【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記網膜誘導培地が、WNT経路阻害剤、TGFβ経路阻害剤、BMP経路阻害剤およびインスリン成長因子1(IGF1)を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
工程(e)に続いて前記RPE細胞を解離し、該RPE細胞を再播種し、MEK阻害剤を含む前記RPE成熟培地中で該RPE細胞を培養することをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
N−(6−メチル−2−ベンゾチアゾリル)−2−[(3,4,6,7−テトラヒドロ−4−オキソ−3−フェニルチエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル)チオ]−アセトアミド(IWP2)および/または4−(1,3,3a,4,7,7a−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−4,7−メタノ−2H−イソインドール−2−イル)−N−8−キノリニル−ベンズアミド(endo−IWR1)を含む前記RPE成熟培地中で前記RPE細胞を培養することをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
前記WNT経路阻害剤が、N−(2−アミノエチル)−5−クロロイソキノリン−8−スルホンアミドジヒドロクロリド(CKI−7)、N−(6−メチル−2−ベンゾチアゾリル)−2−[(3,4,6,7−テトラヒドロ−4−オキソ−3−フェニルチエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル)チオ]−アセトアミド(IWP2)、N−(6−メチル−2−ベンゾチアゾリル)−2−[(3,4,6,7−テトラヒドロ−3−(2−メトキシフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル)チオ]−アセトアミド(IWP4)、2−フェノキシ安息香酸−[(5−メチル−2−フラニル)メチレン]ヒドラジド(PNU74654)2,4−ジアミノ−キナゾリン、ケルセチン、3,5,7,8−テトラヒドロ−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−チオピラノ[4,3−d]ピリミジン−4−オン(XAV939)、2,5−ジクロロ−N−(2−メチル−4−ニトロフェニル)ベンゼンスルホンアミド(FH535)、N−[4−[2−エチル−4−(3−メチルフェニル)−5−チアゾリル]−2−ピリジニル]ベンズアミド(TAK715)、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)または分泌型Frizzled関連タンパク質(SFRP1)1である、請求項6または7に記載の方法。
前記TGFβ経路阻害剤が、4−[4−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−5−(2−ピリジニル)−1H−イミダゾール−2−イル]ベンズアミド(SB431542)、6−[2−(1,1−ジメチルエチル)−5−(6−メチル−2−ピリジニル)−1H−イミダゾール−4−イル]キノキサリン(SB525334)、2−(5−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−2−イエリ−ブチル−3H−イミダゾール−4−イル)−6−メチルピリジン塩酸塩水和物(SB−505124)、4−(5−ベンゾール[1,3]ジオキソール−5−イル−4−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)−ベンズアミド水和物、4−[4−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−5−(2−ピリジニル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ベンズアミド水和物、左右決定因子(Lefty)、3−(6−メチル−2−ピリジニル)−N−フェニル−4−(4−キノリニル)−1H−ピラゾール−1−カルボチオアミド(A83−01)、4−[4−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−6−イル)−5−(2−ピリジニル)−1H−イミダゾール−2−イル]ベンズアミド(D4476)、4−[4−[3−(2−ピリジニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−ピリジニル]−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−ベンズアミド(GW788388)、4−[3−(2−ピリジニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−キノリン(LY364847)、4−[2−フルオロ−5−[3−(6−メチル−2−ピリジニル)−1H−ピラゾール−4−イル]フェニル]−1H−ピラゾール−1−エタノール(R268712)または2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジン(RepSox)である、請求項6または7に記載の方法。
前記MEK阻害剤が、N−[(2R)−2,3−ジヒドロキシプロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−[(2−フルオロ−4−ヨードフェニル)アミノ]−ベンズアミド(PD0325901)、N−[3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨードアニリノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル]アセトアミド(GSK1120212)、6−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−7−フルオロ−N−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルベンゾイミダゾール−5−カルボキサミド(MEK162)、N−[3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨードアニリノ)−6−メトキシフェニル]−1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパン−1−スルホンアミド(RDEA119)または6−(4−ブロモ−2−クロロアニリノ)−7−フルオロ−N−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルベンゾイミダゾール−5−カルボキサミド(AZD6244)である、請求項7または8に記載の方法。
前記BMP経路阻害剤が、4−(6−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル)キノリンヒドロクロリド(LDN193189)、6−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−3−(4−ピリジニル)−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンジヒドロクロリド(ドルソモルフィン)、4−[6−[4−(1−メチルエトキシ)フェニル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル]−キノリン(DMH1)、4−[6−[4−[2−(4−モルホリニル)エトキシ]フェニル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル]キノリン(DMH−2)または5−[6−(4−メトキシフェニル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル]キノリン(ML347)である、請求項6または7に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
例示的な実施形態の説明
本開示の特定の態様は、多能性幹細胞の出発細胞懸濁物、好ましくは、多能性幹細胞の本質的に単一細胞懸濁物からRPE細胞集団を産生するための方法を提供することによって、現状技術に関するいくつかの主要な問題を克服する。RPE細胞は、ES細胞およびiPSC細胞などの多能性幹細胞から誘導され得る;しかしながら、現在の方法は、胚様体の出発集団に依存する。いくつかの実施形態において、本開示は、胚様体を使用せずに、多能性幹細胞(PSC)を機能的成熟RPE細胞に分化させる高効率かつ再現性がある方法を提供する。さらなる実施形態および利点は、以下に記載されている。
I.定義
【0029】
用語「精製された」は、絶対的な純度を必要としない;むしろ、それは、相対的な用語として意図される。したがって、精製された細胞集団は、約90%超、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%純粋であるか、または最も好ましくは他の細胞型を本質的に含まない。
【0030】
本明細書中で使用されるとき、特定の成分に関して「本質的に」または「本質的に含まない」は、本明細書中では、いかなる特定の成分も組成物に意図的に配合されておらず、および/または夾雑物としてもしくは微量でのみ存在することを意味するために使用される。したがって、組成物の意図しないいかなる混入に起因する特定の成分の総量は、0.05%よりかなり少なく、好ましくは0.01%未満である。最も好ましいのは、標準的な分析方法を用いて特定の成分の量が検出され得ない組成物である。
【0031】
本明細書中で使用されるとき、本明細書では「a」または「an」は、1つまたはそれより多い、を意味し得る。本明細書で使用されるとき、請求項(複数可)において、単語「含む(comprising)」とともに使用されるとき、単語「a」または「an」は、1つ、または2つ以上を意味し得る。
【0032】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替物のみを指すことが明確に示されない限り、または該代替物が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物ならびに「および/または」のみを指す定義を支持する。本明細書中で使用されるとき、「別の」は、少なくとも第2のまたはそれを超えるものを意味し得る。
【0033】
本出願を通じて、用語「約」は、値が、値を決定するために使用されるデバイス、方法の固有の誤差変動、または研究対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0034】
用語「細胞」は、本明細書中では、独立して複製し得る生物の構造および機能単位であって、膜によって囲まれており、生体分子および遺伝物質を含有する生物の構造および機能単位を指すために使用される。本明細書中で使用される細胞は、天然に存在する細胞または人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝的に改変された細胞など)であり得る。
【0035】
用語「細胞集団」は、本明細書中では、典型的には共通の型の細胞の群を指すために使用される。細胞集団は、共通の前駆体に由来し得るか、または1つを超える細胞型を含み得る。「富化」細胞集団は、出発集団におけるその細胞型の割合よりも大きい割合の特定の細胞型を含有する出発細胞集団(例えば、未分画の異種細胞集団)に由来する細胞集団を指す。細胞集団は、1つまたはそれを超える細胞型が富化され、1つまたはそれを超える細胞型が枯渇され得る。
【0036】
用語「幹細胞」は、本明細書中では、適切な条件下で多様な特殊化した細胞型に分化することができ、他の適切な条件下では、自己複製して本質的に未分化の多能性状態であり続けることができる細胞を指す。用語「幹細胞」はまた、多能性細胞、複能性細胞、前駆体細胞および前駆細胞を包含する。例示的なヒト幹細胞は、骨髄組織から得られる造血幹細胞もしくは間葉系幹細胞、胚組織から得られる胚性幹細胞、または胎児の生殖器組織から得られる胚性生殖細胞から得られ得る。例示的な多能性幹細胞はまた、多能性に関連する特定の転写因子の発現によってそれらを多能性状態に再プログラミングすることによって、体細胞から産生され得る;これらの細胞は、「人工多能性幹細胞」または「iPSC」と称される。
【0037】
用語「多能性」は、胚体外細胞または胎盤細胞を除いて、生物におけるすべての他の細胞型に分化する細胞の特性を指す。多能性幹細胞は、長期間培養した後であっても、3つの胚葉すべての細胞型(例えば、外胚葉細胞型、中胚葉細胞型および内胚葉細胞型)に分化することができる。多能性幹細胞は、胚盤胞の内部細胞塊に由来する胚性幹細胞である。他の実施形態において、多能性幹細胞は、体細胞を再プログラミングすることによって誘導される人工多能性幹細胞である。
【0038】
用語「分化」は、特殊化していない細胞が構造特性および/または機能特性の変化を伴うより特殊化した型になるプロセスを指す。成熟細胞は、典型的には、変化した細胞構造および組織特異的タンパク質を有する。より具体的には、本方法との関連では、前記RPE細胞が成熟最終分化細胞であることを示す特徴を有する網膜色素上皮(RPE)細胞の細胞型を獲得するヒト幹細胞のプロセスを示す。
【0039】
本明細書中で使用されるとき、「未分化」は、胚または成体起源の最終分化細胞と明確に区別可能な未分化細胞の特徴的マーカーおよび形態学的特徴を示す細胞を指す。
【0040】
「胚様体(EB)」は、内胚葉、中胚葉および外胚葉の細胞に分化し得る多能性幹細胞の凝集体である。多能性幹細胞が凝集し、懸濁物中のEBの非接着性培養が可能になると、スフェロイド構造が形成される。
【0041】
「単離された」細胞は、生物または培養物中の他の細胞から実質的に分離または精製されている。単離された細胞は、例えば、少なくとも99%、少なくとも98%純粋、少なくとも95%純粋または少なくとも90%純粋であり得る。
【0042】
「胚」は、接合体または人工的に再プログラミングされた核を有する活性化卵母細胞の1回またはそれを超える分裂によって得られる細胞塊を指す。
【0043】
「胚性幹(ES)細胞」は、初期段階の胚、例えば胚盤胞期の内部細胞塊から得られるか、または人工的手段(例えば、核移植)によって産生される未分化多能性細胞であって、胚または成体における任意の分化細胞型(生殖細胞(例えば、精子および卵子)を含む)を生じさせ得る未分化多能性細胞である。
【0044】
「人工多能性幹細胞(iPSC)」は、因子(本明細書中では、再プログラミング因子と称される)の組み合わせを発現させるかまたはその発現を誘導することによって体細胞を再プログラミングすることによって作製される細胞である。iPSCは、胎児体細胞、出生後体細胞、新生児体細胞、幼若体細胞または成体体細胞を使用して作製され得る。ある特定の実施形態において、体細胞を多能性幹細胞に再プログラミングするために使用され得る因子としては、例えば、Oct4(Oct3/4と称されることもある)、Sox2、c−MycおよびKlf4、NanogおよびLin28が挙げられる。いくつかの実施形態において、体細胞は、少なくとも2つの再プログラミング因子、少なくとも3つの再プログラミング因子または4つの再プログラミング因子を発現させて、体細胞を多能性幹細胞に再プログラミングすることによって再プログラミングされる。
【0045】
「対立遺伝子」は、遺伝子の2つまたはそれを超える形態の一方を指す。ヒトなどの二倍体生物は、2コピーの各染色体を含有するので、それぞれに1つの対立遺伝子を有する。
【0046】
用語「ホモ接合性」は、特定の遺伝子座において2つの同じ対立遺伝子を含有すると定義される。用語「ヘテロ接合性」は、特定の遺伝子座において2つの異なる対立遺伝子を含有すると定義される。
【0047】
「ハプロタイプ」は、単一染色体に沿った複数の遺伝子座における対立遺伝子の組み合わせを指す。ハプロタイプは、単一染色体上の一塩基多型(SNP)のセットおよび/または主要組織適合性複合体中の対立遺伝子に基づき得る。
【0048】
本明細書中で使用されるとき、用語「ハプロタイプ一致」は、細胞(例えば、iPSC細胞)および処置されている被験体が1つまたはそれを超える主要組織適合性遺伝子座ハプロタイプを共有することと定義される。被験体のハプロタイプは、当技術分野で周知のアッセイを使用して容易に決定され得る。ハプロタイプ一致iPSC細胞は、自己または同種であり得る。組織培養で成長させ、RPE細胞に本質的に分化した自己細胞は、被験体にハプロタイプ一致である。
【0049】
