(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る鉄道車両用空気調和装置について説明する。
本実施の形態に係る鉄道車両用空気調和装置11は、
図1に示すように、鉄道車両に設置されるものであり、1台の室内送風機21と、1台の室外送風機22と、第1と第2の圧縮機23,24と、交流を直流に変換するコンバータ31と、直流を三相の交流に変換する第1〜第3のインバータ装置41〜43と、2台の開閉器CB1,CB2と、3台の接触器MC1〜MC3と、第1〜第3のインバータ装置41〜43の故障を検出する第1〜第3の故障検出センサ51〜53と、制御装置61とを備える。
【0013】
室内送風機21は、交流モータにより駆動されるファンと熱媒体が流通する熱交換器とを備える。室内送風機21は、ファンの回転により送風し、空気と熱交換器との間で熱交換を行って、空気を加熱又は冷却した上で、空調対象空間に送風する。室内送風機21の交流モータには、車内電源より、開閉器CB1と接触器MC1との直列の回路を介して交流電力が供給される。車内電源は、例えば、60Hzに設定されている。
【0014】
室外送風機22は、三相誘導モータにより駆動されるファンと熱媒体が流通する熱交換器とを備える。室外送風機22は、ファンの回転により外気を熱交換器に送風し、外気と熱交換器との間で熱交換を行う。熱媒体は、接続管を介して室内送風機21の熱交換器と室外送風機22の熱交換器との間を巡回する。
【0015】
第1の圧縮機23は、三相誘導モータにより駆動され、熱媒体を圧縮して高温・高圧の状態とし、また、熱媒体を室内送風機21と室外送風機22との間で循環させる。
【0016】
第2の圧縮機24は、三相誘導モータにより駆動され、熱媒体を圧縮して高温・高圧の状態とし、また、熱媒体を室内送風機21と室外送風機22との間で循環させる。なお、第1と第2の圧縮機23,24は、ピストン型、レシプロ型、ロータリ型等、任意の構造を採用可能である。
【0017】
コンバータ31は、接触器MC2を介して鉄道車両の交流電源に接続され、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して出力する。交流電源の周波数は、例えば、60Hzである。
【0018】
第1のインバータ装置41は、コンバータ31が供給する直流電圧を三相交流電圧に変換して、接触器MC2を介して室外送風機22の三相誘導モータに印加し、これを駆動する。即ち、第1のインバータ装置41は、室外送風機22をインバータ制御或いはインバータ駆動する。第1のインバータ装置41の出力電圧の周波数は制御装置61から供給される周波数指示信号SF1により制御される。
【0019】
なお、以下の説明においては、室外送風機22の運転周波数とは、室外送風機22を構成するファンの1秒間の回転数を意味する。室外送風機22の運転周波数は、第1のインバータ装置41の出力する三相交流電圧の周波数とは、必ずしも一致しない。しかし、以下の説明では、理解を容易にするため、第1のインバータ装置41の出力電圧の周波数と室外送風機22の運転周波数は一致するものとする。
【0020】
第2のインバータ装置42は、コンバータ31が供給する直流電力を三相の交流電力に変換して、第1の圧縮機23を回転駆動する三相誘導モータに印加し、これを駆動する。即ち、第2のインバータ装置42は、第1の圧縮機23をインバータ制御或いはインバータ駆動する。第2のインバータ装置42の出力電圧の周波数は制御装置61から供給される周波数指示信号SF2により制御される。
【0021】
第3のインバータ装置43は、コンバータ31が供給する直流電力を三相の交流電力に変換して、第2の圧縮機24を回転駆動する三相誘導モータに印加し、これを駆動する。即ち、第3のインバータ装置43は、第2の圧縮機24をインバータ制御或いはインバータ駆動する。第3のインバータ装置43の出力電圧の周波数は制御装置61から供給される周波数指示信号SF3により制御される。
【0022】
なお、第1と第2の圧縮機23,24の運転周波数とは、熱媒体の吸入行程、圧縮行程、吐出行程から構成される1サイクルが1秒間に何回実行されるかを示す。これは、第2のインバータ装置42及び第3のインバータ装置43が出力する三相交流電圧の周波数とは必ずしも一致しない。しかし、以下の説明では理解を容易にするため、第2、第3のインバータ装置42,43の出力する三相交流電圧の周波数と、第1と第2の圧縮機23,24の運転周波数は等しいものとする。
