(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0014】
<本発明に係る第1の実施形態であるステレオカメラシステムの構成例>
図1は、本発明に係る第1の実施形態であるステレオカメラシステム1の構成例を示している。ステレオカメラシステム1は、測距カメラ10a,10b、及び統合部20を備える。
【0015】
測距カメラ10aは、例えば、路面に対して垂直な方向(図面に対して垂直な方向)に配置された第1撮像部11a(
図2)及び第2撮像部13a(
図2)を有するステレオカメラから成る。測距カメラ10aは、画角範囲AOVaを撮像し、撮像結果として得られる画像を統合部20に出力する。また、測距カメラ10aは、単体として、画角範囲AOVaに存在する物体を測距する(距離を測定する)機能を有し、測距結果を統合部20に出力する。なお、測距カメラ10aは、ステレオカメラの他、例えば、TOF(time of flight)カメラによって実現できる。
【0016】
同様に、測距カメラ10bは、例えば、路面に対して垂直な方向に配置された第1撮像部11b(
図2)及び第2撮像部13b(
図2)を有するステレオカメラから成る。測距カメラ10bは、画角範囲AOVbを撮像し、撮像結果として得られる画像を統合部20に出力する。また、測距カメラ10bは、単体として、画角範囲AOVbに存在する物体を測距する機能を有し、測距結果を統合部20に出力する。なお、測距カメラ10bは、例えば、ステレオカメラの他、TOFカメラによって実現できる。
【0017】
以下、測距カメラ10a、10bを個々に区別する必要が無い場合、単に測距カメラ10と称する。
【0018】
統合部20は、測距カメラ10の対(測距カメラ10a,10b)を1つのステレオカメラSabと見做して物体を測距する。ステレオカメラSabは、本発明の仮想ステレオカメラに相当する。
【0019】
すなわち、統合部20は、測距カメラ10aと測距カメラ10bのそれぞれで撮像された画像を取得し、取得した画像を用いたステレオマッチング処理により、測距カメラ10aの画角範囲AOVaと測距カメラ10bの画角範囲AOVbとが重複する重複領域Rabに存在している物体を測距する。当然ながら、ステレオカメラSabは、重複領域Rabに存在しない物体を測距することはできない。
【0020】
ステレオカメラSabは、その基線長L2(
図4)が、測距カメラ10の単体の基線長L1(
図4)よりも長くなるので、所定の距離よりも遠くに存在する物体に対する測距精度を測距カメラ10の単体よりも上げることができる。
【0021】
そこで、統合部20は、ステレオカメラSabの方が測距カメラ10の単体よりも測距精度が高くなる境の所定の距離を距離閾値THLとし、重複領域Rabに存在する物体のうち、測距カメラ10から距離閾値THLよりも遠くに存在する物体についてはステレオカメラSabによる測距結果を採用し、距離閾値THLよりも近い領域Ra,Rbに存在する物体については測距カメラ10の単体による測距結果を採用する。また、統合部20は、ステレオカメラSabによって測距できない物体については、測距カメラ10の単体での測距結果を採用する。
【0022】
さらに、統合部20は、正確な距離が分かっている物体を測距することにより、正確な距離と測距結果との差分に基づいて、ステレオカメラSabの自己キャリブレーションを実行する。
【0023】
なお、
図1の場合は異なるが、測距カメラ10aの画角範囲AOVaに測距カメラ10bを配置し、統合部20が、測距カメラ10aによって撮像された、測距カメラ10bが写り込んでいる画像に基づき、ステレオカメラSabの基線長とその傾きを決定、補正するようにしてもよい。
【0024】
次に、
図2は、ステレオカメラシステム1の詳細な構成例を示すブロック図である。なお、
図2の構成例において、測距カメラ10は、第1撮像部11及び第2撮像部13を有するステレオカメラである。
【0025】
測距カメラ10は、第1撮像部11、歪補正部12、第2撮像部13、歪補正部14、及び距離算出部15を有する。
【0026】
以下、測距カメラ10aの第1撮像部11を、その符号にaを追加して第1撮像部11aと称する。その他の構成要素についても同様とする。また、測距カメラ10bについても同様とする。
【0027】
第1撮像部11は、例えば広角レンズや魚眼レンズ等から成る集光部31(
図3)と、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等から成る高解像度イメージセンサ32(
