(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
裏面変形量は、発射体の衝突による軟質もしくは硬質装甲の裏当て材または使用者の身体への撓み深さの尺度である。さらに詳細には、当技術分野において「裏面変形」、「外傷変形量」または「鈍器外傷」としても公知であるBFSは、装甲が発射体の貫通を止めた時点で発射体が装甲の下に残す衝撃の大きさの尺度であり、装甲の下で身体が受ける潜在的な鈍的外傷を示すものである。軟質装甲のBFSの標準的な測定方法の概要は、発射体の非貫通性衝突によって生ずる複合材料の物理的変形を箱形の開面治具に保持されている変形可能な粘土裏当て材に転写する方法を特定するNIJ標準0101.04、Type IIIAに記載されている。NIJ標準に従って、試験対象の装甲を粘土裏当ての前面に直接固定し、標準化された発射体発射条件によって生ずる粘土の変形があれば特定し、測定する。他の方法を使用して、BFSを測定してもよい。現在のところ、軍用向けの軟質装甲複合材料を評価するために、NIJ標準を通常使用する。
【0015】
「裏面変形量」、「裏面変形」、「外傷変形量」、および「鈍器外傷」という用語は、当技術分野では同じ意味であり、本明細書では同義的に使用する。本発明では、優れた弾丸貫通抵抗を有する物品は、弾丸などの変形可能な発射体に対しておよび榴散弾などの断片の貫通に対して優れた特性を示す物品を表す。本明細書では「繊維層」は、一方向配向繊維の単一プライ、一方向配向繊維の複数の非圧密化プライ、一方向配向繊維の複数の圧密化プライ、織布、複数の圧密化織布、またはフェルト、マット、およびランダム配向繊維を含む構造などの他の構造を含めて複数の繊維から形成された他の何らかの布帛構造を含むことがある。「層」は概平面配置物を表す。各繊維層は外側上面と外側底面を有する。一方向配向繊維の「単一プライ」は、一方向で実質的に平行な配列に並べた非重複繊維の配置物を含む。このタイプの繊維配置物は、当技術分野において「ユニテープ」、「一方向テープ」、「UD」、または「UDT」としても公知である。本明細書では、「配列」は、織布を除いて、繊維または糸の整然とした配置物を表し、「平行配列」は、繊維または糸の整然とした平行配置物を表す。「配向繊維」の文脈中で使用される「配向」という用語は、繊維の延伸に対して繊維の整列を指す。「布帛」という用語は、プライの成形または圧密化が行われたまたは行われていない1つ以上の繊維プライを含んでもよい構造を表す。例えば、織布またはフェルトは単一の繊維プライを含んでもよい。一方向繊維から形成された不織布は、典型的には互いに積み重ねられ、圧密化された複数の繊維プライを含む。本明細書で使用される場合、「単層」構造は、低圧積層または高圧成形により高分子結合材料と一緒に単一の単位構造に合体すなわち圧密化された1つ以上の個々のプライまたは個々の層から構成される任意の一体式繊維構造を指す。「圧密化する」は、高分子結合材料と各繊維プライを単一の単位層に合体させることを意味する。圧密化は、乾燥、冷却、加熱、圧力、またはそれらの組合せにより行うことができる。湿式積層プロセスの場合と同様に繊維または布帛層同士を接着させるだけでよいので、熱および/または圧力は必須でないこともある。「複合材料」という用語は、繊維と少なくとも1種の高分子結合材料との組合せを指す。本明細書では「重複合材料」は、複数の繊維層の組合せの複合体を指す。本明細書に記載されたように、「不織」布は、製織によっては形成されない布帛構造をすべて包含する。例えば、不織布は、高分子結合材料で少なくとも部分的に被覆され、積み重ねられ/重複され、単層の一体式要素に圧密化された複数のユニテープ、および高分子結合剤組成物で好ましくは被覆された非平行ランダム配向繊維を含むフェルトまたはマットを包含してもよい。
【0016】
本発明では、「繊維」は細長体であり、その長さ寸法は幅および厚さの横寸法よりはるかに大きい。本発明に使用するための繊維の断面は広範囲に異なることがあり、円形、平坦、または楕円形であってもよい。したがって、「繊維」という用語は整形または不整形な断面を有するフィラメント、リボン、細片などを包含するが、繊維は実質的に円形の断面を有することが好ましい。本明細書では、「糸」という用語は複数の繊維からなる一本鎖と定義される。単一繊維は、わずか1本のフィラメントまたは複数のフィラメントから形成してもよい。唯1本のフィラメントから形成された繊維は、本明細書では「単一フィラメント」繊維または「モノフィラメント」繊維と呼ばれ、複数のフィラメントから形成された繊維は、本明細書では「マルチフィラメント」繊維と呼ばれる。
【0017】
「せん断」という用語はせん断歪みを指し、これは、物質の平行な内側面が互いに対して横方向に移動するとき生ずる、材料物質にかかる横歪みである。当技術分野において従来公知であるように、「重ねせん断(lap shear)」は、材料が横(せん断)歪みを受け
るとき材料を結合させる接着剤の強度を指す。重ねせん断を試験する様々なASTM方法が公知であり、ASTM方法はそれぞれ、検体の単一の重なり接続部すなわち単一の「重ね」接続部における試験を規定する。例えば、ASTM D1002は金属間重ね接続部の重ねせん断試験を規定し、ASTM D3163はプラスチック間重ね接続部の重ねせん断試験を規定し、ASTM D5868は、繊維強化プラスチックのそれ自体または金属に対する重ねせん断試験を規定する。例えば、ASTM D3163によれば、接着結
合させた2枚の硬質プラスチック検体を重複させて、幅0.5インチ(12.7mm)または1インチ(25.4mm)の重ね接続部を形成し、接着剤で結合させ、接着剤を硬化させる。Instron Corporation社(米国マサチューセッツ州ノーウッド)から市販されて
いるINSTRON(登録商標)引張試験機などの万能試験機の把持部間に検体を配置し、指定された負荷速度および指定された温度で接続部が破損するまで引っ張る。ASTM
D5868は、異なる負荷速度を用いた場合の繊維強化プラスチックの同様の試験条件を規定する。
【0018】
本明細書では、「層間重ねせん断強度」は、当技術分野における任意の従来技法で隣接する2つの隣接繊維層/プライ間の重ねせん断強度を指す。上記の定義に従って、隣接繊維層は隣接ユニテープおよび/または隣接織布を含んでもよい。
【0019】
隣接ユニテープを典型的には従来直交プライ(0°/90°)配向で配置して、弾丸貫通抵抗を(例えば、標準化されたV
50試験で決定して)最大にする。しかし、この配向は必須ではなく、複合材料の裏面変形を最小限に抑えるのに必ずしも最適ではない。さらに詳細に後述するように、高分子結合材料を使用して、隣接ユニテープを圧密化し、特定の重ねせん断試験仕様書に従って、前記高分子結合材料を使用して、重なり接続部で層を接続することによって、重なり接続部内で追加の接着剤を一切使用することなく、重ねせん断試験を実施する。
【0020】
複数の重複ユニテープを含む本発明の不織繊維複合材料の層間重ねせん断強度を試験するとき、重ねせん断試験を、典型的には一方のユニテープが0°で配向し、他方のユニテープが90°で配向している直交プライ重なり接続部で実施する。重ねせん断試験のためのこの重なり接続部の直交プライ配向もまた必須ではないが、一般的使用においては、一方向繊維を含む不織複合構造が典型的には直交プライ(0°/90°)構築物として製造されるので好ましい。複数の重複織布を含む繊維複合材料の層間重ねせん断強度を試験するとき、1つの織布の縦糸繊維と横糸繊維は、隣接する織布の縦糸繊維と横糸繊維と同じ配向で配置されるのが好ましいが、必須ではない。不織布とは異なり、織布は、構成繊維を相互接続して単一繊維層を形成するために高分子結合材料を必要としない。しかし、接着剤または高分子結合材料は、一般的に複数の織り繊維層を多層繊維複合体に圧密化または合体させるために必要である。したがって、織り繊維層間の層間重ねせん断強度を試験するとき、一般的には、重ねせん断試験仕様書の通り、何らかの形態の接着剤または高分子結合材料を添加して、重なり接続部を形成する必要がある。好ましい実施形態において、織布に高分子結合材料を予備含浸させた後、重なり接続部を形成する。
【0021】
以下に示す本発明の実施例すべてにおいて、不織繊維層について重ねせん断試験を行い、2つの積層する2−プライまたは4−プライ不織繊維層間の1インチの重なり接続部における層間重ねせん断強度を測定した。2−プライ不織繊維層はそれぞれ、0°で配向した第1プライと90°で配向した第2プライを含むものであった。4−プライ不織繊維層はそれぞれ、2−プライの構造に等しいが、4プライを有する0°/90°/0°/90°構造を含むものであった。重なり接続部は、2−プライまたは4−プライ繊維層を温度約270°F(132℃)および圧力約500psiで約10分間積層することによって形成した。各実施例の重ねせん断試験は、別段の指定のない限りASTM D5868の条件の通り、約70°Fの室温で実施した。試験材料に熱可塑性重合体が組み込まれている場合には、温度が高くなると、熱可塑性重合体を軟化させ、材料の加えられた横力に抵抗する能力を低減させる傾向があるので、重ねせん断試験の温度は重要な要素である。さらに、この試験方法の結果は、重なり接続部の大きさおよび繊維配向などの要因に感受性を示すことがあるので、比較試験中すべての要因を一定に維持し、試験対象の複合材料検体の種類または繊維処理を唯一の試験変数とすることが好ましく、理想的である。
【0022】
本発明の繊維複合材料は、高い層間重ねせん断強度とそれに対応して非貫通性高速発射体に対する優れた裏面変形量性能で、他の繊維複合材料と区別される。本発明の繊維複合材料の層間重ねせん断強度の改善は、最低でも既存の繊維表面仕上げ剤を繊維から少なくとも部分除去した後、繊維を処理して布帛にすることによって実現されるが、ここで布帛の形成には、繊維同士を相互接続させて、それによって織布層、不織布層、または不織繊維プライを形成するステップが含まれる。繊維表面仕上げ剤は上述のように必要な加工助剤として一般に知られているので、不織布層もしくは不織繊維プライの形成前または織布の製織前に繊維表面仕上げ剤を除去することは、本明細書以前には知られていない。例えば、不織布の製造において、繊維表面仕上げ剤は、帯電を低減し、繊維のもつれを防止し、繊維を滑らかにして、繊維が織機部品を滑るように進めることができ、繊維引抜ステップを含めた処理時の繊維結束性を改善するために必要とされることが一般的である。
【0023】
繊維表面仕上げ剤は、典型的には従来の布帛処理時に必要とされるが、一般的には最終の布帛特性に寄与しない。一方、繊維表面を被覆することによって、仕上げ剤は、繊維表面の互いに接触する能力に干渉し、また繊維上に塗布される液体もしくは固体樹脂または高分子結合材料などその後塗布される吸着物を繊維表面に直接ではなく仕上げ剤の上に配置させて、吸着物を直接吸着する繊維表面の能力に干渉する。これは問題となる。前者の状況では、仕上げ剤は繊維表面に対して潤滑剤として作用し、したがって隣接した繊維間の摩擦を低減する。後者の状況では、仕上げ剤は、その後塗布された材料が繊維表面に強固に直接結合することを妨げ、潜在的に塗膜が繊維に結合することを完全に妨げ、かつ弾体衝突時に剥離する危険がある。繊維−繊維の摩擦を高め、樹脂または高分子結合材料を繊維表面に直接結合させ、それによって繊維−塗膜の結合強度が高まることを可能にするために、繊維複合材料を形成する構成繊維の一部または全部の繊維表面の全部または一部から、既存の繊維表面仕上げ剤を少なくとも部分除去し、好ましくは実質的に完全に除去することが必要である。
【0024】
繊維表面仕上げ剤を少なくとも部分除去することは、繊維引抜/延伸ステップがすべて完了すると始めることが好ましい。除去条件が異なれば、仕上げ剤の除去量も異なると予想されるはずであるが、繊維を洗浄し、またはその他の方法で繊維仕上げ剤を除去するステップによって、繊維仕上げ剤は十分に除去され、下にある繊維表面の少なくとも一部が露出される。例えば、洗浄剤の組成(例えば、水)、洗浄技法の力学的特性(例えば、繊維と接触する水の力;洗浄浴の撹拌等)などの要因が仕上げ剤の除去量に影響を及ぼす。本明細書の目的のために、繊維仕上げ剤の最小の除去を実現するための最小の処理によって、一般的に繊維表面積の少なくとも10%が露出される。繊維表面仕上げ剤は、繊維の大部分は繊維表面仕上げ剤を含まないほど除去されることが好ましい。本明細書では、繊維表面仕上げ剤を「大部分は含まない」繊維は、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも約75重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%の仕上げ剤を除去した繊維である。繊維は、繊維表面仕上げ剤を実質的に含まないことがより一層好ましい。繊維仕上げ剤を「実質的に含まない」繊維は、少なくとも約90重量%、最も好ましくは少なくとも約95重量%の仕上げ剤を除去し、それによって繊維表面仕上げ剤で以前に被覆された繊維表面積を少なくとも約90%または少なくとも約95%露出する繊維である。最も好ましくは、残存するいずれの仕上げ剤も、繊維の重量と仕上げ剤の重量の和に基づいて約0.5重量%以下、好ましくは約0.4重量%以下、より好ましくは約0.3重量%以下、より好ましくは約0.2重量%以下、最も好ましくは約0.1重量%以下の量しか存在しない。
