(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脆弱物を収容するための容器と、容器を密閉する蓋部材と、液体保持空間とを含む、デバイスであって、蓋部材は、容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部を有し、該凸部の水平断面積は垂直下方に向かうほど小さく、該凸部のテーパー部分が容器の縁部に密着するように寸法決めされており、該凸部が脆弱物および液体を収容した容器内空間の気体および液体を該テーパー部分に沿って押し出して該テーパー部分と容器の縁部とが密着することで液密空間を形成し、液体保持空間は、蓋部材によって押し出された液体が容器へ戻らないように保持することができる、前記デバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような中、本発明者らは、液体中の脆弱物の形状を保持する手段を開発するにあたり、蓋をした容器内に気泡が残留すると、それが液体の移動空間となり、結果的に液体中の脆弱物が揺動するなどの問題に直面した。したがって、本発明の目的は、そのような問題を解決し、液体中の脆弱物の形状を安定的に保持するためのデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進める中で、容器内に気泡が残留しないように完全に液密にすることは困難であることに着眼した。そして、さらに研究を進めた結果、蓋の傾斜を利用して容器内空間の気体および液体を押し出すことで、気泡を残留させることなく完全な液密空間を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、以下に関する。
[1]脆弱物を収容するための容器と、容器を密閉する蓋部材とを含む、デバイスであって、蓋部材は、容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部を有し、該凸部の水平断面積は垂直下方に向かうほど小さく、該凸部が脆弱物および液体を収容した容器内空間の気体および液体を押し出して該蓋部材と容器の縁部とが密着することで液密空間を形成する、前記デバイス。
[2]容器の縁部と密着する蓋部材の密着部分が、容器の水平面に対して傾斜している、上記[1]に記載のデバイス。
[3]凸部の形状が頂部を有するドーム形状である、上記[1]または[2]に記載のデバイス。
[4]蓋部材が、容器の内径より大きな外径を有する基部をさらに含み、該基部または該容器または該基部および該容器を変形させて容器に嵌合させることで、容器の内周面と基部の外周面とを密着させることができる、上記[1]〜[3]のいずれか一つに記載のデバイス。
【0011】
[5]蓋部材と容器とを螺着させる螺合機構をさらに含む、上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載のデバイス。
[6]蓋部材が開閉可能な開口部を有する、上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載のデバイス。
[7]脆弱物がシート状細胞培養物である、上記[1]〜[6]のいずれか一つに記載のデバイス。
[8]シート状細胞培養物が、積層体である、上記[7]に記載のデバイス。
【0012】
[9]脆弱物を収容するための容器と、容器を密閉する蓋部材と、液体受容空間とを含む、デバイスであって、蓋部材は、容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部を有し、該凸部の水平断面積は垂直下方に向かうほど小さく、該凸部が脆弱物および液体を収容した容器内空間の気体および液体を押し出して該蓋部材と容器の縁部とが密着することで液密空間を形成し、液体受容空間は、蓋部材によって押し出された液体を受容することができる、前記デバイス。
[10]容器の縁部と密着する蓋部材の密着部分が、容器の水平面に対して傾斜している、上記[9]に記載のデバイス。
[11]凸部の形状が頂部を有するドーム形状である、上記[9]または[10]に記載のデバイス。
【0013】
[12]容器が、下部および該下部の内径より大きな内径を有する上部を含み、該上部が、液体受容空間を形成する、上記[9]〜[11]のいずれか一つに記載のデバイス。
[13]容器が、上部と下部との間に設けられる段差部をさらに含み、該段差部は、下部から上部にかけて内径が大きくなるテーパー形状を有する、上記[12]に記載のデバイス。
[14]蓋部材が、容器の開口を覆う天板部をさらに含む、上記[9]〜[13]のいずれか一つに記載のデバイス。
[15]脆弱物がシート状細胞培養物である、上記[9]〜[14]のいずれか一つに記載のデバイス。
[16]シート状細胞培養物が、積層体である、上記[15]に記載のデバイス。
【0014】
[17]脆弱物を収容するための容器と、容器を密閉する蓋部材と、液体保持空間とを含む、デバイスであって、蓋部材は、容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部を有し、該凸部の水平断面積は垂直下方に向かうほど小さく、該凸部が脆弱物および液体を収容した容器内空間の気体および液体を押し出して該蓋部材と容器の縁部とが密着することで液密空間を形成し、液体保持空間は、蓋部材によって押し出された液体が容器へ戻らないように保持することができる、前記デバイス。
[18]容器の縁部と密着する蓋部材の密着部分が、容器の水平面に対して傾斜している、上記[17]に記載のデバイス。
[19]凸部の形状が頂部を有するドーム形状である、上記[17]または[18]に記載のデバイス。
【0015】
[20]容器が、内側部および内側部の外径側に環状溝様の外側部を含み、該外側部が、液体保持空間を形成する、上記[17]〜[19]のいずれか一つに記載のデバイス。
[21]内側部と外側部とが解除可能に連結されている、上記[20]に記載のデバイス。
[22]蓋部材が、容器の開口を覆う天板部をさらに含む、上記[17]〜[21]のいずれか一つに記載のデバイス。
[23]脆弱物がシート状細胞培養物である、上記[17]〜[22]のいずれか一つに記載のデバイス。
[24]シート状細胞培養物が、積層体である、上記[23]に記載のデバイス。
【0016】
[25]脆弱物を収容するための容器と、容器を密閉する蓋部材と、ガイド機構とを含む、デバイスであって、蓋部材は、容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部を有し、該凸部の水平断面積は垂直下方に向かうほど小さく、該凸部が脆弱物および液体を収容した容器内空間の気体および液体を押し出して該蓋部材と容器の縁部とが密着することで液密空間を形成し、ガイド機構は、蓋部材と容器とを協働させて、蓋部材を容器に対して水平にガイドすることができる、前記デバイス。
[26]容器の縁部と密着する蓋部材の密着部分が、容器の水平面に対して傾斜している、上記[25]に記載のデバイス。
[27]凸部の形状が頂部を有するドーム形状である、上記[25]または[26]に記載のデバイス。
【0017】
[28]ガイド機構が、蓋部材と容器との螺合機構である、上記[25]〜[27]のいずれか一つに記載のデバイス。
[29]ガイド機構が、蓋部材の周縁から垂下する筒状スカート壁と容器の外周面との摺動機構である、上記[25]〜[28]のいずれか一つに記載のデバイス。
[30]筒状スカート壁の内周面と、容器の外周面とが螺合する、上記[29]に記載のデバイス。
[31]脆弱物がシート状細胞培養物である、上記[25]〜[30]のいずれか一つに記載のデバイス。
[32]シート状細胞培養物が、積層体である、上記[31]に記載のデバイス。
【0018】
