特許第6983784号(P6983784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6983784-脂質の製造方法 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983784
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】脂質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/64 20060101AFI20211206BHJP
   C12N 1/13 20060101ALI20211206BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20211206BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20211206BHJP
【FI】
   C12P7/6427ZNA
   C12P7/6472
   C12N1/13
   !C12N15/53
   !C12N9/02
【請求項の数】20
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2018-538359(P2018-538359)
(86)(22)【出願日】2017年8月28日
(86)【国際出願番号】JP2017030759
(87)【国際公開番号】WO2018047657
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2020年6月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-174752(P2016-174752)
(32)【優先日】2016年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 達郎
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−519810(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/052468(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0104875(US,A1)
【文献】 KAYE Yuval et al.,Algal Research,2015年,Vol.11,pp.387-398
【文献】 MA X. et al.,Accession No: E0YDP2, Definition: Delta-6 desaturase,Uniprot [online],2010年11月02日,URL: <http://www.uniprot.org/uniprot/E0YDP2.txt?version=1> [retrieved on 2017-11-13]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/64
C12N 1/13
C12N 15/53
C12N 9/00−9/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CiNii
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Δ12-デサチュラーゼをコードする遺伝子及びΔ6-デサチュラーゼをコードする遺伝子の発現を促進させたナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類を培養し、炭素原子数が18以上の長鎖多価不飽和脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法。
【請求項2】
ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類において、Δ12-デサチュラーゼをコードする遺伝子及びΔ6-デサチュラーゼをコードする遺伝子の発現を促進し、藻類の細胞内で生産される全脂肪酸に占める炭素原子数が18以上の長鎖多価不飽和脂肪酸の割合を増加させる、脂肪酸組成を改変する方法。
【請求項3】
Δ12-デサチュラーゼをコードする遺伝子及びΔ6-デサチュラーゼをコードする遺伝子を前記藻類に導入し、導入したΔ12-デサチュラーゼをコードする遺伝子及びΔ6-デサチュラーゼをコードする遺伝子の発現を促進させる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記Δ12-デサチュラーゼが下記タンパク質(A)又は(B)である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ12-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項5】
前記Δ6-デサチュラーゼが下記タンパク質(E)又は(F)である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
(E)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項6】
前記藻類において、ω3-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ及びΔ6-エロンガーゼからなる群より選ばれる少なくとも1種の酵素、又はこれをコードする遺伝子の発現を促進させた、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子を前記藻類に導入し、導入した前記遺伝子の発現を促進させる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ω3-デサチュラーゼが下記タンパク質(I)又は(J)である、請求項6又は7記載の方法。
(I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつω3-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項9】
前記Δ5-デサチュラーゼが下記タンパク質(M)又は(N)である、請求項6又は7記載の方法。
(M)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項10】
前記Δ9-デサチュラーゼが下記タンパク質(Q)又は(R)である、請求項6又は7記載の方法。
(Q)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(R)前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ9-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項11】
前記Δ6-エロンガーゼが下記タンパク質(U)又は(V)である、請求項6又は7記載の方法。
(U)配列番号74で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(V)前記タンパク質(U)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項12】
前記炭素原子数が18以上の長鎖多価不飽和脂肪酸又は前記脂質が、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸若しくはエイコサペンタエン酸、又はそのエステル化合物を含む、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
Δ12-デサチュラーゼをコードする遺伝子及びΔ6-デサチュラーゼをコードする遺伝子の発現が促進されている、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類の形質転換体。
【請求項14】
前記Δ12-デサチュラーゼが下記タンパク質(A)又は(B)である、請求項13記載の形質転換体。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ12-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項15】
前記Δ6-デサチュラーゼが下記タンパク質(E)又は(F)である、請求項13又は14記載の形質転換体。
(E)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項16】
前記形質転換体において、ω3-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ及びΔ6-エロンガーゼからなる群より選ばれる少なくとも1種の酵素、又はこれをコードする遺伝子の発現が促進されている、請求項13〜15のいずれか1項記載の形質転換体。
【請求項17】
前記ω3-デサチュラーゼが下記タンパク質(I)又は(J)である、請求項16記載の形質転換体。
(I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつω3-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項18】
前記Δ5-デサチュラーゼが下記タンパク質(M)又は(N)である、請求項16記載の形質転換体。
(M)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項19】
前記Δ9-デサチュラーゼが下記タンパク質(Q)又は(R)である、請求項16記載の形質転換体。
(Q)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(R)前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ9-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項20】
前記Δ6-エロンガーゼが下記タンパク質(U)又は(V)である、請求項16記載の形質転換体。
(U)配列番号74で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(V)前記タンパク質(U)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質の製造方法に関する。また本発明は、当該方法に用いる形質転換体に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸は脂質の主要構成成分の1つであり、生体内においてグリセリンとのエステル結合により生成するトリアシルグリセロール等の脂質を構成する。また、多くの動植物において脂肪酸はエネルギー源として貯蔵され利用される物質でもある。動植物内に蓄えられた脂肪酸や脂質は、食用又は工業用として広く利用されている。
例えば、炭素原子数が18以上の長鎖脂肪酸は炭素原子数や不飽和度によって化学的性質が異なり、様々な用途に用いられている。例えば、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid、以下「EPA」ともいう)やドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid、以下、「DHA」ともいう)といった長鎖多価不飽和脂肪酸(以下、「PUFA」ともいう)の多くは、動物の生体内では合成できない必須脂肪酸であることが知られている。よってPUFAは栄養学的用途に特に有用であり、機能性食品などに用いられている。
【0003】
一般に、植物の脂肪酸合成経路は葉緑体に局在する。葉緑体ではアセチル−アシルキャリアープロテイン(acyl carrier protein、以下「ACP」ともいう)を出発物質とし、炭素鎖の伸長反応が繰り返され、最終的に炭素原子数18程度のアシル-ACP(脂肪酸残基であるアシル基とACPとからなる複合体。ここで炭素原子数はアシル基の炭素数を示し、以下同様に示す場合がある。)が合成される。この脂肪酸合成経路に関与する酵素のうち、β−ケトアシル-ACPシンターゼ(β-ketoacyl-acyl carrier protein synthase、以下「KAS」ともいう)はアシル基の鎖長制御に関与する酵素である。植物では、KAS I、KAS II、KAS III、KAS IV、のそれぞれ機能が異なる4種のKASが存在することが知られている。このうち、KAS IIは主に炭素原子数18のステアロイル-ACPまでの伸長反応に関与する。
合成されたアシル-ACPは、アシル-ACPチオエステラーゼ(以下、単に「TE」ともいう)によって遊離脂肪酸となり、小胞体に運ばれる。そして小胞体上で、遊離脂肪酸、アシル-CoA、又は脂肪酸とグリセロールとのエステル化合物を基質とし、多数のデサチュラーゼ(Desaturase)やエロンガーゼ(Elongase)が作用する多段階反応によって、PUFAが合成される。
【0004】
近年、持続可能な社会の実現に向けて再生可能エネルギーに関する研究、開発が推し進められている。特に光合成微生物は、二酸化炭素の削減効果に加えて、穀物と競合しないバイオ燃料生物として期待されている。
この中で、とりわけ、バイオ燃料生産に有用であるとして、藻類が注目を集めている。藻類は、バイオディーゼル燃料として利用可能な脂質を光合成によって生産でき、しかも食料と競合しないことから、次世代のバイオマス資源として注目されている。また、藻類は、植物に比べ、高い脂質生産能力や脂質蓄積能力を有するとの報告もある。藻類の脂質合成や蓄積のメカニズム、並びに藻類の脂質生産能力や脂質蓄積能力を応用した脂質生産技術について研究が始まってはいるが、未解明な部分も多い。
【0005】
前述のように、脂肪酸や脂質の利用は多岐にわたる。そのため、植物や細菌等の宿主において生体内での脂肪酸や脂質の生産性を向上させる試みが行われている。さらに、脂肪酸の用途や有用性はその炭素原子数(鎖長)や不飽和結合数(不飽和度)に依存するため、脂肪酸の炭素原子数や不飽和結合数を制御する試みも行われている。
一般的にPUFAの生産性向上には、デサチュラーゼの強化が有効であると考えられており、様々な生物からこれらの酵素群が同定されている。例えば、次世代の油脂生産源として注目を集めている微細藻類の一種であるナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類由来のデサチュラーゼが、PUFAの合成に使用できることが知られている(特許文献1、非特許文献1及び2参照)。
このように、油糧生物において所望のPUFAに富む脂質を効率的に産生させる方法に対しては、当技術分野における需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/149457号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Algal Research,2015,Vol.11,p.387-398
【非特許文献2】Chinese Journal of Oceanology and Limnology,2011,Vol.29(2),p.290-296
【発明の概要】
【0008】
本発明は、Δ12-デサチュラーゼ及びΔ6-デサチュラーゼの発現を促進させたナンノクロロプシス属に属する藻類を培養し、脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法に関する。
また本発明は、ナンノクロロプシス属に属する藻類において、Δ12-デサチュラーゼ及びΔ6-デサチュラーゼの発現を促進し、前記藻類の細胞内で生産される全脂肪酸に占めるPUFAの割合を増加させる、脂肪酸組成を改変する方法に関する。
さらに本発明は、Δ12-デサチュラーゼ及びΔ6-デサチュラーゼの発現が促進されている、ナンノクロロプシス属に属する藻類の形質転換体に関する。
【0009】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ナンノクロロプシス属に属する藻類におけるEPAの主要な合成経路と、EPAなどのPUFAの合成における律速段階を示す図である。
図2】藻類や植物でのPUFAの一般的な合成経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、PUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる、脂質の製造方法を提供する。
また本発明は、PUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させた形質転換体を提供する。
【0012】
本発明者は上記点について、鋭意検討を行った。
ナンノクロロプシス属に属する藻類はEPAなどのPUFAの生産能に優れる。また藻類の培養後期(具体的には、窒素などの栄養源が枯渇した条件)では、全脂肪酸の生産量が有意に増加する。しかし、本発明者がナンノクロロプシス属に属する藻類のPUFA生産能について詳細に検討した結果、培養期間が長くなり全脂肪酸の生産量が増加するに従い、全脂肪酸の生産量に対するPUFAの生産量の割合が大幅に減少することを見い出した。
そこで本発明者はまず、ナンノクロロプシス属に属する藻類におけるPUFAの合成経路について種々検討し、それを特定することを試みた。そしてPUFAの合成における律速反応についてさらに検討を重ねた結果、デサチュラーゼの1種であるΔ12-デサチュラーゼの作用によりオレイン酸(以下、「C18:1Δ9」とも表記する)からリノール酸(以下、「C18:2Δ9,12」とも表記する)を生成し、同じくデサチュラーゼの1種であるΔ6-デサチュラーゼの作用により生成したC18:2Δ9,12からγ-リノレン酸(以下、「C18:3Δ6,9,12」とも表記する)を生成するまでの一連の工程が、PUFAの合成反応における律速段階であることを見い出した。そしてこの律速段階の反応を触媒する酵素の発現を促進させることで、PUFAの生産量が有意に増大することを見い出した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0013】
本発明によりPUFA合成経路の律速段階の反応を触媒する酵素の発現が促進され、PUFAの生産量を増大させることができる。
よって本発明の脂質の製造方法によれば、PUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させることができる。
また本発明の形質転換体は、PUFA合成経路の律速段階の反応を触媒する酵素の発現が促進されており、PUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性に優れる。
【0014】
本明細書における「脂質」は、中性脂質(モノアシルグリセロール(MAG)、ジアシルグリセロール(DAG)、トリアシルグリセロール(TAG)等)、ろう、セラミド等の単純脂質;リン脂質、糖脂質、スルホ脂質等の複合脂質;及びこれらの脂質から誘導される、脂肪酸(遊離脂肪酸)、アルコール類、炭化水素類等の誘導脂質を包含するものである。
一般に誘導脂質に分類される脂肪酸は、脂肪酸そのものを指し、「遊離脂肪酸」を意味する。本発明では単純脂質及び複合脂質分子中の脂肪酸部分又はアシル基の部分を「脂肪酸残基」と表記する。そして、特に断りのない限り、「脂肪酸」は「遊離脂肪酸」と「脂肪酸残基」の総称として用いる。
また本明細書において、「脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質」は、「遊離脂肪酸」と「当該脂肪酸残基を有する脂質」を総称して用いる。更に本明細書において、「脂肪酸組成」とは、前記遊離脂肪酸と脂肪酸残基を脂肪酸と見做して合計した全脂肪酸(総脂肪酸)の重量に対する各脂肪酸の重量割合を意味する。脂肪酸の重量(生産量)や脂肪酸組成は、実施例で用いた方法により測定できる。
【0015】
また本明細書において、脂肪酸や、脂肪酸を構成するアシル基の表記において「Cx:y」とあるのは、炭素原子数xで二重結合の数がyであることを表す。「Cx」は炭素原子数xの脂肪酸やアシル基を表す。
さらに本明細書において、塩基配列及びアミノ酸配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science, 1985, vol. 227, p. 1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
また本明細書において「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook, David W. Russell., Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられる。例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
さらに本明細書において、遺伝子の「上流」とは、翻訳開始点からの位置ではなく、対象として捉えている遺伝子又は領域の5'側に続く領域を示す。一方、遺伝子の「下流」とは、対象として捉えている遺伝子又は領域の3'側に続く領域を示す。
【0016】
前述のように、本発明者は、ナンノクロロプシス属に属する藻類におけるPUFAの主な合成経路を特定した。今回特定したPUFAの主要な合成経路と、PUFAの合成における律速段階を図1に示した。なお、参考として、藻類や植物でのPUFAの一般的な合成経路を図2に示す。
後述の実施例に示すように、野生型のナンノクロロプシス属に属する藻類では、C20:4は検出されるが、ステアリドン酸(以下、「C18:4Δ6,9,12,15」とも表記する)がほとんど検出されない。これらの結果から、ナンノクロロプシス属に属する藻類におけるEPAの主な合成経路は、図1に示すようなアラキドン酸(以下、「C20:4Δ5,8,11,14」とも表記する)を経由する経路であると特定した。
【0017】
そして本発明者は、ナンノクロロプシス属に属する藻類由来の各種デサチュラーゼを特定した。そしてこれらデサチュラーゼの発現をそれぞれ促進させ、EPAなどのPUFAの生成量を測定した。その結果、各種デサチュラーゼをそれぞれ単独で発現を促進させても、PUFA量に大きな変化が確認できなかった。
そこで、ナンノクロロプシス属に属する藻類におけるPUFAの合成経路について、さらに検討を行った。その結果、Δ12-デサチュラーゼ(以下、「Δ12-DES」ともいう)とΔ6-デサチュラーゼ(以下、「Δ6-DES」ともいう)が触媒する一連の工程(オレイン酸からリノール酸を生成し、生成したリノール酸からγ-リノレン酸を生成する反応)が、ナンノクロロプシス属に属する藻類におけるPUFAの合成経路の律速段階であることを見い出した。そして、この律速段階の反応を触媒する酵素の発現を促進することで、ナンノクロロプシス属に属する藻類のPUFAの生産能が向上する。さらに、藻類の培養時間の経過とともに、全脂肪酸量に対するPUFA量の割合が、野生株と比較して有意に増加する。
なお本明細書において「律速段階」とは、化学反応などの動的過程や複雑な代謝経路がいくつかの段階によって構成されているとき、それらの段階のうち他の段階に比べて進行が緩慢であり、全過程の進行を実際上支配する段階をいう。
【0018】
本明細書において「Δ12-DES」とは、C18:1Δ9のΔ12位に不飽和結合を導入し、ω-6脂肪酸であるC18:2Δ9,12を生成する反応を触媒するタンパク質(酵素)を意味する。そして本明細書において「Δ12-デサチュラーゼ活性(以下、「Δ12-DES活性」ともいう)」とは、C18:1Δ9のΔ12位に不飽和結合を導入する活性を意味する。
タンパク質がΔ12-DES活性を有することは、例えば、Δ12-DES合成遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAをΔ12-DES合成遺伝子欠損株に導入し、リノール酸の生成を検討することで確認できる。あるいは、Δ12-DES又はこれを含有する細胞破砕液を調製し、オレイン酸、オレオイルCoAなどを含む反応液と反応させ、常法に従いオレイン酸量の減少又はリノール酸量の増加を測定することで確認できる。
【0019】
本発明における好ましいΔ12-DESとしては、下記タンパク質(A)〜(D)が挙げられる。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ12-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
(C)配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ12-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。

配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス属に属する藻類であるナンノクロロプシス・オキュラータ(Nannochloropsis oculata)NIES2145株由来のΔ12-DES(以下、「NoΔ12-DES」ともいう)である。また、配列番号45のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス属に属する藻類であるナンノクロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)B-31株由来のΔ12-DES(以下、「NgΔ12-DES」ともいう)である。
なお、タンパク質(A)のアミノ酸配列に対するタンパク質(C)のアミノ酸配列の同一性は86%である。
前記タンパク質(A)〜(D)はいずれも、Δ12-DES活性を有する。
【0020】