【0023】
また、第1〜第3のインバータ装置41〜43は、例えば、第1と第2の圧縮機23,24の運転周波数を30〜90Hz、室外送風機22の運転周波数を30〜60Hzの範囲で制御するとする。
【0024】
接触器MC2と室外送風機22との接続ノードと、第2のインバータ装置42の出力端とには、バックアップ用給電回路72の一端と他端が接続されている。バックアップ用給電回路72は、第1のインバータ装置41が故障したときに、第2のインバータ装置42から室外送風機22に電力をバイパスしてバックアップ供給することにより、室外送風機22をインバータ駆動可能とするためのものである。バックアップ用給電回路72は、過電流継電器(OCR-Over Current Relay)71と接触器MC3との直列回路を備える。過電流継電器71は、電路の短絡、過負荷による過電流等を変流器(CT)により取り出し、その電流値の大きさによって動作する継電器である。バックアップ用給電回路72は、他の保護装置等を備えていてもよい。
【0025】
第1〜第3の故障検出センサ51〜53は、それぞれ、第1〜第3のインバータ装置41〜43に近接して配置される。第1〜第3の故障検出センサ51〜53は、第1〜第3のインバータ装置41〜43の故障の有無を検出し、故障を検出すると、故障検出信号SD1〜SD3を制御装置61に出力する。
【0026】
制御装置61は、開閉器CB1,CB2及び接触器MC1〜MC3の開閉を制御する。また、制御装置61は、第1〜第3の故障検出センサ51〜53の出力する故障検出信号SD1〜SD3に応答して、結果に従って、第1〜第3の接触器MC1〜MC3の開・閉を制御する。
また、制御装置61は第1〜第3のインバータ装置41〜43に、出力電圧の周波数を指示する周波数指示信号SF1〜SF3を出力する。
【0027】
次に、制御装置61の詳細を
図2を参照して説明する。
制御装置61は、
図2に示すように、バス115を介して相互に接続されたプロセッサ111と、メモリ112と、記憶部113と、I/Oポート114とを備える。
【0028】
プロセッサ111は、CPU(Central Processing Unit)、マイクロプロセッサユニット等から構成され、メモリ112をワークエリアとして使用して、記憶部113に記憶された制御プログラムを実行することにより、
図1に示す鉄道車両用空気調和装置11の動作を制御する。
【0029】
メモリ112は、RAM(Random Access Memory)から構成され、プロセッサ111のワークメモリとして機能し、プログラム、データ等を記憶する。
【0030】
記憶部113は、フラッシュメモリ、ハードディスク装置等の不揮発性記憶装置を備え、プロセッサ111が実行する制御プログラムを記憶する。記憶部113には、プロセッサ111が各部を制御して、この鉄道車両用空気調和装置11の動作を制御するための制御プログラムを記憶する。制御プログラムの内容については、
図6を参照して後述する。
【0031】
制御装置61は、接触器MC1〜MC3の開・閉を、接触器制御信号SM1〜SM3により制御する。このため、記憶部113には、状況に応じて、接触器MC1〜MC3をどのように開閉をすべきかを示す
図3に示す開閉テーブルが格納されている。
【0032】
記憶部113には、プロセッサ111が制御過程で参照するために、この鉄道車両用空気調和装置11の特性を示す様々な特性データが格納されている。記憶されている特性データは、
図4(A)〜
図5(B)に示す特性データを含む。
【0033】
図4(A)に例示する「圧縮機運転周波数と空調能力との関係」を示す特性データは、室外送風機22の運転周波数と第1と第2の圧縮機23,24の動作台数及び運転周波数と空調能力との関係を特定するデータである。この特性データは、冷房用と暖房用が用意される。空調能力は、冷房と暖房でそれぞれ、8段階に設定され、室外送風機22の運転周波数は30〜60Hzの範囲で選択され、圧縮機の運転周波数はおおよそ30〜90Hzの範囲に設定されている。
【0034】
図4(B)に例示する「圧縮機運転周波数と車体の共振点との関係」を示す特性データは、第1と第2の圧縮機23,24の運転周波数と車体の共振振動の大きさとの関係を示す特性データである。振動が極大値を示す点が共振点であり、その運転周波数が共振周波数である。
