(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位相シフト層および前記メタル層の各層を構成する金属、あるいは、前記位相シフト層、前記メタル層および前記反射率低減層の各層を構成する金属は、同一の金属であることを特徴とする請求項4または5に記載の位相シフトマスクブランク。
前記反射率低減層は、金属とケイ素と、窒素、酸素および炭素のうちの少なくとも一種とを含む材料、あるいは、金属と、窒素、酸素および炭素のうちの少なくとも一種とを含む材料からなることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
第1に、表示装置用位相シフトマスクおよび位相シフトマスクブランクにおいては、「波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率の変動幅(変化量)(適宜、所定の透過率波長依存性という)」が小さい(例えば5.5%以内)位相シフト膜は、実現することが基本的に非常に難しいという事情がある(課題1)。この理由は、必須の光学特性(位相差、透過率)を満たすべく位相シフト膜を構成する各層の組成および膜厚が調整され(こちらが優先される)、これに伴い位相シフト膜の透過率波長依存性は決まってしまうので、透過率波長依存性だけを独立して自由に制御(独立して所望の値に調整)することができないからである。このようなことから、具体的に位相シフト膜の層構成および各層の材料を特定した具体例について、実際に透過率、反射率を測定した値は報告されていない。
そこで、上記課題1に対し、透過率波長依存性に優れる新たな位相シフト膜の提供が望まれる。
【0012】
上記のことに加えて、特に、高透過率(例えば15%以上、特に18%以上)タイプの表示装置用位相シフトマスクおよび位相シフトマスクブランクにおいては、透過率波長依存性が小さい(例えば5.5%以内)位相シフト膜は、実現することが格別に難しいという事情がある(課題2)。この理由は、(1)高透過率に適した材料が限られること、(2)一般的には高透過率にするに従い、透過率波長依存性が大きくなる傾向があること、(3)この傾向のため、透過率波長依存性を小さくするためには、透過率波長依存性を大きく低減させることが必要となるが、このことは基本的に難しいこと、が挙げられる。
【0013】
このような高透過率を有する位相シフト膜において、例えば、所定の透過率波長依存性が5.5%より小さい透過率波長依存性を有する具体例は報告されていない(課題3)。
【0014】
第2に、上述の特許文献1において従来提案されている表示装置用の位相シフトマスクに用いられる位相シフト膜は、位相シフト膜パターンを形成するために用いるレジスト膜のパターニング時に使用するレーザー描画光の反射によるレジスト膜への影響を考慮して設計されていない。このため、レーザー描画光(通常350nm〜436nmの波長域のある1つの波長)に対する位相シフト膜の表面反射率が20%を超える。その結果、レジスト膜中に定在波が発生し、レジスト膜パターンのエッジ部分のラフネスが悪化する。これに伴い、位相シフト膜パターンのエッジ部分のラフネスが悪化するという問題がある。
上述の特許文献2においては、位相反転膜が、複合波長の露光光に対して30%以下、望ましくは15%以下の反射率を有することは記載されているが、それを実現するための膜構成や膜材料についての具体例は報告されていない。
なお、レーザー描画光の波長における表面反射率は、理想的には、10%以下、さらには5%以下であるが、各種光学特性等を満たした上で表面反射率10%以下を実現することは実際には非常に難しいという事情がある。
詳しくは、遮光膜の場合は、遮光性(光学濃度)を満たせば良いので反射防止層を設け表面反射率の特性を付加することは比較的容易である。これに対し、位相シフト膜の場合は、反射防止層を設けることで位相差および透過率も変動してしまうので、位相差および透過率を満たした上で表面反射率の特性を兼備させる膜設計を行うことは容易でない。したがって、位相シフト膜に、位相差、透過率に加え、透過率波長依存性を満たした上で表面反射率の特性を兼備させることはさらに容易ではない(課題4)。
なお、特許文献2に記載された反射率のレベル(例えば「15%以下」)を超えることが要望される。具体的には、例えば、波長365nm以上436nm以下の範囲における反射率が10%以下や、波長350nm以上436nm以下の範囲における反射率が15%以下である具体例は報告されていない。
【0015】
さらに、上述の特許文献1、2において従来提案されている表示装置用の位相シフトマスクに用いられる位相シフト膜は、波長365nm以上436nm以下の範囲における裏面反射率を考慮して設計されていない。
このため、裏面反射率が相対的に低い場合、それに応じて膜による露光光の熱吸収による熱膨張によるパターン位置ずれを生じるおそれがある。
したがって、位相シフト膜に、位相差、透過率に加え、所定の透過率波長依存性を満たした上で裏面反射率の特性を兼備させることは容易ではない(課題5)。
【0016】
本発明は、上述した課題1に対し、透過率波長依存性に優れる新たな位相シフト膜の提供を第1の目的とする。
本発明は、上述した課題1に対し、透過率波長依存性に優れると共に他の特性についても優れる新たな位相シフト膜の提供を第2の目的とする。
本発明は、上述した課題2、3に対し、高透過率であっても、透過率波長依存性に優れる新たな位相シフト膜の提供を第3の目的とする。
本発明は、上述した課題1、2、3に対し、透過率波長依存性に格別に優れる新たな位相シフト膜の提供を第4の目的とする。
本発明は、上述した課題4に対し、透過率波長依存性に優れると共に表面反射率特性についても優れる新たな位相シフト膜の提供を第5の目的とする。
本発明は、上述した課題5に対し、透過率波長依存性に優れると共に裏面反射率特性についても優れる新たな位相シフト膜の提供を第6の目的とする。
本発明は、上記本発明に係る位相シフト膜を備えた、表示装置製造用の位相シフトマスクブランク、この位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法、並びにこの位相シフトマスクを用いた表示装置の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、透過率波長依存性に優れる新たな位相シフト膜を提供すべく鋭意研究開発を行った。
まず、ZrとSiとを含有するZrSi系材料は、露光光の波長域(i線、h線、g線を含む複数波長)で透過率が15%以上の透過率を有する高透過率用の位相シフト膜に用いられる材料として好適であることを本発明者は見出した。
また、位相シフト膜は、高透過率にするほど透過率の波長依存性を小さくすることが相対的に難しいと考えられていた。具体的には、各種の調整をしたとしても、例えば、波長365nm以上436nm以下の範囲(適宜、「所定の波長範囲」という)において、通常、透過率が20%程度であると、所定の波長範囲における透過率波長依存性(透過率の変動幅)は10%程度までしか低減できないと考えられていた。
さらに、位相シフト膜では、「波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性」(適宜、「所定の透過率波長依存性」という)は、ZrSi系材料(例えばZrSiON、ZrSiN、ZrSiO)に比べ、MoSi系材料(例えばMoSiN、MoSiON、MoSiOCN)の方が、透過率波長依存性が良いと考えられていた。
さらに、本発明者は、検討の過程で、ZrSi系材料(例えばZrSiON、ZrSiN、ZrSiO)は、組成を調整して(例えば高酸化にして)高透過率(例えば波長365nmで16%、20%、30%、40%の透過率)にするに従い、所定の透過率波長依存性がどんどん大きくなる傾向があること(例えば所定の透過率波長依存性は、11%、18%、21%、25%、になる)ことを知見した。この傾向のため、所定の透過率波長依存性を低減することが非常に難しいことを知見した。
【0018】
さらに、本発明者は、ZrSi系の単層膜(特に、酸素(O)が含まれるZrSiON、ZrSiOなど)は、透過率の面内分布の制御が非常に難しいという問題があることを知見した。この理由は、酸素(O)が含まれたZrSi系の単層膜は、波長300nmから波長400nm辺りで、透過率が急激に変化する(透過率−波長曲線の角度が急峻になる)特性があるからと考えられる。このとき、酸素(O)が含まれたZrSi系の単層膜の膜厚が変動すると、透過率−波長曲線も短波長側あるいは長波長側に移動し、透過率が変動する。このため、酸素(O)が含まれたZrSi系の単層膜の膜厚の面内ばらつきによって、透過率の面内分布の制御が難しくなる。
【0019】
以上のような状況下、本発明者は、位相シフト層(例えばZrSiON。高透過率用に組成を調整したもの)と、メタル層(例えばZrSi。上記位相シフト層に含まれるZrの含有率や、上記位相シフト層に含まれるZrとSiの合計含有率よりも、Zrの含有率やZrとSiの合計含有率が多いZrSi)とを組み合わせることによって、意外にも、上記一般認識に反し、所定の波長範囲において高透過率(例えば、15%以上、16%以上、さらには18%以上)とした場合であっても(機能5)、所定の透過率波長依存性を、上記一般認識と比べ相対的に非常に小さくできる(例えば5.5%以内にできる)こと(機能1)、すなわち機能5と機能1の双方の要件を満たすことができること、を知見した。このとき、メタル層(例えばZrSi。上記位相シフト層に含まれるZrの含有率や、位相シフト層に含まれるZrとSiの合計含有率よりも、Zrの含有率やZrとSiの合計含有率が多いZrSi)は、位相シフト層(例えばZrSiON)が単層で有する所定の透過率波長依存性を調整できる作用・機能を有することを知見した。具体的には、メタル層(例えばZrSi)は、位相シフト層(例えばZrSiON)が単層で有する所定の透過率波長依存性を所定値(所定幅)(例えば10%)以上低減できる(例えば所定の透過率波長依存性を15%以上の値から5.5%以内の値に10%以上低減できる)作用・機能(透過率波長依存性低減機能)を有することを知見した。
透過率が高くて(例えば15%以上、16%以上、さらには18%以上であって)、所定の波長依存性がこれだけ低い(例えば5.5%以内である)と、解像性が非常にいい。この理由は、365nm以外の波長の光(405nm、436nm)が365nmの光に干渉する量が少なくなるからである。解像性が非常によいことから、微細なパターン(例えば1.8μm以下)を有する表示装置の製造が可能となる。
さらに、本発明では、所定の波長範囲において、透過率も反射率も単層の場合に比べ、波長依存性を小さくできる(透過率−波長曲線の傾きはフラットに(傾きは小さく)なる)ので、成膜過程で膜厚が面内(例えば中心部と外周部で)で多少ばらついても透過率および反射率の面内分布は非常に良いものとなる。このため、微細なパターンのCD精度の面内ばらつきが小さい表示装置の製造が可能となる。
【0020】
さらに、本発明者は、主に露光光に対する透過率と位相差とを調整する位相シフト層(例えば、ZrSiON)と露光光に対する透過率波長依存性を調整する機能を有するメタル層(露光光に対する透過率波長依存性を低減させる機能を有するメタル層(例えば、ZrSi))との組み合わせによって、所定の透過率波長依存性が4.0%より小さく透過率波長依存性が格別に優れる位相シフト膜(課題3)を実現できることを知見した。
【0021】
また、本発明者は、以上のことは、メタル層を、MoSi、TiSiなどの金属シリサイド系材料で置き換えた場合においても、程度の差はあるものの、同様であることを知見した。
【0022】
本発明者は、以上のことは、位相シフト層(MoSiON)(露光波長に対し1%から12%程度の透過率を有する通常透過率用から、露光波長に対し15%以上の透過率を有する高透過率用までを含む)と、メタル層(MoSi)とを組み合わせた場合や、位相シフト層(TiSiON)(通常透過率用から高透過率用までを含む)と、メタル層(TiSi)とを組み合わせた場合においても、程度の差はあるものの、同様であることを知見した。
【0023】
本発明者は、さらに検討を進めた結果、2層以上の積層膜からなる位相シフト膜において、所定の位相シフト層(例えば、ZrSiON、MoSiON、TiSiONなど)と、所定のメタル層(例えばZrSi、MoSi、TiSiなど)と、を組み合わせる(順不同)ことによって、所定の透過率波長依存性を非常に小さくできる(例えば5.5%以内にできる)こと(機能1)、および裏面反射率を制御できること(機能4)ことを知見した。
【0024】
また、本発明者は、3層の積層膜からなる位相シフト膜において、基板側から順次、所定の位相シフト層(例えば、ZrSiON、MoSiON、TiSiONなど)と、所定のメタル層(例えばZrSi、MoSi、TiSiなど)と、所定の反射率低減層(例えば、ZrSiON、MoSiON、TiSiON、CrO、CrOCN、CrONなど)とを組み合わせることによって、所定の透過率波長依存性を小さくできる(機能1)(例えば5.5%以内にできる)ことと、表面反射率を低減できること(機能2)、しかも表面反射率を小さくできる(例えば10%以下)こと(機能3)、裏面反射率を制御できること(機能4)、のすべてを兼ね備えることができることを知見した。
【0025】
なお、上記2層以上または3層の積層膜からなる位相シフト膜において、最上層をCr系の材料を使用した位相シフト膜は、その上に形成するレジスト膜の密着性が良好である。
【0026】
本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
表示装置製造用の位相シフトマスクブランクにおいて、
透明基板と、該透明基板上に形成された位相シフト膜とを備え、
