特許第6983727号(P6983727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧 ▶ 鬼怒川ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6983727-車両用ドアのシール構造 図000002
  • 特許6983727-車両用ドアのシール構造 図000003
  • 特許6983727-車両用ドアのシール構造 図000004
  • 特許6983727-車両用ドアのシール構造 図000005
  • 特許6983727-車両用ドアのシール構造 図000006
  • 特許6983727-車両用ドアのシール構造 図000007
  • 特許6983727-車両用ドアのシール構造 図000008
  • 特許6983727-車両用ドアのシール構造 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983727
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】車両用ドアのシール構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/50 20160101AFI20211206BHJP
   B60J 10/20 20160101ALI20211206BHJP
   B60J 10/75 20160101ALI20211206BHJP
【FI】
   B60J10/50
   B60J10/20
   B60J10/75
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-107336(P2018-107336)
(22)【出願日】2018年6月5日
(65)【公開番号】特開2019-209833(P2019-209833A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2020年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】大庭 一仁
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 隼騎
(72)【発明者】
【氏名】福島 満
(72)【発明者】
【氏名】金井 勲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅年
(72)【発明者】
【氏名】松田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 弘樹
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−144990(JP,A)
【文献】 特開2017−136979(JP,A)
【文献】 特許第5946661(JP,B2)
【文献】 米国特許第05544448(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第102015016790(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/50
B60J 10/20
B60J 10/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアのうちドアパネルのウエストフランジ部に近接しつつドアウエスト開口部に臨むドアトリムに装着されて、昇降式のドアガラスと摺接すると共に、長手方向での前端および後端のうちいずれか一方の端部が少なくともドアサッシュと突き合わされるインサイドウエザーストリップによる車両用ドアのシール構造であって、
上記インサイドウエザーストリップは、上記ドアトリムの前後方向に延在するベース部と、上記ベース部から上記ドアガラス側に向かって突出形成された少なくとも上下二段のガラスシールリップと、上記ベース部の下端から上記上下二段のガラスシールリップとは反対向きに突出形成されて上記ウエストフランジ部に当接するパネルシールリップと、から構成されていると共に、
上記インサイドウエザーストリップの上記一方の端部には遮蔽リップが一体に突出形成されていて、
上記遮蔽リップは、上記インサイドウエザーストリップの上記一方の端部のうち上記下段のガラスシールリップの先端面と上記パネルシールリップの先端面とを接続しつつ、少なくとも上記ドアサッシュに当接することで当該ドアサッシュに倣って撓み変形する可撓性に富んだものとして形成されていることを特徴とする車両用ドアのシール構造。
【請求項2】
