特許第6983632号(P6983632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983632
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】トンネル内交通流監視システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20211206BHJP
   G08G 1/015 20060101ALI20211206BHJP
   G08G 1/065 20060101ALI20211206BHJP
   E21F 17/18 20060101ALI20211206BHJP
   A62C 3/00 20060101ALN20211206BHJP
   A62C 35/20 20060101ALN20211206BHJP
【FI】
   G08G1/01 E
   G08G1/015 A
   G08G1/065 A
   E21F17/18
   !A62C3/00 J
   !A62C35/20
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-225593(P2017-225593)
(22)【出願日】2017年11月24日
(65)【公開番号】特開2019-96110(P2019-96110A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】 平井 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−041013(JP,A)
【文献】 特開平11−039589(JP,A)
【文献】 特開2014−006696(JP,A)
【文献】 特表2004−517419(JP,A)
【文献】 特開2002−251692(JP,A)
【文献】 特開2004−110185(JP,A)
【文献】 特開2000−163685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
A62C 2/00−99/00
E21F 1/00−17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル長手方向に所定間隔で設置され複数の消火栓装置と、
前記複数の消火栓装置毎に配置され、前記消火栓装置の前を通過する車両を検出する車両センサと、
トンネル長手方向に配置された一対の前記車両センサの検出信号に基づいて、通過する車両の少なくとも台数及び車速を含む車両情報を測定する測定部と、
前記測定部で測定された前記車両情報に基づいてトンネル内の車両交通状態を判断して報知する交通判断部と、
を備え、
前記測定部は、前記消火栓装置の設置場所毎の車速に基づいて単位時間当りの平均車速を求め、前記平均車速を求める前記単位時間内に車両の通過がない場合は、その前の単位時間内に求めた平均車速を保持することを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項2】
トンネル長手方向に所定間隔で設置された複数の消火栓装置と、
前記複数の消火栓装置毎に配置され、前記消火栓装置の前を通過する車両を検出する車両センサと、
トンネル長手方向に配置された一対の前記車両センサの検出信号に基づいて、通過する車両の少なくとも台数及び車速を含む車両情報を測定する測定部と、
前記測定部で測定された前記車両情報に基づいてトンネル内の車両交通状態を判断して報知する交通判断部と、
を備え、
前記交通判断部は、トンネル内を通行中の車両が停止した場合に予想される所定の車両停止間隔と前記消火栓装置の設置間隔との最小公倍数となる設置間隔で位置する停止車両監視用の消火栓装置を設定し、前記停止車両監視用の消火栓装置に対応した車両情報に基づいて、トンネル内の停止車両を判断して報知することを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、
前記車両センサは、前記消火栓装置のトンネル長手方向となる左右近傍に一対配置され、
前記測定部は、前記消火栓装置毎に配置された一対の前記車両センサの検出信号に基づいて、通過する車両の車両情報を測定することを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項4】
請求項1又は2記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、
前記車両センサは、前記消火栓装置毎配置され、
前記測定部は、トンネル長手方向と隣接する前記消火栓装置に配置された一対の前記車両センサの検出信号に基づいて、通過する車両の車両情報を測定することを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項5】
請求項1又は2記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、
前記車両センサ、磁気センサ、超音波センサ又は赤外線センサであることを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項6】
請求項1記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、
前記交通判断部は、前記測定部で求めた平均車速に基づいて、トンネル内における前記平均車速の分布を報知することを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項7】
請求項記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、
前記測定部は、前記消火栓装置の設置場所毎の車速に基づいて単位時間当りの平均車速を求め、
前記交通判断部は、前記測定部で求め平均車速に基づいて、トンネル内における前記平均車速の分布を報知ることを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項8】
請求項記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、
前記測定部は、前記平均車速を求める前記単位時間内に車両の通過がない場合は、その前の単位時間内に求めた平均車速を保持ることを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項9】
請求項1又は2記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、前記交通判断部は、トンネル全長に対応して渋滞が発生する所定の閾値台数を設定し、前記測定部で測定された前記車両情報から求めたトンネル内を通行している車両台数が前記閾値台数以上となった場合に、渋滞発生を予想して報知ることを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項10】
