(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カロテノイドが、前記第一の有機溶媒と第二の有機溶媒との組み合わせに溶解され、かつ該第一の有機溶媒と該第二の有機溶媒の比率が約1:1〜約5:1の範囲内である、請求項1または2に記載の方法。
前記抗微生物薬が、前記非共有結合性複合体中に提供された場合に、複合体化していない状態の抗微生物薬と比べて増大した有効性を有するか、または、該抗微生物薬が、他の送達システムに組み入れられた場合に増大した有効性を有する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
定義
本明細書において用いられる「約」という用語は、量、時間的な継続期間などの測定可能な値に言及する場合、指定の値から±20%または±10%、例えば±5%、±1%の、および±0.1%を含めた変動を包含することを意図され、なぜならそのような変動は、開示される方法を実施するのにまたは所望の結果を達成するのに適切であるためである。
【0008】
「複数」は、少なくとも2つのメンバーを含有する。ある特定の場合、複数は、少なくとも10個、少なくとも100個、少なくとも1000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも10
6個、少なくとも10
7個、少なくとも10
8個、もしくは少なくとも10
9個、またはそれを上回る数のメンバーを有し得る。
【0009】
本明細書において用いられる「微生物」とは、細胞壁を有することを特徴とする任意の生物を指し得る。そのような生物には、限定することなく、原核生物(細菌および古細菌など)および真菌が含まれ得る。
【0010】
本明細書において用いられる「複合体」とは、互いに物理的に会合しているが他の実体とは会合しない、2つまたはそれを上回る数の実体を指し得る。2つまたはそれを上回る数の実体は、単一ユニットとして媒体の中を移動することができ得るまたは拡散することができ得る。
【0011】
本明細書において用いられる「疎水性」とは、少なくとも生理学的pH周辺で水に溶解しにくい分子または化合物を記載し得る。ある場合には、分子または化合物は、例えば25℃で、1.0mg/mLまたはそれ未満という水中での溶解度を有し得る。
【0012】
本明細書において用いられる「機能的に結合する」は、第一の実体および/または第二の実体の特性が相互作用の結果として変更されるような、直接的または間接的に互いに物理的に相互作用する第一の実体および第二の実体を記載するために用いられ得る。ある場合には、物理的相互作用には、第二の実体に結合するもしくはそれと複合体を形成する第一の実体、または第二の実体に移行されている第一の実体が含まれ得る。
【0013】
本明細書において使用する場合、「ラマン散乱」ならびに他の同様の用語および/または語句は、一定の波長でのサンプルに対する入射光が他の波長で散乱される任意の方法を指し得る。散乱は、初めはより低い振動レベル(基底状態)からより高い振動レベルへの構造体の励起による入射光子の吸収、およびそれに続く異なる基底状態レベルへの下方緩和が原因の非干渉性過程によるものであり得る。
【0014】
本明細書において使用する場合、「ラマンバンド」ならびに同様の用語および/または語句は、分子内の特定の化学結合からのラマン散乱に対応するスペクトルプロファイル(例えば、強度対周波数)を指し得る。各化学結合は、個別の周波数でラマンバンドとして現れ、およびある場合には、これらのラマンバンドは重複し得、それらを区別するのを難しくすると理解される。さらに、化学結合のラマン断面積は、対応するラマンピークの強度を規定する「不変のもの」であると理解される。さらには、この断面積は、入射光の波長とともに、および/または入射光と吸収バンドとの光学共鳴とともに、および/またはその化学結合の周囲環境の変化とともに変化し得ると理解される。そのような共鳴変化は、共鳴ラマン増強の間に生じる。
【0015】
本明細書において使用する場合、サンプルの「ラマンスペクトル」ならびに同様の用語および/または語句は、すべてのラマンバンドの総体を指し、そしてラマンスペクトルにおける個々のラマンバンドに関する相対的高さは、それらのラマン断面積を乗じた対応する化学結合の相対存在量に比例すると理解される。
【0016】
本明細書において使用する場合、「吸収」ならびに同様の用語およびまたは語句は、入射光が関心対象のサンプルによって吸収される任意の方法を指す。入射光子は、外殻電子の励起(例えば、UVまたは可視放射の吸収に対応する)、またはより高い振動/回転エネルギー状態への分子の励起を含めた、任意の数のメカニズムによって構造体と相互作用し得る。
【0017】
本明細書において使用する場合、「共鳴ラマン散乱」ならびに同様の語句および/または用語は、初期の基底状態から、現実の振動状態に対応する現実の励起状態への分子の励起を伴う、特殊なタイプのラマン散乱過程であると理解される過程を指す。ゆえに、本考察の目的上、共鳴「ラマン増強」(または「共鳴ラマン」)ならびに他の同様の用語および/または語句は、特定のバンドのラマン断面積が強力な光学吸収によって増強される任意の方法を指す。
【0018】
本明細書において使用する場合、「プロファイル」とは、時間および/または空間における1つまたは複数の次元にわたって取得された、サンプルの特性についての測定結果のセットを指し得る。「時間的プロファイル」は、複数の時点にわたる特性を測定することによって取得され得る。「空間的プロファイル」は、複数の位置にわたる特性を測定することによって取得され得る。ある場合には、複数の位置は、実質的に1つの次元における(すなわち、実質的に空間における線に沿った)複数の位置である。
【0019】
本明細書において用いられる「凝集体」とは、分子が液体媒体中でそれらの間での相互作用を呈さないシステムと比較して、分子相互作用が、システムの物理的特性を検出可能なほどに変更するのに十分安定である、液体媒体中の分子の集合体を指し得る。変更される物理的特性には、システムの光学的特性(例えば、吸光度、ラマンスペクトル)が含まれ得る。
【0020】
本明細書において使用する場合、「バイアル」ならびに他の同様の用語および/または語句は、アッセイの他の任意の構成要素とともに試験サンプルを含有する試験容器を指す。バイアルは、ガラスおよびプラスチックなど、任意の適切に透明な材料から構築され得ると理解される。
【0021】
本明細書において互換可能に用いられる「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、それには、遺伝的にコードされたおよび非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に改変されたまたは誘導体化されたアミノ酸、ならびに改変されたペプチド骨格を有するポリペプチドが含まれ得る。該用語には、N末メチオニン残基の有無にかかわらず、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、異種および同種のリーダー配列を有する融合体、免疫学的にタグ付けされたタンパク質などを含むがそれらに限定されない、融合タンパク質が含まれる。
【0022】
本開示をさらに記載する前に、開示される対象物は、記載される特定の態様に限定されるわけではないことが理解されるべきであり、なぜならそのようなものは当然変動し得るためである。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書において用いられる術語は、特定の態様のみを記載することを目的とするものであり、限定的であることを意図されるものではないことも理解されるべきである。
【0023】
値の範囲が提供される場合、文脈上はっきりと別様に述べられていない限り、その範囲の上限と下限との間にある各介在値は、下限の単位の10分の1まで、およびその記述される範囲における他の任意の記述される値または介在値は、開示される対象物の内に包含されると理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、該より小さな範囲内に独立して含まれ得、かつ記述される範囲において具体的に除外される任意の限度次第で、開示される対象物の内にも包含される。記述される範囲が限度の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限度のいずれかまたは両方を除外する範囲も、開示される対象物に含まれる。
【0024】
別様に定義されていない限り、本明細書において用いられるすべての技術的および科学的な用語は、開示される対象物が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料も、開示される対象物の実践または試験において用いられ得るものの、好ましい方法および材料がここに記載されている。刊行物が引用されているものに関連した方法および/または材料を開示しかつ記載する、本明細書において言及されるすべての刊行物は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0025】
本明細書においておよび添付の特許請求の範囲において使用する場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈上はっきりと別様に述べられていない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。ゆえに、例えば、「疎水性分子(a hydrophobic molecule)」への言及には複数のそのような疎水性分子が含まれ、そして「アルブミンタンパク質(the albumin protein)」への言及には、1つまたは複数のアルブミンタンパク質、および当業者に公知のそれらの同等物などへの言及が含まれる。特許請求の範囲は、任意の要素を除外するように起草され得ることがさらに留意される。そのため、この記述は、特許請求の範囲の要素についての列挙に関連した「だけ」、「のみ」などの排他的術語の使用のため、または「消極的」限定の使用のための先行詞としての役割を果たすことが意図される。
【0026】
明確性のために別個の態様の文脈で記載される、開示される対象物のある特定の特質は、単一の態様において組み合わせでも提供され得ることが解される。逆に、簡潔性のために単一の態様の文脈で記載される、開示される対象物の様々な特質は、別個にまたは任意の適切な部分的組み合わせでも提供され得る。本開示に関連する態様のすべての組み合わせは、開示される対象物によって具体的に内包され、そしてちょうどあたかもありとあらゆる組み合わせが個々にかつ明示的に開示されているかのように本明細書において開示される。加えて、様々な態様およびその要素のすべての部分的組み合わせも、本開示によって具体的に内包され、そしてちょうどあたかもありとあらゆるそのような部分的組み合わせが本明細書において個々にかつ明示的に開示されているかのように本明細書において開示される。
【0027】
本明細書において論じられる刊行物は、本出願の提出日より前のそれらの開示に関してのみ提供される。本明細書におけるいかなるものも、先行開示という理由で、開示される対象物がそのような刊行物に先行する権利を与えられないという承認として解釈されるべきでない。さらに、提供される刊行物の日付は実際の刊行日とは異なり得、それは独立して確認される必要があり得る。
【0028】
詳細な説明
上記で要約されるように、疎水性リガンド-アルブミン複合体、ならびにそれを作製および使用する方法が提供される。本疎水性リガンド-アルブミン複合体は、通常の操作の下で凝集しない状態のままであり得る能力および特異的条件下で凝集し得る能力など、複合体化していない形態のアルブミンの多くの特性を保持し得る。この疎水性リガンド-アルブミン複合体は、調製される水溶液に可溶性のままであり得、かつ通常では水溶液に可溶性でない疎水性分子を水溶液中で標的、例えばアルブミン結合標的に送達する効率的なやり方を提供し得る。多くの感染性または日和見性の微生物は、細胞表面に、例えば細胞壁の表面にアルブミン結合部分を発現する。ゆえに、疎水性リガンド-アルブミン複合体は、アルブミンとの複合体により疎水性分子を微生物に送達し得る。本開示の疎水性リガンド-アルブミンは、サンプル中の、例えば臨床サンプル中の微生物の検出における、または抗微生物化合物の有効性を増強するための、使用を見出し得る。例えば、疎水性抗微生物化合物の場合、抗微生物化合物とアルブミンとの複合体は、(a)抗微生物剤が有効に輸送され得る、抗微生物剤の有効な可溶化;(b)病原体への抗微生物薬の優先的輸送(ランダム方向の輸送の増強とは対照的な);および(c)病原性微生物の表面での抗微生物剤の堆積を提供し得る。
【0029】
本開示のさらなる局面がここで記載される。
【0030】
疎水性Lリガンド-アルブミン複合体
複合体中の疎水性リガンドとアルブミンとの間の相互作用が共有結合を含まない、疎水性分子/リガンドとアルブミンタンパク質との非共有結合性複合体が、本明細書において提供される。本開示の複合体は、アルブミンのナノ粒子など、2つまたはそれを上回る数のアルブミンタンパク質分子の凝集体を含まない。しかしながら、それぞれがアルブミンタンパク質を含有する本開示の多重複合体は、本明細書において記載されるある特定の状況下で溶液中で凝集体を形成し得る。
【0031】
アルブミンタンパク質は、任意の適切なアルブミンであり得る。適切なアルブミンタンパク質には、ヒト血清アルブミン(HSA;遺伝子ID:213);ウシ血清アルブミン(BSA;遺伝子ID:280717);マウスアルブミン(遺伝子ID:11657);ラットアルブミン(遺伝子ID:24186);ヤギアルブミン(遺伝子ID:100860821);ロバアルブミン(遺伝子ID:106835108);ウマアルブミン(遺伝子ID:100034206);ラクダアルブミン(遺伝子ID:105080389または105091295)などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。アルブミンタンパク質には、疎水性リガンド-アルブミン複合体における使用に適した任意のアルブミン変種も含まれ得る。
【0032】
一部の態様において、適切なヒト血清アルブミンタンパク質は、
図25(SEQ ID NO:1)に図示されるアミノ酸配列のアミノ酸25〜609と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0033】
一部の態様において、適切なウシ血清アルブミンタンパク質は、
図26(SEQ ID NO:2)に図示されるアミノ酸配列のアミノ酸25〜607と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0034】
一部の態様において、適切なマウス血清アルブミンタンパク質は、
図27(SEQ ID NO:3)に図示されるアミノ酸配列のアミノ酸25〜608と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0035】
一部の態様において、適切なラット血清アルブミンタンパク質は、
図28(SEQ ID NO:4)に図示されるアミノ酸配列のアミノ酸25〜608と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0036】
一部の態様において、適切なヤギ血清アルブミンタンパク質は、
図29(SEQ ID NO:5)に図示されるアミノ酸配列のアミノ酸25〜607と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0037】
一部の態様において、適切なロバ血清アルブミンタンパク質は、
図30(SEQ ID NO:6)に図示されるアミノ酸配列のアミノ酸25〜607と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0038】
一部の態様において、適切なウマ血清アルブミンタンパク質は、
図31(SEQ ID NO:7)に図示されるアミノ酸配列のアミノ酸25〜607と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0039】
一部の態様において、適切なラクダ血清アルブミンタンパク質は、
図32(SEQ ID NO:8)に図示されるアミノ酸配列のアミノ酸25〜607と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0040】
一部の態様において、適切なラクダアルブミンタンパク質は、