上記遮蔽リップは、上記一方の端部の平面視において、上記ドアサッシュとそれに近接する上記ドアパネルのウエストフランジ部および上記ドアトリムとで隔離形成された空間を埋めるように撓み変形するものであることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアのシール構造。
【請求項3】
上記インサイドウエザーストリップの上記一方の端部では、上記下段のガラスシールリップおよび上記パネルシールリップのうちいずれか一方の先端面が他方の先端面よりも上記一方の端部と同方向に突出していて、
前後方向での位置が異なる上記双方の先端面同士を接続するように、上記一方の端部と同方向に向かって上記パネルシールリップ側から上り勾配で傾斜した上記遮蔽リップが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ドアのシール構造。
【請求項4】
上記インサイドウエザーストリップの上記一方の端部には端末シール部材が一体に突出形成されていて、
上記端末シール部材は、変形深皿状をなして撓み変形容易な上部の上記遮蔽リップと、上記遮蔽リップの下部のリップ支持部と、から形成されていて、
上記リップ支持部は、下方側および上記一方の端部側に向かって共に先細りとなる先鋭形状のものとして形成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用ドアのシール構造。
【請求項5】
上記リップ支持部のうち上記一方の端部側の先端が上記下段のガラスシールリップ側よりも上記パネルシールリップ側に偏倚していて、
上記リップ支持部の外周面のうち、上記一方の端部側の先端と上記下段のガラスシールリップとを接続している部分が凹陥形状部となっていることを特徴とする請求項4に記載の車両用ドアのシール構造。
【請求項6】
上記遮蔽リップの内底面の中央部には、上記べース部の先端面に跨るかたちで隔壁状の補強リブが形成されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用ドアのシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアのシール構造に関し、特に車両用ドアにおけるドアウエスト開口部に臨むドアトリムに装着されて、前端または後端が少なくともドアサッシュと突き合わされるインサイドウエザーストリップによる車両用ドアのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のインサイドウエザーストリップによる車両用ドアのシール構造として例えば特許文献1に記載されたものが提案されている。なお、インサイドウエザーストリップは、車両用ドアでの取付位置に着目して、ドアウエスト部のインナーウエザーストリップ、ウエストインナーシール、ベルトラインウエザーストリップ、あるいはドアウエストインサイドシール部材等と称されることもある。
【0003】
特許文献1に記載された車両用ドアのシール構造では、ドアサッシュ(グラスランチャンネル)に装着されているドアグラスラン(ドアガラスラン)の後側縦辺部と、ドアウエスト部(ベルトライン位置)のフランジに装着されているインナーウエザーストリップと、の突き合わせ部に着目したシール構造であって、インナーウエザーストリップのうちドアグラスランの後側縦辺部と突き合わされる部分であって、且つ頂壁リップと上方シールリップとの間にウェブ状の端面壁が形成されていて、この端面壁がドアグラスランの一方の挟持リップに押し付けられるようになっている。
【0004】
この特許文献1に記載された車両用ドアのシール構造では、インナーウエザーストリップとドアサッシュおよびドアトリムとの間で隙間が生じにくく、ドア内部に侵入した外部騒音が車室内へ侵入するのを効果的に防止することができる、とされている。なお、ここでの外部騒音とは、例えば走行中のロードノイズや風切り音等を指している。
【0005】
また、特許文献1には、インナーウエザーストリップがドアインナーパネルの上縁フランジに装着されたものが開示されているが、これに代わって、インナーウエザーストリップがドアトリムのトリムフランジ部に装着されたタイプのものが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−144990号公報
【特許文献2】特許第5946661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された車両用ドアのシール構造では、インナーウエザーストリップがドアインナーパネルの上縁フランジ(ウエストフランジ部)に装着された構造を前提としているため、例えば特許文献2に記載されているように、インナーウエザーストリップがドアトリムのトリムフランジ部に装着されるタイプのものに適用しようとする場合に、なおも改善の余地が残されている。
