特許第6983719号(P6983719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983719
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】壁構造及び壁構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/14 20060101AFI20211206BHJP
   E04F 11/18 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   E04H17/14 102Z
   E04F11/18
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-99434(P2018-99434)
(22)【出願日】2018年5月24日
(65)【公開番号】特開2019-203322(P2019-203322A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2020年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】水野 節
(72)【発明者】
【氏名】陣田 博史
(72)【発明者】
【氏名】山鹿 栄治
(72)【発明者】
【氏名】丸山 剛
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭58−038835(JP,Y2)
【文献】 特開2018−066266(JP,A)
【文献】 特開2014−214441(JP,A)
【文献】 特開平06−137051(JP,A)
【文献】 特許第4145948(JP,B1)
【文献】 特開平10−008785(JP,A)
【文献】 特開平11−148256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00−17/26
E04F 11/18
E04F 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱に固定されている複数の壁面材が上下方向に繋がっている壁構造であって、
前記複数の壁面材のうちの上下に隣接する2つの前記壁面材において上側に位置する上壁面材は、下端部に、前記支柱に固定される固定部と、前記2つの前記壁面材において下側に位置する下壁面材の上端部が係合される被係合部と、を有し、
前記下壁面材は、上端部に、前記被係合部と係合する係合部を有し、
前記係合部は、前記支柱に固定された前記固定部に対し前記支柱とは反対側となる壁外側にて前記被係合部と係合し、前記固定部を覆っており、
前記固定部は、前記支柱と対面し壁の厚み方向に進入する固定具により固定されており、
前記上壁面材は、前記固定部において、前記固定具より下から壁外側に延出された下延出部と、前記固定具の上から壁外側に延出され壁面を形成する壁面部と連結された壁面連結部と、を有し、
前記係合部は、前記下延出部に載置されていることを特徴とする壁構造。
【請求項2】
請求項1に記載の壁構造であって、
前記複数の壁面材のうちの最も上に位置する前記壁面材は、前記支柱側の部位と係合して上下方向の位置が決めれる位置決め係合部を有していることを特徴とする壁構造。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の壁構造であって、
前記支柱は地面から立設されており、
前記複数の壁面材のうちの最も下に位置する前記壁面材は、下端部が地中に埋められていることを特徴とする壁構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の壁構造であって、
前記壁面材が上下方向に間隔を空けた壁面材非装着部を有していることを特徴とする壁構造。
【請求項5】
請求項に記載の壁構造であって、
前記壁面材は、前記支柱を挟み両側に設けられており、
前記支柱の両側に前記壁面材非装着部を有し、
前記壁面材非装着部の上縁をなす前記壁面材の下端同士、及び、前記壁面材非装着部の下縁をなす前記壁面材の上端同士の間を塞ぐ横材が設けられていることを特徴とする壁構造。
【請求項6】
請求項に記載の壁構造であって、
前記壁面材非装着部の下縁をなす前記壁面材は、当該壁面材間を塞ぐ前記横材に対して位置決めされていることを特徴とする壁構造。
【請求項7】
支柱に固定されている複数の壁面材が上下方向に繋がっている壁構造の施工方法であって、
