(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源からの光を被検物に入射させ、該被検物から出射した被検光をマイクロレンズアレイに入射させて複数のスポット像を形成し、該複数のスポット像を撮像素子で撮像するステップと、
前記複数のスポット像と前記マイクロレンズアレイの複数のマイクロレンズとを任意に対応付けて前記被検光の仮の波面傾斜を算出するステップと、
前記仮の波面傾斜に基づいて前記複数のスポット像と前記複数のマイクロレンズとの対応付けを変更して前記被検光の波面を算出するステップを含むことを特徴とする計測方法。
前記演算手段は、前記複数のスポット像と前記複数のマイクロレンズとを任意に対応付けるとき、前記被検光が入射する1つのマイクロレンズを基準レンズとして選択し、前記複数のスポット像の1つである任意のスポット像を前記基準レンズに対応付け、前記任意のスポット像と前記基準レンズの対応を起点として、前記複数のスポット像と前記複数のマイクロレンズとを対応付けることを特徴とする請求項15に記載の計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施例1]
本発明を実施するための形態を、図面に基づいて説明する。
【0020】
[形状計測装置の説明]
本実施例では、カセグレン光学系を構成するミラーの形状の計測に適した計測装置100を示す。
図1は、形状計測装置100の模式図である。この装置は、光源109、光源109の出射光を導く光ファイバー109a、光ファイバー109aを透過した光を球面波に変換し、測定光110として被検ミラー112の被検面112aに向けて出射するファイバーコネクター109bを備える。また、被検面112aからの反射光を折り返すビームスプリッター108と、ビームスプリッター108で折り返された光を略平行な光に変換するコリメータレンズ106とを備える。
【0021】
また、形状計測装置100は、コリメータレンズ106で変換された略平行な光を被検光とする波面計測装置として、シャックハルトマンセンサー(SHS)101を備える。コリメータレンズ106は、被検面112aの反射光を倍率Mでシャックハルトマンセンサー101の受光面に結像している。すなわち、被検面112aとシャックハルトマンセンサー101の受光面は、コリメータレンズ106を介して光学的に互いに共役な位置関係にある。
【0022】
また、形状計測装置100は、シャックハルトマンセンサー101が出力する波面データから、
図1中の(X,Y)位置での被検面112aの高さ、すなわち形状Z(X,Y)を算出するコンピューター111を備える。また、被検ミラー112を保持するホルダー107を備える。
【0023】
シャックハルトマンセンサー101は、被検光を分割して複数のスポット像を形成するためのマイクロレンズアレイ(MLA)103、形成した複数のスポット像を撮像するための撮像素子であるCCDセンサー102を備える。但し、撮像素子はCCDセンサーに限らずCMOSセンサーなどでも良いし、マイクロレンズアレイの代わりに微小な凹面ミラーが複数配列しているミラーアレイなどを導入しても良い。
【0024】
また、シャックハルトマンセンサー101は、CCDセンサー102からスポット像を取り込んで被検光の波面113を算出する(後述のステップS103)ためのコンピューター105を備える。但し、コンピューター105はシャックハルトマンセンサー101の一部を構成していなくてもよく、CCDセンサー102の出力を受けて演算を実行するコンピューターが別に接続される構成にしてもよい。
【0025】
また実施例1では、コンピューター105で算出された波面113の波面データから被検面112aの形状をコンピューター111で算出する例を示す。ただし、この演算もコンピューター105で行い、形状計測装置100がコンピューター111を備えない構成としても良い。
【0026】
コンピューター105は、CPU501、ROM(プログラムメモリ、記憶媒体)502、RAM503などのメモリを備えている。また、不図示のインターフェースを介してCCDセンサー102の出力信号を入力する。さらに、コンピューター105は、例えばIEEE802.3規格のネットワークインターフェースなどから構成される通信手段504を有する。CPU501は、例えば、波面計測結果を通信手段504を介してコンピューター111に送信することができる。
【0027】
図2に、マイクロレンズアレイ103の模式図を示す。マイクロレンズアレイ103は、同一面内に配列され焦点距離fがほぼ等しい複数の円形のマイクロレンズ(ML)104と、マイクロレンズ104以外の箇所に入射した被検光を遮光するための遮光マスク107から構成される。遮光マスク107の非遮光領域は円形であり、その中心はマイクロレンズ104の光軸とほぼ一致している。但し、マイクロレンズや遮光マスクの形状は円形に限らず方形や六角形でもよい。
【0028】
本実施例では、
図2の様に光軸に垂直なξ、η方向に沿って各マイクロレンズが間隔p
lで正方格子状に配置されている場合について示し、例えばマイクロレンズ104aであれば「k行j列目のML」と表現する。但し、マイクロレンズ104は必ずしも正方格子状に配置されていなくても良い。マイクロレンズアレイ103とCCDセンサーの受光面102aとの距離lは、マイクロレンズ104の焦点距離fとほぼ一致している。
【0029】
マイクロレンズの光軸の位置(ξ
0、j、k、η
0、j、k)は、例えばApplied Optics Vol.44、No.30、p6419に記載の方法で事前に取得しておく。シャックハルトマンセンサー101は距離lがなるべく焦点距離fに等しくなるように組み立てられているが、その組立には有限の誤差が存在する。そこで距離lについても、公知の方法で校正し、精密な値を事前に取得しておく。本実施例では、全てのマイクロレンズについてCCDセンサー102の受光面102aとの距離がlで均一であるとして扱うが、マイクロレンズ毎に受光面102aとの距離l
j,kを求め、後に算出する光線傾斜データに反映しても良い。
【0030】
実施例1で計測する被検ミラー112はカセグレン光学系を構成するための貫通穴を備えるミラーであり、被検面112aは、非球面軸112bを中心とする穴のあいた、非球面軸112bに対して軸対称な非球面である。但し、形状計測装置100はこのようなカセグレン光学系を構成するためのミラーに限らず、穴の開いていない球面ミラー、非球面ミラー、球面レンズ、非球面レンズなどを計測することも可能である。
【0031】
[形状計測手順の説明]
本実施例における形状計測の手順を
図3に示す。形状計測装置100で被検面112aの形状を計測するにあたり、まずはステップS101で、ホルダー107に被検ミラー112を設置する。その際には、非球面軸112bを測定光110の光軸(測定光軸)110aに一致させる。そのために、あらかじめホルダー107に不図示の位置決めピンなどを設置しておいて被検ミラー112を突き当てても良いし、ホルダー107に不図示の位置調整機構を備えても良い。
