(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る熱交換器について説明する。
【0012】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る熱交換器20は、空気調和装置の室外機1に収容されて、熱交換器20の外部を流れる空気と、熱交換器20の内部を流れる熱媒体との間で熱交換を行う。
図1、
図2に示すように、室外機1は、筐体10を備える。筐体10は、
図3に示すように、熱交換器20、熱交換器20に空気を流すファン60、ファン60を駆動するモータ61、圧縮機(不図示)を収容する。
【0013】
筐体10は、
図1、
図2に示すように、直方体状であり、空気を排出する排気口11、排気口11を覆うファンガード13、空気を吸入する吸気口12a、12b、吸気口12bを覆うリアガード14を備える。
【0014】
排気口11は、筐体10の正面パネル10aに形成された開口部であり、熱交換器20で熱交換された空気が、ファン60によって排出される。排気口11は、網目状のファンガード13によって覆われている。これにより、ユーザが回転中のファン60に触れることを防ぎ、ユーザの安全を確保している。
【0015】
吸気口12aは、筐体10の側面パネル10bに形成された開口部であり、ファン60の回転によって、筐体10内の熱交換器20へと空気を流入させる。
【0016】
吸気口12bは、筐体10の背面パネル10cに形成された開口部であり、ファン60の回転によって、筐体10内の熱交換器20へと空気を流入させる。吸気口12bは、網目状のリアガード14によって覆われている。これにより、ユーザが筐体10内部の熱交換器20に触れることを防ぎ、ユーザの安全を確保している。
【0017】
図3の断面図に示すように、筐体10の内部は、セパレータ板10fによって、機械室100aとファン室100bとの2つの領域に区切られている。機械室100aは、図示しない圧縮機、レシーバ、弁、弁を制御する電気回路等を収容し、外気から遮蔽された領域である。ファン室100bは、熱交換器20、ファン60、モータ61、ファン60を支持するファンフレーム62等を収容し、吸気口12a、12b、排気口11を通じて外気に晒されている領域である。
【0018】
ファン60は、ファン室100bの中央部に配置されている。モータ61は、ファン60に接続されており、ファン60を回転駆動する。ファン60及びモータ61は、筐体10に固定されたファンフレーム62に取り付けられている。
【0019】
ファン60は、モータ61によって回転駆動され、吸気口12a、12bから筐体10内に空気を流入させるとともに、吸気口12a、12bから流入し、熱交換器20を通過した空気を、排気口11を通じて筐体10の外部へ送出する。
【0020】
熱交換器20は、
図3に示すように、吸気口12a、12bに沿って平面視L字状に筐体10内に配置されている。また、熱交換器20の機械室100a側の端部は、機械室100a内に配置された冷媒管20dを通じて、圧縮機に接続されている。
【0021】
熱交換器20は、
図4に示すように、熱媒体を流通させる伝熱管20aを複数積層して保持する熱交換ユニット200a、200b、熱交換ユニット200aの伝熱管20aと熱交換ユニット200bの伝熱管20aとを連通して熱媒体を流通させる連結ヘッダ21、伝熱管20aと圧縮機とを接続する冷媒管20dを備える。
【0022】
図5に模式的に示すように、伝熱管20aは、断面扁平形状である。これにより、熱交換器20の熱交換効率を高めることができる。また、伝熱管20aの材質は、アルミニウム合金である。熱交換ユニット200a、200bは、扁平部同士を対向させて積層した複数の伝熱管20aを備える。
【0023】
伝熱管20aは、矩形板状の放熱フィン20bに接続されている。具体的には、放熱フィン20bは、伝熱管20aが積層された管段方向に複数の貫通孔を有している。そして、伝熱管20aが、それぞれの貫通孔に挿入、接続されている。また、伝熱管20aは、複数の放熱フィン20bに接続されており、伝熱管20aと放熱フィン20bは、
図5に示すように、全体で格子状となっている。
【0024】
熱交換ユニット200a、200bは、同数の伝熱管20aを備えている。また、熱交換ユニット200aと熱交換ユニット200bは、管段方向及び伝熱管20aの長手方向に直交する管列方向に並列に配置されている。伝熱管20aの一方の端部は、冷媒管20dに接続されている。また、伝熱管20aの他方の端部は、
図6に示すように、連結ヘッダ21に接続されている。
【0025】
連結ヘッダ21は、
図7、