【0025】
繊維仕上げ剤組成物の表面張力にもよるが、仕上げ剤はその実質的な量が除去された場合でさえ、それ自体を繊維表面全体に分配させる傾向を示すことがある。したがって、大部分は繊維表面仕上げ剤を含まない繊維は、やはりその表面積の一部分が繊維仕上げ剤の非常に薄い塗膜で被覆されていることがある。しかし、この残存する繊維仕上げ剤は、典
型的には連続した塗膜ではなく斑に残っている仕上げ剤として存在する。したがって、大部分は繊維表面仕上げ剤を含まない表面を有する繊維は、好ましくはその表面が少なくとも部分露出され、繊維仕上げ剤で被覆されていない。好ましくは、繊維表面積の50%未満しか繊維表面仕上げ剤で被覆されていない。次いで、大部分は繊維仕上げ剤を含まない繊維表面を含む本発明の繊維複合材料は高分子結合材料で被覆される。繊維仕上げ剤の除去によって、繊維表面積の50%未満しか繊維表面仕上げ剤で被覆されていない場合、高分子結合材料は、それによって50%を超える繊維表面積と直接接触する。
【0026】
このような仕上げ剤の除去の結果として、本発明の繊維複合材料は、大部分が繊維表面仕上げ剤で被覆されている繊維を有する、例えば繊維表面仕上げ剤が繊維表面と重合体材料の間に50%を超える繊維表面積で存在する比較用繊維複合材料の隣接する繊維プライ間の層間重ねせん断強度より、高い隣接する繊維プライ間の層間重ねせん断強度を有する。
【0027】
最も好ましくは、繊維表面仕上げ剤は繊維から実質的に完全に除去され、繊維表面は実質的に完全に露出される。この点で、繊維表面仕上げ剤の実質的に完全な除去は、繊維表面仕上げ剤の少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約97.5%、最も好ましくは少なくとも約99.0%の除去であり、それによって繊維表面は少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約97.5%、最も好ましくは少なくとも約99.0%露出される。繊維表面仕上げ剤が100%除去され、それによって繊維表面積が100%露出されることが理想である。繊維表面仕上げ剤を除去した後、高分子結合材料、樹脂、または他の吸着物を露出した繊維表面に塗布する前に、除去した仕上げ剤粒子を繊維から取り除くことも好ましい。
【0028】
本明細書では、「比較用」繊維複合材料は、本発明の処理済みの複合材料と同一または実質的に同様である(理論的または現実の)複合材料と定義される。ここで、本発明の複合材料は、繊維表面仕上げ剤の少なくとも一部分を除去して、繊維表面の少なくとも一部分を露出し、プラズマ処理またはコロナ処理などの追加の繊維処理を任意選択で行い、それに応じて重合体材料を繊維表面に仕上げ剤が除去されている区域で直接結合させたものである。この点で、「実質的に同様」は、固定要因を設定した時経験する何らかの最小誤差を指す。言い換えれば、比較用繊維複合材料は、本発明の「処理済みの複合材料」と比較する「対照複合材料」である。特に、対照複合材料と本発明の処理済みの複合材料は両方共、同じ繊維の種類(同じ繊維化学特性、靭性、弾性率等)から製造され、同じ繊維層構造(例えば、織りまたは不織)を含み、繊維を被覆する同じタイプの重合体材料(結合剤重合体、高分子結合材料、または高分子マトリックスと呼ぶこともある)を含み、複合材料中に同量の樹脂、同数の繊維プライ/層等を含む。対照複合材料と処理済みの複合材料はまた、両方とも同じ圧密化/成形条件に従って形成される。本明細書に記載される繊維表面処理を除くすべての要因は、一定に維持することを意図するものである。これらは、すべて考慮すべき重要な点である。データから、例えばBFSと重ねせん断の結果は、まさに繊維仕上げ剤の存在と繊維の表面処理にある程度依存しているのと同様に、使用する樹脂のタイプにある程度依存していることが明らかになったからである。本明細書に記載されたデータは、処理済みの複合材料が、同一または実質的に同様な対照複合材料に比べて改善されたBFSおよび重ねせん断特性を示し、一定に維持されていない要因を有する他の複合材料に比べると必ずしもそうではないという前提を裏付けるものである。繊維仕上げ剤の最小の除去を実現するように繊維を処理すると、一般的に少なくとも約10%の繊維表面積を露出することになるが、同様に洗浄または処理して、繊維仕上げ剤の少なくとも一部分を除去することをしていない比較用複合材料は、10%未満の繊維表面積しか露出せず、繊維は表面露出0%または実質的に表面露出していない。
【0029】
先に述べたように、繊維表面仕上げ剤の除去によって、繊維−繊維の摩擦および繊維と
その後塗布される塗膜の間の結合強度が向上する。繊維−繊維の摩擦を増大させ、繊維−塗膜の結合強度を高めると、発射体の繊維との係合が増大し、それによって繊維複合材料の構成層間の層間重ねせん断強度を改善し、かつ前記繊維から形成された繊維複合材料の発射体を止める能力を高め、さらには発射体の衝突によって生ずる裏面変形量を低減することがわかった。繊維−塗膜の結合強度を高めることによっても、繊維を適切に結束させるのに必要とされる結合剤の量が低減される。この結合剤の量を低減することによって、多数の繊維を布帛に含めることが可能になり、強度を高め軽量化した防弾材料を潜在的に製造することが可能になる。これによって、得られる布帛複合材料の耐突き刺し性がさらに改善され、かつ複合材料の耐繰返し衝撃性が向上する。
【0030】
機械的手段と化学的手段を含めて、繊維表面仕上げ剤を除去する従来公知の方法はいずれも、本発明の文脈内で有用である。一般的に仕上げ剤の組成によって必要な方法が決まる。例えば、本発明の好ましい実施形態において、繊維は、水だけで洗い落とすことができる仕上げ剤で被覆される。典型的には、繊維仕上げ剤は、1種以上の潤滑剤、1種以上の非イオン性乳化剤(界面活性剤)、1種以上の帯電防止剤、1種以上の湿潤剤および結束剤、ならびに1種以上の抗菌性化合物の組合せを含む。本明細書で好ましい仕上げ剤調合物は、水だけで洗い落とすことができる。機械的手段を化学物質と併用して、化学的除去の効率を改善してもよい。例えば、脱イオン水を用いた仕上げ剤除去の効率は、水をかける工程の力、方向、速度等を操作することによって高まることがある。
【0031】
最も好ましくは、繊維ウェブである繊維を、他の何らかの化学薬品を使用することなく水、好ましくは脱イオン水で洗浄および/またはすすぎ、洗浄後に必要に応じて繊維を乾燥する。仕上げ剤が水溶性でない他の実施形態において、仕上げ剤を例えば研磨清浄剤、化学清浄剤、または酵素清浄剤で除去または洗い落としてもよい。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,573,850号および第5,601,775号には、非イオン性界面活性剤(Clariant Corporation社(米国ノースカロライナ州シャーロット)から市販されているHostapur(登録商標) CX)、リン酸三ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含む浴に糸を通し、続いてその繊維をすすぐことが教示されている。他の有用な化学物質としては、メタノール、エタノール、および2−プロパノールなどのアルコール;シクロヘキサンやトルエンなどの脂肪族および芳香族炭化水素;ジクロロメタンやトリクロロメタンなどの塩素系溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。繊維を洗浄すると、他の何らかの表面汚染物質も除去され、繊維と樹脂または他の被覆材との間の接触がさらに密接になり得る。
【0032】
繊維を水で清浄するために使用される好ましい手段は、繊維表面仕上げ剤を繊維から実質的に除去する能力さえあれば、限定するものではない。好ましい方法では、仕上げ剤の除去は、繊維ウェブを加圧水ノズルに通して、繊維から仕上げ剤を洗浄(またはすすぎ)および/または物理的に除去するステップを含むプロセスで行われる。繊維を必要に応じて水浴に予浸した後に繊維を前記加圧水ノズルに通し、かつ/または繊維を加圧水ノズルに通した後に浸漬し、必要に応じて行われる前記浸漬ステップのいずれかの後に繊維を追加の加圧水ノズルに通すことによってすすいでもよい。洗浄/浸漬/すすぎを行った繊維は、洗浄/浸漬/すすぎが完了した後に乾燥することも好ましい。繊維を洗浄するのに使用される装置および手段は、布帛ではなく個々のマルチフィラメント繊維/マルチフィラメント糸を、すなわち製織または形成して不織繊維層またはプライにする前に洗浄できれば、何ら限定されるものではない。
【0033】
布帛形成前の繊維表面仕上げ剤の除去は、本明細書では特に一方向に整列した複数の繊維を含む複数の繊維プライを圧密化することによって形成される不織布の製造を意図したものである。不織の一方向に整列した繊維プライを形成する典型的なプロセスにおいて、繊維束はクリールから供給され、ガイドおよび1個以上の拡幅棒を介して平行化櫛((co
llimating comb)に導かれ、続いて繊維が高分子結合材料で被覆される。あるいは、繊維は、拡幅棒に達する前に被覆することができ、または被覆区域の前後に1組ずつある2組の拡幅棒間で被覆してもよい。典型的な繊維束(例えば、糸)は、約30〜約2000の個別フィラメントを有し、各繊維は、典型的には約120〜約240の個別フィラメントを含むがこれらに限定されない。拡幅棒および平行化櫛は、結束した繊維をばらして広げ、同一平面に並べて再編成する。理想的な繊維拡幅によって、個々の繊維またはさらには個々のフィラメントになり、単一繊維平面で互いに隣に配置され、実質的に一方向に平行な配列の繊維を形成し、互いに重複している繊維は最小量である。繊維表面仕上げ剤をこの拡幅ステップの前または途中で除去すると、繊維/フィラメントと相互作用する清浄剤(例えば、水)の物理的相互作用のため、繊維のこのような平行配列への拡幅が増大および加速することがある。繊維の拡幅および平行化に続いて、このような平行配列の繊維は、繊維厚さに応じて典型的には1インチ当たり約3から12個の繊維端(1cm当たり1.2から4.7個の繊維端)を含む。したがって、繊維表面仕上げ剤の除去は、繊維拡幅を高めるという二重の利益を実現し、繊維表面にその後塗布される材料/吸着物の結合強度を高める。
【0034】
繊維表面仕上げ剤の除去だけで上記の利益が実現するが、仕上げ剤を少なくとも部分除去した後の繊維表面に結合強化処理を実施することによってはるかによい結果が実現する。特に、裏面変形量の低減は繊維−繊維の摩擦および繊維−塗膜の結合強度の増加と比例することが明らかになった。繊維表面を布帛形成より前に結合強化処理で処理または改質すると、特に結合強化処理と繊維仕上げ剤を少なくとも部分除去する繊維の洗浄を組み合わせた場合に、複合材料の裏面変形量低減がはるか大幅に改善されることが明らかになった。これは、不織布の製造に通常使用されている高分子結合材料もしくは樹脂などの吸着物を繊維表面に塗布した場合、または布帛を製織し、繊維表面仕上げ剤を少なくとも部分除去した後に塗布した場合に特に明らかである。吸着物(例えば、重合体/樹脂)と繊維表面の結合が強いほど、裏面変形量の低減も大幅になる。したがって、本発明の最も好ましい実施形態においては、繊維表面仕上げ剤の少なくとも部分除去の後ではあるが布帛形成より前に、その後塗布される吸着物(例えば、重合体/樹脂)の繊維表面に対する吸着性/結合を向上させるのが効果的な条件下で繊維表面の処理を実施することが特に望ましい。繊維仕上げ剤の除去によって、これらの追加プロセスが、繊維表面仕上げ剤や表面汚染物質にではなく繊維の表面に直接作用することが可能になる。表面仕上げ剤が繊維の表面を処理する試みを妨げ、障壁または汚染物質として作用する傾向があるので、この処理は最も望ましい。したがって、仕上げ剤の除去によって、その後の繊維表面処理の質および均一性も改善される。仕上げ剤の除去およびこのような別の処理の利益は累積するので、仕上げ剤の除去率(%)が上がり、処理の有効性が増大して、裏面変形量性能はさらに改善されるはずである。
【0035】
