特許第6983582号(P6983582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オルガノ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983582
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】浄水器用カートリッジ及び軟化用浄水器
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20060101AFI20211206BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20211206BHJP
   B01J 39/05 20170101ALI20211206BHJP
   B01J 39/20 20060101ALI20211206BHJP
   B01J 41/14 20060101ALI20211206BHJP
   B01J 41/04 20170101ALI20211206BHJP
   B01J 47/028 20170101ALI20211206BHJP
【FI】
   C02F1/42 A
   C02F1/28 D
   C02F1/28 R
   B01J39/05
   B01J39/20
   B01J41/14
   B01J41/04
   B01J47/028
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-165929(P2017-165929)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-42637(P2019-42637A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年4月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 治雄
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−039698(JP,A)
【文献】 特開平10−137751(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0321926(US,A1)
【文献】 特開2016−022443(JP,A)
【文献】 特開平05−220477(JP,A)
【文献】 特開平09−038642(JP,A)
【文献】 特開2003−340448(JP,A)
【文献】 特開2005−288438(JP,A)
【文献】 特開2017−087184(JP,A)
【文献】 特開2004−147541(JP,A)
【文献】 特開2006−061747(JP,A)
【文献】 特開2005−342684(JP,A)
【文献】 特開2012−223700(JP,A)
【文献】 特開2008−073686(JP,A)
【文献】 特開2004−174357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/42
C02F 1/28
B01J 39/00−49/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道水の供給口及び軟化水の排出口が形成されているカートリッジ容器と、
該カートリッジ容器内の軟化処理材の充填領域に充填されている軟化処理材とを有し、
該軟化処理材は、上流側に積層されている第一層と、下流側に積層されている第二層と、で形成されており、該第一層は、基体がスチレン−ジビニルベンゼン共重合体であり且つNa形又はK形の強酸性カチオン交換樹脂からなり、該第二層は、ポリアミン型のアニオン交換樹脂からなること、
を特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項2】
前記塩形の強酸性カチオン交換樹脂のカチオン交換容量(eq/L−R)に対する前記ポリアミン型のアニオン交換樹脂のアニオン交換容量(eq/L−R)の比(アニオン交換容量/カチオン交換容量)が、0.01〜0.2であることを特徴とする請求項1記載の浄水器用カートリッジ。
【請求項3】
前記ポリアミン型のアニオン交換樹脂の一部が、塩酸形であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の浄水器用カートリッジ。
