特許第6983684号(P6983684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983684制御装置、ボイラ、ボイラの監視画像取得方法およびボイラの監視画像取得プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983684
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】制御装置、ボイラ、ボイラの監視画像取得方法およびボイラの監視画像取得プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20211206BHJP
   F23M 11/04 20060101ALI20211206BHJP
   F23N 5/08 20060101ALI20211206BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20211206BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20211206BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H04N5/232 290
   F23M11/04 103
   F23N5/08
   G06T1/00 300
   G06T7/00 350B
   H04N5/225 500
   H04N5/232 941
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-15267(P2018-15267)
(22)【出願日】2018年1月31日
(65)【公開番号】特開2019-134316(P2019-134316A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2020年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 暁巳
(72)【発明者】
【氏名】松本 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】西宮 立享
(72)【発明者】
【氏名】真島 浩
(72)【発明者】
【氏名】窪田 隆博
【審査官】 中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−018025(JP,A)
【文献】 特開2017−187265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
H04N 5/225
G06T 1/00
G06T 7/00
F23M 11/04
F23N 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉を備えたボイラの監視を行う制御装置であって、
赤外線カメラによる火炉内部の監視対象部位の撮影動画をデータとして取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した撮影動画データをフレームごとに複数の領域に分割し、各前記領域ごとに輝度に基づく画像処理を行い、画像処理後の処理画像の輝度を所定時間積算して得られる積算画像から、前記監視対象部位まで透過した透過領域を取得する画像処理部と、
複数の前記透過領域に基づき前記監視対象部位の透過画像を作成する透過画像作成部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、各前記領域ごとにコントラストを強調するように画像処理を行う請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記積算画像の輝度と、前記所定時間の前記処理画像の平均輝度に前記所定時間のフレーム数を乗算した値との差分に基づき前記透過領域を取得する請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記監視対象部位の振動の有無を検知し、前記監視対象部位が振動していることを検知した場合は、前記監視対象部位の振動を認識し、前記監視対象部位の位置の補正を行う請求項1から請求項3のいずれかに記載の制御装置。
【請求項5】
前記透過画像作成部が作成した前記透過画像に対して付着物の付着範囲をマーキングして作成された教師データの画像の特徴を数値化し、数値化された前記教師データに基づき機械学習を行って予測モデルを作成する学習部を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の制御装置。
【請求項6】
各前記領域を画像類似度に応じて分類して作成された教師データを、分類した前記教師データの前記領域ごとに機械学習を行って予測モデルを作成する学習部を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の制御装置。
【請求項7】