【0008】
具体的には、例えば特許文献2に記載されているように、ドアトリムのトリムフランジ部がドアウエスト開口部に臨むようになっていて、そのトリムフランジ部にインサイドウエザーストリップ(インナーウエザーストリップ)が装着されている場合、ドアウエスト開口部を形成しているドアインナーパネル側のウエストフランジ部とドアトリムのトリムフランジ部との間にも不可避的に隙間が存在することになる。
【0009】
そのため、特許文献1に記載されたシール構造のように、頂壁リップと上方シールリップとの間にウェブ状の端面壁を形成しただけでは、上記ウエストフランジ部とトリムフランジ部との間の隙間に起因する外部騒音の侵入経路を遮断することができず、外部騒音がなおも車室内へ侵入するおそれがある。
【0010】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、車室内への外部騒音の侵入を一段と抑制することができるようにしたインサイドウエザーストリップによる車両用ドアのシール構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車両用ドアのうちドアパネルのウエストフランジ部に近接しつつドアウエスト開口部に臨むドアトリムに装着されて、昇降式のドアガラスと摺接すると共に、長手方向での前端および後端のうちいずれか一方の端部が少なくともドアサッシュと突き合わされるインサイドウエザーストリップによる車両用ドアのシール構造である。
【0012】
そして、上記インサイドウエザーストリップは、上記ドアトリムの前後方向に延在するベース部と、上記ベース部から上記ドアガラス側に向かって突出形成された少なくとも上下二段のガラスシールリップと、上記ベース部の下端から上記上下二段のガラスシールリップとは反対向きに突出形成されて上記ウエストフランジ部に当接するパネルシールリップと、から構成されていると共に、上記インサイドウエザーストリップの上記一方の端部には遮蔽リップが一体に突出形成されている。
【0013】
その上で、上記遮蔽リップは、上記インサイドウエザーストリップの上記一方の端部のうち上記下段のガラスシールリップの先端面と上記パネルシールリップの先端面とを接続しつつ、少なくとも上記ドアサッシュに当接することで当該ドアサッシュに倣って撓み変形する可撓性に富んだものとして形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
この場合において、上記遮蔽リップは、上記ドアサッシュに当接するだけでなく、そのドアサッシュに保持されているドアグラスランに一部が当接することも当然にあり得る。
【0015】
遮音効果向上の上でさらに望ましい態様としては、上記遮蔽リップは、上記一方の端部の平面視において、上記ドアサッシュとそれに近接する上記ドアパネルのウエストフランジ部および上記ドアトリムとで隔離形成された空間を埋めるように撓み変形するようになっている。
【0016】
上記遮蔽リップのより具体的な態様としては、上記インサイドウエザーストリップの上記一方の端部では、上記下段のガラスシールリップおよび上記パネルシールリップのうちいずれか一方の先端面が他方の先端面よりも上記一方の端部と同方向に突出していて、前後方向での位置が異なる上記双方の先端面同士を接続するように、上記一方の端部と同方向に向かって上り勾配で傾斜した上記遮蔽リップが形成されている。
【0017】
さらに具体的な望ましい態様としては、上記インサイドウエザーストリップの上記一方の端部には端末シール部材が一体に突出形成されていて、上記端末シール部材は、変形深皿状をなして撓み変形容易な上部の上記遮蔽リップと、上記遮蔽リップの下部のリップ支持部と、から形成されていて、上記リップ支持部は、下方側および上記一方の端部側に向かって共に先細りとなる先鋭形状のものとして形成されている。
【0018】
同様に、さらに具体的な望ましい態様としては、上記リップ支持部のうち上記一方の端部側の先端が上記下段のガラスシールリップ側よりも上記パネルシールリップ側に偏倚していて、上記リップ支持部の外周面のうち、上記一方の端部側の先端と上記下段のガラスシールリップとを接続している部分が凹陥形状部となっている。
【0019】
同様に、さらに具体的な望ましい態様としては、上記遮蔽リップの内底面の中央部には、上記べース部の先端面に跨るかたちで隔壁状の補強リブが形成されている。
【0020】
