特許第6983767号(P6983767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983767ファブリペロー干渉フィルタ、及びファブリペロー干渉フィルタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983767
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ファブリペロー干渉フィルタ、及びファブリペロー干渉フィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20211206BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20211206BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G02B26/00
   B81B3/00
   B81C1/00
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-519165(P2018-519165)
(86)(22)【出願日】2017年5月1日
(86)【国際出願番号】JP2017017172
(87)【国際公開番号】WO2017203949
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2020年4月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-106269(P2016-106269)
(32)【優先日】2016年5月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】笠原 隆
(72)【発明者】
【氏名】柴山 勝己
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 真樹
(72)【発明者】
【氏名】川合 敏光
(72)【発明者】
【氏名】大山 泰生
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 有未
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0311664(US,A1)
【文献】 特開2005−215323(JP,A)
【文献】 特開2005−043726(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0160137(US,A1)
【文献】 特開2007−036233(JP,A)
【文献】 特開2015−152713(JP,A)
【文献】 特開2015−199071(JP,A)
【文献】 特開2011−181909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00,5/28
B81B 3/00
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面を有する基板と、
前記第1表面に配置された第1ミラー部を有する第1層と、
前記第1ミラー部に対して前記基板とは反対側において空隙を介して前記第1ミラー部と対向する第2ミラー部を有する第2層と、
前記第1層と前記第2層との間において前記空隙を画定する中間層と、を備え、
前記基板は、前記第1表面に垂直な方向から見た場合に前記中間層の外縁よりも外側に位置する外縁部を有し、
前記第2層は、
前記中間層を被覆する被覆部と、
前記外縁部における前記第1表面上に位置する周縁部と、を更に有し、
前記第2ミラー部、前記被覆部及び前記周縁部は、互いに連続するように一体的に形成されており、
前記周縁部は、前記外縁部の外縁に沿って薄化されており、
前記周縁部における前記第1表面側の表面は、前記第1層における前記空隙を画定する表面よりも、前記第1表面側に位置する、ファブリペロー干渉フィルタ。
【請求項2】
前記被覆部は、前記第1層の外縁を被覆している、請求項1に記載のファブリペロー干渉フィルタ。
【請求項3】
前記第1層は、窒化シリコン層を含む積層体である、請求項2に記載のファブリペロー干渉フィルタ。
【請求項4】
前記第2層は、複数の層を含む積層体であり、
前記周縁部は、複数の層の一部が除去されていることによって、前記外縁部の前記外縁に沿って薄化されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のファブリペロー干渉フィルタ。
【請求項5】
第1表面を有する基板と、
前記第1表面に配置された第1ミラー部を有する第1層と、
前記第1ミラー部に対して前記基板とは反対側において空隙を介して前記第1ミラー部と対向する第2ミラー部を有する第2層と、
前記第1層と前記第2層との間において前記空隙を画定する中間層と、
前記基板において前記第1表面と対向する第2表面に配置された第3層を備え、
前記基板は、前記第1表面に垂直な方向から見た場合に前記中間層の外縁よりも外側に位置する外縁部を有し、
前記第2層は、
前記中間層を被覆する被覆部と、
前記外縁部における前記第1表面上に位置する周縁部と、を更に有し、
前記第2ミラー部、前記被覆部及び前記周縁部は、互いに連続するように一体的に形成されており、
前記周縁部は、前記外縁部の外縁に沿って薄化されており、
前記第3層は、前記外縁部の前記外縁に沿って薄化されている、ファブリペロー干渉フィルタ。
【請求項6】
第1表面を有する基板と、前記第1表面に配置された第1ミラー部を有する第1層と、
前記第1ミラー部に対して前記基板とは反対側において空隙を介して前記第1ミラー部と対向する第2ミラー部を有する第2層と、前記第1層と前記第2層との間において前記空隙を画定する中間層と、を備え、前記基板は、前記第1表面に垂直な方向から見た場合に前記中間層の外縁よりも外側に位置する外縁部を有し、前記第2層は、前記中間層を被覆する被覆部と、前記外縁部における前記第1表面上に位置する周縁部と、を更に有し、前記第2ミラー部、前記被覆部及び前記周縁部は、互いに連続するように一体的に形成されており、前記周縁部は、前記外縁部の外縁に沿って薄化されている、ファブリペロー干渉フィルタの製造方法であって、