図8に示すように、第1のヘッダ部材211と第2のヘッダ部材212を備える。第1のヘッダ部材211は、平板状の部材であり、半円筒形状の張出し部211aを備える。張出し部211aは、伝熱管20aに対応する位置に形成されている。また、張出し部211aは、
図9の分解図に示すように、熱交換ユニット200a、200bの各伝熱管20aを挿通させる挿通孔211bを備える。また、張出し部211aの周囲は、平面状の第1接合部211cである。
【0026】
第2のヘッダ部材212は、平板状の部材であり、半円筒形状の張出し部212aを備える。張出し部212aは、第1のヘッダ部材211の張出し部211aに対向する位置に複数形成されている。また、張出し部212aの周囲は、平面状の第2接合部212cである。
【0027】
図7、
図8に示すように、第1のヘッダ部材211の挿通孔211bに伝熱管20aが挿通され、第1のヘッダ部材211と伝熱管20aとがロウ付けにより接合されている。
【0028】
また、第1のヘッダ部材211と第2のヘッダ部材212は、張出し部211aと張出し部212aとが対向する位置に配置され、平面状の第1接合部211cと平面状の第2接合部212cで、ロウ付けにより接合される。これにより、対向する一対の張り出し部同士で、両端が閉じた円筒状の流路を形成している。
【0029】
続いて、熱交換器20を備える室外機1の組み立て方法について説明する。
【0030】
まず、第1のヘッダ部材211及び第2のヘッダ部材212を、プレス加工により製造する。第1のヘッダ部材211及び第2のヘッダ部材212の材質は、
図10に示すように、ロウ材22aであるロウ層と、基材22bと、防食材22cである防食層とを積層したブレージングシート22である。例えば、ロウ材22aはAl−Si合金であり、基材22bはMnを添加されたA3003アルミニウム合金であり、防食材22cはAl−Zn合金である。
【0031】
第1のヘッダ部材211と第2のヘッダ部材212のプレス加工の際の材料の向きは、第1のヘッダ部材211と第2のヘッダ部材212とを接合して連結ヘッダ21とした際に、接合面に位置するロウ材22a同士が接触し、防食材22cが外側、すなわち張出し部211a、212aが突出する側である。これにより、第1接合部211cと第2接合部212cとのロウ付け性を確保するとともに、防食材22cにより防食性に優れた連結ヘッダ21を得ることができる。
【0032】
続いて、熱交換ユニット200a、200bを製作する。プレス加工で製作した放熱フィン20bを予め定められたピッチで整列させる。放熱フィン20bの材料は、第1のヘッダ部材211、第2のヘッダ部材212と同様のブレージングシート22を用いる。また、押し出し成形で製作したアルミニウム合金製の伝熱管20aを予め定められたピッチで整列させる。そして、整列させた放熱フィン20bの挿入孔に伝熱管20aを圧入する。
【0033】
また、冷媒管20dをブレージングシート22で製作する。冷媒管20dは、冷媒管20dに形成された挿通孔に挿通された伝熱管20aと、ロウ付けによって接続される。ブレージングシート22は、ロウ材22aが冷媒管20dの内側、防食材22cが冷媒管20dの外側となる向きで、冷媒管20dを構成する。これにより、伝熱管20aと冷媒管20dとのロウ付け性及び冷媒管20dの防食性が確保される。
【0034】
上述したように製造された熱交換ユニット200a、200bを管列方向に並列に配置し、伝熱管20aの一方の端部を冷媒管20dの挿入孔に挿入する。また、伝熱管20aの他方の端部を、プレス加工で形成した第1のヘッダ部材211の挿通孔211bに挿通する。そして、第1のヘッダ部材211と第2のヘッダ部材212とを、張出し部211aと張出し部212aとが対向する位置で仮固定する。第1のヘッダ部材211と第2のヘッダ部材212は、カシメ加工によって仮固定される。仮固定は、治具を用いて行ってもよく、第1のヘッダ部材211の第1接合部211cと、第2のヘッダ部材212の第2接合部212cとを加圧密着させることが好ましい。また、第1のヘッダ部材211に第2のヘッダ部材212を仮固定した後、第1のヘッダ部材211の挿通孔211bに伝熱管20aを挿通してもよい。
【0035】
続いて、組み立てられた熱交換器20を、窒素ガス雰囲気下で約580〜620℃に昇温したロウ付け槽に投入する。これによりブレージングシート22のロウ材22aが溶融して、接触している部材同士を一括ロウ付けする。これにより、第1のヘッダ部材211の張出し部211aと第2のヘッダ部材212の張出し部212aとの間に形成された空間が閉塞され、熱媒体の流路を構成する。したがって、第1のヘッダ部材211に挿通された、熱交換ユニット200aの伝熱管20aと、これに隣接する熱交換ユニット200bの伝熱管20aとが連通し、熱媒体を流通させることができる。
