(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X座標回路が形成された円形又は略円形の上部導電膜を有する上部電極部と、Y座標回路が形成された円形又は略円形の下部導電膜を有する下部電極部とが対向するように配置された、アナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置であって、
前記X座標回路及び前記Y座標回路には、少なくとも1つの円弧状の電極を有する一対の電極がそれぞれ含まれる、
ことを特徴とする、抵抗膜式タッチパネル装置。
前記X座標回路の前記円弧状の電極の中央と前記上部導電膜の中心とを結ぶ直線と、前記Y座標回路の前記円弧状の電極の中央と前記下部導電膜の中心とを結ぶ直線とが直交する、
請求項1に記載の抵抗膜式タッチパネル装置。
前記上部電極部の外縁と前記下部電極部の外縁とは、折り曲げ可能な接合部によって一部が接合されており、前記接合部を折り曲げることにより、前記上部電極部と前記下部電極部とが重なり合い、対向するように配置される、
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の抵抗膜式タッチパネル装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、アナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置は存在する。従来技術としてのアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置は、
図8に示すように、矩形の上部電極と下部電極との間に、絶縁体であるドットスペーサが複数配置された構成を有しており、上部電極には、可撓性を有する透明な導電膜が用いられている。このタッチパネル装置の上部電極を指やタッチペン等でタッチすると、タッチされた位置の上部電極がたわみ、ドットスペーサが存在しない部分で上部電極と下部電極とが接触して導電するので、その電圧値によって、タッチされた位置の座標が検出される。なお、ドットスペーサは、環境などの外的な要因によって上部電極と下部電極とが誤って接触しないように配置されるものである。
【0003】
アナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置は、方式の違いによって4線式や5線式などの方式に分類することが可能であり、これらの方式のうち4線式が多く利用されている。4線式のものは、
図8に示すように、上部電極側にX座標回路が形成され、下部電極側にY座標回路が形成されている。このX座標回路及びY座標回路は、それぞれ異なった電圧勾配をもっているので、タッチされた位置の電圧が計測されると、その位置の座標が検出される。具体的には、X座標回路の電極X1と電極X2との間に、電圧Vccが印加された状態で、位置Aがタッチされると、下部電極を構成する電極Y1に電圧Vが発生する。このとき、透明導電膜は均一な抵抗値を持っているので、タッチされた位置Aから電極X1までの距離aと、位置Aから電極X2までの距離bとの比(a:b)は、抵抗R1の値と、抵抗R2の値との比(R1:R2)に等しくなる。このような原理によって、タッチされた位置Aの電圧値が算出されるとともに、算出された電圧値がA/D変換される。その結果、X座標回路における入力位置Aの座標がデジタル値で出力される。Y座標回路もX座標回路と同様の原理で、入力位置Aの座標がデジタル値で出力される。
【0004】
このように、従来技術としてのアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置は、タッチされた位置の座標を特定する構成となっている。このため、上部電極と下部電極との関係は、縦軸(Y軸)と横軸(X軸)との関係になるので、上部電極及び下部電極の形状は、縦軸と横軸とを構成し易い形状、すなわち矩形を前提としたものとなる。このような事情から、例えば製品の形状を円形や楕円形にすることで購入者に柔らかな印象を与えることをデザインコンセプトとした製品であっても、タッチパネル部分の形状のみ矩形にせざるを得ないといったような、製品開発上の制約も生じていた。
【0005】
