特許第6983749号(P6983749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983749剛構造超高分子量ポリエチレン一方向テープ及び複合材料、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983749
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】剛構造超高分子量ポリエチレン一方向テープ及び複合材料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/06 20060101AFI20211206BHJP
   D06M 10/02 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   C08J5/06CFF
   D06M10/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2018-236035(P2018-236035)
(22)【出願日】2018年12月18日
(62)【分割の表示】特願2017-172895(P2017-172895)の分割
【原出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-73716(P2019-73716A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2018年12月18日
(31)【優先権主張番号】61/531,302
(32)【優先日】2011年9月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/594,747
(32)【優先日】2012年8月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】タム,トーマス・イウ−タイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォリング,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】アーディフ,ヘンリー・ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】グルンデン,ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ジョン・アームストロング
(72)【発明者】
【氏名】クレイン,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ハースト,デーヴィッド・エイ
(72)【発明者】
【氏名】アーヴィドソン,ブライアン・デュアン
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−517101(JP,A)
【文献】 特表2005−523179(JP,A)
【文献】 特表平05−502256(JP,A)
【文献】 特表2008−544208(JP,A)
【文献】 米国特許第07964518(US,B1)
【文献】 特表2013−529282(JP,A)
【文献】 特開平02−006657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16,15/08−15/14
C08J 5/04−5/10,5/24
F41H 1/00−1/08
B32B
D06M 10/00−10/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の隣接する繊維層を含む繊維複合材料であって、
各繊維層は、脂肪族ポリエーテル系ポリウレタンを含む重合体材料で少なくとも部分的に被覆されている表面を有する繊維を含み、
前記繊維は、残留した繊維表面仕上げ剤が繊維表面に存在するように、繊維表面仕上げ剤を部分的に含まず、ここで、繊維表面積の50%未満が前記繊維表面仕上げ剤で覆われており、
前記重合体材料は、前記繊維表面仕上げ剤で覆われていない前記繊維表面と直接接触し、
繊維表面仕上げ剤で被覆された50%を超える繊維表面を有し、そのような繊維表面仕上げ剤が繊維表面と重合体材料の間に存在する比較用繊維複合材料の降伏応力よりも大きな降伏応力を有する、
繊維複合材料。
【請求項2】
前記複合材料がポリエチレン繊維を含み、
前記複合材料が、約1.5ポンド/平方フィート(7.32kg/m)以下の面密度を有する複合材料についてASTM D790に準拠する測定で少なくとも7.50ksi(〜51.71MPa)の降伏応力を有する、
請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項3】
前記繊維層がアニオン性脂肪族ポリエーテル系ポリウレタンで圧密化されており、
前記繊維層の各々が約7g/デニール以上の靭性と約150g/デニール以上の引張弾性率を有する複数のポリエチレン繊維を含み、
前記アニオン性脂肪族ポリエーテル系ポリウレタンが6895kPa(1000psi)以上の弾性率を有する、
請求項2に記載の繊維複合材料。
【請求項4】
複数の隣接する繊維層を含む繊維複合材料であって、
各繊維層は、重合体材料で少なくとも部分的に被覆されている表面を有する繊維を含み、
前記繊維は、残留した繊維表面仕上げ剤が繊維表面の1.0%乃至50%を覆うように、繊維表面仕上げ剤を部分的に含まず、
前記重合体材料は、前記繊維表面仕上げ剤で覆われていない前記繊維表面と直接接触し、
前記繊維の表面は、前記残留した繊維表面仕上げ剤で覆われていない部分が化学的に官能化されており、
約1.5ポンド/平方フィート(7.32kg/m)以下の面密度を有する複合材料についてASTM D790に準拠する測定で少なくとも7.50ksi(〜51.71MPa)の降伏応力を有する、
繊維複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年9月6日に出願された同時係争中の米国仮出願番号61/531,302の利益を主張し、その開示は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、優れた弾道貫入抵抗特性を維持しながら曲げ特性が向上した弾道抵抗性繊維複合材料に関する。曲げ特性の向上は複合材料の裏面変形量の減少と相関し、従って、複合材料は現在の米国司法省研究所(NIJ)の裏面変形量の要件を満たすヘルメットを含む硬質装甲物品の作製に特に有用である。
【背景技術】
【0003】
高強度合成繊維を含む複合材料から作製される弾道抵抗性物品はよく知られている。防弾ベスト、ヘルメット、車両パネル、及び軍装備品の構造部材等の物品は、典型的にはSPECTRA(登録商標)ポリエチレン繊維やKevlar(登録商標)アラミド繊維等の高強度繊維を含む布帛から作製される。ベストやベストの一部等の多くの用途に対して、これらの繊維は織布や編物として使用することができる。他の用途については、繊維を重合体マトリックス材料に包み込み、又は埋設させて不織布に形成することができる。例えば、米国特許第4,403,012号、同第4,457,985号、同第4,613,535号、同第4,623,574号、同第4,650,710号、同第4,737,402号、同第4,748,064号、同第5,552,208号、同第5,587,230号、同第6,642,159号、同第6,841,492号、同第6,846,758号(これら全ての特許は参照により本明細書中に組み込まれる。)は、伸び切り鎖超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)等の材料から作製される高強度繊維を含む弾道抵抗性複合材料を開示している。これらの高強度合成繊維等から作製される弾道抵抗性複合材料は、銃弾、砲弾、及び榴散弾等の発射体の高速度衝撃による貫通に対して様々な程度の抵抗性と共に、その発射体衝撃の結果生じる様々な程度の裏面変形量を示す。
【0004】
高強度繊維の種類ごとに、それぞれ独自の特徴・特性を有することが知られている。この点に関して、繊維の決定的な1つの特徴は、樹脂被覆等の表面の被覆と結合又は接着する繊維の能力である。例えば、超高分子量ポリエチレン繊維は比較的不活性であるが、一方で、アラミド繊維は極性の官能基を含有する高エネルギー表面を有する。従って、樹脂は一般に不活性な超高分子量ポリエチレン繊維よりもアラミド繊維に対して、より親和性を示す。しかしながら、また合成繊維は本来静電気を蓄積し易いものであり、従って、通常は、さらなる処理を容易にして有用な複合材料にするために、繊維表面仕上げ剤を塗布することが必要であることも一般に知られている。繊維仕上げ剤は静電気の蓄積の軽減のために使用され、また解撚された非交絡繊維の場合は繊維の粘着性の維持を助けるために使用される。仕上げ剤はまた、繊維の表面を潤滑し、繊維を機器から保護すると同時に機器を繊維から保護する。当該技術によって、様々な産業で使用される多くの種類の繊維表面仕上げ剤を教示される。例えば、米国特許第5,275,625号,同第5,443,896号、同第5,478,648号、同第5,520,705号、同第5,674,615号、同第6,365,065号、同第6,426,142号、同第6,712,988号、同第6,770,231号、同第6,908,579号、及び同第7,021,349号には、紡糸繊維のための紡糸仕上げ剤組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、典型的な繊維表面仕上げ剤が普遍的に望ましいわけではない。注目すべき1つの理由は、アラミド繊維表面を含む繊維の表面に対する重合体結合剤材料の界面接
着又は界面結合を繊維表面仕上げ剤が妨害する可能性があるからである。重合体結合剤材料の強固な接着性は、弾道抵抗性布帛、特に、ニュージャージー州モーリスタウンのハネウェル・インターナショナル社製の不織複合材料SPECTRA SHIELD(登録商
標)等の不織複合材料の製造において重要である。重合体結合剤材料の繊維表面に対する接着が不十分であると、繊維−繊維結合強度及び繊維−結合剤結合強度が低下し、それによって一体化していた繊維は互いに分離する及び/又は結合剤が繊維表面から剥離する可能性がある。同様な接着の問題は、保護用重合体組成物の織布表面への塗布を試みる場合にも認められる。この事は、このような複合材料の弾道抵抗特性(防弾性能)に悪影響を及ぼし、壊滅的な製品不良をもたらす可能性がある。
【0006】
複合装甲の防弾性能は様々な方法で特徴づけることができる。1つの一般的な特徴づけはV50速度である。V50速度は、発射体が50%の確率で装甲を貫通し、50%の確率で装甲によって止められる、実験的に得られ、統計的に算出される衝撃速度である。同じ面密度(即ち、複合材料板の重量を表面積で割ったもの)を持つ複合材料では、V50が高い程複合材料の貫通抵抗性が優れている。しかしながら、防弾装甲が発射体の貫通を防ぐのに十分であっても、発射体の装甲に対する衝撃が、深刻な非貫通、鈍的外傷性傷害の原因となる可能性もある。従って、防弾性能のもう1つの重要な尺度は、装甲裏面変形量である。裏面変形(backface deformation)や外傷形跡(trauma signature)として当該技術分野で知られる裏面変形量(backface signature)(「BFS」)は、銃弾の衝撃による防弾ベストの撓みの深さの尺度である。銃弾が複合装甲によって停止された場合、その結果生成する可能性のある鈍的外傷性傷害は、銃弾があたかも装甲を貫通し、身体に入り込んだかのように人間にとって致命的となる可能性がある。これは、ヘルメット防護具の場合には、特に必然的な結果として起こることであり、停止された銃弾によって引き起こされる一過性の突起は、なおも着用者の頭蓋骨の面を横切り、消耗性の、或いは致命的な脳の損傷を引き起こす可能性がある。
【0007】
複合材料のV50弾道性能は、複合材料の構成繊維の強度に直接関連することが知られている。このような靭性及び/又は引張弾性率等の繊維強度特性の増加はV50速度の増加と相関することが知られている。しかしながら、繊維強度特性の増加と共に裏面変形量が減少するということに対応する改善については同様には認識されていない。従って、当該技術分野では、優れたV50弾道性能と少ない裏面変形量の両者を有する弾道抵抗性複合材料を製造する方法が必要とされている。本発明はこの必要性に対する解決策を提供する。
【0008】
意外にも、裏面変形量と、発射体の衝撃の結果として弾道抵抗性複合材料の構成繊維が相互に剥離する及び/又は繊維表面被覆材が剥離する傾向との間に直接的な相関関係が存在することが見出された。繊維表面と繊維表面被覆材間の結合を向上させることにより、繊維と繊維の分離及び/又は繊維と被覆材の剥離現象が低減され、繊維表面間の摩擦が増加し、発射体の繊維との絡み合いを増加させる。従って、複合材料構造特性が改善され、発射の衝撃エネルギーが複合材料の裏面変形を低減するように放散される。
【0009】
本発明は、当該技術分野におけるこの必要性に対して、繊維を不織繊維層若しくは不織布として一体化する前又は繊維を織布に織る前、及び繊維を選択した重合体で被覆する前、及び複数の繊維層を複数のプライ即ち多層の複合材料に統合する前に、繊維を処理し、繊維表面と繊維表面被覆材の間の結合を改善することによって対処する。このような処理をされた繊維から形成された繊維複合材料は、同様な処理を施されていない比較用繊維複合材料よりも大きな降伏応力を有することが見出された。特に、繊維を処理して、繊維表面仕上げ剤の少なくとも一部を除去し、繊維表面の少なくとも一部を露出させ、続いて塗布する重合体の大部分が仕上げ剤の表面とではなく、繊維表面と直接接触するように繊維表面に直接結合させる。また、他の様々な繊維処理を施して、続いて塗布する材料の繊維
表面に吸着、接着、又は結合する能力を更に高めてもよい。降伏応力の上昇は、単一繊維プライ内の繊維と繊維の結合、単一の複数のプライ織布又は複数のプライ繊維層内のプライとプライの結合の増加を反映し、複合材料構造特性及び複合材料裏面変形量の改善と相関する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、複数の隣接する繊維層を含む繊維複合材料であって、各繊維層は、重合体材料で少なくとも部分的に被覆されている表面を有する繊維を含み、前記繊維は、前記重合体材料の大部分が繊維表面と直接接触するように繊維表面仕上げ剤をほとんど含まず;前記繊維複合材料の大部分が繊維表面仕上げ剤で被覆された繊維表面を有する(そのような繊維表面仕上げ剤は、繊維表面と重合体材料の間にある)比較用繊維複合材料の降伏応力よりも大きな降伏応力を有する繊維複合材料を提供する。
【0011】
本発明は少なくとも2つの隣接する繊維層を含む繊維複合材料を形成する方法であって、各繊維層が重合体材料で少なくとも部分的に覆われた表面を有する繊維を含み、前記繊維が、前記重合体材料の大部分が前記繊維表面と直接接触するように、繊維表面仕上げ剤をほとんど含有せず、前記複合材料は、約1.5ポンド/平方フィート(7.32kg/m)以下の面密度を有する複合材料についてASTM D790による測定で少なくと
