(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書で使用する各図においては、共通する要素に同一の符号を付けるものとする。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
【0010】
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る加熱調理器1を正面上方から見た際の外観図である。この加熱調理器1は、一例として、IH(Induction Heating)調理器であり、キッチンキャビネット上に載置されて使用される。なお、加熱調理器1は、システムキッチンとして、キッチンキャビネット内に組み込まれていてもよい。また、後述するように、加熱調理器1は、ガスコンロ,電気コンロ等であってもよい。つまり、加熱調理器1は、台所に配置されて調理に用いられる調理器であり、通常、上方にレンジフード,換気扇等が設置されている。また、加熱調理器1の周囲には、壁,柱等が存在しているものとする。
【0011】
加熱調理器1は、
図1に示すように、箱形状の筐体10と、筐体10の上面に設けられた天板11と、天板11に設けられた3つの加熱面12と、ユーザに操作される操作部13(つまり、操作手段)と、吹き出し口(後述する第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18)から放出される空気を整流する整流板14とを備えている。
【0012】
図2は、加熱調理器1を右側面から見た際の断面図である。加熱調理器1の内部には、
図2に示すように、全体の制御を行う制御回路20(つまり、制御手段)と、電磁誘導で加熱を行う加熱コイル30(加熱手段)と、空気を送風する送風ファン40(つまり、送風手段)と、イオン性物質を発生させるイオン発生部50(つまり、イオン発生手段)とが配置されている。
【0013】
操作部13は、ユーザが任意に火力(例えば、加熱量,温度等)を調整するためのボタンスイッチ,タッチスイッチ等であり、ユーザの操作に応じた操作信号を、図示せぬ信号線を介して制御回路20に供給する。
【0014】
制御回路20は、一例として、CPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory),タイマ等を備えたコントローラであり、加熱調理器1全体を制御する。
なお、制御回路20の詳細については、後述する。
【0015】
加熱コイル30は、各加熱面12に対応してそれぞれ配置されており、制御回路20からの駆動信号に基づいて高周波電流が供給され、加熱面12上に置かれた鍋,フライパン等の調理器具NBを電磁誘導により加熱する。
【0016】
送風ファン40は、筐体10の背面付近に配置されている。その送風ファン40の近傍となる筐体10の背面には、筐体10外の空気を吸い込むための吸い込み口15が設けられている。なお、吸い込み口15は、筐体10の背面に限られず、例えば、筐体10の底面に設けられていてもよい。
送風ファン40は、吸い込み口15から吸い込んだ空気を、筐体10内に送風し、制御回路20及び加熱コイル30を冷却する。つまり、筐体10内には、風路16が形成されており、送風ファン40から吹き出された空気が、
図2における大きな矢印にて示すように、制御回路20、加熱コイル30、イオン発生部50、整流板14の順に流れる。そして、整流板14まで達した空気は、第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18から筐体10外に吹き出される。なお、第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18から吹き出される空気が、
図2における小さな矢印にて示されるそれぞれの方向に進むように、イオン発生部50及び整流板14の設置角度が適宜調整されている。つまり、第1の吹き出し口17から吹き出される空気は、調理器具NBの上方に向けて進むように調整されている。また、第2の吹き出し口18から吹き出される空気は、筐体10の背面方向(つまり、周囲の壁,柱等の方向)に向けて進むように調整されている。
【0017】
イオン発生部50は、整流板14の下方、つまり、第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18の下方に配置されており、イオン性物質を発生させる。イオン発生部50が発生させるイオン性物質とは、例えば、マイナスイオン、プラスイオンの他に、電荷を帯びたミスト,粒子状物質等を指す。なお、オゾン、OHラジカル等の活性種は、イオン性物質に含めないものとする。
【0018】
