特許第6983598号(P6983598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983598輸液バッグ用ガスバリア性積層体および輸液バッグ用包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983598
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】輸液バッグ用ガスバリア性積層体および輸液バッグ用包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20211206BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20211206BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B32B27/00 B
   B32B27/34
   B65D65/40 D
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-183915(P2017-183915)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-59052(P2019-59052A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信悟
(72)【発明者】
【氏名】守屋 英一
(72)【発明者】
【氏名】野本 晃
【審査官】 櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−061935(JP,A)
【文献】 特開2016−210024(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/088534(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/186074(WO,A1)
【文献】 特開2010−142348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 65/00−65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面に設けられたガスバリア性重合体層と、
を含む、輸液バッグ用ガスバリア性積層体であって、
前記ガスバリア性重合体層がポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなり、
前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲における全ピーク面積をBとしたとき、
(B/A)で示されるアミド結合の面積比率が0.400未満であり、
前記ガスバリア性重合体層の厚さが、0.01μm以上0.45μm以下であり、
当該輸液バッグ用ガスバリア性積層体を、以下の条件1にてゲルボ処理した後、以下の条件2にてレトルト処理して得られた試料の20±2℃、90±5%RHでの酸素透過度が、150mL/(m2・day・MPa)以下である、輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
(条件1)ゲルボフレックステスター(テスター産業社製)を用い、雰囲気温度23±2℃、50±5%RHの条件で、10回屈曲処理。
(条件2)高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理。
【請求項2】
(前記混合物中の前記ポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(前記混合物中の前記ポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数))が、100/70以上100/40以下である、請求項1に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
【請求項3】
前記ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなる群から選択される一種または二種以上の重合体を含む、請求項1または2に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
【請求項4】
前記ポリアミン化合物が、ポリエチレンイミンを含む、請求項1乃至いずれか1項に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
【請求項5】
前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をCとしたとき、
(C/A)で示されるカルボン酸の面積比率が0.150以上0.300以下である、請求項乃至いずれか1項に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
【請求項6】
前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1493cm-1以上1598cm-1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、
(D/A)で示されるカルボン酸塩の面積比率が0.300以上0.600以下である、請求項乃至いずれか1項に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
【請求項7】
前記基材層と前記ガスバリア性重合体層との間に設けられた無機物層をさらに含む、請求項1乃至いずれか1項に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
【請求項8】
前記無機物層が、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物により形成されたものである、請求項に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体を含む輸液バッグ用包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液バッグ用ガスバリア性積層体および輸液バッグ用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用輸液バッグの内容物にアミノ酸やビタミン等が含まれる場合、それらの成分の劣化を防ぐために、酸素透過性の低いバリア性フィルムを用いて輸液バッグを包装することがある。その際、無機蒸着膜が積層されたバリア性フィルムを使用すると、酸素バリア性を高い性能とすることができる。
【0003】
このような無機蒸着膜が積層されたバリア性フィルムに関する技術としては、たとえば、特許文献1(特開平7−80986号公報)に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、基材フィルム層上に、透明性を有する無機質層を介してバリア性樹脂コーティング層を被覆したガスバリア性フィルムが記載されている。特許文献1には、このようなガスバリア性フィルムは機械的外力の作用によるガスバリア性の低下を抑制しつつ、可撓性や透明性に加えて、被覆層が薄くても高温において優れたガスバリア性を有すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−80986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスバリア性材料の各種特性について要求される技術水準は、ますます高くなっている。輸液バック本体を包装する外装袋は輸液バッグを取り扱う際の変形が大きく、外装袋は当該変形に追従してなおかつ酸素バリア性を有している必要があった。また、輸液バック本体の包装する包装袋においても同様に取り扱う際の変形にもかかわらず酸素バリア性を有していることが必要であった。さらに、輸液バッグとして使用される際にはレトルト処理による殺菌処理を行われることがあり、当該レトルト処理後においても酸素バリア性を有していることが求められる。
この点、本発明者らの検討によると、特許文献1に記載のガスバリア性フィルムは、輸液バッグとして用いた際のガスバリア性において改善の余地があることが明らかになった。
【0006】
本発明は、輸液バッグとして用いた際のガスバリア性に優れるガスバリア性積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]