したがって、本発明では、互いに突出方向が逆向きの上記下段のガラスシールリップと上記パネルシールリップとの先端面同士を接続するように上記遮蔽リップが形成されているので、上記ドアサッシュに対する上記遮蔽リップの当接面積を広く確保して、上記ウエストフランジ部とトリムフランジ部との間の隙間に起因する外部騒音の侵入経路を遮断することができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、インサイドウエザーストリップの一方の端部において、互いに突出方向が逆向きの下段のガラスシールリップとパネルシールリップとに跨るかたちで遮蔽リップが形成されているので、ドアサッシュに対する遮蔽リップの当接面積を広く確保することができる。そのため、外部騒音の侵入経路の遮断効果が向上し、車室内への外部騒音の侵入を一段と抑制して、さらなる車室内の静粛性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る車両用ドアのシール構造のより具体的な実施の形態を示す図で、自動車のフロントドアを開いた状態を示す説明図。
図2図1のA−A線に沿った拡大断面矢視図。
図3図2の拡大平面図であって、ドアトリムを透視化した状態での図。
図4図2に示したドアサッシュの後側の縦辺部を取り外した上で、同図のB方向から見た斜視図。
図5図2に示したインサイドウエザーストリップの断面形状の拡大図。
図6図2〜4に示したインサイドウエザーストリップの後端部を室内側から見た拡大背面図。
図7図6に示したインサイドウエザーストリップの平面図。
図8図6に示したインサイドウエザーストリップを左側から見た正面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜8は本発明に係る車両用ドアのシール構造を実施するためのより具体的な形態を示していて、特に図1は自動車のフロントドア(以下、単にドアと言う。)を開いた状態を示している。
【0024】
図1に示すドア1は、周知のように共にドアパネルであるドアアウターパネルとドアインナーパネルとをヘミング結合等により一体化したものであって、ドアウエスト開口部2から下側のドア本体3と、ドアウエスト開口部2から上側のアーチ状のドアサッシュ4と、で構成されている。なお、ドアウエスト開口部2とは、ドア本体3の上端において、後述するドアインナーパネル12のウエストフランジ部12a(図2〜4参照。)と図示を省略したドアアウターパネルのウエストフランジ部とで形成された開口部であって、後述するドアガラス6およびパーテイションガラス7が臨んでいる部分を言う。また、ドアサッシュ4は、ドア閉時に車体ルーフ部からフロントピラーに沿うかたちとなる上辺部4aと、ドア閉時にセンターピラーに沿うかたちとなる後側の縦辺部4bと、から構成される。
【0025】
ドア本体3のドアウエスト開口部2とドアサッシュ4の上辺部4aとの間にはパーテイションサッシュ5が掛け渡されている。そして、パーテイションサッシュ5よりも後方側には昇降式のドアガラス6が収容配置されていて、パーテイションサッシュ5よりも前方側には固定式(非昇降式)のパーテイションガラス7が嵌め込まれている。
【0026】
パーテイションサッシュ5を含むドアサッシュ4の内周には、図2,3に基づいて後述するようにドアグラスラン11が装着されていて、このドアグラスラン11にドアガラス6が昇降可能に案内支持されている。また、パーテイションガラス7の周囲には、図示を省略した閉ループ状のパーテイションウエザーストリップが装着されるようになっていて、このパーテイションウエザーストリップを介してパーテイションガラス7がパーテイションサッシュ5よりも前方側に固定配置されている。
【0027】
なお、ドア本体3の内側(室内側の面)には、表面に所定の加飾が施された樹脂製のドアトリム(内張り)8が装着されている。また、ドア本体3およびドアサッシュ4を含むドア1の室内側の周縁部には、中空ゴム紐状をなすドアウエザーストリップ9が閉ループ状に装着されている。そして、周知のように、ドア閉時にドアウエザーストリップ9が車体側のドア開口部周縁に弾接することで車室内外がシールされる。これにより、気密性、水密性および遮音性等が確保される。
【0028】
図2図1のA−A線に沿った拡大断面矢視図であって、ドアガラス6よりも室内側の要素のみを図示している。図3図2の拡大平面図であって、ドアトリム8を透視化した状態での図を示している。したがって、図2,3ではドアガラス6は図示されていない。また、図4図2に示したドアサッシュ4の後側の縦辺部4bを取り外した上で、同図のB方向から見た斜視図を示している。
【0029】
図1のほか図2,3に示すように、ドアサッシュ4の後側の縦辺部4bは、例えばロールフォーミング等により中空閉断面形状の本体部10aに隣接して凹形状のグラスラン受容部10bが一体に形成されたものであって、図1に示したドアウエスト開口部2よりも下側の部分において溶接等によりドア本体3に不離一体に固定されている。そして、グラスラン受容部10bにはドアグラスラン11が嵌合保持されている。
【0030】