「実質的に同じHLA型」は、ドナーの体細胞に由来するiPSCの分化を誘導することによって得られた移植細胞を患者に移植する場合、それらを生着させ得る程度に、ドナーのHLA型が患者のものと一致することを示す。
【0050】
「スーパードナー」は、本明細書中では、特定のMHCクラスIおよびII遺伝子についてホモ接合性の個体をいう。これらのホモ接合性個体はスーパードナーとして機能し得、それらの細胞(それらの細胞を含む組織および他の材料を含む)は、そのハプロタイプについてホモ接合性またはヘテロ接合性のいずれかの個体に移植され得る。スーパードナーは、それぞれHLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQ遺伝子座(複数可)対立遺伝子についてホモ接合性であり得る。
【0051】
「フィーダーフリー」または「フィーダー非依存性」は、本明細書中では、フィーダー細胞層の代替品としてサイトカインおよび成長因子(例えば、TGFβ、bFGF、LIF)を補充した培養を指すために使用される。したがって、「フィーダーフリー」またはフィーダー非依存性培養系および培地は、未分化および増殖状態の多能性細胞を培養および維持するために使用され得る。いくつかの場合では、フィーダーフリー培養物は、動物ベースのマトリックス(例えば、MATRIGEL(商標))を利用するか、またはフィブロネクチン、コラーゲンもしくはビトロネクチンなどの基材上で成長させる。これらのアプローチにより、マウス線維芽細胞「フィーダー層」を必要とせずに、ヒト幹細胞は、本質的に未分化状態であり続けることが可能になる。
【0052】
「フィーダー層」は、本明細書中では、培養皿の底面上などの細胞のコーティング層と定義される。フィーダー細胞は、培養培地中に栄養素を放出し、多能性幹細胞などの他の細胞が付着し得る表面を提供し得る。
【0053】
培地、細胞外マトリックスまたは培養条件に関して使用されるとき、用語「定義された」または「十分に定義された」は、ほぼすべての成分の化学組成および量が既知である培地、細胞外マトリックスまたは培養条件を指す。例えば、定義された培地は、ウシ胎仔血清、ウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンなどの定義されていない因子を含有しない。一般に、定義された培地は、組換えアルブミン、化学的に定義された脂質、および組換えインスリンが補充された基礎培地(例えば、アミノ酸、ビタミン、無機塩、バッファ、抗酸化剤およびエネルギー源を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、F12、またはロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)1640)を含む。例示的な十分に定義された培地は、Essential 8(商標)培地である。
【0054】
培地、細胞外マトリックスまたは培養条件に関して使用されるとき、用語「ゼノフリー(XF)」は、異種動物由来成分を本質的に含まない培地、細胞外マトリックスまたは培養条件を指す。ヒト細胞の培養では、マウスなどの非ヒト動物の任意のタンパク質は異種成分である。ある特定の態様において、ゼノフリーマトリックスは、いかなる非ヒト動物由来成分も本質的に含み得ないので、マウスフィーダー細胞またはMATRIGEL(商標)は除外される。MATRIGEL(商標)は、ラミニン(主要成分)、コラーゲンIV、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびエンタクチン/ニドゲンを含むように、Engelbreth−Holm−Swarm(EHS)マウス肉腫(細胞外マトリックスタンパク質が豊富な腫瘍)から抽出された可溶化基底膜調製物である。
【0055】
「KNOCKOUT(商標)血清代替品」は、本明細書中では、培養において幹細胞などの未分化細胞を成長および維持するために最適化された無血清調合物を指す。
【0056】
「プレコンフルエント」は、細胞によって覆われている培養物表面の割合が約60〜80%である細胞培養物を指す。通常、プレコンフルエントは、培養物表面の約70%が細胞によって覆われている培養物を指す。
【0057】
「網膜」は、眼の内面を覆う組織の光感受性層を指す。
【0058】
「網膜色素上皮」は、血管が充満した層である脈絡膜と、網膜との間の色素細胞の単層を指す。
【0059】
「網膜系細胞」は、本明細書中では、RPE細胞を生じさせ得るか、またはRPE細胞に分化し得る細胞を指す。
【0060】
「網膜誘導培地(RIM)」は、本明細書中では、WNT経路阻害剤およびBMP経路阻害剤を含む成長培地であって、網膜系細胞へのPSCの分化をもたらし得る成長培地を指す。RIMはまた、TGFβ経路阻害剤を含む。
【0061】
「網膜分化培地(RDM)」は、本明細書中では、WNT経路阻害剤、BMP経路阻害剤およびMEK阻害剤を含む培地であって、網膜細胞を分化させる培地と定義される。RDMはまた、TGFβ経路阻害剤を含む。
【0062】
「網膜培地(RM)」は、網膜細胞の培養のための成長培地であって、アクチビンAおよびニコチンアミドを含む成長培地と定義される。
【0063】
「RPE成熟培地(RPE−MM)」は、本明細書中では、RPE細胞の成熟のための培地であって、タウリンおよびヒドロコルチゾンを含む培地を指す。RPE−MMはまた、トリヨードチロニンを含む。RPE−MMはまた、PD0325901またはPGE2を含み得る。
【0064】
「成熟」RPE細胞は、本明細書中では、Pax6などの未成熟RPEマーカーの発現がダウンレギュレートしているRPE細胞であって、RPE65などの成熟RPEマーカーの発現がアップレギュレートしているRPE細胞を指す。
【0065】
RPE細胞「成熟」は、本明細書中では、成熟RPE細胞を生成するようにRPE発達経路をモジュレートするプロセスを指す。例えば、繊毛機能の調整は、RPE成熟をもたらし得る。
【0066】
本明細書中で使用される「治療有効量」は、疾患または状態の処置のために被験体に投与される場合に、このような処置を達成するために十分な化合物の量を指す。
【0067】
「インデューサー」は、本明細書中では、遺伝子発現を制御する(例えば、細胞内の遺伝子を活性化する)分子と定義される。インデューサーは、抑制因子または活性化因子に結合し得る。インデューサーは、抑制因子を無効化することによって機能する。
II.多能性幹細胞
A.胚性幹細胞
【0068】
ES細胞は、胚盤胞の内部細胞塊から誘導され、高いインビトロ分化能力を有する。ES細胞は、発生中の胚の外側栄養外胚葉層を取り出し、次いで、非成長細胞のフィーダー層上で内部細胞塊(inner mass cells)を培養することによって単離され得る。再播種された細胞は増殖し続け、ES細胞の新たなコロニーを生成し得、これを取り出し、解離し、再播種し、成長させ得る。未分化ES細胞を「継代培養」するこのプロセスを多数回反復して、未分化ES細胞を含有する細胞株を産生し得る(米国特許第5,843,780号;米国特許第6,200,806号;米国特許第7,029,913号)。ES細胞は、それらの多能性を維持しながら増殖する潜在力を有する。例えば、ES細胞は、細胞に関する、および細胞分化を制御する遺伝子に関する研究において有用である。遺伝子操作および選択と組み合わせたES細胞の多能性は、トランスジェニックマウス、キメラマウスおよびノックアウトマウスの作製によって、インビボにおける遺伝子分析研究に使用され得る。
【0069】
マウスES細胞を作製するための方法は、周知である。1つの方法では、129系統のマウス由来の着床前胚盤胞をマウス抗血清で処理して栄養外胚葉を除去し、ウシ胎仔血清を含む培地中の、化学的に不活化したマウス胎仔線維芽細胞のフィーダー細胞層上で内部細胞塊を培養する。発生する未分化なES細胞のコロニーは、ウシ胎仔血清の存在下のマウス胎仔線維芽細胞のフィーダー層上で継代培養されることにより、ES細胞の集団が生成される。いくつかの方法では、マウスES細胞は、サイトカインである白血病抑制因子(LIF)を血清含有培養培地に加えることによって、フィーダー層の非存在下において成長し得る(Smith,2000)。他の方法では、マウスES細胞は、骨形態形成タンパク質およびLIFの存在下の無血清培地中で成長し得る(Yingら、2003)。
【0070】
ヒトES細胞は、精子と卵細胞との融合、核移植、発病機序によって産生される接合体もしくは胚盤胞期哺乳動物胚から、または以前に記載されている方法(Thomson and Marshall,1998;Reubinoffら、2000)によってクロマチンを再プログラミングし、続いて再プログラミングしたクロマチンを原形質膜に取り込ませて胚性細胞を産生させることから産生または誘導され得る。1つの方法では、ヒト胚盤胞を抗ヒト血清に曝露し、栄養外胚葉細胞を溶解し、マウス胎仔線維芽細胞のフィーダー層上で培養した内部細胞塊から取り出す。さらに、内部細胞塊に由来する細胞集塊を化学的または機械的に解離し、再播種し、未分化形態を有するコロニーをマイクロピペットによって選択し、解離し、再播種する(米国特許第6,833,269号)。いくつかの方法では、ヒトES細胞は、塩基性線維芽細胞成長因子の存在下において、線維芽細胞のフィーダー層上でES細胞を培養することによって、血清なしで成長し得る(Amitら、2000)。他の方法では、ヒトES細胞は、それらの細胞を、塩基性線維芽細胞成長因子を含む「馴化」培地の存在下においてタンパク質マトリックス(例えば、MATRIGEL
TMまたはラミニン)上で培養することによって、フィーダー細胞層なしで成長し得る(Xuら、2001)。
【0071】
ES細胞はまた、以前に記載されている方法(Thomson,and Marshall,1998;Thomsonら、1995;Thomson and Odorico,2000)によってアカゲザルおよびマーモセットを含む他の生物から、ならびに樹立されたマウス細胞株およびヒト細胞株から誘導され得る。例えば、樹立されたヒトES細胞株としては、MAOI、MA09、ACT−4、HI、H7、H9、H13、H14およびACT30が挙げられる。さらなる例として、樹立されたマウスES細胞株としては、マウス系統129胚の内部細胞塊から樹立されたCGR8細胞株が挙げられ、CGR8細胞の培養物は、フィーダー層を用いずにLIFの存在下で成長され得る。
【0072】
ES幹細胞は、転写因子Oct4、アルカリホスファターゼ(AP)、ステージ特異的胚抗原SSEA−1、ステージ特異的胚抗原SSEA−3、ステージ特異的胚抗原SSEA−4、転写因子NANOG、腫瘍拒絶抗原1−60(TRA−1−60)、腫瘍拒絶抗原1−81(TRA−1−81)、SOX2またはREX1を含むタンパク質マーカーによって検出され得る。
B.人工多能性幹細胞
【0073】
多能性の誘導は、当初は2006年にマウス細胞(Yamanakaら、2006)を使用して、および2007年にヒト細胞(Yuら、2007;Takahashiら、2007)を使用して、多能性に関連する転写因子の導入による体細胞の再プログラミングによって達成された。多能性幹細胞は、未分化状態で維持され得、ほぼあらゆる細胞型に分化することができる。iPSCの使用は、ES細胞の大規模な臨床使用に関連する倫理的および実践的な問題の大部分を回避し、iPSC由来自己移植物を有する患者は、移植片拒絶を予防するために生涯にわたる免疫抑制処置が不要であり得る。
【0074】
生殖細胞を除いて、任意の細胞がiPSCの出発点として使用され得る。例えば、細胞型は、ケラチノサイト、線維芽細胞、造血細胞、間葉細胞、肝臓細胞または胃細胞であり得る。T細胞はまた、再プログラミングのための体細胞の供給源として使用され得る(米国特許第8,741,648号)。細胞分化の程度、または細胞が収集される動物の年齢に制限はない;未分化前駆細胞(体性幹細胞を含む)および最終分化成熟細胞さえも、本明細書中に開示される方法において体細胞の供給源として使用され得る。1つの実施形態において、体細胞はそれ自体が、ヒトRPE細胞などのRPE細胞である。RPE細胞は、成体または胎児のRPE細胞であり得る。iPSCは、ヒトES細胞を特定の細胞型に分化させることが公知の条件下で成長され得、SSEA−1、SSEA−3、SSEA−4、TRA−1−60およびTRA−1−81を含むヒトES細胞マーカーを発現する。
【0075】
体細胞は、当業者に公知の方法を使用して、人工多能性幹細胞(iPSC)を産生するために再プログラミングされ得る。当業者は、人工多能性幹細胞を容易に産生し得る。例えば、米国特許出願公開第20090246875号、米国特許出願公開第2010/0210014号;米国特許出願公開第20120276636号;米国特許第8,058,065号;米国特許第8,129,187号;米国特許第8,278,620号;PCT公開第WO2007/069666号および米国特許第8,268,620号(これらは、参照により本明細書中に組み込まれる)を参照のこと。一般に、核再プログラミング因子は、体細胞から多能性幹細胞を産生するために使用される。いくつかの実施形態において、Klf4、c−Myc、Oct3/4、Sox2、NanogおよびLin28の少なくとも3つまたは少なくとも4つが利用される。他の実施形態において、Oct3/4、Sox2、c−MycおよびKlf4が利用される。
【0076】
細胞は、核再プログラミング物質(これは一般に、体細胞からiPSCを誘導することができる1つまたはそれを超える因子である)またはこれらの物質をコードする核酸(ベクターに組み込まれた形態を含む)で処理される。核再プログラミング物質は、一般に、少なくともOct3/4、Klf4およびSox2、またはこれらの分子をコードする核酸を含む。p53の機能阻害剤、L−myc、またはL−mycをコードする核酸、およびLin28もしくはLin28b、またはLin28もしくはLin28bをコードする核酸は、さらなる核再プログラミング物質として利用され得る。Nanogもまた、核再プログラミングのために利用され得る。公開されている米国特許出願第20120196360号に開示されるように、iPSCの生産のための例示的な再プログラミング因子として、(1)Oct3/4、Klf4、Sox2、L−Myc(Sox2はSoxl、Sox3、Soxl5、Soxl7またはSoxl8で置き換え可能である;Klf4はKlfl、Klf2またはKlf5で置き換え可能である);(2)Oct3/4、Klf4、Sox2、L−Myc、TERT、SV40ラージT抗原(SV40LT);(3)Oct3/4、Klf4、Sox2、L−Myc、TERT、ヒトパピローマウイルス(HPV)16 E6;(4)Oct3/4、Klf4、Sox2、L−Myc、TERT、HPV16 E7(5)Oct3/4、Klf4、Sox2、L−Myc、TERT、HPV16 E6、HPV16 E7;(6)Oct3/4、Klf4、Sox2、L−Myc、TERT、Bmil;(7)Oct3/4、Klf4、Sox2、L−Myc、Lin28;(8)Oct3/4、Klf4、Sox2、L−Myc、Lin28、SV40LT;(9)Oct3/4、Klf4、Sox2、L−Myc、Lin28、TERT、SV40LT;(10)Oct3/4、Klf4、Sox2、L−Myc、SV40LT;(11)Oct3/4、Esrrb、Sox2、L−Myc(EsrrbはEsrrgで置き換え可能である);(12)Oct3/4、Klf4、Sox2;(13)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、SV40LT;(14)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、HPVI 6 E6;(15)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、HPV16 E7;(16)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、HPV16 E6、HPV16 E7;(17)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、Bmil;(18)Oct3/4、Klf4、Sox2、Lin28(19)Oct3/4、Klf4、Sox2、Lin28、SV40LT;(20)Oct3/4、Klf4、Sox2、Lin28、TERT、SV40LT;(21)Oct3/4、Klf4、Sox2、SV40LT;または(22)Oct3/4、Esrrb、Sox2(EsrrbはEsrrgで置き換え可能である)が挙げられる。非限定的な一例では、Oct3/4、Klf4、Sox2およびc−Mycが利用される。他の実施形態において、Oct4、NanogおよびSox2が利用される。例えば、米国特許第7,682,828号(これは、参照により本明細書中に組み込まれる)を参照のこと。これらの因子としては、限定されないが、Oct3/4、Klf4およびSox2が挙げられる。他の例では、因子としては、限定されないが、Oct3/4、Klf4およびMycが挙げられる。いくつかの非限定的な例では、Oct3/4、Klf4、c−MycおよびSox2が利用される。他の非限定的な例では、Oct3/4、Klf4、Sox2およびSal4が利用される。Nanog、Lin28、Klf4またはc−Mycのような因子は再プログラミング効率を増加させ得、いくつかの異なる発現ベクターから発現され得る。例えば、EBVエレメントベースの系などの組込型ベクターが使用され得る(米国特許第8,546,140号)。さらなる態様において、再プログラミングタンパク質は、タンパク質形質導入によって体細胞に直接導入され得る。再プログラミングは、細胞と、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK−3)阻害剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MEK)阻害剤、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)受容体阻害剤またはシグナル伝達阻害剤、白血病阻害因子(LIF)、p53阻害剤、NF−κB阻害剤またはそれらの組み合わせを含む1つまたはそれを超えるシグナル伝達受容体とを接触させることをさらに含み得る。これらの制御因子は、小分子、阻害性ヌクレオチド、発現カセットまたはタンパク質因子を含み得る。事実上あらゆるiPS細胞または細胞株が使用され得ると予想される。
