【文献】
戸上 真人 Masahito TOGAMI,人間共生ロボット“EMIEW”の聴覚機能 Auditory Ability of Human-Symbiotic robots "EMIEW",AIチャレンジ研究会(第22回) SIG−Challenge−0522 Proceedings of the 22nd Meeting of Special Interest Group on AI Challenges,日本,社団法人人工知能学会AIチャレンジ研究会 Special Interest Group on AI Challenges Japanese Society for Artificial Intelligence,2006年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記決定手段は、前記検出手段により検出された前記複数のマイクロフォンの少なくとも何れかの状態が変化した場合に、当該変化の前の前記複数のマイクロフォンの状態と当該変化の後の前記複数のマイクロフォンの状態とに基づいて前記パラメータを決定することを特徴とする請求項1に記載の音響処理装置。
前記決定手段により決定される前記パラメータは、前記生成手段による前記音響信号の生成における複数の収音信号の合成比率に関するパラメータを含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の音響処理装置。
前記決定手段は、前記検出手段により検出された前記複数のマイクロフォンのうちの第1マイクロフォン及び第2マイクロフォンの状態が変化した場合に、当該変化の前の前記第1マイクロフォンの収音領域と当該変化の後の前記第2マイクロフォンの収音領域とが重なるか否かに基づいて、前記パラメータを決定することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の音響処理装置。
前記決定手段は、前記取得手段により取得される視点情報が示す視点の移動経路における始点位置、終点位置、及び前記検出手段により検出された状態が変化した対象のマイクロフォンに応じて決まる位置の何れかに対応する音響信号が前記生成手段により生成されるように、前記パラメータを決定することを特徴とする請求項10に記載の音響処理装置。
前記決定工程においては、前記検出工程において検出された前記複数のマイクロフォンの少なくとも何れかの状態が変化した場合に、当該変化の前の前記複数のマイクロフォンの状態と当該変化の後の前記複数のマイクロフォンの状態とに基づいて前記パラメータが決定されることを特徴とする請求項15に記載の音響処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
[システム構成]
図1は、音響処理システム10の構成の概略を示す図である。音響処理システム10は、レコーダ101、レコーダ104、マイクロフォン105−120、プリアンプ200−215、及び処理装置130を有する。本実施形態において、複数のマイクロフォン105−120を特に区別しない場合には単にマイクロフォンと記載し、複数のプリアンプ200−215を特に区別しない場合には単にプリアンプと記載する。
【0013】
本実施形態において複数のマイクロフォン105−120は、収音対象の空間である競技場内のフィールド100の周囲に設置されており、フィールド100におけるサッカーの試合に関する音や、スタジアムの観客席(スタンド)の音を収音する。なお、複数のマイクロフォンは複数の位置において収音を行えるように設置されていればよく、フィールド100の周囲全体にわたって設置されていなくてもよい。また、収音対象の空間は競技場に限らず、例えばライブステージなどであってもよい。
【0014】
マイクロフォン105−120にはそれぞれプリアンプが接続されており、各マイクロフォンによる収音に基づく収音信号が対応するプリアンプに出力される。プリアンプ200−215のそれぞれは、マイクロフォン105−120のうちの対応するマイクロフォンにより収音された収音信号に対して信号処理を行い、処理済みのデータをレコーダ101又はレコーダ104に送信する。プリアンプによる信号処理は、具体的には、リミッタ処理、コンプレッサ処理及びA/D変換などである。レコーダ101及びレコーダ104はプリアンプ200−215から受信したデータを記録し、処理装置130はレコーダ101及びレコーダ104により記録されたデータを取得して音響信号の生成などを行う。
【0015】
図1に示すように、複数のプリアンプ200−207はディジタルオーディオインタフェースを介してデイジーチェーン接続されており、プリアンプ200及びプリアンプ207はレコーダ101に接続されている。すなわち、プリアンプ200−207及びレコーダ101はリング型のネットワークを構成する。このような構成のもと、プリアンプ200−206はそれぞれ隣のプリアンプにデータを出力し、各プリンアンプからレコーダ101へ送信されるデータは何れもプリアンプ207を経由してレコーダ101に入力される。同様に、レコーダ101から各プリアンプに送信される制御データは、何れもプリアンプ200を経由してリレー方式で伝送される。
【0016】
プリアンプ200−207及びレコーダ101の間のディジタルオーディオ伝送にはStandard AES 10−1991として定義されているMADI(Multichannel Audio Digital Interface)が用いられる。ただし、データの伝送方式はこれに限定されない。
【0017】
プリアンプ200−207をデイジーチェーン接続することにより、レコーダ101と各プリアンプとを直接接続する場合と比べて、使用する接続ケーブルの合計の長さを短くすることができる。その結果、システムのコストを低減することができ、且つ設置の容易性を向上することができる。
【0018】
また、プリアンプ208−215及びレコーダ104も、上記のプリアンプ200−207及びレコーダ101と同様に、デイジーチェーン接続されている。なお、プリアンプ200−215のすべてが1つのリング型ネットワークに含まれるように接続してもよい。この場合、レコーダ101及びレコーダ104の何れか一方のみが音響処理システム10に含まれていてもよい。
【0019】
次に、
図1に概略を示した音響処理システム10の機能構成の詳細について、
図2を用いて説明する。
図2においては、マイク113−119、プリアンプ208−215及びレコーダ104について省略しているが、その構成は
図2に示すマイクロフォン105−112、プリアンプ200−207及びレコーダ101と同様である。
【0020】
マイクロフォン105は、前方収音マイク303、後方収音マイク304、前方位置センサ305、及び後方位置センサ306を有する。前方収音マイク303は、指向性を有するマイクであり、マイクロフォン105の前方の音を収音する。後方収音マイク304は、指向性を有するマイクであり、マイクロフォン105の後方の音を収音する。本実施形態に係る音響処理システムにおいては、前方収音マイク303が競技場のフィールド方向の音を収音し、後方収音マイク304が観客席の方向の音を収音するように、マイクロフォン105が設置される。なお、前方収音マイク303と後方収音マイク304とは、指向性の方向だけでなく収音距離や収音角度なども異なっていてもよい。前方収音マイク303及び後方収音マイク304により収音された収音信号は、プリアンプ200のコンプレッサ/リミッタ処理部400に出力される。
【0021】
