【課題を解決するための手段】
【0030】
予想外なことに、本発明と関連して、後述のある特定の1-フェニルモノ-又は-ポリヒドロキシプロパン誘導体が、AMPKの活性を刺激できること、特に、正常ヒトケラチノサイトによるリン酸化AMPKの産生を可能とすることが発見された。したがって、これらの化合物は、老化の過程における皮膚細胞の活力の減少に抵抗するため、及び老化と関連する徴候の発症を遅らせるために、特に有用である。
【0031】
皮膚の老化の帰結を予防又は制限するために、他の作用経路、具体的にはコラーゲン、特にI型コラーゲン、及びまたフィラグリン等の皮膚の構造分子の合成の刺激も可能である。
【0032】
本発明による使用は、非治療的使用であり、有利なことには美容的使用である。「美容的」という用語は、皮膚又は爪等のその付属器の審美的外観の改善、特に、健康な個人の、年齢とともに生じる外観における生理的変化の遅延又は低減を意図することを意味する。これらの変化は、30歳又は35歳から出現し得るが、一般的には40歳以降により明らかとなり、50歳以上で目立ち始める。
【0033】
本発明による化合物は、表皮の再生を改善するため、及び皮膚の老化の徴候に対してより効率的に対抗するために有効である。
【0034】
したがって、これらの化合物は、皮膚の老化を予防及び/又は美容的に処置すること、特に、具体的には局所的に皮膚の老化の徴候を予防及び/又は処置すること、並びに最も具体的には、皺の寄った皮膚、皮膚の粘弾性特性又は生体力学的特性の障害を呈する皮膚、皮膚組織の接着の障害を呈する皮膚、薄くなった皮膚、及び/又は皮膚表面の外観の障害を呈する皮膚に関連する皮膚における徴候を予防及び/又は処置することを意図する、化粧用組成物において、特定の用途を見出す。
【0035】
具体的には、1-フェニルモノ-又は-ポリヒドロキシプロパン誘導体が、ケラチノサイトによるAMPKの活性化を刺激可能であることが今回発見された。
【0036】
上に説明されたように、AMPKの活性化、具体的にはそのリン酸化形態の増加は、ケラチノサイトの代謝機能の刺激に対応する。その結果、これらの細胞は、若いケラチノサイトの状態と同様の状態となり、皮膚のホメオスタシスの生理機構の調節に寄与する。
【0037】
本発明による化合物の使用は、より具体的には、皮膚の生体力学的特性を維持及び/又は回復することができる。
【0038】
「皮膚の生体力学的特性」という用語は、本明細書においては、皮膚の、伸縮性、弾力性、引き締まり、柔軟性、及び/又は弾性特性を意味する。
【0039】
「皮膚の老化の徴候」という用語は、本明細書においては、自然老化及び/又は外因性の老化、具体的には光誘導性の老化又はホルモン性の老化であるかに関わらず、老化に起因する皮膚の外見のあらゆる変化を意味し、これらの徴候のうち、以下を識別できる。
- 皺及び/又は小皺の外観に特に反映される、皺の寄った皮膚、
- しなびた、たるんだ、ゆるんだ、又は垂れ下がった皮膚に特に反映される、皮膚の粘弾性特性又は生体力学的特性の障害を呈する皮膚、或いは弾性、及び/又は伸縮性、及び/又は引き締まり、及び/又は柔軟性、及び/又は弾力性の喪失を呈する皮膚、
- 皮膚組織の接着の障害を呈する皮膚、
- 薄くなった皮膚、並びに
- 皮膚の肌理の障害、例えば粗さに特に反映される、皮膚表面の外観の障害を呈する皮膚。
【0040】
本発明は、式(I)の化合物の、皮膚の老化の徴候、特に、皺の寄った皮膚、皮膚の粘弾性特性又は生体力学的特性の障害を呈する皮膚、皮膚組織の接着の障害を呈する皮膚、薄くなった皮膚、及び皮膚表面の外観の障害を呈する皮膚から選択される、皮膚における徴候を予防及び/又は低減するための薬剤としての、非治療的使用に関する。
【0041】
特に、本発明は、式(I)
【化1】
(式中、
- n=0、1、2、又は3であり、
- m=0、1、2、又は3であり、
1≦m+n≦3であり、
- R1は、独立して、直鎖状C1〜C6アルキル基、又は分枝状C3〜C6アルキル基、又は直鎖状C1〜C6アシル基を表し、
- R2及びR3は、独立して、水素原子又はOH基を表し、