このような問題に対し、特許文献1及び2では、円形のタッチパネルを得るための手法がそれぞれ提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で提案されている手法は、上下の透明電極を多角形状にすれば円形に近い形状が得られる、とするものであり、正確にいえば、円形ではなく多角形状のタッチパネルについての発明である。さらに、特許文献1で提案されている手法では、タッチパネルの入力面のうち、6角形のアクティブエリア(使用可能領域)が、特定の大きさの枡で区分けされ、その1つ1つの枡に代表位置番号が付けられる。代表位置番号は、パネルのX軸側の位置と、パネルのY軸側の位置の2つの代表する位置座標とを持っており、全ての位置座標はその代表する位置座標でもって位置が決定される。このため、押圧入力点の位置座標を求めるための相関テーブルが予め設定されていなければならず、また、相関テーブルとの対応関係を制御するためのコントローラを別途用意する必要がある。また、特許文献1の技術では、多角形状であっても、例えば8角形や10角形のように形状に応じてコントローラを用意する必要しなければならない。
【0008】
特許文献2で提案されている手法は、透明電極の面上で、外周辺に対向する形で設けられた基準導電電極と、外周領域に沿って基準導電電極と平行に設けられた複数のサーチ導電電極とを向き合わせて平行四辺形のアクティブエリア(タッチ可能なエリア)を形成させて、アクティブエリアの入力点の位置座標を算出する、とするものである。しかしながら、基準導電電極とサーチ導電電極とがいずれも直線であるため、基準導電電極と外周辺との間の領域と、サーチ導電電極と外周辺との間の領域との間に、アクティブエリアでない領域が形成されてしまう。
【0009】
このように、特許文献1及び2で提案されている手法は、いずれも円形のタッチパネルを得ることを目的とした手法であるが、正確にいえば多角形のタッチパネル装置を得るための手法である。さらにいえば、タッチパネル装置の形状を円形とする場合には、タッチパネルの入力の位置精度を示すリニアリティが保たれていなければならないが、特許文献1及び2では、リニアリティを保つための手法について記載も示唆もされていない。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、リニアリティが保たれた、円形又は略円形のアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る抵抗膜式タッチパネル装置は、
X座標回路が形成された円形又は略円形の上部導電膜を有する上部電極部と、Y座標回路が形成された円形又は略円形の下部導電膜を有する下部電極部とが対向するように配置された、アナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置であって、
前記X座標回路及び前記Y座標回路には、少なくとも1つの円弧状の電極を有する一対の電極がそれぞれ含まれる、
ことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、上部導電膜及び下部導電膜は、形状が円形又は略円形であり、X座標回路及びY座標回路には、少なくとも1つの円弧状の電極を有する一対の電極がそれぞれ含まれるので、円形又は略円形のアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置のリニアリティを保つことができる。
【0013】
本発明に係る抵抗膜式タッチパネル装置において、前記X座標回路の前記円弧状の電極の中央と前記上部導電膜の中心とを結ぶ直線と、前記Y座標回路の前記円弧状の電極の中央と前記下部導電膜の中心とを結ぶ直線とが直交する、ことが好ましい。
この発明によれば、一対の電極をそれぞれ含むX座標回路の前記円弧状の電極の中央と前記上部導電膜の中心とを結ぶ直線と、Y座標回路の前記円弧状の電極の中央と前記下部導電膜の中心とを結ぶ直線とが直交するので、タッチされた位置を特定するための座標軸が好適に形成される。その結果、リニアリティがより保たれた円形又は略円形のアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置を提供することができる。
【0014】
本発明に係る抵抗膜式タッチパネル装置において、前記円弧状の電極の中心角が90度〜170度である、ことが好ましい。
この発明によれば、円弧状の電極の中心角が90度〜170度で構成されているので、要求されるリニアリティのレベルに応じた、円形又は略円形のアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置を提供することができる。