ドアグラスラン11は例えばEPDMその他の樹脂系あるいはゴム系の弾性体により形成されていると共に、断面略コ字状をなし、その開口縁に内側に向けて左右一対のシールリップ11a,11bが突出形成されている。そして、それら一対のシールリップ11a,11b同士の間にドアガラス6を受容するようになっている。
【0031】
図1に示したドアウエスト開口部2では、図2,3に示すように、当該ドアウエスト開口部2を形成しているドアインナーパネル12側のウエストフランジ部12aが起立形成されていて、このウエストフランジ部12aの内側(室外側)にドアトリム8側の端末フランジ部8aが近接するように配置されている。つまり、ドアウエスト開口部2にドアトリム8側の端末フランジ部8aが臨んでいる。ドアトリム8の端末フランジ部8aにはEPDMその他の樹脂系あるいはゴム系の弾性体によりなるインサイドウエザーストリップ13が装着されている。端末フランジ部8aは、ドアウエスト開口部2の全長に及んでいるのに対して、インサイドウエザーストリップ13は、ドアウエスト開口部2のうちドアサッシュ4の後側の縦辺部4bとパーテイションサッシュ5との間に配置されている。
【0032】
図5図2に示したインサイドウエザーストリップ13の断面形状を拡大して示している。このインサイドウエザーストリップ13は、図2,4および図5に示すように、ドアトリム8の端末フランジ部8aに重ねて配置される板状のベース部14と、このベース部14からドアガラス6側に向かって斜め上向きに突出形成された互いに平行な上下二段のガラスシールリップ15,16と、ベース部14の下端から上下二段のガラスシールリップ15,16とは反対向きに突出形成されたパネルシールリップ17と、を備えている。インサイドウエザーストリップ13のベース部14には、例えば金属の薄板状の芯材18が埋設されていて、ベース部14と上下二段のガラスシールリップ15,16およびパネルシールリップ17とからなるインサイドウエザーストリップ13は、長手方向で均一断面形状のものとして押出成形法により成形されている。
【0033】
なお、図2,4では、芯材18の図示を省略している。また、ドアトリム8の端末フランジ部8aに対するインサイドウエザーストリップ13の固定手段は図示を省略しているが、公知の切り起こし爪片方式によりインサイドウエザーストリップ13が端末フランジ部8aに固定されている。この切り起こし爪片方式の固定構造は、例えば先に述べた特許文献2に記載されているように、芯材18が埋設されているベース部14から芯材18ごと複数の爪片を切り起こすように形成する一方、それらの爪片を端末フランジ部8a側の挿通孔に挿入した上で、端末フランジ部8aの裏面側で爪片を折り曲げる方式とする。
【0034】
インサイドウエザーストリップ13の前端は、図1に示したパーテイションサッシュ5に嵌合保持されているドアグラスラン11と突き合わされる一方、インサイドウエザーストリップ13の後端は、図2,3に示すように、ドアサッシュ4の後側の縦辺部4bおよびその縦辺部4bに嵌合保持されているドアグラスラン11の一部と突き合わされる。そして、インサイドウエザーストリップ13の上下二段のガラスシールリップ15,16は、図5に示すようにドアガラス6に弾接して、ドアガラス6の昇降動作時には当該ドアガラス6と相対摺動しつつその昇降動作を許容することになる。また、パネルシールリップ17は、図2,3および図5に示すように、ドアインナーパネル12側のウエストフランジ部12aに弾接して、ドアトリム8の端末フランジ部8aとウエストフランジ部12aとの間の隙間を遮断する機能を有している。
【0035】
図2,3に示すように、インサイドウエザーストリップ13の後端はドアサッシュ4の後側の縦辺部4bおよびその縦辺部4bに嵌合保持されているドアグラスラン11の一部と突き合わされてはいても、上下二段のガラスシールリップ15,16は直接突き合わされてはいない。その一方で、インサイドウエザーストリップ13の後端から後方側に向けて、後述する端末シール部材19が延長形成されていて、この端末シール部材19の遮蔽リップ19aがドアサッシュ4の後側の縦辺部4bおよびその縦辺部4bに嵌合保持されているドアグラスラン11の一方のシールリップ11aの根元部と突き合わされている。
【0036】
先にも説明したように、図2図1のA−A線に沿った拡大断面矢視図であって、ドアガラス6よりも室内側の要素のみを図示している。図3図2の平面図であって、ドアトリム8を透視化した状態での図を示している。また、図4図2に示したドアサッシュ4の後側の縦辺部4bを取り外した上で、同図のB方向から見た斜視図を示している。
【0037】