【0035】
図4(C)に例示する「圧縮機運転周波数と車両空洞共鳴との関係」を示す特性データは、第1と第2の圧縮機23,24の運転周波数と車両の空洞、即ち、客車内の共鳴による騒音の大きさとの関係を示す特性データである。騒音が極大値を示す点が共鳴点であり、その運転周波数が共鳴周波数である。
【0036】
図4(D)に例示する「圧縮機運転周波数と成績係数との関係」を示す特性データは、室外送風機22の運転台数及び運転周波数と第1と第2の圧縮機23,24の運転周波数とこの鉄道車両用空気調和装置11の成績係数(COP[Coefficient Of Performance])との関係を示す特性データである。この特性データは、冷房用と暖房用が用意される。
【0037】
図5(A)に例示する「室外送風機と第1の圧縮機が同期運転する場合の圧縮機運転周波数と空調能力との関係」を示す特性データは、
図4(A)に示す特性データの特例に相当するものであり、第1のインバータ装置41が故障して、第2のインバータ装置42からの電力で室外送風機22と第1の圧縮機23とを運転した場合の「圧縮機運転周波数と空調能力との関係」を示す特性データである。空調能力は、冷房と暖房でそれぞれ、8段階に設定され、室外送風機22と第1の圧縮機23の運転周波数は30〜60Hzの範囲で選択され、第2の圧縮機24の運転周波数はおおよそ30〜90Hzの範囲に設定されている。
【0038】
図5(B)に例示する「圧縮機1台運転時の圧縮機運転周波数と空調能力との関係」を示す特性データは、
図4(A)に示す特性データの特例に相当するものであり、第1と第2の圧縮機23,24の何れか一方のみが稼働する場合の「圧縮機運転周波数と空調能力との関係」を示す特性データである。空調能力は、冷房と暖房でそれぞれ、8段階に設定され、室外送風機22の運転周波数は30〜60Hzの範囲で選択され、圧縮機の運転周波数はおおよそ30〜90Hzの範囲に設定されている。この特性データは、
図4(A)の健全時の特性データと比較して、第2の圧縮機24を増速運転する形態となっている。
【0039】
これらの特性データは、試験・実験により、予め求められていたものである。
また、特性データの記憶形態は任意であり、例えば、テーブル形式、関数の形式、グラフの形式などでよい。
【0040】
図2に示すI/Oポート114は、プロセッサ111の制御に従って、外部装置に信号を送信し、また、外部装置から信号を受信し、プロセッサ111に提供する。具体的には、I/Oポート114は、プロセッサ111の制御に従って、a)開閉器CB1とCB2に断続を指示する開閉器制御信号SB1,SB2を供給し、b)接触器MC1〜MC3に開閉を指示する接触器制御信号SM1〜SM3を供給し、c)第1〜第3のインバータ装置41〜43に、出力する交流電圧の周波数を指示する周波数指示信号SF1〜SF3を出力する。また、I/Oポート114は、a)第1〜第3の故障検出センサ51〜53から、第1〜第3のインバータ装置41〜43が故障したことを示す故障検出信号SD1〜SD3を受信して、プロセッサ111に通知し、b)車両の空気バネの圧力などから車両の熱負荷を示す熱負荷指示信号SLを受信し、プロセッサ111に通知する。
【0041】
次に、上記構成を有する鉄道車両用空気調和装置11の動作を、
図6を参照しつつ説明する。
鉄道車両用空気調和装置11が起動されると、プロセッサ111は、記憶部113に記憶されている制御プログラムを読み出し、制御動作を開始する。
【0042】
プロセッサ111は、まず、I/Oポート114から、開閉器CB1とCB2に開閉器制御信号SB1、SB2を送信し、これらを閉じる。これにより、コンバータ31に電力が供給され、第1〜第3のインバータ装置41〜43、第1〜第3の故障検出センサ51〜53に動作用の電力が供給される。第1〜第3のインバータ装置41〜43は、それぞれ、デフォルトで定められた周波数の三相交流電圧を出力する。
【0043】
続いて、プロセッサ111は、
図6のフローチャートに示す運転制御処理を開始し、まず、熱負荷指示信号SLをI/Oポート114を介して取り込み、必要な熱負荷を求める。次に、プロセッサ111は必要熱負荷に基づいて、必要な空調能力を求める(ステップS11)。なお、空調能力は、例えば、冷房8段階、暖房8段階に設定され、予め設定された何れかの空調能力のうちから適切なものが選択されるものとする。