前記赤外線カメラによって撮影された前記撮影動画の前記透過画像に対して前記予測モデルを参照して付着物の状態を予測し、予測結果を報知する予測部を備える請求項5または請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記予測部は、前記付着物の状態の前記予測結果のモニタリングを行い、前記付着物の状態の前記予測結果が所定の閾値を超えるとアラームを報知する請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記学習部は、前記火炉の複数の前記監視対象部位に対してそれぞれ前記予測モデルを作成する請求項5から請求項8のいずれかに記載の制御装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の制御装置を備えたボイラ。
【請求項11】
赤外線カメラによる火炉内部の監視対象部位の撮影動画をデータとして取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程にて取得された前記撮影動画をフレームごとに複数の領域に分割し、各前記領域ごとに輝度に基づく画像処理を行う画像処理工程と、
画像処理後の処理画像の輝度を所定時間積算して得られる積算画像から、前記監視対象部位まで透過した透過領域を取得する透過領域取得工程と、
複数の前記透過領域に基づき前記監視対象部位の透過画像を作成する透過画像作成工程と、
を備えるボイラの監視画像取得方法。
【請求項12】
赤外線カメラによる火炉内部の監視対象部位の撮影動画をデータとして取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにて取得された前記撮影動画をフレームごとに複数の領域に分割し、各前記領域ごとに輝度に基づく画像処理を行う画像処理ステップと、
画像処理後の処理画像の輝度を所定時間積算して得られる積算画像から、前記監視対象部位まで透過した透過領域を取得する透過領域取得ステップと、
複数の前記透過領域に基づき前記監視対象部位の透過画像を作成する透過画像作成ステップと、
を備えるボイラの監視画像取得プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、ボイラ、ボイラの監視画像取得方法およびボイラの監視画像取得プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭を粉砕した微粉炭を微粉燃料(固体燃料)として用い、この微粉炭を燃焼バーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を回収する微粉炭焚きボイラが知られている。
この微粉炭焚きボイラの火炉の炉壁、バーナ等には、燃焼による灰(クリンカ)などの付着物が付着し、これが堆積するとバーナノズルの閉塞やパネルの伝熱特性悪化、さらには堆積した付着物が落下して火炉の損傷が発生する虞がある。そのため、付着物の付着状況を監視することが求められている。
【0003】
しかし、微粉炭炊きボイラが運転中の場合は、微粉炭火炎の輻射が強いため、炉内のバーナやパネルなどの火炉壁への付着物の付着状況を作業者による目視や可視光線カメラで確認することは困難である。そのため、炉内の状況を観察する場合は、ボイラの負荷を下げて油焚きのバーナに切り替える、又は、プラントを停止させる必要がある。
【0004】
また、付着物の付着状況の観察については、目視での観察や可視光線カメラによる画像の確認を作業者が行っているため、その精度は作業者の熟練度が大きく影響する。
【0005】
そこで、運転を継続したままで炉内の状況を観察するため、目視や可視光線カメラに代えて赤外線カメラを使用することが検討されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、炉内のチューブの温度測定を行うため、赤外線撮像装置を用いてサーマルイメージが提供されることが開示されている。また、特許文献2及び3には、赤外線カメラを用いて灰溶融炉の内部を監視することが開示されている。
【0007】
また、作業者による付着物の付着状況の観察を省力化するため、撮影画像にもとづき機械学習を行い、学習結果を活用することが検討されている。
近年、機械学習を利用した画像認識技術は急速に発展しており、例えば人間に近い精度にて画像から物体を判別可能な技術が実用化されつつある。特に、Deep Learning(ディープラーニング、深層学習)と呼ばれる機械学習手法は、その発展が著しく、計算機能力の向上とも相まって、画像認識分野での実用化も期待されている。
【0008】
例えば、特許文献4には、溶融スラグ流の監視装置がスラグの3次元形状を測定し、過去の事例に基づくパターン認識によりスラグ排出性の良否が判断されること、及び、スラグ排出性の良否が判断された入力情報を新たな事例情報としてデータベースに追加して炉の特性が学習されることが開示されている。また、特許文献5には、スラグ流下状態を撮像した画像やスラグ温度などから典型的なパターンとの適合とをニューラルネットワークにより求めることでスラグ流下状態の評価を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2006−518464号公報
【特許文献2】特許第4917950号公報
【特許文献3】特許第5261038号公報
【特許文献4】特開2006−118744号公報
【特許文献5】特開平7−126663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に開示された発明では、サーマルイメージを取得しているため、付着物の付着状況を確認することができないという問題があった。また、上記特許文献2及び3に開示された発明では、赤外線カメラにより灰溶融炉の浮遊物を透過しているが、炉内の燃焼状態や微粉炭濃度の変動に起因する粉じん等により観察範囲が遮られ、監視対象部位が一瞬しか観察できない場合があるという問題があった。このように、撮影された画像の質が良くないため、この画像をインプットとする画像認識技術を適用したとしても、所望の結果が得られない虞がある。
