特許第6983634号(P6983634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983634
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ディスクブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/226 20060101AFI20211206BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   F16D55/226 104F
   F16D65/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-227828(P2017-227828)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-100349(P2019-100349A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長島 史朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸二
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特表平04−502058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクへブレーキパッドを押圧するピストンが挿入されるシリンダ孔を有するシリン ダ部と、
該シリンダ部から延出して形成されるブリッジ部と、
該ブリッジ部の延出先端側に形成されて前記シリンダ部に対向配置される爪部と、
を有するディスクブレーキにおいて、
前記ブリッジ部の前記シリンダ部側のディスク周方向の両端部に、前記ブリッジ部のディスク軸方向に沿う面部よりもディスク周方向に突出する一対のシリンダ側膨出部であって、前記ブリッジ部の前記シリンダ部との境界領域に設けられ、前記ブリッジ部のディスク軸方向の位置が前記シリンダ部と重なる位置に設けられた前記一対のシリンダ側膨出部と、
前記ブリッジ部の前記爪部側のディスク周方向の両端部に、前記ブリッジ部のディスク軸方向に沿う面部よりもディスク周方向に突出する一対の爪部側膨出部であって、前記ブリッジ部の前記爪部との境界領域に設けられ、前記ブリッジ部のディスク軸方向の位置が前記爪部と重なる位置に設けられた前記一対の爪部側膨出部と、
を備えており、
前記一対のシリンダ側膨出部には、ディスク径方向外側から内側に向けて凹んだ一対のシリンダ側凹部を備え、
前記一対の爪部側膨出部の少なくとも1つには、ディスク径方向外側から内側に向けて凹んだ爪部側凹部を備えた
ことを特徴とするディスクブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキにおいては、ピストンを収容および突出させるシリンダ部と、ピストンによって生じる押圧力に対する反力を受ける爪部と、ロータの外周よりも外側を跨いでシリンダ部と爪部とを接続する背肉部とを有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−98848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブリッジ部に対する、爪部およびシリンダ部の少なくともいずれか一方の開きを抑制することが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、ブリッジ部に対する、爪部およびシリンダ部の少なくともいずれか一方の開きを抑制することが可能なディスクブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ブリッジ部の爪部側およびシリンダ部側のうちの少なくともいずれか一方のディスク周方向の両端部に、前記ブリッジ部のディスク軸方向に沿う面よりもディスク周方向に突出する膨出部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブリッジ部に対する、爪部およびシリンダ部の少なくともいずれか一方の開きを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のディスクブレーキを示す断面図。
図2】実施形態のディスクブレーキを示す平面図。
図3】実施形態のディスクブレーキを示す正面図。
図4】実施形態のディスクブレーキを示す斜視図。
図5】実施形態のディスクブレーキを示す斜視図。
図6】実施形態のディスクブレーキを示す側面図。
図7】実施形態のディスクブレーキを示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態を図面を参照して以下に説明する。
【0010】
