(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧電部材と前記圧力室との間に位置する部分において、前記絶縁層の膜厚に対する前記下地層の膜厚の比が1乃至3の範囲内にある請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
図1は、実施形態に係る、インクジェットプリンタのヘッドキャリッジに搭載して使用するオンデマンド型のインクジェットヘッド1を示す斜視図である。以下の説明では、X軸、Y軸、Z軸からなる直交座標系を用いる。図中の矢印の指し示す方向を便宜上プラス方向とする。X軸方向は印刷幅方向に対応する。Y軸方向は記録媒体が搬送される方向に対応する。Z軸プラス方向は記録媒体に対向する方向である。
【0009】
図1を参照して概略的に説明すると、インクジェットヘッド1は、インクマニホールド10、アクチュエータ基板20、フレーム40及びノズルプレート50を備えている。
【0010】
アクチュエータ基板20は、X軸方向を長手方向とする矩形をなしている。アクチュエータ基板20の材料としては、例えばアルミナ(Al
2O
3)、窒化珪素(Si
3N
4)、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)及びチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O
3)等が挙げられる。
【0011】
アクチュエータ基板20は、インクマニホールド10の開口端を塞ぐようにインクマニホールド10の上に重ねられている。インクマニホールド10は、インク供給管11及びインク戻し管12を介してインクカートリッジに接続される。
【0012】
アクチュエータ基板20上には、フレーム40が取り付けられている。フレーム40上には、ノズルプレート50が取り付けられている。ノズルプレート50には、Y軸に沿って2列を形成するように、複数のノズルNがX軸方向に沿って所定の間隔をあけて設けられている。
【0013】
図2は、実施形態に係るインクジェットヘッドを構成するアクチュエータ基板、フレーム及びノズルプレートの分解斜視図である。
図3は、実施形態に係るインクジェットヘッドの部分切断上面図である。
図4は、
図3に示すインクジェットヘッドの一部を示すY軸に垂直な平面に沿った断面図である。
このインクジェットヘッド1は、いわゆるせん断モードシェアードウォールのサイドシューター型である。
【0014】
図2及び
図3に示すように、アクチュエータ基板20には、Y軸方向の中央部で列を形成するように、複数のインク供給口21がX軸方向に沿って間隔をあけて設けられている。また、アクチュエータ基板20には、インク供給口21の列に対してY軸プラス方向及びY軸マイナス方向においてそれぞれ列を形成するように、複数のインク排出口22がX軸方向に沿って間隔をあけて設けられている。
【0015】
中央のインク供給口21の列と一方のインク排出口22の列との間には、複数の圧電部材30が設けられている。これら圧電部材30は、X軸方向に延びた列を形成している。また、中央のインク供給口21の列と他方のインク排出口22の列との間にも、複数の圧電部材30が設けられている。これら圧電部材30も、X軸方向に延びた列を形成している。
【0016】
複数の圧電部材30からなる列の各々は、
図4に示すように、アクチュエータ基板20上に積層された第1の圧電体301及び第2の圧電体302で構成されている。第1の圧電体301及び第2の圧電体302の材料としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)等が挙げられる。第1の圧電体301及び第2の圧電体302は、厚さ方向に沿って互いに逆向きに分極されている。
【0017】
第1の圧電体301及び第2の圧電体302からなる積層体には、Y軸方向に各々が延び、X軸方向に配列した複数の溝が設けられている。これら溝は、第2の圧電体302側で開口しており、第2の圧電体302の厚さよりも大きな深さを有している。以下、この積層体のうち、隣り合った溝に挟まれた部分をチャネル壁という。これらチャネル壁は、Y軸方向に各々が延び、X軸方向に配列している。