【0077】
これらの核再プログラミング物質のマウスおよびヒトcDNA配列は、PCT公開第WO2007/069666号(これは、参照により本明細書中に組み込まれる)において言及されているNCBIアクセッション番号を参照して利用可能である。1つまたはそれを超える再プログラミング物質またはこれらの再プログラミング物質をコードする核酸を導入するための方法は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許出願公開第2012/0196360号および米国特許第8,071,369号(これらは両方とも、参照により本明細書中に組み込まれる)に開示されている。
【0078】
誘導されたら、iPSCは、多能性を維持するために十分な培地中で培養され得る。iPSCは、米国特許第7,442,548号および米国特許公開第2003/0211603号に記載されている、多能性幹細胞、より具体的には胚性幹細胞を培養するために開発された様々な培地および技術とともに使用され得る。マウス細胞の場合、培養は、分化抑制因子として白血病阻害因子(LIF)を通常の培地に添加することによって行われる。ヒト細胞の場合、LIFに代えて、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を添加することが望ましい。当業者に公知であるように、iPSCの培養および維持のための他の方法が使用され得る。
【0079】
ある特定の実施形態において、定義されていない条件が使用され得る;例えば、幹細胞を未分化状態に維持するために、多能性細胞は、線維芽細胞フィーダー細胞上で、または線維芽細胞フィーダー細胞に曝露された培地上で培養され得る。いくつかの実施形態において、細胞は、フィーダー細胞として、放射線または抗生物質で処理して細胞分裂を終了させたマウス胎仔線維芽細胞の共存下で培養される。あるいは、多能性細胞は、定義されたフィーダー非依存性培養系、例えばTESR(商標)培地(Ludwigら、2006a;Ludwigら、2006b)またはE8(商標)培地(Chenら、2011)を使用して培養され、本質的に未分化状態に維持され得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、iPSCは、外来性核酸を発現するように(例えば、プロモーターおよび第1のマーカーをコードする核酸配列に作動可能に連結された(operaby linked)チロシナーゼエンハンサーを含むように)改変され得る。チロシナーゼ遺伝子は、例えば、2013年1月1日において利用可能であるGENBANK(登録商標)アクセッション番号22173に開示されている。この配列は、C57BL/6系統マウスの7番染色体の位置5286971−5291691(逆配向)に整列している。4721塩基対の配列は、RPE細胞における発現に十分である。Murisierら、Dev.Biol.303:838−847,2007(これは、参照により本明細書中に組み込まれる)を参照のこと。この構築物は、網膜色素上皮細胞において発現される。他のエンハンサーも利用され得る。他のRPE特異的エンハンサーとしては、D−MITF、DCT、TYRP1、RPE65、VMD2、MERTK、MYRIPおよびRAB27Aが挙げられる。適切なプロモーターとしては、限定されないが、網膜色素上皮細胞において発現される任意のプロモーター(チロシナーゼプロモーターを含む)が挙げられる。構築物はまた、他のエレメント、例えば翻訳開始のためのリボソーム結合部位(内部リボソーム結合配列)および転写/翻訳ターミネーターを含み得る。一般に、構築物で細胞をトランスフェクトすることが有利である。安定トランスフェクションのための適切なベクターとしては、限定されないが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよびセンダイウイルスが挙げられる。
【0081】
プラスミドは、いくつかの目標、例えば、制御された高コピー数の達成、および細菌におけるプラスミドの不安定性の潜在的原因の回避、およびヒト細胞を含む哺乳動物細胞における使用に適合するプラスミドを選択するための手段の提供を念頭において設計されている。ヒト細胞において使用するためのプラスミドの二要件に対して、特に注意が払われてきた。第1に、大量のDNAを産生および精製し得るように、それらは、大腸菌における維持および発酵に適切である。第2に、それらは安全であり、ヒト患者および動物における使用に適切である。第1の要件は、細菌発酵のために選択可能であり、細菌発酵中に比較的容易に安定に維持可能な高コピー数のプラスミドを要求する。第2の要件は、選択マーカーおよび他のコード配列などのエレメントに対する注意を要求する。いくつかの実施形態において、マーカーをコードするプラスミドは、(1)高コピー数の複製起点、(2)選択マーカー(例えば、限定されないが、カナマイシンによる抗生物質選択のためのneo遺伝子)、(3)チロシナーゼエンハンサーを含む転写終結配列、および(4)様々な核酸カセットを組み込むためのマルチクローニング部位;および(5)チロシナーゼプロモーターに作動可能に連結されたマーカーをコードする核酸配列から構成される。タンパク質をコードする核酸を誘導するための当技術分野で公知の多数のプラスミドベクターがある。これらとしては、限定されないが、米国特許第6,103,470号;米国特許第7,598,364号;米国特許第7,989,425号;および米国特許第6,416,998号(これらは、参照により本明細書中に組み込まれる)に開示されているベクターが挙げられる。
【0082】
ウイルス遺伝子送達系は、RNAベースまたはDNAベースのウイルスベクターであり得る。エピソーム遺伝子送達系は、プラスミド、エプスタイン・バーウイルス(EBV)ベースのエピソームベクター、酵母ベースのベクター、アデノウイルスベースのベクター、サルウイルス40(SV40)ベースのエピソームベクター、ウシパピローマウイルス(BPV)ベースのベクターまたはレンチウイルスベクターであり得る。
【0083】
マーカーとしては、限定されないが、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質または赤色蛍光タンパク質)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼまたはホタル/ウミシイタケルシフェラーゼまたはnanoluc)または他のタンパク質が挙げられる。マーカーは、タンパク質(分泌タンパク質、細胞表面タンパク質または内部タンパク質を含む;細胞によって合成されるかまたは取り込まれる);核酸(例えば、mRNAまたは酵素的に活性な核酸分子)または多糖であり得る。抗体、レクチン、プローブまたは核酸増幅反応によって検出可能な任意のこのような細胞成分であって、目的の細胞型のマーカーに特異的な細胞成分の決定因子が含まれる。マーカーはまた、生化学的アッセイもしくは酵素アッセイ、または遺伝子産物の機能に依存する生物学的応答によって同定され得る。これらのマーカーをコードする核酸配列は、チロシナーゼエンハンサーに作動可能に連結され得る。加えて、RPE分化またはRPE機能または生理機能または病態について幹細胞に影響を及ぼし得る遺伝子などの他の遺伝子が含まれ得る。したがって、いくつかの実施形態において、MITF、PAX6、TFEC、OTX2、LHX2、VMD2、CFTR、RPE65、MFRP、CTRP5、CFH、C3、C2B、APOE、APOB、mTOR、FOXO、AMPK、SIRT1−6、HTRP1、ABCA4、TIMP3、VEGFA、CFI、TLR3、TLR4、APP、CD46、BACE1、ELOLV4、ADAM10、CD55、CD59およびARMS2のうちの1つまたはそれよりも多くをコードする核酸が含まれる。
1.MHCハプロタイプ一致
【0084】
主要組織適合性複合体は、同種器官移植物の免疫拒絶の主な原因である。3つの主要クラスI MHCハプロタイプ(A、BおよびC)および3つの主要MHCクラスIIハプロタイプ(DR、DPおよびDQ)がある。HLA遺伝子座は高度に多型性であり、6番染色体上に4Mbにわたって分布している。この領域は、自己免疫疾患および感染性疾患に関連し、ドナーとレシピエントとの間のHLAハプロタイプの適合性は、移植の臨床転帰に影響を与え得るので、この領域内のHLA遺伝子をハプロタイピングする能力は臨床的に重要である。Tリンパ球に対して、MHCクラスIに対応するHLAは細胞の内側からペプチドを提示し、MHCクラスIIに対応するHLAは細胞の外側から抗原を提示する。移植片と宿主との間のMHCハプロタイプの不適合性は、移植片に対する免疫応答をトリガーし、その拒絶をもたらす。したがって、拒絶を予防するために、患者は、免疫抑制剤で処置され得る。HLA一致幹細胞株は、免疫拒絶のリスクを克服し得る。
【0085】
移植におけるHLAの重要性から、好ましいドナー−レシピエントペアを同定するために、HLA遺伝子座は、通常、血清学およびPCRによって分類される。HLAクラスIおよびII抗原の血清学的検出は、精製Tリンパ球またはBリンパ球を用いた補体媒介性リンパ球傷害性試験を使用して達成され得る。この手順は、HLA−AおよびHLA−B遺伝子座のマッチングのために主に使用される。分子ベースの組織タイピングは、多くの場合、血清学的試験よりも正確であり得る。一連のオリゴヌクレオチドプローブに対してPCR産物を試験する低分解能分子法、例えばSSOP(配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ)法は、HLA抗原を同定するために使用され得、現在、これらの方法は、クラスII−HLAタイピングに使用される最も一般的な方法である。PCR増幅用の対立遺伝子特異的プライマーを利用する高分解能技術、例えばSSP(配列特異的プライマー)法は、特異的MHC対立遺伝子を同定し得る。
【0086】
ドナー細胞がHLAホモ接合性である(すなわち、各抗原提示タンパク質について同一の対立遺伝子を含有する)場合、ドナーとレシピエントとの間のMHC適合性は有意に増加する。ほとんどの個体は、MHCクラスIおよびII遺伝子についてヘテロ接合性であるが、特定の個体は、これらの遺伝子についてホモ接合性である。これらのホモ接合性個体はスーパードナーとして機能し得、彼らの細胞から作製された移植片は、そのハプロタイプについてホモ接合性またはヘテロ接合性のいずれかであるすべての個体に移植され得る。さらに、ホモ接合性ドナー細胞が、集団において高頻度で見られるハプロタイプを有する場合、これらの細胞は、多数の個体で移植療法に適用され得る。
【0087】
したがって、iPSCは、処置すべき被験体、または患者のものと同じもしくは実質的に同じHLA型を有する別の被験体の体細胞から産生され得る。ある場合では、ドナーの主要HLA(例えば、HLA−A、HLA−BおよびHLA−DRの3つの主な遺伝子座)は、レシピエントの主要HLAと同一である。いくつかの場合では、体細胞ドナーは、スーパードナーであり得る;したがって、MHCホモ接合スーパードナーに由来するiPSCは、RPE細胞を作製するために使用され得る。したがって、スーパードナーに由来するiPSCは、そのハプロタイプについてホモ接合性またはヘテロ接合性のいずれかである被験体に移植され得る。例えば、iPSCは、HLA−AおよびHLA−Bなどの2つのHLA対立遺伝子においてホモ接合性であり得る。このように、スーパードナーから産生されるiPSCは、本明細書中に開示される方法において、多数の潜在的レシピエントに潜在的に「マッチ」し得るRPE細胞を産生するために使用され得る。
2.エピソームベクター
【0088】
ある特定の態様において、再プログラミング因子は、1つまたはそれを超える外因性エピソーム性遺伝子エレメントに含まれる発現カセットから発現される(米国特許公開第2010/0003757号(これは、参照により本明細書中に組み込まれる)を参照のこと)。したがって、iPSCは、レトロウイルスベクターエレメントまたはレンチウイルスベクターエレメントなどの外因性遺伝子エレメントを本質的に含み得ない。これらのiPSCは、染色体外複製ベクター(すなわち、エピソームベクター)(これは、エピソームとして複製することができるベクターである)を使用して外来性ベクターまたはウイルスエレメントを本質的に含まないiPSCを作製することによって調製される(参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第8,546,140号を参照のこと;Yuら、2009)。いくつかのDNAウイルス、例えばアデノウイルス、サル空胞化ウイルス40(SV40)もしくはウシパピローマウイルス(BPV)、または出芽酵母ARS(自律複製配列)含有プラスミドは、哺乳動物細胞において、染色体外的にまたはエピソームとして複製する。これらのエピソームプラスミドは、組込型ベクターに関連するすべてのこれらの欠点(Bodeら、2001)を本質的に伴わない。例えば、上記で定義されるリンパ球指向性ヘルペスウイルスベース(lymphotrophic herpes virus−based including)またはエプスタイン・バーウイルス(EBV)は、染色体外的に複製し、体細胞への再プログラミング遺伝子の送達を支援し得る。有用なEBVエレメントは、OriPおよびEBNA−1またはそれらの変異体もしくは機能的同等物である。エピソームベクターのさらなる利点は、細胞への導入後に、外因性エレメントが時間とともに消失し、これらのエレメントを本質的に含まない自己持続性iPSCをもたらすことである。
【0089】
他の染色体外ベクターとしては、他のリンパ球向性ヘルペスウイルスベースのベクターが挙げられる。リンパ球向性ヘルペスウイルスは、リンパ芽球(例えば、ヒトBリンパ芽球)において複製し、その天然の生活環の一部の間、プラスミドになる、ヘルペスウイルスである。単純ヘルペスウイルス(HSV)は、「リンパ球向性」ヘルペスウイルスではない。例示的なリンパ球向性ヘルペスウイルスとしては、EBV、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV);リスザルヘルペスウイルス(HS)およびマレック病ウイルス(MDV)が挙げられるが、これらに限定されない。エピソームベースのベクターの他の供給源も企図される(例えば、酵母ARS、アデノウイルス、SV40またはBPV)。
C.体細胞核移植
【0090】
多能性幹細胞は、体細胞核移植によって調製され得る。体細胞核移植は、ドナー核の紡錘体を含まない卵母細胞への移行を伴う。1つの方法では、アカゲザルの皮膚線維芽細胞からのドナー線維芽細胞核を、電気融合によって、紡錘体を含まない成熟中期IIのアカゲザル卵母細胞(ooctye)の細胞質に導入する(Byrneら、2007)。融合された卵母細胞は、イオノマイシンへの曝露によって活性化され、次いで、胚盤胞期までインキュベートされる。次いで、選択された胚盤胞の内部細胞塊を培養することにより、胚性幹細胞株が得られる。その胚性幹細胞株は、正常なES細胞の形態を示し、様々なES細胞マーカーを発現し、インビトロとインビボの両方において複数の細胞型に分化する。
III.網膜色素上皮細胞
【0091】