実施形態のディスクブレーキ10は、自動車等の車両に制動力を付与するものであり、具体的には四輪自動車の制動用のものである。図1に示すように、ディスクブレーキ10は、図示略の車輪と共に回転するディスク11の回転を止めることで車両を制動する。以下、ディスク11の中心軸線の方向をディスク軸方向、ディスク11の径方向をディスク径方向、ディスクの円周方向(回転方向)をディスク周方向と称す。
【0011】
ディスクブレーキ10は、キャリア12と、一対のブレーキパッド13,14と、キャリパ15と、図2に示す一対のピンブーツ16とを備えている。キャリア12は、ディスク11の外周側を跨いで配置されて車両の非回転部に固定される。図1に示す一対のブレーキパッド13,14は、ディスク11を挟んで両側に配置されて、キャリア12に、ディスク軸方向に移動可能となるように支持されている。一対のブレーキパッド13,14は、ディスク11の両面にそれぞれ対向する。キャリパ15は、キャリア12にディスク軸方向に移動可能となるように支持されており、一対のブレーキパッド13,14を挟持してこれらをディスク11の両面に押圧する。
【0012】
キャリパ15は、キャリパボディ20と、ピストン21と、ピストンシール22と、ピストンブーツ23と、図2に示す一対のスライドピン24とを有している。
【0013】
キャリパボディ20は、鋳造により一体成形された金属素材に加工を施すことにより形成されるものである。図1に示すように、キャリパボディ20は、シリンダ部26と、シリンダ部26から延出して形成されるブリッジ部27と、ブリッジ部27の延出先端側に形成されてシリンダ部26に対向配置される爪部28と、シリンダ部26から延出して形成される図2に示す一対の腕部29と、を有している。
【0014】
シリンダ部26は、図1に示すように、ディスク11のディスク軸方向の一側に対向配置されており、ブリッジ部27は、シリンダ部26のディスク径方向外側からディスク11の外周を跨ぐように延出している。爪部28は、ブリッジ部27のシリンダ部26とは反対側からディスク径方向内方に延出してディスク11のディスク軸方向の他側に対向配置されている。図2に示すように、一対の腕部29は、シリンダ部26からディスク周方向の両側に延出している。
【0015】
キャリパボディ20は、一対の腕部29に取り付けられたスライドピン24においてキャリア12にディスク軸方向に沿って移動可能に支持されている。一対のピンブーツ16はスライドピン24のキャリア12に摺接する部分を覆っている。
【0016】
図3に示すように、キャリパボディ20の爪部28には、ディスク径方向内側の端縁部からディスク径方向外側に凹むリセス100がディスク周方向に並んで2カ所形成されている。
【0017】
図2に示すように、キャリパボディ20のブリッジ部27には、ディスク周方向の両側にディスク軸方向に沿う略平坦な一対の面部101,102が形成されている。言い換えれば、これら面部101,102は、ブリッジ部27においてディスク周方向の両外側に向いている。ディスク11の中心軸線に直交してブリッジ部27およびキャリパボディ20のディスク周方向の中央を通る径方向基準線に対し、これら面部101,102は沿っており、互いに略平行となっている。
【0018】
ブリッジ部27は、一対の面部101,102を有するブリッジ本体部110と、一対の面部101,102のディスク軸方向の爪部28側に、一対の面部101,102からディスク周方向外側に突出して設けられた一対の爪部側膨出部111,112(膨出部)と、を備えている。言い換えれば、ブリッジ部27は、一対の面部101,102のディスク軸方向の爪部28側がディスク周方向外側に盛り上がるように肉盛りされている。
【0019】
図4に示すように、ブリッジ本体部110の一方の面部101のディスク軸方向の爪部28側に、この一方の面部101からディスク周方向外側に突出する一方の爪部側膨出部111が設けられており、図5に示すように、ブリッジ本体部110の他方の面部102のディスク軸方向の爪部28側に、この他方の面部102からディスク周方向外側に突出する他方の爪部側膨出部112が設けられている。一対の爪部側膨出部111,112は、ブリッジ部27におけるディスク周方向の両端部に形成されている。
【0020】
一対の爪部側膨出部111,112は、図6および図7に示すように、ブリッジ部27の爪部28との境界領域に配置されており、爪部28とディスク軸方向の位置を重ね合わせている。一対の爪部側膨出部111,112は、キャリパボディ20に、キャリア12に摺動可能に支持されるスライドピン24が取り付けられる一対の腕部29とは別に形成されている。
【0021】
一対の爪部側膨出部111,112のうちの一方の爪部側膨出部111には、図2図4図6に示すようにディスク径方向外側から内側に向けて窪んだ凹部115が形成されている。一対の爪部側膨出部111,112のうちの他方の爪部側膨出部112には、図2図5に示すように、凹部は形成されておらず、ブリッジ本体部110における爪部側膨出部112の近傍にディスク径方向外側から内側に向けて窪んだ凹部116が形成されている。
【0022】
