特許第6983575号(P6983575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ AGCエンジニアリング株式会社の特許一覧 ▶ 公益財団法人 塩事業センターの特許一覧

<>
  • 特許6983575-グラフト鎖付き高分子基材の製造方法 図000006
  • 特許6983575-グラフト鎖付き高分子基材の製造方法 図000007
  • 特許6983575-グラフト鎖付き高分子基材の製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983575
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】グラフト鎖付き高分子基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/18 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   C08J7/18CES
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-159438(P2017-159438)
(22)【出願日】2017年8月22日
(65)【公開番号】特開2019-38866(P2019-38866A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年6月4日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月20日発行の、2017年度日本海水学会第68年会研究技術発表会講演要旨集(第142頁)に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月1日に、2017年度日本海水学会第68年会研究技術発表会(京都市国際交流会館)にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】390005407
【氏名又は名称】AGCエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396021483
【氏名又は名称】公益財団法人 塩事業センター
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】田柳 順一
(72)【発明者】
【氏名】永谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴明
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−106640(JP,A)
【文献】 特開平09−077900(JP,A)
【文献】 特開平11−106552(JP,A)
【文献】 特開平06−220238(JP,A)
【文献】 特開2009−215499(JP,A)
【文献】 特開2009−215500(JP,A)
【文献】 特開2005−132869(JP,A)
【文献】 特開2006−241618(JP,A)
【文献】 特表2008−525566(JP,A)
【文献】 特開昭63−210143(JP,A)
【文献】 特開2003−147104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/00−7/18
C08J 9/00− 9/42
D06M 13/00−15/715
C08F 251/00−283/00
C08F 283/02−289/00
C08F 291/00−297/08
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路を搬送される酸化防止剤を含有する高分子基材に対して前記搬送経路に沿って配置された電子線源から、2回以上に分けて、合計で80〜500kGyの照射線量となるよう、電子線を照射し、前記高分子基材からラジカルを発生させると共に前記酸化防止剤を失活させ、次いでイオン交換基を導入し得る基を有するラジカル重合性単量体を含有する溶液と前記照射後の前記高分子基材とを接触させて、前記ラジカル重合性単量体に基づくグラフト鎖を前記高分子基材に導入することを特徴とする、グラフト鎖付き高分子基材の製造方法。
【請求項2】
酸化防止剤を含有する高分子基材を溶媒に浸漬し、前記酸化防止剤を前記溶媒に溶出させた後、搬送経路を搬送される前記浸漬後の高分子基材に対して前記搬送経路に沿って配置された電子線源から、2回に分けて電子線を照射して、前記浸漬後の前記高分子基材からラジカルを発生させ、次いでラジカル重合性単量体を含む溶液と前記照射後の高分子基材とを接触させて、前記ラジカル重合性単量体に基づくグラフト鎖を前記高分子基材に導入することを特徴とする、グラフト鎖付き高分子基材の製造方法。
【請求項3】
