特許第6983695号(P6983695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983695
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】排水処理方法および排水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/02 20060101AFI20211206BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20211206BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   C02F1/02 B
   C02F1/28 F
   C02F1/28 A
   B01J20/20 B
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-40161(P2018-40161)
(22)【出願日】2018年3月6日
(65)【公開番号】特開2019-150806(P2019-150806A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2020年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】工藤 宏史
(72)【発明者】
【氏名】蒲谷 淳
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/076745(WO,A1)
【文献】 特開2014−138923(JP,A)
【文献】 特開昭49−118894(JP,A)
【文献】 特開昭51−098380(JP,A)
【文献】 特開2003−094090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00−1/28
B01J 20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水を加熱することによって、該排水に含まれる抗生物質を分解する加熱工程と、
前記排水を吸着剤と接触させることによって、前記抗生物質、および、該抗生物質の分解物の少なくとも一方を前記吸着剤に吸着させる吸着工程と、を含み、
前記吸着工程は、前記加熱工程の前、および、後の少なくとも一方において実行され、
前記吸着剤は、畜糞の炭化物であることを特徴とする、排水処理方法。
【請求項2】
前記加熱工程では、38℃以上80℃以下の温度にて前記排水を加熱することを特徴とする、請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記排水は、畜産排水であることを特徴とする、請求項1または2に記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記加熱工程では、畜糞を処理するときに発生する排熱を、前記排水を加熱するための熱源の、少なくとも一部として利用することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の排水処理方法。
【請求項5】
排水を収容し、かつ、該排水を加熱することによって、該排水に含まれる抗生物質を分解する加熱工程を行う加熱槽と、
前記排水を吸着剤と接触させることによって、前記抗生物質、および、該抗生物質の分解物の少なくとも一方を前記吸着剤に吸着させる吸着工程を行う吸着塔と、を含み、
前記吸着工程は、前記加熱工程の前、および、後の少なくとも一方において実行され、
前記吸着剤は、畜糞の炭化物であることを特徴とする、排水処理システム。
【請求項6】
前記加熱槽は、畜糞を処理するときに発生する排熱を、前記排水の加熱の熱源の少なくとも一部として利用するものである、請求項に記載の排水処理システム。
【請求項7】
前記排水は、畜産排水であることを特徴とする、請求項5または6に記載の排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水の処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な産業において多量の抗生物質が使用されている。例えば、畜産業では、感染防止のために家畜に抗生物質を投与することは一般的である。抗生物質を投与された家畜から排出される糞尿には抗生物質が残留しており、したがって排水(例えば、畜産排水)にも抗生物質が残留している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−940909号公報
【特許文献2】特開2014−138923号公報
【特許文献3】特開2009−183906号公報
【特許文献4】特開2017−023918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗生物質を含む排水をそのまま河川に放流すると、放流箇所またはその下流で、該抗生物質に対して耐性を持った菌(薬剤耐性菌)が発生する可能性がある。河川で薬剤耐性菌が発生した場合、河川の水から土壌等にも薬剤耐性菌が拡散する。土壌等の環境中に拡散した薬剤耐性菌は、水や土壌を介して人および動物に感染する可能性がある。薬剤耐性菌には既存の抗生物質が効きにくい、または全く効かないため、人および動物が薬剤耐性菌に感染すると、治療が非常に困難となる。このように、抗生物質を含む排水をそのまま河川に放流すると、結果的に人および動物の健康上のリスクを増加させることになり得る。
【0005】
抗生物質を除去する方法は、従来から種々存在している。例えば、抗生物質を分離可能な、PES膜、セラミック膜フィルタ、および合成吸着剤が製品化されている。また、特許文献2には、吸着剤に抗生物質を吸着させる方法が開示されている。また、特許文献3には、磁気分離によって排液中の抗生物質を除去する方法が開示されている。また、特許文献4には、排水に凝集剤を添加することによって抗生物質を除去する方法が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献1には、豚尿中の抗生物質を、シャワーリングと曝気とにより活性化させた微生物によって分解および無害化する技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、多種多様な抗生物質のうち、微生物が分解可能な範囲内でしか分解できない。また、上述した抗生物質を除去するための製品、および特許文献2に記載の技術は、排水(例えば、畜産排水)を処理するために開発されたものではない。つまり、現状の排水処理においては、排水中の残留抗生物質を、河川に放流して問題が無い程度まで除去するためのプロセスは未だ確立されていない。
【0008】
本発明の一態様は、前記問題点に鑑みたものであり、その目的は、排水から抗生物質を除去することが可能な排水処理方法等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る排水処理方法は、排水を加熱することによって、該排水に含まれる抗生物質を分解する加熱工程を含むことを特徴とする。
【0010】