但し、R1がメチルを表し、R2がOH基を表し、且つR3が水素原子を表す場合、2≦m+n≦3である)
の化合物並びにまたその光学異性体、立体異性体及び/若しくはジアステレオ異性体並びに/又はその塩の、皮膚の老化の徴候、特に、皺の寄った皮膚、皮膚の粘弾性特性又は生体力学的特性の障害を呈する皮膚、皮膚組織の接着における障害を呈する皮膚、薄くなった皮膚、及び皮膚表面の外観の障害を呈する皮膚から選択される、皮膚における徴候を予防及び/又は低減するための薬剤としての使用、好ましくは非治療的使用に関する。
【0042】
本発明はまた、生理学的に許容される媒体中に、本発明による式(I)の少なくとも1種の化合物を含む組成物、特に化粧用組成物に関する。
【0043】
特に、本発明は、生理学的に許容される媒体中に、以下の化合物
【化2】
を除く、本発明による式(I)の少なくとも1種の化合物を含む組成物、特に化粧用組成物に関する。
【0044】
本発明はまた、生理学的に許容される媒体中に、式(I)の少なくとも1種の化合物を含む組成物、特に化粧用組成物の非治療的使用に関する。
【0045】
特に、本発明は、生理学的に許容される媒体中に式(I)(式中、R1がメチルを表し、R2がOH基を表し且つR3が水素原子を表す場合、2≦m+n≦3である)の少なくとも1種の化合物を含む組成物、特に化粧用組成物の非治療的使用に関する。
【0046】
本発明はまた、皮膚を処置するための非治療的美容方法であって、式(I)の少なくとも1種の化合物、及び/又は本発明による式(I)の少なくとも1種の化合物を含有する化粧用組成物を皮膚に適用する工程を含む、方法に関する。この方法は、皮膚、特に老化した皮膚(少なくとも40歳の年齢の個人の皮膚)及び/又は皺の寄った皮膚、具体的には顔、特に額、首、襟ぐり、及び/又は手の皮膚の処置において有利な用途を見出す。本発明の主題はまた、ケラチノサイトの再生を促進すること、並びに表皮の薄化、表面の皺、及びバリア機能の障害から選択される徴候を低減又は予防することを意図することを特徴とする、美容処置方法でもある。
【0047】
特に、本発明は、皮膚を処置するための非治療的美容方法であって、式(I)(式中、R1がメチルを表し、R2がOH基を表し且つR3が水素原子を表す場合、2≦m+n≦3である)の少なくとも1種の化合物を皮膚に適用する工程を含む、方法に関する。
【0048】
特に、本発明は、以下の化合物
【化3】
を除く、本発明による式(I)の少なくとも1種の化合物を含有する化粧用組成物に関する。
【0049】
本発明の主題はまた、下で定義される、式(V)〜(IX)の新規1-フェニルモノ-又は-ポリヒドロキシプロパン化合物である。
【0050】
本発明の主題はまた、生理学的に許容される媒体中に式(V)〜(IX)の少なくとも1種の化合物を含む組成物、特に化粧用組成物である。
【0051】
本発明はまた、式(V)〜(IX)の新規化合物又は式(V)〜(IX)の新規化合物の組成物、特に化粧用組成物の、特に、皮膚の老化の徴候、特に、皺の寄った皮膚、皮膚の粘弾性特性又は生体力学的特性の障害を呈する皮膚、皮膚組織の接着の障害を呈する皮膚、薄くなった皮膚、及び皮膚表面の外観の障害を呈する皮膚から選択される、皮膚における徴候を予防及び/又は低減するための薬剤としての非治療的使用に関する。
【0052】
最後に、本発明は、皮膚を処置するための非治療的美容方法であって、式(V)〜(IX)の少なくとも1種の新規化合物及び/又は本発明による式(V)〜(IX)の少なくとも1種の新規化合物を含有する化粧用組成物を皮膚に適用する工程を含む、方法に関する。この方法は、皮膚、特に老化した皮膚及び/又は皺の寄った皮膚、具体的には顔、特に額、首、及び/又は手の皮膚の処置において有利な用途を見出す。
【0053】
したがって、本発明による化合物は、下の式(I)
【化4】
(式中、
- n=0、1、2、又は3であり、
- m=0、1、2、又は3であり、
1≦m+n≦3であり、
- R1は、独立して、直鎖状C1〜C6アルキル基、又は分枝状C3〜C6アルキル基、又は直鎖状C1〜C6アシル基を表し、
- R2及びR3は、独立して、水素原子又はヒドロキシル基を表す)