図33(SEQ ID NO:9)に図示されるアミノ酸配列のアミノ酸25〜607と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0041】
本複合体の疎水性リガンドは、アルブミン分子の所望の特性、例えば溶解度、他のアルブミン分子および/またはアルブミン受容体への結合能などを実質的に維持しながら、アルブミン分子に結合し得る、任意の適切な疎水性分子であり得る。ある場合には、適切な疎水性分子は、溶液中のアルブミンの凝集を同様にして大幅に変更するであろう、他のアルブミン分子との相互作用を大幅に変更することなく、アルブミン分子に結合し得る。
【0042】
疎水性分子は、アルブミンの疎水性結合部位に結合する任意の適切な分子量を有し得る。ある場合には、疎水性分子は、100kDまたはそれ未満、例えば1.0kDまたはそれ未満の大きさを含めた、50kDまたはそれ未満、20kDまたはそれ未満、10kDまたはそれ未満、5.0kDまたはそれ未満の分子量を有し、かつ0.05kDまたはそれを上回る、例えば0.5kDまたはそれを上回る大きさを含めた、0.1kDまたはそれを上回る、0.2kDまたはそれを上回る、0.3kDまたはそれを上回る分子量を有する。一部の態様において、疎水性分子は、0.05kD〜100kD、例えば0.1kD〜10kDを含めた、0.05kD〜50kD、0.1kD〜20kDの範囲内の分子量を有する。アルブミンへの疎水性分子の結合は、本明細書において記載されるものなどの任意の適切な方法を用いて、および公知のアルブミン結合剤による競合アッセイ(例えば、US 20150309040を参照されたく、それは参照により本明細書に組み入れられる)または他の任意の適切な方法によって測定され得る。
【0043】
ある場合には、疎水性分子は、クロモフォア、例えばその光学的特性が、ごく接近した近隣分子間での光学的相互作用により濃度依存的であるクロモフォアを含む。クロモフォア濃度依存的光学的特性は、クロモフォア含有分子の凝集状態の変化を検出するための任意の適切な光学的特性であり得る。ある場合には、クロモフォアの吸光度は、クロモフォアを含有する分子間での光学的相互作用により濃度依存的様式で変更する(例えば、赤色に推移するまたは青色に推移する)。ある場合には、クロモフォアのラマン散乱は、クロモフォアを含有する分子間での光学的相互作用により濃度依存的様式で変更する(例えば、より効率的であるまたは効率が落ちる)。
【0044】
適切なクロモフォア含有分子にはカロテノイドが含まれるが、それに限定されるわけではない。関心対象のカロテノイドには、カロテン(例えば、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテン、ε-カロテン、リコピンなど)およびキサントフィル(例えば、ルテイン、ゼアキサンチン、ネオキサンチン、ビオラキサンチン、フラボキサンチン、α-およびβ-クリプトキサンチンなど)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0045】
ある場合には、適切なカロテノイドは、強力な共鳴ラマンピークを有するそうした化合物である。例えば、単色光による多くのカロテノイドの励起は、およそ1520cm
-1およびおよそ1160cm
-1の波数で、突出した共鳴ラマンピークを誘導する(例えば、Merlin. Pure and Applied Chemistry 57.5 (1985):785-792を参照されたい)。具体的にはリコピンに関して、532nmの波長で励起されるリコピンのラマンスペクトルは、1516および1156cm
-1における2つの強力なピークを含む(例えば、Hoskins, Journal of Chemical Education 61, no. 5 (1984):460;およびLopez-Ramirez et al., Journal of Raman Spectroscopy 41.10 (2010):1170-1177を参照されたい)。1516および1156cm
-1におけるピークは、抱合したポリエンに典型的なν(C=C)およびν(C-C)振動に対応し、かつν
1およびν
2モードと呼ばれる。
【0046】
ある場合には、疎水性分子は、フルオロフォア、例えばその光学的特性が、ごく接近した近隣分子間での光学的相互作用により濃度依存的であるフルオロフォアを含む。フルオロフォア濃度依存的光学的特性は、フルオロフォアの凝集状態の変化を検出するための任意の適切な光学的特性であり得る。ある場合には、疎水性分子は、蛍光分子のフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)ペアの一方である。そのような場合、疎水性分子は、DiIC
18(3) (DiI)およびDiOC18(3) (DiO)など、FRETペアのドナーまたはアクセプターであり得る。
【0047】
一部の態様において、疎水性分子は抗微生物剤である。抗微生物剤は、抗微生物活性を有する任意の適切な疎水性化合物であり得る。ある場合には、抗微生物剤は、抗細菌剤(抗生物質)または抗真菌剤である。適切な抗細菌剤には、限定することなく、クロファジミン、クロルヘキシジン、テトラサイクリン、トブラマイシン、およびゲンタマイシンが含まれる。適切な抗真菌剤には、限定することなく、アンホテリシンB、ピマリシン、フィリピン、ナイスタチン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、サペルコナゾール、ミコナゾール、ラブコナゾール(ravunconazole)、ポサコナゾール、ボリコナゾール、シクロピロクスオラミン、ブトコナゾール、およびトルナフテートが含まれる。
【0048】
ある場合には、抗微生物剤は薬理学的活性剤である。任意の適切な疎水性薬理学的活性剤は、アルブミンと複合され得る。ある場合には、薬理学的活性剤は、抗がん薬、抗ウイルス薬、または心血管薬である。適切な抗がん薬には、限定することなく、カンプトテシン、シラテカン7-t-ブチルジメチルシリル-10-ヒドロキシカンプトテシン(DB-67)、7-エチル-10-ヒドロキシ-20(S)-カンプトテシン(SN-38)、トポテカン、イリノテカン、9-ニトロ-カンプトテシン、ラルトテカン、エキサテカン、ギマテカン、カレニテシン、パクリタキセル、5-フルオロウラシル、プレドニゾン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ジエチルスチルベストロール、メルファラン、およびクロラムブシルが含まれる。適切な抗ウイルス薬には、限定することなく、ジソキサリル、アデホビル、マラビロク、ジピボキシル、デラビルジン、エファビレンツ、ネビラピン、ダルナビル、アンプレナビル、およびチプラナビルが含まれる。適切な心血管薬には、限定することなく、ゲムフィブロジル、テトラヒドロリプスタチン、コレスチラミン、コレスチポール、ロバスタチン、プロブコール、およびスクアレンが含まれる。
【0049】
本開示の疎水性リガンド-アルブミン複合体は、本明細書において記載される方法によって調製されるように水溶液に可溶性であり得る。ゆえに、ある場合には、アルブミンへの疎水性分子の組み込みは、標準的条件で(例えば、標準的な温度および圧力(STP)で、または生理学的条件で)アルブミンの凝集を引き起こすほど十分には、アルブミン間の分子相互作用を混乱させない。
【0050】
アルブミンは疎水性リガンドを組み込まれ得るものの、疎水性リガンドの組み込みは、密度揺動を可能にし得る様式でアルブミンの溶解度を変更し得る。例として、リコピンおよびβ-カロテンは、疎水性リガンドと見なされる。リコピンおよびベータカロテンの有りおよび無しのアルブミンの相分離は、4つの項で理解され得る:(a)HSA/Lyc-HSA相互作用パラメーター(χ
12)、(b)HSA/Lyc-水およびHSA-水相互作用パラメーター(χ
1w、χ
2w)、(c)2種のタンパク質分子の分子量、ならびに(d)2種のタンパク質の立体構造状態。
【0051】
フローリー・ハギンズ(Flory-Huggins)溶液理論から、ポリマーの2成分混合物に対する決定的な相互作用パラメーターχ
Cは0である(2つの構成要素は、それらの相互作用パラメーターがχ
Cを下回る場合にのみ混和性であると考えられる)。しかしながら、溶媒を有する3成分系において、溶媒(リガンドの有無にかかわらず、血清中のアルブミンの場合には水)が、両方のタンパク質にとって同等に良好である|χ
1w−χ
2w|=0の場合には、2種のタンパク質は、χ
12の小さな正値にもかかわらず完全に混和性溶液であり得る。同じように、水中の2種のタンパク質は、それらが水との異なる相互作用を有する場合に不適合であり得、|χ
1w−χ
2w|;わずか0.03の差で不適合性に十分であり、かつ相分離の閾値は、|χ
1w−χ
2w|が増加するにつれて低くなる。
【0052】
アルブミン-水相互作用パラメーターχ
1wおよびχ
2wは、ヒルデブラント(Hildebrand)溶解度パラメーターδから概算され得る。
【0053】
式中、V
Oは、溶媒(水)のモル体積である。順番に、δは、ファン・クレベレン(Van Krevelen)のグループ寄与法から算出され得る。
【0054】
リコピン有りおよび無しのアルブミン(疎水性リガンドの一例として。値はβ-カロテンに対して非常に類似していると考えられる)を比較する場合、水、アルブミン、およびβ-カロテンに対するヒルデブラントパラメーターδ(それぞれ、43、23.31、および14.29J
1/2cm
-3/2である)が用いられ;それらの値を用いると、HSAに対してδ
2=23.31およびHSA/lyc J
1/2cm
-3/2に対してδ
1=23.24。これらの数に伴って、χ
1w=2.81およびχ
2w=2.79、ならびに|χ
1w−χ
2w|=0.02。
【0055】
この差は、水中の2種のタンパク質間の不適合性に関して以前に付記された閾値をほんの少し下回ることに留意する。ゆえに、徹底的な相分離は、付加的刺激の非存在下では可能性が低いものの、リコピン密度の揺動は可能である/可能性がある。さらに、アルブミンは2つの結合部位を有し;かつそれが2つのリコピン分子を担持する(各結合部位に1つ)場合には、|χ
1w−χ
2w|=0.04;それは0.03という閾値を上回ることに留意する。ゆえに、二重充填されたアルブミンは、凝集体に相分離し得る。
【0056】
これらの密度揺動は、これらの揺動の長さ尺度が光の長さ尺度と比較可能である場合、および光を、それがリコピンによってのみ吸収されるように調整した場合、散乱をもたらし得る。ゆえに、これらの揺動の大きさおよび長さ尺度に応じて、有限でかつ可変の数のリコピン高密度ポケットが集光レンズによって観察され得、そして観察されたリコピンレベルは量子化され、かつこれらのレベルは予想値を下回って低下すると考えられ得る。
【0057】
単一アルブミン分子は、例えばリガンドの疎水性に基づいて、任意の適切な数の疎水性リガンドと複合体化し得る。ある場合には、アルブミンは、単一の疎水性リガンドと複合体化する(単一充填)。ある場合には、アルブミンは、2つの疎水性リガンドと複合体化する(二重充填)。単一アルブミンタンパク質上の疎水性リガンドの数の程度は、下記でさらに記載されるように制御され得る。
【0058】
組成物
上記で記載される疎水性リガンド-アルブミン複合体を含む組成物も、本明細書において提供される。関心対象の組成物は、ある量の本疎水性リガンド-アルブミン複合体を含む水溶液を含む。本明細書において記載されるように、例えば組成物が最初に調製される場合または粉末形態から再構成される場合、疎水性リガンド-アルブミン複合体は溶液中に存在し得る(すなわち、凝集体を形成しない)。本組成物は、例えば臨床サンプルにおいて細菌の存在を検出するためにインビトロで実施されるアッセイにおける、または、例えば個体に薬学的活性剤を投与するための、インビボにおける部位に疎水性リガンドの送達における、使用を見出し得る。そのため、本組成物は、その意図される使用のために他の任意の適切な構成要素を含み得る。
【0059】
前記組成物は、任意の適切な量の疎水性リガンド-アルブミン複合体を含み得る。ある場合には、組成物は、組成物における疎水性リガンドの量に基づいて測定される、1.0nMまたはそれを上回る、例えば5.0μMまたはそれを上回る量を含めた、5.0nMまたはそれを上回る、10nMまたはそれを上回る、50nMまたはそれを上回る、100nMまたはそれを上回る、0.5μMまたはそれを上回る、1.0μMまたはそれを上回る量の、アルブミンと複合体化した疎水性リガンドを含み、かつ10mMまたはそれ未満、例えば5.0μMまたはそれ未満の量を含めた、5.0mMまたはそれ未満、1.0mMまたはそれ未満、0.5mMまたはそれ未満、0.1mMまたはそれ未満、50μMまたはそれ未満、10μMまたはそれ未満の量の、アルブミンと複合体化した疎水性リガンドを含む。一部の態様において、組成物は、疎水性リガンド組成物の量に基づいて測定される、1.0nM〜10mM、例えば0.5μM〜50μMを含めた、5.0nM〜5.0mM、10nM〜1.0mM、50nM〜0.5mM、100nM〜0.1mMの範囲内の濃度の、アルブミンと複合体化した疎水性リガンドを含む。
【0060】
前記水溶液は、任意の適切な水に基づく溶液を含み得る。ある場合には、水溶液は水である。ある場合には、水溶液はバッファーであり、それは、リン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、ビシン、トリシン、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)、およびピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)などであるがそれらに限定されない、任意の適切な緩衝剤(すなわち、pH制御剤)を含み得る。バッファーは、ミネラル/塩、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸など)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはグルタチオンなど)、アミノ酸(例えば、グリシンなど)、タンパク質、防腐剤、張性制御剤など、任意の適切な構成要素を含み得る。適切なバッファーにはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0061】
前記水溶液のpHは、任意の適切なpHであり得る。ある場合には、水溶液のpHは、5.4よりも大きい、例えば8.5またはそれよりも高い値を含めた、5.5またはそれよりも高い、6.0またはそれよりも高い、6.5またはそれよりも高い、7.0またはそれよりも高い、7.5またはそれよりも高い、8.0またはそれよりも高い値であり、かつ10.0またはそれ未満、例えば8.0またはそれ未満の値を含めた、9.5またはそれ未満、9.0またはそれ未満、8.5またはそれ未満の値であり得る。ある場合には、水溶液のpHは、5.5〜10.0、例えば6.5〜8.0を含めた、6.0〜9.5、6.5〜9.0、6.5〜8.5の範囲内である。
【0062】
ある場合には、前記組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸を含む。抗酸化剤は、任意の適切な量で存在し得る。ある場合には、抗酸化剤は、0.001mg/mLまたはそれを上回る、例えば0.1mg/mLまたはそれを上回る濃度を含めた、0.005mg/mLまたはそれを上回る、0.01mg/mLまたはそれを上回る、0.02mg/mLまたはそれを上回る、0.05mg/mLまたはそれを上回る濃度で、かつ10mg/mLまたはそれ未満、例えば0.05mg/mLまたはそれ未満の濃度を含めた、1.0mg/mLまたはそれ未満、0.5mg/mLまたはそれ未満、0.1mg/mLまたはそれ未満の濃度で組成物中に存在する。一部の態様において、抗酸化剤は、0.001〜10mg/mL、例えば0.01〜0.05mg/mLを含めた、0.005〜1.0mg/mL、0.01〜0.5mg/mL、0.01〜0.1mg/mLの範囲内の濃度で組成物中に存在する。
【0063】
一部の態様において、前記組成物は、疎水性分子間の分子間距離に依存する特性、例えば光学的特性を有する複数の疎水性分子を含み、該組成物は、下記でさらに記載されるように、サンプル中の微生物の検出における使用を見出す。そのような場合、組成物は、微生物の少なくともいくらかのレベルの代謝を持続させ得る栄養源をさらに含み得る。栄養源は、任意の適切な栄養培地であり得る。ある場合には、栄養源は、トリプチケースソイブロス(TSB)、ルリア・ベルターニ(LB)ブロス、ニュートリエントブロス、ブレインハートインフュージョンブロス(BHI)、ハートインフュージョンブロス、M9ブロス、ペプトン水、SOCブロス、テリフィックブロス、およびベジトン(vegitone)である。