凹部115は、図2図4に示すように、爪部側膨出部111とブリッジ本体部110との両方にわたって形成されている。凹部115は、径方向基準線に直交する面内で広がる底面121と、底面121のディスク軸方向のシリンダ部26側の端縁部から径方向基準線に沿って立ち上がる壁面122と、底面121のディスク周方向の径方向基準線側の端縁部から径方向基準線に沿って立ち上がる壁面123と、を有している。壁面122はディスク周方向に沿っており、壁面123はディスク軸方向に沿っている。
【0023】
底面121は、壁面122側と壁面123側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。壁面122は、底面121側と壁面123側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。壁面123は、底面121側と壁面122側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。
【0024】
凹部115は、底面121と壁面122とが爪部側膨出部111とブリッジ本体部110との両方にわたって形成されており、壁面123はその全体がブリッジ本体部110に形成されている。凹部115も、図6に示すように、爪部28とディスク軸方向の位置を重ね合わせている。
【0025】
凹部116は、図2図5に示すように、全体がブリッジ本体部110に形成されている。言い換えれば、凹部116は、その近傍の爪部側膨出部112には形成されていない。凹部116は、図3に示すように径方向基準線に対し傾斜してディスク径方向内側にV字状に凹む一対の底面131,132と、図2に示すように底面131,132のディスク軸方向のシリンダ部26側の両端縁部から径方向基準線に沿って立ち上がる壁面133と、図3に示すように一方の底面132のディスク周方向の径方向基準線側の端縁部から径方向基準線に沿って立ち上がる壁面134と、を有している。底面131,132はディスク軸方向に沿っており、壁面133はディスク周方向に沿っていて、壁面134はディスク軸方向に沿っている。
【0026】
底面131は、底面132側と壁面133側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。底面132は、底面131側と壁面133側と壁面134側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。壁面133は、底面131側と底面132側と壁面134側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。壁面134は、底面132側と壁面133側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。図7に示すように、凹部116も爪部28とディスク軸方向の位置を重ね合わせている。
【0027】
また、ブリッジ部27は、図2に示すように、一対の面部101,102のディスク軸方向のシリンダ部26側に、一対の面部101,102からディスク周方向外側に突出する一対の鏡面対称状のシリンダ部側膨出部141,142(膨出部)を備えている。言い換えれば、ブリッジ部27は、一対の面部101,102のディスク軸方向のシリンダ部26側がディスク周方向外側に盛り上がるように肉盛りされている。一対のシリンダ部側膨出部141,142も、キャリパボディ20に、キャリア12に摺動可能に支持されるスライドピン24が取り付けられる一対の腕部29とは別に形成されている。
【0028】
図4に示すように、ブリッジ本体部110の一方の面部101のディスク軸方向のシリンダ部26側に、この一方の面部101からディスク周方向外側に突出する一方のシリンダ部側膨出部141が設けられており、図5に示すように、ブリッジ本体部110の他方の面部102のディスク軸方向のシリンダ部26側に、この他方の面部102からディスク周方向外側に突出する他方のシリンダ部側膨出部142が設けられている。一対のシリンダ部側膨出部141,142は、ブリッジ部27におけるディスク周方向の両端部に形成されている。
【0029】
一対のシリンダ部側膨出部141,142は、図6および図7に示すように、ブリッジ部27のシリンダ部26との境界領域近傍に配置されており、シリンダ部26とディスク軸方向の位置を重ね合わせている。
【0030】
一対のシリンダ部側膨出部141,142には、図2図4図7に示すように、ディスク径方向外側から内側に向けて窪んだ一対の凹部145,146が形成されている。すなわち、シリンダ部側膨出部141に凹部145が、シリンダ部側膨出部142に凹部146が、それぞれ形成されている。
【0031】
凹部145は、図2図4に示すように、シリンダ部側膨出部141とブリッジ本体部110との両方にわたって形成されており、凹部146は、凹部145と鏡面対称状であって、図2図5に示すように、シリンダ部側膨出部142とブリッジ本体部110との両方にわたって形成されている。
【0032】
