(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定接点のJIS Z 2244に準拠するビッカース硬さに対する前記充填材の前記ビッカース硬さの比は、9以下である、請求項1乃至6のいずれかに記載のブレーカー。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。
図1乃至
図3は、ブレーカー1の構成を示している。ブレーカー1は、電気機器等に実装され、過度な温度上昇又は過電流から電気機器を保護する。
【0021】
ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、先端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容するケース10等によって構成されている。ケース10は、ケース本体(第1ケース)7とケース本体7の上面に装着される蓋部材(第2ケース)8等によって構成されている。
【0022】
固定片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅−チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。固定片2の一端には外部回路と電気的に接続される端子22が形成され、他端側には、PTCサーミスター6を支持する支持部23が形成されている。PTCサーミスター6は、固定片2の支持部23に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)24の上に載置されて、突起24に支持される。固定片2が階段状に曲げられることにより、固定接点21と支持部23とが段違いに配置され、PTCサーミスター6を収納する空間が容易に確保される。
【0023】
固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体7の内部に形成されている開口73aの一部から露出されている。端子22はケース本体7の端縁から外側に突き出されている。支持部23は、ケース本体7の内部に形成されている開口73dから露出されている。
【0024】
本出願においては、特に断りのない限り、固定片2において、固定接点21が形成されている側の面(すなわち
図1において上側の面)を表(おもて)面、その反対側の面を裏(うら)面として説明している。固定接点21から可動接点41に向く方向を第1方向と、第1方向とは反対の方向を第2方向とそれぞれ定義した場合、表面は第1方向を向き、裏面は第2方向を向く。他の部品、例えば、可動片4及び熱応動素子5、PTCサーミスター6等についても同様である。
【0025】
可動片4は、銅等を主成分とする板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。
【0026】
可動片4の長手方向の先端部には、可動接点41が形成されている。可動接点41は、例えば、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。
【0027】
可動片4の長手方向の他端部には、外部回路と電気的に接続される端子42が形成されている。可動片4は、可動接点41と端子42の間に、当接部43(アーム状の可動片4の基端及びケース10に埋設される部分に相当)、及び弾性部44を有している。当接部43は、端子42と弾性部44との間でケース本体7及び蓋部材8と当接し、可動片4の短手方向に翼状に突出する突出部43aを有する。突出部43aが設けられていることにより、当接部43が幅広く大きな領域でケース本体7の当接部74及び蓋部材8の当接部83(
図2参照)によって挟み込まれ、可動片4がケース10に対して強固に固定される。
【0028】
弾性部44は、当接部43から可動接点41の側に延出されている。当接部43においてケース本体7と蓋部材8によって裏表両面側から挟み込まれて可動片4が固定され、弾性部44が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点41が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
【0029】
可動片4は、弾性部44において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、反転動作温度及び正転復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部44の下面には、熱応動素子5に対向して一対の突起(接触部)44a,44bが形成されている。突起44a,44bと熱応動素子5とは接触して、突起44a,44bを介して熱応動素子5の変形が弾性部44に伝達される(
図1、
図2及び
図3参照)。
【0030】
熱応動素子5は、可動片4を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる。熱応動素子5は、断面が円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより形成される。過熱により作動温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部44が押し上げられ、かつ弾性部44の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形状が望ましく、小型でありながら弾性部44を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。