基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面に設けられたガスバリア性重合体層と、
を含む、輸液バッグ用ガスバリア性積層体であって、
前記ガスバリア性重合体層がポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなり、
前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲における全ピーク面積をBとしたとき、
(B/A)で示されるアミド結合の面積比率が0.400未満であり、
前記ガスバリア性重合体層の厚さが、0.01μm以上0.45μm以下であり、
当該輸液バッグ用ガスバリア性積層体を、以下の条件1にてゲルボ処理した後、以下の条件2にてレトルト処理して得られた試料の20±2℃、90±5%RHでの酸素透過度が、150mL/(m2・day・MPa)以下である、輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
(条件1)ゲルボフレックステスター(テスター産業社製)を用い、雰囲気温度23±2℃、50±5%RHの条件で、10回屈曲処理。
(条件2)高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理。
[2
(前記混合物中の前記ポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(前記混合物中の前記ポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数))が、100/70以上100/40以下である、上記[1]に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
[3]
前記ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなる群から選択される一種または二種以上の重合体を含む、上記[1]または[2]に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
[4]
前記ポリアミン化合物が、ポリエチレンイミンを含む、上記[1]乃至[3]いずれか1項に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体
[5
前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をCとしたとき、
(C/A)で示されるカルボン酸の面積比率が0.150以上0.300以下である、上記[]乃至[]いずれか1項に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。

前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1493cm-1以上1598cm-1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、
(D/A)で示されるカルボン酸塩の面積比率が0.300以上0.600以下である、上記[]乃至[]いずれか1項に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体
[7
前記基材層と前記ガスバリア性重合体層との間に設けられた無機物層をさらに含む、上記[1]乃至[]いずれか1項に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。

前記無機物層が、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物により形成されたものである、上記[]に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。

上記[1]乃至[]のいずれか1項に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体を含む輸液バッグ用包装体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、輸液バッグとして用いた際のガスバリア性に優れるガスバリア性積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態におけるガスバリア性積層体の構成を模式的に示す断面図である。
図2】実施形態におけるガスバリア性積層体の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、文中の数字の間にある「〜」は、断りがなければ、以上から以下を表す。
また、本明細書において、「輸液バッグ用ガスバリア性積層体」を単に「ガスバリア性積層体」とも呼ぶ。
【0011】
(ガスバリア性積層体)
図1および図2は、本実施形態におけるガスバリア性積層体100の構成を模式的に示す断面図である。
図1および図2において、ガスバリア性積層体100は、基材層101と、基材層101の少なくとも一方の面に設けられたガスバリア性重合体層103と、を含む。
また、図2に示すように、ガスバリア性積層体100は、好ましくは基材層101とガスバリア性重合体層103との間に設けられた無機物層102を含む。これにより、酸素バリア性をさらに向上させることができる。
そして、本実施形態においては、ガスバリア性積層体100を以下の条件1にてゲルボ処理した後、以下の条件2にてレトルト処理して得られた試料の20±2℃、90±5%RHでの酸素透過度が150mL/(m2・day・MPa)以下であり、好ましくは140mL/(m2・day・MPa)以下、より好ましくは135mL/(m2・day・MPa)以下、さらに好ましくは120mL/(m2・day・MPa)以下、さらにより好ましくは100mL/(m2・day・MPa)以下である。
(条件1)ゲルボフレックステスター(テスター産業社製)を用い、雰囲気温度23±2℃、50±5%RHの条件で、10回屈曲処理。
(条件2)高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理。
また、上記酸素透過度の下限は0mL/(m2・day・MPa)以上であるが、たとえば10mL/(m2・day・MPa)以上であってもよい。
【0012】
ここで、輸液バッグに用いられるガスバリア性積層体100には、他の用途のガスバリア性積層体に求められる特性に加えて、耐ゲルボ性、より好ましくは耐ゲルボ性に加え、耐レトルト性が求められる。
本実施形態におけるガスバリア性積層体100は、上述のゲルボ処理およびレトルト処理後の酸素透過度について特定の条件を満たす構成であるため、上記耐ゲルボ性および耐レトルト性について高い要求水準を満たすことができる。このため、輸液バッグとして用いた際のガスバリア性に優れる。また、ガスバリア性積層体100を輸液バッグに用いることにより、たとえば、輸液の変質を効果的に抑制することも可能となる。
ガスバリア性積層体100を輸液バッグとして用いた際にガスバリア性に優れる理由は必ずしも明らかではないが、フィルムに対する屈曲の負荷やレトルトによる温度負荷によっても酸素バリア性が比較的維持されるためであると考えられる。
【0013】
また、本発明者は、ゲルボ処理およびレトルト処理後の酸素透過度について特定の条件を満たすガスバリア性積層体100は、その積層構造および各層の構成成分として特定のものを選択し、殊に、ガスバリア性重合体層103の構成成分を選択するとともに、各層の製造条件を高度に制御することにより得られることを見出した。
以下、ガスバリア性積層体100を構成する各層について説明する。
【0014】
(ガスバリア性重合体層)
ガスバリア性重合体層103は、たとえばポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなるものである。ここで、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなる層とは、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物(以下、上記混合物を「ガスバリア用塗材」とも呼ぶ。)のアミド架橋体により構成された層を意味する。
かかるガスバリア性重合体層103においては、赤外線吸収スペクトルにおける未反応のカルボン酸のνC=Oに基づく吸収が1700cm-1付近にみられ、架橋構造であるアミド結合のνC=Oに基づく吸収が1630〜1685cm-1付近にみられ、カルボン酸塩のνC=Oに基づく吸収が1540〜1560cm-1付近にみられる。