並びにまたその光学異性体、立体異性体及び/若しくはジアステレオ異性体並びに/又はその塩に相当する。
【0054】
本発明の一実施形態において、本化合物は、下の式(I)、
【化5】
(式中、
- n=0、1、2、又は3であり、
- m=0、1、2、又は3であり、
1≦m+n≦3であり、
- R1は、独立して、直鎖状C1〜C6アルキル基、又は分枝状C3〜C6アルキル基、又は直鎖状C1〜C6アシル基を表し、
- R2及びR3は、独立して、水素原子又はOH基を表し、
但し、R1がメチルを表し、R2がOH基を表し且つR3が水素原子を表す場合、2≦m+n≦3である)
並びにまたその光学異性体、立体異性体、及び/若しくはジアステレオ異性体、並びに/又はその塩に相当する。
【0055】
式(I)の化合物の塩は、有機塩及び/又は無機塩類であってもよい。これらは、金属塩、例えばアルミニウム(Al3+)、亜鉛(Zn2+)、マンガン(Mn2+)、又は銅(Cu2+)、アルカリ金属塩、例えばリチウム(Li+)、ナトリウム(Na+)、又はカリウム(K+)、及びアルカリ土類金属塩、例えばカルシウム(Ca2+)又はマグネシウム(Mg2+)から選択することができる。それはまた、式NH4+の塩、又は式NHX3+の有機塩を含んでもよく、NX3は有機アミンを示し、X基は同一又は異なっており、2個又は3個のX基が、それらと結合する窒素原子とともに組になって環を形成してもよく、或いはNX3は芳香族アミンを表してもよい。有機アミンは、特に、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、又はエチルアミン等のアルキルアミン、2-ヒドロキシエチルアミン、ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、又はトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン等のヒドロキシアルキルアミン、ビシクロヘキシルアミン又はグルカミン等のシクロアルキルアミン、ピペリジン、ピリジン等、例えばコリジン、キニン、又はキノリン、及び塩基特性を有するアミノ酸、例えばリジン又はアルギニンを表す。
【0056】
好ましくは、式(I)の塩化合物は、カルシウム塩である。
【0057】
好ましくは、
- n=0、1、2、又は3であり、
- m=0、1、2、又は3であり、
2≦m+n≦3であり、
- R1は、独立して、直鎖状C1〜C6アルキル基、又は分枝状C3〜C6アルキル基、又は直鎖状C1〜C6アシル基を表し、
- R2及びR3が、独立して、水素原子又はOH基を表す。
【0058】
好ましくは、
n=0、1、2、又は3であり、
m=0、1、2、又は3であり、
1≦m+n≦3であり、
置換基R1の各々は、独立して、直鎖状C1〜C4アルキル基を表し、
R2及びR3は、独立して、水素原子又はヒドロキシル基を表し、
またその光学異性体、立体異性体、及び/又はジアステレオ異性体である。
【0059】
優先的に、直鎖状飽和アルキル基又は分枝状アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、及びtert-ブチルから選択することができ、より優先的にはメチルであり得る。
【0060】
好ましくは、
n=0、1、2、又は3であり、
m=0、1、2、又は3であり、
2≦m+n≦3であり、
置換基R1の各々は、独立して、直鎖状C1〜C4アルキル基を表し、好ましくはメチルを表し、
R2及びR3は、独立して、水素原子又はヒドロキシル基を表す。
【0061】
更により好ましくは、
n=0、1、2、又は3であり、
m=0、1、2、又は3であり、
2≦m+n≦3であり、
置換基R1の各々は、メチルを表し、
R2及びR3は、独立して、水素原子又はヒドロキシル基を表し、
またその光学異性体、立体異性体、及び/又はジアステレオ異性体である。
【0062】
本発明の第1の好ましい変形形態においては、式(I)の化合物、並びにそれらの光学異性体、立体異性体、及び/若しくはジアステレオ異性体、並びに/又はそれらの塩のうち、R2が水素原子又はヒドロキシル基を表し、且つR3が水素原子を表す化合物、