本実施形態では、マイクロフォン105が前方と後方の音を収音するものとするが、これに限らず、例えば右方向と左方向の音を収音してもよい。また、マイクロフォン105は上記のような所定方向とその反対方向の音とに限らない複数の異なる方向の音を収音してもよい。さらに、マイクロフォン105が備えるマイクは単一であってもよいし、無指向性のマイクであってもよい。
【0022】
前方位置センサ305は、マイクロフォン105の前方先端付近に設置されており、設置位置の座標情報を取得する。後方位置センサ306は、マイクロフォン105の後方先端付近に設置されており、設置位置の座標情報を取得する。座標情報の取得方法としては、例えばGPS(Global Positioning System)を用いることができる。前方位置センサ305及び後方位置センサ306により取得される座標情報は、マイクロフォン105の位置及び向きを特定するための情報となる。これらの座標は、プリアンプ200の領域算出部402に出力される。
【0023】
なお、マイクロフォン105に設置されるセンサはマイクロフォン105の位置及び向きを特定するための情報を取得できればよく、その構成は上記のものに限定されない。例えば、マイクロフォン105には前方先端と後方先端に限らず任意の位置に複数のGPSセンサが設置されていてもよいし、GPSセンサに限らずジャイロセンサや重力センサ、加速度センサなどが設置されていてもよい。また、マイクロフォン105が無指向性のマイクを備える場合などには、マイクロフォン105の向きを特定する情報は取得できなくてもよい。また、マイクロフォン105は、別のマイクロフォンに対する相対位置や相対方向を取得するために、当該別のマイクロフォンとの間で赤外線などを介した通信を行ってもよい。
【0024】
図3(a)は、マイクロフォン105の物理的な構成例を示している。上述の構成要素に加えて、マイクロフォン105は、スタンド300、風防301、及びグリップ302を有する。なお、マイクロフォン106−112の構成も、マイクロフォン105の構成と同様である。
【0025】
プリアンプ200は、コンプレッサ/リミッタ処理部400、コーデック処理部401、領域算出部402、メタデータ算出部403、MADIエンコード部404、MADIインタフェース405を有する。コンプレッサ/リミッタ処理部400は、マイクロフォン105から入力された収音信号に対して、音の強弱の差を縮小するコンプレッサ処理や、音量のピークを抑制するリミッタ処理などを実行する。コーデック処理部401は、コンプレッサ/リミッタ処理部400により処理されたアナログ信号をディジタルデータに変換するA/D変換処理を実行する。
【0026】
領域算出部402は、前方位置センサ305及び後方位置センサ306から入力されたマイクロフォン105の座標情報とマイクロフォン105の特性とに基づいて、マイクロフォン105の収音領域を算出する。収音領域とは、マイクロフォン105が所定の感度で音を収音することができる領域であり、マイクロフォンの位置、向き及び指向性に応じて決まる領域である。マイクロフォンの特性及び収音領域の詳細については後述する。メタデータ算出部403は、領域算出部402が算出したマイクロフォン105の収音領域を示すメタデータを生成する。
【0027】
MADIエンコード部404は、コーデック処理部401により生成された音響データとメタデータ算出部403により生成メタデータを多重化し、MADIインタフェース405に出力する。MADIインタフェース405は、MADIエンコード部404から取得したデータとレコーダ101が有するMADIインタフェース405から入力されたデータとに基づくデータを、プリアンプ201が有するMADIインタフェース405へ出力する。
【0028】
なお、プリアンプ201−207の構成も、プリアンプ200と同様である。ただし、プリアンプ201−206のMADIインタフェース405には、隣接するプリアンプのMADIインタフェース405からデータが入力される。また、プリアンプ207のMADIインタフェース405は、レコーダ101のMADIインタフェース405にデータを出力する。
【0029】
レコーダ101は、MADIエンコード部404、MADIインタフェース405、及びMADIデコード部406を有する。MADIエンコード部404及びMADIデコード部406の構成は、上述したプリアンプ201のものと同様である。ただし、レコーダ101のMADIエンコード部404には処理装置130のチャネル制御部410から制御データが入力され、当該制御データがMADIインタフェース405を介して各プリアンプに送信される。また、レコーダ101のMADIインタフェース405は、プリアンプ207のMADIインタフェース405から入力されたデータをMADIデコード部406に出力する。
【0030】
MADIデコード部406は、レコーダ101のMADIインタフェース405から取得したデータを音響データとメタデータに分離し、処理装置130の蓄積部407に記録する。なお、音響データとメタデータを保持する保持部をレコーダ101が備えていてもよい。
【0031】
処理装置130は、蓄積部407、領域比較部408、音響生成部409、及びチャネル制御部410を有する。蓄積部407は、マイク情報450、キャリブレーション結果451、メタデータ452、音響データ453、カメラパス情報454などを蓄積する。
【0032】
マイク情報450は、マイクロフォン105−119の構成に関する情報である。キャリブレーション結果451は、マイクロフォン105−119の設置時に測定された各マイクロフォンの位置や向きに関する情報である。メタデータ452は、レコーダ101及びレコーダ104のMADIデコード部406により記録されるメタデータである。音響データ453は、レコーダ101及びレコーダ104のMADIデコード部406により記録される音響データである。カメラパス情報454は、音響処理システム10により生成される音響信号と共に再生される映像の撮影位置や撮影方向に関する情報である。
【0033】
領域比較部408は、マイク情報450とキャリブレーション結果451に基づいて特定される各マイクロフォンの設置時の収音領域と、メタデータ452に基づいて特定される各マイクロフォンの収音領域とを比較する。領域比較部408はこの比較により、設置されたマイクロフォンの位置や向きが変化したことを検出し、検出結果をチャネル制御部410に出力する。
【0034】
音響生成部409は、チャネル制御部410から取得した合成パラメータやカメラパス情報454を用いて音響データ453を合成することで、マルチチャネル音響信号を生成する。生成された音響信号は、例えば5.1チャネルや22.2チャネルサラウンドの再生環境を構成するスピーカ(不図示)などに出力される。音響生成部409による音響データの生成は、音響信号の編集を行うユーザ(以降、編集ユーザ)による操作に応じて実行される。
【0035】
チャネル制御部410は、マイク情報450及び領域比較部408から取得した検出情報に基づいて合成パラメータを決定し、決定したパラメータを音響生成部409に出力する。また、チャネル制御部410は、プリアンプ200−215やマイクロフォン105−119を制御するための制御データを、レコーダ101及びレコーダ104のMADIエンコード部404へ出力する。チャネル制御部410による情報の出力は、音響処理システム10を管理するユーザ(以降、管理ユーザ)による操作に応じて実行される。なお、音響信号の編集を行う編集ユーザと音響処理システム10を管理する管理ユーザは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0036】
