特許第6983624号(P6983624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983624半導体装置、電源装置、高周波増幅器、及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983624
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】半導体装置、電源装置、高周波増幅器、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20211206BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20211206BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20211206BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
   H01L29/06 301F
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-214488(P2017-214488)
(22)【出願日】2017年11月7日
(65)【公開番号】特開2019-87631(P2019-87631A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180459
【弁理士】
【氏名又は名称】二階堂 裕
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 陽一
【審査官】 杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−072225(JP,A)
【文献】 特開2014−045174(JP,A)
【文献】 特開2015−056437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に形成された電子走行層と、
前記電子走行層の上に形成され、インジウムを含む化合物半導体を材料とする電子供給層と、
前記電子供給層の上に形成されたソース電極と、
前記電子供給層の上において前記ソース電極から間隔をおいて形成されたドレイン電極と、
前記電子供給層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の一部領域に形成された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記ソース電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記第1の絶縁層の上に延びたゲート電極と、
前記第1の絶縁層と前記ドレイン電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記ゲート電極の側面と上面とを覆い、前記第1の絶縁層よりもバンドギャップが広い第2の絶縁層と、
を有し、
前記第1の絶縁層は、窒化シリコン層、酸化シリコン層、酸窒化シリコン層、酸化ハフニウム層又は酸炭化シリコン層である半導体装置。
【請求項2】
前記第2の絶縁層は、アルミニウム含有絶縁層であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
基板の上方に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層の上に、インジウムを含む化合物半導体を材料とする電子供給層を形成する工程と、
前記電子供給層の上に、ソース電極とドレイン電極とを互いに間隔をおいて形成する工程と、
前記電子供給層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の一部領域に第1の絶縁層を形成する工程と、
前記第1の絶縁層と前記ソース電極との間における前記電子供給層の上に、前記電子供給層から前記第1の絶縁層の上に延びるようにゲート電極を形成する工程と、
前記第1の絶縁層と前記ドレイン電極との間における前記電子供給層の上に、前記ゲート電極の側面と上面とを覆い、前記第1の絶縁層よりもバンドギャップが広い第2の絶縁層を形成する工程と、
を有し、
前記第1の絶縁層は、窒化シリコン層、酸化シリコン層、酸窒化シリコン層、酸化ハフニウム層又は酸炭化シリコン層である半導体装置の製造方法。
【請求項4】
基板と、
前記基板の上方に形成された電子走行層と、
前記電子走行層の上に形成され、インジウムを含む化合物半導体を材料とする電子供給層と、
前記電子供給層の上に形成されたソース電極と、
前記電子供給層の上において前記ソース電極から間隔をおいて形成されたドレイン電極と、
前記電子供給層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の一部領域に形成された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記ソース電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記第1の絶縁層の上に延びたゲート電極と、
前記第1の絶縁層と前記ドレイン電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記ゲート電極の側面と上面とを覆い、前記第1の絶縁層よりもバンドギャップが広い第2の絶縁層と、
を備え
前記第1の絶縁層は、窒化シリコン層、酸化シリコン層、酸窒化シリコン層、酸化ハフニウム層又は酸炭化シリコン層である半導体装置を有する電源装置。
【請求項5】
基板と、
前記基板の上方に形成された電子走行層と、
前記電子走行層の上に形成され、インジウムを含む化合物半導体を材料とする電子供給層と、