請求項1又は2記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、
前記交通判断部は、
トンネル内を前記消火栓装置の設置間隔の倍数の長さとなる複数の渋滞監視区間に分割すると共に、前記渋滞監視区間の長さに対応して渋滞が発生する所定区間の閾値台数を設
定し、
前記測定部で測定された前記車両情報から求めた前記渋滞監視区間内を通行している車両台数が前記所定区間の閾値台数以上となった場合に、渋滞発生を予想して前記渋滞監視区間単位に報知ることを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項11】
請求項又は10記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、前記閾値台数は、1キロメートルの区間に25台以上の車両が存在した場合に渋滞が発生する、とした所定の渋滞発生基準に基づいて設定されたことを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項12】
請求項1又は2記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、前記交通判断部は、前記測定部で測定された前記車両情報に基づいてトンネル内での車両の停止を判断して報知させることを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項13】
請求項12記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、前記交通判断部は、トンネル内を通行中の車両が停止した場合に予想される所定の車両停止間隔と前記消火栓装置の設置間隔との最小公倍数となる設置間隔で位置する停止車両監視用の消火栓装置を設定し、前記停止車両監視用の消火栓装置に対応した車両情報に基づいて、トンネル内の停止車両を判断して報知ることを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項14】
請求項2又は13記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、前記交通判断部は、前記停止車両監視用の消火栓装置に設けられた前記車両センサから所定時間を超えて車両検出信号が継続的に出力されている場合に車両停止と判断することを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【請求項15】
請求項1又は2記載のトンネル内交通流監視システムに於いて、
前記測定部は、前記車両センサの検出信号から通過車両の車長を測定し、
前記交通判断部は、前記測定部で測定された前記車長に基づき通過車両の大きさを複数種類に分類し、分類した車両の種類毎に通過台数を求めて報知ることを特徴とするトンネル内交通流監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に設置された消火栓装置に車両センサを設けてトンネル内の車両通行状態を監視するトンネル内交通流監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路における渋滞現象は、「時速40キロメートル以下で1キロメートルの車列の延長が15分以上継続した状態」と定義されており、高速道路の渋滞状態を把握するために、磁気センサや超音波センサを約2キロメートル毎に道路に埋め込んだトラフィックカウンターで車両の台数、車速及び車長を測定している。
【0003】
一方、高速道路のトンネル内での渋滞状態の把握は、トンネル坑口に設けられたカメラで台数を確認することで行っている。このようなトンネル内での渋滞現象は、トンネルに入るまで明るい道路を走行していて、暗いトンネルに入ると一瞬目がくらむため、人が危険を感じてしまい、車の速度を落としてしまうため、トンネルに入ったところで渋滞が発生する要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−288673号公報
【特許文献2】特開2009−279294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のトンネル内での渋滞状態の把握は、トンネル坑口に設けられたカメラで台数を確認してトンネルに入った付近の渋滞状況を把握しているだけであり、特に非常用設備の作動時は、トンネル全長に亘る渋滞状況を精度よく把握することが求められている。
【0006】
この問題を解決するためトンネル内についても、磁気センサや超音波センサを約2キロメートル毎に道路に埋め込んだトラフィックカウンターで車両の台数、車速及び車長を測定することも考えられるが、トラフィックカウンターの設置間隔が長すぎるため、トンネル内における渋滞状況を精度よく把握することは困難である。
【0007】
また、トンネル内で火災を伴う車両事故が発生した場合には、トンネル内における車両状態の把握が避難誘導や消防活動のために重要になるが、有効な手段が講じられていない。
【0008】
本発明は、トンネル内に所定間隔で設置された消火栓装置等の機器を利用して車両センサを設置することにより、トンネル内の車両の通行状態を精度よく把握して必要な対処を可能とするトンネル内車両交通流監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(トンネル内交通流監視システム)
本発明は、トンネル内交通流監視システムに於いて、
トンネル長手方向に所定間隔で設置され、筐体内に収納されたノズル付きのホースを引き出して消火する複数の消火栓装置と、
複数の消火栓装置毎に配置され、消火栓装置の前を通過する車両を検出する車両センサと、
トンネル長手方向に配置された一対の車両センサの検出信号に基づいて、通過する車両の少なくとも台数及び車速を含む車両情報を測定する測定部と、
測定部で測定された車両情報に基づいてトンネル内の車両交通状態を判断して報知する交通判断部と、
が設けられたことを特徴とする。
【0010】
(消火栓装置に設置した一対の車両センサによる測定)
消火栓装置のトンネル長手方向となる左右近傍に一対の車両センサが配置され、
測定部は、消火栓装置毎に配置された一対の車両センサの検出信号に基づいて、通過する車両の車両情報を測定する。
【0011】
(隣接する消火栓装置に設置した一対の車両センサによる測定)
消火栓装置毎に車両センサが配置され、
測定部は、トンネル長手方向に隣接する消火栓装置に配置された一対の車両センサの検出信号に基づいて、通過する車両の車両情報を測定する。