【0032】
このようにして被検ミラー112をホルダー107に設置した結果、被検面112aで反射された直後の光の波面には、被検面112aの形状が反映される。この反射光は、ビームスプリッター108、コリメータレンズ106を通過してシャックハルトマンセンサー101に入射する。被検面112aとシャックハルトマンセンサー101の受光面は共役な位置関係にあるため、被検面112aで反射された直後の光波面と同様、シャックハルトマンセンサー101に入射する光の波面113にも被検面112aの形状が反映される。
【0033】
また、測定光110は測定光軸110aに対して軸対称であり、被検面112aは非球面軸112bに対して軸対称に設計されており、さらにはこの非球面軸112aが測定光軸110aと一致するように被検ミラー112を設置している。そのため、被検面112aの反射光の波面は、測定光軸110aに対しておおよそ軸対称となる。この光をコリメートするコリメータレンズ106はやはり軸対称なので、波面113もおおよそ軸対称となる。
【0034】
さらには、シャックハルトマンセンサー101に入射した光はマイクロレンズアレイ103によって分割され、CCDセンサー102の受光面102aには複数のスポット像が形成される。ステップS101で被検ミラー112をホルダー107に設置した結果、CCDセンサーの受光面102aに複数のスポット像が形成されるため、このステップはスポット形成工程に相当する。
【0035】
図4は、被検面112aからの反射光がシャックハルトマンセンサー101に入射し、スポット像が形成される様子を示した模式図である。スポット像は、
図4中のSP1〜16のように、各マイクロレンズ104の中心を通過する光線114とCCDセンサー102の受光面102aの交点に形成される。被検面112aの中央部に貫通穴が空いていることに伴い、CCDセンサー102の受光面102aの中央部にスポット像が形成されることは無い。その結果、スポット像が形成される領域は、ドーナツ状の領域に限られることとなる。
【0036】
被検ミラー112をホルダー107に設置して、CCDセンサー102の受光面102aに複数のスポット像を形成した後には、ステップS102にて、CCDセンサー102でスポット像を撮像する。
図5は、スポット像の説明図である。スポット像は、CCDセンサー102が出力する、ν行μ列の画素からの信号I
μ,ν(μ=1、2、・・・、ν=1、2、・・・)で構成されることとなる。CCDセンサー102で撮像したスポット像は、コンピューター105に取り込む。
【0037】
スポット像を撮像した後には、ステップS103にて、後述する手順に従い、各マイクロレンズ104に入射した光線114の傾斜(シャックハルトマンセンサー101上での光線傾斜分布)をコンピューター105で算出する。なお、光を波として捉えた時には、その等位相面が波面、波面の法線が光線に相当するので、光線傾斜分布と波面は対応する。すなわち、光線傾斜分布を算出すれば、それは波面を算出したことと同義である。従って、ステップS103は波面算出工程に相当し、算出される光線傾斜分布は波面データに相当する。
【0038】
その後のステップS104では、各マイクロレンズ104に入射した光線114の傾斜分布から、被検面112aで反射された直後の光線傾斜分布を計算する。より具体的には、被検面112aで反射された直後の光線のX方向への傾斜の分布s
X,out(X,Y)と、Y方向への光線の傾斜の分布s
Y,out(X,Y)を算出する。
【0039】
光線傾斜分布(s
X,out,s
Y,out)を計算する際には、コリメータレンズ106の結像倍率Mを各ML104での光線傾斜に乗じても良い。また、各ML104から被検面112aまで光線を逆方向に追跡することでより精密な光線傾斜分布を求めても良い。演算は、コンピューター111を用いて行う。
【0040】
被検面112a上で反射された直後の光線傾斜分布を算出した後には、ステップS105で、被検面112aの形状を求める。そのためにまずは、算出した光線傾斜分布(s
X,out,s
Y,out)を式(1)に代入し、被検面112aの傾斜分布(dZ(X,Y)/dX、dZ(X,Y)/dY)を算出する。
【0042】
ここで、s
X,in(X,Y)とs
Y,in(X,Y)は、それぞれ被検面112aへの入射光線のX,Y方向への傾斜の分布である。これらの値は、ファイバーコネクター109bと被検面112aの距離やビームスプリッター108の形状に基づいて予め計算し、コンピューター111に格納しておく。その後は、被検面112aの傾斜分布(dZ(X,Y)/dX、dZ(X,Y)/dY)を2次元に亘って積分し、被検面112aの形状データZ(X,Y)を算出する。
【0043】
例えば、形状計測装置100で取得した形状データに基づいて、製造した被検レンズ112の良否判定をコンピューター111で行い、不図示のモニターに表示しても良い。また、取得した形状データから製造誤差に起因する形状誤差データをコンピューター111で求め、不図示の加工装置に送信し、その形状誤差の値を小さくするような加工を施しても良い。さらには、その光学素子で光学機器を構成しても良い。
【0044】
[光線傾斜分布算出の説明]
ステップS103で行う光線傾斜分布の算出は、
図6に示した手順に従って行う。図示の計測手順は、CPU501によって実行される。図示の計測手順は、CPU501の制御プログラムとして、予めROM502(あるいはHDDなどの不図示の他の記憶装置)に格納しておく。
【0045】
光線傾斜分布を算出するにあたり、まずはステップS202で、被検面112aの反射光で照明されるマイクロレンズを基準レンズとして選択する。具体的な手法としては、例えば、被検ミラーの設計形状とコリメータ106の結像倍率Mより、照明されるマイクロレンズアレイ102上の領域を求め、その領域にあるマイクロレンズ104を基準レンズとして選択すれば良い。本実施例では、j
0行k
0列目にあるML(
図4中ではML4)を基準レンズとして選択する。
【0046】
被検面112aの非球面量が大きい場合には、シャックハルトマンセンサー101に入射する光の波面113の偏差が大きくなり、各スポット像は経由したマイクロレンズ104の光軸から大きく離れた位置に形成される。例えば、
図4のマイクロレンズML4を透過した光が形成したスポット像SP6であれば、マイクロレンズML4の光軸ML4aに対し、マイクロレンズ約2個分離れている。その結果、個々のスポット像を検出するだけでは、各スポット像を形成する光が経由したマイクロレンズML(各スポット像に対応するマイクロレンズ)を特定することは困難となる。
【0047】
上述の通り、引用文献1では、この課題を解決するために、マイクロレンズアレイの中心部に位置するマイクロレンズの1つを遮蔽し、欠損したスポット像を基準にマイクロレンズとスポット像を対応付けている。
【0048】