また、イオン発生部50を加熱コイル30及び制御回路20よりも下流側(つまり、第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18により近い位置)に配置するのは、以下の理由からである。
イオン発生部50を加熱コイル30若しくは制御回路20よりも上流側に配置してしまうと、発生されたイオン性物質が加熱コイル30若しくは制御回路20(又は両方)に吹きかかることになる。これにより、第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18から放出されるイオン性物質が減少してしまい、後述するような除電効果が薄れてしまう。また、加熱コイル30若しくは制御回路20においても、電荷の蓄積により弊害(例えば、火花の発生による故障)が生じる可能性も懸念される。
このため、イオン発生部50は、加熱コイル30及び制御回路20よりも下流側に配置されている。
【0019】
イオン発生部50が発生させたイオン性物質は、送風ファン40から送風された空気と共に、第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18から筐体10外にそれぞれ放出される。
第1の吹き出し口17から放出されたイオン性物質は、調理煙KMまで到達して混合することで調理煙KMを除電する。除電された調理煙KMは、クーロン力による周囲への拡散が抑制される。更に、調理煙KMを除電することで、粒子同士の接触を防いで凝集を抑制し、慣性力を弱めて風に乗り易くなり、上方に配置されたレンジフード,換気扇等から排気され易くなる。つまり、調理煙KMが周囲の壁,柱等に引き寄せられ難くなる。
一方、第2の吹き出し口18から放出されたイオン性物質は、周辺の壁,柱等に到達し、それらを除電する。つまり、壁側も除電することで、静電気を生じさせず、調理煙KMが壁側に引き寄せられたり、調理煙KMに含まれる調理汚れが壁側に付着することを抑制できる。
【0020】
なお、第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18のように、吹出し口は必ずしも複数必要な訳ではない。また、吹き出し口からの吹き出し方向(つまり、イオン性物質の放出方向)も、
図2に示すような小さな矢印の方向に限定されるものではない。本願発明では、イオン性物質が、調理器具NBの近傍に放出されるだけでも、除電効果は少なからず期待できる。
【0021】
イオン発生部50は、例えば、
図3に示すように、針状の放電電極51と、接地電極52とを備え、コロナ放電によりイオン性物質を発生させる。具体的には、電圧の印加によって放電電極51の先端と接地電極52との間に不平等電界が形成され、それに伴ってコロナ放電が発生する。そして、このコロナ放電により、放電電極51周辺に存在している空気が電気的に分解され、イオン性物質が発生する。
なお、イオン発生部50は、
図3に示すような形状に限定されず、適宜変更可能である。例えば、後述する実施形態3に係る加熱調理器3に採用されるイオン発生部50では、配置位置に合わせて形状が適宜変更されているものとする。
また、イオン発生部50は、このようなコロナ放電方式に限定されず、他に電離放射線式を用いて、イオン性物質を発生させてもよい。
【0022】
イオン発生部50における印加電圧とイオン濃度Io、及び、オゾン濃度Ozとの関係を
図4に示す。イオン発生部50にて、コロナ放電を起こす際に、イオン性物質の他にオゾンが生成される場合がある。つまり、印加電圧が規定電圧を超えて増加すると(一例として、電圧Vbよりも大きな電圧を印加させると)、イオン濃度Ioだけでなく、オゾン濃度Ozも急激に増加する。なお、多量のオゾンを発生させてしまうと、人体への影響が懸念される。また、オゾンは、その酸化力による脱臭効果で良く知られているが、以下の理由で、台所では不要となる。
調理で発生するアセトアルデヒドを中心とした物質は、完全酸化によりCO
2化に至るのは僅かであり、多くが酢酸に変質し、酸っぱい臭いを発生させる。オゾンそのものも低濃度で臭気を発する為、調理臭と混合され、不快な臭気を発する場合がある。
【0023】
そのため、
図4に示す電圧Va−Vbで示される範囲で、イオン発生部50における印加電圧を調整することで、オゾンを発生させず、イオン性物質のみを発生させる。なお、マイナスの電圧を印加させた場合に、オゾン発生量が少なく抑えられる事が判っているが、周囲の壁,柱等における材質,表面加工等に応じて、必要なイオンの極性が異なる上、中和においてはプラスとマイナスの双方を放出する方がよい場合もあるため、イオン発生部50における印加電圧の制御を、ユーザのキッチン周りの実情に応じて、適宜変更できるようにしてもよい。