前記位相シフト膜は、2層以上の積層膜からなり、
前記位相シフト膜は、主に露光光に対する透過率と位相差とを調整する機能を有する位相シフト層と、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性を調整する機能を有するメタル層とを少なくとも有し、
前記位相シフト膜は、露光光に対する前記位相シフト膜の透過率と位相差とが所定の光学特性を有し、
前記位相シフト層は、金属とケイ素と、窒素および酸素のうちから選ばれる一つまたは二つ以上の元素とを含む材料からなり、
前記メタル層は、金属とケイ素で構成される材料、または、金属とケイ素と、炭素、フッ素、窒素、酸素のうちの少なくとも一種とで構成される材料からなり、
前記メタル層に含まれる金属の含有率は、前記位相シフト層に含まれる金属の含有率よりも多い、若しくは、前記メタル層に含まれる金属とケイ素の合計含有率は、前記位相シフト層に含まれる金属とケイ素の合計含有率よりも多く、
前記位相シフト膜は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性が、5.5%以内である
ことを特徴とする位相シフトマスクブランク。
(構成2)
表示装置製造用の位相シフトマスクブランクにおいて、
透明基板と、該透明基板上に形成された位相シフト膜とを備え、
前記位相シフト膜は、主に露光光に対する透過率と位相差とを調整する機能を有する位相シフト層と、該位相シフト層の上側に配置され、前記位相シフト膜の表面側より入射される光に対する反射率を低減させる機能を有する反射率低減層と、前記位相シフト層と前記反射率低減層との間に配置され、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性を調整する機能を有するメタル層を有し、
前記位相シフト層、前記メタル層および前記反射率低減層の積層構造により、露光光に対する前記位相シフト膜の透過率と位相差とが所定の光学特性を有し、
前記位相シフト層は、金属とケイ素と、窒素および酸素のうちの少なくとも一種とを含む材料からなり、
前記メタル層は、金属とケイ素で構成される材料、または、金属とケイ素と、炭素、フッ素、窒素、酸素のうちの少なくとも一種とで構成される材料からなり、
前記メタル層に含まれる金属の含有率は、前記位相シフト層に含まれる金属の含有率よりも多い、若しくは、前記メタル層に含まれる金属とケイ素の合計含有率は、前記位相シフト層に含まれる金属とケイ素の合計含有率よりも多く、
前記位相シフト膜は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性が、5.5%以内である
ことを特徴とする位相シフトマスクブランク。
(構成3)
前記位相シフト膜は、波長365nmにおける透過率が、1%以上50%以下の範囲であることを特徴とする構成1または2に記載の位相シフトマスクブランク。
(構成4)
前記位相シフト膜は、波長365nmにおける透過率が、15%以上50%以下の範囲であることを特徴とする構成1または2に記載の位相シフトマスクブランク。
(構成5)
前記位相シフト膜は、前記位相シフト膜の表面側より入射される光に対する前記位相シフト膜の表面反射率が、365nm〜436nmの波長域において10%以下であることを特徴とする構成2から4のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
(構成6)
前記位相シフト膜は、前記位相シフト膜の表面側より入射される光に対する前記位相シフト膜の表面反射率が、350nm〜436nmの波長域において15%以下であることを特徴とする構成2から5のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
(構成7)
前記透明基板の裏面側より入射される光に対する前記位相シフト膜の裏面反射率が、365nm〜436nmの波長域において20%以上であることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
(構成8)
前記反射率低減層は、金属とケイ素と、窒素、酸素および炭素のうちの少なくとも一種とを含む材料、あるいは、金属と、窒素、酸素および炭素のうちの少なくとも一種とを含む材料からなることを特徴とする構成2から7のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
(構成9)
前記位相シフト層を構成する金属は、Zr、Mo、Ti、Ta、およびWのうちのいずれか一つであり、
前記メタル層を構成する金属は、Zr、Mo、Ti、Ta、およびWのうちのいずれか一つであり、
前記反射率低減層を構成する金属は、Zr、Mo、Cr、Ti、Ta、およびWのうちのいずれか一つであることを特徴とする構成2から8のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
(構成10)
前記位相シフト層および前記メタル層の各層を構成する金属、あるいは、前記位相シフト層、前記メタル層および前記反射率低減層の各層を構成する金属は、同一の金属であることを特徴とする構成1から9のいずれか記載の位相シフトマスクブランク。
(構成11)
前記位相シフト膜上に形成された遮光膜を備えることを特徴とする構成1から10のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
(構成12)
前記遮光膜は、前記遮光膜の表面側より入射される光に対する前記遮光膜の膜面反射率が、350nm〜436nmの波長域において15%以下であることを特徴とする構成11記載の位相シフトマスクブランク。
【0027】
(構成13)
表示装置製造用の位相シフトマスクの製造方法において、
構成1から10のいずれかに記載の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上に、レジスト膜を形成し、350nm〜436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いた描画処理、および現像処理により、レジスト膜パターンを形成する工程と、
前記レジスト膜パターンをマスクにして前記位相シフト膜をエッチングして位相シフト膜パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
(構成14)
表示装置製造用の位相シフトマスクの製造方法において、
構成11または12に記載の位相シフトマスクブランクの遮光膜上に、レジスト膜を形成し、350nm〜436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いた描画処理、および現像処理により、レジスト膜パターンを形成する工程と、
前記レジスト膜パターンをマスクにして前記遮光膜をエッチングして遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンをマスクにして位相シフト膜をエッチングして位相シフト膜パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
(構成15)
表示装置の製造方法において、
基板上にレジスト膜が形成されたレジスト膜付き基板に対して、構成13又は14記載の位相シフトマスクの製造方法によって得られた位相シフトマスクを、前記レジスト膜に対向して配置する位相シフトマスク配置工程と、
i線、h線及びg線を含む複合露光光を前記位相シフトマスクに照射して、前記位相シフト膜パターンを転写するパターン転写工程と
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、透過率波長依存性に優れる新たな位相シフト膜を提供できる。
本発明によれば、透過率波長依存性に優れると共に他の特性についても優れる新たな位相シフト膜を提供できる。
本発明によれば、高透過率であっても、透過率波長依存性に優れる新たな位相シフト膜を提供できる。
本発明によれば、透過率波長依存性に格段に優れる新たな位相シフト膜を提供できる。
本発明によれば、透過率波長依存性に優れると共に表面反射率特性についても優れる新たな位相シフト膜を提供できる。
本発明によれば、透過率波長依存性に優れると共に裏面反射率特性についても優れる新たな位相シフト膜を提供できる。
本発明によれば、上記本発明に係る位相シフト膜を備えた、表示装置製造用の位相シフトマスクブランク、この位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法、並びにこの位相シフトマスクを用いた表示装置の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付してその説明を簡略化ないし省略する場合がある。
【0031】
(実施の形態1)
実施の形態1では、位相シフトマスクブランクについて説明する。
【0032】
図1は位相シフトマスクブランク10の膜構成を示す模式図である。
位相シフトマスクブランク10は、露光光に対して透明な(透光性を有する)透明基板20と、透明基板20上に配置された位相シフト膜30とを備える。
図1においては、位相シフト膜30は、透明基板20側から順に配置された、位相シフト層31とメタル層33とを有する積層構造であるが、位相シフト膜30は、透明基板20側から順に配置された、位相シフト層31とメタル層33とを有する積層構造であっても良い。
【0033】
位相シフト層31は、透明基板20の主表面上に配置される。位相シフト層31は、露光光に対する透過率と位相差とを調整する機能を有する。
位相シフト層31は、金属(M)とケイ素(Si)と、窒素(N)および酸素(O)のうちの少なくとも一種とを含む材料で形成される。また、位相シフト層31は、金属(M)とケイ素(Si)と、窒素(N)および酸素(O)のうちの少なくとも一種とを含み、さらに、炭素(C)およびフッ素(F)のうちの少なくとも一種を含む材料で形成されてもよい。例えば、位相シフト層31を形成する材料として、金属シリサイド酸化窒化物(MSiON)、金属シリサイド窒化物(MSiN)、金属シリサイド酸化物(MSiO)、金属シリサイド酸化炭化窒化物(MSiOCN)、金属シリサイド炭化窒化物(MSiCN)、金属シリサイド酸化炭化物(MSiOC)、金属シリサイド酸化窒化フッ化物(MSiONF)、金属シリサイド窒化フッ化物(MSiNF)、金属シリサイド酸化フッ化物(MSiOF)、金属シリサイド酸化炭化窒化フッ化物(MSiOCNF)、金属シリサイド炭化窒化フッ化物(MSiCNF)、金属シリサイド酸化炭化フッ化物(MSiOCF)などが挙げられる。
位相シフト層31を構成する金属(M)は、代表的にはジルコニウム(Zr)であり、次いでモリブデン(Mo)である。位相シフト層31を構成する他の金属(M)としては、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)などの遷移金属が挙げられる。
例えば、位相シフト層31を形成する材料としては、ZrSiON、ZrSiN、ZrSiO、ZrSiOCN、ZrSiCN、ZrSiCO、ZrSiONF、ZrSiNF、ZrSiOF、ZrSiOCNF、ZrSiCNF、ZrSiCOFが挙げられる。
例えば、位相シフト層31を形成する材料としては、MoSiON、MoSiN、MoSiO、MoSiOCN、MoSiCN、MoSiCO、MoSiONF、MoSiNF、MoSiOF、MoSiOCNF、MoSiCNF、MoSiCOFが挙げられる。
例えば、位相シフト層31を形成する材料としては、TiSiON、TiSiN、TiSiO、TiSiOCN、TiSiCN、TiSiCO、TiSiONF、TiSiNF、TiSiOF、TiSiOCNF、TiSiCNF、TiSiCOFが挙げられる。
位相シフト層31には、本発明の効果を逸脱しない範囲で、上記に挙げた以外の元素が含まれてもよい。また、位相シフト層31の金属シリサイド(MSi)の金属(M)とケイ素(Si)の比率(原子比)は、本発明の位相シフト膜30の光学特性を得るために、M:Si=1:1以上1:9以下が好ましい。位相シフト膜30を、ウェットエッチングによりパターニングする場合には、パターン断面を良好にする視点から、位相シフト層31の金属(M)とケイ素(Si)の比率(原子比)は、M:Si=1:1以上1:8以下、さらに好ましくは、M:Si=1:1以上1:4以下が望ましい。
また、位相シフト層31を構成する金属(M)は、上述に挙げた金属を1種以上含む合金であっても構わない。
位相シフト層31は、スパッタリング法により形成することができる。
【0034】
反射率低減層32は、位相シフト層31の上側に配置される。反射率低減層32は、位相シフト膜30の表面側(すなわち、反射率低減層32に対して透明基板20側とは反対側)より入射される光に対する反射率を低減させる機能を有する。
反射率低減層32は、金属(M)とケイ素(Si)と、窒素(N)および酸素(O)のうちの少なくとも一種とを含む材料で形成できる。また、反射率低減層32は、金属(M)とケイ素(Si)と、窒素(N)および酸素(O)のうちの少なくとも一種とを含み、さらに、炭素(C)およびフッ素(F)のうちの少なくとも一種を含む材料で形成されてもよい。例えば、反射率低減層32を形成する材料としては、上述した位相シフト層31を形成する材料と同様の材料を使用することができる。