前記基板に対応する部分を複数含むウェハを用意し、前記第1ミラー部を有する前記第1層を、前記基板に対応する前記部分ごとに形成する第1ステップと、
前記第1ステップの後に、前記空隙に対応する除去予定部を有する前記中間層を、前記基板に対応する前記部分ごとに形成する第2ステップと、
前記第2ステップの後に、複数の貫通孔が形成された前記第2ミラー部と、前記中間層を被覆する前記被覆部と、前記外縁部の前記外縁に沿って薄化された前記周縁部と、を有する前記第2層を、前記基板に対応する前記部分ごとに形成する第3ステップと、
前記第3ステップの後に、前記貫通孔を介したエッチングによって前記除去予定部を除去することにより、前記第1ミラー部と前記第2ミラー部との間に位置する前記空隙を、前記基板に対応する前記部分ごとに形成する第4ステップと、
前記第4ステップの後に、前記外縁部の前記外縁に沿って前記ウェハを切断し、前記ファブリペロー干渉フィルタを得る第5ステップと、を備える、ファブリペロー干渉フィルタの製造方法。
【請求項7】
前記第5ステップにおいては、レーザ光の照射によって、前記外縁部の前記外縁に沿って前記ウェハの内部に改質領域を形成し、前記改質領域から前記ウェハの厚さ方向に亀裂を伸展させることにより、前記外縁部の前記外縁に沿って前記ウェハを切断する、請求項6に記載のファブリペロー干渉フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファブリペロー干渉フィルタ、及びファブリペロー干渉フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のファブリペロー干渉フィルタとして、基板と、基板上に配置された第1ミラー部を有する第1層と、空隙を介して第1ミラー部と対向する第2ミラー部を有する第2層と、第1層と第2層との間において空隙を画定する中間層と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−257561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなファブリペロー干渉フィルタでは、第1層、中間層及び第2層のそれぞれの厚さが、例えば数十nm〜数十μm程度というように極めて薄いため、使用時等に各層に剥がれが生じるおそれがある。
【0005】
本開示の一形態は、基板上の各層に剥がれが生じるのを抑制することができるファブリペロー干渉フィルタ、及びファブリペロー干渉フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係るファブリペロー干渉フィルタは、第1表面を有する基板と、第1表面に配置された第1ミラー部を有する第1層と、第1ミラー部に対して基板とは反対側において空隙を介して第1ミラー部と対向する第2ミラー部を有する第2層と、第1層と第2層との間において空隙を画定する中間層と、を備え、基板は、第1表面に垂直な方向から見た場合に中間層の外縁よりも外側に位置する外縁部を有し、第2層は、中間層を被覆する被覆部と、外縁部における第1表面上に位置する周縁部と、を更に有し、第2ミラー部、被覆部及び周縁部は、互いに連続するように一体的に形成されており、周縁部は、外縁部の外縁に沿って薄化されている。
【0007】
このファブリペロー干渉フィルタでは、第2層が、第1ミラー部に加えて、中間層を被覆する被覆部と、外縁部における第1表面上に位置する周縁部と、を更に有しており、これら第1ミラー部、被覆部及び周縁部が、互いに連続するように一体的に形成されている。これにより、第2層によって中間層が覆われているので、中間層の剥がれが抑制されている。また、第2層によって中間層が覆われているので、例えばエッチングによって中間層に空隙を形成した場合でも、中間層の劣化が抑制され、その結果、中間層の安定性が向上している。更に、このファブリペロー干渉フィルタでは、周縁部は、外縁部の外縁に沿って薄化されている。これにより、例えば、基板に対応する部分を含むウェハを外縁部の外縁に沿って切断し、ファブリペロー干渉フィルタを得た場合でも、基板上の各層の劣化が抑制され、その結果、基板上の各層の安定性が向上している。以上により、このファブリペロー干渉フィルタによれば、基板上の各層に剥がれが生じるのを抑制することができる。なお、「周縁部が外縁部の外縁に沿って薄化されている」とは、「周縁部のうち外縁部の外縁に沿う部分の厚さが、周縁部のうち外縁部の外縁に沿う部分を除く他の部分の厚さよりも小さい(0を含む)」ことを意味する。
【0008】
本開示の一形態に係るファブリペロー干渉フィルタでは、被覆部は、第1層の外縁を被覆していてもよい。これによれば、第1層の剥がれをより確実に抑制することができる。更に、例えば、基板に対応する部分を含むウェハを外縁部の外縁に沿って切断し、ファブリペロー干渉フィルタを得た場合でも、第1層の劣化をより好適に抑制することができる。
【0009】
本開示の一形態に係るファブリペロー干渉フィルタでは、第1層は、窒化シリコン層を含む積層体であってもよい。これによれば、第1層の窒化シリコン層が外部に露出していないため、例えば、フッ酸ガスを用いたエッチングによって中間層に空隙を形成した場合でも、フッ酸ガスと窒化シリコン層とが反応して残渣が発生することを抑制することができる。
【0010】
本開示の一形態に係るファブリペロー干渉フィルタでは、第2層は、複数の層を含む積層体であり、周縁部は、複数の層の一部が除去されていることによって、外縁部の外縁に沿って薄化されていてもよい。これによれば、複数の層のうち除去されずに残存している部分によって、基板の第1表面を保護することができる。
【0011】