前記電子供給層の上に形成されたソース電極と、
前記電子供給層の上において前記ソース電極から間隔をおいて形成されたドレイン電極と、
前記電子供給層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の一部領域に形成された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記ソース電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記第1の絶縁層の上に延びたゲート電極と、
前記第1の絶縁層と前記ドレイン電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記ゲート電極の側面と上面とを覆い、前記第1の絶縁層よりもバンドギャップが広い第2の絶縁層と、
を備え
前記第1の絶縁層は、窒化シリコン層、酸化シリコン層、酸窒化シリコン層、酸化ハフニウム層又は酸炭化シリコン層である半導体装置を有する高周波増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、電源装置、高周波増幅器、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN等の化合物半導体を利用した半導体装置には様々なタイプのものがある。なかでも、HEMT(High Electron Mobility Transistor)は、雑音が小さく高速動作が可能であるという特徴を有する。
【0003】
そのHEMTにおいては、電子供給層に発生する自発分極やピエゾ分極によってその下の電子走行層に二次元電子ガスを誘起させることができる。
【0004】
特に、電子供給層としてInAlN層やInAlGaN層等のようにインジウムを含む化合物半導体層を使用すると、電子供給層の自発分極が高められてその下の電子走行層に高濃度の二次元電子ガスを誘起できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−085062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようにインジウムを含む電子供給層を使用したHEMTにおいては、リーク電流の低減と高出力化とを両立させるという点で改善の余地がある。
【0007】
一側面によれば、本発明は、半導体装置のリーク電流を低減しつつ、半導体装置の高出力化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面によれば、基板と、前記基板の上方に形成された電子走行層と、前記電子走行層の上に形成され、インジウムを含む化合物半導体を材料とする電子供給層と、前記電子供給層の上に形成されたソース電極と、前記電子供給層の上において前記ソース電極から間隔をおいて形成されたドレイン電極と、前記電子供給層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の一部領域に形成された第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層と前記ソース電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記第1の絶縁層の上に延びたゲート電極と、前記第1の絶縁層と前記ドレイン電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記ゲート電極の側面と上面とを覆い、前記第1の絶縁層よりもバンドギャップが広い第2の絶縁層とを有し、前記第1の絶縁層は、窒化シリコン層、酸化シリコン層、酸窒化シリコン層、酸化ハフニウム層又は酸炭化シリコン層である半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
一側面によれば、第1の絶縁層を形成する領域をゲート電極とドレイン電極との間の一部領域とするため、電子供給層の導電性のインジウムが第1の絶縁層に拡散しても、ゲート電極とドレイン電極との間の第1の絶縁層にリークパスが発生するのを防止できる。
【0010】
しかも、第1の絶縁層よりもバンドギャップが広く耐圧が高い第2の絶縁層によって半導体装置の耐圧が高まる。
【0011】
更に、ドレイン電極とゲート電極との間の強電界に曝される一部領域を除いて第2の絶縁層を形成することにより、強電界に沿って移動する電子が第2の絶縁層に捕獲されるのを抑制することができる。その結果、第2の絶縁層に電子が捕獲されることで生じる電流コラプスを抑制することができ、半導体装置の高出力化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、調査に使用した半導体装置の断面図である。
図2図2は、調査に使用した半導体装置の拡大断面図である。
図3図3は、調査に使用した半導体装置のTEM像を基にして描いた図である。
図4図4は、リーク電流が発生した半導体装置のゲート−ドレイン間電流Igとゲート電圧Vgとの関係について示すグラフである。
図5図5は、リーク電流が発生するのを防止するために本願発明者が案出した半導体装置の拡大断面図である。
図6図6は、アルミナ層に電子がトラップされた場合における半導体装置のドレイン電圧Vdとドレイン電流Idとの関係を示すグラフである。
図7図7(a)、(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
図8図8(a)、(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
図9図9(a)、(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
図10図10は、第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