【請求項4】
前記第二層が、更に、粒状活性炭を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の浄水器用カートリッジ。
【請求項5】
前記ポリアミン型のアニオン交換樹脂に対する前記粒状活性炭の混合割合(粒状活性炭/ポリアミン型のアニオン交換樹脂)が、体積基準で、0.5〜2.0であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の浄水器用カートリッジ。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項記載の浄水器用カートリッジと、
該浄水器用カートリッジを収納する筐体と、
を有することを特徴とする軟化用浄水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水を浄化する共に軟化する軟化用浄水器及びそれに用いられる浄水器用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
軟水の効能として、(a)お茶やコーヒーの味をまろやかにする、(b)調理器具等のスケール発生を防止する、(c)石鹸の泡立ちが良くなる、(d)グラス等容器へのウォーターマーク発生を抑制する等がある。このため、従来から、軟化機能を有する浄水器が広く利用されている。
【0003】
水の軟化方法としては、(1)カチオン交換樹脂を用いる方法、(2)NF(Nanofiltration;ナノろ過)又はRO(Reverse Osmosis;逆浸透)膜を用いる方法、(3)アルカリ剤を添加することにより沈澱したものを除去する方法などがある。これらの中で、エネルギー効率や装置の維持管理面から、上記(1)のカチオン交換樹脂を用いる方法が優れている。
【0004】
軟化用浄水器として、カチオン交換樹脂を用いる方法を選択した場合、硬度除去性能が重要視されることはもちろんのこと、カチオン交換樹脂自体からの不純物の溶出により、処理水品質を損なわないことも重要である。
【0005】
カチオン交換樹脂自体からの溶出物対策としては、例えば、特開平7−204631号公報(特許文献1)に、カチオン交換樹脂と活性炭を混合した浄水器が開示されている。
【0006】
また、特開2016−22443号公報(特許文献2)には、強酸性カチオン交換樹脂からのホルムアルデヒドの溶出を抑制するために、架橋度が16〜24%の強酸性カチオン交換樹脂が充填された浄水器用カートリッジが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−204631号公報
【特許文献2】特開2016−22443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、カチオン交換樹脂からの溶出物のうち、ホルムアルデヒドは、活性炭に吸着され難いため、引用文献1の浄水器では、カチオン交換樹脂からのホルムアルデヒドの除去は不十分であった。
【0009】
また、引用文献2の浄水器用カートリッであってもなお、強酸性カチオン交換樹脂から溶出するホルムアルデヒドの除去が不十分であるとの問題、特に一定時間静置後、通水再開初期の軟化水へのホルムアルデヒドの溶出量が多いとの問題があった。
【0010】
従って、本発明の目的は、強酸性カチオン交換樹脂から溶出するホルムアルデヒドを低減することができる浄水器用カートリッジ及びそれが用いられている軟化用浄水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような上記課題は、以下の本発明によって解決される。
すなわち、本発明(1)は、水道水の供給口及び軟化水の排出口が形成されているカートリッジ容器と、
該カートリッジ容器内の軟化処理材の充填領域に充填されている軟化処理材とを有し、
該軟化処理材は、上流側に積層されている第一層と、下流側に積層されている第二層と、で形成されており、該第一層は、基体がスチレン−ジビニルベンゼン共重合体であり且つNa形又はK形の強酸性カチオン交換樹脂からなり、該第二層は、ポリアミン型のアニオン交換樹脂からなること、
を特徴とする浄水器用カートリッジを提供するものである。
【0012】
また、本発明(2)は、前記塩形の強酸性カチオン交換樹脂のカチオン交換容量(eq/L−R)に対する前記ポリアミン型のアニオン交換樹脂のアニオン交換容量(eq/L−R)の比(アニオン交換容量/カチオン交換容量)が、0.01〜0.2であることを特徴とする(1)の浄水器用カートリッジを提供するものである。