本開示の一形態に係るファブリペロー干渉フィルタは、基板において第1表面と対向する第2表面に配置された第3層を更に備え、第3層は、外縁部の外縁に沿って薄化されていてもよい。これによれば、基板の第2表面に第3層が配置されているので、基板の第1表面側と第2表面側との間の層構成の不一致に起因する基板の反りを抑制することができる。更に、例えば、基板に対応する部分を含むウェハを外縁部の外縁に沿って切断し、ファブリペロー干渉フィルタを得た場合でも、第3層の劣化が抑制され、その結果、第3層の各層の安定性が向上している。なお、「第3層が外縁部の外縁に沿って薄化されている」とは、「第3層のうち外縁部の外縁に沿う部分の厚さが、第3層のうち外縁部の外縁に沿う部分を除く他の部分の厚さよりも小さい(0を含む)」ことを意味する。
【0012】
本開示の一形態に係るファブリペロー干渉フィルタの製造方法は、上記ファブリペロー干渉フィルタの製造方法であって、基板に対応する部分を複数含むウェハを用意し、第1ミラー部を有する第1層を、基板に対応する部分ごとに形成する第1ステップと、第1ステップの後に、空隙に対応する除去予定部を有する中間層を、基板に対応する部分ごとに形成する第2ステップと、第2ステップの後に、複数の貫通孔が形成された第2ミラー部と、中間層を被覆する被覆部と、外縁部の外縁に沿って薄化された周縁部と、を有する第2層を、基板に対応する部分ごとに形成する第3ステップと、第3ステップの後に、貫通孔を介したエッチングによって除去予定部を除去することにより、第1ミラー部と第2ミラー部との間に位置する空隙を、基板に対応する部分ごとに形成する第4ステップと、第4ステップの後に、外縁部の外縁に沿ってウェハを切断し、ファブリペロー干渉フィルタを得る第5ステップと、を備える。
【0013】
このファブリペロー干渉フィルタの製造方法では、中間層を被覆する被覆部を有する第2層を形成した後に、エッチングによって中間層の除去予定部を除去する。これにより、エッチングによって除去予定部を除去する際の中間層の劣化を抑制することができる。更に、このファブリペロー干渉フィルタの製造方法では、外縁部の外縁に沿って薄化された周縁部を有する第2層を形成した後に、ウェハを外縁部の外縁に沿って切断し、ファブリペロー干渉フィルタを得る。これにより、ウェハを切断する際の基板上の各層の劣化を抑制することができる。また、このファブリペロー干渉フィルタの製造方法により製造されたファブリペロー干渉フィルタでは、第2層によって中間層が被覆されているので、中間層の剥がれが抑制されている。以上により、このファブリペロー干渉フィルタの製造方法によれば、基板上の各層に剥がれが生じるのを抑制することができる。
【0014】
本開示の一形態に係るファブリペロー干渉フィルタの製造方法では、第5ステップにおいては、レーザ光の照射によって、外縁部の外縁に沿ってウェハの内部に改質領域を形成し、改質領域からウェハの厚さ方向に亀裂を伸展させることにより、外縁部の外縁に沿ってウェハを切断してもよい。これによれば、周縁部が外縁部の外縁に沿って薄化されているので、レーザ光をウェハの内部に好適に集光させることができ、ウェハを精度良く切断することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一形態によれば、基板上の各層に剥がれが生じるのを抑制することができるファブリペロー干渉フィルタ、及びファブリペロー干渉フィルタの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るファブリペロー干渉フィルタの平面図である。
図2図2は、図1のファブリペロー干渉フィルタの底面図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿ってのファブリペロー干渉フィルタの断面図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、図1のファブリペロー干渉フィルタの製造方法を説明するための図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、図1のファブリペロー干渉フィルタの製造方法を説明するための図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、図1のファブリペロー干渉フィルタの製造方法を説明するための図である。
図7図7は、図1のファブリペロー干渉フィルタの製造方法を説明するための図である。
図8図8(a)は、第1変形例のファブリペロー干渉フィルタの断面図であり、図8(b)は、第2変形例のファブリペロー干渉フィルタの断面図である。
図9図9(a)は、第3変形例のファブリペロー干渉フィルタの断面図であり、図9(b)は、第4変形例のファブリペロー干渉フィルタの断面図である。
図10図10は、第5変形例のファブリペロー干渉フィルタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0018】
図1図2及び図3に示されるように、ファブリペロー干渉フィルタ1は、基板11を備えている。基板11は、第1表面11aと、第1表面11aと対向する第2表面11bと、を有している。第1表面11aには、反射防止層21、第1積層体(第1層)22、中間層23及び第2積層体(第2層)24が、この順序で積層されている。第1積層体22と第2積層体24との間には、枠状の中間層23によって空隙(エアギャップ)Sが画定されている。
【0019】
第1表面11aに垂直な方向から見た場合(平面視)における各部の形状及び位置関係は、次の通りである。基板11の外縁は、例えば矩形状である。基板11の外縁と第2積層体24の外縁とは、互いに一致している。反射防止層21の外縁と第1積層体22の外縁と中間層23の外縁とは、互いに一致している。基板11は、中間層23の外縁よりも外側に位置する外縁部11cを有している。外縁部11cは、例えば、枠状であり、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に中間層23を包囲している。
【0020】