【0031】
熱応動素子5の材料としては、洋白、黄銅、ステンレス鋼等の各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。例えば、安定した作動温度及び復帰温度が得られる熱応動素子5の材料としては、高膨脹側に銅−ニッケル−マンガン合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金を組み合わせたものが望ましい。また、化学的安定性の観点からさらに望ましい材料として、高膨脹側に鉄−ニッケル−クロム合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金を組み合わせたものが挙げられる。さらにまた、化学的安定性及び加工性の観点からさらに望ましい材料として、高膨脹側に鉄−ニッケル−クロム合金、低膨脹側に鉄−ニッケル−コバルト合金を組み合わせたものが挙げられる。
【0032】
PTCサーミスター6は、可動片4が遮断状態にあるとき、固定片2と可動片4とを導通させる。PTCサーミスター6は、固定片2と熱応動素子5との間に配設されている。すなわち、PTCサーミスター6を挟んで、固定片2の支持部23は熱応動素子5の直下に位置している。熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、作動電流、作動電圧、作動温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタニウム酸バリウム、チタニウム酸ストロンチウム又はチタニウム酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
【0033】
ケース10を構成するケース本体7及び蓋部材8は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の材料を適用してもよい。
【0034】
ケース本体7には、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための内部空間である収容凹部73が形成されている。収容凹部73は、可動片4を収容するための開口73a,73b、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73c、並びに、PTCサーミスター6を収容するための開口73d等を有している。なお、ケース本体7に組み込まれた可動片4、熱応動素子5の端縁は、収容凹部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
【0035】
蓋部材8には、銅等を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板がインサート成形によって埋め込まれていてもよい。金属板は、可動片4の表面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、蓋部材8のひいては筐体としてのケース10の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。
【0036】
図1が示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容したケース本体7の開口73a、73b、73c等を塞ぐように、蓋部材8が、ケース本体7に装着される。ケース本体7と蓋部材8とは、例えば超音波溶着によって接合される。
【0037】
図2及び3は、ブレーカー1の動作の概略を示している。
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は逆反り前の初期形状を維持している。固定接点21、可動接点41及び可動片4の弾性部44などを通じてブレーカー1の両端子22、42間は導通している。しかしながら、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点41を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
【0038】
熱応動素子5は、導通状態の可動片4と離隔していてもよい。これにより、可動接点41と固定接点21との接触圧力が高められ、両者間の接触抵抗が低減される。
【0039】
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りして可動片4の弾性部44と接触し、弾性部44が押し上げられて固定接点21と可動接点41とが離隔する。このとき、固定接点21と可動接点41の間を流れていた電流は遮断される。一方、熱応動素子5は、可動片4と接触して、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。すなわち、PTCサーミスター6は、可動片4を遮断状態に移行させている熱応動素子5を介して、固定片2と可動片4とを導通させる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点41の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
【0040】
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部44の弾性力によって可動接点41と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、