すなわち、ガスバリア性重合体層103の赤外線吸収スペクトルにおける吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積Aは、カルボン酸とアミド結合とカルボン酸塩の合計量の指標を表す。吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲における全ピーク面積Bは、アミド結合の存在量の指標を表す。吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積Cは、未反応のカルボン酸の存在量の指標を表す。また、1493cm-1以上1598cm-1以下の範囲における全ピーク面積Dは、カルボン酸塩、すなわちカルボキシル基とアミノ基のイオン架橋の存在量の指標を表していると考えられる。
【0015】
なお、本実施形態において、上記全ピーク面積A〜Dは、以下の手順で測定できる。
まず、ガスバリア性重合体層103から1cm×3cmの測定用サンプルを切り出す。次いで、そのガスバリア性重合体層103の表面の赤外線吸収スペクトルを赤外線全反射測定(ATR法)により得る。得られた赤外線吸収スペクトルから、以下の手順(1)〜(4)で上記全ピーク面積A〜Dを算出する。
(1)1780cm-1と1493cm-1の吸光度を直線(N)で結び、吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲の吸光スペクトルとNで囲まれる面積を全ピーク面積Aとする。
(2)1690cm-1の吸光度(Q)から垂直に直線(O)を下ろし、NとOの交差点をPとし、1598cm-1の吸光度(R)から垂直に直線(S)を下ろし、NとSの交差点をTとし、吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲の吸収スペクトルと直線S、点T、直線N、点P、直線O、吸光度Q、吸光度Rで囲まれる面積を全ピーク面積Bとする。
(3)吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲の吸収スペクトルと吸光度Q、直線O,点P、直線Nで囲まれる面積を全ピーク面積Cとする。
(4)吸収帯1493cm−1以上1598cm-1以下の範囲の吸収スペクトルと吸光度R、直線S、点T、直線Nで囲まれる面積を全ピーク面積Dとする。
次いで、上記の方法で求めた面積から面積比(C/A)、(B/A)および(D/A)を求める。
なお、本実施形態において、赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は、たとえば、日本分光社製IRT−5200装置を用い、PKM−GE−S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm-1、積算回数100回の条件でおこなうことができる。
【0016】
ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物により形成されたガスバリア性重合体層103には、イオン架橋とアミド架橋という2種類の架橋構造が存在し、これらの架橋構造の存在比率がガスバリア性能を向上させる観点において重要である。ここで、上記イオン架橋とは、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とが酸塩基反応を起こすことによって生成するものであり、上記アミド架橋とは、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とが脱水縮合反応を起こすことによって生成するものである。
【0017】
上記(B/A)、(C/A)または(D/A)で示される面積比率が特定の範囲にあるガスバリア性重合体層103は、ガスバリア性重合体層103を構成するガスバリア性重合体の製造条件を適切に調節することにより得ることができる。さらに具体的には、ガスバリア性重合体の原料であるポリカルボン酸およびポリアミン化合物の種類、これらの配合比率、ガスバリア用塗材の調製方法、ガスバリア用塗材の加熱処理の方法および条件等が、(B/A)、(C/A)または(D/A)で示される面積比率を制御するための因子として挙げられる。
【0018】
ガスバリア性重合体層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、(B/A)で示されるアミド結合の面積比率は、耐ゲルボ性およびレトルト処理後の酸素バリア性の維持等の観点から、好ましくは0.225以上であり、より好ましくは0.235以上、さらに好ましくは0.245以上である。
また、上記面積比率(B/A)は、耐ゲルボ性の維持等の観点から、好ましくは0.400未満であり、より好ましくは0.365以下であり、さらに好ましくは0.360以下である。
ガスバリア性積層体100は、好ましくは、基材層101、無機物層102およびポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物により形成されたガスバリア性重合体層103がこの順に積層されているとともに、ガスバリア性重合体層103における(B/A)で示されるアミド結合の面積比率が上述した特定の範囲にある構成とする。このような構成とすることにより、レトルト処理後や屈曲処理後のバリア性能を優れたものとすることができるため、輸液バッグとして用いた際のガスバリア性に優れるガスバリア性積層体100を得ることができる。
このようなガスバリア性積層体100がレトルト処理後や屈曲処理後の酸素バリア性に優れる理由は必ずしも明らかではないが、ガスバリア重合体層103中に形成されたアミド結合により膜構造を安定化させることができるためと推察される。
【0019】
また、ガスバリア性重合体層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、(C/A)で示されるカルボン酸の面積比率は、外観および寸法安定性の観点から、好ましくは0.150以上であり、より好ましくは0.155以上であり、さらに好ましくは0.160以上、さらにより好ましくは0.165以上である。
また、上記面積比率(C/A)は、耐ゲルボ性および酸素バリア性の向上等の観点から、好ましくは0.300以下であり、より好ましくは0.245以下であり、さらに好ましくは0.235以下、さらにより好ましくは0.230以下である。
【0020】
ガスバリア性重合体層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、(D/A)で示されるカルボン酸塩の面積比率は、耐ゲルボ性およびレトルト処理後の酸素バリア性の維持等の観点から、好ましくは0.300以上であり、より好ましくは0.405以上であり、さらに好ましくは0.415以上、さらにより好ましくは0.420以上である。
また、上記面積比率(D/A)は、耐ゲルボ性低下の防止等の観点から、好ましくは0.695以下であり、より好ましくは0.600以下、さらに好ましくは0.585以下、さらにより好ましくは0.580以下である。
【0021】
ガスバリア性重合体層103の厚さ、ここではアミド架橋膜層の厚さは、ガスバリア性を向上する観点から、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.1μm以上である。
また、基材層101との安定的な接着を得る観点から、ガスバリア性重合体層103の厚さは、好ましくは0.45μm以下であり、より好ましくは0.4μm以下である。
【0022】
次に、ガスバリア性重合体層103の製造方法の一例について説明する。
本実施形態において、ガスバリア性重合体層103がポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなる層であるとき、ガスバリア性重合体層103の製造方法は、たとえば以下の工程を含む。
(工程1)基材層101に設けられた無機物層102に、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を塗工し、塗工層を得る工程。
(工程2)塗工層を加熱し、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とを脱水縮合反応させることにより、アミド結合を有するガスバリア性重合体層103を形成する工程。
以下、工程1および工程2についてさらに具体的に説明する。
【0023】
(工程1)
工程1は、基材層101上の無機物層102に、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物に塗工し、塗工層を得る工程である。
まず、上記混合物すなわちガスバリア用塗材を構成するポリカルボン酸およびポリアミン化合物について説明する。
【0024】
(ポリカルボン酸)