も7.50ksi(〜51.71MPa)の降伏応力を有し、前記方法は、繊維表面仕上げ剤をほとんど含有しない表面を有する複数の重合体繊維を提供することを含み;所望により、前記繊維表面を処理し、続いて塗布する重合体材料の繊維表面に対する表面吸着、結合又は接着を向上させ;重合体材料を前記繊維の少なくとも一部に塗布し、それによって、繊維の表面に重合体材料を吸着、結合又は接着させ;前記重合体材料を前記繊維に塗布する前又は後に、前記の繊維から複数の繊維プライを作製し;複数の繊維プライを圧密化して繊維複合材料を作製する、方法も提供する。
【0012】
本発明は更に、圧密化された複数の繊維層を含む複合材料であって、前記繊維層の各々が約7g/デニール以上の靭性と約150g/デニール以上の引張弾性率を有する複数の繊維を含み、前記各繊維層は少なくとも部分的に重合体結合剤材料を含浸し、前記重合体結合剤は実質的に前記繊維を被覆し、前記重合体結合剤材料は、各繊維層の約7重量%〜約20重量%を構成し、前記パネルがASTM D790によって測定される少なくとも
7.50ksi(約51.71MPa)の降伏応力、約1.5ポンド/平方フィート(7.32kg/m)以下の複合材料面密度、及び国防省試験法規格MIL−STD−662Fに準拠する9mm発射体に対する少なくとも約1750フィート/秒(fps)(533.40m/s)のV50値を有する複合材料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
裏面変形量は、発射体の衝撃による硬質装甲若しくは軟質装甲の裏材料の中への、又は使用者の体の中への撓みの深さの尺度である。更に具体的には、当該技術分野で「裏面変形」「外傷形跡」或いは「鈍力外傷」としても知られるBFSは、装甲が発射体の貫通を停止する際に発射体がどの位の衝撃を装甲の下に残したかの尺度であり、装甲の下の人体が経験した表面に現れていない鈍的外傷の指標である。軟質装甲のBFSを測定する標準方法は、NIJ標準−0101.04、種別IIIAによって概説されており、それにより、表面が塞がれていない箱状の治具の中に保持された変形可能な粘土裏材料への非貫通発射体衝撃に起因する複合材料の物理的変形を伝える方法が特定されている。NIJ規格により、試験される装甲を粘土の裏材料のおもて面に直接固定し、標準化された発射体の発射状態に起因する粘度の変形を識別し、測定する。他の方法を用いてBFSを測定してもよい。NIJ標準は現在のところ軍事使用を対象とする軟質装甲複合材料の評価に通常使用されている。
【0014】
用語「裏面変形量」、「裏面変形」、「外傷形跡」或いは「鈍力外傷」は、当該技術分野においては同じ意味を有し、本明細書において交換可能に使用される。本発明の目的では、優れた弾道貫通抵抗性を有する物品とは、銃弾等の変形可能な発射体に対して、或いは榴散弾等の断片の侵入に対して優れた特性を有するもののことである。本明細書で使用される「繊維層」は、一方向に配向した繊維の単一プライ、一方向に配向した繊維の複数の非圧密化プライ、一方向に配向した繊維の複数の圧密化プライ、織布、複数の圧密化織布、或は、フェルト、マット及び無秩序に配向した繊維等の他の構造を含む複数の繊維から形成される任意の他の織布構造を含んでもよい。「層」は一般に平面構成を表す。各繊維層は、外側上面と外側下面の両方を有する。一方向に配向した繊維の「単一プライ」は、一方向に実質的に平行配列で整列した非重なり繊維の配列体を含む。この種の繊維配列体は、「ユニテープ」、「一方向テープ」、「UD(unidirectional)」又は「UDT(unidirectional tape)」として当技術分野で知られている。本明細書で使用される「配
列」は、繊維又は糸の秩序だった配置(織布は除く)を表し、「平行配列」は、繊維又は糸の秩序だった平行な配置を表す。「配向した繊維」という文脈で用いる用語の「配向した」は、繊維の伸張とは対照的な繊維の整列を意味する。用語「布帛」は、プライの成形又は圧密化の有無にかかわらず、1つ以上の繊維プライを含み得る構造体を表す。例えば、織布又はフェルトは、単一の繊維プライを含んでもよい。一方向性繊維から形成される不織布は、典型的には、互いに積層され、圧密化された複数の繊維プライを含む。本明細書で使用される「単一層」構造は、低圧積層又は高圧成形によって重合体結合剤材料と共に単一の一体構造に統合化、即ち圧密化された1つ以上の個々のプライ又は個々の層からなる任意の一体繊維構造を指す。「圧密化」は、重合体結合剤材料と各繊維プライがひとまとまりになって単一の一体化層になることを意味する。圧密化は、乾燥、冷却、加熱、加圧、又はこれらの組合せによって行うことができる。湿式積層法の場合のように、繊維又は布帛層が互いにぴったり合わさって接着剤で接着されるならば、加熱及び/又は加圧は、必ずしも必要ではない。「複合材料」という用語は、繊維と少なくとも1種の重合体結合剤材料との組み合わせを指す。本明細書で使用される「複雑な複合材料(complex composite)」は、複数の繊維層の組み合わせを圧密化したものを指す。本明細書に記載さ
れる「不織」布は、製織によって形成されない全ての織布構造を含む。例えば、不織布は、少なくとも部分的に重合体結合剤材料で被覆され、積み重ねられて単一層である一体化要素に圧密化されている複数のユニテープ、及び好ましくは重合体結合剤組成物で被覆されている非平行で無秩序に配向した繊維を含むフェルト又はマットを含むことができる。
【0015】
本発明の目的では、「繊維」とは、長尺体で、その長さ方向の寸法は、幅及び厚さの横断寸法よりもはるかに大きい。本発明で使用する繊維の断面は、広範囲に様々であってもよく、円形、扁平、或は楕円形であってもよい。従って、本明細書で使用する用語「繊維」は、規則的又は不規則的な断面を有するフィラメント、リボン、及び細片等を含むが、繊維は、実質的に円形の断面を有することが好ましい。本明細書で使用される用語「糸(yarn)」は、複数の繊維からなる一本の撚り糸として定義される。単繊維は、一本だけのフィラメント又は複数本のフィラメントから形成されてもよい。1本のフィラメントから形成された繊維は、本明細書では「単一フィラメント」繊維又は「モノフィラメント」繊維のいずれかで呼び、複数本のフィラメントから形成された繊維は本明細書では「マルチフィラメント」繊維と呼ぶ。
【0016】
本発明の文脈において、複合材料の「降伏応力」という用語は、本明細書中で複合材料の曲げ強度の尺度として使用され、複合材料の構成層又は構成プライが互いに剥離や分離を起こし始める複合材料にかかる曲げ応力の量を指す。最も典型的には、この層間剥離は、樹脂−繊維結合の不良によって起こり、それにより、成分繊維の不良、即ち切断の場合とは対照的に、プライ/層内の繊維の一部又は全てが互いに分離される、又は複合材料内の全てのプライ/層が互いに分離される。従って、樹脂−繊維結合の強化処理は、降伏応力の増強のために望ましい。
【0017】
複合材料の降伏応力を測定する好ましい方法は、3点屈曲試験として知られており、例えば、ASTM標準D790又はISO法178の3点屈曲試験等がある。3点屈曲試験は、3点曲げ試験としても知られ、3点荷重条件で複合材料試料を曲げるのに必要な力を測定する。典型的な方法では、梁状又は棒状試料を、梁状又は棒状試料の両端を支持体で支え、その支持体間を所定の間隔を開けて均等に置く。荷重を、所定の速度で荷重印加端(loading nose)等によって試料の中央に加え、試料を曲げる。荷重を所定の時間加える。ASTM D790の方法によれば、荷重は、試料が5%の撓みに到達するまで、又は
試料が破断するまで加えられる。ISO178の方法によれば、荷重は、試料が破断するまで加えられ、3.5%の撓みでの応力が報告される。本発明の目的では、複合材料の少なくとも一部の少なくとも部分的な層間分離が少なくとも起こるまで荷重を加える。試験は、マサチューセッツ州ノーウッドのインストロン社(Instron Corporation)から市販
されている2810シリーズ屈曲/曲げ固定装置(2810 Series Bend/Flexure Fixture devices)等の、任意の適切な3点固定具付き3点屈曲試験機又は万能試験機を用いて行うことができる。
【0018】
3点屈曲試験は、その単純さのために好ましい。しかしながら、この試験方法は、試験される試料の大きさ、試料の表面形状、両端の支持体間の間隔、歪み速度、及び周囲温度等の要因に敏感であるため、比較試験中は、試験される複合材料試料や繊維処理の種類のみを試験変数として、全ての要因を一定にするのが好ましく、理想でもある。
【0019】
本発明の複合材料の降伏応力等の曲げ特性を測定する場合、試験される複合材料は、各々の繊維層が少なくとも部分的に重合体材料で被覆されている複数の隣接する繊維層/プライを含む、又は、これらから成るべきである。本明細書で使用される隣接する繊維層は隣接するユニテープ及び/又は隣接する織布を含んでもよく、繊維層/プライは、当技術分野における任意の従来技術によって接合されてもよい。隣接ユニテープは、典型的には、通常の直交性0°/90°配向に配列されて弾道貫通抵抗性(例えば、標準化されたV50試験で測定)を最大にするが、この配向は複合材料の裏面変形量を最小にするためには必須でも必ずしも最適でもない。隣接するユニテープは、以下でより詳細に説明するように重合体結合剤材料を用いて圧密化される。不織布と異なり、織布は構成繊維を相互結合して単繊維層を形成するための重合体結合剤を必要としない。しかしながら、接着剤又は重合体結合材料は、一般に複数の織布を圧密化、即ち統合して多層繊維複合材料にするために必要とされる。従って、複合材料の降伏応力を試験するために、少なくともいくつかの織布層を含む複合材料を形成するためのなんらかの接着剤又は重合体結合剤材料が存在することが一般に必要である。好ましい実施態様において、織布は、圧密化する前に重合体結合剤材料を予め含浸させる。
【0020】
以下に示す本発明の実施例の全てにおいて、3点屈曲試験は不織布を含む複合材料で行い、降伏変位、降伏歪み、降伏荷重、降伏応力、及び降伏点までのエネルギーを含む屈曲特性を測定する。各複合材料は、0°で配向した第1のプライ及び90°で配向した第2のプライからなる圧密化された複数の2プライの不織繊維層から形成される。各実施例の試験は、特に断りのない限り、ASTM D790の条件に従って、室温(約70°F〜
72°F)で行った。より高い温度は熱可塑性重合体を軟化させる方向で材料の曲げ特性を変化させるため、熱可塑性重合体を組み込んだ材料を試験する際の試験する温度は重要な要因である。
【0021】
本発明の複合材料は、例えば、複合材料の降伏応力によって測定されるより大きな曲げ応力特性及びそれに対応する高速度の非貫通発射体に対する優れた裏面変形量性能によって他の繊維状複合材料と区別される。本発明の繊維複合材料の曲げ特性の改善は、最低でも、繊維を布帛に加工する前に、既存の繊維表面仕上げ剤を繊維から少なくとも一部を除
去することにより達成され、布帛の形成としては、織布層、不織布層、又は不織繊維プライの作製を含む。繊維表面仕上げ剤が必須の加工助剤として一般に知られているため、不織布層又は不織繊維プライの形成前、或いは織布を織る前に繊維表面仕上げ剤を除去することは、前述のように知られていなかった。例えば、不織布の製造において、繊維表面仕上げ剤は一般に、静電気の蓄積を減少させ、繊維のもつれを紡糸し、繊維を潤滑して、織機の部品上を滑動できるようにし、繊維の延伸工程を含む加工中の繊維凝集力を向上させるために必要とされる。
【0022】
繊維表面仕上げ剤は、従来の布帛の処理中に通常は必要とされるが、一般に、最終的な布帛の特性に影響しない。むしろ、仕上げ剤は繊維表面を覆うことにより、繊維表面が互いに接触する能力を妨害し、また繊維に塗布される液体又は固体の樹脂、又は重合体接着剤等の引き続き塗布される被吸着剤を直接吸着する繊維表面の能力を妨害し、被吸着剤を直接に繊維表面にではなく、仕上げ剤の表面に付着させる。これが問題である。前者の状況では、仕上げ剤は、繊維表面の潤滑剤として作用し、それ故に隣接する繊維間の摩擦を低減する。後者の状況では、仕上げ剤は、続いて被覆する材料が繊維表面に直接にかつ強力に繊維表面に結合することを妨げ、被覆材が完全に繊維に結合することを妨げる可能性と共に、弾道衝撃時の層間剥離の危険性を有する。繊維−繊維の摩擦を高め、また繊維表面への樹脂又は重合体結合剤材料の直接結合を可能し、それにより繊維−被膜間の結合強度を増大させるためには、既存の繊維表面の仕上げ剤を少なくとも部分的に除去することが必要であり、繊維複合材料を形成する一部又は全ての構成繊維の繊維表面の全て又は一部から実質上完全に除去するのが好ましい。
【0023】
繊維表面仕上げ剤の少なくとも部分的な除去は、好ましくは、全ての繊維伸張/延伸工程が完了したら即座に始めるのが好ましい。様々な除去工程によって仕上げ剤が除去される量は異なると考えられるが、繊維を洗浄する又はその他の繊維仕上げ剤を除去する工程よって、少なくとも下層の繊維表面が露出するように繊維仕上げ剤は十分に取り除かれる。例えば、洗浄剤(例えば、水)の組成、洗浄技術(例えば、繊維と接触する水の力、洗浄槽の攪拌等)の機械的な属性は、除去する仕上げ剤の量に影響する。本明細書の目的のために、繊維仕上げ剤の最小限の除去を達成するための最小限の処理によって、一般に繊維表面積の少なくとも10%は露出される。好ましくは、繊維表面処理剤は、繊維が繊維表面仕上げ剤を殆ど含まないように除去される。本明細書での使用では、繊維表面仕上げ剤を「ほとんど含まない」繊維とは、仕上げ剤の少なくとも50重量%が除去された、より好ましくは、仕上げ剤の少なくとも約75重量%が除去された、より好ましくは、仕上げ剤の少なくとも約80重量%が除去された繊維である。繊維が繊維表面仕上げ剤を実質的に含まないのが、更により好ましい。繊維表面仕上げ剤を「ほとんど含まない」繊維とは、仕上げ剤の少なくとも約90重量%が除去された、最も好ましいのは仕上げ剤の少なくとも約95重量%が除去された繊維で、それによって、先に繊維表面仕上げ剤によって被覆されていた繊維表面積の少なくとも約90%又は約95%が露出される。最も好ましくは、仕上げ剤の残存量は、繊維の重量と仕上げ剤の重量の合計に対し、約0.5重量%以下、好ましくは約0.4重量%以下、より好ましくは約0.3重量%以下、より好ましくは約0.2重量%以下であり、最も好ましくは、繊維の重量と仕上げ剤の重量の合計に対し、約0.1重量%以下である。
【0024】
かなりの量の仕上げ剤を除去しても、繊維仕上げ剤組成物の表面張力に依存して、仕上げ剤が繊維表面の全体に分布する傾向を示す。このように、繊維表面仕上げ剤をほとんど含有しない繊維でも、依然として繊維仕上げ剤の非常に薄い被膜で覆われた表面領域の部分を有する可能性がある。しかしながら、この残存する繊維仕上げ剤は、典型的には、仕上げ剤の連続に繋がった被膜ではなく、残留したまだら状に存在する。従って、繊維表面仕上げ剤がほとんどない表面を有する繊維とは、好ましくは、その表面は少なくとも部分的に露出して繊維仕上げ剤に覆われておらず、好ましくは、繊維表面仕上げ剤に覆われて