ところが、実施例1の被検面112aの中央には貫通穴が空いており、シャックハルトマンセンサー101に入射する光束はドーナツ状の形状を示す。このため、マイクロレンズアレイの中央に位置するマイクロレンズを1つ遮蔽しても、これによるスポット像の欠損を観測することは出来ない。すなわち、実施例1で扱う被検面112aの形状を計測する場合には、引用文献1に記載の手段を適用してスポット像とマイクロレンズを正確に対応付けることはできず、被検面112aの形状を精密に計測することもできない。
【0049】
波面113は軸対称に設計されているので、波面113の傾斜(≒波面113の軸の傾斜)は、形状計測装置100と被検ミラー112の製造誤差、および被検ミラー112の設置誤差に起因する僅かな量にすぎず、角度に換算して約0.1°である。一方、マイクロレンズとスポット像の対応付けを誤った場合、その誤差は波面の傾斜として現れ、その大きさは実際の波面の傾斜に対して十分に大きい。
【0050】
例えば、シャックハルトマンセンサーはp
l≒0.15[mm]、l≒5[mm]のものが多く市販されており、この場合に対応付けを1つ誤ったことによる波面傾斜誤差はp
l/l≒0.03で、角度に換算して約2°である。
【0051】
さらには、波面113の傾斜は、その光束がドーナツ状の形状を示している場合にも検出可能である。すなわち、波面113の傾斜は、マイクロレンズとスポット像を対応付けるための基準として十分機能する。そこで実施例1では、各マイクロレンズに対して任意のスポット像を対応付けた上で仮の波面の傾斜を算出し、そこから対応付けの誤りを検知して修正する。すなわち、欠損スポットではなく、波面113の傾斜を基準として、対応付けの誤りを検知する。
【0052】
そのため、基準レンズを選択した後のステップS203では、スポット像の位置を式(2)、(3)で算出し、基準レンズに対応付ける。
【0055】
p
cはCCDセンサー画素ピッチを表す。αは、カメラ出力信号の解析領域の大きさを反映するパラメータである。式(2)では、基準レンズの光軸(ξ
0、j0、k0、η
0、j0、k0)を中心として±α個の画素に亘ってカメラ出力信号I
μ,νを解析しているため、基準レンズの光軸に最近接しているスポット像の位置が算出される。
【0056】
図4の場合であれば、基準レンズであるマイクロレンズML4の光軸ML4aに最近接しているスポット像SP4の位置を求め、これをマイクロレンズML4に対応付けていることとなる。上記解析領域のカメラ出力信号I
μ,νにスポット像が含まれない場合にはαを増大して再解析すれば良いし、2つ以上のスポット像が含まれた場合にはαを縮小して再解析すれば良い。
【0057】
また、抽出した上記領域のカメラ信号のうち、最大出力を示す画素の位置を(μ’
0,j0,k0,ν’
0,j0,k0)とし、これを式(2)に代入して再解析を行っても良い。sは1〜3程度の値とするが、スポットサイズとCCDセンサーの画素ピッチp
cの関係に応じて適宜調整することが望ましい。
【0058】
本実施例では式(2)を用いるが、例えば他の方法として、ガウシアンを初めとするスポット形状を適切に表す式でスポット像をフィッティングし、その中心をスポット像の位置として求めても良い。算出されたスポット像の位置(ξ’
j0,k0,η’
j0,k0)のデータは、k
0行j
0列目に配置されたマイクロレンズに対応付けた上で、演算機105に格納する。
【0059】
実施例1のステップS203では、基準レンズの光軸に最近接しているスポット像を基準レンズに対応付けるが、これは基準レンズに任意のスポット像を対応付ける一例でしかない。基準レンズの光軸に最近接しているスポット像の代わりに、基準レンズの光軸に最近接しているスポット像から離れたスポット像を選択しても良い。
【0060】
また、被検ミラー112の設計形状から波面113を予想し、さらにそこから基準レンズを透過した光が形成するスポット像の位置を予想し、その周辺に位置するスポット像を対応付けても良い。いずれの場合においても、式(2)中のμ’
0,j0,k0とν’
0,j0,k0の値を、式(3)で算出される値からずらすこととなる。
【0061】
任意のスポット像の位置を検出して基準レンズに対応付けた後には、ステップS204で、それ以外のスポット像の位置を検出し、各マイクロレンズに演繹的に対応付ける。
図4の場合であれば、スポット像SP4から−ξ方向に1個ずれたスポット像SP3を検出してマイクロレンズML3に対応付ける。さらに、1個ずれたスポット像SP2を検出してマイクロレンズML2に対応付け、1個ずれたスポット像SP1を検出してマイクロレンズML1に対応付ける。すなわち、スポット像SP4を起点として、他のスポット像を各マイクロレンズに演繹的に対応付ける。
【0062】
図4にはη方向の対応付けしか示されていないが、実際にはξ方向に加えてη方向についてもマイクロレンズをスポット像に演繹的に対応付ける。その結果、対応付けは波面113の中央の欠損部を回り込むこととなる。すなわち、スポット像SP9はマイクロレンズML5に、スポット像SP10はマイクロレンズML6に、スポット像SP11はマイクロレンズML7に、スポット像SP12はマイクロレンズML8に対応付けられる。これにより、スポット位置データ(ξ’
j,k,η’
j,k)が算出されることとなる。
【0063】
全てのスポット像を検出してマイクロレンズに対応付けた後には、ステップS205にて、各マイクロレンズに入射する仮の光線傾斜(∂w’/∂ξ、∂w’/∂η)を式(4)で求める。
【0065】
その後は、ステップS206にて、仮の光線傾斜分布(∂w’/∂ξ、∂w’/∂η)から仮の波面傾斜(t’
ξ、t’
η)を求める。波面の傾斜は、例えば仮の光線傾斜をZernike関数の微分形でフィッティングして求める。すなわち、式(5)で定義されるΔを最小とするc
n(n=1、2・・・)を求める。
【0067】
なお、Rは波面113の有効領域の半径であり、実施例1におけるZernike関数Z
n(x、y)は式(6)の様に定義される。但し、r
2=x
2+y
2である。
【0068】
Z
1(x、y)=1
Z
2(x、y)=x
Z
3(x、y)=y
Z
4(x、y)=2r
2−1
Z
5(x、y)=2x
2−y
2
Z
6(x、y)=2xy
Z
7(x、y)=(−2+3r
2)x
Z
8(x、y)=(−2+3r
2)y
Z
9(x、y)=(1−6r
2+6r
4)
Z
10(x、y)=x
3−3xy
2
Z
11(x、y)=3x
2y−y
3
Z
12(x、y)=(−3+4r
2)(x
2−y
2)
Z
13(x、y)=2(−3+4r
2)xy
Z
14(x、y)=(3−12r
2+10r
4)x
Z
15(x、y)=(3−12r
2+10r
4)y
Z
16(x、y)=−1+12r
2−30r
4+20r
6
Z
17(x、y)=x
4−6x
2y
2+y
4
Z
18(x、y)=4xy(x
2−y
2)
Z
19(x、y)=(−4+5r
2)(x
3−3xy
2)
Z
20(x、y)=(−4+5r
2)(3x
2y−y
3)
Z