すなわち、下の式(II)
【化6】
(式中、
n=0、1、2、又は3であり、
m=0、1、2、又は3であり、
1≦m+n≦3であり、
- 置換基R1の各々は、独立して、直鎖状C1〜C6アルキル基、又は分枝状C3〜C6アルキル基、又は直鎖状C1〜C6アシル基を表し、
R2は、水素原子又はヒドロキシル基を表す)
に相当する化合物が、好ましくは選択される。
【0063】
好ましくは、
- n=0、1、2、又は3であり、
- m=0、1、2、又は3であり、
2≦m+n≦3であり、
- R1は、独立して、直鎖状C1〜C6アルキル基、又は分枝状C3〜C6アルキル基、又は直鎖状C1〜C6アシル基を表し、
- R2及びR3は、独立して、水素原子又はOH基を表す。
【0064】
好ましくは、
n=0、1、2、又は3であり、
m=0、1、2、又は3であり、
1≦m+n≦3であり、
- 置換基R1の各々は、独立して、直鎖状C1〜C4アルキル基を表し、
- R2は、水素原子又はヒドロキシル基を表す。
【0065】
好ましくは、
n=0、1、2、又は3であり、
m=0、1、2、又は3であり、
2≦m+n≦3であり、
置換基R1の各々は、独立して、直鎖状C1〜C4アルキル基を表し、好ましくはメチルを表し、
R2及びR3は、独立して、水素原子又はヒドロキシル基を表す。
【0066】
更により好ましくは、
n=0、1、2、又は3であり、
m=0、1、2、又は3であり、
2≦m+n≦3であり、
R1は、メチルを表し、
R2は、水素原子又はヒドロキシル基を表す。
【0067】
式(II)の化合物のうち、より具体的には、下の化合物1〜4及び7、それらの光学異性体、立体異性体、及びジアステレオ異性体、並びに/又はそれらの幾何異性体、並びに/又はそれらの塩が選択される。
【0068】
【表1】
【0069】
本発明の第2の好ましい変形形態においては、式(I)の化合物、或いはそれらの光学異性体、立体異性体、及び/若しくはジアステレオ異性体、並びに/又はそれらの塩のうち、R2が水素原子を表し、且つR3がヒドロキシル基を表す化合物、すなわち、式(III)
【化7】
(式中、
n=0、1、2、又は3であり、
m=0、1、2、又は3であり、
1≦m+n≦3であり、
- 置換基R1の各々は、独立して、直鎖状C1〜C6アルキル基、又は分枝状C3〜C6アルキル基、又は直鎖状C1〜C6アシル基を表す)
に相当する化合物が、好ましくは選択される。
【0070】
好ましくは、
n=0、1、2、又は3であり、
m=0、1、2、又は3であり、
1≦m+n≦3であり、
- 置換基R1の各々は、独立して、直鎖状C1〜C4アルキル基を表す。
【0071】
更により好ましくは、
n=0、1、2、又は3であり、
m=0、1、2、又は3であり、
2≦m+n≦3であり、
R1は、メチルを表す。
【0072】
式(III)の化合物のうち、より具体的には、下の化合物5及び6、それらの光学異性体、立体異性体、及びジアステレオ異性体、又はそれらの幾何異性体、並びに/又はそれらの塩が好ましくは選択され、更により具体的には化合物5が選択される。
【0073】
【表2】
【0074】
好ましくは、式(III)の化合物のうち、より具体的には、上の化合物5及び6のカルシウム塩が選択され、更により具体的には化合物5のカルシウム塩が選択される。
【0075】
本発明の主題はまた、下の式(V)〜(IX)の新規化合物である:
【0076】
式(V):
【化8】
(式中、
- n=1又は2であり、
- 置換基R1の各々は、独立して、水素原子、又は直鎖状C1〜C6アルキル若しくは分枝状C3〜C6アルキルを表す)
【0077】
式(VI):
【化9】
(式中、
- R2がヒドロキシル基を表す場合、R3は水素原子を表し、
- R2が水素原子を表す場合、R3はヒドロキシル基を表し、
- 置換基R1の各々は、独立して、水素原子、又は直鎖状C1〜C6アルキル若しくは分枝状C3〜C6アルキルを表す)
【0078】
式(VII):
【化10】
(式中、
- R3が、水素原子又はヒドロキシル基を表し、
- 置換基R1の各々は、独立して、水素原子、又は直鎖状C1〜C6アルキル若しくは分枝状C3〜C6アルキルを表す)