ファブリペロー干渉フィルタ1は、その中央部に画定された光透過領域1aにおいて、所定の波長を有する光を透過させる。光透過領域1aは、例えば円柱状の領域である。基板11は、例えば、シリコン、石英又はガラス等からなる。基板11がシリコンからなる場合には、反射防止層21及び中間層23は、例えば、酸化シリコンからなる。中間層23の厚さは、例えば、数十nm〜数十μmである。
【0021】
第1積層体22のうち光透過領域1aに対応する部分は、第1ミラー部31として機能する。第1ミラー部31は、反射防止層21を介して第1表面11aに配置されている。第1積層体22は、複数のポリシリコン層25と複数の窒化シリコン層26とが一層ずつ交互に積層されることで構成されている。本実施形態では、ポリシリコン層25a、窒化シリコン層26a、ポリシリコン層25b、窒化シリコン層26b及びポリシリコン層25cが、この順で反射防止層21上に積層されている。第1ミラー部31を構成するポリシリコン層25及び窒化シリコン層26のそれぞれの光学厚さは、中心透過波長の1/4の整数倍であることが好ましい。なお、第1ミラー部31は、反射防止層21を介することなく第1表面11a上に直接に配置されてもよい。
【0022】
第2積層体24のうち光透過領域1aに対応する部分は、第2ミラー部32として機能する。第2ミラー部32は、第1ミラー部31に対して基板11とは反対側において空隙Sを介して第1ミラー部31と対向している。第2ミラー部32は、反射防止層21、第1積層体22及び中間層23を介して第1表面11aに配置されている。第2積層体24は、複数のポリシリコン層27と複数の窒化シリコン層28とが一層ずつ交互に積層されることで構成されている。本実施形態では、ポリシリコン層27a、窒化シリコン層28a、ポリシリコン層27b、窒化シリコン層28b及びポリシリコン層27cが、この順で中間層23上に積層されている。第2ミラー部32を構成するポリシリコン層27及び窒化シリコン層28のそれぞれの光学厚さは、中心透過波長の1/4の整数倍であることが好ましい。
【0023】
なお、第1積層体22及び第2積層体24では、窒化シリコン層の代わりに酸化シリコン層が用いられてもよい。また、第1積層体22及び第2積層体24を構成する各層の材料としては、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、フッ化マグネシウム、酸化アルミニウム、フッ化カルシウム、シリコン、ゲルマニウム、硫化亜鉛等が用いられてもよい。
【0024】
第2積層体24において空隙Sに対応する部分には、第2積層体24の中間層23とは反対側の表面24aから空隙Sに至る複数の貫通孔24bが形成されている。複数の貫通孔24bは、第2ミラー部32の機能に実質的に影響を与えない程度に形成されている。複数の貫通孔24bは、エッチングによって中間層23の一部を除去して空隙Sを形成するために用いられる。
【0025】
第2積層体24は、第2ミラー部32に加えて、被覆部33と、周縁部34と、を更に有している。第2ミラー部32、被覆部33及び周縁部34は、互いに同じ積層構造を有し且つ互いに連続するように、一体的に形成されている。被覆部33は、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に第2ミラー部32を包囲している。被覆部33は、中間層23の基板11とは反対側の表面23a、並びに、中間層23の側面23b、第1積層体22の側面22a及び反射防止層21の側面21aを被覆しており、第1表面11aに至っている。すなわち、被覆部33は、中間層23の外縁、第1積層体22の外縁及び反射防止層21の外縁を被覆している。
【0026】
周縁部34は、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に被覆部33を包囲している。周縁部34は、外縁部11cにおける第1表面11a上に位置している。周縁部34の外縁は、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に基板11の外縁と一致している。
【0027】
周縁部34は、外縁部11cの外縁に沿って薄化されている。すなわち、周縁部34のうち外縁部11cの外縁に沿う部分は、周縁部34のうち外縁に沿う部分を除く他の部分と比べて薄くなっている。本実施形態では、周縁部34は、第2積層体24を構成するポリシリコン層27及び窒化シリコン層28の一部が除去されていることによって薄化されている。周縁部34は、被覆部33に連続する非薄化部34aと、非薄化部34aを包囲する薄化部34bと、を有している。薄化部34bにおいては、第1表面11a上に直接に設けられたポリシリコン層27a以外のポリシリコン層27及び窒化シリコン層28が除去されている。
【0028】
非薄化部34aの基板11とは反対側の表面34cの第1表面11aからの高さは、中間層23の表面23aの第1表面11aからの高さよりも低い。非薄化部34aの表面34cの第1表面11aからの高さは、例えば700nm〜1400nmである。中間層23の表面23aの第1表面11aからの高さは、例えば2000nm〜4000nmである。薄化部34bの幅(非薄化部34aの外縁と外縁部11cの外縁との間の距離)は、基板11の厚さの0.01倍以上である。薄化部34bの幅は、例えば5μm〜400μmである。基板11の厚さは、例えば500μm〜800μmである。
【0029】
第1ミラー部31には、光透過領域1aを囲むように第1電極12が形成されている。第1電極12は、ポリシリコン層25cに不純物をドープして低抵抗化することで形成されている。第1ミラー部31には、光透過領域1aを含むように第2電極13が形成されている。第2電極13は、ポリシリコン層25cに不純物をドープして低抵抗化することで形成されている。第2電極13の大きさは、光透過領域1aの全体を含む大きさであることが好ましいが、光透過領域1aの大きさと略同一であってもよい。
【0030】
第2ミラー部32には、第3電極14が形成されている。第3電極14は、空隙Sを介して第1電極12及び第2電極13と対向している。第3電極14は、ポリシリコン層27aに不純物をドープして低抵抗化することで形成されている。
【0031】
