(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、UEP起因磁界は、電流に起因する磁界のため、発生源からの距離に反比例して減少するような分布特性を持つ。これに対して、消磁コイルにより発生させる磁界は、消磁コイルの中心から距離の2乗に反比例するような分布特性を持つ。すなわち、UEP起因磁界と消磁コイルにより発生させる磁界の分布特性は互いに異なっている。このため、消磁コイルのみによっては、UEP起因磁界を全体として効果的に抑制することはできなかった。
【0007】
また、UEP起因磁界は、海水の流れといった船体の周囲環境にも起因して変化する。しかしながら、通常は、磁気センサは船体内に設けられており、消磁コイルが動作すると船体内の磁界は消磁コイルによるものが相対的に大きくなるため、リアルタイムにUEP起因磁界の変化を検出することができなかった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、船体が発生する磁界をリアルタイムに検出し、効果的に消磁を行うことのできる磁場抑制システム、船舶、及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様は、船体が発生させる磁場に対して反対極性の磁場を発生させる消磁コイルと、船体が発生させる磁気を検出する第1磁気検出部と、前記消磁コイルが発生させる磁気を検出する第2磁気検出部と、前記第1磁気検出部及び前記第2磁気検出部の検出結果に基づいて、前記消磁コイルに流れる電流を制御する制御部と、を備えた磁場抑制システムである。
【0010】
上記のような構成によれば、第1磁気検出部及び第2磁気検出部を用いることにより、船体が発生させる磁気と、消磁コイルが発生させる磁気をそれぞれ検知することができ、磁界空間をより詳細に評価することができる。また、第1磁気検出部及び第2磁気検出部の検出結果に基づいて、消磁コイルに流れる電流を制御することで、例えば、UEP起因磁界の変化や、消磁コイルが発生させる磁界のばらつき等にも対応して、より効果的に消磁を行うことができる。
【0011】
上記磁場抑制システムにおいて、前記制御部は、予め設定された周期において所定期間だけ前記消磁コイルに流れる電流を停止させ、前記所定期間経過後、前記所定期間内に前記第1磁気検出部により検出した磁気に基づいて、前記消磁コイルに流れる電流を制御することとしてもよい。
【0012】
上記のような構成によれば、予め設定された周期において所定期間だけ消磁コイルに流れる電流を意図的に停止させ、この所定期間内に第1磁気検出部によって船体が発生させる磁気を検知することで、消磁コイルが発生させる磁気に影響されずに、船体が発生させる磁気をより正確に計測することができる。また、予め設定された周期で第1磁気検出部による検出を行うため、例えば、UEP起因磁界の変化等も略リアルタイムで正確に検知することが可能となる。よって、消磁コイルを適切に制御でき、より効果的に消磁を行うことができる。
【0013】
上記磁場抑制システムにおいて、前記消磁コイルの内側に設けられた磁性シールド体を備え、前記第1磁気検出部は、前記磁性シールド体の内側に配置され、前記第2磁気検出部は、前記磁性シールド体の外側に配置されたこととしてもよい。
【0014】
上記のような構成によれば、消磁コイルが自身の内側に発生させる磁界のほとんどは、内側に配置した磁性シールド体に集中され、磁性シールド体の内部に配置された第1磁気検出部周辺には、消磁コイルによる磁界はほとんど現れない。このため、消磁コイルが動作中であっても、第1磁気検出部によって、船体が発生させる磁気(船体磁気及びUEP起因磁界)をリアルタイムで検出することができる。よって、消磁コイルを適切に制御でき、より効果的に消磁を行うことができる。
【0015】
上記磁場抑制システムにおいて、前記予め設定された周期は、船体の速度によって決定されていることとしてもよい。
【0016】
上記のような構成によれば、特にUEP起因磁界は、船体の周囲の海水の状態(流速や塩分濃度等)に起因して変化する。すなわち、船体の航行による周囲の海水状態の変化によっても、UEP起因磁界は変化する。このため、第1磁気検出部により検出を行う周期を、船体の速度によって変化させること、例えば、船体の速度が速い場合には、周期を短くすることによって、UEP起因磁界の変化に対する検出追従性を高めることができる。よって、消磁コイルを適切に制御でき、より効果的に消磁を行うことができる。