本実施形態において、ポリカルボン酸は、分子内に2個以上のカルボキシ基を有するものである。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸、3−ヘキセン酸、3−ヘキセン二酸等のα,β−不飽和カルボン酸の単独重合体またはこれらの共重合体が挙げられる。また、上記α,β−不飽和カルボン酸と、エチルエステル等のエステル類、エチレン等のオレフィン類等との共重合体であってもよい。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸の単独重合体またはこれらの共重合体が好ましく、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体から選択される一種または二種以上の重合体であることがより好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸から選択される少なくとも一種の重合体であることがさらに好ましく、アクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体から選択される少なくとも一種の重合体であることがよりいっそう好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の単独重合体、アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリアクリル酸は、重合体100質量%中に、アクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
また、本実施形態において、ポリメタクリル酸とは、メタクリル酸の単独重合体、メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリメタクリル酸は、重合体100質量%中に、メタクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
【0025】
本実施形態において、ポリカルボン酸は、カルボン酸モノマーが重合した重合体である。ポリカルボン酸の分子量は、ガスバリア性および取扱い性のバランスに優れる観点から、好ましくは5×102以上であり、より好ましくは1.5×103以上、さらに好ましくは5×103以上、よりいっそう好ましく7×103以上、さらにまた好ましくは1×104以上、殊更好ましくは5×104以上であり、また、好ましくは2×106以下であり、より好ましくは1×106以下、さらに好ましくは5×105以下、よりいっそう好ましくは2.5×105以下、さらにまた好ましくは2×105以下、殊更好ましくは1.5×105以下である。
ここで、本実施形態において、ポリカルボン酸の分子量はポリエチレンオキサイド換算の重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0026】
(ポリアミン化合物)
本実施形態において、ポリアミン化合物は、主鎖あるいは側鎖あるいは末端にアミノ基を2つ以上有するポリマーである。ポリアミン化合物として、具体的には、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(トリメチレンイミン)等の脂肪族系ポリアミン類;ポリリジン、ポリアルギニンのように側鎖にアミノ基を有するポリアミド類;等が挙げられる。また、ポリアミン化合物は、アミノ基の一部を変性したポリアミンでもよい。良好なガスバリア性を得る観点から、ポリアミン化合物は、好ましくはポリエチレンイミンである。
【0027】
ポリアミン化合物の重量平均分子量は、ガスバリア性および取扱い性のバランスに優れる観点から、好ましくは5×101以上であり、より好ましくは1×102以上、さらに好ましくは1.5×103以上、よりいっそう好ましく3.5×103以上、さらにまた好ましくは5×103以上、殊更好ましくは7×103以上であり、また、好ましくは5×106以下であり、より好ましくは2×106以下、さらに好ましくは1×106以下、よりいっそう好ましくは5×105以下、さらにまた好ましくは1×105以下、さらにまた好ましくは7×104以下、さらにまた好ましくは5×104以下、さらにまた好ましくは3×104以下、殊更好ましくは1.5×104以下である。
ここで、本実施形態において、ポリアミン化合物の分子量は沸点上昇法や粘度法を用いて測定することができる。
【0028】
(ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の配合比率)
本実施形態において、((ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数))は、ガスバリア性重合体層103のガスバリア性および生産性を向上させる観点から、好ましくは100/40以下であり、より好ましくは100/45以下、さらに好ましくは100/50以下である。
また、同様の観点から、((ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数))は、好ましくは100/70以上であり、好ましくは100/65以上であり、より好ましくは100/60以上である。
【0029】
次に、工程1におけるガスバリア用塗材の調製方法について説明する。ガスバリア用塗材は、たとえば以下のようにして得ることができる。
まず、ポリカルボン酸に、塩基を加えることによりポリカルボン酸のカルボキシ基を完全にまたは部分的に中和する。次いで、カルボキシ基を完全にまたは部分的に中和したポリカルボン酸にポリアミン化合物を添加する。このような手順でポリカルボン酸およびポリアミン化合物を混合することにより、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の凝集物の生成を抑制でき、均一なガスバリア用塗材を得ることができる。これにより、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進めることが可能となる。
【0030】
ここで、塩基によってポリカルボン酸を中和することにより、ポリアミン化合物とポリカルボン酸とを混合する際に、ゲル化が起こることを抑制することができる。したがって、ポリカルボン酸において、ゲル化防止の観点から塩基によってカルボキシ基の部分中和物または完全中和物とすることが好ましい。中和物は、ポリカルボン酸のカルボキシ基を塩基で部分的にまたは完全に中和することにより、すなわち、ポリカルボン酸のカルボキシ基を部分的または完全にカルボン酸塩とすることにより得ることができる。これにより、ポリアミン化合物を添加する際、ゲル化を防止できる。
部分中和物は、ポリカルボン酸の水溶液に塩基を添加することにより調製するが、ポリカルボン酸と塩基の量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。本実施形態においてはポリカルボン酸の塩基による中和度は、ポリアミン化合物のアミノ基との中和反応に起因するゲル化を十分に抑制する観点から、好ましくは30〜100当量%であり、より好ましくは40〜100当量%、さらに好ましくは50〜100当量%である。
【0031】
塩基としては、任意の水溶性塩基を用いることができる。水溶性塩基として、揮発性塩基と不揮発性塩基のいずれかまたは双方を使用することができるが、残存した遊離塩基によるガスバリア性低下を抑制する観点から乾燥・硬化の際に除去が容易な揮発性塩基であることが好ましい。
揮発性塩基としては、たとえば、アンモニア、モルホリン、アルキルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N−メチルモノホリン、エチレンジアミン、トリエチルアミン等の三級アミンまたはこれらの水溶液、あるいはこれらの混合物が挙げられる。良好なガスバリア性を得る観点から、アンモニア水溶液が好ましい。
不揮発性塩基としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムまたはこれらの水溶液、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
また、ガスバリア用塗材の固形分濃度は、塗工性を向上させる観点から、0.5〜15質量%に設定することが好ましく、1〜10質量%に設定することがさらに好ましい。
【0033】
また、ガスバリア用塗材には、塗布の際にはじきが発生するのを防止する観点から、界面活性剤をさらに添加することが好ましい。界面活性剤の添加量は、ガスバリア用塗材の固形分全体を100質量%としたとき、0.01〜3質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0034】