【0064】
ある場合には、前記組成物は、例えば個体に疎水性薬理学的作用物質を送達するための、個体への投与に適している治療用組成物である。そのような治療用組成物中の疎水性薬理学的作用物質は、上記で記載される抗微生物剤、抗ウイルス剤、抗がん剤、抗炎症剤、または心血管剤など、任意の適切な治療用化合物であり得る。
【0065】
前記治療用組成物は、薬理学的に許容される担体または賦形剤中に疎水性リガンド-アルブミン複合体を含有し得る。本明細書において使用する場合、「担体」または「賦形剤」には、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、バッファー(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水など)、可溶化剤、コロイド、分散媒、ビヒクル、充填材、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはグルタチオンなど)、アミノ酸(例えば、グリシンなど)、タンパク質、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香味料、芳香剤、増粘剤、貯蔵効果を達成するための作用物質、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、防腐剤、抗酸化剤、張性制御剤、吸収遅延剤などが含まれる。薬学的活性物質のためのそのような媒体および作用物質の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来的な媒体または作用物質が活性物質と不適合である限りを除いて、治療用組成物におけるその使用が企図され得る。「薬学的に許容される」によって、生物学的にまたはその他の点で望ましくないわけではない材料が意味され、すなわち該材料は、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こすことなく、またはそれが含有される組成物の他の構成要素のいずれかと有害な様式で相互作用することなく、個体に投与される薬学的組成物中に組み込まれ得る。「薬学的に許容される」という用語を用いて、薬学的な担体または賦形剤に言及する場合、該担体もしくは賦形剤は、毒物学的試験および製造試験の要求される基準を満たしていること、またはそれがアメリカ食品医薬品局によって作成された非活性成分ガイド(Inactive Ingredient Guide)に含まれることが暗示される。
【0066】
ある場合には、治療用組成物は、第二の活性剤をさらに含む。第二の活性剤は、任意の適切な薬学的作用物質であり得る。ある場合には、第二の活性剤は、疎水性分子よりも可溶性でありかつ/またはより良好な薬物動態(PK)プロファイルを有する、抗微生物剤、抗ウイルス剤、抗がん剤、抗炎症剤、または心血管剤である。
【0067】
本開示の組成物は、シートまたは粉末の形態の実質的に乾燥した疎水性リガンド-アルブミン複合体をさらに含む。実質的に乾燥した疎水性リガンド-アルブミン複合体は、上記で記載される適切な水溶液、例えばバッファー中で再構成された場合、乾燥前の疎水性リガンド-アルブミン複合体のその溶解度を保持する。実質的に乾燥した疎水性リガンド-アルブミン複合体は、再構成された場合にアルブミンおよび疎水性リガンドの機能的特性を保存する任意の適切な乾燥方法によって、上記で記載されるように、可溶性の疎水性リガンド-アルブミン複合体を含有する水性組成物から取得され得る。ある場合には、実質的に乾燥した疎水性リガンド-アルブミン複合体は、可溶性の疎水性リガンド-アルブミン複合体を含有する水性組成物を凍結乾燥させることによって産生される。他の場合には、実質的に乾燥した疎水性リガンド-アルブミン複合体は、宿主アルブミンの等電pHに近いpH(すなわち、アルブミン上の表面電荷が0に近いpH)まで、溶液のpHを下げることによって産生され、それによって、該リガンド-アルブミン複合体は、溶液からクラッシュアウトする(crash out)凝集体を形成し、次いで該溶液はデカントで移されるまたはフィルター濾過される。
【0068】
方法
疎水性リガンド-アルブミン複合体を作製する方法
溶液中に疎水性分子とアルブミンタンパク質との非共有結合性複合体を形成する方法が、本明細書においてさらに提供される。一般的には、該方法は、適切な有機溶媒に疎水性分子を溶解して、第一の溶液を形成する工程;第一の溶液と第二の溶液とを組み合わせて、第三の溶液を提供する工程であって、該第二の溶液がアルブミンの水溶液である、工程;および、第三の溶液から有機溶媒を除去して、疎水性分子と単一アルブミンタンパク質との非共有結合性複合体を含有する第四の水溶液を提供する工程を含む。第一の溶液の有機溶媒は、溶解度、水との混和性、極性基の存在および/もしくは分布、ならびに/またはアセトンに類似しているアルブミン立体構造を変更し得る能力を有する少なくとも1種の有機化合物を含む。有機化合物は、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、および3-ペンタノンなどであるがそれらに限定されない、3〜5個の炭素原子を含む脂肪族ケトン(すなわち、C
3〜C
5ケトン)などのケトン含有化合物であり得る。第二の溶液中のアルブミンは、水溶液に溶解し得る、すなわち凝集し得ない。
【0069】
ある場合には、疎水性分子はC
3〜C
5ケトン含有化合物に可溶性である、例えばそれはアセトンに可溶性である。そのような場合に関して、一部の態様において、疎水性分子を、C
3〜C
5ケトン含有化合物、例えばアセトンである第一の有機溶媒に溶解する。ある場合には、疎水性分子はC
3〜C
5ケトン含有化合物に可溶性ではない、例えばアセトンに可溶性ではないが、第二の有機溶媒に少なくとも部分的に可溶性である。そのような場合に関して、一部の態様において、疎水性分子を、C
3〜C
5ケトン含有化合物ならびに第二の有機溶媒の混合物を含有する第一の有機溶媒に溶解する。第二の有機溶媒は、疎水性分子を溶解し得、水よりも揮発性であり、かつケトン含有化合物と混和性である、例えばアセトンと混和性である、任意の適切な有機化合物を含み得る。第二の有機溶媒には、限定することなく、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、n-ブタノール、酢酸ブチル、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジオキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ヘプタン、ヘキサン、メチル-t-ブチルエーテル、2-ブタノン、ペンタン、n-プロパノール、イソプロパノール、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、トリクロロエチレン、およびそれらの組み合わせが含まれ得る。ある場合には、疎水性分子を、1種または複数種の第二の有機化合物を含有する第二の有機溶媒に最初に溶解する。次いで、第二の有機溶媒を、C
3〜C
5ケトン含有化合物、例えばアセトンと組み合わせる。
【0070】
第一の有機溶媒対第二の有機溶媒の比率は、本方法を用いて疎水性リガンド-アルブミン複合体を提供する任意の適切な比率であり得る。ある場合には、第一の溶液を提供するために用いられる、第一の有機溶媒対第二の有機溶媒の比率は、体積で、約0.001:1またはそれを上回る、例えば約1:1またはそれを上回る割合を含めた、約0.01:1またはそれを上回る、約0.1:1またはそれを上回る、約0.2:1またはそれを上回る割合であり、かつ約1:1またはそれ未満の割合を含めた、約1,000:1またはそれ未満、約100:1またはそれ未満、約10:1またはそれ未満、約5:1またはそれ未満の割合である。一部の態様において、第一の有機溶媒対第二の有機溶媒の比率は、体積で、約0.001:1〜約1,000:1、例えば約0.2:1〜約5:1を含めた、約0.01:1〜約100:1、約0.1:1〜約10:1の範囲内である。ある場合には、第一の有機溶媒対第二の有機溶媒の比率は、約2:1である。
【0071】
第一の溶液中に存在する疎水性分子の量は、疎水性分子の性質および所望の成果に応じて変動し得る。ある場合には、疎水性分子は、0.001mg/mLまたはそれを上回る、例えば1.0mg/mLまたはそれを上回る濃度を含めた、0.005mg/mLまたはそれを上回る、0.01mg/mLまたはそれを上回る、0.05mg/mLまたはそれを上回る、0.1mg/mLまたはそれを上回る、0.5mg/mLまたはそれを上回る濃度で、かつ50mg/mLまたはそれ未満、例えば3mg/mLまたはそれ未満の濃度を含めた、25mg/mLまたはそれ未満、10mg/mLまたはそれ未満、5.0mg/mLまたはそれ未満の濃度で第一の溶液中に存在する。一部の態様において、疎水性分子は、0.001〜50mg/mL、例えば0.1〜5.0mg/mLを含めた、0.01〜25mg/mL、0.05〜10mg/mLの範囲内の濃度で第一の溶液中に存在する。
【0072】
第二の溶液は、任意の適切な量のアルブミンを含み得る。第二の溶液は、0.1mg/mLまたはそれを上回る、例えば20mg/mLまたはそれを上回る濃度を含めた、0.5mg/mLまたはそれを上回る、1.0mg/mLまたはそれを上回る、5.0mg/mLまたはそれを上回る、10mg/mLまたはそれを上回る濃度で、かつ10mg/mLまたはそれ未満の濃度を含めた、100mg/mLまたはそれ未満、50mg/mLまたはそれ未満、30mg/mLまたはそれ未満、15mg/mLまたはそれ未満の濃度でアルブミンを含有し得る。一部の態様において、第二の溶液は、0.1〜100mg/mL、例えば5.0〜30mg/mLを含めた、0.5〜50mg/mL、1.0〜30mg/mLの範囲内の濃度でアルブミンを含有し得る。
【0073】
第二の溶液は、リン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、ビシン、トリシン、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)、およびピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)などであるがそれらに限定されない、緩衝剤(すなわち、pH制御剤)などの1種または複数種の付加的構成要素を含み得る。他の適切な付加的構成要素には、限定することなく、ミネラル/塩、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸など)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはグルタチオンなど)、アミノ酸(例えば、グリシンなど)、タンパク質、防腐剤、張性制御剤などが含まれる。ある場合には、第二の溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。ある場合には、第二の溶液は、疎水性フリーラジカル捕捉体(例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、ビタミンE)など、アルブミン立体構造を変調する化合物を含む。
【0074】
第二の水溶液のpHは、任意の適切なpHであり得る。ある場合には、水溶液のpHは、5.4よりも大きい、例えば8.5またはそれよりも高い値を含めた、5.5またはそれよりも高い、6.0またはそれよりも高い、6.5またはそれよりも高い、7.0またはそれよりも高い、7.5またはそれよりも高い、8.0またはそれよりも高い値であり、かつ10.0またはそれ未満、例えば8.0またはそれ未満の値を含めた、9.5またはそれ未満、9.0またはそれ未満、8.5またはそれ未満の値であり得る。ある場合には、水溶液のpHは、5.5〜10.0、例えば6.5〜8.0を含めた、6.0〜9.5、6.5〜9.0、6.5〜8.5の範囲内である。
【0075】
ある場合には、第二の水溶液は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸を含む。抗酸化剤は、任意の適切な量で存在し得る。ある場合には、抗酸化剤は、0.001mg/mLまたはそれを上回る、例えば0.1mg/mLまたはそれを上回る濃度を含めた、0.005mg/mLまたはそれを上回る、0.01mg/mLまたはそれを上回る、0.02mg/mLまたはそれを上回る、0.05mg/mLまたはそれを上回る濃度で、かつ10mg/mLまたはそれ未満、例えば0.05mg/mLまたはそれ未満の濃度を含めた、1.0mg/mLまたはそれ未満、0.5mg/mLまたはそれ未満、0.1mg/mLまたはそれ未満の濃度で第二の水溶液中に存在する。一部の態様において、抗酸化剤は、0.001〜10mg/mL、例えば0.01〜0.05mg/mLを含めた、0.005〜1.0mg/mL、0.01〜0.5mg/mL、0.01〜0.1mg/mLの範囲内の濃度で第二の水溶液中に存在する。
【0076】
有機溶媒(例えば、アセトンなどのC
3〜C
5ケトン含有溶媒、またはC
3〜C
5ケトン含有溶媒と第二の溶媒との組み合わせ)を、複合体中のアルブミンおよび疎水性分子の機能的特性を保持する任意の適切な方法を用いて第三の溶液から除去して、第四の溶液を提供し得、該第四の溶液は、疎水性分子と単一アルブミンタンパク質分子との非共有結合性複合体を含む水溶液である。ある場合には、除去することは、第一および第二の溶液の混合物から揮発性構成要素(例えば、第一の有機溶媒および/または第二の有機溶媒)を蒸発させることによって実施される。
【0077】
ある場合には、除去すること、例えば蒸発させることは、標準的な温度および圧力(STP:1気圧および室温)などの低い温度および圧力で、または他の任意の適切な条件で実施される。有機溶媒の蒸発は残りの液体を冷却し、それは温度を徐々に下げ得る。ある場合には、これは、液体を超音波処理することによって補完され得、超音波処理の出力は、液体の温度を上昇させかつ蒸発による温度の下降を補完する。超音波処理の出力を制御することによって、溶液の温度は制御され得る。ある場合には、蒸発させることは、0℃またはそれを上回る、例えば30℃またはそれを上回る温度を含めた、5℃またはそれを上回る、10℃またはそれを上回る、15℃またはそれを上回る、20℃またはそれを上回る温度で、かつ40℃またはそれ未満、例えば25℃またはそれ未満の温度を含めた、38℃またはそれ未満、36℃またはそれ未満、30℃またはそれ未満の(混合物の)温度で実施される。ある場合には、除去すること、例えば蒸発させることは、0〜40℃、例えば20〜38℃を含めた、5〜38℃、10〜38℃、15〜38℃の範囲内の(混合物の)温度で実施される。ある場合には、除去すること、例えば蒸発させることは、1気圧またはそれ未満、例えば0.1気圧またはそれ未満の圧力を含めた、0.5気圧またはそれ未満、0.2気圧またはそれ未満の、混合物にわたる大気圧で実施される。ある場合には、除去すること、例えば蒸発させることは、真空圧の下で実施される。ある場合には、除去すること、例えば蒸発させることは、ロータリーエバポレーター(rotavap)を用いて実施される。
【0078】
一部の態様において、アルブミンを含有する溶液(例えば、第二の溶液、第一および第二の溶液の混合物、ならびに/または第三の溶液)は、所望のアルブミン立体構造を維持するための、かつ複合体中の疎水性リガンドとアルブミンとの間の所望のアフィニティーを提供するための、適切な温度にあり得る。ある場合には、アルブミンを含有する溶液は、約0℃またはそれを上回る、例えば約30℃またはそれを上回る温度を含めた、約5℃またはそれを上回る、約10℃またはそれを上回る、約15℃またはそれを上回る、約20℃またはそれを上回る温度で、かつ約40℃またはそれ未満、例えば約25℃またはそれ未満の温度を含めた、約38℃またはそれ未満、約36℃またはそれ未満、約30℃またはそれ未満の温度で維持される。ある場合には、アルブミンを含有する溶液は、約0〜約40℃、例えば約20〜約38℃を含めた、約5〜約38℃、約10〜約38℃、約15〜約38℃の範囲内の(混合物の)温度にある。
【0079】
一部の態様において、方法は、(1)疎水性分子を有機溶媒に溶解する工程;(2)この有機溶媒溶液とアセトンとを適切な比率で混合して(リガンドがアセトンに不溶性である場合)または有機溶媒を乾燥させて、リガンドを粉末形態に還元し、次いで粉末をアセトンに再溶解する(リガンドがアセトンに可溶性である場合)工程;(3)アセトン溶液(または、アセトン-有機溶媒混合溶液)とヒト血清アルブミンの水溶液とを混合する工程;ならびに、(4)アセトンおよび低い沸点を有する他の有機溶媒を蒸発によって除去する工程を含む。