いる繊維表面積が50%未満である。次いで、繊維仕上げ剤を殆ど含有しない繊維表面を含む本発明の繊維複合材料は、重合体結合剤材料で被覆される。繊維仕上げ剤を除去したことで、繊維表面仕上げ剤によって覆われた繊維表面が50%未満となった場合には、その結果、重合体結合剤材料は50%を超える繊維表面積と直接接触することになる。
【0025】
このような仕上げ剤除去の結果、本発明の繊維複合材料は、繊維表面仕上げ剤で大部分を覆われている繊維を有する比較用繊維複合材料(例えば、繊維表面仕上げ剤が、繊維表面と重合体材料の間に繊維表面積の50%超で存在する)の降伏応力よりも大きな降伏応力を有する。
【0026】
最も好ましくは、繊維表面仕上げ剤が実質的に完全に繊維から除去され、繊維表面が実質完全に露出している。この点では、繊維表面仕上げ剤の実質的に完全な除去は、繊維表面仕上げ剤の少なくとも約95%の除去、より好ましくは少なくとも約97.5%、最も好ましくは少なくとも約99.0%の除去であり、それにより繊維表面は、少なくとも約95%が露出され、より好ましくは少なくとも約97.5%が露出され、最も好ましくは少なくとも約99.0%が露出される。理想的には、繊維表面仕上げ剤の100%が除去され、それによって繊維表面積の100%が露出される。繊維表面仕上げ剤を除去した後は、重合体結合剤材料、樹脂、又はその他の被吸着剤を露出した繊維表面に塗布する前に、仕上げ剤の除去粒子を繊維から完全に取り除くのが好ましい。
【0027】
本明細書で使用される「比較用」繊維複合材料は、本発明の処理された複合材料と同一又は実質的に同様の複合材料(理論的にも実際でも)と定義され、ここで本発明の複合材料は繊維表面仕上げ剤の少なくとも一部が除去されて繊維表面の一部が露出され、所望によってはプラズマ処理又はコロナ処理等の追加の繊維処理が行われており、重合体材料は、それに応じて仕上げ剤が除去された場所の繊維表面に直接結合する。この点に関し、「実質的に同様」とは、一定の要因を設定する際に経験するすべての最小誤差を示す。換言すれば、比較用繊維複合材料は、本発明の「処理された複合材料」を比較するための「対照材料(control)」である。特に、対照複合材料及び本発明の処理済複合材料は、共に
同じ繊維の種類(同じ繊維の化学的性質、靭性、弾性率等)から作製され、同じ繊維層構造(例えば、織布、不織布)を含み、繊維に塗布される同じ種類の重合体材料(結合剤重合体、重合体結合剤材料又は重合体マトリックスともいう)、複合材料中の同量の樹脂、同じ数の繊維パイル/層等を含む。対照複合材料及び処理済複合材料は共に、また同じ圧密化/成形条件に従って作製される。本明細書に記載の繊維表面処理を除く全ての要因が一定に保たれるものとする。例えば、BFSと曲げ特性が繊維仕上げ剤及び繊維の表面処理にある程度依存するのと同様に、BFSと降伏応力等の曲げ特性は、樹脂の種類にある程度依存することをデータが示しているので、これらは全て重要な考慮事項である。本明細書に提示したデータは、処理済複合材料が、必ずしも一定でない要素を有する他の複合材料に対してではなく、同一又は実質同様の対照複合材料に比較してBFS及び曲げ特性が改善されているという前提を支持している。繊維仕上げ剤の最小限の除去を達成するための繊維の処理によって、一般に繊維表面積の少なくとも約10%は露出されるが、少なくとも一部の繊維仕上げ剤を除去するための同様の洗浄や処理がなされていない比較用複合材料の繊維露出面積は、0%の表面露出、即ち繊維表面露出が実質ないことも含め、10%未満である。
【0028】
前述のように、繊維表面仕上げ剤の除去は、繊維−繊維の摩擦並びに繊維と続いて塗布される被覆材との間の結合強度を高める。繊維−繊維間の摩擦及び繊維−被覆材間の結合強度の増大させることにより、発射体の繊維との絡み合いを増加させ、それにより、前記繊維から形成される繊維複合材料の曲げ特性を向上させると同時に前記繊維から形成される繊維複合材料が発射体を停止する能力を向上させ、また発射体衝突による裏面変形量を低減することも見出された。繊維−被膜の結合強度の向上により、また繊維同士を十分結
合するために必要な結合剤の量を低減できる。結合剤の減量によって布帛により多くの繊維を含ませることができ、強度が向上したより軽量の防弾材料を作製できる可能性が出てくる。これによって、得られた布帛複合材料の防刃性の向上、及び複合材料の衝撃繰り返し耐性が図られる。
【0029】
繊維表面仕上げ剤を除去するための、機械的及び化学的な技術又は手段の両方を含むいかなる公知の方法も本発明の範囲内において有用である。必要な方法は、一般に仕上げ剤の組成に依存する。例えば、本発明の好ましい態様では、繊維は、水だけで洗い落すことができる仕上げ剤で被覆される。典型的には、繊維仕上げ剤は、1種以上の潤滑剤、1種以上の非イオン性乳化剤(界面活性剤)、1種以上の静電防止剤、1種以上の湿潤および凝集剤、及び1種以上の抗菌化合物の組合せを含む。本明細書において好ましい仕上げ剤配合物は、水だけで洗い落とすことができる。機械的手段を化学薬剤と併用して化学的除去の効率を向上することもできる。例えば、脱イオン水を用いる仕上げ剤除去の効率は、水施用工程の水の勢い、速度、方向等を操作することによって高めることができる。
【0030】
最も好ましくは、繊維は繊維ウェブとして水で、好ましくは脱イオン水を用いて、洗浄及び/又はすすぎ、所望により、洗浄後は他の化学薬品を使用せずに乾燥する。仕上げ剤が水溶性でない他の態様において、仕上げ剤を、例えば研磨クリーナー、化学洗浄剤、又は酵素洗浄剤で除去又は洗い落してもよい。例えば、米国特許第5,573,850号及び同第5,601,775号(参照により本明細書に組み込まれる)は、非イオン界面活性剤(ノースカロライナ州シャーロットのクラリアント社(Clariant Corporation)から市販されているHostapur(登録商標)CX)、リン酸三ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含有する浴に糸(yarn)を通し、続いて繊維を水洗することを開示している。他の有用な化学薬剤としては、他を排除するものではないが、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類;シクロヘキサン、トルエン等の脂肪族及び芳香族炭化水素;ジクロロメタン及びトリクロロメタン等の塩素化溶媒等が挙げられる。繊維の洗浄により、表面の他の汚染物質も除去され、繊維と樹脂等の被覆材料とのより密接な接触が可能となる。
【0031】
繊維を水で洗浄するために使用する好ましい手段は、繊維表面仕上げ剤を繊維から実質的に除去する能力を除いて、限定されるものではない。好ましい方法では、仕上げ剤の除去は、繊維ウェブを加圧水型ノズルに通して洗浄(又はすすぎ)を行う、及び/又は物理的に仕上げ剤を繊維から除去することを含む工程によって達成される。繊維を所望によって前記加圧水型ノズルに通す前に水浴中に予め浸漬し、及び/又は繊維を加圧水型ノズルに通した後に浸漬し、また繊維を任意選択の浸漬工程の後、所望によって前記の加圧水型ノズルを通してまたすすいでもよい。洗浄/浸漬/すすぎが完了した後、この洗浄/浸漬/すすぎ洗いをされた繊維を、好ましくは、乾燥も行う。繊維を洗浄するために使用される装置及び手法は限定を意図するものではないが、布帛よりも個々のマルチフィラメント繊維/マルチフィラメント糸を、即ち、織られる前に、又は不織繊維層又はプライに形成される前に、洗浄することができなければならない。
【0032】
布帛形成前に、繊維表面仕上げ剤を除去することは、特に本明細書では、一方向に整列した複数の繊維を含む繊維プライを圧密化することによって形成される不織布の作製のために意図されている。一方向に整列した不織繊維プライを形成する典型的な方法では、繊維の束を、クリールからガイド及び1つ以上の拡幅棒(spreader bars)を通して平行櫛
に送り、続いて繊維を重合体結合剤材料で被覆する。あるいは、繊維を拡幅棒に遭遇する前に被覆することができ、又は繊維を被覆区分の前と後ろにある2組の拡幅棒の間で被覆してもよい。典型的な繊維の束(即ち、糸)は、約30本〜約2000本の個々のフィラメントを含み、各繊維は、典型的には、約120〜約240の個々のフィラメントを含むが、これらに限定されない。拡幅棒及び平行櫛は、束になった繊維をほぐして広げ、再構
成して同一平面上で互いに隣接して並べる。繊維が理想的に広げられることで、単一繊維面に個々のフィラメント又は個々の繊維が順次配置され、繊維が互いに最小限に重なり合って実質的に一方向の繊維の平行配列を形成する。この拡幅段階の前又は間に繊維表面仕上げ剤を除去すると、繊維/フィラメントが相互作用する洗浄剤(例えば、水)の物理的相互作用により、繊維の拡幅が進んで加速され、そのような平行配列となる。繊維の拡幅工程及び平行化工程の結果、そのような平行配列の繊維は、フィラメント/繊維の厚さに依存して、典型的に、1インチあたり約3本〜12本の繊維端(1cm当たり1.2本〜4.7本の繊維端)を有する。従って、繊維表面仕上げ剤の除去は、繊維の拡幅の促進と繊維表面に続いて塗布される材料/被吸着剤の結合力を向上させるという2重の利点を有する。
【0033】
繊維表面仕上げ剤の除去のみで前述の利点を達成する一方、少なくとも部分的な仕上げ剤の除去後、繊維表面に結合増強の処理を行うことによって、より大きな結果を達成することができる。特に、裏面変形量の減少が繊維−繊維間摩擦及び繊維−被膜間の結合強度の増加に比例することが見出された。織布の形成の前の結合増強処理で繊維表面の処理又は改質を行うことによって、特に、結合増強処理を少なくとも部分的に繊維仕上げ剤を除去する繊維の洗浄と組み合わせた場合、複合材料裏面変形量の低減に対してより大きな改善が達成されることが見出された。これは、特に重合体結合剤材料又は樹脂等の被吸着剤を繊維表面に塗布した場合に顕著で、重合体結合剤材料又は樹脂は、不織布の作製に従来から使用される、或いは布帛を織って、少なくとも部分的に繊維表面仕上げ剤を除去した後に塗布されるものである。被吸着剤(例えば、重合体/樹脂)の繊維表面との結合が強い程、裏面変形量の減少が大きくなる。従って、本発明の最も好ましい態様では、繊維表面仕上げ剤を少なくとも部分的に除去した後であるが布帛形成の前に、繊維表面に続いて塗布される被吸着剤(例えば、重合体/樹脂)の吸着/結合を強化するのに有効な条件下で、繊維表面の処理を行うことが特に望ましい。繊維仕上げ剤の除去によって、これらの追加の工程が、繊維表面仕上げ剤や表面汚染物質にではなく、繊維の表面に直接作用することが可能になる。表面仕上げ剤は障壁や汚染物質として作用し、繊維の表面を処理する試みを妨害する傾向があるため、これは非常に望ましい。仕上げ剤の除去は、また、このようにして、後に続く繊維表面処理の品質及び均一性を向上させる。仕上げ剤の除去及びそのような更なる処理の利点は累積され、裏面変形量性能の改善点は、仕上げ剤の除去率の増加及び処理の効果の大きさと共に増加する。
【0034】
この目的のために有用な処理又は改質は、後に続いて繊維表面へ塗布される被吸着剤の吸着を高めるために有効ないかなるものも含み、ここで、被吸着剤は重合体結合剤材料及び樹脂を包含する固体、液体、又は気体のいずれであってもよく、吸着は、材料の繊維表面への任意の形態を含む。これを達成できる可能性のある様々な手段が存在する。例えば、表面を粗面化する、表面に極性を追加する、繊維表面又は繊維表面部を酸化する、繊維の表面エネルギーを増加させる、繊維の接触角を低下させる、繊維の濡れ性を増加させる、繊維表面の架橋密度を調節する、繊維表面に化学的機能を追加する、表面をアブレーション(融除)する処理等の他、バルク繊維と繊維表面被覆材との間の相互作用を向上して繊維表面への固定を改善するための任意の手段を挙げられる。この相互作用の調節によってBFSが改善されることを容易に観察できる。
【0035】
適切な繊維表面処理及び表面改質としては、当技術分野で公知の方法で、例えば、繊維のコロナ処理、繊維のプラズマ処理、繊維のプラズマ被覆、フッ素元素での繊維表面の直接フッ素化、化学UVグラフト化等の化学処理、或いはクロムエッチング等の粗面化処理が挙げられる。大規模用途に対しては未開発であるが、繊維表面仕上げ剤の除去後で布帛形成前に、露出して処理された繊維表面に、被吸着剤が吸着する能力又は任意の材料が結合する能力を向上させる処理法が同様に適切である。これらの例示的な方法の各々を、繊維の表面へのそれらの作用を通して、バルク繊維及び後に続く被覆材料の間の相互作用を
、繊維の化学的性質に応じて、調節、改善又は低減をするのに使用することができる。これらの方法の任意の組み合わせを使用することができ、これらのサブプロセスは、種々の順序で行うことができる。但し、繊維の種類或いは天然繊維表面特性等の様々な要因に応じて他のものよりも優先されるいくつかの順序があってもよい。本発明の種々の処理工程を、複合材料の降伏応力等の曲げ特性を所望の範囲内に入れるための繊維を操作する手段として用いることができる。3点屈曲試験により、特定の複合材料が所望されるよりも低い降伏点応力(例えば、7.50ksi未満)を有していると判断された場合、それは降伏応力が所望の範囲内に入るように、更に曲げ強度を増大するために、更なる繊維洗浄及び/又は更なる表面処理(例えば、コロナ処理、プラズマ処理他)を行うべきであることを示している。
【0036】
最も好ましい処理法は繊維表面のコロナ処理及び繊維表面のプラズマ処理である。コロナ処理は、繊維をコロナ放電場に通す処理であり、繊維ウェブを一連の高電圧放電に通して、孔食、荒加工、及び繊維の表面を部分的に酸化することで極性官能基を導入する等の様々な方法で繊維ウェブの表面に作用する処理である。コロナ処理は、典型的には、繊維表面を酸化する、及び/又は極性を繊維表面に加える。コロナ処理は、また繊維の表面に小さなピット又は孔を焼いて入れることで作用する。繊維が酸化可能な場合は、酸化の程度は、コロナ処理の電力、電圧及び周波数等の要因に依存する。コロナ放電場内の滞留時間も要因であり、これはコロナ処理機の設計によって、または工程のライン速度によって操作することができる。適切なコロナ処理装置は、例えば、米国ウィスコンシン州メノモニーフォールズのエネルコン社(Enercon Industries Corp.)、英国オックスフォードシャー州テームのシェルマン・トリーターズ社(Sherman Treaters Ltd.)、又はドイツ国
ハンブルクのソフタル・コロナ・アンド・プラズマ・ゲーエムベーハー社(Softal Corona & Plasma GmbH & Co)から入手できる。
【0037】
好ましい態様では、繊維は、約2ワット/平方フィート/分〜約100ワット/平方フィート/分、より好ましくは、約20ワット/平方フィート/分〜約50ワット/平方フィート/分のコロナ処理にさらされる。約1ワット/平方フィート/分〜約5ワット/平方フィート/分のより低いエネルギーのコロナ処理も有用ではあるが効果は劣る可能性がある。繊維表面に電荷を印加することに加え、コロナ処理は、繊維の表面の孔食により表面を粗面化することができる。
【0038】