前記複数の壁面材のうちの上下に位置する2つの前記壁面材において上側に位置する上壁面材の下端部に設けられている固定部を、前記支柱と対面し壁の厚み方向に進入する固定具により前記支柱に固定する上壁面材固定ステップと、
前記2つの前記壁面材において下側に位置する下壁面材の上端部に設けられた係合部を、前記支柱に固定されている前記上壁面材の前記固定部において前記固定具より下から壁外側に延出された下延出部に載置することにより、前記固定部よりも壁外側で前記上壁面材の下端部に係合させる下壁面材係合ステップと、
前記下壁面材の下端部を前記支柱に固定する下壁面材固定ステップと、
を有することを特徴とする壁構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱に固定されている複数の壁面材が上下方向に繋がっている壁構造及び壁構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
支柱に固定されている複数の壁面材が上下方向に繋がっている構造体として、複数の細長いパネルが上下方向に繋げて支柱に取り付けられる目隠しバルコニーのパネル取付構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この目隠しバルコニーのパネル取付構造に用いる細長いパネルは、下端に段部を設けた挿入片等の挿入部が設けられ、上端に挿入溝などの嵌合部が設けられている。複数のパネルは、下側に配置されるパネルの上端に設けられた嵌合部に、上側に配置されるパネルの挿入部を嵌めて順次連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−159540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の目隠しバルコニーのパネル取付構造により、取り付けられる複数のパネルは、下から上に順次取り付けられていく。このため、複数のパネルの取り付けに伴う施工誤差は、高くなるにつれて累積する。このため、最も上のパネルを取り付けると、施工図通りに施工されている単品の支柱と高さとの間にずれが生る。このような、パネルと支柱との高さの差が露出しないように、支柱の上に取り付ける笠木の見付け幅を大きくしてしまうと、意匠性が低下するという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の壁面材が上下方向に繋げられた壁であっても累積する施工誤差が視認され難い壁構造及び壁構造の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の壁構造は、支柱に固定されている複数の壁面材が上下方向に繋がっている壁構造であって、前記複数の壁面材のうちの上下に隣接する2つの前記壁面材において上側に位置する上壁面材は、下端部に、前記支柱に固定される固定部と、前記2つの前記壁面材において下側に位置する下壁面材の上端部が係合される被係合部と、を有し、前記下壁面材は、上端部に、前記被係合部と係合する係合部を有し、前記係合部は、前記支柱に固定された前記固定部に対し前記支柱とは反対側となる壁外側にて前記被係合部と係合し、前記固定部を覆っていることを特徴とする壁構造である。
【0007】
このような壁構造によれば、上壁面材を固定した後に、上壁面材が固定された固定部の壁外側にて下壁面材の係合部が被係合部に係合される。このとき、係合部は固定部を覆っているので、複数の壁面材は、上から順次取り付けられる。このため、複数の壁面材が取り付けられたときの施工誤差を、視野に入りにくい壁の下端側に累積させることが可能である。このため、複数の壁面材が上下方向に繋げられても累積する施工誤差が視認され難い壁構造を提供することが可能である。
【0008】
かかる壁構造であって、前記固定部は、前記支柱と対面し壁の厚み方向に進入する固定具により固定されており、前記上壁面材は、前記固定部において、前記固定具より下から壁外側に延出された下延出部と、前記固定具の上から壁外側に延出され壁面を形成する壁面部と連結された壁面連結部と、を有し、前記係合部は、前記下延出に載置されていることを特徴とする。
【0009】
このような壁構造によれば、下壁面材の係合部は、上壁面材が固定具により柱に固定される固定部の下から延出されている下延出上に載置されるので、係合部が被係合部と係合することにより上壁面材を固定している固定具を隠すことが可能である。このため、より意匠性が向上する。また、係合部が下延出上に載置されるので、下壁面材を、上壁面材を基準に位置決めすることが可能である。更に、取り付ける際には、下壁面材を上壁面材に引っ掛けることができるので、施工性にも優れている。