【0079】
式(VIII):
【化11】
(式中、
- R2がヒドロキシル基を表す場合、R3は水素原子を表し、
- R2が水素原子を表す場合、R3はヒドロキシル基を表し、
- 置換基R1の各々は、独立して、水素原子、又は直鎖状C1〜C6アルキル若しくは分枝状C3〜C6アルキルを表す)
【0080】
式(IX):
【化12】
(式中、R1は、水素、又は直鎖状C1〜C6アルキル若しくは分枝状C3〜C6アルキルを表す)。
【0081】
式(I)に相当する化合物は、プロパン単位の置換単位(R2及びR3の値)に応じて、4つの反応シーケンスに従って調製することができる。
【0082】
R2 = R3 = Hである場合
【化13】
(式中、m、n、及びR1は、先述の意味と同じ意味を有する)。
【0083】
m-CPBA(1〜5当量)の、ジクロロメタン等の非プロトン性溶媒の溶液を、同じ溶媒中に予め溶解させたアルケンに滴下により添加する。この反応混合物を1〜72時間撹拌し(0℃〜50℃)、次いでNa
2SO
3水溶液(濃度5〜20%)と混ぜて、過剰な酸化剤を中和する。相が分離し、有機相を10%のNaHCO
3水溶液等の塩基性水溶液で2回洗浄し、乾燥させ、濃縮する。残留物は、シリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィーによって精製してもよい。
【0084】
有利なことには、m = 0である場合、化合物(I)は、相当するフェノール誘導体のアルキル化によって直接得ることができる。
【化14】
(式中、R1及びnは、先述の意味と同じ意味を有する)。
【0085】
プロピレンオキシド(1〜10当量)を、フェノール誘導体(1当量)の、THF等の有機溶媒の溶液に、0〜70℃で滴下により添加する。n-BuLiのヘキサン溶液(例えば、市販の1.6M溶液(0.1〜2当量))を滴下により添加し、その後、反応混合物を室温で1〜24時間撹拌する。過剰な塩基を、NH
4Cl飽和水溶液を添加することによって中和し、混合物を、酢酸エチル又はジクロロメタン等の有機溶媒を用いて抽出する。有機相を合わせ、乾燥させ、濃縮する。残留物は、シリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0086】
R2 = OH、R3 = Hである場合
【化15】
(式中、R1、m、及びnは、先述の意味と同じ意味を有する)。
m≧1である場合、Protは、ヒドロキシル官能基の保護基、具体的には-CO-CH
3又はCH
2-Phを表す。
【0087】
a) 例えば、アセテート基又はベンジル基を保護基として使用することによる、当業者に既知の標準的方法による、遊離フェノール官能基の保護(例えば、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、P. G. M. Wutz、T. Greene、ed. Wiley-Blackwellを参照されたい)。
【0088】
b) 相当する保護されたスチレンのジヒドロキシル化
市販のシャープレス系であるAD-mix-α(参照番号392758の下に、供給業者Sigma USA社より入手可能)又はAD-mix-β(参照番号392766の下に、供給業者Sigma USA社より入手可能)を用いて、反応を行うことができる。
酸化系AD-mix(1〜3当量)及び第1の工程に由来する保護されたスチレンを、t-BuOH/水混合物等のアルカノール水二相混合物中に1/1の割合で溶解させ、この媒体を、溶解が完了するまで0〜50℃で撹拌する。
反応媒体を、0〜70℃で2〜96時間加熱する。室温まで冷ました後、これを亜硫酸ナトリウムと接触させながら撹拌して、過酸化物を中和する。生成物を、酢酸エチル等の有機溶媒を用いて抽出し、有機相を合わせ、乾燥させ、濃縮する。残留物は、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0089】