前記の方法によれば、排水(例えば、畜舎から発生する畜糞および/または畜尿に由来する排水)に残留する抗生物質を分解してから、当該排水を放流することができる。すなわち、排水から抗生物質を除去することができる。
【0011】
前記排水処理方法の前記加熱工程では、38℃以上80℃以下の温度にて前記排水を加熱してもよい。
【0012】
排水には、抗生物質以外にも種々の有機物が含まれているため、環境下に排水する前に微生物を用いて排水中の有機物を分解することが好ましい。前記の方法によれば、微生物への悪影響を極力抑えた加熱温度で、排水中の抗生物質を分解することができる。また、比較的低温にて加熱するので、簡便な施設にて、かつ、加熱時の燃料コストを下げて安価に、排水中の抗生物質を分解することができる。
【0013】
前記排水処理方法は、前記排水を吸着剤と接触させることによって、前記抗生物質、および、該抗生物質の分解物の少なくとも一方を前記吸着剤に吸着させる吸着工程を含み、前記吸着工程は、前記加熱工程の前、および、後の少なくとも一方において実行されてもよい。
【0014】
前記の方法によれば、抗生物質または抗生物質の分解物を排水から除去することができる。吸着工程は特に、熱で分解し難い抗生物質の除去に有効である。この吸着工程と、加熱工程とを組み合わせることによって、排水から抗生物質をより確実に除去することができる。
【0015】
前記排水処理方法では、前記排水は、畜産排水であってもよい。
【0016】
前記の方法によれば、本排水処理方法にて処理し得る様々な排水の中でも、特に、畜産排水を処理することができる。
【0017】
前記排水処理方法において、前記吸着剤は、畜糞の炭化物であってもよい。
【0018】
前記の方法によれば、活性炭等を吸着剤とした場合に比べて、吸着剤の調達コストを削減することができる。また、排水(例えば、畜産排水)、および、畜糞は、同じ施設で並行して処理されることが多い。したがって、抗生物質を吸着可能な畜糞炭化物の作製、および、抗生物質を吸着した畜糞炭化物の再生からなるサイクルを、効率よく循環させることができる。さらに、吸着剤の在庫確保が容易という利点もある。
【0019】
前記排水処理方法において、前記加熱工程では、畜糞を処理するときに発生する排熱を、前記排水を加熱するための熱源の、少なくとも一部として利用してもよい。
【0020】
畜糞は所定の処理を施されることで、堆肥として、または肥料用もしくは吸着剤用の畜糞炭化物として加工され得る。前記の方法によれば、畜糞を処理するときに発生する排熱を、排水の加熱処理に用いることによって、加熱工程における燃料、ならびに加熱設備の準備および運転コストを削減することができる。
【0021】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る排水処理システムは、排水を収容し、かつ、該排水を加熱することによって、該排水に含まれる抗生物質を分解する加熱槽を含むことを特徴とする。
【0022】
前記の排水処理システムによれば、排水(例えば、畜舎から発生する畜糞および/または畜尿に由来する排水、ならびに、畜糞および/または畜尿の洗浄に用いた水)に残留する抗生物質を加熱槽内にて熱分解してから、当該排水を放流することができる。すなわち、排水から抗生物質を除去することができる。
【0023】
前記排水処理システムは、前記排水を吸着剤と接触させることによって、前記抗生物質、および、該抗生物質の分解物の少なくとも一方を前記吸着剤に吸着させる吸着塔を含んでいてもよい。
【0024】
前記の排水処理システムによれば、吸着塔内にて、抗生物質または抗生物質の分解物を排水から除去することができる。吸着塔は特に、熱で分解し難い抗生物質の除去に有効である。この吸着塔と、加熱槽とを組み合わせることによって、排水から抗生物質をより確実に除去することができる。
【0025】
前記排水処理システムにおいて、前記加熱槽は、畜糞を処理するときに発生する排熱を、前記排水の加熱の熱源の少なくとも一部として利用するものであってもよい。
【0026】
前記の排水処理システムによれば、畜糞は所定の処理を施されることで、堆肥として、または肥料用もしくは吸着剤用の畜糞炭化物として加工され得る。前記の排水処理システムによれば、畜糞を処理するときに発生する排熱を、排水の加熱処理に用いることによって、加熱槽における燃料、ならびに加熱設備の準備および運転コストを削減することができる。
【0027】
前記排水処理システムでは、前記排水は、畜産排水であってもよい。
【0028】
前記の方法によれば、本排水処理システムにて処理し得る様々な排水の中でも、特に、畜産排水を処理することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様によれば、排水から抗生物質を除去することができる。より具体的には、本発明の一態様によれば、環境(例えば、河川等)に放出したとしても環境を汚染することの無いように排水を処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態1に係る排水処理システムの典型的な一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態2に係る排水処理システムの典型的な一例を示す図である。
図3】熱分解による、溶液中の抗生物質濃度の経時変化を示す図である。
図4】鶏糞炭化物の、比表面積の測定結果を示すグラフである。
図5】鶏糞炭化物のMB吸着性能試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る排水処理方法は、任意の排水を、河川等に排水可能な状態に処理する方法である。本発明に係る排水処理方法は、例えば、畜産排水に含まれている抗生物質を除去するための方法である。本発明に係る排水処理方法は、あらゆる排水を処理することが可能であって、当該排水の種類は、特に限定されない。当該排水としては、例えば、畜糞および畜尿の液体成分(畜産排水)、工場排水、および、家庭排水を挙げることができる。
以下、本発明の一実施形態に係る排水処理システムについて、畜産排水を一例に挙げて説明する。
【0032】
〔実施形態1〕
図1は、本実施形態に係る排水処理システム100の典型的な一例を示す図である。排水処理システム100は、少なくとも加熱工程(後述)を実行する装置を含む。図示の例では、排水処理システム100は、固液分離部10と、固形物処理部20と、分解処理部30と、膜分離槽40と、消毒槽50とを含んでいる。
【0033】
排水の原液(例えば、牧場等から排出される畜糞および畜尿)は、それぞれ所定の方法で、水分と固体とに分離される。なお、排水処理システム100は、固形物処理部20をも含み得るので、分離された固体を処理することも可能である。排水処理システム100は、このうち、排水の原液(例えば、畜糞および畜尿)から分離された水分(分離水)を、排水(例えば、畜産排水)として処理する。排水には微小固体が含まれているため、排水処理システム100では、まずこの微小固体を取り除く処理を行う。
【0034】
(固液分離部10)
固液分離部10は、排水を、固体と液体とに分離するための装置群である。固液分離部10は、原水槽1と、固液分離機2と、第1流量調整槽3と、第2流量調整槽4と、汚泥貯留槽5と、汚泥脱水機6とを含む。なお、固液分離部10に含まれる各装置は、それぞれ同一施設内に設けられていてもよいし、離れた場所に設けられていてもよい。後述する分解処理部30に含まれる各装置についても同様である。
