特許第6983819号(P6983819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983819前立腺がん関連抗原を使用する腫瘍ワクチン接種用の組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983819
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】前立腺がん関連抗原を使用する腫瘍ワクチン接種用の組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/761 20150101AFI20211206BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   A61K35/761
   A61K39/00 HZNA
   A61K48/00
   A61P35/00
   A61P15/00
【請求項の数】66
【全頁数】100
(21)【出願番号】特願2018-563446(P2018-563446)
(86)(22)【出願日】2017年6月2日
(65)【公表番号】特表2019-517521(P2019-517521A)
(43)【公表日】2019年6月24日
(86)【国際出願番号】US2017035694
(87)【国際公開番号】WO2017210562
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2019年1月30日
(31)【優先権主張番号】62/345,582
(32)【優先日】2016年6月3日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518419046
【氏名又は名称】エトゥビクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,フランク,アール.
(72)【発明者】
【氏名】バリント,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ラッチマン,イヴェット
(72)【発明者】
【氏名】ライス,エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ガビッチ,エリザベス
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/040059(WO,A2)
【文献】 特表2010−519904(JP,A)
【文献】 Cancer Gene Ther., (2011), 18, [5], p.326-335
【文献】 Oncotarget, (2015), 6, [31], p.31344-31359
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/76
A61K 48/00
A61P 35/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺特異的抗原(PSA)をコードする核酸配列を含む複製欠損ウイルスベクターを含む、PSA発現がんを治療する方法に使用するための組成物であって、前記PSAが、配列番号1若しくは配列番号34に記載のアミノ酸配列を有し、前記複製欠損ウイルスベクターが、E1遺伝子領域及びE2b遺伝子領域に欠失を有するアデノウイルスベクターである、組成物。
【請求項2】
前記ベクターが、PSAをコードする配列番号35に記載の核酸配列、又はPSAをコードする配列番号2に記載の核酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Brachyury抗原をコードする第2の核酸配列を含む第2の複製欠損ウイルスベクター、MUC1抗原をコードする第3の核酸配列を含む第3の複製欠損ウイルスベクター、又はこれらの組合せを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記Brachyury抗原が、HLA-A2、HLA-A3、HLA-A24、又はこれらの組合せに結合する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記Brachyury抗原が、WLLPGTSTV(配列番号7)に記載のアミノ酸配列を含む修飾Brachyury抗原である、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
前記Brachyury抗原が、配列番号5又は配列番号6に対して少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む修飾Brachyury抗原である、請求項3から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第2の複製欠損ベクターが、配列番号3、配列番号4、配列番号4の13から1242位、又は配列番号42に対して少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項3から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第2の複製欠損ベクターが、配列番号12(修飾Brachyury抗原をコードする配列を有するAdベクター)、配列番号12の1033〜2083位、又は配列番号42に対して少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一のヌクレオチド配列を含む、請求項3から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記MUC1抗原が、配列番号10に対して少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一である配列を含む、請求項3から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
MUC1抗原をコードする前記第3の核酸配列が、配列番号8、配列番号9、又は配列番号41に対して少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%の同一性を含む、請求項3から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記MUC-1抗原が、HLA-A2、HLA-A3、HLA-A24、又はこれらの組合せに結合する、請求項3から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記第2の複製欠損ウイルスベクター、及び/又は前記第3の複製欠損ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項3から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第2の複製欠損ウイルスベクター及び/又は前記第3の複製欠損ウイルスベクターが、E1領域、E2b領域、E3領域、E4領域、又はこれらの組合せに欠失を含むアデノウイルスベクターである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記第2の複製欠損ウイルスベクター及び/又は前記第3の複製欠損ウイルスベクターが、E2b領域に欠失を含むアデノウイルスベクターである、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
前記複製欠損ウイルスベクター、前記第2の複製欠損ウイルスベクター、及び/又は前記第3の複製欠損ウイルスベクターが、E1領域、E2b領域、及びE3領域に欠失を含むアデノウイルスベクターである、請求項12から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、少なくとも1×109個のウイルス粒子〜少なくとも5×1012個のウイルス粒子を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、少なくとも5×109個のウイルス粒子を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、少なくとも5×1010個のウイルス粒子を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、少なくとも5×1011個のウイルス粒子を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、少なくとも5×1012個のウイルス粒子を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記複製欠損ウイルスベクターが、共刺激分子をコードする核酸配列を更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記共刺激分子が、B7、ICAM-1、LFA-3、又はこれらの組合せを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記共刺激分子が、B7、ICAM-1、及びLFA-3の組合せを含む、請求項21又は22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、同じ複製欠損ウイルスベクター内に配置された複数の共刺激分子をコードする複数の核酸配列を更に含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、別の複製欠損ウイルスベクター内に配置された複数の共刺激分子をコードする複数の核酸配列を更に含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記複製欠損ウイルスベクターが、1つ以上の追加の標的抗原又はその免疫学的エピトープをコードする核酸配列を更に含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記1つ以上の追加の標的抗原が、腫瘍ネオ抗原、腫瘍ネオエピトープ、腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、組織特異的抗原、細菌抗原、ウイルス抗原、酵母抗原、真菌抗原、原生動物抗原、寄生虫抗原、マイトジェン、又はこれらの組合せである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記1つ以上の追加の標的抗原が、CEA、葉酸受容体アルファ、WT1、HPV E6、HPV E7、p53、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、BAGE、DAM-6、-10、GAGE-1、-2、-8、GAGE-3、-4、-5、-6、-7B、NA88-A、NY-ESO-1、MART-1、MC1R、Gp100、PSCA、PSMA、PAP、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、Cyp-B、Her2/neu、BRCA1、BRACHYURY、BRACHYURY(TIVS7-2、多型性)、BRACHYURY(IVS7 T/C多型性)、T BRACHYURY、T、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC1 (VNTR多型性)、MUC1c、MUC1n、MUC2、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-3、WT1、AFP、β-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CDK-4/m、Her2/neu、Her3、ELF2M、GnT-V、G250、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、Annexin II、CDC27/m、TPI/mbcr-abl、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RARα、若しくはTEL/AML1、又はこれらの修飾変異体、スプライス変異体、機能性エピトープ、エピトープアゴニスト、又はこれらの組合せである、請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項29】
前記1つ以上の追加の標的抗原がCEAである、請求項26から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記1つ以上の追加の標的抗原が、CEA、Brachyury、及びMUC1である、請求項26から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記標的抗原をコードする核酸配列が、配列番号37に対して少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一でありCEAをコードする核酸配列を含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記1つ以上の追加の標的抗原がHER3である、請求項26から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記1つ以上の追加の標的抗原が、HPV E6又はHPV E7である、請求項26から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記複製欠損ウイルスベクターが、選択可能マーカーを更に含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記選択可能マーカーが、lacZ遺伝子、チミジンキナーゼ、gpt、GUS、又はワクシニアK1L宿主域遺伝子、又はこれらの組合せである、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記複製欠損ウイルスベクターが、免疫学的融合パートナーをコードする核酸配列を更に含む、請求項1から35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
請求項1から36のいずれか一項に記載の組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、PSA発現がんを治療する方法に使用するための医薬組成物。
【請求項38】
PSA発現がんを治療する方法に使用するための腫瘍ワクチンを製造する方法であって、請求項37に記載の医薬組成物を製造することを含む方法。
【請求項39】
請求項1から36のいずれか一項に記載の組成物又は請求項37に記載の医薬組成物であって、治療有効量の前記組成物又は前記医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することにより対象において免疫応答を増強する方法に使用するための、前記組成物又は前記医薬組成物。
【請求項40】
請求項1から36のいずれか一項に記載の組成物又は請求項37に記載の医薬組成物であって、治療有効量の前記組成物又は前記医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することにより対象においてPSA発現がんを治療する方法に使用するための、前記組成物又は前記医薬組成物。
【請求項41】
前記方法が、前記医薬組成物を前記対象に再度投与することを含む、請求項39又は40に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項42】
投与経路が、静脈内、皮下、リンパ内、腫瘍内、皮内、筋肉内、腹腔内、直腸内、膣内、鼻内、口内、膀胱内注入による、又はスカリフィケーションによるものである、請求項39から41のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項43】
増強される免疫応答が、細胞性又は液性応答である、請求項39から42のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項44】
増強される免疫応答が、B細胞増殖、CD4+T細胞増殖、CD8+T細胞増殖、又はこれらの組合せの増強である、請求項39から43のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項45】
増強される免疫応答が、IL-2生成、IFN-γ生成、又はこれらの組合せの増強である、請求項39から43のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項46】
増強される免疫応答が、抗原提示細胞の増殖、機能、又はこれらの組合せの増強である、請求項39から43のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項47】
前記対象が、アデノウイルスベクターを既に投与されている、請求項39から46のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項48】
前記対象が、アデノウイルスベクターに対して既存の免疫性を有する、請求項39から47のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項49】
前記対象が、アデノウイルスベクターに対して既存の免疫性を有すると決定される、請求項39から48のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項50】
前記方法が、前記対象に、化学療法、放射線、異なる免疫療法、又はこれらの組合せを施用することを含む、請求項39から49のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項51】
前記対象が、ヒト又はヒト以外の動物である、請求項39から50のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項52】
前記対象が、がんに関して既に治療されている、請求項39から51のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項53】
前記治療有効量を投与することが、少なくとも3回繰り返される、請求項39から52のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項54】
前記治療有効量を投与することが、1用量当たり1×109〜5×1012個のウイルス粒子を含む、請求項39から53のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項55】
前記治療有効量を投与することが、1用量当たり5×109個のウイルス粒子を含む、請求項39から54のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項56】
前記治療有効量を投与することが、1用量当たり5×1010個のウイルス粒子を含む、請求項39から55のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項57】
前記治療有効量を投与することが、1用量当たり5×1011個のウイルス粒子を含む、請求項39から56のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項58】
前記治療有効量を投与することが、1用量当たり5×1012個のウイルス粒子を含む、請求項39から57のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項59】
前記治療有効量を投与することが、1、2、又は3週ごとに繰り返される、請求項39から58のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項60】
前記治療有効量を投与することに続き、同じ組成物又は医薬組成物を含む、1回以上のブースター免疫化がなされる、請求項39から59のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項61】
前記ブースター免疫化が、1、2、又は3カ月ごとに施用される、請求項60に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項62】
前記ブースター免疫化が、3回以上繰り返される、請求項60又は61に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項63】
前記治療有効量を投与することが、3回にわたり1、2、又は3週ごとに繰り返される一次免疫化であり、その後、3回以上にわたり1、2、又は3カ月ごとに繰り返されるブースター免疫化がなされる、請求項39から62のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項64】
前記対象が前立腺がんを有する、請求項39から63のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項65】
前記対象が、進行期の前立腺がんを有する、請求項39から64のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項66】
前記対象が、切除不能な、局所進行性の、又は転移性のがんを有する、請求項39から65のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、参照によりその開示の全体が本明細書に組み込まれる、2016年6月3日に出願された米国仮特許出願第62/345,582号の利益を主張する。
【0002】
ワクチンは、有害物質及び疾患細胞を認識し破壊するように免疫系を訓練することにより、身体が疾患に対抗することを助ける。ワクチンは、予防ワクチン及び治療ワクチンという大きく2つのタイプにグループ分けすることができる。予防ワクチンは、特定の疾患の発症を防止するために健常な人々に与えられるのに対して、免疫療法とも呼ばれる治療ワクチンは、疾患の診断を受けた個人に、疾患の発達及び伝播の阻止に役立てるため、又は防止策として与えられる。
【0003】
現在、感染性疾患及びがんに対抗するのを助けるためのウイルスワクチンが開発されている。こうしたウイルスワクチンは、宿主の細胞内で疾患に関連する遺伝子のほんの一部の発現を誘導し、これが宿主の免疫系を増強して疾患細胞を識別し破壊することによって機能する。したがって、ウイルスワクチンの臨床的応答は、ワクチンが高レベルの免疫原性を得る能力及び持続的な長期発現を有する能力に依存し得る。
【発明の概要】
【0004】
したがって、がんなどの複雑な疾患に対する治療応答を増強させる新規組成物及び方法を開発する必要がある。
【0005】
様々な態様において、本開示は、前立腺特異的抗原(PSA)をコードする核酸配列及び/又は前立腺特異的膜抗原(PSMA)をコードする核酸配列を含む、複製欠損ウイルスベクターを含む組成物であって、PSAが、配列番号1又は配列番号34に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有し、又はPSMAが、配列番号11に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する組成物を提供する。
【0006】
いくつかの態様では、ベクターは、配列番号35に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%同一のアミノ核酸配列を有するPSAをコードする核酸配列を含み、又はPSAをコードする核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一である。いくつかの態様では、ベクターは、配列番号36に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有するPSMAをコードする核酸配列を含む。
【0007】
いくつかの態様では、組成物は更に、Brachyury抗原をコードする第2の核酸配列を含む第2の複製欠損ウイルスベクター、MUC1抗原をコードする第3の核酸配列を含む第3の複製欠損ウイルスベクター、又はこれらの組合せを含む。いくつかの態様では、Brachyury抗原は、HLA-A2、HLA-A3、HLA-A24、又はこれらの組合せに結合する。いくつかの態様では、Brachyury抗原は、WLLPGTSTV (配列番号7)で示されるアミノ酸配列を含む修飾Brachyury抗原である。いくつかの態様では、Brachyury抗原は、配列番号5、配列番号6、又は配列番号42に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む、修飾Brachyury抗原である。いくつかの態様では、第2の複製欠損ベクターは、配列番号3、配列番号4、配列番号4の13から1242位、配列番号42に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、第2の複製欠損ベクターは、配列番号12 (ma修飾Brachyury抗原をコードする配列を持つAdベクター)、配列番号12の1033〜2083位、又は配列番号42に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一のヌクレオチド配列を含む。
【0008】
いくつかの態様では、MUC1抗原は、配列番号10又は配列番号41に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一の配列を含む。いくつかの態様では、MUC1抗原をコードする第3の核酸配列は、配列番号8、配列番号9、又は配列番号41に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%の同一性を含む。いくつかの態様では、MUC-1抗原は、HLA-A2、HLA-A3、HLA-A24、又はこれらの組合せに結合する。