[33]脆弱物を移送するための脆弱物移送用キットであって、
脆弱物を収容するための内容器と、
内容器を密閉する内蓋部材と、
内容器を収容するための外容器と、
外容器を密閉する外蓋部材と、を含み、
内蓋部材は、内容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部を有し、該凸部の水平断面積は垂直下方に向かうほど小さく、該凸部が脆弱物および液体を収容した容器内空間の気体および液体を押し出して該内蓋部材と内容器の縁部とが密着することで液密空間を形成する、前記脆弱物移送用キット。
[34]内容器の縁部と密着する内蓋部材の密着部分が、内容器の水平面に対して傾斜している、上記[33]に記載の脆弱物移送用キット。
[35]凸部の形状が頂部を有するドーム形状である、上記[33]または[34]に記載の脆弱物移送用キット。
【0019】
[36]外容器が、内蓋部材によって押し出された液体を収容し、該液体が内容器へ戻らないように保持することができる液体保持空間として機能する、上記[33]〜[35]のいずれか一つに記載の脆弱物移送用キット。
[37]内容器を外容器内に固定することができる、上記[33]〜[36]のいずれか一つに記載の脆弱物移送用キット。
[38]内蓋部材を外蓋部材に固定することができる、上記[33]〜[37]のいずれか一つに記載の脆弱物移送用キット。
[39]脆弱物がシート状細胞培養物である、上記[33]〜[38]のいずれか一つに記載の脆弱物移送用キット。
[40]シート状細胞培養物が、積層体である、上記[39]に記載のデバイス。
【発明の効果】
【0020】
本発明のデバイスによれば、簡単な作業と、簡単な機構で効率よく液密空間を形成することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。また、容器内を完全に液密状態にできるため、泡(気体)が容器内にはいらず、容器の揺れによって泡が容器内で動いて脆弱物を破損することがない。特に、脆弱物がシート状細胞培養物の積層体である場合に、気泡が移動して、積層体がズレたり欠損したりすることがない。したがって、液体中の脆弱物の形状を保持して変形を防止しつつ、長期保存することができる。
【0021】
また、本発明の液体受容空間を具備するデバイスは、蓋部材で押し出された液体を受容できるため、周囲を汚染することがない。したがって、シート状細胞培養物の作製に使用されるバイオクリーンルームなど、清浄度が厳密に管理されている場所での使用に適している。さらに、本発明の液体保持空間を具備するデバイスは、蓋部材で押し出された液体が容器内に戻ることがなく、液体の流動が起こり難いだけでなく、シート状細胞培養物の汚染を防ぐことができる。
【0022】
さらにまた、本発明のガイド機構を具備するデバイスは、蓋部材を容器に対して水平に着脱することができるため、作業者の着脱作業を均一化することができる。そして、本発明のキットは、内容器と内蓋部材とを外気に触れさせることなく移送することができるため、シート状細胞培養物が使用される集中治療室などの清浄度が厳密に管理されている場所での使用に適している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一側面は、脆弱物を収容するための容器と、容器を密閉する蓋部材とを含む、デバイスであって、蓋部材は、容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部を有し、該凸部の水平断面積は垂直下方に向かうほど小さく、該凸部が脆弱物および液体を収容した容器内空間の気体および液体を押し出して該蓋部材と容器の縁部とが密着することで液密空間を形成する、前記デバイスに関する。
【0026】
本発明の別の側面は、容器内の液体中の脆弱物の形状を保持する方法であって、脆弱物と液体とを収容した容器を用意すること、容器を密閉する蓋部材であって、容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部を有し、該凸部の水平断面積は垂直下方に向かうほど小さい、前記蓋部材を用意すること、および、蓋部材の凸部で容器内空間の気体および液体を押し出して蓋部材を容器の縁部と密着させることで液密空間を形成することを含む、前記方法に関する。
【0027】
本明細書における脆弱物とは、物理的強度が低く、液体の揺れなどによって、破れ、破損、変形などが生じ得る物体をいう。かかる物体としては、薄肉部を有する物体、帯形状を有する物体、シート形状を有する物体などが挙げられる。かかるシート形状を有する物体としては、とくに限定されないが、シート状構造物、例えば、シート状細胞培養物などの、生体由来材料からなる平膜上の膜組織や、プラスチック、紙、織布、不織布、金属、高分子、脂質といった種々の材質のフィルム等が含まれる。これらのうち、液体中で難分解性のもの、液体中で難崩壊性のものなどが好ましい。シート状構造物は、多角形や円形などであってもよく、幅、厚み、直径などは一様であってもなくてもよい。本発明におけるシート状構造物は、1枚のみを単層の状態で使用してもよいし、2枚以上を重ねた積層の状態で使用してもよい。後者の場合、積層の各層は互いに連結していても、連結していなくてもよく、連結している場合は、重なり合っている部分が全て連結していても、部分的に連結していてもよい。
【0028】
本明細書において、シート状細胞培養物とは、細胞が互いに連結してシート状になったものをいう。細胞同士は、直接(接着分子などの細胞要素を介するものを含む)および/または介在物質を介して、互いに連結していてもよい。介在物質としては、細胞同士を少なくとも物理的(機械的)に連結し得る物質であれば特に限定されないが、例えば、細胞外マトリックスなどが挙げられる。介在物質は、好ましくは細胞由来のもの、特に、シート状細胞培養物を構成する細胞に由来するものである。細胞は少なくとも物理的(機械的)に連結されるが、さらに機能的、例えば、化学的、電気的に連結されてもよい。シート状細胞培養物は、1の細胞層から構成されるもの(単層)であっても、2以上の細胞層から構成されるもの(積層(多層)、例えば、2層、3層、4層、5層、6層など)であってもよい。また、シート状細胞培養物は、細胞が明確な層構造を示すことなく、細胞1個分の厚みを超える厚みを有する3次元構造を有してもよい。例えば、シート状細胞培養物の垂直断面において、細胞が水平方向に均一に整列することなく、不均一に(例えば、モザイク状に)配置された状態で存在していてもよい。
【0029】
本明細書におけるシート状細胞培養物は、上記の構造を形成し得る任意の細胞から構成される。かかる細胞の例としては、限定されずに、接着細胞(付着性細胞)を含む。接着細胞は、例えば、接着性の体細胞(例えば、心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞など)および幹細胞(例えば、筋芽細胞、心臓幹細胞などの組織幹細胞、胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞などの多能性幹細胞、間葉系幹細胞等)などを含む。体細胞は、幹細胞、特にiPS細胞から分化させたものであってもよい。シート状細胞培養物を形成し得る細胞の非限定例としては、例えば、筋芽細胞(例えば、骨格筋芽細胞など)、間葉系幹細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、末梢血、皮膚、毛根、筋組織、子宮内膜、胎盤、臍帯血由来のものなど)、心筋細胞、線維芽細胞、心臓幹細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、上皮細胞(例えば、口腔粘膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、鼻粘膜上皮細胞など)、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞など)、肝細胞(例えば、肝実質細胞など)、膵細胞(例えば、膵島細胞など)、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞等が挙げられる。本明細書においては、単層の細胞培養物を形成するもの、例えば、筋芽細胞などが好ましく、とくに好ましくは骨格筋芽細胞である。
