と分布を推定し、推定されたシリンダ油7の注油量と分布に応じてシリンダ油供給量と分配を算出し、算出された注油量のシリンダ油7を算出されたシリンダ油供給量と分配でシリンダライナ2表面またはピストン3に供給するようにしている。このようにすれば、リアルタイムで算出されたシリンダ内の腐食摩耗原因となるシリンダ壁面へ付着する酸性物の中和に必要なシリンダ油7の注油量と分布に応じたシリンダ油供給量と分配でシリンダライナ2表面またはピストン3に供給することができる。
【0058】
また、本
実施例の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法においては、前記シリンダ油7を前記シリンダライナ2表面またはピストン3に供給した後に、シリンダ油供給量及び分布の評価を行い、その評価結果に基づいて再びシリンダ油供給量及び分布の算出を行ない、シリンダ油供給量及び分配を調整させるようにしている。このようにすれば、リアルタイムで中和に必要なシリンダ油7の注油量と分布に応じたシリンダ油供給量と分配に修正することができる。
【0059】
また、本
実施例の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法においては、前記シリンダ油供給量及び分布の評価はドレン油の分析、及び、シリンダ表面の観察により行なうようにしている。このようにすれば、ピストン3の往復動摺動摩擦の増加と、シリンダ内の腐食摩耗の増加に基づいて、シリンダ油供給量及び分配の評価をすることができる。
【0060】
また、本
実施例の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置においては、シリンダライナ2表面またはピストン3にシリンダ油7を供給する注油ノズル8と、エンジン1運転中の各種計測データ12を収集するとともに、燃料に含まれる成分とシリンダ油7の塩基価データ13を入力されるデータ収集手段14と、該データ収集手段14に収集された各種計測データ12に基づいてシリンダ内の結露の量と分布を算出する凝縮水量算出手段15と、該凝縮水量算出手段15により算出された結露の量と分布に基づいてシリンダ内の腐食摩耗原因となるシリンダ壁面へ付着する酸性物の量と分布を算出する酸性物量算出手段16と、該酸性物量算出手段16により算出された酸性物の量と分布に応じて中和に必要なシリンダ油7の注油量と分布を算出するとともに、中和に必要なシリンダ油7の注油量と分布に応じたシリンダ油供給量と分配を算出する注油量算出手段17と、該注油量算出手段17により算出された注油量と分配のシリンダ油7を前記注油ノズル8に供給する注油器10とを備え、前記注油ノズル8は、シリンダ油7を前記注油量算出手段17により算出されたシリンダ油供給量及び分配でシリンダライナ2表面またはピストン3に供給するように構成している。このように構成すると、リアルタイムで算出されたシリンダ内の腐食摩耗原因となるシリンダ壁面へ付着する酸性物の中和に必要なシリンダ油7の注油量と分布に応じたシリンダ油供給量と分配でシリンダライナ2表面またはピストン3に供給することができる。
【0061】
また、本
実施例の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置においては、前記注油量算出手段17は、前記シリンダ油7を前記シリンダライナ2表面またはピストン3に供給した後に、シリンダ油供給量及び分布の評価を行い、その評価結果に基づいて再びシリンダ油供給量及び分配の算出を行ない、シリンダ油供給量及び分配を調整させるように構成している。このように構成すると、リアルタイムで中和に必要なシリンダ油7の注油量と分布に応じたシリンダ油供給量と分配に修正することができる。
【0062】
また、本
実施例の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御装置においては、前記注油量算出手段17は、前記シリンダ油供給量及び分布の評価をドレン油の分析、及び、シリンダ表面の観察により行なうように構成している。このように構成すると、ピストン3の往復動摺動摩擦の増加と、シリンダ内の腐食摩耗の増加に基づいて、シリンダ油供給量及び分配の評価をすることができる。
【0063】
こうして、例えば夜間と昼間などの外環境の変化に応じて、常にエンジン1が健全に運転できる必要最小量の注油量を算出することができ、シリンダ油7の使用量を減らすことを可能にし得る。
【0064】
尚、本発明の2ストロークエンジンのシリンダ油供給量制御方法及び装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。