【0017】
上記磁場抑制システムにおいて、船体の周囲に発生する水中電界を検出する水中電界検出部と、船体が発生させるUEP起因磁界の発生位置近傍に設けられた水中電極と、を備え、前記制御部は、前記水中電界検出部による検出結果に基づいて前記水中電極に印加する電圧を制御することとしてもよい。
【0018】
上記のような構成によれば、UEP起因磁界は、船体を構成する様々な異種金属の部材が互いに電気伝導体である海水に接触することで導通し、これによって発生する電流に起因して発生する。UEP起因磁界の発生位置近傍に水中電極を設け、水中電極に印加する電圧を制御することで、UEP起因磁界の発生位置から水中電極へ短い距離で電流を導くことができる。UEP起因磁界の原因である電流のループを極力短くすることができるため、UEP起因磁界を抑制することができる。そして、船体磁気を含む他の磁界を消磁コイルによって消磁することで、船体が発生させる磁界を全体として効果的に抑制することができる。
【0019】
本発明の第2態様は、上記磁場抑制システムを備えた船舶である。
【0020】
本発明の第3態様は、船体が発生させる磁場に対して反対極性の磁場を発生させる消磁コイルの制御方法であって、船体が発生させる磁気を検出する第1磁気検出工程と、前記消磁コイルが発生させる磁気を検出する第2磁気検出工程と、前記第1磁気検出工程及び前記第2磁気検出工程の検出結果に基づいて、前記消磁コイルに流れる電流を制御する制御工程と、を有する制御方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、船体が発生する磁界をリアルタイムに検出し、効果的に消磁を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明に係る磁場抑制システム、船舶、及び制御方法の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る磁場抑制システムを備えた船舶1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る磁場抑制システムは、低レベル(μT)磁気を検出する第1磁気検出部2(以下「低磁気センサ2」という。)と、高レベル(mT)磁気を検出する第2磁気検出部3(以下「高磁気センサ3」という。)と、消磁コイル4と、水中電界を検出する水中電界検出部5(以下「水中電界センサ5」という。)と、水中電極6と、制御装置7とを主な構成として備えている。なお、磁界13は、消磁コイル4による磁界の概略を示している。
【0024】
また、
図1に示す船舶1は、金属構造体8を有しているものとする。金属構造体8とは、例えば船舶1の動力源となるスクリュー等であり、水中電界の発生源となる部材である。海水中にイオン化傾向の異なる金属が存在すると、これらの金属間に電位差が生じ、水中電界が発生する。例えば、一般的な船舶においては、スクリューと船体の間で水中電界が発生し易い。UEP起因電界は、この水中電界に起因して発生する。
【0025】
なお、本実施形態では、低磁気センサ2、高磁気センサ3及び消磁コイル4は、船体内に設けられている。低磁気センサ2は、船体内にて、船体の外側に発生している磁気(船体磁界とUEP起因磁界)を検出するためのものであるため、低レベル(μT)の磁気を検出するものである。また、消磁コイル4は船体内に設けられており、消磁コイル4による磁界を金属等で形成された船体の外部まで影響を及ぼすために、消磁コイル4による磁界は船体内部ではとても大きくなる。このため、船体の内部にて消磁コイル4による磁界を検出するために、高磁気センサ3は、高レベル(mT)の磁気を検出するものが用いられる。なお、本実施形態においては、低磁気センサ2、高磁気センサ3及び消磁コイル4を船体内に備える場合について説明するが、船体外に備える場合でも適用可能である。
【0026】
また、船体が実際に発生させる磁気は、船体の垂直方向(上下舷方向)の磁気VM(Vertical compornent of ships Magnetization)と、船首尾方向の磁気LM(Longitudinal compornent of ships Magnetization)と、左右舷方向の磁気AM(Athwart compornent of ships Magnetization)とから構成されている。しかしながら、本実施形態では、船体が発生させる磁気を、船首尾方向の磁気LMとして限定して説明する。なお、他の磁気(船体の垂直方向の磁気VM及び左右舷方向の磁気AM)についても、消磁コイル4、低磁気センサ2及び高磁気センサ3等の配置及び方向を適宜変更すれば、以下に説明する船首尾方向の磁気LMに対する制御と同様に実施が可能である。