【0035】
原水槽1は、排水を貯留するための槽である。原水槽1は排水を貯留できる槽であればよく、その形状、および、容積などは、特に限定されない。原水槽1に貯留された排水は、適宜固液分離機2に送られる。
【0036】
固液分離機2は、排水を、固体と液体とに分離する装置である。固液分離機2の具体的な構成は、特に限定されず、例えば、遠心分離機、または、フィルタなどであり得る。固液分離機2の処理後に生じる、固体(汚泥)は固形物処理部20に、液体は第1流量調整槽3に送られる。
【0037】
第1流量調整槽3は、第2流量調整槽4への液体の流入量を調整する槽である。第1流量調整槽3は、固液分離機2から流入する液体を処理(例えば、液体中に残存している固体(汚泥)の回収)し、処理後の液体(処理水)を、流量を調節しながら、適宜第2流量調整槽4に送る。また、第1流量調整槽3は、前記処理後に残った固体(汚泥)を汚泥貯留槽5に送る。第1流量調整槽3は、第2流量調整槽4への液体の流入量を調整できる槽であればよく、その形状、および、容積などは、特に限定されない。また、第1流量調整槽3は、第2流量調整槽4への液体の流入量を調整するためのバルブを備えていてもよい。
【0038】
汚泥貯留槽5は、汚泥を貯留する槽である。汚泥貯留槽5は、汚泥を貯留できる槽であればよく、その形状、および、容積などは、特に限定されない。汚泥貯留槽5は、汚泥を、適宜汚泥脱水機6に送る。汚泥脱水機6は、汚泥を脱水する装置である。脱水により分離された固体は、固形物処理部20へ送られる。一方、脱水により分離された液体は、第2流量調整槽4に送られる。汚泥脱水機6の具体的な構成は、特に限定されず、例えば、遠心分離機、または、フィルタなどであり得る。
【0039】
第2流量調整槽4は、分解処理部30の第1曝気槽31への液体の流量を調節する槽である。第2流量調整槽4は、第1流量調整槽3から流入する液体と、汚泥脱水機6から流入する液体とを貯留する。第2流量調整槽4は、貯留している液体を、流量を調節しながら分解処理部30の第1曝気槽31に送る。第2流量調整槽4は、第1曝気槽31への液体の流入量を調整できる槽であればよく、その形状、および、容積などは、特に限定されない。また、第2流量調整槽4は、第1曝気槽31への液体の流入量を調整するためのバルブを備えていてもよい。
【0040】
(固形物処理部20)
固形物処理部20は、固液分離機2および汚泥脱水機6から送られた汚泥を処理する装置、または装置群である。なお、固形物処理部20は、汚泥だけでなく、畜糞自体(例えば、排水を除去した後の畜糞自体)も処理してよい。固形物処理部20の例としては、畜糞炭化物の生産施設、畜糞の堆肥化施設、および、畜糞、汚泥または畜糞炭化物(例えば、抗生物質などを吸着済みの畜糞炭化物)などの焼却施設等がある。以降、分離水から生じた汚泥も、畜糞の一部であるものとして扱う。すなわち、以降の説明では、「畜糞」とは、畜糞および汚泥を示す。
【0041】
畜糞炭化物の生産施設は、畜糞および汚泥を所定の温度で加熱することで炭化させて畜糞炭化物を生産するための施設である。畜糞炭化物は、有機肥料または吸着剤として利用することができる。畜糞炭化物の生産施設では、畜糞および汚泥を所定の温度で加熱するときに排熱が生じ、当該排熱を、後述する加熱槽33に利用することができる。
【0042】
堆肥化施設は、畜糞を好気発酵させることで堆肥(有機肥料)に変換するための施設である。堆肥化施設では、好気発酵するときに発酵熱が生じ、当該発酵熱を、後述する加熱槽33に利用することができる。
【0043】
焼却施設は、畜糞(例えば、鶏糞等の家畜の糞)、汚泥または畜糞炭化物(例えば、抗生物質などを吸着済みの畜糞炭化物)を焼却処理し、これらを焼却灰(有機肥料)に変換するための施設である。焼却施設では、焼却熱が発生し、当該焼却熱を後述する加熱槽33に利用することができる。
【0044】
なお、畜糞炭化物の生産施設にて発生する排熱、堆肥化施設にて発生する発酵熱、および、焼却施設にて発生する焼却熱を用いて蒸気を発生させ、当該蒸気によってタービンを回転させ、これによって電気エネルギーを取り出すことも可能である。つまり、排水処理システム100は、排熱、発酵熱または焼却熱を用いて蒸気を発生させる蒸気発生部と、タービンと、を備えている、自家発電部(図示せず)を含んでいてもよい。当該構成であれば、排水処理システム100の運転に必要な電気エネルギーを、自家発電することができる。
【0045】
このように、畜糞、汚泥および畜糞炭化物は、固形物処理部20を経ることで有用な物質、および、電気エネルギーに変換されて処理が完了する。
【0046】
(分解処理部30)
一方、排水の水分は、固液分離部10を経て分解処理部30へと送られ、処理が続けられる。分解処理部30は、第2流量調整槽4から流入される液体(すなわち、排水から固体成分を除去した液体)に含まれる有機物および抗生物質を分解処理するための装置群である。分解処理部30は、少なくとも、加熱槽33(後述)において抗生物質の分解処理を実行する。
【0047】
ここで、排水処理システム100において分解対象となる抗生物質は、熱分解が可能なあらゆる抗生物質であってよい。
【0048】
本実施形態では、分解処理部30は、活性汚泥法による有機物の分解処理と、抗生物質の分解処理とを実行する場合について説明する。活性汚泥法とは、排水を曝気槽で曝気(および加熱)することによって、該排水に含まれる有機物を、好気性の微生物に分解させる方法である。
【0049】
分解処理部30は、第1曝気槽31と、第2曝気槽32と、加熱槽33とを含む。なお、図示の例では曝気槽は2つであるが、排水処理システム100の曝気槽は1つでもよいし、3つ以上であってもよい。また、有機物の分解を行わない場合には、曝気槽を設けなくてもよい。
【0050】
第1曝気槽31および第2曝気槽32は、固液分離部10から流入する排水を、好気性微生物の分解作用によって分解するための槽である。第1曝気槽31および第2曝気槽32には、それぞれ種類の異なる好気性微生物が排水に投入される。好気性微生物の投入後、第1曝気槽31および第2曝気槽32は、所定の日数の間、曝気される。
【0051】
なお、分解処理部30は、抗生物質以外の有機物の分解処理について、活性汚泥法以外の方法を採用してもよい。例えば、分解処理部30は、好気性処理(硝化)、嫌気性処理(脱窒)、およびメタン発酵(嫌気性処理)の1つ以上と、抗生物質の分解処理とを組み合わせて実行してもよい。つまり、分解処理部30は、第1曝気槽31および第2曝気槽32の代わりに、図示しない、好気性処理槽、嫌気性処理槽、または、メタン発酵槽をふくんでいてもよい。勿論、分解処理部30は、好気性処理槽、嫌気性処理槽、または、メタン発酵槽と、曝気槽とを、兼ね備えていてもよい。
【0052】
加熱槽33は、排水を収容して加熱することによって、該排水に含まれる抗生物質を分解する加熱工程を実行するための槽である。熱分解により発生する抗生物質の分解物(以降、単に「分解物」と称する)は、第1曝気槽31および第2曝気槽32において投与された微生物によってさらに分解されてもよい。
【0053】