【0011】
また、上記特許文献4及び5に開示された発明では、スラグの形状からパターンへの適合を行うことで状態の評価を行っており、機械学習が状態の判定にしか用いられていないという問題があった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、目視や可視光線カメラでは観察が困難な炉内の状況の監視を行うことのできる制御装置、ボイラ、ボイラの監視画像取得方法およびボイラの監視画像取得プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本開示の制御装置、ボイラ、ボイラの監視画像取得方法およびボイラの監視画像取得プログラムは以下の手段を採用する。
本発明の幾つかの実施形態における一態様に係る制御装置は、火炉を備えたボイラの監視を行う制御装置であって、赤外線カメラによる火炉内部の監視対象部位の撮影動画をデータとして取得する画像取得部と、前記画像取得部が取得した撮影動画データをフレームごとに複数の領域に分割し、各前記領域ごとに輝度に基づく画像処理を行い、画像処理後の処理画像の輝度を所定時間積算して得られる積算画像から、前記監視対象部位まで透過した透過領域を取得する画像処理部と、複数の前記透過領域に基づき前記監視対象部位の透過画像を作成する透過画像作成部と、を備える。
【0014】
本態様によれば、赤外線カメラによって撮影された火炉内部の動画を取得し、これをフレームごとに複数の領域に分割して、各領域ごとに輝度に基づく画像処理を行って、処理画像の輝度を所定時間積算して得られる積算画像から、前記監視対象部位まで透過した透過領域を取得し、複数の透過領域から監視対象部位の透過画像を作成するため、目視や通常のカメラでは確認することができない運転中の火炉の内部の状況を画像にて確認することができる。
赤外線カメラによって撮影された動画は、炉内の燃焼状態や燃料濃度が非定常に変動しているため、監視対象部位が火炎や燃料等によって遮られ、瞬間的・部分的にしか監視対象部位を確認することができない。しかし本態様では、画像処理を行って積算画像から透過領域を取得し透過画像を作成するため、短時間の変動成分の影響を除去した透過画像により視認性が改善され、監視対象部位を鮮明に確認することができる。
これにより、運転中においても火炉内の監視対象部位に対する監視が可能となる。監視対象部位における付着物の監視を行っている場合は、監視対象部位に付着物が付着しているか否かを判断することができることとなり、付着物に起因するトラブルを未然に防ぐことが可能である。
【0015】
上記態様では、前記画像処理部は、各前記領域ごとにコントラストを強調するように画像処理を行うとしてもよい。
【0016】
本態様によれば、各領域ごとにコントラストを強調するため、輝度の差をより増幅して、瞬間的に観察できた監視対象部位の領域の画像を強調することができる。例えば、全体のコントラストを強調すると、監視対象部位の輪郭を強調することができないが、本態様のように各領域ごとにコントラストを強調すると、観察できた監視対象部位の領域、すなわち透過領域の輪郭を強調することができる。
【0017】
上記態様では、前記画像処理部は、前記積算画像の輝度と、前記所定時間の前記処理画像の平均輝度に前記所定時間のフレーム数を乗算した値との差分に基づき前記透過領域を取得するとしてもよい。
【0018】
本態様によれば、積算画像の輝度と、所定時間の処理画像の平均輝度にフレーム数を乗算した値との差分に基づき透過領域を取得するため、火炉内の時間変動による変動成分の影響を低減することができる。
【0019】
上記態様では、前記画像処理部は、前記監視対象部位の振動の有無を検知し、前記監視対象部位が振動していることを検知した場合は、前記監視対象部位の振動を認識し、前記監視対象部位の位置の補正を行うとしてもよい。
【0020】
本態様によれば、監視対象部位が振動していることを検知した場合は、監視対象部位の振動を認識し、位置の補正を行うことから、監視対象部位が振動している場合の積算画像において監視対象部位が多重に露光されて像がぶれる虞があるが、これを防止し、ぶれのない積算画像を取得することができる。これにより、振動が発生している監視対象部位においても画像認識の精度を向上させることができる。
【0021】
上記態様では、前記透過画像作成部が作成した前記透過画像に対して付着物の付着範囲をマーキングして作成された教師データの画像の特徴を数値化し、数値化された前記教師データに基づき機械学習を行って予測モデルを作成する学習部を備えるとしてもよい。
【0022】
本態様によれば、透過画像に対して付着物の付着範囲をマーキングして作成された教師データの画像の特徴を数値化し、数値化された教師データに基づき機械学習を行い予測モデルを作成するため、赤外線カメラによって撮影された火炉内部の監視対象部位の撮影動画から付着物の付着についてその状態を定量的に評価し、付着範囲や付着量を予測することができる。
また、火炉内の時間変動による変動成分の影響を低減した透過画像を用いて機械学習を行うため、機械学習の精度が向上し、予測モデルの予測精度が向上する。
【0023】
上記態様では、前記各領域を画像類似度に応じて分類して作成された教師データを、分類した前記教師データの前記領域ごとに機械学習を行って予測モデルを作成する学習部を備えるとしてもよい。