【0044】
次に、プロセッサ111は、故障検出信号SD1〜SD3をI/Oポート114を介して取り込み、第1〜第3のインバータ装置41〜43が故障しているか否かを判別する(ステップS12)。
【0045】
ここでは、第1〜第3のインバータ装置41〜43は正常であり、故障は発生していないと仮定する。この場合、フローは、ステップS13に進む。プロセッサ111は、記憶部113に記憶された
図3に示す開閉テーブルから、正常時用の開閉パターンを読み出し、これに従って、
図7に示すように、第1と第2の接触器MC1とMC2とを閉状態とし、第3の接触器MC3を開状態とする(ステップS13)。これにより、破線で模式的に示すように、室内送風機21、室外送風機22、第1と第2の圧縮機23,24に給電され、室外送風機22と第1と第2の圧縮機23、24が、それぞれ、第1〜第3のインバータ装置41〜43によりインバータ駆動される。
【0046】
プロセッサ111は、外部より供給される熱負荷指示信号SLにより指示される熱負荷に基づいて、運転パターンを決定する。
具体的には、第1と第2の圧縮機23,24の運転台数と、室外送風機22及び第1と第2の圧縮機23,24の運転周波数との組み合わせを、次の要件(1)〜(4)を満たすように決定する。
【0047】
(1)必要空調能力を満足すること。
(2)車体の共振による振動を抑えること。
(3)車室空洞内の共鳴による騒音を抑えること。
(4)エネルギ効率を示す成績係数(COP)をできるだけ高くすること。
ここでは一例として、優先順位を(1)>(2)>(3)>(4)とした場合を説明する。
【0048】
まず、プロセッサ111は、(1)の条件を充足するため、必要な空調能力を得られるような、室外送風機22と第1と第2の圧縮機23,24の組み合わせとその動作を求める(ステップS14)。
【0049】
このため、プロセッサ111は、記憶部113に記憶されている
図4(A)に例示した「圧縮機運転周波数と空調能力との関係」を示す特性データを読み出す。プロセッサ111は、
図8(A)に例示するように、この特性データにステップS11で求めた必要空調能力を適用し、各特性曲線との交点を求め、交点で示される組み合わせを候補とする。この場合、a)室外送風機22を運転速度30Hzで運転し、第1と第2の圧縮機23,24を運転周波数f1で運転する候補1、b)室外送風機22を運転周波数60Hzで運転し、第1と第2の圧縮機23,24の一方のみを運転周波数f2で運転する候補2、c)室外送風機22を運転周波数30Hzで運転し、第1と第2の圧縮機23,24の一方のみを運転周波数f3で運転する候補3を組み合わせの候補として仮定する。なお、必要空調能力以上の空調能力が得られる組み合わせは、効率の低下に繋がるので、ここでは、必要空調能力と各特性曲線との交点での運転周波数のみを候補とする。
【0050】
次に、(2)の条件を充足するため、プロセッサ111は、記憶部113から、
図4(B)に例示した「圧縮機運転周波数と車体の共振点との関係」を示す特性データを読み出す。プロセッサ111は、
図8(B)に例示するように、ステップS14で得られた候補を特性データに適用し、各候補での振動の大きさを求め、共振による振動が大きくなるものを候補から除外する(ステップS15)。この例では、候補3は車体共振点と合致またはその近傍にあり、共振による車体振動が大きくなるため、候補から除外される。従って、候補1,2だけが残る。なお、共振点にどの程度近いものを除外するかの基準は予め定めておく。例えば、振動が共振点での振動の大きさの1/p以下となるような候補を選択し、それ以外の候補を除外する基準とする。なお、pは1より大きい実数である。
【0051】
次に、(3)の条件を充足するため、プロセッサ111は、記憶部113から、
図4(C)に例示した「圧縮機運転周波数と車両空洞共鳴との関係」を示す特性データを読み出す。プロセッサ111は、
図9(A)に例示するように、ステップS14で得られた候補を特性データに適用し、各候補での騒音の大きさを求め、共鳴による騒音が大きくなるものを候補から除外する(ステップS16)。この例では、候補3は共鳴点と合致またはその近傍にあり、共鳴による騒音が大きくなるため、候補から除外される。従って、候補1,2だけが残る。なお、共鳴点にどの程度近いものを除外するかの基準は予め定めておく。例えば、騒音が、共鳴点での騒音の大きさの1/q以下となるような候補を選択し、それ以外の候補を除外する基準とする。なお、qは1より大きい実数である。なお、説明では、候補1〜3を特性データに適用したが、ステップS15で残った、候補1と2のみを特性データに適用してもよい。