【0010】
かかる壁構造であって、前記複数の壁面材のうちの最も上に位置する前記壁面材は、前記支柱側の部位と係合して上下方向の位置が決めれる位置決め係合部を有していることを特徴とする。
【0011】
このような壁構造によれば、最も上に位置する壁面材が、位置決め係合部を有しているので、最も上に位置する壁面材を支柱側の部位と係合させることにより、最も上に位置する壁面材の上下方向の位置が決められる。このため、上から順次取り付けられる壁面材の基準となる最も上に位置する壁面材を、適切な位置に固定することが可能である。
【0012】
かかる壁構造であって、前記支柱は地面から立設されており、前記複数の壁面材のうちの最も下に位置する前記壁面材は、下端部が地中に埋められていることを特徴とする。
【0013】
このような壁構造によれば、複数の壁面材が上から順次取り付けられて施工誤差が壁の下端側に累積しても、下端部は地中に埋められるので、施工誤差によるずれが露出することを防止することが可能である。
【0014】
かかる壁構造であって、前記壁面材が上下方向に間隔を空けた壁面材非装着部を有していることを特徴とする。
このような壁構造によれば、上下方向に間隔を空けた壁面材非装着部を備えた壁を形成することが可能である。
【0015】
かかる壁構造であって、前記壁面材は、前記支柱を挟み両側に設けられており、前記支柱の両側に前記壁面材非装着部を有し、前記壁面材非装着部の上縁をなす前記壁面材の下端同士、及び、前記壁面材非装着部の下縁をなす前記壁面材の上端同士の間を塞ぐ横材が設けられていることを特徴とする。
【0016】
このような壁構造によれば、壁面材の上下方向に間隔が空いている壁面材非装着部の、上縁をなす壁面材の下端同士、及び、下縁をなす壁面材の上端同士の間を塞ぐ横材が設けられているので、支柱の両側に設けられている壁面材間が外部に露出しにくい。このため、より意匠性に優れた壁構造を提供することが可能である。
【0017】
かかる壁構造であって、前記壁面材非装着部の下縁をなす前記壁面材は、当該壁面材間を塞ぐ前記横材に対して位置決めされていることを特徴とする。
【0018】
このような壁構造によれば、壁面材非装着部の下に位置する壁面材の上端と、壁面材非装着部の下に位置する壁面材間を塞ぐ横材の上端とを揃えて配置することが可能である。このため、より意匠性に優れている。また、壁面材と横材の上端が平坦に揃うので、窪みが形成されず、横材上に水が溜まることを防止することが可能である。
【0019】
また、支柱に固定されている複数の壁面材が上下方向に繋がっている壁構造の施工方法であって、前記複数の壁面材のうちの上下に位置する2つの前記壁面材において上側に位置する上壁面材の下端部に設けられている固定部を前記支柱に固定する上壁面材固定ステップと、前記2つの前記壁面材において下側に位置する下壁面材の上端部を、前記支柱に固定されている前記上壁面材の前記固定部よりも壁外側で前記上壁面材の下端部に係合する下壁面材係合ステップと、前記下壁面材の下端部を前記支柱に固定する下壁面材固定ステップと、を有することを特徴とする壁構造の施工方法である。
【0020】
このような壁構造の施工方法によれば、上壁面材を固定した後に、上壁面材が固定された固定部の壁外側に下壁面材を係合させて、複数の壁面材が、上から順次取り付けられるので、施工誤差を壁構造の下端側に累積させることが可能である。このため、複数の壁面材を上から下に順次取り付けていくだけで、累積する施工誤差が視認され難い壁を容易に施工することが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の壁面材が上下方向に繋げられた壁であっても累積する施工誤差が視認され難い壁構造及び壁構造の施工方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の壁構造が適用された壁の一例を示す正面図である。
図2図1におけるA−A断面図である。
図3】最上壁面材とその下に設けられる中間壁面材の固定構造を示す縦断面図である。
図4】壁の施工方法を示す縦断面図である。
図5】中間部分に通気口が設けられている壁を示す正面図である。
図6】通気口が設けられている部位の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る壁構造について図面を参照して説明する。