本実施形態において、界面活性剤としては、たとえば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、良好な塗工性を得る観点から、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類がより好ましい。
【0035】
非イオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、シリコーン系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0036】
ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル類としては、たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等を挙げることができる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類としては、たとえば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類を挙げることができる。
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類としては、たとえば、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル等を挙げることができる。
ソルビタン脂肪酸エステル類としては、たとえば、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等を挙げることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、たとえば、ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。
アセチレンアルコール系界面活性剤としては、たとえば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール等を挙げることができる。
含フッ素系界面活性剤としては、たとえば、フッ素アルキルエステル等を挙げることができる。
【0037】
また、ガスバリア用塗材は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の添加剤を含んでもよい。たとえば、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤、多価金属化合物等の各種添加剤を添加してよい。
【0038】
次いで、ガスバリア用塗材を基材層101に塗工し、塗工層を得る。
ガスバリア用塗材を基材層101に塗布する方法は、限定されず、通常の方法を用いることができる。たとえば、メイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター、アプリケーター等種々公知の塗工機を用いて塗工する方法が挙げられる。
【0039】
塗工層の厚み(ウエット厚み)は、得られるガスバリア性積層体100のバリア性能をより良好なものとする観点から、好ましくは0.05μm以上であり、より好ましくは1μm以上である。
また、得られるガスバリア性積層体100がカールすることを抑制する観点、および、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進める観点から、ウエット厚みは、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下、よりいっそう好ましくは30μm以下である。
また、加熱処理後のガスバリア性重合体層103の厚さの具体例は前述したとおりである。
【0040】
(工程2)
工程2は、塗工層を加熱し、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とを脱水縮合反応させることにより、アミド結合を有するガスバリア性重合体層を形成する工程である。
工程2において、好ましくは(B/A)で示されるアミド結合の面積比率が0.400未満となるまで加熱処理をおこなう。このときの加熱処理の方法・温度・時間を採用として、ガスバリア用塗材の塗工量、加熱処理に使用する装置の種類、加熱処理温度、加熱処理時間等の各因子を高度に制御して組み合わせることが重要となる。たとえば、基材層101の無機物層102の側にガスバリア用塗材をウエット厚みが0.05〜300μmになるように塗布し、公知の加熱処理に使用する装置により、加熱して乾燥する。
乾燥、加熱処理する方法は、本実施形態におけるガスバリア性重合体層103を形成できれば限定されないが、ガスバリア用塗材を硬化させられるもの、硬化したガスバリア用塗材を加熱できる方法であればよい。
加熱手段の具体例として、熱風乾燥器、熱風オーブン、ドライヤー等の対流伝熱によるもの、加熱ロール等の伝導伝熱によるもの、赤外線、遠赤外線・近赤外線のヒーター等の電磁波を用いる輻射伝熱によるもの、マイクロ波等内部発熱によるものが挙げられる。
乾燥、加熱処理に使用する装置としては製造効率の観点から乾燥と加熱処理の双方を行える装置が好ましい。その中でも具体的には乾燥、加熱、アニーリング等の種々の目的に利用できるという観点から熱風オーブンを用いることが好ましく、また、フィルムへの熱伝導効率に優れているという観点から加熱ロールを用いることが好ましい。また、乾燥、加熱処理に使用する方法を適宜組み合わせてもよい。熱風オーブンと加熱ロールを併用してもよく、たとえば、熱風オーブンでガスバリア用塗材を乾燥後、加熱ロールで加熱処理を行えば加熱処理工程が短時間となり製造効率の観点から好ましい。また、熱風オーブンのみで乾燥と加熱処理を行うことが好ましい。
【0041】
熱風オーブンを用いて、ガスバリア用塗材を乾燥させる場合、好ましくは140〜250℃の加熱温度で1秒間〜5分間処理し、より好ましくは180〜240℃の加熱温度で5秒間〜3分間処理し、さらに好ましくは200〜230℃の加熱温度で15秒間〜3分間加熱処理をおこなう。
なお、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応を効果的に進める観点から、加熱処理温度および加熱処理時間はガスバリア用塗材のウエット厚みに応じて調整することが重要である。
【0042】
工程2において、塗工層の上記加熱の前に、上記塗工層の乾燥をおこなってもよい。なお、上記乾燥と加熱処理を同時におこなってもよい。
工程2において、塗工層の加熱処理の前に乾燥をおこなう場合、乾燥温度:60〜150℃、乾燥時間:1秒〜60秒の条件で乾燥をおこなうことが望ましい。
【0043】
以上の手順によりガスバリア性重合体層103が得られる。また、ガスバリア性重合体層103は、上記のガスバリア用塗材により形成されたものであり、ガスバリア用塗材を無機物層102に塗布した後、乾燥、熱処理をおこない、ガスバリア用塗材を硬化させることによって得られるものである。
【0044】
本実施形態において、ガスバリア性重合体層103の厚み1μmにおける20±2℃、90±5%RHでの酸素透過度は、良好なガスバリア性を得る観点から、好ましくは45mL/(m2・day・MPa)以下、より好ましくは40mL/(m2・day・MPa)以下である。また、酸素透過度の下限については0mL/(m2・day・MPa)であるが、たとえば1mL/(m2・day・MPa)以上であってもよい。
なお、酸素透過度は、JIS K 7126に準じ、温度20±2℃、湿度90±5%RHの条件で測定する。
【0045】
(無機物層)
本実施形態において、ガスバリア性向上の観点から、好ましくはガスバリア性積層体100の基材層101とガスバリア性重合体層103との間に無機物層102が設けられる。こうすることにより、ガスバリア性重合体層103の構成とあいまって、輸液バッグ用途としてさらに好ましいガスバリア性が得られる。また、無機物層102を有するガスバリア性積層体100においては、無機物層102とアミド架橋を有するガスバリア性重合体層103との層間の接着性に優れ、ガスバリア性積層体100への外的な変形に対してガスバリア性重合体層103は安定した接着状態を保つことができる。
【0046】
無機物層102を構成する無機物は、たとえば、バリア性を有する薄膜を形成できる金属、金属酸化物、金属窒化物、金属弗化物、金属酸窒化物等が挙げられる。