【0024】
本態様によれば、各領域を画像類似度に応じて分類して作成された教師データを、分類した教師データの領域ごとに機械学習を行って予測モデルを作成するため、学習効率が向上し、予測誤差を縮小することができる。
【0025】
上記態様では、前記制御装置は、前記赤外線カメラによって撮影された前記撮影動画の前記透過画像に対して前記予測モデルを参照して前記付着物の状態を予測し、予測結果を報知する予測部を備えるとしてもよい。
【0026】
本態様によれば、赤外線カメラによって撮影された撮影動画の透過画像に対して予測モデルを参照して付着物の状態を予測し、予測結果を報知することから、撮影動画データに基づき監視対象部位における付着物の状態の定量的な評価を行うことができる。
また、監視対象部位への付着物の付着状態が定量化されることにより、作業者は報知された予測結果に基づき作業計画を立案可能なため、付着物に起因するトラブルを未然に防ぐことが可能である。
【0027】
上記態様では、前記予測部は、前記付着物の状態の前記予測結果のモニタリングを行い、前記付着物の状態の前記予測結果が所定の閾値を超えるとアラームを報知するとしてもよい。
【0028】
本態様によれば、付着物の状態の予測結果のモニタリングを行い、予測結果が閾値を超えるとアラームを報知することから、作業者による常時監視を行わずに制御装置によって付着物の状態が進行していることを監視することができる。これにより、作業者の監視作業に対する負担を軽減することができ、また付着物に起因するトラブルを未然に防ぐことが可能である。
【0029】
上記態様では、前記学習部は、前記火炉の複数の監視対象部位に対してそれぞれ前記予測モデルを作成するとしてもよい。
【0030】
本態様によれば、火炉の複数の監視対象部位に対してそれぞれ予測モデルを作成することから、監視対象部位ごとに異なる予測モデルを作成し、それぞれの監視対象部位に特有の詳細な予測を行うことができる。
【0031】
本発明の幾つかの実施形態における一態様に係るボイラは、上記のいずれかに記載の制御装置を備える。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態における一態様に係るボイラの監視画像取得方法は、赤外線カメラによる火炉内部の監視対象部位の撮影動画をデータとして取得する画像取得工程と、前記画像取得工程にて取得された前記撮影動画をフレームごとに複数の領域に分割し、各前記領域ごとに輝度に基づく画像処理を行う画像処理工程と、画像処理後の処理画像の輝度を所定時間積算して得られる積算画像から、前記監視対象部位まで透過した透過領域を取得する透過領域取得工程と、複数の前記透過領域に基づき前記監視対象部位の透過画像を作成する透過画像作成工程と、を備える。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態における一態様に係るボイラの監視画像取得プログラムは、赤外線カメラによる火炉内部の監視対象部位の撮影動画をデータとして取得する画像取得ステップと、前記画像取得工程にて取得された前記撮影動画をフレームごとに複数の領域に分割し、各前記領域ごとに輝度に基づく画像処理を行う画像処理ステップと、画像処理後の処理画像の輝度を所定時間積算して得られる積算画像から、前記監視対象部位まで透過した透過領域を取得する透過領域取得ステップと、複数の前記透過領域に基づき前記監視対象部位の透過画像を作成する透過画像作成ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、赤外線カメラによる撮影画像に画像処理を行って透過画像を作成するので、炉内の浮遊物によって観察範囲が遮られるのを防ぎ、監視対象部位への付着物の付着状況を鮮明に確認することができる。
また本発明によれば、付着物の付着状況について機械学習を行い、予測モデルを作成するので、赤外線カメラによる撮影画像に基づき付着物の付着についてその状態を定量的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】幾つかの実施形態に係るボイラの一態様を示す概略構成図である。
図2】可視光線カメラによる画像と、赤外線カメラによる画像を示した図である。
図3】参考例としての画像全体を画像処理した例を示した図である。
図4】幾つかの実施形態に係る監視対象部位の透過画像及び教師データ用画像の一態様を示す概略構成図である。
図5】幾つかの実施形態に係るモデル構築方法の一態様を示すフローチャートである。
図6】幾つかの実施形態に係る火炉の監視対象部位の灰付着量の時間推移の一態様を示すグラフである。
図7】幾つかの実施形態に係る監視対象部位の撮影画像の一態様を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本開示の幾つかの実施形態に係る制御装置、ボイラ、ボイラの監視画像取得方法およびボイラの監視画像取得プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0037】
図1には、本実施形態に係る制御装置、ボイラ、ボイラの監視画像取得方法およびボイラの監視画像取得プログラムの概略構成が示されている。
図1に示されるように、微粉炭焚きボイラ(ボイラ)10は、コンベンショナルボイラであって、火炉11と燃焼装置12とを有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置され、この火炉11を構成する火炉壁が伝熱管により構成されている。