前記タンパク質(B)において、Δ12-DES活性の点から、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(B)として、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上176個以下、好ましくは1個以上154個以下、より好ましくは1個以上132個以下、より好ましくは1個以上110個以下、より好ましくは1個以上88個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上44個以下、より好ましくは1個以上36個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上5個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(D)において、Δ12-DES活性の点から、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(D)として、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上181個以下、好ましくは1個以上159個以下、より好ましくは1個以上136個以下、より好ましくは1個以上113個以下、より好ましくは1個以上91個以下、より好ましくは1個以上68個以下、より好ましくは1個以上46個以下、より好ましくは1個以上37個以下、より好ましくは1個以上23個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
【0021】
一般に、酵素タンパク質をコードしているアミノ酸配列は、必ずしも全領域の配列が保存されていなければ酵素活性を示さないというものではなく、アミノ酸配列が変化しても酵素活性に影響を与えない領域も存在することが知られている。このような酵素活性に必須でない領域においては、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加といった変異が導入されても酵素本来の活性を維持することができる。本発明においても、このように所望の活性が保持され、かつアミノ酸配列が一部変異したタンパク質を用いることができる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、例えば、アミノ酸配列をコードする塩基配列に変異を導入する方法が挙げられる。変異を導入する方法としては、部位特異的な変異導入法が挙げられる。具体的な部位特異的変異の導入方法としては、SOE-PCRを利用した方法、ODA法、Kunkel法等が挙げられる。また、Site-Directed Mutagenesis System Mutan-SuperExpress Kmキット(タカラバイオ社)、Transformer TM Site-Directed Mutagenesisキット(Clonetech社)、KOD-Plus-Mutagenesis Kit(東洋紡社)等の市販のキットを利用することもできる。また、ランダムな遺伝子変異を与えた後、適当な方法により酵素活性の評価及び遺伝子解析を行うことにより目的遺伝子を取得することもできる。
【0022】
前記タンパク質(A)〜(D)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータやナンノクロロプシス・ガディタナから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号1又は45に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(A)〜(D)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(A)〜(D)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、Δ12-DESをコードする遺伝子を用いることができる。
なお、ナンノクロロプシス・オキュラータ等の藻類は、私的又は公的な研究所等の保存機関より入手することができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株は、国立環境研究所(NIES)から入手することができる。
【0023】
前記Δ12-DES(好ましくは前記タンパク質(A)〜(D)のいずれか1つ)をコードする遺伝子(以下、「Δ12-DES遺伝子」ともいう)として、下記DNA(a)〜(d)のいずれか1つからなる遺伝子が挙げられる。

(a)配列番号2で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列番号46で表される塩基配列からなるDNA。
(d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号2の塩基配列は、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質(NoΔ12-DES)をコードする遺伝子(以下、「NoΔ12-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
配列番号46の塩基配列は、配列番号45のアミノ酸配列からなるタンパク質(NgΔ12-DES)をコードする遺伝子(以下、「NgΔ12-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
【0024】
前記DNA(b)において、Δ12-DES活性の点から、前記DNA(a)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(b)として、前記DNA(a)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上527個以下、好ましくは1個以上461個以下、より好ましくは1個以上396個以下、より好ましくは1個以上330個以下、より好ましくは1個以上264個以下、より好ましくは1個以上198個以下、より好ましくは1個以上132個以下、より好ましくは1個以上106個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上27個以下、より好ましくは1個以上14個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(b)として、前記DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0025】
前記DNA(d)において、Δ12-DES活性の点から、前記DNA(c)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(d)として、前記DNA(c)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上544個以下、好ましくは1個以上476個以下、より好ましくは1個以上408個以下、より好ましくは1個以上340個以下、より好ましくは1個以上272個以下、より好ましくは1個以上204個以下、より好ましくは1個以上136個以下、より好ましくは1個以上109個以下、より好ましくは1個以上68個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上14個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(d)として、前記DNA(c)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0026】
本明細書において「Δ6-DES」とは、C18:2Δ9,12のΔ6位に不飽和結合を導入し、C18:3Δ6,9,12を生成する反応を触媒するタンパク質(酵素)を意味する。そして本明細書において本明細書において「Δ6-デサチュラーゼ活性(以下、「Δ6-DES活性」ともいう)」とは、C18:2Δ9,12のΔ6位に不飽和結合を導入する活性を意味する。
タンパク質がΔ6-DES活性を有することは、例えば、Δ6-DES合成遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAをΔ6-DES合成遺伝子欠損株に導入し、γ-リノレン酸の生成を検討することで確認できる。あるいは、Δ6-DES又はこれを含有する細胞破砕液を調製し、リノール酸、リノレオイルCoAなどを含む反応液と反応させ、常法に従いリノール酸量の減少又はγ-リノレン酸量の増加を測定することで確認できる。
【0027】
本発明における好ましいΔ6-DESとしては、下記タンパク質(E)〜(H)が挙げられる。
(E)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
(G)配列番号47で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。

配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来のΔ6-DES(以下、「NoΔ6-DES」ともいう)である。また、配列番号47のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・ガディタナB-31株由来のΔ6-DES(以下、「NgΔ6-DES」ともいう)である。
なお、タンパク質(E)のアミノ酸配列に対するタンパク質(G)のアミノ酸配列の同一性は89%である。
前記タンパク質(E)〜(H)はいずれも、Δ6-DES活性を有する。
【0028】
前記タンパク質(F)において、Δ6-DES活性の点から、前記タンパク質(E)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(F)として、前記タンパク質(E)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上190個以下、好ましくは1個以上166個以下、より好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上95個以下、より好ましくは1個以上72個以下、より好ましくは1個以上48個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(H)において、Δ6-DES活性の点から、前記タンパク質(G)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(H)として、前記タンパク質(G)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上190個以下、好ましくは1個以上166個以下、より好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上95個以下、より好ましくは1個以上72個以下、より好ましくは1個以上48個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、Δ12-DESについて前述した方法が挙げられる。
【0029】
前記タンパク質(E)〜(H)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータやナンノクロロプシス・ガディタナから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号3又は47に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(E)〜(H)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(E)〜(H)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、Δ6-DESをコードする遺伝子を用いることができる。
【0030】
前記Δ6-DES(好ましくは前記タンパク質(E)〜(H)のいずれか1つ)をコードする遺伝子(以下、「Δ6-DES遺伝子」ともいう)として、下記DNA(e)〜(h)のいずれか1つからなる遺伝子が挙げられる。

(e)配列番号4で表される塩基配列からなるDNA。
(f)前記DNA(e)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(g)配列番号48で表される塩基配列からなるDNA。
(h)前記DNA(g)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号4の塩基配列は、配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質(NoΔ6-DES)をコードする遺伝子(以下、「NoΔ6-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
配列番号48の塩基配列は、配列番号47のアミノ酸配列からなるタンパク質(NgΔ6-DES)をコードする遺伝子(以下、「NgΔ6-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
【0031】
前記DNA(f)において、Δ6-DES活性の点から、前記DNA(e)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(f)として、前記DNA(e)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上570個以下、好ましくは1個以上499個以下、より好ましくは1個以上428個以下、より好ましくは1個以上357個以下、より好ましくは1個以上285個以下、より好ましくは1個以上214個以下、より好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上114個以下、より好ましくは1個以上72個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(f)として、前記DNA(e)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0032】
前記DNA(h)において、Δ6-DES活性の点から、前記DNA(g)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(h)として、前記DNA(g)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上572個以下、好ましくは1個以上500個以下、より好ましくは1個以上429個以下、より好ましくは1個以上357個以下、より好ましくは1個以上286個以下、より好ましくは1個以上215個以下、より好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上115個以下、より好ましくは1個以上72個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(h)として、前記DNA(g)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0033】
本発明において、Δ12-DES及びΔ6-DESに加えて、ω3-デサチュラーゼ(以下、「ω3-DES」ともいう)の発現も促進されていることが好ましい。
本明細書において「ω3-DES」とは、図1に示すように、C20:4Δ5,8,11,14のω3位に不飽和結合を導入し、ω-3脂肪酸であるEPA(以下、「C20:5Δ5,8,11,14,17」とも表記する)を生成する反応を触媒するタンパク質(酵素)を意味する。そして本明細書において本明細書において「ω3-デサチュラーゼ活性(以下、「ω3-DES活性」ともいう」」とは、C20:4Δ5,8,11,14のω3位に不飽和結合を導入する活性を意味する。
後述の実施例で示すように、Δ12-DES及びΔ6-DESの発現を促進させたナンノクロロプシス属に属する藻類において、ω3-DESの発現も促進することで、C20:4Δ5,8,11,14のω3位への不飽和結合の導入が亢進し、C20:5Δ5,8,11,14,17の生産量がさらに増加する。
タンパク質がω3-DES活性を有することは、例えば、ω3-DES合成遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAをω3-DES合成遺伝子欠損株に導入し、EPAの生成を検討することで確認できる。あるいは、ω3-DES又はこれを含有する細胞破砕液を調製し、アラキドン酸誘導体(CoAとのチオエステル化合物、グリセロールとのエステル化合物など)を含む反応液と反応させ、常法に従いアラキドン酸量の減少又はEPA量の増加を測定することで確認できる。
【0034】
本発明における好ましいω3-DESとしては、下記タンパク質(I)〜(L)が挙げられる。
(I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつω3-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
(K)配列番号49で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(L)前記タンパク質(K)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつω3-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。

配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来のω3-DES(以下、「Noω3-DES」ともいう)である。また、配列番号49のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・ガディタナCCMP526株由来のω3-DES(以下、「Ngω3-DES」ともいう)である。
なお、タンパク質(I)のアミノ酸配列に対するタンパク質(K)のアミノ酸配列の同一性は82%である。
前記タンパク質(I)〜(L)はいずれも、ω3-DES活性を有する。
【0035】
前記タンパク質(J)において、ω3-DES活性の点から、前記タンパク質(I)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(J)として、前記タンパク質(I)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上164個以下、好ましくは1個以上144個以下、より好ましくは1個以上123個以下、より好ましくは1個以上103個以下、より好ましくは1個以上82個以下、より好ましくは1個以上62個以下、より好ましくは1個以上41個以下、より好ましくは1個以上33個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上5個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(L)において、ω3-DES活性の点から、前記タンパク質(K)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(L)として、前記タンパク質(K)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上163個以下、好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上123個以下、より好ましくは1個以上102個以下、より好ましくは1個以上82個以下、より好ましくは1個以上62個以下、より好ましくは1個以上41個以下、より好ましくは1個以上33個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上5個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、Δ12-DESについて前述した方法が挙げられる。
【0036】
前記タンパク質(I)〜(L)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータやナンノクロロプシス・ガディタナから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号5又は49に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(I)〜(L)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(I)〜(L)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、ω3-DESをコードする遺伝子を用いることができる。
【0037】
前記ω3-DES(好ましくは前記タンパク質(I)〜(L)のいずれか1つ)をコードする遺伝子(以下、「ω3-DES遺伝子」ともいう)として、下記DNA(i)〜(l)のいずれか1つからなる遺伝子が挙げられる。

(i)配列番号6で表される塩基配列からなるDNA。
(j)前記DNA(i)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(k)配列番号50で表される塩基配列からなるDNA。
(l)前記DNA(k)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号6の塩基配列は、配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質(Noω3-DES)をコードする遺伝子(以下、「Noω3-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
配列番号50の塩基配列は、配列番号49のアミノ酸配列からなるタンパク質(Ngω3-DES)をコードする遺伝子cの塩基配列である。
【0038】
前記DNA(j)において、ω3-DES活性の点から、前記DNA(i)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(j)として、前記DNA(i)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上494個以下、好ましくは1個以上432個以下、より好ましくは1個以上370個以下、より好ましくは1個以上309個以下、より好ましくは1個以上247個以下、より好ましくは1個以上185個以下、より好ましくは1個以上124個以下、より好ましくは1個以上99個以下、より好ましくは1個以上62個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上13個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(j)として、前記DNA(i)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0039】
前記DNA(l)において、ω3-DES活性の点から、前記DNA(k)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(l)として、前記DNA(k)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上490個以下、好ましくは1個以上429個以下、より好ましくは1個以上368個以下、より好ましくは1個以上306個以下、より好ましくは1個以上245個以下、より好ましくは1個以上184個以下、より好ましくは1個以上123個以下、より好ましくは1個以上98個以下、より好ましくは1個以上62個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上13個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(l)として、前記DNA(k)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0040】
本発明において、ω3-DESと同様、Δ12-DES及びΔ6-DESに加えて、Δ5-デサチュラーゼ(以下、「Δ5-DES」ともいう)の発現も促進されていることが好ましい。
本明細書において「Δ5-DES」とは、図1に示すように、ジホモ-γ-リノレン酸(以下、「C20:3Δ8,11,14」とも表記する)のΔ5位に不飽和結合を導入し、C20:4Δ5,8,11,14を生成する反応を触媒するタンパク質(酵素)を意味する。そして本明細書において本明細書において「Δ5-デサチュラーゼ活性(以下、「Δ5-DES活性」ともいう」」とは、C20:3Δ8,11,14のΔ5位に不飽和結合を導入する活性を意味する。
Δ12-DES及びΔ6-DESの発現を促進させたナンノクロロプシス属に属する藻類では、Δ12-DES及びΔ6-DESによって触媒される連続反応によって、C18:3Δ6,9,12と、C18:3Δ6,9,12に炭素鎖を2個分伸長させて合成されるC20:3Δ8,11,14の生成量が増加する。よって、Δ12-DES及びΔ6-DESの発現を促進させたナンノクロロプシス属に属する藻類において、Δ5-DESの発現も促進することで、C20:3Δ8,11,14のΔ5位への不飽和結合の導入が亢進し、C20:5Δ5,8,11,14,17合成の基質となるC20:4Δ5,8,11,14の生産量がさらに増加する。
タンパク質がΔ5-DES活性を有することは、例えば、Δ5-DES合成遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAをΔ5-DES合成遺伝子欠損株に導入し、アラキドン酸の生成を検討することで確認できる。あるいは、Δ5-DES又はこれを含有する細胞破砕液を調製し、ジホモ-γ-リノレン酸誘導体(CoAとのチオエステル化合物、グリセロールとのエステル化合物など)を含む反応液と反応させ、常法に従いジホモ-γ-リノレン酸量の減少又はアラキドン酸量の増加を測定することで確認できる。