また、反射率低減層32は、金属(M)と、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)およびフッ素(F)のうちの少なくとも一種を含む材料、あるいは、金属(M)とケイ素(Si)と、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)およびフッ素(F)のうちの少なくとも一種を含む材料、で形成できる。例えば、反射率低減層32を形成する材料として、金属酸化物(MO)、金属酸化窒化物(MON)、金属酸化炭化窒化物(MOCN)、金属酸化炭化物(MOC)、金属酸化フッ化物(MOF)、金属酸化窒化フッ化物(MONF)、金属酸化炭化窒化フッ化物(MOCNF)、金属酸化炭化フッ化物(MOCF)、金属窒化物(MN)、金属炭化窒化物(MCN)、金属フッ化物(MF)、金属窒化フッ化物(MNF)、金属炭化窒化フッ化物(MCNF)、金属炭化フッ化物(MCF)などが挙げられる。
反射率低減層32を構成する金属(M)は、代表的にはジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)である。反射率低減層32を構成する他の金属(M)としては、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)などの遷移金属が挙げられる。
例えば、反射率低減層32を形成する材料としては、ZrSiON、ZrSiN、ZrSiO、ZrSiOCN、ZrSiCN、ZrSiCO、ZrSiONF、ZrSiNF、ZrSiOF、ZrSiOCNF、ZrSiCNF、ZrSiCOFが挙げられる。
例えば、反射率低減層32を形成する材料としては、MoSiON、MoSiN、MoSiO、MoSiOCN、MoSiCN、MoSiCO、MoSiONF、MoSiNF、MoSiOF、MoSiOCNF、MoSiCNF、MoSiCOFが挙げられる。
例えば、反射率低減層32を形成する材料としては、TiSiON、TiSiN、TiSiO、TiSiOCN、TiSiCN、TiSiCO、TiSiONF、TiSiNF、TiSiOF、TiSiOCNF、TiSiCNF、TiSiCOFが挙げられる。
例えば、反射率低減層32は、クロム酸化物(CrO)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化窒化物(CrOCN)、クロム酸化炭化物(CrCO)、クロム酸化フッ化物(CrOF)、クロム酸化窒化フッ化物(CrONF)、クロム酸化炭化窒化フッ化物(CrOCNF)、クロム酸化炭化フッ化物(CrOCF)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化窒化物(CrCN)、クロムフッ化物(CrF)、クロム窒化フッ化物(CrNF)、クロム炭化窒化フッ化物(CrCNF)、クロム炭化フッ化物(CrCF)などのクロム系材料で形成できる。
反射率低減層32には、本発明の効果を逸脱しない範囲で、上記に挙げた以外の元素が含まれてもよい。
また、反射率低減層32の材料が、金属シリサイド(MSi)系材料の場合、金属(M)とケイ素(Si)の比率(原子比)は、本発明の位相シフト膜30の光学特性を得るために、M:Si=1:1以上1:9以下が好ましい。位相シフト膜30を、ウェットエッチングによりパターニングする場合には、パターン断面を良好にする視点から、反射率低減層32の金属(M)とケイ素(Si)の比率(原子比)は、M:Si=1:2以上1:8以下、さらに好ましくは、M:Si=1:2以上1:4以下が望ましい。
また、位相シフト層31を構成する金属(M)は、上述に挙げた金属を1種以上含む合金であっても構わない。
反射率低減層32は、スパッタリング法により形成することができる。
【0035】
メタル層33は、位相シフト層31と反射率低減層32との間に配置される。メタル層33は、主に位相シフト層31が単層で有する透過率波長依存性を調整できる作用・機能を有する。具体的には、メタル層33は、主に位相シフト層31が単層で有する透過率波長依存性を所定値(所定幅)以上低減できる作用・機能を有する。メタル層33は、位相シフト膜30が積層体全体で有する透過率波長依存性が所定値以下となるよう制御する作用・機能を有する。これらの作用・機能に加え、メタル層33は、露光光に対する透過率を調整する機能を有するとともに、反射率低減層32と組み合わさって、位相シフト膜30の表面側(透明基板20側とは反対側)より入射される光に対する反射率を低減させる機能を有する。メタル層33は、位相シフト層31と組み合わさって、位相シフト膜30に透明基板20の裏面側より入射される光に対する裏面反射率を高くする機能を有する。透明基板20の裏面は、透明基板20の2つの主面のうち位相シフト膜30とは反対側の主面を意味する。
メタル層33は、金属(M)とケイ素(Si)とで構成される材料、または、金属(M)とケイ素(Si)と、炭素(C)、フッ素(F)、窒素(N)、酸素(O)のうちの少なくとも一種とで構成される。また、メタル層33に含まれる金属の含有率は、位相シフト層31に含まれる金属の含有率よりも多いか、又はメタル層33に含まれる金属とケイ素の合計含有率は、位相シフト層31に含まれる金属とケイ素の合計含有率よりも多い材料からなる。
例えば、メタル層33を形成する材料として、金属シリサイド(MSi)、金属シリサイド炭化物(MSiC)、金属シリサイド炭化フッ化物(MSiCF)が挙げられる。
メタル層33を構成する金属(M)は、代表的にはジルコニウム(Zr)である。メタル層33を構成する他の金属(M)としては、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)などの遷移金属が挙げられる。
例えば、メタル層33を形成する材料として、ZrSi、ZrSiC、ZrSiCF、ZrSiN、ZrSiCNなどが挙げられる。
例えば、メタル層33を形成する材料として、MoSi、MoSiC、MoSiCF、MoSiN、MoSiCNなどが挙げられる。
例えば、メタル層33を形成する材料として、TiSi、TiSiC、TiSiCF、TiSiN、TiSiCNなどが挙げられる。
メタル層33が金属シリサイド(MSi)である場合は、本発明の位相シフト膜30の光学特性を得るために、メタル層33の金属(M)とケイ素(Si)の比率(原子比)は、M:Si=1:1以上 1:9以下が好ましい。位相シフト膜30を、ウェットエッチングによりパターニングする場合には、パターン断面を良好にする視点から、メタル層33の金属(M)とケイ素(Si)の比率(原子比)は、M:Si=1:2以上1:8以下、さらに好ましくは、M:Si=1:2以上1:4以下が望ましい。
また、メタル層33を構成する金属(M)は、上述に挙げた金属を1種以上含む合金であっても構わない。
また、メタル層33を備えることにより、位相シフト膜のシート抵抗が下がるため、位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクのチャージアップを防止することができる。メタル層33を備えていない場合、チャージアップによって、異物の付着や、静電気破壊が起こりやすい。
メタル層33には、本発明の効果を逸脱しない範囲で、上記に挙げた以外の元素が含まれてもよい。
メタル層33は、スパッタリング法により形成することができる。
【0036】
メタル層33は、反射率低減層32の金属元素(M)含有率(原子%)よりも高い金属元素(M)含有率(原子%)を有するか、メタル層33は、反射率低減層32の金属元素(M)とケイ素(Si)の合計含有率(原子%)よりも、高い金属元素(M)とケイ素(Si)の合計含有率(原子%)とする。
メタル層33の金属元素(M)含有率と反射率低減層32の金属元素(M)含有率との差は、若しくは、メタル層33の金属元素(M)とケイ素(Si)の合計含有率と、反射率低減層32の金属元素(M)とケイ素(Si)の合計含有率の差は、好ましくは、30〜90原子%であり、より好ましくは、50〜80原子%である。なお、上記金属元素(M)含有率、若しくは金属元素(M)とケイ素(Si)の合計含有率の差が、60〜80原子%であると、メタル層33と反射率低減層32との界面の上記波長域(365nmの波長、または、365nm〜436nmの波長域)における反射率を高めることができるので、より反射率低減効果が発揮されるので好ましい。
なお、メタル層33のエッチング速度は、金属(M)とケイ素(Si)の金属シリサイド系材料に、炭素(C)、フッ素(F)、窒素(N)、酸素(O)を含有させることにより調整することができる。例えば、金属(M)とケイ素(Si)の金属シリサイド系材料に、炭素(C)やフッ素(F)や窒素(N)を含有させることにより、ウェットエッチング速度を遅くすることができる。また、メタル層33の上下に形成されている位相シフト層31および反射率低減層32のエッチング速度は、金属(M)とケイ素(Si)の金属シリサイド系材料に、炭素(C)やフッ素(F)や窒素(N)を含有させることにより、ウェットエッチング速度を遅くすることができ、金属(M)とケイ素(Si)の金属シリサイド系材料に、酸素(O)を含有させることにより、ウェットエッチング速度を速くすることができる。これらのことにより、位相シフト膜30を構成している各層のエッチング速度を制御して、エッチング後の位相シフト膜30の断面形状を良好にすることができる。
なお、メタル層33は、位相シフト層31の金属元素(M)含有率(原子%)よりも高い金属元素(M)含有率(原子%)を有している。
メタル層33の金属元素(M)含有率と位相シフト層31の金属元素(M)含有率との差は、好ましくは、30〜90原子%であり、より好ましくは、50〜80原子%である。メタル層33と位相シフト層31の金属元素(M)含有率の差が、60〜80原子%であると、メタル層33と位相シフト層31との界面の上記波長域(365nmの波長、または、365nm〜436nmの波長域)における裏面反射率を高めることができるので、より裏面反射率を高めることができるので好ましい。
金属元素(M)含有率は、X線光電子分光装置(XPS、ESCA)を用いて測定することができる。
【0037】
位相シフト膜3における位相シフト層31の厚さは、例えば、50nm以上140nm以下、さらには60nm以上120nm以下の範囲であることが好ましいが、これに限定されるものではない。裏面反射率を高くする観点からは、位相シフト層31の厚さは、70nm以上95nm以下、さらに好ましくは、70nm以上85nm以下が好ましい。
位相シフト膜3におけるメタル層33の厚さは、位相シフト層の厚さよりも、薄いことが好ましい。位相シフト膜3におけるメタル層33の厚さは、反射率低減層の厚さよりも、薄いことが好ましい。位相シフト膜3におけるメタル層33の厚さは、金属(M)の種類により異なるので一概に言えないが、例えば、2.5nm以上50nm以下、さらには2.5nm以上40nm以下の範囲であることが好ましいが、これに限定されるものではない。メタル層を2.5nm未満の厚さで基板面内にわたって均一に成膜することが実質的に困難である。また、50nmを超える厚さでメタル層を成膜すると、透過率が低下し、例えば、波長365nmにおける位相シフト膜3の透過率が1%を下回る可能性がある。表面反射率を高くする観点からは、メタル層33の厚さは厚い方が良い。裏面反射率を高くする観点からは、メタル層33の厚さは25nm以上である。上述の観点から、メタル層33の膜厚は、好ましくは25nm以上50nm以下、さらに好ましくは25nm以上40nm以下が望ましい。
位相シフト膜3における反射率低減層32の厚さは、例えば、15nm以上40nm以下、さらには20nm以上35nm以下の範囲であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0038】
位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々は、365nm〜436nmの波長域において、2.0以上の屈折率を有することが好ましい。2.0以上の屈折率を有すると、所望の光学特性(透過率および位相差)を得るために必要な位相シフト膜30の膜厚を薄膜化することができる。したがって、該位相シフト膜30を備えた位相シフトマスクブランク10を用いて作製される位相シフトマスクは、優れたパターン断面形状および優れたCD均一性を有する位相シフト膜パターンを備えることができる。
屈折率は、n&kアナライザーやエリプソメータなどを用いて測定することができる。
【0039】
位相シフト層31、メタル層33の積層構造、もしくは、位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の積層構造により、露光光に対する位相シフト膜30の透過率および位相差は所定の光学特性を有すると共に、透過率波長依存性(透過率の変動幅)が所定の値を有する。
露光光に対する位相シフト膜30の透過率は、位相シフト膜30として必要な値を満たす。位相シフト膜30の透過率は、露光光に含まれる所定の波長の光(以下、代表波長という)に対して、好ましくは、1%以上50%以下である。高透過率タイプの場合、位相シフト膜30の透過率は、15%以上50%以下である。すなわち、露光光がj線(波長:313nm)、i線(波長:365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長:436nm)を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した透過率を有する。また、例えば、露光光がi線、h線およびg線を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、i線、h線およびg線のいずれかに対して、上述した透過率を有する。