前記高分子基材を構成する材料が、ポリオレフィンである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィンが、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及び、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオレフィンが、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、及び、低密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種からなる請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記高分子基材の形態がフィルムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ラジカル重合性単量体が、イオン交換基を導入し得る基を有する、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記グラフト鎖を前記高分子基材に導入した後、前記グラフト鎖にイオン交換基を導入する、請求項1または7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ラジカル重合性単量体が、スチレン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、及び、下式(1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の単量体を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【化1】
式中、Rは、炭素数1〜6の2価の炭化水素基又はエーテル性酸素原子を含有する炭素数1〜6の2価の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト鎖付き高分子基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電離放射線を高分子基材に照射して、高分子基材からラジカルを発生させた後、高分子基材とラジカル重合性単量体を含む溶液と接触させて、高分子基材にグラフト鎖を導入する方法が知られている。
特許文献1及び2には、高分子基材として超高分子量ポリエチレンフィルム、ラジカル重合性単量体としてスチレン誘導体等を用いて、上記方法にて高分子基材にグラフト鎖を導入した後、イオン交換基をグラフト鎖に導入するイオン交換膜の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5050284号公報
【特許文献2】特許第5050285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1及び2に記載の方法により得られたグラフト鎖付き高分子基材は、グラフト重合率が不十分な場合があるのを見出した。
本発明は、上記課題に鑑みて、グラフト重合率に優れたグラフト鎖付き高分子基材の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0006】
[1] 酸化防止剤を含有する高分子基材に1回で、又は、2回以上に分けて、合計で80〜500kGyの照射線量となるよう、電離放射線を照射し、高分子基材からラジカルを発生させると共に酸化防止剤を失活させ、次いでラジカル重合性単量体を含有する溶液と照射後の高分子基材とを接触させて、ラジカル重合性単量体に基づくグラフト鎖を高分子基材に導入することを特徴とする、グラフト鎖付き高分子基材の製造方法。
[2] 酸化防止剤を含有する高分子基材を溶媒に浸漬し、酸化防止剤を溶媒に溶出させた後、浸漬後の高分子基材に1回で、又は、2回に分けて電離放射線を照射して、浸漬後の高分子基材からラジカルを発生させ、次いでラジカル重合性単量体を含む溶液と照射後の高分子基材とを接触させて、ラジカル重合性単量体に基づくグラフト鎖を高分子基材に導入することを特徴とする、グラフト鎖付き高分子基材の製造方法。
[3] 高分子基材を構成する材料が、ポリオレフィンである、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] ポリオレフィンが、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及び、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、[3]に記載の製造方法。
[5] ポリオレフィンが、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、及び、低密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種からなる[4]に記載の製造方法。
[6] 高分子基材の形態がフィルムである、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 電離放射線が電子線であり、搬送経路を搬送される高分子基材に対して、搬送経路に沿って配置された電子線源から、2回以上にわけて、電子線を照射する、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] ラジカル重合性単量体が、イオン交換基を導入し得る基を有する、[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9] グラフト鎖を高分子基材に導入した後、グラフト鎖にイオン交換基を導入する、[8に記載の製造方法。