【0038】
燃焼装置12は、この火炉11を構成する火炉壁(伝熱管)の下部に設けられている。この燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数の燃焼バーナ21、22、23、24、25を有している。本実施例にて、この燃焼バーナ21、22、23、24、25は、周方向に沿って4個均等間隔で配設されたものが1セットとして、鉛直方向に沿って5セット、つまり、5段配置されている。なお、火炉11の形状や一つの段における燃焼バーナ21、22、23、24、25の数、段数は本実施形態に限定されるものではない。
【0039】
なお、本実施例の燃焼装置12を構成する各燃焼バーナ21、22、23、24、25は、中心部に油燃料を噴射可能な油ノズルと、この油ノズルの外側に微粉燃料混合気を噴射可能な燃料ノズルと、この燃料ノズルの外側に2次空気を噴射可能な2次空気ノズルと、この2次空気ノズルの外側に3次空気を噴射可能な3次空気ノズルとを有している。従って、ボイラ起動時に、各燃焼バーナ21、22、23、24、25は、油燃料を火炉11内に噴射して火炎を形成し、その後、微粉燃料混合気と2次空気及び3次空気を火炉11内に噴射して火炎を形成している。
【0040】
また図1に示すように、火炉11は、上部に煙道50が連結されており、この煙道50に、対流伝熱部として排ガスの熱を回収するための過熱器(スーパーヒータ)51、52、再熱器53、54、節炭器(エコノマイザ)55、56、57が設けられており、火炉11での燃焼で発生した排ガスと水との間で熱交換が行われる。
【0041】
このように構成された微粉炭焚きボイラ10にて、微粉炭機(図示せず)によって生成された微粉炭が搬送用空気と共に燃焼バーナ21、22、23、24、25に供給される。また、加熱された燃焼用空気が各燃焼バーナ21、22、23、24、25に供給される。
【0042】
すると、燃焼バーナ21、22、23、24、25は、微粉炭と搬送用空気とが混合した微粉燃料混合気を火炉11に吹き込むと共に燃焼用空気を火炉11の燃焼領域に吹き込み、このときに着火することでこの燃焼領域に火炎旋回流を形成することができる。
【0043】
そして、図示しない給水ポンプから供給された水は、節炭器55、56、57によって予熱された後、図示しない蒸気ドラムに供給され火炉壁の各水管(図示せず)に供給される間に加熱されて飽和蒸気となり、図示しない蒸気ドラムに送り込まれる。更に、図示しない蒸気ドラムの飽和蒸気は過熱器51、52に導入され、燃焼ガスによって過熱される。過熱器51、52で生成された過熱蒸気は、図示しない発電プラント(例えば、タービン等)に供給される。また、タービンでの膨張過程の中途で取り出した蒸気は、再熱器53、54に導入され、再度過熱されてタービンに戻される。なお、火炉11をドラム型(蒸気ドラム)として説明したが、この構造に限定されるものではない。
【0044】
その後、煙道50の節炭器55、56、57を通過した排ガスは、図示しない脱硝装置にて、触媒によりNOxなどの有害物質が除去され、電気集塵機で粒子状物質が除去され、脱硫装置により硫黄分が除去された後、煙突から大気中に排出される。
【0045】
火炉11には、その内部を撮影可能なように赤外線カメラ40が設置されている。図1の赤外線カメラ40の位置は一例であり、監視の対象となる火炉11内の部位(以下、監視対象部位という)を撮影可能な位置であればいずれの位置に設置されていてもよい。
赤外線カメラ40は、火炉11の内部を動画で撮影するものであり、そのフレームレートは例えば250fps程度である。また赤外線カメラ40は、波長が4μm程度の中赤外線カメラが好適に用いられる。
【0046】
赤外線カメラ40には、制御装置30が接続されている。赤外線カメラ40は、制御装置30によって制御が行われる。
制御装置30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0047】
制御装置30は、画像取得部31と、画像処理部32と、透過画像作成部33と、学習部34と、予測部35とを備えている。
画像取得部31は、赤外線カメラ40によって撮影された火炉11の内部の監視対象部位の撮影動画をデータとして取得する。
画像処理部32は、画像取得部31が取得した撮影動画データに対し、後述する画像処理を行い、監視対象部位まで透過した透過領域を取得する。
透過画像作成部33は、画像処理部32が取得した複数の透過領域に基づき、監視対象部位の透過画像を作成する。
学習部34は、監視対象部位の透過画像から作成された教師データに基づき機械学習を行って予測モデルを作成する。このとき、機械学習は複数の透過領域毎に、必要に応じて複数の予測モデルを作成してもよい。
予測部35は、赤外線カメラ40によって撮影された監視対象部位の撮影動画データに対して対象領域にひも付けられた予測モデルを参照して付着物の状態を予測し、外部に報知する。
【0048】
微粉炭焚きボイラ10では、燃焼を行うことで灰等が発生する。発生した灰(クリンカ)は、火炉11の炉壁、過熱器51、52、再熱器53、54、燃焼バーナ21、22、23、24、25等に付着する。火炉11内に灰が堆積したり、広範囲に付着すると、火炉11の運転に影響を及ぼすだけでなく、堆積して固まった灰が落下することで火炉11の損傷にもつながる虞がある。
そこで、本実施形態では、カメラによる撮影画像を用い、画像処理及び学習を行うことで付着物の付着状況の監視及び予測を行う。