【0009】
その他の態様では、複製欠損ウイルスベクター、第2の複製欠損ウイルスベクター、及び/又は第3の複製欠損ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである。いくつかの態様では、アデノウイルスベクターは、E1領域、E2b領域、E3領域、E4領域、又はこれらの組合せに欠失を含む。いくつかの態様では、アデノウイルスベクターは、E2b領域に欠失を含む。更なる態様では、アデノウイルスベクターは、E1領域、E2b領域、及びE3領域に欠失を含む。
【0010】
いくつかの態様では、組成物は、少なくとも1×109個のウイルス粒子〜少なくとも5×1012個のウイルス粒子を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも5×109個のウイルス粒子を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも5×1010個のウイルス粒子を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも5×1011個のウイルス粒子を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも5×1012個のウイルス粒子を含む。
【0011】
いくつかの態様では、組成物又は複製欠損ウイルスベクターは更に、共刺激分子をコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、共刺激分子は、B7、ICAM-1、LFA-3、又はこれらの組合せを含む。いくつかの態様では、共刺激分子は、B7、ICAM-1、及びLFA-3の組合せを含む。
【0012】
その他の態様では、組成物は更に、同じ複製欠損ウイルスベクター内に配置された複数の共刺激分子をコードする複数の核酸配列を含む。いくつかの態様では、組成物は更に、別の複製欠損ウイルスベクター内に配置された複数の共刺激分子をコードする複数の核酸配列を含む。
【0013】
追加の態様では、組成物は更に、1つ以上の追加の標的抗原又はその免疫学的エピトープをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、複製欠損ウイルスベクターは更に、1つ以上の追加の標的抗原又はその免疫学的エピトープをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、1つ以上の追加の標的抗原は、腫瘍ネオ抗原、腫瘍ネオエピトープ、腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、組織特異的抗原、細菌抗原、ウイルス抗原、酵母抗原、真菌抗原、原生動物抗原、寄生虫抗原、マイトジェン、又はこれらの組合せである。いくつかの態様では、1つ以上の追加の標的抗原は、CEA、葉酸受容体アルファ、WT1、HPV E6、HPV E7、p53、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、BAGE、DAM-6、-10、GAGE-1、-2、-8、GAGE-3、-4、-5、-6、-7B、NA88-A、NY-ESO-1、MART-1、MC1R、Gp100、PSCA、PSMA、PAP、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、Cyp-B、Her2/neu、BRCA1、BRACHYURY、BRACHYURY(TIVS7-2、多型性)、BRACHYURY(IVS7 T/C多型性)、TBRACHYURY、T、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC1 (VNTR多型性)、MUC1c、MUC1n、MUC2、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-3、WT1、AFP、β-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CDK-4/m、Her2/neu、Her3、ELF2M、GnT-V、G250、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、Annexin II、CDC27/m、TPI/mbcr-abl、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RARα、又はTEL/AML1、又はこれらの修飾変異体、スプライス変異体、機能性エピトープ、エピトープアゴニスト、又はこれらの組合せである。いくつかの態様では、1つ以上の追加の標的抗原がCEAである。いくつかの態様では、1つ以上の追加の標的抗原はCEA、Brachyury、及びMUC1である。いくつかの態様では、CEAは、配列番号37又は配列番号38に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一である。いくつかの態様では、1つ以上の追加の標的抗原がHER3である。いくつかの態様では、1つ以上の追加の標的抗原がHPV E6又はHPV E7である。
【0014】
いくつかの態様では、複製欠損ウイルスベクターは更に、選択可能マーカーを含む。いくつかの態様では、選択可能マーカーが、lacZ遺伝子、チミジンキナーゼ、gpt、GUS、又はワクシニアK1宿主域遺伝子、又はこれらの組合せである。
【0015】
様々な態様では、本開示は、前立腺特異的抗原(PSA)をコードする核酸配列、前立腺特異的膜抗原(PSMA)をコードする核酸配列、Brachyury抗原をコードする核酸配列、MUC1抗原をコードする核酸配列、又はこれらの組合せを含む、1つ以上の複製欠損ウイルスベクターを含む組成物を提供する。
【0016】
様々な態様において、本開示は、前立腺特異的抗原(PSA)をコードする核酸配列、Brachyury抗原をコードする核酸配列、及びMUC1抗原をコードする核酸配列を含む、1つ以上の複製欠損ウイルスベクターを含む組成物を提供する。
【0017】
様々な態様において、本開示は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)をコードする核酸配列、Brachyury抗原をコードする核酸配列、及びMUC1抗原をコードする核酸配列を含む1つ以上の複製欠損ウイルスベクターを含む、組成物を提供する。
【0018】
様々な態様において、本開示は、前立腺特異的抗原(PSA)をコードする核酸配列、前立腺特異的膜抗原(PSMA)をコードする核酸配列、Brachyury抗原をコードする核酸配列、MUC1抗原をコードする核酸配列、及びCEA抗原をコードする核酸配列を含む、1つ以上の複製欠損ウイルスベクターを含む組成物を提供する。
【0019】
いくつかの態様では、上記組成物のいずれかの複製欠損ウイルスベクターは更に、免疫学的融合パートナーをコードする核酸配列を含む。
【0020】
種々の態様において、本開示は、本明細書に記述される任意の組成物に係る組成物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
種々の態様において、本開示は、本明細書に記述される任意の組成物に係る組成物を含む宿主細胞を提供する。
【0022】
種々の態様において、本開示は、腫瘍ワクチンを製造する方法であって、請求項42に記載の医薬組成物を製造するステップを含む、方法を提供する。種々の態様において、本開示は、それを必要とする対象における免疫応答を増強する方法であって、本明細書に記述される任意の組成物又は本明細書に記述される任意の医薬組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含む、方法を提供する。種々の態様において、本開示は、それを必要とする対象におけるPSA発現又はPSMA発現がんを治療する方法であって、本明細書に記述される任意の組成物又は本明細書に記述される任意の医薬組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0023】
いくつかの態様において、本方法は、医薬組成物を対象に再投与するステップをさらに含む。
【0024】
いくつかの態様において、本方法は、免疫チェックポイント阻害剤を対象に投与するステップをさらに含む。さらなる態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD1、PDL1、PDL2、CD28、CD80、CD86、CTLA4、B7RP1、ICOS、B7RPI、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、KIR、TCR、LAG3、CD137、CD137L、OX40、OX40L、CD27、CD70、CD40、CD40L、TIM3、GAL9、ADORA、CD276、VTCN1、IDO1、KIR3DL1、HAVCR2、VISTA、又はCD244を阻害する。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD1又はPDL1を阻害する。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1又は抗PDL1抗体である。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PDL1抗体である。
【0025】
いくつかの態様において、投与経路は、静脈内、皮下、リンパ内、腫瘍内、皮内、筋肉内、腹腔内、直腸内、膣内、鼻腔内、経口、膀胱内注入による、又はスカリフィケーション(scarification)による。
【0026】
いくつかの態様において、増強される免疫応答は細胞性又は液性応答である。いくつかの態様において、増強される免疫応答は、B細胞増殖の増強、CD4+ T細胞増殖の増強、CD8+ T細胞増殖の増強、又はその組合せである。いくつかの態様において、増強される免疫応答は、IL-2産生の増強、IFN-γ産生の増強、又はその組合せである。いくつかの態様において、増強される免疫応答は、抗原提示細胞増殖の増強、機能の増強、又はその組合せである。
【0027】
いくつかの態様において、対象は、アデノウイルスベクターを既に投与されている。いくつかの態様において、対象は、アデノウイルスベクターに対して既存の免疫を有する。いくつかの態様において、対象は、アデノウイルスベクターに対して既存の免疫を有すると決定される。
【0028】
いくつかの態様において、本方法は、化学療法剤、放射線、異なる免疫療法、又はその組合せを対象に投与するステップをさらに含む。
【0029】
いくつかの態様において、対象はヒト又は非ヒト動物である。いくつかの態様において、対象は、がんに関して過去に治療されている。
【0030】
いくつかの態様において、治療有効量を投与するステップは、少なくとも3回繰り返される。いくつかの態様において、治療有効量を投与するステップは、1用量あたり1×109〜5×1012個のウイルス粒子を含む。いくつかの態様において、治療有効量を投与するステップは、1用量あたり5×109個のウイルス粒子を含む。いくつかの態様において、治療有効量を投与するステップは、1用量あたり5×1010個のウイルス粒子を含む。いくつかの態様において、治療有効量を投与するステップは、1用量あたり5×1011個のウイルス粒子を含む。いくつかの態様において、治療有効量を投与するステップは、1用量あたり5×1012個のウイルス粒子を含む。いくつかの態様において、治療有効量を投与するステップは、1週間、2週間又は3週間毎に繰り返される。
【0031】
いくつかの態様では、治療有効量を投与するステップの後に、同じ組成物又は医薬組成物を含むブースター免疫を1回以上行う。いくつかの態様において、ブースター免疫は、1カ月毎、2カ月毎、3カ月毎、4カ月毎、5カ月毎、6カ月毎、7カ月毎、8カ月毎、9カ月毎、10カ月毎、11カ月毎、若しくは12カ月毎、又はそれより多くの月数毎で投与される。いくつかの態様において、ブースター免疫は、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、又は12回以上繰り返される。いくつかの態様において、治療有効量を投与するステップは、初回免疫を、1週間毎、2週間毎、又は3週間毎に3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、又は12回以上繰り返した後に、ブースター免疫を、1カ月毎、2カ月毎、3カ月毎、4カ月毎、5カ月毎、6カ月毎、7カ月毎、8カ月毎、9カ月毎、10カ月毎、11カ月毎、若しくは12カ月毎、又はそれより多くの月数毎で3回以上繰り返すことである。
【0032】
追加の態様において、方法は、工学操作されたナチュラルキラー(NK)細胞の集団を含む医薬組成物を対象に投与するステップをさらに含む。いくつかの態様において、工学操作されたNK細胞は、KIR(キラー抑制性受容体)の発現を実質的に欠如するように改変されている1つ以上のNK細胞、高親和性CD16変異体を発現するように改変されている1つ以上のNK細胞、及び1つ以上のCAR(キメラ抗原受容体)を発現するように改変されている1つ以上のNK細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの態様において、工学操作されたNK細胞は、KIRの発現を実質的に欠如するように改変されている1つ以上のNK細胞を含む。いくつかの態様において、工学操作されたNK細胞は、高親和性CD16変異体を発現するように改変されている1つ以上のNK細胞を含む。いくつかの態様において、工学操作されたNK細胞は、1つ以上のCARを発現するように改変されている1つ以上のNK細胞を含む。さらなる態様において、CARは、腫瘍ネオ抗原、腫瘍ネオエピトープ、WT1、HPV-E6、HPV-E7、p53、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、BAGE、DAM-6、DAM-10、葉酸受容体アルファ、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-8、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7B、NA88-A、NY-ESO-1、MART-1、MC1R、Gp100、PSA、PSM、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、CEA、Cyp-B、HER2/neu、HER3、BRCA1、Brachyury、Brachyury(TIVS7-2、多型)、Brachyury(IVS7 T/C多型)、T Brachyury、T、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC1(VNTR多型)、MUC1c、MUC1n、MUC2、PRAME、P15、PSCA、PSMA、RU1、RU2、SART-1、SART-3、AFP、β-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CDK-4/m、ELF2M、GnT-V、G250、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、アネキシンII、CDC27/m、TPl/mbcr-abl、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RARα、TEL/AML1、又はその任意の組合せのCARである。
【0033】
いくつかの態様において、細胞は複製欠損アデノウイルスベクターを含む。いくつかの態様において、細胞は樹状細胞(DC)である。
【0034】
いくつかの態様において、本方法は、IL-15の治療有効量、又はIL-15をコードする核酸配列を含む複製欠損ベクターの治療有効量を含む医薬組成物を投与するステップをさらに含む。
【0035】
いくつかの態様において、対象は、前立腺がんを有する。いくつかの態様において、対象は、進行期の前立腺がん(advanced stage prostate cancer)を有する。いくつかの態様において、対象は、切除不能、局所進行、又は転移性がんを有する。
【0036】
いくつかの態様では、治療上有効な量の、本明細書に記述される任意の組成物又は本明細書に記述される医薬組成物の投与は、PSA抗原をコードする第1の核酸配列を含む第1の複製欠損ウイルスベクター、PSMA抗原をコードする第2の核酸配列を含む第2の複製欠損ウイルスベクター、Brachyury抗原をコードする第3の核酸配列を含む第3の複製欠損ウイルスベクター、MUC1抗原をコードする第4の核酸配列を含む第4の複製欠損ウイルスベクターを、1:1:1:1の比で含む。
【0037】
本発明の新規な特徴を、添付される特許請求の範囲に詳細に記載する。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を述べる以下の詳細な説明、及び添付図面を参照することによって、得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】同種免疫化後の、マウスにおけるPSA特異的細胞性免疫の誘発を示す図である。図1Aは、注射用緩衝液(対照群)又はAd5[E1-,E2b-]-PSAの1010個のウイルス粒子(VP)のいずれかで、7日間の間隔で3回免疫化された、Ad5免疫BALB/cマウスにおけるIFN-γ細胞媒介型免疫(CMI)応答を示す図である。図1Bは、注射用緩衝液(対照群)又はAd5[E1-,E2b-]-PSAの1010個のウイルス粒子(VP)のいずれかで、7日間の間隔で3回免疫化された、Ad5免疫BALB/cマウスにおけるIL-2細胞媒介型免疫(CMI)応答を示す図である。
図2】Ad5[E1-,E2b-]-PSAで免疫化された後の、PSA細胞媒介型免性の特異性を示す図である。図2Aは、PSA又は対照抗原(HIV-gag、CMV)へのex vivo曝露後の、脾細胞106当たりのIFN-γスポット形成細胞(SFC)を示す図である。図2Bは、PSA又は対照抗原(HIV-gag、CMV)へのex vivo曝露後の、脾細胞106当たりのIL-2スポット形成細胞(SFC)を示す図である。
図3】定量的ELISAを使用したPSA指向型抗体(抗-PSA Ab)応答を示す図である。
図4】PSAを発現する腫瘍細胞の移植後の、Ad5[E1-,E2b-]-nullで免疫化されたマウスと比較した、Ad5[E1-,E2b-]-PSAで免疫化されたマウスにおける腫瘍成長を示す図である。
図5】Ad5[E1-]-PSA又はAd5[E1-,E2b-]-PSAに感染した後の、細胞からのPSA分泌を示す図である。RM-11マウス前立腺腫瘍細胞又はHEK-293細胞を、それぞれAd5[E1-]-PSA又はAd5[E1-,E2b-]-PSAに感染させた。培地に分泌されたPSAのレベルを、様々な時点で評価した。Ad5[E1-]-PSAに感染した細胞に比べ、Ad5[E1-,E2b-]-PSAに感染した細胞では、PSAがより多く分泌されたことに留意されたい。
図6】Ad5[E1-,E2b-]-PSAで3回免疫化された後のナイーブマウス、又はAd5[E1-,E2b-]-PSAで3回免疫化された後のAd5-免疫マウスにおける、PSA特異的細胞免疫性を示す図である。ナイーブ又はAd5-免疫BALB/cマウスを、注射用緩衝液(対照群)又はAd5[E1-,E2b-]-PSAの1010個のVPで、7日間の間隔で3回免疫化した。脾細胞を、ELISpotアッセイにおいてIFN-γの分泌に関し、最終免疫化から14日後に評価した。細胞を、PSA抗原2μgに曝露した。
図7】Ad5[E1-,E2b-]-PSAで3回免疫化した後のナイーブマウス、又はAd5[E1-,E2b-]-PSAで3回免疫化した後のAd5-免疫マウスの、PSA特異的細胞免疫性を示す図である。ナイーブ又はAd5-免疫BALB/cマウスを、注射用緩衝液(対照群)又はAd5[E1-,E2b-]-PSAの1010個のVPで3回、7日間の間隔で免疫化した。脾細胞を、ELISpotアッセイでIL-2の分泌に関し、最終免疫化から14日後に評価した。細胞をPSA抗原2μgに曝露した。
図8】Ad5-免疫マウスにおいて、Ad5[E1-,E2b-]-PSAで免疫化後の、PSA細胞媒介型免疫性の特異性を示す図である。Ad5-免疫BALB/cマウスを、14日間の間隔で、Ad5[E1-]-nullの1010個のVPで、2回免疫化した。Ad5[E1-]-nullで最後に免疫化してから2週間後、マウスを、Ad5[E1-,E2b-]-PSAの1010個のVPで、7日間の間隔で3回免疫化した。脾細胞を、PSA又は対照抗原(HIV-gag、CMV)にex vivo曝露した後のIFN-γ及びIL-2の分泌に関し、最終免疫化から14日後にELISpotアッセイにより評価した。図8Aは、PSA又は対照抗原ペプチドプール(HIV-gag、CMV)群への、脾細胞のex vivo曝露後の、IFN-γ分泌細胞の頻度を示す図である。図8Bは、PSA又は対照抗原ペプチドプール(HIV-gag、CMV)群への、脾細胞のex vivo曝露後の、IL-2分泌細胞の頻度を示す図である。
図9】Ad5[E1-,E2b-]-PSAで3回免疫化した後の、ナイーブマウスの抗-PSA抗体(Ab)活性を示す図である。BALB/cマウスを、注射用緩衝液(対照群)又はAd5[E1-,E2b-]-PSAの1010個のVPのいずれかで3回、7日間の間隔で免疫化した。血清を、抗体捕捉抗原標的として精製されたPSAを使用して、定量的ELISAにおいて抗-PSA Abの存在に関し、最終免疫化の14日後に免疫化した。
図10】Ad5[E1-,E2b-]に挿入するための、可能性ある前立腺がん多価抗原遺伝子構成を示す図である。図10Aは、前立腺がんワクチンの3重遺伝子挿入物を示す図である。図10Bは、図10Aの翻訳後の生成物を示す図である。
図11】Ad5[E1-,E2b-]-PSMAでマウスにワクチン接種した後の、IFN-γ-、IL-2-、及びグランザイムB-発現脾細胞の分析を示す図である。C57BL/6マウス(n=5/群)に、1010VPのAd5[E1-,E2b-]-PSMA(赤色の棒)又はAd5[E1-,E2b-]-null(黒色の棒)で、2週間の間隔で2回ワクチン接種した。脾細胞を、最終ワクチン接種から7日後に回収し、PSMAペプチドプール、陰性対照抗原(Nefペプチドプール)、又は陽性対照(ConA)にex vivo曝露した。ELISPOTアッセイを使用して、PSMAペプチドプール、陰性対照抗原(Nefペプチドプール)、又はConAにそれぞれ曝露した後に、IFN-γ分泌、IL-2分泌、及びグランザイムB分泌を評価した。データを、脾細胞106個当たりのスポット形成細胞(SF)の数として報告する。エラーバーはSEMを示す。図11Aは、ex vivo刺激後の、IFN-γ-分泌細胞の頻度を示す図である。図11Bは、ex vivo刺激後の、IL-2-分泌細胞の頻度を示す図である。図11Cは、ex vivo刺激後の、グランザイムB-分泌細胞の頻度を示す図である。
図12】Ad5[E1-,E2b-]-PSMAでワクチン接種した後の、CD8+脾細胞及びCD4+脾細胞及び多機能性細胞集団の分析を示す図である。C57BL/6マウス(n=5/群)に、1010VPのAd5[E1-,E2b-]-PSMA又はAd5[E1-,E2b-]-null(黒色の棒)で、2週間の間隔で2回、ワクチン接種した。脾細胞を、最終ワクチン接種から7日後に回収し、PSMAペプチドプール又は陰性対照(プレーン媒体又はSIV nefペプチドプール)で、ex vivoで刺激を与えた。細胞を、表現型及び炎症性サイトカイン分泌に関して、フローサイトメトリーにより評価した。陽性対照では、脾細胞をPMA/イオノマイシンに曝露した(データは図示せず)。エラーバーはSEMを示す。図12Aは、ex vivo刺激後の、CD8β+脾細胞分泌IFN-γのパーセンテージを示す図である。図12Bは、ex vivo刺激後の、CD4+脾細胞分泌IFN-γのパーセンテージを示す図である。図12Cは、ex vivo刺激後の、CD8β+脾細胞分泌IFN-γ及びTNF-αのパーセンテージを示す図である。図12Dは、ex vivo刺激後の、CD4+脾細胞分泌IFN-γ及びTNF-αのパーセンテージを示す図である。
図13】Ad5[E1-,E2b-]-PSMAをワクチン接種した後の、マウスにおける抗体応答を示す図である。C57BL/6マウス(n=5/群)を、1010VPのAd5[E1-,E2b-]-PSMA(赤色の棒)又はAd5[E1-,E2b-]-null(黒色の棒)で、2週間の間隔で2回ワクチン接種した。血清を、最終ワクチン接種から7日後に回収し、PSMAタンパク質に対する抗原特異的抗体に関してELISAにより評価した。
図14】Ad5[E1-,E2b-]-PSAでマウスにワクチン接種した後の、IFN-γ-、IL-2-、及びグランザイムB-発現脾細胞の分析を示す図である。C57BL/6マウス(n=5/群)に、1010VPのAd5[E1-,E2b-]-PSA(ストライプ付きの棒)又はAd5[E1-,E2b-]-null(黒色の棒)を、腫瘍を移植する前に2週間の間隔で3回ワクチン接種した。最終ワクチン接種から2週間後、マウスに、PSAを発現する5×105 D2F2腫瘍原性細胞を、マウスの右側後方に注射した。脾細胞を、実験の終わり(腫瘍移植後37日目)に回収し、PSAペプチドプール、陰性対照(SIV-Nefペプチドプール)、又は陽性対照(コンカナバリンA(Con A))で、ex vivoで刺激した。サイトカイン分泌を、ELISPOTアッセイを使用して、ex vivo刺激後に測定した。データを、脾細胞106個当たりのスポット形成細胞(SFC)の数として報告し、エラーバーはSEMを示す。図14Aは、ex vivo曝露刺激後の、脾細胞106個当たりのIFN-γスポット形成細胞(SFC)を示す図である。図14Bは、ex vivo刺激後の、脾細胞106個当たりのIL-2スポット形成細胞(SFC)を示す図である。図14Cは、ex vivo刺激後の、脾細胞106個当たりのグランザイムBスポット形成細胞(SFC)を示す図である。