本実施形態の壁構造をなす壁1は、図1に示すように、屋外の地上に立設されている。
【0024】
壁1は、地上に立設された5本の支柱2と、5本の支柱2を上端部にて繋ぐ横材3と、5本の支柱に渡って取り付けられ壁面を形成する複数の壁面材4と、5本の支柱2に渡り上部を覆う笠木5と、横材3上に固定され笠木5を係止する笠木係止部材6と、を有している。
【0025】
支柱2は、断面が矩形状をなす中空の押出成形部材であり、下端が地中に埋設されて自立している。5本の支柱2は、断面が同一の矩形状をなす各支柱2の1つの側面が、同一の平面をなすように直線状に並べて配置されている。各支柱2には、5本の支柱2が並べられている方向と直交する方向における両側の面に壁面材4が固定され壁面が形成される。
【0026】
以下の説明においては、立設する壁1に対し、上下となる方向を上下方向、左右となり5本の支柱2が並ぶ方向を左右方向、5本の支柱2が並ぶ方向と直行し壁1の厚みとなる方向を壁厚方向として示す。壁1の各部位であっても、また、壁1をなす各部材が単体の状態であっても、取り付けられた状態にて上下方向、左右方向、壁厚方向となる方向にて方向を特定して説明する。
【0027】
図2に示すように、横材3は、支柱2の壁厚方向の幅と同じ幅を有し、断面が矩形状をなす中空の押出成形部材であり、固定部材7により各支柱2に固定されている。横材3は、5本の支柱2のうちの両端に位置する2本の支柱2a間に架け渡されている。5本の支柱2のうちの両端の支柱2aを除く3本の支柱(以下、3本の内側の支柱という)2bは、横材3の上下方向の厚み分、両端の支柱2aより低く立設されている。両端の支柱2aに架け渡された横材3は、3本の内側の支柱2bの上端に載置されている。
【0028】
固定部材7は、図3に示すように、断面がL字状をなし、L字状をなす2枚の板部7a、7bのうちの一方の板部7aが、横材3の下面にビス止めされ、2枚の板部7a、7bのうちの他方の板部7bが、互いに隣り合う支柱2において互いに対面する側面2cにビス止めされている。
【0029】
笠木係止部材6は、横材3の上に固定されており、横材3の上面に載置される平板状の下板部6aと、下板部6aから上方に突出し壁面材4が係合される壁面材係合部6b、及び、笠木5が係止される笠木係止片6cと、を有している。
【0030】
下板部6aは、横材3の壁厚方向の幅とほぼ同じ幅を有している。壁面材係合部6bは、下板部6aの壁厚方向における両端部から上方に延出させて設けられている。壁厚方向の両側に設けられた壁面材係合部6bの上縁が最も上に位置する壁面材(以下、最上壁面材という)40の係合部6dをなしており、各々の壁面材係合部6bの上縁に最上壁面材40の位置決め係合部としての上端係合部40aが係合することにより、最上壁面材40が位置決めされる。
【0031】
笠木係止片6cは、下板部6aの両側に設けられている各壁面材係合部6bと、壁厚方向における中央側に間隔を隔てて2つ設けられている。笠木係止片6cは、壁面材係合部6bより高く延出されている。
【0032】
笠木5は、図2に示すように、支柱2及び最上壁面材40の上に位置して平坦な上面をなす上面板部5aと、上面板部5aの壁厚方向における両縁から垂設された垂設板部5bと、各垂設板部5bと壁厚方向における中央側に間隔を隔てて設けられ笠木係止片6cに係止される笠木被係止片5cとを有している。笠木被係止片5cが笠木係止片6cに係止されると、壁厚方向の両側に設けられた垂設板部5bが各壁面より壁厚方向の外側に位置するように形成されている。
【0033】
壁面材4は、上下方向の幅が左右方向の幅より狭い、横方向に細長い押出成形により形成されたパネル材である。壁厚方向において、支柱2の両面に形成される壁面は、上下方向に複数の壁面材4が並べて形成されている。
【0034】
上下方向に並べて支柱2に固定される複数の壁面材4は、最も上に位置する最上壁面材40と、最も下に位置する最下壁面材41と、最上壁面材40と最下壁面材41との間に配置される中間壁面材42との3種類の壁面材4により壁面が構成されている。
【0035】
最上壁面材40は、図3に示すように、上端部が笠木係止部材6に係止されて下端部が支柱2に、壁厚方向に進入するビス20により固定され、中間壁面材42は、上端部が、上に配置されて隣接する最上壁面材40または中間壁面材42の下端部に係合されて下端部が支柱2にビス止めされ、最下壁面材41は、上端部が、上に配置されて隣接する中間壁面材42の下端部に係合されて下端部が支柱2にビス止めされている。また、最下壁面材41は、下端部が地面GLより低い位置に配置され、下部は地中に埋設されている。