プラズマ処理では、繊維を典型的には繊維ウェブとして、不活性又は非不活性気体、例えば、酸素、アルゴン、ヘリウム、アンモニア又はこれらの気体の混合物を含む他の不活性又は非不活性気体を充填した反応室内でイオン化された雰囲気を通過させ、繊維を放電に曝す。繊維表面では、表面と荷電粒子(イオン)との衝突によって、運動エネルギーの移動と電子等の交換の両方が起こる。更に、表面と遊離ラジカルとの衝突により、類似の化学再配列が起こる。励起原子や励起分子が低い状態に緩和する際に放射される紫外光による繊維表面の衝撃も繊維基質に化学的変化を引き起こす。
【0039】
これらの相互作用の結果として、プラズマ処理は、繊維の化学構造、並びに繊維表面の微細凹凸(topography)の両方を改質することができる。例えば、コロナ処理のように、プラズマ処理はまた、繊維表面に極性を追加する、及び/又は繊維表面部分を酸化することができる。プラズマ処理はまた、繊維の表面エネルギーを増加させ、接触角を低減し、繊維表面の架橋密度を変更し、融点を高め、その後の被覆材の素材定着場を増加させる働きをすると共に繊維表面に化学官能性を追加し、繊維表面をアブレーションする可能性もある。これらの効果は、同様に繊維の化学的性質に依存し、また使用するプラズマの種類にも依存する。
【0040】
表面の化学的構造は様々なプラズマ気体によって様々に修飾されるため、気体の選択は
所望の表面処理にとって重要である。このようなことは当業者が決定する。例えば、アミン官能基は、アンモニアプラズマを用いて繊維表面に導入することができ、カルボキシル基及びヒドロキシル基は酸素プラズマを用いて導入することができる。従って、反応性雰囲気は、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素、アンモニア、及び/又はその他の布帛のプラズマ処理に適していることが知られている1種以上の気体を含んでもよい。反応性雰囲気は、原子、イオン、分子又は遊離ラジカルの形でこれらの気体の1種以上を含んでもよい。例えば、本発明の好ましい連続法では、繊維配列を、好ましくは、アルゴン原子、酸素分子、アルゴンイオン、酸素イオン、及び酸素遊離ラジカル、並びに他の微量種を含む制御された反応性雰囲気を通過させる。好ましい態様において、反応性雰囲気は、アルゴン及び酸素の両方を、約90%〜約95%の濃度のアルゴン及び約5%〜約10%の濃度の酸素を含み、アルゴン/酸素は濃度で90/10又は95/5が好ましい。別の好ましい態様において、反応性雰囲気は、ヘリウム及び酸素の両方を、約90%〜約95%の濃度のヘリウム及び約5%〜約10%の濃度の酸素で含み、ヘリウム/酸素は濃度で90/10又は95/5が好ましい。他の有用な反応性雰囲気は、ゼロガス雰囲気、即ち、約79%窒素、約20%酸素、及び少量の他の気体を含む室内空気であり、コロナ処理にもある程度有用である。
【0041】
プラズマ処理は、真空反応室内又は大気条件に維持された反応室で行うことができる。プラズマ処理がコロナ処理とは異なる主な点は、コロナ処理は反応性雰囲気が空気であるのに対して、プラズマ処理は制御された反応性気体雰囲気で行われることである。プラズマ処理器内の雰囲気は制御と維持が容易であり、コロナ処理よりも制御可能で柔軟な方法で表面極性を達成することができる。放電は気体を解離させて電子、イオン、遊離ラジカル及び準安定生成物を生成する高周波(radio frequency:RF)エネルギーによるもの
である。プラズマ中で生成した電子及び遊離ラジカルは、繊維表面に衝突し、共有結合を破壊して繊維表面に遊離ラジカルを生成する。バッチ工程では、所定の反応時間や反応温度を経た後、処理用気体及びRFエネルギーを止め、残りの気体及び副生成物を除去する。本明細書では好ましい連続工程では、繊維配列を、選択された反応性気体の原子、分子、イオン、及び/又は遊離ラジカル、並びに他の微量種を含む制御された反応性雰囲気を通過させる。反応性雰囲気を常に生成させ、補充して、ほぼ定常状態の組成に到達させ、生成を止める、即ち急激に温度を下げた後に、被覆機を停止する。
【0042】
プラズマ処理は、任意の有用な市販のプラズマ処理機を用いて行うことができ、例えば、ドイツ国ハンブルクのソフタル・コロナ・アンド・プラズマ・ゲーエムベーハー社(Softal Corona & Plasma GmbH & Co)、米国カルフォニア州ベルモントの4th State, Inc、米国イリノイ州エルジンのPlasmatreat US LP、及び米国ウィスコンシン州ミルウォーキ
ーのEnercon Surface Treating Systemsから入手可能なプラズマ処理機が挙げられる。好ましいプラズマ処理方法は、ほぼ大気圧、即ち1気圧(760mmHg(760トール))、反応室の温度はほぼ室温(70°F〜72°F)で行う。プラズマ反応室内の温度は処理過程によって変わる可能性があるが、処理中に冷却や加熱をして温度のみを独立して変えることは一般にはしない。繊維はプラズマ処理機を急速に通過するので、温度が繊維の処理に影響を与えるとは考えられない。プラズマ電極と繊維ウェブとの間の温度は、典型的には約100℃である。プラズマ処理工程は、好ましくは、約0.5kW〜約3.5kW、より好ましくは約1.0kW〜約3.05kWのRF電力で行われ、最も好ましくは、プラズマ処理は2.0kWに設定したプラズマ処理機を用いて行われる。この電力は、プラズマ処理領域の幅(又は電極の長さ)に渡って分布し、この電力は繊維ウェブがプラズマ処理機の反応性雰囲気を通る線速度に反比例する速度で基質又は繊維フェブの長さに分布する。単位時間及び単位面積当たりのこのエネルギー(平方フィート及び毎分当たりのワット、即ち、W/平方フィート/分)、即ちエネルギー束は、処理レベルを比較するために便利な方法である。エネルギー束の実効値は、好ましくは約0.5〜約200ワット/平方フィート/分、より好ましくは、約1〜約100ワット/平方フィート/分、
更により好ましくは、約1〜約80ワット/平方フィート/分、及び最も好ましくは、約2〜約40ワット/平方フィート/分である。総気体流量は、約16リットル/分であるが、これは厳密に限定するものではない。繊維のプラズマ処理時間(又は滞留時間)は約2秒であるが、これは使用するプラズマ処理機の寸法と相対的なものであり、厳密に限定するものではない。より適切な尺度は、経時で単位面積当たり繊維に印加されるRF電力に換算したプラズマ処理量である。
【0043】
プラズマ被覆は、繊維ウェブの表面を活性化させ、その活性化させた繊維ウェブをビニルモノマー、ビニルオリゴマー、或いはその他の反応種を含む雰囲気に通過させることとして定義される。プラズマ被覆は繊維の表面に極めて特異な化学機能を追加することができ、繊維の表面に異なるポリマー特性を追加することができる。直接フッ素化処理では、フッ素元素による繊維の直接フッ素化によって繊維表面を修飾する。例えば、繊維表面を10%F/90%Heの混合物と25℃で接触させ、繊維表面にフッ素元素を堆積させることにより繊維表面をフッ素化することができる。繊維表面に存在するフッ素元素は、次いで塗布される被覆材料と結合するための官能基として機能する。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,988,491及び同第4,020,223号を参照すると、フッ素元素、酸素元素及びキャリアガスの混合物を用いる繊維の直接フッ素化が開示されている。UVグラフト化も当技術分野でよく知られている方法である。弾道繊維表面のUVグラフト化を行う任意の方法では、繊維(又は布帛)をモノマー、光増感剤、及び溶媒に浸漬して、少なくとも部分的に繊維表面/布帛表面をモノマー及び光増感剤で被覆する。次いで当技術分野で知られているように、被覆した繊維にUV照射を行う。モノマーの種類、光増感剤の種類、及び溶媒の種類の具体的な選択は、当業者の所望で変更され、また当業者によって容易に決定される。例えば、「Studies on surface modification of UHMWPE fibers via UV initiated grafting(紫外線により開始されるグラフト化による超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維の表面改質に関する研究)」(Jieliang Wang, et al. of the Department of Applied Chemistry, School of Science,
Northwestern Polytechnical University、中華人民共和国陝西省西安市710072、Applied Surface Science, 第253巻、第2号、668〜673頁(2006年11月15日
))という表題の論文に考察されているとおり、アクリルアミドグラフト重合用単量体を介してアクリルアミド基をUHMWPE重合体鎖にグラフト化することができ、その開示は本明細書に矛盾のない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
更に、本発明の繊維は、これらの任意の処理の1つ以上で処理してもよい。例えば、繊維はクロムエッチングによる粗面化とプラズマ処理の両方、又はコロナ処理とプラズマ被覆の両方、又はプラズマ処理とプラズマ被覆の両方を施されてもよい。更に、本発明の複合体及び布帛は、処理されている繊維と処理されていない繊維とを含んでもよい。例えば、本明細書の複合材料はコロナ処理された繊維とプラズマ処理された繊維とから、又はフッ素化された繊維とフッ素化されていない繊維とから作製することができる。
【0045】
これらの処理はそれぞれ、繊維表面仕上げ剤の少なくとも部分的な除去の後であるが、任意の結合剤/マトリックス樹脂又は他の被吸着剤/被覆材の塗布の前に行われる。整列させた繊維ウェブをポリマー結合剤又は樹脂によって被覆する直前に露出繊維表面を処理することは、繊維の製造工程を最も混乱させずに繊維が改質されて保護されていない状態にある時間を最短にできるので、最も好ましい。繊維スプール(巻取り繊維パッケージ)から繊維を巻き出し、繊維を並べて繊維ウェブとした後、直ちに繊維表面仕上げ剤を除き、露出繊維表面を処理し、引き続き、直ちに重合体/樹脂の塗布液を繊維に塗る又は含浸させるのが理想である。これは、また、繊維の表面改質の有効な期間或いは劣化の速度に関する考慮事項がある場合でも、繊維は処理されて被覆されていない状態に最短の時間しか置かれない。しかしながら、これは主に全体の作製工程に対する混乱が最小である点では理想であるが、複合材料の曲げ特性又はBFS性能の向上を達成する点では必ずしも理
想ではない。
【0046】
繊維仕上げ剤の少なくとも部分的除去及び任意選択の表面処理の結果、複数の隣接する繊維層を含む本発明の繊維複合材料は、好ましくは少なくとも約7.50ksi(約51.71MPa)の降伏応力、より好ましくは少なくとも約8.0ksi(約55.16MPa)、より好ましくは少なくとも約8.5ksi(約58.61MPa)、より好ましくは少なくとも約9.0ksi(約62.05MPa)、より好ましくは少なくとも約9.5ksi(約65.50MPa)、より好ましくは少なくとも約10.0ksi(約68.95MPa)、より好ましくは少なくとも約10.5ksi(約72.39MPa)、及び最も好ましくは少なくとも約11.0ksi(約75.84MPa)の降伏応力を有し、全てを、長さが約6”(15.24cm)、幅が0.5”(12.7mm)±約0.02”(0.508mm)、厚みが0.3”(7.62mm)±約0.02”(0.508mm)の試料を用い、両端の支持体間の長さを約4.8”(12.192cm)とし、約0.01インチ/インチ/分(ASTM D790操作Aに従って0.128インチ
/分に交差速度を設定)の歪み速度、及び約72°Fの標準周囲室温で測定する。これらの降伏応力値は、前記条件で試験した複合材料試料及び前記で指定した試料の大きさ及び形に依存する。実際の使用においては、本発明の繊維複合材料から形成した弾道抵抗性物品は、種々の大きさと形を有するので、本明細書で特定された降伏応力値は最小値であり、最大値ではないとみなされる。降伏応力(及び本発明の実施例に記載されたいずれの曲げ特性)もまた、室温付近(約72°F)での測定値を指すにすぎない。暖かい条件は、繊維複合材料の重合体結合剤要素を軟化させ、繊維との結合の強度を低下させる可能性がある。いかなる比較測定も、同じ試験温度で行わなければならない。
【0047】
前記の曲げ強度特性を有する上述の繊維複合材料は、曲げ強度特性の劣る複合材料、即ち、本発明の複合材料よりも低い降伏応力を有する複合材料に比較し、非常に小さい裏面変形量を示すことが分かった。この事は、弾道抵抗能力では他の繊維よりも本来優れるが重合体被覆材に対しては親和性が本来低いポリエチレン繊維の場合に特に顕著である。上述の処理の任意の組合せによるポリエチレン繊維表面の処理を、ポリエチレン繊維から形成されるポリエチレン系布帛を作製する前に行い、ポリエチレン系複合材料の曲げ強度を増加させることによって、アラミド繊維を含む他のいかなる種類の繊維よりも相対的に優れた構造的特性、弾道貫通抵抗性及び裏面変形量抵抗特性の組合せが達成される。
【0048】
この点においては、本発明の繊維複合材料は、約427m/秒〜約445m/秒(1430フィート/秒(fps)±30fps)の速度で発射された124−グレイン、9mmFMJ RN発射体で衝撃を受けた場合、2.0ポンド/平方フィート(psf)の面
密度を有する複合材料について測定した約8mm未満の好ましい裏面変形量を有する。この事は、本発明の全ての繊維複合材料又は物品が2.0psfの面積密度を有するというわけでも、また本発明の全ての繊維複合材料又は物品が前記の速度のそのようなFMJ
RN発射体に対して8mmのBFSを有するというわけでもない。本発明の方法に従って作製した複合材料が、2.0psf板に加工された場合には、前記速度のそのようなFMJ RN発射体に対して約8mm未満のBFSを有するという点で特徴づけられるという
ことが確認されるにすぎない。当然のことながら、用語のBFS、裏面変形、外傷形跡、及び鈍力外傷は、発射体の衝撃による複合材料の凹みの深さの尺度ではなく、むしろ発射体の衝撃による裏面材料への、又は使用者の身体への凹みの深さの尺度である。これは、硬質装甲、特にヘルメット装甲の研究に特に適している。というのは、ヘルメットのBFSは、典型的には試作品のヘルメットを金属製の頭型(head form)に置いて試験をする
(ヘルメットを頭型から1/2インチ(1.27cm)離して懸架するシステムによって頭型に保持した。)。頭型の内部は粘土で充填されており、この粘土の領域の凹みの深さをBFSとして測定する(1/2インチの間隔の深さは測定に含まない)。これは、実験室でのBFS試験と現場使用で兵士が経験する実際のBFSとを相関させる目的のために
行う。現場使用では、典型的なヘルメットはヘルメット内部パッド或いは懸架システム/保持装着帯のために、典型的には頭部から1/2インチの補正を組み込む。他方、軟質装甲のBFSは通常は装甲を、間隔をとらずに粘土表面に直接置くことにより試験をする(それは実際の現場使用の位置と一致する)。従って、BFS深度測定値は用いる試験方法と関連しており、BFSの深度測定値を比較する場合は、用いたテスト法が試験試料を裏面材料に直接設置及び裏面材料から間隔をとって設置のどちらを要求されたかを識別することが必要である。これに関しては、本発明の繊維複合材料のBFS試験では、全て2.0psf試料と粘土裏面材料の間に1/2インチの空間を置いて測定した。好ましい態様において、本発明の繊維複合材料は、NIJ標準−0101.04の発射体の発射条件下、約427m/秒〜約445m/秒の速度で発射された124−グレイン、9mmFMJ発射体で衝撃を受けた場合、約7mm未満のより好ましい裏面変形量を有し、約427m/秒〜約445m/秒の速度で発射された124−グレイン、9mmFMJ RN発射体