図15】Ad5[E1-,E2b-]-PSAでワクチン接種した後の、CD8+脾細胞及びCD4+脾細胞及び多機能性細胞集団の分析を示す図である。C57BL/6マウス(n=5/群)に、1010VPのAd5[E1-,E2b-]-PSA又はAd5[E1-,E2b-]-null(黒色の棒)を、2週間の間隔で3回ワクチン接種した。最終ワクチン接種から2週間後、マウスに、PSAを発現する5×105 D2F2腫瘍原性細胞を、マウスの右側後方に注射した。脾細胞を、実験の終わり(腫瘍接種後37日目)に回収し、PSAペプチドプール又は陰性対照抗原(媒体又はSIV-Nefペプチドプール)に、ex vivoで曝露した。細胞を、表面マーカーのために及び細胞内サイトカイン分泌のために染色し、フローサイトメトリーによって分析した。図15Aは、CD8β+IFN-γを分泌する脾細胞の、パーセントを示す図である。図15Bは、CD4+IFN-γを分泌する脾細胞の、パーセントを示す図である。図15Cは、CD8β+IFN-γ及びTNF-αを分泌する脾細胞の、パーセントを示す図である。図15Dは、CD4+IFN-γ及びTNF-αを分泌する脾細胞の、パーセントを示す図である。
図16】1010VPのAd5[E1-,E2b-]-null又はAd5[E1-,E2b-]-PSAで、2週間ごとに3回免疫化した、BALB/cマウス(n=5/群)からの血清で測定された、抗体応答を示す図である。最終ワクチン接種から2週間後、マウスに、PSAを発現する5×105 D2F2腫瘍原性細胞を、マウスの右側後方に注射した。血清を、実験の終わり(腫瘍接種後37日目)に回収し、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して抗体の存在を分析した。図16Aは、PSAに対するIgG特異的抗体の質量を示す図である。図16Bは、PSAに対するIgG1特異的抗体の質量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
下記の節は、ある特定の実施形態の種々の態様について、より詳細に記述する。各態様は、反対の内容を明示しない限り、任意のその他の態様と組み合せてもよい。特に、好ましい又は有利であることが示される任意の特徴を、好ましい又は有利であることが示される任意のその他の特徴と組み合せてもよい。
【0040】
他に指示しない限り、任意の実施形態を、任意のその他の実施形態と組み合せることができる。様々な態様は、範囲形式で提示することができる。範囲形式の記述は、単なる便宜上及び簡略化のためであり、本発明の範囲に対して柔軟性のない制限を設けたと解釈すべきでないことを、理解すべきである。したがって、ある範囲の記述は、明白に書き出されたかのように、可能性ある部分範囲の全て並びにその範囲内の個々の数値を特に開示したと見なすべきである。例えば、1から6などの範囲の記述は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6などの特に開示された部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5、及び6を有すると見なすべきである。このことは、範囲の幅とは無関係に適用される。範囲が存在するとき、その範囲は、範囲の端点を含む。
【0041】
I. 標的抗原
ある特定の態様では、目的の1つ以上の標的タンパク質又は標的抗原、例えば本明細書に記述されるPSA、PSMA、CEA、MUC1、Brachyury、又はこれらの組合せをコードする核酸配列を含む、発現構築物又はベクターが提供され得る。この点に関し、少なくとも、最大でも、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、若しくは500個の、又はこれらから誘導された任意の数若しくは範囲の、目的の異なる標的抗原を、コードする核酸を含有し得る発現構築物又はベクターが提供され得る。発現構築物又はベクターは、1つ以上の標的抗原からの多数の断片若しくはエピトープをコードする核酸配列を含有していてもよく、又は数多くの種々の標的抗原からの1つ以上の断片若しくはエピトープを含有していてもよい。
【0042】
標的抗原は、完全長タンパク質である場合もあれば、その免疫原性断片(例えばエピトープ)である場合もある。免疫原性断片は、例えば、Paul, Fundamental Immunology, 3rd ed., 243-247 (Raven Press, 1993)及びこの文献に引用された参考文献に概説されているものなど、利用可能な技術を使用して特定することができる。免疫原性断片を特定するための代表的な技術は、抗原特異的抗血清及び/又はT細胞株クローンと反応する能力に関するポリペプチドのスクリーニングを含む。特定の標的ポリペプチドの免疫原性断片は、完全長の標的ポリペプチドの反応性を(例えばELISA及び/又はT細胞反応性アッセイにおいて)実質的に下回らないレベルでそのような抗血清及び/又はT細胞と反応する断片であり得る。言い換えると、免疫原性断片は、そのようなアッセイにおいて完全長ポリペプチドの反応性と同様か又はそれを上回るレベルで反応し得る。そのようなスクリーニングは概して、例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988に記述されているものなど、当業者に利用可能な方法を使用して行うことができる。
【0043】
場合により、標的抗原は、免疫原性エピトープ、例えば8〜10アミノ酸長のエピトープであり得る。場合により、標的抗原は、4〜10アミノ酸長であるか、又は10アミノ酸長を超える。標的抗原は、少なくとも、約、又は最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、又はこれらの数から得られる任意の数字若しくは範囲のアミノ酸長を含み得る。標的抗原は、任意のアミノ酸長とすることができる。
【0044】
標的抗原のさらなる非限定的な例としては、がん胎児抗原(CEA)、葉酸受容体アルファ、WT1、brachyury(TIVS7-2、多型)、brachyury(IVS7 T/C多型)、T brachyury、T、hTERT、hTRT、HPV E6、HPV E7、iCE、BAGE、DAM-6、DAM-10、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-8、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7B、NA88-A、NY-ESO-1、MART-1、MC1R、Gp100、PSA、PSMA、PSCA、STEAP、PAP、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、Cyp-B、EGFR、HER2/neu、MUC1、MUC1(VNTR多型)、MUC1-c、MUC1-n、MUC1、MUC2、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-3、WT1、AFP,β-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CDK-4/m、ELF2M、GnT-V、G250、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、アネキシンII、CDC27/m、TPI/mbcr-abl、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RARα、TEL/AML1、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2/neu)、ヒト上皮増殖因子受容体3(HER3)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、前立腺特異的抗原(PSA)、アルファアクチニン4、ARTC1、CAR-ABL融合タンパク質(b3a2)、B-RAF、CASP-5、CASP-8、ベータカテニン、Cdc27、CDK4、CDKN2A、COA-1、dek-can融合タンパク質、EFTUD2、伸長因子2、ETV6-AML1融合タンパク質、FLT3-ITD、FN1、GPNMB、LDLR-フコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質、HLA-A2d、HLA-Al ld、hsp70-2、KIAAO205、MART2、ME1、neo-PAP、ミオシンクラスI、NFYC、OGT、OS-9、pml-RARアルファ融合タンパク質、PRDX5、PTPRK、K-ras、N-ras、RBAF600、SIRT2、SNRPD1、SYT-SSX1融合タンパク質若しくはSYT-SSX2融合タンパク質、TGFベータRII、トリオースリン酸イソメラーゼ、BAGE-1、GAGE-1、2、8、Gage 3、4、5、6、7、GnTVf、HERV-K-MEL、KK-LC-1、KM-HN-1、LAGE-1、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-Al2、MAGE-C2、mucink、NA-88、NY-ESO-1/LAGE-2、SAGE、Sp17、SSX-2、SSX-4、TAG-1、TAG-2、TRAG-3、TRP2-INT2g、XAGE-1b、gp100/Pmel17、Kallikrein 4、マンマグロビン-A、メラン-A/MART-1、NY-BR-1、OA1、PSA、RAB38/NY-MEL-1、TRP-1/gp75、TRP-2、チロシナーゼ、アディポフィリン、AIM-2、ALDH1A1、BCLX(L)、BCMA、BING-4、CPSF、サイクリンD1、DKK1、ENAH(hMena)、EP-CAM、EphA3、EZH2、FGF5、G250/MN/CAIX、HER-2/neu、IL13Rアルファ2、腸管カルボキシルエステラーゼ、アルファフェトプロテイン、M-CSFT、MCSP、mdm-2、MMP-2、MUC1、p53、PBF、PRAME、PSMA、RAGE-1、RGS5、RNF43、RU2AS、セセルニン1、SOX10、STEAP1、サバイビン、テロメラーゼ、VEGF、又はその任意の組合せが挙げられる。
【0045】
いくつかの態様において、本明細書で使用される腫瘍ネオエピトープは、EQVWGMAVR(配列番号13)又はCQGPEQVWGMAVREL(配列番号14)(FLRT2のR346W突然変異)、GETVTMPCP(配列番号15)又はNVGETVTMPCPKVFS(配列番号16)(VIPR2のV73M突然変異)、GLGAQCSEA(配列番号17)又はNNGLGAQCSEAVTLN(配列番号18)(FCRL1のR286C突然変異)、RKLTTELTI(配列番号19)、LGPERRKLTTELTII(配列番号20)、又はPERRKLTTE(配列番号21)(FAT4のS1613L突然変異)、MDWVWMDTT(配列番号22)、AVMDWVWMDTTLSLS(配列番号23)、又はVWMDTTLSL(配列番号24)(PIEZO2のT2356M突然変異)、GKTLNPSQT(配列番号25)、SWFREGKTLNPSQTS(配列番号26)、又はREGKTLNPS(配列番号27)(SIGLEC14のA292T突然変異)、VRNATSYRC(配列番号28)、LPNVTVRNATSYRCG(配列番号29)、又はNVTVRNATS(配列番号30)(SIGLEC1のD1143N突然変異)、FAMAQIPSL(配列番号31)、PFAMAQIPSLSLRAV(配列番号32)、又はAQIPSLSLR(配列番号33)(SLC4A11のQ678P突然変異)などの腫瘍特異的エピトープである。
【0046】
腫瘍関連抗原は、宿主によって通常発現されない抗原であり得る。それらは、宿主によって通常発現される分子の突然変異型、切断型、ミスフォールディング型、又は異常な発現物(manifestation)である場合もあり、通常発現される分子と同一であるが異常に高いレベルで発現される場合もあり、又は異常な背景若しくは環境で発現される場合もある。腫瘍関連抗原は、例えば、タンパク質若しくはタンパク質断片、複合炭水化物、ガングリオシド、ハプテン、核酸、他の生体分子、又はその任意の組合せであり得る。
【0047】
II. PSAファミリー抗原標的
本明細書の開示には、同じ又は別の複製欠損ベクター内に、PSA及び/又はPSMA抗原をコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はMUC1などのムチンファミリー抗原をコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はBrachyuryをコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はCEAをコードする1つ以上の核酸配列を含む、複製欠損ベクターを含む組成物が含まれる。
【0048】
ガンマ-セミノプロテイン又はカリクレイン-3(KLK3)としても公知の前立腺特異的抗原(PSA)は、KLK3遺伝子によってヒトにおいてコードされた糖タンパク質酵素である。PSAは、カリクレイン関連ペプチダーゼファミリーのメンバーであり、前立腺の上皮細胞によって分泌される。PSAは射精のために生成され、精液凝塊中の精液を液化し、精子が自由に泳ぐことを可能にする。頚管粘液を溶解し、精子を子宮に進入させるのに役立つものとも考えられる。
【0049】
PSAは、健常な前立腺を持つ男性の血清中に少量存在するが、前立腺がん又はその他の前立腺障害の存在下でしばしば上昇する。PSAは、前立腺がんに固有の指標ではなく、前立腺炎又は良性前立腺肥大症も検出し得る。高PSAの患者の30パーセントは、生検後に診断された前立腺がんを有する。
【0050】
PSAを標的としその腫瘍原性に基づいて治療を開始することは、信頼性ある試験によって循環内及びヒトがん生検において高PSAレベルの存在を迅速に確認できるので、現在実現可能である。PSAは、前立腺がん細胞がこの抗原を過剰発現し且つ高レベルのPSAは前立腺がんの診断に関連付けられるので、腫瘍特異的免疫療法の魅力ある抗原標的であると見なされる。研究は、PSA誘発型免疫応答が、ヒト及びPSA発現がんの実験動物モデルにおいて抗腫瘍CMI応答を誘発させる際に有効であることを示す。
【0051】
本明細書の開示には、PSA発現前立腺がんを治療する新しい免疫療法ワクチンとしてヒトPSA遺伝子を挿入するための(Ad5[E1-,E2b-]-PSAと呼ばれる)、Ad5[E1-,E2b-]-ベースのベクタープラットフォームの使用が含まれる。ある特定の実施形態で記述される前臨床研究では、このワクチンは、PSA発現がんのマウスモデルで抗腫瘍細胞媒介型免疫(CMI)応答を誘発させ、PSA発現前立腺がんを治療するための免疫療法ワクチンとしてAd5[E1-,E2b-]-PSAを使用するための、強力な根拠を提供する。
【0052】
一部の実施形態では、本開示のPSA抗原は、配列番号34に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一のアミノ配列を有することができる。ある特定の実施形態では、本開示のPSA抗原は、配列番号34に記載のアミノ酸配列を有することができる。一部の実施形態では、本開示のPSA抗原は、配列番号35に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一のヌクレオチド配列を有することができる。ある特定の実施形態では、本開示のPSA抗原は、配列番号35に記載のヌクレオチド酸配列を有することができる。
【0053】
III. PSMA抗原標的
本明細書の開示には、同じ又は別の複製欠損ベクター内に、PSA及び/又はPSMA抗原をコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はMUC1などのムチンファミリー抗原をコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はBrachyuryをコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はCEAをコードする1つ以上の核酸配列を含む、複製欠損ベクターを含む組成物が含まれる。
【0054】
N-アセチル-L-アスパルチル-L-グルタミン酸ペプチダーゼI(NAALADase I)、NAAGペプチダーゼ、又は前立腺特異的膜抗原(PSMA)としても公知のグルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(GCPII)は、ヒトにおいてFOLH1(葉酸ヒドロラーゼ1)遺伝子によってコードされる酵素である。ヒトGCPIIは、750アミノ酸を含有し、約84kDaの重量である。
【0055】
GCPIIは、膜内に在る亜鉛金属酵素である。酵素のほとんどは、細胞外空間に在る。GCPIIは、クラスII膜糖タンパク質である。右への反応スキームに従い、N-アセチルアスパルチルグルタメート(NAAG)からグルタメート及びN-アセチルアスパルテート(NAA)への加水分解を触媒する。
【0056】
一部の実施形態では、本開示のPSMA抗原は、配列番号11に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一のアミノ配列を有することができる。ある特定の実施形態では、本開示のPSMA抗原は、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有することができる。一部の実施形態では、本開示のPSMA抗原は、配列番号36に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一のヌクレオチド配列を有することができる。ある特定の実施形態では、本開示のPSMA抗原は、配列番号36に記載のヌクレオチド酸配列を有することができる。
【0057】
IV. ムチンファミリー抗原標的
本明細書において開示されるものには、PSA及び/又はPSMA抗原をコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はMUC1などのムチンファミリー抗原をコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はBrachyuryをコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はCEAをコードする1つ以上の核酸配列を同じ又は別の複製欠損ベクターに含む、複製欠損ベクターを含む組成物が含まれる。
【0058】
ヒトムチンファミリー(MUC1〜MUC21)は、体内における上皮表面での保護的な粘膜防壁の形成に関与する分泌型及び膜貫通型のムチンを含む。これらのタンパク質は、気道や胃腸管を覆い、例えば乳腺、肝臓、胃、膵臓、及び腎臓などの重要な臓器内の管を覆う上皮の保護において機能する。
【0059】
MUC1(CD227)は、ヒトがん腫の大部分及びいくつかの血液悪性腫瘍で過剰発現するTAAである。MUC1(GenBank:X80761.1、NCBI:NM_001204285.1)は、ヒト疾患に関与することが知られる多くの重要な細胞経路を活性化させる。MUC1は、いくつかのヒトがんで一般的に過剰発現する、2つのサブユニットから形成されたヘテロ二量体タンパク質である。MUC1は自己タンパク分解を経てMUC1n及びMUC1cという2つのサブユニットを生成し、これらが安定な非共有結合性のヘテロ二量体を形成する。
【0060】
MUC1のC末端サブユニット(MUC1c)は、58aaの細胞外ドメイン(ED)、28aaの膜貫通ドメイン(TM)、及び72aaの細胞質ドメイン(CD)を含み得る。MUC1cは、MUC1の二量体化を可能にし得る「CQC」モチーフを含有する場合もあり、これは細胞に発がん性機能を与える場合もある。場合により、MUC1は、MUC1cを介して細胞シグナル伝達を誘導することにより発がん性機能を与えることができる。MUC1cは、EGFR、ErbB2、及び他の受容体チロシンキナーゼと相互作用し、PI3K→AKT及びMEK→ERKの細胞経路の活性化に寄与し得る。核内において、MUC1cは、Wnt/β-カテニン、STAT、及びNF-κB RelA細胞経路を活性化させる。場合により、MUC1は、MUC1nを介して細胞シグナル伝達を誘導することにより発がん性機能を与えることができる。MUC1のN末端サブユニット(MUC1n)は、グリコシル化されている場合がある可変数の20アミノ酸タンデムリピートを含み得る。MUC1は通常、腺上皮細胞の表面で発現し、がん腫においては過剰発現し、異常にグリコシル化される。MUC1は、腫瘍免疫療法のための標的として利用され得るTAAである。免疫療法ワクチンにおけるMUC1の使用を評価するために、いくつかの臨床治験が過去にも現在にも行われている。重要なことに、これらの治験は、MUC1の標的化を用いた免疫療法が安全であり、いくつかの利益を提供し得ることを示している。
【0061】
しかしながら、臨床治験は、MUC1が比較的弱い免疫原であることも示している。これを克服するため、本発明者らは、MUC1腫瘍性タンパク質のC末端領域(MUC1-C又はMUC1c)におけるTリンパ球免疫エンハンサーペプチド配列を特定した。天然のペプチド配列と比較すると、それらの改変型のMUC1-Cのアゴニストは、(a)より低いペプチド濃度でHLA-A2に結合し、(b)より高いHLA-A2への結合活性を示し、(c)抗原提示細胞とともに使用したとき、天然ペプチドを使用した場合よりも多くのT細胞によるIFN-γの産生を誘導し、(d)がん患者からMUC1特異的ヒトT細胞株をより効率的に生成することができた。重要なことに、このアゴニストエピトープを使用して生成されたT細胞株は、天然エピトープを用いて生成されたものと比べ、天然エピトープをパルスした標的の溶解に関し、またMUC1を発現するHLA-A2ヒト腫瘍細胞の溶解において、より効率的であった。さらに、本発明者らは、MUC1-CのさらなるCD8+細胞傷害性Tリンパ球免疫エンハンサーアゴニスト配列エピトープを特定した。
【0062】
ある特定の態様では、免疫エンハンサー能力のために改変された強力なMUC1-C(mMUC1-C又はMUC1-C又はMUC1c)が提供される。本開示は、新しくより強力な免疫療法ワクチンを産生するために組換えAd5[E1-,E2b-]プラットフォームに組み込まれた、免疫エンハンサー能力のために改変された強力なMUC1-Cを提供する。例えば、この免疫療法ワクチンは、MUC1発現がん又は感染性疾患を処置するためのAd5[E1-,E2b-]-mMUC1-Cであり得る。
【0063】
翻訳後修飾は、体内そしてヒト疾患においてタンパク質機能をコントロールするのに重要な役割を果たす。例えば、上記に詳解したタンパク分解切断に加えて、MUC1は、グリコシル化、シアリル化、パルミトイル化、又はその組合せなど、いくつかの翻訳後修飾を特定のアミノ酸残基に有し得る。本明細書では、MUC1のグリコシル化、シアリル化、リン酸化、又はパルミトイル化修飾を標的とする免疫療法が提供される。
【0064】
MUC1は、高度にグリコシル化されている場合がある(N結合型及びO結合型の炭水化物、並びに各タンデムリピート内のセリン及びスレオニン残基における様々な程度のシアル酸。モノグリコシル化からペンタグリコシル化に及ぶ)。乳がんでは3,4結合したGlcNAcで差次的にO-グリコシル化されている。N-グリコシル化は、分泌型MUC1/SECの高マンノース型、酸性複合型、及びハイブリッド型のグリカン、並びに膜貫通型MUC1/TM.4の中性複合型からなる。本開示は、差次的にO-グリコシル化された形態のMUC1を標的とする免疫療法を提供する。
【0065】
さらに、MUC1はシアリル化されていてもよい。腎がん細胞及び乳がん細胞に由来する膜脱落糖タンパク質は、優先的にシアリル化されるコア1構造を有するが、同じ組織に由来する分泌型は、主にコア2構造を提示する。O-グリコシル化の内容は、これら両方の組織で重複しており、末端フコース及びガラクトース、2結合及び3結合ガラクトース、3結合及び3,6結合GalNAc-オール、並びに4結合GlcNAcが大部分を占める。本開示は、種々のシアリル化形態のMUC1を標的とする免疫療法を提供する。エンドソームから原形質膜への再循環のためには、CQCモチーフ内のシステイン残基における二重パルミトイル化が必要である。本開示は、種々のパルミトイル化形態のMUC1を標的とする免疫療法を提供する。
【0066】
リン酸化は、ヒトの健康に重要である特異的な細胞シグナル伝達応答を誘導するMUC1の能力に影響を及ぼし得る。本開示は、種々のリン酸化形態のMUC1を標的とする免疫療法を提供する。例えば、MUC1は、C末端ドメイン内のチロシン及びセリン残基においてリン酸化されていてもよい。C末端ドメイン内のチロシンにおけるリン酸化により、MUC1及びβ-カテニンの核内位置を増加させ得る。PKCデルタによるリン酸化は、β-カテニン/CTNNB1に対するMUC1の結合を誘導し、β-カテニン/E-カドヘリン複合体の形成を減少させ得る。MUC1のSrc媒介性リン酸化は、GSK3Bとの相互作用を阻害し得る。Tyr-1229におけるMUC1のSrc媒介性及びEGFR媒介性のリン酸化は、β-カテニン/CTNNB1に対する結合を増大させ得る。Ser-1227におけるMUC1のGSK3B媒介性リン酸化により、この相互作用が減少し得るが、β-カドヘリン/E-カドヘリン複合体の形成は回復する。MUC1のPDGFR媒介性リン酸化は、MUC1CT及びCTNNB1の核内に共存を増大させ得る。本開示は、MUC1の細胞シグナル伝達能力を制御することが知られる様々なリン酸化形態のMUC1、MUC1c、及びMUC1nを標的とする免疫療法を提供する。