【0036】
最上壁面材40は、支柱2に固定されて鉛直な壁面をなす上壁面部40bと、上壁面部40bの上端から上方に向かって支柱2との間隔が狭くなる傾斜を備えた上端傾斜部40cと、上端傾斜部40cの上縁に設けられ笠木係止部材6の壁面材係合部6bと係合する上端係合部40aと、上壁面部40bの下部に設けられた上壁面材止着部40dと、上壁面部40bの上下方向における中央部近傍に設けられ支柱2との間隔を保つ間隔保持片40eと、を有している。
【0037】
上壁面材止着部40dは、支柱2にビス止めされる固定部としての固定板部40fと、固定板部40fの上縁から壁厚方向において壁1の外側(以下、壁外側という)に向かって延出され上壁面部40bの下部に繋がる壁面連結部40gと、固定板部40fの下縁から壁厚方向において壁外側に向かってほぼ水平に延出された下延出部40hと、を有している。固定板部40fは、上壁面部40bの壁面と平行をなし支柱2と対面して当接されてビス止めされる。
【0038】
壁面連結部40gと下延出部40hとは、上下方向に間隔を隔てて対面しており、上壁面部40bの下端は壁面連結部40gよりも下に位置している。上壁面部40bの下端は、下方に向かって支柱2との間隔が狭くなるように傾斜した下端傾斜部40iを有している。下端傾斜部40iの下縁は、下延出部40hよりも高い位置に位置している。本実施形態の下端傾斜部40iの下縁は、壁面連結部40gと下延出部40hとの上下方向における中央の位置よりも上側に位置している。
【0039】
間隔保持片40eは、最上壁面材40がビス止めされた状態で、支柱2と上壁面部40bとの間隔より僅かに長く、上壁面部40bから壁厚方向における中央側に延出されている。このため、最上壁面材40は、上端係合部40aが壁面材係合部6bに係合されて、固定板部40fが支柱2にビス止めされると、間隔保持片40eが支柱2を壁厚方向に押圧することにより、上壁面部40bが壁外側に引っ張られる。このとき、上端係合部40aが壁面材係合部6bを壁外側に引っ張ることにより、上端係合部40aと壁面材係合部6bとがより確実に係合され、最上壁面材40は、位置決めされると共に安定した状態で支柱2に固定される。
【0040】
中間壁面材42は、支柱2に固定されて鉛直な壁面をなす中間壁面部42bと、中間壁面部42bの上端に設けられ上方に向かって支柱2との間隔が狭くなるように傾斜した上端傾斜部42cと、上端傾斜部42cの上縁に設けられ、上側に位置する壁面材4と係合する係合部としての連結係合部42dと、中間壁面部42bの下部に設けられた中間壁面材止着部42eと、を有している。
【0041】
中間壁面材止着部42eは、上壁面材止着部40dと同様に、支柱2にビス止めされる固定部としての固定板部42fと、固定板部42fの上縁から壁厚方向において壁外側に向かって延出され中間壁面部42bの下部に繋がる壁面連結部42gと、固定板部42fの下縁から壁厚方向において壁外側に向かってほぼ水平に延出された下延出部42hと、を有している。固定板部42fは、中間壁面部42bの壁面と平行をなし支柱2と対面して当接されてビス止めされる。中間壁面材止着部42eは、壁面連結部42gが固定板部42fより支柱2側に僅かに突出している点で上壁面材止着部40dと相違している。
【0042】
中間壁面部42bの下端は、最上壁面材40の上壁面部40bの下端と同様に、下方に向かって支柱2との間隔が狭くなるように傾斜した下端傾斜部42iを有している。下端傾斜部42iの下縁は、下延出部42hよりも高い位置に位置している。本実施形態の下端傾斜部42iの下縁は、壁面連結部42gと下延出部42hとの上下方向における中央の位置よりも上側に位置している。中間壁面材42の上端傾斜部42cと下端傾斜部42iとは、ほぼ同じ角度に傾斜している。
【0043】
連結係合部42dは、上端傾斜部42cの支柱2側の端部(以下、先端という)に設けられており、中間壁面材42が支柱2に固定された状態で、鉛直方向に沿う壁部を形成する板状の部位である。連結係合部42dは、上端傾斜部42cの先端から上方及び下方にそれぞれ延出し、上下方向の幅は、上壁面材止着部40d及び中間壁面材止着部42eの壁面連結部40g、42gと下延出部40h、42hとの間隔より、僅かに狭く形成されている。
【0044】