【0030】
細胞は、細胞培養物による治療が可能な任意の生物に由来し得る。かかる生物には、とくに限定されないが、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジなどが含まれる。また、シート状細胞培養物の形成に用いる細胞は1種類のみであってもよいが、2種類以上の細胞を用いることもできる。本発明の好ましい態様において、細胞培養物を形成する細胞が2種類以上ある場合、最も多い細胞の比率(純度)は、細胞培養物製造終了時において、例えば骨格筋芽細胞の場合、65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。
【0031】
本発明におけるシート状細胞培養物は、スキャフォールド(細胞培養時の足場)に細胞を播種し、培養することによって得られるシート形状の培養組織などでもよいが、好ましくは、細胞培養物を構成する細胞由来の物質のみからなり、それら以外の物質を含まない。
シート状細胞培養物は、任意の既知の手法によって製造されたものであってよい。
【0032】
本発明の一態様において、シート状細胞培養物は、シート状骨格筋芽細胞培養物である。これは、シート状骨格筋芽細胞培養物は、その一部をつかむと自重で破断するほど脆弱であるがゆえに、従来単体で移送することができないばかりか、一度折り重なると元の形状に戻すことが極めて困難なため、液中でシート形状を維持することに大きな意義があるからである。
【0033】
本明細書において、容器は、内部に脆弱物、液体などを収容でき、液体が漏出しないものであればとくに限定されず、市販の容器を含む任意のものを用いることができる。容器の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ナイロン6,6、ポリビニルアルコール、セルロース、シリコン、ポリスチレン、ガラス、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、金属(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮)等が挙げられるがこれに限定されない。また、容器は、脆弱物の形状を維持するための少なくとも1つの平坦な底面を有することが好ましく、例えば、シャーレ、細胞培養皿、細胞培養ボトルなどが挙げられるがこれに限定されない。平坦な底面の面積は、特に限定されないが、典型的には、1.13〜78.5cm
2、好ましくは12.6〜78.5cm
2、より好ましくは9.1〜60.8cm
2である。
【0034】
本明細書において、容器内の液体は、少なくとも1種の成分から構成され、その成分としてはとくに限定されないが、例えば、水、水溶液、非水溶液、懸濁液、乳液などの液体から構成される。
本明細書における液または液体とは、全体として流動性を有する流体であればよく、細胞足場などの固形物質や気泡などその他非液体成分を含んでもよい。
【0035】
容器内の液体を構成する成分は、脆弱物に与える影響が少ないものであればとくに限定されない。脆弱物が生体由来材料からなる膜である場合、容器内の液体を構成する成分は、生物学的安定性や長期保存可能性の観点から、生体適合性のもの、すなわち、生体組織や細胞に対して炎症反応、免疫反応、中毒反応などの望まない作用を起こさないか、少なくともかかる作用が小さいものが好ましく、例えば、水、生理食塩水、生理緩衝液(例えば、HBSS、PBS、EBSS、Hepes、重炭酸ナトリウム等)、培地(例えば、DMEM、MEM、F12、DMEM/F12、DME、RPMI1640、MCDB、L15、SkBM、RITC80−7、IMDM等)、糖液(スクロース溶液、Ficoll−paque(登録商標)PLUS等)、海水、血清含有溶液、レノグラフィン(登録商標)溶液、メトリザミド溶液、メグルミン溶液、グリセリン、エチレングリコール、アンモニア、ベンゼン、トルエン、アセトン、エチルアルコール、ベンゾール、オイル、ミネラルオイル、動物脂、植物油、オリーブ油、コロイド溶液、流動パラフィン、テレピン油、アマニ油、ヒマシ油などが挙げられる。
【0036】
脆弱物がシート状細胞培養物である場合、容器内の液体を構成する成分は、細胞を安定して保存することができ、細胞生存に必要な最低限の酸素や栄養等を含み、細胞を浸透圧等により破壊しないものが好ましく、例えば、生理食塩水、生理緩衝液(例えば、HBSS、PBS、EBSS、Hepes、重炭酸ナトリウム等)、培地(例えば、DMEM、MEM、F12、DMEM/F12、DME、RPMI1640、MCDB、L15、SkBM、RITC80−7、IMDM等)、糖液(スクロース溶液、Ficoll−paque PLUS(登録商標)等)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
容器内の液体の量は、蓋部材を容器に取り付けた状態で脆弱物を保持できる程度であって、容器の底部と蓋部材の頂部との間に形成される液嵩が、脆弱物が揺動しない程度の高さであればとくに限定されない。本発明の一態様において、シート状細胞培養物の直径は約35〜55mmであり、面積は6cm
2以上である。上記液嵩は、シート状細胞培養物の直径に関わらず、例えば、1.0mm〜20.0mmである。
【0038】
本明細書において、蓋部材は、容器を密閉するものであればとくに限定されない。蓋部材の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ナイロン6,6、ポリビニルアルコール、セルロース、シリコン、ポリスチレン、ガラス、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、金属(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮)等が挙げられるがこれに限定されない。
【0039】
本明細書において、蓋部材および容器の形状は、蓋部材と容器とが係合可能で、かかる係合により密閉空間が形成され得る限り、特に限定されない。例えば、容器が汎用シャーレである場合は、蓋部材の形状を円形にすることが好ましい。また、蓋部材および/または容器を光透過性の材料で構成することで、容器に収容されている脆弱物の状態や、液体中の気泡の有無を確認できるようにしてもよい。
【0040】
本明細書において、「蓋部材を容器に取り付けた状態」とは、蓋部材を容器に取り付けて、蓋部材と容器とを密着させた状態をいう。また、「容器内空間」とは、液体、気体、脆弱物などを収容できる平坦な面を有する容器の収容空間をいう。したがって、「容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部」とは、容器に取り付けた状態で、容器内空間の気体や液体が凸部の容積分だけ押し出されることを意味する。さらに、「容器の縁部」とは、容器内空間を構成する容器の縁部をいう。さらにまた、「容器を密閉する」とは、容器内空間を密閉することをいう。
【0041】
本明細書において、蓋部材の凸部とは、例えば、蓋部材の突き出ている部分、膨らんでいる部分など、すなわち、平坦ではない部分をいう。容器内空間に向けて突出する凸部とは、凸部が容器内空間の液体や気体を押し出すことができる程度に突出していることをいい、当業者は、容器の容積、使用する液体の量や液嵩に応じて、凸部の大きさを自由に設定することができる。