【0015】
本発明に係る抵抗膜式タッチパネル装置において、理論出力電圧直線からの最大編位置と最大電圧との百分率によって求められる、リニアリティを示す値が、±1.5%である、ことが好ましい。
この発明によれば、リニアリティを示す値が±1.5%で構成されているので、リニアリティがさらに保たれた、円形又は略円形のアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置を提供することができる。
【0016】
本発明に係る抵抗膜式タッチパネル装置において、前記一対の電極の両方が前記円弧状の電極である、ことが好ましい。
この発明によれば、一対の電極の両方が円弧状の電極になっているので、対向する電極間の電圧分布のリニアリティをさらに高いレベルで保つことができる。
【0017】
本発明に係る抵抗膜式タッチパネル装置において、前記上部電極部の外縁と前記下部電極部の外縁とは、折り曲げ可能な接合部によって一部が接合されており、前記接合部を折り曲げることにより、前記上部電極部と前記下部電極部とが重なり合い、対向するように配置される、ことが好ましい。
この発明によれば、上部電極部と下部電極部とを容易に重ね合わせて一体化させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リニアリティが保たれた、円形又は略円形のアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態である抵抗膜式タッチパネル装置1について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、抵抗膜式タッチパネル装置1の外観図である。(A)は抵抗膜式タッチパネル装置1の平面図、(B)は抵抗膜式タッチパネル装置1の断面図である。
【0022】
[基本構成]
抵抗膜式タッチパネル装置1は、
図1に示すように、円形又は略円形の上部電極部11と下部電極部21とが対向するように配置されたアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置であって、上部電極部11は、円形又は略円形の上部電極板101と、一対の電極(電極111及び112)を含むX座標回路100が形成された円形又は略円形の上部導電膜102と、を少なくとも有し、下部電極部21は、円形又は略円形の下部電極板201と、一対の電極(電極211及び212)を含むY座標回路200が形成された円形又は略円形の下部導電膜202と、ドットスペーサ203と、を少なくとも有し、X座標回路100及びY座標回路200には、少なくとも1以上の円弧状の電極がそれぞれ含まれる。
抵抗膜式タッチパネル装置1に電力が供給された状態で、抵抗膜式タッチパネル装置1の表面が指やタッチペン等でタッチされると、タッチされた位置の上部電極部11がたわみ、ドットスペーサ203が存在しない部分で上部電極部11と下部電極部21とが接触して導電するので、その電圧値に基づいて、タッチされた位置の座標を検出することが可能となる。
【0023】
以下、抵抗膜式タッチパネル装置1の各構成要素について詳しく説明する。
【0024】
[上部電極部]
上部電極部11は、円形又は略円形の上部電極板101と、一対の電極(電極111及び112)を含むX座標回路100が形成された円形又は略円形の上部導電膜102と、を少なくとも有する。なお、「少なくとも」としたのは、それ以外の構成要素が含まれていてもよいことを意味する。例えば、上部電極板101の表面を傷や汚れなどから保護するための、円形又は略円状のハードコート(図示せず)等が上部電極部11に含まれていてもよい。
【0025】
(上部電極板)
上部電極板101は、上部電極部11の上部に配置された円形又は略円形の電極板である。上部電極板101は、指やタッチペンでタッチされることでたわむ透明な素材で構成される。例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムや薄いガラス等の素材を上部電極板101として用いることができる。上部電極板101の上部表面には、上部電極板101の表面を傷や汚れなどから保護するためのハードコート(図示せず)を付着させる処理が施されていてもよい。
【0026】
(上部導電膜)