【0041】
本発明における好ましいΔ5-DESとしては、下記タンパク質(M)〜(P)が挙げられる。
(M)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
(O)配列番号51で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(P)前記タンパク質(O)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。

配列番号7のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来のΔ5-DES(以下、「NoΔ5-DES」ともいう)である。また、配列番号51のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・ガディタナB-31株由来のΔ5-DES(以下、「NgΔ5-DES」ともいう)である。
なお、タンパク質(M)のアミノ酸配列に対するタンパク質(O)のアミノ酸配列の同一性は81%である。
前記タンパク質(M)〜(P)はいずれも、Δ5-DES活性を有する。
【0042】
前記タンパク質(N)において、Δ5-DES活性の点から、前記タンパク質(M)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(N)として、前記タンパク質(M)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上211個以下、好ましくは1個以上185個以下、より好ましくは1個以上158個以下、より好ましくは1個以上132個以下、より好ましくは1個以上106個以下、より好ましくは1個以上79個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上43個以下、より好ましくは1個以上27個以下、より好ましくは1個以上11個以下、より好ましくは1個以上6個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(P)において、Δ5-DES活性の点から、前記タンパク質(O)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(P)として、前記タンパク質(O)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上206個以下、好ましくは1個以上181個以下、より好ましくは1個以上155個以下、より好ましくは1個以上129個以下、より好ましくは1個以上103個以下、より好ましくは1個以上78個以下、より好ましくは1個以上52個以下、より好ましくは1個以上42個以下、より好ましくは1個以上26個以下、より好ましくは1個以上11個以下、より好ましくは1個以上6個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、Δ12-DESについて前述した方法が挙げられる。
【0043】
前記タンパク質(M)〜(P)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータやナンノクロロプシス・ガディタナから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号7又は51に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(M)〜(P)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(M)〜(P)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、Δ5-DESをコードする遺伝子を用いることができる。
【0044】
前記Δ5-DES(好ましくは前記タンパク質(M)〜(P)のいずれか1つ)をコードする遺伝子(以下、「Δ5-DES遺伝子」ともいう)として、下記DNA(m)〜(p)のいずれか1つからなる遺伝子が挙げられる。

(m)配列番号8で表される塩基配列からなるDNA。
(n)前記DNA(m)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(o)配列番号52で表される塩基配列からなるDNA。
(p)前記DNA(o)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号8の塩基配列は、配列番号7のアミノ酸配列からなるタンパク質(NoΔ5-DES)をコードする遺伝子(以下、「NoΔ5-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
配列番号52の塩基配列は、配列番号51のアミノ酸配列からなるタンパク質(NgΔ5-DES)をコードする遺伝子(以下、「NgΔ5-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
【0045】
前記DNA(n)において、Δ5-DES活性の点から、前記DNA(m)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(n)として、前記DNA(m)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上633個以下、好ましくは1個以上554個以下、より好ましくは1個以上475個以下、より好ましくは1個以上396個以下、より好ましくは1個以上317個以下、より好ましくは1個以上238個以下、より好ましくは1個以上159個以下、より好ましくは1個以上127個以下、より好ましくは1個以上80個以下、より好ましくは1個以上32個以下、より好ましくは1個以上16個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(n)として、前記DNA(m)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0046】
前記DNA(p)において、Δ5-DES活性の点から、前記DNA(o)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(p)として、前記DNA(o)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上620個以下、好ましくは1個以上542個以下、より好ましくは1個以上465個以下、より好ましくは1個以上387個以下、より好ましくは1個以上310個以下、より好ましくは1個以上233個以下、より好ましくは1個以上155個以下、より好ましくは1個以上124個以下、より好ましくは1個以上78個以下、より好ましくは1個以上31個以下、より好ましくは1個以上16個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(p)として、前記DNA(o)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0047】
本発明において、ω3-DES及びΔ5-DESと同様、Δ12-DES及びΔ6-DESに加えて、Δ9-デサチュラーゼ(以下、「Δ9-DES」ともいう)の発現も促進されていることが好ましい。
本明細書において「Δ9-DES」とは、図1に示すように、ステアリン酸(以下、「C18:0」とも表記する)のΔ9位に不飽和結合を導入し、C18:1Δ9を生成する反応を触媒するタンパク質(酵素)を意味する。そして本明細書において本明細書において「Δ9-デサチュラーゼ活性(以下、「Δ9-DES活性」ともいう」」とは、C18:0のΔ9位に不飽和結合を導入する活性を意味する。
Δ9-DESの発現を促進することで、Δ12-DES及びΔ6-DESによって触媒される連続反応の出発物質であるC18:1Δ9の生成量を増加させ、PUFAの生産性をさらに向上させることができる。
タンパク質がΔ9-DES活性を有することは、例えば、Δ9-DES合成遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAをΔ9-DES合成遺伝子欠損株に導入し、オレイン酸の生成を検討することで確認できる。あるいは、Δ9-DES又はこれを含有する細胞破砕液を調製し、ステアリン酸、ステアロイルCoAなどを含む反応液と反応させ、常法に従いステアリン酸量の減少又はオレイン量の増加を測定することで確認できる。
【0048】
本発明における好ましいΔ9-DESとしては、下記タンパク質(Q)〜(T)が挙げられる。
(Q)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(R)前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ9-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
(S)配列番号53で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(T)前記タンパク質(S)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ9-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。

配列番号9のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来のΔ9-DES(以下、「NoΔ9-DES」ともいう)である。また、配列番号53のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・ガディタナB-31株由来のΔ9-DES(以下、「NgΔ9-DES」ともいう)である。
なお、タンパク質(Q)のアミノ酸配列に対するタンパク質(S)のアミノ酸配列の同一性は93%である。
前記タンパク質(Q)〜(T)はいずれも、Δ9-DES活性を有する。
【0049】
前記タンパク質(R)において、Δ9-DES活性の点から、前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(R)として、前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上144個以下、好ましくは1個以上126個以下、より好ましくは1個以上108個以下、より好ましくは1個以上90個以下、より好ましくは1個以上72個以下、より好ましくは1個以上54個以下、より好ましくは1個以上36個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上18個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上4個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(T)において、Δ9-DES活性の点から、前記タンパク質(S)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(T)として、前記タンパク質(S)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上136個以下、好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上102個以下、より好ましくは1個以上85個以下、より好ましくは1個以上68個以下、より好ましくは1個以上51個以下、より好ましくは1個以上34個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上7個以下、より好ましくは1個以上4個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、Δ12-DESについて前述した方法が挙げられる。
【0050】
前記タンパク質(Q)〜(T)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータやナンノクロロプシス・ガディタナから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号9又は53に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(Q)〜(T)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(Q)〜(T)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、Δ9-DESをコードする遺伝子を用いることができる。
【0051】
前記Δ9-DES(好ましくは前記タンパク質(Q)〜(T)のいずれか1つ)をコードする遺伝子(以下、「Δ9-DES遺伝子」ともいう)として、下記DNA(q)〜(t)のいずれか1つからなる遺伝子が挙げられる。

(q)配列番号10で表される塩基配列からなるDNA。
(r)前記DNA(q)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(s)配列番号54で表される塩基配列からなるDNA。
(t)前記DNA(s)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号10の塩基配列は、配列番号9のアミノ酸配列からなるタンパク質(NoΔ9-DES)をコードする遺伝子(以下、「NoΔ9-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
配列番号54の塩基配列は、配列番号53のアミノ酸配列からなるタンパク質(NgΔ9-DES)をコードする遺伝子(以下、「NgΔ9-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
【0052】
前記DNA(r)において、Δ9-DES活性の点から、前記DNA(q)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(r)として、前記DNA(q)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上432個以下、好ましくは1個以上378個以下、より好ましくは1個以上324個以下、より好ましくは1個以上270個以下、より好ましくは1個以上216個以下、より好ましくは1個以上162個以下、より好ましくは1個以上108個以下、より好ましくは1個以上87個以下、より好ましくは1個以上54個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上11個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(r)として、前記DNA(q)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0053】
前記DNA(t)において、Δ9-DES活性の点から、前記DNA(s)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(t)として、前記DNA(s)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上410個以下、好ましくは1個以上359個以下、より好ましくは1個以上307個以下、より好ましくは1個以上256個以下、より好ましくは1個以上205個以下、より好ましくは1個以上154個以下、より好ましくは1個以上103個以下、より好ましくは1個以上82個以下、より好ましくは1個以上52個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上11個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(t)として、前記DNA(s)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0054】
本発明において、ω3-DES、Δ5-DES及びΔ9-DESと同様、Δ12-DES及びΔ6-DESに加えて、Δ9-エロンガーゼ(以下、「Δ6-ELO」ともいう)の発現も促進されていることが好ましい。
本明細書において「Δ6-ELO」とは、図1に示すように、γ-リノレン酸(C18:3Δ6,9,12)に炭素鎖を2個分伸長させて、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3Δ8,11,14)を生成する反応を触媒するタンパク質(酵素)を意味する。そして本明細書において「Δ6-エロンガーゼ活性(以下、「Δ6-ELO活性」ともいう」」とは、C18:3Δ6,9,12の炭素鎖を2個分伸長させる活性を意味する。
Δ12-DES及びΔ6-DESの発現を促進させたナンノクロロプシス属に属する藻類では、Δ12-DES及びΔ6-DESによって触媒される連続反応によって、C18:3Δ6,9,12の生成量が増加する。よって、Δ12-DES及びΔ6-DESの発現を促進させたナンノクロロプシス属に属する藻類において、Δ6-ELOの発現も促進することで、C18:3Δ6,9,12への炭素鎖2個分の導入(伸長)が亢進し、C20:3Δ8,11,14、C20:4Δ5,8,11,14及びC20:5Δ5,8,11,14,17の生産量がさらに増加する。
タンパク質がΔ6-ELO活性を有することは、例えば、Δ6-ELO合成遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAをΔ6-ELO合成遺伝子欠損株に導入し、ジホモ-γ-リノレン酸の生成を検討することで確認できる。あるいは、Δ6-ELO又はこれを含有する細胞破砕液を調製し、γ-リノレン酸誘導体(CoAとのチオエステル化合物、グリセロールとのエステル化合物など)を含む反応液と反応させ、常法に従いγ-リノレン酸の減少又はジホモ-γ-リノレン酸の増加を測定することで確認できる。
【0055】
本発明における好ましいΔ6-ELOとしては、下記タンパク質(U)及び(V)が挙げられる。
(U)配列番号74で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(V)前記タンパク質(U)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質。

配列番号74のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来のΔ6-ELO(以下、「NoΔ6-ELO」ともいう)である。
前記タンパク質(U)及び(V)はいずれも、Δ6-ELO活性を有する。
【0056】
前記タンパク質(V)において、Δ6-ELO活性の点から、前記タンパク質(U)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(V)として、前記タンパク質(U)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上111個以下、好ましくは1個以上97個以下、より好ましくは1個以上83個以下、より好ましくは1個以上69個以下、より好ましくは1個以上56個以下、より好ましくは1個以上42個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上23個以下、より好ましくは1個以上14個以下、より好ましくは1個以上6個以下、より好ましくは1個以上3個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、Δ12-DESについて前述した方法が挙げられる。
【0057】
前記タンパク質(U)及び(V)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号74に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(U)及び(V)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(U)及び(V)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、Δ6-ELOをコードする遺伝子を用いることができる。
【0058】
前記Δ6-ELO(好ましくは前記タンパク質(U)及び(V)のいずれか1つ)をコードする遺伝子(以下、「Δ6-ELO遺伝子」ともいう)として、下記DNA(u)及び(v)のいずれか1つからなる遺伝子が挙げられる。

(u)配列番号73で表される塩基配列からなるDNA。
(v)前記DNA(u)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号73の塩基配列は、配列番号74のアミノ酸配列からなるタンパク質(NoΔ6-ELO)をコードする遺伝子(以下、「NoΔ6-ELO遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
【0059】
前記DNA(v)において、Δ6-ELO活性の点から、前記DNA(u)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(v)として、前記DNA(u)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上333個以下、好ましくは1個以上291個以下、より好ましくは1個以上250個以下、より好ましくは1個以上208個以下、より好ましくは1個以上167個以下、より好ましくは1個以上125個以下、より好ましくは1個以上84個以下、より好ましくは1個以上67個以下、より好ましくは1個以上42個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上9個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(v)として、前記DNA(u)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0060】
前述のように、ナンノクロロプシス属に属する藻類におけるPUFAの合成経路では、オレイン酸からリノール酸を生成し、生成したリノール酸からγ-リノレン酸を生成する反応が律速段階である。よって、本発明において、この律速段階の反応を触媒するΔ12-DES及びΔ6-DESのみの発現を促進させてもよい。
あるいは、PUFAの生産性を一層向上させる観点から、Δ12-DES及びΔ6-DESに加えて、ω3-DES、Δ5-DES、Δ9-DES及びΔ6-ELOからなる群より選ばれる少なくとも1種の酵素の発現が促進されていることが好ましく、ω3-DES、Δ5-DES、Δ9-DES及びΔ6-ELOからなる群より選ばれる2種以上の酵素の発現が促進されていることがより好ましい。
【0061】
前記各種酵素の発現を促進する方法としては、常法より適宜選択することができ、各種酵素をコードする遺伝子の発現を促進する方法が好ましい。具体的な方法としては、前記各種遺伝子を宿主に導入し、当該遺伝子の発現を促進する方法、前記各種遺伝子をゲノム上に有する宿主において、当該遺伝子の発現調節領域(プロモーター、ターミネーター等)を改変し、当該遺伝子の発現を促進する方法、などが挙げられる。なかでも、前記各種遺伝子を宿主に導入し、各種遺伝子の発現を促進する方法が好ましい。
以下本明細書において、各種酵素などの目的のタンパク質の発現を促進したものを「形質転換体」ともいい、目的のタンパク質の発現を促進させていないものを「宿主」又は「野生株」ともいう。
本発明で用いる形質転換体は、宿主自体に比べ、PUFA及びこれを構成成分とする脂質の生産性(PUFA及びこれを構成成分とする脂質の生産量、生産される全脂肪酸中又は全脂質中に占めるPUFA及びこれを構成成分とする脂質の割合)が増加傾向にある。そしてその結果、当該形質転換体では、脂質中の脂肪酸組成が改変される。そのため、当該形質転換体を用いた本発明は、特定の炭素原子数の脂肪酸又は脂質、特にPUFA又はこれを構成成分とする脂質、好ましくは炭素原子数18以上のPUFA又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくは炭素原子数18若しくは20のPUFA又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくは炭素原子数20のPUFA又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくはC20:3、C20:4若しくはC20:5又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくはジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸若しくはエイコサペンタエン酸又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくはアラキドン酸若しくはエイコサペンタエン酸又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくはエイコサペンタエン酸又はこれを構成成分とする脂質、の生産に好適に用いることができる。
なお、宿主や形質転換体の脂肪酸及び脂質の生産性については、実施例で用いた方法により測定することができる。
【0062】
前記各種遺伝子を宿主に導入して前記遺伝子の発現を促進させる方法について説明する。