無機物層102を構成する無機物としては、たとえば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル等の周期表遷移元素;亜鉛等の周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表3A族元素;ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表4A族元素;セレン、テルル等の周期表6A族元素等の単体、酸化物、窒化物、弗化物、または酸窒化物等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
なお、本実施形態では、周期表の族名は旧CAS式で示している。
【0047】
さらに、上記無機物の中でも、バリア性、コスト等のバランスに優れていることから、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物が好ましく、無機物が酸化アルミニウムであることがより好ましい。
なお、酸化ケイ素には、二酸化ケイ素の他、一酸化ケイ素、亜酸化ケイ素が含有されていてもよい。
【0048】
無機物層102は上記無機物により構成されている。無機物層102は単層の無機物層から構成されていてもよいし、複数の無機物層から構成されていてもよい。また、無機物層102が複数の無機物層から構成されている場合には同一種類の無機物層から構成されていてもよいし、異なった種類の無機物層から構成されていてもよい。
【0049】
また、無機物層102が酸化アルミニウムにより構成された酸化アルミニウム層である場合は、酸化アルミニウム層の安定的な接着の観点から、酸化アルミニウム層を蛍光X線分析することにより得られる、アルミニウムのKα線強度をP(kcps)とし、アルミニウムからなり、かつ、酸素を導入しない以外は上記酸化アルミニウム層と同じ製造条件で得られるアルミニウム層を蛍光X線分析することにより得られる、上記アルミニウムのKα線強度をQ(kcps)としたとき、P/Qで定義される付着率が好ましくは0.50以上0.75以下、より好ましくは0.52以上0.70以下、さらに好ましくは0.53以上0.65以下、よりいっそう好ましくは0.55以上0.60以下である。付着率を上記範囲にすることによりガスバリア性重合体層103が外的な変形に対してより安定した接着状態を保つことができるガスバリア性積層体100を得ることができる。
【0050】
上記Kα線強度Pは、たとえば、以下の方法により得られる。
蛍光X線分析装置ZSXPrimusII(リガク社製)を用いて、本実施形態のガスバリア性積層体100の酸化アルミニウム層に対し、上記酸化アルミニウム層を構成するアルミニウムのKα線を測定し、得られた蛍光X線強度をKα線強度P(kcps)とすることができる。
上記Kα線強度Qは、たとえば、以下の方法により得られる。
まず、酸素の導入はおこなわずに、本実施形態のガスバリア性積層体100における酸化アルミニウム層と同じ製造条件で、基材層上にアルミニウムにより構成されたアルミニウム層を形成する。次いで、蛍光X線分析装置ZSXPrimusII(リガク社製)を用いて、得られたアルミニウム層に対し、上記アルミニウム層を構成するアルミニウムのKα線を測定し、得られた蛍光X線強度をQ(kcps)とすることができる。
【0051】
ここで、得られる酸化アルミニウム層のKα線強度Pは、酸素の導入量に依存し、酸素の導入量(酸化度)が大きくなるとアルミニウムとしての蒸着量が減少するので、Kα線強度Pは小さくなり、酸素の導入量が少ないとアルミニウムとしての蒸着量が増すのでKα線強度Pは大きくなる。
【0052】
また、本実施形態のガスバリア性積層体100において、無機物層102が金属酸化物により構成された金属酸化物層である場合は、金属酸化物層を蛍光X線分析することにより得られる、上記金属酸化物を構成する金属のKα線強度をR(kcps)とし、金属酸化物を構成する金属からなり、かつ、酸素を導入しない以外は上記金属酸化物層と同じ製造条件で得られる金属層を蛍光X線分析することにより得られる、上記金属のKα線強度をS(kcps)としたとき、R/Sで定義される付着率が好ましくは0.50以上0.90以下、より好ましくは0.55以上0.80以下である。付着率が上記範囲内であると、ガスバリア性と透明性のバランスが優れたガスバリア性積層体100が得られる。
ここで、上記Kα線強度RおよびSは、上記Kα線強度PおよびQと同様の方法により測定することができる。
【0053】
無機物層102の厚さは、バリア性、密着性、取扱い性等のバランスの観点から、通常1nm以上1000nm以下、好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは1nm以上50nm以下、よりいっそう好ましくは1nm以上20nm以下である。
本実施形態において、無機物層102の厚さは、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡による観察画像により求めることができる。
【0054】
無機物層102の形成方法は限定されず、たとえば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学気相成長法、物理気相蒸着法、化学気相蒸着法(CVD法)、プラズマCVD法、ゾルゲル法等により基材層101の片面または両面に無機物層102を形成することができる。中でも、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法(CVD)、物理気相蒸着法(PVD)、プラズマCVD法等の減圧下での製膜が望ましい。これにより、窒化珪素や酸化窒化珪素等の珪素を含有する化学的に活性な分子種が速やかに反応することにより、無機物層102の表面の平滑性が改良され、孔を少なくすることができるものと予想される。
これらの結合反応を迅速におこなうには、その無機原子や化合物が化学的に活性な分子種もしくは原子種であることが望ましい。
【0055】
(基材層)
基材層101は、たとえば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または紙等の有機質材料により形成されており、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂から選択される少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0056】
熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
【0057】
熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂、たとえば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ブテン)等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、フッ素樹脂あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
これらの中でも、透明性を良好にする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される一種または二種以上がより好ましい。
また、熱可塑性樹脂により形成された基材層101は、ガスバリア性積層体100の用途に応じて、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
【0058】
また、上記熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂により形成されたフィルムを少なくとも一方向、好ましくは二軸方向に延伸して基材層101としてもよい。
【0059】
基材層101としては、透明性、剛性、耐熱性に優れる観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドから選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂により形成された二軸延伸フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂により形成された二軸延伸フィルムがより好ましい。
【0060】
また、基材層101の表面に、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニアルコール共重合体、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂等がコーティングされていてもよい。
さらに、ガスバリア性重合体層103との接着性を改良するために、基材層101に表面処理をおこなってもよい。具体的には、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、プライマーコート処理等の表面活性化処理をおこなってもよい。