つまり、分解処理部30は、加熱槽33と、第1曝気槽31および第2曝気槽32の少なくとも一方とを繋ぐパイプを含んでいてもよい。そして、該パイプを通じて、加熱後(必要であれば、加熱後冷却した)排水を、加熱槽33から第1曝気槽31および第2曝気槽32の少なくとも一方に返送してもよい。もしくは、排水処理システム100において、加熱槽33の下流に、第1曝気槽31および第2曝気槽32の少なくとも一方が設けられてもよい。
【0054】
加熱槽33に貯留された排水は、加熱槽33の内部または外部に設けられた熱源によって、所定の温度まで加熱される。
【0055】
加熱槽33を加熱する具体的方法は特に限定されない。例えば、加熱槽33に収容された排水を撹拌しながら加熱槽33を直接加熱してもよい。また例えば、熱源からの熱を含んだ熱伝導体(空気、油、または水等)が通過する金属パイプを、加熱槽33の表面に接触させるか、内部に引き込むようにしてもよい。これにより、熱伝導体の持つ熱を、金属パイプを介して排水に伝えることができる。
【0056】
加熱槽33が実行する加熱工程では、畜糞を処理するときに発生する排熱を、排水を加熱するための熱源の、少なくとも一部として利用してもよい。
【0057】
例えば、固形物処理部20において畜糞を堆肥化させる場合、堆肥化の過程で発生する発酵熱を、加熱工程において排水を加熱するための熱源としてもよい。また、固形物処理部20において畜糞を焼却する場合、該焼却により発生する焼却熱を、排水を加熱するための熱源としてもよい。また、固形物処理部20において畜糞炭化物を生産する場合、畜糞を加熱した際の排熱を、排水を加熱するための熱源としてもよい。
【0058】
さらには、加熱工程における熱源として、畜糞を処理するときに発生するこれらの排熱の少なくとも1種類と、排水を加熱するための専用の施設(ボイラー等)で発生させる熱とを組み合わせて利用してもよい。
【0059】
また、加熱槽33が実行する加熱工程では、廃棄物焼却炉、汚泥焼却炉、発電所等のプラントまたは産業装置からの、排熱および余熱を、排水を加熱するための熱源の少なくとも一部として利用してもよい。また、加熱槽33が実行する加熱工程では、外部燃料(例えば、化石燃料)から直接得られる熱を、排水を加熱するための熱源の少なくとも一部として利用してもよい。つまり、加熱槽33が実行する加熱工程では、排熱および余熱を利用せず、専用の施設にて燃料から熱を得、当該熱を排水を加熱するための熱源の少なくとも一部として利用してもよい。
【0060】
(加熱工程での加熱温度)
加熱槽33の加熱工程における排水の温度(加熱温度)は、貯留される排水の量、分解対象の抗生物質の種類、排水中に残存することが許される抗生物質の濃度(目標水質濃度)、等に応じて、適宜定められてよい。
【0061】
例えば、加熱槽33は、所定の加熱期間の間、排水の温度が、少なくとも35℃以上で安定するように加熱することが望ましい。換言すると、加熱槽33での加熱温度は、35℃以上であることが望ましい。
【0062】
微生物の生育環境の観点から考えて、第1曝気槽31および第2曝気槽32における排水の温度は、最高でも35℃程度であり、かつ該最高温度が安定して保たれるわけではない。したがって、たとえ第1曝気槽31および第2曝気槽32での排水の温度が、抗生物質を熱分解可能な温度を超えたとしても、それは安定せず、第1曝気槽31および第2曝気槽32のみによって排水中の抗生物質の濃度を、河川に放流しても問題のない程度まで低下させることは困難である。
【0063】
したがって、加熱工程で排水を35℃以上に加熱することにより、排水の温度を、抗生物質を熱分解可能な温度に安定して保つことができ、よって排水中の抗生物質濃度を確実に低下させることができる。
【0064】
また、加熱槽33での排水の加熱温度の最大値は特に限定されないが、例えば80℃以下であることが望ましい。一般的な排水処理施設(例えば、畜産排水処理施設)における配管およびポンプ等の設備では、80℃以上の高温に耐えられない可能性があるからである。また、排水の加熱温度が高温になるほど、排熱のみの利用での加熱が困難になったり、熱源の燃料コストの増加が生じたりする。このように、排水処理システム100の設備面から考えた加熱の限界温度が、排水の加熱温度の最大値となる場合もある。
【0065】
さらに言えば、加熱槽33では、排水の温度が38℃以上60℃以下になるよう加熱することが望ましい。当該加熱温度であれば、60℃よりも高温かつ80℃以下で加熱する場合に比べて、微生物への悪影響を極力抑えつつも、排水中の抗生物質を確実に分解することができる。また、60℃よりも高温かつ80℃以下で加熱する場合に比べて、簡便な施設にて排水中の抗生物質を分解することができる。またこの場合、加熱時の燃料コストも抑えることができる。
【0066】
さらに言えば、加熱槽33では、排水の温度が38℃以上55℃以下になるように加熱することが最も望ましい。排水における有機物の含有濃度を低下させるためには、微生物による有機物の分解を、できるだけ長期間行うことが望ましい。また、加熱槽33において抗生物質を熱分解した際に発生する有機物を、さらに微生物(第1曝気槽31および第2曝気槽32で投入された微生物)で分解することが望ましい。さらに、詳しくは後述するが、第1曝気槽31または第2曝気槽32で加熱工程を実行する場合もある。
【0067】
したがって、排水の加熱温度が高すぎると、微生物の活性が低下してしまう虞がある。これに対し、加熱温度を38℃以上55℃以下とすることで、微生物への悪影響を極力抑えた加熱温度で、排水中の抗生物質を分解することができる。したがって、微生物による有機物の分解と、加熱による抗生物質の分解とを両立させることができる。また、最高でも55℃と比較的低温で排水を加熱することになるため、簡便な施設にて、かつ、加熱時の燃料コストを下げて安価に、排水中の抗生物質を分解することができる。
【0068】
なお、第1曝気槽31および第2曝気槽32の少なくとも一方で投入する微生物に対して、予め馴養処理(微生物をある環境へと適応させる処理)を行っておいてもよい。これにより、熱耐性を持った微生物を生育できる可能性がある。そして、第1曝気槽31および第2曝気槽32の少なくとも一方で投入する微生物を、上記熱耐性を持った微生物にすることで、排水を加熱する際のデメリットである、微生物の活性低下を抑えることができる。
【0069】
なお、分解処理部30において、活性汚泥法ではなく、脱窒等の嫌気性処理を採用する場合、加熱槽33では、排水の温度が40℃以上になるように加熱することが望ましい。分解処理部30において、脱窒等の嫌気性処理を採用する場合、嫌気性処理槽は、一般的に、微生物活性が最大になる37℃程度で運転され、40℃を超えることは通常考えにくい。したがって、加熱槽33において排水の温度を40℃以上にすることで、嫌気性処理槽における排水の温度では分解できない抗生物質を熱分解することができる。
【0070】
また、分解処理部30において、活性汚泥法ではなくメタン発酵を採用する場合、メタン発酵が中温発酵法の場合、加熱槽33では排水が37℃以上80℃以下の温度になるように加熱することが望ましい。また、メタン発酵が高温発酵法の場合、加熱槽33では、排水が55℃以上80℃以下の温度になるように加熱することが望ましい。
【0071】