図11図11は、第1実施形態に係る半導体装置の拡大断面図である。
図12図12は、第1実施形態に係る半導体装置のゲート−ドレイン間電流Igとゲート電圧Vgとの関係について示すグラフである。
図13図13は、第1実施形態に係る半導体装置のドレイン電圧Vdとドレイン電流Idとの関係を示すグラフである。
図14図14(a)、(b)は、第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
図15図15(a)、(b)は、第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
図16図16(a)、(b)は、第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
図17図17は、第3実施形態に係るディスクリートパッケージの平面図である。
図18図18は、第4実施形態に係るPFC回路の回路図である。
図19図19は、第5実施形態に係る電源装置の回路図である。
図20図20は、第6実施形態に係る高周波増幅器の回路図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施形態の説明に先立ち、本願発明者が調査した事項について説明する。
【0014】
図1は、その調査に使用した半導体装置の断面図である。
【0015】
この半導体装置1は、HEMTであって、SiC基板等の基板2とその上に形成されたバッファ層3とを有する。
【0016】
バッファ層3は、基板2の格子欠陥がその上の層に伝わるのを防止するAlGaN層やAlN層であり、その上に電子走行層4が形成される。この例では電子走行層4として不純物を含まないi型のGaN層を形成し、電子走行層4において電子の不純物散乱を抑制する。
【0017】
そして、その電子走行層4の上には電子供給層5としてInAlGaN層が形成される。その電子供給層5の自発分極によって電子走行層4には二次元電子ガス10が誘起されるが、電子供給層5として形成したInAlGaN層は膜中のインジウムによって大きな自発分極を有するため、高濃度の二次元電子ガス10を誘起することができる。
【0018】
更に、電子供給層5の上にはソース電極6とドレイン電極7とが間隔をおいて形成される。
【0019】
そして、これらソース電極6とドレイン電極7の間の電子供給層5の上には、大気中の水分等から電子供給層5を保護するために耐湿性に優れた窒化シリコン(SiN)層8が形成される。
【0020】
その窒化シリコン層8には開口8aが形成されており、開口8a内とその周囲の窒化シリコン層8の上にはゲート電極9が形成される。ゲート電極9は断面視でT字型に形成され、窒化シリコン層8の上に形成された部分のゲート電極9はフィールドプレート9aとなる。
【0021】
そのフィールドプレート9aには電子供給層5に対向する対向面9bが設けられる。ドレイン電極7からゲート電極9に印加される強い電界Eがその対向面9bに分散することにより電子供給層5や窒化シリコン層8が電界Eで破壊されるのを防止でき、半導体装置1の高耐圧化が実現できる。
【0022】
このような半導体装置1によれば、前述のように電子供給層5としてインジウムを含むInAlGaN層を形成することにより高濃度の二次元電子ガス10を誘起でき、半導体装置1の高出力化が期待できる。
【0023】
しかしながら、本願発明者の調査によれば、電子供給層5のインジウムに起因して以下のような問題が生じることが明らかとなった。
【0024】
図2は、この半導体装置1の拡大断面図である。
【0025】
なお、図2において図1におけるのと同じ要素には同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0026】
本願発明者は、電子供給層5のインジウムの影響を調べるため、図2の点線Aで示す領域のTEM(Transmission Electron Microscopy)像を取得した。
【0027】
図3は、そのTEM像を基にして描いた図である。
【0028】
図3に示されるように、窒化シリコン層8には下地の電子供給層5からインジウムが拡散している。インジウムは融点が156℃程度と低いため、電子供給層5の上に窒化シリコン層8を形成するときにインジウムが加熱されて溶融し、このように窒化シリコン層8にインジウムが拡散したと考えられる。
【0029】
その結果、図2に示すように、導電性のインジウムによって窒化シリコン層8にリーク電流のパスPが形成され、そのパスPに沿ってドレイン電極7とゲート電極9との間にリーク電流が発生してしまう。
【0030】
図4は、このようにリーク電流が発生した半導体装置1のゲート−ドレイン間電流Igとゲート電圧Vgとの関係について示すグラフである。
【0031】
なお、図4においては、パスPに沿ったリーク電流が存在しない理想的な場合を比較例として併記してある。
【0032】
図4に示すように、上記のようにリーク電流が発生すると、ゲート電圧Vgに負の電圧を印加したときに比較例の場合よりもゲート−ドレイン間電流Igが増加してしまう。
【0033】
図5は、このようなリーク電流が発生するのを防止するために本願発明者が案出した半導体装置1の拡大断面図である。
【0034】
なお、図5において図1で説明したのと同じ要素には図1におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0035】
図5に示すように、この半導体装置1においては、電子供給層5と窒化シリコン層8との間にアルミナ(Al2O3)層11を設ける。
【0036】
アルミナ層11は、電子供給層5に含まれるインジウムが窒化シリコン層8に拡散するのを防止する拡散防止層として機能する。これにより電子供給層5から窒化シリコン層8にインジウムが拡散し難くなるため、インジウムに起因したリークパスが窒化シリコン層8に形成するのを防止でき、ドレイン電極7とゲート電極9との間を流れるリーク電流を抑制することができる。