【0061】
基材層101の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、1〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましく、1〜300μmがさらに好ましい。
【0062】
基材層101の形状は、限定されないが、たとえば、シートまたはフィルム形状、トレー、カップ、中空体等の形状が挙げられる。
【0063】
ガスバリア性積層体100は、以上の基材層101、無機物層102およびガスバリア性重合体層103を備える。
本実施形態において、高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理した後の、ガスバリア性積層体100全体の酸素透過度は、良好なガスバリア性を得る観点から、好ましくは200mL/(m2・day・MPa)以下、より好ましくは150mL/(m2・day・MPa)以下、さらに好ましくは100mL/(m2・day・MPa)以下である。
【0064】
また、ガスバリア性積層体100は、基材層101、無機物層102およびガスバリア性重合体層103以外の層を備えてよい。その他の層の具体例として、アンダーコート層および接着層が挙げられる。
【0065】
(アンダーコート層)
ガスバリア性積層体100において、基材層101と、ガスバリア性重合体層103または無機物層102との接着性を向上させる観点から、基材層101上にアンダーコート層がさらに積層されていてもよい。基材層101と、ガスバリア性重合体層103または無機物層102との間にアンダーコート層を設けることによりガスバリア性重合体層103の追従性がさらに向上し外的な変形が加えられてもガスバリア性積層体100においてガスバリア性重合体層103はより安定的な接着状態を保つことができる。
上記アンダーコート層としては、たとえば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン系樹脂、アクリル系樹脂から選択される一種または二種以上により構成されていることが好ましい。
【0066】
アンダーコート層の厚さは、良好な接着性を得る観点から、0.001μm以上であることが好ましく、経済的であるという観点から0.5μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.005〜0.1μmであり、さらに好ましくは0.01〜0.05μmである。
【0067】
また、基材層101とガスバリア性重合体層103との間に接着剤層を設けてもよい。なお、下記接着剤層から上記アンダーコート層は除かれる。
接着剤層は、公知の接着剤を含むものであればよい。接着剤としては、有機チタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性シリコーン樹脂およびアルキルチタネート、ポリエステル系ポリブタジエン等から組成されているラミネート接着剤、または一液型、二液型のポリオールと多価イソシアネート、水系ウレタン、アイオノマー等が挙げられる。または、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂等を主原料とした水性接着剤を用いてもよい。
また、ガスバリア性積層体の用途に応じて、接着剤に硬化剤、シランカップリング剤等の他の添加物を添加してもよい。ガスバリア性積層体の用途が、レトルト等の熱水処理に用いられるものである場合、耐熱性や耐水性の観点から、ポリウレタン系接着剤に代表されるドライラミネート用接着剤が好ましく、溶剤系の二液硬化タイプのポリウレタン系接着剤がより好ましい。
【0068】
本実施形態のガスバリア性積層体100は、ガスバリア性能に優れており、種々の包装体、とりわけ高いガスバリア性が要求される内容物の食品包装体に本実施形態のガスバリア性積層体を含む包装体により内容物の長期保管を可能にすることのみならず、包装体の形成過程での変形力の負荷に対する耐久性、即ち耐ゲルボ性に優れており、レトルト処理後においても酸素バリア性等の機能低下が起こりにくい。したがって、本発明の包装体は種々の内容物に適用できるばかりでなく、変形力の負荷に対する耐久性が要求されるしぼり加工、レトルト処理等様々な加工方法に適用することができることから、用途において医療用途、工業用途、日常雑貨用途等さまざまな包装体としても好適に使用し得る。
また、本実施形態のガスバリア性積層体100は、変形力の負荷に対する耐久性、すなわち耐ゲルボ性に優れており酸素バリア性等が低下しにくいことから、たとえば、フィルムに変形力の負荷がかかった後でも当該フィルムに高いバリア性能が要求される、真空断熱用フィルム;エレクトロルミネセンス素子、太陽電池等を封止するための封止用フィルム;等として好適に使用することができる。
【0069】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面に設けられたガスバリア性重合体層と、
を含む、輸液バッグ用ガスバリア性積層体であって、
当該輸液バッグ用ガスバリア性積層体を、以下の条件1にてゲルボ処理した後、以下の条件2にてレトルト処理して得られた試料の20±2℃、90±5%RHでの酸素透過度が、150mL/(m2・day・MPa)以下である、輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
(条件1)ゲルボフレックステスター(テスター産業社製)を用い、雰囲気温度23±2℃、50±5%RHの条件で、10回屈曲処理。
(条件2)高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理。
2. 前記ガスバリア性重合体層がポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなり、
((前記混合物中の前記ポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(前記混合物中の前記ポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数))が、100/70以上100/40以下である、1.に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
3. 前記ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなる群から選択される一種または二種以上の重合体を含む、2.に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
4. 前記ポリアミン化合物が、ポリエチレンイミンを含む、2.または3.に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
5. 前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲における全ピーク面積をBとしたとき、
(B/A)で示されるアミド結合の面積比率が0.400未満である、2.乃至4.いずれか1つに記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
6. 前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をCとしたとき、
(C/A)で示されるカルボン酸の面積比率が0.150以上0.300以下である、2.乃至5.いずれか1つに記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
7. 前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1493cm-1以上1598cm-1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、
(D/A)で示されるカルボン酸塩の面積比率が0.300以上0.600以下である、2.乃至6.いずれか1つに記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
8. 前記ガスバリア性重合体層の厚さが、0.01μm以上0.45μm以下である、1.乃至7.いずれか1つに記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
9. 前記基材層と前記ガスバリア性重合体層との間に設けられた無機物層をさらに含む、1.乃至8.いずれか1つに記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