加熱槽33での排水の温度が80℃以下であることが望ましい理由は、活性汚泥法の場合と同様である。メタン発酵が中温発酵法の場合、メタン発酵槽は一般的に37℃程度で運転される。また、メタン発酵が高温発酵法の場合、メタン発酵槽は55℃程度で運転される。したがって、加熱槽33において排水の温度を37℃以上(中温発酵法の場合)または55℃以上(高温発酵法の場合)に保つことによって、メタン発酵槽における排水の温度では分解できない抗生物質を熱分解することができる。
【0072】
(加熱工程での加熱期間)
加熱槽33での加熱期間は、貯留される排水の量、分解対象の抗生物質の種類、目標水質濃度等に応じて、適宜定められてよい。例えば、加熱槽33での加熱期間は、1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上、5時間以上、または、6時間以上であることが望ましい。また、排水処理システム100全体の処理が滞らない範囲で、可能な限りの期間、加熱槽33に排水を貯留させて加熱を継続してもよい。
【0073】
また、所定の加熱期間が経過しても排水の抗生物質濃度が目標水質値に到達しない場合、分解処理部30と膜分離槽40との間、または膜分離槽40と消毒槽50との間に更に加熱槽33(または、分解処理部30)を設け、加熱を行っても良い。また、排水処理施設(例えば、畜産排水処理施設)を実際に稼働させる場合、各槽での排水の滞留時間は、各槽の設備設計において計算されている滞留時間よりも長めに確保されることが多い。このように、各槽における滞留時間を調整可能な場合、加熱槽33における排水の滞留時間を通常よりも長く設け、目標水質値に到達するまで加熱を続けてもよい。
【0074】
通常、畜産業では、家畜には複数種類の抗生物質が投与される。したがって、排水の中でも特に畜産排水には、複数種類の抗生物質が残留しているのが一般的である。ゆえに、上述した加熱温度および加熱期間は、加熱槽33に貯留された排水の、最も熱分解されにくい抗生物質の濃度が、該抗生物質についての目標水質濃度以下になるように設定されることが望ましい。
【0075】
(膜分離槽40)
膜分離槽40は、分解処理部30から流入する排水を、さらに固体と液体とに膜分離するための槽である。膜分離槽40の内部には膜フィルタが設けられ、排水は該フィルタを通過することで、固体と液体とに分離される。分離後の液体は消毒槽50に送られ、固体は汚泥貯留槽5に戻される。
【0076】
(消毒槽50)
消毒槽50は、膜分離槽40から流入した排水に消毒処理を施すための槽である。消毒槽50では、ある程度排水が貯留された後、消毒剤が投与される。この消毒剤は、第1曝気槽31および第2曝気槽32で投与された微生物、ならびに元から排水に含まれていた大腸菌等を殺菌するための薬剤である。消毒槽50で消毒された排水は、河川等に放流可能な水質を満たしているか検査された後、河川等に放流される。
【0077】
(変形例)
なお、排水処理システム100は、加熱槽33を図1に示した位置以外の位置に設けてもよい。例えば、排水処理システム100は、加熱槽33を第2流量調整槽4と第1曝気槽31との間に設けてもよい。この場合、加熱槽33において加熱処理した排水を、後続の第1曝気槽31での微生物活性が損なわれない程度の温度まで冷却してから第1曝気槽31に送る。これにより、加熱槽33において、微生物の活性低下を懸念することなく、加熱温度を設定できる。さらに、抗生物質の分解物を、第1曝気槽31および第2曝気槽32においてさらに分解することができるため、分解処理部30から排出される排水の水質をより向上させることができる。
【0078】
また例えば、排水処理システム100では、加熱槽33を膜分離槽40と消毒槽50との間に設けてもよい。この場合も、微生物の活性低下を懸念することなく、加熱温度を設定できる。また、膜分離槽40で排水から汚泥をさらに分離しているため、汚泥に付着している抗生物質を物理的に除去した上で、残留抗生物質の熱分解を行うことができる。
【0079】
また例えば、排水処理システム100は、加熱槽33を第1曝気槽31と第2曝気槽32との間に設けてもよい。この場合、第2曝気槽32では、分解物を、さらに無害な有機物または無機物に分解することが可能な微生物を投与することが望ましい。これにより、抗生物質を熱分解と、微生物による分解との2段階で分解することができるため、分解処理部30から排出される排水の水質をより向上させることができる。
【0080】
また、加熱工程は、第1曝気槽31または第2曝気槽32(または、好気性処理槽、嫌気性処理槽、若しくは、メタン発酵槽)にて実行されてもよい。換言すると、第1曝気槽31または第2曝気槽32(または、好気性処理槽、嫌気性処理槽、若しくは、メタン発酵槽)は、加熱槽33の機能を兼ねていてもよい。また、排水処理システム100は、加熱槽33で加熱工程を実行せず(または加熱槽33を備えずに)、他の装置で加熱工程を実行してもよい。例えば、第1流量調整槽3、第2流量調整槽4、および膜分離槽40等で加熱工程を実行してもよい。
【0081】
また、排水処理システム100は、加熱槽33で加熱工程を実行するとともに、第1流量調整槽3、第2流量調整槽4、第1曝気槽31、第2曝気槽32(または、好気性処理槽、嫌気性処理槽、若しくは、メタン発酵槽)、および膜分離槽40等で加熱工程を実行してもよい。
【0082】
以上説明した排水処理システム100によれば、排水に残留する抗生物質を熱分解してから、当該排水を河川等に放流することができる。したがって、排水の放流先の河川等における、抗生物質耐性菌の発生を防止することができる。
【0083】
〔実施形態2〕
本発明に係る排水処理システムは、排水を吸着剤と接触させることによって、前記抗生物質および該抗生物質の分解物の少なくとも一方を前記吸着剤に吸着させる吸着工程を含んでいてもよい。そして、該吸着工程は、加熱工程の前、および、後の少なくとも一方において実行されてもよい。以下、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0084】
図2は、実施形態2に係る排水処理システム200の典型的な一例を示す図である。排水処理システム200は、吸着塔60を含む点で、実施形態1に係る排水処理システム100と異なる。
【0085】
(吸着塔60)
吸着塔60は、排水を吸着剤と接触させることによって、抗生物質および該抗生物質の分解物の少なくとも一方を前記吸着剤に吸着させる工程(吸着工程)を実行するための槽である。なお、吸着工程は、加熱工程の前および後の少なくとも一方において実行されればよい。ゆえに、吸着塔60は、加熱槽33の前および後の少なくとも1箇所に設置されればよい。本実施形態では、図2に示す通り、消毒槽50の後に吸着塔60を設けた場合について説明する。
【0086】
吸着塔60における吸着工程の具体的手法は、特に限定されない。例えば、吸着塔60の内部に、吸着剤を充填したカラムを配置し、該カラム内に排水を通水させることで、吸着剤に抗生物質および該抗生物質の分解物の少なくとも一方を吸着させてもよい。または、吸着塔60内に、膜状の吸着剤を配置し、その膜を通るように排水を通水させてもよい。吸着剤は、その吸着性能が低下してきた場合、適宜新しい吸着剤と交換され得る。
【0087】