凹部145は、図2図6に示すように、径方向基準線に直交する面内で広がる底面151と、底面151のディスク軸方向の爪部28側の端縁部から径方向基準線に沿って立ち上がる壁面152と、底面151のディスク周方向の径方向基準線側の端縁部から径方向基準線に沿って立ち上がる壁面153と、を有している。壁面152はディスク周方向に沿っており、壁面153はディスク軸方向に沿っている。
【0033】
底面151は、壁面152側と壁面153側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。壁面152は、底面151側と壁面153側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。壁面153は、底面151側と壁面152側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。
【0034】
凹部145は、底面151と壁面152とがシリンダ部側膨出部141とブリッジ本体部110との両方にわたって形成されており、壁面153はその全体がブリッジ本体部110に形成されている。凹部145も、図6に示すように、シリンダ部26とディスク軸方向の位置を重ね合わせている。
【0035】
凹部146は、図2図7に示すように、径方向基準線に直交する面内で広がる底面161と、底面161のディスク軸方向の爪部28側の端縁部から径方向基準線に沿って立ち上がる壁面162と、底面161のディスク周方向の径方向基準線側の端縁部から径方向基準線に沿って立ち上がる壁面163と、を有している。壁面162はディスク周方向に沿っており、壁面163はディスク軸方向に沿っている。
【0036】
底面161は、壁面162側と壁面163側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。壁面162は、底面161側と壁面163側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。壁面163は、底面161側と壁面162側とを除く端縁部がキャリパボディ20の外部に臨む端縁部となっている。
【0037】
凹部146は、底面161と壁面162とがシリンダ部側膨出部142とブリッジ本体部110との両方にわたって形成されており、壁面163はその全体がブリッジ本体部110に形成されている。凹部146も、図7に示すように、シリンダ部26とディスク軸方向の位置を重ね合わせている。底面151と底面161とは同一平面に配置されている。
【0038】
図1に示すように、シリンダ部26は、爪部28側に向けて一端が開口しディスク軸方向のディスク11とは反対側に向けて凹む形状のシリンダ孔35を有している。シリンダ部26には、シリンダ孔35が複数、具体的には2カ所設けられている(図1において断面とした関係上1カ所のみ図示)。これらのシリンダ孔35は、同形状であり、ディスク軸方向およびディスク径方向の位置を合わせ、ディスク周方向の位置をずらして、ディスク周方向に並んで設けられている。
【0039】
爪部28側に向けて開口する複数のシリンダ孔35が形成されることにより、シリンダ部26は、爪部28とは反対側に、複数のシリンダ孔35のそれぞれの内底部38を含むシリンダ底部39を有しており、シリンダ底部39から爪部28側に延出して、複数のシリンダ孔35のそれぞれの内壁41を含むシリンダ胴部42を有している。シリンダ孔35は、内壁41のシリンダ底部39とは反対側に開口43を有している。開口43はシリンダ部26の開口でもある。
【0040】
シリンダ孔35には、それぞれ、ディスク11へブレーキパッド13,14を押圧するピストン21がディスク軸方向に摺動可能となるように挿入されている。シリンダ部26の内壁41の内壁内周面部50は、ピストン21の移動を案内する、全長にわたって一定内径の円筒面であるガイド内周面部51を有している。
【0041】
シリンダ孔35の内壁41は、ガイド内周面部51よりもシリンダ底部39側に、ガイド内周面部51よりもシリンダ孔35の径方向の外方に凹む円環状の大径溝52を有している。シリンダ孔35の内壁41は、ガイド内周面部51の開口43側の中間位置に、ガイド内周面部51よりもシリンダ孔35の径方向の外方に凹む円環状のシール溝55を有している。シリンダ孔35の内壁41には、シール溝55よりも開口43側に、ガイド内周面部51よりもシリンダ孔35の径方向の外方に凹む円環状の段部60が形成されている。
【0042】
大径溝52およびこれに繋がる内底部38は、キャリパボディ20の素材の鋳造時に鋳出しされており、ガイド内周面部51、シール溝55および段部60は、キャリパボディ20の素材のシリンダ孔35の下穴に、切削加工を施すことによって形成されている。爪部28の一方のリセス100は、一方のシリンダ孔35とディスク径方向およびディスク周方向の位置を重ね合わせており、他方のリセス100は、他方のシリンダ孔35とディスク径方向およびディスク周方向の位置を重ね合わせている。これらリセス100を介して一対のシリンダ孔35内に切削加工用の工具が挿入される。
