(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した特許文献1,2に記載の地下式の高圧流体の貯蔵技術を上述したCAESシステム等に適用した場合、コンクリート製の耐圧容器には内部に貯蔵される高圧流体の内圧の変動によって、外方に向かう荷重が負荷されるので、特に外周の地山が緩んでいる場合には、かかる外方に向かう荷重に抵抗するための土圧、あるいは水圧が十分でないため、岩盤の内壁面に空隙や割れ目が発生してしまう。そのため、耐圧容器の内部に大きな引張応力が発生し、これによってコンクリートに亀裂(クラック)等が生じることで、高圧流体を安定して貯蔵することができなくなるおそれがある。
【0012】
特許文献3,4には、岩盤の内壁面に発生した空隙や割れ目、及びコンクリートに生じた亀裂を補修する技術が開示されているが、貯槽に貯蔵される高圧流体の内圧の変動によって、耐圧容器に生じる引張応力から耐圧容器を保護するものではない。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高圧流体貯槽の内圧の変動によって生じる応力から、当該高圧流体貯槽を保護することが可能な高圧流体貯蔵設備、高圧流体貯蔵方法、及びそれらを用いた電力貯蔵システム、並びに水力発電設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 地下岩盤内に埋設され、高圧流体を貯蔵する高圧流体貯槽と、
前記岩盤と前記高圧流体貯槽との間の間隙に充填された裏込め材と、
前記高圧流体貯槽内の圧力の変動に応じて、前記裏込め材にかかる圧力を制御する差圧制御機構と、を備える、高圧流体貯蔵設備。
[2] 前記差圧制御機構が、
前記高圧流体貯槽内と連通する内圧検知管と、
前記高圧流体を貯蔵するとともに、前記内圧検知管を介して前記高圧流体貯槽内の圧力と同じ内圧とされる蓄圧槽と、
前記裏込め材が充填された前記間隙と連通する裏込め材供給管と、
前記裏込め材を貯蔵するとともに、前記裏込め材供給管を介して前記間隙と連通する裏込め材貯槽と、
前記蓄圧槽と前記裏込め材貯槽との間に設けられ、当該蓄圧槽の内圧を当該裏込め材貯槽に伝達する圧力連通管と、を有する、[1]に記載の高圧流体貯蔵設備。
[3] 前記蓄圧槽と、前記圧力連通管と、前記裏込め材貯槽とが一体化したシリンダー構造の圧力調整装置を有し、
前記圧力調整装置の内部に、前記高圧流体と前記裏込め材との界面を有する、[2]に記載の高圧流体貯蔵設備。
[4] 前記界面に、前記高圧流体と前記裏込め材とを分離するとともに、前記高圧流体貯槽内の圧力を前記裏込め材に伝達する弾性膜を有する、[3]に記載の高圧流体貯蔵設備。
[5] 前記差圧制御機構が、
前記高圧流体貯槽内と前記間隙とを連通するように当該高圧流体貯槽の壁面の下方に設けられた1以上の連通管と、
前記高圧流体貯槽内に予め貯留された所要量の前記裏込め材と、を有する、[1]に記載の高圧流体貯蔵設備。
[6] 前記差圧制御機構が、
前記高圧流体貯槽内と前記間隙とを連通するように当該高圧流体貯槽の壁面の周囲に設けられた1以上の連通管と、
前記連通管内の前記高圧流体と前記裏込め材との界面に設けられ、前記高圧流体と前記裏込め材とを分離するとともに、前記高圧流体貯槽内の圧力を前記裏込め材に伝達する弾性膜と、を有する、[1]に記載の高圧流体貯蔵設備。
[7] 前記間隙に充填された前記裏込め材を当該間隙の外側に循環させる循環経路を備える、[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の高圧流体貯蔵設備。
[8] 前記循環経路に、前記裏込め材の成分を分析する分析装置と、前記裏込め材の成分を調整する調整装置とが設けられている、[7]に記載の高圧流体貯蔵設備。
[9] 前記高圧流体貯槽が、鉄筋コンクリート製の筒状容器である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の高圧流体貯蔵設備。
[10] 前記筒状容器の軸方向が、当該筒状容器の長手方向であり、
前記軸方向が水平方向となるように、前記筒状容器が埋設される、[9]に記載の高圧流体貯蔵設備。
[11] 前記高圧流体貯槽が、複数の筒状容器から構成される、[9]又は[10]に記載の高圧流体貯蔵設備。
[12] 地下岩盤内に埋設した高圧流体貯槽に、高圧流体を貯蔵する方法であって、
前記岩盤と前記高圧流体貯槽との間の間隙に裏込め材を充填するとともに、
前記裏込め材にかかる圧力を、前記高圧流体貯槽内の圧力以上となるように制御する、高圧流体貯蔵方法。
[13] [1]乃至[11]のいずれか一項に記載の高圧流体貯蔵設備を1つ以上備える、電力貯蔵システム。
[14] 圧縮空気エネルギー貯蔵システムである、[13]に記載の電力貯蔵システム。
[15] 地下岩盤内に埋設された、圧力水路と、
前記岩盤と前記圧力水路との間の間隙の、少なくとも一部に充填された裏込め材と、
前記圧力水路内の圧力の変動に応じて、前記裏込め材にかかる圧力を制御する差圧制御機構と、を備える、水力発電設備。
【発明の効果】
【0015】
本発明の高圧流体貯蔵設備及び高圧流体貯蔵方法によれば、地下岩盤内に埋設された高圧流体貯槽と、岩盤と高圧流体貯槽との間の間隙に充填された裏込め材と、高圧流体貯槽内の圧力の変動に応じて裏込め材にかかる圧力を制御する差圧制御機構とを備える構成であり、差圧制御機構によって裏込め材にかかる圧力を高圧流体貯槽内の圧力以上となるように制御することで、高圧流体貯槽の内圧の変動によって生じる応力から、当該高圧流体貯槽を保護することができる。
【0016】
