特許第6983652号(P6983652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983652精製ハロゲン化カルボン酸ハロゲン化物を得るための少なくとも2つの蒸留ステップを含む蒸留プロセス、および精製ハロゲン化カルボン酸ハロゲン化物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983652
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】精製ハロゲン化カルボン酸ハロゲン化物を得るための少なくとも2つの蒸留ステップを含む蒸留プロセス、および精製ハロゲン化カルボン酸ハロゲン化物の使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/64 20060101AFI20211206BHJP
   C07C 53/48 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   C07C51/64
   C07C53/48
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-510635(P2017-510635)
(86)(22)【出願日】2015年8月13日
(65)【公表番号】特表2017-525720(P2017-525720A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2015068671
(87)【国際公開番号】WO2016026767
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2018年7月30日
【審判番号】不服2020-6093(P2020-6093/J1)
【審判請求日】2020年5月7日
(31)【優先権主張番号】14182035.7
(32)【優先日】2014年8月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, マックス ヨーゼフ
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 冨永 保
【審判官】 関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−127914(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/122341(WO,A1)
【文献】 特開昭52−83326(JP,A)
【文献】 米国特許第4141895(US,A)
【文献】 特開昭47−11114(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102320948(CN,A)
【文献】 特開平7−53446(JP,A)
【文献】 特公昭46−4563(JP,B1)
【文献】 特開平7−206757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物の含有量が低減されている式(I)R1−C(O)X(式中、R1は少なくとも1個のフッ素原子によって置換されているC1〜C3アルキル、またはR1は少なくとも1個のフッ素原子および少なくとも1個の塩素原子によって置換されているメチル基であり、Xはハロゲンである)の化合物の獲得方法であって、
a)式(I)R1−C(O)Xの化合物および不純物を含む粗画分を、高圧蒸留ステップ、前記高圧蒸留ステップよりも少なくとも1バール低い圧力で実施される中圧蒸留ステップ、および前記中圧蒸留ステップよりも少なくとも1バール低い圧力で実施される低圧蒸留ステップからなる、少なくとも3つの蒸留ステップにかける工程と、
b)不純物の含有量が低減されている式(I)の前記化合物を含む画分を少なくとも回収する工程と
を含み、
前記高圧蒸留ステップが一番目に行われ、前記中圧蒸留ステップが二番目に行われ、前記低圧蒸留ステップが三番目に行われる、方法。
【請求項2】