【0024】
制御回路20の詳細について、
図5を参照して説明する。
図5は、制御回路20の機能構成、及び、他の構成との接続関係を説明するためのブロック図である。
図5に示すように、制御回路20は、機能的に、加熱制御部21と、送風制御部22と、イオン発生制御部23とを備える。これらの機能は、例えば、制御回路20が備えるCPUが、RAMをワークメモリとして用い、ROMに記憶されている各種プログラムを適宜実行することにより、実現される。
【0025】
加熱制御部21は、操作部13から供給される操作信号(ユーザの操作に応じた操作信号)に応じて、加熱コイル30に高周波電流を供給し、加熱面12上に置かれた調理器具NBを電磁誘導により加熱する。
【0026】
送風制御部22は、加熱制御部21の加熱制御に応答し、送風ファン40を駆動させる。その際、送風制御部22は、加熱制御部21における加熱量に応じて、送風ファン40の風量を適宜制御するようにしてもよい。例えば、送風制御部22は、加熱量が小さい場合は、それに応じて風量も小さくし、逆に、加熱量が大きい場合は、それに応じて風量も大きくする。
【0027】
イオン発生制御部23は、加熱制御部21の加熱制御、又は、送風制御部22の送風制御に応答し、イオン発生部50を動作させる。その際、イオン発生制御部23は、加熱制御部21における加熱量、又は、送風ファン40の風量に応じて、イオン発生部50に印加する電圧を、上述した
図4における電圧Va−Vbの範囲で適宜調整してもよい。例えば、イオン発生制御部23は、加熱量(又は風量)が小さい場合は、それに応じて印加電圧も小さくし(電圧Va−Vbの範囲内)、逆に、加熱量(又は風量)が大きい場合は、それに応じて印加電圧も大きくする(電圧Va−Vbの範囲内)。
【0028】
なお、イオン発生制御部23(送風制御部22も同様)は、加熱制御部21が加熱制御を行っていない状態でも、操作部13から供給される操作信号に応じて、イオン発生部50を動作させてもよい。その場合、操作部13から供給される操作信号以外にも、通電時(例えば、電源ケーブルのコンセントへの差し込み時)や、他の機器の動作(例えば、レンジフード,換気扇等の稼働、又は、台所照明の点灯等)に連動して、イオン発生部50を動作させてもよい。
更に、リモコン,スマートフォン等から送信される信号に応じて、イオン発生部50を動作させてもよい。例えば、制御回路20と無線通信可能な専用アプリをスマートフォンにインストールしておき、ユーザが、調理後の台所で臭い残りに気付いた際に、その専用アプリを実行して、イオン発生部50がイオン性物質を発生させるようにしてもよい。
この他にも、制御回路20が家庭内のネットワークや移動体通信網を通じてインターネットにアクセスできるようにし、ユーザが宅外にいる場合でも、パソコン,スマートフォン等からイオン発生部50を動作させることができるようにしてもよい。
すなわち、上述した操作部13だけでなく、これら、パソコン,リモコン,スマートフォン等も、広義の操作手段として機能する。
【0029】
以下、このような構成の加熱調理器1の動作について、
図6を参照して説明する。
図6は、制御回路20が実行するイオン放出処理を説明するためのフローチャートである。このイオン放出処理は、例えば、ユーザによる操作部13の操作に応答して開始される。
【0030】
制御回路20は、操作部13から供給された操作信号が、加熱を指示する操作信号であるか否かを判別する(ステップS101)。
【0031】
制御回路20は、加熱を指示する操作信号であると判別すると(ステップS101;Yes)、操作信号に応じて、加熱コイル30を稼働させる(ステップS102)。
すなわち、加熱制御部21は、その操作信号に応じて、加熱コイル30に高周波電流を供給し、加熱面12上に置かれた調理器具NBを電磁誘導により加熱する。
【0032】
制御回路20は、送風ファン40を駆動させる(ステップS103)。
すなわち、送風制御部22は、加熱制御部21における加熱量に応じて、送風ファン40の風量を適宜制御する。
【0033】
制御回路20は、イオン発生部50を動作させる(ステップS104)。
すなわち、イオン発生制御部23は、加熱制御部21における加熱量、又は、送風ファン40の風量に応じて、イオン発生部50に印加する電圧を、上述した
図4における電圧Va−Vbの範囲で適宜調整する。
【0034】
また、上述したステップS101にて、操作部13から供給された操作信号が、加熱を指示する操作信号でないと判別した場合に、加熱を停止する操作信号であるか否かを判別する(ステップS105)。