c) 当業者に既知の標準的方法による、事前に保護されたフェノール官能基の脱保護(例えば、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、P. G. M. Wutz、T. Greene、ed. Wiley-Blackwellを参照されたい)。
【0090】
R2 = OH、R3 = OHである場合
【化16】
(式中、R1、m、及びnは、先述の意味と同じ意味を有する)。
m≧1である場合、Protは、ヒドロキシル官能保護基、具体的には-CO-CH
3又はCH
2-Phを表す。
【0091】
a) 例えば、アセテート基又はベンジル基を保護基として使用することによる、当業者に既知の標準的方法による、遊離フェノール官能基の保護(例えば、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、P. G. M. Wutz、T. Greene、ed. Wiley-Blackwellを参照されたい)。
【0092】
b) 相当する保護されたアルケンのジヒドロキシル化
市販のシャープレス系であるAD-mix-α(参照番号392758の下に、供給業者Sigma USA社より入手可能)又はAD-mix-β(参照番号392766の下に、供給業者Sigma USA社より入手可能)を用いて、反応を行うことができる。
酸化系AD-mix(1〜3当量)及び第1の工程に由来する保護されたアルケンを、t-BuOH/水混合物等のアルカノール水二相混合物中に、1/1の割合で溶解させ、この媒体を、溶解が完了するまで、0〜50℃で撹拌する。
反応媒体を、0〜70℃で2〜96時間加熱する。室温まで冷ました後、これを亜硫酸ナトリウムと接触させながら撹拌して、過酸化物を中和する。生成物を、酢酸エチル等の有機溶媒を用いて抽出し、有機相を合わせ、乾燥させ、濃縮する。残留物は、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0093】
或いは、このジヒドロキシル化は、エポキシ化/加水分解シーケンスを介して行われてもよい。m-CPBA(1〜5当量)の、ジクロロメタン等の非プロトン性溶媒の溶液を、同じ溶媒中に予め溶解させた、第1の工程に由来する保護されたアルケン(1当量)に滴下により添加する。この反応混合物を1〜72時間撹拌し(0℃〜50℃)、次いでNa
2SO
3水溶液(濃度5〜20%)と混ぜて、過剰な酸化剤を中和する。相が分離し、有機相を10%のNaHCO
3水溶液等の塩基性水溶液で2回洗浄し、乾燥させ、濃縮する。残留物は、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製する。
このように単離された生成物を、ジクロロメタン等の非プロトン性溶媒中に溶解させ、1〜20%の硫酸水溶液等の酸性水溶液を、0〜30℃で添加する。反応混合物を室温で1〜96時間撹拌し、次いで溶媒を蒸発させることで取り除く。得られた水溶液を、酢酸エチル又はジエチルエーテル等の有機溶媒を用いて3回抽出する。有機相を合わせ、乾燥させ、次いで減圧下で濃縮する。残留物は、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0094】
c) 当業者に既知の標準的方法による、事前に保護されたフェノール官能基の脱保護(例えば、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、P. G. M. Wutz、T. Greene、ed. Wiley-Blackwellを参照されたい)。
【0095】
R2 = R3 = OHである場合
R2 = R3 = OHであるような式(I)の誘導体は、事前に保護された、相当するアリルアルコールのジヒドロキシル化によって得ることができる。
【0096】
【化17】
(式中、R1、m、及びnは、先述の意味と同じ意味を有する)。
m≧1である場合、Protは、ヒドロキシル官能保護基、具体的には-CO-CH
3又はCH
2-Phを表す。
【0097】
a) 例えば、アセテート基又はベンジル基を保護基として使用することによる、当業者に既知の標準的方法による、遊離フェノール官能基の保護(例えば、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、P. G. M. Wutz、T. Greene、ed. Wiley-Blackwellを参照されたい)。