なお、吸着塔60は、吸着剤が充填または配置された吸着槽であってもよい。そして、該吸着槽に排水を所定の期間貯留することで、吸着剤に抗生物質および該抗生物質の分解物の少なくとも一方を吸着させてもよい。さらに言えば、所定の期間が経過した後、吸着塔60中の排水の水質検査を行った上で、吸着塔60中の排水を河川等に放流してもよい。
【0088】
また、吸着剤の材質も特に限定されない。例えば、吸着剤として、活性炭等の多孔質の材質を用いてもよい。しかしながら、排水処理システム200の吸着塔60は、吸着剤として、畜糞の炭化物を用いることが望ましい。
【0089】
畜糞炭化物を吸着剤として利用する場合、活性炭等を吸着剤として利用する場合に比べて、吸着剤の調達コストを削減することができる。また、排水(例えば、畜産排水)、および、畜糞は、同じ施設で並行して処理されることが多い。したがって、抗生物質を吸着可能な畜糞炭化物の作製、および、抗生物質を吸着した畜糞炭化物の再生からなるサイクルを、効率よく循環させることができる。さらに、吸着剤の在庫確保が容易という利点もある。
【0090】
なお、吸着塔60で吸着剤として用いる畜糞の炭化物は、固形物処理部20において生産される畜糞炭化物であってもよいし、排水処理システム200の一連の処理とは別に生産された畜糞炭化物であってもよい。
【0091】
ところで、吸着剤として用いる畜糞炭化物(以下、単に畜糞炭化物とする)を排水と接触させた際に、畜糞炭化物から排水に有機物(リンおよび窒素等)が溶出することがある。これらの有機物の溶出量が多い場合、吸着塔60での処理後の排水が、河川に放流可能な水質を満たさなくなる虞がある。
【0092】
このような有機物の溶出を抑えるため、畜糞炭化物は出来る限り高温で炭化処理され製造されたものであることが望ましい。畜糞炭化物の生産時に、高温(例えば600℃〜900℃)で炭化処理することで、畜糞炭化物中の残留有機物の量を減らし、ひいては畜糞炭化物から排水に溶出する有機物の量を抑えることができるからである。
【0093】
また、有機物の溶出を抑えるためには、洗浄処理を施した畜糞炭化物を吸着剤として用いることも有効である。畜糞炭化物を洗浄することによって、該畜糞炭化物に残留している有機物を洗浄水に溶出させておくことができる。したがって、洗浄後の畜糞炭化物を吸着剤として使用すると、未洗浄の畜糞炭化物を使用する場合よりも有機物の溶出量を減らすことができる。
【0094】
畜糞炭化物に洗浄処理を施す場合、該畜糞炭化物の炭化処理の温度は、必ずしも高温でなくてもよい。例えば、有機肥料として用いる畜糞炭化物と同様またはそれ以下の温度(例えば、450℃以上等)で炭化処理した畜糞炭化物に洗浄処理を施したものを、吸着剤として使用してもよい。
【0095】
また、畜糞炭化物は、該畜糞炭化物の生産時の炭化処理の少なくとも一部において、水蒸気で賦活処理されていることが望ましい。水蒸気での賦活処理を行うことによって、畜糞炭化物に含まれる炭素のガス化が起こり、該畜糞炭化物内に微細構造が生じる。これにより、畜糞炭化物の比表面積を増加させることができる。よって、畜糞炭化物の単位量あたりの抗生物質および分解物の吸着量を増加させることができる。つまり、畜糞炭化物の吸着性能を上昇させることができる。
【0096】
なお、畜糞炭化物の生産時に水蒸気での賦活を行う場合、畜糞炭化物の炭化処理の温度は、より高温であることが望ましい。例えば、鶏糞の場合、850℃以上の温度で炭化処理し、さらに水蒸気での賦活を行うことが望ましい。これにより、畜糞炭化物の比表面積を大幅に上昇させることができる。
【0097】
以上説明した排水処理システム200によれば、抗生物質および該抗生物質の分解物の少なくとも一方を、排水から除去することができる。吸着工程は、特に、熱で分解し難い抗生物質の除去に有効である。この吸着工程と、加熱工程とを組み合わせることによって、排水から抗生物質をより確実に除去することができる。
【0098】
〔実施形態3〕
上述の通り、排水処理システム100および200の加熱工程において熱分解する抗生物質の種類は、特に限定されない。また、排水処理システム200の吸着工程において、吸着剤に吸着させる抗生物質、および、吸着させる分解物の分解前の抗生物質の種類も、特に限定されない。
【0099】
例えば、排水処理システム100および200の加熱工程および吸着工程の少なくとも一方において、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、ペニシリン系、ペプチド系、マクロライド系、リンコマイシン系、キロノン系、ポリペプタイド系、ポリサッカライド系、ポリエーテル系、およびセフェム系等の抗生物質、ならびに抗真菌性抗生物質の分解処理または吸着が可能である。
【0100】
アミノグリコシド系の抗生物質としては、例えば、硫酸アプラマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸ジヒドロストレプトマイシン、硫酸ストレプトマイシン、および硫酸フラジオマイシン等が挙げられる。
【0101】
テトラサイクリン系の抗生物質としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムカルシウムオキシテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、硫酸オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、塩酸クロルテトラサイクリン、塩酸ドキシサイクリン、およびドキシサイクリン塩酸塩水和物等が挙げられる。
【0102】
ペニシリン系の抗生物質としては、例えば、アモキシシリン、アンピシリン、アンピシリンナトリウム、クロキサシリンナトリウム、ジクロキサシリンナトリウム、ナフシリンナトリウムモノハイドレート、ベンジルペニシリンカリウム、ベンジルペニシリンプロカイン、およびメシリナム等が挙げられる。
【0103】
ペプチド系の抗生物質としては、例えば、チオストレプトンおよび硫酸コリスチン等が挙げられる。
【0104】
マクロライド系の抗生物質としては、例えば、エリスロマイシン、チオシアン酸エリスロマイシン、エンボン酸スピラマイシン、ジョサマイシン、タイロシン、リン酸タイロシン、酒石酸タイロシン、酒石酸酢酸イソ吉草酸タイロシン、チルミコシン、リン酸チルミコシン、ミロサマイシン、およびツラスロマイシン等が挙げられる。
【0105】
リンコマイシン系の抗生物質としては、塩酸クリンダマイシン、塩酸リンコマイシン、および塩酸リンコマイシン水和物等が挙げられる。
【0106】
ポリペプタイド系の抗生物質としては、亜鉛バシトラシン、エンラマイシン、ノシヘプタイド、および硫酸コリスチン等が挙げられる。
【0107】
ポリサッカライド系の抗生物質としては、フラボフォスフォリポール等が挙げられる。
【0108】
ポリエーテル系の抗生物質としては、サリノマイシンナトリウム、センデュラマイシンナトリウム、ナラシン、モネンシンナトリウム、およびラサロシドナトリウムが挙げられる。
【0109】
セフェム系の抗生物質としては、セファレキシン、セファゾリンナトリウム、セファゾリン、セフチオフルナトリウム、セファロニウム、セフポドキシムプロキセチル、セフロキシムナトリウム、セフォベシンナトリウム、硫酸セフキノム、セファピリンナトリウムおよびセファピリンベンザチンが挙げられる。