【0036】
そして、ロウ付けされた熱交換器20を
図4に示すようにL字に曲げ、圧縮機、ファン60、モータ61等とともに筐体10に収容して室外機1が組み立てられる。
【0037】
図11の断面図に模式的に示すように、ロウ付け槽内で加熱されて溶融したロウ材22aは、表面張力によって、第1のヘッダ部材211と第2のヘッダ部材212との間、及び伝熱管20aと第1のヘッダ部材211との間に凝集する。また、溶融した第1のヘッダ部材211のロウ材22aは、毛細管現象によって伝熱管20aと第1のヘッダ部材211との隙間を通り、第1のヘッダ部材211の外側、すなわち防食材22c側にも凝集し、フィレットを形成する。これらによって、第1のヘッダ部材211と第2のヘッダ部材212とが接合されるとともに、熱媒体の圧力、すなわち連結ヘッダ21の内圧に対する接合部の耐圧強度が確保できる。
【0038】
ここで、第1のヘッダ部材211に対する伝熱管20aの挿入量Mが不足すると、ロウ材22aが伝熱管20aの端部に付着する。これにより、伝熱管20aに形成されている熱媒体の流路が塞がり、熱媒体が流れなくなる場合がある。したがって、伝熱管20aの挿入量Mは、凝集したロウ材22aの高さであるロウ材距離R、伝熱管20aを連結ヘッダ21に挿入した後の伝熱管20aの端部の位置バラツキ、第1のヘッダ部材211のプレス加工時の形状バラツキ等を考慮して決定する必要がある。
【0039】
一方、挿入量Mを大きくすると伝熱管20aの端部から第2のヘッダ部材212の内壁との隙間距離Nが小さくなる。
図12は、隙間距離Nをパラメータとして、熱媒体が熱交換ユニット200aの伝熱管20aの端部から、熱交換ユニット200bの伝熱管20aの端部まで流れる際に生じる圧力損失Δpとの関係を示している。隙間距離Nを大きくすることで圧力損失Δpは小さくなり、隙間距離Nを伝熱管20aの扁平部厚さT以上にすることで飽和に近づくことがわかる。したがって、隙間距離N>伝熱管20aの扁平部厚さTとすることが好ましい。また、張出し部211aの内壁と張出し部212aの内壁との距離である内壁間距離Lは、伝熱管20aの扁平部厚さTに、伝熱管20aの端部をロウで塞がない挿入量Mを加えた値以上とすることが好ましい。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態に係る熱交換器20は、第1のヘッダ部材211の平面状の第1接合部211cと、第2のヘッダ部材212の第2接合部212cとを接合して熱媒体の流路を構成する。このため、連結ヘッダ21のロウ付け品質を向上させることができる。また、張出し部211a、212aを囲む平面状の第1接合部211cと、平面状の第2接合部212cとをロウ付けにより接合するため、閉塞された熱媒体の流路を容易に形成することができる。
【0041】
本実施の形態では、第1のヘッダ部材211に張出し部211aを形成するとともに、第2のヘッダ部材212に張出し部212aを形成して、熱媒体の流路とすることとしたが、これに限られない。例えば、第1のヘッダ部材211または第2のヘッダ部材212のいずれか一方のみに張出し部211a、212aを形成して熱媒体の流路としてもよい。
【0042】
また、本実施の形態では、第1のヘッダ部材211、第2のヘッダ部材212の材質は、3種類の材料を積層したブレージングシート22であることとしたが、これに限られない。例えば、ロウ材22aと基材22bの2種類の材料を積層したブレージングシートを用いてもよい。この場合、基材22bの厚さを、腐食が進展しても耐圧性能を満足できる厚みとすることが好ましい。
【0043】
(実施の形態2)
続いて、本発明の実施の形態2に係る熱交換器20について説明する。上記実施の形態1では、張出し部211a、212aは、プレス加工によって滑らかに形成されることとしていたが、プレス加工による強度低下を抑制するためには、張出し部211a、212aの肉厚を厚くすることが望ましい。以下、張出し部211a、212aの肉厚を厚くする手法の例について説明する。
【0044】
本実施の形態に係る熱交換器20では、
図13に示すように、張出し部211d、212dが、連続する階段状である点で、実施の形態1と異なる。その他の構成は実施の形態1と同様であるので、同じ符号を付す。
【0045】
連結ヘッダ21は、
図13、
図14に示すように、第1のヘッダ部材211と第2のヘッダ部材212を備える。第1のヘッダ部材211は、平板状の部材であり、半円筒形状の張出し部211dを備える。詳細には、張出し部211dの内面及び外面は、プレス加工によって連続する階段状に形成されている。張出し部211dは、熱交換ユニット200a、200bの各伝熱管20aに対応する位置に形成されている。また、張出し部211dは、