[10] ラジカル重合性単量体が、スチレン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、及び、後述する式(1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の単量体を含む、[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、グラフト重合率に優れたグラフト鎖付き高分子基材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】高分子基材に1回で所定量の電子線を照射する工程の例を表す模式図である。
図2】高分子基材に2回以上に分けて所定量の電子線を照射する工程の例を表す模式図である。
図3】高分子基材に2回以上に分けて所定量の断続的に電子線を照射する工程の他の例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」の総称である。
【0010】
本発明の第1の実施形態に係るグラフト鎖付き高分子基材の製造方法は、酸化防止剤を含有する高分子基材に1回で、又は、2回以上に分けて、合計で80〜500kGyの照射線量となるよう、電離放射線を照射し、高分子基材からラジカルを発生させると共に酸化防止剤を失活させ、次いでラジカル重合性単量体を含有する溶液(以下「重合液」ともいう。)と照射後の(電離放射線照射を受けた後の)高分子基材とを接触させてラジカル重合性単量体に基づくグラフト鎖を高分子基材に導入するグラフト鎖付き高分子の製造方法である。
【0011】
電離放射線を照射して高分子基材にグラフト鎖を導入する方法は、一般に、該基材に対して目標とするグラフト鎖量よりも過剰の重合性単量体溶液と接触させながら重合を進めるのが一般的であり、かつラジカル開始剤等を使用する重合法と比較して、高分子基材から発生するラジカル量が少ない。すると、1度の重合では、重合液中のラジカル重合性単量体が消費されずに残ってしまうため、工業的には、重合液を繰り返し使用する等の対策が必要である。
【0012】
ここで、高分子基材(特に構成する材料がポリオレフィンである場合)には、その製造時における高分子材料の酸化劣化を抑制するために、酸化防止剤が含有される場合が多い。このような場合、重合液を繰り返し使用すると、高分子基材に含有される酸化防止剤が溶液中に溶出する。酸化防止剤は電子線照射によって高分子基材に生じたラジカルを失活させる機能を有することがある。重合液を繰り返し使用する場合、重合液中に高分子基材から溶出した酸化防止剤が蓄積していくと考えられ、これが、高分子基材に発生したラジカルを失活させてしまうため、グラフト鎖付き高分子基材のグラフト重合率を低下させる要因であると本発明者らは推測している。なお、グラフト重合率とは、グラフト重合前の高分子基材の質量に対する、グラフト鎖の質量の質量比を表す。
【0013】
本実施形態に係る製造方法では、高分子基材からラジカルを発生させると共に酸化防止剤を失活させるのに十分な照射線量となるよう電離放射線を照射するため、照射後の高分子基材を重合液に接触させた際に、重合液に酸化防止剤(活性を維持した酸化防止剤を意味する)が溶出しにくいものと推測される。そのため、重合液を繰り返し使用しても、グラフト重合率の低下が起こりにくいものと推測される。
【0014】
高分子基材を構成する材料としては、例えば本発明の好適な用途であるイオン交換膜など耐薬品性(特に耐アルカリ、耐酸性水)を有すること、電離放射線を照射した後の適度な重合性単量体溶液との親和性を有することなどからポリオレフィンが好ましい。
【0015】
ポリオレフィンの具体例としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン(PE−LD)、高密度ポリエチレン(PE−HD)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体の水添物が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、本製造方法の効果がより顕著になる観点から、PE−HD、PE−LD、エチレン−αオレフィン共重合体、EVA、及び、EVOHからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、PE−HD、PE−LD、及び、エチレン−αオレフィン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。ポリオレフィンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
高分子基材の形態は、限定されないが、例えば、フィルム、不織布が挙げられる。特にグラフト鎖がイオン交換基を有する高分子基材をイオン交換膜として使用する場合などのように、イオン交換基の耐熱性の観点で熱成形が難しく、最初からフィルム(膜)状になってなっていることが好ましい用途では、フィルムであることが好ましい。なかでも、グラフト鎖付き高分子基材をイオン交換膜として用いた場合の性能が優れる観点から、フィルムが好ましい。