【0042】
本明細書において、凸部の水平断面積とは、例えば、凸部を液体に浸漬した状態で、凸部を液面で切断したときに現れる2次元断面の面積をいう。したがって、凸部の水平断面積が垂直下方に向かうほど小さいとは、凸部を液体の上方から垂直下方に降下させながら液体に浸漬する場合、凸部と液体との接触面積が徐々に大きくなることをいう。
本発明の一態様において、凸部は、頂部を有するドーム形状とすることができ、好ましくは、凸部の頂部と蓋部材の中心線が交わるように設計される。凸部の曲面の形状としては、双曲面形状、放物面形状、半球面形状、円錐面形状、角錐面形状などが挙げられるが、これに限定されない。
本明細書において、脆弱物は液体が収容された容器内の液体中に保持される。脆弱物の液体中での位置は、特に限定されないが、蓋部材を容器に取り付けて密閉空間を形成した状態で、蓋部材(または拡張部材)と脆弱物とが接触しない位置に配置される(または接触してもよい)。好ましくは、脆弱物は、容器の液体中で、容器の底面上、底面付近などに配置される。
【0043】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るデバイスの断面図、
図2は、第1実施形態の第1変形例に係るデバイスの断面図、
図3は、第1実施形態の第2変形例に係るデバイスの斜視図である。なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
【0044】
図1Aに示すように、本発明の第1実施形態に係るデバイス1は、容器2および容器2を密閉する蓋部材3を含む。容器2は、縁部21を有する汎用シャーレであり、脆弱物Sなどを収容できる容器内空間を構成する。蓋部材3は、容器2の縁部21と密着して容器2内を密閉することができる。蓋部材3は、容器2に取り付けた状態で容器2内空間に向けて突出する凸部31を含む。凸部31の形状は、蓋部材の中心線と交わる頂部を有する円形のドーム形状である。すなわち、凸部31の水平断面積は円形で、垂直下方に向かうほど小さく、凸部31の曲面は放物面形状を有する。また、蓋部材3は、蓋部材3の天部33から下方に延出し天部33と凸部31との間に位置する基部32を含む。基部32は円柱形状を有し、その外径は、容器2の内径と略同じか、それよりも僅かに大きい。
【0045】
図1Bに示すように、デバイス1を使用する際は、容器2に液体Lおよび脆弱物Sを収容し、容器2に蓋部材3を取り付ける。蓋部材3を取り付ける際は、基部32を把持して凸部31を容器内空間に押し込んで、蓋部材3を容器2に挿嵌する。凸部31を容器内空間に押し込むと、先ず容器内空間の気体が容器外空間へ押し出され、気体がすべて押し出されると、次に液体Lが押し出される。蓋部材3と容器2との密着は、気体がすべて押し出された後で、液体Lが僅かに押し出された直後に起こるように、事前に液量を調節する。
【0046】
容器2の縁部21と密着する蓋部材3の密着部分(この場合、凸部31の上端部)は、容器2の水平面に対して傾斜しているため、気体に浮力が掛りやすく、気体を確実に押し出すことができる。また、かかる傾斜により、蓋部材3を容器2に挿嵌する際に、蓋部材3の外周と容器2の内周との距離が徐々に小さくなるため、液体Lを容器外空間へ緩やかに押し出すことができ、容器2内の液体Lの流動を抑えることができる。
【0047】
また、凸部31の形状が頂部を有するドーム形状であるため、凸部31を液体Lに浸漬する際に、面積の小さな頂部が最初に液面に接触し、それから徐々に接触面積が大きくなるため、容器2内の液体Lの波打ちを最小限に抑えることができる。また、凸部31の形状が、蓋部材の中心線と交わる頂部を有する円形のドーム形状であるため、液体Lは円形ドームに沿って放射状に均一に押し出される。したがって、容器2内の液体Lが半径方向の偏った方向に移動することがなく、結果的に、容器2内の液体Lの流動を抑えることができる。
【0048】
脆弱物Sを使用する際は、基部32を把持して蓋部材3を容器2から取り外し、容器2内の液体Lに浸漬されている脆弱物Sを取り出して使用する。蓋部材3を取り外す際は、容器2を固定した状態で蓋部材3を容器2に対して傾斜させながら緩やかに取り外すことで、液体Lの流動を抑えることができる。
【0049】
以上、本発明の第1実施形態に係るデバイス1によれば、簡単な作業と、簡単な機構で効率よく液密空間を形成することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。また、容器内を完全に液密状態にできるため、泡(気体)が容器内にはいらず、容器の揺れによって泡が容器内で動いて脆弱物を破損することがない。特に、脆弱物がシート状細胞培養物の積層体である場合に、気泡が移動して、積層体がズレたり欠損したりすることがない。したがって、液体中の脆弱物の形状を保持して変形を防止しつつ、長期保存することができる。
特に、蓋部材3を市販のシャーレに簡単に取り付けることができるため、汎用性が高い。また、容器2内の液体に気泡が存在する場合、気泡は液体と共に凸部31の曲面に沿って効率よく容器外空間へ押し出されるため、容器内空間を完全な液密空間にすることができる。この結果、液体中の脆弱物の形状を保持するデバイスとしての信頼性が向上する。
【0050】
本実施形態はこれに限定されるものではなく、当業者は、デバイスの構成および形状を好適に組み合わせて、異なる構成や形状を有するデバイスを設計することができる。例えば、蓋部材3の基部32の外径を容器2の内径より小さくすることで、蓋部材3の凸部31で押し出された液体を、基部32と容器2との間で形成される空間で受容するようにしてもよい。これにより、蓋部材3の基部32が液体受容空間として機能し、液体Lが容器2から流出することがなく衛生的である。
【0051】
次に、本発明の第1実施形態に係るデバイス1の第1変形例について説明する。以下、第1実施形態との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。
【0052】
図2Aに示すように、第1変形例に係るデバイス1は、容器2および容器2を密閉する蓋部材3を含む。蓋部材3は、変形可能な弾性体で構成され、凸部31は円錐形状(テーパー形状)を、基部32は円柱形状を有している。基部32の外径、すなわち、凸部31の上端部の外径は、容器2の内径よりも大きい。
【0053】
図2Bに示すように、蓋部材3を取り付ける際は、凸部31のテーパー部分を容器2の縁部21に押し付けることで、凸部31を変形させ、次いで基部32を変形させて蓋部材3を容器2内に嵌合させる。この際、蓋部材3の縁部21に接触する部分が容器2の水平面に対して傾斜しているため、蓋部材3を縁部21に押し付けるだけで、蓋部材3を効率よく変形させることができる。また、変形した基部32の外周面と容器2の内周面とが密着するため、蓋部材3と容器2との密着性が高まる。
【0054】
以上、本発明の第1実施形態に係るデバイス1の第1変形例によれば、簡単な作業と、簡単な機構で効率よく液密空間を形成することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。また、容器内を完全に液密状態にできるため、泡(気体)が容器内にはいらず、容器の揺れによって泡が容器内で動いて脆弱物を破損することがない。特に、脆弱物がシート状細胞培養物の積層体である場合に、気泡が移動して、積層体がズレたり欠損したりすることがない。したがって、液体中の脆弱物の形状を保持して変形を防止しつつ、長期保存することができる。また、蓋部材3と容器2との密着性がより高まるため、蓋部材3が容器2から偶発的に外れることがなく、この結果、液体中の脆弱物の形状を保持するデバイスとしての信頼性がさらに向上する。