【0012】
(車両センサ)
車両センサとして、磁気センサ、超音波センサ又は赤外線センサが設けられる。
【0013】
(トンネル内の平均車速分布)
交通判断部は、消火栓装置の設置場所毎の車速に基づいて単位時間当りの平均車速を求め、トンネル内における平均車速の分布を報知させる。
【0014】
(通過車両がない場合の平均車速)
測定部は、平均車速を求める前記単位時間内に車両の通過がない場合は、その前の単位時間内に求めた平均車速を保持させる。
【0015】
(トンネル内の渋滞監視)
交通判断部は、トンネル全長に対応して渋滞が発生する所定の閾値台数を設定し、測定部で測定された車両情報から求めたトンネル内を通行している車両台数が閾値台数以上となった場合に、渋滞発生を予想して報知させる。
【0016】
(トンネル内を区間分割した渋滞監視)
交通判断部は、
トンネル内を前記消火栓装置の設置間隔の倍数の長さとなる複数の渋滞監視区間に分割すると共に、渋滞監視区間の長さに対応して渋滞が発生する所定区間の閾値台数を設定し、
測定部で測定された車両情報から求めた渋滞監視区間内を通行している車両台数が所定区間の閾値台数以上となった場合に、渋滞発生を予想して渋滞監視区間単位に報知させる。
【0017】
(渋滞発生基準)
閾値台数は、1キロメートルの区間に25台以上の車両が存在した場合に渋滞が発生する、とした所定の渋滞発生基準に基づいて設定される。
【0018】
(車両の停止監視)
交通判断部は、車両情報に基づいてトンネル内での車両の停止を判断して報知させる。
【0019】
(車両の停止監視)
交通判断部は、トンネル内を通行中の車両が停止した場合に予想される所定の車両停止間隔と消火栓装置の設置間隔との最小公倍数となる設置間隔で位置する停止車両監視用の消火栓装置を設定し、停止車両監視用の消火栓装置に対応した車両情報に基づいて、トンネル内の停止車両を判断して報知させる。
【0020】
(車両の停止監視)
交通判断部は、停止車両監視用の消火栓装置に設けられた車両センサから所定時間を超えて車両検出信号が継続的に出力されている場合に車両停止と判断する。
【0021】
(車長測定と車種別の通過台数)
測定部は、車両センサの検出信号から通過車両の車長を測定し、
交通判断部は、車長に基づき通過車両の大きさを複数種類に分類し、分類した車両の種類毎に通過台数を求めて報知させる。
【発明の効果】
【0022】
(基本的な効果)
本発明は、トンネル長手方向に所定間隔で設置され、筐体内に収納されたノズル付きのホースを引き出して消火する複数の消火栓装置と、複数の消火栓装置毎に配置され、消火栓装置の前を通過する車両を検出する車両センサと、トンネル長手方向に配置された一対の車両センサの検出信号に基づいて、通過する車両の少なくとも台数及び車速を含む車両情報を測定する測定部と、測定部で測定された車両情報に基づいてトンネル内の車両交通状態を判断して報知する交通判断部とが設けられたため、トンネル内には例えば50メートル間隔で消火栓装置が設置されており、消火栓装置の配置間隔となる50メートル間隔といった高い精度で車両の台数及び車速を測定することができ、車両情報の測定精度が格段に高められることで、渋滞状態を含むトンネル内の車両交通状態を高い精度で把握可能とする。
【0023】
また、車両センサを従来のトラフィックカウンターのようにトンネル内の道路に埋め込む必要がなく、消火栓装置の筐体前面の空きスペースを利用して簡単に設置することができ、また、消火栓装置の筐体の幅は一対の車両センサの配置間隔としても好適であり、車両センサ専用の設置場所や設置スペースをトンネル内に確保する必要がなく、センサ筐体も不要であることから、設置が容易でコストも安価で実現可能とする。この点は、トンネル内に所定間隔で設置されている照明装置、消火器箱、トンネル火災検知器等の消火栓装置以外の機器に車速センサを設置した場合も同様となる。
【0024】
(消火栓装置に設置した一対の車両センサによる測定の効果)
また、消火栓装置のトンネル長手方向となる左右近傍に一対の車両センサが配置され、測定部は、消火栓装置毎に配置された一対の車両センサの検出信号に基づいて、通過する車両の車両情報を測定するようにしたため、消火栓装置の筐体はトンネル長手方向の幅が1.8メートル程度であり、筐体の左右両側に一対の車両センサが配置されることで、消火栓装置の前の1.8メートル程度の区間を通過する車両の台数及び車速を高精度で測定可能とする。また、一対の車両センサの設置間隔が車両の長さに対し短いことから、一対の車両センサの検出信号と測定された車速から車両の長さを求めることができる。
【0025】
(隣接する消火栓装置に設置した一対の車両センサによる測定)
また、消火栓装置毎に車両センサが配置され、測定部は、トンネル長手方向に隣接する消火栓装置に配置された一対の車両センサの検出信号に基づいて、通過する車両の車両情報を測定するようにしたため、消火栓装置の配置間隔となる50メートルの区画を通過する車両の台数及び速度を高精度で測定可能とする。この場合に測定される車速は、消火栓装置の設置間隔で決まる50メートル区間の平均速度となる。
【0026】
(車両センサ)
また、車両センサとして、磁気センサ、超音波センサ又は赤外線センサが設けられ、何れも消火栓装置の筐体前面に道路に向けて設置することで、通過車両を確実に検出することができる。
【0027】
(トンネル内の平均車速分布による効果)
また、交通判断部は、消火栓装置の設置場所毎の車速に基づいて単位時間当りの平均車速を求め、トンネル内における平均車速の分布を報知させるようにしたため、例えば、監視センター等の表示装置に、消火栓装置の設置間隔で決まる例えば50メートル間隔毎の平均車速の分布がリアルタイムで表示でき、この平均車速のトンネル内分布を監視することで、トンネル全体としての車両の通行状態を高い精度で把握可能とする。
【0028】
例えば、平均車速のトンネル内分布が制限速度となる例えば時速80キロメートル付近に分布している場合は、渋滞を起こすことなく順調に車両の通行が行われていることが判断できる。また、トンネル内を大型トレーラ等の特殊車両が低速で走行している場合には、低速車両の存在位置及びその後方の平均車速が例えば時速60キロメートル付近にあり、これが時間の経過と共にトンネル出口側に移動していく変化となり、トンネル内の低速車両の通行状態が高い精度で把握可能となる。
【0029】
また、トンネル内の特定位置で渋滞が発生した場合には、渋滞発生部分及びその後方の平均車速が時速40キロメートル以下に低下した平均車速の分布となり、この渋滞分布が時間の経過と共にトンネル出口側に移動していく変化となり、トンネル内の渋滞状態が高い精度で把握可能となる。
【0030】