R1が、CF、CClF、CClF、CHF、CHClFおよびフッ素化エチルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Xが、Clである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)の前記化合物が、トリフルオロアセチルクロリド、ジフルオロアセチルクロリドおよびジフルオロクロロアセチルクロリドからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記高圧蒸留ステップと前記中圧蒸留ステップとの間の圧力差が1〜10バールであり、前記中圧蒸留ステップと前記低圧蒸留ステップとの間の圧力差が1〜8バールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記高圧蒸留ステップにおける圧力が12〜18バールであり、前記中圧蒸留ステップにおける圧力が6〜12バールであり、前記低圧蒸留ステップにおける圧力が1〜9バールである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
不純物の含有量が低減されている式(I)の前記化合物を含む画分が、塔頂生成物として前記低圧蒸留ステップから回収される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
不純物の含有量が低減されている式(I)の前記化合物を含む画分が、塔底生成物として前記低圧蒸留ステップから回収される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式(I)の前記化合物および不純物を含む粗画分が、式(II)R1−CHX’(式中、X’は同じもしくは異なるものであり、X’は、Cl、FおよびBrからなる群から選択されるハロゲンであり、R1は上記と同じ定義を有する)の化合物から出発する酸化法によって得られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
X’がClである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
Xが上記と同じ定義を有する、式(I)R1−C(O)Xの化合物および不純物を含む前記粗画分がHXを含有し、HXを含む画分が塔頂生成物として前記高圧蒸留ステップから回収される、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
HXがHClである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
不純物の含有量が低減されている式(I)の前記化合物を含む画分が、トリフルオロアセチルクロリド(TFAC)および150ppmよりも低い含有量でFを含む画分である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
不純物の含有量が低減されている式(I)の前記化合物を含む画分が、TFACおよび50ppmよりも低い含有量でFを含む画分である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、欧州特許出願第14182035.7号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、不純物の含有量が低減されたフッ素化および/または塩素化カルボン酸ハロゲン化物の獲得方法、不純物の含有量が低減されたフッ素化カルボン酸ハロゲン化物および/または塩素化カルボン酸ハロゲン化物の画分、ならびに農学的におよび薬学的に活性な化合物の製造でのその使用に関する。
【0003】
フッ素化および/または塩素化カルボン酸ハロゲン化物、例えばトリフルオロアセチルクロリド(TFAC)、ジフルオロアセチルクロリド(DFAC)またはクロロジフルオロアセチルクロリド(CDFAC)は、化学合成における、例えば除草剤、界面活性剤および医薬品の製造における貴重な中間体である。例えば、トリフルオロアセチルクロリドは、農学的に活性な成分用の環状中間体へ好適にも変換することができる、4−エトキシ−1,1,1−トリフルオロメチル−3−ブテン−2−オンの合成のための出発原料であり、例えば国際公開第2011/3860号パンフレットおよび国際公開第2010037688号パンフレットを参照されたい。CDFACは、例えば、農学的に活性な化合物用の中間体へさらに変換することができる、フルオロ置換3−オキソ−アルカン酸に変換することができ、例えば国際公開第2010037688号パンフレットおよび国際公開第2012/25469号パンフレットを参照されたい。DFACは、例えば、国際公開第2006/64251号パンフレットに記載されているように、CDK阻害剤、または、例えば、国際公開第2005/42468号パンフレットに記載されているように、農学的に活性な化合物の合成のために使用される。
【0004】
欧州特許出願公開第0638539A号明細書は、−60℃での低温凝縮器を含むワークアップ、引き続く40cm充填塔での「精密蒸留」を使ったフッ素化カルボン酸クロリドの合成を記載している。生成物の純度は報告されていない。