【0037】
しかしながら、本願発明者の調査によれば、アルミナ層11には電子をトラップする電子トラップが存在し、点線矩形内に示すように電子eがアルミナ層11中で捕獲されることが明らかとなった。
【0038】
図6は、このようにアルミナ層11に電子eがトラップされた場合における半導体装置1のドレイン電圧Vdとドレイン電流Idとの関係を示すグラフである。
【0039】
なお、図6においては、アルミナ層11に電子eがトラップされていない理想的な場合を比較例として併記してある。
【0040】
図6に示すように、上記のようにアルミナ層11に電子eがトラップされると、ドレイン電圧Vdを高めたときに流れるドレイン電流Idが比較例よりも小さくなってしまう。このような現象は電流コラプス現象と呼ばれる。
【0041】
電流コラプス現象が発生すると、半導体装置1から出力されるドレイン電流Idが低下してしまうため、半導体装置1の高出力化が図れなくなってしまう。
【0042】
よって、この半導体装置1においては、ドレイン電極7とゲート電極9との間を流れるリーク電流を低減することができるものの、半導体装置1の高出力化が実現できないという問題がある。
【0043】
以下に、各実施形態について説明する。
【0044】
(第1実施形態)
本実施形態に係る半導体装置についてその製造方法を追いながら説明する。
【0045】
図7図10は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
【0046】
この半導体装置はHEMTであって、以下のようにして製造される。
【0047】
まず、図7(a)に示すように、基板21としてSiC基板を用意し、その上にMOVPE (Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法でバッファ層22としてAlGaN層を0.001μm〜0.5μm程度の厚さに形成する。なお、AlGaN層に代えてAlN層をバッファ層22として形成してもよい。
【0048】
更に、SiC基板に代えて、シリコン基板、AlN基板、サファイア基板、及びGaN基板のいずれかを基板21として用いてもよい。
【0049】
バッファ層22の成膜条件も特に限定されない。本実施形態では、アルミニウムの原料ガスとしてTMA(Trimethylaluminum)ガスを使用すると共に、ガリウムの原料ガスとしてTMG(Trimethylgalium)ガスを使用する。
【0050】
次に、バッファ層22を形成したのと同じチャンバを引き続き使用し、バッファ層22の上に電子走行層23としてGaN層をMOVPE法で形成する。
【0051】
この例では、TMGガスとアンモニアガスとの混合ガスを成膜ガスとして使用することにより電子走行層23を100nm〜3000nm程度の厚さに形成する。
【0052】
更に、上記のチャンバを引き続き使用し、そのチャンバ内において電子走行層23の上にMOVPE法で電子供給層24としてInAlGaN層を1nm〜30nm程度、例えば5nm程度の厚さに形成する。その電子供給層24の成膜ガスとしては、例えば、TMAガス、TMGガス、及びTMI(Trimethylindium)ガス等の混合ガスがある。
【0053】
なお、電子供給層24は、自発分極が大きなインジウムを含む化合物半導体層であればInAlGaN層に限定されない。そのような化合物半導体層としては、例えばInAlN層がある。
【0054】
次いで、図7(b)に示すように、電子供給層24の上に蒸着法でタンタル層とアルミニウム層とをこの順に形成した後、これらの積層膜をリフトオフ法でパターニングすることにより、ソース電極25とドレイン電極26とを間隔をおいて形成する。
【0055】
なお、タンタル層とアルミニウム層のそれぞれの膜厚は特に限定されないが、タンタル層は0.01μm〜100μm、例えば7μm程度の厚さに形成される。また、アルミニウム層は例えば0.01μm〜100μm程度の厚さに形成される。
【0056】
その後に、窒素雰囲気中で基板温度を400℃〜900℃、例えば580℃程度とする条件でソース電極25とドレイン電極26を加熱する。
【0057】
ソース電極25の最下層に形成したタンタル層は窒素を取り込む性質があるため、このように加熱することで電子供給層24に含まれる窒素がソース電極25に拡散する。その結果、電子供給層24とソース電極25との間のバンドが滑らかとなり、電子供給層24にソース電極25をオーミックコンタクトさせることができる。これと同様に、ドレイン電極26も電子供給層24にオーミックコンタクトするようになる。
【0058】
次に、図8(a)に示すように、電子供給層24、ソース電極25、及びドレイン電極26の各々の上にALD(Atomic Layer Deposition)法でアルミナ層27を1nm〜50nm、例えば20nm程度の厚さに形成する。なお、そのアルミナ層27は第2の絶縁層の一例である。
【0059】
また、アルミナ層27に代えて、酸窒化アルミニウム(AlON)層や窒化アルミニウム(AlN)層を形成してもよい。
【0060】
続いて、図8(b)に示すように、フォトリソグラフィとウエットエッチングによりアルミナ層27をパターニングする。これにより、ソース電極25とドレイン電極26との間の領域のうち、ドレイン電極26寄りの領域R1にアルミナ層27が残される。
【0061】
なお、このウエットエッチングで使用するエッチング液としては、例えばフッ酸がある。
【0062】
また、ウエットエッチングに代えてイオンミリングによりアルミナ層27をパターニングしてもよい。
【0063】
次いで、図9(a)に示すように、基板温度を300℃〜400℃とする条件でプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により基板21の上側全面に窒化シリコン層31を形成し、その窒化シリコン層31で電子供給層24を保護する。