中間壁面材42は、連結係合部42dが、上に配置される最上壁面材40の上壁面材止着部40dまたは中間壁面材42の中間壁面材止着部42eの壁面連結部40g、42gと下延出部40h、42hとの間に挿入されて係合される。より具体的には、上に配置される壁面材40、42の下延出部40h、42h上に連結係合部42dが鉛直方向に起立した状態で載置され、例えば、中間壁面材42の固定板部42fが支柱2にビス止めされて壁面連結部42gが支柱2を押圧することにより、連結係合部42dが壁外側に引っ張られる。このとき、連結係合部42dが上に位置する壁面材40、42の下端傾斜部42iを壁外側に引っ張ることにより、連結係合部42dと下端傾斜部40i、42iとがより確実に係合され、中間壁面材42は安定した状態で支柱2に固定される。ここで、下端傾斜部40i、42iが、上下に隣接する2つの壁面材4において下側に位置する下壁面材41、42の上端部が係合される被係合部に相当する。
【0045】
最下壁面材41は、上端部と下端部は中間壁面材42と同一であり、支柱2に固定されて鉛直な壁面をなす下壁面部41bの上下方向の幅が、中間壁面部42bよりも狭い点で相違している。
【0046】
次に壁の施工方法について説明する。
本実施形態の壁1の施工方法は、まず、5本の支柱2を、適宜間隔を空けるとともに直線状に並べて各々自立させて立設する。このとき、5本の支柱2のうちの両端に位置する支柱2aは、3本の内側の支柱2bよりも、横材3の高さ分高く立設しておく。また、立設した5本の支柱2の周囲を取り囲むように、地面GLより低く窪ませておく。
次に、3本の内側の支柱2b上に横材3を載置するとともに両端に位置する2本の支柱2a間に配置し、横材3と各支柱2を固定部材7により固定する。
次に、両端の支柱2aの上の小口と横材3上に笠木係止部材6を固定する。
【0047】
次に、図4(a)に示すように、壁厚方向における一方側に設けられている壁面材係合部6bに、最上壁面材40の上端係合部40aを係合させて、固定板部40fを支柱2にビス止めする(上壁面材固定ステップ)。
【0048】
次に、図4(b)〜図4(c)に示すように、中間壁面材42を、上端部側が下端部側より支柱2側に位置するように傾斜させ、連結係合部42dを、最上壁面材40の壁面連結部40gと下延出部40hとの間に挿入し、中間壁面材42の下端部側が支柱2に近づくように回動させて固定板部42fを支柱2に当接させる。このとき、連結係合部42dが下延出部40h上にて鉛直方向に起立した状態となり、連結係合部42dの上部側が下端傾斜部40iに支柱側から当接される(下壁面材係合ステップ)。この状態で、固定板部42fをビス止めすることにより中間壁面材42を固定する(下壁面材固定ステップ)。このように、形成される壁1の上から下に順次中間壁面材42を支柱2に固定していく。
【0049】
固定する中間壁面材42の下端が、地面より低くなる中間壁面材42を固定して、壁厚方向における一方の壁面が完成する。このとき、最下壁面材41を用いても下端が地面より低くなる場合には、図4(d)に示すように、最も下に固定する壁面材として最下壁面材41を支柱に固定する。最下壁面材41は必ずしも用いなくとも構わない。
次に、図4(e)に示すように、壁厚方向において支柱2の反対側にも、壁面材4を上側から順次支柱2に固定して、反対側の壁面を形成する。
【0050】
壁厚方向における両側の壁面が完成したら、窪ませておいた地面を埋めて最も下に固定されている中間壁面材42または最下壁面材41の下端を埋設する。
次に、上端部に設けられている笠木係止部材6の笠木係止片6cに笠木5の笠木被係止片5cを係止させて笠木5を取り付けて壁1が完成する。
【0051】
本実施形態の壁構造によれば、上下に隣接する2つの壁面材40、41、42のうちの上側に位置する上壁面材40、42を固定した後に、上壁面材40、42が固定された固定板部40f、42fの壁外側にて下壁面材41、42の連結係合部41d、42dが上壁面材40、42の下端傾斜部40i、42iに係合される。このとき、連結係合部41d、42dは固定板部40f、42f及び固定板部を40f、42f固定しているビス20を覆っているので、複数の壁面材40、41、42は、上から順次取り付けられる。このため、複数の壁面材40、41、42が取り付けられたときの施工誤差を、壁1おいて視野に入りにくい下端側に累積させることが可能である。このため、複数の壁面材40、41、42が上下方向に繋げられても累積する施工誤差が視認され難い壁構造を提供することが可能である。
【0052】