21(x、y)=(6−20r
2+15r
4)(x
2−y
2)
Z
22(x、y)=2(6−20r
2+15r
4)xy
Z
23(x、y)=(−4+30r
2−60r
4+35r
6)x
Z
24(x、y)=(−4+30r
2−60r
4+35r
6)y
Z
25(x、y)=1−20r
2+90r
4−140r
6+70r
8
Z
26(x、y)=x
5−10x
3y
2+5xy
4
Z
27(x、y)=5x
4y−10x
2y
3+5y
5
Z
28(x、y)=(−5+6r
2)(x
4−6x
2y
2+y
4)
Z
29(x、y)=4(−5+6r
2)xy(x
2−y
2)
Z
30(x、y)=(10−30r
2+21r
4)(x
3−3xy
2)
Z
31(x、y)=(10−30r
2+21r
4)(3x
2y−y
3)
Z
32(x、y)=(−10+60r
2−105r
4+56r
6)(x
2−y
2)
Z
33(x、y)=2(−10+60r
2−105r
4+56r
6)xy
Z
34(x、y)=(5−60r
2+210r
4−280r
6+126r
8)x
Z
35(x、y)=(5−60r
2+210r
4−280r
6+126r
8)y
Z
36(x、y)=−1+30r
2−210r
4+560r
6−630r
8+252r
10
・・・式(6)
ここで求められた(c
2,c
3)の値が、仮の波面傾斜(t’
ξ、t’
η)に相当することとなる。
【0069】
実施例1では、式(5)中でnについて総和を取る際にnの上限値を36としたが、上限値はこれより大きくても小さくても良い。また、実施例1では、仮の波面の傾斜を求める際には微分Zernike関数を利用したが、他の方法で求めても良い。例えば、仮の光線傾斜(∂w’/∂ξ、∂w’/∂η)を2次元に亘って積分し、これをZernike関数でフィッティングして傾斜を求めても良い。また、取得された仮の光線傾斜について、j、kに亘って平均値を取っても良い。
【0070】
さらには、仮の光線傾斜を算出するステップS205を行わなくてもよい。すなわち、ステップS204で算出したスポット位置(ξ’
j,k,η’
j,k)とマイクロレンズ光軸の位置(ξ’
0,
j,k,η’
0,
j,k)についてそれぞれj、kに亘って平均値を取り、その差をlで除しても良い。
【0071】
ステップS207では波面傾斜閾値(第一の閾値)t
0を決定し、ステップS208では、仮の波面傾斜の絶対値t’
abs=√(t’
ξ2+t’
η2)と閾値t
0を比較し、ステップS203で行ったスポット像とマイクロレンズの対応付けの正否を判定する。実施例1では、ステップS208の直前にステップS207を行う例を示すが、ステップS207はステップS208より前であればいつ実施しても良く、例えばステップS101で被検ミラー112を設置する前に行ってもよい。
【0072】
ステップS208で仮の波面傾斜の絶対値t’
absと閾値t
0の大小関係に基づいて対応付けの正否を判定するためには、この波面傾斜閾値t
0は、実際に波面113に生じ得る傾斜量の最大値t
maxより大きい必要がある。もしt
0がt
maxよりも小さければ、対応付けが正しい場合にも、実存する波面の傾斜を対応付けによる誤差と誤検知する可能性がある。
【0073】
上述の通り、波面113の傾斜は主に形状計測装置100と被検ミラー112の製造誤差、および被検レンズ112の姿勢誤差に起因するので、t
maxは上記誤差によって生じ得る波面傾斜の最大値である。これは、シャックハルトマンセンサー101にとっては、被検光を出射する光学系の機械公差に基づく値に相当する。ステップS207では、このt
maxを上回る様にt
0を設定する。
【0074】
一方、波面傾斜閾値t
0は、誤った対応付けに基づいて算出される仮の波面傾斜を下回る必要がある。スポット像を正しいマイクロレンズから1つずれたマイクロレンズに対応付けた場合の傾斜誤差はp
l/lであり、誤った対応付けに基づいて算出される仮の波面の傾斜がp
l/l−t
maxを下回ることは無い。従って、ステップS207では、波面傾斜閾値t
0をp
l/l−t
max以下に設定する。
【0075】
すなわち、ステップS207では、波面傾斜閾値(第一の閾値)t
0を、式(7)を満たす値に設定する。
【0076】
t
max<t
0≦p
l/l−t
max・・・式(7)
上述の通り、設計波面が軸対称な場合、対応付けを誤ったことによる波面傾斜誤差は波面の実際の傾斜量に対して十分大きく、t
max<p
l/(2l)が成立する。その結果、式(7)を満たす波面傾斜閾値t
0が存在することとなり、ステップS207における波面傾斜閾値t
0の設定と、ステップS208におけるt
0を用いた対応付け誤りの判定が可能となる。
【0077】
その上で、ステップS208では、仮の波面傾斜の絶対値t’
absを波面傾斜閾値t
0と比較する。t’
absがt
0を下回る場合には、ステップS203で行った対応付けが正しいと判定し、ステップS212にて、ステップS205で算出した仮の光線傾斜分布(∂w’/∂ξ、∂w’/∂η)を光線傾斜分布(∂w/∂ξ、∂w/∂η)として出力する。仮の波面傾斜の絶対値t’
absがt
0を上回る場合には、ステップS203で誤った対応付けを行ったと判定し、これを修正するためにステップS209に進む。
【0078】
なお、被検面112aの非球面量が極めて大きく、ステップS203で基準レンズが正しいスポット像に対応付けられていない可能性が高い場合には、ステップS207とS208を設けず、対応付けの正否判定を行うことなくステップS209に進んでもよい。
【0079】
ところで、対応付けを誤ったことによる波面傾斜誤差p
l/lが実際の傾斜量に対して十分に大きいため、対応付けが誤っている場合、仮の波面傾斜(t’
ξ、t’
η)のほとんどは、この誤りによる波面傾斜誤差によって占められる。
【0080】
すなわち、仮の波面傾斜(t’
ξ、t’
η)はマイクロレンズとスポット像の対応付けの誤り量そのものであり、これを算出したことは対応付けの誤り量を検知したことに相当する。従って、スポット像とマイクロレンズを正しく対応付けるためには、この仮の波面傾斜(t’
ξ、t’
η)を相殺するようにマイクロレンズとスポット像の対応付けを変更すれば良い。
【0081】
(t’
ξ、t’
η)の仮の波面傾斜は、(−t’
ξl、−t’
ηl)のスポット位置ずれに相当する。そこでステップS209では、これを相殺する様に、ステップS203で検出したスポットから(t’
ξl、t’
ηl)だけずれた位置にあるスポットを式(8)(9)で検出し、k
0行j
0列目の基準レンズに対応付ける。
【0084】
これにより、基準レンズを経由した光によって形成されたスポット像の位置(ξ
j0,k0,η
j0,k0)が正しく検出される。
図4の場合であれば、基準レンズであるマイクロレンズML4を経由した光によって生成されたスポット像SP6の位置が算出されることとなる。
【0085】