図3(b)は、処理装置130のハードウェア構成例を示している。なお、プリアンプ200−215やレコーダ101及びレコーダ104の構成も処理装置130と同様である。処理装置130は、CPU311、RAM312、ROM313、入力部314、外部インタフェース315、及び出力部316を有する。
【0037】
CPU311は、RAM312やROM313に格納されているコンピュータプログラムやデータを用いて処理装置130の全体を制御し、
図2に示した処理装置130の各構成要素を実現する。なお、処理装置130がCPU311とは異なる専用の1又は複数のハードウェアを有し、CPU311による処理の少なくとも一部を専用のハードウェアが行ってもよい。専用のハードウェアの例としては、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、およびDSP(デジタルシグナルプロセッサ)などがある。RAM312は、ROM313から読みだされたコンピュータプログラムやデータ、及び外部インタフェース315を介して外部から供給されるデータなどを一時的に記憶する。ROM313は、変更を必要としないコンピュータプログラムやデータを保持する。
【0038】
入力部314は、例えば操作ボタン、ジョグダイヤル、タッチパネル、キーボード、及びマウスなどで構成され、ユーザによる操作を受け付けて各種の指示をCPU311に入力する。外部インタフェース315は、レコーダ101やスピーカ(不図示)などの外部の装置と通信を行う。外部の装置との通信はLAN(Local Area Network)ケーブルやオーディオケーブルなどを用いて有線で行われてもよいし、アンテナを介して無線で行われてもよい。出力部316は、例えば、ディスプレイなどの表示部やスピーカなどの音声出力部で構成され、ユーザが処理装置130を操作するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりガイド音声を出力したりする。
【0039】
以上、音響処理システム10の構成について説明した。なお、音響処理システム10に含まれる各装置の構成は上記で説明したものに限らない。例えば、処理装置130とレコーダ101やレコーダ104が一体となって構成されていてもよい。また、音響生成部409が処理装置130とは別の生成装置として構成されていてもよい。この場合には、チャネル制御部410により決定されたパラメータを処理装置130が生成装置の音響生成部409へ出力し、音響生成部409は入力されたパラメータに基づいて音響信号の生成を行う。
【0040】
また、音響処理システム10は、
図1に示すように、複数のマイクロフォン105−120にそれぞれ対応する複数のプリアンプ200−215を有する。このように、複数のプリアンプが収音信号に対する信号処理を分散して行うことにより、単一のプリアンプの処理量が大きくなるのを抑制できる。ただし、
図4に示す音響処理システム20のように、マイクロフォンの数よりもプリアンプの数が少なくてもよい。
【0041】
音響処理システム20においては、マイクロフォン105−112により収音された収音信号がアナログ伝送によりプリアンプ102に出力される。そしてプリアンプ102は、入力された収音信号に信号処理を行い、複数チャネルの収音信号としてまとめてレコーダ101へ出力する。プリアンプ103も同様に、マイク113−120により収音された収音信号に対して信号処理を行い、複数チャネルの収音信号としてレコーダ104へ出力する。このような音響処理システム20を用いても、本実施形態を実現することができる。
【0042】
[動作フロー]
図5を用いて、処理装置130の動作の流れについて説明する。
図5に示す処理は、マイクロフォン105−120などの音響処理システム10に含まれる各装置が設置され、音響処理システム10の動作を開始させるためのユーザによる操作を処理装置130が受け付けたタイミングで開始される。動作開始のための操作は、例えば収音の対象となる試合の開始前の準備期間に行われる。そして、収音対象の試合が終了した後などに行われる終了操作を処理装置130が受け付けたタイミングで、
図5の処理が終了する。ただし、
図5に示す処理の開始タイミングや終了タイミングは上記タイミングに限定されない。なお、本実施形態では収音と音響信号の生成が平行してリアルタイムに行われる場合を中心に説明する。
【0043】
図5に示す処理は、CPU311がROM313に格納されたプログラムをRAM312に展開して実行することで実現される。なお、
図5に示す処理の少なくとも一部を、CPU311とは異なる専用の1又は複数のハードウェアにより実現してもよい。
【0044】
S501において、処理装置130は、設置されたマイクロフォンの調整(キャリブレーション)に関する処理を実行する。S501の処理の詳細は、
図6を用いて後述する。S502において、処理装置130は、収音信号に基づく音響信号の生成に関する処理を実行する。S502の処理の詳細は、
図7を用いて後述する。S502の処理が終了すると、処理装置130は
図5の処理フローを終了する。
【0045】
図5の処理フローが実行されることにより、音響処理システム10は、マルチチャネル音響信号を生成する。具体的には、複数のマイクロフォン105−120による収音に基づく複数チャネルの収音信号を、各マイクロフォンの設置位置や設置方向に応じたパラメータを用いて合成することで、音響信号を生成する。そして、生成された音響信号が適切な再生環境において再生されることで、例えば収音対象の空間であるフィールド100内の特定位置における音の聞こえ方を再現するようなことができる。
【0046】
なお、例えば競技場において収音が行われる場合には、選手やボールとマイクロフォンとの接触や、強風などの悪天候により、設置されたマイクロフォンの位置及び向きが変化してしまう場合がある。このような場合に、変化後に収音された収音信号に対して、変化前のマイクロフォンの位置及び向きに応じたパラメータを用いて合成処理を行うと、適切な音を再生可能な音響信号が生成されないことが考えられる。具体的には、フィールド100内の選手がいない方向から選手の声が聞こえてくるような聞こえ方になってしまうことが考えられる。
【0047】
そこで、本実施形態に係る音響処理システム10は、マイクロフォンの状態の変化を検出し、検出結果に応じてパラメータを再決定して収音信号の合成処理を行うことで、適切な音を再生可能な音響信号を生成する。また、音響処理システム10は、変化前のマイクロフォンの状態と変化後のマイクロフォンの状態とに基づいてパラメータを決定する。これにより、変化後のマイクロフォンの状態のみに基づいてパラメータを決定する場合と比べて、より適切な音を再生可能な音響信号を生成できる。ただし、音響処理システム10は、変化後のマイクロフォンの状態のみに基づいてパラメータを決定してもよい。
【0048】
[キャリブレーション]
次に
図6を用いて、
図5のS501の処理の詳細について説明する。S60において、処理装置130は、マイクロフォン105−120の設置情報をマイク情報450の一部として蓄積部407に格納する。設置情報とは、各マイクロフォンの目標となる設置位置や設置方向を示す情報である。設置情報は管理ユーザによる操作に基づいて設定されてもよいし、自動で設定されてもよい。なお、蓄積部407に格納されるマイク情報450には、設置情報に加えて、各マイクロフォンの指向性などの特性に関する情報が含まれてもよい。この特性に関する情報も、S60において設置情報と同様に格納されてもよい。