端子15は、光透過領域1aを挟んで対向するように一対設けられている。各端子15は、第2積層体24の表面24aから第1積層体22に至る貫通孔内に配置されている。各端子15は、配線12aを介して第1電極12と電気的に接続されている。
【0032】
端子16は、光透過領域1aを挟んで対向するように一対設けられている。各端子16は、第2積層体24の表面24aから中間層23の内部に至る貫通孔内に配置されている。各端子16は、配線13aを介して第2電極13と電気的に接続されていると共に、配線14aを介して第3電極14と電気的に接続されている。一対の端子15が対向する方向と、一対の端子16が対向する方向とは、直交している(図1参照)。
【0033】
第1積層体22の表面22bには、トレンチ17,18が設けられている。トレンチ17は、配線13aにおける端子16との接続部分を囲むように環状に延在している。トレンチ17は、第1電極12と配線13aとを電気的に絶縁している。トレンチ18は、第1電極12の内縁に沿って環状に延在している。トレンチ18は、第1電極12と第1電極12の内側の領域(第2電極13)とを電気的に絶縁している。各トレンチ17,18内の領域は、絶縁材料であっても、空隙であってもよい。
【0034】
第2積層体24の表面24aには、トレンチ19が設けられている。トレンチ19は、端子15を囲むように環状に延在している。トレンチ19は、端子15と第3電極14とを電気的に絶縁している。トレンチ19内の領域は、絶縁材料であっても、空隙であってもよい。
【0035】
基板11の第2表面11bには、反射防止層41、第3積層体(第3層)42、中間層(第3層)43及び第4積層体(第3層)44が、この順序で積層されている。反射防止層41及び中間層43は、それぞれ、反射防止層21及び中間層23と同様の構成を有している。第3積層体42及び第4積層体44は、それぞれ、基板11を基準として第1積層体22及び第2積層体24と対称の積層構造を有している。反射防止層41、第3積層体42、中間層43及び第4積層体44は、基板11の反りを抑制する機能を有している。
【0036】
第3積層体42、中間層43及び第4積層体44は、外縁部11cの外縁に沿って薄化されている。すなわち、第3積層体42、中間層43及び第4積層体44のうち外縁部11cの外縁に沿う部分は、第3積層体42、中間層43及び第4積層体44のうち外縁に沿う部分を除く他の部分と比べて薄くなっている。本実施形態では、第3積層体42、中間層43及び第4積層体44は、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に薄化部34bと重なる部分において第3積層体42、中間層43及び第4積層体44の全部が除去されていることによって薄化されている。
【0037】
第3積層体42、中間層43及び第4積層体44には、光透過領域1aを含むように開口40aが設けられている。開口40aは、光透過領域1aの大きさと略同一の径を有している。開口40aは、光出射側に開口しており、開口40aの底面は、反射防止層41に至っている。
【0038】
第4積層体44の光出射側の表面には、遮光層45が形成されている。遮光層45は、例えばアルミニウム等からなる。遮光層45の表面及び開口40aの内面には、保護層46が形成されている。保護層46は、第3積層体42、中間層43、第4積層体44及び遮光層45の外縁を被覆すると共に、外縁部11c上の反射防止層41を被覆している。保護層46は、例えば酸化アルミニウムからなる。なお、保護層46の厚さを1〜100nm(好ましくは、30nm程度)にすることで、保護層46による光学的な影響を無視することができる。
【0039】
以上のように構成されたファブリペロー干渉フィルタ1においては、端子15,16を介して第1電極12と第3電極14との間に電圧が印加されると、当該電圧に応じた静電気力が第1電極12と第3電極14との間に発生する。当該静電気力によって、第2ミラー部32が、基板11に固定された第1ミラー部31側に引き付けられ、第1ミラー部31と第2ミラー部32との距離が調整される。このように、ファブリペロー干渉フィルタ1では、第1ミラー部31と第2ミラー部32との距離が可変とされている。
【0040】
ファブリペロー干渉フィルタ1を透過する光の波長は、光透過領域1aにおける第1ミラー部31と第2ミラー部32との距離に依存する。したがって、第1電極12と第3電極14との間に印加する電圧を調整することで、透過する光の波長を適宜選択することができる。このとき、第2電極13は、第3電極14と同電位である。したがって、第2電極13は、光透過領域1aにおいて第1ミラー部31及び第2ミラー部32を平坦に保つための補償電極として機能する。
【0041】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、例えば、ファブリペロー干渉フィルタ1に印加する電圧を変化させながら(すなわち、ファブリペロー干渉フィルタ1において第1ミラー部31と第2ミラー部32との距離を変化させながら)、ファブリペロー干渉フィルタ1の光透過領域1aを透過した光を光検出器によって検出することで、分光スペクトルを得ることができる。
【0042】
以上説明したように、ファブリペロー干渉フィルタ1では、第2積層体24が、第1ミラー部31に加えて、中間層23を被覆する被覆部33と、外縁部11cにおける第1表面11a上に位置する周縁部34と、を更に有しており、これら第1ミラー部31、被覆部33及び周縁部34が、互いに連続するように一体的に形成されている。これにより、第2積層体24によって中間層23が覆われているので、中間層23の剥がれが抑制されている。また、第2積層体24によって中間層23が覆われているので、例えばエッチングによって中間層23に空隙Sを形成した場合でも、中間層23の劣化が抑制され、その結果、中間層23の安定性が向上している。更に、ファブリペロー干渉フィルタ1では、周縁部34は、外縁部11cの外縁に沿って薄化されている。これにより、例えば、基板11に対応する部分を含むウェハを外縁部11cの外縁に沿って切断し、ファブリペロー干渉フィルタ1を得た場合でも、基板11上の各層の劣化が抑制され、その結果、基板上の各層の安定性が向上している。以上により、ファブリペロー干渉フィルタ1によれば、基板11上の各層に剥がれが生じるのを抑制することができる。更に、ファブリペロー干渉フィルタ1では、第2積層体24によって中間層23の側面23bが覆われているので、中間層23の側面23bからの光の進入を抑制することができ、迷光の発生を抑制することができる。