【0064】
なお、窒化シリコン層31の成膜ガスとしては、例えば、シラン(SiH4)ガスとアンモニアガスとの混合ガスがある。また、窒化シリコン層31は、第1の絶縁層の一例であって、1nm〜1000nm、例えば600nm程度の厚さに形成される。
【0065】
その窒化シリコン層31を成膜するときの熱により電子供給層24内のインジウムが溶融して窒化シリコン層31に拡散するため、本工程を終了した後の窒化シリコン層31にはインジウムが含有されることになる。
【0066】
また、窒化シリコン層31は大気中の水分等から電子供給層24を保護する役割を担うが、これと同じ機能を有する絶縁層を窒化シリコン層31として形成してもよい。そのような絶縁層としては、例えば、酸化シリコン(SiO2)層、酸窒化シリコン(SiON)層、酸化ハフニウム(HfO2)層、及び酸炭化シリコン(SiOC)層がある。
【0067】
次に、図9(b)に示すように、フォトリソグラフィとドライエッチングで窒化シリコン層31をパターニングすることにより、アルミナ層27の上から窒化シリコン層31を除去すると共に、窒化シリコン層31に開口31aを形成する。そのドライエッチングでは、例えばBCl3ガスがエッチングガスとして使用される。
【0068】
なお、ドライエッチングに代えてイオンミリングにより窒化シリコン層31をパターニングしてもよい。
【0069】
そして、このパターニングの結果、窒化シリコン層31は、開口31aとアルミナ層27との間の一部領域R2に残される。また、開口31aとソース電極25との間にも窒化シリコン層31は残される。
【0070】
続いて、図10に示すように、基板21の上側全面に蒸着法によりニッケル層32aと金層32bとをこの順に形成した後、これらの膜をリフトオフ法でパターニングすることにより、開口31a内とその周囲の窒化シリコン層31の上にゲート電極32を形成する。
【0071】
そのゲート電極32は、断面視でT字型であって、開口31a内において電子供給層24と接触すると共に、開口31aから一部領域R2における窒化シリコン層31の上に延びるように形成される。そして、一部領域R2におけるゲート電極32は、ドレイン電極26からゲート電極32に加わる電界を緩和するためのフィールドプレート32cとなる。
【0072】
以上により、本実施形態に係る半導体装置40の基本構造が完成する。
【0073】
図11は、本実施形態に係る半導体装置40の拡大断面図である。
【0074】
この半導体装置40においては、膜中のインジウムによって大きな自発分極を有する電子供給層24の作用で電子走行層23に高濃度の二次元電子ガス39が誘起されるため、ソース−ドレイン電流を高めることができる。
【0075】
半導体装置40をオン状態にするために各電極に印加する電圧は特に限定されないが、例えばソース電極25(図10参照)を接地電位にし、ゲート電極32に1V〜2V程度の電圧を印加する。また、ドレイン電極26には90V程度の高電圧を印加する。
【0076】
このように高電圧を印加することでドレイン電極26からゲート電極32に強い電界Eが作用することになるが、その電界Eはフィールドプレート32cに分散して印加されるため、電界集中に起因して窒化シリコン層31の耐圧が低下するのを防止できる。
【0077】
更に、本実施形態ではフィールドプレート32cが位置する一部領域R2からアルミナ層27を除去したことにより、電界Eに沿って移動する電子がアルミナ層27に捕獲され難くなる。
【0078】
特に、一部領域R2においては強い電界Eによって電子の運動が促されるため、このようにアルミナ層27を除去して電子が捕獲されるのを防止する実益が高い。
【0079】
しかも、下地の電子供給層24からインジウムが拡散した窒化シリコン層31を一部領域R2に残したことにより、電界Eに沿って移動する電子が導電性のインジウムによって窒化シリコン層31中を容易に移動できるようになり、窒化シリコン層31に電子が捕獲され難くなる。
【0080】
その結果、アルミナ層27と窒化シリコン層31のいずれにも電子トラップが発生し難くなり、半導体装置40において電流コラプス現象が発生するのを抑制することができる。
【0081】
また、ゲート電極32とドレイン電極26との間から窒化シリコン層31を除去したことにより、ゲート電極32からドレイン電極26に至るリークパスが窒化シリコン層31に形成されなくなるため、半導体装置40においてリーク電流が発生するのを抑制できる。
【0082】
更に、空気よりも誘電率が高いアルミナ層27をゲート電極32とドレイン電極26との間に形成したことで電界Eの一部がアルミナ層27を通るようになる。これにより、フィールドプレート32cの下の窒化シリコン層31に電界Eが集中するのを緩和でき、窒化シリコン層31の耐圧を高めることもできる。
【0083】
特に、アルミナ層27のバンドギャップは約5eVであり、窒化シリコン層31のバンドギャップ(約3eV)よりも高いため、アルミナ層27は電界Eに曝されても破壊され難く、半導体装置40の耐圧を高めることができる。
【0084】
窒化シリコン層31よりもバンドギャップが広い絶縁層としては、上記のアルミナ層27の他に酸窒化アルミニウム層や窒化アルミニウム層等のアルミニウム含有絶縁層もあり、これらのいずれかをアルミナ層27に代えて形成してもよい。アルミニウム含有絶縁膜はバンドギャップが広く耐圧が高いため、半導体装置40の耐圧を高めるのに有効である。
【0085】
本願発明者は、本実施形態の効果について検証した。その検証結果を図12及び図13に示す。
【0086】
図12は、本実施形態に係る半導体装置40のゲート−ドレイン間電流Igとゲート電圧Vgとの関係について示すグラフである。
【0087】