【0005】
独国特許第1069137号明細書は、フッ素化および塩素化カルボン酸クロリドの合成であって、生成物が蒸留される合成を記載している。実施例は、典型的な実験室規模で操作されており;生成物の純度は報告されていない。
【0006】
特に、農学的におよび薬学的に活性な化合物用のビルディングブロックの工業的製造に関して、フッ素化カルボン酸ハロゲン化物の純度は、下流製品の品質、特に腐食性不純物を考慮して、装置の寿命、および廃棄物管理にとって決定的に重要である。フッ素化カルボン酸ハロゲン化物の拡張可能な精製方法が継続して工業的に必要とされている。
【0007】
結果として、本発明は、不純物の含有量が低減されている式(I)R1−C(O)Xの化合物の獲得方法であって、ステップa)式(I)R1−C(O)Xの化合物および不純物を含む粗画分を異なる圧力で行われる、少なくとも2つの蒸留ステップにかける工程を含む方法に関する。好ましい方法では、a)は、異なる圧力で実施される高圧蒸留ステップ、中圧蒸留ステップおよび低圧蒸留ステップからなる、少なくとも3つの蒸留ステップを含む。
【0008】
本発明はさらに、式(I)の化合物が式(II)R1−CHX’の化合物の酸化によって製造された場合に特に、前記蒸留プロセスによって得られる、不純物の含有量が低減されている式(I)R1−C(O)Xの化合物の画分、および不純物の含有量が低減されている画分の、薬学的にまたは農学的に活性な化合物の製造のための使用に関する。
【0009】
本発明の別の態様は、不純物の含有量が低減されている式(I)R1−C(O)Xの化合物の獲得方法を含む、農学的にまたは薬学的に活性な化合物の製造方法である。
【0010】
不純物の含有量が低減されている、式(I)R1−C(O)Xの化合物、特にTFACおよびCDFACは有利には、異なる圧力での少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの蒸留ステップを含む蒸留プロセスを適用することによって得ることができる。本方法は、物理的方法によって、式(I)R1−C(O)Xの化合物、特にTFAC、DFACおよびCDFACからの不純物の効率的な分離を達成することを可能にする。(I)R1−C(O)Xの回収精製画分は、特に農学的にまたは薬学的に活性な化合物用の、さらなる化合物およびビルディングブロックの実験室規模または工業的規模合成および製造のための出発原料として使用することができ、一方、不純物の含有量が低減され、それは、装置の腐食の減少ならびに下流プロセスにおける不純物および廃棄物の量の減少を可能にする。本方法は、無機不純物、例えばハロゲン化水素、および有機不純物の両方を効果的に低減させる。とりわけハロゲン化水素、特にHClがかなりの量で存在する場合に、本精製方法はまた、ハロゲン化水素および減少した量の不純物を含有する画分としての前記ハロゲン化水素の回収を可能にする。そのような画分は、下流プロセスのために、例えばアルカンまたはオレフィンのオキシ塩素化に好適にも使用することができる。オキシ塩素化の一例は、エチレンからの塩化ビニルの製造である。本発明による方法は、容易に実施することができ、水蒸気加熱/水冷の使用を可能にする。
【0011】
本発明による方法では、R1は、少なくとも1個のフッ素原子および/または少なくとも1個の塩素原子によって置換されている、C1〜C3アルキル基である。一態様では、R1は、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個のフッ素原子によって置換されており;例えば、R1は、少なくともフッ素原子によって置換されたメチルであり、したがってR1は、CHF、CFHおよびCFからなる群から選択される。別の態様では、R1は、少なくとも1個のフッ素原子および少なくとも1個の塩素原子によって置換されたメチルであり;この態様では、R1は、CFClH、CFClおよびCFClからなる群から選択され、ここで、CFClが好ましい。さらに別の態様では、R1は、少なくとも1個の塩素原子によって置換された、かつ、他のハライド化学種によって全く置換されていないメチルであり、したがってR1は、CHCl、CClおよびCClからなる群から選択される。R1は、少なくとも1個のフッ素原子、少なくとも1個のフッ素原子および少なくとも1個の塩素原子、または少なくとも1個の塩素原子によって置換されている、エチル、n−プロピルおよびi−プロピルから選択することができる。本発明による式(I)R1−C(O)Xの好ましい化合物は、トリフルオロアセチルクロリド(TFAC)、ジフルオロアセチルクロリド(DFAC)、ジフルオロクロロアセチルクロリド(CDFAC)およびトリクロロアセチルクロリドであり、TFACおよびCDFACが最も好ましい化合物である。一態様では、R1=CHCl、CClまたはCCl、特にCHClである場合、不純物の含有量が低減されている式(I)R1−C(O)Xの化合物の獲得方法は、異なる圧力で行われる、少なくとも3つの蒸留ステップ、好ましくは3つの蒸留ステップを含む。