【0080】
本方法において、単一アルブミンタンパク質上の疎水性リガンドの数の程度は、以下の因子を制御することによって制御され得る:(a)第三の溶液中の疎水性分子、例えばリコピン対アルブミンのモル比;(b)より濃縮されたアルブミン溶液が二重充填を促す、水溶液でのアルブミンの希釈;(c)より低い温度が二重充填を促す、移行過程の温度;および(d)より迅速な速度が二重充填を促す、第一の溶液からアルブミンへの疎水性分子の例えばリコピンの移行の速度。
【0081】
一部の態様において、第三の溶液における疎水性分子対アルブミンのモル比は、0.001:1またはそれを上回る、例えば0.06:1またはそれを上回る割合を含めた、0.005:1またはそれを上回る、0.01:1またはそれを上回る、0.02:1またはそれを上回る、0.04:1またはそれを上回る割合であり、かつ一部の態様において、10:1またはそれ未満、例えば0.2:1またはそれ未満の割合を含めた、5:1またはそれ未満、2:1またはそれ未満、1:1またはそれ未満、0.5:1またはそれ未満の割合である。一部の態様において、第三の溶液における疎水性分子対アルブミンのモル比は、0.001:1〜10:1、例えば0.04:1〜0.5:1を含めた、0.005:1〜5:1、0.01:1〜2:1、0.02:1〜1:1の範囲内である。
【0082】
例えば、一部の態様において、疎水性分子がリコピンである場合、モル比が0.5:1を上回る場合には、二重充填されたアルブミンが観察され(これは、565nmでのUV-Vis吸収ピーク、全体的な赤色の着色、および600nmでの強力なバックグラウンド吸収として現れる);かつモル比が0.4:1を下回って保たれる場合には、単一充填のみされたアルブミンが観察される(これは、565nmでのいかなるUV-Vis吸収ピークも非存在として、全体的なオレンジ色の着色として、および600nmで吸収がほぼないとして現れる)。
【0083】
第一の溶液からアルブミンへの疎水性分子の移行、例えばリコピンの移行の速度は変動し得、かつ第一の溶液中の疎水性分子の濃度に;第二の溶液への第一の溶液の添加の速度;混合の激しさ(激しさが低い混合は、より迅速な速度の移行を促す)に;および混合物からの第一の溶液の除去の速度に、依存し得る。
【0084】
疎水性リガンド-アルブミン複合体を使用する方法
微生物に疎水性分子を送達する方法
本開示の疎水性リガンド-アルブミン複合体は、標的細胞に、例えば細胞壁を有する微生物に複合体中の疎水性分子を移行させる送達ビヒクルとしての使用を見出し、該疎水性分子は微生物と結合するようになる。ある場合には、疎水性リガンド-アルブミン複合体は、微生物の細胞壁に疎水性分子を移行させかつ凝集させる。いったん微生物に局在または移行すると、疎水性分子は、微生物の中または上にある疎水性分子の性質に応じてその機能を発揮し得る。
【0085】
本開示の局面は、微生物の細胞壁に疎水性分子を送達する方法を含み、該方法は、微生物を、疎水性分子と単一アルブミンタンパク質との非共有結合性複合体を含有する水溶液と接触させる工程を含む。水溶液は多くのそのような複合体を含み得、各複合体は、1つまたは複数の疎水性分子と単一アルブミンタンパク質分子との複合体であることに留意すべきである。水溶液は、本明細書において記載される方法によって取得され得る。一般的には、該方法は、疎水性リガンド-アルブミン複合体を含有する水溶液と、微生物を含有する組成物とを混合する工程を含み得る。
【0086】
接触させる工程は、微生物に、疎水性リガンド-アルブミン複合体中の疎水性分子を送達するのに十分な時間の間実施され得る。ある場合には、疎水性リガンド-アルブミン複合体を含有する水溶液を、微生物と、1分間またはそれを上回る、例えば1時間またはそれを上回る時間を含めた、5分間またはそれを上回る、10分間またはそれを上回る、15分間またはそれを上回る、20分間またはそれを上回る、30分間またはそれを上回る時間接触させ、かつある場合には、微生物と、48時間またはそれ未満、例えば45分間またはそれ未満の時間を含めた、24時間またはそれ未満、12時間またはそれ未満、6時間またはそれ未満、3時間またはそれ未満、1時間またはそれ未満の時間接触させる。一部の態様において、疎水性リガンド-アルブミン複合体を含有する水溶液を、微生物と、1分間〜48時間、例えば10分間〜1時間を含めた、5分間〜24時間、10分間〜24時間、10分間〜6時間、10分間〜3時間の範囲内の長さの時間接触させる。
【0087】
接触させる工程の後、方法は、ある場合には、例えば遠心分離することによって、水溶液を分画して、バルク溶液から任意の微生物を分離する工程を含み得る。
【0088】
任意の適切な量の疎水性リガンド-アルブミン複合体を用いて、微生物に疎水性分子を送達し得る。ある場合には、水溶液中のアルブミンに複合体化した疎水性分子の濃度は、1.0nMまたはそれを上回る、例えば1,000nMまたはそれを上回る濃度を含めた、5.0nMまたはそれを上回る、10nMまたはそれを上回る、20nMまたはそれを上回る、50nMまたはそれを上回る、100nMまたはそれを上回る、200nMまたはそれを上回る、500nMまたはそれを上回る濃度であり、かつ一部の態様において、1.0mMまたはそれ未満、例えば1.0μMまたはそれ未満の濃度を含めた、500μMまたはそれ未満、200μMまたはそれ未満、100μMまたはそれ未満、50μMまたはそれ未満、20μMまたはそれ未満、10μMまたはそれ未満、5.0μMまたはそれ未満、2.0μMまたはそれ未満の濃度である。一部の態様において、水溶液中のアルブミンに複合体化した疎水性分子の濃度は、1.0nM〜1.0mM、例えば200nM〜2.0μMを含めた、5.0nM〜500μM、10nM〜200μM、20nM〜100μM、50nM〜50μM、100nM〜10μMの範囲内である。
【0089】
疎水性リガンド-アルブミン複合体を含有する水溶液は、上記で記載されるバッファー(例えば、PBS)、抗酸化剤(例えば、アルコルビン酸)、栄養源(例えば、TSB)など、付加的構成要素を含み得る。ゆえに、水溶液は、上記で記載される疎水性リガンド-アルブミン複合体を含有する組成物を含み得る。
【0090】
ある場合には、接触させる工程は、インビトロで、例えば器、チューブ、バイアル、ウェル、マルチウェルプレート、ディッシュ、フラスコなどの中で行われる。ある場合には、接触させる工程は、インビボで、例えば微生物を保有し、かつ例えば上記で記載される疎水性リガンド-アルブミン複合体を含有する治療用組成物を用いて疎水性リガンド-アルブミン複合体を含む組成物が投与されている、個体において行われる。そのような場合、微生物と接触している水溶液は、そこに複合体が堆積する体液、例えば血液、血漿、間質液、リンパ液などであり得る。
【0091】
微生物は、細胞壁を有しかつアルブミンに結合する任意の適切な微生物であり得る。微生物は、細菌または真菌であり得る。ある場合には、微生物は、病原性であるまたは日和見性病原体である。関心対象の微生物には、限定することなく、大腸菌(Escherichia coli)10418、大腸菌12241、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staph. epidermidis)、クレブシエラ・ニューモニエ、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Strep. pyogenes)、カンジダ・アルビカンス、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、プロビデンシア・レットゲリ(Providencia rettgerri)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、カンジダ・グラブラータ、スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)、およびシトロバクター・フロインディ(Citrobacter freundii)が含まれる。
【0092】
抗微生物剤の有効性を増強する方法
疎水性分子が抗微生物化合物である場合、本方法は、標的微生物に抗微生物化合物を送達し、それによって微生物の成長を低下させるかまたは阻止する効率的な方法を提供し得る。抗微生物薬の効率は、インビトロで測定される最小阻止濃度(MIC)によって測定され得る。一部の態様において、方法は、適切な対照(例えば、その他の点で比較可能な条件において試験された、アルブミンに複合体化していない抗微生物化合物のMIC)と比較して、10%またはそれを上回る、例えば50%またはそれを上回る割合を含めた、20%またはそれを上回る、30%またはそれを上回る、40%またはそれを上回る割合、かつ一部の態様において、99%またはそれ未満、例えば50%またはそれ未満の割合を含めた、95%またはそれ未満、90%またはそれ未満、80%またはそれ未満、70%またはそれ未満、60%またはそれ未満の割合、MICを低下させる。ある場合には、方法は、適切な対照と比較して、10〜99%、例えば40〜60%を含めた、20〜95%、20〜90%、30〜80%、40〜70%の範囲内のパーセンテージ、抗微生物化合物のMICを低下させる。ある場合には、本開示の方法に従ってアルブミンとの複合体において用いられる抗微生物化合物のMICは、適切な対照条件下(例えば、アルブミンに複合体化していない抗微生物化合物のMICと比較)で用いられる抗微生物化合物と実質的に同じMICを有する。
【0093】
サンプルにおいて微生物の存在を判定する方法
ある場合には、疎水性分子は、上記で記載されるように分子間相互作用にかなり依存して変化する、1つまたは複数の検出可能な特性を有する化合物、例えば検出可能な光学的特性を有する化合物であり、かつ疎水性リガンド-アルブミン複合体は、疎水性リガンドでサンプル、例えば臨床サンプル中の微生物を標識しかつ検出するための標識試薬として用いられ得る。サンプル中の代謝的に活性な微生物と複合体のアルブミンとの相互作用は、モニターされ得る、例えば光学的にモニターされ得るサンプルの変化をもたらし得る。例えば、アルブミン複合体が真に溶液中に存在する場合に予想され得るように、ベースライン状態において、疎水性分子、例えばリコピンの濃度は、ガラスバイアル全体にわたって実質的に均一であり得る。(その表面にある濃度の陽子を有し得る)代謝的に活性な細菌は、(マイナスの表面電荷を有し得る)アルブミンと相互作用するため、アルブミンは凝集体を形成し得る。これらの凝集体の形成は、アルブミンと複合体化した疎水性分子に応じて、サンプルの光学的なまたは他の変化をもたらし得、それは細菌の存在および/または量についてモニターされ得る。
【0094】
ゆえに、一般的には、上記で記載されるように、まず、各複合体が疎水性分子と単一アルブミンタンパク質との非共有結合性複合体を含有する、非共有結合性複合体を関心対象のサンプル中の微生物に送達し;次いで、サンプルの1つまたは複数の特性、例えば1つまたは複数の分子間距離依存的特性を解析して、例えば測定して、微生物の存在を判定することによって、サンプル中に存在する微生物を検出し得る。一部の態様において、疎水性分子の凝集形態を表す分子間距離依存的特性は、サンプルにおいて微生物の存在を示し得;かつ疎水性分子の可溶性形態または非凝集形態を表す分子間距離依存的特性は、サンプルにおいて微生物の非存在を示し得る。
【0095】
以下は、サンプル中の微生物を検出する本方法における使用を見出す、水溶液の例である。
- 7.1の全体的pHを有する、0.6μMのリコピン/HSA、1.2μMのβ-カロテン/HSA、2mLの1×TSB、0.02mg/mLのアスコルビン酸、および3.4mLのPBS;
- 7.5の全体的pHを有する、1.5μMのリコピン/HSA、2mLの1×TSB、0.02mg/mLのアスコルビン酸、および3.4mLのPBS。
【0096】
本開示の方法によって微生物の存在について試験されるサンプルは、サンプルの構成要素が、微生物の標識化および検出を実質的に妨害しない限り、体液サンプルなどの任意の適切なサンプルであり得る。ある場合には、サンプルは、健常な個体、または疾患、例えば感染性疾患を有することが疑われるもしくは有すると診断された患者から取得された臨床サンプルである。適切なサンプルには、限定することなく、血清、血漿、血液、唾液、粘液(mucous)、痰、脳脊髄液、胸膜液、涙液、乳管液(lactal duct fluid)、リンパ液、喀痰、髄液、滑液、尿、羊水、および精液など、ならびにそれらの加工形態が含まれる。ある場合には、任意の適切な方法を用いて、サンプルを加工して色素性構成要素を除去する、例えば血液から赤血球を除去する。ある場合には、サンプルは、既知量の既知微生物を含む。サンプルは、任意の適切な量の微生物を含み得る。ある場合には、サンプルは、1コロニー形成単位(CFU)/mLまたはそれを上回る、例えば10
6CFU/mLまたはそれを上回る量を含めた、5CFU/mLまたはそれを上回る、10CFU/mLまたはそれを上回る、100CFU/mLまたはそれを上回る、1,000CFU/mLまたはそれを上回る、10
4CFU/mLまたはそれを上回る、10
5CFU/mLまたはそれを上回る量の微生物を含み、かつ一部の態様において、10
10CFU/mLまたはそれより少ない、例えば10
5CFU/mLまたはそれより少ない量を含めた、10
9CFU/mLまたはそれより少ない、10
8CFU/mLまたはそれより少ない、10
7CFU/mLまたはそれより少ない、10
6CFU/mLまたはそれより少ない量の微生物を含む。一部の態様において、サンプルは、1〜10
10CFU/mL、例えば10〜10
3CFU/mLを含めた、1〜10
9CFU/mL、1〜10
8CFU/mL、1〜10
7CFU/mL、1〜10
6CFU/mL、5〜10
5CFU/mL、10〜10
4CFU/mLの範囲内の微生物の濃度を含む。ある場合には、サンプル中に微生物が存在するかどうかまたはどのくらいの濃度の微生物が存在するかは分かっていない。
【0097】
疎水性分子の分子間距離依存的特性は、任意の適切な特性であり得る。ある場合には、分子間距離依存的特性は、光学的吸光度、ラマン散乱、蛍光などであるがそれらに限定されない、光学的特性である。ある場合には、分子間距離依存的特性は、光学吸収バンドにおけるピーク吸光度である。他の場合には、特性は、ラマンバンドのピークである。光学的な分子間距離依存的特性は、任意の適切な方法を用いて測定され得る。ある場合には、測定することは、疎水性分子、例えばリコピンからのラマン散乱ピークを共鳴増強するラマン分光計を用いることを含む(例えば、532nm波長を用いることによって)。ある場合には、測定することは、UV-Vis吸光分光計(または、他の任意の機器)を用いることを含む。ある場合には、測定することは、蛍光顕微鏡、蛍光分光計、または蛍光光度計を用いることを含む。
【0098】
ある場合には、前記方法は、サンプルの光学的特性の大きさ、例えばラマンピーク高、ある波長での吸光度を測定する工程を含む。例えば、カロテノイド/アルブミン複合体、例えばリコピン/HSA複合体で標識されたサンプルは、532nm波長によって照射されると、サンプル中の微生物の濃度と負に相関する、共鳴ラマンピーク高を有し得る。ある場合には、測定する工程は、微生物と疎水性リガンド-アルブミン複合体を含有する水溶液とのインキュベーションを開始した約5分後すぐに、例えば約10分後すぐに実施される。
【0099】
ある場合には、サンプルにおける微生物の存在または非存在は、疎水性分子またはその凝集形態の空間的分布、または光学的特性の時間的変化を測定して、疎水性リガンド-アルブミン複合体で標識されたサンプルの光学的特性についてのそれぞれ空間的プロファイルまたは時間的プロファイルを取得することによって判定され、該光学的特性は分子間距離依存的である。
【0100】
ある場合には、前記方法は、アッセイが実施されているバイアルまたは管に沿った既定(または一定)の空間的位置で、サンプルの光学的特性の変化の割合、例えばカロテノイド/アルブミン複合体で標識されたサンプルの532nm光照射によって生成されるラマンピークの高さの変化の割合を測定する工程を含む。既定の空間的位置は、アッセイ管に沿った任意の適切な位置であり得る。ある場合には、既定の空間的位置は、管の垂直次元に沿った箇所である。管の垂直次元に沿った既定の空間的位置はあるレベルにあり得、それより上では、微生物が隔離されかつ蓄積することが原因でアルブミンが凝集する。ある場合には、既定の位置は、アッセイ管の内底表面から約5〜約10mm、約10〜約15mm、約15〜約20mm、約20〜約25mm、約25〜約30mm、約30〜約35mm、約35〜約40mm、約40〜約45mm、約45〜約50mm、約50〜約55mm、または約55〜約60mmの範囲内の距離にある。