RPE細胞は、本明細書中に開示される方法において産生される。光に直接感受性である網膜の細胞は、視細胞である。光受容体は、網膜の外側部分の光感受性ニューロンであり、桿体または錐体のいずれかであり得る。光伝達(phototransduction)のプロセスでは、視細胞は、レンズによって集束された入射光エネルギーを電気シグナルに変換し、次いで、それを、視神経を介して脳に送る。脊椎動物は、錐体および桿体を含む2種類の視細胞を有する。錐体は、詳細な中心視および色視を検出するように適合されており、明るい光で十分に機能する。桿体は、周辺視および暗所視を担う。桿体および錐体からの神経シグナルは、網膜の他のニューロンによる処理を受ける。
【0092】
網膜色素上皮は、血流と網膜との間の障壁として作用し、視覚機能の維持において光受容体と密接に相互作用する。網膜色素上皮は、網膜に到達する光エネルギーを吸収するメラニンの顆粒が密集する六角細胞の単一層から構成される。特殊化したRPE細胞の主な機能としては、血液から光受容体へのグルコース、レチノールおよび脂肪酸などの栄養素の輸送;網膜下腔から血液への水、代謝最終産物およびイオンの輸送;光の吸収および光酸化に対する保護;11−シス−レチナールへのオール−トランス−レチノールの再異性化;脱落した光受容体膜のファゴサイトーシス;ならびに網膜の構造的完全性のための様々な必須因子の分泌が挙げられる。
【0093】
網膜色素上皮は、細胞レチンアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)、RPE65、ベスト卵黄様黄斑ジストロフィー遺伝子(VMD2)および色素上皮由来因子(PEDF)などのマーカーを発現する。網膜色素上皮の機能不全は、網膜色素上皮剥離、形成異常、萎縮、網膜症、網膜色素変性、黄斑ジストロフィーまたは変性などの多くの視力変化状態に関連する。
【0094】
網膜色素上皮(RPE)細胞は、それらの色素沈着、上皮形態および頂端−基底極性に基づいて特性評価され得る。分化RPE細胞は、それらの敷石状形態および色素の初期外観によって視覚的に認識され得る。加えて、分化RPE細胞は、単層全体にわたって経上皮抵抗性/TERおよび経上皮電位/TEPを有し(TER>100ohms.cm2;TEP>2mV)、頂端側から基底側に流体およびCO
2を輸送し、サイトカインの極性分泌を制御する。
【0095】
RPE細胞は、免疫細胞化学、ウエスタンブロット分析、フローサイトメトリーおよび酵素結合免疫測定(ELISA)などの方法論の使用による検出のためのマーカーとして機能し得るいくつかのタンパク質を発現する。例えば、RPE特異的マーカーとしては、細胞レチンアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)、小眼症関連転写因子(MITF)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TYRP−1)、網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)、プレメラノソームタンパク質(PMEL17)、ベストロフィン1(BEST1)およびc−mer癌原遺伝子チロシンキナーゼ(MERTK)が挙げられ得る。RPE細胞は、胚性幹細胞マーカーOct−4、nanogまたはRex−2を(いかなる検出可能なレベルでも)発現しない。具体的には、これらの遺伝子の発現は、定量的RT−PCRによって評価した場合、ES細胞またはiPSC細胞におけるよりもRPE細胞において約100〜1000倍低い。
【0096】
RPE細胞マーカーは、例えば、公的に利用可能な配列データ(GENBANK(登録商標))を使用した標準的な増幅方法において配列特異的プライマーを使用して、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ノーザンブロット分析またはドットブロットハイブリダイゼーション分析によって、mRNAレベルで検出され得る。タンパク質またはmRNAレベルで検出した場合の組織特異的マーカーの発現は、そのレベルが、未分化多能性幹細胞または他の無関係な細胞型などの対照細胞のものよりも少なくともまたは約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍または9倍、より具体的には10倍超、20倍、30倍、40倍、50倍またはそれを超える場合に陽性とみなされる。
【0097】
RPE細胞の機能不全、傷害および喪失は、加齢黄斑変性(AMD)、遺伝性黄斑変性(ベスト疾患を含む)および網膜色素変性を含む多くの眼疾患および眼障害の要因である。このような疾患の可能な処置は、このような処置を必要とする者の網膜へのRPE細胞の移植である。それらの移植によるRPE細胞の補充は、劣化を遅延、停止または逆転させ、網膜機能を改善し、このような状態から生じる失明を予防し得ると推測される。しかしながら、ヒトドナーおよび胚からRPE細胞を直接得ることは困難である。
A.PSCの胚様体からのRPE細胞の誘導
【0098】
周知の再プログラミング因子を使用して再プログラミングされたiPSCは、RPE細胞を含むニューロン系統の眼細胞を生じさせ得る(Hiramiら、2009)。PCT公開第2014/121077号(これは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)には、iPSCから産生された胚様体(EB)を懸濁培養においてWntおよびNodalアンタゴニストによって処理して、網膜前駆細胞のマーカーの発現を誘導する方法が開示されている。この公報には、RPE細胞高富化培養物へのiPSCのEBの分化プロセスによって、iPSCからRPE細胞を誘導する方法が開示されている。例えば、rho関連コイルドコイルキナーゼ(ROCK)阻害剤を添加することによって、iPSCから胚様体を産生し、2つのWNT経路阻害剤およびNodal経路阻害剤を含む第1の培地中で培養する。さらに、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を含まない第2の培地であって、Nodal経路阻害剤を含み、約20ng〜約90ngのノギンを含み、約1〜約5%のknock out血清代替品を含む第2の培地中、MATRIGEL(商標)コーティング組織培養物上にEBをプレーティングして、分化RPE細胞を形成する。アクチビンおよびWNT3aを含む第3の培地中で、分化RPE細胞を培養する。次いで、約5%の胎仔血清、カノニカルWNT阻害剤、非カノニカルWNT阻害剤ならびにソニックヘッジホッグおよびFGF経路の阻害剤を含むRPE培地中でRPE細胞を培養して、ヒトRPE細胞を産生する。
【0099】
分化細胞型の産生のためにEBを使用することにはいくつかの欠点がある。例えば、効率が変動するので、EBの産生は、一貫しない再現性のないプロセスである。iPSCまたはES細胞から産生されるEBのサイズおよび形状は均一ではなく、EBSの産生も律速な遠心分離処理を伴う。本開示は、臨床用途、研究用途または治療用途に必要なiPSCまたはES由来細胞の大規模産生を可能にする方法であって、EB非依存性の方法を提供する。
B.実質的に単一細胞PSCからのRPE細胞の誘導
【0100】
いくつかの実施形態において、ヒトiPSCなどの多能性幹細胞(PSC)の本質的に単一細胞懸濁物からRPE細胞を産生するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、いかなる細胞凝集も防止するために、PSCは、プレコンフルエントまで培養される。ある特定の態様において、PSCは、TRYPSIN(商標)またはTRYPLE(商標)などによって例示される細胞解離酵素とともにインキュベートすることによって解離される。PSCはまた、ピペッティングによって本質的に単一細胞懸濁物に解離され得る。加えて、細胞が培養容器に接着していない間に、ブレビスタチン(例えば、約2.5μM)を培地に添加して、単一細胞への解離後のPSC生存を増加させ得る。あるいは、単一細胞への解離後のPSC生存を増加させるために、ブレビスタチンに代えてROCK阻害剤が使用され得る。
【0101】
単一細胞PSCからRPE細胞を効率的に分化させるために、正確なカウントの注入密度は、RPE分化効率を増加させ得る。したがって、PSCの単一細胞懸濁物は、一般に、播種前にカウントされる。例えば、PSCの単一細胞懸濁物は、血球計または自動細胞カウンター、例えばVICELL(登録商標)またはTC20によってカウントされる。細胞は、約10,000〜約500,000個の細胞/mL、約50,000〜約200,000個の細胞/mLまたは約75,000〜約150,000個の細胞/mLの細胞密度に希釈され得る。非限定的な例では、PSCの単一細胞懸濁物は、十分に定義された培養培地、例えばESSENTIAL 8(商標)(E8(商標))培地で約100,000個の細胞/mLの密度に希釈される。
【0102】
PSCの単一細胞懸濁物が既知の細胞密度で得られたら、細胞は、一般に、適切な培養容器、例えば組織培養プレート、例えばフラスコ、6ウェルプレート、24ウェルプレートまたは96ウェルプレートに播種される。細胞(複数可)を培養するために使用される培養容器は、その中で幹細胞を培養することができる限り、フラスコ、組織培養のためのフラスコ、皿、ペトリ皿、組織培養のための皿、マルチ皿、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マルチプレート、マルチウェルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、チューブ、トレイ、CELLSTACK(登録商標)チャンバー、培養バッグおよびローラーボトルを含むことができるが、それらに特に限定されない。細胞を、培養の必要性に応じて、少なくとももしくは約0.2、0.5、1、2、5、10、20、30、40、50ml、100ml、150ml、200ml、250ml、300ml、350ml、400ml、450ml、500ml、550ml、600ml、800ml、1000ml、1500mlまたはその中の導き出せる任意の範囲の容量で培養することができる。ある特定の実施形態において、培養容器はバイオリアクターであってよく、これは、細胞が増殖できるような生物学的に活性な環境を支持するエクスビボの任意のデバイスまたは系を指し得る。バイオリアクターは、少なくとも、もしくは約2、4、5、6、8、10、15、20、25、50、75、100、150、200、500リットル、1、2、4、6、8、10、15立方メートルまたはその中の導き出せる任意の範囲の容量を有し得る。
【0103】
ある特定の態様において、iPSCなどのPSCは、効率的な分化に適切な細胞密度でプレーティングされる。一般に、細胞は、約1,000〜約75,000個の細胞/cm
2、例えば、約5,000〜約40,000個の細胞/cm
2の細胞密度でプレーティングされる。6ウェルプレートでは、細胞は、ウェル当たり約50,000〜約400,000細胞の細胞密度で播種され得る。例示的な方法では、細胞は、ウェル当たり約100,000、約150,00、約200,000、約250,000、約300,000または約350,000個の細胞、例えば、ウェル当たり約200,00個の細胞の細胞密度で播種される。
【0104】
細胞生存性を維持しながら細胞接着を促進するために、iPSCなどのPSCは、一般に、1つまたはそれを超える細胞接着タンパク質によってコーティングされた培養プレート上で培養される。例えば、好ましい細胞接着タンパク質としては、多能性細胞の成長のための固体支持体を提供する手段として培養物表面をコーティングするために使用され得る細胞外マトリックスタンパク質、例えばビトロネクチン、ラミニン、コラーゲンおよび/またはフィブロネクチンが挙げられる。用語「細胞外マトリックス」は、当技術分野で認識されている。その成分としては、以下のタンパク質:フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、テネイシン、エンタクチン、トロンボスポンジン、エラスチン、ゼラチン、コラーゲン、フィブリリン、メロシン、アンコリン、コンドロネクチン、リンクタンパク質、骨シアロタンパク質、オステオカルシン、オステオポンチン、エピネクチン、ヒアルロネクチン、ウンデュリン、エピリグリンおよびカリンの1つまたはそれよりも多くが挙げられる。例示的な方法では、PSCは、ビトロネクチンまたはフィブロネクチンでコーティングされた培養プレート上で成長される。いくつかの実施形態において、細胞接着タンパク質は、ヒトタンパク質である。
【0105】
細胞外マトリックス(ECM)タンパク質は天然起源のものであり得、ヒトもしくは動物組織から精製され得るか、またはあるいはECMタンパク質は、遺伝子操作組換えタンパク質もしくは本質的に合成物であり得る。ECMタンパク質は、全タンパク質もしくはペプチド断片の形態、ネイティブなものまたは操作されたものであり得る。細胞培養のためのマトリックスにおいて有用であり得るECMタンパク質の例としては、ラミニン、コラーゲンI、コラーゲンIV、フィブロネクチンおよびビトロネクチンが挙げられる。いくつかの実施形態において、マトリックス組成物は、フィブロネクチンまたは組換えフィブロネクチンの合成的に生成されたペプチド断片を含む。いくつかの実施形態において、マトリックス組成物は、ゼノフリーである。例えば、ヒト細胞を培養するためのゼノフリーマトリックスでは、いかなる非ヒト動物成分も除外され得るヒト起源のマトリックス成分が使用され得る。
【0106】
いくつかの態様において、マトリックス組成物中の総タンパク質濃度は、約1ng/mL〜約1mg/mLであり得る。いくつかの好ましい実施形態において、マトリックス組成物中の総タンパク質濃度は、約1μg/mL〜約300μg/mLである。より好ましい実施形態において、マトリックス組成物中の総タンパク質濃度は、約5μg/mL〜約200μg/mLである。
【0107】
RPE細胞またはPSCなどの細胞は、各特定の細胞集団の成長を支援するために必要な栄養素とともに培養され得る。一般に、細胞は、炭素源、窒素源およびpHを維持するためのバッファを含む成長培地中で培養される。培地はまた、脂肪酸または脂質、アミノ酸(例えば、非必須アミノ酸)、ビタミン(複数可)、成長因子、サイトカイン、抗酸化物質、ピルビン酸、緩衝剤および無機塩を含有し得る。幹細胞成長を増強するために、例示的な成長培地は、非必須アミノ酸およびビタミンなどの様々な栄養素を補充した最小必須培地、例えばダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)またはESSENTIAL 8(商標)(E8(商標))培地を含有する。最小必須培地の例としては、限定されないが、最小必須培地イーグル(MEM)アルファ培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI−1640培地、199培地およびF12培地が挙げられる。加えて、最小必須培地は、ウマ血清、子牛血清またはウシ胎仔血清などの添加物が補充され得る。あるいは、培地は、無血清であり得る。他の場合では、成長培地は、培養液中の幹細胞などの未分化細胞を成長および維持するために最適化された無血清調合物と本明細書中で称される「knockout血清代替品」を含有し得る。KNOCKOUT(商標)血清代替品は、例えば、米国特許出願第2002/0076747号(これは、参照により本明細書中に組み込まれる)に開示されている。好ましくは、PSCは、十分に定義されたフィーダーフリー培地中で培養される。
【0108】
したがって、プレーティング後に、単一細胞PSCは、一般に、十分に定義された培養培地で培養される。ある特定の態様において、播種の約18〜24時間後に培地を吸引し、E8(商標)培地などの新鮮培地を培養物に添加する。ある特定の態様において、プレーティング後に、単一細胞PSCは、十分に定義された培養培地中で約1日間、2日間または3日間培養される。好ましくは、分化プロセスでの進行前に、単一細胞PSCは、十分に定義された培養培地中で約2日間培養される。
【0109】
いくつかの実施形態において、培地は、血清の代替物を含有してもよいし、または含有しなくてもよい。血清の代替物としては、アルブミン(例えば、脂質リッチアルブミン、アルブミン代用物、例えば組換えアルブミン、植物デンプン、デキストランおよびタンパク質加水分解物)、トランスフェリン(または他の鉄輸送体)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2−メルカプトエタノール、3’−チオールグリセロール(3’−thiolgiycerol)またはそれの同等物を適切に含有する材料が挙げられ得る。血清の代替物は、例えば、国際公開第WO98/30679号に開示されている方法によって調製され得る。あるいは、より利便性のために、任意の市販の材料が使用され得る。市販の材料としては、KNOCKOUT(商標)血清代替品(KSR)、化学的に定義された脂質濃縮物(Gibco)およびGLUTAMAX(商標)(Gibco)が挙げられる。