基準レンズに対応するスポット像を検出した後には、ステップS210にて、それ以外のスポット像を検出し、各マイクロレンズに演繹的に対応付ける。具体的な手法は、ステップS204と同様である。
【0086】
図4の場合であれば、スポット像SP6から−ξ方向に1個ずれたスポット像SP5を検出してマイクロレンズML3に対応付ける。さらに1個ずれたスポット像SP4を検出してマイクロレンズML2に対応付け、さらに1個ずれたスポット像SP3を検出してマイクロレンズML1に対応付ける。すなわち、スポット像SP6を起点として、他のスポット像を各マイクロレンズに演繹的に対応付ける。
【0087】
また、スポット像SP11はマイクロレンズML5に、スポット像SP12はマイクロレンズML6に、スポット像SP13はマイクロレンズML7に、スポット像SP14はマイクロレンズML8に対応付ける。これにより、各マイクロレンズに対応するスポット像の位置(ξ
j,k,η
j,k)を算出する。
【0088】
全てのスポット像を検出してマイクロレンズに対応付けた後には、ステップS211にて、ステップS210で算出したスポット位置(ξ
j,k,η
j,k)を式(10)に代入し、各マイクロレンズに入射する光線傾斜(∂w/∂ξ、∂w/∂η)を求める。
【0090】
なお、実施例1では各マイクロレンズ104での光線傾斜を扱っているが、これにTan
−1を作用させて傾斜角に変換して扱っても良く、この傾斜角分布を算出した場合にも、その演算は波面の算出とみなすことができる。
【0091】
実施例1における形状計測方法によれば、中央に貫通穴のあいた被検ミラーであっても、その形状を精密に計測することができる。
【0092】
すなわち、従来から知られるマイクロレンズとスポット像を対応付ける手法は、欠損スポット像に代表される「個別のスポット像」を基準として利用するものであった。ところが、被検光の光束がドーナツ状の形状を示し、中央部の「個別のスポット像」を検出できない状況下では、この手法は適用できない。そこで本発明では、個別のスポット像に特徴を持たせることなく、特徴のない複数のスポット像の位置情報から波面傾斜の情報を抽出し、これを基準としてMLとスポットを対応付けたことを特徴としている。
【0093】
[実施例2]
本実施例では、実施例1と同じく、
図1に記載の形状計測装置100を用いる。また、実施例1と同じく、
図3に記載の形状計測手順に従って行う。但し、ステップS103において、実施例1ではマイクロレンズアレイ上での光線傾斜分布を算出したのに対し、実施例2ではCCDセンサー102の受光面102aでの光線傾斜分布を算出する。また、実施例1では、マイクロレンズとスポット像の対応付けが誤っている場合にスポット像の位置を再検出したが、実施例2ではこれを行わない。そのために、実施例2における光線傾斜分布の算出は、
図7に記載の手順に従う。
【0094】
図7に記載の光線傾斜分布算出手順において、ステップS302〜S304、S306〜S308、S310は、実施例1のステップS202〜S204、S206〜S208、S212と同じである。
【0095】
ステップS304で各スポット位置(ξ’
j,k,η’
j,k)を検出して各マイクロレンズと対応付けた後、ステップS305にて、検出したスポット位置を式(11)に代入し、CCDセンサー102の受光面102a上での仮の光線傾斜分布を算出する。
【0097】
この式では、実施例1の式(4)に対し、光線位置が(ξ
0,j,k,η
0,j,k)から(ξ’
j,k,η’
j,k)に変更されている。これにより、算出される光線傾斜分布を示す位置が、マイクロレンズアレイ103からCCDセンサー102の受光面102aに変更されることとなる。
【0098】
ステップS308でマイクロレンズとスポット像の対応付けの誤りが検出された場合には、ステップS309にて、式(12)で仮の光線傾斜(∂w’/∂ξ、∂w’/∂η)を補正して光線傾斜(∂w/∂ξ、∂w/∂η)を算出する。
【0100】
式(12)は、各スポット像に対応付けるマイクロレンズをステップS304で対応付けたマイクロレンズに対して(−t’
ξl、−t’
ηl)だけずらすことを意味する。右辺第2項ではそのマイクロレンズの位置ずれ分だけ仮の光線傾斜に対して修正を加えている。実施例1のように、スポット像を再検出することは行っていない。
【0101】
また、実施例1の式(10)に対し、式(12)では光線位置が(ξ
0,j,k,η
0,j,k)から(ξ’
j,k,η’
j,k)に変更されている。これにより、算出される光線傾斜分布を示す位置が、マイクロレンズアレイ103からCCDセンサー102の受光面102aに変更される。
【0102】
本実施例では、スポット像を再検出する工程を必要としないため、実施例1に対して演算工程が簡略化され、より高速な形状計測が可能となる。
【0103】
[実施例3]
実施例3では、実施例1と同じく、
図1に記載の形状計測装置100を用いる。また、実施例1と同じく、
図3に記載の形状計測手順に従って行う。但し、ステップS103においてシャックハルトマンセンサー上での光線傾斜分布を算出する手順が、実施例1とは異なる。具体的には、実施例1では、マイクロレンズとスポット像の対応付けが誤っている場合にスポットの位置を再検出したが、実施例3ではこれを行わない。
【0104】
図8は、実施例3における、シャックハルトマンセンサー上での光線傾斜分布の算出手順である。ステップS502〜S508、S511は、実施例1で行った
図5に記載のステップS202〜S208、S212とそれぞれ同じである。ステップS509では、ステップS204で算出したスポットの位置(ξ’
j,k,η’
j,k)を式(13)に代入することで、各マイクロレンズMLに正しく対応付けられたスポットの位置(ξ
j,k,η
j,k)を算出する。
【0106】
式(13)では、仮の波面傾斜(t‘
ξ、t’
η)を相殺するように、各スポットに対応するマイクロレンズMLの位置を(−t’
ξl、−t’
ηl)だけずらして修正している。スポット像の位置を再検出することは行っていない。その後はステップS510にて、実施例1のステップS211と同様に、各マイクロレンズに入射する光線の傾斜を式(10)で算出する。
【0107】
これにより、実施例1と比較して演算工程が簡略化されるため、より高速な形状計測が可能となる。また、実施例2と異なり、各マイクロレンズの光軸(ξ
0,j,k,η
0,j,k)での光線傾斜(∂w/∂ξ、∂w/∂η)を算出するため、(ξ、η)面内に亘ってほぼ等間隔な光線傾斜データを取得することが出来る。
【0108】
[実施例4]
本発明では、実施例1と同じく、
図1に記載の形状計測装置100を用いる。また、実施例1と同じく、
図3に記載の形状計測手順に従って行う。但し、ステップS103においてシャックハルトマンセンサー上での光線傾斜分布を算出する手順が、実施例1とは異なる。具体的には、マイクロレンズとスポット像の対応付けが誤っていると判定された場合に、実施例1ではマイクロレンズを(t’
ξl、t’