前記各種遺伝子は、通常の遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、配列番号1、3、5、7、9、45、47、49、51、53若しくは74に示すアミノ酸配列、又は配列番号2、4、6、8、10、46、48、50、52、54若しくは73に示す塩基配列に基づいて、各種遺伝子を人工的に合成できる。各種遺伝子の合成は、例えば、インビトロジェン社等のサービスを利用することができる。また、ナンノクロロプシス・オキュラータやナンノクロロプシス・ガディタナなどのナンノクロロプシス属に属する藻類からクローニングによって取得することもできる。例えば、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W. Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)]記載の方法等により行うことができる。また、実施例で用いたナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145は、国立環境研究所(NIES)より入手することができる。
【0063】
本発明で好ましく用いることができる形質転換体は、前記各種遺伝子を常法により前記宿主に導入することで得られる。具体的には、前記各種遺伝子を宿主細胞中で発現させることのできる組換えベクターや遺伝子発現カセットを調製し、これを宿主細胞に導入して宿主細胞を形質転換させることにより作製できる。
【0064】
本発明で用いる藻類は、ナンノクロロプシス属に属する藻類である。ナンノクロロプシス属の藻類は、球形又は楕円形の形状を有する、2〜5μm程度の小さな藻類(微細藻)である。
本発明で用いるナンノクロロプシス属の藻類の具体例としては、遺伝子組換え手法が確立している観点から、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、ナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)、ナンノクロロプシス・オセアニカ(Nannochloropsis oceanica)、ナンノクロロプシス・アトムス(Nannochloropsis atomus)、ナンノクロロプシス・マキュラタ(Nannochloropsis maculata)、ナンノクロロプシス・グラニュラータ(Nannochloropsis granulata)、ナンノクロロプシス・エスピー(Nannochloropsis sp.)等が挙げられる。なかでも、脂質生産性の観点から、ナンノクロロプシス・オキュラータ、又はナンノクロロプシス・ガディタナが好ましく、ナンノクロロプシス・オキュラータがより好ましい。
【0065】
遺伝子発現用プラスミド又は遺伝子発現用カセットの母体となるベクター(プラスミド)としては、目的のタンパク質をコードする遺伝子を宿主に導入することができ、宿主細胞内で目的の遺伝子を発現させることができるベクターであればよい。例えば、導入する宿主の種類に応じたプロモーターやターミネーター等の発現調節領域を有するベクターであって、複製開始点や選択マーカー等を有するベクターを用いることができる。また、プラスミド等の染色体外で自立増殖・複製するベクターであってもよいし、染色体内に組み込まれるベクターであってもよい。
本発明で好ましく用いることができる発現ベクターとしては、pUC19(タカラバイオ社製)、P66(Chlamydomonas Center)、P-322(Chlamydomonas Center)、pPha-T1(Journal of Basic Microbiology, 2011, vol. 51, p. 666-672参照)、及びpJET1(コスモ・バイオ社製)が挙げられる。特に、pUC19、pPha-T1、又はpJET1が好ましく用いられる。また、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2011, vol. 108(52)の記載の方法を参考にして、目的の遺伝子、プロモーター及びターミネーターからなるDNA断片(遺伝子発現カセット)を用いて宿主を形質転換することもできる。このDNA断片としては、例えば、PCR法により増幅したDNA断片や制限酵素で切断したDNA断片が挙げられる。
【0066】
また、前記発現ベクターに組み込んだ目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を調整するプロモーターの種類も、使用する宿主の種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができるプロモーターとしては、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーター、SpoVGプロモーター、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によって誘導可能な誘導体に関するプロモーター、Rubiscoオペロン(rbc)、PSI反応中心タンパク質(psaAB)、PSIIのD1タンパク質(psbA)、c-phycocyanin βサブユニット(cpcB)、カリフラワーモザイルウイルス35SRNAプロモーター、ハウスキーピング遺伝子プロモーター(例えば、チューブリンプロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーター等)、西洋アブラナ又はアブラナ由来Napin遺伝子プロモーター、植物由来Rubiscoプロモーター、ナンノクロロプシス属由来のビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーター(VCP1プロモーター、VCP2プロモーター)(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2011, vol. 108(52))、及びナンノクロロプシス属由来のオレオシン様タンパクLDSP(lipid droplet surface protein)遺伝子のプロモーター(PLOS Genetics, 2012;8(11):e1003064. doi: 10.1371)が挙げられる。本発明において、ビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーターや、ナンノクロロプシス属由来のオレオシン様タンパクLDSP遺伝子のプロモーターを好ましく用いることができる。
【0067】
また、目的のタンパク質をコードする遺伝子が組み込まれたことを確認するための選択マーカーの種類も、使用する宿主の種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができる選択マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ブラストサイジンS耐性遺伝子、ビアラフォス耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、及びハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。さらに、栄養要求性に関連する遺伝子の欠損等を選択マーカー遺伝子として使用することもできる。
【0068】
目的のタンパク質をコードする遺伝子の前記ベクターへの導入は、制限酵素処理やライゲーション等の常法により行うことができる。
また、形質転換方法は、使用する宿主の種類に応じて常法より適宜選択することができる。例えば、カルシウムイオンを用いる形質転換方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、エレクトロポレーション法、LP形質転換方法、アグロバクテリウムを用いた方法、パーティクルガン法等が挙げられる。本発明では、Nature Communications, DOI:10.1038/ncomms1688,2012等に記載のエレクトロポレーション法を用いて形質転換を行うこともできる。
【0069】
目的遺伝子断片が導入された形質転換体の選択は、選択マーカー等を利用することで行うことができる。例えば、薬剤耐性遺伝子が、形質転換時に目的DNA断片とともに宿主細胞中に導入された結果、形質転換体が獲得する薬剤耐性を指標に行うことができる。また、ゲノムを鋳型としたPCR法等によって、目的DNA断片の導入を確認することもできる。
【0070】
前記各種遺伝子をゲノム上に有する宿主において、当該遺伝子の発現調節領域を改変して、前記遺伝子の発現を促進させる方法について説明する。
「発現調節領域」とは、プロモーターやターミネーターを示し、これらの配列は一般に隣接する遺伝子の発現量(転写量、翻訳量)の調節に関与している。ゲノム上に前記各種遺伝子を有する宿主においては、当該遺伝子の発現調節領域を改変して前記各種遺伝子の発現を促進させることで、PUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させることができる。
【0071】
発現調節領域の改変方法としては、例えばプロモーターの入れ替えが挙げられる。ゲノム上に前記各種デサチュラーゼ遺伝子又はエロンガーゼ遺伝子を有する宿主において、当該遺伝子のプロモーター(以下、「デサチュラーゼプロモーター」、「エロンガーゼプロモーター」ともいう)を、より転写活性の高いプロモーターに入れ替えることで、前記各種遺伝子の発現を促進させることができる。
例えば、ゲノム上に前記各種デサチュラーゼ遺伝子を有する宿主の1つであるナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株においては、配列番号55に示す塩基配列からなるDNA配列の直下にNoΔ12-DES遺伝子が存在しており、配列番号55に示す塩基配列からなるDNA配列中にNoΔ12-DES遺伝子のプロモーター領域が存在している。
また、配列番号56に示す塩基配列からなるDNA配列の直下にNoΔ6-DES遺伝子が存在しており、配列番号56に示す塩基配列からなるDNA配列中にNoΔ6-DES遺伝子のプロモーター領域が存在している。
また、配列番号57に示す塩基配列からなるDNA配列の直下にNoω3-DES遺伝子が存在しており、配列番号57に示す塩基配列からなるDNA配列中にNoω3-DES遺伝子のプロモーター領域が存在している。
また、配列番号58に示す塩基配列からなるDNA配列の直下にNoΔ5-DES遺伝子が存在しており、配列番号58に示す塩基配列からなるDNA配列中にNoΔ5-DES遺伝子のプロモーター領域が存在している。
また、配列番号59に示す塩基配列からなるDNA配列の直下にNoΔ9-DES遺伝子が存在しており、配列番号59に示す塩基配列からなるDNA配列中にNoΔ9-DES遺伝子のプロモーター領域が存在している。
さらに、配列番号75に示す塩基配列からなるDNA配列の直下にNoΔ6-ELO遺伝子が存在しており、配列番号75に示す塩基配列からなるDNA配列中にNoΔ6-ELO遺伝子のプロモーター領域が存在している。
よって、配列番号55〜59並びに75のいずれか1つに示す塩基配列からなるDNA配列の一部又は全部をより転写活性の高いプロモーターに入れ替えることで、前記各種遺伝子それぞれの発現を促進させることができる。
【0072】
デサチュラーゼプロモーター又はエロンガーゼプロモーターの入れ替えに用いるプロモーターとしては特に限定されず、デサチュラーゼプロモーター又はエロンガーゼプロモーターよりも転写活性が高く、PUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産に適したものから適宜選択することができる。
本発明で好ましく用いることができるプロモーターとしては、チューブリンプロモーター、ヒートショックプロテインプロモーター、上述のビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーター(VCP1プロモーター、VCP2プロモーター)、及びナンノクロロプシス属由来のオレオシン様タンパクLDSP遺伝子のプロモーターが挙げられる。PUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性向上の観点から、ビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーター又はLDSP遺伝子のプロモーターがより好ましい。
【0073】
前述のプロモーターの改変は、相同組換えなどの常法に従い行うことができる。具体的には、標的とするプロモーターの上流、下流領域を含み、標的プロモーターに代えて別のプロモーターを含む直鎖状のDNA断片を構築し、これを宿主細胞に取り込ませ、宿主ゲノムの標的プロモーターの上流側と下流側とで2回交差の相同組換えを起こす。その結果、ゲノム上の標的プロモーターが別のプロモーター断片と置換され、プロモーターを改変することができる。
このような相同組換えによる標的プロモーターの改変方法は、例えば、Methods in molecular biology, 1995, vol. 47, p. 291-302等の文献を参考に行うことができる。特に、宿主がナンノクロロプシス属に属する藻類の場合、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2011, vol. 108(52)等の文献を参考にして、相同組換え法によりゲノム中の特定の領域を改変することができる。
【0074】
さらに本発明の形質転換体は、KASの発現が促進されていることが好ましく、KASをコードする遺伝子(以下単に、「KAS遺伝子」ともいう)の発現が促進されていることがより好ましい。
KASは、アシル-ACPとマロニルACPとの縮合反応を触媒し、アシル−ACPの合成に関与する脂肪酸合成酵素の1種である。葉緑体では、アセチル-ACP(又はアセチル-CoA)を出発物質とし、炭素鎖の伸長反応が繰り返され、最終的に炭素原子数16又は18のアシル-ACPが合成される。
脂肪酸合成の第一段階では、アセチル-ACP(又はアセチル-CoA)とマロニルACPとの縮合反応により、アセトアセチルACPが生成する。この反応をKASが触媒する。次いで、β-ケトアシル-ACPレダクターゼによりアセトアセチルACPのケト基が還元されてヒドロキシブチリルACPが生成する。続いて、β-ヒドロキシアシル-ACPデヒドラーゼによりヒドロキシブチリルACPが脱水され、クロトニルACPが生成する。最後に、エノイル-ACPレダクターゼによりクロトニルACPが還元されて、ブチリルACPが生成する。これら一連の反応により、アセチル-ACPからアシル基の炭素鎖が2個伸長されたブチリルACPが生成する。以下、同様の反応を繰り返すことで、アシル-ACPの炭素鎖が伸長し、最終的に炭素原子数16又は18のアシル-ACPが合成される。
そのため、KASの発現を促進することで、好ましくはKAS遺伝子の発現を促進することで、脂質の製造に用いる藻類の脂質の生産性、特に脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
【0075】
本発明で好ましく用いることができるKASは、β-ケトアシル-ACPシンターゼ活性(以下、「KAS活性」ともいう)を有するタンパク質であればよい。ここで「KAS活性」とは、アセチル-ACPやアシル-ACPとマロニルACPとの縮合反応を触媒する活性をいう。
タンパク質がKAS活性を有することは、例えば、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAを、脂肪酸分解系が欠損した宿主細胞へ導入し、導入した遺伝子が発現する条件下で細胞を培養し、宿主細胞内又は培養液中の脂肪酸組成の変化を常法により分析することで確認できる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAを宿主細胞へ導入し、導入した遺伝子が発現する条件下で細胞を培養した後、細胞の破砕液に対し、各種アシル-ACPを基質とした鎖長伸長反応を行うことにより確認できる。
【0076】
KASはその基質特異性によって、KAS I、KAS II、KAS III、又はKAS IVに分類される。例えば、KAS IIIは、炭素原子数2のアセチル-ACP(又はアセチル-CoA)を基質とし、炭素原子数2から4の伸長反応を触媒する。KAS Iは、主に炭素原子数4から16の伸長反応を触媒し、炭素原子数16のパルミトイル-ACPを合成する。KAS IIは、主に炭素原子数18以上の長鎖アシル基への伸長反応を触媒し、長鎖アシル-ACPを合成する。KAS IVは主に炭素原子数6から14の伸長反応を触媒し、中鎖アシル-ACPを合成する。
そのため、KAS IIの発現を促進することで、好ましくはKAS IIをコードする遺伝子の発現を促進することで、長鎖脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
【0077】
本発明で好ましく用いることができるKASは、通常のKASや、それらと機能的に均等なタンパク質から、宿主の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータ由来のKAS II(以下、「NoKASII」ともいう)(配列番号60)等が挙げられる。また、これと機能的に均等なタンパク質として、前記NoKASIIのアミノ酸配列との同一性が50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)のアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質も用いることができる。前記NoKASIIをコードする遺伝子としては、配列番号61で表される塩基配列からなるDNAからなる遺伝子、又は配列番号61で表される塩基配列との同一性が50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)の塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子が挙げられる。
また、KASの発現を促進させた形質転換体(例えば、KAS遺伝子の発現を促進させた形質転換体)は、常法により作製できる。例えば、前述の各種デサチュラーゼ遺伝子の発現を促進させる方法と同様、KASをコードする遺伝子を宿主に導入する方法、KASをコードする遺伝子をゲノム上に有する宿主において当該遺伝子の発現調節領域を改変する方法、などにより形質転換体を作製することができる。
【0078】
さらに本発明の形質転換体は、ACPの発現が促進されていることが好ましく、ACPをコードする遺伝子(以下単に、「ACP遺伝子」ともいう)の発現が促進されていることがより好ましい。
ACPは脂肪酸の生合成反応(脂肪酸の伸長反応)の足場(担体)として機能する。脂肪酸のアシル基は、ACPのセリン残基に結合したホスホパンテテイン基とチオエステル結合を形成する。この状態で脂肪酸が伸長される。
そのため、ACPの発現を促進することで、好ましくはACP遺伝子の発現を促進することで、脂質の製造に用いる藻類の脂質の生産性、特に脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
【0079】
本発明で好ましく用いることができるACPは、アシルキャリアープロテイン活性(以下、「ACP活性」ともいう)を有するタンパク質であればよい。ここで「ACP活性」とは、脂肪酸のアシル基とチオエステル結合を形成することで脂肪酸の伸長反応の足場として機能する活性を意味する。
タンパク質がACP活性を有することは、例えば、ACP遺伝子欠損株に、宿主内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAを導入し、脂肪酸合成能を相補させることで確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAを宿主細胞へ導入し、導入した遺伝子が発現する条件下で細胞を培養し、宿主細胞内又は培養液中の脂肪酸の生産量や組成の変化を常法により分析することで確認できる。あるいは、前記タンパク質を、Biochemistry, 2011, vol. 50(25), p. 5704-5717等の文献を参考にして、補酵素A(CoA)と適当なACPシンターゼ(ACP synthase)(ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(phosphopantetheinyl transferase))と反応させ、ホスホパンテテイン基が結合したholo-ACPを形成させることで確認することができる。あるいは、The Journal of Biological Chemistry, 1979, vol. 254(15), p. 7123-7128等の文献を参考にして、前記holo-ACPを脂肪酸及び適当なアシル-ACPシンセターゼ(acyl-ACP synthetase)と反応させ、アシル基が結合したacyl-ACPを形成させることで確認することができる。
【0080】
本発明で好ましく用いることができるACPは、通常のACPや、それらと機能的に均等なタンパク質から、宿主の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータ由来のACP(以下、「NoACP」ともいう)(配列番号62)等が挙げられる。また、これと機能的に均等なタンパク質として、前記NoACPのアミノ酸配列との同一性が50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)のアミノ酸配列からなり、かつACP活性を有するタンパク質も用いることができる。前記NoACPをコードする遺伝子としては、配列番号63で表される塩基配列からなるDNAからなる遺伝子、又は配列番号63で表される塩基配列との同一性が50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)の塩基配列からなり、かつACP活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子が挙げられる。
また、ACPの発現を促進させた形質転換体(例えば、ACP遺伝子の発現を促進させた形質転換体)は、常法により作製できる。例えば、前述の各種デサチュラーゼ遺伝子の発現を促進させる方法と同様、ACPをコードする遺伝子を宿主に導入する方法、ACPをコードする遺伝子をゲノム上に有する宿主において当該遺伝子の発現調節領域を改変する方法、などにより形質転換体を作製することができる。
さらに、ナンノクロロプシス属に属する藻類において、ACPは葉緑体に局在することが好ましい。例えば、ナンノクロロプシス属に属する藻類由来のACP遺伝子の塩基配列に、ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で機能する葉緑体移行シグナルをコードする塩基配列を付加した遺伝子の発現を促進することがより好ましい。あるいは、ナンノクロロプシス属に属する藻類由来のACPをコードする遺伝子を葉緑体ゲノム中に導入し、導入した遺伝子の発現を促進することがより好ましい。
【0081】
さらに本発明の形質転換体は、TEの発現が促進されていることが好ましく、TEをコードする遺伝子(以下単に、「TE遺伝子」ともいう)の発現も促進されていることが好ましい。
前述したように、TEは、KAS等の脂肪酸合成酵素によって合成されたアシル-ACPのチオエステル結合を加水分解し、遊離の脂肪酸を生成する酵素である。TEの作用によってACP上での脂肪酸合成が終了し、切り出された脂肪酸はPUFAの合成やトリアシルグリセロール等の合成に供される。そのため、TEの発現を促進することで、好ましくはTE遺伝子の発現を促進することで、脂質の製造に用いる形質転換体の脂質の生産性、特に脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
本発明で用いることができるTEは、アシル-ACPチオエステラーゼ活性(以下、「TE活性」ともいう)を有するタンパク質であればよい。ここで「TE活性」とは、アシル-ACPのチオエステル結合を加水分解する活性をいう。
【0082】
TEは、基質であるアシル-ACPを構成するアシル基(脂肪酸残基)の炭素原子数や不飽和結合数によって異なる反応特異性を示す複数のTEが存在していることが知られている。よってTEは、生体内での脂肪酸組成を決定する重要なファクターであると考えられている。また、TEをコードする遺伝子を元来有していない宿主を用いる場合、TEをコードする遺伝子、好ましくは長鎖アシル-ACPに対する基質特異性を有するTEをコードする遺伝子の導入が効果的である。このような遺伝子を導入することで、PUFAの生産性を一層向上させることができる。
【0083】
本発明で用いることができるTEは、通常のTEや、それらと機能的に均等なタンパク質から、宿主の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、ナンノクロロプシス・ガディタナ由来TE(配列番号64)、ナンノクロロプシス・オキュラータ由来TE(配列番号65又は67)、ナンノクロロプシス・グラニュラータ由来TE(配列番号66)などを用いることができる。また、これと機能的に均等なタンパク質として、前記TEのアミノ酸配列との同一性が50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)のアミノ酸配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質も用いることができる。
また、TE遺伝子の発現を促進させた形質転換体は、常法により作製できる。例えば、前述の各種デサチュラーゼ遺伝子の発現を促進させる方法と同様、TE遺伝子を宿主に導入する方法、TE遺伝子をゲノム上に有する宿主において当該遺伝子の発現調節領域を改変する方法、などにより形質転換体を作製することができる。