制御回路20は、加熱を停止する操作信号でないと判別すると(ステップS105;No)、その操作信号に応じた何らかの制御(例えば、加熱温度を一定に保つ制御、加熱量を段階的に変化させる制御等)を行った後に、上述したステップS101に処理を戻す。
【0035】
一方、加熱を停止する操作信号であると判別した場合(ステップS105;Yes)に、制御回路20は、一定時間(例えば、3分)経過後に、送風ファン40及びイオン発生部50の動作を停止させる(ステップS106)。なお、加熱調理器1が、調理器具NBとの接触面の温度を検出する温度センサを備えている場合では、その温度センサにより検出された温度が一定温度まで下がった後に、制御回路20は、送風ファン40及びイオン発生部50の動作を停止させてもよい。
【0036】
このようなイオン放出処理により、加熱コイル30による調理器具NBの加熱に伴い、送風ファン40が駆動される。つまり、送風ファン40から送風された空気が、上述した
図2における大きな矢印にて示すように、制御回路20、加熱コイル30、イオン発生部50、整流板14の順に流れる。そして、整流板14まで達した空気は、第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18から筐体10外にそれぞれ吹き出される。
これと同時に、イオン発生部50が動作するため、イオン発生部50が発生させたイオン性物質は、送風ファン40から送風された空気と共に、第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18から筐体10外にそれぞれ放出される。
第1の吹き出し口17から放出されたイオン性物質は、調理煙KMまで到達して混合することで調理煙KMを除電する。除電された調理煙KMは、クーロン力による周囲への拡散が抑制される。更に、調理煙KMを除電することで、粒子同士の接触を防いで凝集を抑制し、慣性力を弱めて風に乗り易くなり、上方に配置されたレンジフード,換気扇等から排気され易くなる。つまり、調理煙KMが周囲の壁,柱等に引き寄せられ難くなる。
一方、第2の吹き出し口18から放出されたイオン性物質は、周辺の壁,柱等に到達し、それらを除電する。つまり、壁側(壁,柱等)も除電することで、静電気を生じさせず、調理煙KMが壁側に引き寄せられたり、調理煙KMに含まれる調理汚れが壁側に付着することを抑制できる。
【0037】
すなわち、本発明の実施形態1に係る加熱調理器1では、調理汚れが周囲の壁,柱等に付着するのを適切に抑制することができる。
【0038】
上記の実施形態1では、調理が開始されるに伴って、つまり、加熱制御又は送風制御に応答してイオン発生部50を動作させ、イオン性物質を発生させる場合について説明したが、調理が開始される前から、イオン性物質を発生させてもよい。例えば、加熱調理器1が、人感センサを備えている場合では、人感センサが加熱調理器1の前にいるユーザの存在を検出し、その状態が一定時間(例えば、10秒)継続すると、制御回路20がイオン発生部50を動作させ、調理が開始される前からイオン性物質を発生させるようにしてもよい。
この他にも、制御回路20が日々の調理開始時刻を蓄積(一例として、加熱を指示する操作信号が供給された時刻を順次記憶)するようにし、次の調理開始予測時刻を推定(曜日・休祭日又は時間帯に応じた調理開始予測時刻を推定)できるようにする。そして、制御回路20は、推定される調理開始予測時刻の少し前から、イオン発生部50を動作させてイオン性物質を発生させるようにしてもよい。
これらの場合、実際に調理が開始されると同時に、十分なイオン性物質が放出されるため、例えば、フライパンによる炒め調理がなされても、調理汚れが壁,柱等に付着することを抑制することができる。
【0039】
また、上述したように、調理後(加熱制御部21が加熱制御を行っていない状態)でも、操作部13の操作、通電、他の機器の動作と連動、リモコン,スマートフォン等から送信される信号、及び、宅外のパソコン,スマートフォン等からの指示情報等に応じて、イオン発生部50を動作させることができるため、ユーザが臭い残りに気付いた際に、即座にイオン発生部50を動作させてイオン性物質を発生させることで、調理汚れが壁,柱等に付着することを抑制することができる。
【0040】
<実施形態2>
上記の実施形態1では、イオン発生部50が、第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18の下方に配置される場合について説明したが、イオン発生部50の配置位置は、このような位置に限定されるものではない。つまり、第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18から吹き出される空気と共にイオン性物質を外部に放出できるような位置であれば、イオン発生部50の配置位置は、適宜変更可能である。