この目的のために、有用な処理または改質としては、その後塗布される吸着物の繊維表面に対する吸着性を向上させるのに有効であればいずれでも含まれる。ただし、吸着物は、高分子結合材料および樹脂を含めていずれの固体、液体、または気体でもよく、吸着としては、繊維表面への材料の結合であればいずれの形態でも含まれる。これを実施することができる手段には、表面を粗面化する処理、極性を表面に加える処理、繊維表面もしくは繊維表面部分を酸化する処理、繊維の表面エネルギーを増大する処理、繊維の接触角を低減する処理、繊維の湿潤性を高める処理、繊維表面の架橋密度を変更する処理、化学的機能性を繊維表面に加える処理、表面を滅摩させる処理、またはばら繊維と繊維表面塗膜の間の相互作用を改善して、塗膜の繊維表面への定着性を改善する他の何らかの手段を含めて、様々な手段がある。この相互作用の改質はBFSの改善という形で容易に認められる。
【0036】
好適な繊維表面処理または表面改質としては、繊維のコロナ処理、繊維のプラズマ処理
、繊維のプラズマ被覆、フッ素元素を用いた繊維表面の直接フッ素化、UV化学グラフトなどの化学処理、またはクロムエッチングなどの粗面処理など、当技術分野において公知としてよいプロセスが挙げられる。繊維表面仕上げ剤の除去後ではあるが布帛形成より前に露出され処理された繊維表面に、吸着物が吸着するまたは任意の材料が結合する能力を高める、大規模用途向けにはまだ開発されていない処理も好適である。繊維化学に応じて、ばら繊維とその後の被覆材との間の相互作用を改質、改善、または低減するために、典型的なこれらのプロセスを繊維の表面に作用させることでそれぞれ使用することができる。これらのプロセスの任意の組合せを使用することができ、これらの部分プロセスを様々な順序で配置することができるが、繊維の種類または天然繊維表面特性などの様々な要因に応じて他より好ましい順序がいくつか存在することがある。本発明の様々な処理ステップを、複合材料を所望の層間重ねせん断強度範囲内に入れるために繊維を操作する処方として利用してもよい。重ねせん断試験によって、特定の複合材料が所望より低い層間重ねせん断強度(例えば、170lbf未満)を有することが確認された場合、繊維洗浄および/または表面処理(例えば、コロナ処理、プラズマ処理等)をさらに実施して、層間重ねせん断強度を所望の範囲内に入るように高めるべきである。
【0037】
最も好ましい処理は、繊維表面のコロナ処理および繊維表面のプラズマ処理である。コロナ処理は、繊維がコロナ放電工程を通過し、それによって繊維ウェブが一連の高圧放電を通過するプロセスであり、一連の高圧放電は、ピット形成、粗面化、および繊維の表面の部分酸化による極性官能基の導入を含めて種々の方法で、繊維の表面ウェブに作用する傾向がある。コロナ処理は、典型的には繊維表面を酸化し、かつ/または極性を繊維表面に与える。コロナ処理は、小さいピットまたは孔を繊維の表面に焼き付けることによっても機能する。繊維が酸化し得る場合、酸化の程度は、コロナ処理の出力、電圧、および周波数などの因子に依存している。コロナ放電場内における滞留時間も一因子であり、これはコロナ処理装置設計またはプロセスのライン速度によって操作することができる。好適なコロナ処理装置は、例えばEnercon Industries Corp. 社(米国ウィスコンシン州メノ
モニーフォールズ)、Sherman Treaters Ltd社(英国オックスフォードシャー州テイム)、またはSoftal Corona & Plasma GmbH & Co社(独国ハンブルク)から入手可能である。
【0038】
好ましい実施形態において、繊維を約2ワット/平方フィート/分〜約100ワット/平方フィート/分、より好ましくは約20ワット/平方フィート/分〜約50ワット/平方フィート/分のコロナ処理にかける。約1ワット/平方フィート/分〜約5ワット/平方フィート/分の低エネルギーのコロナ処理も有用であるが、効果的でない可能性がある。繊維表面に電荷を加えること以外に、コロナ処理は繊維の表面にピットを形成することによって表面を粗面化することができる。
【0039】
プラズマ処理では、典型的には繊維ウェブである繊維が、酸素、アルゴン、ヘリウム、アンモニアなどの不活性もしくは非不活性気体、または別の適切な不活性もしくは非不活性気体(上記の気体の組合せを含む)で満たされたチャンバーのイオン化雰囲気を通過し、それによって繊維を放電と接触させる。繊維表面においては、表面と荷電粒子(イオン)の衝突によって、運動エネルギーの移動と電子の交換等が行われる。さらに、表面と遊離ラジカルの衝突によって、同様の化学転位が起こる。励起原子および分子が低い状態へ緩和することによって発せられた紫外線による繊維表面への衝撃も、繊維基材に化学変化をもたらす。
【0040】
これらの相互作用の結果として、プラズマ処理は、繊維の化学構造と繊維表面の微細構成を変更することがある。例えば、コロナ処理のように、プラズマ処理も極性を繊維表面に加え、かつ/または繊維表面部分を酸化することがある。プラズマ処理は、繊維の表面エネルギーを増大し、接触角を低減し、繊維表面の架橋密度を変更し、その後の塗膜の融点および質量定着性(mass anchorage)を高めるのにも役立つことがあり、化学的機能性
を繊維表面に加え、繊維表面を潜在的に滅摩させる。これらの効果は、同様に繊維化学に依存し、使用するプラズマの種類にも依存している。
【0041】
所望の表面処理では、使用するプラズマ気体が異なれば表面の化学構造の変更も異なるので、気体の選択が重要である。このようなことは、当業者によって判断される。例えば、アンモニアプラズマを使用して、アミノ官能基を繊維表面に導入してもよく、酸素プラズマを使用して、カルボキシル基およびヒドロキシル基を導入してもよいことは公知である。したがって、反応性雰囲気は、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素、アンモニア、および/または布帛のプラズマ処理に適していることがわかっている他の気体のうちの1種以上を含んでもよい。反応性雰囲気は、原子状、イオン状、分子状、または遊離ラジカルの形のこれらの気体を1種以上含んでもよい。例えば、本発明の好ましい連続プロセスにおいて、一連の繊維が、好ましくはアルゴン原子、酸素分子、アルゴンイオン、酸素イオン、酸素遊離ラジカル、および他の微量の気体種を含む制御された反応性雰囲気を通過する。好ましい実施形態において、反応性雰囲気は、アルゴンと酸素をアルゴン濃度約90%〜約95%および酸素濃度約5%〜約10%で含み、アルゴン/酸素濃度は90/10または95/5が好ましい。別の好ましい実施形態において、反応性雰囲気は、ヘリウムと酸素をヘリウム濃度約約90%〜約95%および酸素濃度約5%〜約10%で含み、ヘリウム/酸素濃度は90/10または95/5が好ましい。別の有用な反応性雰囲気は、ゼロガス雰囲気、すなわち窒素約79%、酸素約20%および少量の他の気体を含む室内気であり、コロナ処理にとってもある程度有用である。
【0042】
プラズマ処理は、真空チャンバーまたは大気状態で維持されているチャンバー内で実施してもよい。プラズマ処理がコロナ処理と異なる主な点は、コロナ処理は反応性雰囲気が空気であるのに対して、プラズマ処理は制御された反応性気体雰囲気で実施されることである。プラズマ処理装置中の雰囲気は容易に制御および維持することができ、コロナ処理よりも制御可能かつ柔軟な方法で表面極性を実現することが可能になる。放電は、気体を解離させて電子、イオン、遊離ラジカル、および準安定生成物を生成する高周波(RF)エネルギーによって生じる。プラズマ中で生成した電子と遊離ラジカルは、繊維表面に衝突し、共有結合を破壊し、繊維表面に遊離ラジカルを生じる。バッチ工程では、所定の反応時間または反応温度を経た後に、処理用気体およびRFエネルギーを止め、残りの気体および他の副生成物を除去する。本明細書で好ましい連続工程では、一連の繊維が、選択された反応性気体の原子、分子、イオン、および/または遊離ラジカル、ならびに他の微量種を含む制御された反応性雰囲気を通過する。反応性雰囲気は常に生成され、補充され、ほぼ定常状態の組成に到達し、生成を止めるすなわち急冷した後に、塗布機を停止する。
【0043】
プラズマ処理は、Softal Corona & Plasma GmbH & Co社(独国ハンブルク);4
th State、Inc社(米国カリフォルニア州ベルモント);Plasmatreat US LP社(米国イリノイ州
エルジン);Enercon Surface Treating Systems社(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手可能なプラズマ処理機など任意の有用な市販プラズマ処理機を使用して実施してもよい。好ましいプラズマ処理工程は、ほぼ大気圧、すなわち1気圧(760mmHg(760トール))、チャンバー温度ほぼ室温(70°F〜72°F)で実施される。プラズマチャンバー内部の温度は、処理課程によって変化する可能性があるが、処理中に冷却または加熱をして温度のみを独立して変えることは一般にはしない。繊維はプラズマ処理装置を迅速に通過するので、繊維の処理に影響を及ぼすとは考えられない。プラズマ電極と繊維ウェブの間の温度は典型的には約100℃である。プラズマ処理工程は、好ましくは約0.5kW〜約3.5kW、より好ましくは約1.0kW〜約3.05kWのRF出力下で実施され、最も好ましくは大気プラズマ処理装置セットを2.0kWで使用して、プラズマ処理を実施する。この電力は、プラズマ処理領域の幅(または電極の長さ)にわたって分配され、また繊維ウェブがプラズマ処理装置の反応性雰囲気を通過する線速
度に反比例する速度で基材もしくは繊維ウェブの長さにわたって分配される。この単位時間単位面積当たりのエネルギー(平方フィートおよび毎分当たりのワット、すなわち、W/平方フィート/分)すなわちエネルギー束は、処理レベルを比較する有用な方法である。エネルギー束の実効値は、好ましくは約0.5〜約200ワット/平方フィート/分、より好ましくは約1〜約100ワット/平方フィート/分、さらにより好ましくは約1〜約80ワット/平方フィート/分、最も好ましくは約2〜約40ワット/平方フィート/分である。総気体流量は約16リットル/分であるが、厳密に限定するものではない。繊維のプラズマ処理時間(または滞留時間)は約2秒であるが、使用するプラズマ処理装置の大きさに比例し、厳密に限定するものではない。より適切な尺度は、経時で繊維に加えられた単位面積当たりのRF電力に換算したプラズマ処理量である。
【0044】
プラズマ被覆は、繊維の表面ウェブを活性化し、活性化された繊維ウェブをビニルモノマー、ビニルオリゴマー、またはいくつかの他の反応性種を含む雰囲気に通すこととして定義される。プラズマ被覆は、極めて特異な化学的機能性を繊維の表面に付与することができ、異なるポリマー特性を繊維の表面に付与することができる。直接フッ素化処理では、フッ素元素を用いた繊維の直接フッ素化により繊維表面は改質される。例えば、繊維表面とF
210%/He90%の混合物を25℃で接触させて、フッ素元素を前記表面に堆積させることによって、繊維表面をフッ素化してもよい。繊維表面上に存在するフッ素元素は、その後塗布される被覆材と結合する官能基として機能する。また、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,988,491号および第4,020,223号を参照すると、フッ素元素、酸素元素、およびキャリアガスの混合物を用いる繊維の直接フッ素化が開示されている。UVグラフトも当技術分野において周知の方法である。防弾繊維表面のUVグラフト化を行う任意方法では、繊維(または布帛)を単量体、光増感剤および溶媒の溶液に浸漬して、繊維/布帛表面を単量体および光増感剤で少なくとも部分的に被覆する。次いで、被覆された繊維は当技術分野において周知の通りUV照射される。単量体の種類、光増感剤の種類および溶媒の種類の具体的な選択は、当業者の所望で変更され、また当業者によって容易に決定される。例えば、Jieliang Wangら(the Department of Applied Chemistry, School of Science, Northwestern Polytechnical University, Xi’an, Shaanxi 710072, PR China)による「Studies on surface modification of UHMWPE fibers via UV initiated grafting」と題する論文(Applied Surface Science、253巻、2号、2006年11月15日、668〜673頁)で述べられているように、アクリルアミドグラフト単量体を介してアクリルアミド基をUHMWPE重合体鎖にグラフトしてもよく、その開示内容は、参照により本明細書において一貫性がある程度に本明細書に組み込まれる。
【0045】
さらに、本発明の繊維はこれらの任意選択の処理のうちの1つ以上で処理してもよい。例えば、繊維にクロムエッチングによる粗面化とプラズマ処理、またはコロナ処理とプラズマ処理、またはプラズマ処理とプラズマ処理を行ってもよい。さらに、本発明の複合材料および布帛は処理した繊維と処理していない繊維を含んでもよい。例えば、コロナ処理した繊維とプラズマ処理した繊維から、またはフッ素化した繊維とフッ素化していない繊維から、本明細書の複合材料を製造してもよい。