フィルムの膜厚は、グラフト重合率がより向上する観点から、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましく、100μm以下が特に好ましい。フィルムの膜厚の下限値は、通常30μmが好ましい。
【0017】
電離放射線の具体例としては、α線、β線、γ線、電子線、及び、紫外線が挙げられ、高分子基材を均質に活性化できる観点から、γ線及び電子線が好ましく、電子線がより好ましい。
本実施形態に係る製造方法においては、電離放射線として電子線を用い、かつ、フィルム状の高分子基材(すなわち、高分子基材の形態がフィルム)を用いるのが好ましい。この場合、搬送されるフィルム状の特定高分子基材に対して、搬送経路上で、電子線を照射できる。この方法によれば、大量の高分子基材に対して電子線を照射する場合であっても、高分子基材を均質に活性化できるので、工業上の生産性に優れる。
以下では、電離放射線として電子線を用いる場合の実施形態について説明するが、他の電離放射線を用いた場合にも適用できる。
【0018】
図1は、本実施形態に係る製造方法のうち、高分子基材に1回で所定量の電子線を照射する工程の例を表す模式図である。ロール状に巻き回された高分子基材10はロール11から巻き出される。巻き出されてフィルム状となった高分子基材13は、搬送経路に沿ってD1方向に搬送される。高分子基材13は、搬送経路に沿って搬送されながら、搬送経路に沿って配置された第1電子線源14から出射された電子線の照射を1回受ける(図中、Z1が電子線照射位置を表す。)。その後、高分子基材13は、ロール16により巻き取られる。このとき、第1電子線源14から出射される電子線は、高分子基材13に照射される照射線量が1回の照射で、80〜500kGyとなるよう調整される。
【0019】
図2は、本実施形態に係る製造方法のうち、高分子基材に2回に分けて所定量の電離放射線を照射する工程の例を表す模式図である。ロール状に巻き回された高分子基材10はロール11から巻き出される。巻き出されてフィルム状となった高分子基材13は、搬送経路に沿ってD1方向に搬送される。高分子基材13は、搬送経路に沿って搬送されながら、搬送経路に沿って配置された第1電子線源14から出射された電子線の照射を1回受ける(図中、Z1が電子線照射位置を表す。)。その後、高分子基材13は、第1電子線源14と間隔を空けて設けられた第2電子線源15の電子線照射位置Z2まで搬送され、再び電子線の照射を1回受ける。その後、高分子基材13は、ロール16により巻き取られる。このとき、第1電子線源14及び第2電子線源15から出射される電子線は、高分子基材13に照射される照射線量が2回の合計で80〜500kGyとなるよう調整される。
【0020】
図3は、本実施形態に係る製造方法のうち、高分子基材に2回に分けて所定量の電離放射線を照射する工程の他の例を表す模式図である。ロール状に巻き回された高分子基材10はロール11から巻き出される。巻き出されてフィルム状となった高分子基材13は、搬送経路に沿ってD2方向に搬送される。高分子基材13は、搬送経路に沿って搬送されながら、搬送経路に沿って配置された第1電子線源14から出射された電子線の照射を1回受ける(図中、Z3が電子線照射位置を表す。)。その後、高分子基材13は搬送経路に沿って、D3方向に搬送され、再び電子線照射位置Z3において第1電子線源14から出射された電子線の照射を1回受ける。その後、高分子基材13は、ロール16により巻き取られる。このとき、第1電子線源14から出射される電子線は、高分子基材13に照射される照射線量が2回の合計で80〜500kGyとなるよう調整される。
【0021】
高分子基材に1回で、又は、2回に分けて照射される電離放射線の照射線量は、合計で80〜500kGyである。
照射線量の合計(連続照射の場合は1回の照射線量)が80kGy以上であると、酸化防止剤が失活するとともに、十分な量のラジカルを高分子基材から発生させることができる。一方、照射線量が500kGy以下であると、発生したラジカル同士が意図しない架橋反応を起こしにくく、また、高分子基材が熱変性しにくい。そのため、結果として、グラフト重合率、寸法安定性、及び、外観に優れたグラフト鎖付き高分子基材が得られる。上記の傾向は、高分子基材を構成する材料がポリオレフィン、特にポリエチレン(PE−HD、PE−LD)の場合に顕著である。
【0022】
図2及び図3に示したような電子線が2回に分けて照射される本実施形態に係る製造方法は、1回目の電子線照射の後、未照射となる間に、高分子基材が冷却されるため、所定の照射線量となるよう電子線を照射した場合でも高分子基材の温度が上がりにくい。従って、発生したラジカル同士の意図しない架橋反応、及び、高分子基材の熱変性がより発生しにくい観点からより好ましい。電子線の照射が断続的である場合の、各回の照射の間隔は、高分子基材の温度が、構成する材料の軟化点未満で維持されるよう選択されるのが好ましい。すなわち、未照射の間に高分子基材が冷却され、次回の電子線照射時に高分子基材の温度が、構成する材料の軟化点以上とならないよう、未照射の間隔が選択されるのが好ましい。なお、未照射となる際に、不活性ガスを吹き付ける等の方法によって高分子基材を冷却してもよい。
【0023】