図3)を有する。第1撮像部11においては、集光部31によって物体の光を高解像度イメージセンサ32に集光し、高解像度イメージセンサ32にて光電変換により第1画像を生成する。第1撮像部11は、第1画像を歪補正部12に出力する。歪補正部12は、第1画像に生じている画像歪を補正して距離算出部15に出力する。
【0028】
第2撮像部13は、例えば広角レンズや魚眼レンズ等から成る集光部33(
図3)と、CMOS等から成る低解像度イメージセンサ34(
図3)を有する。第2撮像部13においては、集光部33によって物体の光を低解像度イメージセンサ34に集光し、低解像度イメージセンサ34にて光電変換により第2画像を生成する。第2撮像部13は、第2画像を歪補正部14に出力する。歪補正部14は、第2画像に生じている画像歪を補正して距離算出部15に出力する。
【0029】
図3は、測距カメラ10における第1撮像部11と第2撮像部13との位置関係の例を示している。同図に示されるように、第1撮像部11と第2撮像部13とは、基線長L1(例えば、数cm)だけ路面に対して垂直な方向に離れて配置されている。第1撮像部11と第2撮像部13とは、路面に対して水平な方向の画角範囲が共通なので、オクルージョンの発生を抑止することができる。
【0030】
なお、第1撮像部11の高解像度イメージセンサ32と、第2撮像部13の低解像度イメージセンサ34とは解像度が異なる。したがって、高解像度イメージセンサ32から得られる第1画像は、低解像度イメージセンサ34から得られる第2画像よりも高解像度となる。なお、低解像度イメージセンサ34は、高解像度イメージセンサ32よりも価格が安いので、その分だけ生産コストを抑えることができる。ただし高解像度イメージセンサ32と低解像度イメージセンサ34との解像度を統一するようにしてもよい。
【0031】
図2に戻る。距離算出部15は、画像歪を補正した第1画像及び第2画像に基づき、ステレオマッチング処理によって、第1画像と第2画像との両方に写っている物体までの距離を算出して距離判定部23に出力する。
【0032】
測距カメラ10bは、測距カメラ10aと同様に構成されているので、その説明は省略する。
【0033】
図4は、測距カメラ10aの第1撮像部11a及び第2撮像部13aと、測距カメラ10bの第1撮像部11b及び第2撮像部13bとの位置関係の例を示している。
【0034】
ステレオカメラSabを成す測距カメラ10aと測距カメラ10bとは、路面に対して水平な方向に、例えば数mだけ離して配置される。したがって、ステレオカメラSabの基線長L2も数mとなり、測距カメラ10の単体での基線長L1よりも長くなる。よって、ステレオカメラSabは、測距カメラ10の単体に比較して、高い測距精度を実現することができる。
【0035】
図2に戻る。統合部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、通信I/F等から成り、画像取得部21、距離算出部22、及び距離判定部23の各機能ブロックを実現する。
【0036】
画像取得部21は、測距カメラ10aの歪補正部12aから高解像度の第1画像aを取得し、測距カメラ10bの歪補正部12bから高解像度の第1画像bを取得して距離算出部22に出力する。距離算出部22は、2枚の第1画像a,bに基づき、ステレオマッチング処理によって、第1画像a,bの両方に写っている物体までの距離を算出して距離判定部23に出力する。
【0037】
なお、画像取得部21が、測距カメラ10a,10bから低解像度の第2画像a,bを取得し、距離算出部22にて、第2画像a,bに基づき、物体までの距離を算出するようにしてもよい。ただし、高解像度の第1画像a,bを用いる方が、低解像度の第2画像a,bを用いる場合に比較して、より高い精度でステレオマッチング処理を行うことができるので、得られる測距結果もより高い精度を得ることができる。
【0038】
距離判定部23は、測定結果が距離閾値THL(例えば、10m)未満であった物体については、測距カメラ10の単体での測距結果を採用し、測定結果が距離閾値THL以上であった物体についてはステレオカメラSabによる測距結果、すなわち、距離算出部22による算出結果を採用すると判定する。また、距離判定部23は、ステレオカメラSabによって測距できない物体についても、測距カメラ10の単体での測距結果を採用すると判定する。さらに、距離判定部23は、何らかの原因(ステレオマッチングができない場合、故障の場合等)により、測距カメラ10の単体及びステレオカメラSabの一方が測距結果を得られず、他方が測距結果を得られた場合、他方の測距結果を採用すると判定する。そして、距離判定部23は、判定結果に対応する測距結果を、所定の装置(不図示)等に出力する。