【0027】
低磁気センサ2は、低レベル(μT)の磁気を検出するためのセンサである。具体的には、低磁気センサ2は、船体が発生させる磁気(主として船体磁界及びUEP起因磁界が重畳された磁界)を検出するために設けられている。低磁気センサ2としては、フラックスゲートセンサや磁気インピーダンスセンサといったμTレベルの分解能を持つセンサが用いられる。また、低磁気センサ2によって検出された磁気は、消磁コイル制御部21に出力され、消磁コイル4の制御に用いられる。また、低磁気センサ2は、切替制御部22によって動作(ON/OFF)が制御されている。
【0028】
高磁気センサ3は、高レベル(mT)の磁気を検出するためのセンサである。具体的には、高磁気センサ3は、消磁コイル4が発生させる磁気を検出するために設けられている。高磁気センサ3としては、ホール素子や磁気抵抗素子といったmTレベルの分解能を持つセンサが用いられる。また、高磁気センサ3によって検出された磁気は、消磁コイル制御部21に出力され、消磁コイル4の制御に用いられる。また、高磁気センサ3は、切替制御部22によって動作(ON/OFF)が制御されている。
【0029】
消磁コイル4は、船体が発生させる磁場に対して反対極性の磁場を発生させ、消磁を行うコイルである。消磁コイル4は、消磁コイル4が発生させる磁界と船体が発生する磁界の分布特性が略一致(極性は反対)となるように配置される。消磁コイル4によって形成される磁界は、消磁コイル4に流れる電流によって制御されている。消磁コイル4に流れる電流を制御するためには、例えば、電源10を備えておけばよい。本実施形態では、消磁コイル4に流れる電流を、消磁コイル制御部21によって制御し、そのために、低磁気センサ2及び高磁気センサ3の検出結果を用いる。
【0030】
水中電界センサ5は、船体の周囲に発生する水中電界を検出する。水中電界とは、船体を構成する様々な異種金属の部材(特に、イオン化傾向の大きな部材)が互いに電気伝導体である海水に接触することで導通し、これによって発生する電流に起因して発生する。なお、UEP起因磁界は、この水中電界に起因して発生する。水中電界センサ5は、水中電界を検出し、検出結果を、水中電極6に印加する電圧を制御している水中電極制御部23へ出力する。なお、水中電界センサ5では、船体の周囲に発生する水中電界の強度を計測しているものとする。また、水中電界センサ5の設置位置は、船体が発生させる水中電界の分布特性に応じて適宜変更可能である。
【0031】
水中電極6は、船体が発生させるUEP起因磁界の発生位置近傍に設けられている。水中電界は、金属構造体8(船体を構成するイオン化傾向の大きな部材)から発生する。本実施形態では、水中電極6を、例えばスクリューといった金属構造体8近傍に配置し、水中電極制御部23によって、金属構造体8と水中電極6の間に電圧を印加する。これにより、水中電極6から金属構造体8へ短い距離で電流を導く。このように、UEP起因磁界の発生源となっている電流ループを極力短くすることで、大きなUEP起因磁界が形成されることを抑制している。水中電極6は、例えば、イオン化傾向が大きな金属であるアルミニウムや亜鉛等や、耐久性のある金属である銅等からなる。金属構造体8と水中電極6間の電圧を制御するためには、例えば、電源9を備えておけばよい。
【0032】
なお、本実施形態では、ダミーの水中電極(以下「ダミー水中電極11」という。)を、UEP起因磁界の発生位置近傍以外にも配置している。具体的には、船体の海水との接触面において、等間隔に、複数のダミー水中電極11を配置しており、これらのダミー水中電極11にも、UEP起因磁界の発生位置近傍に配置した水中電極6と同じ電圧を印加している。これにより、船体全体を等価的に等電位とすることができ、UEP起因磁界の原因となる電流の発生を抑制している。
【0033】
制御装置7は、低磁気センサ2や高磁気センサ3の検出結果に基づいて消磁コイル4を制御する機能や、水中電界センサ5の検出結果に基づいて水中電極6を制御する機能を備えており、これらの機能によって船体が発生する磁界(主として船体磁界及びUEP起因磁界が重畳された磁界)の統括的な消磁制御を行う。
【0034】