【0052】
最後に、(4)の条件を充足する組み合わせを選択するため、プロセッサ111は、記憶部113から、
図4(D)に例示した「圧縮機運転周波数と成績係数との関係」を示す特性データを読み出す。プロセッサ111は、
図9(B)に示すように、残った候補を、読み出した特性データに適用し、最大の成績係数が得られる候補を選択し、選択した候補で特定される運転台数と運転周波数の組み合わせを、正常時用の第1の運転パターンとする(ステップS17)。
図9(B)の例では、候補1よりも候補2の方が成績係数が大きいため、エネルギ効率の観点からは、候補2の方が優れている。そこで、運転パターンとして候補2を採択し、これで特定される運転台数と運転周波数の組み合わせを、正常時用の第1の運転パターンとする。
【0053】
続いて、プロセッサ111は、第1〜第3のインバータ装置41〜43に、ステップS17で選択された候補に相当する運転周波数を指示する(ステップS18)。
【0054】
候補2が選択されたとすれば、プロセッサ111は、第1のインバータ装置41に周波数60Hzを示す周波数指示信号SF1を送信し、第2のインバータ装置42に周波数f2を指示する周波数指示信号SF2を送信し、第3のインバータ装置43に停止を指示する周波数指示信号SF3を送信する。なお、第3のインバータ装置43に運転周波数f2を指示する周波数指示信号SF3を送信し、第2のインバータ装置42に停止を指示する周波数指示信号SF2を送信してもよい。
【0055】
以後、第1〜第3のインバータ装置41〜43は、周波数指示信号SF1〜SF3で指示された周波数の三相交流信号を出力する。室外送風機22のファンと、第1と第2の圧縮機23,24は、それぞれ、供給された交流電力で動作するため、結果的に、ステップS17で選択された候補が指定する運転周波数で動作する。
【0056】
候補2が選択されたとすれば、プロセッサ111は、第1のインバータ装置41に周波数60Hzを示す周波数指示信号SF1を送信し、第2のインバータ装置42に周波数f2を指示する周波数指示信号SF2を送信し、第3のインバータ装置43に停止を指示する周波数指示信号SF3を送信する。これにより、室外送風機22は、運転周波数60Hzで、第1の圧縮機23は運転周波数f2で動作し、第2の圧縮機24は停止する。これにより、必要な空調能力を充足し、振動及び騒音が少なく、エネルギ効率の高い運転パターンで鉄道車両用空気調和装置11が運転される。従って、従来よりも省エネルギおよび快適性の向上を図ることができる。
【0057】
プロセッサ111は、周期的に、
図6に示す運転制御処理を実行する。
【0058】
次に、
図10に示すように、第1のインバータ装置41が故障したと仮定する。この場合、室外送風機22への第1のインバータ装置41からの電力の供給は停止する。第1の故障検出センサ51は、これを検出し、故障検出信号SD1を出力する。プロセッサ111は、I/Oポート114を介して、故障検出信号SD1を取り込み、第1のインバータ装置41が故障したと判別する。
【0059】
プロセッサ111は、その後、
図6の運転制御処理を開始すると、ステップS12で、第1のインバータ装置41が故障していると判別し、処理をステップS21に進める。
【0060】
ステップS21において、プロセッサ111は、記憶部113に記憶された
図3に示す開閉テーブルから、第1のインバータ装置41が故障したとき用の開閉パターンを読み出し、これに従って、接触器MC1とMC3を閉じ、接触器MC2を開く(ステップS21)。これにより、破線で模式的に示すように、室内送風機21、室外送風機22、第1と第2の圧縮機23,24にそれぞれ給電され、室外送風機22と第1の圧縮機23が第2のインバータ装置42によりインバータ駆動され、第2の圧縮機24が第3のインバータ装置43によりインバータ駆動される。
【0061】
次に、プロセッサ111は、運転パターンを決定する。この状態では、室外送風機22と第1の圧縮機23とは共通の第2のインバータ装置42から給電され、同期運転となる。このため、プロセッサ111は、
図4(A)に示す「圧縮機運転周波数と空調能力との関係」を示す特性データではなく、