【0067】
本開示は、MUC1cの細胞質ドメイン及び細胞におけるその機能を調節する免疫療法を提供する。本開示は、MUC1cのCQCモチーフを調節することを含む免疫療法を提供する。本開示は、MUC1cの細胞外ドメイン(ED)、膜貫通ドメイン(TM)、細胞質ドメイン(CD)、又はその組合せを調節することを含む免疫療法を提供する。本開示は、EGFR、ErbB2、又は他の受容体チロシンキナーゼを介して細胞シグナル伝達を誘導するMUC1cの能力を調節することを含む免疫療法を提供する。本開示は、PI3K→AKT、MEK→ERK、Wnt/β-カテニン、STAT、NF-κB RelA細胞経路、又はその組合せを誘導するMUC1cの能力を調節することを含む免疫療法を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、MUC1c免疫療法は、同じ複製欠損ウイルスベクター又は別の複製欠損ウイルスベクターにおける、PSA、PSMA、CEA、又はBrachyury免疫療法をさらに含み得る。
【0069】
本開示は、MUC1n及びその細胞機能を調節する免疫療法も提供する。本開示は、MUC1nのタンデムリピート、MUC1nのタンデムリピート上のグリコシル化部位、又はその組合せを含む免疫療法も提供する。いくつかの実施形態では、MUC1n免疫療法は、同じ複製欠損ウイルスベクター又は別の複製欠損ウイルスベクターにおける、PSA、PSMA、CEA、又はBrachyury免疫療法をさらに含む。
【0070】
本開示は、MUC1n、MUC1c、PSA、、brachyury、CEA、又はその組合せを含むワクチンも提供する。本開示は、MUC1c及びPSA、PSMA、brachyury、CEA、又はその組合せを含むワクチンを提供する。本開示は、MUC1n及びPSA、、Brachyury、CEA、又はその組合せを標的とするワクチンも提供する。いくつかの実施形態では、抗原の組合せは、本明細書において提供される1つのベクターに含有されている。いくつかの実施形態では、抗原の組合せは、本明細書において提供される別のベクターに含有されている。
【0071】
本発明は、免疫原性ポリペプチドをコードする配列を含む血清型5の複製欠損アデノウイルスベクターに関する。免疫原性ポリペプチドは、MUC1のアイソフォーム又はそのサブユニット若しくは断片であってもよい。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスベクターは、免疫原性ポリペプチドと、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%、又は99.9%の同一性を有するポリペプチドをコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるアデノウイルスベクターによりコードされる免疫原性ポリペプチドは、野生型ヒトMUC1配列と比較して、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、又はそれより多くの点突然変異、例えば単一アミノ酸置換又は欠失を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示のMUC1-c抗原は、改変されたMUC1であり得、配列番号10と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を有し得る。ある特定の態様では、本開示のMUC1-c抗原は、配列番号10に記載のヌクレオチド配列を有し得る。いくつかの実施形態では、本開示のMUC1-c抗原は、改変されたMUC1であり得、配列番号41と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一であるアミノ配列を有し得る。ある特定の実施形態では、本開示のMUC1-c抗原は、配列番号41に記載のアミノ酸配列を有し得る。
【0073】
V. Brachyury標的抗原
本明細書において開示されるものには、PSA及び/又はPSMA抗原をコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はMUC1などのムチンファミリー抗原をコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はBrachyuryをコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はCEAをコードする1つ以上の核酸配列を同じ又は別の複製欠損ベクターに含む、複製欠損ベクターを含む組成物が含まれる。
【0074】
本開示は、Brachyuryに対する1つ以上の抗原を含む免疫療法を提供する。Brachyury(ヒトにおいては「T」タンパク質としても知られる)は、初期発生中、主に正常な中胚葉の形成及び分化において重要な役割を果たす転写因子のTボックスファミリーのメンバーであり、Tドメインと呼称される高度に保存されたDNA結合ドメインを特徴とする。上皮間葉転換(EMT)は、Brachyuryが決定的な役割を果たす転移段階に原発腫瘍が進行する間の重要なステップである。ヒトがん腫細胞におけるBrachyuryの発現は、間葉系マーカーの上方制御、上皮系マーカーの下方制御、並びに細胞の遊走及び浸潤の増大を含む、EMTの特徴の変化を誘導する。逆に、Brachyuryの阻害は、間葉系マーカーの下方制御並びに細胞の遊走及び浸潤の喪失をもたらし、転移を生じるヒト腫瘍細胞の能力を低下させた。Brachyuryは、上皮間葉転換を媒介し、浸潤を促進するように機能することができる。
【0075】
本開示は、がんなどの細胞増殖疾患において上皮間葉転換機能に対するBrachyuryの影響を調節する免疫療法も提供する。本開示は、がんなどの細胞増殖疾患において浸潤を促進するBrachyuryの能力を調節する免疫療法も提供する。本開示は、BrachyuryのTボックスドメインのDNA結合機能を調節する免疫療法も提供する。いくつかの実施形態では、Brachyury免疫療法は、PSA、PSMA、CEA、又はMUC1、MUC1c、若しくはMUC1nに対する1つ以上の抗原をさらに含み得る。
【0076】
Brachyuryの発現は、ほとんどの正常なヒト組織においてほぼ検出不可能であり、ヒト腫瘍に高度に制限されており、過剰発現することが多いため、免疫療法のための魅力的な標的抗原となっている。ヒトにおいてBrachyuryは、T遺伝子(GenBank:AJ001699.1、NCBI:NM_003181.3)によってコードされる。ヒトにおいて見られる選択的スプライシングにより産生される、少なくとも2つの異なるアイソフォームが存在する。各アイソフォームがいくつかの天然変異体を有する。
【0077】
Brachyuryは免疫原性であり、インビトロで増殖したBrachyury特異的CD8+ T細胞は、Brachyuryを発現する腫瘍細胞を溶解することができる。Brachyuryは、これらの特徴のため、免疫療法のための魅力的な腫瘍関連抗原(TAA)である。Brachyuryタンパク質は、Tボックス転写因子である。これは、そのN末端におけるTボックスと呼ばれる領域を介して、特異的なDNAエレメントであるほぼ回文構造の配列「TCACACCT」に結合することができ、そのような部位に結合すると遺伝子転写を活性化させる。
【0078】
本開示は、Brachyury、PSA、PSMA、MUC1、CEA、又はその組合せを含むワクチンも提供する。いくつかの実施形態では、抗原の組合せは、本明細書において提供される1つのベクターに含有されている。いくつかの実施形態では、抗原の組合せは、本明細書において提供される別のベクターに含有されている。
【0079】
特定の実施形態では、本発明は、免疫原性ポリペプチドをコードする配列を含む血清型5の複製欠損アデノウイルスベクターに関する。免疫原性ポリペプチドは、Brachyuryのアイソフォーム又はそのサブユニット若しくは断片であり得る。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスベクターは、免疫原性ポリペプチドと、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%、又は99.9%の同一性を有するポリペプチドをコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるアデノウイルスベクターによりコードされる免疫原性ポリペプチドは、野生型ヒトBrachyury配列と比較して、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、又はそれより多くの点突然変異、例えば単一アミノ酸置換又は欠失を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、本開示のBrachyury抗原は、配列番号42と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一であるアミノ配列を有し得る。ある特定の態様では、本開示のBrachyury抗原は、配列番号42に記載のアミノ酸配列を有し得る。
【0081】
VI. CEA抗原標的
本明細書の開示には、同じ又は別の複製欠損ベクター内に、PSA及び/又はPSMA抗原をコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はMUC1などのムチンファミリー抗原をコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はBrachyuryをコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はCEAをコードする1つ以上の核酸配列を含む、複製欠損ベクターを含む組成物が含まれる。
【0082】
CEAは、ほぼ全ての大腸がん及び膵臓がんで過剰発現するので、また、一部の肺及び乳がん並びに一般的ではない腫瘍、例えば髄様甲状腺がんによっても発現するが、胃腸上皮での低レベル発現以外は身体のその他の細胞で発現しないので、免疫療法にとって魅力ある標的抗原である。CEAは、T細胞によりMHC制限様式で認識され得るエピトープを含有する。
【0083】
腫瘍抗原CEAをコードするAd5[E1-,E2b-]-CEA(6D)による多数の同種免疫化は、既存の又は誘導されたAd5-中和抗体の存在にも関わらず、マウスにおいて、抗腫瘍活性と共にCEA特異的細胞媒介型免疫(CMI)応答を誘発することが発見された。本第I/II相研究では、進行した大腸がんの患者のコホートを、漸増する用量のAd5[E1-,E2b-]-CEA(6D)で免疫化した。CEA特異的CMI応答は、患者の大多数(61.3%)において、既存のAd5免疫性の存在に関わらず、観察された。重要なのは、毒性が最小限に抑えられ、既存のAd5中和抗体力価とは無関係に全体的な患者生存率(12カ月で48%)が同様であることであった。結果は、がん患者において、新規なAd5[E1-,E2b-]遺伝子送達プラットフォームが、自然に獲得された及び免疫化により誘発されたAd5特異的免疫性の両方の背景において、有意なCMI応答を腫瘍抗原CEAに対して発生させることを実証する。
【0084】
CEA抗原特異的CMIは、例えば、末梢血液単核細胞(PBMC)106個当たり10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、5000、10000個超又はそれ以上のIFN-γスポット形成細胞(SFC)であり得る。一部の実施形態では、免疫応答は、ヒト対象において、既存の逆Ad5中和抗体力価が50、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、6000、7000、8000、9000、1000、12000、15000超又はそれより高く、惹起される。免疫応答は、本明細書に記述される細胞媒介型免疫性及び/又は液性免疫を含んでいてもよい。免疫応答は、本明細書に、それらが当業者に利用可能である程度まで記述されるような細胞内サイトカイン染色(ICS)、ELISpot、増殖アッセイ、クロム放出を含む細胞毒性T細胞アッセイ又は同等のアッセイ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又はRT-PCRをベースにしたアッセイの任意の数を使用する遺伝子発現分析、並びに免疫応答を測定するために当技術分野で公知の任意のその他の適切なアッセイの、1つ以上により測定されてもよい。
【0085】
一部の実施形態では、複製欠損アデノウイルスベクターは、ポリペプチドの野生型サブユニットに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一のサブユニットをコードする、修飾配列を含む。
【0086】
免疫原性ポリペプチドは、変異CEA又はその断片であってもよい。一部の実施形態では、免疫原性ポリペプチドは、610位でAsn->Asp置換である変異CEAを含む。一部の実施形態では、複製欠損アデノウイルスベクターは、免疫原性ポリペプチドに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一であるポリペプチドを、コードする配列を含む。一部の実施形態では、免疫原性ポリペプチドをコードする配列は、配列番号37の配列(CEA-CAP1(6D)の核酸配列)又は配列番号38の配列(変異CAP1(6D)エピトープのアミノ酸配列)を含む。
【0087】
一部の実施形態では、免疫原性ポリペプチドをコードする配列は、配列番号37若しくは配列番号38又は代替のコドン置換によって配列番号37若しくは配列番号38から発生した配列に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一である、配列を含む。一部の実施形態では、アデノウイルスベクターによりコードされた免疫原性ポリペプチドは、野生型ヒトCEA配列に比べ、単一アミノ酸置換又は欠失などの最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40以上の点変異を含む。
【0088】
一部の実施形態では、免疫原性ポリペプチドは、配列番号37又は配列番号38の、単一アミノ酸置換又は欠失など、例えば最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40以上の点変異を含む、配列番号37からの配列又はその修飾タイプを含む。
【0089】
CEA遺伝子ファミリーのメンバーは、配列の類似性、発生過程での発現パターン、及びそれらの生物学的機能に基づいて3つのサブグループ: 12遺伝子を含有するCEA関連細胞接着分子(CEACAM)サブグループ(CEACAM1、CEACAM3-CEACAM8、CEACAM16、及びCEACAM18-CEACAM21)、11の密接に関連する遺伝子を含有する妊娠特異的糖タンパク質(PSG)サブグループ(PSG1-PSG11)、及び11の偽遺伝子のサブグループ(CEACAMP1-CEACAMP11)に細分される。CEACAMサブグループのほとんどのメンバーは、単一N末端V-setドメインから構成される細胞外Ig様ドメインからなる、類似の構造を有し、免疫グロブリン可変ドメインに対して構造的相同性を持ち、それに続いてA又はBサブタイプの様々な数のC2-setドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを持つものである。CEACAMサブグループの2つのメンバー(CEACAM16及びCEACAM20)があり、これらは、それらの構造の組織にいくつかの例外を示すものである。CEACAM16は、そのN及びC末端に2つのIg様V型ドメインを含有し、CEACAM20は、切断型Ig様V型1ドメインを含有する。CEACAM分子は、それらの膜貫通ドメイン(CEACAM5からCEACAM8まで)を介して細胞表面に固着することができ、又はグリコホスファチジルイノシトール(GPI)脂質部分(CEACAM5、CEACAM18からCEACAM21まで)に直接結合することができる。
【0090】
CEAファミリーメンバーは、異なる細胞型で発現し、広範な生物学的機能を有する。CEACAMは、ほとんどの上皮細胞上で顕著に見出され、異なる白血球上に存在する。ヒトにおいて、CEACAM1、CEAファミリーの前身メンバーは、上皮及び内皮細胞の頂端側に、並びにリンパ球及び骨髄細胞上に発現する。CEACAM1は、好血的(CEACAM1からCEACAM1)並びに異体的(例えば、CEACAM1からCEACAM5)相互作用を通して細胞-細胞接着を媒介する。更にCEACAM1は、血管新生、細胞移行、及び免疫機能などの多くのその他の生物学的プロセスに関わる。CEACAM3及びCEACAM4発現は、顆粒球に大きく制限され、ナイセリア(Neisseria)、モラクセラ(Moraxella)、及びヘモフィルス(Haemophilus)種を含むいくつかの細菌性病原体の取込み及び破壊を伝えることができる。
【0091】
このように、様々な実施形態では、組成物及び方法は、CEACAM1、CEACAM3、CEACAM4、CEACAM5、CEACAM6、CEACAM7、CEACAM8、CEACAM16、CEACAM18、CEACAM19、CEACAM20、CEACAM21、PSG1、PSG2、PSG3、PSG4、PSG5、PSG6、PSG7、PSG8、PSG9、及びPSG11からなる群から選択されるCEAに対する免疫応答の惹起に関する。免疫応答は、方法及び組成物を使用して、CEAの1種以上を発現又は過剰発現させる細胞、例えばがん細胞に対して惹起させてもよい。一部の実施形態では、そのようながん細胞における1種以上のCEAの過剰発現は、非がん細胞に比べて5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100倍以上を超える。
【0092】
ある特定の実施形態では、本明細書で使用されるCEA抗原は、野生型CEA抗原、又はCEAのCAP1エピトープであるYLSGANLNL(配列番号39)に少なくとも変異を有する修飾CEA抗原である。変異は、保存的又は非保存的な、置換、付加、又は欠失であってもよい。ある特定の実施形態では、本明細書で使用されるCEA抗原は、変異CAP1エピトープであるYLSGADLNL(配列番号38)に記載のアミノ酸配列を有する。他の実施形態では、最初の複製欠損ベクター又はCEAを発現する複製欠損ベクターは、配列番号40の1057から3165位又は全長配列番号40など、配列番号40(修飾CEA抗原を発現するアデノウイルスベクターの、予測される配列)の任意の部分に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.9%、又は100%同一のヌクレオチド配列を有する。
【0093】
VII. 前立腺がん
本明細書の開示には、同じ又は別の複製欠損ベクター内に、PSAファミリー抗原(例えば、PSA及び/又はPSMA)をコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はMUC1などのムチンファミリー抗原をコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はBrachyuryをコードする1つ以上の核酸配列、及び/又はCEAをコードする1つ以上の核酸配列を含む、複製欠損ベクターを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、前立腺がんを治療する方法が含まれる。
【0094】
前立腺のがん腫としても公知の前立腺がんは、男性の生殖系の腺である前立腺におけるがんの発生である。ほとんどの前立腺がんは、ゆっくり成長し、しかし一部は比較的速く成長する。がん細胞は、前立腺から身体のその他の部分、特に骨及びリンパ節に拡がる可能性がある。最初は症状を引き起こさない可能性がある。後の段階になって、排尿困難、血尿、又は排尿時の骨盤、背部の痛みをもたらす可能性がある。良性前立腺肥大症として公知の疾患は、類似の症状をもたらし得る。その他の遅発性症状には、低レベルの赤血球に起因する疲労感を含めてもよい。
【0095】
初期前立腺がんには、通常、明確な症状がない。しかし時々、前立腺がんは、良性前立腺肥大症などの疾患の場合にしばしば類似する症状を引き起こす。これらには、頻繁な排尿、夜間頻尿(夜に増加する排尿)、定常的な尿の流れの開始及び維持の困難、血尿(尿中の血液)、及び排尿障害(痛みのある排尿)が含まれる。米国における1998 Patient Care Evaluationに基づく研究は、前立腺がんと診断された患者の約3分の1には、1つ以上のそのような症状があり、3分の2には症状がないことを見出した。
【0096】
前立腺がんは、前立腺が尿道前立腺部を取り囲むので、排尿障害を伴う。したがって前立腺内の変化は、排尿機能に直接影響を及ぼす。精管は精液を尿道前立腺部に蓄積し、前立腺自体からの分泌物は精液分に含まれるので、前立腺がんは、勃起に至ることができず又は射精時の痛みなど、性機能及び能力に関する問題も引き起こす可能性がある。
【0097】
ある特定の態様では、進行期前立腺がんは、身体のその他の部分に拡がる可能性があり、おそらくは追加の症状を引き起こす。最も一般的な症状は、しばしば椎骨(脊椎の骨)、骨盤、又は肋骨における骨痛である。大腿などのその他の骨へのがんの拡がりは、通常、骨の近位又は近傍部分への拡がりの結果である。脊椎内の前立腺がんは、脊髄を圧迫して、ちくちくする痛み、下肢の脱力、並びに尿及び便失禁を引き起こす可能性もある。
【0098】
前立腺がんは、いくつかの理由で免疫療法に理想的な候補である。前立腺内でのがんはゆっくり成長する性質であるので、プライム/ブースト又は多重免疫化の対策後、抗腫瘍免疫応答が発生するまで十分な時間がある。更に前立腺がんは、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、及び前立腺の6回膜貫通型上皮抗原(STEAP)を含む、数多くの腫瘍関連抗原(TAA)を発現する。これらのTAAの全ては、多数の潜在的な免疫学的抗腫瘍標的を提供し、標的に対する抗原の理想的な組合せはまだ完全に決定されていない。
【0099】
患者の血清中のPSAの存在は、悪性腫瘍を早期に検出可能にし、場合によっては腫瘍が放射線によって検出可能になる前に、検出可能にする。このことは、早期治療を容易にすることができる。前立腺TAAと反応する循環T細胞は既に検出されており、このことは、これらの抗原に対する自己寛容を克服できることを示唆している。前立腺は、必須ではない臓器と見なされ、したがって、特定の前立腺TAAに対して誘導された免疫学的応答は、急性のオフターゲットの毒性を引き起こさないものであるべきである。最も重要なのは、無症候性又は症状が最小限に抑えられた去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)のため、最初の前立腺がん特異的免疫療法、Sipuleucel-T(Provenge(登録商標)、Dendreon Corporation、Seattle、WA)が、2010年に米国食品医薬品局(FDA)によってライセンスが与えられたことである。Sipuleucel-Tは、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に結合されたPAPからなる組換え融合タンパク質(PA2024)でex vivoで活性化された、抗原提示樹状細胞を含む自家末梢血単核細胞からなる。第III相試験では、Sipuleucel-Tを投与されたCPRC患者は、死亡率の22%の低減を示した。治療用Sipuleucel-Tの成功はついに、その他の免疫療法前立腺がんワクチンに規制当局の承認を付与し市場に参入する道を開いた。
【0100】
ポックスウイルスPSA系ワクチン(Vaccinia-PSAプライム、Fowlpox-PSAブースト)を、ランダム化第2相試験で評価した。症状が最小限に抑えられた転移性去勢抵抗性前立腺がんの対象を、ワクチン療法対プラセボに対して2/1(85/41)にランダム化した。治療した対象は、長い全生存期間中央値(OS)26 vs. 18カ月を有した。この手法は、中心的なランダム化第3相試験で採用され、現在では完全に登録され(N=1200)、事象観察による結果が待たれる。
【0101】
更に、アデノウイルス(Adenoviral)-PSA手法が開発されている。PSAは、複製不可能初期世代Ad5[E1-]-系ベクタープラットフォームに組み込まれ、第1相試験で試験をした。対象の連続コホートは、Ad5-PSAの単一注射の用量を増加させた。ほとんどの対象は、検出可能な細胞媒介型抗-PSA応答18/32(67%)を発生させた。この手法は、1カ月の間隔で多数の用量(3回の注射)を使用する第2相試験で評価される。
【0102】
このように、PSAをベースにしたワクチン手法は、臨床活性の予備的証拠並びに抗-PSA対象細胞免疫性を誘発する能力を有する。改善されたベクター、例えば本明細書に記述される新しいEtubics Ad5[E1-,E2b-]-系ベクタープラットフォームは、この標的手法の臨床上の発展を容易にすべきである。非複製アデノウイルスベクターは、この手法の安全性を改善すべきであり、抗ウイルス免疫応答の中和を回避する能力は、持続ブーストによって免疫応答を最大限にすることが可能である。これらの特徴は、本明細書に記述されるAd5[E1-,E2b-]ベクターによって提供することができる。
【0103】