上部導電膜102は、上部電極板101の下部に、後述する下部導電膜202に対向するように配置された円形又は略円形の導電膜である。上部導電膜102の表面には、一対の円弧状の電極(電極111及び電極112)を含むX座標回路100が形成されている。なお、電極111及び電極112の具体的な形状の他の例については、
図2を参照して後述する。上部導電膜102は、均一な抵抗値を有するが、具体的な抵抗値は特に限定されない。例えば、抵抗値が300Ω/□〜500Ω/□程度のものを用いることができる。上部導電膜102の材質は特に限定されない。透明なフィルムに対し、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)を蒸着したものや、銀等の金属材料を塗布(印刷)したものを用いることができる。
【0027】
[下部電極部]
下部電極部21は、
図1に示すように、円形又は略円形の下部電極板201と、一対の電極(電極211及び212)を含むY座標回路200が形成された下部導電膜202と、ドットスペーサ203と、を少なくとも有する。なお、「少なくとも」としたのは、それ以外の構成要素が含まれていてもよいことを意味する。例えば、光の反射を低減させるための位相差板(図示せず)等が下部電極部21に含まれていてもよい。
【0028】
(下部電極板)
下部電極板201は、下部電極部21の下部に配置された円形又は略円形の電極板である。下部電極板201の材質は特に限定されない。例えば、ソーダガラス(ソーダライムガラス、ソーダ石灰ガラス)、プラスチック製の板、フィルム等を用いることができる。
【0029】
(下部導電膜)
下部導電膜202は、下部電極板201の上部に、ドットスペーサ203を挟んで上部導電膜102に対向するように配置された導電膜である。下部導電膜202の表面には、一対の電極(電極211及び電極212)を含むY座標回路200が形成されている。下部導電膜202は、均一な抵抗値をもつが、具体的な抵抗値は特に限定されない。例えば、抵抗値が300Ω/□〜500Ω/□程度のものを用いることができる。下部導電膜202の素材は特に限定されない。透明なフィルムに対し、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)を蒸着したものや、銀等の金属材料を塗布(印刷)したものであってもよい。
【0030】
(ドットスペーサ)
ドットスペーサ203は、上部導電膜102と下部導電膜202との間に形成された絶縁体であり、抵抗膜式タッチパネル装置1に対するタッチ操作がなされていないときに上部導電膜102と下部導電膜202とが誤接触することを防止する。具体的には、ドットスペーサ203は、印刷等の手法によって下部導電膜202の表面に形成される。これにより、環境などの外的な要因によって上部導電膜102と下部導電膜202とがショートしてしまうことを防ぐことができる。
【0031】
以上のように、上部電極部11において、上部電極板101は、円形又は略円形であるとともに、上部導電膜102の表面には、一対の円弧状の電極(電極111及び電極112)を含むX座標回路100が形成されている。また、下部電極部21において、下部電極板201は、円形又は略円形であるとともに、下部導電膜202の表面には、一対の円弧状の電極(電極211及び電極212)を含むY座標回路100が形成されている。上部電極部11と下部電極部21とが上記の構成を有するので、リニアリティが保たれた、円形又は略円形のアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置を提供することが可能となる。
ここで、「リニアリティ」とは、直線性を意味し、抵抗膜式タッチパネル装置1の入力の位置精度を示す概念である。すなわち、抵抗膜式タッチパネル装置1の入力の位置精度は、上部導電膜102及び下部導電膜202の均一性によって左右されるものであるため、例えば理論出力電圧直線からの最大編位置と最大電圧との百分率で求められる値によって、リニアリティが保たれているか否かが判断される。
なお、電極111及び電極112の具体的な形状の他の例については、
図2を参照して後述する。
【0032】
次に、抵抗膜式タッチパネル装置1の電極の具体例及び比較例について説明する。
図2は、抵抗膜式タッチパネル装置1の電極の具体例及び比較例を示す図である。
図3〜
図5は、