【0012】
本発明に使用される酸ハロゲン化物は、特に、その内容が本出願に参照により援用される米国特許第5,569,782号明細書に記載されているように、ハロゲン化前駆体アルカンの光酸化によって、例えば、得ることができる。特に、本発明において式(I)の特に好ましい化合物である、トリフルオロアセチルクロリドは、1,1,1−トリフルオロ−2,2−ジクロロエタン(HCFC−123)の光酸化によって得ることができる。式(I)の酸ハロゲン化物を製造するための他の方法は、例えば、欧州特許0623577第号明細書、米国特許第5,545,298A号明細書、米国特許第4,643,851号明細書、米国特許第5,241,113号明細書、米国特許第5,659,078号明細書、米国特許第6,255,524号明細書および米国特許第7,754,927号明細書に記載されている。一般に、本発明による精製方法は、式(I)に従った化合物の製造方法にかかわらず、式(I)の化合物および不純物を含有する粗画分中の不純物を減少させるのに好適である。式(II)R1−CHX’(式中、R1は、上記と同じ定義を有し、X’は同じもしくは異なるものであり、X’は、Cl、FおよびBrからなる群から選択されるハロゲンであり、特にX’はClである)の酸化による式(I)の化合物および不純物を含有する画分の製造は、本発明による精製方法の有効性を考慮して特に好ましい。
【0013】
本発明によれば、式(I)R1−C(O)Xの化合物および不純物を含む粗画分は、異なる圧力で行われる少なくとも2つ、好ましくは3つの蒸留ステップにかけられる。2つの蒸留ステップが適用される場合、これらは、高圧蒸留ステップおよび低圧蒸留ステップからなる。好ましい実施形態では、a)は、高圧蒸留ステップ、中圧蒸留ステップおよび低圧蒸留ステップからなる、少なくとも3つの蒸留ステップを含む。好ましい実施形態によれば、高圧蒸留ステップが一番目に行われ、中圧蒸留ステップが二番目に行われ、低圧蒸留ステップが三番目に行われる。一般に、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの蒸留ステップは、化合物(I)および減少した量の不純物を含有する画分を得るために、粗画分の不純物プロファイルに適している順番で行うことができる。
【0014】
本説明では、圧力へのいかなる言及も、蒸留塔の塔頂で測定される、絶対圧力に相当する。
【0015】
好ましい実施形態では、3つの蒸留ステップがa)において適用される。異なる蒸留ステップにおいて適用される圧力値に関して、中圧蒸留ステップは一般に、高圧蒸留ステップよりも少なくとも1バール低い圧力で実施される。一般に、高圧蒸留ステップと中圧蒸留ステップとの間の圧力差は1〜10バールである。多くの場合、高圧蒸留ステップと中圧蒸留ステップとの間の圧力差は、1バール以上、好ましくは2バール以上、最も好ましくは3バール以上である。多くの場合、高圧蒸留ステップと中圧蒸留ステップとの間の圧力差は、10バール以下、好ましくは9バール以下、最も好ましくは8バール以下である。一般に、中圧蒸留ステップと低圧蒸留ステップとの間の圧力差は0.2〜9バールである。多くの場合、中圧蒸留ステップと低圧蒸留ステップとの間の圧力差は、0.2バール以上、好ましくは0.4バール以上、最も好ましくは0.6バール以上である。多くの場合、中圧蒸留ステップと低圧蒸留ステップとの間の圧力差は、9バール以下、好ましくは8バール以下、最も好ましくは7バール以下である。
【0016】
3つの蒸留ステップがa)において適用される場合、一般に、高圧蒸留ステップにおける圧力は12〜18バールである。多くの場合、高圧蒸留ステップにおける圧力は、12バール以上、好ましくは13バール以上、最も好ましくは14バール以上である。多くの場合、高圧蒸留ステップにおける圧力は、18バール以下、好ましくは17バール以下、最も好ましくは16バール以下である。
【0017】
3つの蒸留ステップがa)において適用される場合、一般に、中圧蒸留ステップにおける圧力は6〜12バールである。多くの場合、中圧蒸留ステップにおける圧力は、6バール以上、好ましくは6.5バール以上、最も好ましくは7バール以上である。多くの場合、高圧蒸留ステップにおける圧力は、12バール以下、好ましくは11バール以下、最も好ましくは10バール以下である。