【0084】
本発明の形質転換体は、PUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性が、Δ12-デサチュラーゼ及びΔ6-デサチュラーゼそれぞれの発現が促進されていない宿主と比較して向上している。したがって、本発明の形質転換体を適切な条件で培養し、次いで得られた培養物又は生育物からPUFA又はこれを構成成分とする脂質を回収すれば、PUFA又はこれを構成成分とする脂質を効率よく製造することができる。ここで「培養物」とは培養した後の培養液及び形質転換体をいい、「生育物」とは生育した後の形質転換体をいう。
【0085】
本発明の形質転換体の培養条件は、宿主に応じて適宜選択することができ、その宿主に対して通常用いられる培養条件を使用できる。また脂肪酸の生産効率の点から、培地中に、例えば脂肪酸生合成系に関与する前駆物質としてグリセロール、酢酸、又はグルコース等を添加してもよい。
【0086】
本発明で用いる培地は、天然海水又は人工海水をベースにした培地でもよいし、市販の培養培地でもよい。具体的な培地としては、f/2培地、ESM培地、ダイゴIMK培地、L1培地、MNK培地、等を挙げることができる。なかでも、脂質の生産性向上及び栄養成分濃度の観点から、f/2培地、ESM培地、又はダイゴIMK培地が好ましく、f/2培地、又はダイゴIMK培地がより好ましく、f/2培地がさらに好ましい。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上のため、培地に、窒素源、リン源、金属塩、ビタミン類、微量金属等を適宜添加することができる。
培地に接種する形質転換体の量は適宜選択することができ、生育性の点から、培地当たり1%(vol/vol)以上が好ましい。また、その上限値は50%(vol/vol)以下が好ましく、10%(vol/vol)以下がより好ましい。接種する藻類の量の数値範囲は、1〜50%(vol/vol)が好ましく、1〜10%(vol/vol)がより好ましい。培養温度は、藻類の増殖に悪影響を与えない範囲であれば特に制限されないが、通常、5〜40℃の範囲である。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上、及び生産コストの低減の観点から、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。またその上限値は35℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。培養温度の数値範囲は、好ましくは10〜35℃であり、より好ましくは15〜30℃である。
また藻類の培養は、光合成ができるよう光照射下で行うことが好ましい。光照射は、光合成が可能な条件であればよく、人工光でも太陽光でもよい。光照射時の照度としては、藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から、100ルクス以上が好ましく、300ルクス以上がより好ましく、1000ルクス以上がさらに好ましい。またその上限値は、50000ルクス以下が好ましく、10000ルクス以下がより好ましく、6000ルクス以下がさらに好ましい。光照射時の照度の数値範囲は、好ましくは100〜50000ルクスの範囲、より好ましくは300〜10000ルクスの範囲、さらに好ましくは1000〜6000ルクスの範囲である。また、光照射の間隔は、特に制限されないが、前記と同様の観点から、明暗周期で行うことが好ましく、24時間のうち明期は8時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましい。またその上限値は、24時間以下が好ましく、18時間以下がより好ましい。明期の数値範囲は、好ましくは8〜24時間、より好ましくは10〜18時間、さらに好ましくは12時間である。
また藻類の培養は、光合成ができるように二酸化炭素を含む気体の存在下、又は炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩を含む培地で行うことが好ましい。気体中の二酸化炭素の濃度は特に限定されないが、生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から0.03%(大気条件と同程度)以上が好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.1%以上がさらに好ましく、0.3%以上がよりさらに好ましい。またその上限値は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、1%以下がよりさらに好ましい。二酸化炭素の濃度の数値範囲は、0.03〜10%が好ましく、0.05〜5%がより好ましく、0.1〜3%がさらに好ましく、0.3〜1%がよりさらに好ましい。炭酸塩の濃度は特に限定されないが、例えば炭酸水素ナトリウムを用いる場合、生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。またその上限値は、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。炭酸水素ナトリウムの濃度の数値範囲は、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜2質量%がより好ましく、0.1〜1質量%がさらに好ましい。
培養時間は特に限定されず、脂質を高濃度に蓄積する藻体が高い濃度で増殖できるように、長期間(例えば150日程度)行なってもよい。3日以上が好ましく、7日以上がより好ましい。またその上限値は、90日以下が好ましく、30日以下がより好ましい。培養期間の数値範囲は、好ましくは3〜90日間、より好ましくは3〜30日間、さらに好ましくは7〜30日間である。なお、培養は、通気攪拌培養、振とう培養又は静置培養のいずれでもよく、通気性の向上の観点から、通気撹拌培養が好ましい。
【0087】
培養物又は生育物から脂質を採取する方法としては、常法から適宜選択することができる。例えば、前述の培養物又は生育物から、ろ過、遠心分離、細胞の破砕、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、クロロホルム/メタノール抽出法、ヘキサン抽出法、又はエタノール抽出法等により脂質成分を単離、回収することができる。より大規模な培養を行った場合は、培養物又は生育物より油分を圧搾又は抽出により回収後、脱ガム、脱酸、脱色、脱蝋、脱臭等の一般的な精製を行い、脂質を得ることができる。このように脂質成分を単離した後、単離した脂質を加水分解することで脂肪酸を得ることができる。脂質成分から脂肪酸を単離する方法としては、例えば、アルカリ溶液中で70℃程度の高温で処理をする方法、リパーゼ処理をする方法、又は高圧熱水を用いて分解する方法等が挙げられる。
【0088】
本発明の製造方法において製造される脂質は、その利用性の点から、脂肪酸又は脂肪酸化合物を含んでいることが好ましく、脂肪酸又は脂肪酸エステル化合物を含んでいることがさらに好ましい。前記脂肪酸エステル化合物は、MAG、DAG及びTAGからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、TAGがより好ましい。
脂質中に含まれる脂肪酸又は脂肪酸エステル化合物は、界面活性剤等への利用性や栄養学的観点から、炭素原子数18以上のPUFA又はそのエステル化合物が好ましく、炭素原子数18若しくは20のPUFA又はそのエステル化合物がより好ましく、炭素原子数20のPUFA又はそのエステル化合物がより好ましく、C20:3、C20:4若しくはC20:5、又はそのエステル化合物がより好ましく、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸若しくはエイコサペンタエン酸、又はそのエステル化合物がより好ましく、アラキドン酸若しくはエイコサペンタエン酸、又はそのエステル化合物がより好ましく、エイコサペンタエン酸又はそのエステル化合物がさらに好ましい。
脂肪酸エステル化合物は、生産性の点から、単純脂質又は複合脂質が好ましく、単純脂質がさらに好ましく、トリアシルグリセロールがさらにより好ましい。
【0089】
本発明の製造方法により得られる脂質は、食用として用いる他、可塑剤、化粧品等の乳化剤、石鹸や洗剤等の洗浄剤、繊維処理剤、毛髪リンス剤、又は殺菌剤や防腐剤として利用することができる。
【0090】
本発明は、Δ12-DES遺伝子を含有する組換えベクター、及びΔ6-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、ナンノクロロプシス属に属する藻類の形質転換体の作製用キットも提供する。本発明のキットは、PUFA合成経路の律速段階の反応を触媒する酵素の発現が促進され、PUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性に優れた形質転換体の作製に使用することができる。本発明のキットは、ω3-DES遺伝子を含有する組換えベクター、Δ5-DES遺伝子を含有する組換えベクター、Δ9-DES遺伝子を含有する組換えベクター、及びΔ6-ELO遺伝子を含有する組換えベクターからなる群より選ばれる少なくとも1種の組換えベクター、好ましくは、ω3-DES遺伝子を含有する組換えベクター、Δ5-DES遺伝子を含有する組換えベクター、Δ9-DES遺伝子を含有する組換えベクター、及びΔ6-ELO遺伝子を含有する組換えベクターからなる群より選ばれる2種以上の組換えベクター、も含んでもよい。
なお本発明のキットは、前記組換えベクターの他、宿主、前記ベクターで宿主を形質転換するために通常用いられる試薬、形質転換用緩衝液、形質転換体を選抜するための指標となる試薬等、形質転換体の作製の検出に必要な他の要素を含んでいてもよい。
【0091】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の脂質の製造方法、生産される脂肪酸組成を改変する方法、形質転換体、形質転換体の作製方法、及び形質転換体の作製用キットを開示する。
【0092】
<1>Δ12-DES及びΔ6-DESの発現、又はΔ12-DES遺伝子及びΔ6-DES遺伝子の発現を促進させたナンノクロロプシス属に属する藻類を培養し、脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法。
<2>ナンノクロロプシス属に属する藻類において、Δ12-DES及びΔ6-DESの発現、又はΔ12-DES遺伝子及びΔ6-DES遺伝子の発現を促進し、藻類の細胞内で生産されるPUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる、脂質の製造方法。
<3>ナンノクロロプシス属に属する藻類において、Δ12-DES及びΔ6-DESの発現、又はΔ12-DES遺伝子及びΔ6-DES遺伝子の発現を促進し、藻類の細胞内で生産される全脂肪酸に占めるPUFAの割合を増加させる、脂肪酸組成を改変する方法。
<4>ナンノクロロプシス属に属する藻類において、Δ12-DES及びΔ6-DESの発現、又はΔ12-DES遺伝子及びΔ6-DES遺伝子の発現を促進し、藻類の細胞内で生産される脂肪酸エステル化合物、好ましくはMAG、DAG及びTAGからなる群より選ばれる少なくとも1種、より好ましくはTAG、の全脂肪酸残基に占めるPUFA残基の割合を増加させる、脂肪酸組成を改変する方法。
【0093】
<5>Δ12-DES遺伝子及びΔ6-DES遺伝子の発現を前記藻類の細胞内で促進させ、Δ12-DES及びΔ6-DESの発現を促進する、前記<1>〜<4>のいずれか1項記載の方法。
<6>Δ12-DES遺伝子及びΔ6-DES遺伝子を前記藻類に導入し、導入したΔ12-DES遺伝子及びΔ6-DES遺伝子の発現を促進させる、前記<1>〜<5>のいずれか1項記載の方法。
【0094】
<7>前記Δ12-DESが下記タンパク質(A)〜(D)のいずれか1つ、好ましくは下記タンパク質(A)又は(B)、である、前記<1>〜<6>のいずれか1項記載の方法。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質。
(C)配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質。
<8>前記タンパク質(B)が、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上176個以下、より好ましくは1個以上154個以下、より好ましくは1個以上132個以下、より好ましくは1個以上110個以下、より好ましくは1個以上88個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上44個以下、より好ましくは1個以上36個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<7>項記載の方法。
<9>前記タンパク質(D)が、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上181個以下、より好ましくは1個以上159個以下、より好ましくは1個以上136個以下、より好ましくは1個以上113個以下、より好ましくは1個以上91個以下、より好ましくは1個以上68個以下、より好ましくは1個以上46個以下、より好ましくは1個以上37個以下、より好ましくは1個以上23個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<7>項記載の方法。
<10>前記Δ12-DES、好ましくは前記タンパク質(A)〜(D)のいずれか1つ、をコードする遺伝子が、下記DNA(a)〜(d)のいずれか1つからなる遺伝子、好ましくは下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子、である、前記<1>〜<9>のいずれか1項記載の方法。
(a)配列番号2で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列番号46で表される塩基配列からなるDNA。
(d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<11>前記DNA(b)が、前記DNA(a)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上527個以下、より好ましくは1個以上461個以下、より好ましくは1個以上396個以下、より好ましくは1個以上330個以下、より好ましくは1個以上264個以下、より好ましくは1個以上198個以下、より好ましくは1個以上132個以下、より好ましくは1個以上106個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上27個以下、より好ましくは1個以上14個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<10>項記載の方法。
<12>前記DNA(d)が、前記DNA(c)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上544個以下、より好ましくは1個以上476個以下、より好ましくは1個以上408個以下、より好ましくは1個以上340個以下、より好ましくは1個以上272個以下、より好ましくは1個以上204個以下、より好ましくは1個以上136個以下、より好ましくは1個以上109個以下、より好ましくは1個以上68個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上14個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(c)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<10>項記載の方法。
【0095】
<13>前記Δ6-DESが下記タンパク質(E)〜(H)のいずれか1つ、好ましくは下記タンパク質(E)又は(F)、である、前記<1>〜<12>のいずれか1項記載の方法。
(E)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質。
(G)配列番号47で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質。
<14>前記タンパク質(F)が、前記タンパク質(E)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上190個以下、より好ましくは1個以上166個以下、より好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上95個以下、より好ましくは1個以上72個以下、より好ましくは1個以上48個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<13>項記載の方法。
<15>前記タンパク質(H)が、前記タンパク質(G)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上190個以下、より好ましくは1個以上166個以下、より好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上95個以下、より好ましくは1個以上72個以下、より好ましくは1個以上48個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<13>項記載の方法。
<16>前記Δ6-DES、好ましくは前記タンパク質(E)〜(H)のいずれか1つ、をコードする遺伝子が、下記DNA(e)〜(h)のいずれか1つからなる遺伝子、好ましくは下記DNA(e)又は(f)からなる遺伝子、である、前記<1>〜<15>のいずれか1項記載の方法。
(e)配列番号4で表される塩基配列からなるDNA。
(f)前記DNA(e)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(g)配列番号48で表される塩基配列からなるDNA。
(h)前記DNA(g)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<17>前記DNA(f)が、前記DNA(e)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上570個以下、より好ましくは1個以上499個以下、より好ましくは1個以上428個以下、より好ましくは1個以上357個以下、より好ましくは1個以上285個以下、より好ましくは1個以上214個以下、より好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上114個以下、より好ましくは1個以上72個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上15個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(e)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<16>項記載の方法。
<18>前記DNA(h)が、前記DNA(g)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上572個以下、より好ましくは1個以上500個以下、より好ましくは1個以上429個以下、より好ましくは1個以上357個以下、より好ましくは1個以上286個以下、より好ましくは1個以上215個以下、より好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上115個以下、より好ましくは1個以上72個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上15個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(g)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<16>項記載の方法。
【0096】
<19>前記藻類において、ω3-DESの発現、又はω3-DES遺伝子の発現を促進させた、前記<1>〜<18>のいずれか1項記載の方法。
<20>ω3-DES遺伝子の発現を前記藻類の細胞内で促進させ、ω3-DESの発現を促進する、前記<19>項記載の方法。
<21>ω3-DES遺伝子を前記藻類に導入し、導入したω3-DES遺伝子の発現を促進させる、前記<19>又は<20>項記載の方法。
<22>前記ω3-DESが下記タンパク質(I)〜(L)のいずれか1つ、好ましくは下記タンパク質(I)又は(J)、である、前記<19>〜<21>のいずれか1項記載の方法。
(I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつω3-DES活性を有するタンパク質。
(K)配列番号49で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(L)前記タンパク質(K)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつω3-DES活性を有するタンパク質。
<23>前記タンパク質(J)が、前記タンパク質(I)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上164個以下、より好ましくは1個以上144個以下、より好ましくは1個以上123個以下、より好ましくは1個以上103個以下、より好ましくは1個以上82個以下、より好ましくは1個以上62個以下、より好ましくは1個以上41個以下、より好ましくは1個以上33個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<22>項記載の方法。
<24>前記タンパク質(L)が、前記タンパク質(K)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上163個以下、より好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上123個以下、より好ましくは1個以上102個以下、より好ましくは1個以上82個以下、より好ましくは1個以上62個以下、より好ましくは1個以上41個以下、より好ましくは1個以上33個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<22>項記載の方法。
<25>前記ω3-DES、好ましくは前記タンパク質(I)〜(L)のいずれか1つ、をコードする遺伝子が、下記DNA(i)〜(l)のいずれか1つからなる遺伝子、好ましくは下記DNA(i)又は(j)からなる遺伝子、である、前記<19>〜<24>のいずれか1項記載の方法。
(i)配列番号6で表される塩基配列からなるDNA。
(j)前記DNA(i)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(k)配列番号50で表される塩基配列からなるDNA。
(l)前記DNA(k)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<26>前記DNA(j)が、前記DNA(i)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上494個以下、より好ましくは1個以上432個以下、より好ましくは1個以上370個以下、より好ましくは1個以上309個以下、より好ましくは1個以上247個以下、より好ましくは1個以上185個以下、より好ましくは1個以上124個以下、より好ましくは1個以上99個以下、より好ましくは1個以上62個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上13個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(i)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<25>項記載の方法。
<27>前記DNA(l)が、前記DNA(k)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上490個以下、より好ましくは1個以上429個以下、より好ましくは1個以上368個以下、より好ましくは1個以上306個以下、より好ましくは1個以上245個以下、より好ましくは1個以上184個以下、より好ましくは1個以上123個以下、より好ましくは1個以上98個以下、より好ましくは1個以上62個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上13個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(k)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<25>項記載の方法。
【0097】
<28>前記藻類において、Δ5-DESの発現、又はΔ5-DES遺伝子の発現を促進させた、前記<1>〜<27>のいずれか1項記載の方法。
<29>Δ5-DES遺伝子の発現を前記藻類の細胞内で促進させ、Δ5-DESの発現を促進する、前記<28>項記載の方法。
<30>Δ5-DES遺伝子を前記藻類に導入し、導入したΔ5-DES遺伝子の発現を促進させる、前記<28>又は<29>項記載の方法。
<31>前記Δ5-DESが下記タンパク質(M)〜(P)のいずれか1つ、好ましくは下記タンパク質(M)又は(N)、である、前記<28>〜<30>のいずれか1項記載の方法。