なお、図12においては、ゲート−ドレイン間のリーク電流が存在しない理想的な場合を第1の比較例として併記すると共に、図1に示した半導体装置1のグラフを第2の比較例として併記してある。
【0088】
図12に示すように、本実施形態においては、理想的な第1の比較例と同程度にまで電流Igが低下しており、ゲート−ドレイン間におけるリーク電流が抑制されることが明らかとなった。これは、前述のようにゲート電極32とドレイン電極26との間から窒化シリコン層31を除去したことにより、ゲート電極32からドレイン電極26に至るリークパスが窒化シリコン層31に形成されなくなったためであると考えられる。
【0089】
図13は、本実施形態に係る半導体装置40のドレイン電圧Vdとドレイン電流Idとの関係を示すグラフである。
【0090】
なお、図13においては、アルミナ層27や窒化シリコン層31に電子がトラップされていない理想的な場合を第1の比較例として併記すると共に、図1に示した半導体装置1のグラフを第2の比較例として併記してある。
【0091】
図13に示すように、本実施形態においては、理想的な第1の比較例と同程度にまでドレイン電流Idが増加しており、電流コラプス現象が抑制されることが明らかとなった。これは、前述のように電子トラップが存在するアルミナ層27を一部領域R2から除去したことにより、アルミナ層27に電子が捕獲され難くなったためと考えられる。また、インジウムが拡散した窒化シリコン層31を一部領域R2に残したことで電界Eに沿って移動する電子が窒化シリコン層31にトラップされ難くなったことによっても電流コラプス現象を抑制できたと考えられる。
【0092】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態とは異なる方法でHEMTを製造する。
【0093】
図14図16は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
【0094】
なお、図14図16において第1実施形態におけると同じ要素には第1実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0095】
まず、第1実施形態の図7(a)、(b)の工程を行うことにより、図14(a)に示すように、電子供給層24の上にソース電極25とドレイン電極26とが間隔をおいて形成された構造を得る。
【0096】
次に、図14(b)に示すように、基板21の上側全面にプラズマCVD法で窒化シリコン層31を1nm〜1000nm程度、例えば600nm程度の厚さに形成する。その窒化シリコン層31の成膜条件は第1実施形態におけるのと同じなのでここでは省略する。
【0097】
また、第1実施形態で説明したように、窒化シリコン層31を形成する際には基板21が加熱されるため、電子供給層24として形成したInAlGaN層から窒化シリコン層31にインジウムが拡散する。
【0098】
続いて、図15(a)に示すように、フォトリソグラフィとドライエッチングで窒化シリコン層31をパターニングすることにより、ソース電極25とドレイン電極26との間の窒化シリコン層31に開口31aを形成する。また、このパターニングでは、開口31aとドレイン電極26との間の一部領域R2に窒化シリコン層31を残しつつ、一部領域R2とドレイン電極26との間から窒化シリコン層31が除去される。
【0099】
次に、図15(b)に示すように、基板21の上側全面に蒸着法によりニッケル層32aと金層32bとをこの順に形成し、更にこれらの膜をリフトオフ法でパターニングしてT字型のゲート電極32を形成する。第1実施形態で説明したように、一部領域R2におけるゲート電極32は、ドレイン電極26からゲート電極32に加わる電界を緩和するためのフィールドプレート32cとなる。
【0100】
次いで、図16(a)に示すように、ALD法で基板21の上側全面にアルミナ層27を1nm〜50nm程度の厚さ、例えば20nmの厚さに形成し、そのアルミナ層27でゲート電極32を覆う。
【0101】
そして、図16(b)に示すように、フォトリソグラフィとウエットエッチングでアルミナ層27をパターニングすることにより、ソース電極25とドレイン電極26の各々上からアルミナ層27を除去し、これらの電極に不図示の配線を接続できるようにする。第1実施形態で説明したように、このウエットエッチングで使用するエッチング液としては、例えばフッ酸がある。
【0102】
以上により、本実施形態に係る半導体装置50の基本構造が完成する。
【0103】
この半導体装置50においても、フィールドプレート32cの下にアルミナ層27を形成せずに、インジウムを含有する窒化シリコン層31をフィールドプレート32cの下に形成する。そのため、第1実施形態と同じ理由によって窒化シリコン層31に電子トラップが形成され難くなり、半導体装置50において電流コラプス現象が発生するのを抑制できる。
【0104】
更に、一部領域R2とドレイン電極26との間から窒化シリコン層31を除去したことにより、インジウムを含む窒化シリコン層31の膜中にリークパスが発生するのを防止でき、ドレイン電極26とゲート電極32との間にリーク電流が流れるのを防止することができる。
【0105】
しかも、ゲート電極32の側面と上面がアルミナ層27で覆われるため、大気中の水分等がゲート電極32に浸入するのをアルミナ層27で防ぐこともできる。
【0106】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態や第2実施形態に係る半導体装置40、50を備えたディスクリートパッケージについて説明する。
【0107】
図17は、本実施形態に係るディスクリートパッケージの平面図である。
【0108】
このディスクリートパッケージ100は、半導体装置40、50のいずれかを含むHEMTチップ101と、そのHEMTチップ101を封止する樹脂102とを有する。
【0109】