【0110】
他の培養条件を適宜定義することができる。例えば、培養温度は約30〜40℃、例えば、少なくともまたは約31、32、33、34、35、36、37、38、39℃であってよいが、特にそれらに限定されない。一つの実施形態において、細胞は37℃で培養される。CO
2濃度は約1〜10%、例えば、約2〜5%、またはその中の導き出せる任意の範囲であってよい。酸素張力は少なくとも、最大で、もしくは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20%またはその中の導き出せる任意の範囲であってよい。
a.分化培地
網膜誘導培地
【0111】
単一細胞PSCを培養プレートに接着させた後、好ましくは、網膜誘導培地中で細胞を培養して、網膜系細胞への分化プロセスを開始させる。網膜誘導培地(RIM)はWNT経路阻害剤を含み、網膜系細胞へのPSCの分化をもたらし得る。RIMは、TGFβ経路阻害剤およびBMP経路阻害剤をさらに含む。1つの例示的なRIM培地は、表3に示されている。
【0112】
RIMは、約1:1の比でDMEMおよびF12を含み得る。例示的な方法では、RIMに、CKI−7などのWNT経路阻害剤を含め、LDN193189などのBMP経路阻害剤を含め、SB431542などのTGFβ経路阻害剤を含める。例えば、RIMは、約5nM〜約50nM、例えば約10nMのLDN193189、約0.1μM〜約5μM、例えば約0.5μMのCKI−7および約0.5μM〜約10μM、例えば約1μMのSB431542を含む。加えて、RIMは、knockout血清代替品、例えば約1%〜約5%MEM非必須アミノ酸(NEAA)、ピルビン酸ナトリウム、N−2サプリメント、B−27サプリメント、アスコルビン酸およびインスリン成長因子1(IGF1)を含み得る。好ましくは、IGF1はアニマルフリーIGF1(AF−IGF1)であり、約0.1ng/mL〜約10ng/mL、例えば約1ng/mLをRIMに含める。例えば、培地を毎日吸引し、新鮮RIMに交換する。一般に、RIM中で細胞を約1〜約5日間、例えば約1日間、2日間、3日間、4日間または5日間、例えば約2日間培養して、網膜系細胞を産生させる。
網膜分化培地
【0113】
次いで、さらなる分化のために、網膜分化培地(RDM)中で網膜系細胞を培養し得る。RDMは、WNT経路阻害剤、BMP経路阻害剤、TGFβ経路阻害剤およびMEK阻害剤を含む。1つの実施形態において、RDMは、CKI−7などのWNT経路阻害剤、LDN193189などのBMP経路阻害剤、SB431542などのTGFβ経路阻害剤およびPD0325901などのMEK阻害剤を含む。あるいは、RDMは、WNT経路阻害剤、BMP経路阻害剤、TGFβ経路阻害剤およびbFGF阻害剤を含み得る。一般に、RDM中では、Wnt経路阻害剤、BMP経路阻害剤およびTGFβ経路阻害剤の濃度は、RIMと比較して、例えば、約9〜約11倍高く、例えば約10倍高い。例示的な方法では、RDMは、約50nM〜約200nM、例えば約100nMのLDN193189、約1μM〜約10μM、例えば約5μMのCKI−7、約1μM〜約50μM、例えば約10μMのSB431542および約0.1μM〜約10μM、例えば約1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μMまたは9μMのPD0325901を含む。1つの例示的なRDM培地は、表3に示されている。
【0114】
一般に、RDMは、約1:1の比のDMEMおよびF12、knockout血清代替品(例えば、約1%〜約5%、例えば約1.5%)、MEM NEAA、ピルビン酸ナトリウム、N−2サプリメント、B−27サプリメント、アスコルビン酸およびIGF1(例えば、約1ng/mL〜約50ng/mL、例えば約10ng/mL)を含む。特定の方法では、前日から培地を吸引した後に、新鮮RDMを細胞に毎日与える。一般に、RDM中で細胞を約2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間または16日間、例えば約7日間培養して、分化網膜細胞を誘導する。
網膜培地
【0115】
次に、網膜培地(RM)中で分化網膜細胞を培養することによって、該細胞をさらに分化させ得る。網膜培地はアクチビンAを含み、ニコチンアミドをさらに含み得る。RMは、約50〜約200ng/mL、例えば約100ng/mLのアクチビンAおよび約1mM〜約50mM、例えば約10mMのニコチンアミドを含み得る。あるいは、RMは、他のTGF−β経路活性化因子、例えばGDF1および/またはWNT経路活性化因子、例えばWAY−316606、IQ1、QS11、SB−216763、BIO(6−ブロモインジルビン−3’−オキシム)または2−アミノ−4−[3,4−(メチレンジオキシ)ベンジル−アミノ]−6−(3−メトキシフェニル)ピリミジンを含み得る。あるいは、RMは、WNT3aをさらに含み得る。1つの例示的なRM培地は、表3に示されている。
【0116】
RMは、約1:1の比のDMEMおよびF12、約1%〜約5%、例えば約1.5%のknockout血清代替品、MEM非必須アミノ酸(NEAA)、ピルビン酸ナトリウム、N−2サプリメント、B−27サプリメントおよびアスコルビン酸を含み得る。培地を室温RMで毎日交換し得る。一般に、RM中で細胞を約8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間または17日間、例えば約10日間培養して、分化RPE細胞を誘導する。
RPE成熟培地
【0117】
RPE細胞のさらなる分化のために、好ましくは、RPE成熟培地(RPE−MM)中で細胞を培養する。例示的なRPE−MM培地は、表3に示されている。RPE成熟培地は、約100μg/mL〜約300μg/mL、例えば約250μg/mLのタウリン、約10μg/L〜約30μg/L、例えば約20μg/Lのヒドロコルチゾンおよび約0.001μg/L〜約0.1μg/L、例えば約0.013μg/Lのトリヨードチロニンを含み得る。加えて、RPE−MMは、MEMアルファ、N−2サプリメント、MEM非必須アミノ酸(NEAA)およびピルビン酸ナトリウム、ならびにウシ胎仔血清(例えば、約0.5%〜約10%、例えば約1%〜約5%)を含み得る。培地を室温RPE−MMで隔日に交換し得る。一般に、RPE−MM中で細胞を約5〜約10日間、例えば約5日間培養する。次いで、細胞解離酵素などを用いて細胞を解離し、再播種し、RPE細胞へのさらなる分化のためにさらなる期間、例えばさらに約5〜約30日間、例えば約15〜20日間培養し得る。さらなる実施形態において、RPE−MMは、WNT経路阻害剤を含まない。この段階で、RPE細胞を凍結保存し得る。
b.RPE細胞の成熟
【0118】
次いで、成熟のために継続的な期間、RPE−MM中でRPE細胞を培養し得る。いくつかの実施形態において、6ウェル、12ウェル、24ウェルなどのウェルまたは10cmプレート中で、RPE細胞を成長させる。RPE培地中でRPE細胞を約4〜約10週間、例えば約6〜8週間、例えば6週間、7週間または8週間維持し得る。RPE細胞の継続的成熟のための例示的な方法では、TRYPLE(商標)などの細胞解離酵素で細胞を解離し、PD0325901などのMEK阻害剤を含むRPE−MM中、特殊化したSNAPWELL(商標)デザインにおけるなどの分解性足場アセンブリ上に約1〜2週間再播種し得る。あるいは、RPE−MMは、MEK阻害剤に代えてbFGF阻害剤を含み得る。分解性足場上でRPE細胞を培養するための方法は、PCT公開第WO2014/121077号(これは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に教示および記載されている。簡潔に言えば、前記方法の主な要素は、CORNING(登録商標)COSTAR(登録商標)SNAPWELL(商標)プレート、生体不活性0−リングおよび生分解性足場である。SNAPWELL(商標)プレートは、生分解性足場のための構造およびプラットフォームを提供する。頂端側および基底側を作り出す微多孔膜は、支持体を足場に提供するだけではなく、細胞の分極層の異なる面(distinct sides)を分離するために理想的である。膜を脱着させるためのSNAPWELL(商標)インサートの能力は、インサートの支持リングを足場のためのアンカーとして使用することを可能にする。得られた分化した、分極した、およびコンフルエントの機能的RPE細胞の単層を、この段階で(例えば、ゼノフリーCS10培地中に)凍結保存し得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、成熟RPE細胞を機能的RPE細胞単層(これは、RPE成熟を促進するさらなる化学物質または小分子を含むRPE−MM中で継続培養することによって、インタクトなRPE組織として機能する)にさらに発達させ得る。例えば、これらの小分子は、一次繊毛インデューサー、例えばプロスタグランジンE2(PGE2)またはアフィジコリンである。PGE2を約25μM〜約250μM、例えば約50μM〜約100μMの濃度で培地に添加し得る。あるいは、RPE−MMは、カノニカルWNT経路阻害剤を含み得る。例示的なカノニカルWNT経路阻害剤は、N−(6−メチル−2−ベンゾチアゾリル)−2−[(3,4,6,7−テトラヒドロ−4−オキソ−3−フェニルチエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル)チオ]−アセトアミド(IWP2)または4−(1,3,3a,4,7,7a−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−4,7−メタノ−2H−イソインドール−2−イル)−N−8−キノリニル−ベンズアミド(endo−IWR1)である。この培地中で細胞をさらなる期間、例えばさらに約1週間〜約5週間、例えばさらに約2〜4週間培養して、成熟機能的RPE細胞単層を得ることができる。したがって、本開示の方法は、臨床用途のために大規模で一貫して再産生され得る多能性細胞の単一細胞懸濁物由来の成熟RPE細胞を提供する。
c.RPE細胞の凍結保存
【0120】
本明細書中に開示される方法によって産生される網膜色素上皮細胞は、凍結保存され得る。例えば、PCT公開第2012/149484A2号(これは、参照により本明細書中に組み込まれる)を参照のこと。細胞は、基材を用いてまたは基材を用いずに凍結保存され得る。いくつかの実施形態において、貯蔵温度は、約−50℃〜約−60℃、約−60℃〜約−70℃、約−70℃〜約−80℃、約−80℃〜約−90℃、約−90℃〜約−100℃およびその重複範囲に及ぶ。いくつかの実施形態において、より低い温度が、凍結保存細胞の貯蔵(例えば、維持)のために使用される。複数の実施形態において、液体窒素(または他の類似の冷却剤)が、細胞を貯蔵するために使用される。さらなる実施形態において、細胞は、約6時間超貯蔵される。さらなる実施形態において、細胞は、約72時間貯蔵される。複数の実施形態において、細胞は、48時間〜約1週間貯蔵される。さらに他の実施形態において、細胞は、約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間または8週間貯蔵される。さらなる実施形態において、細胞は、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間、5カ月間、6カ月間、7カ月間、8カ月間、9カ月間、10カ月間、11カ月間または12カ月間貯蔵される。細胞はまた、より長時間貯蔵され得る。細胞は別々に、または本明細書中に開示される基材のいずれかなどの基材上で凍結保存され得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、さらなる抗凍結剤が使用され得る。例えば、細胞は、1つまたはそれを超える抗凍結剤、例えばDM80、血清アルブミン、例えばヒトまたはウシの血清アルブミンを含む凍結保存溶液中で凍結保存され得る。ある特定の実施形態において、溶液は、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%・、約8%、約9%、または約10%のDMSOを含む。別の実施形態において、溶液は、約1%〜約3%、約2%〜約4%、約3%〜約5%、約4%〜約6%、約5%〜約7%、約6%〜約8%、約7%〜約9%、または約8%〜約10%のジメチルスルホキシド(DMSO)またはアルブミンを含む。特定の実施形態において、溶液は、2.5%DMSOを含む。別の特定の実施形態において、溶液は、10%DMSOを含む。
【0122】
細胞は、凍結保存中に、例えば約1℃/分で冷却され得る。いくつかの実施形態において、凍結保存温度は、約−80℃〜約−180℃または約−125℃〜約−140℃である。いくつかの実施形態において、細胞は、約1℃/分で冷却される前に、4℃に冷却される。凍結保存細胞は、使用のための解凍前に、液体窒素の気相に移され得る。いくつかの実施形態において、例えば、細胞が約−80℃に達したら、それらは液体窒素貯蔵区域に移される。凍結保存はまた、速度調節冷凍庫を使用して行われ得る。凍結保存細胞は、例えば、約25℃〜約40℃の温度、典型的には約37℃の温度で解凍され得る。
d.阻害剤
WNT経路阻害剤
【0123】
WNTは、細胞間相互作用を制御してショウジョウバエセグメント極性遺伝子winglessに関連する高度に保存された分泌シグナル伝達分子のファミリーである。ヒトでは、WNTファミリーの遺伝子は、38〜43kDaのシステインリッチ糖タンパク質をコードする。WNTタンパク質は、疎水性シグナル配列、保存されたアスパラギン結合オリゴ糖コンセンサス配列(例えば、Shimizuら、Cell Growth Differ 8:1349−1358(1997)を参照のこと)および22個の保存されたシステイン残基を有する。細胞質β−カテニンの安定化を促進する能力により、WNTタンパク質は転写活性化因子として作用し、アポトーシスを阻害し得る。特定のWNTタンパク質の過剰発現は、特定のがんに関連することが示されている。
【0124】
本明細書中のWNT阻害剤は、一般的にWNT阻害剤を指す。したがって、WNT阻害剤は、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt4、Wnt5A、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8A、Wnt9A、Wnt10a、Wnt11およびWnt16を含むWNTファミリータンパク質のメンバーの任意の阻害剤を指す。本方法のある特定の実施形態は、分化培地中のWNT阻害剤に関する。当技術分野ですでに公知の好適なWNT阻害剤の例として、N−(2−アミノエチル)−5−クロロイソキノリン−8−スルホンアミドジヒドロクロリド(CKI−7)、N−(6−メチル−2−ベンゾチアゾリル)−2−[(3,4,6,7−テトラヒドロ−4−オキソ−3−フェニルチエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル)チオ]−アセトアミド(IWP2)、N−(6−メチル−2−ベンゾチアゾリル)−2−[(3,4,6,7−テトラヒドロ−3−(2−メトキシフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル)チオ]−アセトアミド(IWP4)、2−フェノキシ安息香酸−[(5−メチル−2−フラニル)メチレン]ヒドラジド(PNU74654)2,4−ジアミノ−キナゾリン、ケルセチン、3,5,7,8−テトラヒドロ−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−チオピラノ[4,3−d]ピリミジン−4−オン(XAV939)、2,5−ジクロロ−N−(2−メチル−4−ニトロフェニル)ベンゼンスルホンアミド(FH535)、N−[4−[2−エチル−4−(3−メチルフェニル)−5−チアゾリル]−2−ピリジニル]ベンズアミド(TAK715)、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)および分泌型Frizzled関連タンパク質(SFRP1)1が挙げられる。加えて、WNT阻害剤としては、WNTに対する抗体、WNTのドミナントネガティブバリアント、ならびにWNTの発現を抑制するsiRNAおよびアンチセンス核酸が挙げられ得る。WNTの阻害はまた、RNA媒介性干渉(RNAi)を使用して達成され得る。
BMP経路阻害剤
【0125】
骨形態形成タンパク質(BMP)は、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)スーパーファミリーに属する多機能性成長因子である。BMPは、体中の構造を組織化する一群の重要な形態形成シグナルを構成すると考えられる。生理学におけるBMPシグナルの重要な機能は、病的プロセスにおける制御不能なBMPシグナル伝達に関する多数の役割によって強調される。