ηl)ずれたスポット像に対応付けたが、実施例4では1つだけずらし、その都度対応付けの正否を判定する。
【0109】
図9(a)は、実施例4における、シャックハルトマンセンサー上での光線傾斜分布の算出手順である。波面傾斜閾値t
0は実施例1のステップS207と同様の方法で求めるが、これはステップS701で最初に行っておく。ステップS702〜S706、S708は、実施例1で行ったステップS202〜S206、S208と同じである。
【0110】
ステップS708でt’
abs>t
0と判定された場合には、ステップS710にて、仮の波面傾斜を相殺する方向に、全スポット像とマイクロレンズの対応を1つずらす。具体的には、ステップS7101〜S7106から構成される、
図9(b)のフローチャートに従って、スポット像の位置(ξ’
j,k,η’
j,k)の値を修正する。
【0111】
すなわち、その最初のステップであるS7101では、t’
ξとt
0を比較し、t’
ξの方が大きい場合にはステップS7102にて各マイクロレンズに対応付けるスポット像を+ξ方向にずらす。t
0の方が大きい場合には、
図9(b)のフローチャートに従って、−ξ方向にずらす(S7104)か、+η方向にずらす(S7106)か、−η方向にずらす(S7107)か、いずれかを実施する。
【0112】
例えばステップS7102で各マイクロレンズに対応付けるスポット像を+ξ方向にずらすのであれば、ξ’
j+1,k→ξ’
j,kとする。その後は、ステップS708でt’
abs<t
0と判定されるまで、ステップS705、S706、S710を繰り返す。ステップS708でt’
abs<t
0と判定された場合には、ステップS709にて、ステップS705で算出された仮の光線傾斜(∂w’/∂ξ、∂w’/∂η)を光線傾斜(∂w/∂ξ、∂w/∂η)として出力する。
【0113】
本実施例では、最終的にステップS104での形状データ算出に利用する光線傾斜分布について、前提としたマイクロレンズとスポット像の対応付けをステップS708で確実に正否判定する。そのため、これを行わない実施例1と比較して、より確度の高い形状データを算出することが可能となる。
【0114】
[実施例5]
本発明では、実施例1と同じく、
図1に記載の形状計測装置100を用いる。また、実施例1と同じく、
図3に記載の形状計測手順に従って行う。但し、ステップS103においてシャックハルトマンセンサー上での光線傾斜分布を算出する手順が、実施例1とは異なる。具体的には、実施例1のステップS103を実施後、マイクロレンズMLとスポット像の対応付けの正否を再び判定し、誤っている場合には修正する。
【0115】
図10は、実施例5における、シャックハルトマンセンサー上での光線傾斜分布の算出手順である。ステップS802〜S811、S815は、実施例1におけるステップS202〜S212と同じである。実施例1と同様、ステップS808とS815は省略しても良い。
【0116】
ステップS811で各レンズの光線傾斜を算出した後には、ステップS812にてステップS806と同様の手順で波面傾斜を算出し、ステップS813にてステップS808と同様の手順でマイクロレンズとスポット像の対応付けの正否を判定する。その閾値(第二の閾値t’
0)として、実施例5ではステップS807で定めたt
0の値を用いるが、式(7)を満たしていれば、別の値を用いても良い。
【0117】
対応付けが誤っていると判定された場合には、実施例4のステップS709と同様に、ステップS814にてマイクロレンズMLとスポット像の対応付けを1つずらす。その後は、ステップS813にて対応付けが正しいと判定されるまで、ステップS811、S812、S814を繰り返す。
【0118】
実施例5では、最終的にステップS104で形状データを算出する際に用いる光線傾斜分布について、前提としたマイクロレンズMLとスポット像の対応付けをステップS813で判定している。そのため、これを行わない実施例1と比較して、より確度の高い形状データを算出することが可能となる。また、複数個ずれたスポットにマイクロレンズMLを対応付けるステップS809を備えるので、実施例4と比較して、光線傾斜分布をより短時間で算出することができ、より高速な形状計測が可能となる。
【0119】
[実施例6]
本実施例では、実施例1と同じく、
図1に記載の形状計測装置100を用いる。また、実施例1と同じく、
図3に記載の形状計測手順に従って行う。但し、ステップS103においてシャックハルトマンセンサー上での光線傾斜分布を算出する手順が、実施例1とは異なる。具体的には、実施例1では仮の波面傾斜に基づいてマイクロレンズとスポット像の対応付けの誤りを検知したが、実施例6では、被検面112aの仮の傾斜に基づいて対応付けの誤りを検知する。
【0120】
図11は、実施例6における、シャックハルトマンセンサー上での光線傾斜分布の算出手順である。ステップS1002〜S1005、S1010、S1011は、
図5に示した実施例1におけるステップS202〜S205、S210、S211と同じである。
【0121】
ステップS1006では、被検面112aの仮の傾斜を算出する。具体的にはまず、ステップS1005で算出した各マイクロレンズでの仮の光線傾斜より、ステップS104と同じ要領で、被検面112aで反射された直後の光線傾斜分布を求める。その後、ステップS206と同じ要領で、被検面112aで反射された直後の光の波面の傾斜を求め、これを2で除すことで被検面112aの仮の傾斜(T’
x、T’
y)を算出する。
【0122】
被検面112aの仮の傾斜を算出した後には、ステップS1007にて、被検面傾斜の閾値T
0を決定する。T
0は、式(15)を満たすように設定する。
T
max<T
0≦p
lM/l−T
max・・・式(15)
T
maxは、被検ミラー112の製造誤差や設置誤差によって発生し得る、被検面112aの傾斜の最大値である。ここに、実施例1のt
maxで考慮した形状計測装置100の製造誤差は含まれていないが、形状計測装置100は製作時に精密に軸対称に調整されていることが多く、その場合にはこの製造誤差を無視しても問題ない。
【0123】
被検面傾斜の閾値を決定した後には、ステップS1008にて、仮の被検面の傾斜の絶対値T’
abs=√(T’
x2+T’
y2)をこの閾値T
0と比較する。T
0の方が大きい場合には、ステップS1012にて、ステップS1005で算出した仮の光線傾斜(∂w’/∂ξ、∂w’/∂η)を光線傾斜(∂w/∂ξ、∂w/∂η)として出力する。T’
absの方が大きい場合には、ステップS1009に進む。
【0124】
ステップS1009では、基準レンズに対応するスポットの位置を検出する。具体的な方法は実施例1で行ったステップS209と類似しているが、(μ
0,j0,k0,ν
0,j0,k0)については式(16)で算出し、この点だけが実施例1とは異なる。
【0126】
その後のステップS1010、S1011は、実施例1のステップS210とS211と同様に行い、各MLでの光線傾斜(∂w/∂ξ、∂w/∂η)を算出する。