これらの図2〜4に示すように、インサイドウエザーストリップ13自体の後端には、ドアグラスラン11の後側の縦辺部4bの手前で途切れてはいるものの、そのインサイドウエザーストリップ13の後端から端末シール部材19が延長形成されている。この端末シール部材19は、後述するように、略変形花弁状または変形深皿状の遮蔽リップ19aと、この遮蔽リップ19aの下部のリップ支持部19bとから形成されている。て、これらのうち少なくとも遮蔽リップ19aがドアサッシュ4の後側の縦辺部4bおよびその縦辺部4bに嵌合保持されているドアグラスラン11の一方のシールリップ11aの根元部と突き合わされている。
【0038】
図6図2〜4に示したインサイドウエザーストリップ13の後端部を室内側(ドアトリム8の端末フランジ部8a側)から見た拡大背面図であり、図7図6の平面図である。また、図8図6の左側から見た正面図である。
【0039】
図5のほか図6〜8に示すように、ベース部14と上下二段のガラスシールリップ15,16およびパネルシールリップ17とからなるインサイドウエザーストリップ13は、先にも説明したように、押出成形法により長手方向で図5に示したような均一断面形状のものとして成形されている。その上で、図6に示すように、押出成形されたインサイドウエザーストリップ13の後端部(図6の左端)のうち、上下二段のガラスシールリップ15,16は傾斜した切断線13aをもって斜めにカットされ、ベース部14は切断線13aよりも奥まった傾斜した切断線13bをもって斜めにカットされている。また、パネルシールリップ17は切断線13bよりもさらに奥まった切断線13cをもって長手方向に対し直角にカットされている。
【0040】
このように、いわゆる段付き形状にカットされたインサイドウエザーストリップ13の後端の端末部を金型に挿入し、金型内に端末シール部材19となるべき樹脂材料を充填する金型成形法により、遮蔽リップ19aとその下方のリップ支持部19bとからなる端末シール部材19がインサイドウエザーストリップ13の上下二段のガラスシールリップ15,16よりもさらに後方側に突出するように一体に成形される。なお、図6〜8から明らかなように、上下二段のガラスシールリップ15,16のうち端末シール部材19に近い部分では、他の部位に比べてリップ先端がベース部14に次第に近付くように徐変している。
【0041】
より具体的には、図6〜8に示すように、インサイドウエザーストリップ13の後端のうち、ベース部14を迂回しつつ、下段のガラスシールリップ16の切断線13aとパネルシールリップ17の切断線13cとを接続するように、パネルシールリップ17の切断線13c側から下段のガラスシールリップ16の切断線13a側に向かって上り勾配で傾斜するかたちの遮蔽リップ19aを含む端末シール部材19が上向き加減で一体に形成されている。そして、図6,8に示すように、端末シール部材19は、境界線P1よりも上側の領域である略変形花弁状または変形深皿状の遮蔽リップ19aと、境界線P1よりも下側の領域であって且つ境界線P1よりも奥まった位置のリップ支持部19bと、から形成されている。また、遮蔽リップ19aの後端上面での幅寸法は、下段のガラスシールリップ16とパネルシールリップ17のリップ先端(リップ上端)同士のなす離間距離よりも幅広に形成されている。結果として、図6に示した下段のガラスシールリップ16の切断線13aおよびパネルシールリップ17の切断線13cは、共に端末シール部材19との接合線となっている。
【0042】
つまり、インサイドウエザーストリップ13の後端では、図8に示す下段のガラスシールリップ16とパネルシールリップ17の断面形状を含みつつ、それらのガラスシールリップ16およびパネルシールリップ17のリップ後端同士を結ぶようにして略変形花弁状または変形深皿状に湾曲した形状の遮蔽リップ19aを含む端末シール部材19が形成されている。この端末シール部材19は、図3に示すように、ドアサッシュ4の後側の縦辺部4bのうち本体部10aやドアグラスラン11の一部と突き合わせることを目的としているため、本体部10aやドアグラスラン11に倣って容易に撓み変形するように十分な可撓性を有している。
【0043】
そして、図6〜8に示すように、端末シール部材19の遮蔽リップ19aの上面側において、ベース部14の切断線13bと遮蔽リップ19aの内底面の中央部とに跨るかたちで、実質的にベース部14を遮蔽リップ19a側に延長するようにして、隔壁状の補強リブ20がベース部14と一部重なるように形成されている。結果として、図6に示したベース部14の切断線13bは、補強リブ20との接合線となっている。
【0044】