このうち、HEMTチップ101には、ゲートパッド103、ドレインパッド104、及びソースパッド105が設けられる。これらのパッドの各々は、不図示の配線を介して前述のゲート電極32、ドレイン電極26、及びソース電極25の各々と電気的に接続される。
【0110】
また、樹脂102には、ゲートリード110、ドレインリード111、及びソースリード112の各々の一部が埋没される。このうち、ドレインリード111には正方形状のランド111aが設けられており、ダイアタッチ材107によりランド111aにHEMTチップ101が接着される。
【0111】
そして、これらのリード110、111、112の各々は、アルミニウム線等の金属ワイヤ114を介してそれぞれゲートパッド103、ドレインパッド104、及びソースパッド105の各々に電気的に接続される。
【0112】
以上説明した本実施形態によれば、リーク電流が抑制された半導体装置40、50のいずれかをHEMTチップ101が含むため、耐圧が高いディスクリートパッケージ100を提供することができる。しかも、半導体装置40、50において電流コラプス現象が抑制されているため、ディスクリートパッケージ100を高出力化することも可能となる。
【0113】
(第4実施形態)
本実施形態では、第3実施形態のHEMTチップ101を用いたPFC(Power Factor Correction)回路について説明する。
【0114】
図18は、そのPFC回路の回路図である。
【0115】
図18に示すように、PFC回路200は、ダイオード201、チョークコイル202、コンデンサ203、204、ダイオードブリッジ205、交流電源206、及びスイッチ素子210を有する。
【0116】
このうち、スイッチ素子210としては、第3実施形態で説明したHEMTチップ101を採用し得る。そのスイッチ素子210のドレイン電極は、ダイオード201のアノード端子と、チョークコイル202の一端子とに接続される。
【0117】
また、スイッチ素子210のソース電極は、コンデンサ203の一端子と、コンデンサ204の一端子とに接続される。
【0118】
なお、スイッチ素子210のゲート電極には不図示のゲートドライバが接続される。
【0119】
更に、コンデンサ203の他端子とチョークコイル202の他端子とが接続されると共に、コンデンサ204の他端子とダイオード201のカソード端子とが接続される。
【0120】
そして、コンデンサ203の両端子間にはダイオードブリッジ205を介して交流電源206が接続され、コンデンサ204の両端子間には直流電源DCが接続される。
【0121】
(第5実施形態)
本実施形態では、第3実施形態のHEMTチップ101を用いた電源装置について説明する。
【0122】
図19は、その電源装置の回路図である。なお、図19において、第4実施形態で説明したのと同じ要素には第4実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0123】
図19に示すように、電源装置300は、高圧の一次側回路301、低圧の二次側回路302、及びこれらの間に接続されたトランス303を備える。
【0124】
このうち、一次側回路301には、第4実施形態で説明したPFC回路200と、そのPFC回路200のコンデンサ204の両端子間に接続されたフルブリッジインバータ回路304が設けられる。
【0125】
そのフルブリッジインバータ回路304には、四つのスイッチ素子304a、304b、304c、304dが設けられる。これらのスイッチ素子304a、304b、304c、304dの各々としては、第3実施形態で説明したHEMTチップ101を採用し得る。
【0126】
一方、二次側回路302は、三つのスイッチ素子302a、302b、302cを備える。これらのスイッチ素子302a、302b、302cとしては、例えば、シリコン基板にチャネルが形成されるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を採用し得る。
【0127】
以上説明した本実施形態によれば、スイッチ素子210、304a、304b、304c、304dの各々にHEMTチップ101を採用する。そのHEMTチップ101においてはリーク電流と電流コラプス現象が抑制されているため、耐圧が高く高出力用途に適した電源装置300を提供することができる。
【0128】
(第6実施形態)
本実施形態では、第3実施形態のHEMTチップ101を用いた高周波増幅器について説明する。
【0129】
図20は、その高周波増幅器の回路図である。
【0130】
図20に示すように、高周波増幅器400は、ディジタル・プレディストーション回路401、ミキサ402、403、及びパワーアンプ404を備える。
【0131】
このうち、ディジタル・プレディストーション回路401は、入力信号の非線形歪みを補償する。また、ミキサ402は、非線形歪みが補償された入力信号と交流信号とをミキシングする。
【0132】
そして、パワーアンプ404は、前述のHEMTチップ101を備えており、交流信号とミキシングされた入力信号を増幅する。なお、本実施形態では、スイッチの切り替えにより、出力側の信号をミキサ403で交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路401に送出できる。
【0133】
以上説明した本実施形態によれば、パワーアンプ404が内蔵するHEMTチップ101においてリーク電流と電流コラプス現象が抑制されているため、耐圧が高く高出力用途に適した高周波増幅器400を提供することができる。
【0134】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0135】
(付記1) 基板と、
前記基板の上方に形成された電子走行層と、
前記電子走行層の上に形成され、インジウムを含む化合物半導体を材料とする電子供給層と、
前記電子供給層の上に形成されたソース電極と、