図2の具体例及び比較例のそれぞれについて、リニアリティを示す電圧マッピングである。ここで、電圧マッピングとは、抵抗膜式タッチパネル装置1の形状に重畳して表示されるグラフであって、同じ大きさの電圧の部分が同じ層を形成するように色や色彩等により区分けして表示されたグラフである。リニアリティが保たれている場合、層の境界線が直線又は直線に近い形状で表示される。なお、
図3〜
図5に示す電圧マッピングは、説明の便宜上、上部電極部11の電圧分布のみを示している。下部電極部21の電圧マッピングは、上部電極部11の電圧マッピングを90度回転させたものであるため記載を省略している。
【0033】
ところで、抵抗膜式タッチパネル装置1は、上部電極部11の外縁と下部電極部21の外縁との接合部31を支点として、上部電極部11と下部電極部21との2つに開くことができる。また、2つに開かれた状態にある上部電極部11と下部電極部21とを、接合部31を支点として折り曲げて重ね合わせることにより一体化させて、抵抗膜式タッチパネル装置1を形成させることができる。
図2及び
図7には、抵抗膜式タッチパネル装置1を、接合部31を支点として上部電極部11と下部電極部21との2つに開いた状態を示す図を記載している。
【0034】
図3〜
図5に示す電圧マッピングは、以下の電位測定方法によって測定した結果を示したものである。すなわち、上部電極部11及び下部電極部21のそれぞれが有する一対の電極のうち、一方の電極(例えば電極111)に5V(ボルト)の電圧を印加し、もう一方の電極(例えば電極112)をGND(グラウンド)として、マルチメータ(回路計)を用いて電圧を測定した。点の電位を複数箇所測定することにより、抵抗膜式タッチパネル装置1全体の抵抗値分布を読み出した。具体的には、マルチメータのGND側を電極のGNDと接続し、マルチメータの電圧測定側プローブと上部電極部11とを接続して、測定箇所(測定の対象となる点)に指で触れたときの電圧を測定した。測定箇所の数は400箇所とした。
【0035】
(電極の比較例1)
図2(A)は、電極が全て点状のもので構成されている場合を示す図である。具体的には、上部電極部11の電極111及び電極112と、下部電極部21の電極211及び電極212とが、全て点状の電極で構成されている。電極111及び電極112は、上部電極部11の上下端部又はその付近に配置されており、電極211及び電極212は、下部電極部21の左右端部又はその付近に配置されている。これら4つの電極(電極111,112,211,及び212)は、接合部31を支点として下部電極部21折り曲げて、上部電極部11と下部電極部21とを重ね合せたとしても、電極同士が重なり合うことないように配置されている。
このように、4つの電極が、全て点状のもので構成されている場合には、
図3の電圧マッピングに示すように、電極を中心に、全体の3分の1程度の範囲で、電圧が円弧状に分布しており、リニアリティが保たれた電圧分布になっていない。これに対して、円弧状の電極(電極112及び212)側では、点状の電極側に比べてはるかにリニアリティが保たれた電圧分布になっている。また、点状の電極と円弧状の電極との中間点付近では、電極付近に比べてリニアリティが保たれた電圧分布になっている。
【0036】
(電極の具体例1)
図2(B)は、電極が円弧状のものと点状のものとで構成されている場合を示す図である。具体的には、上部電極部11のうち、電極111を円弧状の電極とし、電極112を点状の電極としている。電極111は、中心角が90度の円弧状の電極であり、開いた状態の上部電極部11の下側端部又はその付近に、上部電極部11の縁の湾曲形状に沿うように配置されている。電極112は、開いた状態の上部電極部11の上側端部又はその付近に配置されている。また、下部電極部21のうち、電極211を点状の電極とし、電極212を円弧状の電極としている。電極211は、下部電極部21の左側端部又はその付近に配置されている。電極212は、中心角が90度の円弧状の電極であり、下部電極部21の右側端部又はその付近に、下部電極部21の縁の湾曲形状に沿うように配置されている。これら4つの電極(電極111,112,211,及び212)は、接合部31を支点として折り曲げて、上部電極部11と下部電極部21とを重ね合せたとしても、電極同士が重なり合うことないように配置されている。ここで、中心角とは、円弧状の電極の両端と、円形又は略円形の導電膜の中心とを結ぶ2つの半径がなす角度である。
このように、4つの電極が、円弧状のものと点状のものとで構成されている場合には、