【0046】
これらの処理はそれぞれ、繊維表面仕上げ剤の少なくとも部分除去の後であるが任意の結合剤/マトリックス樹脂または他の被吸着剤/被覆材の塗布より前に実施される。整列させた繊維ウェブを高分子結合剤または樹脂で被覆する直前に露出した繊維表面を処理することは、繊維製造工程を最も混乱させずに、繊維を改質して保護されていない状態にある時間を最短にできるので最も好ましい。繊維を繊維スプール(巻回繊維パッケージ)から巻き出し、繊維を整列させて繊維ウェブにした直後に、繊維表面仕上げ剤を除去し、露出した繊維表面を処理し、続いて直ちに重合体/樹脂の塗布液を繊維に塗布または含浸させることが理想的である。これも、繊維の表面改質の有効な期間あるいは劣化速度につい
て考慮すべきことがある場合でも、繊維は処理されて被覆されていない状態に最短時間しか置かれない。しかし、これは、主に全製造工程に対して最小の混乱しかもたらさない点で理想的であるが、複合材料の重ねせん断強度またはBFS性能の改善を実現するには必ずしも理想的ではない。
【0047】
繊維仕上げ剤の少なくとも部分除去および任意選択の表面処理の結果として、複数の隣接する繊維層を含む本発明の繊維複合材料は、繊維プライ間の層間重ねせん断強度が好ましくは少なくとも約170重量ポンド(lbf)、より好ましくは少なくとも約185lbf、より好ましくは少なくとも約200lbf、より好ましくは少なくとも約225lbf、より好ましくは少なくとも約250lbf、より好ましくは少なくとも約275lbf、最も好ましくは少なくとも約300lbfであり、これらはすべて標準周囲室温約70°F〜72°Fで測定される。本明細書に示すように、重量ポンドの単位で測定される層間重ねせん断強度は、隣接する繊維層間の結合を剥離する前に複合材料に加えられる横方向応力の量を示す。上述されたように、これらの重ねせん断値は、標準INSTRON(登録商標)引張試験機を使用して、ASTM D5868法の仕様書に従って1インチの重なり接続部を有する試料細片を使用して測定する。実際の使用では、繊維複合材料は繊維層の重なりを1インチより大きくして製造され、これによって、より強い結合になる。したがって本明細書で確認される重ねせん断値は最小値であって、最大値ではないと考えられる。重ねせん断データはまた、ほぼ室温(約72°F)で取られた測定値だけを指している。より暖かい条件では、繊維複合材料の高分子結合剤の構成要素が軟化し、繊維との結合の強度が低下することがある。比較の測定値はいずれも、同じ試験温度で取らなければならない。
【0048】
上述されたように製造され、前記構成繊維層間の層間重ねせん断値を有する繊維複合材料は、劣る層間重ねせん断値を有する複合材料、すなわち本発明の複合材料より低い横方向降伏応力/剥離応力を有する複合材料に比べて大幅に低い裏面変形量を示すことが明らかになった。これは、構成繊維が本来防弾能力で他の繊維より優れているが、重合体被覆材への本来の親和性が低いポリエチレン繊維であるとき特に顕著である。ポリエチレン繊維の表面を、それから形成されるポリエチレン系布帛の製造より前に上述された処理の任意の組合せで処理して、ポリエチレン系複合材料の構成繊維層の層間重ねせん断強度を高めることによって、アラミド繊維を含めて他のいかなる繊維の種類よりも比較的優れた構造特性、弾丸貫通抵抗性および裏面変形量抵抗性の組合せが実現する。
【0049】
この点で、本発明の繊維複合材料は、約427m/s〜約445m/s(1430フィート/秒(fps)±30fps)の速度で発射された124−グレイン、9mmFMJ
RN型発射体が衝突したとき、面密度2.0psfの複合材料について測定した約8mm未満の好ましい裏面変形量を有する。これは、本発明のすべての繊維複合材料もしくは物品が面密度2.0psfであるというわけでもなく、本発明のすべての繊維複合材料もしくは物品が前記速度のこのようなFMJ RN型発射体に対してBFSが8mmであるというわけでもない。上述のことからは、本発明のプロセスに従って製造された複合材料は、2.0psfの板として製造されると、その2.0psfの板が前記速度のこのようなFMJ RN型発射体に対して約8mm未満のBFSを有することを特徴とすることが確認できるだけである。BFS、裏面変形、外傷変形量、および鈍器外傷という用語は、発射体の衝突による複合材料の沈下深さの尺度ではなく、むしろ発射体の衝突による裏当て材における沈下深さまたは使用者の身体への沈下深さの尺度であるということも理解されるべきである。これは硬質装甲、特にヘルメット装甲の研究には特に重要性をもつ。ヘルメットのBFSは、典型的には試作ヘルメットを金属製頭模型に置くことによって試験されるからであり、ヘルメットは、懸架装置によりヘルメットが頭模型から1/2インチ(1.27cm)離れた状態で頭模型に保持される。頭模型の内部には粘土が詰まっており、それらの粘土領域の沈下深さを、BFSとして測定する(測定において1/2インチ
の間隙深さは測定に含めない)。これは、実験室でのBFS試験と現場使用で兵士が経験する実際のBFSとを相関させる目的のために行う。現場使用では、典型的なヘルメットはヘルメット内部パッド或いは懸架システム/保持装着帯のために、典型的には頭部から1/2インチの補正を組み込む。他方、軟質装甲のBFSは通常は装甲を、間隔をとらずに粘土表面に直接置くことにより試験をする(それは実際の現場使用の位置と一致する)。従って、BFS深度測定値は用いる試験方法と関連しており、BFSの深度測定値を比較する場合は、用いたテスト法が試験試料を裏面材料に直接設置及び裏面材料から間隔をとって設置のどちらを要求されたかを識別することが必要である。これに関しては、本発明の繊維複合材料のBFS試験では、全て2.0psf試料と粘土裏面材料の間に1/2インチの空間を置いて測定した。好ましい態様において、本発明の繊維複合材料は、NIJ標準−0101.04の発射体の発射条件下、約427m/秒〜約445m/秒の速度で発射された124−グレイン、9mmFMJ発射体で衝撃を受けた場合、約7mm未満のより好ましい裏面変形量を有し、約427m/秒〜約445m/秒の速度で発射された124−グレイン、9mmFMJ RN発射体(担体を除いて90%銅及び10%亜鉛を
含む銃弾)で衝撃を受けた場合、より好ましくは約6mm未満の、より好ましくは約5mm未満の、より好ましくは約4mm未満の、より好ましくは約3mm未満の、より好ましくは約2mm未満の、最も好ましくは約1mm未満の裏面変形量を有する。約427m/秒〜約445m/秒の速度で発射された124−グレイン、9mmFMJ RN発射体に
対するBFS試験は、当該分野で一般的である。これらのBFS値を達成する前記繊維複合体は、それぞれ複数の隣接する繊維層を含み、各繊維層は重合体材料で少なくとも部分的に被覆された表面を有する繊維を含み、前記繊維の大部分が、前記重合体材料が主に前記繊維表面と直接接触するように、ほとんど繊維表面仕上げ剤を含有しない繊維複合体であって、ほぼ室温において、少なくとも約170lbf、より好ましくは少なくとも約185lbf、より好ましくは少なくとも約200lbf、より好ましくは少なくとも約225lbf、より好ましくは少なくとも約250lbf、より好ましくは少なくとも約275lbf、最も好ましくは少なくとも約300lbfの繊維層間の層間重ねせん断強度を有する。これらのBFS値とこのような層間重ねせん断強度の特性を達成する前記の繊維複合材料は、好ましくは少なくとも約1750フィート/秒(fps)(533.40m/秒)、より好ましくは少なくとも約1800fps(548.64m/秒)、更により好ましくは少なくとも約1850fps(563.88m/秒)、及び最も好ましくは少なくとも約1900fps(579.12m/秒)の17−グレイン破片模擬弾(fragment simulating projectile:FSP)に対するV
50も示す。上記のV
50値の全ては、約1.0ポンド/平方フィート(psf)(4.88kg/m
2(ksm))の複合材料面密度を有する装甲板についての値である。上記のBSF値の全ては、約2.0ポンド/平方フィート(psf)(7.96kg/m
2(ksm))の複合材料面密度を有する装甲板についての値である。BFSについては、本発明の全ての繊維複合材料又は物品が特定の面密度を有するというわけでも、また本発明の全ての繊維複合材料又は物品が17−グレインFSPに対して少なくとも約1750フィート/秒のV
50を有するというわけでもない。ただ本発明の方法に従って作製した複合材料が、1.0psf板に加工された場合には、その1.0psf板が17−グレインFSPに対して、約1750フィート/秒のV
50を有するという点で特徴づけられるということが確認されるにすぎない。
【0050】
本明細書において形成される繊維層及び複合材料は、好ましくは、高強度高引張弾性率の重合体繊維からなる弾道抵抗性複合材料である。最も好ましくは、繊維は弾道抵抗性材料及び物品の形成に有用である高強度高引張弾性率の繊維を含む。本明細書で用いられる「高強度高引張弾性率繊維」は、ASTM D2256により測定して、少なくとも約7
g/デニール以上の靭性及び少なくとも約150g/デニール以上の引張弾性率、そして好ましくは少なくとも約8J/g以上の破断エネルギーを有するものである。本明細書で使用される用語「デニール」は、線密度の単位を指し、9000メートル当たりの繊維又は糸のg単位で表した質量に等しい。本明細書で用いられる用語「靭性」は、応力がかか
っていない試験片の、単位線密度(デニール)当たりの力(g)として表した引張応力を指す。繊維の「初期弾性率」は、その変形抵抗性を表す材料の物性である。「引張弾性率」という用語は、デニール当たりのg重で表した靭性の変化(g/d)の元の繊維長に対する分率として表した歪みの変化(インチ/インチ)に対する割合を指す。
【0051】
繊維を形成する重合体は、弾道抵抗性複合材料/布帛の製造に適した高強度高引張弾性率繊維であることが好ましい。特に弾道抵抗性複合体材料とその物品の製造に適している特に適切な高強度高引張弾性率繊維材料としては、高密度及び低密度ポリエチレンを含むポリオレフィン繊維が挙げられる。特に好ましいのは、高配向高分子量ポリエチレン繊維(特に超高分子量ポリエチレン繊維)及びポリプロピレン繊維(特に超高分子量ポリプロピレン繊維)等の伸び切り鎖ポリオレフィン繊維である。同様に適しているのは、アラミド繊維(特にパラアラミド繊維)、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタラート繊維、ポリエチレンナフタラート繊維、伸び切り鎖ポリビニルアルコール繊維、伸び切り鎖ポリアクリロニトリル繊維、ポリベンザゾール繊維(例えば、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維やポリベンゾチアゾール(PBT)繊維)、液晶共重合エステル繊維、及びその他の剛性ロッド繊維(例えばM5(登録商標)繊維)である。これらの繊維の種類はいずれも当技術分野では従来から知られている。同様に重合体繊維を製造するのに適しているのは、重合体、ブロック重合体及び上記材料のブレンドである。
【0052】
弾道抵抗性布帛用の最も好ましい繊維の種類としては、ポリエチレン繊維(特に伸び切り鎖ポリエチレン繊維)、アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維、液晶共重合エステル繊維、ポリプロピレン繊維(特に高配向伸び切り鎖ポリプロピレン繊維)、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維、及び他の剛性ロッド繊維(特にM5(登録商標)繊維)が挙げられる。具体的に最も好ましい繊維は、アラミド繊維である。
【0053】
ポリエチレンの場合、好ましい繊維は、500,000以上、好ましくは100万以上、更に好ましくは200万〜500万の分子量を有する伸び切り鎖ポリエチレンである。このような伸び切り鎖ポリエチレン(ECPE)繊維は、溶液紡糸法によって成長させることもできるし(例えば、米国特許第4,137,394号、同4,356,138号(これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載)、又は溶液から紡糸をして、ゲル構造を形成することもできる(例えば、米国特許第4,551,296号、同5,006,390号(これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載)。本発明で用いるのに特に好ましい繊維の種類は、ハネウェル・インターナショナル社(Honeywell International Inc.)からSPECTRA(登録商標)の商品名で販売されているポリエチレン繊維である。SPECTRA繊維は当技術分野でよく知られており、例えば、米国特許第4,623,547号及び同4,748,064号に記載されている。ポリエチレンに加えて、別の有用なポリオレフィンは、例えば、米国サウスカロライナ州スパルタンバーグのミリケン・アンド・カンパニー(Milliken & Company)から市販されているTEGRIS(登録商標)等のポリプロピレン(繊維又はテープ)である。