【0018】
3つの蒸留ステップがa)において適用される場合、一般に、低圧蒸留ステップにおける圧力は1〜9バールである。多くの場合、低圧蒸留ステップにおける圧力は、1バール以上、好ましくは1.5バール以上、最も好ましくは2バール以上である。多くの場合、低圧蒸留ステップにおける圧力は、9バール以下、好ましくは8バール以下、最も好ましくは7バール以下である。
【0019】
本発明の一態様では、不純物の含有量が低減されている式(I)の化合物の画分は、塔頂生成物として低圧蒸留ステップから回収される。
【0020】
本発明の別の態様では、不純物の含有量が低減されている式(I)の化合物の画分は、塔底生成物として低圧蒸留ステップから回収される。
【0021】
一実施形態では、3つの蒸留ステップがa)において適用される場合、高圧蒸留ステップは、14〜16バールの圧力で、好ましくは15バールで行われ、その後の中圧蒸留ステップは、8.5〜10.5バールの圧力で、好ましくは9.5バールで行われ、その後の低圧蒸留ステップは、2〜4バールの圧力で、好ましくは3バールで行われる。この実施形態では、不純物の含有量が低減されている式(I)R1−C(O)Xの化合物、特にTFACを含有する画分は多くの場合、低圧蒸留ステップにおいて運転される塔の塔頂でヘッド生成物として回収される。
【0022】
別の実施形態では、3つの蒸留ステップがa)において適用される場合、高圧蒸留ステップは、14〜16バールの圧力で、好ましくは15バールで行われ、その後の中圧蒸留ステップは、6〜8バールの圧力で、好ましくは7バールで行われ、その後の低圧蒸留ステップは、5〜7バールの圧力で、好ましくは6バールで行われる。この実施形態では、不純物の含有量が低減されている式(I)R1−C(O)Xの化合物、特にTFACを含有する画分は多くの場合、低圧蒸留ステップにおいて塔底生成物として回収される。
【0023】
各蒸留ステップが運転される温度は、式(I)R1−C(O)Xの化合物および不純物を含有する粗画分の不純物プロファイル、ならびに各個々の蒸留ステップにおいて運転される圧力および塔に応じて選択される。
【0024】
一実施形態では、式(I)の化合物はTFACであり、TFACおよび減少した量の不純物を含有する画分は、3つの蒸留ステップがa)において適用される、低圧蒸留ステップにおいて塔頂生成物として回収される。好ましくは、TFACは、米国特許第5,569,782号明細書に記載されている方法に従って製造される。このケースでは、高圧蒸留ステップが行われる温度は50〜80℃であり;多くの場合、温度は50℃以上であり、好ましくは、温度は53℃以上であり、最も好ましくは温度は56℃以上である。この実施形態では、多くの場合、温度は80℃以下であり、好ましくは、温度は75℃以下であり、最も好ましくは温度は70℃以下である。この実施形態の好ましい態様では、高圧蒸留ステップでの温度は60〜68℃である。多くの場合、留出物は、例えば−10℃以下の温度で、好ましくは−20℃以下の温度で、冷却された装置中に高圧蒸留ステップの蒸留塔の塔頂で集められる。上に記載されたように、一実施形態では、式(I)の化合物および減少した量の不純物を含有する画分は、中圧蒸留ステップの塔頂生成物として集められる。この実施形態によれば、中圧蒸留ステップが行われる温度は50〜80℃であり;多くの場合、温度は50℃以上であり、好ましくは、温度は53℃以上であり、最も好ましくは温度は56℃以上である。この実施形態では、多くの場合、温度は80℃以下であり、好ましくは、温度は75℃以下であり、最も好ましくは温度は70℃以下である。さらに、この実施形態によれば、低圧蒸留ステップが行われる温度は60〜110℃であり;多くの場合、温度は60℃以上であり、好ましくは、温度は65℃以上であり、最も好ましくは温度は70℃以上である。この実施形態では、多くの場合、低圧蒸留ステップにおける温度は110℃以下であり、好ましくは、温度は100℃以下であり、最も好ましくは温度は95℃以下である。この実施形態の好ましい態様では、低圧蒸留ステップにおける温度は75〜90℃である。
【0025】