本発明の電力貯蔵システムによれば、高圧流体の貯蔵設備として上述した高圧流体貯蔵設備を備える構成であるため、高圧流体を安定して貯蔵することで、長期間安定して運転することができる。
【0017】
本発明の水力発電設備によれば、地下岩盤内に埋設された圧力水路と、岩盤と圧力水路との間の間隙の少なくとも一部に充填された裏込め材と、圧力水路内の圧力の変動に応じて裏込め材にかかる圧力を制御する差圧制御機構とを備える構成であり、差圧制御機構によって裏込め材にかかる圧力を圧力水路内の圧力以上となるように制御することで、圧力水路の内圧の変動によって生じる応力から、当該圧力水路を保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した一実施形態である高圧流体貯蔵設備の構成について、これを用いた高圧流体貯蔵方法及び電力貯蔵システムと併せて、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0020】
<高圧流体貯蔵設備>
先ず、本発明を適用した一実施形態である高圧流体貯蔵設備(以下、単に「貯蔵設備」ということもある)について説明する。
図1は、本発明を適用した一実施形態である貯蔵設備1の構成を示す断面図である。また、
図2は、
図1中に示すA−A線に沿った断面図である。また、
図3は、
図1中に示すB−B線に沿った断面図である。また、
図4は、
図1中に示すC−C線に沿った断面図である。
【0021】
図1〜
図4に示すように、本実施形態の貯蔵設備1は、立坑2と、貯槽プラグ3と、高圧流体貯槽(以下、単に「貯槽」ということもある)4とを備える。貯蔵設備1は、圧縮装置等によって高い圧力がかけられた気体又は液体を、貯槽4の内側の空間内に高圧のまま貯蔵する設備である。
【0022】
立坑2は、
図1〜
図3に示すように、地表面Sから鉛直方向に延在する坑道である。具体的には、立坑2は、コンクリート製の筒状(円筒状)の構造物であり、土砂部Tを貫通して岩盤部Uに到達するように設けられている。この立坑2の底部が、貯槽プラグ3を介して貯槽4と接続されている。すなわち、立坑2は、貯槽4のアクセストンネルである。
【0023】
立坑2の深さD(すなわち、貯槽4の設置深度)は、岩盤部Uに到達する深さであれば特に限定されるものではなく、貯槽4の耐圧設計に応じて適宜選択することができる。ここで、本実施形態の貯蔵設備1によれば、蓄圧時の貯槽4の内圧が上昇した際、裏込め材にかかる圧力も上昇させて、貯槽4の内側と外側にかかる圧力のバランスをとる構造であるため、従来の水封式岩盤貯蔵方式と比べて立坑2の深さDを浅く設計することができる。
【0024】
具体的には、立坑2の深さDは、例えば50〜100mとすることができる。また、立坑2の内径は、特に限定されるものではないが、立坑2、貯槽プラグ3及び貯槽4の施工の観点から、例えば5〜10mとすることが好ましい。
【0025】
また、立坑2の壁面(周壁)のコンクリートの厚さは、特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。具体的には、土砂部Tに相当する部分では、50〜100cmとすることが好ましく、岩盤部Uに相当する部分では、吹付けコンクリート仕上げとすることが好ましい。
【0026】
貯槽プラグ3は、
図1〜
図3に示すように、岩盤部Uに到達する立坑2の先端部(底部)の周囲を覆うように設けられたコンクリート製の構造物である。貯槽プラグ3は、立坑2と貯槽4との取り付け部を閉鎖(閉塞)するために設けられている。また、貯槽プラグ3の、貯槽4と隣接する側の壁面には、流体の出入り口となるマンホール3Aが開閉自在に設けられている。
【0027】
貯槽プラグ3のコンクリートの厚さは、特に限定されるものではないが、貯槽4の内圧が作用する構造であることから、貯槽4の断面積や周辺岩盤の性状を考慮して適宜設計することができる。具体的には、貯槽プラグ3のコンクリートの厚さとしては、貯槽4の内径の50〜100%程度の厚さとすることが好ましい。また、マンホール3Aの内径としては、特に限定されるものではないが、貯槽4の内部の維持管理の観点から、例えば、0.6〜1.0mとすることが好ましい。
【0028】
貯槽4は、
図1〜
図4に示すように、内側の空間内に高圧流体を貯蔵するために設けられた、鉄筋コンクリート製の筒状容器である。具体的には、貯槽4は、貯槽プラグ3を基端として水平方向に延在された筒状(円筒状)の空間であり、先端には終端コンクリート4Aが設けられている。すなわち、貯槽4は、両端が貯槽プラグ3および終端コンクリート4Aによって閉塞され、軸方向が長手方向とされた筒状容器であり、上記軸方向が水平方向となるように、深度Dの岩盤部Uに埋設されている。これにより、貯槽4全体がほぼ同一深度Dに設置されるため、岩盤中において貯槽4には設置深度Dに応じた均一な圧力がかかるようになっている。したがって、貯槽4の一部に圧力が偏在してかかることがなく、応力集中等による破損が生じにくいため、貯槽4を長期間安定して使用することができる。
【0029】
貯槽4の内径R及び軸方向の長さLは、特に限定されるものでなく、貯槽4の容量設計に応じて適宜選択することができる。具体的には、貯槽4の内径Rとしては、例えば、5〜10mとすることができる。また、貯槽4の軸方向の長さLとしては、例えば、50〜1000mとすることができる。
【0030】
貯槽4の外径(すなわち、周壁の厚さ)は、特に限定されるものでなく、貯槽4の材質(気密性、強度)及び耐圧設計に応じて適宜選択することができる。貯槽4がコンクリート製の筒状容器である場合、気密性及び耐圧性の観点から、貯槽4の周壁の厚さは、例えば、50〜100cmとすることが好ましい。
【0031】
貯槽4の形状として、
図3及び