【0049】
S61において、処理装置130は、キャリブレーションの対象とするマイクロフォンを選択する。S62において、処理装置130は、S61において選択されたマイクロフォンに対応するメタデータを蓄積部407から読み出す。ここで読みだされるメタデータは、マイクロフォンの前方位置センサ305及び後方位置センサ306が取得した座標情報とマイクロフォンの特性とに基づいてプリアンプの領域算出部402により算出された収音領域を示すデータである。S63において、処理装置130は、S61において選択されたマイクロフォンの収音領域を、S62において読みだされたメタデータに基づいて特定する。
【0050】
S64において、処理装置130は、マイク情報450とS63において特定された収音領域とを参照し、S61において選択されたマイクロフォンの調整が必要であるか否かを判定する。例えば、選択されたマイクロフォンについてマイク情報450から特定される目標となる収音領域とS63において特定された実際の収音領域との差が閾値より大きい場合に、調整が必要と判定されてS65へ進む。一方、調整が必要でないと判定された場合、処理装置130は、S63における収音領域の特定結果をキャリブレーション結果451として蓄積部407に格納し、S67へ進む。なお、調整の要否の判定の方法はこれに限らない。例えば処理装置130は、目標となる収音領域と実際の収音領域とを示す画像を表示し、それに応じて管理ユーザにより入力された操作に基づいて、調整の要否を判定してもよい。また、収音領域の特定は必須ではなく、マイクロフォンの位置や方向から調整の要否が判定されてもよい。
【0051】
S65において、処理装置130は、マイクロフォンの調整指示を出力する。調整指示は例えば、調整すべきマイクを示す情報や必要な調整量を示す情報である。処理装置130は、調整指示を画像や音声により管理ユーザに対して出力してもよいし、管理ユーザとは異なるマイクロフォン設置担当者に対して出力してもよい。S66において、処理装置130は、マイクロフォンの調整の完了に関する操作を受け付け、S62に戻る。
【0052】
S67において、処理装置130は、音響処理システム10内のすべてのマイクロフォンについて調整が完了したか否かを判定する。すべてのマイクロフォンについて調整が完了したと判定された場合、
図6の処理フローを終了する。一方、完了していない場合はS61に戻り、未調整のマイクが新たに選択される。上述した
図6の処理フローが実行されることにより、適切なマイクロフォンの設置状態が実現される。
【0053】
[音響信号生成]
次に
図7を用いて、
図5のS502の処理の詳細について説明する。S70において、領域比較部408は、収音領域の確認の対象とするマイクロフォンを選択する。S71及びS72において、領域比較部408は、
図6を用いて説明したS62及びS63の処理と同様の処理により、S70において選択されたマイクロフォンの収音領域を特定する。
【0054】
S73において、領域比較部408は、S72において特定されたマイクロフォンの収音領域と、キャリブレーション結果451が示す当該マイクロフォンの収音領域とを比較する。S72において特定される収音領域は、前方位置センサ305及び後方位置センサ306により取得される最新の座標情報に応じた収音領域であり、キャリブレーション結果451が示す収音領域は、S501の処理が終了した時点における収音領域である。S73の処理の詳細については
図10を用いて後述する。S74において、領域比較部408は、S73において比較した収音領域の差が所定の範囲内であるか否かを判定する。収音領域の差が所定の範囲内である場合にはS76に進み、所定の範囲外である場合にはS75に進む。なお、領域比較部408は、収音領域の差を判定する代わりに、キャリブレーション時と比較したマイクロフォンの位置や向きの差が所定の範囲内であるか否かを判定してもよい。
【0055】
S75において、チャネル制御部410は、設置されたマイクロフォンの状態の変化が領域比較部408により検出されたと判断し、音響信号生成に用いられるパラメータの再設定に関する処理を行う。S75の処理の詳細については
図11を用いて後述する。再設定処理が終了すると、S76に進む。
【0056】
S76において、音響生成部409は、蓄積部407に格納された音響データ453に基づいて音響信号を生成する。ここで音響データ453は、複数のマイクロフォン105−120による収音信号に対する複数のプリアンプ200−215による信号処理の結果に応じた複数チャネルの収音信号により構成される。音響生成部409は、S75において設定されるパラメータを用いて、複数チャネルの収音信号のうち1以上のチャネルの収音信号を合成することで、音響信号を生成する。なお、S75の再設定処理が実行されていない場合、音響生成部409は、初期設定に基づくパラメータを用いて音響信号を生成する。初期設定に基づくパラメータは、S501の処理が行われた後にマイク情報450やキャリブレーション結果451、カメラパス情報454などに基づいて設定されるパラメータである。このパラメータは、S60において設定される設置情報に応じたマイクロフォン105−120の配置に適合したパラメータとなる。
【0057】
S77において、チャネル制御部410は、音響信号の生成を継続するか否かを判定する。例えば、チャネル制御部410は、音響信号の生成の終了に関する操作を受け付けた場合に、生成を継続しないと判定し、
図7の処理フローを終了する。一方、音響信号の生成を継続すると判定された場合には、S70に戻り、新たなマイクロフォンが選択される。
【0058】
S70におけるマイクロフォンの選択においては、例えばマイクロフォン105からマイクロフォン120まで順番に選択され、すべてのマイクロフォンについてS71からS76までの処理が行われた後には、再度マイクロフォン105が選択される。ただし、S70におけるマイクロフォンの選択方法はこれに限らない。
【0059】
上述した
図7の処理フローが実行されることにより、収音中に継続的にマイクロフォンの収音領域が確認され、マイクロフォンの状態の変化に応じて設定されたパラメータを用いて音響信号が生成される。
【0060】
[収音領域算出]
次に
図8を用いて、プリアンプがマイクロフォンの収音領域を算出する処理について説明する。収音領域は、マイクロフォンが所定の感度で音を収音することができる領域である。プリアンプによって算出された収音領域がメタデータとして蓄積部407へ伝送されることで、上述したS62及びS63の処理において処理装置130はマイクロフォンの収音領域を特定することができる。
【0061】
図8に示す処理は、音響処理システム10の動作が開始された後にプリアンプ200−215のそれぞれにより定期的に実行される。ただし、
図8の処理のタイミングはこれに限らず、例えば前方位置センサ305や後方位置センサ306からプリアンプの領域算出部402に座標情報が入力されたタイミングで
図8の処理が開始されてもよい。
図8に示す処理は、プリアンプが有するCPU311がROM313に格納されたプログラムをRAM312に展開して実行することで実現される。なお、
図8に示す処理の少なくとも一部を、CPU311とは異なる専用の1又は複数のハードウェアにより実現してもよい。
【0062】
S80において、領域算出部402は、対応するマイクロフォンの前方位置センサ305から座標情報を取得する。S81において、領域算出部402は、対応するマイクロフォンの後方位置センサ306から座標情報を取得する。S82において、領域算出部402は、S80及びS81において取得された座標情報に基づいて方向ベクトルを算出する。