別の実施形態では、式(I)の化合物および減少した量の不純物を含有する画分は、3つの蒸留ステップがa)において適用される、低圧蒸留ステップの塔底生成物として回収される。このことは、式(I)の化合物がTFACであり、そして米国特許第5,569,782号明細書に記載されている光酸化に従って製造される場合に特に有用であり、意外にも、TFACを含有する画分中の不純物の量は、TFACおよび減少した量の不純物を含有する画分が塔頂生成物として回収される先の実施形態のそれと比べてさらにもっと減少する。この実施形態によれば、中圧蒸留ステップが行われる温度は90〜115℃であり;多くの場合、温度は90℃以上であり、好ましくは、温度は94℃以上であり、最も好ましくは温度は98℃以上である。この実施形態では、多くの場合、温度は115℃以下であり、好ましくは、温度は111℃以下であり、最も好ましくは温度は107℃以下である。この実施形態の好ましい態様では、中圧蒸留ステップにおける温度は100〜106℃である。この実施形態の別の態様では、低圧蒸留ステップにおける温度は25〜55℃である。多くの場合、低圧蒸留ステップにおける温度は25℃以上であり、好ましくは、温度は30℃以上であり、最も好ましくは温度は35℃以上である。この実施形態では、多くの場合、低圧蒸留ステップにおける温度は55℃以下であり、好ましくは、温度は50℃以下であり、最も好ましくは温度は45℃以下である。この実施形態の好ましい態様では、低圧蒸留ステップにおける温度は36〜40℃である。
【0026】
一般に、本発明によるa)の少なくとも2つ、好ましくは3つの蒸留ステップのそれぞれは、1つもしくは複数の蒸留塔で実施することができる。1蒸留ステップ当たり単一の塔が好ましくは使用されるであろう。
【0027】
本発明による方法に使用することができる蒸留塔は、それ自体公知である。例えば、従来のプレート塔もしくはデュアルフロー型のプレート塔が、またはあるいはバルクパッキングもしくは構造化パッキングの塔が使用されてもよい。高圧蒸留における理論段数は一般に少なくとも10である。それは多くの場合少なくとも20である。少なくとも35の数が良好な結果を与える。
【0028】
低圧蒸留における理論段数は一般に少なくとも5である。それは多くの場合少なくとも15である。少なくとも30の数が良好な結果を与える。
【0029】
中圧蒸留における理論段数は一般に少なくとも6である。それは多くの場合少なくとも16である。少なくとも31の数が良好な結果を与える。
【0030】
高圧蒸留における質量再沸比は一般に少なくとも1である。頻繁に、質量再沸比は少なくとも3である。より頻繁に、質量再沸比は少なくとも8である。少なくとも10の質量再沸比が好ましい。
【0031】
高圧蒸留における質量再沸比は一般に最大でも100である。頻繁に、質量再沸比は最大でも50である。より頻繁に、質量再沸比は最大でも30である。最大でも25の質量再沸比が好ましい。
【0032】
低圧蒸留における質量還流比は一般に少なくとも2である。頻繁に、質量還流比は少なくとも4である。少なくとも5の質量還流比が好ましい。低圧塔における質量還流比は一般に最大でも50である。頻繁に、質量還流比は最大でも30である。最大でも20の質量還流比が好ましい。
【0033】
中圧蒸留における質量還流比は一般に少なくとも30%である。頻繁に、質量還流比は少なくとも50%である。少なくとも70%の質量還流比が好ましい。低圧塔における質量還流比は一般に最大でも40%である。頻繁に、質量還流比は最大でも50%である。最大でも60%の質量還流比が好ましい。
【0034】
本発明による各蒸留ステップは、連続または不連続モードで運転することができる。
【0035】
本発明の一実施形態では、式(I)の化合物の粗画分は、式(II)R1−CHX’(式中、X’は、同じもしくは異なるものであり、X’は、Cl、FおよびBrからなる群から選択されるハロゲンであり、特にX’はClであり、R1は、上記と同じ定義を有する)の化合物から出発する酸化法によって得られたものである。この実施形態の好ましい一態様では、酸化法は、酸素の存在下での光酸化法であって、特に前記光酸化が、添加された元素状塩素の存在下でさらに実施される方法である。この実施形態による光酸化は、金属ヨウ化物でドープされたHg高圧ランプが活性化放射線源として使用される場合であって、特に金属ヨウ化物が、ヨウ化ガリウム、ヨウ化タリウムまたはヨウ化カドミウムからなる群から選択される場合に特に有利である。そのような方法の詳細は、その全体を本明細書によって援用される、欧州特許出願公開第0638539A号明細書に記載されている。
【0036】