【0043】
シリンダ底部39には、シリンダ孔35内に開口するように、シリンダ孔35の軸方向に沿って貫通する図示略の配管穴が形成されている。配管穴は、キャリパボディ20の素材に切削加工を施すことによって形成されている。配管穴には、図示略のブレーキ配管が接続される。
【0044】
ピストン21は、円板状のピストン底部71と円筒状のピストン胴部72とを備えている。ピストン21は、ピストン胴部72のピストン底部71とは反対側の端部が開口された有底筒状に形成されている。ピストン胴部72は、円筒面からなる外径面74を有している。ピストン胴部72には、ピストン底部71と反対の先端側に、円筒面からなる外径面74よりも径方向内方に凹む円環状の嵌合溝75が全周にわたって形成されている。
【0045】
ピストン21は、ピストン底部71がシリンダ孔35内でシリンダ底部39側に位置するようにシリンダ孔35に収容されており、この状態で、爪部28側の先端がシリンダ孔35よりも爪部28側に突出する。ピストン21には、シリンダ孔35のガイド内周面部51よりも突出する先端側に嵌合溝75が形成されている。
【0046】
ピストンシール22は、弾性材料製、具体的にはゴム製であり、シリンダ孔35のシール溝55に締め代をもって嵌合されている。このピストンシール22の内周側にピストン21が締め代をもって嵌合されている。ピストンシール22は、径方向に弾性変形してピストン21の外径面74およびシール溝55に密着してシリンダ部26のシリンダ孔35とピストン21との間をシールする。また、ピストンシール22は、シリンダ孔35のガイド内周面部51とでピストン21の外径面74をシリンダ孔35の軸方向に移動可能に支持する。ピストンシール22は、シリンダ孔35およびピストン21とで液圧室78を形成することになり、図示略の配管穴に接続されたブレーキ配管を介して、この液圧室78に対するブレーキ液の給排が行われる。
【0047】
ピストンブーツ23は、伸縮可能な筒状体であり、蛇腹状の伸縮部81と、伸縮部81の一端側に形成された環状の固定部82と、伸縮部81の他端側に形成された環状の嵌合部83と、を有している。ピストンブーツ23は、シリンダ部26の段部60に一端の固定部82が嵌合固定され、他端の嵌合部83がピストン21の嵌合溝75に嵌合固定される。この状態で、ピストンブーツ23は、ピストン21の嵌合溝75よりもピストン底部71側の外径面74のガイド内周面部51から突出する部分を覆っており、ピストン21のシリンダ孔35に対する移動に伴って伸縮部81が伸縮する。
【0048】
ディスクブレーキ10は、図示略のブレーキペダルが操作されると、図示略の配管穴に連結された図示略のブレーキ配管を介して液圧室78にブレーキ液が導入される。すると、ピストン21のピストン底部71にシリンダ底部39から離れる方向にブレーキ液圧が作用する。その結果、ピストン21が、シリンダ孔35に対しディスク11側に前進し、ピストン21とディスク11との間に配置されたブレーキパッド13をディスク11に向かって押圧する。これにより、このブレーキパッド13が移動してディスク11に接触する。
【0049】
また、ブレーキパッド13をディスク11に押圧する反力で、キャリパボディ20が、一対のスライドピン24においてキャリア12に対して摺動し、爪部28が、爪部28とディスク11との間に配置されたブレーキパッド14をディスク11に向かって押圧する。これにより、このブレーキパッド14が、ディスク11に接触する。このようにして、キャリパ15は、ピストン21の作動により、ピストン21と爪部28とで一対のブレーキパッド13,14を両側から挟持してディスク11の両面に押圧する。その結果、キャリパ15は、ディスク11に摩擦抵抗を付与して、制動力を発生させる。
【0050】
上記した特許文献1に記載のディスクブレーキは、ピストンを収容および突出させるシリンダ部と、ピストンによって生じる押圧力に対する反力を受ける爪部と、ロータの外周よりも外側を跨いでシリンダ部と爪部とを接続する背肉部とを有している。ところで、ディスクブレーキにおいては、制動時にピストンと爪部とで一対のブレーキパッドを両側から挟持してディスクの両面に押圧する。このとき、ブリッジ部と爪部との間と、ブリッジ部とシリンダ部との間に、互いのなす角の角度が大きくなる方向に力が加わって、この方向に変形する開きを生じてしまう可能性がある。このような開きが生じると、ピストンの押圧力の伝達効率が低下するため、この低下分を考慮してキャリパボディを大きく成形しておく必要があり、ディスクブレーキが大型化する。また、この開きが生じる場合、ディスクの被押圧面に対して、爪部のパッド当接面やシリンダ部の開口面が傾く状態となる。このため、開きが生じた状態でブレーキパッドをディスクに押圧していると、ライニングのディスク径方向外側部位の摩耗が、ディスク径方向内側部位よりも促進され、いわゆるブレーキパッドの偏摩耗が生じる。
【0051】