なお、高分子基材に2回以上に分けて所定量の電子線を照射する方法としては、上記に制限されず、例えば、図1において説明した工程を2回以上繰り返す方法により実施してもよい。すなわち、図1において、ロール16によって巻き取られたロール状の高分子基材を、再度図1のロール11にセットして、電子線照射を繰り返してもよいし、図1においてロール16によって巻き取られた高分子基材をD1とは逆方向に搬送経路上を搬送して、再度電子線照射を実施してもよい。また、上記を3回以上繰り返してもよい。特にこの方法であれば複雑な照射線源が1ヶ所ですみ、装置の大型化を抑制することができるため好ましい方法と言える。
なお、この場合、第1電子線源14の照射線量は、合計で80〜500kGyとなるよう調整される。
【0024】
また、図2において、第1電子線源14と第2電子線源15を用いて高分子基材に2回電子線を照射する例を示したが、電子線源は3つ以上設けられていてもよい。
また、図3において、高分子基材は電子線照射位置Z3を2回通過しているが、高分子基材は、Z3を3回以上通過してもよい。いずれの場合も、電子線源からの照射線量は、合計が80〜500kGyとなるよう調整される。
【0025】
また、本製造方法は、酸化防止剤を含有する高分子基材を製造する工程を有していてもよい。
高分子基材がフィルムである場合、高分子材料(上述したポリオレフィン等)を準備して、高分子材料を含有するフィルム形成用材料を調製した後、フィルム形成用材料をシート状(フィルム状)に成形する方法が挙げられる。この場合、高分子材料自体の製造時、フィルム形成用材料の調製時及びフィルム成形時に、酸化防止剤を添加すればよい。フィルム形成用材料をシート状に成形する方法の具体例としては、例えば、インフレーション法、Tダイ法、カレンダー法、及び、スカイブ法が挙げられる。
【0026】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤が挙げられる。フェノール系酸化剤は、ラジカル連鎖反応による高分子材料の酸化を、発生したラジカルを安定ラジカルに変化させることによって停止させる機能を有しているため、電離放射線を照射して高分子基材にグラフト鎖を導入する方法において特に問題になりやすい。
【0027】
フェノール系酸化防止剤とは、フェノール構造を有し、酸化防止機能を有する化合物であれば特に限定されない。フェノール系酸化防止剤の具体例としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル(BASF社製の商品名「Irganox 1135」として入手可能)、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル(BASF社製の商品名「Irganox 1076」として入手可能)、テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール(BASF社製の商品名「Irganox 1010」として入手可能)が挙げられる。
なお、高分子基材中におけるフェノール系酸化防止剤の含有量は特に制限されず、高分子基材の酸化防止機能が得られる程度で適宜選択される。
【0028】
本製造方法は、高分子基材と重合液とを接触させて、ラジカル重合性単量体に基づくグラフト鎖を特定高分子基材に導入する。具体的には、高分子基材と重合液との接触により、ラジカル重合性単量体が重合して、高分子基材にグラフト鎖が導入される。
【0029】
ラジカル重合性単量体は、ラジカル重合性基(例えば、エチレン性二重結合基)を有する単量体を意味する。
ラジカル重合性単量体は、グラフト鎖にイオン交換基を導入するのが容易になって、高分子基材をイオン交換膜として使用できる観点から、イオン交換基を導入し得る基(例えば、芳香族基)を有するのが好ましい。
【0030】
ラジカル重合性単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸及びその誘導体(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル)、スチレン及びスチレン誘導体(例えば、スチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、クロロスチレン、下式(1)で示される化合物、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン)、及び、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル)、アクリロニトリル、ブタジエン、などが挙げられる。
これらの中でも、スチレン及びスチレン誘導体が好ましく、スチレン、p−クロロメチルスチレン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、及び、下式(1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の単量体がより好ましい。スチレン及びスチレン誘導体は、酸化防止剤(特にフェノール系酸化防止剤)の影響を受けやすいため、本製造方法の効果がより顕著に発揮されるので好ましい。また、スチレン及びスチレン誘導体は、イオン交換基を導入し得る基を有するため、イオン交換基(後述)を導入して得られるイオン交換膜の製造に適している観点からも好ましい。