図5(A)に例示した「室外送風機と第1の圧縮機が同期運転する場合の圧縮機運転周波数と空調能力との関係」を示す特性データを記憶部113から読み出す。プロセッサ111は、
図11に例示するように、読み出した特性データに、ステップS11で特定した必要空調能力を適用し、組み合わせの候補を求める(ステップS22)。
【0062】
図11の例では、運転周波数f11〜f13に相当する候補4〜候補6が求められる。
その後、フローは、前述のステップS15に進み、以後、前述の共振に関する条件(2)、共鳴に関する条件(3)、エネルギ効率に関する条件(4)を満たす候補を選定する(ステップS15〜S17)。選択された候補で特定される運転台数と運転周波数の組み合わせを、第1のインバータ装置41が故障したとき用の第2の運転パターンとする。続いて、第1〜第3のインバータ装置41〜43に出力電圧の周波数を指示し(ステップS18)、運転を継続する。これにより、空調能力を確保しつつ、低振動及び低騒音で、且つ、高効率で鉄道車両用空気調和装置11の運転が継続される。
【0063】
次に、
図12に模式的に示すように、第2のインバータ装置42が故障したときの動作を説明する。この場合、第1の圧縮機23への第2のインバータ装置42からの電力の供給は停止する。第2の故障検出センサ52は、これを検出し、故障検出信号SD2を出力する。プロセッサ111は、故障検出信号SD2から、第2のインバータ装置42が故障したと判別する。
【0064】
プロセッサ111は、その後、
図6の運転制御処理を開始すると、ステップS12で、第2のインバータ装置42が故障していると判別し、処理をステップS31に進める。
【0065】
ステップS31において、プロセッサ111は、接触器MC1〜MC3に接触器制御信号SM1〜SM3を送信し、
図12に示すように、第1と第2の接触器MC1とMC2を閉じ、第3の接触器MC3を開く。これにより、破線で示すように給電がされ、室外送風機22が第1のインバータ装置41によりインバータ駆動され、第2の圧縮機24が第3のインバータ装置43によりインバータ駆動される。
【0066】
次に、プロセッサ111は、運転パターンを決定する。この状態では、第1の圧縮機23は停止しており、圧縮機は1台のみの運転となる。このため、プロセッサ111は、
図4(A)に示す特性データではなく、
図5(B)に例示した「圧縮機が1台のみ運転時の圧縮機運転周波数と空調能力との関係」を示す特性データを記憶部113から読み出す。プロセッサ111は、
図13に例示するように、読み出した特性データに、ステップS11で特定した現在の必要空調能力を適用し、組み合わせの候補を求める(ステップS32)。
【0067】
図13の例では、運転周波数f21〜f23に相当する候補7〜候補9が求められる。運転周波数f21〜f23は、健全時のステップS22で選択される候補の運転周波数f1〜f3よりも相対的に高く、第2の圧縮機24を増速運転するパターンとなっている。
【0068】
その後、フローは、前述のステップS15に進み、以後、前述の共振に関する条件(2)、共鳴に関する条件(3)、エネルギ効率に関する条件(4)を満たす候補が選定される(ステップS15〜S17)。選択された候補で特定される運転台数と運転周波数の組み合わせを、第2のインバータ装置42が故障したとき用の第3の運転パターンとする。この運転パターンは、第2の圧縮機24を増速運転するパターンとなっている。
【0069】
続いて、第1〜第3のインバータ装置41〜43に出力電圧の周波数が指示され(ステップS18)、運転が継続される。これにより、空調能力を確保しつつ、低振動及び低騒音で、且つ、高効率でこの鉄道車両用空気調和装置11の運転が継続される。
【0070】
次に、
図14に模式的に示すように、第3のインバータ装置43が故障したときの動作を説明する。破線で示すように給電がされ、室外送風機22が第1のインバータ装置41によりインバータ駆動され、第1の圧縮機23が第2のインバータ装置42によりインバータ駆動され、第2の圧縮機24は停止し、第1の圧縮機23のみの運転となる。
【0071】
プロセッサ111は、故障検出信号SD3から、第3のインバータ装置43が故障したと判別する。プロセッサ111は、その後、