制御装置7は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等かを備えている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。
【0035】
図2は、制御装置7が備える機能を示した機能ブロック図である。
図2に示されるように、制御装置7は、消磁コイル制御部21と、切替制御部22と、水中電極制御部23を備えている。
【0036】
消磁コイル制御部21は、低磁気センサ2及び高磁気センサ3の検出結果に基づいて、消磁コイル4に流れる電流を制御する。このため、消磁コイル制御部21は、電流制御部24と、目標電流補正部25とを備えている。
【0037】
電流制御部24は、低磁気センサ2の検出結果を用いて、消磁コイル4に流れる電流を制御する。具体的には、電流制御部24は、低磁気センサ2の検出結果を取得し、取得した検出結果から想定される船体が発生させる磁界を打ち消すために必要な消磁コイル4の目標出力を設定する。そして、設定した目標出力を消磁コイル4に発生させるための目標電流を設定し、消磁コイル4に流れる電流が目標電流と一致するように制御する。なお、消磁コイル4の目標出力については、目標電流補正部25に出力される。
【0038】
低磁気センサ2の検出結果に基づく消磁コイル4の目標出力の設定については、予め実験やシミュレーション等によって、低磁気センサ2の検出結果と消磁コイル4の目標出力との対応関係を求めておき、テーブルとして保存していてもよいし、又は、数式化して数式のみを保存しておいてもよい。なお、消磁コイル4の目標出力と目標電流の関係についても、同様である。
【0039】
目標電流補正部25は、高磁気センサ3の検出結果を用いて、消磁コイル4に流れる電流を補正する。具体的には、目標電流補正部25は、高磁気センサ3の検出結果を取得し、該検出結果から想定される消磁コイル4の出力と、電流制御部24から入力された消磁コイル4の目標出力との差が予め設定された許容値以上であるか否かを判定する。すなわち、消磁コイル4から適切な磁界が出力されているか否かを判定する。そして、高磁気センサ3の検出結果から想定される消磁コイル4の出力と、電流制御部24から入力された消磁コイル4の目標出力との差が予め設定された許容値以上である場合には、消磁コイル4から適切な磁界が出力されていないと判定して、電流制御部24で設定される目標電流を補正する。なお、高磁気センサ3の検出結果から想定される消磁コイル4の出力と、電流制御部24から入力された消磁コイル4の目標出力との差が予め設定された許容値未満である場合には、消磁コイル4から適切な磁界が出力されていると判定し、目標電流の補正は行わない。目標電流の補正を行う場合には、高磁気センサ3の検出結果から想定される消磁コイル4の出力と、電流制御部24から入力された消磁コイル4の目標出力との差が予め設定された許容値未満となるように、消磁コイル4の目標電流を補正する。なお、許容値とは、電流制御部24から入力された消磁コイル4の目標出力に対して許容可能な、高磁気センサ3の検出結果から想定される消磁コイル4の出力として予め設定される。
【0040】
切替制御部22は、予め設定された周期において、消磁コイル4、低磁気センサ2及び高磁気センサ3の動作(ON/OFF)を制御する。具体的には、切替制御部22は、1周期における予め設定された所定期間(第1期間)の間に消磁コイル4及び高磁気センサ3の動作を停止させ、低磁気センサ2を動作させる。このようにすることで、消磁コイル4による磁界の影響なく、低磁気センサ2によって、船体が発生させる磁気(主として船体磁界及びUEP起因磁界が重畳された磁界)を検出することができる。なお、消磁コイル4の動作を停止させる場合には、消磁コイル4に流れる電流を停止させればよい。
【0041】
また、切替制御部22は、1周期における予め設定された所定期間以外(第2期間)の間に消磁コイル4及び高磁気センサ3を動作させ、低磁気センサ2の動作を停止させる。このようにすることで、高磁気センサ3によって消磁コイル4が発生させる磁気を検出することができる。また、消磁コイル4を動作させるため、船体が発生させる磁界の消磁を行うことができる。
【0042】
なお、1周期における予め設定された所定期間(第1期間)とは、例えば0.数秒ほどであり、1周期は数十秒ほどに設定される。この所定期間(第1期間)のディユーティ比は、前述のような1/100に限られず、低磁気センサ2の検出可能最少時間(例えばサンプリング時間)等と、許容される消磁動作停止時間などによって適宜設定される。
【0043】