【0055】
本変形例は、追加的な機構を有することができ、例えば、基部32の外周面および容器2の内周面に螺合機構を設けることで、蓋部材3を容器2に対して螺着できるようにしてもよい。かかる螺合機構を使用することで、蓋部材3の着脱作業が制御され、作業者による着脱作業を均一化することができる。これにより、作業者による蓋部材3の無理な着脱で起こり得る容器2の振動を防止することができる。また、螺合機構は、蓋部材3と容器2とを協働させて、蓋部材3を容器2に対して水平に取り付けることができるガイド機構としても機能する。これにより、上記のように、蓋部材3を液体Lに浸漬する際に、液体Lが円形ドームに沿って放射状に均一に押し出される。
【0056】
次に、本発明の第1実施形態に係るデバイス1の第2変形例について説明する。以下、第1実施形態との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。
【0057】
図3Aに示すように、第2変形例に係るデバイス1は、容器2および容器2を密閉する蓋部材3を含む。蓋部材3は、天部33が開放されたお椀形状を有し、蓋部材3の開口部を横断するハンドル部34を含む。蓋部材3の凸部31は、円形ドーム形状を有しており、凸部31の頂部には、開閉可能な開口部35が設けられている。本変形例において、蓋部材3は基部32を有さない。
【0058】
図3Bに示すように、蓋部材3を容器2に取り付ける際は、開口部35を閉鎖した状態で、蓋部材3のハンドル部34を把持して、蓋部材3を容器2に挿嵌する。蓋部材3を容器2から取り外す際は、開口部35を開放して液体Lを蓋部材3の内部空間に漏出させる。こうすることで、容器2内の液密状態を解除することができ、蓋部材3を簡単に容器2から取り外すことができる。
【0059】
以上、本発明の第1実施形態に係るデバイス1の第2変形例によれば、簡単な作業と、簡単な機構で効率よく液密空間を形成することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。また、容器内を完全に液密状態にできるため、泡(気体)が容器内にはいらず、容器の揺れによって泡が容器内で動いて脆弱物を破損することがない。特に、脆弱物がシート状細胞培養物の積層体である場合に、気泡が移動して、積層体がズレたり欠損したりすることがない。したがって、液体中の脆弱物の形状を保持して変形を防止しつつ、長期保存することができる。
特に、容器2内の液密状態を簡単に解除することができるため、例えば、作業者の蓋部材3の無理な取り外しによる、容器2の振動や液体Lの流動の発生を抑えることができる。また、ハンドル部34を利用して蓋部材3を容器2に対して回転させながら着脱させることで、容器2の上下振動を抑えることができる。この結果、液体中の脆弱物の形状を保持するデバイスとしての信頼性がさらに向上する。
【0060】
本変形例において、開口部35は、蓋部材3を容器2に取り付ける際に閉鎖するものとして説明したが、これに限定されず、例えば、容器2内の液体Lが多い場合は、蓋部材3を容器2に取り付ける際に、開口部35の開閉を適宜行いながら、液体Lの一部を蓋部材3内に排出することもできる。これにより、容器2から流出する液体Lの量を調節できるため衛生的である。また、容器2の高さを蓋部材3の高さより十分に大きくすることで、液体Lを容器2縁部の外側方向ではなく内側方向、つまり蓋部材3のお椀部分に誘導して、蓋部材3を液体受容空間として使用するようにしてもよい。この時、開口部35を閉鎖したまま蓋部材3の取り外すことで、液体Lを容器2に戻さないようにして、蓋部材3を液体保持空間として使用するようにしてもよい。
【0061】
本発明の別の側面は、脆弱物を収容するための容器と、容器を密閉する蓋部材と、液体受容空間とを含む、デバイスであって、蓋部材は、容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部を有し、該凸部の水平断面積は垂直下方に向かうほど小さく、該凸部が脆弱物および液体を収容した容器内空間の気体および液体を押し出して該蓋部材と容器の縁部とが密着することで液密空間を形成し、液体受容空間は、蓋部材によって押し出された液体を受容することができる、前記デバイスに関する。
【0062】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係るデバイスの断面図、
図5は、第2実施形態の第1変形例に係るデバイスの断面図、
図6は、第2実施形態の第2変形例に係るデバイスの断面図である。なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
また、図中、第1実施形態に係るデバイス1の構成と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、第1実施形態との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。
【0063】
図4Aに示すように、本発明の第2実施形態に係るデバイス1Aは、容器2Aおよび容器2Aを密閉する蓋部材3を含む。容器2Aは、上部22および下部23を含む有底筒状の容器であり、下部23は、脆弱物Sなどを収容できる容器内空間を構成する。上部22の内径は下部23の内径より大きく、上部22と下部23との境界に段差部24が設けられている。容器2Aの下部23の内径は、蓋部材3の基部32の外径と略同じか、それよりも僅かに小さい。容器2Aの上部22の内径は、蓋部材3の基部32の外径より大きい。
【0064】
図4Bに示すように、デバイス1Aを使用する際は、容器2Aの下部23に液体Lおよび脆弱物Sを収容し、容器2Aの下部23に蓋部材3を取り付けて凸部31を容器内空間に押し込む。容器内空間から押し出された液体Lは、容器2Aの上部22と蓋部材3の基部32との間の空間に受容されるため、容器2Aから流出することがない。すなわち、容器2Aの上部22は、液体受容空間として機能する。したがって、容器2Aから押し出された液体の体積が、液体受容空間の容積より大きくならないように、液量や容積を事前に調節しておくことで、液体が容器2A外に漏れ出ないようにすることが好ましい。脆弱物Sを使用する際は、基部32を把持して蓋部材3を容器2Aから取り外し、容器2A内の液体Lに浸漬されている脆弱物Sを取り出して使用する。
【0065】
以上、本発明の第2実施形態に係るデバイス1Aによれば、簡単な作業と、簡単な機構で効率よく液密空間を形成することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。また、容器内を完全に液密状態にできるため、泡(気体)が容器内にはいらず、容器の揺れによって泡が容器内で動いて脆弱物を破損することがない。特に、脆弱物がシート状細胞培養物の積層体である場合に、気泡が移動して、積層体がズレたり欠損したりすることがない。したがって、液体中の脆弱物の形状を保持して変形を防止しつつ、長期保存することができる。
特に、容器内空間から押し出された液体が、液体受容空間に受容されるため、周囲を汚染することがない。したがって、シート状細胞培養物の作製に使用されるバイオクリーンルームなどの清浄度が厳密に管理されている場所での使用に適している。この結果、液体中の脆弱物の形状を保持するデバイスとしての信頼性がさらに向上する。
【0066】
次に、本発明の第2実施形態に係るデバイス1Aの第1変形例について説明する。以下、第2実施形態との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。
【0067】