【0054】
また、特に好ましいのは、アラミド(芳香族ポリアミド)又はパラアラミド繊維である。それらは商業的に入手可能であり、例えば、米国特許第3,671,542号に記載されている。例えば、有用なポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)フィラメントはデュポン社(DuPont)によりKEVLARの登録商標で製造販売されている。同様に本発明を実施する際に有用なのは、デュポン社(DuPont)がNOMEX(登録商標)の商品名で製造販売しているポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)繊維、テイジン社がTWARON(登録商標)の商品名で製造販売している繊維、韓国のコロン・インダストリーズ社(Kolon Industries, Inc)がHERACRON(登録商標)の商品名で製造販売している
アラミド繊維、ロシアのカメンスク・ボロクノJSC社(Kamensk Volokno JSC)がSVM及びRUSAR(登録商標)の商品名で製造販売しているp−アラミド繊維、及びロシアの
JSCキム・ボロクノ社(JSC Chim Volokno)がARMOS(登録商標)の商品名で製造販売しているp−アラミド繊維である。
【0055】
本発明を実施するのに適切なポリベンズアゾ−ル繊維は市販されており、例えば、米国特許第5,286,833号、同5,296,185号、同5,356,584号、同5,534,205号及び同6,040,050号(これらのそれぞれは参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されている。本発明を実施するのに適切な液晶共重合エステル繊維は市販されており、例えば、米国特許第3,975,487号、同4,118,372号及び同4,161,470号(これらの各々は参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されている。適切なポリプロピレン繊維には、米国特許第4,413,110号(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のような高延伸伸び切り鎖ポリプロピレン(ECPP)繊維が含まれる。適切なポリビニルアルコール(PV−OH)繊維は、例えば、米国特許第4,440,711号及び同4,599,267号(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。適切なポリアクリロニトリル(PAN)繊維は、例えば、米国特許第4,535,027号(参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されている。これらの繊維の種類はそれぞれ公知であり、広く市販されている。
【0056】
M5繊維は、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)で形成され、バージニア州リッチモンドのマゼラン・システムズ・インターナショナル社(Magellan Systems International)で製造され、例えば米国特許第5,674,969号、同5,939,553号、同5,945,537号、及び同6,040,478号(これらの特許は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。同様に適切なのは、上記のすべての材料の組合せであり、それらのすべては市販されている。例えば、繊維層は、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維(例えば、SPECTRA(登録商標)繊維)、炭素繊維他の1種以上とガラス繊維等の低性能材料の組合せから形成してもよい。しかしながら、BFS及びV
50の値は、繊維の種類によって異なる可能性がある。
【0057】
繊維は任意の適切なデニールでよく、例えば、50〜約3000デニール、より好ましくは約200〜約3000デニール、更により好ましくは約650〜約2000デニール、最も好ましくは約800〜1500デニールである。繊維の選択は、弾道抵抗有効性と費用を考慮して決定される。より細い繊維は、製造するのに、また織るのにより多くの費用がかかるが単位重量当たりでより大きな弾道抵抗有効性をもたらすことができる。
【0058】
上述のように、高強度高引張係数繊維は、ASTM D2256により測定して、好ま
しくは約7g/デニール以上の靭性、好ましくは約150g/デニール以上の引張係数、及び好ましくは約8J/g以上の破断エネルギーを有するものである。本発明の好ましい態様では、繊維の靭性は、約15g/デニール以上、好ましくは約20g/デニール以上、より好ましくは約25g/デニール以上、更により好ましくは約30g/デニール以上、更により好ましくは約37g/デニール以上、更により好ましくは約40g/デニール以上、より更により好ましくは約45g/デニール以上、より更により好ましくは約50g/デニール以上、より更により好ましくは約55g/デニール以上、最も好ましくは約60g/デニール以上であるべきである。好ましい繊維は、約300g/デニール以上の好ましい引張係数、より好ましくは約400g/デニール以上、より好ましくは約500g/デニール以上、より好ましくは約1000g/デニール以上、さらにより好ましくは約1500g/デニール以上の引張係数も有する。好ましい繊維は、また好ましくは約15J/g以上、より好ましくは約25J/g以上、さらにより好ましくは約30J/g以上の破断エネルギーを有し、最も好ましくは、約40J/g以上の破断エネルギーを有する。これらの組み合わされた高強度特性は、公知の方法を用いることによって得ることができる。米国特許第4,413,110号、同4,440,711号、同4,535,0
27号、同4,457,985号、同4,623,547号、同4,650,710号、及び同4,748,064号は、本発明において使用される好ましい高強度伸び切り鎖ポリエチレン繊維の形成について一般的に論じている。溶液成長法又はゲル繊維法を含むこのような方法は、当技術分野で公知である。パラアラミド繊維を含めた他の好ましい繊維の種類のそれぞれを形成する方法も、当技術分野で従来から知られており、これらの繊維は市販されている。本発明の繊維複合材料はまた好ましくは約1.7g/cm
3以下の繊維面密度を有する。
【0059】
所望により繊維表面から繊維表面仕上げ剤の少なくとも一部を除去した後、及び所望により続いて塗布する被吸着剤の繊維表面への吸着を増強するのに有効な条件で繊維表面を処理した後に、所望により次いで被吸着剤を少なくとも一部の繊維の少なくとも一部分に塗布する。本明細書で用いられる用語「吸着」は、任意の物質(固体、液体、気体又はプラズマ)の繊維表面への物理吸着及び化学吸着の両方を広く包含することを意図し、「物理吸着」は、本明細書では、繊維表面への物質の物理的結合と定義され、「化学吸着」は、本明細書では、物質の繊維表面(ここでは化学反応が露出繊維(即ち、吸着剤(absorbant))表面で起こる)への化学的結合と定義される。本明細書で用いられる用語「吸着
」は限定されないが、重合体マトリックス内の繊維の湿潤性/接着性を高める手段も含め、基質表面に物理的又は化学的に物質を付着させる、接着させる、又は結合させるあらゆる可能な手段を含むものとする。これは、任意の固体、液体又は気体物質の繊維表面への接着又は塗布を明らかに含み、任意のモノマー、オリゴマー、重合体又は樹脂を含み、また任意の有機材料又は無機材料を繊維表面に塗布することを含む。この点では、「被吸着剤(adsorbate)」の定義は同様に限定されないが、重合体結合剤、樹脂、又は重合体マ
トリックス材料として全ての重合体を明らかに含む。しかしながら、本発明の目的にとって有用な被吸着剤の種類としては、紡糸仕上げ剤等の繊維表面仕上げ剤(結合特性を有する結合剤ではなく、逆に繊維表面から本発明に従い特異的に剥離される)を含む結合特性を持たない物質は明白に除外される。
【0060】
本発明の目的にとって、樹脂等の重合体結合剤材料である被吸着剤の塗布は、所望の層間重ねせん断強度を有する複合体を達成するために必要である。従って、本発明の織布又は不織布を形成する繊維は、重合体結合剤材料で被覆するか又はそれに含浸させる。重合体結合剤材料は、繊維層の個々の繊維を部分的に又は実質的に被覆し、好ましくは各繊維層の個々の繊維のそれぞれを実質的に被覆する。重合体結合剤材料は、一般に「重合体マトリックス」材料としても知られ、これらの用語は本明細書では交換可能に用いられる。これらの用語は、当技術分野で従来公知であり、その固有の接着特性によって、又は公知の熱及び/又は圧力条件に置かれることによって、繊維を互いに結合させる物質を表す。このような「重合体マトリックス」又は「重合体結合剤」材料は、また布帛に耐摩耗性及び有害な環境条件に対する耐性等の他の望ましい特性も付与することができるので、例えば、織布の場合等のように結合剤材料の結合特性は重要でない場合でも、このような結合剤材料で繊維を被覆することは望ましいと考えられる。
【0061】
適切な重合体結合剤材料は、低弾性率エラストマー材料及び高弾性率硬質材料の両方を含む。本明細書全体にわたって、用語「引張弾性率」は、繊維についてはASTM 22
56に従って測定され、重合体結合剤材料についてはASTM D638に従って測定さ
れる弾性率を意味する。低弾性率又は高弾性率の結合剤は様々な重合体材料及び非重合体材料を含むことができる。好ましい重合体結合剤は低弾性率エラストマー材料を含む。本発明の目的に対しては、低弾性率エラストマー材料は、ASTM D638試験手順に従
って約6,000psi(41.4MPa)以下と測定される引張弾性率を有する。低弾性率重合体は、好ましくは、約4,000psi(27.6MPa)以下、より好ましくは約2400psi(16.5MPa)以下、更により好ましくは1200psi(8.23MPa)以下、特に好ましくは約500psi(3.45MPa)以下のエラストマ
ーの弾性率を有する。エラストマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは約0℃未満、より好ましくは約−40℃未満、特に好ましくは約−50℃未満である。エラストマーは、また、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%の破断伸度を有し、特に好ましくは少なくとも約300%の破断伸度を有する。
【0062】
多種多様の低弾性率を有する材料及び配合物を重合体結合剤として利用することができる。代表的な例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリスルフィド重合体、ポリウレタンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリエーテル、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、エチレン共重合体、及びそれらの組み合わせ、並びに繊維の溶融点より低い温度で硬化可能な他の低弾性率の重合体及び共重合体が挙げられる。同じく好ましいのは、異なるエラストマー材料の混合物、又はエラストマー材料と1種以上の熱可塑性プラスチックの混合物である。
【0063】
特に有用であるのは、共役ジエンとビニル芳香族単量体のブロック共重合体である。ブタジエン及びイソプレンは好適な共役ジエンエラストマーである。スチレン、ビニルトルエン、及びt−ブチルスチレンは、好ましい共役芳香族単量体である。ポリイソプレンを組み込んだブロック共重合体を水素化すると、飽和炭化水素エラストマー部分を有する熱可塑性エラストマーを生成することができる。重合体は、A−B−A型の単純な3ブロック共重合体であってもよいし、(AB)n(n=2〜10)型の複数ブロック共重合体又はR−(BA)x(x=3〜150)型の放射状配置の共重合体でもよい(式中、Aはポリビニル芳香族単量体由来のブロックであり、Bは共役ジエンエラストマー由来のブロックである)。こうした重合体の多くは、米国テキサス州ヒューストンのクレイトンポリマー社(Kraton Polymers)社が製造販売を行っており、会報「Kraton Thermoplastic Rubber」のSC−68−81に記載されている。同様に有用であるのは、PRINLIN(登録商標)の商品名で販売され、ドイツ国デュッセルドルフを本拠とするヘンケル・テクノロジーズ社(Henkel Technologies)から商業的に入手可能なスチレン−イソプレン−ス