【0039】
なお、測距カメラ10の単体とステレオカメラSabとの両方によって測距できる重複領域Rabに存在する物体の距離については、測距カメラ10の単体による測距結果とステレオカメラSabによる測距結果とを用いた所定の演算値(例えば、重み付け平均値)を採用するようにしてもよい。
【0040】
該所定の装置に出力された物体の測距結果は、例えば、3D映像としてディスプレイに表示したり、ステレオカメラシステム1を搭載する自動車のECU(Electronic Control Unit)に供給したり、所定のサーバに送信したりするようにしてもよい。
【0041】
次に、
図5〜
図7は、ステレオカメラSabと、測距カメラ10の単体とによる、物体までの距離に対する測距精度を表している。なお、各図の横軸は測距の対象となる物体までの実際の距離を示し、縦軸は測距精度を示している。ここで、測距精度とは、実際の距離に対する測距結果の誤差を百分率で示したものであり、各図においては、その値が小さいほど、測距精度が高いことを意味する。
【0042】
図5は、縦軸に平行な破線によって示す所定の距離(距離閾値THL)よりも近くに存在する物体については、ステレオカメラSabではオクルージョンによって測距ができず、所定の距離よりも遠くに存在する物体については、ステレオカメラSabの方が、測距カメラ10の単体よりも測距精度が高い場合を示している。このような場合、所定の距離を距離閾値THLとし、距離閾値THLよりも近くに存在する物体については測距カメラ10の単体による測距結果を採用し、距離閾値THLよりも遠くに存在する物体についてはステレオカメラSabによる測距結果を採用するようにする。
【0043】
図6は、縦軸に平行な破線によって示す所定の距離(距離閾値THL)よりも近くに存在する物体については、測距カメラ10の単体の方がステレオカメラSabよりも測距精度が高く、距離閾値THLよりも遠くに存在する物体については、ステレオカメラSabの方が測距カメラ10の単体よりも測距精度が高い場合を示している。このような場合でも、所定の距離を距離閾値THLとし、距離閾値THLよりも近くに存在する物体については測距カメラ10の単体による測距結果を採用し、距離閾値THLよりも遠くに存在する物体についてはステレオカメラSabによる測距結果を採用するようにする。
【0044】
図7は、統合部20による自己キャリブレーション前後の測距精度を示している。自己キャリブレーション後においては、測距カメラ10の単体による測距精度とステレオカメラSabによる測距精度との優劣が逆転する縦軸に平行な破線によって示す所定の距離が変化するので、自己キャリブレーション後においては距離閾値THLも変更するようにする。なお、同図においては、ステレオカメラSabのみ自己キャリブレーションを行っているが、測距カメラ10の単体として自己キャリブレーションを行うようにしてもよい。
【0045】
<ステレオカメラシステム1の動作>
次に、
図8は、ステレオカメラシステム1による動作の一例を説明するフローチャートである。
【0046】
この動作は、例えばユーザからの所定の操作に応じて開始される。
【0047】
はじめに、測距カメラ10a,10bが、それぞれ単体として、自己の画角範囲に存在する物体を測距し、測距結果を統合部20に出力する(ステップS1)。
【0048】
具体的には、測距カメラ10aでは、第1撮像部11aが画角範囲AOVaを撮像し、その結果得られる第1画像aを歪補正部12aに出力し、歪補正部12aが第1画像aに生じている画像歪を補正して距離算出部15aに出力する。これと同時に、第2撮像部13aが画角範囲AOVaを撮像し、その結果得られる第2画像aを歪補正部14aに出力し、歪補正部14aが、第2画像aに生じている画像歪を補正して距離算出部15aに出力する。さらに、距離算出部15aが、画像歪を補正した第1画像a及び第2画像aに基づき、ステレオマッチング処理によって、第1画像aと第2画像aとの両方に写っている物体までの距離を算出して距離判定部23に出力する。
【0049】
なお、測距カメラ10bも、上述した測距カメラ10aと同様の動作を同時に実行するが、その説明は省略する。
【0050】
次に、統合部20が、測距カメラ10a,10bを1つのステレオカメラSabと見做して物体を測距する(ステップS2)。
【0051】
具体的には、統合部20の画像取得部21が、測距カメラ10aの歪補正部12aから高解像度の第1画像aを、測距カメラ10bの歪補正部12bから高解像度の第1画像bを取得して距離算出部22に出力する。そして、距離算出部22が、画像歪を補正した高解像度の第1画像a,bに基づき、ステレオマッチング処理によって、第1画像a,bの両方に写っている、すなわち、重複領域Rab(