【0013】
また、本発明(3)は、前記ポリアミン型のアニオン交換樹脂の一部が、塩酸形であることを特徴とする(1)又は(2)いずれかの浄水器用カートリッジを提供するものである。
【0014】
また、本発明(4)は、前記第二層が、更に、粒状活性炭を含有することを特徴とする(1)〜(3)いずれかの浄水器用カートリッジを提供するものである。
【0015】
また、本発明(5)は、前記ポリアミン型のアニオン交換樹脂に対する前記粒状活性炭の混合割合(粒状活性炭/ポリアミン型のアニオン交換樹脂)が、体積基準で、0.5〜2.0であることを特徴とする(1)〜(4)いずれかの浄水器用カートリッジを提供するものである。
【0016】
本発明(6)は、(1)〜(5)いずれかの浄水器用カートリッジと、
該浄水器用カートリッジを収納する筐体と、
を有することを特徴とする軟化用浄水器を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、強酸性カチオン交換樹脂から溶出するホルムアルデヒドを低減することができる浄水器用カートリッジ及びそれが用いられている軟化用浄水器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の浄水器用カートリッジは、水道水の供給口及び軟化水の排出口が形成されているカートリッジ容器と、
該カートリッジ容器内の軟化処理材の充填領域に充填されている軟化処理材と、
を有し、
該軟化処理材は、上流側に積層されている第一層と、下流側に積層されている第二層と、で形成されており、該第一層は、塩形の強酸性カチオン交換樹脂からなり、該第二層は、ポリアミン型のアニオン交換樹脂からなること、
を特徴とする浄水器用カートリッジである。なお、本発明において、上流側とは、軟化処理材の充填領域の水道水の供給側を指し、また、下流側とは、軟化処理材の充填領域の軟化水の排出側を指す。
【0019】
本発明の浄水器用カートリッジは、水道水の供給口及び軟化水の排出口が形成されているカートリッジ容器と、カートリッジ容器内の軟化処理材の充填領域に充填されて軟化処理材と、を有する。そして、本発明の浄水器用カートリッジは、水道水の供給口と、軟化用浄水器の筐体内に形成されている水道水の供給経路とが繋がり、且つ、軟化水の排出口と、軟化用浄水器の筐体内に形成されている軟化水の排出経路とが繋がるように、軟化用浄水器の筐体内に設置される。
【0020】
本発明の浄水器用カートリッジに係る軟化処理材は、上流側に積層されている第一層と、下流側に積層されている第二層と、の2つの充填層が積層されて形成されている。第一層は、塩形の強酸性カチオン交換樹脂からなる。第二層は、ポリアミン型のアニオン交換樹脂からなるか、又はポリアミン型のアニオン交換樹脂と粒状活性炭の混合物からなる。軟化処理材は、本発明の浄水器用カートリッジのカートリッジ容器内の軟化処理材の充填領域に充填されて、軟化処理材層を形成している。
【0021】
塩形の強酸性カチオン交換樹脂の基体は、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体である。塩形の強酸性カチオン交換樹脂の基体を形成する樹脂材は、水道水と接触すると、ホルムアルデヒドを発生させ、被処理水へホルムアルデヒドを放出する。
【0022】
塩形の強酸性カチオン交換樹脂は、ゲル型構造、マクロポーラス型構造、ポーラス型構造のいずれの構造でもよい。そして、塩形の強酸性カチオン交換樹脂の構造は、ゲル型構造が、交換容量が高いので硬度吸着量が多くなる点で、好ましい。
【0023】
塩形の強酸性カチオン交換樹脂のカチオン交換基は、スルホン酸基である。また、塩形の強酸性カチオン樹脂の塩形は、Na形又はK形である。
【0024】
塩形の強酸性カチオン交換樹脂としては、例えば、ダウケミカル製のアンバージェット1220Na、住化ケムテックス製のイマックHP1220Naが挙げられる。また、塩形の強酸性カチオン交換樹脂としては、強酸性カチオン交換樹脂であるダウエックス製のアンバージェット1020H等を、Na形又はK形に変換したものでもよい。
【0025】
塩形の強酸性カチオン交換樹脂の湿潤状態のイオン交換容量は、好ましくは1.5〜3.0(eq/L−R)、特に好ましくは1.7〜2.7(eq/L−R)である。
【0026】