(担体を除いて90%銅及び10%亜鉛を含む銃弾)で衝撃を受けた場合、より好ましくは約6mm未満の、より好ましくは約5mm未満の、より好ましくは約4mm未満の、より好ましくは約3mm未満の、より好ましくは約2mm未満の、最も好ましくは約1mm未満の裏面変形量を有する。約427m/秒〜約445m/秒の速度で発射された124−グレイン、9mmFMJ RN発射体に対するBFS試験は、当該分野で一般的である
【0049】
これらのBFS値を達成する前記繊維複合体は、それぞれ複数の隣接する繊維層を含み、各繊維層は重合体材料で少なくとも部分的に被覆された表面を有する繊維を含み、前記繊維が、前記ポリマー材料の大部分が前記繊維表面と直接接触するように、ほとんど繊維表面仕上げ剤を含有しない繊維複合体であって、上述の標本試料に対して、ASTM D
790に従って、ほぼ室温において、少なくとも約7.50ksi(約51.71MPa)、より好ましくは少なくとも約8.0ksi(約55.16MPa)、より好ましくは少なくとも約8.5ksi(約58.61MPa)、より好ましくは少なくとも約9.0ksi(約62.05MPa)、より好ましくは少なくとも約9.5ksi(約65.50MPa)、より好ましくは少なくとも約10.0ksi(約68.95MPa)、より好ましくは少なくとも約10.5ksi(約72.39MPa)、及び最も好ましくは、少なくとも約11.0ksi(約75.84MPa)の降伏応力を有する。これらのBFS値及びこのような降伏応力の両方を達成する前記の繊維複合材料は、好ましくは少なくとも約1750フィート/秒(fps)(533.40m/秒)、より好ましくは少なくとも約1800fps(548.64m/秒)、更により好ましくは少なくとも約1850fps(563.88m/秒)、及び最も好ましくは少なくとも約1900fps(579.12m/秒)の17−グレイン破片模擬弾(fragment simulating projectile:FSP)に対するV50も示す。上記のV50値の全ては、約1.0ポンド/平方フィート(psf)(4.88kg/m(ksm))を有する装甲板についての値である。上記のBSF値の全ては、約2.0ポンド/平方フィート(psf)(7.96kg/m(ksm))を有する装甲板についての値である。BFSについては、本発明の全ての繊維複合材料又は物品が特定の面積密度を有するというわけでも、また本発明の全ての繊維複合材料又は物品が17−グレインFSPに対して少なくとも約1750フィート/秒のV50を有するというわけでもない。ただ本発明の方法に従って作製した複合材料が、1.0psf板に加工された場合には、その1.0psf板が17−グレインFSPに対して、約1750フィート/秒のV50を有するという点で特徴づけられるということが確認されるにすぎない。
【0050】
本明細書において形成される繊維層及び複合材料は、好ましくは、高強度高引張弾性率の重合体繊維からなる弾道抵抗性複合材料である。最も好ましくは、繊維は弾道抵抗性材料及び物品の形成に有用である高強度高引張弾性率の繊維を含む。本明細書で用いられる「高強度高引張弾性率繊維」は、ASTM D2256に準拠する測定で、少なくとも約
7g/デニール以上の靭性及び少なくとも約150g/デニール以上の引張弾性率、そして好ましくは少なくとも約8J/g以上の破断エネルギーを有するものである。本明細書で使用される用語「デニール」は、線密度の単位を指し、9000メートル当たりの繊維又は糸のg単位で表した質量に等しい。本明細書で用いられる用語「靭性」は、応力がかかっていない試料の、単位線密度(デニール)当たりの力(g)として表した引張応力を指す。繊維の「初期弾性率」は、その変形抵抗性を表す材料の物性である。「引張弾性率」という用語は、デニール当たりのg重で表した靭性の変化(g/d)の元の繊維長に対する分率として表した歪みの変化(インチ/インチ)に対する割合を指す。
【0051】
繊維を形成する重合体は、弾道抵抗性複合材料/布帛の製造に適した高強度高引張弾性率繊維であることが好ましい。特に弾道抵抗性複合体材料とその物品の製造に適している特に適切な高強度高引張弾性率繊維材料としては、高密度及び低密度ポリエチレンを含むポリオレフィン繊維が挙げられる。特に好ましいのは、高配向高分子量ポリエチレン繊維(特に超高分子量ポリエチレン繊維)及びポリプロピレン繊維(特に超高分子量ポリプロピレン繊維)等の伸び切り鎖ポリオレフィン繊維である。同様に適しているのは、アラミド繊維(特にパラアラミド繊維)、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタラート繊維、ポリエチレンナフタラート繊維、伸び切り鎖ポリビニルアルコール繊維、伸び切り鎖ポリアクリロニトリル繊維、ポリベンザゾール繊維(例えば、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維やポリベンゾチアゾール(PBT)繊維)、液晶共重合エステル繊維、及びその他の剛性ロッド繊維(例えばM5(登録商標)繊維)である。これらの繊維の種類はいずれも当技術分野では従来から知られている。同様に重合体繊維を製造するのに適しているのは、重合体、ブロック重合体及び上記材料のブレンドである。
【0052】
弾道抵抗性布帛用の最も好ましい繊維の種類としては、ポリエチレン繊維(特に伸び切り鎖ポリエチレン繊維)、アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維、液晶共重合エステル繊維、ポリプロピレン繊維(特に高配向伸び切り鎖ポリプロピレン繊維)、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維、及び他の剛性ロッド繊維(特にM5(登録商標)繊維)が挙げられる。具体的に最も好ましい繊維は、アラミド繊維である。
【0053】
ポリエチレンの場合、好ましい繊維は、少なくとも500,000、好ましくは少なくとも100万、更に好ましくは200万〜500万の分子量を有する伸び切り鎖ポリエチレンである。このような伸び切り鎖ポリエチレン(ECPE)繊維は、溶液紡糸法によって成長させることもできるし(例えば、米国特許第4,137,394号、同第4,356,138号(これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載)、又は溶液から紡糸をして、ゲル構造を形成することもできる(例えば、米国特許第4,551,296号、同第5,006,390号(これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載)。本発明で用いるのに特に好ましい繊維の種類は、ハネウェル・インターナショナル社からSPECTRA(登録商標)の商品名で販売されているポリエチレン繊維である。SPECTRA(登録商標)繊維は当技術分野でよく知られており、例えば、米国特許第4,623,547号及び同第4,748,064号に記載されている。ポリエチレンに加えて、別の有用なポリオレフィンは、例えば、米国サウスカロライナ州スパルタンバーグのミリケン・アンド・カンパニー(Milliken & Company)から市販されているTEGRIS(登録商標)繊維等のポリプロピレン(繊維又はテープ)である。
【0054】
また、特に好ましいのは、アラミド(芳香族ポリアミド)又はパラアラミド繊維である。それらは商業的に入手可能であり、例えば、米国特許第3,671,542号に記載されている。例えば、有用なポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)フィラメントはデュポン社(DuPont)によりKEVLARの登録商標で製造販売されている。同様に本発明を実施する際に有用なのは、デュポン社(DuPont)がNOMEX(登録商標)の商品名で製造販売しているポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)繊維、テイジン社がTWARO
N(登録商標)の商品名で製造販売している繊維、韓国のコロン・インダストリーズ社(Kolon Industries, Inc)がHERACRON(登録商標)の商品名で製造販売している
アラミド繊維、ロシアのカメンスク・ボロクノJSC社(Kamensk Volokno JSC)がSVM(登録商標)及びRUSAR(登録商標)の商品名で製造販売しているp−アラミド繊維、及びロシアのJSCキム・ボロクノ社(JSC Chim Volokno)がARMOS(登録商標)の商品名で製造販売しているp−アラミド繊維である。
【0055】
本発明を実施するのに適切なポリベンズアゾ−ル繊維は市販されており、例えば、米国特許第5,286,833号、同第5,296,185号、同第5,356,584号、同第5,534,205号及び同第6,040,050号(これらのそれぞれは参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されている。本発明を実施するのに適切な液晶共重合エステル繊維は市販されており、例えば、米国特許第3,975,487号、同第4,118,372号及び同第4,161,470号(これらの各々は参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されている。適切なポリプロピレン繊維には、米国特許第4,413,110号(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のような高延伸伸び切り鎖ポリプロピレン(ECPP)繊維が含まれる。適切なポリビニルアルコール(PV−OH)繊維は、例えば、米国特許第4,440,711号及び同第4,599,267号(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。適切なポリアクリロニトリル(PAN)繊維は、例えば、米国特許第4,535,027号(参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されている。これらの繊維の種類はそれぞれ公知であり、広く市販されている。
【0056】
M5(登録商標)繊維は、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)で形成され、バージニア州リッチモンドのマゼラン・システムズ・インターナショナル社(Magellan Systems International)で製造され、例えば米国特許第5,674,969号、同第5,939,553号、同第5,945,537号、及び同第6,040,478号(これらの特許は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。同様に適切なのは、上記のすべての材料の組合せであり、それらのすべては市販されている。例えば、繊維層は、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維(例えば、SPECTRA(登録商標)繊維)、炭素繊維他の1種以上とガラス繊維等の低性能材料の組合せから形成してもよい。しかしながら、BFS及びV50の値は、繊維の種類によって異なる可能性がある。
【0057】
繊維は任意の適切なデニールでよく、例えば、50〜約3000デニール、より好ましくは約200〜3000デニール、更により好ましくは約650〜約2000デニール、最も好ましくは約800〜約1500デニールである。繊維の選択は、弾道抵抗有効性と費用を考慮して決定される。より細い繊維は、製造するのに、また織るのにより多くの費用がかかるが単位重量当たりでより大きな弾道抵抗有効性をもたらすことができる。
【0058】
上述のように、高強度高引張係数繊維は、ASTM D2256により測定して、好ま
しくは約7g/デニール以上の靭性、好ましくは約150g/デニール以上の引張係数、及び好ましくは約8J/g以上の破断エネルギーを有するものである。本発明の好ましい態様では、繊維の靭性は、約15g/デニール以上、好ましくは約20g/デニール以上、より好ましくは約25g/デニール以上、更により好ましくは約30g/デニール以上、更により好ましくは約37g/デニール以上、更により好ましくは約40g/デニール以上、より更により好ましくは約45g/デニール以上、より更により好ましくは約50g/デニール以上、より更により好ましくは約55g/デニール以上、最も好ましくは約60g/デニール以上であるべきである。好ましい繊維は、約300g/デニール以上の好ましい引張係数、より好ましくは約400g/デニール以上、より好ましくは約500g/デニール以上、より好ましくは約1000g/デニール以上、さらにより好ましくは
約1500g/デニール以上の引張係数も有する。好ましい繊維は、また好ましくは約15J/g以上、より好ましくは約25J/g以上、さらにより好ましくは約30J/g以上の破断エネルギーを有し、最も好ましくは、約40J/g以上の破断エネルギーを有する。これらの組み合わされた高強度特性は、公知の方法を用いることによって得ることができる。米国特許第4,413,110号、同第4,440,711号、同第4,535,027号、同第4,457,985号、同第4,623,547号、同第4,650,710号、及び同第4,748,064号は、本発明において使用される好ましい高強度伸び切り鎖ポリエチレン繊維の形成について一般的に論じている。溶液成長法又はゲル繊維法を含むこのような方法は、当技術分野で周知である。パラアラミド繊維を含めた他の好ましい種類の繊維のそれぞれを形成する方法も、当技術分野で従来から知られており、またそれらの繊維は市販されている。本発明の繊維複合材料は、好ましくは約1.7g/cm以下の繊維面密度を有する繊維を含む。
【0059】
所望により繊維表面から繊維表面仕上げ剤の少なくとも一部を除去した後、及び所望により続いて塗布する被吸着剤の繊維表面への吸着を増強するのに有効な条件で繊維表面を処理した後に、所望により次いで被吸着剤を少なくとも一部の繊維の少なくとも一部分に塗布する。本明細書で用いられる用語「吸着」は、任意の物質(固体、液体、気体又はプラズマ)の繊維表面への物理吸着及び化学吸着の両方を広く包含することを意図し、「物理吸着」は、本明細書では、繊維表面への物質の物理的結合と定義され、「化学吸着」は、本明細書では、物質の繊維表面(ここでは化学反応が露出繊維(即ち、吸着剤(absorbant))表面で起こる)への化学的結合と定義される。本明細書で用いられる用語「吸着