図6の運転制御処理を開始すると、ステップS12で、第3のインバータ装置43が故障していると判別し、処理をステップS31に進める。以後の処理は、第2のインバータ装置42が故障した場合の処理と同様である。選択された候補で特定される運転台数と運転周波数の組み合わせを、第3のインバータ装置43が故障したとき用の第3の運転パターンとする。このとき、第1の圧縮機23は増速運転となる。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1のインバータ装置41の健全時には、第1のインバータ装置41で室外送風機22を駆動し、故障時には、第2のインバータ装置42により室外送風機22と第1の圧縮機23とをインバータ駆動する。健全時と故障時、それぞれ、空調能力と車体の共振周波数とエネルギ効率とに基づいて定められた運転パターンに基づいて、第1から第3のインバータ装置41〜43を制御する。これにより、必要空調能力を充足しつつ、低振動低騒音化、さらに、高エネルギ効率で、省エネ型運転が可能な鉄道車両用空気調和装置11を提供できる。
【0073】
この発明は上記実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
例えば、
図1に示した鉄道車両用空気調和装置の構成は例示であり、適宜変更可能である。例えば、上記実施の形態においては、室内送風機21には、インバータ装置を介さずに固定周波数の電力を供給したが、室内送風機21にもインバータ装置から可変周波数の電力を供給してもよい。この場合、室内送風機21の運転周波数を考慮した特性データを準備し、記憶部113に記憶しておけばよい。
【0074】
コンバータ31により、交流の車内電源を直流に変換してインバータ装置に供給する構成を例示したが、車内電源を直流としてもよい。
【0075】
また、圧縮機の台数は2台に限定されず、1台でも3台以上でもよい。同様に、室内送風機の台数と室外送風機の台数も任意であり、2台以上でもよい。
また、バックアップ給電用の回路を他の構成部分に配置してもよい。
【0076】
上記実施の形態においては、第1のインバータ装置41の出力電圧の周波数と室外送風機22の運転周波数が等しく、第2のインバータ装置42の出力電圧の周波数と第1の圧縮機23の運転周波数が等しく、第3のインバータ装置43の出力電圧の周波数と第2の圧縮機24の運転周波数が等しいとして、説明したが、これらは等しい値である必要はない。例えば、第1のインバータ装置41の出力電圧のr周期で、室外送風機22の1運転周期が成立するようにしてもよい。rは正の実数である。この場合、プロセッサ111は、第1のインバータ装置41に必要とされる運転周波数のr倍の周波数を指示すればよい。また、プロセッサ111が、第1のインバータ装置41に運転周波数を通知し、第1のインバータ装置41が自己の出力電圧の必要な周波数を求めて、その周波数を有する電圧を出力するようにしてもよい。第2と第3のインバータ装置42,43についても同様である。
【0077】
上記実施の形態においては、運転パターンを決定するに際し、充足すべき条件(1)〜(4)の優先順位を、(1)>(2)>(3)>(4)としたが、適宜変更可能である。例えば、エネルギ効率を最優先とする場合には、(4)の条件を最優先し、以下、(1)〜(3)の条件の優先順位を適宜設定すればよい。
図6に示すフローチャートも一例であり、適宜変更可能である。
【0078】
上記実施の形態においては、バックアップ用給電回路72を、過電流継電器71と接触器MC3との直列回路から構成したが、バックアップ時に、第2のインバータ装置42から室外送風機22への給電路が成立するならば、その構成は任意である。
【0079】
また、上記実施の形態においては、圧縮機の台数は2台であったが、2台に限定されず、1台でも3台以上でもよい。
【0080】
第1〜第3のインバータ装置41〜43の故障を第1〜第3の故障検出センサ51〜53で検出し、プロセッサ111が故障検出信号SD1〜SD3を制御に使用する例を説明した。この発明はこれに限定されない。第1〜第3のインバータ装置41〜43の故障を、ユーザがプロセッサ111に入力する形態とする等、適宜変更可能である。
【0081】
第1〜第3のインバータ装置41〜43の出力を三相交流電圧、室内送風機21と第1と第2の圧縮機23、24の駆動モータを三相誘導モータとする例を示したが、第1〜第3のインバータ装置41〜43の出力を単相交流電圧とし、モータを単相モータとしてもよい。また、モータを誘導モータ以外の構成としてもよい。