【0043】
また、ファブリペロー干渉フィルタ1では、被覆部33が第1積層体22の外縁を被覆している。これにより、第1積層体22の剥がれをより確実に抑制することができる。更に、例えば、基板11に対応する部分を含むウェハを外縁部11cの外縁に沿って切断し、ファブリペロー干渉フィルタ1を得た場合でも、第1積層体22の劣化をより好適に抑制することができる。
【0044】
また、ファブリペロー干渉フィルタ1では、第1積層体22が含む窒化シリコン層26の外縁が被覆部33によって被覆されている。これにより、第1積層体22の窒化シリコン層26が外部に露出していないため、例えば、フッ酸ガスを用いたエッチングよって中間層23に空隙Sを形成した場合でも、フッ酸ガスと窒化シリコン層26とが反応して残渣が発生することを抑制することができる。
【0045】
また、ファブリペロー干渉フィルタ1では、第2積層体24を構成するポリシリコン層27及び窒化シリコン層28の一部が除去されていることによって、外縁部11cの外縁に沿って薄化されていている。これにより、第2積層体24を構成するポリシリコン層27及び窒化シリコン層28のうち除去されずに残存している部分によって、基板11の第1表面11aを保護することができる。更に、ファブリペロー干渉フィルタ1では、薄化部34bにはポリシリコン層27aのみが残存している。これにより、薄化部34bの表面が滑らかになるので、例えば、基板11に対応する部分を含むウェハを外縁部11cの外縁に沿って切断するために、レーザ光を外縁部11cの外縁に沿ってウェハの内部に集光させた場合でも、レーザ光をウェハの内部に好適に集光させてウェハを精度良く切断することができ、基板11上の各層の劣化をより好適に抑制することができる。
【0046】
また、ファブリペロー干渉フィルタ1では、基板11の第2表面11bに第3積層体42及び第4積層体44が配置されており、第3積層体42及び第4積層体44が外縁部11cの外縁に沿って薄化されている。これにより、基板11の第1表面11a側と第2表面11b側との間の層構成の不一致に起因する基板11の反りを抑制することができる。更に、例えば、基板11に対応する部分を含むウェハを外縁部11cの外縁に沿って切断し、ファブリペロー干渉フィルタ1を得た場合でも、第3積層体42及び第4積層体44の劣化が抑制され、その結果、基板11上の各層の安定性が向上している。
【0047】
次に、図4図7を参照しつつ、ファブリペロー干渉フィルタ1の製造方法の一例を説明する。まず、図4(a)に示されるように、基板11に対応する部分Rを複数含むウェハ10を用意し、第1ミラー部31を有する第1積層体22を、ウェハ10の基板11に対応する部分Rごとに形成する(第1ステップ)。ウェハ10は、例えばシリコンウエハである。ウェハ10において、部分Rは、例えば、互いに隣接するように格子状に配置されている。部分R同士の境界上には、ダイシングラインLが設定されている。
【0048】
第1ステップでは、まず、部分Rの第1表面11a上に反射防止層21を形成し、これと同時に、部分Rの第2表面11b上に反射防止層41を形成する。続いて、反射防止層21上に、第1積層体22を構成するポリシリコン層25a、窒化シリコン層26a、ポリシリコン層25b、窒化シリコン層26b及びポリシリコン層25cをこの順序で積層する。この第1積層体22の積層と同時に、反射防止層41上に、第3積層体42を構成するポリシリコン層及び窒化シリコン層を積層する。第1積層体22の積層の際には、ポリシリコン層25及び窒化シリコン層26を第1表面11a上にわたって積層した後に、ポリシリコン層25及び窒化シリコン層26のうち第1表面11aに垂直な方向から見た場合に外縁部11c上に位置する部分をエッチングによって除去する。また、第1積層体22の積層と並行して、ポリシリコン層25b,25cを不純物ドープによって部分的に低抵抗化し、第1電極12及び第2電極13を形成する。続いて、エッチングによってトレンチ17,18を形成する。
【0049】
続いて、図4(b)に示されるように、空隙Sに対応する除去予定部50を有する中間層23を、部分Rごとに形成する(第2ステップ)。第2ステップでは、まず、中間層23によって第1積層体22が覆われるように、部分Rの第1表面11a上にわたって中間層23を形成する。この中間層23の形成と同時に、第3積層体42上に中間層43を形成する。続いて、中間層23のうち第1表面11aに垂直な方向から見た場合に外縁部11c上に位置する部分をエッチングによって除去する。このエッチングの際に、反射防止層21のうち第1表面11aに垂直な方向から見た場合に外縁部11c上に位置する部分が除去される。また、このエッチングの際に、図3の配線13a及び端子15,16に対応する部分に空隙を形成する。
【0050】
続いて、図5(a)、図5(b)及び図6(a)に示されるように、複数の貫通孔24bが形成された第2ミラー部32と、中間層23を被覆する被覆部33と、外縁部11cの外縁に沿って薄化された周縁部34と、を有する第2積層体24を、部分Rごとに形成する(第3ステップ)。
【0051】
第3ステップでは、まず、中間層23上に、第2積層体24を構成するポリシリコン層27a、窒化シリコン層28a、ポリシリコン層27b、窒化シリコン層28b及びポリシリコン層27cをこの順序で積層する。より具体的には、図5(a)に示されるように、第2積層体24によって中間層23の表面23a及び側面23b、第1積層体22の側面22a並びに反射防止層21の側面21aが覆われるように、部分Rの第1表面11a上にわたって第2積層体24を積層する。一方、第2積層体24の積層と同時に、中間層43上に、第4積層体44を構成するポリシリコン層及び窒化シリコン層を積層する。続いて、図5(b)に示されるように、ポリシリコン層27a以外のポリシリコン層27及び窒化シリコン層28のうち薄化部34bに対応する部分をエッチングによって除去することにより、外縁部11cの外縁に沿って薄化された周縁部34を形成する。また、第2積層体24の積層と並行して、ポリシリコン層27aを不純物ドープによって部分的に低抵抗化し、第3電極14を形成する。続いて、端子15,16を形成する。