(M)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質。
(O)配列番号51で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(P)前記タンパク質(O)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質。
<32>前記タンパク質(N)が、前記タンパク質(M)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上211個以下、より好ましくは1個以上185個以下、より好ましくは1個以上158個以下、より好ましくは1個以上132個以下、より好ましくは1個以上106個以下、より好ましくは1個以上79個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上43個以下、より好ましくは1個以上27個以下、より好ましくは1個以上11個以下、より好ましくは1個以上6個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<31>項記載の方法。
<33>前記タンパク質(P)が、前記タンパク質(O)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上206個以下、より好ましくは1個以上181個以下、より好ましくは1個以上155個以下、より好ましくは1個以上129個以下、より好ましくは1個以上103個以下、より好ましくは1個以上78個以下、より好ましくは1個以上52個以下、より好ましくは1個以上42個以下、より好ましくは1個以上26個以下、より好ましくは1個以上11個以下、より好ましくは1個以上6個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<31>項記載の方法。
<34>前記Δ5-DES、好ましくは前記タンパク質(M)〜(P)のいずれか1つをコードする遺伝子が、下記DNA(m)〜(p)のいずれか1つからなる遺伝子、好ましくは下記DNA(m)又は(n)からなる遺伝子、である、前記<28>〜<33>のいずれか1項記載の方法。
(m)配列番号8で表される塩基配列からなるDNA。
(n)前記DNA(m)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(o)配列番号52で表される塩基配列からなるDNA。
(p)前記DNA(o)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<35>前記DNA(n)が、前記DNA(m)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上633個以下、より好ましくは1個以上554個以下、より好ましくは1個以上475個以下、より好ましくは1個以上396個以下、より好ましくは1個以上317個以下、より好ましくは1個以上238個以下、より好ましくは1個以上159個以下、より好ましくは1個以上127個以下、より好ましくは1個以上80個以下、より好ましくは1個以上32個以下、より好ましくは1個以上16個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(m)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<34>項記載の方法。
<36>前記DNA(p)が、前記DNA(o)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上620個以下、より好ましくは1個以上542個以下、より好ましくは1個以上465個以下、より好ましくは1個以上387個以下、より好ましくは1個以上310個以下、より好ましくは1個以上233個以下、より好ましくは1個以上155個以下、より好ましくは1個以上124個以下、より好ましくは1個以上78個以下、より好ましくは1個以上31個以下、より好ましくは1個以上16個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(o)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<34>項記載の方法。
【0098】
<37>前記藻類において、Δ9-DESの発現、又はΔ9-DES遺伝子の発現を促進させた、前記<1>〜<36>のいずれか1項記載の方法。
<38>Δ9-DES遺伝子の発現を前記藻類の細胞内で促進させ、Δ9-DESの発現を促進する、前記<37>項記載の方法。
<39>Δ9-DES遺伝子を前記藻類に導入し、導入したΔ9-DES遺伝子の発現を促進させる、前記<37>又は<38>項記載の方法。
<40>前記Δ9-DESが下記タンパク質(Q)〜(T)のいずれか1つ、好ましくは下記タンパク質(Q)又は(R)、である、前記<37>〜<39>のいずれか1項記載の方法。
(Q)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(R)前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質。
(S)配列番号53で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(T)前記タンパク質(S)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質。
<41>前記タンパク質(R)が、前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上144個以下、より好ましくは1個以上126個以下、より好ましくは1個以上108個以下、より好ましくは1個以上90個以下、より好ましくは1個以上72個以下、より好ましくは1個以上54個以下、より好ましくは1個以上36個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上18個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上4個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<40>項記載の方法。
<42>前記タンパク質(T)が、前記タンパク質(S)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上136個以下、より好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上102個以下、より好ましくは1個以上85個以下、より好ましくは1個以上68個以下、より好ましくは1個以上51個以下、より好ましくは1個以上34個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上7個以下、より好ましくは1個以上4個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<40>項記載の方法。
<43>前記Δ9-DES、好ましくは前記タンパク質(Q)〜(T)のいずれか1つをコードする遺伝子が、下記DNA(q)〜(t)のいずれか1つからなる遺伝子、好ましくは下記DNA(q)又は(r)からなる遺伝子、である、前記<37>〜<42>のいずれか1項記載の方法。
(q)配列番号10で表される塩基配列からなるDNA。
(r)前記DNA(q)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(s)配列番号54で表される塩基配列からなるDNA。
(t)前記DNA(s)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<44>前記DNA(r)が、前記DNA(q)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上432個以下、より好ましくは1個以上378個以下、より好ましくは1個以上324個以下、より好ましくは1個以上270個以下、より好ましくは1個以上216個以下、より好ましくは1個以上162個以下、より好ましくは1個以上108個以下、より好ましくは1個以上87個以下、より好ましくは1個以上54個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上11個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(q)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<43>項記載の方法。
<45>前記DNA(t)が、前記DNA(s)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上410個以下、より好ましくは1個以上359個以下、より好ましくは1個以上307個以下、より好ましくは1個以上256個以下、より好ましくは1個以上205個以下、より好ましくは1個以上154個以下、より好ましくは1個以上103個以下、より好ましくは1個以上82個以下、より好ましくは1個以上52個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上11個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(s)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<43>項記載の方法。
【0099】
<46>前記藻類において、Δ6-ELOの発現、又はΔ6-ELO遺伝子の発現を促進させた、前記<1>〜<45>のいずれか1項記載の方法。
<47>Δ6-ELO遺伝子の発現を前記藻類の細胞内で促進させ、Δ6-ELOの発現を促進する、前記<46>項記載の方法。
<48>Δ6-ELO遺伝子を前記藻類に導入し、導入したΔ6-ELO遺伝子の発現を促進させる、前記<46>又は<47>項記載の方法。
<49>前記Δ6-ELOが下記タンパク質(U)又は(V)である、前記<46>〜<48>のいずれか1項記載の方法。
(U)配列番号74で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(V)前記タンパク質(U)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質。
<50>前記タンパク質(V)が、前記タンパク質(U)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上111個以下、より好ましくは1個以上97個以下、より好ましくは1個以上83個以下、より好ましくは1個以上69個以下、より好ましくは1個以上56個以下、より好ましくは1個以上42個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上23個以下、より好ましくは1個以上14個以下、より好ましくは1個以上6個以下、より好ましくは1個以上3個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<49>項記載の方法。
<51>前記Δ6-ELO、好ましくは前記タンパク質(U)及び(V)のいずれか1つをコードする遺伝子が、下記DNA(u)及び(v)のいずれか1つからなる遺伝子である、前記<46>〜<50>のいずれか1項記載の方法。
(u)配列番号73で表される塩基配列からなるDNA。
(v)前記DNA(u)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<52>前記DNA(v)が、前記DNA(u)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上333個以下、より好ましくは1個以上291個以下、より好ましくは1個以上250個以下、より好ましくは1個以上208個以下、より好ましくは1個以上167個以下、より好ましくは1個以上125個以下、より好ましくは1個以上84個以下、より好ましくは1個以上67個以下、より好ましくは1個以上42個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上9個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(u)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<51>項記載の方法。
【0100】
<53>前記藻類において、ω3-DES、Δ5-DES、Δ9-DES及びΔ6-ELOからなる群より選ばれる少なくとも1種の酵素、好ましくはω3-DES、Δ5-DES、Δ9-DES及びΔ6-ELOからなる群より選ばれる2種以上の酵素、又はこれをコードする遺伝子の発現が促進されている、前記<1>〜<52>のいずれか1項記載の方法。
【0101】
<54>前記藻類において、KAS II、ACP、及びTEからなる群より選ばれる少なくとも1つのタンパク質の発現を促進させた、好ましくはKAS II、ACP、及びTEからなる群より選ばれる少なくとも1つをコードする遺伝子の発現を促進させた、前記<1>〜<53>のいずれか1項記載の方法。
<55>KAS II、ACP、及びTEからなる群より選ばれる少なくとも1つをコードする遺伝子を前記藻類に導入し、導入した遺伝子の発現を促進させる、前記<54>項記載の方法。
<56>前記KAS IIが、配列番号60で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又は配列番号60で表されるアミノ酸配列と同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、のアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質である、前記<54>又は<55>項記載の方法。
<57>KAS IIをコードする遺伝子が、配列番号61で表される塩基配列からなるDNAからなる遺伝子、又は配列番号61で表される塩基配列との同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、の塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子である、前記<54>〜<56>のいずれか1項記載の方法。
<58>前記ACPが、配列番号62で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又は配列番号62で表されるアミノ酸配列と同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、のアミノ酸配列からなり、かつACP活性を有するタンパク質である、前記<54>又は<55>項記載の方法。
<59>ACPをコードする遺伝子が、配列番号63で表される塩基配列からなるDNAからなる遺伝子、又は配列番号63で表される塩基配列との同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、の塩基配列からなり、かつACP活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子である、前記<54>、<55>及び<58>のいずれか1項記載の方法。
<60>ACPをコードする遺伝子が、前記藻類の細胞内で機能する葉緑体移行シグナル配列をコードする塩基配列が付加された遺伝子である、前記<54>、<55>、<58>及び<59>のいずれか1項記載の方法。
<61>ACPをコードする遺伝子が葉緑体ゲノムに導入され、導入した遺伝子の発現を促進させる、前記<54>、<55>、<58>及び<59>のいずれか1項記載の方法。
<62>前記TEが、配列番号64〜67のいずれか1つで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又はそれらと機能的に均等なタンパク質である、前記<54>又は<55>項記載の方法。
<63>前記TEが、配列番号64〜67のいずれか1つで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又は配列番号64〜67のいずれか1つで表されるアミノ酸配列と同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、のアミノ酸配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質である、前記<54>、<55>及び<62>のいずれか1項記載の方法。
【0102】
<64>前記藻類が、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、ナンノクロロプシス・サリナ、ナンノクロロプシス・オセアニカ、ナンノクロロプシス・アトムス、ナンノクロロプシス・マキュラタ、ナンノクロロプシス・グラニュラータ、又はナンノクロロプシス・エスピー、好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ又はナンノクロロプシス・ガディタナ、より好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ、である、前記<1>〜<63>のいずれか1項記載の方法。
<65>前記脂肪酸又は前記脂質が、炭素原子数18以上のPUFA又はその脂肪酸エステル化合物、好ましくは炭素原子数18若しくは20のPUFA又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素原子数20のPUFA又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくはC20:3、C20:4若しくはC20:5、又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくはジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸若しくはエイコサペンタエン酸、又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくはアラキドン酸若しくはエイコサペンタエン酸、又はそのエステル化合物、より好ましくはエイコサペンタエン酸又はその脂肪酸エステル化合物、を含む、前記<1>〜<64>のいずれか1項記載の方法。
<66>f/2培地を用いて前記藻類を培養する、前記<1>〜<65>のいずれか1項記載の方法。
【0103】
<67>Δ12-DES及びΔ6-DESの発現、又はΔ12-DES遺伝子及びΔ6-DES遺伝子の発現が促進されている、ナンノクロロプシス属に属する藻類の形質転換体。
<68>Δ12-DES遺伝子及びΔ6-DES遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進され、Δ12-DES及びΔ6-DESの発現が促進されている、前記<67>項記載の形質転換体。
<69>Δ12-DES遺伝子及びΔ6-DES遺伝子、又はΔ12-DES遺伝子を含有する組換えベクター及びΔ6-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、前記<68>項記載の形質転換体。
<70>Δ12-DES遺伝子及びΔ6-DES遺伝子、又はΔ12-DES遺伝子を含有する組換えベクター及びΔ6-DES遺伝子を含有する組換えベクターを、ナンノクロロプシス属に属する藻類に導入する、形質転換体の作製方法。
<71>Δ12-DES遺伝子を含有する組換えベクター、及びΔ6-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、ナンノクロロプシス属に属する藻類の形質転換体の作製用キット。
<72>前記Δ12-DESが前記タンパク質(A)〜(D)のいずれか1つ、好ましくは前記タンパク質(A)又は(B)、である、前記<67>〜<71>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<73>前記タンパク質(B)又は(D)が、前記<7>〜<9>のいずれか1項で規定するタンパク質である、前記<72>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<74>前記Δ12-DES、好ましくは前記タンパク質(A)〜(D)のいずれか1つをコードする遺伝子が、前記<10>〜<12>のいずれか1項で規定する遺伝子である、前記<67>〜<73>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<75>前記Δ6-DESが前記タンパク質(E)〜(H)のいずれか1つ、好ましくは前記タンパク質(E)又は(F)、である、前記<67>〜<74>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<76>前記タンパク質(F)又は(H)が、前記<13>〜<15>のいずれか1項で規定するタンパク質である、前記<75>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<77>前記Δ6-DES、好ましくは前記タンパク質(E)〜(H)のいずれか1つをコードする遺伝子が、前記<16>〜<18>のいずれか1項で規定する遺伝子である、前記<67>〜<76>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
【0104】
<78>前記形質転換体において、ω3-DESの発現、又はω3-DES遺伝子の発現が促進されている、前記<67>〜<69>、及び<72>〜<77>のいずれか1項記載の形質転換体。
<79>ω3-DES遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進され、ω3-DESの発現が促進されている、前記<78>項記載の形質転換体。
<80>ω3-DES遺伝子、又はω3-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、前記<79>項記載の形質転換体。
<81>ω3-DES遺伝子、又はω3-DES遺伝子を含有する組換えベクターを、前記藻類に導入する、前記<70>、及び<72>〜<77>のいずれか1項記載の形質転換体の作製方法。
<82>ω3-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含む、前記<71>〜<77>のいずれか1項記載の形質転換体の作製用キット。
<83>前記ω3-DESが前記タンパク質(I)〜(L)のいずれか1つ、好ましくは前記タンパク質(I)又は(J)、である、前記<78>〜<82>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<84>前記タンパク質(J)又は(L)が、前記<22>〜<24>のいずれか1項で規定するタンパク質である、前記<83>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<85>前記ω3-DES、好ましくは前記タンパク質(I)〜(L)のいずれか1つをコードする遺伝子が、前記<25>〜<27>のいずれか1項で規定する遺伝子である、前記<78>〜<84>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
【0105】
<86>前記形質転換体において、Δ5-DESの発現、又はΔ5-DES遺伝子の発現が促進されている、前記<67>〜<69>、<72>〜<80>、及び<83>〜<85>のいずれか1項記載の形質転換体。
<87>Δ5-DES遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進され、Δ5-DESの発現が促進されている、前記<86>項記載の形質転換体。
<88>Δ5-DES遺伝子、又はΔ5-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、前記<87>項記載の形質転換体。
<89>Δ5-DES遺伝子、又はΔ5-DES遺伝子を含有する組換えベクターを、前記藻類に導入する、前記<70>、<72>〜<77>、<81>、及び<83>〜<85>のいずれか1項記載の形質転換体の作製方法。
<90>Δ5-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含む、前記<71>〜<77>、及び<82>〜<85>のいずれか1項記載の形質転換体の作製用キット。
<91>前記Δ5-DESが前記タンパク質(M)〜(P)のいずれか1つ、好ましくは前記タンパク質(M)又は(N)、である、前記<86>〜<90>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<92>前記タンパク質(N)又は(P)が、前記<31>〜<33>のいずれか1項で規定するタンパク質である、前記<91>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<93>前記Δ5-DES、好ましくは前記タンパク質(M)〜(P)のいずれか1つをコードする遺伝子が、前記<34>〜<36>のいずれか1項で規定する遺伝子である、前記<86>〜<92>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
【0106】
<94>前記形質転換体において、Δ9-DESの発現、又はΔ9-DES遺伝子の発現が促進されている、前記<67>〜<69>、<72>〜<80>、<83>〜<88>、及び<91>〜<93>のいずれか1項記載の形質転換体。