【0063】
S83において、領域算出部402は、S82において算出された方向ベクトルに基づいて、対応するマイクロフォンの方向を取得する。本実施形態においてマイクロフォンの方向とは、そのマイクロフォンが指向性を有する方向である。後方位置センサ306に対する前方位置センサ305の方向が前方収音マイク303の方向となり、前方位置センサ305に対する後方位置センサ306の方向が後方収音マイク304の方向となる。
【0064】
S84において、領域算出部402は、対応するマイクロフォンの特性を示す情報を取得する。マイクロフォンの特性とは、マイクロフォンの収音距離と収音角度を含む情報である。なお、領域算出部402は、マイクロフォンの特性を示す情報を当該マイクロフォンから直接取得してもよいし、ユーザによる操作などに基づいて予めプリアンプに設定された情報を読み出してもよい。S85において、領域算出部402は、S80及びS81において取得した座標情報、S83において取得した方向、及びS84において取得した特性に基づいて、対応するマイクロフォンの収音領域を算出し、
図8の処理フローを終了する。
【0065】
図9(a)は、XYZ空間のY軸方向(水平方向)の視点におけるマイクロフォンとその収音領域の例を示している。また、
図9(b)はZ軸方向の視点における例を示している。
図9(a)のXZ平面上において、前方位置センサ305の座標は(X1,Z1)であり、後方位置センサ306の座標は(X2,Z2)であり、S83において算出される方向ベクトルは(X1−X2, Z1−Z2)で表現される。同様に、
図9(b)において、前方位置センサ305の座標は(X1,Y1)であり、後方位置センサ306の座標は(X2,Y2)であり、S83において算出される方向ベクトルは(X1−X2, Y1−Y2)で表現される。また、前方収音マイク303の収音距離は
図9(b)及び
図9(c)に示す収音距離L90であり、収音角度は角度θである。収音距離L90及び角度θは、マイクロフォンの種別や設定に応じて定まる。なお、
図9には前方収音マイク303の収音領域のみを示しているが、マイクロフォンにおける逆側には後方収音マイク304の収音領域が存在する。
【0066】
[動作:収音領域比較]
次に
図10を用いて、
図7のS73の処理の詳細について説明する。S1000において、領域比較部408は、キャリブレーション結果451からマイクロフォンのキャリブレーション時の収音領域を特定する。S1001において、領域比較部408は、S72においてメタデータ452から特定された収音領域とS1000においてキャリブレーション結果451から特定された収音領域との重複領域を算出する。
【0067】
S1002において、領域比較部408は、閾値の設定モードを確認する。設定モードは、例えば管理ユーザによる操作に応じて決定される。ユーザが閾値を設定するモードとなっている場合にはS1003に進み、システム内部の変数を用いて自動で閾値を設定するモードとなっている場合にはS1004に進む。S1003において、領域比較部408は、ユーザによる入力操作に基づいて閾値を取得する。一方S1004において、領域比較部408は、システム内部に保持されている変数に基づいて閾値を取得する。
【0068】
S1005において、領域比較部408は、S1001において算出された重複領域の大きさと、S1003またはS1004において取得された閾値とを比較する。S1006において、領域比較部408は、重複領域より閾値が大きいか否かを判定し、閾値の方が大きい場合はS1007に進み、閾値地の方が小さい場合はS1008に進む。
【0069】
S1007において、領域比較部408は、メタデータ452から特定された収音領域とキャリブレーション結果451から特定された収音領域との差が所定の範囲外であると判断し、
図10の処理フローを終了する。一方S1008において、領域比較部408は、収音領域の差が所定の範囲内であると判断し、
図10の処理フローを終了する。
【0070】
[パラメータ再設定処理]
次に
図11を用いて、
図7のS75の処理の詳細について説明する。S75の処理は、複数のマイクロフォン105−120の少なくとも何れかの状態の変化が領域比較部408により検出された場合に実行される処理である。S1100において、チャネル制御部410は、状態変化が検出された対象のマイクロフォンのキャリブレーション時の収音領域、すなわち状態変化の前の収音領域を、キャリブレーション結果451から取得する。
【0071】
S1101において、チャネル制御部410は、対象のマイクロフォンの変化前の収音領域と他のマイクロフォンの収音領域との重複領域を算出する。なお、他のマイクロフォンの状態も変化している場合には、チャネル制御部410は、対象のマイクロフォンの当該変化前の収音領域と他のマイクロフォンの当該変化後の収音領域との重複領域を算出する。
【0072】
S1102において、チャネル制御部410は、状態変化により対象のマイクロフォンの収音領域から外れてしまった領域のうち他のマイクロフォンを代用して収音可能な領域を、S1101において算出した重複領域に基づいて決定する。S1103において、チャネル制御部410は、蓄積部407に格納されているカメラパス情報454に基づいて、マルチチャネル音響信号を生成するために収音が必要な領域を決定する。例えば、カメラパス情報454が示す撮影位置が競技場内であり、その撮影位置に対応する音響信号が生成される場合、チャネル制御部410は、撮影位置から所定の距離内の領域を収音が必要な領域と決定する。
【0073】
S1104において、チャネル制御部410は、S1103において決定された領域にS1102において決定された代用可能な領域が含まれるか否かを判定する。代用可能な領域が含まれると判定された場合はS1105に進み、そうでなければS1106に進む。
【0074】
S1105において、チャネル制御部410は、対象のマイクロフォンが状態変化の前に収音していた領域の音の少なくとも一部が、他のマイクロフォンにより収音された音を代用して構成されるように、パラメータを再設定する。ここで設定されるパラメータには、例えば音響信号の生成における複数チャネルの収音信号の合成比率に関するパラメータが含まれる。ただしパラメータの内容はこれに限らず、位相補正や振幅補正に関するパラメータが含まれていてもよい。
【0075】
一方S1106において、チャネル制御部410は、他のマイクロフォンによる代用を行わずに音響信号が生成されるように、パラメータを設定する。例えば、対象のマイクロフォンが存在しないものとして他のマイクロフォンによる収音信号から音響信号が生成されるように、パラメータが設定される。また例えば、状態変化前の収音領域に関わらず、変化後の各マイクロフォンの収音領域に応じたパラメータが設定される。
【0076】
S1105又はS1106においてパラメータの再設定が行われると、
図11の処理フローを終了する。上述した
図11の処理フローを実行することにより、チャネル制御部410は、状態変化の前の複数のマイクロフォンの状態と当該変化の後の複数のマイクロフォンの状態とに基づいて、音響信号生成に用いられるパラメータを決定することができる。これにより、マイクロフォンの状態が変化した場合にも、生成される音響信号を用いて再生される音の聞こえ方が大きく変化することを抑制できる。
【0077】