本発明の一態様では、式(I)の化合物の粗画分は、式(I)の化合物を製造する製造方法において形成された、かなりの量のHX’(式中、X’は、上記のように定義される)、特にHClをさらに含有する。このことは、式(I)の化合物が、酸化法、特に、欧州特許出願公開第0638539A号明細書に記載されているなどの、酸素および元素状塩素の存在下での光酸化で式(II)の化合物から製造された場合には特に事実である。本発明による精製方法はそのケースで、式(I)の化合物を含有する粗画分中にかなりの量のHX’が存在する場合に、不純物の含有量が低減されている、HX’、特にHClの画分が、蒸留ステップの1つもしくは複数において生成物流れとして回収されることを可能にする。好ましくは、不純物の含有量が低減されている、HX’、特にHClの画分は、高圧蒸留ステップの塔頂で塔頂生成物として取り出される。用語「かなりの量のHX’」は、式(I)を含有する粗画分中の2〜50重量%のHX’含有量を意味することを意図する。多くの場合、粗画分中のHX’含有量は、2重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらにより好ましくは13重量%以上である。多くの場合、粗画分中のHX’含有量は、50重量%以下、より好ましくは40重量%以上、さらにより好ましくは30重量%以上である。最も好ましい方法では、式(I)を含有する粗画分中のHX’含有量は15〜20重量%である。好ましい態様では、HX’はHClであり、14〜16バールの圧力での高圧蒸留ステップにおいて塔頂生成物として回収され、−20℃冷却装置中に捕捉される。HClの回収画分は、少なくとも95重量%の、より好ましくは96重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%の純度を有する。
【0037】
本発明の最も好ましい実施形態では、TFACは、欧州特許出願公開第0638539A号明細書に記載されているようにOおよびClの存在下での光酸化によって123(1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン)から製造される。この反応で生じる有機副生成物、すなわちCOCl、COFおよび113a(1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエタン)、ならびに残存出発原料123の含有量は、無機副生成物HClおよび出発原料Clと同様に、効果的に減少させることができる。この実施形態の一態様では、Clは、低圧蒸留から塔頂生成物として回収された画分中に、TFACをまた含有する画分中に含有され、低圧蒸留においてTFACおよび減少した量の不純物を含有する画分は、低圧蒸留ステップの塔底生成物として回収される。Cl/TFAC混合物は、光酸化ステップにリサイクルすることができる。
【0038】
本発明はまた、式(I)の化合物が式(II)の化合物の酸化によって製造された場合に特に、本発明による方法によって得られる、不純物の含有量が低減されている式(I)R1−C(O)Xの化合物の画分であって、好ましくは式(I)の化合物が、トリフルオロアセチルクロリド、ジフルオロアセチルクロリドおよびジフルオロクロロアセチルクロリドからなる群から選択される画分に関する。この実施形態の好ましい一態様では、式(I)の化合物は、欧州特許出願公開第0638539A号明細書に記載されているように123の光酸化によって製造されるTFACである。TFACを含有する画分が、3つの蒸留ステップがa)において行われる、低圧蒸留ステップから塔底生成物として回収されるケースでは、回収画分中のフルオリドの含有量は非常に低い。多くの場合、フルオリド(F)含有量は50ppmよりも低い。好ましくは、フルオリド(F)含有量は30ppmよりも低く、より好ましくは、フルオリド(F)含有量は10ppmよりも低い。TFACを含有する画分が、低圧蒸留ステップから塔頂生成物として回収されるケースでは、回収画分中のフロオリドの含有量は低い。多くの場合、フルオリド(F)含有量は150ppmよりも低い。好ましくは、フルオリド(F)含有量は120ppmよりも低く、より好ましくは、フルオリド(F)含有量は100ppmよりも低い。最も好ましい態様では、フルオリド(F)含有量は40ppmよりも低い。この方法によって達成される(F)含有量は多くの場合5ppmよりも高く;一般に、5〜90ppmの(F)含有量を達成することができる。(F)含有量は好適には、加水分解された試料のイオンクロマトグラフィーによって測定される。さらに、TFACおよび減少した量の不純物を含有する画分は通常、0〜400ppm、好ましくは0〜300ppm、より好ましくは0〜250ppmの123を含有する。最も好ましくは、123含有量は100ppmよりも下である。123含有量は好適には、GCによって測定される。TFACおよび減少した量の不純物を含有する画分は通常、0〜30、好ましくは0〜20、最も好ましくは0〜15ppmのClを含有する。Cl含有量は好適には、加水分解された試料のイオンクロマトグラフィーによって測定される。