図5Aに示すように、本発明の第2実施形態に係るデバイス1Aの第1変形例は、容器2Aおよび容器2Aを密閉する蓋部材3を含む。上部22の内径は下部23の内径より大きく、上部22と下部23との境界に段差部24Aが設けられている。段差部24Aは、下部23から上部22にかけて内径が大きくなるテーパー形状、すなわち、容器2Aの開口に向けて拡開するテーパー形状を有している。本変形例において、蓋部材3の外径は、容器2Aの下部23の内径より大きい。
【0068】
図5Bに示すように、デバイス1Aを使用する際は、容器2Aの下部23に液体Lおよび脆弱物Sを収容し、蓋部材3を容器2Aの段差部24Aに押し付けて、蓋部材3を変形させながら容器2Aに嵌合させる。この際、段差部24Aはテーパー形状を有しているため、蓋部材3を段差部24Aに押し付けるだけで、蓋部材3を効率よく変形させることができる。また、上記のように、凸部31のテーパー部分を段差部24Aのテーパー形状に押し付けることで、蓋部材3を変形させて容器2内に嵌合させてもよい。蓋部材3の基部32の外周面は、容器2Aの下部23の内周面に密着する。
【0069】
以上、本発明の第2実施形態に係るデバイス1Aの第1変形例によれば、簡単な作業と、簡単な機構で効率よく液密空間を形成することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。また、容器内を完全に液密状態にできるため、泡(気体)が容器内にはいらず、容器の揺れによって泡が容器内で動いて脆弱物を破損することがない。特に、脆弱物がシート状細胞培養物の積層体である場合に、気泡が移動して、積層体がズレたり欠損したりすることがない。したがって、液体中の脆弱物の形状を保持して変形を防止しつつ、長期保存することができる。
特に、テーパー形状を有する段差部24Aで、蓋部材3を効率よく変形させることができるため、蓋部材3や容器2Aに、製造段階で寸法のバラツキが生じた場合であっても、蓋部材3と容器2との密着を確実に行うことができる。さらに、蓋部材3を容器2Aから取り外した際に、液体Lはテーパー形状の段差部24Aに沿って、容器2A内に緩やかに戻されるため、液体Lの流動を抑えることができる。この結果、液体中の脆弱物の形状を保持するデバイスとしての信頼性がさらに向上する。
【0070】
次に、本発明の第2実施形態に係るデバイス1Aの第2変形例について説明する。以下、第2実施形態との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。
【0071】
図6Aに示すように、本発明の第2実施形態に係るデバイス1Aの第2変形例は、容器2Aおよび容器2Aを密閉する蓋部材3Aを含む。容器2Aは、下部23と上部22とを含む。蓋部材3Aは変形可能な弾性体で構成され、基部32の上端から半径方向に延出する天板部36を含む。基部32の外径は、下部23の内径より大きい。天板部36の外径は、上部22の内径と略同じか、それよりも僅かに大きい。すなわち、天板部36は、上部22の開口を覆うことができる。
【0072】
デバイス1Aを使用する際は、天板部36で、基部32および凸部31を押圧して変形させながら容器2Aに嵌合させる。基部32を容器2A内にある程度の深さまで挿嵌させると、天板部36が上部22の開口に接触して、それ以上の挿嵌ができなくなる。すなわち、天板部36は、容器2Aの開口を覆う蓋の機能と、蓋部材3Aの挿嵌を制限するストッパーの機能の両方を併せ持つ。すなわち、上部22の開口を天板部36で覆うことで、上部22の空間に受容されている液体Lが外気に触れないようにすることができると同時に、蓋部材3Aの挿嵌が停止されることで、蓋部材3Aが容器2A内の脆弱物を傷つけることがない。
【0073】
以上、本発明の第2実施形態に係るデバイス1Aの第2変形例によれば、簡単な作業と、簡単な機構で効率よく液密空間を形成することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。また、容器内を完全に液密状態にできるため、泡(気体)が容器内にはいらず、容器の揺れによって泡が容器内で動いて脆弱物を破損することがない。特に、脆弱物がシート状細胞培養物の積層体である場合に、気泡が移動して、積層体がズレたり欠損したりすることがない。したがって、液体中の脆弱物の形状を保持して変形を防止しつつ、長期保存することができる。
特に、上部22の液体受容空間内の液体Lが外気に触れないためコンタミネーションが起こり難い。したがって、例えば、シート状細胞培養物が使用される集中治療室などの清浄度が厳密に管理されている場所での使用に適している。また、移送中に容器2Aが傾いたとしても、液体受容空間内の液体Lが容器外に流出することがない。この結果、液体中の脆弱物の形状を保持するデバイスとしての信頼性がさらに向上する。
【0074】
本実施形態は、さらに種々の変形例を有することができる。例えば、天板部36にある程度の厚みをもたせて、天板部36の外周面と容器2Aの上部22内周面とに螺合機構を設けることで、天板部36を容器2に対して螺着できるようにしてもよい。これにより、蓋部材3Aを天板部36で上から押圧する力をより強くできるため、蓋部材3Aと容器2Aとの密着性をより高めることができる。また、かかる螺合機構は、上記のように蓋部材3Aと容器2Aとを協働させて、蓋部材3Aを容器2Aに対して水平に取り付けるようにガイドするガイド機構としても機能する。
【0075】
本実施形態において、液体受容空間は、容器2Aの上部22と蓋部材3の基部32との間の空間として説明したが、これに限定されない。例えば、液体受容空間は、第1実施形態において説明したように、基部32の内径を小さくして形成する空間であってもよいし、第1実施形態の第2変形例において説明したように、お椀型の蓋部材3の内側空間であってもよい。
【0076】
また、さらに別の変形例として、蓋部材3Aの凸部31と、蓋部材3Aの天板部36とを別体にしてもよい。例えば、凸部31を弾性体で、天板部36を剛性体で、別々に成型することもできる。すなわち、これらを弾性体で一体成型した場合は、天板部36の強度不足が起こり、逆に剛性体で一体成型した場合は、凸部31の変形が起こり難いため、材料の選定が難しい。しかし、凸部31と天板部36とを別々に成型することで、この問題を解決することができる。また、移送時に汚染されやすい天板部36を取り外せるため、使用時の除菌作業や除塵作業の手間を省くことができる。
【0077】
本発明の別の側面は、脆弱物を収容するための容器と、容器を密閉する蓋部材と、液体保持空間とを含む、デバイスであって、蓋部材は、容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部を有し、該凸部の水平断面積は垂直下方に向かうほど小さく、該凸部が脆弱物および液体を収容した容器内空間の気体および液体を押し出して該蓋部材と容器の縁部とが密着することで液密空間を形成し、液体保持空間は、蓋部材によって押し出された液体が容器へ戻らないように保持することができる、前記デバイスに関する。
【0078】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図7は、本発明の第3実施形態に係るデバイス1Bの断面図である。なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
また、図中、第1実施形態および第2実施形態に係るデバイス1およびデバイス1Aの構成と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、第1実施形態および第2実施形態との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。
【0079】