塩形の強酸性カチオン交換樹脂の調和平均径は、好ましくは400〜900μm、特に好ましくは500〜800μmである。
【0027】
ポリアミン型のアニオン交換樹脂の基体は、特に制限されず、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリル酸−ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。ポリアミン型のアニオン交換樹脂の架橋度は、樹脂材の種類により、適宜選択される。
【0028】
ポリアミン型のアニオン交換樹脂は、ゲル型構造、マクロポーラス型構造、ポーラス型構造のいずれの構造でもよい。そして、ポリアミン型のアニオン交換樹脂の構造は、マクロポーラス型が好ましい。
【0029】
ポリアミン型のアニオン交換樹脂のアニオン交換基は、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基及び第四級アンモニウム基のうちのいずれか1種、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせである。第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基及び第四級アンモニウム基としては、通常、ポリアミン型のアニオン交換樹脂に用いられている基であれば、特に制限されない。ポリアミン型のアニオン交換樹脂中のアミン基は、塩酸形に変換されていてもよい。
【0030】
ポリアミン型のアニオン交換樹脂は、一部が塩酸形であることが、処理水である軟化水のpHを7近くに調節し易くなる点で、好ましい。ポリアミン型のアニオン交換樹脂中のアミン基が塩酸形に変換されている割合は、アミン基の種類や導入量等により、適宜選択される。
【0031】
ポリアミン型のアニオン交換樹脂としては、例えば、ピュロライト社製のピュロライトA830W、三菱化学社製のダイアイオンWA20等が挙げられる。
【0032】
ポリアミン型のアニオン交換樹脂の湿潤状態のイオン交換容量は、好ましくは2〜4(eq/L−R)、特に好ましくは2.5〜3.5(eq/L−R)である。ポリアミン型のアニオン交換樹脂のイオン交換容量が、上記範囲であることにより、ホルムアルデヒドの吸着性能が高くなる。
【0033】
ポリアミン型のアニオン交換樹脂の調和平均径は、好ましくは300〜1200μm、特に好ましくは500〜1000μmである。
【0034】
本発明の浄水器用カートリッジに係る軟化処理材は、上流側に積層されており且つ塩形の強酸性カチオン交換樹脂からなる第一層と、下流側に積層されており且つポリアミン型のアニオン交換樹脂からなる第二層と、の2つの充填層が積層されて形成されている。そして、本発明の浄水器用カートリッジでは、軟化処理材の上流側に塩形の強酸性カチオン交換樹脂が配置され、且つ、下流側にポリアミン型のアニオン交換樹脂が配置されていることにより、ホルムアルデヒドの発生源である強酸性カチオン交換樹脂の層(第一層)の直後に、ホルムアルデヒドの吸着能が高いポリアミン型のアニオン交換樹脂の層(第二層)が存在しているので、ホルムアルデヒドが、強酸性カチオン交換樹脂から溶出しても、速やかに、ポリアミン型のアニオン交換樹脂に吸着される。そのため、本発明の浄水器用カートリッジに係る軟化処理材は、強酸性カチオン交換樹脂から溶出するホルムアルデヒドの除去性能に優れる。
【0035】
軟化処理材として、塩形の強酸性カチオン交換樹脂のみ、又は塩形の強酸性カチオン交換樹脂と粒状活性炭の混合物で、水道水を処理する場合、連続して軟化処理材に水道水が流通されているときは、被処理水と強酸性カチオン交換樹脂との接触時間が非常に短いので、ホルムアルデヒドが強酸性カチオン交換樹脂から溶出してきたとしも、処理水である軟化水中のホルムアルデヒド濃度は非常に低く、ホルムアルデヒドの溶出が問題になることはない。また、軟化処理材への水道水の流通が停止されている時間が短いときは、軟化水へのホルムアルデヒドの溶出量が少ないため、ホルムアルデヒドの溶出が問題になることは少ない。それに対して、一定時間軟化処理材への水道水の流通がされないまま静置されている状態が続くと、浄水器用カートリッジの軟化処理材の充填領域で、被処理水と強酸性カチオン交換樹脂とが接触している時間が長くなるので、軟化処理材の充填領域内の軟化水へ溶出して蓄積されるホルムアルデヒド量が多くなる。そのため、一定時間静置後、通水再開初期の軟化水中のホルムアルデヒドの濃度が高くなってしまい、軟化水へのホルムアルデヒドの溶出の問題が生じる。