イオン交換基を導入し得る基の具体例としては、芳香族基、下式(1)に挙げられるハロアルキル基、ピリジニウム基などが挙げられる。
ラジカル重合性単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
【化1】
【0032】
式中の記号は、以下の意味を示す。
は、炭素数1〜6の2価の炭化水素基又はエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜6の2価の炭化水素基である。炭化水素基は、飽和炭化水素基であっても、不飽和炭化水素基であってもよい。また、炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐状であっても、環状であってもよく、これらを組み合わせた基であってもよい。
Xは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)を表す。
式(1)で表される化合物の具体例としては、p−クロロメチルスチレン、p−4ブロモブチルスチレンなどが挙げられる。
【0033】
ラジカル重合性単量体の含有量は、重合液の全質量に対して、10〜80質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。
【0034】
重合液は、溶媒を含むのが好ましい。溶媒は、ラジカル重合性単量体を均一に溶解できる溶媒(例えば有機溶媒)や、ラジカル重合性単量体を懸濁又は乳化させて分散できる溶媒(例えば水)でもよい。これらの中でも、ラジカル重合性単量体を特定高分子基材に均一に接触できる観点から、ラジカル重合性単量体を溶解できる溶媒が好ましく、有機溶媒がより好ましい。
有機溶媒の具体例としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼン等の含塩素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びテトラロン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、乳酸メチル及び乳酸エチル等のエステル溶媒、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン及びデカン等の炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールモノアセテート等のアルコール溶媒、ならびに、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン及びドデシルベンゼン等の芳香族溶媒が挙げられる。
溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶媒の含有量は、重合液の全質量に対して、20〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましい。
【0035】
高分子基材と重合液とを接触させる方法の具体例としては、浸漬法、塗布法などが挙げげられる。これらの方法において、例えばフィルム基材の場合はフィルムを反応槽の中にロール状に巻いて浸漬しても良いし、フィルムを2つのロール間を連続的に往復しながらその搬送経路中で液に浸漬もしくは塗布法により接触させるような方法を取ることもできる。なかでも、グラフト鎖を高分子基材に均質に導入できる観点から、浸漬法が好ましい。
上記接触時の温度(すなわち重合温度)は、20〜80℃が好ましく、25〜70℃がより好ましい。
【0036】
本製造方法では、グラフト鎖を高分子基材に導入した後、グラフト鎖にイオン交換基を導入するのが好ましい。これにより、本製造方法によって得られるグラフト鎖付き特定高分子基材が、イオン交換膜として使用できる。
イオン交換基の導入方法の具体例としては、以下に示すカチオン交換基の導入方法及びアニオン交換基の導入方法が挙げられる。
カチオン交換基の導入方法の具体例としては、クロロスルホン酸をジクロロメタン、ジクロロエタン又はジクロロベンゼン等の溶媒に溶解させた溶液、無水硫酸及び/又はクロロスルホン酸を濃硫酸に溶解させた溶液、又は、濃硫酸と、高分子基材(例えば、スチレンに基づく繰り返し単位を有するグラフト鎖を有する高分子基材)とを接触(例えば、浸漬)させて、グラフト鎖にスルホン酸基を導入する方法が挙げられる。これらの方法については特に温度について限定されるものではないが、濃硫酸と接触させる方法については例えば40℃〜80℃の範囲で加熱することも好ましい方法である。
【0037】
アニオン交換基の導入方法の具体例としては、クロロメチルスチレンもしくは上記式(1)で表される化合物を重合して得られるグラフト鎖中のハロゲン化アルキル基と、弱塩基性イオン交換基を導入可能な化合物(例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン)、もしくは、強塩基性イオン交換基を導入可能な化合物(例えば、トリメチルアミン、ジメチルアミンエタノール、トリエタノールアミン)と、を反応させて、グラフト鎖に弱塩基性イオン交換基又は強塩基性イオン交換基を導入する方法が挙げられる。
【0038】