【0110】
この他にも、例えば、クロラムフェニコール、チアムリン、フマル酸チアムリン、塩酸バルネムリン、ビコザマイシン、安息香酸ビコザマイシン、ホスホマイシンカルシウム、ホスホマイシンカルシウム水和物、ホスホマイシンナトリウム、アビラマイシン、エフトロマイシン、およびバージニアマイシン等の抗生物質も、加熱工程および吸着工程の少なくとも一方において分解処理または吸着が可能である。
【0111】
また、この他にも、排水処理システム100および200の加熱工程および吸着工程の少なくとも一方において、合成抗菌剤、駆虫剤、および抗原虫剤も広義の抗生物質として分解処理または吸着が可能である。例えば、加熱工程および吸着工程の少なくとも一方において、キロノン系、チアンフェニコール系、フラン系、フルオロキノロン系、およびサルファ剤等の合成抗菌剤を処理可能である。
【0112】
キロノン系の合成抗菌剤としては、オキソリン酸等が挙げられる。
【0113】
チアンフェニコール系の合成抗菌剤としては、チアンフェニコールおよびフロルフェニコール等が挙げられる。
【0114】
フラン系の合成抗菌剤としては、ニトロフラゾンおよびニフルスチレン酸ナトリウムが挙げられる。
【0115】
フルオロキノロン系の合成抗菌剤としては、ノルフロキサシン、エンロフロキサシン、オルビフロキサシン、オフロキサシン、マルボフロキサシン、メシル酸ダノフロキサシンおよび塩酸ロメフロキサシンが挙げられる。
【0116】
サルファ剤の合成抗菌剤としては、スルファクロルピリダジンナトリウム、スルファジアジン、スルファジミジン(スルファメサジン)、スルファジメトキシン、スルファジメトキシンナトリウム、スルファドキシン、スルファメトキサゾール、スルファメラジンナトリウム、スルファモイルダプソン、スルファモノメトキシン、スルファモノメトキシン水和物、スルファモノメトキシンナトリウム、スルフィソゾールナトリウム、およびホモスルファミン等が挙げられる。
【0117】
また、この他にも、排水処理システム100および200の加熱工程および吸着工程の少なくとも一方において、オルメトプリムおよびトリメトプリム等の合成抗菌剤も分解処理または吸着が可能である。
【0118】
また例えば、排水処理システム100の加熱工程および吸着工程の少なくとも一方において、アベルメクチン系、チアベンダゾール系、およびピペラジン系等の駆虫剤を処理可能である。
【0119】
アベルメクチン系の駆虫剤としては、イベルメクチン、エプリノメクチン、セラメクチン、ドラメクチン、ミルベマイシンオキシムおよびモキシデクチンが挙げられる。
【0120】
チアベンゾダール系の駆虫剤としては、トリクラベンダゾール、フェンベンダゾールおよびフルベンダゾールが挙げられる。
【0121】
ピペラジン系の駆虫剤としては、アジピン酸ピペラジン、クエン酸ピペラジンおよびリン酸ピペラジンが挙げられる。
【0122】
また、エモデプシド、塩酸レバミゾール、オキシクロザニド、カマラ、サントニン、ジクロロフェン、ジソフェノール、酒石酸モランテル、トリブロムサラン、パモ酸ピランテル、フェノチアジン、フェバンテル、プラジクアンテル、ブロムフェノホス、マクリ、メチリジン、メラルソミン二塩酸塩等の駆虫剤も処理可能である。
【0123】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0124】
以下の実施例では、排水の一例である畜産排水を例に挙げて説明するが、本発明は、広く排水に適用可能であって、適用範囲は、畜産排水に限定されない。
【実施例1】
【0125】
(抗生物質の熱分解確認試験)
(1:目的)
本試験では、畜産排水を加熱した場合の抗生物質の熱分解可否と、熱分解速度について試験を行った。
【0126】
(2:試料の準備)
抗生物質を溶かした純水をリン酸緩衝液で希釈して、畜産排水のモデル液を調製した。試験対象の抗生物質としては、オキシテトラサイクリン(OTC)と、ドキシサイクリン(DOXY)とを準備した。
【0127】
(3:試験条件)
OTCを含むモデル液と、DOXYを含むモデル液との2種類の溶液を作製した。溶液中のOTCの初期濃度は、5,100ng/Lに調製した。溶液中のDOXYの初期濃度は、4,100ng/Lに調製した。2種類の溶液を、120時間加熱した。2種類の溶液の加熱温度は、38℃、60℃、および80℃の3条件とした。
【0128】
(4:試験手順)
OTCを濃度が5,100ng/Lになるように溶かしたモデル液(以下、OTC溶液と称する)を作製した。DOXYを濃度が4,100ng/Lになるように溶かしたモデル液(以下、DOXY溶液と称する)を作製した。
【0129】
500mLのポリプロピレン容器を検体数の分だけ用意し、それぞれの容器にOTC溶液またはDOXY溶液を注いだ。OTC溶液およびDOXY溶液を、恒温機で120時間加熱した。なお、加熱の際にはポリプロピレン容器のふたを閉め、溶液が蒸発するのを防いだ。
【0130】
サンプリングは、下記表1の通りに実施した。すなわち、加熱開始後、0時間(0h)、1時間(1h)、6時間(6h)、24時間(24h)、48時間(48h)、および120時間(120h)が経過した時点でサンプリングを実施した。抗生物質の変性を防ぐため、採取したサンプルにEDTAを0.5g添加して、4℃の冷蔵庫で保管した。その後、各サンプルにおけるOTCまたはDOXYの濃度を測定した。
【0131】
【表1】
【0132】
(5:試験結果)
図3は、熱分解による、溶液中の抗生物質濃度の経時変化を示す図である。図3の(a)はOTCの、図3の(b)はDOXYの濃度の経時変化を示している。OTC溶液中のOTCの初期濃度は5,100ng/L、DOXY溶液中のDOXYの初期濃度は4,100ng/Lであった。図示の通り、全ての温度条件下において、かつ、OTC溶液およびDOXY溶液の両方において、時間経過とともに抗生物質濃度の低下傾向がみられた。
【0133】
OTC溶液およびDOXY溶液の、目標水質濃度(いずれも500ng/L)到達までの加熱時間は、以下に示す表2の通りであった。
【0134】
【表2】
【0135】
OTC溶液中のOTCの濃度は、加熱温度が80℃の場合は6時間以内に、加熱温度が60℃の場合は24時間以内に、そして、加熱温度が38℃の場合は120時間以内に、目標水質濃度(500ng/L)以下になった。DOXY溶液中のDOXYの濃度は、加熱温度が80℃の場合は48時間以内に目標水質濃度(500ng/L)以下になった。
【0136】
本試験により、畜産排水を加熱することにより、該畜産排水に含まれている抗生物質を熱分解し、該抗生物質の濃度を低下させることができることを確認した。また、抗生物質の種類によって、熱分解の速度が異なることを確認した。
【0137】
(6:考察)
従来の畜産排水処理プロセスを採用した場合、排水処理システム全体での畜産排水の滞留時間(総滞留時間)は例えば7日間〜14日間程度になることがある。この場合、曝気槽での滞留時間は約4日〜8日程度になる。曝気槽での滞留時間は、総滞留時間の半分以上を占めている場合が多い。本実施例に係る排水処理システム100および200は、第1曝気槽31および第2曝気槽32を備えているため、第1曝気槽31および第2曝気槽32の2槽の滞留時間の合計が、総滞留時間の半分以上を占める可能性が高いといえる。なお、排水処理システム全体での畜産排水の滞留時間(総滞留時間)、および、曝気槽での滞留時間は、畜産排水を排出する牧場の規模等(換言すれば、畜産排水量等)によって変化し得るため、上述した値は一例にすぎない。