また、トンネル内の渋滞が解消していく場合には、時速40キロメートル以下で渋滞を示す平均車速となっていた先頭部分から後方に向けて平均車速がそれ以上の平均車速に回復して行く時間的変化となり、トンネル内の渋滞解消状態が高い精度で把握可能となる。
【0031】
更に、トンネル内で車両事故が発生した場合、又は、火災を伴う車両事故が発生した場所、事故発生場所から後方の車両は停止して平均車速は時速ゼロキロメートルの車速分布となり、車両事故が発生した場合のトンネル内の車両状態を高い精度で把握できる。
【0032】
(通過車両がない場合の平均車速による効果)
また、測定部は、平均車速を求める前記単位時間内に車両の通過がない場合は、その前の単位時間内に求めた平均車速を保持させるようにしたため、トンネル内での事故発生し、事故発生場所の後方の時速ゼロキロメートルとなる車両停止を示す平均車速の分布となり、これに対し事故発生場所の前方の車両が全てトンネル内がら出て平均車速が求められなくなった場合にも、事故発生場所の前方の平均車速は最後に求められた平均車速を維持しており、事故発生場所の後方の時速ゼロキロメートルとなる車両停止を示す平均車速分布と区別できる。
【0033】
(トンネル内の渋滞監視による効果)
また、交通判断部は、トンネル全長に対応して渋滞が発生する所定の閾値台数を設定し、測定部で測定された車両情報から求めたトンネル内を通行している車両の台数が閾値台数以上となった場合に、渋滞発生を予想して報知させるようにしたため、トンネル入口に最も近い消火栓装置の車両センサに基づき求めた通過台数から、トンネル出口に最も近い消火栓装置の車両センサに基づき求めた通過台数を差し引くことで、現在のトンネル内を通行している車両台数が求まり、これが所定の閾値台数以上の場合にトンネル全体としての渋滞発生を予測して報知が可能となる。
【0034】
(トンネル内を区間分割した渋滞監視による効果)
また、交通判断部は、トンネル内を消火栓装置の設置間隔の倍数の長さとなる複数の渋滞監視区間に分割すると共に、渋滞監視区間の長さに対応して渋滞が発生する所定区間の閾値台数を設定し、測定部で測定された車両情報から求めた渋滞監視区間内を通行している車両の台数が所定区間の閾値台数以上となった場合に、渋滞発生を予想して渋滞監視区間単位に報知させるようにしたため、例えば車両センサが設置された消火栓装置の配置間隔は50メートルであることから、例えばトンネル全長が1000メートルとすると、トンネル内を例えば200メートルの渋滞監視区間に分け、渋滞監視区間毎に、区間入口の消火栓装置に設けた車両センサに基づき求めた通過台数から、区間出口の消火栓装置に設けた車両センサに基づき求めた通過台数を差し引くことで、現在の渋滞監視区間内を通行している車両の台数が求まり、これが所定の渋滞監視区画の閾値台数以上の場合に区間内の渋滞発生を予測して報知が可能となり、トンネル内における渋滞状態を高い精度で把握可能とする。
【0035】
(渋滞発生基準による効果)
トンネル全体又はトンネル内の渋滞監視区間の渋滞を判断するための渋滞閾値は、1キロメートルの区間に25台以上の車両が存在した場合に渋滞が発生する、とした所定の渋滞発生基準に基づいて設定されたため、この渋滞閾値は、セルオートマトン法による交通流モデルのシミュレーションから求められた値であり、従来の微分方程式を出発点としたアプローチでは予測困難な渋滞現象を正確に予測することを可能とする。
【0036】
(車両の停止監視による効果)
また、交通判断部は、車両情報に基づいてトンネル内での車両の停止を判断して報知させるようにしたため、火災を伴う車両事故の発生によりトンネル内に停止している車両の状態が高い精度で把握可能となり、避難誘導や消防活動等の対処がより適切に行うことを可能とする。
【0037】
(車両の停止判断による効果)
また、交通判断部は、トンネル内を通行中の車両が停止した場合に予想される所定の車両停止間隔と消火栓装置の設置間隔との最小公倍数となる設置間隔で位置する停止車両監視用の消火栓装置を設定し、停止車両監視用の消火栓装置に対応した車両情報に基づいて、トンネル内の停止車両を判断して報知させるようにしたため、例えば、車両が停止した場合に予想される停止車両間隔は例えば15メートルであり、消火栓装置の設置間隔は50メートルであることから、両者の最小公倍数は150メートルとなり、150メートル間隔となる消火栓装置を車両停止監視用としてその車両センサに基づいて停止車両の存在を正確に把握可能とする。
【0038】
この場合、交通判断部は、停止車両監視用の消火栓装置に設けられた車両センサから所定時間を超えて車両検出信号が継続的に出力されている場合に車両停止と判断することで、消火栓装置の前に停止している車両を高い精度で把握可能とする。
【0039】
(車長測定と車種別の通過台数による効果)
また、測定部は、車両センサの検出信号から通過車両の車長を測定し、交通判断部は、測定部で測定された車長に基づき通過車両の大きさを複数種類に分類し、分類した車両の種類毎に通過台数を求めて報知させるようにしたため、消火栓装置に設けられた車両センサを利用して、トンネルを通過する車両の台数を、例えば、大型車、中型車、小型車に分けて測定することができ、トンネル内交通量の更に詳しい解析を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】トンネル内に設置した消火栓装置を含むトンネル非常用設備を示した説明図
図2】車両センサが設けられた消火栓装置を正面から示した説明図
図3図2について消火栓扉を外して本体内部構造を示した説明図
図4】防災受信盤により監視制御を行う消火栓装置を備えたトンネル用非常設備の概略を示した説明図
図5図4の防災受信盤と消火栓制御装置の機能構成を示したブロック図
図6】車両センサの検出信号を示したタイムチャート
図7】通常走行状態と低速車両走行状態におけるトンネル内の平均車速分布を示した説明図
図8】渋滞発生状態と車両停止状態におけるトンネル内の平均車速分布を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0041】
[トンネル非常用設備の概要]
図1は自動車専用道路のトンネル内に設置された消火栓装置を含むトンネル非常用設備を示した説明図である。図1に示すように、トンネル100内は蒲鉾形のトンネル壁面102により覆われ、底部には道路104が設けられており、この例にあっては、道路104は1方向2車線としている。
【0042】
道路104の左側のトンネル壁面102に沿って監視員通路106が設けられ、監視員通路106の下側の内部空間はダクトとして利用され、電線管や給水本管108が敷設されている。
【0043】
トンネル100の長手方向の50メートルおきには、消火栓装置10が設置されている。消火栓装置10はノズル付きホースを収納しており、火災時には、消火栓扉を開放してノズル付きホースの引き出すことにより消火作業を可能とする。