圧電部材30は、後述するノズルNと連通する位置に圧力室32を形成し、圧力室32内の圧力を変化させて圧力室32内のインクを吐出させる。なお、インクが流通する圧力室32は、隣り合った2つのチャネル壁の間の溝に位置した空間である。圧力室32の幅、ここでは、圧力室32のX軸方向に沿った寸法は、好ましくは20乃至100μmの範囲内にあり、より好ましくは、30乃至70μmの範囲内にある。
【0018】
圧力室32を取り囲む側壁及び底には、電極33が形成されている。すなわち、圧電部材30のうち、圧力室32と隣接した部分には、電極33が形成されている。これら電極33は、Y軸方向に沿って延びた配線パターン31に接続されている。電極33は、圧電部材30に駆動パルスを印加する。
【0019】
後述するフレキシブルプリント基板との接続部を除き、電極33及び配線パターン31を含むアクチュエータ基板20の表面には、電極保護膜34が形成されている。電極保護膜34については、後で詳述する。
【0020】
フレーム40は、
図2及び
図3に示すように、開口部を有している。この開口部は、アクチュエータ基板20よりも小さく、かつ、アクチュエータ基板20のうち、インク供給口21、圧電部材30、及びインク排出口22が設けられた領域よりも大きい。フレーム40は、例えばセラミックスからなる。フレーム40は、例えば接着剤によりアクチュエータ基板20に接合される。
【0021】
ノズルプレート50は、ノズルプレート基板と、その媒体対向面(ノズルNからインクを吐出する吐出面)に設けられた撥油膜とを含んでいる。ノズルプレート基板は、例えば、ポリイミドフィルムなどの樹脂フィルムからなる。なお、撥油膜は省略してもよい。
【0022】
ノズルプレート50は、フレーム40の開口部よりも大きい。ノズルプレート50は、例えば接着剤によってフレーム40に接合される。
【0023】
ノズルプレート50には、記録媒体へ向けてインクを吐出する複数のノズルNが設けられている。これらノズルNは、圧力室32に対応して2つの列を形成している。ノズルNは、記録媒体対向面から圧力室32の方向に進むに従って径が大きくなっている。ノズルNの寸法は、インクの吐出量に応じて所定の値に設定される。ノズルNは、例えば、エキシマレーザーを用いたレーザー加工を施すことによって形成することができる。
【0024】
アクチュエータ基板20、フレーム40及びノズルプレート50は、
図1に示すように一体化されており、中空構造を形成している。アクチュエータ基板20、フレーム40及びノズルプレート50によって囲まれた領域は、インク流通室である。インクは、インクマニホールド10からインク供給口21を通してインク流通室に供給され、圧力室32を通過し、余剰のインクがインク排出口22からインクマニホールド10へ戻るように循環する。インクの一部は、圧力室32を流れる間にノズルNから吐出されて印刷に用いられる。
【0025】
配線パターン31には、アクチュエータ基板20上であってフレーム40の外側の位置でフレキシブルプリント基板60が接続されている。フレキシブルプリント基板60には、圧電部材30を駆動する駆動回路61が搭載されている。
【0026】
電極保護膜34は、絶縁層342と下地層341とを含んでいる。
電極保護膜34の厚さは、好ましくは1乃至10μmの範囲内にあり、より好ましくは2乃至5μmの範囲内にある。電極保護膜34の膜厚が大きすぎる場合、圧力室32の容積が小さくなりすぎる虞があり、また、圧力室32が拡張及び縮小するような変形を妨げる虞がある。電極保護膜34の膜厚を小さくすると、電圧パルスを繰り返し印加した後の絶縁性が不十分となるか、または、初期の絶縁性が不十分となる虞がある。したがって、上記の構成を採用することは、圧電部材30の作動を阻害することなく、長期の絶縁耐久性に優れたインクジェットヘッドを得る上で有利である。
【0027】
絶縁層342は、ポリパラキシレン骨格を有する化合物を含んでいる。
絶縁層342は、ポリパラキシレン骨格を有する化合物として、以下の一般式(I)で表される化合物を含んでいることが好ましい。
【0029】
一般式(I)において、R1乃至R8は、水素原子であってもよく、ハロゲン原子であってもよい。好ましくは、R1乃至R4は、水素原子又はフッ素原子であり、R5乃至R8は、水素原子又は塩素原子である。
【0030】