また、予め定められた周期とは、船体が発生させる磁界(特に、UEP起因磁界)の経時的な変化に十分追従できるように設定される。
【0044】
なお、予め定められた周期については、船体の速度によって決定されてもよい。特にUEP起因磁界は、船体の周囲の海水の状態(流速や塩分濃度等)に起因して変化する。すなわち、船体の航行による周囲の海水状態の変化によっても、UEP起因磁界は変化する。このため、低磁気センサ2により検出を行う周期を、船体の速度によって変化させること、例えば、船体の速度が速い場合には、周期を短くすることによって、UEP起因磁界の変化に対する検出追従性を高めることができる。また、船体の速度が遅い場合には、周期を適切に長くすることによって、検出追従性を損なうことなく、消費電力を抑制することができる。
【0045】
水中電極制御部23は、水中電界センサ5による検出結果に基づいて水中電極6に印加する電圧を制御する。具体的には、水中電極制御部23は、UEP起因磁界の発生位置(金属構造体8の位置)近傍に設けた水中電極6と金属構造体8との間に印加される電圧を制御し、水中電極6と金属構造体8との間に短距離電流ループを形成させる。また、UEP起因磁界の発生位置近傍以外に等間隔に設けたダミー水中電極11についても、UEP起因磁界の発生位置近傍に設けた水中電極6と同じ電圧を印加する。
【0046】
水中電極制御部23には、水中電界センサ5による検出結果と、水中電界を抑制するための水中電極6に印加すべき電圧とが対応づけられたテーブルが予め格納されている。そして、水中電界センサ5の検出結果に基づいて、テーブルから水中電極6に印加すべき電圧を読み出し、該電圧を水中電極6に印加する。なお、テーブルには、水中電界センサ5によって検出された水中電界の強度が高い場合に、水中電極6に印加すべき電圧が高くなるように設定されている。
【0047】
このようにすることで、UEP起因磁界の発生原因である船体外に発生する電流の経路を、水中電極6と金属構造体8との間の短距離に収めることができる。このため、UEP起因磁界を効果的に抑制することができる。つまり、水中電極6は、UEP起因磁界を抑制するために設けられている。
【0048】
しかしながら、水中電極6と金属構造体8との間には、短距離ではあるが微弱な電流が流れるため、これに起因する微弱な磁界が発生する。また、船体内部において水中電極6と金属構造体8との間に電圧を印加することによる電流も流れるため、これに起因する磁界も発生する。本実施形態では、これらの磁界と船体磁気については、消磁コイル4によって消磁する。
【0049】
つまり、本実施形態では、UEP起因磁界を水中電極6によって抑制し、船体磁界と、水中電極6により副次的に発生する磁界とを消磁コイル4によって抑制している。なお、UEP起因磁界は、経時的に変化してしまうため、このUEP起因磁界の変動分も消磁コイル4によって抑制している。
【0050】
次に、上述の消磁コイル制御部21による電流制御について
図3を参照して説明する。
図3に示すフローは、第2期間(1周期における予め設定された所定期間(第1期間)以外の期間)が開始されると実行される。なお、
図3のフローは、予め設定された周期において第2期間が開始される毎に実行される。
【0051】
まず、低磁気センサ2の検出結果を取得する(S101)。そして、S101で取得した検出結果に基づいて、消磁コイル4の目標出力を設定する(S102)。そして、S102で設定した目標出力に基づいて、消磁コイル4の目標電流を設定する(S103)。
【0052】
次に、目標電流に対する目標電流補正部25による補正があるか否かが判定される(S104)。S104については、目標電流補正部25により補正が行われる場合にYES判定となり、補正が行われない場合にNO判定とする。目標電流補正部25による補正がある場合(S104のYES判定)には、目標電流を補正する(S105)。また、目標電流補正部25による補正がない場合(S104のNO判定)には、目標電流は維持される。
【0053】
そして、消磁コイル4に流れる電流が目標電流と一致するように制御が行われる(S106)。次に、第2期間が終了したか否か(高磁気センサ3及び消磁コイル4の動作が停止(低磁気センサ2が動作)されたか否か)が判定される。ここで、第2期間が終了していない場合(S107のNO判定)には、S104へ戻り上記の処理が繰り返し行われる。これによって、高磁気センサ3による消磁コイル4によって発生する磁気の監視が継続して行われ、消磁コイル4の出力が目標出力となっているか否かが判定される。第2期間が終了した場合(S107のYES判定)には、