【0049】
本実施形態の制御装置30を用いた火炉11の監視について以下に説明する。
まず、火炉11内の変動による影響を低減する画像処理の方法について説明する。
図2には、可視光線カメラによる画像と、赤外線カメラによる画像とが示されている。
図3には、参考例としての画像全体を画像処理した例が示されている。
図2及び3の各画像はそれぞれ同じ監視対象部位を撮影した画像であり、図2(a)は可視光線カメラによる画像、図2(b)は赤外線カメラ40による画像、図2(c)は図2(b)の画像のコントラストを強調した画像、図2(d)は図2(c)の画像を複数積算して得られる画像を示す。
図2(a)に示されるように、火炉11内部を可視光線カメラで撮影しても、微粉炭火炎の輻射が強く、監視対象部位を確認することは困難である。
図2(b)に示されるように、火炉11内部を赤外線カメラ40で撮影すると、監視対象部位を遮るように火炉11内の浮遊物が白く撮影される。そのため、監視対象部位は瞬間的かつ部分的にしか観察することができない。
【0050】
そこで、画像処理部32は、次のような画像処理を行う。
画像処理部32は、図2(c)の点線で示されるように画像取得部31が取得した撮影動画データをフレームごとに複数の小さい領域(小領域)に分割する処理を行う。
次に、分割された各小領域ごとに、コントラストを強調する処理(ヒストグラム平滑化処理)を行う。これにより、浮遊物によって遮られていない監視対象部位の小領域において、コントラストが強調され、監視対象部位まで透過した透過領域が得られる。透過領域では、監視対象部位の輪郭を確認することが可能となる。
ここで、フレームごとに浮遊物の位置が異なるため、図2(c)に示される透過領域もその位置が異なる。そこで、各フレームの小領域ごとにヒストグラム平滑化処理を行った画像の輝度を所定時間積算し、積算後の画像(以下、積算画像とする)の輝度と、所定時間に相当するフレームの小領域ごとにヒストグラム平滑化処理を行った画像の平均輝度に所定時間に相当するフレーム数を乗算した値との差分を求める。これにより、透過領域のみをつなぎ合せて浮遊物などの火炉11内の時間変動の影響を低減し、監視対象部位のみが鮮明に表示される透過画像(図2(d)参照)を得ることができる。
【0051】
一方、画像処理部32が小領域に分割を行わず画像全体に対しヒストグラム平滑化処理を行うと、図3に参考例として示されるように監視対象部位の輪郭が現れず、透過領域を得ることができない。
【0052】
次に、画像処理により得られた画像から付着物の付着量を定量化するモデルの構築方法について説明する。
図4には、監視対象部位の透過画像及び教師データ用画像が示されている。
図4(a)は、監視対象部位の透過画像であり、図4(b)は、監視対象部位の教師データ用画像である。ここで、教師データとは、パターンを学習するために与えられる入力されたデータに対する結果に相当するデータである。
図2(d)に示されたように、画像処理を行うことで、監視対象部位が鮮明に表示される透過画像が得られる。ここで、監視対象部位に付着物が付着している場合は、図4(a)に示されるように、透過画像にも付着物が白く映ることとなる。しかし、火炎の輻射など、画像処理を行っても除去できない影響もあり、これら影響も付着物と同様に白く映ることがわかっている。
そこで、画像処理により得られた透過画像に対し、作業者が付着物か否かの判断を行う。作業者は、画像処理により得られた透過画像を確認し、白く映る領域がそれぞれ付着物によるものか、火炎の輻射など付着物以外の他の影響によるものかを判断する。作業者が付着物であると判断した領域は、図4(b)に示されるように透過画像上でマーキングを行う。このように付着物をマーキングした透過画像を、教師データとして用いる。このとき、教師データは領域の画像類似度に応じて分類して作成するとしてもよい。この場合、分類された領域毎にパターンを学習させる。このように、教師データを領域の画像類似度に応じて分類して作成することも有効である。
【0053】
図5には、本実施形態のモデル構築方法がフローチャートに示されている。
まず、予測モデルの構築にあたり学習を行う学習段階の説明を行う。
ステップS501において、画像取得部31が赤外線カメラ40によって撮影された火炉11の内部の監視対象部位の撮影動画をデータとして取得(読み込み)を行う。
次に、ステップS502において、画像処理部32は、画像取得部31が取得した撮影動画データに対し画像処理を行い、監視対象部位まで透過した透過領域を取得する。さらに透過画像作成部33が画像処理部32が取得した複数の透過領域に基づき、監視対象部位の透過画像を作成する。作業者は、監視対象部位の透過画像から教師データ(学習データ)を作成する。
【0054】
次に、ステップS503において、予測モデルの更新が行われる。
学習部34は、監視対象部位の透過画像から作成された教師データに基づき機械学習を行って予測モデルを作成する。ここで機械学習には、例えばDeep Learning等の学習手法を用いる。Deep Learningの代表的な手法としては、CNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)等が挙げられる。
学習部34は、教師データのデータ画像の輝度情報から画像の特徴を数値化し、付着物の付着状況を教師データから学習する。これにより、学習部34は、画像情報から付着物の付着領域を判断する数値モデルを作成する。この数値モデルが、付着物の付着領域の予測モデルとなる。