」は限定されないが、重合体マトリックス内の繊維の湿潤性/接着性を高める手段も含め、基質表面に物理的又は化学的に物質を付着させる、接着させる、又は結合させるあらゆる可能な手段を含むものとする。これは、任意の固体、液体又は気体物質の繊維表面への接着又は塗布を明らかに含み、任意のモノマー、オリゴマー、重合体又は樹脂を含み、また任意の有機材料又は無機材料を繊維表面に塗布することを含む。この点では、「被吸着剤(adsorbate)」の定義は同様に限定されないが、重合体結合剤、樹脂、又は重合体マ
トリックス材料として全ての重合体を明らかに含む。しかしながら、本発明の目的にとって有用な被吸着剤の種類としては、紡糸仕上げ剤等の繊維表面仕上げ剤(結合特性を有する結合剤ではなく、逆に繊維表面から本発明に従い特異的に剥離される)を含む結合特性を持たない物質は明白に除外される。
【0060】
本発明の目的にとって、樹脂等の重合体結合剤材料である被吸着剤の塗布は、所望の曲げ特性を有する複合体を達成するために必要である。従って、本発明の織布又は不織布を形成する繊維は、重合体結合剤材料で被覆するか又はそれに含浸させる。重合体結合剤材料は、繊維層の個々の繊維を部分的に又は実質的に被覆し、好ましくは各繊維層の個々の繊維のそれぞれを実質的に被覆する。重合体結合剤材料は、一般に「重合体マトリックス」材料としても知られ、これらの用語は本明細書では交換可能に用いられる。これらの用語は、当技術分野で従来公知であり、その固有の接着特性によって、又は公知の熱及び/又は圧力条件に置かれることによって、繊維を互いに結合させる物質を表す。このような「重合体マトリックス」又は「重合体結合剤」材料は、また布帛に耐摩耗性及び有害な環境条件に対する耐性等の他の望ましい特性も付与することができるので、例えば、織布の場合等のように結合剤材料の結合特性は重要でない場合でも、このような結合剤材料で繊維を被覆することは望ましいと考えられる。
【0061】
適切な重合体結合剤材料は、低弾性率エラストマー材料及び高弾性率硬質材料の両方を含む。本明細書全体にわたって、用語「引張弾性率」は、繊維についてはASTM 22
56に従って測定され、重合体結合剤材料についてはASTM D638に従って測定さ
れる弾性率を意味する。低弾性率又は高弾性率の結合剤は様々な重合体材料及び非重合体材料を含むことができる。好ましい重合体結合剤は低弾性率エラストマー材料を含む。本
発明の目的に対しては、低弾性率エラストマー材料は、ASTM D638試験手順に従
って約6,000psi(41.4MPa)以下と測定される引張弾性率を有する。低弾性率重合体は、好ましくは、約4,000psi(27.6MPa)以下、より好ましくは約2400psi(16.5MPa)以下、更により好ましくは1200psi(8.23MPa)以下、特に好ましくは約500psi(3.45MPa)以下のエラストマーの弾性率を有する。エラストマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは約0℃未満、より好ましくは約−40℃未満、特に好ましくは約−50℃未満である。エラストマーは、また、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%の破断伸度を有し、特に好ましくは少なくとも約300%の破断伸度を有する。
【0062】
多種多様の低弾性率を有する材料及び配合物を重合体結合剤として利用することができる。代表的な例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリスルフィド重合体、ポリウレタンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリエーテル、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、エチレン共重合体、ポリアミド(ある繊維型と共に有用)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート、及びそれらの組み合わせ、並びに繊維の溶融点より低い温度で硬化可能な他の低弾性率の重合体及び共重合体が挙げられる。同じく好ましいのは、異なるエラストマー材料の混合物、又はエラストマー材料と1種以上の熱可塑性プラスチックの混合物である。
【0063】
特に有用であるのは、共役ジエンとビニル芳香族単量体のブロック共重合体である。ブタジエン及びイソプレンは好適な共役ジエンエラストマーである。スチレン、ビニルトルエン、及びt−ブチルスチレンは、好ましい共役芳香族単量体である。ポリイソプレンを組み込んだブロック共重合体を水素化すると、飽和炭化水素エラストマー部分を有する熱可塑性エラストマーを生成することができる。重合体は、A−B−A型の単純な3ブロック共重合体であってもよいし、(AB)(n=2〜10)型の複数ブロック共重合体又はR−(BA)(x=3〜150)型の放射状配置の共重合体でもよい(式中、Aはポリビニル芳香族単量体由来のブロックであり、Bは共役ジエンエラストマー由来のブロックである)。こうした重合体の多くは、米国テキサス州ヒューストンのクレイトンポリマー社(Kraton Polymers)が製造販売を行っており、会報「Kraton Thermoplastic Rubber」のSC−68−81に記載されている。同様に有用であるのは、PRINLIN(登録商標)の商品名で販売され、ドイツ国デュッセルドルフを本拠とするヘンケル・テクノロジーズ社(Henkel Technologies)から商業的に入手可能なスチレン−イソプレン−スチ
レン(SIS)ブロック共重合体の樹脂分散物である。特に好ましい低弾性率重合体結合剤用重合体は、クレイトンポリマー社(Kraton Polymers)が商業的に製造し、KRAT
ON(登録商標)の商品名で販売されているスチレンブロック共重合体を含む。特に好ましい重合体結合剤材料は、KRATON(登録商標)の商品名で販売されているポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体を含む。
【0064】
低弾性率の重合体マトリックス結合剤材料は防弾ベスト等の可撓性装甲の形成に非常に有用であるが、ヘルメット等の硬質装甲物品の形成に有用な高弾性率硬質材料が本明細書では特に好ましい。好ましい高弾性率硬質材料は一般に6,000psiより高い初期引張弾性率を有する。本明細書において有用である好ましい高弾性率硬質重合体結合剤材料としては、ポリウレタン(エーテル系及びエステル系の両方)、エポキシ、ポリアクリレート、フェノール/ポリビニルブチラール(PVB)重合体、ビニルエステル重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、並びにビニルエステルとフタル酸ジアリル、或はフェノールホルムアルデヒドとポリビニルブチラール等の重合体混合物が挙げられる。本発明での使用に特に好ましい硬質重合体結合剤材料は、熱硬化性重合体、好ましくは炭素
−炭素飽和溶媒(メチルエチルケトン等)に可溶であり、硬化したときにASTM D6
38に準拠する測定で少なくとも約1×10psi(6895MPa)の高引張弾性率を有する熱硬化性重合体である。特に好ましい硬質重合体結合剤材料は米国特許第6,642,159号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものである。重合体結合剤は、当技術分野で良く知られているように、低弾性率材料であるか高弾性率材料であるかによらず、カーボンブラックやシリカ等の充填剤も含んでもよく、油展してもよく、硫黄、過酸化物、金属酸化物、又は照射硬化系により硬化することができる。
【0065】
最も具体的に好ましいのは、極性樹脂又は極性重合体であり、特に軟質〜硬質の範囲の材料のポリウレタンで、約2,000psi(13.79MPa)〜約8,000psi(55.16MPa)の範囲の引張弾性率を有する。好ましいポリウレタンは、最も好ましくは、必ずしもではないが、共溶媒を含まない水性ポリウレタン分散液として塗布される。このような水性ポリウレタン分散液としては、水性アニオン性ポリウレタン分散液、水性カチオン性ポリウレタン分散液及び水性非イオン性ポリウレタン分散液が挙げられる。特に好ましいのは水性アニオン性ポリウレタン分散液、水性脂肪族ポリウレタン分散液であり、最も好ましいのは、水性アニオン性脂肪族ポリウレタン分散液であり、それらの全ては好ましくは共溶媒を含まない分散液である。それらとしては、水性アニオン性ポリエステル系ポリウレタン分散液、水性脂肪族ポリエステル系ポリウレタン分散液、及び水性アニオン性脂肪族ポリエステル系ポリウレタン分散液が挙げられ、それらの全ては好ましくは共溶媒を含まない分散液である。それらとしては、また水性アニオン性ポリエーテル系ポリウレタン分散液、水性脂肪族ポリエーテル系ポリウレタン分散液、及び水性アニオン性脂肪族ポリエーテル系ポリウレタン分散液も挙げられ、それらの全ては好ましくは共溶媒を含まない分散液である。同様に好ましいのは、水性カチオン性分散液及び水性ノニオン性分散液の全ての対応する種類(ポリエステル系、脂肪族ポリエステル系、ポリエーテル系、脂肪族ポリエーテル系他)である。最も好ましいのは、約700psi以上、特に好ましくは700psi〜約3000psiの範囲の100%伸び率での弾性率を有する脂肪族ポリウレタン分散液である。より好ましいのは、約1000psi以上、更により好ましくは約1100psi以上の100%伸び率での弾性率を有する脂肪族ポリウレタン分散液である。最も好ましいのは、1000psi以上、好ましくは1100psi以上の弾性率を有する脂肪族ポリエーテル系アニオン性ポリウレタン分散液である。
【0066】
本発明の複合材料で形成された物品の剛性、衝撃特性、及び防弾特性は、繊維を被覆する重合体結合剤用重合体の引張弾性率に影響される。例えば、米国特許第4,623,574号には、約6,000psi(41,300kPa)未満の引張弾性率を有するエラストマーマトリックスで構築された繊維強化複合材料が、より高い弾性率の重合体で構成された複合体と比べても、同じ繊維構造体で重合体結合剤材料を含まない複合体と比べても、どちらよりも優れた防弾特性を有することが開示されている。しかしながら、引張弾性率の低い重合体結合剤材料用重合体からは同様に低い剛性の複合体しか得られない。更に、特定の用途、特に複合体に防弾と構造の両面での機能が求められる用途においては、防弾性と剛性の優れた組み合わせが必要とされる。従って、特に使用に最も適切な重合体結合剤用重合体の種類は本発明の布から形成する物品の種類によって変わる。防弾性と剛性の両方を確保する目的で、好適な重合体結合剤を低弾性率材料及び高弾性率材料の両方と組み合わせて単一の重合体結合剤を形成することができる。
【0067】
重合体結合剤材料は、繊維ウェブ(例えば平行配列又はフェルト)として配置された複数の繊維に同時又は順次のいずれかで塗布されて被覆ウェブを形成し、織布に塗布されて被覆織布を形成するか、又は別の配置の場合は、繊維層に結合剤を含浸させる。本明細書で使用される用語「含浸される」は、「包埋される」及び「被覆される」或いは他の方法で被覆材料を塗布されると同義であり、この場合、結合剤材料は繊維層を拡散し、単に繊
維層の表面に存在するだけではない。重合体材料は、繊維ウェブに含まれていない少なくとも1つの繊維配列に塗布され、続いて塗布された繊維を本明細書で上述した方法に従って織布に織り込む、或は不織布に組み込むこともできる。織布及び不織布のプライ、層及び布帛を形成する技術は当技術分野で周知である。
【0068】
必須ではないが、織られた繊維層を形成する繊維は、少なくとも部分的に重合体結合剤で被覆され、続いて不織繊維層に対して実施されるのと同様な圧密化工程を実施する。そのような圧密化工程を行うことにより、複数の織られた繊維層を互いに一体化する、又は更に結合剤を前記織布の繊維と一体化することができる。例えば、複数の織られた繊維層は必ずしも圧密化する必要はなく、他の手段、例えば慣用の結合剤や縫製により結合してもよい。
【0069】
一般に、重合体結合剤の被覆材は複数の不織繊維プライを効率的に一体化する、即ち圧密化するために必要である。重合体結合剤材料は、個々の繊維の表面全部に、または繊維の表面の一部に塗布することができる。最も好ましくは、重合体結合剤材料である被覆材は本発明の繊維層を形成する個々の繊維一本一本の表面の実質的にすべてに塗布される。繊維層が複数本の糸を含む場合、一本の糸を形成する各繊維が好ましくは重合体結合剤材料で被覆される。
【0070】
任意の適切な塗布方法が重合体結合剤材料を塗布するために利用することができ、用語「被覆される」は、重合体結合剤材料をフィラメント/繊維に塗布する方法を限定するものではない。重合体結合剤材料は、当業者ならば容易に決定できる任意の適切な方法を用いて繊維表面に直接塗布され、次いで典型的には結合剤は本明細書で説明したように繊維層中に拡散する。例えば、重合体結合剤材料は、重合体材料の溶液(この溶液の一部は1種以上の所望の重合体を含み、また溶液の一部は1種以上の重合体を溶解又は分散することが可能である溶媒を含む)を噴霧し、押出し、又はローラー塗布し、続いて乾燥させることにより、溶液、乳濁液又は分散液の形態で繊維表面に塗布してもよい。あるいは、重合体結合剤材料は、スロットダイを通す等の従来周知の技術を用いて、又は当技術分野で周知である他の方法(直接グラビア塗装、メイヤーロッド(Meyer rod)、及びエアナイ
フ(air knife)システム等)を用いて、繊維に表面に押し出してもよい。別の方法は、
結合剤材料の重合体そのものを、液体、粘着性固体、若しくは懸濁液の粒子として、又は流動床として、繊維に塗布する方法である。あるいは、被覆材は塗布温度で繊維の性質に悪影響を及ぼさない適切な溶媒を用いた溶液、乳化液、又は分散液として塗布することができる。例えば、繊維を重合体結合剤材料の溶液に通して移送することで、実質的に繊維を被覆し、次いで乾燥できる。
【0071】
別の被覆技術では、重合体結合剤材料を適切な溶媒に溶解又は分散させた溶液の浴に繊維を浸し、次いで溶媒の蒸発又は揮発により乾燥させてもよい。この方法は、重合体材料で個々の繊維を好ましくは少なくとも部分的に被覆し、個々の繊維を好ましくは実質的に被覆又は被包し、フィラメント/繊維表面のすべて又は実質的にすべてを重合体結合剤材料で覆う。浸漬操作は、所望量の重合体材料を繊維に塗布するのに必要なだけ複数回繰り返すことができる。
【0072】
繊維に被覆材を塗布する他の技術を用いることもでき、適切な際にゲル繊維前駆体を被覆することも含め、例えば、ゲル繊維を所望の被覆を達成する条件下で適切な被覆材重合体の溶液に通過させる等が挙げられる。あるいは、適切な重合体粉末の流動床内に繊維を押出すこともできる。
【0073】
繊維表面仕上げ剤の少なくとも部分的な除去後、及び好ましくは繊維表面に順次塗布する被吸着剤の吸着を促進する表面処理後に繊維を重合体結合剤で被覆することが必要であ