露光光に対する位相シフト膜30の位相差は、位相シフト膜30として必要な値を満たす。位相シフト膜30の位相差は、露光光に含まれる代表波長の光に対して、好ましくは、160°〜200°であり、より好ましくは、170°〜190°である。これにより、露光光に含まれる代表波長の光の位相を160°〜200°に変えることができる。このため、位相シフト膜30を透過した代表波長の光と透明基板20のみを透過した代表波長の光との間に160〜200°の位相差が生じる。すなわち、露光光が313nm以上436nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した位相差を有する。例えば、露光光がi線、h線およびg線を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、i線、h線およびg線のいずれかに対して、上述した位相差を有する。
位相シフト膜30は、波長が365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性が、5.5%以内である。
位相シフト膜30の透過率、透過率波長依存性および位相差は、位相シフト膜30を構成する位相シフト層31およびメタル層33、もしくは、位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々の材料、組成および厚さを調整することにより制御することができる。このため、この実施の形態では、位相シフト膜30の透過率、透過率波長依存性および位相差が上述した所定の光学特性を有するように、位相シフト層31およびメタル層33、もしくは、位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々の材料、組成および厚さが調整されている。なお、位相シフト膜30の透過率および透過率波長依存性は、主に、位相シフト層31およびメタル層33の材料、組成および厚さに影響される。位相シフト膜30の屈折率および位相差(位相シフト量)は、主に、位相シフト層31の材料、組成および厚さに影響される。
透過率および位相差は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
【0040】
位相シフト膜30の表面側より入射される光に対する位相シフト膜30の表面反射率は、365nm〜436nmの波長域において10%以下、及び/又は、位相シフト膜30の表面側より入射される光に対する位相シフト膜30の表面反射率は、350nm〜436nmの波長域において15%以下である。位相シフト膜30の表面反射率が365nm〜436nmの波長域において10%以下、及び/又は、位相シフト膜30の表面反射率が350nm〜436nmの波長域において15%以下であると、位相シフト膜上にレジスト膜を形成して、レーザー描画機などによりパターン描画を行う際、描画に使用する光とその反射光が重なり合うことによって生じる定在波の影響を受けることが少ない。このため、パターン描画時において、位相シフト膜30上のレジスト膜パターン断面のエッジ部分のラフネスを抑制でき、パターン精度を向上させることが可能となる。このため、優れたパターン精度を有する位相シフトマスクを形成することができる。また、露光光に対する表面反射率が低減するため、位相シフトマスクを使用してパターン転写を行って表示装置を製造する場合に、表示装置基板からの反射光に起因する転写パターンのぼやけ(フレア)やCDエラーを防止することができる。
位相シフト膜30の表面反射率の変動幅は、好ましくは、365nm〜436nmの波長域において10%以下、さらに好ましくは、8%以下、さらに好ましくは、5%以下、さらに好ましくは3%以下である。また、位相シフト膜30の表面反射率の変動幅は、好ましくは、350nm〜436nmの波長域において、12%以下、さらに好ましくは、10%以下、さらに好ましくは、8%以下、さらに好ましくは5%以下である。
位相シフト膜30の、透明基板20の裏面側より入射される光に対する裏面反射率は、i線(365nm)、h線(405nm)及びg線(436nm)のうちの1つ、好ましくは2つ以上の波長において、さらに好ましくは365nm〜436nmの波長域において、15%以上、より好ましくは18%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。これにより、位相シフト膜30が露光光を熱吸収し熱膨張によって生じるパターン位置ずれを低減できる。また、位相シフト膜30の裏面反射率の変動幅は、365nm〜436nmの波長域において20%以下、さらに好ましくは、15%以下、さらに好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下とするのが好ましい。
位相シフト膜30の表面反射率およびその変動幅は、位相シフト膜30を構成する位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々の屈折率、消衰係数および厚さを調整することにより制御することができる。消衰係数および屈折率は、組成を調整することにより制御することができるため、この実施の形態では、位相シフト膜30の表面反射率およびその変動幅が上述した所定の物性を有するように、位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々の材料、組成および厚さが調整されている。位相シフト膜30の裏面反射率についても同様である。なお、位相シフト膜30の表面反射率およびその変動幅は、主に、メタル層33および反射率低減層32の各々の材料、組成および厚さに影響される。また、位相シフト膜30の裏面反射率およびその変動幅は、主に、メタル層33および位相シフト層31の各々の材料、組成および厚さに影響される。
表面反射率および裏面反射率は、分光光度計などを用いて測定することができる。表面反射率の変動幅は、350nm〜436nmの波長域、もしくは、365nm〜436nmの波長域における最大の反射率と最小の反射率との差から求められる。また、裏面反射率の変動幅は、365nm〜436nmの波長域における最大の反射率と最小の反射率との差から求められる。
【0041】
位相シフト層31は、組成の均一な単一の膜からなる場合であってもよいし、組成の異なる複数の膜からなる場合であってもよいし、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜からなる場合であってもよいし、組成の異なる複数の膜からなると共にその複数の膜はそれぞれ厚さ方向に組成が連続的に変化する膜からなる場合であってもよい。メタル層33および反射率低減層32についても同様である。
【0042】
図2は位相シフトマスクブランク10の他の膜構成を示す模式図である。
図2に示すように、位相シフトマスクブランク10は、透明基板20と位相シフト膜30との間に遮光性膜パターン40を備えるものであってもよい。
【0043】
位相シフトマスクブランク10が遮光性膜パターン40を備える場合、遮光性膜パターン40は、透明基板20の主表面上に配置される。遮光性膜パターン40は、露光光の透過を遮る機能を有する。
遮光性膜パターン40を形成する材料は、露光光の透過を遮る機能を有する材料であれば、特に制限されない。例えば、クロム系材料、前述した金属(M)(M:Zr、Mo、Ti、Ta、およびWのうちのいずれか一つ)を含む材料、前述した金属(M)とケイ素(Si)を含む材料などが挙げられる。クロム系材料として、クロム(Cr)、または、クロム(Cr)と、炭素(C)および窒素(N)のうちの少なくとも一種とを含むクロム化合物が挙げられる。その他、クロム(Cr)と、酸素(O)およびフッ素(F)のうちの少なくとも一種とを含むクロム化合物、または、クロム(Cr)と、炭素(C)および窒素(N)のうちの少なくとも一種とを含み、さらに、酸素(O)およびフッ素(F)のうちの少なくとも一種を含むクロム化合物が挙げられる。例えば、遮光性膜パターン40を形成する材料として、Cr、CrC、CrN、CrO、CrCN、CrON、CrCO、CrCONが挙げられる。
遮光性膜パターン40は、スパッタリング法により成膜した遮光性膜を、エッチングによりパターニングすることにより形成することができる。
【0044】
位相シフト膜30と遮光性膜パターン40とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度は、好ましくは3以上であり、より好ましくは、4以上、さらに好ましくは5以上である。
光学濃度は、分光光度計もしくはODメーターなどを用いて測定することができる。
【0045】
遮光性膜パターン40は、組成が均一な単一の膜からなる場合であってもよいし、組成が異なる複数の膜からなる場合であってもよいし、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜からなる場合であってもよいし、組成の異なる複数の膜からなると共にその複数の膜はそれぞれ厚さ方向に組成が連続的に変化する膜からなる場合であってもよい。
【0046】
なお、
図1、2において、位相シフトマスクブランク10は、位相シフト膜30上にレジスト膜を備えるものであってもよい。
【0047】
図3は位相シフトマスクブランク10の他の膜構成を示す模式図である。
本発明の位相シフトマスクブランク10は、透明基板20と、この透明基板20上に形成された位相シフト膜30とを備え、さらに位相シフト30膜上に遮光膜45を形成した構成であってもよい。また、遮光膜45上にレジスト膜(図示省略)を形成した構成であってもよい。
この場合、遮光膜45としては、遮光性膜パターン40で説明した内容と同様の内容を適用できる。例えば、遮光膜45の材料としては、遮光性膜パターン40を形成する材料と同様の材料を使用できる。必要に応じて、遮光膜45の表面側に入射される光に対する遮光膜45の膜面反射率を低減するための表面反射率低減層47を形成した反射防止機能を有する遮光膜45としても構わない。この場合、遮光膜45は、位相シフト膜30側から露光光の透過を遮る機能を有する遮光層46と、表面反射率低減層47とを備えた構成となる。なお、遮光膜45が、表面反射率低減層47を備える場合、表面反射率低減層は、365nm〜436nmの波長域において10%以下、及び/又は、表面反射率低減層47の膜面反射率が350nm〜436nmの波長域において15%以下となる特性を有することが好ましい。また、必要に応じて、位相シフト膜30と遮光性膜パターン40との間(
図2参照)、位相シフト膜30と遮光膜45との間、遮光膜45上に、他の機能膜を形成することもできる。前記機能膜としては、エッチング阻止膜やエッチングマスク膜などが挙げられる。
【0048】
次に、この実施の形態の位相シフトマスクブランク10の製造方法について説明する。
位相シフトマスクブランク10は、以下の準備工程と位相シフト膜形成工程とを行うことによって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0049】
(準備工程)
準備工程では、先ず、透明基板20を準備する。透明基板20の材料は、使用する露光光に対して透光性を有する材料であれば、特に制限されない。例えば、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラスが挙げられる。透明基板20は、例えば、表面反射ロスが無いとしたときに、露光光に対して85%以上の透過率、好ましくは90%以上の透過率を有する。
遮光性膜パターン40を備える位相シフトマスクブランク10を製造する場合にあっては、透明基板20上に、スパッタリングにより、例えば、クロム系材料からなる遮光性膜を形成する。その後、遮光性膜上にレジスト膜パターンを形成し、レジスト膜パターンをマスクにして遮光性膜をエッチングして、遮光性膜パターン40を形成する。その後、レジスト膜パターンを剥離する。これらの工程は、遮光性膜パターン40の無い位相シフトマスクブランク10を製造する場合にあっては、省略する。
【0050】
(位相シフト膜形成工程)
位相シフト膜形成工程では、透明基板20上に、スパッタリングにより、位相シフト膜30を形成する。ここで、透明基板20上に遮光性膜パターン40が形成されている場合、遮光性膜パターン40を覆うように、位相シフト膜30を形成する。
【0051】
位相シフト膜30は、透明基板20の主表面上に位相シフト層31を成膜し、位相シフト層31上にメタル層33を成膜することにより形成される。もしくは、位相シフト膜30は、透明基板20の主表面上に位相シフト層31を成膜し、位相シフト層31上にメタル層33を成膜し、メタル層33上に反射率低減層32を成膜することにより形成される。
【0052】
位相シフト層31および反射率低減層32の成膜は、金属(M)、金属(M)化合物、金属シリサイド(MSi)または金属シリサイド(MSi)化合物を含む1つまたは2つ以上のスパッタターゲットを使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスと、酸素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、二酸化炭素ガス、炭化水素系ガス、フッ素系ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。炭化水素系ガスとしては、例えば、メタンガス、ブタンガス、プロパンガス、スチレンガス等が挙げられる。
メタル層33の成膜は、金属(M)、金属(M)化合物、金属シリサイド(MSi)または金属シリサイド(MSi)化合物を含む1つまたは2つ以上のスパッタターゲットを使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガス雰囲気で行われる。メタル層33が炭素を含む場合は、メタル層33の成膜は、上記不活性ガスと上記炭化水素系ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。メタル層33が窒素、酸素、フッ素を含む場合は、メタル層33の成膜は、上記位相シフト層31および反射率低減層32の成膜と同様に行われる。
【0053】