10. 前記無機物層が、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物により形成されたものである、9.に記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体。
11. 1.乃至10.のいずれか1つに記載の輸液バッグ用ガスバリア性積層体を含む輸液バッグ用包装体。
【実施例】
【0070】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0071】
(溶液(Z)の作製)
ポリアクリル酸アンモニウム(東亜合成社製、製品名:アロンA−30、30%水溶液、分子量:1×105)の混合物に精製水を添加して10%溶液にしたポリアクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
(溶液(Y)の作製)
ポリエチレンイミン(和光純薬工業社製、製品名:ポリエチレンイミン、平均分子量:約1×104)に精製水を添加して10%溶液にしたポリエチレンイミン水溶液を得た。
【0072】
(実施例1)
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)を基材とし、そのコロナ処理された面に、高周波誘導加熱方式により、アルミニウムを加熱蒸発させ、酸素を導入しながら蒸着することで、厚さ8nmの酸化アルミニウム膜を形成させた。これにより酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを得た。
【0073】
一方、上記ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z)87.5gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y)12.5gを混合・撹拌して混合液を調製した。
さらに上記混合液の固形分濃度が2.5質量%になるように精製水を添加し、均一溶液になるまで撹拌したのちに、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王社製、商品名:エマルゲン120)を混合液の固形分に対して0.3質量%となるように混合し、溶液(V)を調製した。
【0074】
得られた溶液(V)を、酸化アルミニウム蒸着PETフィルムの蒸着面に、乾燥後の塗工量が0.3μmになるようにアプリケーターで塗布し、熱風乾燥器を使用して210℃にて7秒間熱処理することにより、ガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムについて、以下の評価をおこなった。評価結果を表1にあわせて示す。
【0075】
(実施例2)
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)を基材とし、そのコロナ処理された面に、溶液(V)を、乾燥後の塗工量が0.3μmになるようにアプリケーターで塗布し、熱風乾燥器を使用して210℃にて81秒間熱処理することにより、ガスバリア性積層フィルムを得た。
【0076】
(実施例3)
熱風乾燥器による熱処理条件を210℃、54秒間とした他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0077】
(実施例4)
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)を基材とし、そのコロナ処理された面に得られた溶液(V)を塗布したこと、および、熱風乾燥器による熱処理条件を150℃、90秒間とした他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0078】
(比較例1)
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)を基材とし、そのコロナ処理された面に、高周波誘導加熱方式により、アルミニウムを加熱蒸発させ、酸素を導入しながら蒸着することで、厚さ8nmの酸化アルミニウム膜を形成させた。これにより酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを得た。
【0079】
(評価用多層フィルムの作製)
(1)厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製 商品名:RXC−22)の片面に、エステル系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井化学社製 商品名:タケラックA525S):9質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学社製 商品名:タケネートA50):1質量部および酢酸エチル:7.5質量部)を塗布した。乾燥後、各実施例で得られたガスバリア性積層フィルムのガスバリア性重合体層面、または、比較例1については酸化アルミニウム蒸着PETフィルムの蒸着面と貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルムを得た。
【0080】
(2)ゲルボ(屈曲)処理
ゲルボフレックステスター(テスター産業社製)を用い、雰囲気温度23±2℃、50±5%RHの条件で、上記(1)で得られた多層フィルムを10回屈曲させた。
【0081】
(3)レトルト処理
上記(1)または(2)で得られた多層フィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として水を70cc入れ、もう1方をヒートシールにより袋を作成し、これを高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理をおこなった。レトルト処理後、内容物の水を抜き、レトルト処理後の多層フィルムを得た。
【0082】
(評価方法)
(IR面積比)
上記(1)で得られた多層フィルムについて、赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)をおこなった。日本分光社製IRT−5200装置を用い、PKM−GE−S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm−1、積算回数100回の条件で測定した。得られた吸収スペクトを前述した方法で解析し、全ピーク面積A〜Dを算出した。そして、全ピーク面積A〜Dから面積比(B/A)、(C/A)、(D/A)を求めた。
【0083】
(酸素透過度[mL/(m2・day・MPa)])
以下の4種の多層フィルムについて、モコン社製OX−TRAN2/21を用いて、JIS K 7126に準じ、温度20℃、湿度90%RHの条件で測定した。
(i)上記(1)で得られた多層フィルム:ゲルボ前、レトルト前
(ii)上記(1)で得られた多層フィルムをレトルト処理したもの:ゲルボ前、レトルト後
(iii)上記(1)で得られた多層フィルムをゲルボ処理したもの:ゲルボ後、レトルト前
(iv)上記(1)で得られた多層フィルムをゲルボ処理した後、レトルト処理したもの:ゲルボ後、レトルト後
レトルト処理およびゲルボ処理の条件は、それぞれ、上述した(3)および(2)のとおりである。
【0084】
(LG−OX検査液による酸素透過試験)
各実施例および比較例において、上記(1)で得られた多層フィルムについて上記「(2)ゲルボ(屈曲)処理」および「(3)レトルト処理」を行った後、無延伸ポリプロピレンフィルム同士が内面になるように、3方をヒートシールして150mm×100mmの袋状にし、LG−OX検査液(東京インキ社製:A液/B液=100/2.5g)を厚さ5mmになるまで充填して開口部をヒートシールして封止した。40℃±2℃で3時間保管した。得られた袋を80℃で1時間加熱後、23℃±2℃、50±5%RHの条件で1日間保管し、保管後の内容物の変色状況を確認し、以下の基準で評価した。この試験において、保管前の内容物は白色であるが、酸素バリア性が悪いものは、保管中に内容物が白色から青色へと変色する。評価結果を表1にあわせて示す。
○:白色
×:青色
【0085】
【表1】
【0086】
表1より、各実施例で得られたガスバリア性積層フィルムは、ゲルボ処理およびレトルト処理後の酸素透過率について特定の条件を満たす構成であるため、各比較例のものに比べて輸液バッグ用途ならではの変形によるバリア性の低下がほとんどない点で優れており、輸液バッグ用途に好適なものであった。
【符号の説明】
【0087】
100 ガスバリア性積層体
101 基材層
102 無機物層
103 ガスバリア性重合体層
図1
図2