【0044】
消火栓装置10の前面上部両側には車両センサ60,62が設置されており、消火栓装置10の前方の道路104における手前の車線を通過する車両を検出している。トンネル100は手前が入口側、前方が出口側であり、車両センサ60,62は道路104を通行する車両の信号方向に対し車両センサ60及び車両センサ62の順に設置されている。
【0045】
[消火栓装置の概要]
図2は車両センサが設けられた消火栓装置を正面から示した説明図、図3図2について消火栓扉を外して本体内部構造を示した説明図である。
【0046】
(外部構造の概略)
図2に示すように、消火栓装置10は、消火栓側と消火器側の筐体12に分割された構造であり、前面に分割した化粧板14a,14bが各々装着され、筐体12に対し必要な機器及び部材が組付けられた後に連結固定され、この状態でトンネル現場に搬入して架台11上に設置されている。
【0047】
右側の化粧板14aの扉開口部16は上下に分割され、下側扉開口部に消火栓扉18が配置され、上側扉開口部に保守扉22が配置されている。
【0048】
消火栓扉18は、下側のヒンジを中心に下向きに開閉自在に設けられ、扉ロック機構により閉止位置に閉じられている。消火栓扉18は、ハンドル20を手前に引いて扉ロック機構のロックを外すことで前方に開くことができる。
【0049】
消火栓扉18の上に設けた保守扉22は、扉ロック機構により閉止位置に閉じられており、点検時に消火栓扉18を開いて内側のロックを外すことで上側のヒンジを中心に上向きに開くことができる。
【0050】
扉開口部16の左側には通報装置扉24が設けられ、ここに赤色表示灯26、手動通報装置として機能する発信機28及び応答ランプ30が設けられ、また通報装置扉24の内側には電話ジャックが設けられている。
【0051】
赤色表示灯26は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、発信機28を押して押し釦スイッチをオンすると、火災通報信号が監視センターの防災受信盤に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が防災受信盤から送られて、応答ランプ30が点灯され、赤色表示灯26が点滅される。
【0052】
通報装置扉24の左側には開放可能な消火器扉32が設けられ、例えば2本の消火器が収納されている。消火器扉32にはハンドル34が設けられ、ハンドル34を手前に引くとラッチが外れて消火器扉32を左側に開くことができる。また、消火器扉32の下側には覗き窓35が設けられ、外部から消火器の収納状態の有無を確認可能としている。
【0053】
消火栓装置10には車両センサ60,62が設置されている。車両センサ60,62は保守扉22の開閉を妨げることのない上部左右の化粧14aの部分に固定設置されている。
【0054】
消火栓装置10の消火栓側となる化粧板14aは例えば1.1メートル程度の横幅があり、車両センサ60,62の設置間隔は1.0メートル程度に設定される。車両センサ60,62は消火栓装置10の前の道路(手前の車線)を通過する車両に対し、まず車両センサ60が通過車両を検出し、続いて、車両センサ62が同じ通過車両を検出する。
【0055】
なお、車両センサ60は、消火器扉32の開閉を妨げることのない上部左端の化粧板14bの部分に設置しても良い。
【0056】
(内部構造の概略)
図3に示すように、筐体12の略中央にはホース収納空間36が形成され、その右側にバルブ類収納空間38が形成されている。
【0057】
ホース収納空間36には、フレームパイプにより構成されたホースバケット40が設けられる。ホースバケット40には、複数本のフレームパイプが縦横に配置され、中央下側に矩形のホース取出口42が仕切り形成されている。
【0058】
ホースバケット40及び筐体内壁で囲まれたホース収納空間36にはホース44が内巻きして収納されている。ここで、ホース収納空間36へのホース44の巻き込みは、扉開口部16から見て右巻きとなるようにホース44を巻き込んでいる。
【0059】
ホース44の先端にはノズル46が装着され、ノズル46は放水部とハンドルから構成されており、ホースバケット40の右端に設けたノズルホルダ48に着脱自在に保持されている。
【0060】
ホース収納空間36の右側に形成したバルブ類収納空間38には、ポンプ設備からの配管が接続される消火栓接続口52からホース44に至る配管系統に、給水弁50、消火栓弁開閉レバー54aを備えた消火栓弁、自動調圧弁、自動排水弁、及びメンテナンス装置58が設けられている。
【0061】
保守扉22は保守点検以外に、火災時に消防隊により開放され、給水弁50とポンプ起動スイッチ96を露出させることで、給水栓に消防ホースを連結して給水弁50を開き、ポンプ起動スイッチ96を操作することで消火ポンプ設備を遠隔起動して消火用水を供給させる。
【0062】
[トンネル非常用設備の概要]
図4は防災受信盤により監視制御を行う消火栓装置を備えたトンネル用非常設備の概略を示した説明図である。
【0063】
図4に示すように、トンネル100の内部には、トンネル長手方向に、車両センサ60,62が設けられた消火栓装置10が50メートル間隔で設置されている。
【0064】
また、トンネル100内には、消火栓装置10以外の非常用設備として、火災による炎を検知するため火災検知器が所定間隔で設けられ、火災通報のために手動通報装置や非常電話が設けられ、更にトンネル躯体やダクト内を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧などが設置されるが、図示を省略している。
【0065】
監視センター等には防災受信盤70が設置されており、防災受信盤70からはトンネル100に対し伝送路72が引き出され、トンネル100内に設置された消火栓装置10が接続されている。伝送路72はFTTH等の光ファイバー伝送路や同軸伝送路が使用され、例えばIPパケット等を用いたデジタル伝送が行われる。
【0066】
また、防災受信盤70に対しては、消火ポンプ設備74、ダクト用の冷却ポンプ設備76、換気設備78、警報表示板設備80、ラジオ再放送設備82、テレビ監視設備84、照明設備86及びIG子局設備88等が設けられており、IG子局設備88がデータ伝送回線で接続される点を除き、それ以外の設備はP型信号回線により防災受信盤70に個別に接続されている。
【0067】
ここで、換気設備78は、トンネル内の天井側に設置されているジェットファンの運転による高い吹き出し風速によってトンネル内の空気にエネルギーを与えて、トンネル長手方向に換気の流れを起こす設備である。
【0068】