なお、チャネル制御部410は、収音領域の特定結果を用いずにマイクロフォンの変化前後の位置や向きに基づいてパラメータを決定してもよい。この場合、状態変化前の対象のマイクロフォンと位置及び向きが近い他のマイクロフォンを代用するようにパラメータが決定されてもよい。
【0078】
[状態変化の例]
ここで
図12及び
図13を用いて、マイクロフォンの状態変化の例を説明する。
図12は、マイクロフォン109−116とそれらの設置時の収音領域1209−1216を示している。一方
図13は、
図12に示す状態から、マイクロフォン116の向きが何らかの原因で変化した状態を示している。マイクロフォン116の収音領域は収音領域1216から収音領域1316に変化している。
【0079】
ここで、マイクロフォン115の変化前の収音領域1216とマイクロフォン115の収音領域1215とは重複領域1315において重なっている。そのため処理装置130は、収音信号の合成に関するパラメータを再設定することで、マイクロフォン115による収音信号をマイクロフォン116による収音信号の一部として代用する。これにより、あたかもマイクロフォン116が収音領域1316と重複領域1315の両方の音を収音しているかのように扱って音響信号を生成することができ、状態変化の前との音の聞こえ方の変化が小さくなるような音響信号を生成できる。
【0080】
なお
図13の例では、マイクロフォン116の変化前の収音領域1216と変化後の収音領域1316とが重なる部分が大きいため、処理装置130は、変化後においてもマイクロフォン116に対応するチャネルの収音信号を用いて音響信号を生成する。一方、処理装置130は、状態の変化が検出された対象のマイクロフォン116に対応するチャネルの収音信号を音響信号の生成に用いるか否かを、マイクロフォン116の変化前の状態と変化後の状態とに基づいて決定してもよい。
【0081】
例えばチャネル制御部410は、マイクロフォン116の変化前の収音領域1216と変化後の収音領域1316とが重ならない場合に、マイクロフォン116に対応するチャネルの収音信号が音響信号の生成に用いられないようにパラメータを設定してもよい。具体的には、チャネル制御部410は、複数チャネルの収音信号の合成におけるマイクロフォン116に対応するチャネルの合成比率を0としてもよい。すなわち、チャネル制御部410により設定されるパラメータは、状態の変化が検出された対象のマイクロフォン116に対応するチャネルの収音信号を音響信号の生成に用いるか否かを表す。なお、変化前の収音領域と変化後の収音領域が重なるか否かによる判断に限らず、重なる領域の大きさや、マイクロフォンの変化前の方向と変化後の方向との関係などに基づいて、当該マイクロフォンによる収音信号を用いるか否かが判断されてもよい。
【0082】
マイクロフォン116の収音領域が変化前と変化後で大きく変わる場合には、収音される音も大きく異なってしまう。そのため、マイクロフォン116による収音信号を用いず、他のマイクロフォンによる収音信号から音響信号を生成することで、より適切な音を再生可能な音響信号を生成できる。
【0083】
[前方マイクと後方マイクの切り替え]
次に
図14を用いて、マイクロフォンの状態変化に応じて前方収音マイク303と後方収音マイク304を切り替える場合の動作について説明する。
図14の処理は、
図7のS75において行われる
図11に示す処理の変形例であり、
図11のS1100とS1101の処理の間にS1400からS1403の処理が挿入される。以下では、
図11の処理との差分について説明する。
【0084】
S1400において、チャネル制御部410は、蓄積部407に格納されたマイク情報450に基づいて、対応関係にある前方収音マイク303と後方収音マイク304を特定する。具体的には、同一の機器であるマイクロフォンに実装されており、且つ互いに異なる方向に指向性を有する前方収音マイク303と後方収音マイク304とが特定される。
【0085】
S1401において、チャネル制御部410は、状態変化が検出された対象のマイクロフォンについて、変化前の前方収音マイク303の収音領域と変化後の後方収音マイク304の収音領域との重複領域を算出する。S1402において、チャネル制御部410は、前方収音マイク303と後方収音マイク304との役割を交換可能か否か判定する。例えば、S1401において算出された重複領域の大きさが閾値以上であった場合に、交換可能であると判定され、S1403に進む。一方、交換可能でないと判定された場合はS1101に進み、以降は
図11で説明したものと同様の処理が行われる。なおチャネル制御部410は、収音領域の特定結果を用いずに、状態変化前後の前方収音マイク303と後方収音マイク304の向きに基づいて、役割の交換が可能か否かを判定してもよい。
【0086】
S1403において、チャネル制御部410は、対象のマイクロフォンについて前方収音マイク303と後方収音マイク304との役割を交換させる。具体的には、チャネル制御部410は、前方収音マイク303が状態変化の前に収音していた領域の音の少なくとも一部が、後方収音マイク304により収音された音を代用して構成されるように、音響信号の生成に用いられるパラメータを再設定する。また同様に、チャネル制御部410は、後方収音マイク304が状態変化の前に収音していた領域の音の少なくとも一部が、前方収音マイク303により収音された音を代用して構成されるように、音響信号の生成に用いられるパラメータを再設定する。そして
図14の処理フローを終了する。
【0087】
[マイク交換の例]
ここで
図15を用いて、マイクロフォンの役割を交換する例を説明する。
図15は、マイクロフォン116の向きが逆向きに変化した状態を示している。マイクロフォン116の前方収音マイク303の収音領域は収音領域1216から収音領域1518に変化し、後方収音マイク304の収音領域は収音領域1517から収音領域1516に変化している。
【0088】
収音領域1216と収音領域1516とは多くの部分が重なっており、同様に収音領域1517と収音領域1518とは多くの部分が重なっている。そのため処理装置130は、収音信号の合成に関するパラメータを再設定することで、前方収音マイク303の役割と後方収音マイク304の役割とを交換させる。その結果、処理装置130は、フィールド100の音を生成する場合には後方収音マイク304により収音された音を用い、観客席の音を生成する場合には前方収音マイク303により収音された音を用いることになる。
【0089】
なお、ここでは前方収音マイク303と後方収音マイク304との役割を交換させる場合について説明したが、これに限らず、筐体が異なる複数のマイクロフォンの役割が交換されてもよい。例えば、マイクロフォン115の位置とマイクロフォン116の位置が入れ替わってしまった場合に、これらのマイクロフォンの役割を交換させてもよい。このように、処理装置130は、複数のマイクロフォンの状態の変化が検出された場合に、当該変化の前の一方のマイクロフォンの収音領域と当該変化の後の他方のマイクロフォンの収音領域とが重なるか否かに基づいて、パラメータを決定してもよい。これにより、複数のマイクロフォンの位置や向きが入れ替わってしまった場合においても、生成される音響信号を用いて再生される音の聞こえ方の変化を抑制することができる。
【0090】
[カメラパスに応じた音響信号生成]