図4の電圧マッピングに示すように、点状の電極(電極112及び211)側では、点状の電極を中心に、全体の3分の1程度の範囲で、電圧が円弧状に分布している。また、電極と電極との中間点付近では、電極付近に比べてはるかにリニアリティが保たれた電圧分布になっている。
【0037】
(電極の具体例2)
図2(C)は、電極が全て円弧状のもので構成されている場合示す図である。すなわち、
図2(C)は、
図1に示す抵抗膜式タッチパネル装置1の電極の形状を示している。
図2(C)に示すように、上部電極部11の電極111及び電極112は、いずれも中心角が90度の円弧状の電極であり、上部電極部11の上下端部又はその付近に、上部電極部11の淵の湾曲形状に沿うようにそれぞれ配置されている。また、下部電極部21の電極211及び電極212は、いずれも中心角が90度の円弧状の電極であり、下部電極部21の左右の端部又はその付近に、下部電極部21の縁の湾曲形状に沿うようにそれぞれ配置されている。上述したように、抵抗膜式タッチパネル装置1は、上部電極部11と下部電極部21とが接合部31を支点として折り曲げられて、重なり合うことで形成される。このとき、これら4つの円弧状の電極(電極111,112,211,及び212)は、いずれも中心角が90度の円弧状の電極であるため、電極同士が互いに重なり合う部分を有することなく、かつ、隙間なく配置される。これにより、
図1に示すような、円形又は略円形の電極を有する抵抗膜式タッチパネル装置1を形成させることができる。
【0038】
以上のように、上部電極部11及び下部電極部21に円弧状の電極が含まれる場合には、リニアリティを保つ効果を奏する。特に、4つの電極の全てが円弧状のもので構成されている場合には、
図5の電圧マッピングに示されるように、全体的にリニアリティが高い電圧分布になる。すなわち、円形又は略円形の面抵抗に対して、対向する一対の電極を設けた状態で電圧分布にリニアリティを求める場合には、円面に対して外周付近に円弧状の電極を設けるのが好適である。これにより、対向する電極間の電圧分布にリニアリティをもたせることができる。
【0039】
このように、抵抗膜式タッチパネル装置1は、公知な矩形の抵抗膜式タッチパネル装置と同等の理論出力電圧直線からの最大編位置と最大電圧との百分率が±1.5%であるリニアリティを保つことができるので、例えば公知な矩形のアナログ式タッチパネル用コントロールボード(図示せず)に抵抗膜式タッチパネル装置1を接続して、キャリブレーションを行うことにより、公知な矩形のアナログ式タッチパネル同様に文字等の描画のダウン位置の検出ができるようになる。換言すれば、円形又は略円形であるために、専用のコントロールボードを用意する必要がなく、開発費を低減させることができる。
【0040】
図6は、抵抗膜式タッチパネル装置1を用いて、文字(アルファベットで「Yamanaka」の文字)と図形(「☆」の図形と「◎」の図形)を描いた場合の比較例を示す図である。(A)は電極の全てが点状の電極で構成されている場合の例、(B)は点状の電極と円弧状の電極とで構成されている場合の例、(C)は電極の全てが円弧状の電極で構成されている場合の例を示している。
【0041】
電極の全てが点状の電極で構成されている場合は、
図6(A)に示すように、文字(アルファベット)は曲がって表示され、「◎」の図形も「□」の図形で表示された。点状の電極と円弧状の電極とで構成されている場合は、
図6(B)に示すように、文字(アルファベット)は曲がって表示され、「◎」の図形の一部は「□」の図形で表示されたが、円弧状の電極側では「◎」の図形で表示された。電極の全てが円弧状の電極で構成されている場合は、
図6(C)に示すように、入力通りに表示された。
このように、電極の全てが円弧状の電極で構成させた場合には、リニアリティが特に保たれるため、抵抗膜式タッチパネル装置1に入力した内容を好適に表示させることができる。
【0042】
[他の実施形態]
本実施形態に係る抵抗膜式タッチパネル装置1の4つの電極は、いずれも中心角を90度とする円弧状の電極である。これにより、上部電極部11と下部電極部21とを重ね合わせたときに、4つの電極がいずれも重なることなく、かつ隙間なく環状にすっきりと配置されることとなる。しかしながら、円弧状の電極の中心角は90度に限定されず、
図7に示すように、様々な角度の中心角で構成することができる。
【0043】
図7は、抵抗膜式タッチパネル装置1の電極の形状が円弧状のみの場合の例を示す図であり、(A)は円弧状の電極の中心角が90度である場合を示す図、(B)は円弧状の電極の中心角が120度である場合を示す図、(C)は円弧状の電極の中心角が150度である場合を示す図、(D)は円弧状の電極の中心角が170度である場合を示す図である。