図7Aに示すように、本発明の第3実施形態に係るデバイス1Bは、容器2Bおよび容器2Bを密閉する蓋部材3を含む。容器2Bは、脆弱物などを収容できる容器内空間を構成する内側部25と、内側部25の外径側に連結可能な環状溝様の外側部26とを含む。内側部25の縁部21と外側部26とは、環状の連結部27を介して連結されている。連結部27は、内側部25および外側部26の底部より高い位置にあるため、容器内空間(内側部25)から押し出された液体Lは、連結部27を通って一旦外側部26に流れると、再び容器内空間に戻ることがない。すなわち、外側部26は、蓋部材3によって押し出された液体が容器内空間へ戻らないように保持できる、液体保持空間として機能する。
【0080】
図7Bに示すように、デバイス1Bを使用する際は、容器2Bの内側部25に液体Lおよび脆弱物Sを収容し、容器2Bの内側部25に蓋部材3を取り付けて凸部31を容器内空間に押し込む。この際に、容器内空間から押し出された液体Lが、容器2Bの外側部26に保持されて、外側部26から外に漏れないように、液量や外側部26の容積を事前に調節しておくことが好ましい。さらに、外側部26内の液体Lは連結部27にブロックされて内側部25に戻ることがないため、内側部25内の液体Lの流動が起こりにくいだけでなく、脆弱物Sの汚染を防ぐことができる。蓋部材3を内側部25に取り付けた後は、内側部25と外側部26との連結を解除して、蓋部材3と内側部25だけを移送するようにしてもよい。
【0081】
以上、本発明の第3実施形態に係るデバイス1Bによれば、簡単な作業と、簡単な機構で効率よく液密空間を形成することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。また、容器内を完全に液密状態にできるため、泡(気体)が容器内にはいらず、容器の揺れによって泡が容器内で動いて脆弱物を破損することがない。特に、脆弱物がシート状細胞培養物の積層体である場合に、気泡が移動して、積層体がズレたり欠損したりすることがない。したがって、液体中の脆弱物の形状を保持して変形を防止しつつ、長期保存することができる。
特に、容器内空間から押し出された液体が、蓋部材を取り外した後でも容器内空間に戻ることがないため、脆弱物Sの汚染を防ぐことができる。したがって、例えば、シート状細胞培養物が使用される集中治療室など、清浄度が厳密に管理されている場所での使用に適している。この結果、液体中の脆弱物の形状を保持するデバイスとしての信頼性がさらに向上する。
【0082】
本実施形態はこれに限定されるものではなく、当業者は、上記の実施形態1〜3に係るデバイスの構成および形状を好適に組み合わせて、異なる構成や形状を有するデバイスを設計することができる。例えば、凸部31を円錐形状にする、凸部31に開口部35を設ける、連結部27を容器2Bの上方に向けて拡開するテーパー形状にする、蓋部材3に天板部36を設けて容器2Bに対して螺着できるようにするなど、用途に合わせて自由に設計することができる。
【0083】
また、本実施形態において、液体保持空間は、外側部26として説明したが、これに限定されない。例えば、第1実施形態の第2変形例において説明したように、お椀形状の蓋部材3も液体保持空間に含まれる。
【0084】
本発明の別の側面は、脆弱物を収容するための容器と、容器を密閉する蓋部材と、ガイド機構とを含む、デバイスであって、蓋部材は、容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部を有し、該凸部の水平断面積は垂直下方に向かうほど小さく、該凸部が脆弱物および液体を収容した容器内空間の気体および液体を押し出して該蓋部材と容器の縁部とが密着することで液密空間を形成し、ガイド機構は、蓋部材と容器とを協働させて、蓋部材を容器に対して水平にガイドすることができる、前記デバイスに関する。
【0085】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図8は、本発明の第4実施形態に係るデバイス1Cの断面図、
図9は、第4実施形態の第1変形例に係るデバイス1Cの断面図である。なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
また、図中、第1実施形態〜第3実施形態に係るデバイス1、デバイス1Aおよびデバイス1Bの構成と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、第1実施形態〜第3実施形態との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。
【0086】
図8Aに示すように、本発明の第4実施形態に係るデバイス1Cは、容器2Aおよび容器2Aを密閉する蓋部材3Bを含む。容器2Aは、上部22および下部23を含み、上部22の内径は下部23の内径より大きい。蓋部材3Bは、基部32の上端から半径方向に延出し、上部22の開口を覆うことができる天板部36を含む。蓋部材3Bは、さらに、天板部36の周縁から垂下する筒状スカート壁37を含む。筒状スカート壁37の内径は、容器2Aの上部22の外径と略同じか、それよりも僅かに大きい。
【0087】
図8Bに示すように、デバイス1Cを使用する際は、容器2Aの下部23に液体Lおよび脆弱物Sを収容し、容器2Aに蓋部材3Bを取り付けて、凸部31で容器内空間を液密にし、天板部36と筒状スカート壁37とで容器2Aを気密にする。蓋部材3Bを容器2Aに着脱する際に、筒状スカート壁37は、容器2Aの上部22の外周面で摺動する。すなわち、筒状スカート壁37は、蓋部材3Bと容器2Aとを協働させて、蓋部材3Bを容器2Aに対して水平に取り付けることができる、ガイド機構として機能する。これにより、作業者の着脱作業を均一化して容器内の液体の流動を抑えることができる。
【0088】
以上、本発明の第4実施形態に係るデバイス1Cによれば、簡単な作業と、簡単な機構で効率よく液密空間を形成することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。また、容器内を完全に液密状態にできるため、泡(気体)が容器内にはいらず、容器の揺れによって泡が容器内で動いて脆弱物を破損することがない。特に、脆弱物がシート状細胞培養物の積層体である場合に、気泡が移動して、積層体がズレたり欠損したりすることがない。したがって、液体中の脆弱物の形状を保持して変形を防止しつつ、長期保存することができる。
特に、天板部36と筒状スカート壁37とで、容器2Aの開口とその外周を密閉することができるため、容器2Aの密閉性がさらに高まる。これにより、例えば、デバイス1Cを誤って転倒させた場合であっても、受容空間も液体Lが容器2Aの外に流出することがない。すなわち、デバイス1Cは、蓋部材3Bの凸部31、天板部36および筒状スカート壁37で、容器2Aを三重にシールすることができる。この結果、液体中の脆弱物の形状を保持するデバイスとしての信頼性がさらに向上する。
【0089】
また、筒状スカート壁37は、本発明の第1実施形態〜第3実施形態の蓋部材にも設けることができる。例えば、第1実施形態の天部33の周縁、第2実施形態の天板部36の周縁、第3実施形態の天板部36の周縁などに適宜設けて、蓋部材と容器とを協働させて、蓋部材を容器に対して水平に取り付けることができる、ガイド機構として機能させてもよい。
【0090】
次に、本発明の第4実施形態に係るデバイス1Cの第1変形例について説明する。以下、第4実施形態との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。
【0091】
図9Aに示すように、本発明の第4実施形態に係るデバイス1Cの第1変形例は、容器2Aおよび容器2Aを密閉する蓋部材3Bを含む。蓋部材3Bは、天板部36の周縁から垂下する筒状スカート壁37を含み、筒状スカート壁37の内周面には、雌ネジ部38が設けられている。また、容器2Aの上部22の外周面には、雌ネジ部38と螺合する雄ネジ部28が設けられている。また、デバイス1Cは、上部22の開口部と天板部36とが接触する部分に取り付けることができる、パッキンリングRをさらに含む。