【0052】
続いて、図6(a)に示されるように、第2積層体24を部分的にエッチングすることにより、第2ミラー部32の表面24aから除去予定部50に至る貫通孔24bを形成する。続いて、第4積層体44上に遮光層45を形成する。続いて、第3積層体42、中間層43、第4積層体44及び遮光層45のうち垂直な方向から見た場合に薄化部34bと重なる部分をエッチングによって除去することにより、第3積層体42、中間層43及び第4積層体44を外縁部11cの外縁に沿って薄化する。また、このエッチングの際に、第3積層体42、中間層43、第4積層体44及び遮光層45に開口40aを形成する。続いて、遮光層45の表面及び開口40aの内面に、保護層46を形成する。
【0053】
続いて、図6(b)に示されるように、貫通孔24bを介したエッチングによって除去予定部50を除去することにより、第1ミラー部31と第2ミラー部32との間に位置する空隙Sを、部分Rごとに形成する(第4ステップ)。第4ステップでは、貫通孔24bを介した気相エッチングによって除去予定部50を除去する。この気相エッチングには、例えばフッ酸ガスが用いられる。
【0054】
続いて、図6(b)に示されるように、ダイシングラインLにおいて外縁部11cの外縁に沿ってウェハ10を切断し、ファブリペロー干渉フィルタ1を得る(第5ステップ)。第5ステップにおいては、例えば、第1表面11a側からのレーザ光の照射によって、外縁部11cの外縁に沿ってウェハ10の内部に改質領域を形成し、改質領域からウェハ10の厚さ方向に亀裂を伸展させることにより、外縁部11cの外縁に沿ってウェハ10を切断する。
【0055】
以上説明したように、ファブリペロー干渉フィルタ1の製造方法では、中間層23を被覆する被覆部33を有する第2積層体24を形成した後に、エッチングによって中間層23の除去予定部50を除去する。これにより、エッチングによって除去予定部50を除去する際の中間層23の劣化を抑制することができる。更に、このファブリペロー干渉フィルタ1の製造方法では、外縁部11cの外縁に沿って薄化された周縁部34を有する第2積層体24を形成した後に、ウェハ10を外縁部11cの外縁に沿って切断し、ファブリペロー干渉フィルタ1を得る。これにより、ウェハ10の切断の際の基板11上の各層の劣化を抑制することができる。また、このファブリペロー干渉フィルタ1の製造方法により製造されたファブリペロー干渉フィルタ1では、第2積層体24によって中間層23が被覆されているので、中間層23の剥がれが抑制されている。以上より、このファブリペロー干渉フィルタ1の製造方法によれば、基板11上の各層に剥がれが生じるのを抑制することができる。
【0056】
また、このファブリペロー干渉フィルタ1の製造方法では、レーザ光の照射によってウェハ10の内部に改質領域を形成し、当該改質領域からウェハ10の厚さ方向に亀裂を伸展させることによってウェハ10を切断する。薄化部34bを形成することにより、レーザ光をウェハ10の内部に好適に集光させることができ、ウェハ10を精度良く切断することができる。
【0057】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示の一形態は、上記一実施形態に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。
【0058】
周縁部34は、薄化部34bにおいてポリシリコン層27及び窒化シリコン層28の全部が除去されていることによって薄化されていてもよい。この場合、周縁部34の外縁は、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に外縁部11cの外縁よりも内側に位置する。薄化部34bにおいて、ポリシリコン層27a上にポリシリコン層27又は窒化シリコン層28が更に配置されていてもよい。つまり、周縁部34のうち外縁部11cの外縁に沿う部分の厚さが、周縁部34のうち外縁部11cの外縁に沿う部分を除く他の部分の厚さよりも小さければよい(0を含む)。第3積層体42、中間層43及び第4積層体44は、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に薄化部34bと重なる領域において各層の一部が除去されていることによって薄化されていてもよい。つまり、第3積層体42、中間層43及び第4積層体44のうち外縁部11cの外縁に沿う部分の厚さが、第3積層体42、中間層43及び第4積層体44のうち外縁部11cの外縁に沿う部分を除く他の部分の厚さよりも小さければよい(0を含む)。
【0059】
周縁部34と外縁部11cにおける第1表面11aとの間に第1積層体22が介在していてもよい。この場合、第1積層体22の外縁は、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に、中間層23の外縁と外縁部11cの外縁との間に位置していてもよいし、外縁部11cの外縁と一致していてもよい。これらの場合、第1積層体22において外縁部11cにおける第1表面11a上に位置する部分(周縁部)は、外縁部11cの外縁に沿って薄化されていてもよい。この構成によれば、基板11に対応する部分Rを含むウェハ10を外縁部11cの外縁に沿って切断し、ファブリペロー干渉フィルタ1を得た場合でも、基板11上の各層の劣化をより好適に抑制することができる。更に、第1積層体22の周縁部が外縁部11cの外縁に沿って薄化されているので、レーザ光の照射によってウェハ10の内部に改質領域を形成し、当該改質領域からウェハ10の厚さ方向に亀裂を伸展させることによってウェハ10を切断した場合でも、レーザ光をウェハ10の内部に好適に照射することができる。なお、第1積層体22の外縁が外縁部11cの外縁と一致する場合、周縁部34は、第1積層体22の外縁を被覆しない。