【0036】
塩形の強酸性カチオン交換樹脂とポリアミン型のアニオン交換樹脂の混合物が充填領域に充填されていると、被処理水と強酸性カチオン交換樹脂とが長時間接触しても、強酸性カチオン交換樹脂から溶出するホルムアルデヒドが、近傍に存在しているポリアミン型のアニオン交換樹脂にすぐに吸着されるので、溶出したホルムアルデヒドの除去性は高くなる。しかし、この場合、負の電荷を有する強酸性カチオン交換樹脂と正の電荷を有するポリアミン型のアニオン交換樹脂が、電気的に凝集してクランピングを起こし、体積が膨張してしまう。そのため、カートリッジ容器の容積を大きくする必要が生じる。
【0037】
それに対して、本発明の浄水器用カートリッジでは、軟化処理材の充填領域の上流側に塩形の強酸性カチオン交換樹脂が、下流側にポリアミン型のアニオン交換樹脂が、それぞれ別の層として積層されて充填されているので、強酸性カチオン交換樹脂とポリアミン型のアニオン交換樹脂との電気的な凝集によるクランピングが起こらない。そのため、本発明の浄水器用カートリッジは、カートリッジの容積が大きくなり過ぎず、且つ、一定時間静置後、通水再開初期の軟化水中のホルムアルデヒドの溶出の問題を防ぐことができる。
【0038】
軟化処理材中の塩形の強酸性カチオン交換樹脂の湿潤状態のカチオン交換容量(eq/L−R)に対するポリアミン型のアニオン交換樹脂の湿潤状態のアニオン交換容量(eq/L−R)の比(アニオン交換容量/カチオン交換容量)は、好ましくは0.01〜0.2、特に好ましくは0.01〜0.1である。軟化処理材中の塩形の強酸性カチオン交換樹脂のカチオン交換容量に対するポリアミン型のアニオン交換樹脂のアニオン交換容量の比が、上記範囲にあることにより、強酸性カチオン交換樹脂から溶出するホルムアルデヒドの除去性能が高くなり、かつポリアミン樹脂からの溶出物が処理水質に悪影響を与えない。
【0039】
軟化処理材を形成する第二層は、ポリアミン型のアニオン交換樹脂に加え、更に、粒状活性炭を含有するもの、すなわち、ポリアミン型のアニオン交換樹脂と、粒状活性炭と、からなる混合物であってもよい。粒状活性炭は、水道水中の残留塩素除去、強酸性カチオン樹脂からの溶出有機物除去、ポリアミン樹脂からの溶出有機物除去の機能を果たす。
【0040】
粒状活性炭は、球形又は不定形の粒状の活性炭である。粒状活性炭としては、木粉系、ヤシガラ系、フェノール樹脂系、石油コークス系、石炭コークス系、ピッチ系等の原料が賦活された材料が挙げられる。粒状活性炭としては、例えば、フタムラ社製の太閤活性炭CW480PGR、CN480Gや、クラレ製のクラレコールGW−B等が挙げられる。
【0041】
粒状活性炭の比表面積は、好ましくは600〜1800m/g、特に好ましくは800〜1800m/gである。また、粒状活性炭の全細孔容積は、好ましくは0.4〜1.4mL/g、特に好ましくは0.6〜1.4mL/gである。
【0042】
粒状活性炭は、体積基準の粒度分布において、0.180〜2.36mmの範囲に90%以上存在しているものが好ましく、0.180〜2.36mmの範囲に95%以上存在しているものが特に好ましい。
【0043】
粒状活性炭の真密度は、好ましくは1.5〜2.5g/mL、特に好ましくは1.9〜2.3g/mLである。
【0044】
軟化処理材中、ポリアミン型のアニオン交換樹脂の量に対する粒状活性炭の量の比(粒状活性炭/ポリアミン型のアニオン交換樹脂)は、体積基準で、0.5〜2.0であることが好ましく、0.5〜1.0であることが特に好ましい。
【0045】
本発明の浄水器用カートリッジは、水道水の供給口と、本発明の軟化用浄水器の筐体内に形成されている水道水の供給経路とが繋がり、且つ、軟化水の排出口と、本発明の軟化用浄水器の筐体内に形成されている軟化水の排出経路とが繋がるように、本発明の軟化用浄水器の筐体内に設置される。
【0046】
そして、水道水が、本発明の軟化浄水器内に供給され、本発明の軟化用浄水器の筐体内の水道水の供給経路を経て、軟化処理材の充填領域内に供給されて、軟化処理材層に通液される。水道水が、軟化処理材層を通過するときに、軟化処理材により、水道水中の硬度成分であるCaイオン及びMgイオンが、軟化処理材の塩形の強酸性カチオン交換樹脂のNaイオン又はKイオンに交換されて、水道水が軟化される。軟化された処理水は、本発明の軟化浄水器の筐体内の軟化水の排出経路を経て、本発明の軟化用浄水器の外に排出され、軟化水として使用される。