【0092】
図9Bに示すように、デバイス1Cを使用する際は、容器2Aの下部23に液体Lおよび脆弱物Sを収容し、容器2Aに蓋部材3Bを被せる。次に、蓋部材3Bを容器2Aに対して回転させながら、筒状スカート壁37の雌ネジ部38を容器2Aの雄ネジ部28と螺合させて、容器2Aを蓋部材3Bに螺着させる。パッキンリングRは、雌ネジ部38と雄ネジ部28とで構成される螺合機構により、上部22の開口部と天板部36とで押圧されて容器2Aの開口と密着する。ここで、デバイス1Cは、蓋部材3Bを容器2Aに取り付けた際に、凸部31と縁部21との密着と、パッキンリングRと容器2Aの開口部との密着が略同時に起こるように構成されていることが好ましい。これにより、デバイス1Cの密閉性がさらに高まる。
【0093】
以上、本発明の第4実施形態に係るデバイス1Cの変形例1によれば、簡単な作業と、簡単な機構で効率よく液密空間を形成することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。また、容器内を完全に液密状態にできるため、泡(気体)が容器内にはいらず、容器の揺れによって泡が容器内で動いて脆弱物を破損することがない。特に、脆弱物がシート状細胞培養物の積層体である場合に、気泡が移動して、積層体がズレたり欠損したりすることがない。したがって、液体中の脆弱物の形状を保持して変形を防止しつつ、長期保存することができる。
特に、本変形例においては、蓋部材3Bの凸部31、天板部36、筒状スカート壁37およびパッキンリングRで、容器2Aを四重にシールすることができる。この結果、液体中の脆弱物の形状を保持するデバイスとしての信頼性がさらに向上する。パッキンリングRは、他にも、蓋部材3Bと容器2Aとが接触する、容器2Aの縁部21上、下部23の上端や、段差部24上などに複数設けてもよい。
【0094】
また、本実施形態において、ガイド機構は、筒状スカート壁37の内周面と容器2Aの上部22の外周面との摺動機構を中心に説明したが、これに限定されない。すなわち、ガイド機構は、蓋部材と容器とを協働させて、蓋部材を容器に対して水平にガイドする機構であればよく、例えば、第1実施形態の第1変形例において説明した、基部32の外周面と容器2の内周面との螺合でも、第2実施形態の第2変形例において説明した、天板部36の外周面と容器2Aの内周面との螺合でもよく、ガイド機構もパッキンリングRと同様に複数設けてもよい。
【0095】
本発明の別の側面は、脆弱物を移送するための脆弱物移送用キットであって、脆弱物を収容するための内容器と、内容器を密閉する内蓋部材と、内容器を収容するための外容器と、外容器を密閉する外蓋部材と、を含み、
内蓋部材は、内容器に取り付けた状態で容器内空間に向けて突出する凸部を有し、該凸部の水平断面積は垂直下方に向かうほど小さく、該凸部が脆弱物および液体を収容した容器内空間の気体および液体を押し出して該内蓋部材と内容器の縁部とが密着することで液密空間を形成する、前記脆弱物移送用キットに関する。
【0096】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図10は、本発明の第5実施形態に係るキットの断面図である。なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
また、図中、第1実施形態〜第4実施形態に係るデバイス1、デバイス1A、デバイス1B、デバイス1Cの構成と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、第1実施形態〜第4実施形態との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。
【0097】
図10Aに示すように、本発明の第5実施形態に係る脆弱物移送用キットは、脆弱物を収容するための内容器2と、内容器2を密閉する内蓋部材3と、内容器2を収容するための外容器4と、外容器4を密閉する外蓋部材5とを含む。内容器2および内蓋部材3は、第1実施形態に係る容器2および蓋部材3と同様の機能を果たす。外容器4の内径は、内容器2の外径より大きく、内容器2を外容器4の内側に収容できるように設計されている。また、外容器4の高さは、内蓋部材3を取り付けた状態の内容器2を収容できるように設計されている。外蓋部材5は、天板部51および天板部51の周縁から垂下する筒状スカート壁52を含む。天板部51は外容器4の開口を覆い、筒状スカート壁52は外容器4の外周面と密着できるように設計されている。
【0098】
図10Bに示すように、キットを使用する際は、内容器2に液体および脆弱物を収容し、内容器2を外容器4に収容し、内容器2に内蓋部材3を嵌入させ、容器内空間の液体を外容器4へ押し出し、外蓋部材5を外容器4に取り付けて移送する。脆弱物を使用する際は、外蓋部材5を外容器4から取り外し、外容器4から内容器2を取り出し、内蓋部材3から内容器2を取り外し、脆弱物を取り出して使用する。
【0099】
以上、本発明の第5実施形態に係るキットによれば、簡単な作業と、簡単な機構で効率よく液密空間を形成することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。また、容器内を完全に液密状態にできるため、泡(気体)が容器内にはいらず、容器の揺れによって泡が容器内で動いて脆弱物を破損することがない。特に、脆弱物がシート状細胞培養物の積層体である場合に、気泡が移動して、積層体がズレたり欠損したりすることがない。したがって、液体中の脆弱物の形状を保持して変形を防止しつつ、長期保存することができる。
特に、移送中に、内容器2と内蓋部材3とが共に外気に触れないようにすることができるため、シート状細胞培養物が使用される集中治療室など、清浄度が厳密に管理されている場所での使用に適している。すなわち、集中治療室は、微粒子や微生物などが入り込まないように、厳密に清浄度が管理されているため、集中治療室内に容器を持ち込む際は、集中治療室の前室で容器に付着した微粒子や微生物を清拭、消毒などにより除去、除菌した上で持ち込むなどの対策が必要であるが、本発明のキットによれば、その工程を省略することができる。
【0100】
本実施形態はこれに限定されるものではなく、当業者は、本実施形態と、上記の実施形態1〜4に係るデバイスの構成および形状を好適に組み合わせて、異なる構成や形状を有するキットを設計することができる。例えば、第4実施形態の第2変形例における蓋部材3Bのように、本実施形態の外蓋部材5と内蓋部材3とを一体化させ、外蓋部材5と外容器4とを螺合させて、内容器2に内蓋部材3を嵌入できるようにしてもよい。また、移送中に内容器2が移動しないように、内容器2を外容器4に取り外し可能に固定できるようにしてもよい。
【0101】
以上、本発明のデバイスは、蓋部材内側の液面と接する部分に平坦な面を有さないため、蓋部材で容器を密閉する際に、液面上の気泡が平坦な面に張り付くなどして容器内に残ることがない。また、蓋部材で容器を密閉する際に、容器の縁部に密着する蓋部材の部分に平坦な面を有さないため、蓋部材で容器内の液体および気体を効果的に押し出すことができる。さらに、蓋部材は、容器の開口部を覆う底面を有さないため、蓋部材で容器を密閉する際に、かかる底面で液体や気体の排出を阻害するようなことが起こらない。
以上、本発明を図示の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明においては、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。