<95>Δ9-DES遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進され、Δ9-DESの発現が促進されている、前記<94>項記載の形質転換体。
<96>Δ9-DES遺伝子、又はΔ9-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、前記<95>項記載の形質転換体。
<97>Δ9-DES遺伝子、又はΔ9-DES遺伝子を含有する組換えベクターを、前記藻類に導入する、前記<70>、<72>〜<77>、<81>、<83>〜<85>、<89>、及び<91>〜<93>のいずれか1項記載の形質転換体の作製方法。
<98>Δ9-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含む、前記<71>〜<77>、<82>〜<85>、及び<90>〜<93>のいずれか1項記載の形質転換体の作製用キット。
<99>前記Δ9-DESが前記タンパク質(Q)〜(T)のいずれか1つ、好ましくは前記タンパク質(Q)又は(R)、である、前記<94>〜<98>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<100>前記タンパク質(R)又は(T)が、前記<40>〜<42>のいずれか1項で規定するタンパク質である、前記<99>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<101>前記Δ9-DES、好ましくは前記タンパク質(Q)〜(T)のいずれか1つをコードする遺伝子が、前記<43>〜<45>のいずれか1項で規定する遺伝子である、前記<94>〜<100>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
【0107】
<102>前記形質転換体において、Δ6-ELOの発現、又はΔ6-ELO遺伝子の発現が促進されている、前記<67>〜<69>、<72>〜<80>、<83>〜<88>、<91>〜<96>、及び<99>〜<101>のいずれか1項記載の形質転換体。
<103>Δ6-ELO遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進され、Δ6-ELOの発現が促進されている、前記<102>項記載の形質転換体。
<104>Δ6-ELO遺伝子、又はΔ6-ELO遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、前記<103>項記載の形質転換体。
<105>Δ6-ELO遺伝子、又はΔ6-ELO遺伝子を含有する組換えベクターを、前記藻類に導入する、前記<70>、<72>〜<77>、<81>、<83>〜<85>、<89>、<91>〜<93>、<97>、及び<99>〜<101>のいずれか1項記載の形質転換体の作製方法。
<106>Δ6-ELO遺伝子を含有する組換えベクターを含む、前記<71>〜<77>、<82>〜<85>、<90>〜<93>、及び<98>〜<101>のいずれか1項記載の形質転換体の作製用キット。
<107>前記Δ6-ELOが前記タンパク質(U)及び(V)のいずれか1つである、前記<102>〜<106>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<108>前記タンパク質(V)が、前記<49>又は<50>項で規定するタンパク質である、前記<107>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<109>前記Δ6-ELO、好ましくは前記タンパク質(U)及び(V)のいずれか1つをコードする遺伝子が、前記<51>又は<52>項で規定する遺伝子である、前記<102>〜<108>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
【0108】
<110>ω3-DES、Δ5-DES、Δ9-DES及びΔ6-ELOからなる群より選ばれる少なくとも1種の酵素、好ましくはω3-DES、Δ5-DES、Δ9-DES及びΔ6-ELOからなる群より選ばれる2種以上の酵素、又はこれをコードする遺伝子の発現が促進されている、前記<67>〜<69>、<72>〜<80>、<83>〜<88>、<91>〜<96>、<99>〜<104>、及び<107>〜<109>のいずれか1項記載の形質転換体。
<111>ω3-DES遺伝子、Δ5-DES遺伝子、Δ9-DES遺伝子及びΔ6-ELO遺伝子からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子、好ましくはω3-DES遺伝子、Δ5-DES遺伝子、Δ9-DES遺伝子及びΔ6-ELO遺伝子からなる群より選ばれる2種以上の遺伝子、又は当該遺伝子を含有する組換えベクターを導入する、前記<70>、<72>〜<77>、<81>、<83>〜<85>、<89>、<91>〜<93>、<97>、<99>〜<101>、<105>、及び<107>〜<109>のいずれか1項記載の形質転換体の作製方法。
<112>ω3-DES遺伝子を含有する組換えベクター、Δ5-DES遺伝子を含有する組換えベクター、Δ9-DES遺伝子を含有する組換えベクター及びΔ6-ELO遺伝子を含有する組換えベクターからなる群より選ばれる少なくとも1種の組換えベクター、好ましくはω3-DES遺伝子を含有する組換えベクター、Δ5-DES遺伝子を含有する組換えベクター、Δ9-DES遺伝子を含有する組換えベクター及びΔ6-ELO遺伝子を含有する組換えベクターからなる群より選ばれる2種以上の組換えベクター、を含む、前記<71>〜<77>、<82>〜<85>、<90>〜<93>、<98>〜<101>、及び<106>〜<109>のいずれか1項記載の形質転換体の作製用キット。
【0109】
<113>前記形質転換体において、KAS II、ACP、及びTEからなる群より選ばれる少なくとも1つのタンパク質の発現が促進されている、好ましくはKAS II、ACP、及びTEからなる群より選ばれる少なくとも1つをコードする遺伝子の発現が促進されている、前記<67>〜<70>、<72>〜<81>、<83>〜<89>、<91>〜<97>、<99>〜<105>、及び<107>〜<112>のいずれか1項記載の形質転換体又はその作製方法。
<114>前記遺伝子を前記藻類に導入し、導入した遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進されている、前記<113>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<115>KAS IIをコードする遺伝子を含有する組換えベクター、ACPをコードする遺伝子を含有する組換えベクター、及びTEをコードする遺伝子を含有する組換えベクターからなる群より選ばれる少なくとも1つの組換えベクターを含む、前記<71>〜<77>、<82>〜<85>、<90>〜<93>、<98>〜<101>、<106>〜<109>、及び<112>のいずれか1項記載の形質転換体の作製用キット。
<116>前記KAS IIが前記<56>項で規定したタンパク質である、前記<113>〜<115>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<117>前記KAS IIをコードする遺伝子が前記<57>項で規定した遺伝子である、前記<113>〜<116>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<118>前記ACPが前記<58>項で規定したタンパク質である、前記<113>〜<117>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<119>前記ACPをコードする遺伝子が前記<59>項で規定した遺伝子である、前記<113>〜<118>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<120>ACPをコードする遺伝子が、前記藻類の細胞内で機能する葉緑体移行シグナル配列をコードする塩基配列が付加された遺伝子である、前記<113>〜<119>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<121>ACPをコードする遺伝子が葉緑体ゲノムに導入され、導入した遺伝子の発現が促進されている、前記<113>〜<119>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<122>前記TEが前記<62>又は<63>項で規定したタンパク質である、前記<113>〜<121>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<123>前記藻類が、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、ナンノクロロプシス・サリナ、ナンノクロロプシス・オセアニカ、ナンノクロロプシス・アトムス、ナンノクロロプシス・マキュラタ、ナンノクロロプシス・グラニュラータ、又はナンノクロロプシス・エスピー、好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ又はナンノクロロプシス・ガディタナ、より好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ、である、前記<67>〜<122>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
【0110】
<124>脂質を製造するための、前記<67>〜<123>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法により作製された形質転換体、又は形質転換体の作製用キットの使用。
<125>前記脂質が、炭素原子数18以上のPUFA又はその脂肪酸エステル化合物、好ましくは炭素原子数18若しくは20のPUFA又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素原子数20のPUFA又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくはC20:3、C20:4若しくはC20:5、又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくはジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸若しくはエイコサペンタエン酸、又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくはアラキドン酸若しくはエイコサペンタエン酸、又はそのエステル化合物、より好ましくはエイコサペンタエン酸又はその脂肪酸エステル化合物、を含む、前記<124>項記載の使用。
【0111】
<126>前記脂肪酸エステル化合物がMAG、DAG及びTAGからなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくはTAG、である、前記<65>項記載の方法、又は前記<125>項記載の使用。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、本実施例で用いるプライマーの塩基配列を表1及び2に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
実施例1 ナンノクロロプシス・オキュラータ由来デサチュラーゼ遺伝子発現用プラスミドの作製、ナンノクロロプシス・オキュラータの形質転換、及び形質転換体による脂質の製造
(1)ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築
ゼオシン耐性遺伝子(配列番号11)、及び文献(Nature Communications, DOI:10.1038/ncomms1688, 2012)記載のナンノクロロプシス・ガディタナCCMP526株由来チューブリンプロモーター配列(配列番号12)を人工合成した。合成したDNA断片を鋳型として、表1に示すプライマー番号13及びプライマー番号14のプライマー対、並びに表1に示すプライマー番号15及びプライマー番号16のプライマー対を用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子及びチューブリンプロモーター配列をそれぞれ増幅した。
また、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株のゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー番号17及びプライマー番号18のプライマー対を用いてPCRを行い、ヒートショックプロテインターミネーター配列(配列番号19)を増幅した。
さらに、プラスミドベクターpUC19(タカラバイオ社製)を鋳型として、表1に示すプライマー番号20及びプライマー番号21のプライマー対を用いてPCRを行い、プラスミドベクターpUC19を増幅した。
【0116】
これら4つの増幅断片をそれぞれ制限酵素DpnI(東洋紡社製)にて処理し、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。その後、得られた4つの断片をIn-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて融合し、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを構築した。
なお、本発現プラスミドは、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順に連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
【0117】
(2)デサチュラーゼ遺伝子の取得、及びデサチュラーゼ遺伝子発現用プラスミドの構築
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株の全RNAを抽出し、SuperScript(商標)III First-Strand Synthesis SuperMix for qRT-PCR(invitrogen社製)を用いて逆転写を行ってcDNAを得た。
このcDNAを鋳型として、表1に示すプライマー番号22及びプライマー番号23のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号10の塩基配列からなる遺伝子(NoΔ9-DES遺伝子)断片を取得した。
同様に、前記cDNAを鋳型として、表1に示すプライマー番号24及びプライマー番号25のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号2の塩基配列からなる遺伝子(NoΔ12-DES遺伝子)断片を取得した。
同様に、前記cDNAを鋳型として、表1に示すプライマー番号26及びプライマー番号27のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号4の塩基配列からなる遺伝子(NoΔ6-DES遺伝子)断片を取得した。
同様に、前記cDNAを鋳型として、表1に示すプライマー番号28及びプライマー番号29のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号8の塩基配列からなる遺伝子(NoΔ5-DES遺伝子)断片を取得した。
さらに、前記cDNAを鋳型として、表1に示すプライマー番号30及びプライマー番号31のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号6の塩基配列からなる遺伝子(Noω3-DES遺伝子)断片を取得した。
【0118】
また、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株のゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー番号32及びプライマー番号33のプライマー対、並びにプライマー番号34及びプライマー番号35のプライマー対を用いてPCRを行い、LDSPプロモーター断片(配列番号36)及びVCP1ターミネーター断片(配列番号37)を取得した。
さらに、前記ゼオシン耐性遺伝子発現プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー番号38及びプライマー番号21のプライマー対を用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット(チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列)及びpUC19配列からなる断片を増幅した。
【0119】
各種デサチュラーゼ遺伝子断片と、LDSPプロモーター断片、VCP1ターミネーター断片、並びにゼオシン耐性遺伝子発現カセット及びpUC19配列からなる断片を前述と同様の方法にて融合し、NoΔ9-DES遺伝子発現用プラスミド、NoΔ12-DES遺伝子発現用プラスミド、NoΔ6-DES遺伝子発現用プラスミド、NoΔ5-DES遺伝子発現用プラスミド、Noω3-DES遺伝子発現用プラスミド、をそれぞれ構築した。
なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、各種デサチュラーゼ遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
【0120】
(3)デサチュラーゼ遺伝子発現カセットのナンノクロロプシス・オキュラータへの導入、及び形質転換体の培養
作製した各種デサチュラーゼ遺伝子発現用プラスミドをそれぞれ鋳型として、表1に示すプライマー番号32及びプライマー番号18のプライマー対を用いてPCRを行い、各種デサチュラーゼ遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、各種デサチュラーゼ遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなるDNA断片)をそれぞれ増幅した。
増幅した各DNA断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。なお、精製の際の溶出には、キットに含まれる溶出バッファーではなく、滅菌水を用いた。
【0121】
約1×109細胞のナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株を、384mMのソルビトール溶液で洗浄して塩を完全に除去し、形質転換の宿主細胞として用いた。上記で増幅した各種デサチュラーゼ遺伝子発現カセット約500ngをそれぞれ宿主細胞に混和し、50μF、500Ω、2,200v/2mmの条件でエレクトロポレーションを行った。
f/2液体培地((NaNO3 75mg、NaH2PO4・2H2O 6mg、ビタミンB12 0.5μg、ビオチン 0.5μg、チアミン 100μg、Na2SiO3・9H2O 10mg、Na2EDTA・2H2O 4.4mg、FeCl3・6H2O 3.16mg、FeCl3・6H2O 12μg、ZnSO4・7H2O 21μg、MnCl2・4H2O 180μg、CuSO4・5H2O 7μg、Na2MoO4・2H2O 7μg/人工海水1L)にて24時間回復培養を行った。その後に、2μg/mLゼオシン含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した。得られたコロニーの中から、各種デサチュラーゼ遺伝子発現カセットを含むナンノクロロプシス・オキュラータ株(NoΔ9-DES遺伝子導入株((delta9 DES)株)、NoΔ12-DES遺伝子導入株((delta12 DES)株)、NoΔ6-DES遺伝子導入株((delta6 DES)株)、NoΔ5-DES遺伝子導入株((delta5 DES)株)、及びNoω3-DES遺伝子導入株((omega3 DES)株))をPCR法によりそれぞれ選抜した(それぞれの株について独立した3ラインを取得)。選抜した株を、f/2培地の窒素濃度を15倍、リン濃度を5倍に増強した培地(以下、「N15P5培地」という)20mLに播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2週間振盪培養し、前培養液とした。前培養液2mLを、f/2培地の窒素濃度を5倍、リン濃度を5倍に増強した培地(以下、「N5P5培地」という)18mLに植継ぎ、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2週間振盪培養した。なお、陰性対照として、野生株であるナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株(WT株)についても同様に実験を行った。
【0122】
(4)培養液中の脂質の抽出、及び構成脂肪酸の分析
培養液1mLに、内部標準として1mg/mLのトリヘプタデカン酸グリセリル(Glyceryl triheptadecanoate、シグマアルドリッチ社製)クロロホルム溶液50μLを添加し、クロロホルム0.5mL及びメタノール1mLをさらに添加して激しく攪拌し、10分間放置した。その後さらに、クロロホルム0.5mL及び1.5%KCl 0.5mLを添加して攪拌し、3,000rpmにて5分間間遠心分離を行い、パスツールピペットにてクロロホルム層(下層)を回収した。
得られたクロロホルム層に窒素ガスを吹き付けて乾固し、0.5N水酸化カリウム/メタノール溶液0.7mLを添加し、80℃で30分間恒温した。続いて14%三フッ化ホウ素溶液(SIGMA社製)1mLを添加し、80℃にて10分間恒温した。その後、ヘキサン0.5mL、飽和食塩水1mLを添加し激しく撹拌し、室温にて10分間放置し、上層であるヘキサン層を回収して脂肪酸メチルエステルを得た。
【0123】
下記に示す測定条件下で、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィー解析に供した。
<ガスクロマトグラフィー条件>
分析装置:7890A(Agilent technology社製)
キャピラリーカラム:DB-WAX(10m×100μm×0.10μm、J&W Scientific社製)
移動相:高純度ヘリウム
オーブン温度:100℃ 保持0.5分→100〜250℃(20℃/min昇温)→250℃保持3分(ポストラン:1分)
注入口温度:300℃
注入方法:スプリット注入(スプリット比:50:1)
注入量:5μL
洗浄バイアル:メタノール
検出方法:FID
検出器温度:350℃
【0124】
脂肪酸メチルエステルの同定は、同サンプルを同条件でガスクロマトグラフ質量分析解析に供することにより行った。
ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データのピーク面積より、各脂肪酸のメチルエステル量を定量した。各ピーク面積を、内部標準由来の炭素原子数17の脂肪酸メチルエステルのピーク面積と比較することで試料間の補正を行い、培養液1Lあたりの各脂肪酸量を算出した。さらに、各脂肪酸量の総和を総脂肪酸量とし、総脂肪酸量に占める各脂肪酸量の重量割合を算出した。その結果を表3に示す。
なお、以下の表において、「TFA」は総脂肪酸量を示し、「脂肪酸組成(%TFA)」は総脂肪酸の重量に対する各脂肪酸の重量の割合を示す。また、「n」は3〜5の整数であり、「C20:n(%TFA)」は総脂肪酸の重量に対する、C20:3脂肪酸、C20:4脂肪酸、及びC20:5脂肪酸の重量の割合の総和を示す。
【0125】
【表3】
【0126】
表3から明らかなように、NoΔ9-DES遺伝子を導入した形質転換体((delta9 DES)株)では、野生株(WT株)と比べ、C18:1Δ9量の割合が有意に増加した。しかし、C20:5Δ5,8,11,14,17量の割合が減少した。この結果は、Δ9-DESが触媒する反応は、PUFA合成の律速段階とはなりにくいことを示唆している。
また、NoΔ12-DES遺伝子を導入した形質転換体((delta12 DES)株)では、野生株と比べ、C18:1Δ9量の割合が減少し、C18:2Δ9,12量の割合が有意に増加した。
NoΔ6-DES遺伝子を導入した形質転換体((delta6 DES)株)では、野生株と比べ、C18:2Δ9,12量の割合がわずかに減少し、C18:2Δ6,9量の割合がわずかに増加した。
また、NoΔ5-DES遺伝子を導入した形質転換体((delta5 DES)株)では、脂肪酸組成の大きな変化は見られなかった。
さらに、Noω3-DES遺伝子を導入した形質転換体((omega3 DES)株)では、野生株と比べ、C20:4Δ5,8,11,14量の割合が減少し、C20:5Δ5,8,11,14,17量の割合がわずかに増加した。この結果から、ナンノクロロプシスのPUFAの合成においては、C20:4Δ8,11,14,17を経由するものではなく、C20:4Δ5,8,11,14を経由することが示唆された。
【0127】
このように、各種デサチュラーゼ遺伝子の発現を促進することで脂肪酸組成が変化することが明らかになった。そして、ナンノクロロプシス属に属する藻類におけるEPAの主な合成経路は、図1に示すような、C20:4Δ5,8,11,14を経由する経路であることを特定した。
しかし、1種類のデサチュラーゼ遺伝子のみの発現を促進しただけでは、C20:3、C20:4、C20:5などのPUFA量を大きく増加させることはできなかった。
【0128】
実施例2 2種類のナンノクロロプシス・オキュラータ由来デサチュラーゼ遺伝子を用いたナンノクロロプシス・オキュラータの形質転換、及び形質転換体による脂質の製造
(1)デサチュラーゼ遺伝子発現用プラスミド(パロモマイシン耐性)の構築