警報表示板設備80は、トンネル内の利用者に対して、トンネル内の異常を、電光表示板に表示して知らせる設備である。ラジオ再放送設備82は、トンネル内で運転者等が道路管理者からの情報を受信できるようにするための設備である。テレビ監視設備84は、火災の規模や位置を確認したり、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合のトンネル内の状況を把握するための設備である。
【0069】
照明設備86はトンネル内の照明機器を駆動して管理する設備である。更に、IG子局設備88は、防災受信盤70と外部に設けた上位設備である遠方監視制御設備90とをネットワーク92を経由して結ぶ通信設備である。
【0070】
[トンネル交通流監視システム]
図5図2の防災受信盤と消火栓制御装置の機能構成を示したブロック図であり、トンネル交通流監視システムとしての機能を備える。
【0071】
(消火栓装置の制御機構)
図5に示すように、消火栓装置10には、消火栓制御部126と伝送部128が設けられる。伝送部128は防災受信盤70との間でIPパケットの送受信を行う。このため伝送部128には固有のIPアドレスが設定されている。
【0072】
消火栓制御部126は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0073】
消火栓制御部126に対しては、車両センサ60,62、赤色表示灯26、発信機28、応答ランプ30、消火栓開放検出スイッチ94及びポンプ起動スイッチ96が接続される。
【0074】
消火栓制御部126は、発信機28の操作による信号を入力すると、伝送部128に指示して防災受信盤70に火災通報信号を送信させる制御を行う。
【0075】
また、消火栓装置10からの火災通報信号を受信した防災受信盤70は火災警報を出力させると共に応答確認信号を送信してくることから、消火栓制御部126は防災受信盤70からの確認応答信号を受信して応答ランプ30を点灯させ、赤色表示灯26を点滅させる制御を行う。
【0076】
また、消火栓制御部126は、消火栓開放検出スイッチ94のオン又はポンプ起動スイッチ96のオン操作による信号を入力すると、伝送部128に指示して防災受信盤70にポンプ起動信号を送信させ、図4に示した消火ポンプ設備74を起動させる制御を行う。
【0077】
(車両センサ)
消火栓装置10に設置された車両センサ60,62としては、磁気センサ、超音波センサ又は赤外線センサを用いることができる。磁気センサは車両の通過に伴う磁気変化を検出する。超音波センサは道路に向けて超音波送信器から超音波を送信し、車両の通過に伴う反射波を超音波受信器で受信して車両を検出する。赤外線センサは発光器から赤外線を道路に向けて照射し、車両の通過に伴う反射波を受光器で受信して車両を検出する。
【0078】
図6は車両センサの検出信号を示したタイムチャートであり、図6(A)は車両センサ60の検出信号を示し、図6(B)は車両センサ62の検出信号を示す。
【0079】
消火栓装置10の前の道路を車両が通過すると、時刻t1で車両センサ60からの検出信号がHレベルに立ち上がり、車両が通過しているあいだHレベルを維持し、時刻t3で立ち下がる。
【0080】
また、車両センサ60の検出信号が時刻t1でHレベルに立ち上がると、これに続く時刻t2で車両センサ62の検出信号がHレベルに立ち上がり、車両が通過しているあいだHレベルを維持し、時刻t4で立ち下がる。
【0081】
このような車両センサ60,60の検出信号に基づき、通過車両の台数N、車速V及び車長VLを測定することができる。通過車両の台数Nは、例えば車両センサ60の検出信号の立上りに同期したパルスを生成してカウンタで計数すれば良い。
【0082】
車速Vは、車両センサ60,62の設置間隔をLとすると、車両センサ60,62の立上り時刻tt,t2の時間差ΔT1から次式で算出される。
V=L/ΔT1=L/(t1−t2) (式1)
車長VLは、車速Vと例えば車両センサ60の立上り時刻t1から立下り時刻t3までの時間差ΔT2から次式で算出される。
VL=V・ΔT2=V(t1−t3) (式2)
なお、車長VLは車両センサ62からも同様に求め、車両センサ60から求めた車長との平均値を算出することで、精度を高めても良い。
【0083】
(車両情報の測定)
再び図5を参照するに、消火栓制御部126には測定部130の機能が設けられる。測定部130は、車両センサ60,62の検出信号に基づいて、消火栓装置10の設置場所を通過する車両について、台数、車速及び車長を測定する。測定部130による台数の測定は、図6に示した例えば車両センサ60の検出信号の立上りに同期したパルスを生成してカウンタで計数する。また、測定部130による車速と車長の測定は前記(式1)及び(式2)による。
【0084】
また、測定部130は、所定の単位時間となる周期毎、例えば1分周期毎に、この周期内で測定された車速に基づき平均車速Vaを算出している。また、測定部130は、所定の周期のあいだに消火栓装置10の前を車両が通過していない場合には、前回周期で算出した平均車速を保持する。これによりトンネル内を車両が通行していない状態であっても、車両の通過があった周期で算出された平均車速が、新たな車両の追加があるまで、そのまま更新され続けることになる。
【0085】
更に、測定部130は、測定した車長から小型車、中型車、大型車を判別し、それぞれの台数を測定する。
【0086】
測定部130で測定された車速、平均車速、台数、車長を含む車両情報は、防災受信盤70から自己のIPアドレスを指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を伝送部128で受信した場合、その呼出応答信号に車両情報を設定して防災受信盤70に送信される。
【0087】
(防災受信盤の機能構成)
図5に示すように、防災受信盤70は盤制御部110を備え、盤制御部110は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0088】
盤制御部110に対しては伝送部112が設けられ、伝送部112から引き出された伝送路72にトンネル100内に50メートル間隔で設置された消火栓装置10が接続されている。
【0089】
盤制御部110に対しては、スピーカ、警報表示灯等を備えた警報部114、液晶ディスプレイ、プリンタ等を備えた表示部116、各種スイッチ等を備えた操作部118、外部監視設備と通信するIG子局設備88を接続するモデム120が設けられ、更に、図4に示した消火ポンプ設備74、冷却ポンプ設備76、換気設備78、警報表示板設備80、ラジオ再放送設備82、テレビ監視設備84及び照明設備86が接続されたIO部122が設けられている。
【0090】
盤制御部110は、伝送部112に指示してトンネル内に設置された火災検知器のアドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を繰り返し送信しており、火災検知器は自己アドレスに一致する呼出信号を受信すると、火災検知等の自己の状態情報を含む応答信号を返信する。