【0101】
ある場合には、前記方法は、微生物と疎水性リガンド-アルブミン複合体を含有する水溶液とを混合した後、既定の時間に、アッセイ管の軸に沿った光学的特性の空間的分布、例えばラマンピークの高さを測定する工程を含む。ある場合には、光学的特性は、垂直軸に沿って測定される。ある場合には、光学的特性は、アッセイ管の内底表面から約0〜約60mm、例えば約0〜約30mmを含めた、約0〜約50mm、約0〜約40mmの範囲内の位置にわたって測定される。
【0102】
疎水性分子またはその凝集形態の空間的分布、または光学的特性の時間的変化は、アッセイを始めた後の任意の適切な時間におけるものであり得る。ある場合には、光学的特性は、疎水性リガンド-アルブミン複合体を含有する水溶液中での微生物のインキュベーションの開始後1分間〜6時間、例えば1分間〜5分間を含めた、3分間〜3時間、3分間〜1時間、3分間〜30分間の範囲内の時点で測定される。
【0103】
サンプルにおいて微生物の存在または非存在を判定する本方法は、迅速な方法であり得る。一部の態様において、方法は、サンプル、例えば臨床サンプルを初めて取得してから多くて12時間、例えば多くて1時間を含めた、多くて6時間、多くて3時間、多くて2時間以内に、サンプルにおいて微生物の存在または非存在を判定する。
【0104】
抗微生物剤の最小阻止濃度を測定する方法
本方法は、抗微生物薬に対する微生物の感受性の判定における使用も見出し得る。方法は、成長の減少または成長なしから通常の成長(例えば、抗微生物剤の非存在下における成長によって判定される)までに及ぶ微生物の成長の速度における濃度依存的変化を引き起こすと予想される濃度範囲内の異なる濃度の微生物剤をそれぞれが含有する複数種の水溶液と微生物とを組み合わせる工程を含み得る。ゆえに、水溶液は、上記で記載される任意の適切な付加的構成要素に加えて、微生物の成長を支える栄養源を含有し得る。よくても微生物の成長なしが存在する抗微生物薬の最高濃度は、微生物に対する抗微生物剤のMICに対応し得る。
【0105】
前記微生物は、任意の適切な供給源から取得され得る。ある場合には、微生物は、微生物に感染した個体の臨床サンプルから、例えば血液、唾液、粘液などから取得される。ある場合には、微生物に対するMICは、抗微生物剤に関して分かっていない。ある場合には、方法は、微生物を成長させて、複数のアリコートに分割しかつ複数の濃度の抗微生物剤を試験するために十分な数を提供する工程を含む。
【0106】
抗微生物剤のMICを決定する本方法は、迅速な方法であり得る。一部の態様において、本方法は、多くて12時間、例えば多くて4時間を含めた、多くて10時間、多くて8時間、多くて6時間、多くて5時間以内に、抗微生物剤のMICを決定する。ある場合には、方法は、1種または複数種の微生物に対する複数の抗微生物剤のMICを決定するハイスループット法である。任意の適切な数の抗微生物剤が試験され得る。ある場合には、試験される抗微生物剤の数は、2種またはそれを上回る、例えば1,000種またはそれを上回る種類を含めた、3種またはそれを上回る、5種またはそれを上回る、10種またはそれを上回る、20種またはそれを上回る、50種またはそれを上回る、100種またはそれを上回る種類であり、かつ一部の態様において、100,000種またはそれ未満、例えば100種またはそれ未満の種類を含めた、10,000種またはそれ未満、1,000種またはそれ未満の種類である。
【0107】
アルブミン凝集体を分散させる方法
アルブミンの凝集体を分散させる方法も、本明細書において提供される。方法は、8.0を上回る、例えば9.0よりも高い値を含めた、8.2またはそれよりも高い、8.4またはそれよりも高い、8.6またはそれよりも高い、8.8またはそれよりも高いpHを有する溶液にアルブミン凝集体を懸濁する工程、および懸濁液を超音波処理して、凝集体を分散させる工程を含み得る。ある場合には、アルブミン凝集体は、上記で記載される疎水性リガンド-アルブミン複合体の凝集体である。溶液のpHは、ある場合には10.0またはそれよりも低い、例えば9.0またはそれよりも低い値を含めた、9.5またはそれよりも低い値であり得る。一部の態様において、溶液のpHは、8.2〜10.0、例えば8.2〜9.0を含めた、8.2〜9.5の範囲内である。
【0108】
超音波処理する工程は、任意の適切な量の時間実施され得る。ある場合には、超音波処理は、5分間またはそれを上回る、例えば15分間またはそれを上回る時間を含めた、10分間またはそれを上回る時間実施され、かつある場合には、60分間またはそれ未満、例えば30分間またはそれ未満の時間を含めた、45分間またはそれ未満の時間実施される。一部の態様において、超音波処理する工程は、5〜60分間、例えば10〜30分間を含めた、5〜45分間の範囲内の継続時間実施される。
【0109】
ある場合には、アルブミン凝集体は、37℃を下回る、例えば5℃またはそれ未満の温度を含めた、35℃またはそれ未満、30℃またはそれ未満、20℃またはそれ未満、10℃またはそれ未満の温度で、溶解したアルブミンの溶液を保管することによって形成され得、かつ0℃またはそれを上回る、例えば20℃またはそれを上回る温度を含めた、5℃またはそれを上回る、10℃またはそれを上回る、15℃またはそれを上回る温度で保管することによって形成され得る。一部の態様において、アルブミン凝集体は、0〜35℃、例えば0〜10℃を含めた、0〜30℃、0〜20℃の範囲内の温度で、溶解したアルブミンの溶液を保管することによって形成される。
【0110】
キット
本明細書において記載される疎水性分子とアルブミンタンパク質との非共有結合性複合体を含有する組成物を含むキットも、本明細書において提供される。ある場合には、組成物は、水性組成物または実質的に乾燥した組成物である。ある場合には、キットは、1種または複数種の付加的構成要素(例えば、抗酸化剤、栄養源など)を含み得るまたは含み得ないバッファーをさらに含む。
【0111】
ある場合には、本キットは、本開示の疎水性分子とアルブミンタンパク質との非共有結合性複合体を含む組成物を使用するための指示書を含む。指示書は、一般的に適切な記憶媒体に記録される。例えば、指示書は、紙またはプラスチックなどの基板に印刷され得る。そのため、指示書は、添付文書としてキット内に、キットまたはその構成要素の容器のラベル(すなわち、包装または部分包装に関連付けされて)などに存在し得る。他の態様において、指示書は、適切なコンピューター可読記憶媒体、例えばCD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、フラッシュドライブ、ブルーレイディスク(商標)などに存在する電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の態様において、実際の指示書はキット内に存在しないが、例えばインターネットを介して、リモートソースから指示書を取得するための方法が提供される。本態様の例は、指示書を見ることができかつ/またはそこから指示書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。指示書と同様に、指示書を取得するための方法は、適切な基板に記録される。
【0112】
対象キットの構成要素は、別個の容器内に存在し得るか、または単一容器内で組み合わせられ得る。
【0113】
本開示の例示的な非限定的局面
上記で記載される本対象物の態様を含めた局面は、単独でまたは1つもしくは複数の他の局面もしくは態様との組み合わせで有益であり得る。前述の記載を限定することなく、1〜59に番号付けされた本開示のある特定の非限定的局面が、下記で提供される。本開示を読めば当業者に明白であろうように、個々に番号付けされた局面のそれぞれは、先行するまたは後続の個々に番号付けされた局面のいずれかとともに用いられ得るまたは組み合わせられ得る。これは、局面についてのすべてのそのような組み合わせに対する支持を提供することを意図されるものであり、下記で明示的に提供される局面の組み合わせに限定されるわけではない。
1. 以下の工程を含む、疎水性分子とアルブミンタンパク質との非共有結合性複合体を含む溶液を形成する方法:
該疎水性分子を、
(i)C
3〜C
5ケトンを含む第一の有機溶媒;または
(ii)約0.001:1〜約1000:1 v/vの比率の該第一の有機溶媒と第二の有機溶媒との組み合わせ
に溶解して、第一の溶液を提供する工程;
該第一の溶液と第二の溶液とを組み合わせて、第三の溶液を提供する工程であって、該第二の溶液が、アルブミンタンパク質を含む水溶液である、工程;および
該第一の有機溶媒または該第一の有機溶媒と該第二の有機溶媒との組み合わせを該第三の溶液から除去して、第四の溶液を提供する工程であって、該第四の溶液が、該疎水性分子と単一アルブミンタンパク質との非共有結合性複合体を含む水溶液である、工程。
2. 前記C
3〜C
5ケトンがアセトンである、1に記載の方法。
3. 前記疎水性分子が、前記第一の有機溶媒と第二の有機溶媒との組み合わせに溶解され、かつ該第一の有機溶媒と該第二の有機溶媒の比率が約1:1〜約5:1の範囲内である、1または2に記載の方法。
4. 前記疎水性分子が前記組み合わせに溶解され、かつ該組み合わせが、約2:1の比率で前記第一の有機溶媒と前記第二の有機溶媒を含む、3に記載の方法。
5. 前記疎水性分子が前記組み合わせに溶解され、かつ前記方法が、
該疎水性分子を前記第二の有機溶媒に溶解して、第五の溶液を提供する工程;および
前記第一の溶液と前記第二の溶液とを組み合わせる前に、該第五の溶液と前記C
3〜C
5ケトンとを組み合わせて該第一の溶液を提供する工程
を含む、1〜4のいずれかに記載の方法。
6. 前記除去することが蒸発によって実施される、1〜5のいずれかに記載の方法。
7. 細胞壁を含む微生物を、前記疎水性分子と単一アルブミンタンパク質との非共有結合性複合体を含む水溶液と接触させる工程を含み、該疎水性分子が該微生物と機能的に結合する、1〜6のいずれかに記載の方法。
8. 前記微生物が病原性微生物である、7に記載の方法。
9. 前記接触させる工程がインビトロで行われる、7または8に記載の方法。
10. 前記接触させる工程がインビボで行われる、7または8に記載の方法。
11. 前記疎水性分子がカロテノイドである、1〜10のいずれかに記載の方法。
12. 前記カロテノイドがカロテンである、11に記載の方法。
13. 前記カロテンがリコピンまたはβ-カロテンである、12に記載の方法。
14. 前記疎水性分子が抗微生物薬である、1〜10のいずれかに記載の方法。
15. 前記抗微生物薬が抗細菌薬である、14に記載の方法。
16. 前記抗微生物薬が抗真菌薬である、14に記載の方法。
17. 前記抗微生物薬が、前記非共有結合性複合体中に提供された場合に、複合体化していない状態の抗微生物薬と比べて増大した有効性を有するか、または、該抗微生物薬が、他の送達システムに組み入れられた場合に増大した有効性を有する、13〜16のいずれかに記載の方法。
18. 前記疎水性分子が薬理学的活性剤である、1〜10のいずれかに記載の方法。
19. 前記薬理学的活性剤が、抗がん薬、抗ウイルス薬、および心血管薬より選択される、18に記載の方法。
20. 前記アルブミンタンパク質がヒト血清アルブミンタンパク質である、1〜19のいずれかに記載の方法。
21. リン酸カリウム含有試薬の使用を含まない、1〜19のいずれかに記載の方法。
22. 細胞壁を含む微生物を、疎水性分子と単一アルブミンタンパク質との非共有結合性複合体を含む水溶液と接触させる工程を含む、疎水性分子を微生物の細胞壁に送達する方法であって、該疎水性分子が該微生物と機能的に結合する、方法。
23. 前記微生物が病原性微生物である、22に記載の方法。
24. 前記接触させる工程がインビトロで行われる、22または23に記載の方法。
25. 前記接触させる工程がインビボで行われる、22または23に記載の方法。
26. 前記疎水性分子がカロテノイドである、22〜25のいずれかに記載の方法。
27. 前記カロテノイドがカロテンである、26に記載の方法。
28. 前記カロテンがリコピンまたはβ-カロテンである、27に記載の方法。
29. 前記疎水性分子が抗微生物薬である、22〜25のいずれかに記載の方法。
30. 前記抗微生物薬が抗細菌薬である、29に記載の方法。
31. 前記抗微生物薬が抗真菌薬である、29に記載の方法。
32. 前記アルブミンタンパク質がヒト血清アルブミンタンパク質である、22〜31のいずれかに記載の方法。
33. 以下の工程を含む、サンプルにおいて微生物の存在または非存在を判定するための方法:
(i)該サンプルを、複数の非共有結合性複合体を含む水溶液と接触させる工程であって、各非共有結合性複合体が疎水性分子および単一アルブミンタンパク質を含み、該疎水性分子が検出可能でありかつ、該サンプル中に存在する場合の微生物と機能的に結合する、工程;
(ii)該疎水性分子の1つまたは複数の特性を検出する工程;ならびに
(iii)該検出する工程に基づいて、該微生物が該サンプル中に存在するまたは存在しないと判定する工程。
34. 前記疎水性分子が、1つもしくは複数の分子間距離依存的特性を有し、前記検出する工程が、該1つもしくは複数の分子間距離依存的特性についての1つもしくは複数のプロファイルを前記サンプルにおいて測定することを含み、かつ前記判定する工程が、該1つもしくは複数のプロファイルが該サンプルにおいて該疎水性分子の凝集体の存在を示す場合に前記微生物が存在すると判定すること、または、該1つもしくは複数のプロファイルが該サンプルにおいて該疎水性分子の凝集体の非存在を示す場合に該微生物が存在しないと判定することを含む、33に記載の方法。
35. 前記微生物が病原性微生物である、33または34に記載の方法。
36. 前記1つまたは複数の分子間距離依存的特性が、1つまたは複数の光学的特性である、34または35に記載の方法。
37. 前記1つまたは複数の分子間距離依存的特性が光学吸収バンドおよび/またはラマンバンドを含む、36に記載の方法。
38. 前記1つまたは複数の分子間距離依存的特性がフェルスター共鳴エネルギーを含む、36に記載の方法。
39. 前記疎水性分子がカロテノイドである、33〜37のいずれかに記載の方法。
40. 前記カロテノイドがカロテンである、39に記載の方法。
41. 前記カロテンがリコピンまたはβ-カロテンである、40に記載の方法。
42. 前記1つまたは複数のプロファイルが、前記サンプルを分光計で解析することによって取得された該サンプルに関するラマン散乱光の高さについての(a)一定の空間地点における時間的プロファイルおよび/または(b)一定の時点における空間的プロファイルを含み、
かつ前記判定する工程が、参照プロファイルの対応するセットと比べた、空間的プロファイルにおける複数の特徴的なラマンピークのうちの1つの高さに基づいて、および/または、時間的プロファイルにおける該複数の特徴的なラマンピークのうちの1つの変化の割合に基づいて、該サンプルにおいて前記微生物の存在または非存在を判定することを含む、
34〜41のいずれかに記載の方法。
43. 前記アルブミンタンパク質がヒト血清アルブミンタンパク質である、33〜42のいずれかに記載の方法。
44. 以下の工程を含む、サンプルにおいて微生物の存在または非存在を判定するための方法:
該サンプルを、疎水性分子と単一アルブミンタンパクとの非共有結合性複合体を含む水溶液と接触させる工程であって、該疎水性分子が、カロテノイドであり、かつ該サンプル中に存在する場合の微生物と機能的に結合する、工程;
該サンプルに広帯域光源を照射する工程;
該サンプルを透過した光を、分光計で集光しかつ分析する工程であって、UV-Vis吸収ピークの高さについての、一定の空間地点における時間的プロファイルまたは一定の時点における空間的プロファイルを解析し、かつ、対照値のセットと比較した場合の指標として複数の特徴的なラマンピークのうちの1つの高さを用いるかまたは該サンプル中の該微生物に結合している検出可能な該疎水性分子の存在についての指標として該複数の特徴的なラマンピークのうちの1つの変化の割合を用いる、工程。
45. 前記微生物が病原性微生物である、44に記載の方法。
46. 前記カロテノイドがカロテンである、44または45に記載の方法。
47. 前記カロテンがリコピンまたはβ-カロテンである、46に記載の方法。