また、複数の壁面材40、41、42が取り付けられたときの施工誤差が壁1の下端側に累積されるので、壁1のより上部側が最も精度が高い。このため、例えば、壁1から間隔を隔てた位置に立設された支柱と壁の上部とを繋ぐ桁を掛け渡す場合であっても精度良く設けることが可能である。このとき、例えば、桁の上下方向の幅を最上壁面材40の上下方向の幅と合わせた場合には、桁の下面と、最上壁面材40とその下に位置する中間壁面材42との接合ラインと、の高さが一致するので、優れた意匠性を備えることが可能である。
【0053】
また、上下に隣接する2つの壁面材40、41、42のうちの下側に位置する下壁面材41、42の連結係合部41d、42dは、上壁面材40、42がビス20により支柱2に固定される固定板部40f、42fの下から延出されている下延出部40h、42h上に載置され、固定板部40f、42fの上から壁外側に延出された壁面連結部40g、42gよりも下方に突出する下端傾斜部40i、42iに支柱2側から当接されるので、連結係合部41d、42dが下端傾斜部40i、42iと係合することにより上壁面材40、42を固定しているビス20を隠すことが可能である。このため、より意匠性が向上する。
【0054】
また、下端傾斜部40i、42iが壁面連結部40g、42g上に載置されるので、下壁面材41、42を、上壁面材40、42を基準に位置決めすることが可能である。更に、取り付ける際には、下壁面材41、42を上壁面材40、42に引っ掛けることができるので、施工性にも優れている。
【0055】
また、最上壁面材40が、上端係合部40aを有しているので、最上壁面材40を支柱2側の部位である、支柱2上に固定されている笠木係止部材6の壁面材係合部6bと係合させることにより、最上壁面材40の上下方向の位置が決められる。このため、上から順次取り付けられる壁面材40,41、42の基準となる最上壁面材40を、適切な位置に固定することが可能である。
【0056】
また、複数の壁面材40、41、42が上から順次取り付けられて施工誤差が壁1の下端側に累積しても、下端部は地中に埋められるので、施工誤差によるずれが露出することを防止することが可能である。
また、壁面材40、41、42は、支柱2を挟み両側に設けられているので、支柱2の両面に壁面を備えた壁1を提供することが可能である。本実施形態においては、壁面材40、41、42が、支柱2を挟み両側に設けられている例について説明したが、壁面材40、41、42は、必ずしも支柱の両側に設けられてなくとも構わない。
【0057】
また、本実施形態の壁構造の施工方法によれば、上壁面材40、42を固定した後に、上壁面材40、42が固定された固定板部40f、42fの壁外側に下壁面材41、42を係合させて、複数の壁面材40、41、42が、上から順次取り付けられるので、施工誤差を、形成される壁1の下端側に累積させることが可能である。このため、複数の壁面材40、41、42を上から下に順次取り付けていくだけで、累積する施工誤差が視認され難い壁1を容易に施工することが可能である。
【0058】
上記実施形態においては壁1の上端から下端まで複数の壁面材40、41、42が、取り付けられている例について説明したが、これに限るものでない。例えば、図5図6に示すように、上記壁1における支柱2の両側に固定されている複数の中間壁面材42のうち、壁1の上下方向における中間部分に配置されている中間壁面材42の数枚が取り付けられておらず、上下方向に間隔を空けた壁面材非装着部Sが設けられ、壁面材非装着部Sに壁1の幅方向に亘る複数の格子材8が設けられていていてもよい。
【0059】
この場合には、壁1の両面側にて、壁面材非装着部Sの上側に位置して、壁面材非装着部Sの上縁をなす中間壁面材42の下端同士を繋ぐように、互いに隣り合う支柱2間に横材3が取り付けられている。横材3の取り付けは、固定部材7により支柱2の側面と横材3の上面とが接合されている。また、壁1の両面側にて、壁面材非装着部Sの下側に位置して、壁面材非装着部Sの下縁をなす中間壁面材42の上端同士を繋ぐように、互いに隣り合う支柱2間に横材3が取り付けられている。横材3の取り付けは、固定部材7により支柱2の側面と横材3の下面とが接合されている。すなわち、固定部材7は、互いに隣り合う支柱2と両面の中間壁面材42と横材3とにより囲まれた空間内に設けられている。このため、横材3は中間壁面材42が取り付けられる前に、予め互いに隣り合う支柱2間に取り付けられている。
【0060】