【0091】
(トンネル通行状態の判断)
盤制御部110は、交通判断部124の機能が設けられる。交通判断部124は、消火栓装置10に対する呼出信号の送信に対し、消火栓装置10の測定部130で測定された車両情報を含む応答信号を受信した場合、受信した車両情報に基づきトンネル内の車両交通状態を判断して報知させる制御を行う。
【0092】
交通判断部124によるトンネル内の車両交通状態の報知は、表示部116に設けられた液晶ディスプレイによる表示、プリンタによる印刷出力、警報部114による警報出力、外部設備に対する移報出力等の様々の形態が含まれる。
【0093】
(トンネル内の平均車速分布)
交通判断部124は、消火栓装置10の測定部130で算出された単位時間当りの平均車速に基づき、トンネル内における平均車速の分布を生成し、例えば、表示部116のディスプレイや監視センターに設置されている監視用のディスプレイに、トンネル内の平均車速分布をグラフにより表示させる制御を行う。
【0094】
図7は通常走行状態と低速車両走行状態におけるトンネル内の平均車速分布を示した説明図、図8は渋滞発生状態と車両停止状態におけるトンネル内の平均車速分布を示した説明図であり、トンネル長を1キロメートル(1000メートル)とした場合を例にとっており、消火栓装置10は50メートル間隔で設置されていることから、夫々に設けられた車両センサ60,62の検出信号に基づき、50メートル間隔で平均車速が求められ、例えば、速度を示す棒グラフの分布として表示されている。
【0095】
図7(A)は、平均車速のトンネル内分布が制限速度となる例えば時速80キロメートル付近に分布しており、この平均車速分布からトンネル内では渋滞が起きることなく、順調に車両の通行が行われていることが判断できる。
【0096】
図7(B)は、トンネル入口から500メートル付近で平均車速が時速60キロメートル付近に落ち込み、これに近い平均車速分布がトンネル入口側まで続く低速分布140となっており、一方、500メートルから先は時速80キロメートルを超える平均車速の分布となっており、この平均車速の分布は時間の経過に伴いトンネル出口側へ移動していく変化となる。
【0097】
このような図7(B)の低速分布140が現れる平均速度分布は、トンネル内を大型トレーラ等の特殊車両が低速で走行していることが想定される。このような場合には、例えば管理担当者の操作により、警報表示板設備80の電光表示板に「低速車両走行中」といった警報表示を行って利用者に通行状態を知らせることになる。
【0098】
図8(A)は、トンネル入口から500メートル付近で平均車速が時速40キロメートル付近に落ち込み、その手前から時速40キロメートルより更に低い平均車速分布がトンネル入口側まで続いている。ここで、高速道路における渋滞現象が、「時速40キロメートル以下で1キロメートルの車列の延長が15分以上継続した状態」と定義されていることから、トンネル入口側の状態は渋滞分布150であることが予想される。一方、500メートルから先は時速40キロメートルを超える平均車速の分布となっている。
【0099】
このように渋滞分布150が確認された場合には、例えば管理担当者の操作により、警報表示板設備80の電光表示板に「渋滞中」といった警報表示を行って利用者に通行状態を知らせることになる。
【0100】
ここで、図8(A)に示す渋滞分布150が時間の経過に伴いトンネル出口側へ移動していく場合は、トンネル内で渋滞が進行している状態を表している。これに対し図8(A)に示す渋滞分布150が時間の経過に伴いトンネル入口側へ移動していく場合は、トンネル内での渋滞が解消していく状態を表している。
【0101】
図8(B)は、トンネル入口から650メートル付近からトンネル入口までの平均速度分布が時速ゼロキロメートル付近となる車両停止分布160となっており、一方、650メートルから先は時速80キロメートルを超える平均車速の分布となっている。この平均車速分布は、トンネル入口から650メートル付近で車両事故又は車両故障が発生し、後続する車両が停止した状態を表している。
【0102】
このように車両停止分布160が確認された場合には、例えば管理担当者の操作により、警報表示板設備80の電光表示板に「入口から650メートル付近で事故発生」といった警報表示を行って利用者に知らせることになる。
【0103】
なお、事故発生場所である650メートルから先の平均車速の分布は、事故発生場所から先にいた車両がトンネルを出て通行車両がいなくなり、リアルタイムで平均車速が求められない状態となっても、それ以前に求められた平均車速の分布が表示されている。
【0104】
このように交通判断部124によれば、消火栓装置10毎に求められた平均車速に基づき、消火栓装置10の設置間隔で決まる例えば50メートル間隔毎の平均車速の分布をリアルタイムで監視センターなどで表示され、監視員がトンネル内における平均車速内分布を監視することで、トンネル全体としての車両の通行状態を高い精度で把握することが可能となる。
【0105】
(トンネル内の渋滞監視)
また、防災受信盤70に設けられた交通判断部124は、トンネル全長に対応して渋滞が発生する所定の閾値台数Nthを設定し、消火栓装置10の測定部130で測定された車両情報から求めたトンネル内を通行している車両の台数が閾値台数Nth以上となった場合に、渋滞発生を予想して報知させる制御を行う。
【0106】
ここで、交通判断部124は、トンネル内を通行している車両の台数ΔNを、トンネル入口に最も近い消火栓装置10の測定部130で測定された車両台数Ninから、トンネル出口に最も近い消火栓装置10の測定部130で測定された車両台数Noutを差し引いて求める。
ΔN=Nin−Nout (式3)
また、交通判断部124は、渋滞発生を予想するための閾値台数Nthとして、セルオートマトン(Cellular Automaton)法で予測された「1キロメートルの区間に25台以上の車両が存在した場合に渋滞が発生する」とした所定の渋滞発生基準に基づいて設定する。
【0107】
例えばトンネル長が1キロメートルの場合、渋滞予測の閾値台数NthはNth=25台となり、2キロメートルではNth=50台となる。また、500メートルではNth=12.5台となるが、整数化してNth=13台となる。更に、200メートルではNth=5台となる。
【0108】
このような渋滞予測の閾値台数は、セルオートマトン法による交通流モデルのシミュレーションから求められた値であり、従来の微分方程式を出発点としたアプローチでは予測困難な渋滞現象を正確に予測することを可能とする。
【0109】
(トンネル内を区間分割した渋滞監視)