【0060】
ファブリペロー干渉フィルタ1は、基板11の第2表面11bに設けられた積層構造(反射防止層41、第3積層体42、中間層43、第4積層体44、遮光層45及び保護層46)を備えていなくてもよい。第3積層体42、中間層43及び第4積層体44は、外縁部11cの外縁に沿って薄化されていなくてもよい。上記第5ステップでは、ブレードダイシング等の他のダイシング方法によってウェハ10を切断してもよい。上記実施形態では、薄化部34bが非薄化部34aを連続的に包囲していたが、薄化部34bは、非薄化部34aを断続的に包囲していてもよい。すなわち、周縁部34は、外縁部11cの外縁の少なくとも一部に沿って薄化されていればよい。
【0061】
上記実施形態において、周縁部34は、外縁部11cの外縁に沿って薄化されていなくてもよい。この場合でも、第2積層体24によって中間層23が覆われているので、中間層23の剥がれが抑制されている。更に、被覆部33が第1積層体22の外縁を被覆しており、第2積層体24によって第1積層体22が覆われているので、第1積層体22の剥がれが抑制されている。
【0062】
図8(a)に示される第1変形例のファブリペロー干渉フィルタ1Aのように、上記実施形態のファブリペロー干渉フィルタ1において、ポリシリコン層25cの外縁が第1表面11aに垂直な方向から見た場合に第1積層体22の外縁の内側に位置し、ポリシリコン層25cの外縁とポリシリコン層27aとの間に中間層23が介在していてもよい。第1変形例によっても、上記実施形態と同様に、基板11上の各層に剥がれが生じるのを抑制することができる。更に、第1変形例では、第1電極12が形成されたポリシリコン層25cと、第3電極14が形成されたポリシリコン層27aとの間の電気的な絶縁性が高められている。これにより、ポリシリコン層25c,27aを介して第1電極12と第3電極14との間に電流のリークが生じるのを抑制することができる。その結果、第1電極12と第3電極14との間に印加する電圧の増加を抑制することができる。
【0063】
図8(b)に示される第2変形例のファブリペロー干渉フィルタ1Bのように、第1変形例のファブリペロー干渉フィルタ1Aにおいて、端子15,16を囲むように環状に延在するトレンチ52がポリシリコン層27aに設けられていてもよい。第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、基板11上の各層に剥がれが生じるのを抑制することができる。更に、第2変形例では、第1電極12が形成されたポリシリコン層25cと、第3電極14が形成されたポリシリコン層27aとの間の電気的な絶縁性が一層高められている。これにより、ポリシリコン層25c,27aを介して第1電極12と第3電極14との間に電流のリークが生じるのを一層抑制することができる。
【0064】
図9(a)に示される第3変形例のファブリペロー干渉フィルタ1Cのように、上記実施形態のファブリペロー干渉フィルタ1において、端子15,16を囲むように環状に延在するトレンチ52がポリシリコン層27aに設けられると共に、端子15,16を囲むように環状に延在するトレンチ53がポリシリコン層25cに設けられていてもよい。第3変形例によっても、上記実施形態と同様に、基板11上の各層に剥がれが生じるのを抑制することができる。更に、第3変形例では、第1電極12が形成されたポリシリコン層25cと、第3電極14が形成されたポリシリコン層27aとの間の電気的な絶縁性が高められている。これにより、ポリシリコン層25c,27aを介して第1電極12と第3電極14との間に電流のリークが生じるのを抑制することができる。
【0065】
図9(b)に示される第4変形例のファブリペロー干渉フィルタ1Dのように、上記実施形態のファブリペロー干渉フィルタ1において、第1積層体22の外縁が第1表面11aに垂直な方向から見た場合に中間層23の外縁の内側に位置し、第1積層体22の外縁と第2積層体24との間に中間層23が介在していてもよい。第4変形例によっても、上記実施形態と同様に、基板11上の各層に剥がれが生じるのを抑制することができる。更に、第4変形例では、第1電極12が形成されたポリシリコン層25cと、第3電極14が形成されたポリシリコン層27aとの間の電気的な絶縁性が高められている。これにより、ポリシリコン層25c,27aを介して第1電極12と第3電極14との間に電流のリークが生じるのを効果的に抑制することができる。
【0066】
図10に示される第5変形例のファブリペロー干渉フィルタ1Eのように、上記実施形態のファブリペロー干渉フィルタ1において、ポリシリコン層27aにおける第1積層体22及び中間層23の外縁を被覆する部分が除去されていてもよい。第5変形例によっても、上記実施形態と同様に、基板11上の各層に剥がれが生じるのを抑制することができる。更に、第5変形例では、ポリシリコン層25cが窒化シリコン層28aによって被覆されているので、第1電極12が形成されたポリシリコン層25cと、第3電極14が形成されたポリシリコン層27aとの間の電気的な絶縁性が高められている。これにより、ポリシリコン層25c,27aを介して第1電極12と第3電極14との間に電流のリークが生じるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…ファブリペロー干渉フィルタ、10…ウェハ、11…基板、11a…第1表面、11b…第2表面、11c…外縁部、22…第1積層体(第1層)、23…中間層、24…第2積層体(第2層)、24b…貫通孔、31…第1ミラー部、32…第2ミラー部、33…被覆部、34…周縁部、42…第3積層体(第3層)、43…中間層(第3層)、44…第4積層体(第3層)、50…除去予定部、S…空隙。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10