【0126】
BMP経路阻害剤は、一般にBMPシグナル伝達の阻害剤、またはBMP1、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP10もしくはBMP15に特異的な阻害剤を含み得る。例示的なBMP阻害剤としては、4−(6−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル)キノリンヒドロクロリド(LDN193189)、6−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−3−(4−ピリジニル)−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンジヒドロクロリド(ドルソモルフィン)、4−[6−[4−(1−メチルエトキシ)フェニル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル]−キノリン(DMH1)、4−[6−[4−[2−(4−モルホリニル)エトキシ]フェニル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル]キノリン(DMH−2)および5−[6−(4−メトキシフェニル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル]キノリン(ML347)が挙げられる。
TGFβ経路阻害剤
【0127】
トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)は、ほとんどの細胞において増殖、細胞分化および他の機能を調節する分泌タンパク質である。それは、免疫、がん、気管支喘息、肺線維症、心疾患、糖尿病および多発性硬化症において役割を果たす一種のサイトカインである。TGF−βは、TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3と称される少なくとも3つのアイソフォームで存在する。TGF−βファミリーは、インヒビン、アクチビン、抗ミュラー管ホルモン、骨形態形成タンパク質、デカペンタプレジックおよびVg−1を含むトランスフォーミング成長因子βスーパーファミリーとして公知のタンパク質のスーパーファミリーの一部である。
【0128】
TGFβ経路阻害剤は、一般にTGFβシグナル伝達の任意の阻害剤を含み得る。例えば、TGFβ経路阻害剤は、4−[4−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−5−(2−ピリジニル)−1H−イミダゾール−2−イル]ベンズアミド(SB431542)、6−[2−(1,1−ジメチルエチル)−5−(6−メチル−2−ピリジニル)−1H−イミダゾール−4−イル]キノキサリン(SB525334)、2−(5−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−2−イエリ−ブチル−3H−イミダゾール−4−イル)−6−メチルピリジン塩酸塩水和物(SB−505124)、4−(5−ベンゾール[1,3]ジオキソール−5−イル−4−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)−ベンズアミド水和物、4−[4−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−5−(2−ピリジニル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ベンズアミド水和物、左右決定因子(Lefty)、3−(6−メチル−2−ピリジニル)−N−フェニル−4−(4−キノリニル)−1H−ピラゾール−1−カルボチオアミド(A83−01)、4−[4−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−6−イル)−5−(2−ピリジニル)−1H−イミダゾール−2−イル]ベンズアミド(D4476)、4−[4−[3−(2−ピリジニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−ピリジニル]−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−ベンズアミド(GW788388)、4−[3−(2−ピリジニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−キノリン(LY364847)、4−[2−フルオロ−5−[3−(6−メチル−2−ピリジニル)−1H−ピラゾール−4−イル]フェニル]−1H−ピラゾール−1−エタノール(R268712)または2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジン(RepSox)である。
MEK阻害剤
【0129】
MEK阻害剤は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ酵素MEK1またはMEK2を阻害する化学物質または薬物である。それらは、MAPK/ERK経路に影響を及ぼすために使用され得る。例えば、MEK阻害剤として、N−[(2R)−2,3−ジヒドロキシプロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−[(2−フルオロ−4−ヨードフェニル)アミノ]−ベンズアミド(PD0325901)、N−[3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨードアニリノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル]アセトアミド(GSK1120212)、6−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−7−フルオロ−N−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルベンゾイミダゾール−5−カルボキサミド(MEK162)、N−[3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨードアニリノ)−6−メトキシフェニル]−1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパン−1−スルホンアミド(RDEA119)および6−(4−ブロモ−2−クロロアニリノ)−7−フルオロ−N−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルベンゾイミダゾール−5−カルボキサミド(AZD6244)が挙げられる。
bFGF阻害剤
【0130】
塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF、FGF2またはFGF−βとしても公知である)は、線維芽細胞成長因子ファミリーのメンバーである。bFGFは、基底膜中に、および血管の内皮下細胞外マトリックス中に存在する。加えて、bFGFは、細胞が未分化状態であり続けるために必要なヒトESC培養培地の一般的な成分である。
【0131】
本明細書中のbFGF阻害剤は、一般にbFGF阻害剤を指す。例えば、bFGF阻害剤としては、限定されないが、N−[2−[[4−(ジエチルアミノ)ブチル]アミノ−6−(3,5−ジメトキシフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)尿素(PD173074)、2−(2−アミノ−3−メトキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(PD98059)、1−tert−ブチル−3−[6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−[[4−(ジエチルアミノ)ブチル]アミノ]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]尿素(PD161570)、6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−[[4−[2−(ジエチルアミノ)エトキシ]フェニル]アミノ]−8−メチル−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン二塩酸塩水和物(PD166285)、N−[2−アミノ−6−(3,5−ジメトキシフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素(PD166866)およびMK−2206が挙げられる。
IV.網膜色素上皮細胞の使用
【0132】
ある特定の態様は、多くの重要な研究、開発および商業目的のために使用され得るRPEまたはRPE富化細胞集団を産生する方法を提供する。
【0133】
いくつかの態様において、本明細書に開示の方法は、少なくともまたは約90%(例えば、少なくともまたは約90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはその中の導き出せる任意の範囲)のRPE細胞を含む少なくともまたは約10
6、10
7、10
8、5x10
8、10
9、10
10個の細胞(またはその中の導き出せる任意の範囲)の細胞集団をもたらす。
【0134】
ある特定の態様において、本方法のための開始細胞は、少なくともまたは約10
4、10
5、10
6、10
7、10
8、10
9、10
10、10
11、10
12、10
13個の細胞またはその中の導き出せる任意の範囲の使用を含み得る。開始細胞は、少なくともまたは約10、10
1、10
2、10
3、10
4、10
5、10
6、10
7、10
8個の細胞/ml、またはその中の導き出せる任意の範囲の播種密度を有し得る。
【0135】
本明細書中に開示される方法によって産生されるRPE細胞は、RPE細胞について当技術分野で現在公知の任意の方法および用途において使用され得る。例えば、化合物を評価する方法であって、RPE細胞に対する化合物の薬理学的特性または毒物学的特性をアッセイすることを含む方法が提供され得る。RPE細胞に対する効果について化合物を評価する方法であって、a)本明細書中で提供されるRPE細胞と該化合物とを接触させること;およびb)該RPE細胞に対する該化合物の効果をアッセイすることを含む方法も提供され得る。
A.試験化合物のスクリーニング
【0136】
RPE細胞は、このような細胞およびそれらの様々な子孫の特徴に影響を及ぼす因子(例えば、溶媒、小分子薬物、ペプチド、オリゴヌクレオチド)または環境条件(例えば、培養条件または操作)をスクリーニングするために商業的に使用され得る。例えば、試験化合物は、化学的な化合物、小分子、ポリペプチド、成長因子、サイトカインまたは他の生物学的薬剤であり得る。
【0137】
1つの実施形態において、方法は、RPE細胞と試験薬剤とを接触させること、前記試験薬剤が集団内のRPE細胞の活性または機能をモジュレートするかを決定することを含む。いくつかの用途では、スクリーニングアッセイは、RPE細胞の増殖をモジュレートするか、またはRPE細胞の分化を変化させる薬剤の同定のために使用される。スクリーニングアッセイは、インビトロまたはインビボで実施され得る。眼用薬剤またはRPE薬剤をスクリーニングおよび同定する方法としては、ハイスループットスクリーニングに適切なものが挙げられる。例えば、潜在的治療分子の同定のために、RPE細胞は、任意選択で規定の位置において、培養皿、フラスコ、ローラーボトルまたはプレート(例えば、シングルマルチウェルディッシュまたはディッシュ、例えば8、16、32、64、96、384および1536マルチウェルプレートまたはディッシュ)上に位置決めまたは置くことができる。スクリーニングされ得るライブラリーとしては、例えば、小分子ライブラリー、siRNAライブラリーおよびアデノウイルストランスフェクションベクターライブラリーが挙げられ得る。
【0138】
他のスクリーニング用途は、網膜組織の維持または修復に対する効果についての医薬化合物の試験に関する。化合物は、細胞に対して薬理学的効果を有するように設計されるので、または他の場所で効果を有するように設計された化合物は、この組織型の細胞に対して意図しない副作用を有し得るので、スクリーニングが行われ得る。
B.治療および移植
【0139】
他の実施形態はまた、眼組織の維持ならびに修復を必要とする任意の状態(網膜変性または重大な傷害を含む)に対する修復を強化するためのRPE細胞の使用を提供し得る。
【0140】
治療薬投与のための細胞組成物の適切性を決定するために、最初に、細胞は、適切な動物モデルにおいて試験され得る。1つの態様において、RPE細胞は、インビボで生存してそれらの表現型を維持するそれらの能力について評価される。細胞組成物は、免疫不全動物(例えば、ヌードマウスまたは化学的にもしくは放射線照射によって免疫不全にされた動物)に投与される。一定期間の成長後に組織を採取し、多能性幹細胞由来細胞が依然として存在するかについて評価する。
【0141】
RPE細胞組成物の適切性を試験するために、いくつかの動物が利用可能である。例えば、英国外科医師会(RCS)ラットは、網膜ジストロフィーの周知のモデルである(Lundら、2006)。加えて、RPE細胞の適切性および生存は、NOGマウスなどの免疫不全動物においてマトリゲル移植(例えば、皮下または網膜下)によって決定され得る(Kanemuraら、2014)。
【0142】
本明細書中に記載されるヒトRPE細胞またはこれらの細胞を含む医薬組成物は、状態の処置を必要とする患者における状態を処置するための医薬の製造に使用され得る。RPE細胞は、予め凍結保存され得る。ある特定の態様において、開示されるRPE細胞はiPSCに由来するので、「個別化医療」を眼疾患患者に提供するために使用され得る。いくつかの実施形態において、患者から得られた体細胞は、疾患を引き起こす変異を修正するように遺伝子操作され、RPEに分化し、RPE組織を形成するように操作され得る。このRPE組織は、同じ患者の内因性変性RPEを交換するために使用され得る。あるいは、健常ドナーから、またはHLAホモ接合性「スーパードナー」から作製されたiPSCが使用され得る。インビボで抗炎症および免疫抑制環境を生じさせるために、RPE細胞は、特定の因子、例えば色素上皮由来因子(PEDF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)−βおよび/またはレチノイン酸によってインビトロで処理され得る。
【0143】
様々な眼状態が、本明細書中に開示される方法を使用して得られるRPE細胞の導入によって処置または予防され得る。状態としては、網膜機能不全もしくは網膜劣化、網膜傷害および/または網膜色素上皮の喪失に一般に関連する網膜疾患または網膜障害が挙げられる。処置され得る状態としては、限定されないが、網膜の変性疾患、例えばシュタルガルト黄斑ジストロフィー、網膜色素変性、黄斑変性(例えば、加齢黄斑変性)、緑内障および糖尿病性網膜症が挙げられる。さらなる状態としては、レーバー先天性黒内障、遺伝性または後天性黄斑変性、ベスト病、網膜剥離、脳回転状萎縮、コロイデレミア、パターンジストロフィー、RPEの他のジストロフィー、ならびに光傷害、レーザー傷害、炎症性傷害、感染性傷害、放射線傷害、新生血管傷害または外傷性傷害のいずれか1つによって引き起こされる損傷に起因するRPEおよび網膜損傷が挙げられる。ある特定の実施形態において、網膜変性を特徴とする状態を処置または予防するための方法であって、RPE細胞を含む有効量の組成物を、網膜変性を特徴とする状態の処置または予防を必要とする被験体に投与することを含む方法が提供される。これらの方法は、これらの状態の1つまたはそれよりも多くを有する被験体を選択すること、ならびに該状態を処置し、および/または該状態の症候を改善するために十分な治療有効量のRPE細胞を投与することを含み得る。RPE細胞は、様々なフォーマットで移植され得る。例えば、RPE細胞は、細胞懸濁物の形態で標的部位に導入され得るか、またはマトリックス、細胞外マトリックスもしくは基材、例えば生分解性ポリマー上に単層として接着され得るか、またはその組み合わせであり得る。RPE細胞はまた、光受容体などを有する他の網膜細胞とともに移植(共移植)され得る。いくつかの実施形態において、RPE細胞は、処置すべき被験体由来のiPSCから産生されるので、自己性である。他の実施形態において、RPE細胞は、MHC一致ドナーから産生される。
【0144】