以下、
図7を参照して、本発明の実施形態2に係る加熱調理器2について説明する。
【0041】
図7は、本発明の実施形態2に係る加熱調理器2を右側面から見た際の断面図である。加熱調理器2は、イオン発生部50の数とそれらの配置位置が、加熱調理器1とは異なるものの、他の構成は、加熱調理器1と同様である。
【0042】
加熱調理器2は、2つのイオン発生部50(50a,50b)を有している。制御回路20(イオン発生制御部23)は、上記の実施形態1と同様に、イオン発生部50a,50bを動作させる。
一方のイオン発生部50aは、天板11に沿って、第1の吹き出し口17の近傍に配置されている。
イオン発生部50aが発生させたイオン性物質は、第1の吹き出し口17から吹き出される空気に乗って放出される。このように放出されたイオン性物質は、調理煙KMまで到達して混合することで調理煙KMを除電する。除電された調理煙KMは、上記の実施形態1と同様に、クーロン力による周囲への拡散が抑制される。更に、調理煙KMを除電することで、粒子同士の接触を防いで凝集を抑制し、慣性力を弱めて風に乗り易くなり、上方に配置されたレンジフード,換気扇等から排気され易くなる。つまり、上記の実施形態1と同様に、調理煙KMが周囲の壁,柱等に引き寄せられ難くなる。
【0043】
もう一方のイオン発生部50bは、筐体10における背面に沿って、第2の吹き出し口18の近傍に配置されている。
イオン発生部50bが発生させたイオン性物質は、第2の吹き出し口18から吹き出された空気に乗って放出される。このように放出されたイオン性物質は、周辺の壁,柱等に到達し、それらを除電する。つまり、上記の実施形態1と同様に、壁側も除電することで、静電気を生じさせず、調理煙KMが壁側に引き寄せられたり、調理煙KMに含まれる調理汚れが壁側に付着することを抑制できる。
【0044】
すなわち、本発明の実施形態2に係る加熱調理器2においても、調理汚れが周囲の壁,柱等に付着するのを適切に抑制することができる。しかも、加熱調理器2では、加熱調理器1が発生させるイオン性物質の量(濃度)よりも少ない量のイオン性物質を発生させても、加熱調理器1と同様の除電効果を奏することが可能となる。
つまり、加熱調理器1では、イオン性物質が整流板14に衝突し、ある程度のイオン性物質が消耗してしまうが、加熱調理器2では、そのような消耗が起こらないため、少ない量のイオン性物質を発生させても、加熱調理器1と同様の除電効果を奏することが可能となる。
【0045】
<実施形態3>
上記の実施形態1,2では、第1の吹き出し口17及び第2の吹き出し口18から吹き出される空気と共にイオン性物質が放出できる位置に、イオン発生部50を配置する場合について説明したが、イオン性物質が、調理器具NBの近傍に放出されるだけでも、除電効果は少なからず期待できる。
以下、
図8を参照して、本発明の実施形態3に係る加熱調理器3について説明する。
【0046】
図8は、本発明の実施形態3に係る加熱調理器3を右側面から見た際の断面図である。加熱調理器3は、イオン発生部50の配置位置が、加熱調理器1とは異なるものの、他の構成は、加熱調理器1と同様である。
【0047】
なお、加熱調理器3では、加熱調理器1とは異なり、操作部13を筐体10の前面に移動させると共に、元の操作部13の位置にイオン発生部50を配置している。
加熱調理器3におけるイオン発生部50は、
図8に示すように、調理器具NBに対して斜めに対向するように配置されている。つまり、イオン発生部50は、調理器具NBの上方に向けてイオン性物質を放出するように配置されている。制御回路20(イオン発生制御部23)は、加熱制御部21の加熱制御、又は、送風制御部22の送風制御に応答し、イオン発生部50を動作させる。
イオン発生部50が発生させたイオン性物質は、イオン風と熱による上昇気流とに乗って調理煙KMに到達し、調理煙KMに混合することで調理煙KMを除電する。除電された調理煙KMは、上記の実施形態1と同様に、クーロン力による周囲への拡散が抑制される。更に、調理煙KMを除電することで、粒子同士の接触を防いで凝集を抑制し、慣性力を弱めて風に乗り易くなり、上方に配置されたレンジフード,換気扇等から排気され易くなる。つまり、上記の実施形態1と同様に、調理煙KMが周囲の壁,柱等に引き寄せられ難くなる。
【0048】
すなわち、本発明の実施形態3に係る加熱調理器3においても、調理汚れが周囲の壁,柱等に付着するのを適切に抑制することができる。
【0049】
<実施形態4>
上記の実施形態1〜3では、イオン発生部50を備える加熱調理器1〜3について説明したが、このイオン発生部50を外部機器に持たせてもよい。