図1)に存在する物体までの距離を算出して距離判定部23に出力する。
【0052】
次に、距離判定部23が、測定結果が距離閾値THL以上であった物体についてはステレオカメラSabによる測距結果を採用すると判定し、測定結果が距離閾値THL未満であった物体については測距カメラ10aまたは10bが単体で算出した測距結果を採用すると判定する。そして、距離判定部23が、判定結果に対応する測距結果を、所定の装置(不図示)等に出力する(ステップS3)。
【0053】
この後、処理はステップS1に戻り、例えば、動作終了を指示する操作がユーザから入力されるまで、ステップS1〜S3が繰り返し実行される。
【0054】
以上説明したように、ステレオカメラシステム1によれば、2つの測距カメラ10の画角範囲に存在する物体をその距離に応じて精度良く測距することが可能となる。
【0055】
<本発明に係る第2の実施形態である車載ステレオカメラシステムの構成例>
次に、
図9は、本発明に係る第2の実施形態である車載ステレオカメラシステム2の構成例を示している。なお、車載ステレオカメラシステム2の構成要素のうち、ステレオカメラシステム1(
図2)の構成要素と共通するものには同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0056】
車載ステレオカメラシステム2は、自動車40に搭載される。車載ステレオカメラシステム2は、自動車40の全周囲に存在する物体を検知するためのものである。
【0057】
車載ステレオカメラシステム2は、測距カメラ10a,10b,10c,10d、及び統合部20ab,20bc,20cd,20adを備える。
【0058】
測距カメラ10a〜10dは、自動車40の四隅に配置される。すなわち、例えば、測距カメラ10aは自動車40の右前隅に右前方向に向けて配置され、測距カメラ10bは自動車40の右後隅に右後方向に向けて配置され、測距カメラ10cは自動車40の左後隅に左後方向に向けて配置され、測距カメラ10dは自動車40の左前隅に左前方向に向けて配置される。ただし、測距カメラ10a〜10dの配置は上述した例に限るものではなく、例えば、ドアミラー等の車体から突出している部分に配置してもよい。
【0059】
統合部20ab,20bc,20cd,20adは、それぞれ統合部20(
図2)と同様に構成される。
【0060】
統合部20abは、測距カメラ10a,10bに接続されており、測距カメラ10a,10bそれぞれから単体としての測距結果を取得する。また、統合部20abは、測距カメラ10a,10bをステレオカメラSabと見做して物体を測距する。そして、統合部20abは、測距カメラ10a,10bそれぞれの単体としての測距結果、またはステレオカメラSabによる測距結果を走行制御ECU50に出力する。
【0061】
統合部20bcは、測距カメラ10b,10cに接続されており、測距カメラ10b,10cそれぞれから単体としての測距結果を取得する。また、統合部20bcは、測距カメラ10b,10cをステレオカメラSbcと見做して物体を測距する。そして、統合部20bcは、測距カメラ10b,10cそれぞれの単体としての測距結果、またはステレオカメラSbcによる測距結果を走行制御ECU50に出力する。
【0062】
統合部20cdは、測距カメラ10c,10dに接続されており、測距カメラ10c,10dそれぞれから単体としての測距結果を取得する。また、統合部20cdは、測距カメラ10c,10dをステレオカメラScdと見做して物体を測距する。そして、統合部20cdは、測距カメラ10c,10dそれぞれの単体としての測距結果、またはステレオカメラScdによる測距結果を走行制御ECU50に出力する。
【0063】
統合部20adは、測距カメラ10a,10dに接続されており、測距カメラ10a,10dそれぞれから単体としての測距結果を取得する。また、統合部20adは、測距カメラ10a,10dをステレオカメラSadと見做して物体を測距する。そして、統合部20adは、測距カメラ10a,10dそれぞれの単体としての測距結果、またはステレオカメラSadによる測距結果を走行制御ECU50に出力する。
【0064】
したがって、車載ステレオカメラシステム2においては、4台の測距カメラ10によって4台のステレオカメラが実現されている。
【0065】