【0127】
なお、本実施例では、仮の波面傾斜(t’
ξ,t’
η)を求めていないが、ステップS1006で算出した仮の被検面傾斜(T’
x、T’
y)は(t’
ξ,t’
η)と式(17)で結ばれ、1対1に対応する。
【0128】
T’
x=t’
ξM/2
T’
y=t’
ηM/2・・・式(17)
すなわち、仮の被検面傾斜を算出することは仮の波面傾斜を算出することに相当し、仮の被検面傾斜を算出するステップS1006は、仮の波面傾斜を算出する工程とみなすことができる。
【0129】
実施例6でマイクロレンズとスポット像を対応付ける際に指標とした被検面112aの傾斜の最大値T
maxは、実施例1で指標とした波面113の傾斜の最大値t
maxと比較して、見積もりが容易である。そのため実施例6では、実施例1と比較して、マイクロレンズとスポット像の対応付けを容易に行うことができる。
【0130】
[実施例7]
実施例7では、非球面レンズに形成された軸対称非球面の形状を計測する。
【0131】
[形状計測手順の説明]
図12は、本実施例で用いる形状計測装置200の模式図である。実施例1〜6で使用する形状計測装置100と類似しているが、被検物が被検レンズ212である点、ステージ207とステージコントローラー208を備える点が異なる。ホルダー107はステージ207に備えられ、ステージ207はステージコントローラー208に、ステージコントローラー208はコンピューター111に接続されている。ステージコントローラー208は、コンピューター111からの指令に基づいてステージ207を駆動し、そこにホルダー701を介して取り付けられた被検レンズ212の位置を制御する。
【0132】
図13は、実施例7における形状計測手順を示すフローチャートである。まずはステップS1101にて、ホルダー107に被検レンズ212を設置する。被検レンズ212は透明部材から構成される平凹非球面レンズであり、被検面212aは、非球面軸212cに対して軸対称に設計されている。被検レンズ212をホルダー107に設定すると、被検面212aの反射光はシャックハルトマンセンサー101に入射し、シャックハルトマンセンサー101の受光面では波面213を形成する。シャックハルトマンセンサー101に入射した光は、CCDセンサーの受光面102a上に複数のスポット像を形成する。
【0133】
被検レンズ212を設置した後には、ステップS1107にて、後述の詳細手順に従って被検レンズ212をアライメントする。
【0134】
被検レンズ212をアライメントした後には、ステップS1108にて、CCDセンサー102aに形成された複数のスポット像の位置を検出する。
【0135】
ところで、被検レンズ212は透明部材から構成されるため、被検面212aからの反射光に加え、裏側の平面212bからの反射光が、ビームスプリッター108とコリメータレンズ106を介してシャックハルトマンセンサー101に入射する。その結果、検出したい被検面212aからの反射光によるスポット像(表面スポット像)に加え、平面212bからの反射光によるスポット像(裏面スポット像)がCCDセンサーの受光面102aに形成され、その一部は表面スポット像に重なる。
【0136】
裏面スポット像が重なった表面スポット像の位置を式(2)や式(8)で検出すると、大きなスポット位置検出誤差が発生するため、そこから被検面212aの精密な形状を算出することはできない。
【0137】
そこで実施例7では、特開2016−142691号公報に記載の方法に従い、ステージ207で被検レンズ212を移動させてスポット像の重なりを解消した上で、表面スポット像の位置を検出する。
【0138】
表面スポット像の位置を検出した後は、実施例1のステップS211、S104、S105と同様にステップS1109〜S1111を行い、被検面212aの形状を算出する。
【0139】
[アライメント工程の説明]
ステップS1108でスポット像の重なりを解消するには、特開2016−142691号公報に記載の通り、形状計測装置200と被検レンズ212の設計値に基づき、重なっているスポット像を特定する必要がある。そのためには、被検レンズ212を設計通りに精密に設置する必要がある。そこで、形状計測装置200については非球面軸212cが測定光軸110aに一致している状態に設計し、上述のステップS1107のアライメント工程では被検面レンズの非球面軸212cを測定光軸110aに一致させる。
【0140】
被検レンズの非球面軸212cが測定光軸110aに一致した状態では、波面213が略軸対称となる。そこでステップS1107のアライメント工程では、シャックハルトマンセンサー101で波面213に含まれる被軸対称成分であるコマ収差成分や傾斜成分を計測し、これが抑制される様にステージ207で被検レンズ212を駆動する。
【0141】
このアライメント工程は、より詳細には、以下のステップS1102〜S1106から構成される。すなわち、アライメント工程の最初のステップであるS1102では、実施例1のステップS102と同様に、スポット像I’
j,kをCCDセンサー102で撮像する。この時には、ステップS1108と同様、検出したい被検面212aからの反射光による表面スポット像に加え、平面212bからの反射光による裏面スポット像も撮像され、その一部は表面スポット像に重なる。
【0142】
上述の通り、裏面スポット像が重なった表面スポット像の位置を式(2)や式(8)で検出すると、大きな誤差が発生する。そこで、スポット像を撮像した後のステップS1103では、スポット像から裏面スポット像を除く。平面212bからの反射光の多くはコリメータレンズの淵106aでケラれるため、シャックハルトマンセンサー101に入射するのは、平面212bの中心部で反射された光(反射光214)に限られる。この反射光214が形成した裏面スポット像を除くべく、ここでは、ステップS1102で取得したスポット像I’
j,kを式(18)に代入し、新たなスポット像I
j,kを算出する。
【0144】
r
bは反射光213の光束半径、(ξ
0,η
0)は被検面212aの光軸の位置である。これにより、中央部の半径r
bの円形の領域からは、表面スポット像と裏面スポット像の両方が除去される。その結果、ステップS1103では、実施例1〜6のステップS102と同様、ドーナツ状の領域に表面スポット像だけが形成されたスポット像を取得されることとなる。
【0145】
裏面スポット像が除去されたスポット像I
j,kを取得した後には、ステップS1104にて、被検面212aで反射した光について、各マイクロレンズでの光線傾斜(∂w/∂ξ、∂w/∂η)を算出する。
【0146】
スポット像I
j,kでは、実施例1〜6のスポット像と同様、スポット像が存在する領域がドーナツ状の領域に限られる。そのため、引用文献1に記載の方法ではスポット像とマイクロレンズを正しく対応付けることが困難であり、正確な光線傾斜を求めることも困難である。
【0147】
そこで、実施例7においても、実施例1〜6のいずれかのステップS103の手順に従い、スポット像I