侵襲性の強い前立腺がんの標準治療では、手術(即ち、根治的前立腺摘除)、小線源療法(前立腺小線源療法)及び体外照射療法を含む放射線療法、高密度焦点式超音波治療法(HIFU)、化学療法、経口化学療法薬(テモゾロミド/TMZ)、凍結手術、ホルモン療法、又はいくつかの組合せが行われてもよい。
【0104】
ある特定の実施形態では、本明細書で使用されるAd5[E1-,E2b-]-PSA-及び/又は-PSMA-系ワクチン接種の手法は、任意の利用可能な前立腺がん療法、例えば上述のようなものと組み合せることができる。
【0105】
VIII. ベクター
ある特定の態様は、PSA、MUC1、Brachyury、PSMA、CEA、又はその組み合わせなどの標的抗原を1つ以上コードする1つ以上の核酸配列を含む発現構築物を細胞に移入することを含む。ある特定の実施形態において、発現構築物の細胞への移入は、ウイルスベクターを使用して達成され得る。ウイルスベクターは、その中でクローニングされている組み換え遺伝子構築物を発現するために十分なウイルス配列を含むそれらの構築物を含むために使用され得る。
【0106】
特定の実施形態において、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである。アデノウイルスは、線形の二本鎖ゲノムを含む正二十面体の非エンベロープカプシドによって特徴付けられるDNAウイルス科である。ヒトアデノウイルスの中で、新生物疾患に関連しているウイルスはなく、免疫応答性を有する個体において比較的軽度の自己限定性の疾患を引き起こすに過ぎない。
【0107】
アデノウイルスベクターは、ゲノムDNAへの低い組み込み能を有し得る。アデノウイルスベクターによって、非常に効率的な遺伝子移入が起こり得る。アデノウイルスベクターの追加の利点には、分裂していない細胞及び分裂している細胞の両方への遺伝子送達が効率的であり、大量に産生できることが挙げられる。
【0108】
組み込みウイルスとは対照的に、アデノウイルスDNAは、潜在的遺伝子毒性を生じることなく、エピソームとして複製することができることから、アデノウイルスが宿主細胞に感染しても、染色体の組み込みが起こらない場合がある。同様に、アデノウイルスベクターは、構造的に安定であり得て、広範な増幅の後でもゲノム再構成は検出されていない。アデノウイルスは、その中間的なサイズのゲノム、扱いやすさ、高い力価、広い標的細胞範囲、及び高い感染力のために、遺伝子移入ベクターとして使用するために特に適している。
【0109】
ウイルスによって発現される第一の遺伝子はE1遺伝子であり、これは野生型ゲノムに存在する他のAd5遺伝子プロモーターから高レベルの遺伝子発現を開始するように作用する。ウイルスDNA複製及び子孫ビリオンのアセンブリは、感染した細胞の核内で起こり、約36時間で全ライフサイクルが起こり、細胞1個あたりおよそ104個のビリオンを産生する。
【0110】
野生型Ad5ゲノムは、およそ36kbであり、それらがDNA複製の前又は後に発現されるか否かに応じて、初期及び後期ウイルス機能に分けられる遺伝子をコードする。Ad5に過去に感染した細胞の重感染によって、自身のゲノムの複製が終わるまで重感染ウイルスからの後期遺伝子発現の欠如が起こることが証明されていることから、初期/後期の描写はほぼ絶対である。理論により拘束されるものではないが、これは、複製されたゲノムが被包化されて存在するまで後期遺伝子発現(主にAd5カプシドタンパク質)を防止する、Ad5主要後期プロモーター(MLP)の複製依存的シス活性化による可能性がある。組成物及び方法は、進化した世代のAdベクター/ワクチンを開発するためにこれらの特徴を利用することができる。
【0111】
アデノウイルスベクターは、複製欠損であり得るか、又は少なくとも条件的に欠損であり得る。アデノウイルスは、42種の異なる公知の血清型又はサブグループA〜Fのいずれであってもよく、他の血清型又はサブグループも想定される。サブグループCのアデノウイルス5型を、複製欠損アデノウイルスベクターを得るために特定の実施形態において使用してもよい。これは、アデノウイルス5型が、豊富な生化学及び遺伝的情報が公知であるヒトアデノウイルスであり、ベクターとしてアデノウイルスを使用するほとんどの構築物に関して歴史的に使用されてきたためである。
【0112】
アデノウイルスの増殖及び操作は、当業者に公知であり、in vitro及びin vivoで広い宿主範囲を示す。CARドメインが変化したアデノウイルスなどの改変ウイルスも同様に使用してもよい。ウイルスのリポソーム封入などの送達を増強する又は免疫応答を回避する方法も同様に想定される。
【0113】
ベクターは、E2欠失型アデノウイルスベクター、又はより詳しくはE2b欠失型アデノウイルスベクターなどのアデノウイルスの遺伝子操作型を含み得る。本明細書において使用される用語「E2b欠失型」は、少なくとも1つのE2b遺伝子産物の発現及び/又は機能を防止するように変異させた特定のDNA配列を指す。このため、ある特定の実施形態において、「E2b欠失型」は、Adゲノムから欠失(除去)されている特定のDNA配列を指す。E2b欠失型又は「E2b領域内の欠失を含む」は、AdゲノムのE2b領域内の少なくとも1塩基対の欠失を指す。ある特定の実施形態において、1塩基対超が欠失しており、さらなる実施形態において、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、又は150塩基対が欠失している。別の実施形態において、欠失は、AdゲノムのE2b領域内の150、160、170、180、190、200、250、又は300塩基対超の欠失である。E2b欠失は、少なくとも1つのE2b遺伝子産物の発現及び/又は機能を防止する欠失であり得て、したがってE2b特異的タンパク質の一部をコードするエクソン内の欠失並びにプロモーター及びリーダー配列内の欠失を包含する。ある特定の実施形態において、E2b欠失は、E2b領域のDNAポリメラーゼ及び末端前タンパク質(preterminal protein)の1つ又は両方の発現及び/又は機能を防止する欠失である。さらなる実施形態において、「E2b欠失型」は、1つ以上のコードタンパク質が非機能的であるような、Adゲノムのこの領域のDNA配列における1つ以上の点突然変異を指す。そのような変異は、それによってアミノ酸配列が変化して、非機能的タンパク質が起こる、異なる残基に置換される残基を含む。
【0114】
本開示を読むことによって当業者によって理解されるように、Adゲノムの他の領域を欠失させることができる。このため、本明細書において使用されるAdゲノムの特定の領域において「欠失」させるのは、その領域によってコードされる少なくとも1つの遺伝子産物の発現及び/又は機能を防止するように変異させた特定のDNA配列を指す。ある特定の実施形態において、特定の領域において「欠失」させるのは、その領域によってコードされる発現及び/又は機能(例えば、DNAポリメラーゼのE2b機能又は末端前タンパク質機能)を防止するようにAdゲノムから欠失(除去)されている特定のDNA配列を指す。特定の領域内で「欠失された」又は「欠失を含む」は、Adゲノムのその領域内の少なくとも1塩基対の欠失を指す。
【0115】
このため、ある特定の実施形態において、1塩基対超が欠失され、さらなる実施形態において、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、又は150塩基対が特定の領域から欠失されている。別の実施形態において、欠失は、Adゲノムの特定の領域内の150、160、170、180、190、200、250、又は300塩基対超である。これらの欠失は、領域によってコードされる遺伝子産物の発現及び/又は機能が防止されるような欠失である。このため、欠失は、タンパク質の一部をコードするエクソン内の欠失、並びにプロモーター及びリーダー配列内の欠失を包含する。さらなる実施形態において、Adゲノムの特定の領域において「欠失される」のは、1つ以上のコードタンパク質が非機能的であるような、Adゲノムのこの領域のDNA配列における1つ以上の点突然変異を指す。そのような変異は、それによってアミノ酸配列が変化して、非機能的タンパク質が起こる異なる残基に置換されている残基を含む。
【0116】
ある特定の実施形態において、使用が企図されるアデノウイルスベクターは、AdゲノムのE2b領域において欠失を有し、任意選択でE1領域において欠失を有するE2b欠失型アデノウイルスベクターを含む。一部の例において、そのようなベクターは、Adゲノムの他のいかなる領域も欠失されていない。
【0117】
別の実施形態において、使用が企図されるアデノウイルスベクターは、AdゲノムのE2b領域において欠失を有し、任意選択でE1及びE3領域において欠失を有するE2b欠失型アデノウイルスベクターを含む。一部の例において、そのようなベクターは、他の領域が欠失されていない。
【0118】
さらなる実施形態において、使用が企図されるアデノウイルスベクターは、AdゲノムのE2b領域において欠失を有し、任意選択でE1、E3において欠失を有し、同様に任意選択でE4領域が部分的又は完全に除去されているアデノウイルスベクターを含む。一部の例において、そのようなベクターは、他の欠失を有しない。
【0119】
別の実施形態において、使用が企図されるアデノウイルスベクターは、AdゲノムのE2b領域において欠失を有し、任意選択でE1及び/又はE4領域において欠失を有するアデノウイルスベクターを含む。一部の例において、そのようなベクターは、他の欠失を含まない。
【0120】
追加の実施形態において、使用が企図されるアデノウイルスベクターは、AdゲノムのE2a、E2b及び/又はE4領域において欠失を有するアデノウイルスベクターを含む。一部の例において、そのようなベクターは、他の欠失を有しない。
【0121】
一実施形態において、本明細書において使用するアデノウイルスベクターは、E1及び/又はE2b領域のDNAポリメラーゼ機能が欠失しているベクターを含む。一部の例において、そのようなベクターは、他の欠失を有しない。
【0122】
さらなる実施形態において、本明細書において使用するアデノウイルスベクターは、E1及び/又はE2b領域の末端前タンパク質機能が欠失している。一部の例において、そのようなベクターは、他の欠失を有しない。
【0123】
別の実施形態において、本明細書において使用するアデノウイルスベクターは、E1、DNAポリメラーゼ、及び/又は末端前タンパク質機能が欠失している。一部の例において、そのようなベクターは、他の欠失を有しない。1つの特定の実施形態において、本明細書における使用が企図されるアデノウイルスベクターは、E2b領域及び/又はE1領域の少なくとも一部が欠失している。
【0124】
一部の例において、そのようなベクターは、「gutted」アデノウイルスベクターではない。この点において、ベクターは、E2b領域のDNAポリメラーゼ及び末端前タンパク質機能の両方が欠失していてもよい。追加の実施形態において、使用するアデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムのE1、E2b、及び/又は100K領域において欠失を有するアデノウイルスベクターを含む。ある特定の実施形態において、アデノウイルスベクターは、「gutted」アデノウイルスベクターであり得る。
【0125】
一実施形態において、本明細書において使用するアデノウイルスベクターは、E1、E2b、及び/又はプロテアーゼ機能が欠失しているベクターを含む。一部の例において、そのようなベクターは、他の欠失を有しない。
【0126】
さらなる実施形態において、本明細書において使用するアデノウイルスベクターは、E1及び/又はE2b領域が欠失しているが、ファイバー遺伝子が変異又は他の変化(例えば、Adの指向性を変化させる)によって改変されている。E3又はE4領域からの遺伝子の除去を、言及したアデノウイルスベクターのいずれかに付加してもよい。
【0127】
欠失型アデノウイルスベクターは、当技術分野で公知の組み換え技術を使用して生成することができる(例えば、Amalfitano, et al. J. Virol. 1998; 72:926-33、Hodges, et al. J Gene Med 2000; 2:250-59を参照されたい)。当業者によって認識されるように、ある特定の態様において使用するアデノウイルスベクターは、E2b遺伝子産物及び欠失されていてもよい必要な遺伝子のいずれかの産物を構成的に発現する適切なパッケージング細胞株を使用して高い力価で首尾よく増殖させることができる。ある特定の実施形態において、E1及びDNAポリメラーゼタンパク質を構成的に発現するのみならず、Ad末端前タンパク質を発現するHEK-293由来細胞を使用することができる。一実施形態において、E.C7細胞を使用して、アデノウイルスベクターの高力価ストックを首尾よく増殖させる(例えば、Amalfitano, et al. J. Virol. 1998; 72:926-33、Hodges, et al. J Gene Med 2000; 2:250-59を参照されたい)。
【0128】
自己増殖アデノウイルスベクターから重要な遺伝子を欠失させるために、標的遺伝子によってコードされるタンパク質を、HEK-293細胞又は類似の細胞においてE1タンパク質と一緒に発現させてもよい。したがって、構成的に同時発現された場合に非毒性であるタンパク質(又は誘導可能に発現される毒性タンパク質)のみを利用することができる。HEK-293細胞におけるE1及びE4遺伝子の同時発現は証明されている(構成的ではない、誘導型プロモーターを利用する)(Yeh, et al. J. Virol. 1996; 70:559、Wang et al. Gene Therapy 1995; 2:775、及びGorziglia, et al. J. Virol. 1996; 70:4173)。E1及びプロテインIX遺伝子(ビリオン構造タンパク質)は、同時発現されており(Caravokyri, et al. J. Virol. 1995; 69: 6627)、E1、E4、及びプロテインIX遺伝子の同時発現もまた記載されている(Krougliak, et al. Hum. Gene Ther. 1995; 6:1575)。E1及び100k遺伝子は、E1及びプロテアーゼ遺伝子と同様に、トランス相補性(transcomplementing)細胞株において首尾よく発現されている(Oualikene, et al. Hum Gene Ther 2000; 11:1341-53、Hodges, et al. J. Virol 2001; 75:5913-20)。
【0129】
高力価のE2b欠失型Ad粒子を増殖させるために使用するE1及びE2b遺伝子産物を同時発現する細胞株は、米国特許第6,063,622号に記載されている。E2b領域は、Adゲノム複製にとって絶対的に必要であるウイルス複製タンパク質をコードする(Doerfler, et al. Chromosoma 1992; 102:S39-S45)。有用な細胞株は、およそ140kDaのAd-DNAポリメラーゼ及び/又はおよそ90kDaの末端前タンパク質を構成的に発現する。特に、毒性を示すことなくE1、DNAポリメラーゼ、及び末端前タンパク質の高レベルの構成的な同時発現を有する細胞株(例えば、E.C7)は、複数回のワクチン接種において使用するAdの増殖に使用するために望ましい。これらの細胞株は、E1、DNAポリメラーゼ、及び末端前タンパク質に関して欠失しているアデノウイルスベクターの増殖を可能にする。
【0130】
組み換えアデノウイルスベクターは、当技術分野で利用可能な技術を使用して増殖させることができる。例えば、ある特定の実施形態において、E.C7細胞を含む組織培養プレートに、アデノウイルスベクターウイルス保存液を適切なMOI(例えば、5)で感染させ、37.0℃で40〜96時間インキュベートする。感染した細胞を回収して、10mM Tris-Cl(pH8.0)中に再懸濁させ、超音波処理し、ウイルスを、2ラウンドの塩化セシウム密度勾配遠心によって精製する。ある特定の技術において、ウイルスを含むバンドをSephadex CL-6Bカラム(Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ.)において脱塩し、スクロース又はグリセロールを添加し、アリコートを-80℃で保存する。一部の実施形態において、ウイルスベクターをA195などのその安定性を増強させるように設計した溶液中に入れる(Evans, et al. J Pharm Sci 2004; 93:2458-75)。ストックの力価を測定する(例えば、SDS溶解後のウイルスのアリコートの260nmでの吸光度の測定によって)。別の実施形態において、組み換えE2b欠失型アデノウイルスベクター全体を包含する、直線状又は環状のいずれかのプラスミドDNAを、E.C7又は類似の細胞にトランスフェクトさせ、ウイルス産生の証拠(例えば、細胞変性効果)が存在するまで37.0℃でインキュベートすることができる。次に、これらの細胞からの条件培地を使用して、より多くのE.C7又は類似の細胞を感染させ、産生されたウイルス量を増大させた後、精製することができる。精製は、2ラウンドの塩化セシウム密度勾配遠心又は選択的濾過によって達成することができる。ある特定の実施形態において、ウイルスは、市販の製品(例えば、Puresyn, Inc., Malvem, PAのAdenopure)又は注文品のクロマトグラフィーカラムを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製してもよい。
【0131】
ある特定の実施形態において、組み換えアデノウイルスベクターは、感染させる細胞が、ある特定の数のウイルスに確実に出会うように、十分量のウイルスを含み得る。このため、組み換えAdのストック、特に組み換えAdのRCAフリーのストックを提供してもよい。Adストックの調製及び分析は、当技術分野で利用可能な任意の方法を使用することができる。ウイルスストックは、主としてウイルスの遺伝子型、並びにそれらを調製するために使用するプロトコール及び細胞株に応じて、力価がかなり変動する。ウイルスストックは、少なくとも約106、107、又は108ウイルス粒子(VP)/mlの力価を有することができ、そのような多くのストックは、少なくとも約109、1010、1011、又は1012VP/mlなどのより高い力価を有し得る。
【0132】
ある特定の態様は、米国特許第6,063,622号、第6,451,596号、第6,057,158号、第6,083,750号、及び第8,298,549号に記載のベクターなどの、E2b欠失型アデノウイルスベクターの使用を企図する。E2b領域において欠失を有するベクターは、多くの場合、ウイルスタンパク質発現を損なうか、及び/又は複製コンピテントAd(RCA)を生成する頻度を減少させる。
【0133】
これらのE2b欠失型アデノウイルスベクターの増殖は、欠失したE2b遺伝子産物を発現する細胞株を利用して行うことができる。ある特定の態様はまた、そのようなパッケージング細胞株、例えばHEK-293細胞株に由来するE.C7(正式にはC-7と呼ばれる)を提供する。
【0134】
さらなる態様において、E2b遺伝子産物、DNAポリメラーゼ及び末端前タンパク質は、E.C7又は類似の細胞において、E1遺伝子産物と共に構成的に発現させることができる。Adゲノムからの遺伝子セグメントを産生細胞株に移入することは、直接的な利益を有する:(1)運搬能の増加、及び(2)典型的にRCAを生成するために2回以上の独立した組み換え事象が必要である、RCA生成能の減少。本明細書において使用されるE1、Ad DNAポリメラーゼ、及び/又は末端前タンパク質発現細胞株は、夾雑ヘルパーウイルスを必要とすることなく、13kbに近づく運搬能を有するアデノウイルスベクターの増殖を可能にすることができる。加えて、ウイルスのライフサイクルにとって極めて重要な遺伝子(例えば、E2b遺伝子)が欠失している場合、Adの複製又は他のウイルス遺伝子タンパク質の発現のさらなる妨害が起こる。これは、ウイルス感染細胞の免疫による認識を減少させ、外来トランスジーン発現の持続の延長を可能にすることができる。
【0135】
E1、DNAポリメラーゼ及び末端前タンパク質欠失型ベクターは、典型的にE1及びE2b領域からのそれぞれのタンパク質を発現することができない。さらに、それらはウイルス構造タンパク質のほとんどの発現の欠如を示し得る。例えば、Adの主要後期プロモーター(MLP)は、後期構造タンパク質L1からL5の転写の要因である。MLPは、Adゲノム複製前は最小の活性であるが、ウイルスゲノム複製が起こった後に限って、非常に毒性の強いAd後期遺伝子がMLPから主に転写及び翻訳される。後期遺伝子転写のこのシス依存的活性化は、ポリオーマ及びSV-40の増殖の場合などのDNAウイルス全般の特徴である。DNAポリメラーゼ及び末端前タンパク質は、Ad複製にとって重要である(E4又はプロテインIXタンパク質とは異なり)。それらの欠失は、アデノウイルスベクター後期遺伝子発現に対して極めて有害であり得、APCなどの細胞におけるその発現の毒性効果。E1欠失型アデノウイルスベクター
【0136】
ある特定の態様は、E1欠失型アデノウイルスベクターの使用を企図する。第一世代又はE1欠失型アデノウイルスベクターAd5[E1-]は、トランスジーンが遺伝子のE1領域のみを置換するように構築される。典型的に、野生型Ad5ゲノムの約90%がベクターにおいて保持されている。Ad5[E1-]ベクターは、複製能が減少しており、Ad5 E1遺伝子を発現しない細胞に感染した後に感染性ウイルスを産生することができない。組み換えAd5[E1-]ベクターは、ヒト細胞(典型的に293細胞)において増殖し、Ad5[E1-]ベクターの複製及びパッケージングを可能にする。Ad5[E1-]ベクターは、複数の正の属性を有し、最も重要な1つは、規模拡大が比較的容易であること及びcGMP産生である。現在、優に220を超えるヒト臨床試験が、Ad5[E1-]ベクターを利用しており、2000人超の対象がウイルスを皮下、筋肉内、又は静脈内に投与されている。
【0137】
さらに、Ad5ベクターは、組み込まれない。そのゲノムはエピソームとして留まる。一般的に宿主ゲノムに組み込まれないベクターでは、挿入変異誘発及び/又は生殖系列伝播のリスクは、たとえあったとしても極めて低い。通常のAd5[E1-]ベクターは、7kbに近づく運搬能を有する。
【0138】
ヒト及び動物での試験は、Ad5に対する既存の免疫が、Adベースワクチンの商業的使用に対する阻害因子であり得ることを証明している。ヒトの多くが、ヒトワクチンに関して最も広く使用されるサブタイプであるAd5に対する抗体を有し、調べたヒトの3分の2がAd5に対してリンパ増殖性の応答を有する。この既存の免疫は、典型的なAd5ワクチンを使用する免疫又は再免疫を阻害することができ、後にAd5ベクターを使用して第二の抗原に対するワクチンの免疫を排除し得る。既存の抗ベクター免疫の問題を克服することは、集中的な研究の主題であった。代替のヒト(非Ad5ベースの)Ad5サブタイプ又はAd5の非ヒト型さえ使用する研究が行われている。これらのアプローチは、初回免疫では成功するが、その後のワクチン接種は、新規Ad5サブタイプに対する免疫応答により問題となり得る。
【0139】
Ad5免疫の問題を回避するため、及び第一世代Ad5[E1-]ベクターが最適な免疫応答を誘導する限定的な有効性を改善するために、次世代Ad5ベクターベースのワクチンプラットフォームに関連するある特定の実施形態が提供される。次世代Ad5プラットフォームは、E2b領域において追加の欠失を有し、DNAポリメラーゼ及び末端前タンパク質遺伝子を除去する。Ad5[E1-,E2b-]プラットフォームは、可能性がある多くの遺伝子を含めることができるよう十分な増大したクローニング能を有する。Ad5[E1-,E2b-]ベクターは、Ad5[E1-]ベクターの7kbの運搬能と比較して、最大約12kbの遺伝子運搬能を有し、必要に応じて複数の遺伝子のための場所を提供する。一部の実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11kb超のインサートを、Ad5[E1-,E2b-]ベクターなどのAd5ベクターに導入する。
【0140】
E2b領域の欠失は、Ad5ベクターに有利な免疫特性を付与することができ、しばしばAdウイルスタンパク質に対する免疫応答を最小限にしながら、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの標的抗原に対して強力な免疫応答を誘発する。
【0141】
種々の実施形態において、Ad5[E1-,E2b-]ベクターは、Ad免疫の存在下であっても、強力なCMIを誘導するほか、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなど、ベクターが発現する標的抗原に対する抗体を誘導し得る。
【0142】
Ad5[E1-,E2b-]ベクターはまた、Ad5[E1-]ベクターと比較して有害反応、特に肝毒性及び組織損傷の発生が低減している。
【0143】
これらのAd5ベクターのある特定の態様は、Ad後期遺伝子の発現が、大きく低減されるというものである。例えば、カプシドファイバータンパク質の産生は、Ad5[E1-]ベクターに関してin vivoで検出され得るが、ファイバー発現は、Ad5[E1-,E2b-]ベクターワクチンでは除去されている。野生型Adに対する生得の免疫応答は複雑である。Ad5[E1-,E2b-]ベクターから欠失されたタンパク質は、一般的に重要な役割を果たす。具体的には、末端前タンパク質又はDNAポリメラーゼが欠失しているAd5[E1-,E2b-]ベクターは、Ad5[E1-]ベクターと比較して、注射後最初の24〜72時間の間の炎症の低減を示す。様々な実施形態において、Ad5遺伝子発現がないことにより、感染細胞は抗Ad活性によって認識されず、感染細胞はトランスジーンを長期間発現することが可能となり、それによって標的に対する免疫を発達させる。