いくつかの実施形態において、RPE細胞は、再生医療を受けるために適切な被験体に対する自己RPE移植のために使用され得る。RPE細胞は、光受容体を有するなどの他の網膜細胞と組み合わせて移植され得る。開示される方法によって産生されるRPE細胞の移植は、当技術分野で公知の様々な技術によって実施され得る。例えば、RPE移植を実施するために方法は、米国特許第5,962,027号および米国特許第6,045,791号(これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。1つの実施形態によれば、移植は、経毛様体扁平部硝子体切除術(pars pana vitrectomy)を行い、続いて細胞を、網膜小開口部を介して網膜下腔に送達するか、または直接注射することによって行う。RPE細胞は、細胞懸濁物の形態で標的部位に導入され得るか、マトリックス、例えば細胞外マトリックス上に接着され得るか、または生分解性ポリマーなどの基材上に提供され得る。RPE細胞はまた、光受容体を有する網膜細胞などの他の細胞とともに移植され得る(共移植)。したがって、本明細書中に開示される方法によって得られるRPE細胞を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、これらのRPE細胞は、プロモーターおよびマーカーをコードする核酸に作動可能に連結されたチロシナーゼエンハンサーを含む。他の実施形態において、RPE細胞はまた、第2のマーカーをコードする核酸に作動可能に連結された第2の構成的プロモーターを含む。
【0145】
RPE細胞の医薬組成物は、本明細書中に開示される方法によって産生される。これらの組成物は、少なくとも約1x10
3個のRPE細胞、約1x10
4個のRPE細胞、約1x10
5個のRPE細胞、約1x10
6個のRPE細胞、約1x10
7個のRPE細胞、約1x10
8個のRPE細胞、または約1x10
9個のRPE細胞を含み得る。ある特定の実施形態において、組成物は、本明細書中に開示される方法によって産生される分化RPE細胞を含む(非RPE細胞に関して)実質的に精製された調製物である。足場、例えばポリマー担体および/または細胞外マトリックスと、本明細書中に開示される方法によって産生される有効量のRPE細胞とを含む組成物も提供される。例えば、細胞は、細胞の単層として提供される。マトリックス材料は、一般に、生理学的に許容され得るものであり(if generally physiologically acceptable)、インビボ用途において使用するために適切なものである。例えば、生理学的に許容され得る材料としては、限定されないが、吸収性および/または非吸収性の固体マトリックス材料、例えば小腸粘膜下組織(SIS)、架橋アルギネートまたは非架橋アルギネート、親水コロイド、発泡体、コラーゲンゲル、コラーゲンスポンジ、ポリグリコール酸(PGA)メッシュ、フリースおよび生体接着剤が挙げられる。
【0146】
適切なポリマー担体としては、合成ポリマーまたは天然ポリマーおよびポリマー溶液から形成された多孔質メッシュまたはスポンジも挙げられる。例えば、マトリックスは、ポリマーメッシュもしくはスポンジまたはポリマーヒドロゲルである。使用され得る天然ポリマーとしては、タンパク質、例えばコラーゲン、アルブミンおよびフィブリン;ならびに多糖、例えばアルギネートおよびヒアルロン酸のポリマーが挙げられる。合成ポリマーとしては、生分解性ポリマーおよび非生分解性ポリマーの両方が挙げられる。例えば、生分解性ポリマーとしては、ヒドロキシ酸のポリマー、例えばポリ乳酸(polyactic acid)(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)およびポリ乳酸−グリコール酸(PGLA)、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファゼンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。非生分解性ポリマーとしては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エチレン酢酸ビニルおよびポリビニルアルコールが挙げられる。
【0147】
可鍛性のイオン的にまたは共有結合的に架橋されたヒドロゲルを形成し得るポリマーが使用され得る。ヒドロゲルは、(天然または合成の)有機ポリマーが、共有結合、イオン結合または水素結合を介して架橋されて三次元開格子構造が作られ、これが水分子を捕捉してゲルを形成した場合に形成される物質である。ヒドロゲルを形成するために使用され得る材料の例としては、多糖、例えばアルギネート、ポリホスファジンおよびポリアクリレート(これらは、イオン的に架橋される)、またはブロックコポリマー、例えばPLURON1CS(商標)またはTETRON1CS(商標)、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー(これらは、それぞれ温度またはHによって架橋される)が挙げられる。他の材料としては、タンパク質、例えばフィブリン、ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸およびコラーゲンが挙げられる。
【0148】
医薬組成物は、任意選択で、所望の目的(例えば、網膜組織の疾患または異常を改善するためのRPE細胞機能の再構成)のための書面による指示とともに適切な容器にパッケージングされ得る。いくつかの実施形態において、開示される方法によって産生されるRPE細胞を操作してRPEを形成し得、これを使用して、変性RPEの交換を必要とする被験体の変性RPEを交換し得る。
C.商業目的、治療目的および研究目的のための配布
【0149】
いくつかの実施形態において、製造、配布または使用中にいつでも存在するRPE富化細胞集団を含む細胞のセットまたは組み合わせを含む試薬システムが提供される。細胞セットは、多くの場合に同じゲノムを共有する、未分化多能性幹細胞または他の分化細胞型と組み合わせて、本明細書中に開示される細胞集団の任意の組み合わせを含む。各細胞型は、同じ施設または異なる場所において、同じまたは異なる時点において、取引関係を共有する同じ実体または異なる実体の管理下において、一緒に包装されてもよいし別個の容器内に包装されてもよい。
【0150】
医薬組成物は、任意選択で、所望の目的(例えば、眼組織の疾患または傷害を改善するためのRPE細胞機能の再構成)のための書面による指示とともに適切な容器にパッケージングされ得る。
V.キット
【0151】
いくつかの実施形態において、例えば、RPE細胞の産生のための1つまたはそれを超える培地および成分を含み得るキットが提供される。試薬システムは、必要に応じて、水性媒体または凍結乾燥形態のいずれかでパッケージングされ得る。キットの容器手段は、一般に、成分が配置され得る(好ましくは、適切にアリコートされ得る)少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段を含む。1つを超える成分がキット中にある場合、キットはまた、一般に、さらなる成分が別個に配置され得る第2の、第3のまたはさらなる容器を含有する。しかしながら、成分の様々な組み合わせをバイアルに含め得る。キットの成分は、乾燥粉末(複数可)として提供され得る。試薬および/または成分が乾燥粉末として提供される場合、粉末は、適切な溶媒の添加によって再構成され得る。溶媒はまた、別の容器手段で提供され得ることが想定される。キットはまた、典型的には、商業的販売のために密封してキット成分(複数可)を含有するための手段を含む。このような容器は、所望のバイアルが保持される注射またはブロー成形プラスチック容器を含み得る。キットはまた、印刷形式または電子形式、例えばデジタル形式などの使用指示書を含み得る。
【実施例】
【0152】
VI.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含められる。以下の実施例に開示される技法は、本発明の実施において十分に機能すると本発明者らによって発見された技法であり、ゆえに、それを実施するための好ましい形式を構成すると考えられ得ることは、当業者に認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に鑑みて、開示される特定の実施形態において多くの変更が行われ得、その変更によって、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなおも同様または類似の結果を得ることができることを認識するべきである。
実施例1−出発多能性幹細胞集団の調製
【0153】
ES細胞およびiPSCなどの多能性幹細胞から、RPE細胞の出発集団を誘導することができる。例示的な方法では、米国特許第8,546,140号、米国特許第8,741,648号、米国特許第8,691,574号、米国特許出願公開第20090246875号、公開された米国特許第8,278,104号、公開された米国特許第9,005,967号、米国特許第8,058,065号、米国特許第8,129,187号、PCT公開第WO2007/069666A1号、米国特許第8,183,038号および米国特許第8,268,620号(これらは、参照により本明細書中に組み込まれる)などの当技術分野で公知の方法によって、体細胞から再プログラミングしたヒトiPSCから、RPE細胞を誘導した。1つの例示的な方法では、核プログラミング因子Oct4、Sox2、c−MycおよびKlf4を使用して、体細胞から多能性幹細胞を産生した。別の例示的な方法では、核プログラミング因子Oct4、Sox2、Nanog、Lin28、L−MycおよびSV40ラージT抗原を使用して、体細胞から多能性幹細胞を産生した。
【0154】
ビトロネクチンによってコーティングされたプレート上で、マウスまたはヒトフィーダー層を用いずにESSENTIAL 8(商標)(E8(商標))培地などの十分に定義された培養培地中で、iPSCを成長させた。カルシウムまたはマグネシウムを含まないDPBSでビトロネクチンを1:200希釈し、培養プレートをビトロネクチンでコーティングし、室温で約1時間インキュベートした。プレコンフルエントになったらiPSCを分割し、過剰成長させないようにして、非健常細胞および/または分化細胞を防止した(
図1A)。
【0155】
RPE細胞を誘導するために、iPSCを単一細胞懸濁物に解離して、いかなる凝集体または胚様体も除去した。単一細胞懸濁物を得るために、細胞をDPBSで洗浄し、TRYPLE(商標)などの細胞解離酵素中、37℃で約10分間インキュベートした。次いで、血清学的ピペットを用いてピペッティングすることによって、細胞を剥離させ、細胞懸濁物をコニカルチューブに収集した。穏やかなピペッティングで細胞が剥離しなかった場合には、培養物をより長く、例えばさらに2〜3分間インキュベートした。すべての細胞を収集するために、培養容器を室温E8(商標)培地で洗浄し、次いで、細胞懸濁物を含有するチューブにその培地を添加した。加えて、細胞が培養容器に接着していない間に、ブレビスタチン(例えば、2.5μM)をE8(商標)培地に添加して、単一細胞への解離後のPSC生存を増加させた。細胞を収集するために、それらを400×gで約5分間遠心分離し、上清を吸引し、細胞を適切な容量のE8(商標)培地に再懸濁した。
【0156】
単一細胞iPSCからRPE細胞を効率的に分化させるために、VICELL(商標)などの自動細胞カウンターによって単一細胞iPSCの注入密度を正確にカウントし、室温E8(商標)培地で約1×10
5個の細胞/mLの細胞懸濁物に希釈した。iPSCの単一細胞懸濁物が既知の細胞密度で得られたら、細胞を適切な培養容器、例えばビトロネクチンでコーティングされた6ウェルプレートに入れた。約200,000個の細胞/ウェルの細胞密度で細胞を播種し、37℃の加湿インキュベーターに入れた。約18〜24時間後、培地を吸引し、新鮮E8(商標)培地を培養物に添加した。播種後、プレートへの適切な接着のために、E8(商標)培地中で細胞を約2日間培養した。
実施例2−RPE細胞へのiPSCの分化
【0157】
実施例1のように、適切な細胞密度で播種した単一細胞iPSCを約2日間培養したら、RPE細胞を誘導するための様々な分化培地中でそれらを培養した。3日目に、E8(商標)培地を吸引し、室温網膜誘導培地(RIM)(例えば、表3)を添加した。簡潔に言えば、RIMは、約1:1の比のDMEMおよびF12、knockout血清代替品、MEM非必須アミノ酸(NEAA)、ピルビン酸ナトリウム、N−2サプリメント、B−27サプリメントおよびアスコルビン酸を含んでいた。加えて、RIMは、WNT経路阻害剤、BMP経路阻害剤、TGFβ経路阻害剤およびインスリン成長因子1(IGF1)を含んでいた。培地を毎日吸引し、新鮮RIMを細胞に添加した。RIM中で細胞を約2〜4日間培養した。
【0158】
次に、網膜分化培地(RDM)中で細胞を約7〜14日間培養した。簡潔に言えば、RDM(表2)は、約1:1の比のDMEMおよびF12、knockout血清代替品、MEM NEAA、ピルビン酸ナトリウム、N−2サプリメント、B−27サプリメントおよびアスコルビン酸を含んでいた。加えて、RDMは、WNT経路阻害剤(例えば、CKI−7)、BMP経路阻害剤(例えば、LDN193189)、TGFβ経路阻害剤(例えば、SB431542)およびMEK阻害剤(例えば、PD325901)を含んでいた。Wnt経路阻害剤、BMP経路阻害剤およびTGFβ経路阻害剤の濃度は、RDMでは、RIMと比較して10倍高かった。培地を毎日吸引し、室温RDMを細胞に添加して、分化網膜細胞を産生させた。
【0159】
RPE細胞を誘導するために、次いで、網膜培地(RM)中で細胞を7〜10日間培養した。RMは、約1:1の比のDMEMおよびF12、knockout血清代替品、MEM NEAA、ピルビン酸ナトリウム、N−2サプリメント、B−27サプリメントおよびアスコルビン酸を含んでいた。加えて、RMは、ニコチンアミドおよびアクチビンAを含んでいた。培地を室温RMと毎日交換して、RPE細胞を得た。
【0160】
RPE細胞の成熟のために、RPE成熟培地(RPE−MM)中で細胞を5〜10日間培養した。RPE−MM(表2)は、MEMアルファ、ウシ胎仔血清、N−2サプリメント、MEM NEAAおよびピルビン酸ナトリウムを含んでいた。加えて、RPE−MMは、タウリン、ヒドロコルチゾンおよび3,3’,5−トリヨード−L−チロニンを含有していた(
図1C)。培地を室温RPE−MMと隔日で交換した。次いで、細胞解離酵素で細胞を解離し、ビトロネクチンコーティングプレートに再播種した。この段階で、ゼノフリーCS10培地中で誘導PRE細胞を凍結保存することができる。RPE成熟を継続するために、プレーティングした細胞をさらに約15日間培養する。
実施例3−RPE細胞の成熟
【0161】
実施例2で産生したRPE細胞の継続的成熟のために、TRYPLE(商標)などの細胞解離酵素で細胞を解離し、PD0325901などのMEK阻害剤を含むRPE−MM中、特殊化したSNAPWELL(商標)デザインの分解性足場アセンブリ上に1〜2週間再播種した。これにより、機能的RPE細胞の分化、分極およびコンフルエントの単層を得(
図1D)、この段階で、これをゼノフリーCS10培地中で凍結保存することができる。
【0162】
PGE2またはアフィジコリンのような一次繊毛インデューサーなどのさらなる小分子を含むRPE−MM中で継続培養することによって、成熟RPE細胞を、インタクトなRPE組織として機能する機能的RPE細胞単層にさらに発達させた。理論に縛られるものではないが、これらの一次繊毛インデューサーは、カノニカルWNT経路を抑制し、細胞中で細胞周期からの脱出を誘導し、RPE単層中で頂端−基底分極を誘導する。あるいは、カノニカルWNT経路阻害剤、例えばIWP2およびendo−IWR1(これらもまた、RPE細胞中で細胞周期からの脱出を誘導して、RPE成熟を促進する)によって、RPE成熟を誘導することができる。この培地中で細胞をさらに2〜3週間培養して、機能的成熟RPE細胞単層を得た。したがって、開示される本方法は、臨床用途のために大規模で一貫して再産生され得る多能性細胞由来の成熟RPE細胞を提供する。
実施例4−RPE細胞の凍結保存
【0163】
実施例2の分化RPE細胞の凍結保存のために、培地を吸引し、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)で細胞を2回洗浄した。次いで、細胞を細胞解離酵素とともにインキュベートし、細胞懸濁物をコニカルチューブにピペッティングした。細胞を遠心分離し、上清を吸引し、細胞を室温RPE−MMに再懸濁した。次いで、細胞懸濁物をSTERIFLIP(登録商標)セルストレーナーでろ過し、細胞をカウントした。次に、細胞を遠心分離し、適切な密度(例えば、1×10
7個の細胞/mL)で冷CryoStor(登録商標)CS10に再懸濁した。細胞懸濁物をプレラベルクライオバイアルにアリコートし、これを冷凍容器に入れ、−80℃の冷凍庫に12〜24時間移した。次いで、保存のために、バイアルを液体窒素に移した。