精度の高いモデルを構築するため、学習段階ではステップS501からステップS503までの処理を繰り返し行い、予測モデルの更新を行う。
また、観察対象によって、学習は領域の画像類似度に応じて分割して実施してもよい。監視対象領域は本来の機能に応じた形態となっており、付着物の形態および特性も異なることから、学習時に予め分類しておくことで、学習効率や数値モデルによる推定精度が改善される効果が見込める。
このようにして作成された予測モデルを保存する(S504)。
また、火炉11の内部において、位置により付着物の付着状況は異なる。そのため、予測モデルは、燃焼バーナ21、22、23、24、25を撮影した画像から作成されたバーナモデル、過熱器51、52を撮影した画像から作成されたSHモデルなど、監視対象部位ごとに作成し保存しておくことが望ましい。
【0055】
次に、構築された予測モデルを用いて監視を行う運用段階の説明を行う。
ステップS511において、画像取得部31が赤外線カメラ40によって撮影された火炉11の内部の監視対象部位の撮影動画をデータとして取得(読み込み)を行う。そして、画像処理部32は、画像取得部31が取得した撮影動画データに対し画像処理を行い、監視対象部位まで透過した透過領域を取得する。さらに透過画像作成部33が画像処理部32が取得した複数の透過領域に基づき、監視対象部位の透過画像を作成する。
次に、ステップS512において、予測部35は、赤外線カメラ40によって撮影された監視対象部位の撮影動画データの透過画像に対して、ステップS504にて保存された予測モデルを参照して付着物の状態を予測する。
予測部35は、監視対象部位に対応する予測モデルを参照することで、撮影動画データの透過画像から自動的に付着物の付着領域を抽出することができる。
次に、ステップS513において、予測部35は、付着物の付着領域の予測結果を外部に報知する。報知する方法としては、ディスプレイに表示する、ランプを点灯する、音声で通知する等の方法が挙げられる。
【0056】
このようにして、撮影動画データの透過画像において付着物の付着領域であると判定された箇所の面積を用いて、付着物の付着量を定量化することができる。付着物の付着量は付着領域の面積にほぼ比例することから、付着領域の面積から付着量を推定し、定量的な評価を行うことが可能である。
【0057】
報知方法としては、上述した以外に、アラームを鳴らすとしてもよい。
図6には、本実施形態に係る火炉の監視対象部位の灰付着量の時間推移がグラフに示されている。
図6において、縦軸は灰の付着量、横軸は時間を表す。
図6に示されるように、灰の付着量は、時間とともに少しずつ堆積する。また、灰の付着量には所定の閾値が設定されている。所定の閾値は、あらかじめ作業者が様々な画像に基づき許容可能範囲の限界となる付着量の画像を選定し、その画像の付着量を所定の閾値として設定された値である。本実施形態では、所定の閾値をαとする。
時間の推移とともに増加する灰の付着量が、所定の閾値αを超えると、制御装置30の予測部35はアラームを鳴らす。
作業者は、アラームの報知により灰の付着が進行していることを認識し、不具合などが発生する前に必要な対応策をとることが可能である。
【0058】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る制御装置、ボイラ、ボイラの監視画像取得方法およびボイラの監視画像取得プログラムによれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態によれば、赤外線カメラ40によって撮影された火炉11内部の動画を取得し、これをフレームごとに複数の領域に分割して、各領域ごとに輝度に基づく画像処理を行って、処理画像の輝度を所定時間積算して得られる積算画像から、監視対象部位まで透過した透過領域を取得し、複数の透過領域から監視対象部位の透過画像を作成するため、目視や通常のカメラでは確認することができない運転中の火炉11の内部の状況を画像にて確認することができる。
赤外線カメラ40によって撮影された動画は、火炉11内の燃焼状態や燃料濃度が非定常に変動しているため、監視対象部位が火炎や燃料等によって遮られ、瞬間的・部分的にしか監視対象部位を確認することができない。しかし本実施形態では、画像処理を行って積算画像から透過領域を取得し透過画像を作成するため、短時間の変動成分の影響を除去した透過画像により視認性が改善され、監視対象部位を鮮明に確認することができる。
これにより、運転中においても火炉11内の監視対象部位に対する監視が可能となる。監視対象部位における付着物の監視を行っている場合は、監視対象部位に付着物が付着しているか否かを判断することができることとなり、付着物に起因するトラブルを未然に防ぐことが可能である。
【0059】
また本実施形態によれば、各領域ごとにコントラストを強調するため、輝度の差をより増幅して、瞬間的に観察できた監視対象部位の領域の画像を強調することができる。例えば、全体のコントラストを強調すると、監視対象部位の輪郭を強調することができないが、本実施形態のように各領域ごとにコントラストを強調すると、観察できた監視対象部位の領域、すなわち透過領域の輪郭を強調することができる。
【0060】
また本実施形態によれば、積算画像の輝度と、所定時間の処理画像の平均輝度にフレーム数を乗算した値との差分に基づき透過領域を取得するため、火炉11内の時間変動による変動成分の影響を低減することができる。
【0061】