図4に示すように、断面視した際に円形となる円筒状の場合を一例として説明したが、貯槽4全体に均一に圧力がかかる形状であれば、これに限定されるものではない。貯槽4の形状としては、例えば、横穴トンネルの施工上の観点から、断面視した際、円の底部が平坦なかまぼこ形状(半円形状)としてもよい。
【0032】
また、貯槽4の材質として、鉄筋コンクリート製である場合を一例として説明したが、気密性を有し、形状を保持可能な程度の強度を有する材質であれば、特に限定されるものではない。貯槽4の他の材質としては、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、鋳鉄等の金属材料、塩化ビニル、繊維強化プラスチック(FRP)等の樹脂材料、セラミックス等の無機材料を用いることができる。また、貯槽4の材質として、構造物としての強度を母材が受け持ち、気密性を内張り材が受け持つ複合材料を用いてもよい。例えば、金属製の鋼管を母材として樹脂ライニングを施したライニング管や、コンクリートを母材として金属ライニングや樹脂ライニングされた配管を用いることができる。
【0033】
本実施形態の貯蔵設備1を設置可能な岩盤Uとしては、岩盤等級基準(電力中央研究所方式)におけるCM級以上の岩盤であれば、特に限定されるものではない。貯蔵設備1は、硬岩の地質に設置してもよいし、軟岩の地質に設置してもよい。
【0034】
本実施形態の貯蔵設備1の貯蔵対象である高圧流体は、高圧で貯蔵することが可能な気体及び液体(すなわち、「高圧気体」及び「高圧液体」)であれば、特に限定されない。
高圧気体としては、例えば、空気、天然ガス、石油ガス等が挙げられる。
高圧液体としては、例えば、水、LPガス等の液化ガス等が挙げられる。
【0035】
本実施形態の貯蔵設備1の貯蔵圧力としては、例えば、貯槽4の設置深度を50〜100mにした場合では、2〜3MPa程度とすることができる。
【0036】
(第1の形態例)
先ず、第1の形態例の貯蔵設備の構成について説明する。
図5は、第1の形態例の貯蔵設備1における貯槽4の周辺を拡大した断面図であって、(a)は貯槽4の内圧上昇前の状態を示す図であり、(b)は貯槽4の内圧上昇後の状態を模式的に示す図である。
【0037】
図5(a)に示すように、第1の形態例の貯蔵設備1は、地下岩盤(岩盤部)U内に埋設された貯槽4と、地下岩盤Uと貯槽4との間の間隙5に充填された裏込め材6と、貯槽4内の圧力の変動に応じて裏込め材6にかかる圧力を制御する差圧制御機構7と、を備えて概略構成されている。本形態例の貯蔵設備1は、蓄圧時に貯槽4の内圧が上昇した際、裏込め材6にかかる圧力も上昇させることにより、貯槽4の内側と外側にかかる圧力のバランスをとるため、貯槽4に大きな応力(特に、引張応力)がかからない構造となっている。
【0038】
間隙5は、貯槽4の周壁部の周囲を包むように、筒状容器の軸方向全体に設けられている(
図1,2を参照)。間隙5の幅は、特に限定されないが、裏込め材の充填性の観点から、50〜200mmの範囲とすることが好ましい。
【0039】
裏込め材6は、間隙5に充填される高い粘性及び充填性を有する流体である。このため、裏込め材6は、圧力がかかった際に地下岩盤Uの内壁面を押し広げるが、内壁面の空隙や割れ目に入り込んでも地下岩盤U中に拡散することなく、地下岩盤Uと貯槽4とに圧力を伝達することができる。
【0040】
裏込め材6の材質は、高い粘性及び充填性を有する流体であれば、特に限定されるものではない。高い粘性及び充填性を有する流体としては、例えば、泥水、粘性油(オイル)、高分子溶液等が挙げられる。本実施形態の貯蔵設備1では、長期間(数年間)にわたり性状が劣化しないという観点から、裏込め材6として泥水を用いることが好ましい。
【0041】
具体的には、裏込め材6として、粘土分、水、逸泥防止材及び増粘剤を含む泥水を用いることができる。また、泥水を用いる場合、その他の成分として潤滑剤を含んでいてもよい。
粘土分としては、例えば、ベントナイト、カオリナイト等が挙げられる。
逸泥防止材としては、例えば、ロックウール、細粒砂等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、ポリマー剤等が挙げられる。
潤滑剤としては、例えば、ポリプロピレングリコール誘導体等が挙げられる。
【0042】
泥水の成分比は、裏込め材6に要求される粘性および充填性(すなわち、設置する岩盤Uの性状)に応じて、適宜調整されるものであり、特に限定されない。具体的には、例えば、裏込め材6の100質量部に対して、粘土分:10〜20質量部、逸泥防止材:5〜15質量部、増粘剤:0.03〜0.1質量部、潤滑剤:0.3〜1.0質量部とし、残部を水とすることができる。
【0043】
裏込め材6の粘度は、特に限定されるものではなく、粘土分と逸泥防止材が分離しない程度の粘度であればよい。また、裏込め材6の充填性としては、特に限定されるものではなく、地下岩盤Uが有する亀裂に対して裏込め材6による目詰まりが生じる程度であればよい。
【0044】
裏込め材6の密度は、特に限定されるものではなく、貯槽4の耐圧設計や設置深度に応じて適宜選択することができる。裏込め材6の密度としては、例えば、1200〜1500kg/m
3とすることができる。
【0045】
差圧制御機構7は、蓄圧時に貯槽4の内圧が上昇した際、裏込め材6にかかる圧力を上昇させて、貯槽4の内側と外側にかかる圧力のバランスをとるために設けられている。
【0046】