チレン(SIS)ブロック共重合体の樹脂分散物である。特に好ましい低弾性率重合体結合
剤用重合体は、クレイトンポリマー社(Kraton Polymers)が商業的に製造し、KRAT
ON(登録商標)の商品名で販売されているスチレンブロック共重合体を含む。特に好ましい重合体結合剤材料は、KRATON(登録商標)の商品名で販売されているスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含む。
【0064】
低弾性率の重合体マトリックス結合剤材料は防弾ベスト等の可撓性装甲の形成に最も有用であるが、ヘルメット等の硬質装甲物品の形成に有用な高弾性率硬質材料が本明細書では特に好ましい。好ましい高弾性率硬質材料は一般に6,000psiより高い初期引張弾性率を有する。本明細書において有用である好ましい高弾性率硬質重合体結合剤材料としては、ポリウレタン(エーテル系及びエステル系の両方)、エポキシ、ポリアクリレート、フェノール/ポリビニルブチラール(PVB)重合体、ビニルエステル重合体、スチレン−ブタジエンブロック重合体、並びにビニルエステルとフタル酸ジアリル、或はフェノールホルムアルデヒドとポリビニルブチラール等の重合体混合物が挙げられる。本発明での使用に特に好ましい硬質重合体結合剤材料は、熱硬化性重合体、好ましくは炭素−炭素飽和溶媒(メチルエチルケトン等)に可溶であり、硬化したときにASTM D638
に準拠する測定で少なくとも約1×10
6psi(6895MPa)の高引張弾性率を有する熱硬化性重合体である。特に好ましい硬質重合体結合剤材料は米国特許第6,642,159号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものである。重合体結合剤は、当技術分野で良く知られているように、低弾性率材料であるか高弾性率材料であるかによらず、カーボンブラックやシリカ等の充填剤も含んでもよく、油展
してもよく、硫黄、過酸化物、金属酸化物、又は照射硬化系により硬化することができる。
【0065】
最も具体的に好ましいのは、極性樹脂又は極性重合体であり、特に軟質〜硬質の範囲の材料のポリウレタンで、約2,000psi(13.79MPa)〜約8,000psi(55.16MPa)の範囲の引張弾性率を有する。好ましいポリウレタンは、最も好ましくは、必ずしもではないが、共溶媒を含まない水性ポリウレタン分散液として塗布される。このような水性ポリウレタン分散液としては、水性アニオン性ポリウレタン分散液、水性カチオン性ポリウレタン分散液及び水性非イオン性ポリウレタン分散液が挙げられる。特に好ましいのは水性アニオン性ポリウレタン分散液、水性脂肪族ポリウレタン分散液であり、最も好ましいのは、水性アニオン性脂肪族ポリウレタン分散液であり、それらの全ては好ましくは共溶媒を含まない。それらとしては、水性アニオン性ポリエステル系ポリウレタン分散液、水性脂肪族ポリエステル系ポリウレタン分散液、及び水性アニオン性脂肪族ポリエステル系ポリウレタン分散液が挙げられ、それらの全ては好ましくは共溶媒を含まない。それらとしては、また水性アニオン性ポリエーテル系ポリウレタン分散液、水性脂肪族ポリエーテル系ポリウレタン分散液、及び水性アニオン性脂肪族ポリエーテル系ポリウレタン分散液も挙げられ、それらの全ては好ましくは共溶媒を含まない。同様に好ましいのは、水性カチオン性分散液及び水性ノニオン性分散液の全ての対応する種類(ポリエステル系、脂肪族ポリエステル系、ポリエーテル系、脂肪族ポリエーテル系他)である。最も好ましいのは、約700psi以上、特に好ましくは700psi〜約3000psiの範囲の100%伸び率での弾性率を有する脂肪族ポリウレタン分散液である。より好ましいのは、約1000psi以上、より好ましくは約1100psi以上の100%伸び率での弾性率を有する脂肪族ポリウレタン分散液である。最も好ましいのは、1000psi以上、好ましくは1100psi以上の弾性率を有する脂肪族ポリエーテル系アニオン性ポリウレタン分散液である。
【0066】
本発明の複合材料で形成された物品の剛性、衝撃特性、及び防弾特性は、繊維を被覆する重合体結合剤用重合体の引張弾性率に影響される。例えば、米国特許第4,623,574号には、約6,000psi(41,300kPa)未満の引張弾性率を有するエラストマーマトリックスで構築された繊維強化複合材料が、より高い弾性率の重合体で構成された複合体と比べても、同じ繊維構造体で重合体結合剤材料を含まない複合体と比べても、どちらよりも優れた防弾特性を有することが開示されている。しかしながら、引張弾性率の低い重合体結合剤材料用重合体からは同様に低い剛性の複合体しか得られない。更に、特定の用途、特に複合体に防弾と構造の両面での機能が求められる用途においては、防弾性と剛性の優れた組み合わせが必要とされる。従って、特に使用に最も適切な重合体結合剤用重合体の種類は本発明の布から形成する物品の種類によって変わる。防弾性と剛性の両方を確保する目的で、好適な重合体結合剤を低弾性率材料及び高弾性率材料の両方と組み合わせて単一の重合体結合剤を形成することができる。
【0067】
重合体結合剤材料は、繊維ウェブ(例えば平行配列又はフェルト)として配置された複数の繊維に同時又は順次のいずれかで塗布されて被覆ウェブを形成し、織布に塗布されて被覆織布を形成するか、又は別の配置の場合は、繊維層に結合剤を含浸する。本明細書で使用される用語「含浸される」は、「包埋される」及び「被覆される」或いは他の方法で被覆材料を塗布されると同義であり、この場合、結合剤材料は繊維層を拡散し、単に繊維層の表面に存在するだけではない。重合体材料は、繊維ウェブに含まれていない少なくとも1つの繊維配列に塗布され、続いて塗布された繊維を本明細書で上述した方法に従って織布に織り込む、或は不織布に組み込むこともできる。織布及び不織布のプライ、層及び布帛を形成する技術は当技術分野で公知である。
【0068】
必須ではないが、織られた繊維層を形成する繊維は、少なくとも部分的に重合体結合剤
で被覆され、続いて不織繊維層に対して実施されるのと同様な圧密化工程を実施する。そのような圧密化工程を行うことにより、複数の織られた繊維層を互いに一体化する、又は更に結合剤を前記織布の繊維と一体化することができる。例えば、複数の織られた繊維層は必ずしも圧密化する必要はなく、他の手段、例えば慣用の結合剤や縫製により結合してもよい。
【0069】
一般に、重合体結合剤の被覆材は複数の不織繊維プライを効率的に一体化する、即ち圧密化するために必要である。重合体結合剤材料は、個々の繊維の表面全部に、または繊維の表面の一部に塗布することができる。特に好ましくは、重合体結合剤材料である被覆材は本発明の繊維層を形成する個々の繊維一本一本の表面の実質的にすべてに塗布される。繊維層が複数本の糸を含む場合、一本の糸を形成する各繊維が好ましくは重合体結合剤材料で被覆される。
【0070】
任意の適切な塗布方法が重合体結合剤材料を塗布するために利用することができ、用語「被覆される」は、重合体結合剤材料をフィラメント/繊維に塗布する方法を限定するものではない。重合結合剤材料は、当業者ならば容易に決定できる任意の適切な方法を用いて繊維表面に直接塗布され、次いで典型的には結合剤は本明細書で説明したように繊維層中に拡散する。例えば、重合体結合剤材料は、重合体材料の溶液(この溶液の一部は1種以上の所望の重合体を含み、また溶液の一部は1種以上の重合体を溶解又は分散することが可能である溶媒を含む)を噴霧し、押出し、又はローラー塗布し、続いて乾燥させることにより、溶液、乳濁液又は分散液の形態で繊維表面に塗布してもよい。あるいは、重合体結合剤材料は、スロットダイを通す等の従来周知の技術を用いて、又は当技術分野で周知である他の方法(直接グラビア塗装、メイヤーロッド(Meyer rod)、及びエアナイフ
(air knife)システム等)を用いて、繊維に表面に押し出してもよい。別の方法は、結
合剤材料の重合体そのものを、液体、粘着性固体、若しくは懸濁液の粒子として、又は流動床として、繊維に塗布する方法である。あるいは、被覆材は塗布温度で繊維の性質に悪影響を及ぼさない適切な溶媒を用いた溶液、乳化液、又は分散液として塗布することができる。例えば、繊維を重合体結合剤材料の溶液に通して移送することで、実質的に繊維を被覆し、次いで乾燥できる。
【0071】
別の被覆技術では、重合体結合剤材料を適切な溶媒に溶解又は分散させた溶液の浴に繊維を浸し、次いで溶媒の蒸発又は揮発により乾燥させてもよい。この方法は、重合体材料で個々の繊維を好ましくは少なくとも部分的に被覆し、個々の繊維を好ましくは実質的に被覆又は被包し、フィラメント/繊維表面のすべて又は実質的にすべてを重合体結合剤材料で覆う。浸漬操作は、所望量の重合体材料を繊維に塗布するのに必要なだけ複数回繰り返すことができる。
【0072】
繊維に被覆材を塗布する他の技術を用いることもでき、適切な際にゲル繊維前駆体を被覆することも含め、例えば、ゲル繊維を所望の被覆を達成する条件下で適切な被覆材重合体の溶液に通過させる等が挙げられる。あるいは、適切な重合体粉末の流動床内に繊維を押出すこともできる。
【0073】
繊維表面仕上げ剤の少なくとも部分的な除去後、及び好ましくは繊維表面に順次塗布する被吸着剤の吸着を促進する表面処理後に繊維を重合体結合剤で被覆することが必要であるが、繊維を1つ以上のプライ/層に配置する前あるいは後、又は繊維を織布に織り込む前あるいは後のいずれかに繊維を重合体結合剤で被覆することができる。織布は、当技術分野で周知である技術により任意の織り方(平織り、千鳥綾織り、斜子織り、繻子織り、綾織り等)で形成することができる。平織りが最も一般的であり、平織りでは、繊維は直交する0°/90°の向きでひとつに織り上げられる。織る前か後のいずれかで、各織布材料の個々の繊維を、重合体結合剤材料で被覆してもよいし、しなくてもよい。典型的に
は、布帛の製織は、繊維を重合体結合剤で被覆(それによって織布に結合剤が含浸される)する前に行う。しかしながら、本発明は、重合体結合剤を繊維に塗布する段階、或いは重合体結合剤を塗布するのに用いる手段によって限定されるものではない。
【0074】
不織布の製造方法は、当該技術分野において周知である。本明細書の好ましい態様では、複数の繊維は少なくとも1つの配列に配置され、典型的には、実質的に平行な一方向性配列に整列した複数の繊維を含む繊維ウェブとして配置される。前述の通り、一方向に整列した不織繊維プライを形成する典型的な方法では、繊維の束を、クリールからガイド及び1つ以上の拡幅棒(spreader bar)を通して平行櫛に送り、続いて繊維を重合体結合剤材料で被覆する。典型的な繊維の束は、約30本〜約2000本の個々の繊維を含む。拡幅棒及び平行櫛は、束になった繊維をほぐして広げ、再構成して同一平面上で互いに隣接して並べる。繊維が理想的に広げられることで、単一繊維面に個々のフィラメント又は個々の繊維が順次配置され、繊維が互いに重なり合わずに実質的に一方向の繊維の平行配列を形成する。この時点で、この拡幅段階の前又は間に繊維表面仕上げを除去すると、繊維の拡幅が進んで加速され、そのような平行配列となる。
【0075】
繊維を結合剤材料で被覆した後、この被覆繊維から不織布を形成する。この不織布は複数の重なり合う不織繊維プライを含み、この不織繊維プライは圧密化されて単一層の一体要素になっている。本発明の好ましい不織布構造体では、複数の積み重なり合ったユニテープが形成され、1つ1つのプライ(ユニテープ)の平行な繊維は、それぞれ互いに隣り合う1つのプライの平行な繊維と、プライの長軸繊維方向に対して直角に配置される。重なり合う不織繊維プライの積層物を加熱及び加圧下で圧密化するか、又は個々の繊維プライの被膜を接着することにより、単一層の一体要素を形成する。この要素は当技術分野では単一層圧密化網状体とも称されており、「圧密化網状体」とは繊維プライと高分子マトリクス/結合剤との組み合わせを圧密化(一体化)したものを表す。本発明の物品は、織布、一方向繊維プライで形成された不織布、及び不織フェルト布をハイブリッドに組み合わせて圧密化したものも含むことができる。
【0076】
最も典型的には、不織布は、1つから約6つのプライを有するが、種々の用途によって望まれるかもしれない、約10〜約20という多数のプライを有してもよい。プライの数が多いほど防弾性が向上するが、重量も重くなる。従って、本発明の布又は物品を形成する繊維プライの数は、その布又は物品の最終的な用途によって変わってくる。例えば、軍事用の防護ベストでは、1.0ポンド/平方フィート(4.9kg/m