【0144】
様々な実施形態は、Ad5[E1-,E2b-]ベクターが、樹状細胞を形質導入する能力を増加させること、Ad5[E1-,E2b-]ベクターウイルスタンパク質に対する炎症応答の低減を利用することによって、ワクチンにおける抗原特異的免疫応答を改善すること、及び結果として既存のAd免疫を回避することを企図する。
【0145】
一部の例において、この免疫誘導は、数カ月を要し得る。Ad5[E1-,E2b-]ベクターは、抗原特異的免疫応答の誘導に関してAd5[E1-]ベクターより安全であるのみならず、優れているように思われ、それらは、臨床応答を引き起こし得る腫瘍ワクチンを送達するためのプラットフォームとしてさらにより適切となる。
【0146】
ある特定の実施形態において、他のAd5システムにおいて見出される問題を克服し、過去にAd5に曝露されている人の免疫を可能にする、治療的腫瘍ワクチンを開発するためにAd5[E1-,E2b-]ベクターシステムを利用することによる方法及び組成物が提供される。
【0147】
E2b欠失型ベクターは、第一世代アデノウイルスベクターの5〜6kbの運搬能と比較して最大13kbの遺伝子運搬能を有することができ、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの任意の多様な標的抗原をコードする核酸配列のための場所を容易に提供する。
【0148】
E2b欠失型アデノウイルスベクターはまた、第一世代アデノウイルスベクターと比較して低減された有害反応を有する。E2b欠失型ベクターでは、ウイルス遺伝子の発現が低減されており、この特徴によってin vivoでの長期間のトランスジーンの発現がもたらされる。
【0149】
第一世代アデノウイルスベクターと比較すると、第二世代E2b欠失型アデノウイルスベクターのある特定の実施形態は、DNAポリメラーゼ遺伝子(pol)における追加の欠失及び末端前タンパク質(pTP)の欠失を含む。
【0150】
アデノウイルスベクターから発現されるAdタンパク質は重要な役割を果たすように思われる。具体的には、E2b欠失型ベクターにおける末端前タンパク質及びDNAポリメラーゼの欠失は、注射後最初の24〜72時間の間の炎症を低減させるように思われるが、第一世代アデノウイルスベクターは、この期間で炎症を刺激する。
【0151】
加えて、E2b欠失によって作製される追加の複製ブロックもまた、Ad後期遺伝子の発現の10,000倍の低減をもたらし、これはE1、E3欠失単独によって与えられる低減を優に超えていることが報告されている。E2b欠失型アデノウイルスベクターによって産生されるAdタンパク質レベルの減少は、Ad抗原に対する競合的で望ましくない免疫応答、Adで免疫された又は曝露された個体におけるプラットフォームの繰り返し使用を妨げる応答の可能性を有効に低減させる。
【0152】
第二世代E2b欠失型ベクターによる炎症応答の誘導が低減されることによって、抗原提示細胞(すなわち、樹状細胞)の感染の間に、ベクターがPSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの所望のワクチン抗原を発現する可能性が増加し、抗原が競合する可能性を減少させ、それによって、第一世代アデノウイルスベクターによる同一の試みと比較して所望の抗原に対するワクチンのより大きい免疫が得られる。
【0153】
E2b欠失型アデノウイルスベクターは、第一世代アデノウイルスベクターを使用する既に記載されたワクチン候補物より安全で、より有効でより汎用性が高い、改善されたAdベースのワクチン候補物を提供する。
【0154】
このため、第一世代のE1欠失型アデノウイルスサブタイプ5(Ad5)ベースのベクターは、ワクチンとして使用するための有望なプラットフォームであるが、天然に存在する又は誘導されたAd特異的中和抗体により、活性が妨げられ得る。
【0155】
理論により拘束されるものではないが、例えば減損した後期ウイルスタンパク質発現により、E1並びにDNAポリメラーゼ及び末端前タンパク質をコードするE2b領域が欠失しているAd5ベースのベクター(Ad5[E1-,E2b-])は、免疫学的クリアランスを回避し、Ad免疫宿主においてPSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどのコードされる抗原トランスジーンに対してより強力な免疫応答を誘導し得る。
【0156】
IX.異種核酸
いくつかの実施形態において、アデノウイルスベクターなどのベクターは、免疫応答を調節することができる、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせ、その融合物又はその断片などの1つ以上の腫瘍抗原をコードする異種核酸配列を含んでもよい。特定の態様において、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの1つ以上の腫瘍抗原をコードする異種核酸配列を含む、第二世代E2b欠失アデノウイルスベクターが提供され得る。
【0157】
かくして、本明細書にさらに記載される任意の供給源由来のPSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせをコードするポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドを含むベクター又はコンストラクト、及びそのようなベクター又は発現コンストラクトで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞が提供され得る。
【0158】
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において本質的に互換的に使用される。当業者によって同様に認識されるように、本明細書で使用されるポリヌクレオチドは、一本鎖(コード又はアンチセンス)又は二本鎖であってもよく、DNA (ゲノム、cDNA、又は合成)又はRNA分子であってもよい。RNA分子には、イントロンを含有し、DNA分子に1対1的に対応するHnRNA分子、及びイントロンを含有しないmRNA分子が含まれ得る。追加のコード又は非コード配列は、本明細書に開示されるポリヌクレオチド内に存在してもよいが、存在しなくてもよく、ポリヌクレオチドは、他の分子及び/又は支持物質に連結されてもよいが、連結されなくてもよい。単離ポリヌクレオチドは、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドが他のコード配列から実質的に離れていることを意味する。例えば、単離DNA分子は、本明細書で使用される場合、大きな染色体断片又は他の機能遺伝子若しくはポリペプチドコード領域など、大部分の関係がないコードDNAを含有しない。当然ながら、これは、最初に単離されたDNA分子を指し、実験室での組換えにより該セグメントに後で付加された遺伝子又はコード領域を排除しない。
【0159】
当業者に理解されるように、ポリヌクレオチドには、本明細書に記載される標的抗原、抗原、ペプチドの断片等を発現する、又は発現するように適合され得るゲノム配列、ゲノム外配列及びプラスミドコード配列、並びにより小さな工学操作された遺伝子セグメントが含まれ得る。そのようなセグメントは、天然に単離されてもよく、又は人の手によって合成的に改変されてもよい。
【0160】
ポリヌクレオチドは、ネイティブ配列(すなわち、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせ又はその一部などの1つ以上の腫瘍抗原をコードする内因性配列)を含んでもよく、又はそのような配列の変異体若しくは誘導体をコードする配列を含んでもよい。特定の実施形態において、本明細書に記載されたポリヌクレオチド配列は、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの1つ以上の突然変異型腫瘍抗原をコードする。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、ネイティブヌクレオチド配列又は変異体とは実質的に異なり得るが、類似のタンパク質抗原をコードし得る、特定の細胞型(すなわち、ヒト細胞株)における発現が最適化されている新規遺伝子配列を意味する。
【0161】
他の関連する実施形態では、本明細書に記述される方法(例えば、後述する標準的パラメータを使用したBLAST解析)を使用した場合に、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの腫瘍抗原を1つ以上コードする天然配列と実質的な同一性を有するポリヌクレオチド変異体、例えば、配列番号1に記載の天然ポリヌクレオチド配列と比較して少なくとも70、80、90、95、96、97、98、又は99%の配列同一性、又はこれらの数から得られる任意の範囲若しくは数字、特に、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの腫瘍抗原を1つ以上コードする天然ポリヌクレオチドに対する配列同一性で、少なくとも75%から最大99%又はそれより高い配列同一性を含むものが提供され得る。当業者は、コドン縮重、アミノ酸類似性、リーディングフレームの配置等を考慮することにより、2つのヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するためにこれらの値が適切に調整され得ることを認識する。
【0162】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド変異体は、特に、変異体ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのエピトープの免疫原性、又は異種標的タンパク質の免疫原性が、ネイティブポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドと比べて実質的に減少しないように、1つ以上の置換、付加、欠失及び/又は挿入を含有する。本明細書の他の部分に記載されているように、ポリヌクレオチド変異体は、抗原特異的抗血清及び/又はT細胞株若しくはクローンと反応する変異体ポリペプチド又はその断片(例えば、エピトープ)の性質が、ネイティブポリペプチドと比べて実質的に減少していない、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの1つ以上の腫瘍抗原の変異体、又はその断片(例えば、エピトープ)を好ましくはコードする。「変異体」という用語は、異種起源の相同遺伝子を包含することも理解されるべきである。
【0163】
特定の態様において、本明細書に記載される標的タンパク質抗原を含むポリペプチドをコードする、少なくとも約5〜1000以上までの連続するヌクレオチド、及びその間の全ての中間の長さを含む又はからなるポリヌクレオチドが提供され得る。この文脈における「中間の長さ」は、200〜500; 500〜1,000等からの全ての整数を含む、引用された値の間の任意の長さ、例えば16、17、18、19等; 21、22、23等; 30、31、32等; 50、51、52、53等; 100、101、102、103等; 150、151、152、153等を意味することが容易に理解される。本明細書に記載されるポリヌクレオチド配列は、エピトープ又は異種標的タンパク質などの本明細書に記載されるポリペプチドをコードする、ネイティブ配列には見出されない追加のヌクレオチドにより、一端又は両端で伸長され得る。この追加の配列は、開示された配列のどちらかの末端又は開示された配列の両端の1〜20以上のヌクレオチドからなってもよい。
【0164】
ポリヌクレオチド又はその断片は、コード配列自体の長さにかかわらず、その全長が大幅に異なり得るように、プロモーター、発現制御配列、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、マルチクローニング部位、他のコードセグメント等などの他のDNA配列と組み合わせることができる。それ故に、ほとんどどの長さの核酸断片が使用されてもよく、意図された組換えDNAプロトコルにおける調製及び使用の容易さにより全長が好ましくは制限されることが企図される。例えば、約1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10,000、約500、約200、約100、約50 塩基対長等(全ての中間の長さを含む)の全長を有する例示的なポリヌクレオチドセグメントが、特定の態様において有用であることが企図される。
【0165】
ポリヌクレオチド配列を比較する場合、2つの配列は、以下に記載されるように、最大の一致が得られるように整列されるとき2つの配列におけるヌクレオチドの配列が同じであるならば、「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウで配列を比較して、配列類似性の局所領域を同定及び比較することにより行われる。「比較ウィンドウ」は、本明細書で使用される場合、少なくとも約20の連続する位置、通常は30〜約75、40〜約50の連続する位置のセグメントを指し、この中で、2つの配列を最適に整列された後、配列が同じ数の連続する位置の参照配列と比較され得る。
【0166】
比較のための配列の最適なアライメントは、デフォルトパラメーターを用いて、バイオインフォマティクスソフトウェアのLasergeneスイートのMegalignプログラム(DNASTAR, Inc.、Madison、WI)を用いて実施することができる。このプログラムは、以下の参考文献に記載されたいくつかのアライメントスキームを具体化している:Dayhoff MO (1978) A model of evolutionary change in proteins - Matrices for detecting distant relationships. Dayhoff MO (編) Atlas of Protein Sequence and Structure、National Biomedical Research Foundation、Washington DC Vol. 5、Suppl. 3、345〜358頁; Hein J Unified Approach toAlignment and Phylogenes、626〜645頁(1990); Methods in Enzymology vol.183、Academic Press, Inc.、San Diego、CA; HigginsらPM CABIOS 1989; 5:151-53; Myers EWらCABIOS 1988; 4:11-17; Robinson ED Comb. Theor 1971; 11A 05; Saitou NらMol. Biol. Evol. 1987; 4:406-25; Sneath PHA及びSokal RR Numerical Taxonomy - the Principles and Practice of Numerical Taxonomy、Freeman Press、San Francisco、CA (1973); Wilbur WJらProc. Natl. Acad.、Sci. USA 1983 80:726-30)。
【0167】
或いは、比較のための配列の最適なアライメントは、SmithらAdd. APL. Math 1981; 2:482の局所同一性アルゴリズム、NeedlemanらMol. Biol. 1970 48:443の同一性アライメントアルゴリズム、Pearson及びLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988; 85:2444の類似性方法の検索、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装(Wisconsin Genetics Software Package、GeneticsコンピュータGroup (GCG)、575 Science Dr.、Madison、WIにおけるGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、及びTFASTA)、又は検査により実施されてもよい。
【0168】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの1つの例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、それぞれ、Altschulら、Nucl. Acids Res. 1977 25:3389-3402、及びAltschulらJ. MoI. Biol. 1990 215:403-10に記載されている。BLAST及びBLAST 2.0は、例えば本明細書に記載されたパラメーターを用いて使用されて、ポリヌクレオチドのパーセント配列同一性を決定することができる。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公的に入手可能である。1つの例示的な例において、累積スコアは、ヌクレオチド配列に関して、パラメーターM (一対のマッチ残基に対する報酬スコア;常に>0)及びN (ミスマッチ残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて計算され得る。累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ減少するとき; 1つ以上のマイナススコア残基アライメントの蓄積のために、累積スコアがゼロ以下になるとき;又はどちらかの配列の末端に達したとき、各方向におけるワードヒットの伸長は停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T及びXは、アライメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとしてワード長(W) 11、及び期待値(E) 10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffらProc. Natl. Acad. Sci. USA 1989; 89:10915参照)アライメント(B) 50、期待値(E) 10、M=5、N=-4、並びに両鎖の比較を使用する。
【0169】
ある特定の実施形態において、「配列同一性のパーセンテージ」は、少なくとも20の位置の比較ウィンドウで2つの最適に整列された配列を比較することにより決定され、比較ウィンドウの中のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントのための参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、20パーセント以下、通常は5〜15パーセント、又は10〜12パーセントの付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、同一の核酸塩基が両方の配列で生じる位置の数を決定してマッチした位置の数を得、マッチした位置の数を参照配列(すなわち、ウィンドウサイズ)中の位置の総数で除し、該結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。
【0170】
遺伝暗号の縮重の結果として、本明細書に記載される目的とする特定の抗原、又はその断片をコードする多くのヌクレオチド配列があることが当業者に理解されるだろう。これらのポリヌクレオチドのいくつかは、任意のネイティブ遺伝子のヌクレオチド配列と最小相同性を有する。それにもかかわらず、コドン使用頻度の違いのために異なるポリヌクレオチドが具体的に企図される。
【0171】
さらに、本明細書に提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子のアレルも企図され得る。アレルは、ヌクレオチドの欠失、付加、及び/又は置換などの1つ以上の変異の結果として変化する内因性遺伝子である。得られるmRNA及びタンパク質は、構造又は機能が変化していてもよいが、していなくてもよい。アレルは、標準的な手法(ハイブリダイゼーション、増幅、及び/又はデータベース配列比較など)を用いて同定することができる。
【0172】
それ故に、別の実施形態において、部位特異的変異誘発などの変異誘発アプローチが、本明細書に記載されるPSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの1つ以上の腫瘍抗原、又はその断片をコードする核酸配列の変異体及び/又は誘導体の調製に使用される。このアプローチによって、それらをコードする基礎となるポリヌクレオチドの変異誘発によりポリペプチド配列の特定の改変がなされ得る。これらの手法は、例えば、1つ以上のヌクレオチド配列変化をポリヌクレオチドに導入することにより、前述の検討事項の1つ以上を組み込む配列変異体を調製及びテストするための直接的アプローチを提供する。
【0173】
部位特異的変異誘発は、所望の変異のDNA配列をコードする特定のオリゴヌクレオチド配列、及び十分な数の隣接するヌクレオチドを使用して、横断される欠失接合部の両側で安定な二本鎖を形成するのに十分なサイズ及び配列複雑性のプライマー配列を提供することにより、変異体の作製を可能にする。変異は、ポリヌクレオチド自体の特性を改善し、変更し、低下させ、改変し、若しくはさもなければ変化させる、及び/又はコードされたポリペプチドの特性、活性、組成、安定性、若しくは一次配列を変更するために、選択されたポリヌクレオチド配列において使用され得る。
【0174】
該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドセグメント又は断片は、例えば、自動オリゴヌクレオチド合成機を用いて一般に行われているように、化学的手段により断片を直接合成して容易に調製することができる。また、断片は、米国特許第4,683,202号のPCR(商標)技術などの核酸再生技術の適用、組換え作製のための組換えベクターへの選択された配列の導入、及び分子生物学の当業者に一般的に知られている他の組換えDNA法(例えば、Current Protcols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、NY、NY参照)により得ることもできる。
【0175】
本明細書に記載される、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの所望の腫瘍抗原、そのポリペプチド若しくは断片、又は上記のいずれかを含む融合タンパク質を発現させるために、該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は機能的等価物が、当技術分野で知られている組換え法を用いて、本明細書に記載される複製欠損アデノウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入される。適当なベクターは、挿入されたコード配列の転写及び翻訳に必要なエレメント、並びに任意の所望のリンカーを含有する。
【0176】
PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの1つ以上の腫瘍抗原をコードする配列、並びに適当な転写及び翻訳制御エレメントを含有するこれらのベクターを構築するのに、当業者に利用可能な方法が使用され得る。これらの方法には、インビトロ組換えDNA法、合成法、及びインビボ遺伝子組換えが含まれる。そのような手法は、例えば、AmalfitanoらJ. Virol. 1998; 72:926-33; HodgesらJ Gene Med 2000; 2:250-259; Sambrook Jら(1989) Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Plainview、N.Y.、及びAusubel FMら(1989) Current Protcols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York. N.Yに記載されている。
【0177】
様々なベクター/宿主系が、ポリヌクレオチド配列を含有及び作製するのに利用され得る。これらには、組換えバクテリオファージ、プラスミド、若しくはコスミドDNAベクターで形質転換された細菌などの微生物;酵母ベクターで形質転換された酵母;ウイルスベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞系;ウイルスベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)若しくは細菌ベクター(例えば、Ti又はpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞系;又は動物細胞系が含まれるが、これらに限定されない。
【0178】
アデノウイルスベクターなどのベクター中に存在する「制御エレメント(control element)」又は「調節配列(regulatory sequence)」は、ベクターのそれらの非翻訳領域-エンハンサー、プロモーター、5'及び3'非翻訳領域-であり、宿主細胞タンパク質と相互作用して転写及び翻訳を実行する。そのようなエレメントは、その強度及び特異度が異なる可能性がある。利用されるベクター系及び宿主に応じて、構成性及び誘導性プロモーターを含む任意の数の適切な転写及び翻訳エレメントが使用され得る。例えば、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの1つ以上の腫瘍抗原をコードする配列が、後期プロモーター及び三連リーダー配列からなるAd転写/翻訳複合体にライゲートされてもよい。ウイルスゲノムの非必須E1又はE3領域への挿入が、感染宿主細胞において該ポリペプチドを発現することができる生ウイルスを得るのに使用されてもよい(Logan JらProc. Natl. Acad. Sci 1984; 87:3655-59)。さらに、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーなどの転写エンハンサーが、哺乳動物宿主細胞における発現を増加させるのに使用されてもよい。