位相シフト層31およびメタル層33を成膜する際、もしくは、位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32を成膜する際、位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々の材料、組成および厚さは、位相シフト膜30の透過率および位相差が上述した所定の光学特性を有し、かつ、位相シフト膜30の透過率波長依存性(透過率の変動幅)が上述した所定の特性を有し、さらに、位相シフト膜30の表面反射率およびその変動幅、裏面反射率およびその変動幅が上述した所定の特性を有するように調整される。位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々の組成は、スパッタガスの組成および流量などにより制御することができる。位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々の厚さは、スパッタパワー、スパッタリング時間などにより制御することができる。また、スパッタリング装置がインライン型スパッタリング装置の場合、基板の搬送速度によっても、位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々の厚さを制御することができる。
【0054】
位相シフト層31が、組成の均一な単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を変えずに1回だけ行う。位相シフト層31が、組成の異なる複数の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、成膜プロセス毎にスパッタガスの組成および流量を変えて複数回行う。位相シフト層31が、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を変化させながら1回だけ行う。位相シフト層31が、組成の異なる複数の膜からなると共にその複数の膜はそれぞれ厚さ方向に組成が連続的に変化する膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を変化させながら複数回行う。
メタル層33の成膜および反射率低減層32の成膜についても同様である。成膜プロセスを複数回行う場合、スパッタターゲットに印加するスパッタパワーを小さくすることができる。
【0055】
位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32は、スパッタリング装置を用いて、透明基板20を装置外に取り出すことによって大気に曝すことなく、連続して成膜することが好ましい。装置外に取り出さずに、連続して成膜することにより、意図しない各層の表面酸化や表面炭化を防止することができる。各層の意図しない表面酸化や表面炭化は、位相シフト膜30上に形成されたレジスト膜を描画する際に使用するレーザー光や表示装置基板上に形成されたレジスト膜に位相シフト膜パターンを転写する際に使用する露光光に対する反射率を変化させたり、また、酸化部分や炭化部分のエッチングレートを変化させるおそれがある。
位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32は、インライン型スパッタリング装置やクラスター型スパッタリング装置を用いて、大気に曝すことなく、連続して成膜することができる。
【0056】
なお、
図3に示すように位相シフトマスクブランク10が透明基板20上に位相シフト膜30と遮光膜45を備える位相シフトマスクブランク10を製造する場合、上述で説明した位相シフト膜形成工程により位相シフト膜30を形成した後、位相シフト膜30上に遮光膜45を形成する。
(遮光膜形成工程)
遮光膜形成工程では、位相シフト膜30上に、スパッタリングにより、遮光膜45を形成する。
遮光膜45は、位相シフト膜30上に遮光層46、必要に応じて遮光層46上に表面反射率低減層47を成膜することにより形成される。遮光層46および表面反射率低減層47の成膜は、金属(M)、金属(M)化合物、金属シリサイド(MSi)または金属シリサイド(MSi)化合物を含む1つまたは2つ以上のスパッタターゲットを使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスと、酸素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、二酸化炭素ガス、炭化水素系ガス、フッ素系ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気、あるいは前記不活性ガスの少なくとも一種を含むスパッタガス雰囲気で行われる。炭化水素系ガスとしては、例えば、メタンガス、ブタンガス、プロパンガス、スチレンガス等が挙げられる。
遮光層46および表面反射率低減層47を成膜する際、遮光層46、表面反射率低減層47の各々の材料、組成および厚さは、位相シフト膜30と遮光膜45とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度や、膜面反射率が上述した所定の光学特性を有するように調整される。遮光層46、表面反射率低減層47各々の組成は、スパッタガスの組成および流量などにより制御することができる。遮光層46、表面反射率低減層47の各々の厚さは、スパッタパワー、スパッタリング時間などにより成語することができる。また、スパッタリング装置がインライン型スパッタリング装置の場合、基板の搬送速度によっても、遮光層46および表面反射率低減層47の各々の厚さを制御することができる。
遮光層46および表面反射率低減層47の各層が、組成の均一な単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を変えずに1回だけ行う。遮光層46および表面反射率低減層47の各層が、組成の異なる福栖の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、成膜プロセス毎にスパッタガスの組成および流量を変えて複数回行う。遮光層46および表面反射率低減層47の各層が、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を変化させながら1回だけ行う。遮光層46および表面反射率低減層47の各層が、組成の異なる複数の膜からなると共にその複数の膜はそれぞれ厚さ方向に組成が連続的に変化する膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を変化させながら複数回行う。
遮光層46および表面反射率低減層47は、インライン型スパッタリング装置やクラスター型スパッタリング装置を用いて、大気に曝すことなく、連続して成膜することができる。
なお、レジスト膜を備える位相シフトマスクブランク10を製造する場合、次に、遮光膜上にレジスト膜を形成する。
【0057】
この実施の形態1の位相シフトマスクブランク10は、位相シフト膜30として、位相シフト層31とメタル層33を有しているので、位相差および透過率の所定の光学特性を満たした上で、365nm以上436nm以下の波長範囲において、透過率波長依存性に優れる(5.5%以内)。さらに、位相シフト層31、メタル層33、反射率低減層32を備えた位相シフト膜30を有する位相シフトマスクブランク10は、位相差および透過率の所定の光学特性を満たした上で、365nm以上436nm以下の波長範囲において、透過率波長依存性に優れる(5.5%以内)と共に表面反射率特性についても優れ(10%以下)、裏面反射率特性についても優れる。
【0058】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1の位相シフトマスクブランク10を使用した位相シフトマスクの製造方法について説明する。実施形態2は実施形態2−1と実施形態2−2とを含む。実施の形態2のうち実施の形態2−1は、透明基板20上に位相シフト膜30とレジスト膜が形成された位相シフトマスクブランク10を使用した位相シフトマスクの製造方法である。また、実施の形態2のうち実施の形態2−2は、透明基板20上に位相シフト膜30と遮光膜45とレジスト膜が形成された位相シフトマスクブランク10を使用した位相シフトマスクの製造方法である。実施の形態2−1の位相シフトマスクの製造方法は、以下のレジスト膜パターン形成工程と位相シフト膜パターン形成工程とを行うことによって位相シフトマスクが製造される。また、実施の形態2−1の位相シフトマスクの製造方法は、以下のレジスト膜パターン形成工程と遮光膜パターン形成工程と位相シフト膜パターン形成工程とを行うことによって位相シフトマスクが製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0059】
(レジスト膜パターン形成工程)
レジスト膜パターン形成工程では、先ず、
図1又は
図2で説明した実施の形態1の位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。例えば、レジスト膜は、後述する350nm〜436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものが使用されるか、又は365nm〜436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものが使用される。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm〜436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光、もしくは、365nm〜436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所定のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、位相シフト膜30上にレジスト膜パターンを形成する。
なお、位相シフトマスクブランク10が、既に、位相シフト膜30上にレジスト膜を備えるものである場合は、上記した位相シフト膜30上にレジスト膜を形成する工程は省略する。
【0060】
(遮光膜パターン形成工程)
実施の形態2−2の位相シフトマスクの製造方法における遮光膜パターン形成工程では、レジスト膜パターンをマスクにして遮光膜45(
図3)をエッチングして遮光膜パターンを形成する。
遮光膜45をエッチングするエッチング媒質(エッチング溶液、エッチングガス)は、遮光膜45を構成する遮光層46、表面反射率低減層47の各々を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。
具体的には、例えば、金属シリサイド系材料をウェットエッチングするエッチング液として、フッ化水素酸、珪フッ化水素酸、及びフッ化水素アンモニウムから選ばれた少なくとも一つのフッ素化合物と、過酸化水素、硝酸、及び硫酸から選ばれた少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング液や、過酸化水素とフッ化アンモニウムと、リン酸、硫酸、硝酸から選ばれた少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング液が挙げられる。金属シリサイド系材料層をドライエッチングするエッチングガスとして、フッ素系ガス、塩素系ガスが挙げられる。フッ素系ガスとしては、例えば、CF4ガス、CHF3ガス、SF6ガスや、これらのガスにO2ガスを混合したものが挙げられる。
また、例えば、クロム系材料をウェットエッチングするエッチング液として、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング溶液や、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスからなるエッチングガスが挙げられる。
(位相シフト膜パターン形成工程)
位相シフト膜パターン形成工程では、実施の形態2−1の位相シフトマスクの製造方法においては、先ず、レジスト膜パターンをマスクにして位相シフト膜30をエッチングして、位相シフト膜パターンを形成する。一方、実施の形態2−2の位相シフトマスクの製造方法においては、レジスト膜パターンをマスクにして遮光膜45をエッチングして、遮光膜パターンを形成した後、遮光膜パターンをマスクにして位相シフト膜30をエッチングして、位相シフト膜パターンを形成する。
位相シフト膜30をエッチングするエッチング媒質(エッチング溶液、エッチングガス)は、位相シフト膜30を構成する位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。
具体的には、例えば、金属シリサイド系材料をウェットエッチングするエッチング液として、フッ化水素酸、珪フッ化水素酸、及びフッ化水素アンモニウムから選ばれた少なくとも一つのフッ素化合物と、過酸化水素、硝酸、及び硫酸から選ばれた少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング液や、過酸化水素とフッ化アンモニウムと、リン酸、硫酸、硝酸から選ばれた少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング液が挙げられる。金属シリサイド系材料層をドライエッチングするエッチングガスとして、フッ素系ガス、塩素系ガスが挙げられる。フッ素系ガスとしては、例えば、CF4ガス、CHF3ガス、SF6ガスや、これらのガスにO2ガスを混合したものが挙げられる。