また、重合性単量体がピリジン環を有するものはそのままでも良いし、硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、リン酸などのプロトンを有する酸によりプロトン酸塩化する方法、ヨウ化メチル、臭化メチル、塩化メチル、硫酸ジメチル、臭化エチル、臭化ブチルなどに代表されるアルキル化剤によりピリジン環を4級化する方法などで、アニオン交換基をすることができる。
【0039】
本発明の第2の実施形態に係るグラフト鎖付き高分子基材の製造方法は、酸化防止剤を含有する高分子基材を溶媒に浸漬し、酸化防止剤を溶媒に溶出させた後、浸漬後の高分子基材に電離放射線を照射して、浸漬後の高分子基材からラジカルを発生させ、次いで照射後の高分子基材とラジカル重合性単量体を含む溶液とを接触させて、ラジカル重合性単量体に基づくグラフト鎖を照射後の高分子基材に導入することを特徴とする、グラフト鎖付き高分子基材の製造方法である。
なお、上記実施形態に係る製造方法における条件、及び、使用する材料等について、以下に説明がないものは、既に説明した第1の実施形態に係る製造方法と同様である。
【0040】
上記実施形態に係る製造方法では、高分子基材を重合液と接触させる前に、予め高分子基材から酸化防止剤を溶出させるため、重合液に酸化防止剤が溶出しにくいものと推測される。そのため、重合液を繰り返し使用してもグラフト重合率の低下が起こりにくいものと推測される。
【0041】
高分子基材を浸漬させる溶媒としては、酸化防止剤を溶解させるものであって、かつ、高分子基材を膨潤させうるものが好ましい。具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、及び、ジクロロベンゼン等の含塩素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及び、テトラロン等のケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、乳酸メチル、及び、乳酸エチル等のエステル溶媒;シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、及び、ブチルシクロヘキサン等の環状炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、及び、ドデシルベンゼン等の芳香族溶媒が挙げられる。これらの溶媒を2種以上混合して使用してもよい。
【0042】
特に、高分子基材を構成する材料が、ポリオレフィン、中でもポリエチレンである場合には、溶媒は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、又は、これらの混合物が、重合開始剤の溶解性、高分子基材の膨潤性、及び、処理後の乾燥性を考慮すると好ましい。
【0043】
高分子基材を上記溶媒に浸漬させる方法としては、膨潤後の高分子基材における高分子基材の質量(g)に対する溶媒の質量(g)の質量比(百分率)が10〜2000質量%となるよう浸漬するのが好ましく、50〜1000質量%がより好ましく、100〜500質量%が更に好ましい。なお、高分子基材を溶剤に浸漬させる場合、高分子基材に電離放射線を照射する前に実施するのが好ましい。
【0044】
本実施形態に係る製造方法では、高分子基材に照射される電離放射線の照射線量は、特に制限されず、グラフト鎖を高分子基材に導入するのに十分な量のラジカルが発生する程度の照射線量を任意に選択できる。具体的には、照射線量が100〜350kGyが好ましく150〜250kGyがより好ましい。
なお、電離放射線の照射は2回以上に分けて実施されてもよく、その場合には、合計の照射線量が上記の範囲内となるのが好ましい。その場合、1回の照射線量としては、高分子基材に生成する熱量やその他副反応を抑制するという観点で100KGy以下、より好ましくは70KGy以下、特に好ましくは50KGy以下である。
【実施例】
【0045】
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの例に限定されない。なお、後述する表中における各成分の配合量は、質量基準を示す。
【0046】
[例1]
膜厚70μmの高密度ポリエチレン(PE−HD)フィルムを準備し、このフィルムを、1,2−ジクロロエタンに浸漬した。このとき、フィルムの質量(g)に対する1,2−ジクロロエタンの質量(g)の質量比は500質量%であった。次に、液温を40℃に維持しながら、24時間静置した。次に、1,2-ジクロロエタンを回収し、ガスクロマトグラフ質量分析装置で分析したところ、1,2-ジクロロエタン中からBHT(フェノール系酸化防止剤に該当する)及び下式の構造の酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤に該当する)が検出された。
【0047】
【化2】
【0048】
浸漬後のPE−HDフィルムを上記と同様の条件で、1,2−ジクロロエタンに再度浸漬し、回収した1,2−ジクロロエタンを分析したが上記酸化防止剤は検出されなかった。従って、上記浸漬後のPE−HDフィルムからは酸化防止剤が除去されていることが確認された。
【0049】