48. 前記アルブミンタンパク質がヒト血清アルブミンタンパク質である、44〜47のいずれかに記載の方法。
49. 疎水性分子と単一アルブミンタンパク質との非共有結合性複合体を含む水溶液
を含む、組成物。
50. 前記疎水性分子がカロテノイドである、49に記載の組成物。
51. 前記カロテノイドがカロテンである、50に記載の組成物。
52. 前記カロテンがリコピンまたはβ-カロテンである、51に記載の組成物。
53. 前記疎水性分子が抗微生物薬である、49に記載の組成物。
54. 前記抗微生物薬が抗細菌薬である、53に記載の組成物。
55. 前記抗微生物薬が抗真菌薬である、53に記載の組成物。
56. 前記疎水性分子が薬理学的活性剤である、53に記載の組成物。
57. 前記薬理学的活性剤が、抗がん薬、抗ウイルス薬、および心血管薬より選択される、56に記載の組成物。
58. 前記アルブミンタンパク質がヒト血清アルブミンタンパク質である、49〜57のいずれかに記載の組成物。
59. 以下の工程を含む、アルブミンの凝集体を分散させるための方法:
8.0超のpHを有する溶液に該凝集体を懸濁して、懸濁液を提供する工程;および/または
該懸濁液を超音波処理する工程であって、該凝集体が分散される、工程。
【実施例】
【0114】
以下の実施例は、開示される対象物をどのように作製するかおよびどのように使用するかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、本発明者らが彼らの発明と見なすものの範囲を限定することを意図されるわけではなく、またはそれらは、下記の実験が、実施されたすべてもしくは唯一の実験であることを表すことを意図されるわけでもない。用いられる数(例えば、量、温度など)に関する正確性を保証するために努力がなされたが、いくらかの実験上の誤差およびズレは考慮されるべきである。別様に示されていない限り、部分は重量による部分であり、分子量は重量平均分子量であり、温度はセ氏温度におけるものであり、かつ圧力は大気におけるまたは大気付近のものである。標準的な略語が用いられ得る、例えばbp、塩基対;kb、キロベース;pl、ピコリットル;sまたはsec、秒(間);min、分(間);hまたはhr、時間;aa、アミノ酸;kb、キロベース;bp、塩基対;nt、ヌクレオチド;i.m.、筋肉内(に);i.p.、腹腔内(に);s.c.、皮下(に)など。
【0115】
実施例1:材料および方法
適用可能である場合に以下の材料および方法を実施例において用いた。
【0116】
試薬:以下の試薬を以下のように挙げられる商業的供給元から購入した:アセトンおよびヘキサン;Macron;酢酸エチルおよびエタノール:EMD;プールされたヒト血清:Innovative Research Inc.;ヒト血清アルブミンHSA:Gemini Bio Products;リコピン:Sigma-Aldrich;トリプチックソイブロスTSB粉末:Becton Dickinson;合成規定ドロップアウト培地粉末SDM:Sunrise Science Products。1×および4×SDM溶液は、1LのDI水中、それぞれ27.49および109.96グラムのSDM粉末である。
【0117】
病原体ストック溶液:富栄養培地(TSB)中での特定の微生物の公知の分離株の一晩培養物を遠心分離してペレットにし、3時間に1回継代し、再度遠心分離してペレットにし、次いでPBSに再懸濁した。分離株の光学密度を特徴決定し、かつ600nmでOD=0.25まで必要に応じてより多くのPBSを添加することによって調整し、それを10
8CFU/mLとして処理した(プレート上での一晩培養物を用いてチェックすると、実際の濃度は、概して、推測される濃度の2×以内であることが見出された)。次いで、連続希釈を実施して、10
1〜10
8CFU/mLでPBS中ストック溶液を調製した。
【0118】
機器類:UV-Vis吸光分光法に関しては、METASH Visible Spectrophotometer(en(dot)metash(dot)com/ProductShow(dot)asp?ID=148)をUSBインターフェースとともに用いた。円偏光二色性測定に関しては、AVIV Circular Dichroism Spectrometer、Model 62 DSを用いた。ラマンおよび蛍光の測定に関しては、532nm/100mWレーザー、および-50℃に冷却されているCCDを有する商業的分光計(販売元:Enwave Optronics、現在のTSI Inc)を用いた。
【0119】
実施例2:アルブミンに組み込まれたβ-カロテン
ヒト血清アルブミンに組み込まれたβ-カロテンの水溶液(かつそれは、他のアルブミンに組み込むために用いられ得る)を、以下の工程を用いて調製した:(1)15mL遠心チューブに、23mgのβ-カロテン(ヘキサンを用いてニンジンから抽出され、その後に、蒸発を用いたヘキサンの除去が続く)および12mLのアセトンを添加した。混合物を1分間ボルテックスし、かつ5分間超音波処理した。次いで、混合物を4000RPMで5分間遠心分離し、かつ上部の黄色い溶液をデカントで取り出し、かつ後続の工程に用いた。(2)500mLの丸底フラスコに、1.0gmの商業的ヒト血清アルブミンHSA、145mLの商業的PBSバッファー、および0.5mLのビタミンC PBSバッファー溶液(10mg/mL)を添加した。混合物を十分に振とうし、かつ5分間超音波処理し、かつ次の工程において用いた。(3)磁気撹拌棒を添加した後、HSA溶液を激しく撹拌し、かつβ-カロテン/アセトン溶液をピペットによりゆっくり添加した。12mLのこの溶液を添加した後、結果として生じた濃黄色の溶液についてのUV-Vis吸収スペクトルをモニターした。典型的には、吸光度を456nmで実測した、A
456=2.09。20mLのPBSバッファーを添加した後、結果として生じた混合物をrotavaporを用いて濃縮して、すべてのアセトンを除去した(この過程の間に気泡は観察されず、かつ相当量の水がトラップ表面に凝結された)。結果として生じた黄色い溶液を、メンブレン(200nm)を通して濾過した。濾過された黄色い溶液についてのUV-Visスペクトルをモニターしかつ記録した;この場合、典型的なA
456=1.50および最終体積は170mLであった。β-カロテンは水に不溶性であったため、およびすべての有機溶媒は最終工程で除去されていたため、β-カロテンはヒト血清アルブミンに組み込まれた。また、>600nmでのUV-Vis吸光度プロファイルに基づき、アルブミンは単量体形態で存在すると結論付けされた(アルブミンの凝集は、600nm超のUV-Vis吸光度で検出され得るレイリー散乱の増強をもたらす)。158,000M
-1cm
-1としての456nmでの消衰係数(ヘキサン抽出、および446nmで144,000M
-1cm
-1としての公知の消衰係数を有するヘキサン中でのUV吸収により取得された)に基づき、濃度は、[β-カロテン]=1.5/158,000=9.49uM、[HSA]=1000/66000/0.170=90uMと概算された。[HSA]/[β-カロテン]=90/9.49=,9.48。
【0120】
実施例3:アルブミンに組み込まれたリコピン
ヒト血清アルブミン中のリコピンの溶液を、以下の工程を用いて調製した。リコピンアセトン溶液:15mL遠心チューブに、28mgのリコピンおよび14mLのアセトンを添加した。混合物を1分間ボルテックスし、5分間超音波処理し、かつ4000RPMで5分間遠心分離した。上部の赤みを帯びた溶液をデカントで取り出し、かつ後続の工程に用いた。HSA/PBSバッファー溶液:500mLの丸底フラスコに、0.2gのHSA、200mLのPBSバッファー、および0.5mLのアスコルビン酸/PBS溶液混合物(10mg/mLのアスコルビン酸濃度)を添加した。混合物を十分に振とうし、かつ5分間超音波処理した。リコピン/HSA複合体溶液:磁気撹拌棒を添加した後、HSA溶液を激しく撹拌し、かつ16mlのリコピンアセトン溶液をピペットを用いてゆっくり添加した。結果として生じた赤みを帯びた溶液についてのUV-Vis吸収スペクトルをモニターし、典型的な吸光度A
476=1.3031を有し、かつアセトンをrotavaporを用いて除去した。結果として生じた赤みを帯びた溶液を、0.2μmメンブレンを通して濾過し、典型的な吸光度はA
476=0.959であり、かつ典型的な最終体積は約200mLであった。155,500M
-1cm
-1としての476nmでの算出された消衰係数(ヘキサン抽出、および470nmで200,000M
-1cm
-1としての公知の消衰係数を有するヘキサン中でのUV吸収により取得された)に基づき、 [リコピン]=0.959/155,5000=6.16μM、[HSA]=1000/66000/0.203=75μM。[HSA]/[リコピン]=75/6.16=12.17。
【0121】
図5Bの結合実験:3本の15mL遠心チューブに、200μLの4×SDM、125μLまたは250μLまたは500μL(該3本のチューブに対して)の9.8μMのリコピン/HSA溶液、および5575μLまたは5450μLまたは5200μLのPBS(該3本のチューブに対して)を添加した。各遠心チューブを1分間ボルテックスし、かつ各チューブ内の溶液を、1cmキュベットを用いてUV-Vis吸光分光計で解析した。このUV-Visプロファイルを「HSA/リコピンのみ」スペクトルとして印付けした。次いで、全溶液を元の遠心チューブに移し戻した。これらの遠心チューブに、PBSに懸濁された100μLの病原体を10
8CFU/mLで添加した。各チューブ内の病原体の最終濃度は、1.7×10
6CFU/mLである。「対照」サンプルに関しては、いかなる微生物もなしで、100μLのPBSを添加した。遠心チューブをアルミホイル(Al foil)に包み、かつ1分間ボルテックスし、かつ緩くキャップをして37℃のシェーカーで30分間インキュベートした。次いで、チューブを1分間再度ボルテックスし、かつUV-Vis分光計で解析した。このUV-Visプロファイルを「細菌を添加」スペクトルとして印付けした。次いで、全溶液を元のチューブに移し戻し、かつ4,000RPMで5分間遠心分離した。遠心チューブからの上清をキュベットに慎重に等分し、かつUV-Vis分光計で再度解析した。このUV-Visプロファイルを「遠心分離後」スペクトルとして印付けした。
【0122】
実施例4:アルブミンに組み込まれたアンホテリシンB
アンホテリシンBは、メタノールにわずかに可溶性でありかつアセトンに不溶性である。アンホテリシンBとアルブミンとの複合体を形成するために、メタノール中アンホテリシンBの溶液を1:2希釈でアセトンに希釈した(1:2未満の希釈は、アルブミンへの相当量のアンホテリシンBの組み入れをもたらさなかった)。アセトン/メタノール溶液を水性アルブミン溶液と混合し、かつアセトンおよびメタノールをrotavaporで混合物から除去した。リガンドはアルブミンに移行した(
図3)。
【0123】
図3。ウシ血清アルブミン(BSA)に組み込まれたアンホテリシン-Bの水溶液についてのUV-Visスペクトル。
【0124】
実施例5:アルブミンに組み込まれたカンプトテシン
抗がん治療剤のカンプトテシン(CPT)は、ジクロロメタンおよび少量のメタノールに溶解する。CPTとアルブミンとの複合体を形成するために、30mgのCPTを、75mLのジクロロメタンおよび10mLのメタノールに溶解した。結果として生じたジクロロメタン/メタノールCPT溶液を、体積で2倍のアセトンを添加することによって希釈した(今度も、アセトンの2分量未満の希釈は、アルブミン-CPT複合体の形成をもたらさなかった)。透明なアセトン/ジクロロメタン/メタノールCPT溶液を水性アルブミン溶液に添加し、そしてアセトンおよびジクロロメタンがrotavaporで除去されるにつれて、CPTはアルブミンとの複合体を形成した(
図4)。
【0125】
図4。ウシ血清アルブミン(BSA)に組み込まれたカンプトテシンの水溶液についてのUV-Visスペクトル。
【0126】
実施例6:疎水性リガンド-アルブミン複合体の産生における有機溶媒の効果
疎水性リガンド-アルブミン複合体の調製において用いられる有機溶媒の効果を試験した。テトラヒドロフラン(terahydrofuran)、メタノール、エタノール、およびアセトンなど、いくつかの純粋な揮発性かつ水溶性の有機溶媒を試験した。これらの中で、アセトンのみが効果を現し;他の溶媒に関しては、溶媒を除去した場合、疎水性リガンドはアルブミンに移行する代わりに沈殿した。
【0127】
透析袋を用いて除去される(1KDaの分子量カットオフ)、DMSOおよびDMFなどのいくつかの非揮発性溶媒(沸点>150℃)も試験した。しかしながら、疎水性リガンドはアルブミンに移行する代わりに沈殿した。いかなる特定の理論によっても拘束されることを意図することなく、アセトンは、それを本目的にとくに適したものにする、特性(溶解度パラメーター、水との混和性、極性基の存在、およびアルブミン立体構造を変更し得る能力)の特定の組み合わせにより移行物質として有効であり得る。
【0128】
実施例7:凍結乾燥した疎水性リガンド-アルブミン複合体の再構成
疎水性リガンド-アルブミン複合体に対する凍結乾燥の効果を試験した。HSA中のリコピンを記載されるように調製し、シートに凍結乾燥させ、かつ乾燥した粉末を溶液に再懸濁し、かつ溶液のpHを8超に上昇させた。再懸濁液を800Wの超音波破砕機を用いて10分間さらに超音波処理した。超音波処理後の溶液のUV-Visスペクトルは、開始溶液とほぼ同一であった(
図2)。
【0129】
図2。超音波処理の有りおよび無しで調製されたまたは凍結乾燥かつ再懸濁された、水溶液中HSA中リコピンについての、UV-Visスペクトル。
【0130】
実施例8:凝集に起因するリコピン光学スペクトルの光学的変化
大部分のクロモフォアにおいて、クロモフォア濃度の変化はクロモフォアの色を変化させず、吸収スペクトルはより低いまたはより高い波長に推移しない。しかしながら、一部のクロモフォアにおいて、クロモフォアの濃度が臨界レベルを超えて増加した場合、光学的交換が作用し始め、かつ2つの近隣クロモフォアは様々な光学的相互作用に浸り得る。
【0131】
リコピンの吸収スペクトルを、希釈および濃縮の形態で比較した。希釈形態において、リコピンの吸収スペクトルは、510、480、および450nmで3つの主なピークを有し、一方で濃縮形態では、670nmおよび565nmで付加的な吸収バンドが観察された(
図11)。これは、濃縮された溶液中に形成されたリコピン凝集体内の分子間での相互作用の結果として、非常に異なる光学的特色を有する疎水性ポケットの形成によるものであり得る。さらに、赤色に推移する吸収バンドの生成は、利用可能な振動状態の再分布、すなわち450〜510nmの三重項変化の形状を伴った。
【0132】
図11。ヘキサン中の2種のリコピン溶液についてのUV-Vis吸収スペクトル。それらが希釈形態のままであることを確実にするように気を付けた場合(推定上、リコピン凝集体が存在しない場合)、スペクトルは450〜510nmでの三重項によって独占された。後に希釈溶液とほとんど同じレベルまで希釈される濃縮溶液において(推定上、凝集体が形成される場合)、潜在的に530nmでのより弱いバンドとともに、670および565で付加的な吸収バンドが存在した。また、450〜510nmの三重項における振動エネルギーの分布が変化した。
【0133】
図12に図示されるように、HSAにおける結合部位に組み入れられたリコピンに対して、同様の結果が得られた。2つの考え得る結合部位(Sudlow IおよびII)の両方でリコピンによって結合されたHSAを含有する溶液に、HSAを添加した。差スペクトルは、540nmで、赤色に推移するピークを示した(
図12)。これは、結合部位が潜在的に連動して、何らかのリコピン-リコピン相互作用を可能にし得ることを示唆する。新たなHSAの添加は、Sudlow IIから新たに添加されたHSAにリコピンを再分布している可能性がある(それによって、凝集を低下させる)。この吸収バンドは、それが、他の吸収バンドからのいかなる妨害の可能性もない、532nmレーザーで回収される共鳴ラマンスペクトルに基づく簡便診断ツールの可能性を与えるため興味深い。
【0134】
図12。HSAの添加により過剰負荷されたlyc/HSAについてのUV-Vis吸収スペクトルの変化。上のUV-Visスペクトルは2個のサンプル由来である:(1)PBS中のリコピン/HSA 0.55/0.43mM(すなわち、一部のHSAは、占有されたSudlow IおよびSudlow II結合部位の両方を有する)。(2)次いで、0.86mMのHSAを添加し、かつ20分間超音波処理し、それによって、一部のSudlow II結合部位から、新たに添加されたHSAにおける占有されていないSudlow I部位へのリコピンの交換が促進される。2つのUV-Visスペクトルはほぼ同一であり、かつ下のチャートは、該2つのスペクトル間の差を図示している。差スペクトルは532nmにおける特質をはっきりと明らかにし、これらの特質は、リコピンの凝集形態(おそらく両方の結合部位が占有されている場合であると考えられる)に起因し得る。