また、例えば、クロム系材料をウェットエッチングするエッチング液として、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング溶液や、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスからなるエッチングガスが挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、レジスト膜パターンを剥離する。
実施の形態2−2の位相シフトマスクの製造方法においては、遮光膜45をエッチングするエッチング媒質によって、遮光膜パターンを除去してもよいし、位相シフト膜パターン上に該位相シフト膜パターンサイズと異なるパターンサイズを有する遮光膜パターンを形成する場合においては、再度、遮光膜パターン上にレジスト膜パターンを形成した後、レジスト膜パターンをマスクにして遮光膜パターン形成工程を行う。
【0061】
この実施の形態2の位相シフトマスクは、位相シフト膜30として、位相シフト層31とメタル層33を有しているので、位相差および透過率の所定の光学特性を満たした上で、365nm以上436nm以下の波長範囲において、透過率波長依存性に優れる(5.5%以内)。さらに、位相シフト層31、メタル層33、反射率低減層32を備えた位相シフト膜30を有する位相シフトマスクブランク10は、位相差および透過率の所定の光学特性を満たした上で、365nm以上436nm以下の波長範囲において、透過率波長依存性に優れる(5.5%以内)と共に表面反射率特性についても優れ(10%以下)、裏面反射率特性についても優れる。また、位相シフトマスクの特性に優れることに対応して、表示装置基板上に転写される転写パターンの解像度を向上できる特性を有する。
【0062】
(実施の形態3)
実施の形態3では、表示装置の製造方法について説明する。表示装置は、以下のマスク載置工程とパターン転写工程とを行うことによって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0063】
(載置工程)
載置工程(配置工程)では、実施の形態2で製造された位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置(配置)する。ここで、位相シフトマスクは、そのパターン形成面側が、露光装置の投影光学系を介して表示装置基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
【0064】
(パターン転写工程)
パターン転写工程では、位相シフトマスクに露光光を照射して、表示装置基板上に形成されたレジスト膜に位相シフト膜パターンを転写する。露光光は、365nm〜436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光、313nm〜436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光や、313nm〜436nmの波長域からある波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光である。例えば、露光光は、i線、h線およびg線を含む複合光や、j線、i線、h線およびg線を含む混合光や、i線の単色光である。露光光として複合光を用いると、露光光強度を高くしてスループットを上げることができるため、表示装置の製造コストを下げることができる。
【0065】
この実施の形態3の表示装置の製造方法によれば、高解像度、高精細の表示装置を製造することができる。例えば、微細パターン(例えば1.8μmのコンタクトホール)を形成できる。
【0066】
(実施の形態4)
実施の形態4では、位相シフトマスクブランクの具体的な態様例について説明する。
【0067】
前述したように、本発明者は、3層の積層膜からなる位相シフト膜において、基板側から順次、所定の位相シフト層(例えば、ZrSiON、MoSiON、TiSiONなど)と、所定のメタル層(中間層)(例えばZrSi、MoSi、TiSiなど)と、所定の反射率低減層(例えば、ZrSiON、MoSiON、TiSiON、CrO、CrOCN、CrONなど)とを組み合わせることによって、所定の透過率波長依存性を小さくできる(機能1)(例えば5.5%以内にできる)ことと、表面反射率を低減できること(機能2)、しかも表面反射率を小さくできる(例えば10%以下)こと(機能3)、裏面反射率を制御できること(機能4)、のすべてを兼ね備えることができることを知見した。これに加え、高透過率の特性(機能5)を兼ね備えることができることを知見した。
【0068】
上記の代表的な例としては、透明基板側から順次、ZrSiONからなる位相シフト層/ZrSiからなるメタル層/ZrSiONからなる反射率低減層とした3層構成の位相シフト膜が挙げられる。
また、透明基板側から順次、MoSiONからなる位相シフト層/MoSiからなるメタル層/MoSiONからなる反射率低減層とした3層構成の位相シフト膜が挙げられる。
これらを基本として、各層の材料を、各層において選択できる材料として上記で列記した材料で置換した態様が本発明に含まれる。
【0069】
なお、本発明者は、透明基板側から順次、ZrSiONからなる位相シフト層/ZrSiからなるメタル層/ZrSiONからなる反射率低減層とした3層構成の位相シフト膜において、ZrSiからなるメタル層の膜厚を薄くする(例えば2.5nm以上20nm未満、例えば10nmとする)と、透過率は上がるが、反射率も上がる。反射率の許容範囲を上げれば(例えば、「20%以下」まで上限を上げれば)、透過率は45%程度までは可能であることを知見した。
本発明者は、低反射率の範囲(例えば10%以下)を維持した場合では、高透過率は30%程度までは可能であることを知見した。低反射率の範囲(例えば10%以下)を維持する場合は、ZrSiからなるメタル層の膜厚は、例えば20nm以上35nm以下が適する。
【0070】
また、本発明者は、例えば、上記ZrSi系の3層構成の位相シフト膜において、ZrSiからなるメタル層の膜厚を厚くする(例えば40〜60nm)と、通常透過率(3%以上15%未満、特に3%以上12%以下)や、低透過率(1%以上3%未満)が可能であることを知見した。
【0071】
なお、例えば、透明基板側から順次、ZrSiONからなる位相シフト層/ZrSiからなるメタル層/ZrSiONからなる反射率低減層とした3層構成の位相シフト膜において、ZrSiONからなる位相シフト層の酸化度を上げた場合は、高透過率になる(透過率が上がる)。
また、例えば、上記において、ZrSiONからなる位相シフト層の透過率を上げた場合(高透過率に調整した場合)は、その分高透過率になる。また、このとき、透過率が上がった分だけZrSiからなるメタル層の膜厚を厚くすることが可能となる。
【0072】
また、本発明者は、例えば、透明基板側から順次、ZrSiONからなる位相シフト層/ZrSiからなるメタル層/ZrSiONからなる反射率低減層とした3層構成の位相シフト膜において、反射率低減層をZrSiONからCrOCNやMoSiONに置換すると、通常の透過率(例えば6%程度)に制御できることを知見した。
【0073】
上述したように、ZrSiONからなる位相シフト層、ZrSiONからなる反射率低減層と、ZrSiからなるメタル層との組み合わせによって、透過率が15%以上と高透過率ながら、所定の透過率波長依存性が4.0%より小さく透過率波長依存性が格別に優れる位相シフト膜が得ることが可能となることを本発明者は知見した。
【0074】
本発明においては、前述したZrSiを含む材料の層(適宜、ZrSi系の層という)が2層、ZrSi系の層が3層、ZrSi系の層が多層、である積層構造の位相シフト膜が含まれる。他の金属シリサイド系材料層に関しても同様である。ZrSi系の層が多層である積層構造の位相シフト膜の場合、ZrSi系材料は耐薬品性、ウェットエッチング速度が高く、パターン断面形状も良いよいという利点がある。
【0075】
なお、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率を2%以下、さらには透過率が2%未満1%以上とした低透過率の位相シフト層に対する要望がある。
例えば、位相シフト層の透過率が6%程度であっても、位相シフトマスクにおける位相シフト部を透過した露光光によりレジストは感光してしまい、その分レジストが減ってしまう。これに対し、上記要望を達成することで、位相シフトマスクにおける位相シフト部を透過した露光光による被転写体に形成されたレジスト膜の減膜による影響をより低減できる。
本発明では、上記2層以上の位相シフト層、あるいは、上記3層構成の位相シフト層において、例えば、メタル層の厚さを制御することによって、あるいは、位相シフト層や反射率低減層を透過率の低い材料に変更することによって、上記要望を達成することができることを知見した。
【0076】
本発明において、透明基板側から順次、ZrSiONからなる位相シフト層/ZrSiからなるメタル層とした2層構成の位相シフト層、あるいは、透明基板側から順次、ZrSiONからなる位相シフト層/ZrSiからなるメタル層/ZrSiONからなる反射率低減層とした3層構成の位相シフト層において(明細書中でZiSi系2層またはZiSi系3層と略記することがある)、メタル層をZrSiからTiSiに置換した場合、上記と同様のことが可能である。メタル層をZrSiからMoSiの材料に置換した場合についても上記と同様のことが可能である。
【0077】
本発明において、上記ZiSi系2層またはZiSi系3層で、メタル層をZrSiからMoSiに置換した場合、上記と同様のことが可能である。ただし、メタル層のエッチング速度は変化する。
本発明において、上記ZiSi系2層またはZiSi系3層で、反射率低減層をZrSiONからMoSiONに置換した場合、高透過率は維持できないが、通常の透過率は得られる。その他の点では、上記と同様のことが可能である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下の実施例1、2は、本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
実施例1は実施例1−1〜1−3を含む。
【0079】
(実施例1−1)
(位相シフトマスクブランク)
実施例1−1では、QZ(透明基板)/ZrSiON/ZrSi/ZrSiONの構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
実施例1−1の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜は、透明基板側から順に配置された、位相シフト層(ZrSiON、膜厚73nm)とメタル層(ZrSi、膜厚30nm)と反射率低減層(ZrSiON、膜厚30nm)とから構成される。
透明基板として、大きさが800mm×920mmであり、厚さが10mmである合成石英ガラス基板(QZ)を用いた。透明基板の両主表面は鏡面研磨されている。以下の実施例、比較例において使用した透明基板の両主表面も同様に鏡面研磨されている。
【0080】
透明基板上に位相シフト層、メタル層、反射率低減層が積層された位相シフト膜の波長365nmにおける屈折率は2.55、波長365nmにおける消衰係数は0.127であった。
なお、位相シフト膜の屈折率および消衰係数は、n&k Technology社製のn&k Analyzer 1280(商品名)を用いて測定した。
【0081】
位相シフト層(ZrSiON)の各元素の含有率は、Zrは22原子%、Siは22原子%、Oは14原子%、Nは42原子%であった。
メタル層(ZrSi)の各元素の含有率は、Zrは50原子%、Siは50原子%であった。
反射率低減層(ZrSiON)の各元素の含有率は、Zrは17原子%、Siは17原子%、Oは20原子%、Nは46原子%であった。
なお、上記各元素の含有率は、X線光電子分光法(XPS)により測定した。以下の実施例、比較例において、元素の含有率の測定には、それぞれ同じ装置を用いた。
【0082】
位相シフト膜は、上述した3層構造により、透過率は、365nmの波長において19.2%であり、405nmの波長において21.7%であり、436nmの波長において23.1%であった。また、この位相シフト膜は、透過率の変動幅(透過率波長依存性)が、365nm〜436nmの波長域において、3.9%であった。
【0083】
位相シフト膜の位相差は、上述した3層構造により、365nmの波長において199.7°であり、405nmの波長において174.2°であり、436nmの波長において160.3°であった。また、この位相シフト膜は、位相差の変動幅が、365nm〜436nmの波長域において、39.4°であった。
【0084】
図4は、実施例1−1の位相シフトマスククランクの位相シフト膜の透過率スペクトルを示す。
なお、透過率および位相差は、レーザーテック社製のMPM−100(商品名)を用いて測定した。以下の実施例、比較例において、透過率や位相差の測定には、それぞれ同じ装置を用いた。尚、実施例、比較例における透過率の値は、いずれもAir基準の値である。
【0085】
位相シフト膜は、表面反射率が、350nmの波長において10.5%であり、365nmの波長において7.9%であり、405nmの波長において6.3%であり、413nm波長において6.2%であり、436nmの波長において5.7%であった。また、この位相シフト膜は、表面反射率の変動幅が、365nm〜436nmの波長域において、2.2%であった。また、この位相シフト膜は、表面反射率の変動幅が、350nm〜436nmの波長域において、4.8%であった。
図5は実施例1−1の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の表面反射率スペクトルを示す。