自動車40が備える走行制御ECU50は、自動車40における各種の機能を制御する。例えば、走行制御ECU50は、各統合部20から入力される測距結果に基づき、全周囲に存在する物体を検出し、自動運転機能、自動ブレーキ機能、自動追従機能等を実現する。
【0066】
なお、統合部20ab,20bc,20cd,20adについては、接続される測距カメラ10と一体的に形成してもよい。また、統合部20ab,20bc,20cd,20adによる動作を、走行制御ECU50に実行させるようにしてもよい。
【0067】
次に、
図10は、車載ステレオカメラシステム2における各測距カメラ10の画角範囲を示している。
【0068】
なお、車載ステレオカメラシステム2における各測距カメラ10は、ステレオカメラシステム1(
図1)における各測距カメラ10よりも画角が広く、例えば、240°程度の画角範囲を有する。
【0069】
自動車40の右前隅に配置された測距カメラ10aに注目した場合、その画角範囲AOVaには、自動車40の右後隅に配置された測距カメラ10bの画角範囲AOVbと重なり合う重複領域Rabと、自動車40の左前隅に配置された測距カメラ10dの画角範囲AOVdと重なり合う重複領域Radと、画角範囲AOVb及びAOVdが重複しないオクルージョン領域Baとが生じている。
【0070】
重複領域Rabに存在する物体は、測距カメラ10aの単体によって測距でき、且つ、測距カメラ10a,10bから成るステレオカメラSabによって測距できる。重複領域Radに存在する物体は、測距カメラ10aの単体によって測距でき、且つ、測距カメラ10a,10dから成るステレオカメラSadによって測距できる。オクルージョン領域Baに存在する物体は、測距カメラ10aの単体によってのみ測距できる。したがって、総合部20abは、
図11に示すように、測距カメラ10aの単体による測距結果を採用する範囲Raを定める距離閾値THLを、測距カメラ10aからオクルージョン領域Baの最遠距離よりも大きな値に設定すればよい。
【0071】
そして、統合部20abが、測定結果が距離閾値THL以上であった物体についてはステレオカメラSabによる測距結果を採用すると判定し、測定結果が距離閾値THL未満であった物体については測距カメラ10aの単体による測距結果を採用すると判定し、判定結果に対応する測距結果を、走行制御ECU50に出力するようにすればよい。
【0072】
測距カメラ10b〜10dに注目した場合については、上述した測距カメラ10aに注目した場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0073】
以上説明したように、車載ステレオカメラシステム2によれば、自動車40の全周囲に存在する物体を、その距離に応じて精度良く測距することが可能となる。
【0074】
<測距カメラ10の変形例>
図12は、測距カメラ10として採用し得るステレオカメラ101の構成例を示している。
【0075】
ステレオカメラ101は、上側双曲面ミラー102、下側双曲面ミラー103、結像光学系104、イメージセンサ105、駆動制御部118、及び画像処理部119を備える。
【0076】
上側双曲面ミラー102、及び下側双曲面ミラー103は、凸状の双曲面を有するミラーである。上側双曲面ミラー102及び下側双曲面ミラー103は、中心軸を共通とし、それぞれの頂点が対向する向きで所定の間隔を空けて上下に配置されている。
【0077】
上側双曲面ミラー102は、頂点部分に開口106を有する。
【0078】
下側双曲面ミラー103は、中心軸を共通とし、曲率が異なる外周側双曲面ミラー107、及び内周側双曲面ミラー108からなる。外周側双曲面ミラー107と内周側双曲面ミラー108との境界には、多少の段差があってもよい。
【0079】
結像光学系104は、1枚以上のレンズから成り、開口106の中に配置される。結像光学系104は、下側双曲面ミラー103にて反射した光を収束してイメージセンサ105に入射させる。
【0080】
イメージセンサ105は、例えばCMOSから成り、駆動制御部118からの制御に従い、結像光学系104を介して入射された光に基づき、出力画像117を生成し駆動制御部118に出力する。
【0081】
駆動制御部118は、イメージセンサ105の駆動を制御する。また、駆動制御部118は、イメージセンサ105が出力する出力画像117を画像処理部119に供給する。画像処理部119は、供給された出力画像117に基づき、被写体109の3次元位置情報120を生成する。
【0082】
ここで、上側双曲面ミラー102、外周側双曲面ミラー107、及び内周側双曲面ミラー108をなす双曲面ミラーの一般的な性質について説明する。
【0083】