図3に示すフローを終了させる。そして、次の周期にて第2期間が開始された場合には、再度実行される。
【0054】
次に、上述の切替制御部22による切替動作について
図4を参照して説明する。
図4には、低磁気センサ2、高磁気センサ3、消磁コイル4及び水中電界センサ5の動作(ON/OFF)のタイミングチャートが記載されている。なお、タイミングチャートに記載したデューティ比は一例であり、適宜設計することができる。
【0055】
図4に示すように、予め設定された1周期における第1期間には、低磁気センサ2を動作させ、高磁気センサ3及び消磁コイル4は停止状態とする。そして、第1期間が終了、つまり、低磁気センサ2による検出が終了すると、第2期間に移行する。第2期間では、低磁気センサ2を停止状態とし、高磁気センサ3及び消磁コイル4を動作させる。つまり、第2期間では、第1期間に検出した低磁気センサ2の検出結果及び、第2期間に検出した高磁気センサ3の検出結果に基づいて、消磁コイル4を動作させ、船体が発生させている磁界の消磁(抑制)を行う。
なお、上記の動作は、予め設定された周期に基づいて繰り返し行われる。
【0056】
また、水中電界センサ5は、消磁を行う場合に、定常的に動作させる。つまり、定常的に水中電極6を動作させ、UEP起因磁界を低減させる。第1期間においても水中電極6は動作しているため、低磁気センサ2は、水中電極6によるUEP起因磁界低減後の、船体が発生させる磁界(船体磁気、水中電極6により抑制しきれなかったUEP起因磁界、水中電極6により副次的に発生する磁界等)を検出し、低磁気センサ2によって検出された磁界を、消磁コイル4を用いて消磁(抑制)する。なお、低磁気センサ2では、上記以外にも、例えば、渦電流磁気や浮遊磁気といった磁界についても総合的に検出することができるため、本実施形態では、船体が発生させる磁気を総合的に消磁(抑制)することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る磁場抑制システム、船舶、及び制御方法によれば、低磁気センサ2及び高磁気センサ3を用いることにより、船体が発生させる磁気と、消磁コイル4が発生させる磁気をそれぞれ検知することができ、船体が発生させている磁界空間をより詳細に評価することができる。また、低磁気センサ2及び高磁気センサ3の検出結果に基づいて、消磁コイル4に流れる電流を制御することで、例えば、UEP起因磁界の変化や、消磁コイル4が発生させる磁界のばらつき等にも対応して、より効果的に消磁を行うことができる。
【0058】
また、予め設定された周期において所定期間だけ消磁コイル4に流れる電流を意図的に停止させ、この所定期間内に低磁気センサ2によって船体が発生させる磁気を検知することで、消磁コイル4が発生させる磁気に影響されずに、船体が発生させる磁気をより正確に計測することができる。また、予め設定された周期で低磁気センサ2による検出を行うため、UEP起因磁界の変化も略リアルタイムで正確に検知することが可能となる。
【0059】
また、UEP起因磁界は、船体を構成する様々な異種金属の部材が互いに電気伝導体である海水に接触することで導通し、これによって発生する電流に起因して発生する。UEP起因磁界の発生位置近傍に水中電極6を設け、水中電極6に印加する電圧を制御することで、UEP起因磁界の発生位置から水中電極6へ短い距離で電流を導くことができる。UEP起因磁界の原因である電流のループを極力短くすることができるため、UEP起因磁界を抑制することができる。そして、船体磁気を含む他の磁界を消磁コイル4によって消磁することで、船体が発生させる磁界を全体として効果的に抑制することができる。
【0060】
つまり、UEP起因磁界を水中電極6によって抑制し、船体磁界と、水中電極6により副次的に発生する磁界とを消磁コイル4によって抑制している。なお、UEP起因磁界の変動分についても低磁気センサ2でリアルタイムに検知して消磁コイル4によって抑制している。このため、本実施形態における磁場抑制システムでは、静的な船体磁界と、動的なUEP起因磁界を総合的に抑制することができる。
【0061】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る磁場抑制システム、船舶、及び制御方法について説明する。