これに対し、実施形態のディスクブレーキ10は、ブリッジ部27の爪部28側のディスク周方向の両端部に、ブリッジ部27のディスク軸方向に沿う面部101,102よりもディスク周方向に突出する爪部側膨出部111,112が形成されているため、ブリッジ部27と爪部28との間の剛性が高くなり、従来、制動時にブリッジ部27と爪部28との間に生じていた開きを抑制することができる。また、ブリッジ部27のシリンダ部26側のディスク周方向の両端部に、ブリッジ部27のディスク軸方向に沿う面部101,102よりもディスク周方向に突出するシリンダ部側膨出部141,142が形成されているため、ブリッジ部27とシリンダ部26との間の剛性が高くなり、従来、制動時にブリッジ部27とシリンダ部26との間に生じていた開きを抑制することができる。
【0052】
また、ブリッジ本体部110と、ブリッジ本体部110からディスク周方向に突出する爪部側膨出部111とにかけて、ディスク径方向外側から内側に向けて窪んだ凹部115が形成されており、この凹部115は、径方向基準線に対し直交する面内で広がる底面121が、爪部側膨出部111に形成される分、ディスク周方向の長さが長くなっている。加えて、ブリッジ本体部110と、ブリッジ本体部110からディスク周方向に突出するシリンダ部側膨出部141とにかけて、ディスク径方向外側から内側に向けて窪んだ凹部145が形成されており、この凹部145も、径方向基準線に対し直交する面内で広がる底面151が、シリンダ部側膨出部141に形成される分、ディスク周方向の長さが長くなっている。加えて、ブリッジ本体部110と、ブリッジ本体部110からディスク周方向に突出するシリンダ部側膨出部142とにかけて、ディスク径方向外側から内側に向けて窪んだ凹部146が形成されており、この凹部146も、径方向基準線に対し直交する面内で広がる底面161が、シリンダ部側膨出部142に形成される分、ディスク周方向の長さが長くなっている。
【0053】
よって、例えば、加工機が、キャリパボディ20をこれら底面121,151,161の三点を含んで支持して加工を行う場合、これら支持点をブリッジ本体部110よりもディスク周方向外側にずらしてもキャリパボディ20を支持することができる。よって、ブリッジ本体部110よりもディスク周方向の幅が広いブリッジ部を有する他のキャリパボディと同じ加工機で加工する場合に、キャリパボディ20と、他のキャリパボディとを共通の支持点に支持させることが可能となる。したがって、加工機において、少なくともこれら3カ所の支持点を変更する必要がなくなり、キャリパボディ20と他のキャリパボディとの間の段取り替えに要する工数を減らすことができる。このように、ブリッジ本体部110よりもディスク周方向の幅が広いブリッジ部を有する他のキャリパボディと加工時の支持点の共通化を図っても、キャリパボディ20の重量増は、爪部側膨出部111,112およびシリンダ部側膨出部141,142の分だけとなり、重量増を抑制することができる。
【0054】
ここで、実施形態のディスクブレーキ10は、ブリッジ部27の爪部28側およびシリンダ部26側の両方のディスク周方向の両端部に、ブリッジ部27のディスク軸方向に沿う面部101,102よりもディスク周方向に突出する爪部側膨出部111,112およびシリンダ部側膨出部141,142を備えているが、爪部側膨出部111,112のみを備えていても良く、シリンダ部側膨出部141,142のみを備えていても良い。すなわち、ブリッジ部27の爪部28側およびシリンダ部26側のうちの少なくともいずれか一方のディスク周方向の両端部に、ブリッジ部のディスク軸方向に沿う面部よりもディスク周方向に突出する膨出部を備えていれば良い。
【0055】
以上に述べた実施形態のディスクブレーキの第1の態様は、ディスクへブレーキパッドを押圧するピストンが挿入されるシリンダ孔を有するシリンダ部と、該シリンダ部から延出して形成されるブリッジ部と、該ブリッジ部の延出先端側に形成されて前記シリンダ部に対向配置される爪部と、を有するディスクブレーキにおいて、前記ブリッジ部の前記爪部側および前記シリンダ部側のうちの少なくともいずれか一方のディスク周方向の両端部に、前記ブリッジ部のディスク軸方向に沿う面部よりもディスク周方向に突出する膨出部を備える。これにより、ブリッジ部に対する、爪部およびシリンダ部の少なくともいずれか一方の開きを抑制することが可能となる。
【0056】
第2の態様は、第1の態様において、前記膨出部には、ディスク径方向外側から内側に向けて窪んだ凹部が形成されている。
【0057】
第3の態様は、第1の態様において、前記膨出部とディスク軸方向において重なる位置であって、ディスク周方向に隣接する位置に、ディスク径方向外側から内側に向けて窪んだ凹部が形成されている。
【符号の説明】
【0058】
10 ディスクブレーキ
11 ディスク
13,14 ブレーキパッド
21 ピストン
26 シリンダ部
27 ブリッジ部
28 爪部
35 シリンダ孔
111,112 爪部側膨出部(膨出部)
115,145,146 凹部
141,142 シリンダ部側膨出部(膨出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7