【0044】
円弧状の電極の中心角が異なる
図7(A)〜(D)に示す抵抗膜式タッチパネル装置1のそれぞれについて、上述の電圧マッピングを作成したところ、円弧状の電極の中心角が90度である場合に最もリニアリティを保つことがわかった。これは、円弧状の電極の中心角が180度に近くなるほど(中心角が大きくなるほど)、対向する電極間の抵抗値が下がり、消費電流が上昇するからであると推定される。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。また、本発明に係る要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更を施してもよい。
【0046】
例えば、上述の実施形態は、円弧状の電極の中心角の大きさが90度〜170度であるが、円弧状の電極の中心角の大きさは、この範囲に限定されない。中心角の大きさが90度未満であってもよいし、170度よりも大きくてもよい。
【0047】
以上まとめると、本発明が適用される抵抗膜式タッチパネル装置は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される抵抗膜式タッチパネル装置(例えば
図1の抵抗膜式タッチパネル装置1)は、
X座標回路(例えば
図1のX座標回路100)が形成された円形又は略円形の上部導電膜(例えば
図1の上部導電膜102)を有する上部電極部(例えば
図1の上部電極部11)と、Y座標回路(例えば
図1のY座標回路200)が形成された円形又は略円形の下部導電膜(例えば
図1の下部導電膜202)を有する下部電極部(例えば
図1の下部電極部21)とが対向するように配置された、アナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置であって、
前記X座標回路100及び前記Y座標回路200には、少なくとも1つの円弧状の電極を有する一対の電極(例えば
図1の電極111及び112、電極211及び212)がそれぞれ含まれる。
これにより、上部導電膜102及び下部導電膜202は、形状が円形又は略円形であり、X座標回路100及びY座標回路200には、円弧状の電極111及び112と,電極211及び212とがそれぞれ含まれるので、リニアリティが保たれた円形又は略円形のアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置を提供することができる。
【0048】
また、本発明に係る抵抗膜式タッチパネル装置において、前記X座標回路100と前記Y座標回路200とが直交することで座標軸が形成される、ことが好ましい。
これにより、X座標回路100とY座標回路200とが直交することで座標軸が形成されるので、リニアリティがより保たれた円形又は略円形のアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置を提供することができる。
【0049】
また、本発明に係る抵抗膜式タッチパネル装置において、前記円弧状の電極の中心角が90度〜170度である、ことが好ましい。
これにより、円弧状の電極の中心角が90度〜170度で構成されているので、要求されるリニアリティに応じた、円形又は略円形のアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置を提供することができる。
【0050】
また、本発明に係る抵抗膜式タッチパネル装置において、理論出力電圧直線からの最大編位置と最大電圧との百分率によって求められる、リニアリティを示す値が、±1.5%である、ことが好ましい。
これにより、リニアリティを示す値が、±1.5%で構成されているので、リニアリティがさらに保たれた、円形又は略円形のアナログ方式の抵抗膜式タッチパネル装置を提供することができる。
【0051】
また、本発明に係る抵抗膜式タッチパネル装置において、前記上部電極部の外縁と前記下部電極部の外縁とは、折り曲げ可能な接合部(例えば
図2の接合部31)によって一部が接合されており、前記接合部を折り曲げることにより、前記上部電極部と前記下部電極部とが重なり合い、対向するように配置される、ことが好ましい。
これにより、上部電極部と下部電極部とを容易に重ね合わせて一体化させることができる。