るが、繊維を1つ以上のプライ/層に配置する前あるいは後、又は繊維を織布に織り込む前あるいは後のいずれかに繊維を重合体結合剤で被覆することができる。織布は、当技術分野で周知である技術により任意の織り方(平織り、千鳥綾織り、斜子織り、繻子織り、綾織り等)で形成することができる。平織りが最も一般的であり、平織りでは、繊維は直交する0°/90°の向きでひとつに織り上げられる。織る前か後のいずれかで、各織布材料の個々の繊維を、重合体結合剤材料で被覆してもよいし、しなくてもよい。典型的には、布帛の製織は、繊維を重合体結合剤で被覆(それによって織布に結合剤が含浸される)する前に行う。しかしながら、本発明は、重合体結合剤を繊維に塗布する段階、或いは重合体結合剤を塗布するのに用いる手段によって限定されるものではない。
【0074】
不織布の製造方法は、当該技術分野において周知である。本明細書の好ましい態様では、複数の繊維は少なくとも1つの配列に配置され、典型的には、実質的に平行な一方向性配列に整列した複数の繊維を含む繊維ウェブとして配置される。前述の通り、一方向に整列した不織繊維プライを形成する典型的な方法では、繊維の束を、クリールからガイド及び1つ以上の拡幅棒(spreader bars)を通して平行櫛に送り、続いて繊維を重合体結合
剤材料で被覆する。典型的な繊維の束は、約30本〜約2000本の個々の繊維を含む。拡幅棒及び平行櫛は、束になった繊維をほぐして広げ、再構成して同一平面上で互いに隣接して並べる。繊維が理想的に広げられることで、単一繊維面に個々のフィラメント又は個々の繊維が順次配置され、繊維が互いに重なり合わずに実質的に一方向の繊維の平行配列を形成する。この時点で、この拡幅段階の前又は間に繊維表面仕上げを除去すると、繊維の拡幅が進んで加速され、そのような平行配列となる。
【0075】
繊維を結合剤材料で被覆した後、この被覆繊維から不織布を形成する。この不織布は複数の重なり合う不織繊維プライを含み、この不織繊維プライは圧密化されて単一層の一体要素になっている。本発明の好ましい不織布構造体では、複数の積み重なり合ったユニテープが形成され、1つ1つのプライ(ユニテープ)の平行な繊維は、それぞれ互いに隣り合う1つのプライの平行な繊維と、プライの長軸繊維方向に対して直角に配置される。重なり合う不織繊維プライの積層物を加熱及び加圧下で圧密化するか、又は個々の繊維プライの被膜を接着することにより、単一層の一体要素を形成する。この要素は当技術分野では単一層圧密化網状体とも称されており、「圧密化網状体」とは繊維プライと高分子マトリクス/結合剤との組み合わせを圧密化(一体化)したものを表す。本発明の物品は、織布、一方向繊維プライで形成された不織布、及び不織フェルト布をハイブリッドに組み合わせて圧密化したものも含むことができる。
【0076】
最も典型的には、不織布は、1つから約6つのプライを有するが、種々の用途によって望まれるかもしれない、約10〜約20という多数のプライを有してもよい。プライの数が多いほど防弾性が向上するが、重量も重くなる。従って、本発明の布又は物品を形成する繊維プライの数は、その布又は物品の最終的な用途によって変わってくる。例えば、軍事用の防護ベストでは、1.0ポンド/平方フィート(4.9kg/m)以下の望ましい面密度を達成した複合体物品を形成する目的で、合計で約100のプライ(又は層)〜約50のプライ(又は層)が必要になる可能性があり、これらのプライ/層は、本明細書に記載の高強度繊維で形成された、織布、編地、フェルト、不織布(平行に配列された又は他の配置の繊維による)のいずれでもよい。別の態様において、警察が使用する防護ベストは、NIJ警戒レベルに基づき多数のプライ/層を有する可能性がある 例えば、NIJ警戒レベルIIIAのベストの場合、合計で40本のプライが使われる可能性がある。NIJ警戒レベルが低くなれば、用いられるプライ/層は更に少なくてよい可能性がある。本発明によると、他の既知の弾道抵抗性構造物と比較して、布帛重量を増加させることなく、より多くの数の繊維プライを組み込んで、所望のレベルの弾道保護を達成することができる。
【0077】
当技術分野で従来から知られている通り、1つのプライの繊維の整列方向が別のプライの繊維の整列方向に対してある角度で回転しているように個々の繊維プライを交差させて組み合わせる(cross-plied)と、優れた防弾性が得られる。繊維プライは、0°と90
°の角度で直角に交差して組み合わせるのが特に好ましいが、隣り合うプライは、別のプライの長軸繊維方向に対して約0°〜約90°の間の実質的に任意の角度で整列することができる。例えば、5つのプライによる不織構造では、プライは、0°/45°/90°/45°/0°或いは他の角度を向いていてもよい。そのような回転した一方向整列は、例えば、米国特許第4,457,985号、同第4,748,064号、同第4,916,000号、同第4,403,012号、同第4,623,574号、及び同第4,737,402号に記載されており、これらはすべて、本明細書に矛盾のない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
繊維プライを圧密化して、繊維層及び複合材料を形成する方法は、例えば米国特許第6,642,159号に記載される方法などにより周知である。圧密化は、乾燥、冷却、加熱、加圧、又はそれらの組み合わせによって行うことができる。湿式積層法の場合のように、繊維又は布帛層が互いにぴったり合わさって接着剤で接着されるならば、加熱及び/又は加圧は、必ずしも必要ではない。典型的には、圧密化は、十分な加熱及び加圧条件で個々の繊維プライを互いに位置決めすることよって行われ、結合させて一体化した布帛にする。圧密化は、約50℃〜約175℃、好ましくは約105℃〜約175℃の温度範囲、並びに約5psig(0.034MPa)〜約2500psig(17MPa)の圧力範囲で、約0.01秒〜約24時間、好ましくは約0.02秒〜約2時間の間行うことができる。加熱する際、重合体結合剤被覆材を完全に溶融させることなく粘着化又は流動化させることができる。しかしながら、一般に、重合体結合剤材料(それが溶融可能なものである場合)を溶融すると、複合体を形成するのに比較的低い圧力しか必要としないのに対し、結合剤材料が粘着化する温度までしか加熱しないと、通常はより高い圧力が必要となる。当技術分野で従来から知られている通り、圧密化は、カレンダーセット、平面ラミネーター、プレス機、又はオートクレーブで行うことができる。最も一般的には、結合剤重合体を用いて複数の直交する繊維ウェブを「接着」し、平面ラミネーターを通過させることで結合の均一性及び強度を向上する。更に、圧密化及び重合体塗布/結合工程は、2つの別個の工程又はただ1つの圧密化/積層工程を含んでもよい。
【0079】
あるいは、圧密化は、適切な成形装置を用いて加熱及び加圧を加えて成形することによっても達成できる。一般に、成形は、約50psi(344.7kPa)〜約5,000psi(34,470kPa)、より好ましくは約100psi(689.5kPa)〜約3,000psi(20,680kPa)、特に好ましくは約150psi(1,034kPa)〜約1,500psi(10,340kPa)の圧力で行われる。成形は、あるいは更に高圧の約5,000psi(34,470kPa)〜約15,000psi(103,410kPa)、より好ましくは約750psi(5,171kPa)〜約5,000psi、特に好ましくは約1,000psi〜約5,000psiでも行うことができる。成形工程には、約4秒〜約45分間の時間をかけてもよい。好ましい成形温度は、約200°F(約93℃)〜約350°F(約177℃)、より好ましくは約200°F〜約300°F、最も好ましくは約200°F〜約280°Fの範囲である。本発明の繊維層及び布帛複合材料を成形するときにかける圧力は、得られる成形製品の剛性又は柔軟性に直接影響を及ぼす。より高い圧力で成形すると、一般に一定の限界までより硬い材料が得られる。成形圧力の他に、繊維プライの量、厚さ、及び組成、並びに重合体結合剤被覆材の種類も、複合材料で形成された物品の剛性に直接影響を及ぼす。
【0080】
本明細書に記載の成形技術及び圧密化技術は互いに類似しているが、それぞれの工程は異なっている。特に、成形はバッチ工程であるのに対し、圧密化は一般に連続工程である。更に、成形は、典型的には、金型(ある形を持った金型や平面板を形成する場合のマッ
チドダイ金型等)を使用し、必ずしも平面的な生成物をもたらすとは限らない。通常、圧密化は平床ラミネーター又はカレンダーニップセットで行われるか、湿式積層で行われ、軟質(柔軟性)身体防護布帛が得られる。成形は、典型的には、硬質装甲、例えば剛性板の製造のためにある。いずれの工程にしろ、適切な温度、圧力、及び時間は、一般に、重合体結合剤被覆材料の種類、重合体結合剤含量、用いる工程、及び繊維の種類に依存する。
【0081】
十分な弾道抵抗特性を有する布帛物品を製造するため、結合剤/マトリクス被覆材の合計重量は、好ましくは、繊維と被覆材の合計重量の約2重量%〜約50重量%、より好ましくは約5重量%〜約30重量%、更により好ましくは約7重量%〜約20重量%、特に好ましくは約11重量%〜約16重量%を占め、不織布の場合は16重量%が特に好ましい。織布の場合、結合剤/マトリクス含量はもっと少ないほうが好ましく、この場合、重合体結合剤含量が繊維と被覆材の合計重量の0重量%超かつ10重量%未満が特に好ましい。これは、限定を意図するものではない。例えば、フェノール/PVB樹脂含浸アラミド織布は、典型的には樹脂の含有量は約12%が好ましいが、時にはそれより多い約20%〜約30%の高い樹脂含有量で作製される。
【0082】
繊維層の製織又は圧密化に続いて、慣用の方法により任意の熱可塑性重合体層を繊維複合材料の外側表面の一方又は両方に貼り付けることができる。熱可塑性重合体層の適切な重合体としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル(特にポリエチレンテレフタラート(PET)及びPET共重合体)、ポリウレタン、ビニル重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン−オクタン共重合体、アクリロニトリル共重合体、アクリル重合体、ビニル重合体、ポリカーボナート、ポリスチレン、フルオロポリマー、並びにエチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体及びエチレン−アクリル酸共重合体などの、それらの共重合体及び混合物から成る群から選択することができる熱可塑性重合体が挙げられるが、これらに限定されない。また、有用なのは天然及び合成ゴム重合体である。これらの中で、ポリオレフィン層とポリアミド層が好ましい。好ましいポリオレフィンはポリエチレンである。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖中密度ポリエチレン(LMDPE)、直鎖極低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖超低密度ポリエチレン(ULDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及びそれらの共重合体及び混合物が挙げられるが、これらに限定されない。同様に有用なのは、米国オハイオ州カイヤホガフォールズのSpunfab, Ltdから市販されているSPUNFAB(Keuchel Associates, Inc.の登録商標)ポリアミドウェブ並びにフランス国セルネのProtechnic S.A.から市販されているTHERMOPLAST(登録商標)並びにHELIOPLAST
(登録商標)ウェブ、ネット及びフィルムである。熱可塑性重合体層は、熱積層等の周知の技術を用いて複合材料表面に結合してもよい。典型的には、積層は、十分な加熱及び加圧条件で個々の層を互いに位置決めをして層を結合させて一体化したフィルムにすることによって行われる。個々の層を互いに位置決めし、次いでその組み合わせたものを、当技術分野で周知の技術により、典型的には、加熱した積層ロール対の隙間に通す。積層の加熱は、約95℃〜約175℃、好ましくは約105℃〜約175℃の温度範囲で、約5psig(0.034MPa)〜約100psig(0.69MPa)の範囲の圧力下、約5秒〜約36時間、好ましくは約30秒〜約24時間の間行うことができる。
【0083】
個々の布帛/複合材料/繊維層の厚さは、個々の繊維の太さ及び布帛に組み込まれた繊維層の数に対応する。好ましい織布は、好ましくは、1層あたり、約25μm〜約600μm、より好ましくは約50μm〜約385μm、特に好ましくは約75μm〜約255μmの厚さを有する。好ましい不織布、即ち、不織単一層圧密化網状体は、好ましくは、約12μm〜約600μm、より好ましくは約50μm〜約385μm、特に好ましくは約75μm〜約255μmの厚さを有し、単一層圧密化網状体は、典型的には、2つの圧
密化されたプライ(即ち、2本のユニテープ)を含む。任意の熱可塑性重合体層は、好ましくは非常に薄く、約1μm〜約250μm、より好ましくは約5μm〜約25μm、最も好ましくは約5μm〜約9μmの層厚を有する。SPUNFAB(登録商標)不織布ウェブ等の不連続ウェブは、好ましくは6g/平方メートル(gsm)の坪量で塗布される。上記のような厚さが好適であるが、特定の要望を満たすために他の厚さのものを製造してもよく、当然のことながらそれらも本発明の範囲内にある。
【0084】
本発明の布帛/複合材料は、圧密化/成形前に、約20g/m(0.004ポンド/平方フィート(psf))〜約1000gsm(0.2psf)の好ましい面密度を有する。本発明の布帛/複合材料の圧密化/成形前のより好ましい面密度は、約30gsm(0.006psf)〜約500gsm(0.1psf)の範囲である。本発明の布帛/複合材料の圧密化/成形前の最も好ましい面密度は、約50gsm(0.01psf)〜約250gsm(0.05psf)の範囲である。互いに積層され、圧密化された複数の繊維層を含む本発明の物品は、好ましくは、約1000gsm(0.2psf)〜約40,000gsm(8.0psf)の複合材料面密度を有し、より好ましくは約2,000gsm(0.40psf)〜約30,000gsm(6.0psf)、より好ましくは約3,000gsm(0.60psf)〜約20,000gsm(4.0psf)、最も好ましくは、約3750gsm(0.75psf)〜約15,000gsm(3.0psf)の複合材料面密度を有する。ヘルメットに成形される複合材料の典型的範囲は、約7,500gsm(1.50psf)〜約12,500gsm(2.50psf)である。本発明の隣接する複数の繊維層を含む本発明の繊維複合材料はまた、好ましくは、少なくとも約170ポンド力(lbf)、より好ましくは少なくとも約200lbf、最も好ましくは少なくとも約300lbfの繊維プライ間の層間重ね剪断強度を有する(全ては、標準の周囲室温でASTM D5868に従って測定する)。
【0085】