また、交通判断部124は、トンネル内を消火栓装置10の設置間隔の倍数Kの長さとなる複数の渋滞監視区間に分割すると共に、渋滞監視区間の長さKLに対応して渋滞が発生する所定の区間閾値台数KNthをセルオートマトン法に基づいて設定し、渋滞監視区間内を通行している車両の台数が区間閾値台数KNth以上となった場合に、渋滞発生を予想して渋滞監視区間単位に報知させる制御を行う。
【0110】
ここで、交通判断部124は、渋滞監視区画内を通行している車両の台数ΔKNを、区間入口の消火栓装置10の測定部130で測定された車両台数KNinから、区間出口の消火栓装置10の測定部130で測定された車両台数KNoutを差し引いて求める。
ΔKN=KNin−KNout (式4)
例えばトンネル入口側の消火栓装置10からトンネル出口側の消火栓装置10までの距離で決まるトンネル長を1キロメートルとした場合、これを200メートル単位の5つの渋滞監視区間に分割する。この場合の渋滞予測の区画閾値台数KNthは、セルオートマトン法によるとKNth=5台となる。
【0111】
このため交通判断部124は、各渋滞監視区画につき前記(式4)から区画内の車両台数ΔKNを算出し、渋滞予測の区画閾値台数KNth=5台以上を判断した場合に、その区間について渋滞発生を予測報知させる。
【0112】
これによりトンネル内を複数区間に分けて渋滞状態を監視可能であり、特に、数キロメートルを超えるような長いトンネル内における渋滞状態を高い精度で把握することが可能となる。
【0113】
(車両の停止監視)
また、交通判断部124は、消火栓装置10に設けた車両センサ60,62の検出信号から測定部130で測定された車両情報に基づいてトンネル内での車両の停止を判断して報知させる制御を行う。
【0114】
ここで、トンネル内を車両が走行している場合の車間停止間隔は40メートル程度となり、一方、トンネル内で車両が停止した場合の車間停止間隔は15メートル程度となることが知られている。
【0115】
そこで、交通判断部124は、トンネル内を通行中の車両が停止した場合に予想される所定の車両停止間隔、例えば15メートルと、消火栓装置10の設置間隔、例えば50メートルとの最小公倍数となる設置間隔、例えば150メートル間隔で配置された消火栓装置10を停止車両監視用に設定し、停止車両監視用の消火栓装置10に対応した車両情報に基づいて、トンネル内の停止車両を判断して報知させる制御を行う。
【0116】
この場合、交通判断部124は、停止車両監視用の消火栓装置10に設けられた車両センサ60,62から所定時間を超えて検出信号が継続的に出力されている場合に車両停止と判断して報知する制御を行う。このため、車両事故や火災を伴う車両事故の発生によりトンネル内に停止している車両の状態が高い精度で把握可能となり、避難誘導や消防活動等の対処がより適切に行われることを可能とする。
【0117】
なお、車両センサの故障により検出信号が継続的に出力される場合が想定されるが、この場合には、故障した車両センサを配置した消火栓装置の消火栓判断部のみが車両停止を判断しており、それ以外の車両センサが正常に動作している消火栓装置の消火栓判断部は車両停止を判断しておらず、このため監視センターの防災受信盤に設けられた交通判断部は、車両停止を判断した消火栓装置に設けられた車両センサの故障と判断し、トンネル内の車両停止を誤って報知することはない。
【0118】
また、トンネル内に設けられた車両停止帯に面して消火栓装置が設置されている場合、車両停止帯に休憩車両や故障車両等が停止すると、車両センサから検出信号が継続的に出力される場合が想定されることから、車両停止帯に位置する消火栓装置に設けた車両センサは、その検出エリアに車両停止帯が入らないように設置する必要がある。
【0119】
[本発明の変形例]
(消火栓装置の設置間隔)
上記の実施形態は、トンネル内に50メートル間隔で配置した消火栓装置10の全てに車両センサを設けて車両情報を測定しているが、これに限定されない。例えば、100メートル間隔、150メートル間隔、200メートル間隔等のように、車両センサを設けて車両情報を測定する消火栓装置を定めるようにしても良い。
【0120】
また、上記の実施形態は、消火栓装置毎に一対の車両センサを設置しているが、これに限定されない。例えば、消火栓装置毎に1台の車両センサを設け、隣接する消火栓装置に設けた一対の車両センサに基づいて、台数、車速及び車長を測定するようにしても良い。
【0121】
(速度分布の表示)
上記の実施形態は、消火栓装置毎に平均車速を求め、トンネル内での平均車速分布を表示して車両通行状態を判断できるようにしているが、これに限定されない。例えば、オーバースピードを判定する制限速度閾値、例えば時速120キロメートルを設定し、制限速度閾値を超える車速が測定された場合に、図7及び図8に示した平均速度分布のグラフ表示を利用して、オーバースピード棒グラフを消火栓単位に表示し、このオーバースピード棒グラフは、時間の経過に伴ってトンネル内を移動していく表示となり、トンネル内をオーバースピードで走行している車両を追跡表示させるようにしても良い。
【0122】
(複数車線の監視)
また、上記の実施形態は、トンネル内の2車線のうち、消火栓装置に近い手前の車線を走行する車両を車両センサで検出して車両情報を測定しているが、これに限定されない。例えば、消火栓装置の設置場所となるトンネル壁の高い位置又は反対側のトンネル壁に、外側の車線を検出エリアとする一対の車両センサを別に設け、2車線の各々について車両情報を測定して車両交通状態を判断して報知させるようにしても良い。
【0123】
(車両センサの設置場所)
上記の実施形態は、消火栓装置に車両センサを設置しているが、これに限定されない。例えば、トンネル内に照明装置が設置されていることから、所定間隔の照明装置毎に車両センサを設置しても良い。
【0124】
また、車速センサは、トンネル内に設置されている消火器箱、トンネル火災検知器、自動弁装置、水噴霧設備等に設置しても良し、異なる機器の車速センサを設置して組み合わせるようにしても良い。
【0125】
(その他)
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0126】
10:消火栓装置
12:筐体
14a,14b:化粧
16,17:扉開口部
18:消火栓扉
36:ホース収納空間
38:バルブ類収納空間
40:ホースバケット
42:ホース取出口
44:ホース
46:ノズル
50:給水弁
58:メンテナンス装置
60,62:車両センサ
70:防災受信盤
72:伝送路
100:トンネル
102:トンネル壁面
104:道路
106:監視員通路
108:給水本管
110:盤制御部
112,128:伝送部
124:交通判断部
128:消火栓制御部
130:測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8