絶縁層342は、ポリパラキシレン骨格を有する化合物として、上記の一般式(I)において、R1乃至R8の全てが水素原子である化合物、又は、R1乃至R4が水素原子であり、R5乃至R8の何れかの原子が塩素原子であり且つR5乃至R8のうち他の原子は水素原子である化合物を含んでいることが好ましい。すなわち、絶縁層342は、ポリパラキシリレン、又はポリモノクロロパラキシリレンを含んでいることが好ましい。絶縁層342は、ポリモノクロロパラキシリレンを含んでいることがより好ましい。
【0031】
絶縁層342を構成する化合物の一例としては、diX(登録商標;KISCO社製)が挙げられる。
【0032】
絶縁層342は、従来公知の方法を用いて成膜することができる。例えば、絶縁層342は、気相堆積法によって成膜することができる。
絶縁層342の厚さは、一例によれば、1μm乃至5μmの範囲内にある。
【0033】
下地層341は、電極33と絶縁層342との間に位置している。
下地層341は、絶縁層342の材料とは異なる材料からなる。また、下地層341は、電気固有抵抗が1×10
13Ω・cm
2以上である材料からなる。下地層341の材料は、好ましくは、電気固有抵抗が1×10
13Ω・cm
2乃至1×10
17Ω・cm
2の範囲内にあり、より好ましくは、1×10
15Ω・cm
2乃至1×10
16Ω・cm
2の範囲内にある。下地層341の材料は、絶縁層342の材料と同等又はより大きな電気固有抵抗を有していることが好ましい。
【0034】
下地層341の材料の電気固有抵抗が小さすぎる場合、下地層341の膜厚を大きくする必要が生じる。その場合、電極保護膜34の膜厚が大きくなりすぎるため、後述する圧力室32の容積が小さくなりすぎる虞があり、また、圧力室32が拡張及び縮小するような変形が妨げられる虞がある。電気固有抵抗の上限値は特に制限されないが、下地層341を後述する膜厚の範囲内で形成可能な材料は、一般に、上記の上限値以下の電気固有抵抗を有している。
【0035】
このような材料としては、例えば、エポキシ系樹脂を用いることができる。エポキシ系樹脂としては、例えば、以下の化学式(II)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることができる。また、下地層341を構成する材料としては、シリコングリス系樹脂を用いることもできる。
【0037】
下地層341は、圧電部材30と圧力室32との間に位置した部分の膜厚が1μm乃至10μmの範囲内にある。この膜厚は、2μm乃至5μmの範囲内にあることが好ましい。下地層341の膜厚が大きすぎる場合、後述する圧力室32の容積が小さくなりすぎる虞があり、また、圧力室32が拡張及び縮小するような変形が妨げられる虞がある。下地層341の膜厚が小さすぎる場合、電圧パルスを繰り返し印加した後の絶縁性が不十分となるか、または、初期の絶縁性が不十分となる虞がある。
【0038】
圧電部材30と圧力室32との間に位置した部分において、絶縁層342の膜厚に対する下地層341の膜厚の比は、1乃至3の範囲内にあることが好ましく、1乃至2の範囲内にあることがより好ましい。この比を小さくすると、電圧パルスを繰り返し印加した後の絶縁性が不十分となる虞がある。また、この比を小さくすると、例えば、下地層341の材料が絶縁層342の材料と比較してより小さな電気固有抵抗を有している場合には、電極保護膜34の絶縁性が不十分となる可能性がある。他方、この比を大きくすると、圧力室32の容積が小さくなりすぎる虞があり、圧力室32が拡張及び縮小するような変形が妨げられる虞がある。
【0039】
下地層341は、例えば、以下の方法によって成膜することができる。すなわち、下地層341の成膜方法としては、例えば、高周波スパッタリング法及び熱蒸着法などの気相堆積法が挙げられる。なお、これらの方法において、圧電部材30の側壁へ下地層341を成膜するには、先の側壁に対して斜め方向に下地層の材料を堆積させることが好ましい。
【0040】
通常、電極33の表面は、圧電部材30の表面の凹凸に対応した凹凸を有している。電極33を被覆している下地層341の表面は、電極33の表面よりも滑らかである。したがって、下地層341を設けると、絶縁層342にピンホールが発生することを抑制可能となる。そのため、この構造は、優れた絶縁性を発揮するインクジェットヘッドを得る上で有利である。
【0041】
以下、圧電部材30の動作を説明する。ここでは、隣り合う3つの圧力室32のうち中央の圧力室32に着目して動作を説明する。なお、隣り合う3つの圧力室32に対応する電極33を電極A、B及びCとし、中央の圧力室32に対応した電極33は、電極Bであるとする。