本発明の布帛を様々に応用して、周知の技術により可撓性の軟質装甲物品及び剛性の硬質装甲物品を含む、多種多様な弾道抵抗性物品を形成することができる。例えば、弾道抵抗性物品を形成するのに適切な技術は、例えば、米国特許第4,623,574号、同第4,650,710号、同第4,748,064号、同第5,552,208号、同第5,587,230号、同第6,642,159号、同第6,841,492号、及び同第6,846,758号に記載され、これらはすべて、本明細書に矛盾のない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。本複合材料は、硬質装甲、並びに硬質装甲物品を作製する工程で形成される成形又は非成形の組立部品中間体の形成に特に有用である。「硬質」装甲とは、ヘルメット、軍事車両用パネル、又は防護遮蔽体等の物品を指し、十分な機械強度を有しているので、相当量の応力がかかったときにも構造の剛性を維持し、崩れることなく自立できる。このような硬質物品は、好ましくは、高引張弾性結合剤材料も用いて形成するが、これに限定されない。
【0086】
この構造体は、複数の個別シートに切り分けて積み重ねて物品にすることができ、又は前駆体を形成してから、その前駆体を使用して物品を形成することもできる。そのような技術は当技術分野で周知である。本発明の最も好ましい態様においては、それぞれが圧密化された複数の繊維プライを含む複数の繊維層が提供され、ここで熱可塑性重合体が、前記複数の繊維プライを圧密化する圧密化工程の前、その間、又はその後のいずれかの時点でそれぞれの繊維層の少なくとも一方の外表面に結合し、続いて前記複数の繊維層を圧密化して装甲物品又は装甲物品の組立部品にする別の圧密化工程によって前記複数の繊維層を統合する。
【0087】
弾道貫通抵抗性及び裏面変形量の両方を含む、本発明の繊維複合材料の弾道抵抗特性は、当技術分野で周知の技術に従って測定することができる。
以下の実施例は本発明を例示するためのものである。
【0088】
実施例
繊維仕上げ剤の除去及び任意のその他の繊維表面処理の、種々の複合材料の降伏応力及び裏面変形量等の曲げ特性に及ぼす影響を評価し、表2A及び表2Bに示す結果を得た。繊維加工技術は、次のように行った。
【0089】
繊維仕上げ剤除去
複数のマルチフィラメント繊維を複数の繊維糸巻から展開し(マルチフィラメント繊維当たり1つの糸巻)、次いで、固定された平行櫛(collimating comb)に通し、繊維を等間隔の繊維ウェブに編成した。次いで繊維ウェブを、脱イオン水を含む予備浸漬水浴に約18秒の滞留時間で通した。繊維は予備浸漬水浴を出た後、1列の30個の水ノズルによって洗浄された。各々の水ノズルの水圧は、ノズル当たり毎分約0.5ガロンの水の流量で約42psiであった。ノズルから出た水は比較的平坦な流れとして形成され、繊維面における水の接触角は、隣接するノズルから放出される流れの入射角に対して0°又は30°のいずれかであった。水温の測定値は28.9℃であった。予備浸漬水浴及び1列の水ノズルを通る線速度は、約4m/分〜約20m/分の範囲であった。浸漬浴の水及びノズルへ供給する水を、最初に別の脱イオン装置を通すことによって脱イオン化した。洗浄した繊維を次いで乾燥し、更なる処理のために搬送した。
【0090】
表1は、洗浄の特定の可変因子が、繊維から除去される仕上げ剤の量にどのように影響するかを説明するためのみに提供された代表的な例をまとめたものである。各試料は、1つの試料糸巻で束ねた4つの端部から成っていた。各試料は試料当たり総計60gの繊維となる少なくとも400フィートで行った。繊維表面の%残留物は、表内の指定された条件に従った洗浄後に繊維表面に残留している仕上げ剤の量の重量測定による測定値を示す。重量測定値は未洗浄対照繊維の表面に存在する仕上げ剤の量との比較に基づいている。
【0091】
【表1】
【0092】
コロナ処理
18インチ幅の洗浄済繊維ウェブを、連続的に約15フィート/分の速度で30インチ
幅の電極を有するコロナ処理機(2kWの電力に設定)に通した。この結果、繊維にワット密度での測定値で2000ワット(2.5フィート×15−FPM)又は53ワット/平方フィート/分で印加された繊維領域全体に渡る電力分布が生じる。コロナ領域内の繊維の滞留時間は約2秒であった。処理は標準大気圧で行った。
【0093】
プラズマ処理
29インチ幅の洗浄済の繊維ウェブを、連続的に約12フィート/分の速度で29インチ幅の電極を有する大気プラズマ処理機(Enercon Industries Corp.社製のモデル:Enercon Plasma3 Station Model APT12DF-150/2、2kWの電力に設定)を通過させた。この結果、繊維にワット密度での測定値で2000ワット(29インチ×12−FPM)又は67ワット/平方フィート/分で印加された繊維領域全体に渡る電力分布が生じる。プラズマ処理機内の繊維の滞在時間は約2秒であった。処理は標準大気圧で行った。
【0094】
曲げ特性の測定
特に断りのない限り、試験は約72°Fの標準周囲温度でASTM標準D790の3点屈曲試験方法の仕様に準拠して実施された。この方法によれば、梁状又は棒状試料を、梁状又は棒状試料の両端を支持体で支え、その支持体間を所定の間隔を開けて均等に置く。荷重を、負荷治具(loading nose)等によって、所定の速度で試料の中央に加え、試料を曲げる。この荷重を所定の時間加える。ASTM D790の方法によれば、荷重を試料
が5%の撓みに到達するまで、又は試料が破断するまで加える。
【0095】
以下に示す本発明の実施例の全てにおいて、曲げ特性試験は、不織繊維層で行い、降伏変位、降伏歪み、降伏荷重、降伏応力、及び降伏点までのエネルギーを測定する屈曲特性を長さが約6”(15.24cm)、幅が0.5”(12.7mm)±約0.02”(0.508mm)、厚みが0.31”(7.874mm)±約0.02”(0.508mm)(1.5psf面密度)の試料を用い、両端の支持体間の長さを約4.8”(12.192cm)とし、ASTM D790(手順A)に準拠し、約0.01インチ/インチ/
分の歪み速度で行った。本発明の目的では、複合材料の少なくとも一部が少なくとも部分的な層間剥離を起こすまでは少なくとも荷重を加える。試験は3点試験固定具付きの万能インストロン(universal Instron)5585試験機を用いて行った。
【0096】
試験される複合材料の繊維は、種々の重合体結合剤(重合体マトリックス)材料に包埋した。各複合材料は、異なるアニオン性脂肪族ポリエステル系ポリウレタン被覆材をそれぞれが繊維表面に含む、同種のポリエチレン繊維で構成されていた。繊維処理のみを可変因子として繊維処理の効果を示すために種々の処理を比較した。複合材料を40個の2−プライの繊維層を一緒に、約270°F(132℃)の温度で、約500psiの圧力を約10分間かけて成形することによって作製した。
【0097】
50測定
50データは、公知の標準化された手法で、特に国防総省の試験方法標準MIL−STD−662Fに準拠して取得した。
【0098】
裏面変形量測定
軟質装甲のBFSの標準の測定法は、NIJ標準−0101.04、種別IIIAで概説され、装甲試料を変形可能な粘土裏当て材の表面と接触させて置く。このNIJ法は、使用者の体に直接又は極めて近くに存在する装甲について現場使用における着弾の際に予期される実際のBFSの妥当な近似や予測を得るために通常使用される。しかしながら、使用者の体や頭の直接表面や極めて近くに存在しない装甲については、変形可能な粘土裏当て材の表面と装甲との間に間隔を置くことによって実際のBFSのより良い近似や予測を得る。従って、表2Aに示した裏面変形量データは、NIJ標準−0101.04、種
別IIIAの方法では測定しなかった。それに代わり、NIJ標準−0101.04、種別IIIAの方法に類似した新しい方法を採用したが、その方法は、複合材料物品を平坦な粘土塊に直接置くのではなく、複合材料と粘土塊の間に特注の機械加工したスペーサー部材を挿入することによって、複合材料を粘土塊から1/2インチ(12.7mm)離間した。特注で機械加工したスペーサー部材は、枠とその枠で画定される内部空洞を有し、粘土は空洞を通して露出しており、スペーサーは粘土の前面と直接接触して配置されていた。発射体は、スペーサーの内部空洞に対応する目標位置を狙い複合材料物品に発射した。発射体はスペーサーの内部空洞に対応する位置で複合材料物品に激突し、各々の発射体衝撃によって、粘土に測定可能な窪みが生じる。表2AのBFS測定値の全ては、この方法に準拠した窪みの深さのみを指して、スペーサー部材の厚みは考慮に入れておらず、即ち、表2AのBFS測定値は、複合材料と粘土の間の実際の距離は含まない。
【0099】
層間剥離測定
表2Aの層間剥離は、裏打ち材の窪みの深さではなく、実際の試験板の背面変形の深さの測定を指す。これは、測定されている粘土の窪みではないので「層間剥離」と謂う。層間剥離のこの測定値は、発射体の衝突後、衝突の領域の布帛は部分的に収縮するので、BFS測定値と1/2”(12.7mm)の空隙との総計の深さよりも小さくなる。層間剥離測定は前記収縮後に行い、一方、本明細書に記載の空隙法によるBFC測定は布帛の裏面変形の最大値を記録している。前記収縮後の変形の測定は、典型的には、パネルの断面を切り、パネルの損傷を受けていない裏面の平面から変形した領域の最外周部までの深度を測定する。
【0100】
各実施例では、BFSは、2.0ポンド/平方フィート(psf)の面密度及び53g/m(gsm)の繊維面積密度(平行繊維の単一プライ、即ちユニテープの面密度)を有する12”×12”の正方形試料に対して測定した。各実施例では、BFSは、約1430フィート/秒(fps)±30fpsの速度で発射された9mm、124−グレインFMJ RN発射体に対して測定した。
【0101】
【表2A】
【0102】
表2Aは、未水洗及び未処理の繊維で形成した布帛を、様々な処理を施した繊維で形成した布帛に対して比較した場合の実測したBFSと層間剥離の差を示す。作製物I〜VIの各々は、異なるアニオン性脂肪族ポリエステル系ポリウレタン被覆材をそれぞれが繊維表面に含む、同種のポリエチレン繊維で構成されていた。(BFS+1/2”(12.7mm)の空隙−層間剥離)を示した表2Aの最後の2列は、布帛の収縮量を特定して、現場で使用する硬質装甲のBFSの最大予測値を測定する空隙スペーサー測定法の高い精度を示している。
【0103】
【表2B】
【0104】
表2Bは、繊維処理によって異なる弾道貫通抵抗性(V50)及び3点屈曲特性の違いを示している。
本発明を好適な態様を参照して具体的に表示・説明してきたが、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく様々な改変及び修飾をし得ることが、当業者には容易である。請求の範囲は、開示される態様、上記で考察されたそれらの改変物、及びそれらのすべての均等物を包含するものとする。
[1]複数の隣接する繊維層を含む繊維複合材料であって、
各繊維層は、重合体材料で少なくとも部分的に被覆されている表面を有する繊維を含み、前記繊維は、前記重合体材料の大部分が前記繊維表面と直接接触するように繊維表面仕上げ剤をほとんど含まず、
大部分が繊維表面仕上げ剤で被覆された繊維表面を有し、そのような繊維表面仕上げ剤が繊維表面と重合体材料の間に存在する比較用繊維複合材料の降伏応力よりも大きな降伏応力を有する、
繊維複合材料。
[2]前記複合材料が、約1.5ポンド/平方フィート(7.32kg/m)以下の面密度を有する複合材料についてASTM D790に準拠する測定で少なくとも7.50
ksi(〜51.71MPa)の降伏応力を有する、[1]に記載の繊維複合材料。
[3]前記複合材料が、約1.5ポンド/平方フィート(7.32kg/m)以下の面密度を有する複合材料についてASTM D790に準拠する測定で少なくとも約9.0
ksi(〜62.05MPa)の降伏応力を有する、[1]に記載の繊維複合材料。
[4]ポリエチレン繊維を含む、[2]に記載の繊維複合材料。
[5]圧密化した複数の交差した一方向の繊維プライを含み、前記重合体材料が少なくとも1種の熱可塑性重合体を含む、[2]に記載の繊維複合材料。
[6]国防総省の試験方法標準MIL−STD−662Fに準拠する9mm発射体に対する少なくとも約1750フィート/秒(fps)(533.40m/s)のV50値を有する[2]に記載の繊維複合材料。
[7]前記重合体材料が前記繊維表面に実質的に直接接触するように、前記繊維表面が前記繊維表面と前記重合体材料の間に実質的に繊維表面仕上げ剤を含まない[1]に記載の繊維複合材料。
[8]国防総省の試験方法標準MIL−STD−662Fに準拠する9mm発射体に対する少なくとも約1750フィート/秒(fps)(533.40m/s)のV50値を有する[1]に記載の繊維複合材料。
[9]約427m/秒〜約445m/秒(1430フィート/秒(fps)±30fps)の速度で発射された124−グレイン、9mmFMJ RN発射体で衝撃を受けた場合
、2.0ポンド/平方フィート(psf)の面密度を有する複合材料について測定した裏面変形量が約8mm未満である、[1]に記載の繊維複合材料。
[10]国防総省の試験方法標準MIL−STD−662Fに準拠する9mm発射体に対する少なくとも約1750フィート/秒(fps)(533.40m/s)のV50値を有する[9]に記載の繊維複合材料。
[11]前記重合体材料が前記繊維表面に実質的に直接接触するように、前記繊維表面が前記繊維表面と前記重合体材料の間に実質的に繊維表面仕上げ剤を含まない[9]に記載の繊維複合材料。
[12]少なくとも2つの隣接する繊維層を含み、各繊維層が重合体材料で少なくとも部分的に覆われた表面を有する繊維を含み、前記繊維が、前記重合体材料の大部分が前記繊維表面と直接接触するように、繊維表面仕上げ剤をほとんど含有せず、約1.5ポンド/平方フィート(7.32kg/m)以下の面密度を有する複合材料についてASTM
D790に準拠する測定で少なくとも7.50ksi(〜51.71MPa)の降伏応力を有する、繊維複合材料を形成する方法であって、
繊維表面仕上げ剤がほとんどない表面を有する複数の重合体繊維を提供する工程、
前記繊維表面を処理し、続いて塗布する重合体材料の前記繊維表面に対する表面吸着、結合又は接着を向上させる任意の工程、
重合体材料を前記繊維の少なくとも一部に塗布し、それによって、前記繊維の表面に前記重合体材料を吸着、結合又は接着する工程、
前記重合体材料を前記繊維に塗布する前又は後に、前記の繊維から複数の繊維プライを作製する工程、及び
前記複数の繊維プライを圧密化して繊維複合材料を作製する工程、
を含む方法。
[13]前記繊維表面を処理し、続いて塗布する重合体材料の繊維表面に対する前記表面吸着、結合又は接着を向上させる任意の工程を行う、[12]に記載の方法。
[14]前記繊維処理がプラズマ処理又はコロナ処理を含む[12]に記載の方法。
[15]圧密化された複数の繊維層を含む複合材料であって、前記繊維層の各々が約7g/デニール以上の靭性と約150g/デニール以上の引張弾性率を有する複数の繊維を含み、前記各繊維層は少なくとも部分的に重合体結合剤材料で含浸され、前記重合体結合剤材料は実質的に前記繊維を被覆し、前記重合体結合剤材料は、各繊維層の約7重量%〜約20重量%を構成し、前記パネルがASTM D790によって測定される少なくとも7
.50ksi(約51.71MPa)の降伏応力、約1.5ポンド/平方フィート(7.32kg/m)以下の複合材料面密度、及び、国防省試験法規格MIL−STD−662Fに準拠する9mm発射体に対する少なくとも約1750フィート/秒(fps)(533.40m/s)のV50値、を有する、複合材料。