【0098】
b) 保護されたアリルアルコールのジヒドロキシル化
市販のシャープレス系であるAD-mix-α(参照番号392758の下に、供給業者Sigma USA社より入手可能)又はAD-mix-β(参照番号392766の下に、供給業者Sigma USA社より入手可能)を用いて、反応を行うことができる。
酸化系AD-mix(1〜3当量)及び第1の工程に由来する保護されたアルケンを、t-BuOH/水混合物等のアルカノール水二相混合物中に、1/1の割合で溶解させ、この媒体を、溶解が完了するまで、0〜50℃で撹拌する。
反応媒体を、0〜70℃で2〜96時間加熱する。室温まで冷ました後、これを亜硫酸ナトリウムと接触させながら撹拌して、過酸化物を中和する。生成物を、酢酸エチル等の有機溶媒を用いて抽出し、有機相を合わせ、乾燥させ、濃縮する。残留物は、シリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0099】
c) 当業者に既知の標準的方法による、事前に保護されたフェノール官能基の脱保護(例えば、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、P. G. M. Wutz、T. Greene、ed. Wiley-Blackwellを参照されたい)。
【0100】
これらの経路に従って、式(I)、(II)、(III)の化合物、特に式(V)〜(IX)の新規化合物が得られる。
【0101】
本発明はまた、生理学的に許容される媒体中に、式(I)の少なくとも1種の化合物、好ましくは先述の化合物1〜7から選択される少なくとも1種の化合物を含む組成物、特に化粧用組成物に関する。
【0102】
特定の実施形態においては、本発明は、生理学的に許容される媒体中に、上に定義される式(I)の少なくとも1種の化合物を含む組成物、特に化粧用組成物に関するが、但し、この組成物は過酸化水素を含まない。
【0103】
特に、本発明は、生理学的に許容される媒体中に、以下の化合物
【化18】
を除く、上に定義される式(I)の少なくとも1種の化合物を含む組成物、特に化粧用組成物に関する。
【0104】
特に、本組成物は、皮膚に対する局所適用にとって好適である。
【0105】
本発明はまた、生理学的に許容される媒体中に式(V)〜(IX)の少なくとも1種の新規化合物を含む組成物、特に化粧用組成物に関する。
【0106】
式(I)及び(V)〜(IX)の化合物は、本発明による組成物中に、本組成物の総質量に対して、0.01質量%から30質量%の間、好ましくは0.1質量%から10質量%の間、特に0.5質量%から5質量%の間の量で、単独で又は混合物として存在してもよい。
【0107】
本発明による組成物はまた、生理学的に許容される媒体を含み、これは優先的には、美容的に許容される媒体、すなわち、不快な臭い、色、又は外観を有せず、使用者に許容できない刺痛、緊縮性、又は発赤をもたらさない媒体である。本発明の解釈上、「生理学的に許容される媒体」という用語は、ヒトの、身体若しくは顔の皮膚、唇、粘膜、まつ毛、又は爪等のケラチン物質と適合性である媒体を意味する。
【0108】
本発明による組成物は、想定される用途の分野において通常使用される、任意の化粧用成分を含んでもよい。
【0109】
したがって、本発明による組成物は、水、有機溶媒、特にC1〜C6アルコール及びC2〜C10カルボン酸エステル、炭化水素系油、シリコーン油、フルオロ油、ワックス、顔料、充填剤、染料、界面活性剤、乳化剤、化粧用活性剤、UV遮蔽剤、フィルム形成ポリマー、親水性又は親油性ゲル化剤、親水性又は親油性増粘剤、保存剤、芳香剤、臭気吸収剤/中和剤、及び酸化防止剤から選択される少なくとも1つの化粧用成分を含んでもよい。
【0110】
これらの任意の成分は、本組成物中に、本組成物の総質量に対して、0.001質量%〜99質量%、特に0.01質量%〜40質量%の割合で存在してもよい。
【0111】