また本実施形態によれば、透過画像に対して付着物の付着範囲をマーキングして作成された教師データの画像の特徴を数値化し、数値化された教師データに基づき機械学習を行い予測モデルを作成するため、赤外線カメラ40によって撮影された火炉11内部の監視対象部位の撮影動画から付着物の付着についてその状態を定量的に評価し、付着範囲や付着量を予測することができる。
また、各領域を画像類似度に応じて分類して作成された教師データを、分類した教師データの領域ごとに機械学習を行って予測モデルを作成するため、学習効率が向上し、予測誤差を縮小することができる。
また、火炉11内の時間変動による変動成分の影響を低減した透過画像を用いて機械学習を行うため、機械学習の精度が向上し、予測モデルの予測精度が向上する。
【0062】
また本実施形態によれば、赤外線カメラ40によって撮影された撮影動画の透過画像に対して予測モデルを参照して付着物の状態を予測し、予測結果を報知することから、撮影動画データに基づき監視対象部位における付着物の状態の定量的な評価を行うことができる。
また、監視対象部位への付着物の付着状態が定量化されることにより、作業者は報知された予測結果に基づき作業計画を立案可能なため、付着物に起因するトラブルを未然に防ぐことが可能である。
【0063】
また本実施形態によれば、付着物の状態の予測結果のモニタリングを行い、予測結果が所定の閾値を超えるとアラームを報知することから、作業者による常時監視を行わずに制御装置30によって付着物の状態が進行していることを監視することができる。これにより、作業者の監視作業に対する負担を軽減することができ、また付着物に起因するトラブルを未然に防ぐことが可能である。
【0064】
また本実施形態によれば、火炉11の複数の監視対象部位に対してそれぞれ予測モデルを作成することから、監視対象部位ごとに異なる予測モデルを作成し、それぞれの監視対象部位に特有の詳細な予測を行うことができる。
【0065】
上記した実施形態では、火炉内の振動などについて検討を行っていないが、本実施形態では、振動する監視対象部位であっても適切な画像処理を行うとするものである。その他の点については上記した実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
【0066】
図7には、本実施形態に係る監視対象部位の撮影画像が示されている。
図7の各画像はそれぞれ同じ監視対象部位を撮影した画像であり、図7(a)は、赤外線カメラ40による画像、図7(b)は、監視対象部位の積算画像、図7(c)は、監視対象部位に対しぶれ補正処理を行った積算画像を示す。
火炉11の内部は、運転中にガスの流れなどの影響を受け、例えば過熱器51、52や再熱器53、54などが振動している場合がある。
監視対象部位が振動していても、図7(a)に示されるように、赤外線カメラ40による画像には特に問題は生じない。
しかし、図7(b)に示されるように、図7(a)の画像を複数積算した積算画像では、監視対象部位が多重に露光され、その像がぶれるという課題が生じる場合がある。
【0067】
そこで本実施形態では、画像処理部32が画像の積算を行う前に、自動で監視対象部位の輪郭を認識し、振動を認識して位置を補正する処理を行うこととする。
画像処理部32が位置の補正(ぶれの補正)を行うことで、図7(c)に示されるように監視対象部位の輪郭が鮮明に表示される積算画像を得ることができる。但し、ぶれの補正を行うことにより、監視対象部位の背景はぶれることとなる。
【0068】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る制御装置、ボイラ、ボイラの監視画像取得方法およびボイラの監視画像取得プログラムによれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態によれば、監視対象部位が振動していることを検知した場合は、監視対象部位の振動を認識し、位置の補正を行うことから、監視対象部位が振動している場合の積算画像において監視対象部位が多重に露光されて像がぶれる虞があるが、これを防止し、ぶれのない積算画像を取得することができる。これにより、振動が発生している監視対象部位においても画像認識の精度を向上させることができる。
【0069】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
例えば、上述した各実施形態においては付着物の付着領域(付着量)を予測するとしたが、予測した付着物の付着量に基づき、スーツブロワの運用タイミングを決定するとしてもよい。
スーツブロワの運用タイミングを予測モデルを用いて決定することにより、スーツブロワの運用改善を行うことができ、スーツブロワで使用される蒸気の蒸気量を削減して発電量を増加させることが可能となる。また、スーツブロワの運用過多により生じるエロージョンを抑制することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 微粉炭焚きボイラ(ボイラ)
11 火炉
12 燃焼装置
21、22、23、24、25 燃焼バーナ
30 制御装置
31 画像取得部
32 画像処理部
33 透過画像作成部
34 学習部
35 予測部
40 赤外線カメラ
50 煙道
51、52 過熱器(スーパーヒータ)
53、54 再熱器
55、56、57 節炭器(エコノマイザ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7