上述した第1実施形態では、予め設定された周期に基づいて、低磁気センサ2と高磁気センサ3の切替を行い、船体が発生させる磁気と消磁コイル4が発生させる磁気とをそれぞれ検出していたが、本実施形態では、磁性シールド体12を用いることで、低磁気センサ2と高磁気センサ3の切替制御を行うことなく、定常的に、船体が発生させる磁気と消磁コイル4が発生させる磁気を検出する。以下、本実施形態に係る磁場抑制システムについて、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0062】
本実施形態における磁場抑制システムでは、
図5に示すように、磁性シールド体12を備える。
磁性シールド体12は、強磁性体材料(例えば、鉄、コバルト、ニッケル、酸化鉄やこれらを含む合金等)からなる円筒形の部材であって、消磁コイル4の内側に設けられる。このように配置することで、消磁コイル4が自身の内側に発生させる磁界のほとんどを磁性シールド体12に集中して流すことができる。なお、磁性シールド体12から出た磁界は、磁性シールド体12を設けなかった場合の消磁コイル4が発生させる磁界と略等しい分布となる。つまり、消磁コイル4の内側に磁性シールド体12を設けることによって、消磁コイル4が発生させる磁界のうち、消磁コイル4の内側に形成される磁界のみを磁性シールド体12に集中させるよう変形させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、低磁気センサ2は、磁性シールド体12の内側に配置され、高磁気センサ3は、磁性シールド体12の外側に配置されている。このように配置することによって、高磁気センサ3については、上記第1実施形態と同様に消磁コイル4が発生させる磁界を検出することができる。また、低磁気センサ2については、磁性シールド体12の内側に配置されることで、消磁コイル4が発生させる磁界の影響をほとんど受けることなく、船体が発生させる磁界(船体磁界及びUEP起因磁界等)を検出することができる。
【0064】
次に、本実施形態における切替制御部22による切替動作について
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態における低磁気センサ2、高磁気センサ3、消磁コイル4及び水中電界センサ5の動作(ON/OFF)のタイミングチャートが記載されている。
図6に示すように、本実施形態では、磁性シールド体12により、低磁気センサ2及び高磁気センサ3を常に動作させることができる。消磁コイル4については、低磁気センサ2がONとなってから一定時間遅らせて動作させているが、これは、低磁気センサ2により検出した船体が発生させる磁気に基づいて消磁コイル4を動作させるためであり、一旦動作させてしまえば、その後は常に動作させることができる。なお、低磁気センサ2及び高磁気センサ3を常に動作させているが、予め設定した制御周期で低磁気センサ2及び高磁気センサ3からの検出結果を取得し、上記第1実施形態と同様の制御を行うものとする。
【0065】
なお、本実施形態における予め設定した制御周期とは、上記第1実施形態における予め定められた周期と同様に、船体の速度によって決定されてもよい。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る磁場抑制システム、船舶、及び制御方法によれば、磁性シールド体12を更に備えることで、低磁気センサ2及び高磁気センサ3の切替制御を行うことなく、船体が発生させる磁界と消磁コイル4が発生させる磁界とをそれぞれ検出することができる。このため、船体が発生させる磁界(特に、UEP起因磁界)に経時的な変化が生じたとしても、リアルタイムに検出することができ、消磁システムの精度が向上する。また、切替動作が不要のため、消費電力を抑制することができる。
【0067】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。なお、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0068】
例えば、各実施形態では、低磁気センサ2としてμTレベルの分解能を有するセンサを使用しているが、これに限らず、更に分解能の高いセンサを用いることも可能である。
【0069】
また、各実施形態では、例えばスクリューといった金属構造体8を、船体の長手方向の両端に備える場合について説明したが、金属構造体8の位置は、船体の長手方向の両端に備える場合に限られず、金属構造体8の位置に応じて水中電極6や消磁コイル4の配置は適宜変更可能である。