【0179】
特定の開始シグナルも、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの1つ以上の腫瘍抗原をコードする配列のより効率的な翻訳を達成するのに使用され得る。そのようなシグナルには、ATG開始コドン及び隣接配列が含まれる。該ポリペプチドをコードする配列、その開始コドン、及び上流配列が適当な発現ベクターに挿入される場合、追加の転写又は翻訳制御シグナルは必要とされない可能性がある。しかし、コード配列、又はその一部のみが挿入される場合、ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルが提供されるべきである。さらに、開始コドンは、インサート全体の翻訳を確保するために正しいリーディングフレームにあるべきである。外因性翻訳エレメント及び開始コドンは、天然及び合成の両方の様々な起源であってもよい。発現の効率は、文献に記載されているものなど、使用される特定の細胞系に適したエンハンサーの包含により高めることができる(Scharf D.らResults Probl. Cell Differ. 1994; 20:125-62)。転写又は翻訳のどちらかに特異的な終止配列も、選択ポリペプチドをコードする配列の効率的な翻訳を達成するために組み込まれてもよい。
【0180】
産物に特異的なポリクローナル又はモノクローナル抗体のどちらかを用いる、ポリヌクレオチドコード産物(例えば、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの1つ以上の腫瘍抗原)の発現を検出及び測定するための様々なプロトコルが、当技術分野で知られている。例には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光活性化細胞選別(FACS)が含まれる。所定のポリペプチド上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を利用する2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが、いくつかの適用に好ましいが、競合的結合アッセイも使用され得る。これらの及び他のアッセイは、特に、Hampton Rら(1990; Serological Methods、a Laboratory Manual、APS Press、St Paul. Minn.)及びMaddox DEらJ. Exp. Med. 1983; 758:1211-16)に記載されている。
【0181】
特定の実施形態において、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの所望の腫瘍抗原の発現を増加させるエレメントが、本明細書に記載されたアデノウイルスベクターなどの発現コンストラクト又はベクターの核酸配列に組み込まれてもよい。そのようなエレメントは、内部リボソーム結合部位(IRES; WangらCurr. Top. Microbiol. Immunol 1995; 203:99; EhrenfeldらCurr. Top. Microbiol. Immunol. 1995; 203:65; ReesらBiotechniques 1996; 20:102; SugimotoらBiothechnology 1994; 2:694)を含む。IRESは、翻訳効率を向上させる。同様に、他の配列は発現ストックを増強することができる。いくつかの遺伝子に関して、特に5'末端の配列は転写及び/又は翻訳を阻害する。これらの配列は、通常は、ヘアピン構造を形成することができるパリンドロームである。送達される核酸中の任意のそのような配列は、一般的には欠失される。どの配列が発現に影響を与えているかを確認又は解明するために、転写体又は翻訳産物の発現レベルがアッセイされる。転写レベルは、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、RNaseプローブ保護等を含む任意の既知の方法によりアッセイすることができる。タンパク質レベルは、ELISAを含む任意の既知の方法によりアッセイすることができる。
【0182】
当業者によって認識されるように、異種核酸配列を含む本明細書に記載されたアデノウイルスベクターなどのベクターは、MaioneらProc Natl Acad Sci USA 2001; 98:5986-91; MaioneらHum Gene Ther 2000 1:859-68; SandigらProc Natl Acad Sci USA、2000; 97:1002-07; HaruiらGene Therapy 2004; 11:1617-26; ParksらProc Natl Acad Sci USA 1996; 93:13565-570; DelloRussoらProc Natl Acad Sci USA 2002; 99:12979-984; Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、NY、NY)に記載されているものなど、当技術分野で知られている組換え法を用いて生成することができる。
【0183】
X.医薬組成物
ある特定の態様では、免疫応答を発生させようとするPSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの腫瘍抗原を1つ以上コードする核酸配列を含む医薬組成物が提供され得る。
【0184】
例えば、本明細書に記載されたアデノウイルスベクターストックは、適当な緩衝液、生理学的に許容される担体、賦形剤等と組み合わせることができる。特定の実施形態において、適当な数のアデノウイルスベクター粒子が滅菌PBSなどの適当な緩衝液中で投与される。特定の状況において、本明細書に開示されたアデノウイルスベクター組成物を非経口、静脈内、筋肉内、又はさらには腹腔内に送達することが望ましい。
【0185】
特定の実施形態において、遊離塩基又は薬学的に許容される塩としての医薬組成物の溶液が、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製されてもよい。分散液も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、並びに油中で調製することができる。他の実施形態において、E2b欠失アデノウイルスベクターは、嚥下又は座薬により送達されるピル形態で送達されてもよい。
【0186】
注射用途に適した例示的な薬学的形態には、滅菌注射可能溶液又は分散液の即時調製のための滅菌水溶液又は分散液及び滅菌粉末が含まれる(例えば、米国特許第5,466,468号参照)。全ての場合において、該形態は滅菌されていなければならず、容易に注射できる程度に流動性でなければならない。該形態は製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌、カビ及び菌類などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。
【0187】
担体は、例えば、水、脂質、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物、及び/又は植物油を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合には必要とされる粒径の維持、及び/又は界面活性剤の使用により維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等により促進することができる。多くの場合において、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが適切であろう。注射用組成物の持続吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物において使用することによりもたらされ得る。
【0188】
1つの実施形態において、水溶液での非経口投与に関して、溶液は必要に応じて適切に緩衝化されてもよく、液体希釈剤は最初に十分な生理食塩水又はグルコースで等張にされてもよい。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用することができる滅菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に分かるであろう。例えば、1回投与量は、1mlの等張NaCl溶液に溶解し、及び1000mlの皮下注入液に添加する、又は提案された注入部位で注射することができる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、1035〜1038頁及び1570〜1580頁参照)。投与量のいくらかのばらつきは、治療される対象の状態に応じて必然的に生じるであろう。さらに、ヒト投与に関して調製は、FDA生物製剤基準局によって要求される無菌性、発熱性、及び全般的安全性、及び純度基準を当然ながら適切に満たすであろう。
【0189】
担体は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング剤、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイド等をさらに含むことができる。薬学的活性物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が、活性成分と不適合性である場合を除いて、治療組成物におけるこの使用が企図される。補足活性成分も組成物に組み込むことができる。語句「薬学的に許容される」は、ヒトに投与される場合、アレルギー反応又は類似の有害反応を生まない分子実体及び組成物を指す。
【0190】
本明細書に記載された治療組成物の投与経路及び頻度、並びに投与量は、個体によって、及び疾患によって異なり、標準的な手法を用いて容易に確立することができる。一般に、医薬組成物及びワクチンは、注射により(例えば、皮内、筋肉内、静脈内又は皮下)、鼻腔内に(例えば、吸引により)、ピル形態で(例えば、嚥下、膣又は直腸送達用の座薬) 投与され得る。特定の実施形態において、1〜3用量が6週間にわたって投与されてもよく、さらなるブースターワクチン接種がその後定期的に与えられてもよい。
【0191】
例えば、適切な用量は、上記されたように投与される場合、本明細書の他の部分に記載されているように標的抗原免疫応答を促進することができるアデノウイルスベクターの量である。特定の実施形態において、免疫応答は、基礎(すなわち、未治療)レベルを少なくとも10〜50%上回る。そのような応答は、患者における標的抗原抗体の測定によって、又はインビトロで標的抗原を発現する細胞を殺傷する能力がある細胞溶解性エフェクター細胞のワクチン依存性生成によって、又は当技術分野で公知である免疫応答をモニタリングするための他の方法によって、モニタリングすることができる。ある特定の態様において、標的抗原は、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせである。
【0192】
一般に、適当な投与量及び治療レジメンは、予防効果を提供するのに十分な量でアデノウイルスベクターを提供する。防御免疫応答は一般的に、免疫(ワクチン接種)の前及び後に患者から得られた試料を用いて行われ得る標準的な増殖アッセイ、細胞傷害性アッセイ、又はサイトカインアッセイを用いて評価することができる。
【0193】
特定の態様において、患者又は対象に投与される組成物の実際の投与量は、体重、状態の重症度、治療される疾患の種類、以前の又は同時の治療的介入、患者の特発性疾患、及び投与経路などの物理的及び生理的要因により決定することができる。投与に対して責任を負う開業医は、いずれにしても、組成物中の活性成分(複数可)の濃度及び個々の対象にとって適当な用量(複数可)を決定することになる。
【0194】
本明細書に記載された組成物及び方法の1つの利点は、特にAdに対して既存の免疫を有する個体において、同じアデノウイルスベクターで複数回ワクチン接種を行えることであるが、本明細書に記載されたアデノウイルスワクチンは、初回及び追加刺激レジメンの一環として投与することもできる。混合モダリティ初回刺激及びブースター接種スキームは、免疫応答の増強をもたらし得る。故に、1つの態様は、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの1つ以上の腫瘍抗原をコードする核酸配列を含むプラスミドベクターなどのプラスミドワクチンで、該プラスミドワクチンを少なくとも1回投与して対象を初回刺激し、所定の時間の長さを経過させ、次いで本明細書に記載されたアデノウイルスベクターを投与して追加刺激する方法である。
【0195】
複数の初回刺激、例えば、1〜3回が使用され得るが、より多い回数が使用されてもよい。初回刺激から追加刺激までの時間の長さは、典型的には約6カ月〜1年まで異なり得るが、他の時間枠が使用されてもよい。
【0196】
特定の実施形態において、医薬組成物は、本明細書でワクチンとして使用される発現コンストラクト若しくはベクター、関連脂質ナノ小胞、又は治療剤を充填されたエクソーム若しくはナノ小胞などの治療剤を、例えば少なくとも0.1%含むことができる。他の実施形態において、治療剤は、例えば、単位重量の約2%〜約75%、又は約25%〜約60%、及びその中の導き出せる任意の範囲を含むことができる。他の非限定的な例において、用量は、投与あたり約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重から約1000mg/kg/体重以上まで、及びその中の導き出せる任意の範囲を含むこともできる。本明細書に列挙された数字から導き出せる範囲の非限定的な例において、約5マイクログラム/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重〜約500ミリグラム/kg/体重等の範囲が投与されてもよい。
【0197】
医薬組成物の有効量は、意図された目標に基づき決定される。「単位用量」又は「投与量」という用語は、対象における使用に適した物理的に別の単位を指し、各単位は、投与、すなわち、適当な経路及び治療レジメンに関連して上記に論じた所望の応答を引き起こすように計算された所定量の医薬組成物を含有する。治療回数及び単位用量の両方に従って投与される量は、所望の保護又は効果によって決まる。
【0198】
医薬組成物の正確な量も開業医の判断によって決まり、各個体に固有である。用量に影響を与える要因には、患者の物理的及び臨床状態、投与経路、治療の意図された目標(例えば、症状の緩和対治癒)、並びに特定の治療物質の効力、安定性及び毒性が含まれる。
【0199】
特定の態様において、本明細書に記述されるワクチン接種レジメンを含む組成物は、任意の経路によって、単独で又は薬学的に許容される担体若しくは賦形剤と一緒に投与することができ、そのような投与は、単回及び複数回投与の両方で実行することができる。より具体的には、医薬組成物は、錠剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ、ハンドキャンディー、粉末、スプレー、水性懸濁液、注射可能な溶液、エリキシル、シロップ等の形態で様々な薬学的に許容される不活性担体と組み合わせることができる。そのような担体には、固体希釈剤又は充填剤、滅菌水性媒体、及び様々な非毒性有機溶媒等が含まれる。さらに、そのような経口医薬製剤は、適切に甘くされ及び/又は風味付けされてもよい(そのような目的のために一般に使用されるタイプの様々な薬剤を用いて)。全体を通して記載される組成物は、疾患、例えば、がんと診断された、それを必要とするヒト若しくは哺乳動物を治療するために、又は免疫応答を増強するために、薬剤に製剤化及び使用することができる。
【0200】
特定の実施形態において、本明細書に記載されたウイルスベクター又は組成物は、アジュバントなどの1つ以上の免疫刺激剤と合わせて投与されてもよい。免疫刺激剤は、抗原に対する免疫応答(抗体及び/又は細胞媒介性)を増強又は強化する本質的にあらゆる物質を指す。免疫刺激剤の1つのタイプは、アジュバントを含む。多くのアジュバントは、急速な異化から抗原を保護するように設計された水酸化アルミニウム又は鉱油などの物質、及びリピドA、百日咳菌(Bortadella pertussis)又は結核菌由来タンパク質などの免疫応答の刺激物質を含有する。特定のアジュバントは、例えば、Freund's Incomplete Adjuvant及びComplete Adjuvant (Difco Laboratories); Merck Adjuvant 65 (Merck and Company, Inc.) AS-2 (SmithKline Beecham);水酸化アルミニウムゲル(alum)又はリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム、鉄又は亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;カチオン又はアニオン誘導体化多糖;ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドA及びキルA (quil A)として市販されている。サイトカイン、例えば、GM-CSF、IFN-γ、TNFα、IL-2、IL-8、IL-12、IL-18、IL-7、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-13、IL-15、IL-16、IL-23、及び/又はIL-32、並びに増殖因子のような他のものも、アジュバントとして使用することができる。
【0201】
特定の実施形態内で、アジュバント組成物は、主にTh1型の免疫応答を誘導するものであってもよい。高レベルのTh1型サイトカイン(例えば、IFN-γ、TNFα、IL-2及びIL-12)は、投与された抗原に対して細胞性免疫応答の誘導を促す傾向がある。対照的に、高レベルのTh2型サイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、IL-6及びIL-10)は、液性免疫応答の誘導を促す傾向がある。本明細書に提供されるワクチンの適用後、患者は、Th1及び/又はTh2型応答を含む免疫応答を支持することができる。応答が主にTh1型である特定の実施形態内で、Th1型サイトカインのレベルは、Th2型サイトカインのレベルより大幅に上昇する。これらのサイトカインのレベルは、標準的なアッセイを用いて容易に評価することができる。故に、様々な実施形態は、複製欠損ウイルスベクター治療と同時に供給されるサイトカイン、例えば、IFN-γ、TNFα、IL-2、IL-8、IL-12、IL-18、IL-7、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-13及び/又はIL-15を用いて、標的抗原、例えばPSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせに対する免疫応答を惹起する療法に関する。いくつかの実施形態において、サイトカイン又はサイトカインをコードする核酸は、本明細書に記載された複製欠損ウイルスベクターと一緒に投与される。いくつかの実施形態において、サイトカイン投与は、ウイルスベクター投与の前又は後に行われる。いくつかの実施形態において、標的抗原、例えばPSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせに対する免疫応答を惹起することができる複製欠損ウイルスベクターは、サイトカインをコードする配列をさらに含む。
【0202】
主にTh1型応答を誘発するための特定の例示的なアジュバントには、例えば、3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドAなどのモノホスホリルリピドAの、アルミニウム塩と一緒の組合せが含まれる。MPL(登録商標)アジュバントが市販されている(例えば、米国特許第4,436,727号;第4,877,611号; 4,866,034号; 及び4,912,094号参照)。CpG含有オリゴヌクレオチド(CpGジヌクレオチドがメチル化されていない)も、主にTh1応答を誘導する(例えば、WO 96/02555、WO 99/33488、並びに米国特許第6,008,200号及び5,856,462号参照)。免疫刺激性DNA配列も使用することができる。
【0203】
いくつかの実施形態において使用するための別のアジュバントは、Quil A、若しくはQS21及びQS7 (Aquila Biopharmaceuticals Inc.)を含むその誘導体、エスチン;ジギトニン;又はカスミソウ(Gypsophila)若しくはキノア(Chenopodium quinoa)サポニンなどのサポニンを含む。他の製剤は、アジュバント組合せ、例えば、以下の群(QS21、QS7、Quil A、β-エスチン、又はジギトニンを含む)の少なくとも2つのうちの組合せにおいて1つ超のサポニンを含んでもよい。
【0204】
いくつかの実施形態において、組成物は、鼻腔内スプレー、吸入、及び/又は他のエアロゾル送達ビヒクルにより送達することができる。鼻腔内微粒子樹脂及びリゾホスファチジル-グリセロール化合物を用いた薬物送達が使用されてもよい(例えば、米国特許第5,725,871号参照)。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形態の例示的な経粘膜薬物送達が使用されてもよい(例えば、米国特許第5,780,045参照)。
【0205】
リポソーム、ナノカプセル、微粒子、脂質粒子、小胞等は、適切な宿主細胞/生物への本明細書に記載される組成物の導入に使用することができる。本明細書に記載される組成物は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、又はナノ粒子等にカプセル化されたいずれの送達用にも製剤化することができる。或いは、本明細書に記載される組成物は、そのような担体ビヒクルの表面に共有又は非共有結合されてもよい。リポソームは、遺伝子、様々な薬物、放射線治療剤、酵素、ウイルス、転写因子、アロステリックエフェクター等を、様々な培養細胞株及び動物に導入するのに効果的に使用することができる。さらに、リポソームの使用は、全身送達後の自己免疫応答又は容認できない毒性と関連するようには思われない。いくつかの実施形態において、リポソームは、水性媒体中に分散されたリン脂質から形成され、多重膜同心円状二層小胞(すなわち、多重膜小胞(MLV))を自発的に形成する。
【0206】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物又はベクターの薬学的に許容されるナノカプセル製剤が提供される。ナノカプセルは、一般的に、医薬組成物を安定及び再生可能な方法で封入することができる。細胞内ポリマー過負荷による副作用を避けるために、そのような超微粒子(およそ0.1μmの大きさの)が、インビボで分解され得るポリマーを用いて設計されてもよい。
【0207】
特定の態様において、IL-15を含む医薬組成物が、それを必要とする個体に、本明細書に提供された1つ以上の療法、特に、1つ以上の腫瘍抗原、例えばPSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせをコードする核酸配列を含む1つ以上のアデノウイルスベクターと組み合わせて投与されてもよい。
【0208】
インターロイキン15 (IL-15)は、IL-2と構造的類似性を有するサイトカインである。IL-2のように、IL-15は、IL-2/IL-15受容体ベータ鎖(CD122)及び共通ガンマ鎖(ガンマ-C、CD132)からなる複合体に結合し、これを通してシグナルを送る。IL-15は、ウイルスによる感染後、単核食細胞(及びいくつかの他の細胞)により分泌される。このサイトカインは、ナチュラルキラー細胞、すなわち、主な役割がウイルス感染細胞を殺傷することである自然免疫系の細胞の細胞増殖を誘導する。
【0209】
IL-15は、前臨床モデルにおいてCD8+ T細胞の抗腫瘍免疫を増強することができる。転移性黒色腫及び腎細胞がん(腎臓がん)患者においてIL-15の安全性、投薬、及び抗腫瘍効果を評価する第I相臨床試験は、国立衛生研究所で患者を登録し始めている。
【0210】
本明細書に開示されたIL-15は、この天然型の機能を維持するように改変されたIL-15の変異体を含むこともできる。
【0211】
IL-15は、マウスの第4染色体の34kb領域4q31、及び第8染色体の中心領域によりコードされた14〜15kDa糖タンパク質である。ヒトIL-15遺伝子は、9つのエクソン(1〜8及び4A)及び8つのイントロンを含み、このうちの4つ(エクソン5から8)が成熟タンパク質をコードする。同じタンパク質をコードするこの遺伝子の2つの選択的スプライシング転写変異体が報告されている。48個のアミノ酸の長いシグナルペプチド(IL-15 LSP)を有する最初に同定されたアイソフォームは、316bp 5'非翻訳領域(UTR)、486bpコード配列、及びC末端400bp 3'UTR領域からなる。他のアイソフォーム(IL-15 SSP)は、エクソン4A及び5によりコードされた21個のアミノ酸の短いシグナルペプチドを有する。両方のアイソフォームは、N末端のシグナル配列間に11個のアミノ酸を共有した。両方のアイソフォームは同じ成熟タンパク質を産生するが、細胞トラフィッキングの点で異なる。IL-15 LSPアイソフォームは、ゴルジ装置(GC)、初期エンドソーム、及び小胞体(ER)で同定された。IL-15 LSPアイソフォームは、特に樹状細胞で分泌され、膜結合される2つの形態で存在する。一方、IL-15 SSPアイソフォームは分泌されず、細胞質及び核に限局し、ここで細胞周期の制御において重要な役割を果たすようである。