また、端末シール部材19のうち遮蔽リップ19aの下側のリップ支持部19bでは、図6,8から明らかなように、図5に示したインサイドウエザーストリップ13の下端部(図5のC部)の断面形状をもって収束するように、図8の正面視で下方に向かって次第に幅寸法が小さくなるような先細りの先鋭形状となっている。同時に、端末シール部材19のリップ支持部19bでは、図6の背面視で略三角形状をなしていると共に、図4および図6,8から明らかなように、端末シール部材19自体の後端側(図6の左端側)に向かっても次第に幅寸法が小さくなるような先細りの先鋭形状となっている。すなわち、端末シール部材19のリップ支持部19bは、下方および後端側に向かって共に先鋭形状となるいわゆる船体舳先形状のような形状となっている。
【0045】
その上で、図4および図6,8に示すように、端末シール部材19のリップ支持部19bのうち、最後端の稜線P2が下段のガラスシールリップ16側よりもパネルシールリップ17側に偏倚していて、リップ支持部19bの外周面のうち、最後端の稜線P2と下段のガラスシールリップ16とを接続している部分が内側に陥没した凹陥形状部19cとなっている。
【0046】
このように、端末シール部材19の主要素である遮蔽リップ19aに補強リブ20やリップ支持部19bが付帯していることによって、遮蔽リップ19a自体に必要とされる可撓性に過不足が生じないように考慮されている。つまり、端末シール部材19の略変形花弁状または変形深皿状の遮蔽リップ19aの内底面側に補強リブ20が、遮蔽リップ19aの下面側に船体舳先状のリップ支持部19bがそれぞれ形成されていることにより、端末シール部材19の遮蔽リップ19aに適度な可撓性が付与されている。ただし、図4,6から明らかなように、補強リブ20やリップ支持部19bは、遮蔽リップ19aの後端(図6の左端)までは及んでいない。
【0047】
したがって、このようなインサイドウエザーストリップ13によるシール構造では、図1に示すように、ドアガラス6は、ドアサッシュ4の後側の縦辺部4bおよびパーテイションサッシュ5に嵌合保持されたドアグラスラン11に案内支持されていて、図示しないウインドレギュレータ機構の操作により昇降可能となっている。この場合に、ドアグラスラン11やドアウエスト開口部2のインサイドウエザーストリップ13はドアガラス6の昇降動作をスムーズに許容する。
【0048】
また、ドアガラス6の閉め切り状態では、図1,5に示すように、ドアサッシュ4の後側の縦辺部4bおよびパーテイションサッシュ5に嵌合保持されたドアグラスラン11の双方のシールリップ11a,11bがドアガラス6の表裏両面に圧接することになる。同時に、インサイドウエザーストリップ13の上下二段のガラスシールリップ15,16のほか、ドアガラス6を挟んでインサイドウエザーストリップ13と対向配置された図示外のアウトサイドウエザーストリップの同じく上下二段のガラスシールリップがドアガラス6の表裏両面に圧接することになる。これにより、ドアガラス6を挟んで車室内外がシールされ、気密性、水密性および遮音性等が確保されることになる。
【0049】
その一方、車両の走行に伴って、不可避的にドア本体3の内部に侵入したロードノイズや風切り音等の外部騒音に着目した場合、図2,3に示すように、ドアサッシュ4の後側の縦辺部4bとドアトリム8側のインサイドウエザーストリップ13とが交差する部分では、インサイドウエザーストリップ13側から延長形成された端末シール部材19が後側の縦辺部4bの本体部10a等に突き合わされていて、所定のシール機能が発揮されるようになっている。
【0050】
より詳しくは、図2の平面図である図3に示すように、インサイドウエザーストリップ13から延長形成された端末シール部材19は、その遮蔽リップ19aが後側の縦辺部4bの本体部10aに押し付けられることで車幅方向に大きく撓み変形している。これにより、遮蔽リップ19aの一部がドアグラスラン11の一方のシールリップ11aの根元部に押し付けられ、同時に、ドアトリム8の端末フランジ部8aに近接するドアインナーパネル12側のウエストフランジ部12aにも押し付けられている。
【0051】
そのため、ドアサッシュ4の後側の縦辺部4bとドアトリム8側のインサイドウエザーストリップ13とが交差する部分において、ドアトリム8の端末フランジ部8aとドアインナーパネル12側のウエストフランジ部12aとの間や、端末フランジ部8aとドアサッシュ4との間に隙間が生じていたとしても、それらの隙間は端末シール部材19の遮蔽リップ19aで埋められるようにして封止されている。そのため、ドアウエスト開口部2でのインサイドウエザーストリップ13とドアサッシュ4の後側の縦辺部4bとの交差部付近における外部騒音の侵入経路が端末シール部材19の遮蔽リップ19aで遮断され、風漏れ音等を抑制して車室内の静粛性の向上に寄与することができる。
【0052】