本形態例の差圧制御機構7は、貯槽4内と連通する内圧検知管8と、内圧検知管8と接続される蓄圧槽9と、間隙5と連通する裏込め材供給管10と、裏込め材6を貯蔵するとともに、裏込め材供給管10と接続される裏込め材貯槽11と、蓄圧槽9と裏込め材貯槽11との間に設けられ、蓄圧槽9の内圧を裏込め材貯槽11に伝達する圧力連通管12と、裏込め材供給管10に設けられたポンプ13と、を有する。また、差圧制御機構7は、蓄圧槽9、圧力連通管12、裏込め材貯槽11、及びポンプ13が地上設備として設けられている。
【0047】
内圧検知管8は、貯槽4と蓄圧槽9との間に設けられた配管であり、一端が地下岩盤Uに埋設された貯槽4の内部空間に開放されており、他端が地上に設けられた蓄圧槽9の内部空間に開放されている。これにより、貯槽4、内圧検知管8及び蓄圧槽9の内部空間が連通されて、蓄圧時にいずれも同じ内圧となるように、高圧流体が充填される。
【0048】
蓄圧槽9は、高圧流体を貯蔵可能な容器である。蓄圧槽9は、内圧検知管8と連通されており、蓄圧槽9の内圧は、内圧検知管8を介して貯槽4内の圧力と常に連動するように構成されている。
【0049】
裏込め材供給管10は、間隙5と裏込め材貯槽11との間に設けられた配管であり、一端が地下岩盤Uと貯槽4との間の間隙5に開放されており、他端が地上に設けられた裏込め材貯槽11の内部空間に開放されている。これにより、間隙5、裏込め材供給管10及び裏込め材貯槽11の内部空間が連通されており、いずれも同じ圧力となるように、裏込め材6が充填される。
【0050】
裏込め材貯槽11は、裏込め材6を貯蔵可能な容器である。裏込め材貯槽11は、裏込め材供給管10と連通されており、裏込め材貯槽11内の圧力は、裏込め材供給管10を介して間隙5内の裏込め材6の圧力と常に連動するように構成されている。
【0051】
圧力連通管12は、蓄圧槽9と裏込め材貯槽11との間に設けられた配管であり、一端が蓄圧槽9の内部空間に開放されており、他端が裏込め材貯槽11の内部空間に開放されている。これにより、圧力連通管12を介して、蓄圧槽9の内圧を裏込め材貯槽11に伝達することができる。
【0052】
本形態例の差圧制御機構7は、地上設備である蓄圧槽9、圧力連通管12、及び裏込め材貯槽11のいずれかの内部空間において、高圧流体と裏込め材6との界面を有する。すなわち、差圧制御機構7は、地下岩盤Uに埋設された貯槽4内の高圧流体と、貯槽4の外側に設けられた間隙5を充填する裏込め材6との界面を貯槽4から離れた地上設備に設け、この界面を介して貯槽4内の内圧を裏込め材6に伝達することで、地下岩盤U中において貯槽4にかかる内外圧のバランスをとるものである。
【0053】
また、差圧制御機構7は、裏込め材供給管10に設けたポンプ13を運転して間隙5に裏込め材6を圧送することで、貯槽4にかかる内圧と外圧との差圧を維持したまま運転することもできる。なお、上記差圧運転の必要がない場合には、ポンプ13を設けなくてもよい。
【0054】
次に、本形態例の貯蔵設備1を用いた高圧流体の貯蔵方法(すなわち、貯蔵設備1の運転方法)について説明する。
先ず、
図1に示すように、外部に設けられた圧縮装置等により、貯蔵対象となる流体が立坑2、貯槽プラグ3を介して貯槽4に供給される。流体の供給を継続すると、貯槽4の内圧が上昇する。
【0055】
次に、
図5(b)に示すように、貯槽4の内圧が上昇すると、内圧検知管8を介して蓄圧槽9の内圧も連動して上昇する。次いで、圧力連通管12を介して蓄圧槽9の内圧を裏込め材貯槽11に伝達する。これにより、裏込め材貯槽11から地下岩盤Uと貯槽4との間の間隙5に、貯槽4の内圧と同じ圧力で裏込め材6が供給されるため、貯槽4の内圧と外圧とが等しくなる。
【0056】
なお、蓄圧槽9、圧力連通管12、及び裏込め材貯槽11のいずれかの内部空間において存在する高圧流体と裏込め材6との界面の位置は、貯槽4の内圧が上昇すると、蓄圧槽9側から裏込め材貯槽11側へ移動する。
【0057】
間隙5にかかる圧力は、地下岩盤Uと貯槽4とによって支持される。この際、間隙5の幅が広がることで、地下岩盤Uの内壁面を押し広げるが、裏込め材6は高粘性の流体であるため、内壁面の空隙や割れ目に入り込んでも地下岩盤U中に拡散することなく、地下岩盤Uと貯槽4とに圧力を伝達することができる。
【0058】
また、ポンプ13を運転して間隙5に裏込め材6を圧送してもよい。これにより、間隙5に充填される裏込め材6にかかる圧力を貯槽4の内圧よりも高くして、貯槽4にかかる内圧と外圧との差圧を維持したまま運転することもできる。
【0059】
以上説明したように、本形態例の貯蔵設備1によれば、差圧制御機構7によって、蓄圧時に貯槽4の内圧が上昇した際、裏込め材6にかかる圧力を上昇させて、貯槽4の内側と外側にかかる圧力のバランスをとることができる。
【0060】
なお、本形態例の貯蔵設備1では、貯槽4の貯蔵対象が気体であることが好ましい。また、貯槽4の貯蔵対象が液体である場合には、高圧流体と裏込め材6との界面でのコンタミを防ぐ観点から、上記界面に、高圧流体と裏込め材6とを分離するとともに、貯槽4内の圧力を裏込め材6に伝達する弾性膜(ゴム膜等)を設ける構成とすることが好ましい。
【0061】
(第1の形態例の変形例1)
次に、上述した第1の形態例の変形例1について説明する。
図6は、第1の形態例の変形例1における貯蔵設備21を示しており、(a)は貯槽4の周辺を拡大した断面図であり、(b)は貯槽4の周辺の斜視図である。なお、
図6では、差圧制御機構7は省略している。
【0062】
図6(a)に示すように、第1の形態例の変形例1における貯蔵設備21は、上述した第1の形態例の貯蔵設備1と同一の構成を備えるとともに、さらに裏込め材6の循環設備14を備える構成となっている。したがって、第1の形態例の貯蔵設備1と同じ構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0063】