次に上記浸漬後のPE−HDフィルムに、電子線源を有する電子線照射装置を使用して、窒素雰囲気下、25℃、加速電圧200keVで、照射線量が60kGyとなるよう、電子線を照射した。次に、照射後のPE−HDフィルム1gを大気中で取り出し、500mlガラス容器に移し替えた後、容器内を高純度窒素によりバブリングし、予め同様に高純度窒素バブリングにより酸素ガスを除いた重合液(スチレン40質量部、クロロメチルスチレン4質量部、キシレン60質量部の質量比で混合した液)500mlに、30℃で6時間浸漬してグラフト重合させた。次に、グラフト重合鎖付きPE−HDフィルムをガラス容器より取り出し、アセトンで洗浄し、80℃で3時間乾燥した。このフィルムのグラフト重合率を測定したところ、70%であった。なお、グラフト重合率は以下の式により求めた。
グラフト重合率(%)=100×[(グラフト重合による質量増加分)/(グラフト重合前の高分子基材の質量]
【0050】
[例2]
例1で用いた膜厚70μmのPE−HDフィルムについて、1,2−ジクロロエタンに浸漬せずそのまま用いたことを除いては、例1と同様の方法でグラフト重合鎖付きPE−HDフィルムを製造し、グラフと重合率を測定したところ、60%だった。
【0051】
[例3]
例1の重合液を繰り返し使用し、フィルムのみ毎回新たに例1と同様の方法で1,2−ジクロロエタンに浸漬したフィルムを用いて、グラフト重合鎖付きPE−HDフィルムの製造を例1と同様の条件で繰り返し、繰り返し回数が10回目、30回目において得られたグラフト重合鎖付きPE−HDフィルムのグラフト重合率を測定したところ、それぞれ69%、67%だった。上記から、重合液を繰り返し使用してもグラフト重合率がほとんど低下しないことがわかった。
【0052】
[例4]
例2の重合液を繰り返し使用し、フィルムのみ毎回新たに例2と同様の膜厚70μmのPE−HDフィルムを用いて、グラフト重合鎖付きPE−HDフィルムの製造を例2と同様の条件で繰り返し、繰り返し回数が10回目、30回目において得られたグラフト重合鎖付きPE−HDフィルムのグラフト重合率を測定したところ、それぞれ56%、50%だった。上記から、重合液の繰り返し使用によりグラフト重合率が低下することがわかった。
【0053】
[例5]
低密度ポリエチレンを含有する高密度ポリエチレンの70μm膜厚のフィルムについて、アセトンに一晩浸漬後、回収したアセトンを分析したところ、酸化防止剤として、BHT(フェノール系酸化防止剤に該当する)、Irganox1076(商品名、フェノール系酸化防止剤に該当する)、Irgafos168(商品名、フェノール系酸化防止剤に該当しない)、SumilaizarGP(商品名、フェノール系酸化防止剤に該当する)が各々20ppm、300ppm、100ppm、1300ppm検出された。
このフィルムに電子線源を有する電子線照射装置を使用し、窒素雰囲気下、25℃、加速電圧200keVで照射線量を変えて照射した後、上記と同様に分析したところ、照射線量が120KGy以上となると、上記酸化防止剤はすべて非検出となることがわかった。
【0054】
[例6]
例5の低密度ポリエチレンを含有する高密度ポリエチレンの70μm膜厚のフィルムに電子線源を有する電子線照射装置を使用し、窒素雰囲気下、25℃、加速電圧200keVで、照射線量が、それぞれ40kGy、100kGy、150kGyとなるようで照射した。照射後のフィルムを1g相当を切り出し、500ccガラス容器に移し替えた後、容器内を高純度窒素によりバブリングし、予め同様に高純度窒素バブリングにより酸素ガスを除いた重合液(スチレン40質量部、クロロメチルスチレン4質量部、キシレン60質量部の質量比で混合した液)500ccに、30℃で6時間浸漬させ、グラフト重合した。次に、得られたグラフト鎖付きフィルムをガラス容器より取り出し、アセトンで洗浄し、80℃で3時間乾燥させ、グラフト重合率を測定した。また、同じ重合液を使用し、フィルムのみ新たに同じ条件で照射したものを用いてグラフト鎖付きフィルムを繰り返し製造し、繰り返し回数が5回目、10回目において得られたグラフト鎖付きフィルムのグラフと重合率を測定した。結果を表1に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
なお、表1中、(数値)kGy×(数値)回とあるのは、1回につき(数値)kGyの照射線量で、(数値)回照射を実施したことを示す。
【0057】
なお、合計照射線量が150kGyである場合、照射回数が1回のもの(表中「150kGy」とあるもの)は照射により発生した熱によりフィルムの一部に変形が見られたが実用範囲内であった。また、繰り返しによるグラフト重合率の低下は見られなかったが、100kGyのものより全体としてグラフト重合率は低かった。
【0058】
一方、合計照射線量が150kGyで照射回数が2回、又は、3回のものは、フィルムに変形も無く、グラフト重合率が高く、繰り返しによるグラフト重合率の低下もほぼ見られなかった。
上記の結果から、照射線量は、100kGy以上が好ましく、また、照射線量が合計150kGy以上となる場合には、断続的に照射するのが好ましいとわかった。
【符号の説明】
【0059】
10 巻き回された高分子基材
11、16 ロール
13 フィルム状の高分子基材
14 第1電子線源
15 第2電子線源
図1
図2
図3