前記電子供給層の上において前記ソース電極から間隔をおいて形成されたドレイン電極と、
前記電子供給層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の一部領域に形成された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記ソース電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記第1の絶縁層の上に延びたゲート電極と、
前記第1の絶縁層と前記ドレイン電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記第1の絶縁層よりもバンドギャップが広い第2の絶縁層と、
を有する半導体装置。
【0136】
(付記2) 前記第2の絶縁層は、アルミニウム含有絶縁層であることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0137】
(付記3) 前記第2の絶縁層は、前記ゲート電極の側面と上面とを覆うことを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0138】
(付記4) 前記第1の絶縁層はインジウムを含有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0139】
(付記5) 基板の上方に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層の上に、インジウムを含む化合物半導体を材料とする電子供給層を形成する工程と、
前記電子供給層の上に、ソース電極とドレイン電極とを互いに間隔をおいて形成する工程と、
前記電子供給層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の一部領域に第1の絶縁層を形成する工程と、
前記第1の絶縁層と前記ソース電極との間における前記電子供給層の上に、前記電子供給層から前記第1の絶縁層の上に延びるようにゲート電極を形成する工程と、
前記第1の絶縁層と前記ドレイン電極との間における前記電子供給層の上に、前記第1の絶縁層よりもバンドギャップが広い第2の絶縁層を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【0140】
(付記6) 基板と、
前記基板の上方に形成された電子走行層と、
前記電子走行層の上に形成され、インジウムを含む化合物半導体を材料とする電子供給層と、
前記電子供給層の上に形成されたソース電極と、
前記電子供給層の上において前記ソース電極から間隔をおいて形成されたドレイン電極と、
前記電子供給層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の一部領域に形成された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記ソース電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記第1の絶縁層の上に延びたゲート電極と、
前記第1の絶縁層と前記ドレイン電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記第1の絶縁層よりもバンドギャップが広い第2の絶縁層と、
を備えた半導体装置を有する電源装置。
【0141】
(付記7) 基板と、
前記基板の上方に形成された電子走行層と、
前記電子走行層の上に形成され、インジウムを含む化合物半導体を材料とする電子供給層と、
前記電子供給層の上に形成されたソース電極と、
前記電子供給層の上において前記ソース電極から間隔をおいて形成されたドレイン電極と、
前記電子供給層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の一部領域に形成された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記ソース電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記第1の絶縁層の上に延びたゲート電極と、
前記第1の絶縁層と前記ドレイン電極との間における前記電子供給層の上に形成され、前記第1の絶縁層よりもバンドギャップが広い第2の絶縁層と、
を備えた半導体装置を有する高周波増幅器。
【符号の説明】
【0142】
1…半導体装置、2…基板、3…バッファ層、4…電子走行層、5…電子供給層、6…ソース電極、7…ドレイン電極、8…窒化シリコン層、8a…開口、9…ゲート電極、9a…フィールドプレート、9b…対向面、10…二次元電子ガス、11…アルミナ層、21…基板、22…バッファ層、23…電子走行層、24…電子供給層、25…ソース電極、26…ドレイン電極、27…アルミナ層、31…窒化シリコン層、31a…開口、32…ゲート電極、32a…ニッケル層、32b…金層、32c…フィールドプレート、40、50…半導体装置、100…ディスクリートパッケージ、101…HEMTチップ、102…樹脂、103…ゲートパッド、104…ドレインパッド、105…ソースパッド、107…ダイアタッチ材、110…ゲートリード、111a…ランド、111…ドレインリード、112…ソースリード、114…金属ワイヤ、200…PFC回路、201…ダイオード、202…チョークコイル、203、204…コンデンサ、205…ダイオードブリッジ、206…交流電源、301…一次側回路、302…二次側回路、303…トランス、304…フルブリッジインバータ回路、302a、302b、302c…スイッチ素子、400…高周波増幅器、401…ディジタル・プレディストーション回路、402、403…ミキサ、404…パワーアンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20