上側双曲面ミラー102、外周側双曲面ミラー107、及び内周側双曲面ミラー108それぞれの双曲面は、次式(1)によって表される2次曲面において、円錐定数κが−1よりも小さい場合に相当する。
【0085】
ここで、式(1)におけるz(r)は光軸上の頂点を原点とする光軸方向の面のサグ量である。cは光軸上の曲率(軸上曲率)である。rは光軸からの半径座標である。
【0086】
一般に、双曲面は2つの焦点を有する。2つの焦点の座標は、面頂点を基準として次式(2)によって表される。
【0088】
なお、式(2)における±が+である場合が双曲面の内側にある焦点の座標を表す。式(2)における±が−である場合が双曲面の外側にある焦点の座標を表す。以下、双曲面の内側にある焦点を第1焦点と称し、双曲面の外側にある焦点を第2焦点と称する。
【0089】
双曲面ミラーは、第1焦点に向かう光線を双曲面にて反射すると、その反射光を第2焦点に集光させる性質を有する。逆に、双曲面ミラーは、第2焦点から出射された光を第1焦点から出射されたかのように反射する性質を有する。
【0090】
次に、
図13は、上側双曲面ミラー102と外周側双曲面ミラー107と内周側双曲面ミラー108との関係を示す断面図である。
【0091】
上側双曲面ミラー102と外周側双曲面ミラー107と内周側双曲面ミラー108との関係は、上側双曲面ミラー102の第2焦点1022が、内周側双曲面ミラー108の第1焦点1081と略一致するようになされている。また、この一致点は、外周側双曲面ミラー107の第1焦点1071と略一致する必要はないが、近傍に位置するようになされている。
【0092】
さらに、外周側双曲面ミラー107の第2焦点1072が、内周側双曲面ミラー108の第2焦点1082と略一致するようになされている。この一致点には、結像光学系104が配置されている。この一致点は、上側双曲面ミラー102の第1焦点1021と略一致する必要はないが、近傍に位置するようになされている。
【0093】
これにより、
図12に示された測距カメラ10においては、被写体109からの光110のうち、上側双曲面ミラー102の第1焦点(上側視点)1021に向かう光112は、上側双曲面ミラー102によって反射されて、上側双曲面ミラー102の第2焦点1022に集光される。
【0094】
上側双曲面ミラー102の第2焦点1022は、内周側双曲面ミラー108の第1焦点1081と略一致する。よって、上側双曲面ミラー102の第2焦点1022に集光される光は、内周側双曲面ミラー108の第1焦点1081に向かう光と見做せるので、この光は、内周側双曲面ミラー108によって再び反射されて、内周側双曲面ミラー108の第2焦点1082に集光される。
【0095】
一方、被写体109からの光110のうち、外周側双曲面ミラー107の第1焦点(下側視点)1071に向かう光114は、外周側双曲面ミラー107によって反射され、外周側双曲面ミラー107の第2焦点1072に向けて集光反射される。
【0096】
外周側双曲面ミラー107の第2焦点1072と内周側双曲面ミラー108の第2焦点1082は略一致し、この一致点には結像光学系104が配置されている。したがって、上側双曲面ミラー102によって反射され、さらに内周側双曲面ミラー108によって反射された反射光と、外周側双曲面ミラー107によって反射された反射光とは、結像光学系104によって同時にイメージセンサ105に入射される。これにより、イメージセンサ105は、内周側に上側視点(第1焦点)1021から見た被写体109の像115が写され、それと同時に外周側に下側視点(第1焦点)1071から見た被写体109の像116が写された出力画像117を生成することができる。
【0097】
このようにして得られた出力画像117は、駆動制御部118を介して画像処理部119に供給される。画像処理部119は、出力画像117を、像115が写されている内周領域と、像116が写されている外周領域とに分離し、それぞれに射影変換処理を行い、その結果得られる2枚の画像においてステレオマッチング処理を行い、被写体109の3次元位置情報120を生成する。
【0098】
生成された3次元位置情報120は、統合部20(
図1)に供給される。
【0099】
なお、上述したステレオカメラ101における一部の構成要素、例えば、駆動制御部118や画像処理部119については、ステレオカメラ101から独立させて、例えば、自動車40の走行制御ECU50(
図9)に実行させてもよい。
【0100】
<上側双曲面ミラー102と外周側双曲面ミラー107と内周側双曲面ミラー108とのその他の関係>