実施例5−混入非RPE細胞のMACS枯渇ならびにCD24、CD56および/またはCD90枯渇によるRPE細胞の出発集団の富化
【0164】
実施例2または3で得られたRPE細胞の集団は、残存混入非RPE細胞および未成熟RPE細胞(「混入細胞」と総称される)(これらを両方とも分離および除去して成熟RPE富化細胞集団を得ることができる)を有する可能性がある。例えば、磁気活性化細胞選別(MACS(登録商標))、蛍光活性化細胞選別(FACS)または単一細胞選別などの様々な方法によって、培養物から混入細胞を除去することができる。MACS(登録商標)法(これは、表面抗原に応じて、様々な細胞集団を分離することが当技術分野で公知である)を使用して、より成熟した所望のRPE細胞から混入細胞を分離した。
【0165】
RPE細胞の出発集団のうちの混入細胞は、所望の成熟RPE細胞から混入細胞を分離するために使用され得る特異的細胞表面マーカーを有する。例えば、CD24、CD56および/またはCD90は、(限定されないが)多能性幹細胞および他の神経細胞型上で発現される細胞表面抗原である。CD24は、多能性幹細胞、いくつかのBリンパ球および分化中の神経芽細胞の表面上で発現される糖タンパク質である。CD56または神経細胞接着分子(NCAM)は、ニューロンおよびナチュラルキラー細胞の表面上で発現される糖タンパク質である。CD90またはThy−1は、様々な幹細胞およびニューロンの表面上で発現されるマーカーである。CD24、CD56および/またはCD90の発現は、RPE細胞を含む多くの成熟細胞型への幹細胞の分化中に失われる。したがって、CD24、CD56および/またはCD90について陽性の細胞の除去は、残存混入細胞の枯渇をもたらす。
【0166】
分離技術を実行するために、RPE細胞の出発集団を、実施すべき選別(例えば、MACS)用の単一細胞懸濁物に解離することが望ましい。予め凍結保存された細胞では、細胞を解凍および再播種しなければならない。接着培養物中の細胞から単一細胞懸濁物を得るために、細胞を洗浄し(例えば、DPBS)、細胞解離酵素を添加した(例えば、TRYPLE(商標))。細胞を37℃で約5分間インキュベートした後、容器を穏やかに軽くたたいて、ニューロンクラスタを剥離させた。細胞をDPBSで2回洗浄し、細胞解離酵素(例えば、TRYPLE(商標))を添加した。細胞を37℃で約30分間インキュベートした後、細胞懸濁物をRPE−MMプレーティング培地に収集し、400×gで5分間遠心分離した。細胞ペレットをRPE−MMプレーティング培地に再懸濁し、細胞懸濁物をセルストレーナー(例えば、20μMステリフリップセルストレーナー)でろ過して、残りのあらゆる細胞クラスタを解離させた。(例えば、ViCellカウンターを使用して)細胞懸濁物を生存細胞についてカウントし、細胞濃度を得た。カウントした細胞懸濁物から、選別またはフローサイトメトリー純度アッセイに使用することができる単一細胞懸濁物を得た。
【0167】
RPE細胞の出発集団から混入細胞を除去するために、MACSを使用して、CD24陽性細胞、CD56陽性細胞および/またはCD90陽性細胞を枯渇させた。RPE細胞の出発集団由来の細胞を単一細胞懸濁物に解離した後、細胞を、例えば1×10
7個の細胞/mLでMACS緩衝液に再懸濁した。MACS緩衝液の例は、表3に含まれている。次に、抗CD24抗体、抗CD56抗体および/または抗CD90抗体(それぞれ1:500希釈)で細胞を染色し、4℃で20分間インキュベートして、抗体を細胞上の抗原に結合させた。使用する抗体は、二次抗体に結合する標識(例えば、FITC)でタグ付けされるべきである。インキュベーション後、20mLのMACS緩衝液を添加し、細胞を400×gで5分間遠心分離した。細胞ペレットを20mLのMACS緩衝液に再懸濁し、激しく混合し、400×gで5分間遠心分離して、未結合の抗体を除去した。細胞ペレットを(例えば、1.11×10
8個の細胞/mLで)MACS緩衝液に再懸濁し、希釈(1:10)二次抗体(例えば、抗FITC)でコーティングしたマイクロビーズを添加し、細胞を4℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をMACS緩衝液で洗浄して未結合のマイクロビーズを除去し、最大1.25×10
8個の細胞を500μLのMACS緩衝液に再懸濁した。強磁場に置いたLDカラムに細胞懸濁物を移し、マイクロビーズに付着した抗原CD24、CD56および/またはCD90を発現する細胞はカラムに残った。LDカラムをMACS緩衝液で2回洗浄した。抗原CD24、CD56および/またはCD90を発現しない非標識細胞を流し、収集した。さらなる特性評価および培養のために、収集した非標識細胞懸濁物を(400×gで5分間)遠心分離し、RPE−MMプレーティング培地に再播種し、細胞懸濁物のアリコートをフローサイトメトリー純度アッセイに使用した。したがって、MACS細胞選別により、CD24、CD56および/またはCD90について陽性の細胞が枯渇したRPE富化細胞集団が得られた。この方法の使用は、実施例2に詳述されている方法から得られた出発集団に限定されず、限定されないが、米国特許出願第12/523,444号および米国特許出願第14/405,730号に記載されている方法などの他の方法によって産生されたRPE集団から混入細胞を除去するために用いることができることに留意すべきである。
【表1】
RPEマーカーについて陽性の細胞の選別前の割合は、実施例2のRPE細胞の出発集団に存在するものである。CD24陽性細胞およびCD56陽性細胞の組み合わせの枯渇は、CD24陽性細胞のみの枯渇よりも高いRPE細胞富化をもたらした。CD24陽性細胞、CD56陽性細胞およびCD90陽性細胞の枯渇は、細胞集団において99%超のRPE細胞をもたらした。
実施例6−RPE富化細胞集団の特性評価のためのフローサイトメトリー純度アッセイ
【0168】
MACS選別を実施する前および後に、BEST1、CRALBP、TYRP1、PMEL17、MAP2、NESおよびMITFを含む関連マーカーのパネルによるRPE細胞の特性評価を(例えば、選別前および選別後に)実施した。MACSによるCD24陽性細胞、CD56陽性細胞および/またはCD90陽性細胞の除去の前後に、フローサイトメトリー純度アッセイを実施して、各マーカーについて陽性の細胞の割合(表1)の測定値を得た(
図2および3)。
【0169】
フローサイトメトリー純度アッセイを実施して、本開示の選別方法によって得られたRPE細胞の割合を決定した。MACSアッセイから収集した細胞懸濁物のアリコート(5mL FACSチューブ中、1サンプル当たり2×10
6個の細胞)を400×gで3分間遠心分離した。細胞ペレットを1mLの染色液(例えば、Live−Dead Red染色液)に再懸濁し、暗所、室温で15分間インキュベートした。インキュベーション後、2mLの洗浄緩衝液を添加し、細胞を400×gで3分間遠心分離して、未結合の染色液を除去した。細胞ペレットを固定緩衝液に再懸濁し、暗所、室温で15分間インキュベートした。インキュベーション後、2mLの洗浄緩衝液を添加し、細胞を400×gで3分間遠心分離し、上清をデカントした。細胞ペレットを2mLの洗浄緩衝液に再懸濁して懸濁物1mL当たり1×10
6個の細胞とし、200μLの細胞懸濁物をFACSチューブに移した。各チューブに2mLのPerm緩衝液を添加し、細胞を400×gで3分間遠心分離した。RPE特異的マーカーに対する一次抗体をPerm緩衝液で希釈し、100μLの希釈抗体溶液を各チューブに添加した。暗所、4℃で一晩インキュベートした後、細胞を2mLのPerm緩衝液で2回洗浄した。二次抗体溶液を各チューブに添加し、細胞を暗所、室温で1〜2時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をPerm緩衝液で2回洗浄し、(400×gで3分間)遠心分離し、フローサイトメトリー分析のために100μLの洗浄緩衝液に再懸濁した。米国特許第8,682,810号およびHerzenbergら、2006(これらは、参照により本明細書中に組み込まれる)などの当業者に公知の方法によって、フローサイトメトリー分析を実施して、試験した各マーカーについて陽性の細胞の割合を得た(表1)。フローサイトメトリー純度アッセイにより、CD24、CD56および/またはCD90について陽性の混入細胞を枯渇させるMACS選別は、BEST1マーカーによって決定した場合、出発細胞集団(78.6%)と比較してRPE細胞富化集団(95〜99%)をもたらしたことが示された。
実施例7−RPE細胞の分化のための代替方法
【0170】
実施例2および3に記載されている方法に関して、iPSCプレーティング後2日目から開始して分化プロセス(MACS培養後を含む)の終了までの特定の時間枠にわたって、1μMの濃度のPD0325901を培地に含めることにより、RPE集団の純度(これは、混入細胞の減少を意味する)および得られるRPE集団の成熟の両方を改善することができる。1μM PD0325901の含有は、RDMにおいてだけではなく、本明細書中に記載されるRPEプロセスのRPE−MM(約42〜50日目)に含めた場合にも、RPE集団の純度および成熟の両方を改善したことが示された。
実施例8−RPE細胞の分化のための代替方法
【0171】
実施例2および3に記載されている方法に関して、RPE−MMおよびRPE−MMプレーティング培地中のウシ胎仔血清の割合を5%から0.5〜1%に減少させることにより、RPE集団の純度(これは、混入細胞の減少を意味する)および得られるRPE集団の成熟の両方を改善することができる。
実施例9−成熟RPE細胞の機能性
【0172】
PGE2による処理から産生した成熟RPE細胞の分析のために、RPE単層の免疫染色を実施して、iPSC−RPE細胞のZO1染色および透過電子顕微鏡検査による密着結合の六角構造物(
図4A〜4C)を確認した(
図4D)。染色により、PGE2処理RPE細胞はβカテニンが減少しており、RPE65が増加していることが示された。加えて、IWP2+endo−IWR1またはIWP2による処理(treatment with IWP2+endo−IWR1 or IWP2 results)もまた、βカテニンの減少(
図5A)およびRPE65の増加(
図5C)をもたらす。IWP2+endo−IWR1の組み合わせは、IWP2単独またはendo−IWR1単独と比較してより有効であることが見出された。したがって、PGE2、IWP2またはIWP2+endo−IWR1による処理は、成熟RPE細胞をもたらす。
【0173】
本発明の方法によって作製したRPE細胞の関門機能を測定するために、経上皮電位(TEP)は、細胞を横切る通過を制御するエネルギー駆動イオンポンプによって生じた単層全体にわたるイオン勾配を測定した。かつ、経上皮電気抵抗(TER)は、主に密着結合構造の微細構造を介して傍細胞空間を通る物質の抵抗を測定する(
図7A)。
【0174】
IWP2またはendo−IWR1で処理した成熟RPE細胞の機能性も特性評価した。未処理RPE細胞対PGE2またはIWP2+endo−IWR1で処理したRPE細胞のTEPおよびTER測定値は、処理成熟RPE細胞の機能性の増加を示している(
図7C〜7E)。次に、RPE−MM+PGE2培地中のPGE2の濃度を50μMから100μMに増加させることにより、RPE集団の純度(すなわち、混入細胞の減少)および得られるRPE集団の成熟の両方が改善されるかを試験した。50μM PGE2処理培養物対100μM PGE2処理培養物の成熟および機能性を決定するために、経上皮電気抵抗(TER)に関する関門機能を測定して(
図7F)、実施例9で説明されている傍細胞空間を通る物質の抵抗性を比較した。RPE−MM+PGE2培地中、50μMまたは100μMでiPSC由来RPE培養物を処理した後に得られた純粋なRPE細胞の割合を決定するために、RPE特異的マーカーについて、実施例6に記載したように、フローサイトメトリー純度アッセイを実施した(
図7G)。その結果、より高濃度の一次繊毛インデューサーPGE2は、iPSC由来RPE分化のプロセスにおいてRPE集団の純度および成熟の両方を促進することが示された。
実施例10−RPE分化方法の再現性
【0175】
RPE分化プロセスの再現性を試験するために、複数のオペレーターが3つのiPSC株をRPE細胞に分化させた(
図6A)。フローサイトメトリーによるRPEマーカーレチンアルデヒド結合タンパク質1(Craplbp)の測定によって、得られたRPE細胞の平均純度を特性評価した(表2)。RPE分化プロセスは、異なる出発細胞集団および異なるオペレーター間で高度に再現性があることが見出された。加えて、3D1、AMD1B、BEST1L、BEST3A、BEST8A、AMD Donor3DおよびHLA LineAを含む異なる出発細胞株からのRPE分化によって、再現性を確認した(
図6B)。HLA LineA(21525.102)は、HLA−A*01およびHLA−B*08についてホモ接合性のドナーから産生されたiPSC株であり、米国人口の11.38%との有益なマッチを提供し得る。さらに、HLA Line C(21526.101)(これは、米国人口の7.63%との潜在的に有益なマッチを提供する可能性がある)と称される、HLA−A*03およびHLA−B*07についてホモ接合性のドナーから産生されたiPSC株を使用するこのプロセスを使用したRPEの産生も成功している。上記HLA−AおよびHLA−Bにおいてホモ接合性のHLA LineA(21525.102)およびHLA Line C(21526.101)は、Cellular Dynamics International,Inc.の所有物である。加えて、精製前後のCralbp陽性細胞の割合を測定することによって、13人のドナー由来の28個のiPSC株に対して実施した109のRPE分化において、再現性をさらに確認した(
図6C〜D)。RPE分化後のCralbp陽性細胞の割合は変動したが、MACS精製は一貫して95%超の純度をもたらし、ほとんどの場合においてほぼ100%の純度をもたらした。したがって、本RPE分化方法は、異なるオペレーターが実施した場合に、ドナー遺伝子型を超えてより一貫した再現性がある結果を提供するので、胚様体からRPE細胞を産生する任意の方法に対して明確な利点を有する。
【表2】
実施例11−材料および方法
【0176】
実施例1〜10で使用した材料は、表3に示されている。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【0177】
20mLのFBSを1000mLのDPBS(すなわち、カルシウムおよびマグネシウムを含まない)に添加することによって、フローサイトメトリー洗浄緩衝液を調製した。緩衝液はろ過滅菌したものであり、4℃で最大4週間保存することができる。
【0178】
20mLのFBSを1000mLのDPBS(すなわち、カルシウムおよびマグネシウムを含まない)に添加することによって、フローサイトメトリーPerm緩衝液を調製した。1グラムのサポニンを添加し、十分に混合した。緩衝液はろ過滅菌したものであり、4℃で最大4週間保存することができる。
【0179】
Live−Dead染色液をDPBS(すなわち、カルシウムおよびマグネシウムを含まない)で1:1000希釈することによって、フローサイトメトリーLive−Dead Red染色液を調製した。アッセイする細胞1×10
6個当たり1mLの染色液を調製した。使用前に、染色液を新たに調製した。
【0180】
1mLの36.5%ホルムアルデヒドを8.1mLのDPBS(すなわち、カルシウムおよびマグネシウムを含まない)に添加することによって、フローサイトメトリー固定緩衝液を調製した。アッセイする細胞1×10
6個当たり1mLの染色液を調製した。使用前に、緩衝液を新たに調製した。
【0181】
本明細書中に開示される方法および特許請求される方法のすべてが、本開示に鑑みて過度の実験を行うことなく、なされ、実行され得る。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態に関して記載されてきたが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載される方法およびそれらの方法の工程または一連の工程にバリエーションが適用され得ることが当業者には明らかである。より詳細には、化学的かつ生理的に関係するある特定の作用物質が、本明細書中に記載される作用物質の代わりに用いられ得るが、同じまたは類似の結果が達成されることが明らかである。当業者に明らかなそのような類似の代用物および改変のすべてが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
参照文献
以下の参照文献は、例示的方法の詳細または本明細書に記載のものに補足する他の詳細を提供する範囲で、特に本明細書において参考として援用される。
【数1】
【数2】