【0047】
本発明の軟化用浄水器は、本発明の浄水器用カートリッジと、本発明の浄水器用カートリッジを収納する筐体と、を有することを特徴とする軟化用浄水器である。
【0048】
本発明の軟化用浄水器により処理される被処理水は、水道水である。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0050】
(実施例1)
内径4.6cm、高さ100cmのアクリルカラム内に、イオン交換容量2.2(eq/L−R、湿潤状態)、調和平均径610μmのNa形強酸性カチオン交換樹脂(アンバージェット 1220Na、ダウケミカル社製)900mLを上流側に、イオン交換容量3.0(eq/L−R、湿潤状態)、調和平均径850μmのポリアミン型のアニオン交換樹脂、ピュロライトA830W、ピュロライト社製)18mLを下流側に積層する形で充填し、カートリッジを作製した。
次いで、そのカートリッジ内に、水温23℃の水道水をSV60BV/hrで15分間通水を行った。その後、カーリッジ内に水道水が溜まった状態で、23℃の調節した室内にて、24時間放置した。
24時間放置後、再び、水温23℃の水道水をSV60BV/hrで1分間通水し、その間の処理水を採取した。次いで、処理水のホルムアルデヒド濃度を分析した。その結果を表1に示す。
【0051】
<イオン交換樹脂の調和平均径の測定方法>
ベックマンコールター社製のレーザー回折散乱法粒度分布測定装置(商品名:LS 13 320(湿式システム))を用いて測定した。
【0052】
(比較例1)
内径4.6cm、高さ100cmのアクリルカラム内に、Na形強酸性カチオン交換樹脂(アンバージェット 1220Na、ダウケミカル社製)900mLと、ポリアミン型のアニオン交換樹脂(ピュロライトA830W、ピュロライト社製)18mLの混合物を充填したこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0053】
(比較例2)
内径4.6cm、高さ100cmのアクリルカラム内に、Na形強酸性カチオン交換樹脂(アンバージェット 1220Na、ダウケミカル社製)を900mLと、比表面積1400m/g、粒径0.18〜0.355mmの範囲内が95%の粒状活性炭(太閤活性炭CW480PGR、フタムラ化学社製)を100mLとを混合したこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0054】
(比較例3)
内径4.6cm、高さ100cmのアクリルカラム内に、Na形強酸性カチオン交換樹脂(アンバージェット 1220Na、ダウケミカル社製)を900mLのみを充填すること以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0055】
(実施例2)
内径4.6cm、高さ100cmのアクリルカラム内に、Na形強酸性カチオン交換樹脂(アンバージェット 1220Na、ダウケミカル社製)を900mLを上流側に、ポリアミン型のアニオン交換樹脂(ピュロライトA830W、ピュロライト社製)18mLと、粒状活性炭(太閤活性炭CW480PGR、フタムラ化学社製)18mLと、の混合物を下流側に充填したこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
軟化処理材が、塩形の強酸性カチオン交換樹脂からなる第一層とポリアミン型のアニオン交換樹脂層からなる第二層の積層物である実施例1は、通水再開後のホルムアルデヒドの溶出量が低減されており、且つ、充填領域の体積は、充填前のそれぞれの体積の合計(使用量の合計)と比べて、違いがなかった。また、塩形の強酸性カチオン交換樹脂からなる第一層とポリアミン型のアニオン交換樹脂層及び粒状活性炭の混合物からなる第二層との積層物である実施例2は、通水再開後のホルムアルデヒドの溶出量が低減されており、且つ、充填領域の体積は、充填前のそれぞれの体積の合計(使用量の合計)と比べて、粒状活性炭の影響により少し膨張しているものの、膨張量は少なく留まっている。一方、軟化処理材に、塩形の強酸性カチオン交換樹脂層とポリアミン型のアニオン交換樹脂層の混合物を充填したものを用いた比較例1では、通水再開後のホルムアルデヒドの溶出量は、実施例1及び2に比べ少ないものの、イオン交換樹脂同士のクランピングにより充填領域の体積が、充填前のそれぞれの体積の合計(使用量の合計)と比べて、膨張しており、その膨張は大きかった。