ステレオカメラ101においては、内周側双曲面ミラー108の円錐定数κの絶対値が、外周側双曲面ミラー107の円錐定数κの絶対値よりも大きくなる値に設定されている。これにより、出力画像117においては、上側視点1021から見た被写体109の像115と、下側視点1071から見た被写体109の像116との大きさが揃えられている。
【0101】
出力画像117における内周側の像115と外周側の像116とのサイズを揃えることにより、像115と像116の解像度を合わせることができ、ステレオマッチング処理の精度を上げることができる。
【0102】
また、ステレオカメラ101においては、上側双曲面ミラー102には、下側双曲面ミラー103よりも口径が大きい双曲面ミラーが採用されている。上側双曲面ミラー102の口径を下側双曲面ミラー103よりも大きくすることで、下側視点1071の上向き画角の光線を上側視点1021で受光でき、ステレオ視を行うことができる上下の画角範囲を最大限まで広く確保することが可能となる。
【0103】
なお、仮に、上側双曲面ミラー102と下側双曲面ミラー103との口径が略等しい場合、下側双曲面ミラー103は外周側双曲面ミラー107と内周側双曲面ミラー108とに分離されているため、下側視点1071の視野範囲は必然的に狭くなってしまうことになる。
【0104】
ところで、ステレオカメラ101は、口径が大きく結像光学系104含む上側双曲面ミラー102が上側に、口径が小さい方の下側双曲面ミラー103が下側に配置されている。この上下の位置関係は反対にしても実用上支障はない。
【0105】
しかしながら、ステレオカメラ101を自動車40の四隅に配置する場合、ステレオ視できる画角範囲があまり広くないことが問題となる。特に完全自動運転のための周囲センシング用途にステレオカメラ101を用いるためには自動車近傍を撮影することが必須であり、下向きの画角範囲を確保することが必要である。
【0106】
ステレオカメラ101においては、上側視点1021に入射する下向き画角の光線が、下側視点1071に入射する画角範囲よりも広い範囲をカバーできるようにしている。これにより上側視点1021による単眼視にはなるが、自動車の近傍を撮影することが可能とすることができる。自動車の近傍の画像は、主に路面にひかれたセンタライン等の白線を検知するために必要となるが、白線は路面にひかれていることが既知であるため、単眼視でも距離を計測することが可能である。そのため、結像光学系104が配置されている大きい方の上側双曲面ミラー102を上側に配置することが有効となる。
【0107】
次に、
図14は、上側双曲面ミラー102、外周側双曲面ミラー107、及び内周側双曲面ミラー108に関する曲率半径r、円錐定数κ、頂点位置、及び口径の一例を示している。
【0108】
同図の例では、上側双曲面ミラー102の曲率半径rは15mm、円錐定数κは−3.1、頂点位置は0mm、口径は34mm、外周側双曲面ミラー107の曲率半径rは−17mm、円錐定数κは−2.94、頂点位置は−18.5056mm、口径は25mm、内周側双曲面ミラー108の曲率半径rは−22mm、円錐定数κは−130、頂点位置は−18.5086mm、口径は9mmとされている。ただし、
図14は、一例に過ぎず、ステレオカメラ101には、任意の上側双曲面ミラー102、外周側双曲面ミラー107、及び内周側双曲面ミラー108を採用することができる。
【0109】
以上、本発明に係る各実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態の一例は、本発明を分かり易くするために詳細に説明したものであり、本発明は、ここで説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ある実施形態の一例の構成の一部を他の一例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の一例の構成に他の一例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の一例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることもできる。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、図中の制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、全てを示しているとは限らない。ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。