2)以下の望ましい面密度を達成した複合体物品を形成する目的で、合計で約100のプライ(又は層)〜約50のプライ(又は層)が必要になる可能性があり、これらのプライ/層は、本明細書に記載の高強度繊維で形成された、織布、編地、フェルト、不織布(平行に配列された又は他の配置の繊維による)のいずれでもよい。別の態様において、警察が使用する防護ベストは、NIJ警戒レベルに基づき多数のプライ/層を有する可能性がある 例えば、NIJ警戒レベルIIIAのベストの場合、合計で40本のプライが使われる可能性がある。NIJ警戒レベルが低くなれば、用いられるプライ/層は更に少なくてよい可能性がある。本発明によると、他の既知の弾道抵抗性構造物と比較して、布帛重量を増加させることなく、より多くの数の繊維プライを組み込んで、所望のレベルの弾道保護を達成することができる。
【0077】
当技術分野で従来から知られている通り、1つのプライの繊維の整列方向が別のプライの繊維の整列方向に対してある角度で回転しているように個々の繊維プライを交差させて組み合わせる(cross-plied)と、優れた防弾性が得られる。繊維プライは、0°と90
°の角度で直角に交差して組み合わせるのが特に好ましいが、隣り合うプライは、別のプライの長軸繊維方向に対して約0°〜約90°の間の実質的に任意の角度で整列することができる。例えば、5つのプライによる不織構造では、プライは、0°/45°/90°
/45°/0°或いは他の角度を向いていてもよい。そのような回転した一方向整列は、例えば、米国特許第4,457,985号、同第4,748,064号、同第4,916,000号、同第4,403,012号、同第4,623,574号、及び同第4,737,402号に記載されており、これらはすべて、本明細書に矛盾のない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
繊維プライを圧密化して、繊維層及び複合材料を形成する方法は、例えば米国特許第6,642,159号に記載される方法などにより周知である。圧密化は、乾燥、冷却、加熱、加圧、又はそれらの組み合わせによって行うことができる。湿式積層法の場合のように、繊維又は布帛層が互いにぴったり合わさって接着剤で接着されるならば、加熱及び/又は加圧は、必ずしも必要ではない。典型的には、圧密化は、十分な加熱及び加圧条件で個々の繊維プライを互いに位置決めすることよって行われ、結合させて一体化した布帛にする。圧密化は、約50℃〜約175℃、好ましくは約105℃〜約175℃の温度範囲、並びに約5psig(0.034MPa)〜約2500psig(17MPa)の圧力範囲で、約0.01秒〜約24時間、好ましくは約0.02秒〜約2時間の間行うことができる。加熱する際、重合体結合剤被覆材を完全に溶融させることなく粘着化又は流動化させることができる。しかしながら、一般に、重合体結合剤材料(それが溶融することができるものである場合)を溶融すると、複合体を形成するのに比較的低い圧力しか必要としないのに対し、結合剤材料が粘着化する温度までしか加熱しないと、通常はより高い圧力が必要となる。当技術分野で従来から知られている通り、圧密化は、カレンダーセット、平面ラミネーター、プレス機、又はオートクレーブで行うことができる。最も一般的には、結合剤重合体を用いて複数の直交する繊維ウェブを「接着」し、平面ラミネーターを通過させることで結合の均一性及び強度を向上する。更に、圧密化及び重合体塗布/結合工程は、2つの別個の工程又はただ1つの圧密化/積層工程を含んでもよい。
【0079】
あるいは、圧密化は、適切な成形装置を用いて熱及び圧力を加えて成形することによっても達成できる。一般に、成形は、約50psi(344.7kPa)〜約5,000psi(34,470kPa)、より好ましくは約100psi(689.5kPa)〜約3,000psi(20,680kPa)、特に好ましくは約150psi(1,034kPa)〜約1,500psi(10,340kPa)の圧力で行われる。成形は、あるいは更に高圧の約5,000psi(34,470kPa)〜約15,000psi(103,410kPa)、より好ましくは約750psi(5,171kPa)〜約5,000psi、特に好ましくは約1,000psi〜約5,000psiでも行うことができる。成形工程には、約4秒〜約45分間の時間をかけてもよい。好ましい成形温度は、約200°F(約93℃)〜約350°F(約177℃)、より好ましくは約200°F〜約300°F、最も好ましくは約200°F〜約280°Fの範囲である。本発明の繊維層及び布帛複合材料を成形するときにかける圧力は、得られる成形製品の剛性又は柔軟性に直接影響を及ぼす。より高い圧力で成形すると、一般に一定の限界までより硬い材料が得られる。成形圧力の他に、繊維プライの量、厚さ、及び組成、並びに重合体結合剤被覆材の種類も、複合材料で形成された物品の剛性に直接影響を及ぼす。
【0080】
本明細書に記載の成形技術及び圧密化技術は互いに類似しているが、それぞれの工程は異なっている。特に、成形はバッチ工程であるのに対し、圧密化は一般に連続工程である。更に、成形は、典型的には、金型(ある形を持った金型や平面板を形成する場合のマッチドダイ金型等)を使用し、必ずしも平面的な生成物をもたらすとは限らない。通常、圧密化は平床ラミネーター又はカレンダーニップセットで行われるか、湿式積層で行われ、軟質(柔軟性)身体装甲布帛が得られる。成形は、典型的には、硬質装甲、例えば剛性板の製造のためにある。いずれの工程にしろ、適切な温度、圧力、及び時間は、一般に、重合体結合剤被覆材料の種類、重合体結合剤含量、用いる工程、及び繊維の種類に依存する。
【0081】
十分な弾道抵抗特性を有する布帛物品を製造するため、結合剤/マトリクス被覆材の合計重量は、好ましくは、繊維と被覆材の合計重量の約2重量%〜約50重量%、より好ましくは約5重量%〜約30重量%、更により好ましくは約7重量%〜約20重量%、特に好ましくは約11重量%〜約16重量%を占め、不織布の場合は16重量%が特に好ましい。織布の場合、結合剤/マトリクス含量はもっと少ないほうが好ましく、この場合、重合体結合剤含量が繊維と被覆材の合計重量の0重量%超かつ10重量%未満が特に好ましい。これは、限定を意図するものではない。例えば、フェノール/PVB樹脂含浸アラミド織布は、典型的には樹脂の含有量は約12%が好ましいが、時にはそれより多い約20%〜約30%の高い樹脂含有量で作製される。
【0082】
繊維層の製織又は圧密化に続いて、慣用の方法により任意の熱可塑性重合体層を繊維複合材料の外側表面の一方又は両方に貼り付けることができる。熱可塑性重合体層の適切な重合体としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル(特にポリエチレンテレフタラート(PET)及びPET共重合体)、ポリウレタン、ビニル重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン−オクタン共重合体、アクリロニトリル共重合体、アクリル重合体、ビニル重合体、ポリカーボナート、ポリスチレン、フルオロポリマー、並びにエチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体及びエチレン−アクリル酸共重合体などの、それらの共重合体及び混合物から成る群から選択することができる熱可塑性重合体が挙げられるが、これらに限定されない。また、有用なのは天然及び合成ゴム重合体である。これらの中で、ポリオレフィン層とポリアミド層が好ましい。好ましいポリオレフィンはポリエチレンである。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖中密度ポリエチレン(LMDPE)、直鎖極低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖超低密度ポリエチレン(ULDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及びそれらの共重合体及び混合物が挙げられるが、これらに限定されない。同様に有用なのは、米国オハイオ州カイヤホガフォールズのSpunfab, Ltd社から市販されているSPUNFAB(Keuchel Associates, Inc.の登録商標)ポリアミドウェブ並びにフランス国セルネのProtechnic S.A.から市販されているTHERMOPLAST(登録商標)並びにHELIOPLAS
T(登録商標)ウェブ、ネット及びフィルムである。熱可塑性重合体層は、熱積層等の周知の技術を用いて複合材料表面に結合してもよい。典型的には、積層は、十分な加熱及び加圧条件で個々の層を互いに位置決めをして層を結合させて一体化したフィルムにすることによって行われる。個々の層を互いに位置決めし、次いでその組み合わせたものを、当技術分野で周知の技術により、典型的には、加熱した積層ロール対の隙間に通す。積層の加熱は、約95℃〜約175℃、好ましくは約105℃〜約175℃の温度範囲で、約5psig(0.034MPa)〜約100psig(0.69MPa)の範囲の圧力下、約5秒〜約36時間、好ましくは約30秒〜約24時間の間行うことができる。
【0083】
個々の布帛/複合材料/繊維層の厚さは、個々の繊維の太さ及び布帛に組み込まれた繊維層の数に対応する。好ましい織布は、好ましくは、1層あたり、約25μm〜約600μm、より好ましくは約50μm〜約385μm、特に好ましくは約75μm〜約255μmの厚さを有する。好ましい不織布、即ち、不織単一層圧密化網状体は、好ましくは、約12μm〜約600μm、より好ましくは約50μm〜約385μm、特に好ましくは約75μm〜約255μmの厚さを有し、単一層圧密化網状体は、典型的には、2つの圧密化されたプライ(即ち、2本のユニテープ)を含む。熱可塑性重合体層は、好ましくは非常に薄く、約1μm〜約250μm、より好ましくは約5μm〜約25μm、最も好ましくは約5μm〜約9μmの層厚を有する。SPUNFAB(登録商標)不織布ウェブ等の不連続ウェブは、好ましくは6g/平方メートル(gsm)の坪量で塗布される。上記のような厚さが好適であるが、特定の要望を満たすために他の厚さのものを製造してもよく、当然のことながらそれらも本発明の範囲内にある。
【0084】
本発明の布帛/複合材料は、圧密化/成形前に、約20g/m
2(0.004ポンド/平方フィート(psf))〜約1000gsm(0.2psf)の好ましい面密度を有する。本発明の布帛/複合材料の圧密化/成形前のより好ましい面密度は、約30gsm(0.006psf)〜約500gsm(0.1psf)の範囲である。本発明の布帛/複合材料の圧密化/成形前の最も好ましい面密度は、約50gsm(0.01psf)〜約250gsm(0.05psf)の範囲である。互いに積層され、圧密化された複数の繊維層を含む本発明の物品は、好ましくは、約1000gsm(約0.2psf)〜約40,000gsm(8.2psf)の複合材料面密度を有し、より好ましくは約2,000gsm(約0.41psf)〜約30,000gsm(6.1psf)、より好ましくは約3,000gsm(約0.61psf)〜約20,000gsm(4.1psf)、最も好ましくは約3750gsm(0.77psf)〜約15,000gsm(3.1psf)の複合材料面密度を有する。ヘルメットに成形される複合材料の典型的範囲は、約7,500gsm(1.54psf)〜約12,500gsm(2.56psf)である。複数の隣接する繊維層を含む本発明の繊維複合材料は、ASTM D790、手順Aにより室温(約70〜72°F)で試験して、好ましくは少なくとも約7.50ksi(約51.71MPa)、より好ましくは少なくとも約9.0ksi(約62.05MPa)、最も好ましくは少なくとも約11.0ksi(約75.84MPa)の降伏応力を有する。
【0085】
本発明の布帛を様々に応用して、周知の技術により可撓性の軟質装甲物品及び剛性の硬質装甲物品を含む、多種多様な弾道抵抗性物品を形成することができる。例えば、弾道抵抗性物品を形成するのに適切な技術は、例えば、米国特許第4,623,574号、同第4,650,710号、同第4,748,064号、同第5,552,208号、同第5,587,230号、同第6,642,159号、同第6,841,492号、及び同第6,846,758号に記載され、これらはすべて、本明細書に矛盾のない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。本複合材料は、硬質装甲、並びに硬質装甲物品を作製する工程で形成される成形又は非成形の組立部品中間体の形成に特に有用である。「硬質」装甲とは、ヘルメット、軍事車両用板、又は防護遮蔽体等の物品を指し、十分な機械強度を有しているので、相当量の応力がかかったときにも構造の剛性を維持し、崩れることなく自立できる。このような硬質物品は、好ましくは、高引張弾性結合剤材料も用いて形成するが、これに限定されない。
【0086】
この構造体は、複数の個別シートに切り分けて積み重ねて物品にすることができ、又は前駆体を形成してから、その前駆体を使用して物品を形成することもできる。そのような技術は当技術分野で周知である。本発明の最も好ましい態様においては、それぞれが圧密化された複数の繊維プライを含む複数の繊維層が提供され、熱可塑性重合体が、前記複数の繊維プライを圧密化する圧密化工程の前、その間、又はその後のいずれかの時点でそれぞれの繊維層の少なくとも一方の表面に結合し、続いて、前記複数の繊維層を圧密化して装甲物品又は装甲物品の組立部品にする別の圧密化工程によって、前記複数の繊維層を統合する。