チャネル壁に直交する方向に電界を印加していない場合には、チャネル壁は直立した状態である。
【0042】
ノズルNからインクを吐出させるには、まず、例えば、中央の電極Bに、両隣の電極A及びCの電位よりも高い電位の電圧パルスを印加して、チャネル壁に直交する方向に電界を生じさせる。こうして、チャネル壁をせん断モードで駆動させ、中央の圧力室32を挟む1対のチャネル壁を、中央の圧力室32の体積が拡張するように変形させる。
【0043】
次に、両隣の電極A及びCに、中央の電極Bの電位よりも高い電位の電圧パルスを印加して、チャネル壁に直交する方向に電界を生じさせる。こうして、チャネル壁をせん断モードで駆動させ、中央の圧力室32を挟む1対のチャネル壁を、中央の圧力室32の体積が縮小するように変形させる。この動作により、中央の圧力室32内のインクに圧力を加え、この圧力室32に対応するノズルNからインクを吐出させて記録媒体に着弾させる。このように、このインクジェットヘッド1では、圧電部材30をアクチュエータとして利用して、ノズルNからインクを吐出させる。
【0044】
このインクジェットヘッド1を用いた印刷プロセスでは、例えば、すべてのノズルNを3つの群に分けて、上で説明した駆動操作を時分割制御して3サイクル行い、記録媒体への印刷を行う。
【0045】
図5に、インクジェットプリンタ100の模式図を示す。
実施形態に係るインクジェットプリンタ100は、インクジェットヘッド1と、インクジェットヘッド1に対向して記録媒体を保持する媒体保持機構110とを備えている。
【0046】
図5に示すインクジェットプリンタ100は、排紙トレイ118が設けられた筐体を含んでいる。筐体内には、カセット101a及び101b、給紙ローラ102及び103、搬送ローラ対104及び105、レジストローラ対106、搬送ベルト107、ファン119、負圧チャンバ111、搬送ローラ対112、113及び114、インクジェットヘッド115C、115M、115Y及び115Bk、インクカートリッジ116C、116M、116Y及び116Bk、並びに、チューブ117C、117M、117Y及び117Bkが設置されている。
【0047】
カセット101a及び101bは、サイズの異なる記録媒体Pを収容している。給紙ローラ102又は103は、選択された記録媒体のサイズに対応した記録媒体Pをカセット101a又は101bから取り出し、搬送ローラ対104及び105並びにレジストローラ対106へ搬送する。
【0048】
搬送ベルト107は、駆動ローラ108と2本の従動ローラ109とによって張力が与えられている。搬送ベルト107の表面には、所定間隔で穴が設けられている。搬送ベルト107の内側には、記録媒体Pを搬送ベルト107に吸着させるための、ファン119に連結された負圧チャンバ111が設置されている。搬送ベルト107の搬送方向下流には、搬送ローラ対112、113及び114が設置されている。なお、搬送ベルト107から排紙トレイ118までの搬送経路には、記録媒体P上に形成された印刷層を加熱するヒータを設置することができる。
【0049】
媒体保持機構110は、記録媒体P、例えば記録用紙を、インクジェットヘッド1に対向して保持する。媒体保持機構110は、記録媒体を移動させる記録用紙移動機構としての機能も有している。媒体保持機構110は、搬送ベルト107、駆動ローラ108、従動ローラ109、負圧チャンバ111、及びファン119を含んでいる。媒体保持機構110は、印刷時には、記録媒体Pを、インクジェットヘッド1に対向させた状態で、記録媒体Pの印刷面に平行な方向へ移動させる。その間に、インクジェットヘッド1は、ノズルからインク滴を吐出して記録媒体P上に印刷する。
【0050】
搬送ベルト107の上方には、画像データに応じてインクを記録媒体Pに吐出する4つのインクジェットヘッドが配置されている。具体的には、シアン(C)インクを吐出するインクジェットヘッド115C、マゼンタ(M)インクを吐出するインクジェットヘッド115M、イエロー(Y)インクを吐出するインクジェットヘッド115Y、及びブラック(Bk)インクを吐出するインクジェットヘッド115Bkが、上流側からこの順に配置されている。インクジェットヘッド115C、115M、115Y及び115Bkの各々は、
図1及び
図2を参照しながら説明したインクジェットヘッド1である。
【0051】