図15の分解図に示すように、それぞれの伝熱管20aに対応する位置に挿通孔211eを備える。また、張出し部211dの周囲は、平面状の第1接合部211fである。
【0046】
第2のヘッダ部材212は、平板状の部材であり、半円筒形状の張出し部212dを備える。詳細には、張出し部212dの内面及び外面は、第1のヘッダ部材211の張出し部211dと同様に、プレス加工によって連続する階段状に形成されている。張出し部212dは、張出し部211dに対向する位置に形成されている。また、張出し部212dの周囲は、平面状の第2接合部212fである。
【0047】
第1のヘッダ部材211及び第2のヘッダ部材212の材質は、
図10に示すように、ロウ材22aであるロウ層と、基材22bと、防食材22cである防食層とを積層したブレージングシート22である。具体的には、実施の形態1と同様、ロウ材22aはAl−Si合金であり、基材22bはアルミニウム合金であり、防食材22cはAl−Zn合金である。
【0048】
第1のヘッダ部材211と第2のヘッダ部材212のプレス加工の際の材料の向きは、第1のヘッダ部材211と第2のヘッダ部材212とを接合して連結ヘッダ21とした際に、接合面に位置するロウ材22a同士が接触し、防食材22cが外側、すなわち張出し部211d、212dが突出する側である。これにより、第1接合部211fと第2接合部212fとのロウ付け性を確保するとともに、防食材22cにより防食性に優れた連結ヘッダ21を得ることができる。
【0049】
ここで、
図16に、実施の形態1の板厚QAのブレージングシート22を半円筒状にプレス加工した際の断面図を示す。板金をプレス加工して形状を変化させると、材料の体積は加工前後で変化しないため、張出し部211aの周囲の板厚QBは薄くなる。すなわち、強度の高い部位と低い部位が生じる。したがって、耐圧強度を満足させるためには、第1のヘッダ部材211及び第2のヘッダ部材212の板厚を、QA−QBで表される板厚変化を見込んだ板厚とする必要がある。
【0050】
本実施の形態に係る第1のヘッダ部材211及び第2のヘッダ部材212は、張出し部211d、212dの内面及び外面を、連続する階段状としている。したがって、
図13にQBで示すように、プレス加工後の材料厚さは局部的に薄くなる。その後、ロウ付けの際、階段部の周囲のロウ材22aが表面張力によって、階段状の角部に凝集する。これにより、
図17に示すように、ロウ付け後の最小板厚は、ロウ材22aの厚さを含むQCとなる。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態に係る熱交換器20は、第1のヘッダ部材211、第2のヘッダ部材212の材質を、ロウ材を積層したブレージングシートとするとともに、張出し部211d、212dの内面及び外面を連続する階段状としている。これにより、階段状の角部にロウ材が凝集するので、張出し部211d、212dの強度低下を抑制することができる。したがって、第1のヘッダ部材211及び第2のヘッダ部材212の板厚を厚くすることなく、耐圧強度を満足させることができるので、軽量かつ安価な連結ヘッダ21とすることができる。
【0052】
本実施の形態では、第1のヘッダ部材211、第2のヘッダ部材212の材質を、3種類の材料を積層したブレージングシート22であることとしたが、これに限られない。例えば、基材22bの両面にロウ材22aを積層したブレージングシートを用いてもよい。これにより、
図18に示すように、第1のヘッダ部材211及び第2のヘッダ部材212の内面と外面の両方の階段状の角部にロウ材が凝集する。したがって、より耐圧強度の高い連結ヘッダ21を得ることができる。
【0053】
上述の各実施の形態に係る張出し部211a、212aは、半円筒形状であることとしたが、これに限られない。張出し部211a、212aは、伝熱管20aを連通させて、熱媒体の流路を構成できればよく、例えば、
図19に示すように、半角筒形状であってもよい。
【0054】
また、上述の各実施の形態に係る張出し部211a、212aは、第1のヘッダ部材211、第2のヘッダ部材212に、プレス加工によって一体的に形成されることとしたが、これに限られない。例えば、
図20に示すように、第2のヘッダ部材212に形成された貫通孔212gと、貫通孔212gを覆う蓋部材23によって張出し部212aを構成してもよい。この場合、蓋部材23は、予め第2のヘッダ部材212に固定された状態で、第1のヘッダ部材211と第2のヘッダ部材212とをロウ付け接合すればよい。