実施例1で構築したNoΔ6-DES遺伝子発現用プラスミド、NoΔ5-DES遺伝子発現用プラスミド、Noω3-DES遺伝子発現用プラスミド、をそれぞれ鋳型として、表1に示すプライマー番号16及びプライマー番号17のプライマー対を用いてPCRを行い、各種デサチュラーゼ遺伝子断片(ベクター配列等を含む)をそれぞれ増幅した。
また、人工合成したパロモマイシン耐性遺伝子(配列番号39)を鋳型として、表2に示すプライマー番号40及びプライマー番号41のプライマー対を用いてPCRを行い、パロモマイシン耐性遺伝子を増幅した。
【0129】
各種デサチュラーゼ遺伝子増幅断片(ベクター配列等を含む)とパロモマイシン耐性遺伝子断片をそれぞれ実施例1と同様の方法にて融合し、NoΔ6-DES遺伝子発現用プラスミド(パロモマイシン耐性)、NoΔ5-DES遺伝子発現用プラスミド(パロモマイシン耐性)、Noω3-DES遺伝子発現用プラスミド(パロモマイシン耐性)、をそれぞれ構築した。
なお、本発現用プラスミドは、LDSPプロモーター配列、各種デサチュラーゼ遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、パロモマイシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
【0130】
作製した各種デサチュラーゼ遺伝子発現用プラスミド(パロモマイシン耐性)を鋳型として、表1に示すプライマー番号32及びプライマー番号18のプライマー対を用いてPCRを行い、各種デサチュラーゼ遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、各種デサチュラーゼ遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、パロモマイシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなるDNA断片)を増幅した。
得られた増幅断片を実施例1と同様の方法にて精製し、実施例1で作製したNoΔ12-DES遺伝子導入株に、精製した断片をエレクトロポレーションにより導入した。実施例1と同様の方法にて回復培養を行った後、2μg/mLゼオシン及び100μg/mLパロモマイシン含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した。得られたコロニーの中から、各種デサチュラーゼ遺伝子発現カセットを含むナンノクロロプシス・オキュラータ株(NoΔ12-DES遺伝子及びNoΔ6-DES遺伝子導入株((delta12 DES + delta6 DES)株)、NoΔ12-DES遺伝子及びNoΔ5-DES遺伝子導入株((delta12 DES + delta5 DES)株)、並びにNoΔ12-DES遺伝子及びNoω3-DES遺伝子導入株((delta12 DES + omega3 DES)株))をPCRにより選抜した。
【0131】
(2)形質転換体の培養、脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
選抜した株(それぞれの株について独立した3ラインを取得)を、N15P5培地20mLに播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて3〜4週間振盪培養し、前培養液とした。前培養液2mLをN5P5培地18mLに植継ぎ、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2週間振盪培養した。なお、陰性対照として、野生株及びNoΔ12-DES遺伝子導入株についても同様の実験を行った。
得られた培養液について、実施例1と同様の方法にて脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析を行った。その結果を表4に示す。
【0132】
【表4】
【0133】
実施例1に示したように、NoΔ6-DES遺伝子やNoΔ12-DES遺伝子をそれぞれ単独でこれらの転写量を促進させても、PUFA量の増加は確認できなかった。
これに対して、表4から明らかなように、NoΔ12-DES遺伝子及びNoΔ6-DES遺伝子を導入した形質転換体((delta12 DES + delta6 DES)株)では、野生株や(delta12 DES)株と比べ、C18:1Δ9量の割合が大きく減少し、C20:n量の割合が大幅に増加した。特にC20:4Δ5,8,11,14(アラキドン酸)量の割合が大きく増加した。
また、表4に示すように、(delta12 DES + delta6 DES)株では、C18:3Δ6,9,12の蓄積をほとんど検知できなかった。これは、ナンノクロロプシスに属する藻類において、PUFA、特にC20:4Δ5,8,11,14及びC20:5Δ5,8,11,14,17、の合成経路では、Δ12-DES及びΔ6-DESによって触媒される連続する一連の工程(C18:1Δ9からC18:2Δ9,12が生成し、生成したC18:2Δ9,12からC18:3Δ6,9,12が生成する反応)が律速段階になっていることを示している。
【0134】
また、NoΔ12-DES遺伝子及びNoω3-DES遺伝子を導入した形質転換体((delta12 DES + omega3 DES)株)では、(delta12 DES)株と比べ、C20:4Δ5,8,11,14量の割合が減少し、C20:5Δ5,8,11,14,17量の割合が増加した。しかし、C20:n量の割合はほとんど変化しなかった。さらに、NoΔ12-DES遺伝子及びNoΔ5-DES遺伝子を導入した形質転換体((delta12 DES + delta5 DES)株)では、(delta12 DES)株と比べ、C20:4Δ5,8,11,14量、C20:5Δ5,8,11,14,17量、C20:n量の割合はほとんど変化しなかった。
これらの結果からも、ナンノクロロプシスにおいてPUFAの生産性を向上させるためには、Δ12-DES及びΔ6-DESの発現を促進し、これらによって触媒される連続反応を強化することが重要であることがわかる。
【0135】
実施例3 3種類のナンノクロロプシス・オキュラータ由来デサチュラーゼ遺伝子を用いたナンノクロロプシス・オキュラータの形質転換、及び形質転換体による脂質の製造
(1)デサチュラーゼ遺伝子発現用プラスミド(ハイグロマイシン耐性)の構築
実施例1で構築したNoω3-DES遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー番号16及びプライマー番号17のプライマー対を用いてPCRを行い、Noω3-DES遺伝子断片(ベクター配列等を含む)を増幅した。
また、人工合成したハイグロマイシン耐性遺伝子(配列番号42)を鋳型として、表2に示すプライマー番号43及びプライマー番号44のプライマー対を用いてPCRを行い、ハイグロマイシン耐性遺伝子を増幅した。
【0136】
これら2つの断片を実施例1と同様の方法にて融合し、Noω3-DES遺伝子発現用プラスミド(ハイグロマイシン耐性)を構築した。
なお、本発現用プラスミドは、LDSPプロモーター配列、Noω3-DES遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
【0137】
作製したNoω3-DES遺伝子発現用プラスミド(ハイグロマイシン耐性)を鋳型として、表1に示すプライマー番号32及びプライマー番号18のプライマー対を用いてPCRを行い、Noω3-DES遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、Noω3-DES遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ハイグロイシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなるDNA断片)を増幅した。
得られた増幅断片を実施例1と同様の方法にて精製し、実施例2で作製したdelta12遺伝子及びNoΔ6-DES遺伝子導入株に、精製した断片をエレクトロポレーションにより導入した。実施例1と同様の方法にて回復培養を行った後、500μg/mLのハイグロマイシン含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した。得られたコロニーの中から、Noω3-DES遺伝子発現カセットを含むナンノクロロプシス・オキュラータ株(NoΔ12-DES遺伝子、NoΔ6-DES遺伝子及びNoω3-DES遺伝子導入株((delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES)株))をPCRにより選抜した。
【0138】
(2)形質転換体の培養、脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
選抜した株を、N15P5培地20mLに播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて3〜4週間振盪培養し、前培養液とした。前培養液2mLをN5P5培地18mLに植継ぎ、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて3週間振盪培養した。なお、陰性対照として、野生株、NoΔ12-DES遺伝子導入株、NoΔ12-DES遺伝子及びNoΔ6-DES遺伝子導入株、並びにNoΔ12-DES遺伝子及びNoω3-DES遺伝子導入株についても同様の実験を行った。
得られた培養液について、実施例1と同様の方法にて脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析を行った。3週目の総脂肪酸の生産量及び脂肪酸組成の結果を表5に示す。培養1週目、2週目、及び3週目の総脂肪酸量、C20:5脂肪酸の生産量、C20:n脂肪酸の生産量を表6に示す。そして、培養1週目、2週目、及び3週目のC20:5脂肪酸量の割合、C20:n脂肪酸量の割合を表7に示す。
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
【表7】
【0142】
表5から明らかなように、NoΔ12-DES遺伝子、NoΔ6-DES遺伝子及びNoω3-DES遺伝子を導入した形質転換体((delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES)株)では、(delta12 DES + delta6 DES)株と比べ、C20:4Δ5,8,11,14量の割合が大きく減少し、C20:5Δ5,8,11,14,17量の割合が大幅に増加した。さらに、C20:n量の割合も増加した。これらの結果から、Δ12-DES及びΔ6-DESに加え、ω3-DESの発現を促進することで、PUFA、特にC20:5Δ5,8,11,14,17の生産性が一層向上することが分かった。
【0143】
さらに、表6及び7から明らかなように、野生株(WT株)では、培養期間が長くなるにつれて、C20:n量やC20:5量の割合は減少する。
これに対して、(delta12 DES + delta6 DES)株では、野生株(WT株)及び(delta12 DES)株と比べ、C20:nの生産量と、全脂肪酸量に占めるC20:n量の割合が、いずれの培養期間においても増加していた。
さらに、(delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES)株では、(delta12 DES + delta6 DES)株と比較して、C20:n(特にC20:5Δ5,8,11,14,17)の生産量と、全脂肪酸量に占めるC20:n(特にC20:5Δ5,8,11,14,17)量の割合が一層増加した。
さらに、(delta12 DES + delta6 DES)株や(delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES)株では、培養期間の長期化に伴う、C20:n量の割合の減少率が、野生株(WT株)などと比較して抑制されている。
【0144】
実施例4 Δ9-DES遺伝子、Δ5-DES遺伝子又はΔ6-ELO遺伝子を用いた(delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES)株の形質転換、及び形質転換体による脂質の製造
(1)デサチュラーゼ遺伝子又はエロンガーゼ遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)の構築
実施例1で構築したNoΔ9-DES遺伝子発現用プラスミド又はNoΔ5-DES遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー番号16及びプライマー番号17のプライマー対を用いてPCRを行い、NoΔ9-DES遺伝子断片及びNoΔ5-DES遺伝子断片(pUC19ベクター自体のベクター配列等を含む)をそれぞれ増幅した。
また、ビアラフォス耐性遺伝子(配列番号68)を人工合成した。合成したDNA断片を鋳型として、表2に示すプライマー番号69及びプライマー番号70のプライマー対を用いてPCRを行い、ビアラフォス耐性遺伝子を増幅した。
【0145】
NoΔ9-DES遺伝子断片及びNoΔ5-DES遺伝子断片それぞれと、ビアラフォス耐性遺伝子断片とを実施例1と同様の方法にて融合し、NoΔ9-DES遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)及びNoΔ5-DES遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)をそれぞれ構築した。
なお、本発現用プラスミドは、LDSPプロモーター配列、NoΔ9-DES遺伝子又はNoΔ5-DES遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
【0146】
実施例1で調製したナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株のcDNAを鋳型として、表2に示すプライマー番号71及びプライマー番号72のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号73の塩基配列からなる遺伝子(NoΔ6-ELO遺伝子)断片を取得した。
この増幅断片と、LDSPプロモーター断片、VCP1ターミネーター断片、並びにゼオシン耐性遺伝子発現カセット及びpUC19配列からなる断片を実施例1と同様の方法にて融合し、NoΔ6-ELO遺伝子発現用プラスミドを構築した。
【0147】
このNoΔ6-ELO遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー番号16及びプライマー番号17のプライマー対を用いてPCRを行い、NoΔ6-ELO遺伝子断片(pUC19ベクター自体のベクター配列等を含む)を増幅した。この増幅断片と、前述のビアラフォス耐性遺伝子断片とを実施例1と同様の方法にて融合し、NoΔ6-ELO遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)を構築した。
なお、本発現用プラスミドは、LDSPプロモーター配列、NoΔ6-ELO遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
【0148】
作製したNoΔ9-DES遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)、NoΔ5-DES遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)又はNoΔ6-ELO発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)を鋳型として、表1に示すプライマー番号32及びプライマー番号18のプライマー対を用いてPCRを行い、NoΔ9-DES遺伝子発現カセット、NoΔ5-DES遺伝子発現カセット又はNoΔ6-ELO遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、デサチュラーゼ遺伝子又はエロンガーゼ遺伝子(NoΔ9-DES遺伝子、NoΔ5-DES遺伝子又はNoΔ6-ELo遺伝子)、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなるDNA断片)を増幅した。
得られた増幅断片を実施例1と同様の方法にて精製し、実施例3で作製したNoΔ12-DES遺伝子、NoΔ6-DES遺伝子及びNoω3-DES遺伝子導入株に、精製した断片をそれぞれエレクトロポレーションにより導入した。実施例1と同様の方法にて回復培養を行った後、750μg/mLのビアラフォス含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した。得られたコロニーの中から、NoΔ9-DES遺伝子発現カセットを含むナンノクロロプシス・オキュラータ株((delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES + delta9 DES)株)、NoΔ5-DES遺伝子発現カセットを含むナンノクロロプシス・オキュラータ株((delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES + delta5 DES)株)、及びNoΔ6-ELO遺伝子発現カセットを含むナンノクロロプシス・オキュラータ株((delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES + delta6 ELO)株)をPCRによりそれぞれ選抜した。
【0149】
(2)形質転換体の培養、脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
選抜した株を、N15P5培地4mL(組織培養用マイクロプレート、IWAKI社製)に播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて3〜4週間振盪培養し、前培養液とした。前培養液0.4mLをN5P5培地4mL(組織培養用マイクロプレート、IWAKI社製)に植継ぎ、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて3週間振盪培養した。なお、陰性対照として、野生株、並びにNoΔ12-DES遺伝子、NoΔ6-DES遺伝子及びNoω3-DES遺伝子導入株についても同様の実験を行った。
得られた培養液について、実施例1と同様の方法にて脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析を行った。3週目の総脂肪酸の生産量及び脂肪酸組成の結果を表8に示す。
【0150】
【表8】
【0151】
表8から明らかなように、NoΔ12-DES遺伝子、NoΔ6-DES遺伝子、Noω3-DES遺伝子、及びNoΔ9-DES遺伝子を導入した株((delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES + delta9 DES)株)は delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES)株と比較して、C16:0の割合が減少し、C18:1Δ9及びC20:nの割合が増加した。
また、NoΔ12-DES遺伝子、NoΔ6-DES遺伝子、Noω3-DES遺伝子、及びNoΔ5-DES遺伝子を導入した株((delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES + delta5 DES)株)は(delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES)株と比較して、C20:3Δ8,11,14の割合が減少し、C20:4Δ5,8,11,14及びC20:5Δ5,8,11,14,17の割合が増加した。
さらに、NoΔ12-DES遺伝子、NoΔ6-DES遺伝子、Noω3-DES遺伝子、及びNoΔ6-ELO遺伝子を導入した株((delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES + delta6 ELO)株)は(delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES)株と比較して、C18:3Δ6,9,12の割合が減少し、C20:3Δ8,11,14の割合及びC20:nの割合が向上した。
これらの結果から、Δ12-DES、Δ6-DES及びω3-DESに加え、Δ9-DES、Δ5-DESやΔ6-ELOの発現を促進することで、PUFA、特にC20:5Δ5,8,11,14,17の生産性が一層向上することが分かった。
【0152】
実施例5 (delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES)株、及び(delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES + delta6 ELO)株のTAG中の脂肪酸組成の分析
(1)野生株及び形質転換体の培養
実施例3及び4で取得した(delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES)株、(delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES + delta6 ELO)株、及び陰性対照である野生株を、N5P5培地20mLに播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて5日間振盪培養し、前培養液1とした。前培養液1 2mLをN5P5培地18mLに植継ぎ、同条件にて5日間振盪培養し、前培養液2とした。前培養液2 2mLをN5P5培地18mLに植継ぎ、同条件にて3週間振盪培養を行った。
【0153】
(2)脂質の抽出、TAGの分画、TAG中の脂肪酸組成の分析
前述の培養液0.25mLに、クロロホルム0.5mL、及びメタノール1mLを添加して激しく攪拌し、10分間放置した。その後さらに、クロロホルム0.5mL及び1.5%KCl 0.5mLを添加して攪拌し、3,000rpmにて5分間間遠心分離を行い、パスツールピペットにてクロロホルム層(下層)を回収した。得られたクロロホルム層に窒素ガスを吹き付けて乾固し、クロロホルム20μLに溶解した。
このようにして得られた脂質抽出液全量、及び標準溶液{10mg/mLトリミリスチン(和光純薬工業社製)、クロロホルム溶液}3μLをそれぞれTLCプレートシリカゲル60F254(メルク社製)上にスポットした。TLC展開槽DT-150(三菱化学メディエンス社製)を用い、展開溶媒(ヘキサン:ジエチルエーテル:ギ酸=42:28:0.3(体積比))で約15分展開した。展開後プレートを乾燥させ、メタノールに溶解させた0.1%プリムリン(和光純薬工業社製)を噴霧して乾燥させた後、ハンデイ型UVランプUVL-21(相互理化学硝子製作所社製)でTAG画分を検出した。
【0154】
爪楊枝を用いてTAG画分を掻き取り、クロロホルム0.1mL、14%三フッ化ホウ素−メタノール溶液(SIGMA社製)0.5mLを添加し、80℃にて30分間恒温した。その後、ヘキサン0.5mL、飽和食塩水1mLを添加し激しく撹拌し、室温にて10分間放置後、上層であるヘキサン層を回収して脂肪酸メチルエステルを得た。
得られた脂肪酸メチルエステルに対して実施例1と同様の方法にてガスクロマトグラフィー解析に供し、構成脂肪酸の分析を行った。その結果を表9に示す。なお、表9において、「TAG-FA」はTAGを構成する脂肪酸残基の総重量を示し、「脂肪酸組成(%TAG-FA)」はTAGを構成する脂肪酸残基の総重量に占める各脂肪酸残基の重量割合(TAGを構成する脂肪酸残基の組成比)を示す。
【0155】
【表9】
【0156】
表9から明らかなように、NoΔ12-DES遺伝子、NoΔ6-DES遺伝子及びNoω3-DES遺伝子を導入した株((delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES)株)は野生株と比較して、TAG中のC20:n(特にC20:5Δ5,8,11,14,17)の割合が向上していた。
さらに、NoΔ12-DES遺伝子、NoΔ6-DES遺伝子、Noω3-DES遺伝子、及びNoΔ6-ELO遺伝子を導入した株((delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES + delta6 ELO)株)は、NoΔ12-DES遺伝子、NoΔ6-DES遺伝子及びNoω3-DES遺伝子を導入した株((delta12 DES + delta6 DES + omega3 DES)株)と比較して、C20:n(特にC20:3Δ8,11,14)の割合がより一層増加していた。
これらの結果から、Δ12-DES、Δ6-DES及びω3-DESに加え、Δ6-ELOの発現を促進することで、PUFAの生産性が一層向上することが分かった。
【0157】
以上のように、ナンノクロロプシス属に属する藻類のPUFAの合成経路において、Δ12-DES及びΔ6-DESが、律速段階の反応を触媒する酵素である。そしてこれらの発現を促進することで、PUFAの生産量を有意に増大させることができる。そして、Δ12-DES及びΔ6-DESの発現を促進させたナンノクロロプシス属に属する藻類の形質転換体を培養することで、PUFAの生産性を向上させることができる。
【0158】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0159】
本願は、2016年9月7日に日本国で特許出願された特願2016-174752に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]