【0135】
ゆえに、アルブミンの凝集は、結合部位の連動によりリコピンの凝集も可能にするはずである。これは、リコピンの濃度を増加させると観察されたのと同様の様式で、リコピンの光学スペクトルを変化させるはずである。
【0136】
潜在的に、他の分子も用いられ得る。例えば、
図12の背景において、β-カロテンは510nmで吸収バンドを示し、それは、約20nmによるリコピンの吸収バンドと比較して青色に推移する。
【0137】
リコピンの光学スペクトルの赤色への推移に加えて、濃縮リコピンに対して波長が400nmよりも下に減少するにつれて、吸収の増強が観察された(
図11および12)。この吸収の増強は、いかなる吸収バンドによるものでもあり得ないが、アルブミンの塊からのレイリー散乱によるものであり得る。
【0138】
濃縮されたリコピンからのラマン散乱は、おそらくレイリー散乱の増強が理由で、希釈リコピンからのものよりも約1/10効率が低かった。
【0139】
実施例9:疎水性リガンド-アルブミン複合体を介して送達される疎水性リガンドの細菌細胞壁上での凝集
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中HSA/リコピンの溶液に細菌を添加し、細菌を除去し(遠心分離工程により)、かつ遠心分離工程後のリコピンの濃度と細菌添加前の濃度とを比較することによって、細菌へのHSA/リコピンの結合、および細菌細胞壁上でのリコピンの蓄積を特徴決定した。リコピンの一部が細菌に蓄積した場合には、細菌の添加および後続の除去は、リコピンの一部も除去していると考えられた。
【0140】
細菌の添加前の、添加された細菌と同時の、および遠心分離工程の後の、PBS中リコピン/HSA複合体についての測定されたUV-Vis吸収プロファイルが、PBS中4.5%HSA(この濃度はヒト血清を模倣した)を用いた、1.7×10
6CFU/mLおよび0.8μMリコピンにおける、スタフィロコッカス・ワーネリに関する
図5Aに例証されている。吸収プロファイルにおける4つのピークはリコピンによるものであり、350nmでのピークはシス形態のみによるもの、かつ440〜520nmでの三重項はシスおよびトランス形態の両方によるものであった。
【0141】
図5Bに見られるように、プロファイルA(「前」におけるHSA/リコピンのみの状態)はプロファイルC(細菌がそれに添加され、次いで遠心分離工程により除去された後;「遠心分離後」の状態)よりも大きい。
図6は、3つの異なる濃度のリコピンに対する、「初期」状態(
図5BにおけるプロファイルA)と最終状態(遠心分離後、
図5BにおけるプロファイルC)との間の差を要約している。すべての場合において、リコピンの一部の喪失が観察された。喪失はリコピン濃度に対応し、同じ量のアルブミンが遠心分離工程の間に喪失していることを示している。
【0142】
図5A。細菌のみ(プロファイルA)、リコピン/HSA(プロファイルB)、および一緒に混合された2つ(プロファイルC)についてのUV-Vis吸光度スペクトル。見られるように、2つの部分は、一緒に混合した場合、2つの部分の合計と比較してはるかに大きなバックグラウンド吸光度を有する。差プロファイルは2の指数のべき関数とフィットし得、レイリー散乱の増強をもたらすリコピン/HASの凝集を示している。
【0143】
図5B。「前」の状態(プロファイルA)、1.7×10
6CFU/mLのS.アウレウスを添加した後(プロファイルB)、および最終遠心分離の後(プロファイルC)におけるリコピン/HSA溶液についてのUV-Visスペクトル。差プロファイルは、実質的な量のリコピン/HSA(元のほぼ20%)が遠心分離工程の間に喪失することを示している。
【0144】
図6。1.7×10
6CFU/mLでのS.アウレウスに関する、3つの異なる濃度のHSA中リコピンについての初期および最終の状態(
図5BにおけるプロファイルA〜プロファイルC)のUV-Vis吸収プロファイルにおける差。
【0145】
図7は、対照サンプルにおける観察された差とともに、種々の細菌性および真菌性微生物(すべて1.7×10
6CFU/mLでの)に関する、0.8μMリコピン/HSAに対する、
図5Bに図示されたこのUV-VIS差プロットにおける最大値を要約している。対照サンプルにおいて、いくらかのリコピン喪失が観察された。これは、遠心チューブへのHSA/リコピンの吸着によるものであると考えられる。すべての場合において、微生物を有するサンプルにおけるリコピン喪失は、対照サンプルにおけるものよりも有意に大きかった。ゆえに、微生物へのリコピンの移行および凝集は、これらの種々のタイプの微生物によく見られると考えられた。
【0146】
図7。種々の微生物へのHSAの結合についての概要。対照サンプルでは、細菌は添加されないが、すべての他の工程(遠心分離工程を含む)が実施された。対照サンプルにおけるUV/Vis吸収プロファイルの減少は、おそらく遠心チューブへの少量のHSAの吸着によるものであった。任意の微生物を含有するサンプルにおける減少は、約4〜5×大きかった。差はHSA喪失の量による可能性があり、なぜならそれは、遠心分離工程によってペレット化される細菌に結合しているからである。
【0147】
細菌をHSA/リコピンの溶液中でインキュベートして、微生物細胞壁にリコピンを移行させかつ凝集させる時間の長さは、微生物の供給源に応じて変動した。PBSに懸濁された微生物に関しては、30分間で十分であった。臨床サンプル中の微生物に関しては、10分間で十分であった。ゆえに、微生物細胞壁へのリコピンの移行および凝集のためのインキュベーション時間は、微生物が潜伏状態または活性状態にあるかどうかに依存し得る。
【0148】
実施例10:抗微生物薬-アルブミン複合体による抗微生物薬の殺傷有効性の増強
本実施例では、病原体細胞表面での疎水性リガンドの凝集を、真菌性病原体カンジダ・アルビカンス(ATCC 90028)およびC.グラブラータ(ATCC 2001)を用いて試験した。ウシ血清アルブミンに組み入れられたアンホテリシンB(Sigma AldrichカタログA4888)の開示される製剤(AmpB/BSA)の有効性を、市販のリポソーム性アンホテリシンB(LAMB Sigma AldrichカタログA2942)の有効性とともに、本明細書において記載される方法を用いて試験した。C.グラブラータおよびC.アルビカンスの成長を阻止するために要される、アンホテリシンBの最小阻止濃度MICは約0.5μg/mLであることが以前に報告されている。
【0149】
市販のLAMB製剤で、本明細書において記載されるAmpB/BSA製剤中のアンホテリシンB含量を校正することによって、測定を準備した。両方からのアンホテリシンをDMSO:H
2O(1:1)に溶解し、次いでDMSO/H
2Oに溶解したAmpB/BSAについてのUV-Vis吸収曲線を、DMSO/H
2Oに溶解したLAMBで校正し、次いでそれを用いて、AmpB/BSAの水溶液についてのUV-Vis吸収曲線を校正した。
【0150】
AmpB/BSA水溶液またはLAMB製剤のいずれかのような、溶液中に導入された変動する量のアンホテリシンBを用いて、5×10
5CFU/mLの開始濃度からC.アルビカンスおよびC.グラブラータの成長を比較することによって、有効性を実証した。結果は、C.アルビカンスに関して
図8に、およびC.グラブラータに関して
図9に図示されている。両方の場合において、市販のLAMB製剤は、アンホテリシンBの濃度が0.4μg/mLを超えた場合に成長を抑制し、それは、以前に報告されたMIC値と一致した。AmpB/BSA製剤は、アンホテリシンB濃度が0.2μg/mLを超えた場合に成長を抑制し、それは、1/2だけのMICの非常に有意な低下に対応した。MICのこの低下は、細胞表面での疎水性リガンドの濃度に一致する。
【0151】
図8。種々の濃度のアンホテリシンBの下での、5×10
5CFU/mLの初期濃度を有するC.アルビカンス(ATCC 90028)についての成長曲線。LAMBは、Sigma(カタログA2942)から購入された市販の水溶性形態である、リポソーム性アンホテリシンBである。AmpB/BSAは、アンホテリシンBがウシ血清アルブミンに懸濁されている、本水溶性製剤である。見られるように、C.アルビカンス成長は、濃度がLAMBに関して0.4μg/mLおよび開示されるAmpB/BSA製剤に関して0.2μg/mLを超えた場合に抑制される。
【0152】
図9。種々の濃度のアンホテリシンBの下での、5×10
5CFU/mLの初期濃度を有するC.グラブラータについての成長曲線。
図8と同様の条件を用いた。今度も、MICは、LAMBに関する0.4μg/mLからAmpB/BSAに関する0.2μg/mLまで抑制される。
【0153】
実施例11:疎水性リガンド-アルブミン複合体による疎水性リガンドの製剤の改善
本明細書において記載されるアルブミンに基づく送達システムを用いて、抗微生物薬空間を拡大することができる。有機溶媒中で用いられる場合、立証されたインビトロ有効性を有するいくつかの既存の抗微生物化合物が存在するが、それらは、それらが水に不溶性でありかつ溶解度の低さが重大な薬物動態学的課題をもたらすため用いられない。1つのそのような例は、必須医薬品の世界保健機関(WHO)リストにあるクロファジミンである。クロファジミンは、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)の多剤耐性株に対する素晴らしいインビトロ実績を有する、抗炎症および抗マイコバクテリウム化合物である。しかしながら、その使用は、それが水溶性ではなく、ゆえに細菌に対する低い薬物動態を提供するため、ハンセン病の治療に現在限定されている。クロファジミンは、油-ワックス基剤中の微結晶懸濁物として投与され;200mg錠剤の摂取は、8時間というC
最大までの時間を有して、ほんの0.41μg/mLというピーク血漿濃度をもたらす。大部分のグラム陽性生物に対するこの薬物のMICも約0.4μg/mLであるため、薬物動態学的(PK)問題がその使用を妨げる。これらのPK問題とは別に、クロファジミンは、(それがDMSOにまたは酸性エタノールに溶解されているインビトロ調査により)いくつかのグラム陽性細菌に対して活性を有することが公知である。
【0154】
クロファジミンのための担体としてアルブミンを用いる実現可能性を試験するために、本明細書において記載される方法を用いて、クロファジミンをアルブミンに、ゆえに水溶性製剤に組み入れた。スタフィロコッカス・エピデルミディスに対する水溶性製剤であるクロファジミン-アルブミン複合体のインビトロ活性が、
図10に示されている。図に示されるように、水溶性製剤は、有機製剤とちょうど同じくらい優れたインビトロ活性を有した。この製剤を用いれば、PK問題が、体内でのアルブミンの長い保持時間によって対処されることが可能である。
【0155】
図10。クロファジミン中のS.エピデルミディス。2つのトレースは、X軸に表示されるように500,000CFU/mLの開始濃度および変動する濃度の薬物を用いた、18時間のインキュベーション期間の後のS.エピデルミディスの濃度を表す。2つのトレースは、有機溶媒中の薬物(10mM酢酸/エタノール中の2mg/mL濃度のクロファジミン;この有機溶媒製剤は、いくつかのグラム陽性生物に対して以前に実証されている)、およびクロファジミンがBSAに組み入れられた水溶性製剤中の薬物を表す。見られるように、水製剤は約0.5μg/mLのMICを与え、それは有機溶媒製剤からのもとの同一である。
【0156】
実施例12:疎水性リガンド-アルブミン複合体による臨床サンプル中の微生物の検出
以下の実験により、本開示の疎水性リガンド-アルブミン複合体を用いて、臨床サンプル中の微生物を検出し得ることが実証された。
【0157】
リコピン光学スペクトルにおける微生物誘導性赤色推移の検出
疎水性リガンド-アルブミン複合体に基づくセンサーシステムは、HSAに組み入れられた(シス形態に実質的に異性化されている)リコピンを含み;病原性微生物が近くに存在する場合には、HSAは立体構造を変化させた。これは円偏光二色性測定によって観察され、それは、アルブミン-リコピン複合体の振動エネルギーの分布が、微生物の存在の結果として推移することを示した(
図13)。感染および非感染サンプルの両方とも、リコピンの吸収三重項によって独占されるCDスペクトルを示したものの、微生物を含有するサンプルにおいて、円偏光二色性スペクトルは、非感染サンプルにおいて通常見られない565nmでの付加的な吸収バンドを示した。
【0158】
図13。100CFU/mLのK.ニューモニエの添加有りおよび添加無しの2個のサンプルについての円偏光二色性スペクトル;両方とも0.6mlのPHSおよび5.4mlのPBSを用いて調製された。感染サンプルにおいて、565nmでの付加的なピークが存在し、それはリコピンの凝集によるものである。
【0159】
興味深いことに、リコピン三重項からのUV-Vis吸光度も、細菌添加とともに変化した。
図24は、細菌をHSA/リコピンに添加した場合の、UV-Vis吸光度の変化を要約している。プロファイルは、細菌が原因のレイリー散乱と一致した、バックグラウンドの幅広い変化を含んだが、565nmでの小さなピークとともに、リコピンの吸光度三重項に似た特質も含んだ。これらの特質は、HSA複合体から細菌細胞壁へのリコピンの移行および凝集と一致し、カロテノイドの凝集はUV-Vis吸光度を変化させた。
【0160】
図24。1.7×10
6CFU/mLでのS.アウレウスについての、3つの異なる濃度のHSA中リコピンの初期および最終の状態(
図5BにおけるプロファイルA〜プロファイルC)におけるUV-Vis吸収プロファイルの差。
【0161】
これらのおよび他の知見に基づき、サンプル、例えば臨床サンプル中の微生物を検出する2つの方法が開発された。(a)第一に、リコピン由来の光学的特色を特徴決定するプローブを用いて、試験バイアル内の一定の空間地点でかつ時間の関数として、この特色を特徴決定した。一例として、プローブは、532nm照射を用いたラマン分光計であり、かつ1516および1156cm
-1におけるリコピンピークをモニターする。プローブを用いて、凝集したアルブミンが隔離されるレベルを十分に上回る地点でガラスバイアル内のリコピンラマンピークをモニターした。プローブのエネルギーは、凝集したアルブミンの立体構造を変更するのに十分であり、本明細書において提供される実施例では、25mW、50mW、および100mWの出力を有する532nm照射レーザーが用いられた。病原性微生物が存在する場合には、これは凝集したアルブミンの形成をもたらし、その立体構造は入射レーザー光のエネルギーによって変更され、それは観察されるリコピンラマンピークの着実な減少をもたらす。ゆえに、経時的な測定されるリコピンの減少は、病原性微生物の存在の指標である。(b)第二の方法は、線形軸に沿って動き得るプローブを伴い、かつそれを用いて、リコピンラマンピークの空間的プロファイルの変化をモニターした。任意の病原性微生物がアッセイに存在する場合には、これは、(完全に溶液中に存在しないわけではない)凝集したアルブミンの存在をもたらし、ゆえに空間的プロファイルは均一ではない。
【0162】
リコピンラマンピーク高の時間的プロファイルにおける微生物誘導性推移の検出
リコピンリガンドによって吸収されるレーザー光への曝露があると、このエネルギーの一部は宿主アルブミンに移行し、ゆえにアルブミン立体構造を変更するとともに、アルブミン凝集体の凝集体内のリコピンのラマン断面積の正味減少があった(
図15)。試験バイアルの下部から20mmにおいて、時間に対してリコピンラマンピーク高をプロットする
図15に例証されるように、これらの変化は可逆的であった。図に見られるように、レーザー照射により、リコピンラマンピーク高は着実に減少し、かつ光を消した場合、ほぼ元の値まで回復する。後続の照射により、この減少の大きさは低下したとはいえ、同様の減少が観察された。変化は可逆的であるため、それらは、いかなる化学的変化、またはアルブミン/リコピンのいかなる新たな凝集体の形成によるものでもあり得なかった。その代わり、これらの変化は、それが凝集形態にある場合、宿主アルブミンの光誘導性立体構造変化による可能性があった。凝集体内の宿主アルブミンは、リコピン結合部位の連動を可能にするようにそれら自身を再編成したと考えられる。この連動は、リコピンの光学的スペクトルの赤色推移、ゆえにラマンピーク強度の減少をもたらす。