本実施形態において処理装置130は、カメラパス情報454に基づいて音響信号の生成を行う。具体的には、処理装置130は、音響生成部409により生成される音響信号と共に再生される映像に対応する視点(撮影位置及び撮影方向)を示す視点情報を、蓄積部407に格納されたカメラパス情報454から取得する。そして処理装置130は、音響信号の生成に用いるパラメータを、取得した視点情報及び上述したマイクロフォンの状態などに基づいて決定する。これにより処理装置130は、例えば競技場内に設置された複数のカメラを切り替えて撮影が行われる場合や、カメラを移動させながら撮影が行われる場合に、撮影位置に追従するような音響信号など、映像に適した音響信号を生成することができる。そして、生成された音響信号が適切な再生環境において再生されることで、例えば撮影位置における音の聞こえ方を再現することができる。
【0091】
ここで
図16を用いて、カメラパス(カメラの視点の移動経路)に応じた音響信号を生成するための処理装置130の動作について説明する。
図16の処理は、
図7のS76における音響信号の生成処理において実行される。S1700において音響生成部409は、カメラパス情報454から視点情報を取得する。ここで取得される視点情報は、例えば使用するカメラの切り替え順序や切り替え時刻を記したものであり、視点の移動経路を示す。
【0092】
S1701において、音響生成部409は、マイク情報450などに基づいて、各カメラと各マイクロフォンの位置関係を特定する。なお、位置関係の特定はS501におけるキャリブレーション時に行われてもよい。S1702において、処理装置130は各マイクロフォンの設置状況を確認する。例えばあるマイクロフォンについて検出された状態変化の変化量が閾値より大きい場合には、当該マイクロフォンの設置状況が異常であると判断される。一方、状態変化が検出されていない場合や変化量が閾値より小さい場合には、当該マイクロフォンの設置状況が正常であると判断される。
【0093】
S1703において、処理装置130は、S1700において取得された視点情報及びS1701において特定されたカメラとマイクの位置関係から、映像に応じた音響信号の生成に必要なマイクロフォンを特定する。そして処理装置130は、特定されたマイクロフォンすべての設置状況が正常であるか否かを判定する。特定されたマイクロフォンが全ての設置状況が正常である場合はS1704に進み、少なくとも1つのマイクロフォンの設置状況が異常である場合はS1705に進む。
【0094】
S1704において、処理装置130は、カメラパスに追従する位置の音を再現するような音響信号が生成されるように、パラメータを決定して収音信号の合成を行う。
【0095】
S1705において、処理装置130は、ユーザによる操作に応じて設定されるパス設定モードを確認する。パス設定モードには、以下の5つのモードが含まれる。
(1)カメラパスが開始する位置(始点位置)に対応する音響信号を生成するモード
(2)カメラパスが終了する位置(終点位置)に対応する音響信号を生成するモード
(3)ユーザによる指定に応じたカメラパス上の任意の固定位置に対応する音響信号を生成するモード
(4)設置状況が正常であるマイクロフォン付近の位置に対応する音響信号を生成するモード
(5)カメラパスの始点位置から設置状況が異常であるマイクロフォン付近の手前までの間のみ、カメラパスに追従する位置の音響信号を生成するモード
設定されたモードが(1)、(2)、及び(3)のモードの何れかである場合にはS1706に進み、(4)又は(5)のモードである場合にはS1707に進む。S1706及びS1707において、処理装置130は、モードに応じた音響信号が生成されるように、パラメータを設定して収音信号の合成を行う。
【0096】
以上のように、処理装置130は、カメラパスの始点位置、終点位置、及び状態の変化が検出された対象のマイクロフォンに応じて決まる位置などに対応する音響信号が音響生成部409により生成されるように、音響信号の生成に用いるパラメータを決定する。これにより、映像に適合した臨場感の高い音を再生可能な音響信号を生成できる。
【0097】
なお、音響生成部409により生成される音響信号と共に再生される映像は、カメラにより撮影された映像そのものに限らない。例えば、複数の方向から複数のカメラにより撮影された映像を合成することで、カメラの存在しない仮想的な視点に対応する映像である仮想視点映像を生成する技術がある。この技術によって、ユーザが任意に指定した視点に対応する映像が生成され、その映像が音響信号と共に再生されてもよい。この場合には、ユーザにより指定された視点に関する情報がカメラパス情報454として使用される。そして処理装置130は、ユーザにより指定された視点の移動経路であるカメラパスに応じた音響信号、すなわち指定された視点の位置における聞こえ方を再現するための音響信号を生成する。なお、仮想的な視点はユーザにより指定されるものに限らず、映像を生成するシステムにより自動で決定されてもよい。
【0098】
[ユーザインタフェース]
図16では、カメラパスに応じた位置に対応する音響信号が生成される場合について説明したが、これに限らず、処理装置130はユーザによる指定に応じた位置に対応する音響信号を生成してもよい。この場合に使用されるユーザインタフェースの例について、
図17を用いて説明する。本実施形態では、処理装置130が有するタッチパネルに
図17の画像が表示されるものとする。
【0099】
状態表示1605―1620は、マイクロフォン105―120の状態を示すものである。各マイクロフォンの状態表示は、設置状況1660と使用状況1661で構成される。設置状況1660については、「正常」であるか「異常」であるかが、上述したマイクロフォンの状態変化の検出結果に応じて表示される。使用状況1661については、ユーザによる指定に応じた音響信号の生成に使用される場合は「使用」と表示され、使用されない場合は「不使用」と表示される。
【0100】
マイクアイコン1625―1640がユーザによりタッチされると、処理装置130は、状態表示1605―1620の表示と非表示を切り替える。また、タッチパネル上でタッチしたままスライドする操作が行われると、処理装置130は、操作に応じたマイクパスを設定する。例えば、ユーザがマイクアイコン1632、マイクアイコン1630、マイクアイコン1629、及びマイクアイコン1636を順にスライド操作で指定すると、マイクパス1650が設定される。
【0101】
マイクパス1650が設定されると、処理装置130は、マイクパス1650上を移動する位置に対応する音響信号を生成する。なお、
図17ではマイクロフォンを経由するようなマイクパス1650が設定されているが、これに限らず、マイクロフォンが存在しない位置を指定することも可能である。
【0102】
[マイク状態の自動補正]
上述のように、処理装置130は、マイクロフォンの状態の変化が検出された場合、音響信号生成に用いるパラメータを再設定することで、再生される音の聞こえ方の変化を抑制する。しかしながら、マイクロフォンを変化前の状態に戻すことができれば、より適切な音を再生可能な音響信号を生成することができる。以下では、音響処理システム10が、状態の変化が検出された対象のマイクロフォンの状態を補正する制御を行う場合について説明を行う。
【0103】
図18は、マイクロフォン状態を補正する動作の流れを示す。ここではマイクロフォン105の状態の変化が検出されるものとする。
図18の左側の処理は処理装置130が実行する処理であり、右側の処理はマイクロフォン105が実行する処理である。
【0104】
S1902において、処理装置130は、マイクロフォン105の状態が変化したことを検出する。S1903において、処理装置130は、マイク情報450を参照して、マイクロフォン105がモータなどの動力を持つかを確認する。ここでは、マイクロフォン105が動力を持つ場合について示す。動力を持たない場合は、