図2に示す導通状態に復帰する。
【0041】
ケース10は、上述した樹脂材料と、樹脂材料に充填された充填材とを含んでいる。充填材によって、ケース10の強度及び剛性が高められる。
【0042】
図4は、充填材を示している。本実施形態の充填材は、長手方向及び短手方向を有する形状に形成されている。長手方向の長さLは、充填材の最大の長さであり、短手方向の長さDは、充填材の短手方向の最大の長さである。充填材の長手方向に垂直な断面が円形である場合、短手方向の長さDは、充填材の最大直径で表される。充填材の先端形状は、尖っていてもよい。また、長手方向と短手方向とが明確に区別できない形状(例えば、球状)であってもよい。この場合、長さLと長さDとが等しくなる。
【0043】
充填材としては、形状すなわち長手方向の長さL及び短手方向の長さDの組み合わせが異なる複数種類の充填材が混合して用いられてもよい。また、成分(組成)の異なる複数種類の充填材が混合して用いられてもよい。
【0044】
図5は、蓋部材8、PTCサーミスター6、熱応動素子5及び可動片4が取り除かれた状態のケース本体7を示している。既に述べたようにケース本体7には、固定片2がインサート成形されている。固定片2は、固定接点21がケース10の内部空間である収容凹部73に露出するように配されている。
【0045】
図6は、固定接点21と可動接点41の接触状態を拡大して示している。固定接点21の表面は、
図6に示されるように、小さな凹凸を含んでいる。すなわち、固定接点21は、その表面に凹部(谷部)26及び凸部(山部)27を有している。同様に、可動接点41の表面も、小さな凹凸を含んでいる。すなわち、可動接点41は、その表面に凹部46及び凸部47を有している。従って、固定接点21と可動接点41の間には、両者が接触する導通状態にあっても、多数の微小隙間Gが存在している。
【0046】
固定接点21の表面粗さは、JIS B 0601に準拠し、株式会社東京精密製のSURFCOM3000Aによって測定されうる。測定長さは0.25mmであり、カットオフ波長は0.25mmであり、測定速度は、0.30mm/sであり、カットオフ種別はガウシアンであり、傾斜補正は、最小二乗直線補正であり、λsカットオフ比は300である。本例で測定された固定接点21の表面粗さのうち、算術平均粗さRaは0.7778μmであり、最大高さRzは5.2451μmであり、要素の平均長さRsmは、33.9844μmであった。
【0047】
本ブレーカー1では、固定接点21の上記表面粗さRzは、充填材の短手方向の長さDより大きい。従って、製造過程でケース本体7又は蓋部材8の材料等から発生した破片が固定接点21と可動接点41との間に侵入しても、固定接点21の表面に形成されている凹部26(微小隙間G)に収容され、固定接点21と可動接点41との接触状態に及ぼす影響が抑制される。これにより、固定接点21と可動接点41との接触抵抗、すなわち通電時のブレーカー1の抵抗値が増加することを抑制することが可能となる。従って、出荷前の検査工程を簡略化して生産性の向上を図ることができる。
【0048】
固定接点21の上記表面粗さRzは、例えば、充填材の短手方向の長さDの200%以上が望ましい。このような固定接点21によれば、破片が凹部26に収容され易くなり、固定接点21と可動接点41との接触抵抗が増加することをより一層抑制することが可能となる。
【0049】
固定接点21の上記表面粗さRzは、例えば、0.1μm以上で15μm以下が望ましい。上記表面粗さRzが0.1μm未満の場合、破片が、凹部26に収容され難くなるおそれがある。上記表面粗さRzが15μmを超える場合、固定接点21と可動接点41との接触面積が減少するおそれがある。
【0050】
固定接点21の上記表面粗さRaは、例えば、充填材の短手方向の長さDの50%以上が望ましい。このような固定接点21によれば、破片が凹部26に収容され易くなり、固定接点21と可動接点41との接触抵抗が増加することをより一層抑制することが可能となる。
【0051】
本実施形態では、固定接点21の上記表面粗さRsmは、充填材の長手方向の長さLよりも大きいのが望ましい。このような固定接点21によれば、破片が凹部26に収容され易くなり、固定接点21と可動接点41との接触状態に及ぼす影響がより一層抑制される。
【0052】
固定接点21の上記表面粗さRsmは、例えば、充填材の長手方向の長さLの150%以上であるのが望ましい。このような固定接点21によれば、破片が凹部26に収容され易くなり、固定接点21と可動接点41との接触状態に及ぼす影響がより一層抑制される。
【0053】
本実施形態にあっては、ブレーカー1は、出荷される前に、固定接点21と可動接点41の活性化処理が施されることがある。活性化処理とは、固定接点21と可動接点41とが接触している状態で、固定接点21及び可動接点41の少なくとも一方に高周波振動が付与されると共に、固定接点21と可動接点41とが通電されることにより、固定接点21と可動接点41との接触部分及びその周辺部分の酸化膜を面状に除去し、新生面を形成するための処理である。活性化処理により、固定接点21と可動接点41との間での導通状態が安定する。
【0054】
活性化処理が施された固定接点21は、
図5に示されるように、第1表面21aと、第2表面21bとを有している。第2表面21bは固定接点21の中央部に形成され、第1表面21aは第2表面21bの周辺部に形成されている。第2表面21bは、固定接点21が収容凹部73に露出する領域のうち可動接点41と接触する領域であり、上記活性化処理によって出現した表面である。第2表面21bの表面粗さRzは、第1表面21aの表面粗さRzよりも大きい。すなわち、第2表面21bは、活性化処理により、その表面が、第1表面21aよりも粗く形成されている。上記固定接点21の表面粗さは、第2表面21bにて測定されたものである。