【0087】
弾道貫通抵抗性及び裏面変形量の両方を含む、本発明の繊維複合材料の弾道抵抗特性は、当技術分野で周知の技術に従って測定することができる。
以下の実施例は本発明を例示するためのものである。
【0088】
実施例
繊維仕上げ剤の除去及び任意のその他の繊維表面処理の、種々の複合材料の層間重ねせん断強度及び裏面変形量等の曲げ特性に及ぼす影響を評価し、表2A及び表2Bに示す結果を得た。繊維加工技術は、次のように行った。
【0089】
繊維仕上げ剤除去
複数のマルチフィラメント繊維を複数の繊維糸巻から展開し(マルチフィラメント繊維当たり1つの糸巻)、次いで、固定された平行櫛(collimating comb)に通し、繊維を等間隔の繊維ウェブに編成した。次いで繊維ウェブを、脱イオン水を含む予備浸漬水浴に約18秒の滞留時間で通した。繊維は予備浸漬水浴を出た後、1列の30個の水ノズルによって洗浄された。各々の水ノズルの水圧は、ノズル当たり毎分約0.5ガロンの水の流量で約42psiであった。ノズルから出た水は比較的平坦な流れとして形成され、繊維面における水の接触角は、隣接するノズルから放出される流れの入射角に対して0°又は30°のいずれかであった。水温の測定値は28.9℃であった。予備浸漬水浴及び1列の水ノズルを通る線速度は、約4m/分〜約20m/分の範囲であった。浸漬浴の水及びノズルへ供給する水を、最初に別の脱イオン装置を通すことによって脱イオン化した。洗浄した繊維を次いで乾燥し、更なる処理のために搬送した。
【0090】
表1は、洗浄の特定の可変因子が、繊維から除去される仕上げ剤の量にどのように影響するかを説明するためのみに提供された代表的な例をまとめたものである。各試料は、1つの試料糸巻で束ねた4つの端部から成っていた。各試料は試料当たり総計60gの繊維となる少なくとも400フィートで行った。繊維表面の%残留物は、表内の指定された条件に従った洗浄後に繊維表面に残留している仕上げ剤の量の重量測定による測定値を示す。重量測定値は未洗浄対照繊維の表面に存在する仕上げ剤の量との比較に基づいている。
【0092】
コロナ処理
18インチ幅の洗浄済繊維ウェブを、連続的に約15フィート/分の速度で30インチ幅の電極を有するコロナ処理機(2kWの電力に設定)に通した。この結果、繊維にワット密度での測定値で2000ワット (2.5フィート×15−FPM)又は53ワット
/平方フィート/分で印加された繊維領域全体に渡る電力分布が生じる。コロナ領域内の繊維の滞留時間は約2秒であった。処理は標準大気圧で行った。
【0093】
プラズマ処理
29インチ幅の洗浄済の繊維ウェブを、連続的に約12フィート/分の速度で29インチ幅の電極を有する大気プラズマ処理機(Enercon Industries Corp.社製のモデル:Enercon Plasma3 Station Model APT12DF-150/2、2kWの電力に設定)を通過させた。この結果、繊維にワット密度での測定値で2000ワット(29インチ×12−FPM)又は67ワット/平方フィート/分で印加された繊維領域全体に渡る電力分布が生じる。プラズマ処理機内の繊維の滞在時間は約2秒であった。処理は標準大気圧で行った。
【0094】
層間重ねせん断測定
以下に示す本発明の実施例すべてにおいて、不織繊維層について重ねせん断試験を行い、2つの積層する2−プライまたは4−プライ不織繊維層間の1インチの重なり接続部における層間重ねせん断強度を測定した。2−プライ不織繊維層はそれぞれ、0°で配向した第1繊維プライと90°で配向した第2繊維プライを含むものであった。4−プライ不織繊維層はそれぞれ、2−プライの構造に等しいが、4プライを有する0°/90°/0°/90°構造を含むものであった。被検複合材料の繊維を様々な高分子結合剤(高分子マトリックス)材料に包埋した。各複合材料は、異なるアニオン性脂肪族ポリエステル系ポリウレタン被覆材をそれぞれが繊維表面に含む、同種のポリエチレン繊維で構成されていた。繊維処理のみを可変因子として繊維処理の効果を示すために種々の処理を比較する。重なり接続部は、2−プライまたは4−プライ繊維層を温度約270°F(132℃)および圧力約500psiで約10分間積層することによって形成した。各実施例の重ねせん断試験は、別段の指定のない限りASTM D5868の条件の通り、約70°Fの室温で実施した。試験は、Instron 5585万能試験機を使用して実施した。
【0095】
V
50測定
V
50データは、公知の標準化された手法で、特に国防総省の試験方法標準MIL−STD−662Fに準拠して取得した。
【0096】
裏面変形量測定
軟質装甲のBFSの標準の測定法は、NIJ標準−0101.04、種別IIIAで概説され、装甲試料を変形可能な粘土裏当て材の表面と接触させて置く。このNIJ法は、使用者の体に直接又は極めて近くに存在する装甲について現場使用における着弾の際に予期される実際のBFSの妥当な近似や予測を得るために通常使用される。しかしながら、使用者の体や頭の直接表面や極めて近くに存在しない装甲については、変形可能な粘土裏当て材の表面と装甲との間に間隔を置くことによって実際のBFSのより良い近似や予測を得る。従って、表2Aに示した裏面変形量データは、NIJ標準−0101.04、種別IIIAの方法では測定しなかった。それに代わり、NIJ標準−0101.04、種別IIIAの方法に類似した新しい方法を採用したが、その方法は、複合材料物品を平坦な粘土塊に直接置くのではなく、複合材料と粘土塊の間に特注の機械加工したスペーサー部材を挿入することによって、複合材料を粘土塊から1/2インチ(12.7mm)離間した。特注で機械加工したスペーサー部材は、枠とその枠で画定される内部空洞を有し、粘土は空洞を通して露出しており、スペーサーは粘土の前面と直接接触して配置されていた。発射体は、スペーサーの内部空洞に対応する目標位置を狙い複合材料物品に発射した。発射体はスペーサーの内部空洞に対応する位置で複合材料物品に激突し、各々の発射体衝撃によって、粘土に測定可能な窪みが生じる。表2AのBFS測定値の全ては、この方法に準拠した窪みの深さのみを指して、スペーサー部材の厚みは考慮に入れておらず、即ち、表2AのBFS測定値は、複合材料と粘土の間の実際の距離は含まない。
【0097】
層間剥離測定
表2Aの層間剥離は、裏打ち材の窪みの深さではなく、実際の試験板の背面変形の深さの測定を指す。これは、測定されている粘土の窪みではないので「層間剥離」と謂う。層
間剥離のこの測定値は、発射体の衝突後、衝突の領域の布帛は部分的に収縮するので、BFS測定値と1/2インチ(12.7mm)の空隙との総計の深さよりも小さくなる。層間剥離測定は前記収縮後に行い、一方、本明細書に記載の空隙法によるBFS測定は布帛の裏面変形の最大値を記録している。変形後の前記収縮の測定は、典型的には、板の断面を切り、板の損傷を受けていない裏面の平面から変形した領域の最外周部までの深度を測定する。例えば、BFSは、2.0ポンド/平方フィート(psf)及び53g/m
2(gsm)の繊維面密度(平行繊維の単一プライ、即ちユニテープの面密度)を有する12インチ×12インチの正方形試料に対して測定した。各実施例では、BFSは、約1430フィート/秒(fps)±30fpsの速度で発射された124−グレイン、9mmFMJRN発射体に対して測定した。
【0099】
表2Aは、未水洗及び未処理の繊維で形成した布帛を、様々な処理を施した繊維で形成した布帛に対して比較した場合の実測したBFSと層間剥離の差を示す。作製物I〜VIの各々は、異なるアニオン性脂肪族ポリエステル系ポリウレタン被覆材をそれぞれが繊維表面に含む同種のポリエチレン繊維を含む。(BFS+1/2インチ(12.7mm)の空隙−層間剥離)を示した表2Aの最後の2列は、布帛の収縮量を特定して、現場で使用する硬質装甲のBFSの最大予測値を測定する空隙スペーサー測定法の高い精度を示している。
【0101】
表2Bは、繊維処理による弾道貫通抵抗(V
50)及び重ねせん断特性の違いを示している。
本発明を好適な態様を参照して具体的に表示・説明してきたが、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく様々な改変及び修飾をし得ることが、当業者には容易である。請求の範囲は、開示される態様、上記で考察されたそれらの改変物、及びそれらのすべての均等物を包含するものとする。
[1]複数の隣接する繊維層を含む繊維複合材料であって、各繊維層が重合体材料で少なくとも部分的に覆われている表面を有する繊維を含み、前記繊維の大部分は繊維表面仕上げ剤を含まず、前記繊維複合材料の隣接する繊維層間の層間重ねせん断強度が、繊維表面仕上げ剤で主として覆われている繊維表面を有し、このような繊維表面仕上げ剤が繊維表面と重合体材料の間に存在する比較用繊維複合材料の隣接する繊維層間の層間重ねせん断強度より高い、繊維複合材料。
[2]前記複合材料が、およそ室温で少なくとも約170重量ポンド(lbf)の繊維層間の層間重ねせん断強度を有する、[1]に記載の繊維複合材料。
[3]前記複合素材が圧密化した複数の交差した一方向の繊維プライを含み、前記重合体材料が少なくとも1種の熱可塑性重合体を含む、[2]に記載の繊維複合材料。
[4]前記重合体材料が前記繊維表面に実質的に直接接触するように、前記繊維表面が前記繊維表面と前記重合体材料の間に実質的に繊維表面仕上げ剤を含まない、[1]に記載の繊維複合材料。
[5]約3,750g/m
2(0.75psf)〜約12,500g/m
2(2.50psf)の複合材料面密度を有する、[1]に記載の繊維複合材料。
[6]約427m/s〜約445m/s(1430フィート/秒(fps)±30fps)の速度で発射された124−グレイン、9mmFMJ RN型発射体が衝突したとき、
面密度2.0psfの複合材料について測定される約8mm未満の裏面変形量を有する、[1]に記載の繊維複合材料。
[7]およそ室温で少なくとも約170重量ポンド(lbf)の繊維層間の層間重ねせん断強度を有する、[6]に記載の繊維複合材料。
[8]ポリエチレン繊維を含む、[7]に記載の繊維複合材料。
[9]圧密化した複数の交差した一方向の繊維プライを含み、前記重合体材料が少なくとも1種の熱可塑性重合体を含む、[7]に記載の繊維複合材料。
[10]前記重合体材料が前記繊維表面に実質的に直接接触するように、前記繊維表面が前記繊維表面と前記重合体材料の間に実質的に繊維表面仕上げ剤を含まない、[6]に記載の繊維複合材料。
[11]およそ室温で少なくとも約170重量ポンド(lbf)の繊維層間の層間重ねせん断強度を有し、約427m/s〜約445m/s(1430フィート/秒(fps)±30fps)の速度で発射された124−グレイン、9mmFMJ RN型発射体が衝突
したとき、面密度2.0psfの複合材料について測定される約8mm未満の裏面変形量を有する、[6]に記載の繊維複合材料。
[12]少なくとも2つの隣接する繊維層を含む繊維複合材料を形成する方法であって、各繊維層が重合体材料で少なくとも部分的に覆われている表面を有する繊維を含み、前記繊維が、前記重合体材料が繊維表面と主として直接接触するように大部分は繊維表面仕上げ剤を含まず、前記複合材料の隣接する繊維層間の層間重ねせん断強度がおよそ室温で少なくとも約170重量ポンド(lbf)であり、
該方法が、
大部分は繊維表面仕上げ剤を含まない表面を有する複数の重合体繊維を用意する工程、
その後塗布される重合体材料の繊維表面への表面吸着性、結合、または接着を向上させるように、繊維表面を任意選択で処理する工程、
重合体材料を前記繊維の少なくとも一部分に塗布し、それによって重合体材料を繊維の表面上または表面に吸着、結合または接着させる工程、
前記重合体材料を前記繊維に塗布する前または後に、複数の繊維層を前記繊維から製造する工程、及び
前記複数の繊維層を統合して、繊維複合材料を製造する工程、
を含む方法。
[13]前記繊維表面を処理し、続いて塗布する重合体材料の繊維表面に対する前記表面吸着、結合又は接着を向上させる前記任意の工程を行う、[12]に記載の方法。
[14]前記繊維処理がプラズマ処理又はコロナ処理を含む[13]に記載の方法。
[15]複数の隣接する繊維層を含む繊維複合材料であって、各繊維層は重合体材料で少なくとも部分的に覆われている表面を有する繊維を含み、前記繊維は、前記重合体材料が繊維表面と少なくとも部分的に直接接触しているように繊維表面仕上げ剤を少なくとも部分的に含まず、前記繊維複合材料の隣接する繊維層間の層間重ねせん断強度は、繊維表面と少なくとも部分的に直接接触していない重合体材料を含む比較用の繊維複合材料の隣接する繊維層間の層間重ねせん断強度より高い、繊維複合材料。