本変形例の循環設備14は、間隙5と連通する裏込め材供給管10と、裏込め材供給管10に設けられたポンプ13と、間隙5と連通するとともにポンプ13において裏込め材供給管10と合流する裏込め材導出管15と、を有する。本変形例の循環設備14は、裏込め材導出管15と裏込め材供給管10とが、間隙5に充填された裏込め材6を当該間隙5の外側に循環させる循環経路を構成する。また、ポンプ13が循環ポンプとして機能する。
【0064】
図6(b)に示すように、裏込め材供給管10は、貯槽4の下方寄りの間隙5内に、貯槽4の軸方向に延在するように設けられている。また、裏込め材導出管15は、貯槽4の上方寄りの間隙5内に、貯槽4の軸方向に延在するように設けられている。これにより、本形態例の循環設備14は、貯槽4の下方側から間隙5内に裏込め材6を供給するとともに、貯槽4の上方側から間隙5内の裏込め材6を間隙5の外部に導出することができる。したがって、循環設備14は、貯槽4の軸方向全体にわたって、常時もしくは定期的に裏込め材6を循環させることができる。
【0065】
循環経路を構成する裏込め材導出管15には、裏込め材6の成分を分析する分析装置16と、裏込め材6の成分を調整する調整装置17とが設けられている。循環経路に分析装置16を設けることにより、定期的に裏込め材6の性状を確認することができる。また、調整装置17を設けることにより、裏込め材6の品質が劣化した場合に、裏込め材6の成分調整や、新しい裏込め材6の供給を行うことができる。
【0066】
以上説明したように、本変形例の貯蔵設備21は、循環設備14を備えているため、長期間にわたって裏込め材6の品質管理を行うことができる。
【0067】
また、本形態例の貯蔵設備21では、循環設備14を構成する裏込め材供給管10及びポンプ13について、差圧制御機構7の構成の一部を共用する場合を一例として説明したが、これに限定されるものではない。循環設備14と差圧制御機構7とを別々の構成として備えていてもよい。
【0068】
(第1の形態例の変形例2)
次に、上述した第1の形態例の変形例2について説明する。
図7は、第1の形態例の変形例2における貯蔵設備31を示しており、(a)は貯槽4の周辺を拡大した断面図であり、(b)は差圧制御機構を拡大した断面図である。
【0069】
図7(a)に示すように、第1の形態例の変形例2における貯蔵設備31は、上述した第1の形態例の貯蔵設備1の差圧制御機構7における蓄圧槽9、圧力連通管12、及び裏込め材貯槽11の構成にかえて、これらが一体化したシリンダー構造の圧力調整装置38を有する構成となっている。したがって、第1の形態例の貯蔵設備1と同じ構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
本変形例の差圧制御機構37は、貯槽4内と連通する内圧検知管8と、間隙5と連通する裏込め材供給管10と、圧力調整装置38と、を有する。
【0071】
圧力調整装置38は、シリンダー構造の筒状容器であり、内側空間の上方寄りと連通するように内圧検知管8が接続されている。これにより、貯槽4、内圧検知管8及び圧力調整装置38の上方側の内部空間が連通されて、蓄圧時にいずれも同じ内圧となるように、高圧流体が充填される。
【0072】
圧力調整装置38は、内側空間の下方寄りと連通するように裏込め材供給管10が接続されている。また、圧力調整装置38の内側空間の下方側には裏込め材6が貯蔵されている。これにより、間隙5、裏込め材供給管10及び圧力調整装置38の下方側の内部空間が連通されており、いずれも同じ圧力となるように、裏込め材6が充填される。
【0073】
本変形例の差圧制御機構37は、シリンダー構造の圧力調整装置38の内部空間において、高圧流体と裏込め材6との界面38Aを有する。すなわち、差圧制御機構37は、地下岩盤Uに埋設された貯槽4内の高圧流体と、貯槽4の外側に設けられた間隙5を充填する裏込め材6との界面を圧力調整装置38の内部空間に設け、この界面38Aを介して貯槽4内の内圧を裏込め材6に伝達することで、地下岩盤U中において貯槽4にかかる内外圧のバランスをとるものである。
【0074】
なお、圧力調整装置38の内部空間に存在する高圧流体と裏込め材6との界面38Aの位置は、貯槽4の内圧が上昇すると、シリンダー構造の下方側へ移動する。
【0075】
以上説明したように、本変形例の貯蔵設備31によれば、差圧制御機構37によって、蓄圧時に貯槽4の内圧が上昇した際、裏込め材6にかかる圧力を上昇させて、貯槽4の内側と外側にかかる圧力のバランスをとることができる。
【0076】
なお、変形例の貯蔵設備31では、貯槽4の貯蔵対象が気体であることが好ましい。また、貯槽4の貯蔵対象が液体である場合には、圧力調整装置38の内側空間における高圧流体と裏込め材6との界面38Aでのコンタミを防ぐ観点から、上記界面38Aに、高圧流体と裏込め材6とを分離するとともに、貯槽4内の圧力を裏込め材6に伝達する弾性膜(ゴム膜等)を有する構造、すなわち、弾性膜付きシリンダー構造とすることが好ましい。
【0077】
具体的には、
図7(b)に示すように、弾性膜付きシリンダー構造の圧力調整装置38として市販のベロフラムシリンダーを用いてもよい。ベロフラムシリンダーは、シリンダーの内部空間に、ベロフラムと称されるU字型に畳まれたゴム膜39A,39Aを有しており、ゴム膜39A,39Aの間にピストン部材39Bを有する構成となっている。これにより、上部と下部の液体が分離された状態でピストン部材39Bが上下方向に滑らかに動くことができるため、高圧液体の内圧を裏込め材6に伝達することができる。
【0078】
なお、差圧制御機構37は、地上設備として設けられていてもよいし、貯槽4の周囲の地下岩盤U中に埋設してもよい。