【0055】
第2表面21bは、活性化処理によって形成される表面に限られず、他の表面粗し処理によって形成されてもよい。例えば、固定片2がケース本体7を成形する金型内にインサートされる前に形成されていてもよい。この場合、固定接点21の表面全体に表面粗し処理が施されていてもよい。
【0056】
図4に示されるように、本実施形態の充填材は、短繊維状に形成されている。短繊維状の充填材の具体例としては、チタン酸化合物(例えば、チタン酸カリウム)又はホウ酸化合物(例えば、ホウ酸アルミニウム)を含むウィスカが挙げられる。このようなウィスカは、従来のガラス繊維と比較すると、短手方向の長さD及び長手方向の長さLが小さい。このため、製造過程でケース本体7又は蓋部材8の材料等から破片が発生しにくくなる。また、破片が凹部26に収容され易くなり、固定接点21と可動接点41との接触抵抗が増加することをより一層抑制することが可能となる。
【0057】
充填材の短手方向の長さDに対する長手方向の長さLの比L/Dは、20以上が望ましい。このような充填材によれば、ケース10が強固となって破片の発生が抑制されることから、固定接点21と可動接点41との接触状態に及ぼす影響がより一層抑制される。上記観点から、長さDの望ましい範囲は、0.1μm以上で5μm以下であり、さらに望ましい範囲は、0.1μm以上で1μm以下である。
【0058】
充填材のJIS Z 2244に準拠するビッカース硬さは、700以下が望ましい。この場合、破片が固定接点21と可動接点41との接触状態に影響を及ぼすおそれがある。
【0059】
固定接点21のビッカース硬さに対する充填材のビッカース硬さの比は、9以下が望ましい。上記比が9を超える場合、破片が固定接点21と可動接点41との接触状態に影響を及ぼすおそれがある。固定接点21のビッカース硬さに対する充填材のビッカース硬さの比は、0.25以上が望ましい。上記比が0.25未満の場合、ケース10の強度及び剛性に影響を及ぼすおそれがある。上記観点から、固定接点21のビッカース硬さに対する充填材のビッカース硬さの比のより望ましい範囲は、0.35以上で7以下であり、さらに望ましい範囲は、0.5以上で4以下である。
【0060】
可動接点41の表面粗さは、固定接点21の表面粗さと同様に測定されうる。本例で測定された固定接点21の表面粗さのうち、算術平均粗さRaは1.8439μmであり、最大高さRzは8.4357μmであり、要素の平均長さRsmは、70.6771μmであった。
【0061】
本ブレーカー1では、可動接点41の上記表面粗さRzは、充填材の短手方向の長さDより大きい。従って、破片がケース本体7から剥離して、固定接点21と可動接点41との間に侵入しても、可動接点41の表面に形成されている凹部46(微小隙間G)に収容され、固定接点21と可動接点41との接触状態に及ぼす影響が抑制される。これにより、固定接点21と可動接点41との接触抵抗、すなわち通電時のブレーカー1の抵抗値が増加することを抑制することが可能となる。従って、出荷前の検査工程を簡略化して生産性の向上を図ることができる。
【0062】
可動接点41の上記表面粗さRzは、例えば、充填材の短手方向の長さDの200%以上が望ましい。このような可動接点41によれば、破片が、凹部46に収容され易くなり、固定接点21と可動接点41との接触抵抗が増加することをより一層抑制することが可能となる。
【0063】
可動接点41の上記表面粗さRzは、例えば、0.1μm以上で15μm以下が望ましい。上記表面粗さRzが0.1μm未満の場合、破片が、凹部46に収容され難くなるおそれがある。上記表面粗さRzが15μmを超える場合、固定接点21と可動接点41との接触面積が減少するおそれがある。
【0064】
可動接点41の上記表面粗さRaは、例えば、充填材の短手方向の長さDの50%以上が望ましい。このような可動接点41によれば、破片が、凹部46に収容され易くなり、固定接点21と可動接点41との接触抵抗が増加することをより一層抑制することが可能となる。
【0065】
本実施形態では、可動接点41の上記表面粗さRsmは、充填材の長手方向の長さLよりも大きいのが望ましい。このような可動接点41によれば、破片が凹部46に収容され易くなり、固定接点21と可動接点41との接触状態に及ぼす影響がより一層抑制される。
【0066】
可動接点41の上記表面粗さRsmは、例えば、充填材の長手方向の長さLの150%以上であるのが望ましい。このような固定接点21によれば、破片が凹部26に収容され易くなり、固定接点21と可動接点41との接触状態に及ぼす影響がより一層抑制される。
【0067】
図7は、活性化処理が施された後の可動片4を示している。可動接点41は、第1表面41aと、第2表面41bとを有している。第2表面41bは可動接点41の中央部に形成され、第1表面41aは第2表面41bの周辺部に形成されている。第2表面41bは、可動接点41のうち固定接点21と接触する領域であり、上記活性化処理によって出現した表面である。第2表面41bの表面粗さRzは、第1表面41aの表面粗さRzよりも大きい。すなわち、第2表面41bは、活性化処理により、その表面が粗く形成されている。上記可動接点41の表面粗さは、第2表面41bにて測定されたものである。活性化処理後のブレーカー1では、固定接点21の第2表面21bと可動接点41の第2表面41bとが接触し導通する。