【0163】
図15。100CFU/6mLのS.アウレウスを有する試験サンプルに関する時間に対するリコピンピーク高。サンプルバイアルを、0〜300、2400〜2700、4800〜5100、および7200〜7500秒間、レーザー光(バイアルの下部から20mmの一定の箇所で、100mWのレーザー出力)で連続的に照射した。レーザー照射により、リコピンピーク高は着実に減少するが、照射を消した場合、ほぼ元の値まで回復する。
【0164】
サンプルを532nmの光で照射した場合の、2つの支配的ラマンピークの時間的プロファイルを測定した。感染サンプルに関して、ラマンピーク高の時間プロファイルは、経時的な減少を示し、変化はレーザー曝露とともに開始し、かつ大部分のサンプルに対して約5〜10分間という比較的短い期間内に飽和した。
図16に図示されるように、サンプルにおける病原性微生物の存在は、サンプルとリコピン/HSA製剤とを混合し、かつ10分間のインキュベーション工程の後に共鳴ラマンピークの絶対値を測定することによって検出され得た。
図17に図示されるように、これらの変化は半定量的であった。しかしながら、潜在的に病気の患者由来の血清は、その中に未知の(かつ可変の)レベルのリコピンを有すると考えられ、そのため、共鳴ラマンピークの変化の割合が絶対値の代わりに指標として用いられ得る診断試験が開発される。この一例が、S.アウレウスに関する
図18に例証されている。
【0165】
図16。非感染サンプルにおよび100CFU/mLのS.アウレウスを含有するサンプルに関するリコピン含量に対する1156cm
-1における共鳴ラマンピークの高さ。これらの測定は、ガラスバイアルの下部から20mmで行った。
【0166】
図17。病原体濃度の関数としてのラマンピーク高。すべてのサンプルは、0または5または50CFUの添加されたS.アウレウス(0、10、および100CFU/mLのPHSという病原体濃度に対応する)のいずれかを有する500mLのプールされたヒト血清を含む合計で6mLであった。
【0167】
図18。それぞれが6mLの総サンプル体積、および表示されるような変動する量のS.アウレウスを有する500mLのPHSを有する、6個のサンプルにおけるラマンピークの変化の割合。
【0168】
図19は、非感染である3個と種々の量のバンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE)を接種された感染した4個とを含む7個のサンプルにおける病原体の存在を検出しようとする概念的な診断試験からの結果を例証している。図に示されるように、本方法を用いることにより、非感染および感染サンプルの間にはっきりとした分離が存在する。
【0169】
図19。変動する濃度のバンコマイシン耐性エンテロコッカスを用いた7個のサンプルに関するリコピンラマンピークの変化の割合の負数。
【0170】
(表1)試験された微生物、3個の非感染対照サンプルからの、3個の感染サンプルからのシグナル平均、ならびに培養物およびマクファーランド(McFarland)標準物質に基づく病原体濃度の比率についての概要
【0171】
21種の異なる病原性微生物を20分間試験において臨床的に関連する濃度(10CFU/mL)で試験して、検出方法の臨床適用性を実証した。結果は、21種の異なる微生物に関するシグナル出力を要約している表1に提示される。この場合、シグナルは、時間の関数としての、リコピンピーク高の変化の割合を指す(すべては試験バイアルの下部から20mmで測定された)。0CFU/mLは、3個の非感染対照サンプルに対する平均値を指し、そして実測/予想濃度は、マクファーランド標準物質から予想される数と比較した、試験サンプルにおいて実測された生存コロニーの数の間の比率を指す。ある場合には、この比率は0.2ほども低く、対応する10CFU/mLサンプルは事実上2生存CFU/mLであった。表から、平均非感染サンプルからのシグナルは、感染サンプルのいずれかからのシグナルとははっきりと異なったことがはっきりしている。
【0172】
ヒトサンプルへの開示される方法の適用性を判断するために、複数のサンプルを並行して試験した。一度に8個のサンプルを測定し得る標準設定において、各実験で4個の対照および4個の感染サンプルを試験する、4日間に及ぶ9つの実験を実施した。すべてのサンプルに関して、ラマンピークの発生をガラスバイアル内の一定の地点で10分間モニターした。
【0173】
すべてのサンプルは、0.6mLのプールされたヒト血清で作製され、かつ0.6μMのリコピン/HSAおよび1.5μMのβ-カロテン/HSAを含有する6mLの総サンプル体積を有し、かつ2mLの1×トリプチケースソイブロス(これは、病原体生存率を支えるために添加される)を有した。すべての場合において、7.4の開始pHを有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)および少量のアスコルビン酸の添加を用いて、pHを7.4に制御した。アッセイを、先に記載される方法を用いて調製し、かつ5℃で冷蔵庫内に保管した。使用する前に、それを37℃の水槽中で30分間インキュベートし(これは、アルブミン立体構造がヒト体内における標準的なものに戻るように行われる)、かつ100Wの超音波破砕機を用いて30分間超音波処理した(アルブミンは、それが37℃より下で長期間保管された場合に凝集体を形成し得ることが公知であるため、これはアルブミンの任意の凝集体を破壊するために行われる)。
【0174】
すべての感染サンプルは、0.6mLのプールされたヒト血清および0.1mLのPBS中100CFUのS.アウレウスの添加で作製され、かつ対照サンプルは、0.6mLのプールされたヒト血清および0.1mLのPBSの添加で作製された。1516および1156cm
-1における2つのリコピンピークの変化の割合を、532nmレーザー光を用いて測定しており(この照射波長において、ラマンスペクトルは、リコピンの寄与によって独占された)、そして
図20は、データ点およびエラーバーが4個の対照および感染サンプルの平均および±1標準偏差を表す、9つの実験の結果を図示している。感染サンプルは赤色バンドにあり、かつ対照サンプルは青色バンドにあることを見ることができる。
【0175】
図20。各実験が4個の対照および4個の感染サンプルを有する9つの実験からの試験結果。
【0176】
次いで、
図20において確立された検出閾値は、現実のヒト患者から作製された25個のサンプルを試験しかつ特徴決定するために用いられ、そして血液培養試験の最終結果(大部分の場合、血液培養試験結果は、該試験の間に入手不可であった)に応じて、感染既知または非感染既知のいずれかであった。結果は、
図21に図示されている。概して、結果と血液培養方法との間には良好な合致が存在した。血漿サンプルは、有意にノイズがより多かった。これは血漿サンプルにおける白血球の存在によるものであり得、概して、熱病患者は、より高い白血球カウント数を有する傾向がある。間違って診断されたであろう2個のサンプル(サンプル番号13および16)は、非常に高い白血球カウント数が原因で過度にノイズが多かった。
【0177】
それは、リン酸カリウムに基づくバッファーの使用によるものでもあり得る。リン酸カリウムは、(患者血漿に溶解している)塩化カルシウムと反応して、塩化カリウムおよびリン酸カルシウムを形成することが公知である。リン酸カルシウムは水に不溶性であり、かつアルブミンにおそらく結合する。開示される方法において利用される試薬からすべてのリン酸カリウムが除去された場合、シグナルトレースはより綺麗である。一例として、HEPESおよび水酸化ナトリウムを用いてバッファーを作製し、そして成分を用いかつリン酸カリウムをHEPESで置き換えてTSBブロスも再製剤化し、これらの試薬はより綺麗なシグナルトレースを提供した。
【0178】
図21。ヒト患者由来の血漿を用いた25個のサンプルからの結果。すべての場合において、「非感染既知」のサンプルは、血液培養試験(同じ患者に対して採取された異なるもの由来)および試験バイアルの培養の両方が陰性になるものであり、そして「感染既知」のサンプルは、血液培養または試験バイアルの培養のいずれかが陽性であるものである。「既知の感染」サンプルの一部では、100CFUのS.アウレウスを「非感染既知」の血漿に添加した。
【0179】
リコピンラマンピーク高の空間的プロファイルにおける微生物誘導性推移の検出
サンプルにおける微生物の存在は、微生物の非存在下でのそれとは違う、リコピン由来のラマンピークにおける空間的プロファイルを作成することが見出された(
図14)。これは、溶液からクラッシュアウトするリコピン-アルブミンの凝集体と一致する。ゆえに、別個の層に隔離される、複合体へのリコピン-アルブミンの凝集を用いて、サンプル中の微生物を検出し得る。
【0180】
図14。対照(非感染)サンプルに関する、時間t=0分およびt=15分時点の1516cm
-1でのリコピンラマンピークの大きさと、100CFU/6mLのS.アウレウスを含有するものとの間の差。2つのプロットは、高さが約25mmである6mL試験アッセイに対して、ガラスバイアルの下部からの距離の関数として差を図示している。図に示されるように、非感染サンプルに関しては、ガラスバイアルの下部または上部のいずれにおいてもラマンピーク高の変化はない。感染サンプルに関しては、ラマンピーク高は、ガラスバイアルの上部で減少する。
【0181】
未知の試験サンプルにおける微生物の存在を、リコピンの垂直の空間的プロファイルを特徴決定することによって診断した(
図22Aおよび22B)。以前に記載されるように、未知の試験サンプルと、アルブミンに組み入れられたリコピン(リコピン濃度1.5μM)とを混合した。リコピン-アルブミン複合体が細菌と相互作用するように混合物を15分間放置し、かつその後直ちにサンプルを試験した。
【0182】
非感染サンプルに関しては、アルブミン-リコピン系は溶液中に存在するため、濃度は、距離にわたって不変のままであった。感染サンプルに関しては、
図22Aおよび22Bに例証されるように、アルブミンが凝集している場合には、試験バイアルの下部により高い濃度が存在した。
【0183】
図22Aおよび22B。(
図22A)開示されるアッセイ(1μMのリコピンを有する)を両方が含有する2個の試験サンプルに対するリコピンの垂直プロファイル。青色のプロファイルは非感染対照サンプルを表し、そして赤色のプロファイルは、6mLの試験サンプル中に100CFUのS.アウレウスを有するサンプルを表す。(
図22B)4個のサンプルに対する垂直プロファイルの傾き;サンプル1および3は非感染対照サンプルであり、そしてサンプル2および4は、6mLのサンプル中に100CFUのS.アウレウスを有する。
【0184】
実施例13:リコピン/HSA複合体を用いた抗微生物薬感受性の診断
本リコピン/HSA複合体を用いて、抗微生物化合物の最小阻止濃度(MIC)を特徴決定した。本明細書において記載されるように調製されたリコピン/HSA複合体を、すべてが同じ初期量のS.アウレウス(200CFU/mLのPHS)を有する一連のサンプルと混合し、そしてそれを、変動する量のバンコマイシンと30分間インキュベートした。
図23は、変動する量のバンコマイシンに対する350nmでのUV-Vis吸光度のプロットを示している。リコピン/HSAアッセイの添加があると、リコピン/HSAの凝集は、S.アウレウス濃度(ゆえにバンコマイシン濃度に関して)に対応する様式で増大した。これらの変化は、
図23における下に示される、UV-Visスペクトルの変化により特徴決定された。
図23における上のチャートは、もう18時間のインキュベーション後のこれらのサンプルに対する600nmでの吸光度を示している。この吸光度は、18時間の成長後の病原体濃度によって独占された。図から見られるように、下のトレースは約0.6μg/mLのMICを予測しており、それは、上のチャートと一致し、また0.5〜1μg/mlの範囲内である、バンコマイシン/S.アウレウスについての以前に報告されたMIC値とも一致する。
【0185】
図23。200CFU/mLでのS.アウレウスのMICについての迅速な予測。本実験において、各2560μlのサンプルは、可変量のバンコマイシンとともに、1860μlのPBS、200μlのSDM、500μlのPHS、および600cfuの添加されたS.アウレウス(約234CFU/mLの有効濃度に対して)を有した。各サンプルを37℃で30分間インキュベートした。リコピン(1.125mM)、フコキサンチン(0.375mM)、付加的なバンコマイシン(同じ濃度のバンコマイシンを維持するため)、および付加的な3440μlのPBS(総体積を6mlにするため)を添加し、かつUV-Vis吸光度を測定した。下のチャートは、450nmでの吸光度を示しており、分断点は0.2mg/mlの予測MICを表す。上のチャートは、37℃で18時間のインキュベーション後の600nmにおける吸光度を示している。0.2μg/mlの分断点は、実際のMICを表す。
【0186】
これにより、リコピン/HSA複合体を用いて、抗微生物薬候補に対して原因となる病原体の抗微生物薬感受性を予測し得ることが示された。他の因子は一定であるため、シグナルは、サンプル中の生存病原性微生物の数に対応する。同じ数の微生物を有するサンプルのセットに関して、増加する濃度の抗微生物薬候補との20分間のインキュベーション工程は、抗微生物薬濃度が最小阻止濃度を超えた場合に、減少する微生物の数をもたらし得る。ゆえに、わずかなインキュベーション工程とリコピン/HSA複合体とを組み合わせて、MICを特徴決定することができる。
【0187】
初回の採血から開始して、MICについてのこの試験は、約3時間のサンプル調製時間(病原体濃度が>1000CFU/mLまで増加し得るように;サンプルが、ほぼ同一の病原体濃度を有する複数の部分に等分され得るように)、30分間の付加的なインキュベーション時間、および5分間未満の試験時間を要した。ゆえに、抗微生物薬感受性情報は、6時間以内に十分に進展し得、かつそれを用いて2回目の抗微生物薬用量に影響し得た。
【0188】
実施例14:リコピン対アルブミンのモル比はアルブミンの単一充填または二重充填を決定し得る
混合されたリコピン対アルブミンの比率が変動する点を除いて、リコピン/アルブミン複合体を、実施例3と同様のやり方で調製した。リコピン対アルブミンのモル比が0.5を上回った場合、UV-Vis吸収は565nmでピークに達し、アセトン除去および濾過の後に溶液の全体的な赤色の着色が観察され、かつ600nmでの強力なバックグラウンド吸収、次いで二重充填されたアルブミンが観察された。これは、アルブミンが二重充填されたことを示した。モル比が0.4よりも下で保たれた場合、565nmにおけるUV-Visピークはなく、アセトン除去および濾過の後に全体的なオレンジ色の着色が観察され、かつ、600nmで吸収がほぼないこと、単一充填のみされたアルブミンが、観察された。これは、アルブミンが単一充填されたことを示した。
【0189】
実施例15:上昇させたpH下での超音波処理によるアルブミンの凝集体の破壊
疎水性リガンド-アルブミン複合体の一部の溶液において、5℃で数日間の保管後に凝集が検出された(600nmでの吸光度の増大により)。これは、二重充填されたアルブミンの数/量が増加するにつれ、かつリコピンの異性化(トランス形態からシス形態へ)が行われない場合に、より迅速な速度で起こる。そのような場合、凝集したアルブミンの核形成/成長速度論が促される。しかし、二重充填されたアルブミンを最小限に抑えるすべての必要な工程が実施され、かつシス形態が用いられた場合、室温での保管は、凝集したアルブミンの形成を最終的にもたらすと考えられる。
【0190】
保管中に疎水性リガンド-アルブミン複合体の凝集体を形成した溶液に関しては、溶液のpHを8.5超に上昇させ、かつ短期間(5〜10分間)超音波処理するかまたは複合体を37℃で30分間〜60分間インキュベートすることによって、凝集体は破壊された。
【0191】
本開示は、その具体的な態様に関して記載されているものの、本開示の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変化がなされ得、かつ同等物が代用され得ることが当業者によって理解されるべきである。加えて、本開示の目的、精神、および範囲に、特定の状況、材料、物の組成、過程、過程の1つまたは複数の工程を適応させるために多くの改変がなされ得る。すべてのそのような改変は、本明細書に添付される特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。