j,kから各マイクロレンズ104での光線傾斜を算出する。当然ながら、ここで算出されるのは、ドーナツ状の領域における光線傾斜に限られる。
【0148】
各マイクロレンズ104での光線傾斜を算出した後には、ステップS1105にて、被検レンズ212の位置ずれ、すなわち非球面軸212cと測定光軸110aの差(ΔX,ΔY,T
X,T
Y)を算出する。ここで、ΔX、ΔYはそれぞれX、Y方向への軸ずれ、T
X,T
YはそれぞれX、Y方向への軸の傾斜を表す。
【0149】
そのために、まずは実施例1のステップS206の要領で、ステップS1104で算出した光線傾斜(∂w/∂ξ、∂w/∂η)を微分Zernike関数でフィッティングし、傾斜成分を表す係数c
2、c
3と、コマ収差成分を表すc
7、c
8を取得する。
【0150】
(c
2、c
3、c
7、c
8)は非軸対称な低次の形状成分を表す係数なので、今回の様にドーナツ状の領域内に限られる光線傾斜データをフィッティング対象とした場合であっても、十分な精度で取得できる。その後、非球面軸212cと測定光軸110aの差を算出する。算出に当たっては、例えば、ベクトル(c
2、c
3、c
7、c
8)とベクトル(ΔX,ΔY,T
X,T
Y)を関連付ける変換行列を事前の実験や計算で求め、その変換行列で(c
2、c
3、c
7、c
8)を(ΔX,ΔY,T
X,T
Y)に変換すれば良い。
【0151】
被検レンズ212の位置ずれを算出した後には、ステップS1106にて、これを相殺する様にステージ207を駆動する。これにより、非球面軸212cと測定光軸110aが精密に一致し、ステップS1107のアライメント工程が完了する。
【0152】
実施例7では、被検レンズの裏面で反射された光がシャックハルトマンセンサーに入射する状態であっても、被検物の表面の形状を正確に計測することができる。
【0153】
[実施例8]
本実施例では、カセグレン光学系に向けた光学系調整装置300を示す。
図13は、光学系調整装置300の模式図である。この装置は、光源301、光源301の出射光を導く光ファイバー301a、光ファイバー301aから光を出射するファイバーコネクター301bを備える。また、ファイバーコネクター301bからの出射光をコリメートして被検レンズ312に入射するコリメートレンズ302、被検光学系312を透過した光をコリメートするコリメートレンズ303を備える。
【0154】
また、コリメートレンズ303を透過した光の波面を計測する、
図1に記載のシャックハルトマンセンサー101を備える。また、被検光学系312を保持すると共に、その位置と姿勢を調整するためのステージ307を備える。
【0155】
被検光学系312は、ミラー312a、ミラー312b、調整機構312c、ホルダー312dから構成されるカセグレン光学系で、入射した平行光を集光する。ミラー312bはホルダー312dに固定されており、ミラー312aは調整機構312cを介してホルダー312dに固定されている。ミラー312aとミラー312bの相対位置と相対姿勢は、調整機構312cによって調整することができる。
【0156】
図14は、
図13の光学系調整装置300を用いた光学系調整手順である。まずは、ステップS1201にて、ステージ307に被検光学系312を設置する。これにより、シャックハルトマンセンサー101の受光面には略平行な光が入射する。また、この光は貫通穴が空いたミラー312bによって反射されたものなので、実施例1〜6と同様、SHS101に入射するのはドーナツ状の光束となる。
【0157】
被検光学系312を設置した後には、ステップS1202にて、実施例1のステップS102と同様に、CCDセンサー102でスポット像を取得する。ここでも、実施例1と同様、ドーナツ状の領域内だけにスポット像が形成される。
【0158】
スポット像を取得した後には、ステップS1203にて、実施例1のステップS103と同様の手法で各マイクロレンズでの光線傾斜を算出する。この光線傾斜分布には被検光学系312の収差が反映されるので、この光線傾斜を取得したことは、被検光学系312の収差を計測したことに相当する。
【0159】
光線傾斜分布を取得した後には、ステップS1204にて、ミラー312aとミラー312bの位置ずれを算出する。位置ずれを算出する際には、基本的には実施例7のステップS1105と同様の手法を用いる。但し、実施例7と比較して調整対象物の数が1つから2つに増えているので、位置ずれのパラメータも増える。増えたパラメータを全て求めるには、より多くのZernike係数を取得し、これを変換行列で変換すれば良い。
【0160】
ミラー312aとミラー312bの位置ずれを算出した後には、その位置ずれ量を抑制する様に、ステージ307と調整機構312cを調整する。調整後には、再びシャックハルトマンセンサー101に入射する光の波面を計測し、調整後の被検光学系312の収差を改めて評価しても良い。
【0161】
実施例8の光学系調整方法では、被検光学系の出射光の光束がドーナツ状の形状を示す場合であっても、被検光学系の収差を正確に計測し、その調整を精密に行うことができる。
【0162】
実施例8では反射光学系を調整する例を示したが、透明レンズから構成される光学系であっても、同様の手法で調整することができる。
【0163】
[実施例9]
実施例9では、ドーナツ状の光束を出力する光学機器の収差計測装置300の例を示す。
図16は、収差計測装置400の模式図である。この装置は、被検光学機器412を固定するホルダー407と、被検光学機器412の出射光の波面を計測するシャックハルトマンセンサー101から構成される。被検光学機器412の出射光の光束はドーナツ状の形状を示し、これがシャックハルトマンセンサー101に入射する。
【0164】
図17は、実施例9における収差計測手順である。ステップS1301で被検光学機器412をホルダー407に設置し、ステップS1302ではCCDカメラ102でスポット像を取得する。ステップS1303では実施例1のステップ103と同様の手法で各マイクロレンズでの光線傾斜(∂w/∂ξ、∂w/∂η)を算出し、ステップS1304ではこれを2次元に亘って積分して波面データwを取得する。この波面データは光学機器412の収差を含むため、被検光学機器412の収差データに相当する。
【0165】
ステップS1304にて収差データを算出する際には、ステップ1303で算出したシャックハルトマンセンサー101の受光面上での光線傾斜データ(∂w/∂ξ、∂w/∂η)から光線を逆方向に追跡してもよい。これにより、被検光学機器412の光出射面での光波面を求めることができる。
【0166】
例えば、取得した収差データに基づいて製造した被検光学機器412の良否判定を行い、不図示のモニターに表示しても良いし、その収差が小さくなる様な加工を施しても良い。
【0167】
実施例9の収差計測装置では、被検光学機器の出射光の光束がドーナツ状の形状を示す場合であっても、その収差を正確に計測することができる。