なお、表面反射率は、島津製作所社製のSo1idSpec−3700(商品名)を用いて測定した。以下の実施例、比較例において、表面反射率の測定には、それぞれ同じ装置を用いた。
【0086】
位相シフト膜は、裏面反射率が、365nmの波長において24.5%であり、405nmの波長において40.2%であり、436nmの波長において44.4%であった。また、この位相シフト膜は、裏面反射率の変動幅が、365nm〜436nmの波長域において、20.0%であった。
図6は実施例1−1の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の裏面反射率スペクトルを示す。
なお、裏面反射率は、島津製作所社製のSo1idSpec−3700(商品名)を用いて測定した。以下の実施例、比較例において、裏面反射率の測定には、それぞれ同じ装置を用いた。
【0087】
(位相シフトマスクブランクの製造)
実施例1−1の位相シフトマスクブランクは、以下の方法により製造した。
先ず、透明基板である合成石英ガラス基板を準備した。
その後、透明基板をスパッタリング装置のスパッタ室に搬入した。
その後、スパッタ室に配置されたZrSiターゲット(Zr:Si=1:2)(原子(%)比)に5.0kWのスパンタパワーを印加し、ArガスとO2ガスとN2ガスとの混合ガスをスパッタ室内に導入しながら、透明基板の主表面上にZrSiONからなる膜厚73nmの位相シフト層を成膜した。ここで、混合ガスは、Arが50sccm、O2が5sccm、N2が50sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その後、ZrSiターゲット(Zr:Si=1:2)(原子(%)比)に2.0kWのスパッタパワーを印加し、Arガスをスパッタ室内に導入しながら、位相シフト層上にZrSiからなる膜厚30nmのメタル層を成膜した。ここで、Arガスが100sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その後、ZrSiターゲット(Zr:Si=1:2)(原子(%)比)に5.0kWのスパッタパワーを印加し、ArガスとO2ガスとN2ガスとの混合ガスをスパッタ室内に導入しながら、メタル層上にZrSiONからなる膜厚30nmの反射率低減層を成膜した。ここで、混合ガスは、Arが50sccm、O2が10sccm、N2が50sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その後、位相シフト層(ZrSiON、膜厚73nm)とメタル層(ZrSi、膜厚30nm)と反射率低減層(ZrSiON、膜厚30nm)とから構成される位相シフト膜が形成された透明基板をスパッタリング装置から取り出し、洗浄を行った。
【0088】
(位相シフトマスクの製造)
上述した位相シフトマスクブランクを用いて、以下の方法により位相シフトマスクを製造した。
先ず、上述した位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上に、ノボラック系のポジ型のフォトレジストからなるレジスト膜を形成した。この際、位相シフト膜に対してHMDS処理を施した後、レジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画機により、波長413nmのレーザー光を用いて、レジスト膜に所定のパターン(1.8μmのラインアンドスペースパターン)を描画した。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、位相シフト膜上にレジスト膜パターンを形成した。このとき、定在波の影響が原因と思われる、レジスト膜パターン断面のエッジ部分のラフネスの悪化は確認されなかった。
その後、レジスト膜パターンをマスクにして位相シフト膜をエッチングして、位相シフト膜パターンを形成した。位相シフト膜を構成する位相シフト層、メタル層および反射率低減層の各々は、ジルコニウム(Zr)とケイ素(Si)を含むジルコニウムシリサイド系材料から形成される。このため、位相シフト層、メタル層および反射率低減層は、同じエッチング溶液によりエッチングすることができる。ここでは、位相シフト膜をエッチングするエッチング溶液として、過酸化水素とフッ化アンモニウムとリン酸との混合溶液を純水で希釈したジルコニウムシリサイドエッチング溶液を用いた。
その後、レジスト剥離液を用いて、レジスト膜パターンを剥離した。
【0089】
上述した位相シフトマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクの位相シフト膜パターン断面は、マスク特性に影響ない程度のものであった。
なお、位相シフトマスクの位相シフト膜パターン断面は、電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJSM7401F(商品名))を用いて観察した。以下の実施例、比較例において、位相シフト膜パターン断面の観測には、それぞれ同じ装置を用いた。
【0090】
上述した位相シフトマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきは、55nmであり、良好であった。CDばらつきは、目標とするラインアンドスペースパターン(ラインパターンの幅=1.8μm、スペースパターンの幅:1.8μm)からのずれ幅である。
なお、位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきは、セイコーインスツルメンツナノテクノロジー社製SIR8000を用いて測定した。以下の実施例、比較例において、位相シフト膜パターンのCDばらつきの測定には、それぞれ同じ装置を用いた。
【0091】
上述した位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクは、位相差および透過率の所定の光学特性を満たした上で、波長365nmにおいて高透過率(19.2%)とした場合であっても、365nm以上436nm以下の波長範囲において、透過率波長依存性に優れる(4.0%)と共に表面反射率特性についても優れ(7.9%以下)、裏面反射率特性についても優れ(24.5%以上)、各特性を兼ね備えるものであった。また、位相シフトマスクの特性に優れることに対応して、パターン転写時の位置ずれも抑制されるとともに、表示装置基板上に転写される転写パターンの解像度が向上し、パターン線幅が1.8μmのラインアンドスペースパターンがCDエラー生じることなく転写されることを確認した。なお、表示装置の製造工程における位相シフトマスクを使用したパターン転写工程は、開口数(NA)が0.1の等倍露光のプロジェクション露光であって、露光光はi線、h線およびg線を含む複合光とした。以降、実施例1−2、1−3、実施例2、比較例1における表示装置の製造工程は、この露光条件で行った。
【0092】
(実施例1−2)
(位相シフトマスクブランク)
実施例1−2では、QZ(透明基板)/ZrSiON/MoSi/ZrSiONの構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
実施例1−2では、実施例1−1の位相シフトマスクブランクとはメタル層だけが異なる。
実施例1−2の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜は、透明基板側から順に配置された、位相シフト層(ZrSiON、膜厚73nm)とメタル層(MoSi、膜厚10nm)と反射率低減層(ZrSiON、膜厚30nm)とから構成される。
【0093】
位相シフト層(ZrSiON)および反射率低減層(ZrSiON)の各元素の含有率の値は実施例1−1と同じである。
メタル層(MoSi)の各元素の含有率は、Moは33原子%、Siは67原子%であった。
【0094】
位相シフト膜は、上述した3層構造により、透過率は、実施例1−1に比べ低下し、通常の透過率3%〜10%の範囲内であり、この位相シフト膜の透過率の変動幅(透過率波長依存性)は、365nm〜436nmの波長域において、5.5%以内であった。
【0095】
位相シフト膜は、上述した3層構造により、位相差は、365nmの波長において、160°〜200°の範囲内であった。
【0096】
また、位相シフト膜の表面反射率は、365nm〜436nmの波長域において、10%以下であった。さらに、位相シフト膜の表面反射率は、350nm〜436nmの波長域において15%以下であった。
また、位相シフト膜の裏面反射率も、365nm〜436nmの波長域において、20%以上であった。
【0097】
(位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクの製造)
実施例1−2では、メタル層の成膜時に、MoSiターゲット(Mo:Si=1:2)(原子(%)比)に1.5kWのスパッタパワーを印加し、Arガスをスパッタ室内に導入しながら、位相シフト層上にMoSiからなる膜厚10nmのメタル層を成膜した。ここで、Arガスが120sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その他の点は実施例1−1と同様の方法により、実施例1−2の位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクを製造した。
【0098】
上述した位相シフトマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきは、62nmであり、良好であった。上述した位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクは、位相差および透過率の所定の光学特性を満たし、透過率波長依存性に優れると共に表面反射率特性、裏面反射率特性についても優れ、各特性を兼ね備えるものであった。また、位相シフトマスクの特性に優れることに対応して、パターン転写時の位置ずれも抑制されるとともに、表示装置基板上に転写される転写パターンの解像度が向上し、パターン線幅が1.8μmのラインアンドスペースパターンがCDエラー生じることなく転写されることを確認した。
【0099】
(実施例1−3)
実施例1−3では、QZ(透明基板)/ZrSiON/ZrSi/Cr系材料からなる遮光膜の構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
実施例1−3では、実施例1−1の位相シフトマスクブランクとは反射率低減層を形成しない位相シフト膜とし、位相シフト膜上に反射防止機能を有するCr系材料からなる遮光膜を形成した点が異なる。
実施例1−3の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜は、透明基板側から順に配置された、位相シフト層(ZrSiON、膜厚130nm)とメタル層(MoSi、膜厚10nm)とから構成される。また、位相シフト膜上に形成されたCr系材料からなる遮光膜は、CrN(膜厚25nm)/CrCN(膜厚70nm)/CrON(膜厚25nm)からなる反射防止機能を有する遮光膜とした。この遮光膜は、CrN/CrCN/CrONの積層構造により、遮光膜の膜面反射率は、レーザー描画光の波長413nmにおいて10%以下であった。
【0100】
位相シフト膜は、上述した2層構造により、透過率は、波長365nmにおいて約12%であり、位相シフト膜の透過率の変動幅(透過率波長依存性)は、365nm〜436nmの波長域において、5.5%以内であった。
【0101】
位相シフト膜は、上述した2層構造により、位相差は、365nmの波長において、160°〜200°の範囲内であった。
また、実施例1−3の位相シフトマスクブランクは、位相シフト膜の表面反射率は、レーザー描画光の波長413nmにおいて10%以下であり、位相シフト膜の裏面反射率は、365nm〜436nmの波長域において、18%以上であった。
【0102】
(位相シフトマスクの製造)
上述した位相シフトマスクブランクを用いて、以下の方法により位相シフトマスクを製造した。
先ず、上述した位相シフトマスクブランクの遮光膜上に、ノボラック系のポジ型のフォトレジストからなるレジスト膜を形成した。その後、レーザー描画機により、波長413nmのレーザー光を用いて、レジスト膜に所定のパターン(1.8μmのラインアンドスペースパターン)を描画した。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、遮光膜上にレジスト膜パターンを形成した。このとき、このとき、定在波の影響が原因と思われる、レジスト膜パターン断面のエッジ部分のラフネスの悪化は確認されなかった。
その後、レジスト膜パターンをマスクにして遮光膜を硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むクロムエッチング溶液にてエッチングして、遮光膜パターンを形成し、その後、遮光膜パターンをマスクにして、実施例1−1のジルコニウムシリサイドエッチング溶液を用いてエッチングして、位相シフト膜パターンを形成した。
その後、レジスト剥離液を用いて、レジスト膜パターンを剥離し、さらに、クロムエッチング溶液を用いて遮光膜パターンを剥離した。
上述した位相シフトマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきは、56nmであり、良好であった。