図18の処理フローを終了し、上述したようにパラメータの再設定により対処される
S1904において、処理装置130は、マイクロフォン105に対して復帰指示を通知する。S1905において、マイクロフォン105は、設置時のキャリブレーションの情報を取得する。具体的には、蓄積部407に格納されているキャリブレーション結果451のうち、マイクロフォン105に対応する情報を、チャネル制御部410からMADIインタフェース405を介して受信する。S1906において、マイクロフォン105は、その時点における音響信号の生成にマイクロフォン105による収音信号が使用されているか否かを示す使用状態の情報を取得する。使用状態の情報の取得方法も、S1905におけるキャリブレーションの情報の取得方法と同一である。
【0105】
S1907において、マイクロフォン105は、マイクロフォン105が使用中であるか否かを使用状態の情報に基づいて判定する。使用中の場合、マイクロフォン105は状態の補正をすることが出来ない旨を処理装置130に通知し、S1908に進む。一方、使用中でない場合、S1909に進む。S1908において、処理装置130は、マイクロフォン105から補正不可の通知を受けとる。そして
図18の処理フローを終了する。なお、処理装置130は、マイクロフォン105が補正不可の場合に、マイクロフォン105による収音信号を使用しないように制御を行ってもよい。
【0106】
S1909において、マイクロフォン105は、前方位置センサ305及び後方位置センサ306を用いて座標情報を取得する。S1910において、マイクロフォン105は、S1905において取得したキャリブレーションの情報と、S1909において取得した座標情報から、変化前の状態に戻すために必要な補正方向及び補正量を算出する。そしてマイクロフォン105は、モータなどの動力を使用して状態の補正を行う。
【0107】
S1911において、マイクロフォン105は、補正が正しく完了したかを判定する。判定の結果、再調整が必要な場合にはS1909に戻る。一方、補正が完了したと判定された場合はS1912に進む。S1912において、マイクロフォン105は、補正を完了したことを処理装置130に通知する。S1913において、処理装置130は、補正が完了したことについての通知を受け、
図18の処理フローを終了する。
【0108】
図19は、音響処理システム10がマイクロフォンの状態を補正する機能を有する場合のユーザインタフェースの例を示す。
図17に示すものとの差分として、状態表示1609内に設置状況1660と使用状況1661に加えて、状態の補正を指示するためのボタン(補正ボタン1800)が表示される。補正ボタン1800がユーザによりタッチされた場合には、
図18を用いて説明したS1904以降の処理が実行される。
【0109】
以上のように、音響処理システム10は、マイクロフォンの状態の変化を検出し、マイクロフォンが補正に必要な動力を有する場合には自動で状態の補正を行う。これにより、ユーザによる補正の手間を削減しつつ、適切な音を再生可能な音響信号を生成できる状態に音響処理システムを復帰させることができる。
【0110】
[送受信インタフェース]
本実施形態においては、プリアンプ間の通信やプリアンプとレコーダとの間の通信にMADIインタフェースを用いる場合を中心に説明した。MADIインタフェースを用いると、マイクロフォンによる収音信号と収音領域などを示すメタデータとを合わせて伝送することができ、配線の増加を抑制できる。
【0111】
図20は、MADIインタフェースにより伝送されるデータの例を示したものである。伝送単位である1フレームは56チャネルで構成され、各チャネルにはマイクロフォンによる収音信号が格納される。また、各チャネルには収音信号が格納されない部分、例えばステータスビット2000が存在する。複数チャネルや複数フレームのステータスビット2000を用いることで、プリアンプから出力されるメタデータやチャネル制御部410からプリアンプへ送信される制御情報を伝送することができる。なお、音響処理システム10はMADIインタフェースとは異なるインタフェースによりデータを伝送してもよい。
【0112】
以上説明したように、本実施形態に係る処理装置130は、マイクロフォンの状態の変化を検出する。また処理装置130は、複数のマイクロフォンによる収音に基づく複数チャネルの収音信号のうち1以上のチャネルの収音信号に基づいて音響信号を生成する音響生成部409が音響信号の生成に用いるパラメータを決定する。このパラメータの決定において、処理装置130は、複数のマイクロフォンの少なくとも何れかの状態の変化が検出された場合には、当該変化の後の複数のマイクロフォンの状態に基づいてパラメータを決定する。このような構成によれば、マイクロフォンの状態が変化した場合における、複数のマイクロフォンによる収音に基づいて生成される音響信号を用いて再生される音の聞こえ方の変化を抑制することができる。
【0113】
なお本実施形態では、処理装置130が、マイクロフォンの設置の位置及び向きの少なくとも何れかの変化を当該マイクロフォンの状態の変化として検出するものとした。そしてマイクロフォンの状態の変化は、複数のセンサにより取得される情報に基づいて検出されるものとした。また、処理装置130が、変化前の複数のマイクロフォンの設置の位置及び向きと変化後の複数のマイクロフォンの設置の位置及び向きとに基づいて、音響信号の生成に用いるパラメータを決定する場合を中心に説明した。
【0114】
ただしこれに限らず、例えば処理装置130は、マイクロフォンの向きを検出せずに、マイクロフォンの位置の検出結果のみに基づいて合成パラメータを決定してもよい。具体的には、検出された位置の変化量が閾値以上であるマイクロフォンにより収音される収音信号が音響信号の生成に用いられないようにパラメータが決定されてもよい。マイクロフォンの位置の変化のみが検出されるような場合には、マイクロフォンに設置されるセンサは単一であってもよい。同様に、処理装置130は、マイクロフォンの位置を検出せずに、マイクロフォンの方向の検出結果のみに基づいて合成パラメータを決定してもよい。
【0115】
また例えば、処理装置130は、設置されたマイクロフォンの電源がOFFになったことやマイクロフォンの故障などを、当該マイクロフォンの状態の変化として検出してもよい。また例えば、処理装置130は、複数のマイクロフォンによる収音信号を比較し、他のマイクロフォンと特徴が大きく異なる収音信号を出力しているマイクロフォンがある場合に、当該マイクロフォンの状態が変化したと判断してもよい。
【0116】
また、本実施形態では、音響処理システム10が収音と並行して音響信号の生成を行う場合を中心に説明したが、これに限らず、例えば競技場における試合中に収音された収音信号を蓄積しておき、試合後に音響信号の生成を行ってもよい。この場合、音響処理システム10は、収音中にマイクロフォンの状態の変化が検出されたタイミングを記録しておく。そして音響処理システム10は、記録された情報を音響信号の生成時に使用して、音響信号の各時間区間に対応する合成パラメータを決定してもよい。
【0117】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC等)によっても実現可能である。また、そのプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。