本発明による組成物は、脂肪相及び/又は水性相を含み得る組成物であってもよい。
【0112】
これらの任意の成分は、それらの性質に応じて、本組成物の脂肪相若しくは水性相に、又は脂質小胞に導入することができる。いずれの場合においても、これらの成分及びそれらの割合は、想定される添加によって、本発明による化合物の有利な特性が損なわれないように、又はそれらが実質的に損なわれないように、当業者によって選択される。
【0113】
本発明において使用することができる油としては、鉱物油、流動ワセリン等の炭化水素系油、植物由来の油、動物由来の油、合成油、及びシリコーン系油を挙げることができる。脂肪相が存在する場合、この脂肪相はまた、脂肪アルコール、脂肪酸、又はワックスを含有してもよい。
【0114】
親水性増粘剤又はゲル化剤としては、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリレート/アルキルアクリレートコポリマー等のアクリルコポリマー、ポリアクリルアミド、多糖、天然ゴム、及びクレイを挙げることができ、親油性増粘剤又はゲル化剤としては、ベントン等の改質クレイ、脂肪酸の金属塩、疎水性シリカを挙げることができる。
【0115】
本発明による組成物は、式(I)の化合物以外の少なくとも1種の化粧用活性剤、特に落屑剤、保湿剤、脱色素剤又は着色促進剤(propigmenting agent)、抗糖化剤、NO合成酵素阻害剤、真皮又は表皮高分子の合成を刺激するため、及び/又はそれらの分解を予防するための薬剤、線維芽細胞及び/若しくはケラチノサイトの増殖を刺激するため、又はケラチノサイトの分化を刺激するための薬剤、真皮脱収縮剤(dermo-decontracting agent)、テンショニング剤(tensioning agent)、微小循環に作用する薬剤、細胞のエネルギー代謝に作用する薬剤、並びにそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1種の化合物を含んでもよい。
【0116】
この組成物は、化粧品分野又は皮膚科学分野において通常使用される任意のガレヌス形態であってもよく、特に、任意にゲル化された水溶液又はアルコール水溶液、ローションタイプの分散体、任意に二相分散体、水性相中に脂肪相を分散させることで得られるエマルジョン(O/W)若しくはその逆(W/O)、又はトリプル(W/O/W又はO/W/O)エマルジョン、或いはイオン性及び/又は非イオン性タイプの小胞性分散体、水性ゲル又は油性ゲルの形態であってもよい。これらの組成物は、通常の方法に従って調製される。
【0117】
本組成物は、多少流動性を有してもよく、白色又は有色のクリーム、軟膏、乳液、ローション、セラム、ペースト、ゲル、又はムースの外観を有してもよい。本組成物は、任意に、エアロゾルの形態で適用されてもよい。本組成物はまた、固体形態、具体的にはスティック形態であってもよい。
【0118】
本組成物がエマルジョンである場合、脂肪相の割合は、本組成物の総質量に対して、5質量%〜80質量%、好ましくは8質量%〜50質量%の範囲であり得る。乳化剤は、本組成物の総質量に対して、0.3質量%〜30質量%、好ましくは0.5質量%〜20質量%の範囲の割合で存在してもよい。
【0119】
本発明による組成物は、スキンケア組成物、具体的には、顔、手、足、主要な解剖学的ひだ、又は身体用の、クレンジング用、保護用、処置用、又はケア用のクリーム(例えば、日中用クリーム、夜用クリーム、メイクアップ除去用クリーム、ファンデーションクリーム、日焼け止め用クリーム)、メイクアップ除去用乳液、保護用若しくはケア用の身体用乳液、又は日焼け止め用乳液、或いはスキンケア用のローション、ゲル、又はフォーム、例えばクレンジングローション等を構成してもよい。
【0120】
本発明による組成物は、有利なことには、抗老化組成物、特に、皮膚の老化の外部的徴候を特に美容的に処置するため、及び/又はそれに抗うためのケア組成物である。
【0121】
本組成物は、より具体的には、老化した皮膚をケアするための組成物である。
【0122】
本組成物はまた、メイクアップ組成物、特にファンデーションであってもよい。