以下、
図9を参照して、本発明の実施形態4に係る加熱調理器4について説明する。
【0050】
図9は、加熱調理器4を正面左斜め上方から見た際の外観図である。加熱調理器4は、イオン発生部50を備えていない点で加熱調理器1とは異なるものの、他の構成は、加熱調理器1と同様である。
【0051】
外部機器5は、内部にイオン発生部50を備えており、例えば、有線を介して加熱調理器4と通信可能に接続されている。なお、外部機器5は、無線によって加熱調理器4と通信可能に接続されていてもよい。つまり、加熱調理器4(制御回路20)は、有線又は無線により、外部機器5を制御可能となっている。
【0052】
外部機器5は、イオン性物質を放出する方向を変化させる機能と、加熱調理器4の設置位置を検知する機能とを有している。例えば、外部機器5は、三軸の可動機構を介してイオン発生部50を保持しており、イオン発生部50の向きを変えることで、イオン性物質を放出する方向を変化させる。また、外部機器5は、例えば、熱検出センサを備え、加熱調理器4の設置位置を検知する。
【0053】
制御回路20(イオン発生制御部23)は、加熱制御部21の加熱制御に応答し、外部機器5に対して、イオン発生部50の動作指示を送信する。
外部機器5は、制御回路20からの動作指示に応答して、イオン発生部50を動作させる。その際、外部機器5は、加熱調理器4の設置位置を検知し、検出した向きの上方(つまり、調理器具NBの上方)に向けてイオン性物質を放出する方向を変化させる。
イオン発生部50が発生させたイオン性物質は、イオン風と熱による上昇気流とに乗って調理煙KMに到達し、調理煙KMに混合することで調理煙KMを除電する。除電された調理煙KMは、上記の実施形態1と同様に、クーロン力による周囲への拡散が抑制される。更に、調理煙KMを除電することで、粒子同士の接触を防いで凝集を抑制し、慣性力を弱めて風に乗り易くなり、上方に配置されたレンジフード,換気扇等から排気され易くなる。つまり、上記の実施形態1と同様に、調理煙KMが周囲の壁,柱等に引き寄せられ難くなる。
【0054】
すなわち、本発明の実施形態4に係る加熱調理器4においても、調理汚れが周囲の壁,柱等に付着するのを適切に抑制することができる。
【0055】
<他の実施形態>
上記の実施形態1〜4では、加熱コイル30を用いるIH方式の加熱調理器1〜4について説明したが、一例であり、他の方式の加熱調理器であってもよい。例えば、ガスバーナを用いるガスコンロ方式の加熱調理器、電熱コイルを用いる電機コンロ方式の加熱調理器等にも適宜適用可能である。
また、鍋,フライパン等の調理器具NBを加熱する加熱調理器に限られず、他に、ホットプレート,炊飯器,電子レンジ,トースター等の加熱調理器にも適宜適用可能である。
【0056】
また、上記の実施形態において、制御回路20によって実行されるプログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optical Disk)、USBメモリ、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布することも可能である。そして、かかるプログラムを特定の又は汎用のコンピュータにインストールすることによって、当該コンピュータを上記の実施形態における制御回路20として機能させることも可能である。
【0057】
また、上記のプログラムをインターネットといった通信ネットワーク上のサーバ装置が有するディスク装置に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロードするようにしてもよい。また、通信ネットワークを介してプログラムを転送しながら起動実行することによっても、上述の処理を達成することができる。さらに、プログラムの全部又は一部をサーバ装置上で実行させ、その処理に関する情報をコンピュータが通信ネットワークを介して送受信しながらプログラムを実行することによっても、上述の処理を達成することができる。
【0058】
なお、上述の機能を、OS(Operating System)が分担して実現する場合又はOSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを上記の記録媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロードしてもよい。
【0059】
本発明は、広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能である。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。