【0138】
また、本実施例に係る排水処理システム100および200は、第1曝気槽31および第2曝気槽32の後に、加熱槽33を備えている。加熱槽33での滞留時間は、加熱槽33の大きさを変更することで任意に変更可能である。また、第1曝気槽31および第2曝気槽32において畜産排水を加熱することもできる。
【0139】
OTC溶液を用いた実験の結果(特に、表2)から考えると、畜産排水を60℃で加熱した場合、OTCの濃度は24時間以内に目標水質濃度以下になると予測できる。また、畜産排水を38℃で加熱した場合、OTCの濃度は120時間以内に目標水質濃度以下になると予測できる。一方、DOXY溶液を用いた実験では、表2に示すように、加熱温度が80℃の場合に、48時間以内にDOXYの濃度を目標水質濃度以下まで下げることができた。したがって、加熱槽33における滞留時間内に、DOXYの濃度を目標水質濃度以下まで下げようとする場合、畜産排水を80℃程度で加熱することが望ましい。
【0140】
なお、排水処理システム100および200では、上述のように、加熱槽33の大きさを変更することで、畜産排水の加熱槽33での滞留時間、すなわち加熱時間を任意に変更することが可能である。そのため、実際に排水処理システム100および排水処理システム200を稼働させる場合、80℃以下でもDOXYの濃度を目標水質濃度以下まで低下させることができる可能性が十分にあるといえる。
【実施例2】
【0141】
(畜糞炭化物吸着試験)
(1:目的)
本試験では、排水処理システム200において、畜糞炭化物を抗生物質および有機物の吸着剤として利用可能なことを証明するため、吸着性能の高い畜糞炭化物の作製方法を検討した。
【0142】
(2:試料の準備)
試料として、鶏糞炭化物と豚糞炭化物とを準備した。試料数および各試料の番号(試料番号)は、下記表3に示す通りである。鶏糞炭化物は、後述する比表面積の測定試験、および、メチレンブルー(MB)吸着試験に使用した。豚糞炭化物は、MB吸着試験に使用した。
【0143】
鶏糞炭化物および豚糞炭化物の製造条件は、下記表3に示す通りである。「試料No.」の列は、各試料に付された試料番号を示している。「原料」列は、炭化物の原料を示している。「条件」列は炭化方法を示している。「炭化1」は、実際の炭化設備での炭化方法(すなわち、通常の畜糞炭化物の作製における炭化方法であって、無酸素条件で加熱する炭化方法)で試料を作製したことを示す。一方、「炭化2」は、通常の炭化方法を実行し、炭化終了10分前から終了まで、炭化物と水蒸気を反応させることで、炭化物を賦活する方法で試料を作製したことを示す。
【0144】
「炭化温度(℃)」の列は、畜糞を炭化させる際の炭化温度を摂氏で示している。「炭化時間(分)」の列は、炭化時間(すなわち、畜糞の加熱時間)を示している。なお、本実施例では、乳鉢等で粒径を100μm以下とした試料を実験に用いた。
【0145】
【表3】
【0146】
(3:試験方法)
(3−1:比表面積の測定)
鶏糞炭化物の試料2〜7の比表面積を、自動ガス吸着測定装置(BELLSORP−mini、マイクロトラック・ベル製)を用いて測定した。試験は下記(1)および(2)をこの順序で実施した。
【0147】
(1)乳鉢で鶏糞炭化物の各試料を粉砕して、前処理を実施した。
【0148】
(2)自動ガス吸着測定装置に試料をセットし、窒素ガスを吸着媒として比表面積を測定した。
【0149】
(3−2:MB吸着試験)
活性炭試験方法(JIS K1474)に従って、試料No.2〜7の吸着性能を評価した。なお、本試験では、まず始めに、種々の炭化温度で作製した各試料について、試料の添加量を変化させつつ吸着試験を行うことで、各作成温度におけるMB残留濃度と吸着剤単位質量当たりのMB吸着量を求め、プロットした。このプロットから吸着等温線を作成し、そして、該吸着等温線を使用して吸着性能を計算した。
【0150】
(4:試験結果)
(4−1:比表面積の測定の結果)
図4は、鶏糞炭化物の、比表面積の測定結果を示すグラフである。
【0151】
炭化1で作製した試料No.2〜4では、炭化の最高温度が上昇するほど比表面積が減少した。一方で、炭化2で作製した試料No.5〜7では、炭化の最高温度が上昇するほど比表面積が増加した。例えば、試料No.7は試料No.2の、約20倍の比表面積となった。
【0152】
(4−2:MB吸着試験の結果)
図5は、鶏糞炭化物のMB吸着性能試験の結果を示すグラフである。比較として、試料No.1(豚糞炭化物)と活性炭のMB吸着性能もグラフに記載した。
【0153】
比表面積の結果と同様、MB吸着性能の試験においても、炭化1で作製した試料No.2〜4では炭化温度の上昇に応じて吸着性能が低下した。また、試料No.3と試料No.5とは炭化温度が同じで賦活の有無のみが異なる試料である。これらの試料を比較しても、賦活の有無によるMB吸着性能の大きな変化はみられなかった。一方、試料No.6〜7については、試料No.5と比較して、MB吸着性能が約10倍まで上昇した。また、活性炭のMB吸着性能は130mL/gであった。このことから、鶏糞炭化物を高温(850℃〜900℃程度)かつ炭化2の方法で作製した場合、活性炭の1/5程度までMB吸着性能を向上させることが可能な事が確認できた。抗生物質の吸着性能もMB吸着性能と同等に向上すると仮定すれば、鶏糞炭化物を高温(850℃〜900℃程度)かつ炭化2の方法で作製した場合、抗生物質の吸着性能も活性炭の1/5程度まで向上させることができると考えられる。
【0154】
なお、試料No.2では、添加量を増加させた場合にMB吸着量が変化しなかったため、MB吸着性能を正しく評価できなかった。
【0155】
(5:結論)
本実施例に示した各種試験の結果から、以下の結論が導き出された。すなわち、炭化1で作製された畜糞炭化物では、炭化温度を高くしてもMB吸着性能の向上はみられなかった。一方、炭化2で作製された畜糞炭化物では、炭化温度を上げることで、MB吸着性能が最大で活性炭の1/5程度まで上昇した。
【0156】
このことから、炭化温度が850℃および900℃であり、炭化2で作製された畜糞炭化物については、抗生物質の吸着性能が活性炭の1/5程度に向上すると考えられた。したがって、畜糞炭化物は、その生産コストまたは買値によっては、コストの観点からも吸着剤として活性炭の代替となり得るといえる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、畜糞および畜尿に含まれる排水を処理する施設における、排水処理方法に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0158】
100、200 排水処理システム
10 固液分離部
1 原水槽
2 固液分離機
3 第1流量調整槽
4 第2流量調整槽
5 汚泥貯留槽
6 汚泥脱水機
20 固形物処理部
30 分解処理部
31 第1曝気槽
32 第2曝気槽
33 加熱槽
40 膜分離槽
50 消毒槽
60 吸着塔

図1
図2
図3
図4
図5