インクジェットヘッド115C、115M、115Y及び115Bkの上方には、これらに対応したインクをそれぞれ収容した、シアン(C)インクカートリッジ116C、マゼンタ(M)インクカートリッジ116M、イエロー(Y)インクカートリッジ116Y、及びブラック(Bk)インクカートリッジ116Bkが設置されている。これらカートリッジ116C、116M、116Y及び116Bkは、それぞれ、チューブ117C、117M、117Y及び117Bkによって、インクジェットヘッド115C、115M、115Y及び115Bkに連結されている。
【0052】
次に、このインクジェットプリンタ100の画像形成動作について説明する。
まず、画像処理手段(図示しない)が、記録のための画像処理を開始し、画像データに対応した画像信号を生成するとともに、各種ローラや負圧チャンバ111などの動作を制御する制御信号を生成する。
【0053】
給紙ローラ102又は103は、画像処理手段による制御のもと、カセット101a又は101bから、選択されたサイズの記録媒体Pを1枚ずつ取り出し、搬送ローラ対104及び105並びにレジストローラ対106へ搬送する。レジストローラ対106は、記録媒体Pのスキューを補正し、所定のタイミングで記録媒体Pを搬送する。
【0054】
負圧チャンバ111は、搬送ベルト107の穴を介して空気を吸い込んでいる。従って、記録媒体Pは、搬送ベルト107に吸着された状態で、搬送ベルト107の移動に伴い、インクジェットヘッド115C、115M、115Y及び115Bkの下方の位置へと順次搬送される。
【0055】
インクジェットヘッド115C、115M、115Y及び115Bkは、画像処理手段による制御のもと、記録媒体Pが搬送されるタイミングに同期してインクを吐出する。これにより、記録媒体Pの所望の位置に、カラー画像が形成される。
【0056】
その後、搬送ローラ対112、113及び114は、画像が形成された記録媒体Pを排紙トレイ118へ排紙する。搬送ベルト107から排紙トレイ118までの搬送経路にヒータを設置した場合、記録媒体P上に形成された印刷層をヒータによって加熱してもよい。ヒータによる加熱を行うと、特に、記録媒体Pが非浸透性である場合に、記録媒体Pに対する印刷層の密着性を高めることができる。
【0057】
上記のインクジェットヘッド1は、優れた絶縁耐久性を達成することができる。以下にその理由を説明する。
【0058】
パリレンC(登録商標)などの化合物を含んだ被膜を単層で電極に被覆した場合、インクジェットヘッドは優れた絶縁性を示す。しかしながら、そのような被膜を用いた場合、長期間に亘る絶縁性の維持については改善の余地があった。具体的には、電圧部材に対して1×10
11回以上の電圧パルスの印加を行なうと、被膜のピンホールが増大し、被膜は絶縁性を維持できなくなることがあった。
【0059】
上記のインクジェットヘッド1は、電極保護膜34に下地層341と絶縁層342との2層構造を採用している。
【0060】
図6は、実施形態に係るインクジェットヘッドにおいて下地層と絶縁層とに印加される電圧を説明するための回路図である。上記の電極保護膜34で電極33を被覆したインクジェットヘッド1に対して電圧Vを印加する場合の等価回路は、
図6に示すように、直列接続された2つの抵抗素子からなる。すなわち、下地層341と絶縁層342とは、インクIと電極33との間で直列に接続された抵抗素子として振舞う。
【0061】
下地層341の材料は、十分に大きな電気固有抵抗を有している。例えば、下地層341の材料は、絶縁層342と同等又はより大きな電気固有抵抗を有している。そして、下地層341は、十分に厚い。
例えば、下地層341の厚さ方向における電気抵抗が、絶縁層342の厚さ方向における電気抵抗と同等である場合、分圧の原理によって、絶縁層342に印加される電圧は、電極保護膜34に印加される電圧Vの半分の大きさとなる。同様にして、下地層341の厚さ方向における電気抵抗が、絶縁層342の厚さ方向における電気抵抗よりも大きい場合、絶縁層342に印加される電圧は、より小さくなる。
【0062】
したがって、電極保護膜34に上記の構成を採用すると、電極保護膜34へ電圧パルスが繰り返し印加されたとしても、大電流が局所的に流れることに伴う絶縁層342の損傷は生じにくい。それゆえ、上記のインクジェットヘッド1は、長期間に亘る絶縁性の維持が可能となる。
【0063】