【0068】
第2表面41bは、活性化処理によって形成される表面に限られず、他の表面粗し処理によって形成されてもよい。例えば、可動片4がケース本体7の収容凹部73に装填される前に形成されていてもよい。この場合、可動接点41の表面全体に表面粗し処理が施されていてもよい。
【0069】
可動接点41のビッカース硬さに対する充填材のビッカース硬さの比は、6以下が望ましい。上記比が6を超える場合、破片が固定接点21と可動接点41との接触状態に影響を及ぼすおそれがある。可動接点41のビッカース硬さに対する充填材のビッカース硬さの比は、0.25以上が望ましい。上記比が0.25未満の場合、ケース10の強度及び剛性に影響を及ぼすおそれがある。
【0070】
ところで、固定接点21と可動接点41との間では、接点の開閉時に負極から正極に向ってスパーク(火花放電)が生じることがある。そこで、スパークを受ける正極側の接点は、その消耗(摩耗)を抑制するために、負極側の接点よりもビッカース硬さの大きい材料にて形成されているのが好ましい。本実施形態では、既に述べたように、可動片4は、金属材料のみで形成され、インサート成形を経ないので、可動接点41をかしめ、溶接等によって容易に形成されうる。従って、このような可動接点41には、固定接点21よりもビッカース硬さの大きい材料が容易に適用されうる。そして、可動接点41が正極側の接点となるようにブレーカー1を電気機器等に実装することにより、正極側の接点の消耗を抑制できる。
【0071】
可動接点41の上記表面粗さRzは、固定接点21の上記表面粗さRzより大きいのが望ましい。このような可動接点41によれば、上述したスパークによる正極側の接点の消耗(表面粗度の悪化)を効果的に抑制できる。
【0072】
固定接点21の上記表面粗さRaに対する可動接点41の上記表面粗さRaの比は、0.5以上で3以下が望ましい。このような固定接点21及び可動接点41では、両接点の接触面積が適度に増大し、接触抵抗ひいては通電時のブレーカー1の抵抗値が安定し、ブレーカー1の電流容量を容易に確保することが可能となる。
【0073】
固定接点21の上記表面粗さRsmに対する可動接点41の上記表面粗さRsmの比は、0.5以上で3以下が望ましい。このような固定接点21及び可動接点41では、両接点の接触面積が適度に増大し、接触抵抗ひいては通電時のブレーカー1の抵抗値が安定し、ブレーカー1の電流容量を容易に確保することが可能となる。
【0074】
本発明のブレーカー1は、上記実施形態の構成に限られることなく、種々の態様に変更して実施されうる。すなわち、ブレーカー1は、少なくとも、固定接点21を有する固定片2と、可動接点41を有し、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより、可動片4を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子5と、固定片2、可動片4及び熱応動素子5を収容するケース10と、を備え、ケース10は、樹脂材料と樹脂材料に充填された充填材とを含み、固定接点21のJIS B 0601に準拠する表面粗さRzは、充填材の短手方向の長さより大きければよい。
【0075】
例えば、ケース本体7と蓋部材8との接合手法は、超音波溶着に限られることなく、両者が強固に接合される手法であれば、適宜適用することができる。例えば、液状又はゲル状の接着剤を塗布・充填し、硬化させることにより、両者が接着されてもよい。また、ケース10は、ケース本体7と蓋部材8等によって構成される形態に限られることなく、2個以上の部品によって構成されていればよい。
【0076】
また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等の積層金属によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカーの構成が簡素化されて、さらなる小型化を図ることができる。
【0077】
また、特開2017−37757号公報に示されるような、端子片と可動片とが別体に形成されている形態に、本発明を適用してもよい。さらにまた、特開2014−203787号公報に示されるような、可動片がケースの内部で階段状に形成されている形態に、本発明を適用してもよい。
【0078】
本実施形態では、PTCサーミスター6による自己保持回路を有しているが、このような構成を省いた形態であっても適用可能である。このような構成では、ブレーカー1の高さ寸法が小さくなり、小型化を図ることが可能となる。
【0079】
また、固定接点21と可動接点41の活性化処理は、任意であり、省略されていてもよい。この場合、固定接点21に第2表面21bは形成されず、固定接点21の表面の全体が同等の表面粗さの第1表面21aとなる。また、可動接点41に第2表面41bは形成されず、可動接点41の表面の全体が同等の表面粗さの第1表面41aとなる。
【0080】
また、本発明のブレーカー1は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。
図8は2次電池パック100を示す。2次電池パック100は、2次電池101と、2次電池101の出力端回路中に設けたブレーカー1とを備えている。
図9は電気機器用の安全回路502を示す。安全回路502は2次電池501の出力回路中に直列にブレーカー1を備え、2次電池の異常発熱時に電流を遮断する。各種の電気機器に接続されるコネクタにブレーカー1が実装された場合、ブレーカー1は、異常発熱時に電流を遮断し、電気機器の安全性を高める。