上述した位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクは、位相差および透過率の所定の光学特性を満たし、透過率波長依存性に優れると共に、裏面反射率特性についても優れ、各特性を兼ね備えるものであった。また、位相シフトマスクの特性に優れることに対応して、パターン転写時の位置ずれも抑制されるとともに、表示装置基板上に転写される転写パターンの解像度が向上し、パターン線幅が1.8μmのラインアンドスペースパターンがCDエラー生じることなく転写されることを確認した。
【0103】
(実施例2)
実施例2では、QZ(透明基板)/MoSiON/MoSi/MoSiONの構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
実施例2の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜は、透明基板側から順に配置された、位相シフト層(MoSiON、膜厚100nm)とメタル層(MoSi、膜厚10nm)と反射率低減層(MoSiON、膜厚50nm)とから構成される。
【0104】
透明基板上に位相シフト層、メタル層、反射率低減層が積層された位相シフト膜の波長365nmにおける屈折率は2.06、波長365nmにおける消衰係数は0.354であった。
【0105】
位相シフト層(MoSiON)の各元素の含有率は、Moは30原子%、Siは20原子%、Oは20原子%、Nは30原子%であった。
メタル層(MoSi)の各元素の含有率は、Moは33原子%、Siは67原子%であった。
反射率低減層(MoSiON)の各元素の含有率は、Moは30原子%、Siは20原子%、Oは30原子%、N率20原子%であった。
【0106】
位相シフト膜は、上述した3層構造により、透過率は、365nmの波長において4.7%であり、405nmの波長において7.0%であり、436nmの波長において8.8%であった。また、この位相シフト膜は、透過率の変動幅(透過率波長依存性)が、365nm〜436nmの波長域において、4.1%あった。
図7は、実施例2の位相シフトマスククランクの位相シフト膜の透過率スペクトルを示す。
【0107】
位相シフト膜は、上述した3層構造により、位相差は、365nmの波長において177.1°であり、405nmの波長において159.0°であり、436nmの波長において147.3°であった。また、この位相シフト膜は、位相差の変動幅が、365nm〜436nmの波長域において、29.8°であった。
【0108】
位相シフト膜は、表面反射率が、350nmの波長において4.1%であり、365nmの波長において3.0%であり、405nmの波長において2.4%であり、413nmの波長において2.6%であり、436nmの波長において3.5%であった。また、この位相シフト膜は、表面反射率の変動幅が、365nm〜436nmの波長域において、1.1%であった。また、この位相シフト膜は、表面反射率の変動幅が、350nm〜436nmの波長域において、1.7%であった。
図8は実施例2の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の表面反射率スペクトルを示す。
図9は実施例2の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の裏面反射率スペクトルを示す。
【0109】
位相シフト膜は、裏面反射率が、365nmの波長において19.6%であり、405nmの波長において23.0%であり、436nmの波長において23.6%であった。また、この位相シフト膜は、裏面反射率の変動幅が、365nm〜436nmの波長域において、3.9%であった。
【0110】
実施例2の位相シフトマスクブランクは、以下の方法により製造した。
先ず、透明基板である合成石英ガラス基板を準備した。透明基板の両主表面は鏡面研磨されている。
その後、透明基板をスパッタリング装置のスパッタ室に搬入した。
その後、スパッタ室に配置されたMoSiターゲット(Mo:Si=1:4)(原子(%)比)に5.0kWのスパンタパワーを印加し、ArガスとO2ガスとN2ガスとの混合ガスをスパッタ室内に導入しながら、透明基板の主表面上にMoSiONからなる膜厚100nmの位相シフト層を成膜した。ここで、混合ガスは、Arが60sccm、O2が40sccm、N2が50sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その後、MoSiターゲット(Mo:Si=1:2)(原子(%)比)に6.0kWのスパッタパワーを印加し、Arガスをスパッタ室内に導入しながら、位相シフト層上にMoSiからなる膜厚10nmのメタル層を成膜した。ここで、Arガスが100sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その後、MoSiターゲット(Mo:Si=1:4)(原子(%)比)に5.0kWのスパッタパワーを印加し、ArガスとO2ガスとN2ガスとの混合ガスをスパッタ室内に導入しながら、メタル層上にMoSiONからなる膜厚50nmの反射率低減層を成膜した。ここで、混合ガスは、Arが50sccm、O2が50sccm、N2が60sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その後、位相シフト層(MoSiON、膜厚100nm)とメタル層(MoSi、膜厚10nm)と反射率低減層(MoSiON、膜厚50nm)とから構成される位相シフト膜が形成された透明基板をスパッタリング装置から取り出し、洗浄を行った。
【0111】
上述した位相シフトマスクブランクを用いて、以下の方法により位相シフトマスクを製造した。
先ず、上述した位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上に、ノボラック系のポジ型のフォトレジストからなるレジスト膜を形成した。この際、位相シフト膜に対してHMDS処理を施した後、レジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画機により、波長413nmのレーザー光を用いて、レジスト膜に所定のパターン(1.8μmのラインアンドスペースパターン)を描画した。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、位相シフト膜上にレジスト膜パターンを形成した。このとき、定在波の影響が原因と思われる、レジスト膜パターン断面のエッジ部分のラフネスの悪化は確認されなかった。
その後、レジスト膜パターンをマスクにして位相シフト膜をエッチングして、位相シフト膜パターンを形成した。位相シフト膜を構成する位相シフト層、メタル層および反射率低減層の各々は、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)を含むモリブデンシリサイド系材料から形成される。このため、位相シフト層、メタル層および反射率低減層は、同じエッチング溶液によりエッチングすることができる。ここでは、位相シフト膜をエッチングするエッチング溶液として、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したモリブデンシリサイドエッチング溶液を用いた。
その後、レジスト剥離液を用いて、レジスト膜パターンを剥離した。
【0112】
上述した位相シフトマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクの位相シフト膜パターン断面は、マスク特性に影響ない程度のものであった。
【0113】
上述した位相シフトマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきは、63nmであり、良好であった。CDばらつきは、目標とするラインアンドスペースパターン(ラインパターンの幅:1.8μmスペースパターンの幅:1.8μm)からのずれ幅である。
【0114】
上述した位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクは、位相差および透過率の所定の光学特性を満たした上で、365nm以上436nm以下の波長範囲において、透過率波長依存性に優れる(4.1%)と共に表面反射率特性についても優れ(3.5%以下)、裏面反射率特性についても優れ(19.64%以上)、各特性を兼ね備えるものであった。また、位相シフトマスクの特性に優れることに対応して、パターン転写時の位置ずれも抑制されるとともに、表示装置基板上に転写される転写パターンの解像度が向上し、パターン線幅が1.8μmのラインアンドスペースパターンがCDエラー生じることなく転写されることを確認した。
【0115】
(比較例1)
比較例1の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜は、位相シフト層(CrOCN、膜厚122nm)のみから構成される。比較例1の位相シフトマスクブランクは、位相シフト膜がメタル層と反射率低減層とを備えていない点で上述の実施例の位相シフトマスクブランクと異なる。
比較例1の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜は、以下の成膜条件により成膜した。
位相シフト膜(CrOCN)の各元素の含有率は、Crは44原子%、Cは8原子%、Oは30原子%、Nは18原子%であった。
位相シフト膜は、透過率は、365nmの波長において4.6%であり、405nmの波長において8.0%であり、436nmの波長において11.0%であった。また、この位相シフト膜は、透過率の変動幅(透過率波長依存性)が、365nm〜436nmの波長域において、6.4%であった。
位相シフト膜は、上述した1層構造により、365nmの波長において位相差179.6°であり、405nmの波長において164.7°であり、413nm波長において161.7°であり、436nmの波長において153.1°であった。また、この位相シフト膜は、位相差の変動幅が、365nm〜436nmの波長域において、26.5°であった。
図10は、比較例1の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の透過率スペクトルを示す。
また、位相シフト膜は、表面反射率が、365nmの波長において24.0%であり、405nmの波長において25.1%であり、413nm波長において25.3%であり、436nmの波長において26.0%であった。また、位相シフト膜は、表面反射率の変動幅が、365nm〜436nmの波長域において、2.0%であった。
図11は比較例1の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の表面反射率スペクトルを示す。
また、位相シフト膜は、裏面反射率が、365nmの波長において17.9%であり、405nmの波長において19.9%であり、436nmの波長において20.3%であった。また、位相シフト膜は、裏面反射率の変動幅が、365nm〜436nmの波長域において、2.4%であった。
図12は比較例1の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の裏面反射率スペクトルを示す。
(位相シフトマスクブランクの製造)
比較例1の位相シフトマスクブランクは、以下の方法により製造した。
先ず、透明基板である合成石英ガラス基板を準備した。
その後、透明基板をスパッタリング装置のスパッタ室に搬入した。
その後、スパッタ室に配置されたクロムターゲットに3.5kWのスパッタパワーを印加し、ArガスとN2ガスとCO2ガスとの混合ガスをスパッタ室内に導入してCrOCNからなる膜厚122nmの位相シフト膜を成膜した。ここで、混合ガスは、Arが46sccm、N2が32sccm、CO2が18.5sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その後、位相シフト膜が形成された透明基板をスパッタリング装置から取り出し、洗浄を行った。
(位相シフトマスクの製造)
上述した位相シフトマスクブランクを用いて、以下の方法により位相シフトマスクを製造した。
先ず、上述した位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上に、ノボラック系のポジ型のフォトレジストからなるレジスト膜を形成した。その後、レーザー描画機により、波長413nmのレーザー光を用いて、レジスト膜に所定のパターン(1.8μmのラインアンドスペースパターン)を描画した。その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、位相シフト膜上にレジスト膜パターンを形成した。
その後、レジスト膜パターンをマスクにして位相シフト膜を硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むクロムエッチング溶液にてエッチングして、位相シフト膜パターンを形成し、その後、レジスト剥離液を用いて、レジスト膜パターンを剥離した。
上述した位相シフトマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきは、90nmであり、高解像度、高精細の表示装置の製造に用いられる位相シフトマスクに求められるレベルを達していなかった。
上述した比較例1による位相シフトマスクは、CDばらつきが大きく、また、露光光に対する位相シフト膜パターンの膜面反射率が高いため、上述した位相シフトマスクを用いて、高解像度、高精細の表示装置を製造することができなかった。
【0116】
以上のように、本発明を実施の形態および実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されない。該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白である。