各格子材8は、2つの部材が嵌合されて構成されており、嵌合された状態で断面の輪郭が矩形状をなし、壁1の幅方向に亘る長さを有している。格子材をなす2つの部材は、壁厚方向において、支柱2側となる壁内側と、反支柱2側となる壁外側とに分割可能に嵌合されている。2つの部材の一方は支柱2に固定される基部材8aであり、他方は、基部材8aの壁外側に設けられている係止片8bに係止されて基部材8aを覆うカバー部材8cである。このため、格子材8は、基部材8aが支柱2にビス止めされた後に、ビスを覆うようにカバー部材8cが基部材8aに嵌合されて取り付けられる。
【0061】
壁面材非装着部Sの上側に位置して、壁面材非装着部Sの上縁をなす中間壁面材42の下端に設けられている中間壁面材止着部42eには、カバー部材8cが嵌合されるカバー嵌合部材9が係合されており、カバー嵌合部材9は支柱2に固定されている。支柱2に固定されたカバー嵌合部材9により中間壁面材42を固定しているビスが覆われており、カバー部材8cが嵌合されることによりカバー嵌合部材9を固定しているビス20が覆われている。このため、中間壁面材42の下端は、格子材8が設けられているように見えている。
【0062】
壁面材非装着部Sの下側に位置して、壁面材非装着部Sの下縁をなす横材3には、壁面材非装着部Sの下に固定される中間壁面材42の連結係合部42dが係合される格子アタッチメント10が固定されている。格子アタッチメント10は、横材3に固定される固定板部10aと、固定板部10aの下縁から壁厚方向において壁外側に向かってほぼ水平に延出された下延出部10bと、固定板部10aの上縁から壁厚方向において壁外側に向かって延出された上延出部10cと、上延出部10cの壁外側の縁から上方に延出された鉛直壁部10dと、鉛直壁部10dの上端から横材3側に延出された水平面部10eと、水平面部10eの横材3側の縁から垂設された垂壁部10fと、鉛直壁部10dの下端から下方に突出されたアタッチメント突出部10gと、アタッチメント突出部10gの下端から横材3側に突出された突起10hと、を有している。
【0063】
水平面部10eとアタッチメント突出部10gの下端との上下方向の幅は、格子材8の上下方向の幅と同一に形成されている。格子アタッチメント10は、水平面部10eが横材3の上面と揃うように横材3に固定される。格子アタッチメント10が、横材3に固定された状態では、鉛直壁部10dとアタッチメント突出部10gとがなす繋がった平面が、中間壁面材42の中間壁面部42bと同面をなすように構成されている。
【0064】
横材3に取り付けられた格子アタッチメント10の下延出部10bには、下に配置される中間壁面材42の連結係合部42dが鉛直方向に起立した状態で載置され、突起10hに支柱2側から当接されることにより、中間壁面材42が位置決めされ、位置決めされた状態で固定板部42fが支柱2に固定される。以下、その下に設けられる中間壁面材42または最下壁面材41が固定される。
【0065】
このような壁構造によれば、中間壁面材42の上下方向に間隔が空いている壁面材非装着部Sを備えた壁1を提供することが可能である。また、中間壁面材42の上下方向に間隔が空いている壁面材非装着部Sの、上縁をなす上側の中間壁面材42の下端同士、及び、下縁をなす下側の中間壁面材42の上端同士の間を塞ぐ横材3が設けられているので、支柱2の両側に設けられている中間壁面材42間が外部に露出しにくい。このため、より意匠性に優れた壁1を提供することが可能である。
【0066】
また、壁面材非装着部Sの下縁をなす中間壁面材42は、当該中間壁面材42間を塞ぐ横材3に対して位置決めされるので、壁面材非装着部Sの下に位置する中間壁面材42の上端と、当該中間壁面材42間を塞ぐ横材3の上端とを揃えて配置することが可能である。このため、より意匠性に優れている。また、中間壁面材42と横材3の上端が平坦に揃うので、窪みが形成されず、横材3上に水が溜まることを防止することが可能である。
上記実施形態においては、壁面材非装着部Sに格子8を設けた例について説明したが、これに限るものではない。
【0067】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0068】
1 壁、2 支柱、3 横材、4 壁面材、20 ビス、40 最上壁面材(壁面材)、40a 上端係合部、40b 上壁面部、40f 固定板部、40g 壁面連結部、
40h 下延出部、40i 下端傾斜部、41 最下壁面材(壁面材)、
41d 連結係合部、42 中間壁面材(壁面材)、42d 連結係合部、
42f 固定板部、42i 下端傾斜部、
S 壁面材非装着部、
図1
図2
図3
図4
図5
図6