【0079】
また、本変形例の貯蔵設備31は、上述した第1の形態例の変形例1に示す循環設備14を備えていてもよい。
【0080】
(第2の形態例)
次に、第2の形態例の貯蔵設備の構成について説明する。
図8は、第2の形態例の貯蔵設備41における貯槽4の周辺を拡大した断面図であって、(a)は貯槽4の内圧上昇前の状態を示す図であり、(b)は貯槽4の内圧上昇後の状態を模式的に示す図である。
【0081】
図8(a)に示すように、第2の形態例における貯蔵設備41は、上述した第1の形態例の貯蔵設備1の差圧制御機構7の構成のほとんどを省略した差圧制御機構47を有する構成となっている。したがって、第1の形態例の貯蔵設備1と同じ構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0082】
本形態例の差圧制御機構47は、貯槽4内と間隙5とを連通するように貯槽4の壁面の下方に設けられた1以上の連通管48と、貯槽4内に予め貯留された所要量の裏込め材6と、を有する。
【0083】
貯槽4内に予め貯留された所要量の裏込め材6は、上述した第1の形態例の差圧制御機構7における裏込め材貯槽11内に貯蔵された裏込め材6に対応するものである。ここで、本形態例の差圧制御機構47は、上述した第1の形態例の差圧制御機構7における地上設備である蓄圧槽9、圧力連通管12、及び裏込め材貯槽11を省略する構成となっている。また、上述した第1の形態例の差圧制御機構7は、蓄圧槽9、圧力連通管12、及び裏込め材貯槽11のいずれかの内部空間において高圧流体と裏込め材6との界面を有するのに対して、本形態例の差圧制御機構47は、貯槽4内に高圧流体と裏込め材6との界面47Aを有する構成である。なお、本形態例の差圧制御機構47における連通管48は、上述した第1の形態例の差圧制御機構7における裏込め材供給管10に対応する機能を有する。
【0084】
すなわち、本形態例の貯蔵設備41における差圧制御機構47は、貯槽4内の高圧流体と、貯槽4の外側に設けられた間隙5を充填する裏込め材6との界面47Aを貯槽4内に設けて、この界面47Aを介して貯槽4内の内圧を裏込め材6に伝達することで、地下岩盤U中において貯槽4にかかる内外圧のバランスをとるものである。
【0085】
次に、本形態例の貯蔵設備41を用いた高圧流体の貯蔵方法(すなわち、貯蔵設備41の運転方法)について説明する。
先ず、
図1に示すように、外部に設けられた圧縮装置等により、貯蔵対象となる流体が立坑2、貯槽プラグ3を介して貯槽4に供給される。流体の供給を継続すると、貯槽4の内圧が上昇する。
【0086】
次に、
図8(b)に示すように、貯槽4の内圧が上昇すると、貯槽4内に設けられた界面47Aを介して貯槽4内の内圧が裏込め材6に伝達する。これにより、貯槽4内に予め貯蔵された裏込め材6から連通管48を介して、地下岩盤Uと貯槽4との間の間隙5に、貯槽4の内圧と同じ圧力で裏込め材6が供給されるため、貯槽4の内圧と外圧とが等しくなる。
なお、貯槽4内の界面47Aの位置は、貯槽4の内圧が上昇すると、下方へ移動する。
【0087】
間隙5にかかる圧力は、地下岩盤Uと貯槽4とによって支持される。この際、間隙5の幅が広がることで、地下岩盤Uの内壁面を押し広げるが、裏込め材6は高粘性の流体であるため、内壁面の空隙や割れ目に入り込んでも地下岩盤U中に拡散することなく、地下岩盤Uと貯槽4とに圧力を伝達することができる。
【0088】
以上説明したように、本形態例の貯蔵設備41によれば、差圧制御機構47によって、蓄圧時に貯槽4の内圧が上昇した際、裏込め材6にかかる圧力を上昇させて、貯槽4の内側と外側にかかる圧力のバランスをとることができる。
【0089】
なお、本形態例の貯蔵設備41では、貯槽4の貯蔵対象が気体であることが好ましい。また、貯槽4の貯蔵対象が液体である場合には、貯槽4内における高圧流体と裏込め材6との界面でのコンタミを防ぐ観点から、上記界面に、高圧流体と裏込め材6とを分離するとともに、貯槽4内の圧力を裏込め材6に伝達する弾性膜(ゴム膜等)を設ける構成とすることが好ましい。具体的には、以下の変形例に示す。
【0090】
(第2の形態例の変形例1)
次に、上述した第2の形態例の変形例1について説明する。
図9は、第2の形態例の変形例1における貯蔵設備51を示しており、(a)は貯槽4の周辺を拡大した断面図であり、(b)は差圧制御機構を拡大した断面図である。
【0091】
図9(a)に示すように、本変形例における貯蔵設備51は、上述した第2の形態例の貯蔵設備41の差圧制御機構47の構成の一部を変更したものである。したがって、第2の形態例の貯蔵設備41と同じ構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0092】
本変形例の差圧制御機構57は、貯槽4内と間隙5とを連通するように貯槽4の壁面の周囲全体に設けられた1以上の連通管58を有する。この連通管58の空間内に、高圧流体(高圧液体)と裏込め材6との界面が設けられている。すなわち、連通管58内が、それぞれシリンダー構造となっている。また、連通管58内の空間における高圧流体(高圧液体)と裏込め材6との界面でのコンタミを防ぐ観点から、上記界面に、高圧流体と裏込め材6とを分離するとともに、貯槽4内の圧力を裏込め材6に伝達する弾性膜(ゴム膜等)を有する構造、すなわち、弾性膜付きシリンダー構造とすることが好ましい。
【0093】
具体的には、