TFACおよび減少した量の不純物を含有する画分は通常、0〜2%、好ましくは0〜1%、より好ましくは0〜0.5%のHClを含有する。最も好ましくは、HCl含有量は0.01%よりも下である。HCl含有量は好適には、加水分解された試料のイオンクロマトグラフィーによって測定される。TFACおよび減少した量の不純物を含有する画分は通常、0〜0.2%、好ましくは0〜0.1%、より好ましくは0〜0.05%のCOClを含有する。最も好ましくは、COCl含有量は0.01%よりも下である。TFACおよび減少した量の不純物を含有する画分は通常、0〜0.2%、好ましくは0〜0.1%、より好ましくは0〜0.05%のCOFを含有する。最も好ましくは、COF含有量は0.01%よりも下である。TFACおよび減少した量の不純物を含有する画分は通常、0〜0.5%、好ましくは0〜0.2%、最も好ましくは0〜0.1%の113aを含有する。COCl、COFおよび113aの含有量は好適には、GCによって検出される。
【0039】
不純物の含有量が低減されている式(I)R1−C(O)Xの化合物の画分は、(I)がTFAC、CDFACまたはDFACである場合に特に、農学的にまたは薬学的に活性な化合物の製造に使用することができる。本発明によって回収された画分を、農学的にまたは薬学的に活性な化合物の製造のための出発原料としてさらに利用できる方法は、例えば、上述の刊行物に見いだすことができる。
【0040】
本発明はまた、本発明による方法を含む、農学的にまたは薬学的に活性な化合物の製造方法に関する。その活性な原料または中間体のさらなる製造のための下流プロセス工程は、より少ない副生成物、より少ない廃棄物、より高い選択性および装置のより低い腐食を下流プロセスにおいて実現することできるので、式(I)の化合物の得られた画分の純度から非常に恩恵を受ける。本発明によって回収された画分を、農学的にまたは薬学的に活性な化合物の製造のための出発原料としてさらに利用できる方法は、例えば、上述の刊行物に見いだすことができる。
【0041】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するが、その範囲を限定するものではない。
【0042】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0043】
TFACの製造
TFACを欧州特許出願公開第0638539A号明細書に記載されている方法に従って製造し、粗生成物を、TFACおよび不純物を含有する粗画分として使用して3ステップ蒸留プロセスにかける。
【0044】
実施例1:
TFACおよび不純物を含有する画分を、15バールで加圧し、第1蒸留塔(DN 50、1cm直径のセラミックフィラー、高さ6メートル、材料:Inox 1.4571鋼)にかけた。油溜め(sump)を63℃に保ち;第1蒸留塔の塔頂で、主としてHClを含有する画分を、−20℃で捕捉することによって回収した。油溜めは、主としてTFAC、123、ClおよびCOClを含有した。油溜めを次に、9.5バールで第2蒸留(塔 DN 50、1cm直径のセラミックフィラー、高さ6メートル、材料:Inox 1.4571鋼)にかけた。油溜めを63℃に保ち;塔の塔頂で、53℃で、主としてClおよび小部分のCOClを含有する画分を回収した。この第2蒸留の油溜めを次に、3バールで第3蒸留(塔 DN 50、1cm直径のセラミックフィラー、高さ6メートル、材料:Inox 1.4571鋼)にかけ、そこで、塔頂で(18℃での、油溜め84℃)TFACおよび減少した量の不純物を含有する画分を回収した。
【0045】
実施例2:
TFACおよび不純物を含有する画分を、15バールで加圧し、第1蒸留塔(DN 50、1cm直径のセラミックフィラー、高さ6メートル、材料:Inox 1.4571鋼)にかけた。油溜めを63℃に保ち;第1蒸留塔の塔頂で、主としてHClを含有する画分を、−20℃で捕捉することによって回収した。油溜めは、主としてTFAC、123、ClおよびCOClを含有した。油溜めを次に、7バールで第2蒸留(塔 DN 50、1cm直径のセラミックフィラー、高さ6メートル、材料:Inox 1.4571鋼)にかけた。油溜めを104℃に保ち;塔の塔頂で、40℃で主としてTFACおよびClを含有する画分を回収した。この第2蒸留の油溜めを次に、6バールで第3蒸留(塔 DN 50、1cm直径のセラミックフィラー、高さ6メートル、材料:Inox 1.4571鋼)にかけ、そこで、塔頂で(20℃での)主としてTFACおよびClを含有する画分を蒸留した。この第3蒸留の塔底(油溜め)を、TFACおよび減少した量の不純物を含有する画分として回収した。
【0046】