また、例えばドアトリム8の端末フランジ部8aに対するインサイドウエザーストリップ13の組付ばらつきが生じたとしても、ドアインナーパネル12のウエストフランジ部12aとインサイドウエザーストリップ13およびドアサッシュ4の後側の縦辺部4bとの間には、可撓性に富んだ遮蔽リップ19aが必ず介在していることになるので、外部騒音の侵入経路の遮断効果が阻害されることもない。
【0053】
さらに、外部騒音の侵入経路の遮断効果を発揮する端末シール部材19は、インサイドウエザーストリップ13の後端から延長形成されているので、乗員の視認可能な位置に露出すことはなく、見栄えを損なうこともない。
【0054】
その上、図1のほか図2,3に示すように、インサイドウエザーストリップ13が予め装着されているドアトリム8をドア1に組み付ける際には、ドアトリム8の端末フランジ部8aがドアウエスト開口部2のウエストフランジ部12aを乗り越えて、そのウエストフランジ部12aよりも室外側に端末フランジ部8aを位置させる必要がある。特に図3から明らかなように、ドアサッシュ4の後側の縦辺部4bと交差することになるインサイドウエザーストリップ13の後端部は、端末シール部材19の遮蔽リップ19aを大きく撓ませながら、後側の縦辺部4bに沿わせるようにして嵌め込む必要がある。
【0055】
その対策として、端末シール部材19の遮蔽リップ19aの上面には、実質的にベース部14を延長するようなかたちで補強リブ20が形成されていて、遮蔽リップ19aの下面には、いわゆる船体舳先形状のリップ支持部19bが形成されている。遮蔽リップ19aのうち、これらの補強リブ20やリップ支持部19bに接続されている部分では、補強リブ20やリップ支持部19bが形成されていない後端部に比べて前後方向では撓みにくくなっていて、相対的に遮蔽リップ19aの後端部側を撓みやすくしてある。
【0056】
そのため、図3に示すように、ドアウエスト開口部2における端末フランジ部8aや、ドアサッシュ4の後側の縦辺部4bにおける本体部10a、さらにはその後側の縦辺部4bに嵌合保持されているドアグラスラン11のうち一方のシールリップ11aの根元部に対して、端末シール部材19の遮蔽リップ19aをそれらに倣わせるように追従させて撓み変形させることで、各要素間の隙間を効果的に埋めるようにして遮蔽することができる。
【0057】
しかも、端末シール部材19のうち遮蔽リップ19aよりも下側のリップ支持部19bでは、いわゆる船体舳先形状の如き形状となっていると共に、リップ支持部19bのうち下段のガラスシールリップ16寄りの部分が比較的大きく陥没して凹陥形状部19cとなっている。そのため、先にも述べたように、遮蔽リップ19aを撓ませながら、ドアトリム8のうちインサイドウエザーストリップ13が予め装着されている端末フランジ部8aをドアウエスト開口部2におけるウエストフランジ部12aを乗り越えさせる際に好都合となる。つまり、端末シール部材19の遮蔽リップ19aをドアサッシュ4の後側の縦辺部4bに倣わせるように撓ませながら、ドアウエスト開口部2におけるウエストフランジ部12aよりも室外側にインサイドウエザーストリップ13を嵌め込むことが容易にできるようになる。
【0058】
その結果として、インサイドウエザーストリップ13に端末シール部材19が一体に形成されていても、そのインサイドウエザーストリップ13が予め装着されているドアトリム8の組付性が損なわれることがない。
【0059】
ここで、上記実施の形態では、インサイドウエザーストリップ13として、上下二段のガラスシールリップ15,16を備えているものを例にとって説明したが、インサイドウエザーストリップ13の仕様によっては三段以上のガラスシールリップを備えているものもあり、その場合にも本発明を適用することができる。
【0060】
さらに、上記実施の形態では、図1に示したように、パーテイションサッシュ5を有するフロントドア1のうち、ドアサッシュ4の後側の縦辺部4bとインサイドウエザーストリップ13との交差部を例にとって説明したが、この態様に本発明は限定されない。例えば、フロントドアやリアドアの違いや、パーテイションサッシュの有無にかかわらず、ドアサッシュの縦辺部とインサイドウエザーストリップとが交差する部分でさえあれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…フロントドア
2…ドアウエスト開口部
3…ドア本体
4…ドアサッシュ
6…ドアガラス
8…ドアトリム
8a…端末フランジ部
11…ドアグラスラン
12…ドアインナーパネル
12a…ウエストフランジ部
13…インサイドウエザーストリップ
14…ベース部
15,16…ガラスシールリップ
17…パネルシールリップ
19…端末シール部材
19a…遮蔽リップ
19b…リップ支持部
19c…凹陥形状部
20…補強リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8