図9(b)に示すように、弾性膜付きシリンダー構造として、連通管58内に市販のベロフラムシリンダーを用いることが好ましい。ベロフラムシリンダーは、連通管58の内部空間に、ベロフラムと称されるU字型に畳まれたゴム膜58A,58Aを有しており、ゴム膜58A,58Aの間にピストン部材58Bを有する構成となっている。これにより、連通管58内で高圧流体(液体)と裏込め材6とが分離された状態でピストン部材58Bが連通管58の軸方向に滑らかに動くことができるため、高圧液体の内圧を裏込め材6に伝達することができる。
【0094】
(第2の形態例の変形例2)
次に、上述した第2の形態例の変形例2について説明する。
図10は、第2の形態例の変形例2における貯蔵設備61を示しており、貯槽4の周辺を拡大した断面図である。
【0095】
図10に示すように、本変形例における貯蔵設備61は、上述した第2の形態例の貯蔵設備41における差圧制御機構47の構成と、上述した第1の形態例の変形例1における循環設備14の構成と、を備えるものである。これにより、それぞれの形態例の効果を併せて発揮することができる。
【0096】
以上説明したように、本実施形態の貯蔵設備1,21,31,41,51,61によれば、貯槽4の内側あるいは外側に、貯槽4内の内圧と等しい圧力の高圧流体と、貯槽4の外周に設けられた間隙5に充填されている裏込め材6と等しい圧力の裏込め材6との界面を有する差圧制御機構を備えるため、この界面を介して貯槽4内の内圧と等しい圧力を間隙5に充填されている裏込め材6に伝達することができる。したがって、蓄圧時に貯槽4の内圧が上昇した際、裏込め材6にかかる圧力を連動して上昇させることができるため、貯槽4の内側と外側にかかる圧力のバランスをとることができる。
【0097】
本実施形態の貯蔵設備1,21,31,41,51,61によれば、貯槽4に大きな圧力がかからないため、高価なライニング材等を用いることなく一般的な鉄筋コンクリートで貯槽4を製作できる等、経済的な設計が可能となる。
【0098】
また、本実施形態の貯蔵設備1,21,31,41,51,61によれば、間隙5にかかる圧力は、地下岩盤Uと貯槽4とによって支持される。この際、間隙5の幅が広がることで、地下岩盤Uの内壁面を押し広げるが、裏込め材6は高粘性の流体であるため、内壁面の空隙や割れ目に入り込んでも地下岩盤U中に拡散することなく、地下岩盤Uと貯槽4とに圧力を確実に伝達することができる。
【0099】
なお、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した実施形態の貯蔵設備1では、地下岩盤Uの所定の設置深度に貯槽4の軸方向が水平となるように埋設された構成を一例として説明したが、これに限定されず、貯槽4の軸方向が水平から所定の角度で傾斜するように埋設された構成であってもよい。この場合、貯槽4にかかる応力は設置深度によって異なるため、複数の差圧制御機構を用いて所定の深度間隔ごとに設置する構成とすることが好ましい。
【0100】
また、上述した実施形態の貯蔵設備1では、
図1〜
図4に示すように、貯槽4が一つの立坑2に接続された一つの筒状容器から構成される場合を一例として説明したが、これに限定されるものではなく、貯槽が複数の筒状容器から構成されていてもよい。
【0101】
ここで、
図11は、本発明を適用した他の実施形態である貯蔵設備71の構成を示す断面図である。また、
図12は、
図11中に示すD−D線に沿った断面図である。また、
図13は、
図11中に示すE−E線に沿った断面図である。
【0102】
図11〜
図13に示すように、他の実施形態の貯蔵設備71は、立坑72と、貯槽連絡トンネル72Aと、貯槽プラグ73と、貯槽74とを備えて構成されている。貯蔵設備71は、圧縮装置等によって高い圧力がかけられた気体又は液体を、貯槽4の内側の空間内に高圧のまま貯蔵する設備である。
【0103】
具体的には、所定の深度となるまで鉛直方向に掘り下げられた立坑72の底部には、水平方向に延在する貯槽連絡トンネル72Aが設けられている。この貯槽連絡トンネル72Aには、所定の間隔ごとに複数(図中では4つ)の貯槽プラグ73が設けられている。貯槽プラグ73には、貯槽連絡トンネル72Aを挟んで対向するように、一対の筒状容器がそれぞれ接続されている。一対の筒状容器は軸方向が水平となるように同軸上に設けられている。これらの複数(図中では8つ)の筒状容器は、貯槽プラグ73及び貯槽連絡トンネル72Aを介していずれも立坑72と連通するように構成されている。すなわち、他の実施形態の貯蔵設備71は、複数の筒状容器によって貯槽74が構成されている。
【0104】
他の実施形態の貯蔵設備71によれば、一つの立坑72から複数の筒状容器を連通させることにより、低コストで大容量の貯槽74が得られる。
なお、筒状容器の接続個数や配置方法は、特に限定されるものではなく、貯槽に必要な容量や設置面積に応じて適宜選択することができる。
【0105】
また、上述した実施形態の貯蔵設備1,21,31,41,51,61によれば、高圧流体と裏込め材6との界面を介して、貯槽4の内圧を裏込め材6に伝達する構成とする場合を一例として説明したが、これに限定されるものではない。具体的には、圧力測定装置を用いて貯槽4の内圧を測定するとともに、この内圧の測定値となるように圧送ポンプ等を用いて間隙5に裏込め材6を直接供給する構成としてもよい。当該構成とすることで、貯槽4の内側あるいは外側に、貯槽4内の内圧と等しい圧力の高圧流体と、貯槽4の外周に設けられた間隙5に充填されている裏込め材6と等しい圧力の裏込め材6との界面を設けることなく、貯槽4の内側と外側にかかる圧力のバランスをとることができる。
【0106】
<圧縮空気エネルギー貯蔵システム>
次に、本発明を適用した一実施形態である圧縮空気エネルギー貯蔵システム(以下、単に「CAESシステム」と記載する)について説明する。
図14は、本発明を適用した一実施形態であるCAESシステム101の構成を模式的に示す図である。