また、このインクジェットヘッド1を備えたインクジェットプリンタ100は、導電性のインクを長期間に亘って吐出することが可能となる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を説明する。
【0065】
<インクジェットヘッドの製造>
(例1)
図1乃至
図4に示すインクジェットヘッド1を、以下のように作製した。
まず、ノズルプレート50と、圧電部材30と、電極33とを備えた構造体を形成した。
次に、電極33上に電極保護膜34を形成した。
具体的には、まず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる下地層341を気相堆積法により成膜した。続いて、下地層341の上に、ポリモノクロロパラキシリレンからなる絶縁層342を気相堆積法により成膜した。
【0066】
ここで、圧電部材30と圧力室32との間に位置する部分において、下地層341の膜厚は2μmであり、絶縁層342の膜厚は2μmであった。すなわち、絶縁層342の膜厚に対する下地層341の膜厚の比は、1であった。また、この下地層341の材料は、電気固有抵抗が1×10
15Ω・cm
2であった。
【0067】
以上の方法により、
図1乃至
図4に示すインクジェットヘッド1を作製した。以下、このインクジェットヘッド1をインクジェットヘッドN1と表記する。
【0068】
(比較例1)
以下のことを除いて、例1と同様にインクジェットヘッド1を作製した。
上記の絶縁層342の材料からなる単層の膜を形成し、これを電極保護膜とした。圧電部材30と圧力室32との間に位置する部分において、電極保護膜の膜厚は2μmであった。
以下、このようにして作製したインクジェットヘッド1を、インクジェットヘッドC1と表記する。
【0069】
<評価>
インクジェットヘッドN1及びC1の電極33に対して電圧パルスを印加し、リーク電流値を観測した。具体的には、まず、インクジェットヘッドN1又はC1の電極33に対して振幅が60Vの電圧パルスを1×10
7回印加した。その後、電極33とインクとの間での電流のリークを測定した。同様の測定を、1×10
7回、1×10
8回、1×10
9回、1×10
10回、1×10
11回及び1×10
12回の電圧パルスの印加を行なったインクジェットヘッドについても行なった。結果を
図7に示す。
図7は、電圧パルスを印加した回数に対する電極保護膜のリーク電流値の関係を示すグラフである。
【0070】
図7に示すように、インクジェットヘッドC1は、1×10
9回以上の電圧パルスの印加によってリーク電流値が大幅に増大した。一方、インクジェットヘッドN1は、電圧パルスの印加を1×10
12回繰返しても、リーク電流値の変化を生じなかった。すなわち、優れた絶縁耐久性を達成することができた。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
記録媒体へ向けてインクを吐出するノズルが設けられたノズルプレートと、
前記ノズルと連通する位置に圧力室を形成し、前記圧力室内の圧力を変化させて前記圧力室内の前記インクを吐出させる圧電部材と、
前記圧電部材のうち前記圧力室と隣接した部分に位置し、前記圧電部材に駆動パルスを印加する電極と、
前記電極を被覆する電極保護膜と
を備え、
前記電極保護膜は、
ポリパラキシレン骨格を有する化合物を含んだ絶縁層と、
電気固有抵抗が1×1013Ω・cm2以上である材料からなり、前記電極と前記絶縁層との間に位置し、前記圧電部材と前記圧力室との間に位置する部分における膜厚が1μm乃至10μmの範囲内にある下地層と
を含んだインクジェットヘッド。
[2]
前記圧電部材と前記圧力室との間に位置する部分において、前記絶縁層の膜厚に対する前記下地層の膜厚の比が1乃至3の範囲内にある項1に記載のインクジェットヘッド。
[3]
前記材料は、エポキシ系樹脂又はシリコングリス系樹脂である項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
[4]
前記ポリパラキシレン骨格を有する化合物は、ポリモノクロロパラキシリレンを含んでいる項1乃至3の何れか1項に記載のインクジェットヘッド。
[5]
項1乃至4の何れか1項に記載のインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに対向して前記記録媒体を保持する媒体保持機構と
を備えたインクジェットプリンタ。