【0107】
図14に示すように、本実施形態のCAESシステム101は、余剰電力を受電して駆動する電動機102と、高圧空気を製造する圧縮機103と、圧縮空気としてエネルギーを貯蔵する貯蔵設備104と、貯蔵された圧縮空気を膨張させる膨張器105と、発電を行う発電機106と、圧縮時に発生する熱を貯蔵する蓄熱槽107と、を備えて概略構成されている。
【0108】
本実施形態のCAESシステム101は、電力貯蔵時に電動機102にて圧縮機103を駆動して高圧空気を製造し、圧縮空気(高圧流体)として貯蔵設備104にエネルギーを貯蔵する。また、発電時に貯蔵設備104にエネルギーとして貯蔵された圧縮空気を膨張器105によって膨張させ、発電機106を駆動して発電を行う。なお、電力貯蔵時の圧縮空気を製造する際に発生する熱を蓄熱槽107に貯蔵し、圧縮空気を膨張する際に蓄熱槽107に蓄えられた熱によって圧縮空気を加温することで、CAESシステム101のエネルギー貯蔵効率を高めることができる。
【0109】
本実施形態のCAESシステム101は、圧縮空気(高圧流体)の貯蔵設備104として、上述した実施形態の貯蔵設備1,21,31,41,51,61のいずれか1つ以上を用いることを特徴とするものである。本実施形態のCAESシステム101によれば、圧縮空気(高圧流体)の貯蔵設備として上述した貯蔵設備1,21,31,41,51,61のいずれか1つ以上を備える構成であるため、圧縮空気を安定して貯蔵することが可能であるとともに、CAESシステム101を長期間安定して運転することができる。
【0110】
また、本実施形態のCAESシステム101によれば、貯蔵設備104を地下岩盤U中に埋設する構成となるため、地上における設置面積を低減して土地の有効活用がはかれる。
【0111】
<水力発電設備>
次に、本発明を適用した一実施形態である水力発電設備について説明する。
図15は、本発明を適用した一実施形態である水力発電設備201の構成を模式的に示す図である。
【0112】
図15に示すように、本実施形態の水力発電設備201は、比較的高所に設けられたダム202と、導水路トンネル203と、導水路トンネル203と接続された圧力水路204と、導水路トンネル203及び圧力水路204にかかる水圧を調整する調圧水槽205と、圧力水路204の下流に設けられた発電所206と、放水路207と、を備えて概略構成されている。
【0113】
本実施形態の水力発電設備201は、ダム202から導水路203及び圧力水路204を経由して発電所206に導水し、当該発電所206にて発電機を駆動して発電を行うものである。また、本実施形態の水力発電設備201は、電力貯蔵時に図示略の圧送ポンプ等を駆動して放水路207側から水を組み上げてダム202にエネルギーを貯蔵する、揚水式の水力発電設備であってもよい。
【0114】
一般的に、圧力水路204は、導水路トンネル203と発電所206との間の高低差を有する傾斜線上もしくは鉛直線上に沿って配設されている。このため、圧力水路204には、ダム202から供給される水による高低差に応じた静水圧と、発電所206の稼働や停止時に変動し生じる水撃圧が作用する。
【0115】
ところで、従来の水力発電設備では、圧力水路にかかる内圧(水圧)は、その一部が岩盤にも負担されるものの、基本的に圧力水路を構成する材料の強度によって負担させていた。そのため、圧力水路の全体に、高価な鋼製の水圧鉄管が用いられていた。
【0116】
これに対して本実施形態の水力発電設備201は、地下岩盤内に埋設された圧力水路204と、岩盤と圧力水路204内の圧力の変動に応じて、裏込め材にかかる圧力を制御する差圧制御機構(図示略)とを備える構成となっている。すなわち、本実施形態の水力発電設備201は、圧力水路204の少なくとも一部(又は全部)に、上述した実施形態の貯蔵設備にかかる貯槽の構造を適用するものである。ここで、圧力水路204内には水が貯留又は流通するため、裏込め材6と混合するおそれがあることから、本実施形態の水力発電設備201の圧力水路204には、上述した貯蔵設備のうち、貯蔵設備31の構成、又は貯蔵設備51の構成を適用することが好ましい。
【0117】
具体的には、圧力水路204に上述した貯蔵設備31の貯槽4の構成を適用する場合、貯槽4にかかる水圧は設置深度によって異なるため、複数の弾性膜付きシリンダー構造の圧力調整装置38を所定の深度間隔ごとに設置する構成とすることが好ましい。
【0118】
また、圧力水路204に上述した貯蔵設備51の貯槽4の構成を適用する場合、貯槽4にかかる水圧は設置深度によって異なるため、所定の深度間隔ごとに貯槽4の壁面の周囲全体にわたって複数の連通管58を設けるとともに、各連通管58内を弾性膜付きシリンダー構造とすることが好ましい。
【0119】
本実施形態の水力発電設備201によれば、圧力水路204に上述した貯蔵設備31の構成、又は貯蔵設備51の構成を適用する構成であるため、圧力水路204内に高水圧を有する水を安定して通水することが可能であるとともに、水力発電設備201を長期間安定して運転することができる。
【0120】
なお、水力発電設備の再開発において、既存の導水路トンネルあるいは圧力水路の耐圧性を上げる必要がある場合には、既存のコンクリート製のトンネルあるいは鋼製の水圧鉄管の背面に、裏込め材供給設備を設置した後、岩盤と圧力水路との間隙に所要の圧力となるように裏込め材6を供給することで、本実施形態の水力発電設備201とすることができる。これにより、既存の構造物を撤去することなく、耐圧性を向上させることができる。
【0121】
なお、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。