【0212】
IL-15 mRNAの2つのアイソフォームは、マウスにおいて選択的スプライシングにより生成されることが示されている。別の3'スプライシング部位を含有する選択的エクソン5を有したアイソフォームは、高い翻訳効率を示し、この産物はN末端のシグナル配列に疎水性ドメインを欠く。これは、このアイソフォーム由来のタンパク質が細胞内に位置することを示唆している。選択的エクソン5の完全なスプライシングにより生成される、通常のエクソン5を有する他方のアイソフォームは、細胞外に放出され得る。
【0213】
IL-15 mRNAは、肥満細胞、がん細胞、又は線維芽細胞を含む多くの細胞及び組織で見出すことができるが、このサイトカインは、主に樹状細胞、単球、及びマクロファージによって成熟タンパク質として産生される。IL-15 mRNAの広範な出現とタンパク質の限られた産生の間のこの不一致は、IL-15 mRNAの翻訳を阻止することができる、ヒトでは12個及びマウスでは5個の上流開始コドンの存在により説明され得る。翻訳不活性なmRNAは細胞内に貯蔵され、特異的シグナル時に誘導され得る。IL-15の発現は、GM-CSFなどのサイトカイン、二本鎖mRNA、非メチル化CpGオリゴヌクレオチド、Toll様受容体(TLR)を通じたリポ多糖(LPS)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)により、又は単球ヘルペスウイルス、結核菌、及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の感染後に刺激され得る。
【0214】
XI.ナチュラルキラー(NK)細胞
特定の実施形態において、ネイティブ又は工学操作されたNK細胞が、本明細書に記載されるアデノウイルスベクターベースの組成物又は免疫療法と組合せて、それを必要とする対象に投与されるために提供され得る。
【0215】
免疫系は、免疫細胞の多様なファミリーの複雑に絡み合ったものであり、免疫細胞はそれぞれ、感染及び疾患からの防御においてそれ自身の異なる役割を有する。これらの免疫細胞の中には、身体防御の最前線としてのナチュラルキラー細胞、又はNK細胞がある。NK細胞は、他の支持分子による事前曝露又は活性化なしに、がん又はウイルス感染細胞などの異常な細胞を迅速に探索及び破壊する生得的能力を有する。T細胞などの適応免疫細胞とは対照的に、NK細胞は、第I相臨床試験で細胞ベースの「既製」治療として利用されており、がんに関する殺腫瘍能力を示している。
【0216】
1. aNK細胞
ネイティブNK細胞に加えて、病変細胞がNK細胞の殺傷機能を逃れるためにしばしば利用するキラー抑制性受容体(KIR)を発現しない、患者へ投与するためのNK細胞が提供され得る。この独特の活性化NK細胞、又はaNK細胞は、これらの抑制性受容体を欠くが、病変細胞の選択的標的化及び殺傷を可能にする多岐にわたる活性化受容体を保持する。aNK細胞はまた、より大きな搭載量のグランザイム及びパーフォリン含有顆粒も有し、これによりはるかに大きな搭載量の致死的酵素を複数の標的に送達できるようにする。
【0217】
2. taNK細胞
キメラ抗原受容体(CAR)技術は、現在開発中の最も新規ながん治療アプローチの1つである。CARは、特異的表面抗原を提示するがん細胞を、免疫エフェクター細胞が標的化できるようにするタンパク質である。taNK(標的活性化ナチュラルキラー(target-activated Natural Killer))は、aNK細胞が1つ以上のCARと工学操作されてがんで見出されるタンパク質を標的化し、次いで広範なスペクトラムのCARと一体化されるプラットフォームである。この戦略は、自己T細胞などの患者又はドナー源エフェクター細胞を用いる他のCARアプローチと比べて、特に拡張性、品質管理、及び一貫性の点で複数の利点を有する。
【0218】
がん細胞殺傷の多くは、エフェクター免疫細胞が抗体に結合すると、今度は抗体が標的がん細胞に結合され、これによりエフェクター細胞によるがんの殺傷を促進するADCC (抗体依存性T細胞媒介性細胞傷害)に依存している。NK細胞は、ADCCにとって体内の重要なエフェクター細胞であり、抗体を結合するための特殊化した受容体(CD16)を利用する。
【0219】
3.haNK細胞
研究は、おそらくヒト集団の20%のみがCD16の「高親和性」変異体(haNK細胞)を一律に発現し、該変異体は、「低親和性」CD16を有する患者と比べてより好ましい治療転帰と強く相関することを示している。さらに、多くのがん患者は、化学療法、疾患自体、又は他の要因のために免疫系がひどく弱まっている。
【0220】
特定の態様において、NK細胞は、高親和性CD16(haNK細胞)を発現するように改変される。かくして、haNK細胞は、がん細胞に対する広範囲の抗体の治療効果を強化することができる。
【0221】
XII.併用療法
随所に記述されるPSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの腫瘍抗原をコードする核酸配列を含む、アデノウイルスベクター系ワクチン接種を含む組成物は、薬学的医薬に製剤化され、疾患、例えばがんの診断を受けた、それを必要とするヒト又は哺乳動物を処置するために使用され得る。これらの医薬は、1つ以上のさらなるワクチンとともに、ヒト又は哺乳動物に、又は1つ以上の従来の療法、IL-15などのサイトカイン又はそのようなサイトカインをコードする核酸、工学操作されたナチュラルキラー細胞、又は本明細書に記載の免疫経路チェックポイント調節剤とともに共投与されてもよい。
【0222】
従来のがん治療は、化学又は放射線ベースの治療及び手術の群から選択される1つ以上の治療を含む。化学療法には、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトセシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロスウレア、ダクチノマイシン、ダウルノビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、ミトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビエン、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナム、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びメトトレキサート、又は前述の任意の類似体若しくは誘導体変異体が含まれる。
【0223】
ある特定の態様では、本明細書に記述される医薬は、1つ以上の利用可能な乳がん療法、例えば、手術、放射線療法、又はホルモン遮断療法剤、化学療法剤、若しくはモノクローナル抗体などの投薬といった従来のがん療法と組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記述される任意のワクチン(例えば、Ad5[E1-,E2b-]-HER3)を低用量化学療法剤又は低用量放射線と組み合わせてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、投与される化学療法剤の用量が臨床標準治療よりも低くなるように、本明細書に記述される任意のワクチン(例えば、Ad5[E1-,E2b-]-HER3)を化学療法剤と組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、化学療法剤はシクロホスファミドとすることができる。シクロホスファミドは、臨床標準治療の用量よりも低い用量で投与され得る。例えば、化学療法剤は、合計8週間にわたって2週間毎に、1〜5日目及び8〜12日目に1日2回(BID)50mg投与してよい。いくつかの実施形態では、投与される放射線の用量が臨床標準治療よりも低くなるように、本明細書に記述される任意のワクチン(例えば、Ad5[E1-,E2b-]-HER3)を放射線と組み合わせることができる。例えば、いくつかの実施形態では、8Gyにおける併用体幹部定位照射(SBRT)を、8日目、22日目、36日目、50日目に与えてもよい(2週間毎の計4回用量)。SBRTを使用した場合、実行可能な腫瘍部位のすべてに放射線を投与することができる。
【0224】
DNA損傷を引き起こし、広く使用されている放射線療法には、γ-線、X-線として一般に知られているもの、及び/又は放射性同位元素の腫瘍細胞への直接送達が含まれる。マイクロ波及びUV照射などのDNA損傷要因の他の形態も企図される。これらの要因の全ては、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製及び修復、並びに染色体の構築及び維持に広範囲の損傷をもたらす可能性が最も高い。X-線の線量範囲は、長期間(3〜4週)では日線量50〜200レントゲンから、単回線量2000〜6000レントゲンにわたる。放射性同位元素の線量範囲は大きく異なり、同位元素の半減期、放射される放射線の強さ及び種類、並びに新生物細胞による取り込みに依存する。
【0225】
細胞に適用される場合、「接触された」及び「曝露された」という用語は、治療コンストラクト及び化学療法剤又は放射線療法剤が、標的細胞に送達される又は標的細胞と直接並列して置かれるプロセスを記載するのに本明細書で使用される。細胞殺傷又は静止を達成するために、両方の薬剤は、細胞を殺傷する又は分裂を防ぐのに有効な合計量で細胞に送達される。
【0226】
がんを有する人の約60%は、予防的、診断又は病期診断的、根治的、及び緩和的手術を含む何らかの手術を受けることになる。根治的手術は、本明細書に記載された治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、及び/又は代替療法などの他の療法と合わせて使用され得るがん治療である。
【0227】
根治的手術は、がん組織の全て又は一部が物理的に除去、摘出、及び/又は破壊される切除を含む。腫瘍切除は、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍切除に加えて、手術による治療には、レーザー手術、凍結手術、電気手術、及び顕微鏡下手術(モース手術)が含まれる。本明細書に記載された治療方法は、表在がん、前がん、又は付随的な量の正常組織の除去と合わせて使用され得ることがさらに企図される。
【0228】
がん細胞、組織、又は腫瘍の一部又は全てを摘出すると、体内に空洞が形成される場合がある。治療は、追加の抗がん療法による該エリアの灌流、直接注射、又は局所適用により達成され得る。そのような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、若しくは14日毎、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20週毎、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、22、23、若しくは24カ月毎に繰り返されてもよい。これらの治療は、同様に様々な投与量となり得る。
【0229】
代替がん治療には、手術、化学療法及び放射線療法以外の、免疫療法、遺伝子療法、ホルモン療法又はそれらの組合せなどの任意のがん治療が含まれる。本方法を用いて予後不良と同定された対象は、従来の治療(複数可)単独に好ましい応答を得られない可能性があり、1つ以上の代替がん治療そのものを、又は1つ以上の従来の治療と組合せて処方又は投与され得る。
【0230】
免疫療法薬は、一般的に、がん細胞を標的化し、破壊するのに免疫エフェクター細胞及び分子の使用に依存する。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面のいくつかのマーカーに特異的な抗体であってもよい。抗体は単独で療法のエフェクターとして機能し得、又は他の細胞を動員して実際に細胞殺傷をもたらし得る。抗体は、薬物又は毒素(化学療法薬、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素等)にコンジュゲートされ、単に標的化剤として機能することもできる。或いは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接又は関節的に相互作用する表面分子を有するリンパ球であってもよい。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞及びNK細胞が含まれる。
【0231】
遺伝子療法は、DNA又はRNAを含むポリヌクレオチドを対象の細胞及び組織に挿入して、疾患を治療することである。アンチセンス療法も遺伝子療法の一形態である。治療ポリヌクレオチドは、最初のがん治療の前、後、又は同時に投与されてもよい。様々なタンパク質をコードするベクターの送達が、いくつかの実施形態において提供される。例えば、p53、p16及びC-CAMなどの外因性腫瘍抑制がん遺伝子の細胞発現は、過剰な細胞増殖を阻害する機能を発揮するであろう。
【0232】
治療の治療効果を改善するのに使用される追加の薬剤には、免疫調節剤、細胞表面受容体及びGAPジャンクションの上方制御に影響を与える薬剤、細胞分裂阻害剤及び分化剤、細胞接着阻害剤、又はアポトーシス誘導剤に対する過剰増殖細胞の感度を高める薬剤が含まれる。免疫調節薬剤には、腫瘍壊死因子;インターフェロンアルファ、ベータ、及びガンマ; IL-2及び他のサイトカイン; F42K及び他のサイトカイン類似体;又はMIP-1、MIP-1ベータ、MCP-1、RANTES、及び他のケモカインが含まれる。Fas/Fasリガンド、DR4又はDR5/TRAILなどの細胞表面受容体又はそのリガンドの上方制御は、過剰増殖細胞に対するオートクリン又はパラクリン作用の確立によりアポトーシス誘導能を強化することがさらに企図される。GAPジャンクションの数を高めることによる細胞間シグナル伝達の増加は、付近の過剰増殖細胞集団に対する抗過剰増殖作用を増大させるであろう。他の実施形態において、細胞分裂阻害剤又は分化剤が、治療の抗過剰増殖効果を改善するのに本明細書に記載された医薬組成物と組合せて使用されてもよい。細胞接着阻害剤は、本明細書に記載された医薬組成物の効果を改善するために企図される。細胞接着阻害剤の例は、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤及びロバスタチンである。アポトーシスに対する過剰増殖細胞の感度を高める他の薬剤、例えば抗体c225が、治療効果を改善するのに本明細書に記載された医薬組成物と組合せて使用され得ることがさらに企図される。
【0233】
ホルモン療法も、以前に記載された任意の他のがん治療と組み合わせて使用することができる。ホルモンの使用は、テストステロン若しくはエストロゲンなどの特定のホルモンのレベルを低下させる、又は該ホルモンの作用を遮断するために、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、又は子宮頸がんなどの特定のがんの治療において使用することができる。この治療は、治療選択肢として少なくとも1つの他のがん治療剤と組合せて、又は転移のリスクを低減するためにしばしば使用される。
【0234】
「化学療法剤」又は「化学療法化合物」及びこの文法的等価物は、本明細書で使用される場合、がんの治療において有用な化学化合物であってもよい。開示されたT細胞と組合せて使用することができるがん化学療法剤には、有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)が含まれるが、これらに限定されない。これらには、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン及びナベルビン(商標) (ビノレルビン、5'-ノルアンヒドロブラスチン(noranhydroblastine))が含まれる。さらに他の実施形態において、がん化学療法剤には、カンプトテシン化合物などのトポイソメラーゼI阻害剤が含まれる。本明細書で使用される場合、「カンプトテシン化合物」には、Camptosar(商標) (イリノテカンHCL)、Hycamtin(商標) (トポテカンHCL)、及びカンプトテシン由来の他の化合物、及びその類似体が含まれる。本明細書に開示された方法及び組成物において使用することができるがん化学療法剤の別のカテゴリーは、エトポシド、テニポシド及びミトポドジドなどのポドフィロトキシン誘導体である。
【0235】
特定の態様において、本明細書に記載された方法又は組成物は、腫瘍細胞中の遺伝物質をアルキル化するアルキル化剤として知られる他のがん化学療法剤の使用をさらに包含する。これらには、シスプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロルナファジン、及びダカルバジンが含まれるが、これらに限定されない。本開示は、化学治療剤としての代謝拮抗薬を包含する。これらのタイプの薬剤の例には、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、アザチオプリン、及びプロカルバジンが含まれる。
【0236】
本明細書に開示された方法及び組成物において使用され得るがん化学療法剤の追加のカテゴリーには、抗生物質が含まれる。例には、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシンC、及びダウノマイシンが含まれるが、これらに限定されない。これらの化合物には市販されている数多くのリポソーム製剤がある。特定の態様において、本明細書に記載された方法又は組成物は、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、イフォスファミド、及びミトキサントロンを含むがこれらに限定されない、他のがん化学療法剤の使用をさらに包含する。
【0237】
本明細書に開示されたアデノウイルスワクチンは、細胞傷害性/抗新生物剤及び抗血管新生剤を含む他の抗腫瘍剤と組み合わせて投与することができる。細胞傷害性/抗新生物剤は、がん細胞を攻撃及び殺傷する薬剤として定義することができる。いくつかの細胞傷害性/抗新生物剤は、腫瘍細胞中の遺伝物質をアルキル化するアルキル化剤、例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロルナファジン、及びダカルバジンであってもよい。他の細胞傷害性/抗新生物剤は、腫瘍細胞の代謝拮抗薬、例えば、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、アザチオプリン、及びプロカルバジンであってもよい。他の細胞傷害性/抗新生物剤は、抗生物質、例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシンC、及びダウノマイシンであってもよい。これらの化合物には市販されている数多くのリポソーム製剤がある。さらに他の細胞傷害性/抗新生物剤は、有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)であってもよい。これらには、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びエトポシドが含まれる。種々の細胞傷害性/抗新生物剤には、タキソール及びその誘導体、L-アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM-26、イフォスファミド、ミトキサントロン、及びビンデシンが含まれる。
【0238】
CAR T細胞、T細胞受容体改変T細胞、B細胞受容体改変細胞の集団を含む追加の製剤が、本明細書に記載された医薬組成物の投与と共に、前に、又は後に、対象に投与されてもよい。養子移入細胞の治療的に有効な集団が、本明細書に記載された方法が行われるときに対象に投与されてもよい。一般に、約1×104〜約1×1010のCAR T細胞、T細胞受容体改変細胞、又はB細胞受容体改変細胞を含む製剤が投与される。いくつかの場合において、製剤は、約1×105〜約1×109の改変細胞、約5×105〜約5×108の改変細胞、又は約1×106〜約1×107の改変細胞を含む。しかし、対象に投与される改変細胞の数は、がんの位置、発生源、同一性、程度及び重症度、治療される対象の年齢及び状態等に応じて、幅広い制限間で異なる。医師は、使用される適当な投与量を最終的に決定することになる。
【0239】
抗血管新生剤も使用することができる。開示された方法及び組成物における使用に適した抗血管新生剤には、ヒト化抗体及びキメラ抗体を含む抗VEGF抗体、抗VEGFアプタマー及びアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。血管新生の他の阻害剤には、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1 (α及びβを含む)、インターロイキン12、レチノイン酸、及びメタロプロテアーゼ1及び2の組織阻害剤が含まれる(TIMP-1及び2)。抗血管新生活性を有するトポイソメラーゼII阻害剤であるラゾキサンなどのトポイソメラーゼを含む小分子も、使用することができる。
【0240】
場合により、例えば、がんを処置する組成物、製剤、及び方法において、投与される組成物又は製剤の単位投与量は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mgであり得る。場合により、投与される組成物又は製剤の総量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90、又は100gであり得る。
【0241】
XIII.免疫学的融合パートナー抗原標的
本明細書に記載されたウイルスベクター又は組成物は、PSA及び/又はPSMA、などの標的抗原、又は本明細書に開示された任意の標的抗原である標的抗原の免疫原性を高めることができるタンパク質、又は「免疫学的融合パートナー」をコードする核酸配列をさらに含んでもよい。これに関して、そのようなタンパク質を含有するウイルスベクターによる免疫後に産生されるタンパク質は、目的とする標的抗原の免疫原性を高めるタンパク質に融合された、目的とする標的抗原を含む融合タンパク質となり得る。さらに、PSA及び/又はPSMAをコードするAd5 [E1-, E2b-]ベクター、及び免疫学的融合パートナーによる併用療法は、両方の治療的部分の組合せが、PSA及び/又はPSMAをコードするAd5 [E1-, E2b-]ベクター単独、又は免疫学的融合パートナー単独のどちらかより、免疫応答を相乗的に追加刺激するように作用するような、免疫応答の追加刺激をもたらすことができる。例えば、PSA及び/又はPSMAをコードするAd5 [E1-, E2b-]ベクター、及び免疫学的融合パートナーによる併用療法は、抗原特異的エフェクターCD4+及びCD8+ T細胞の刺激、感染細胞の殺傷に対するNK細胞応答の刺激、抗体依存性T細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性T細胞性抗体依存性細胞食作用(ADCP)機構を介した感染細胞の殺傷に対する好中球若しくは単球細胞応答の刺激、又はそれらの任意の組合せの相乗的増強をもたらすことができる。この相乗的追加刺激は、それを必要とする対象への投与後の生存転帰を著しく改善することができる。特定の実施形態において、PSA及び/又はPSMAをコードするAd5 [E1-, E2b-]ベクター及び免疫学的融合パートナーによる併用療法は、対照と比較して、アデノウイルスベクターを投与された対象において、約1.5〜20倍以上の標的抗原特異的CTL活性の増加を含む免疫応答の惹起をもたらすことができる。別の実施形態において、免疫応答の惹起は、PSA及び/又はPSMA抗原をコードするAd5 [E1-, E2b-]ベクター及び免疫学的融合パートナーを投与された対象における、対照と比較して約1.5〜20倍以上の標的特異的CTL活性の増加を含む。さらなる実施形態において、免疫応答の惹起は、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、インターロイキン-2 (IL-2)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、又は他のサイトカインなどのサイトカイン分泌を測定するELISpotアッセイにより測定される場合、対照と比較して約1.5〜20倍以上の標的抗原特異的細胞性免疫活性の増加を含む。さらなる実施形態において、免疫応答の惹起は、本明細書に記載されるPSA及び/又はPSMA抗原をコードするAd5 [E1-, E2b-]ベクター及び免疫学的融合パートナーを投与された対象における、適当な対照と比較して1.5〜5倍の標的特異的抗体産生の増加を含む。別の実施形態において、免疫応答の惹起は、アデノウイルスベクターを投与された対象における、対照と比較して約1.5〜20倍以上の標的特異的抗体産生の増加を含む。
【0242】
追加の例として、標的エピトープ抗原をコードするAd5 [E1-, E2b-]ベクター及び免疫学的融合パートナーによる併用療法は、抗原特異的エフェクターCD4+及びCD8+ T細胞の刺激、感染細胞の殺傷に対するNK細胞応答の刺激、抗体依存性T細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性T細胞食細胞作用(ADCP)機構介した感染細胞の殺傷に対する好中球若しくは単球細胞応答の刺激、又はそれらの任意の組合せの相乗的増強をもたらすことができる。この相乗的追加刺激は、それを必要とする対象への投与後の生存転帰を著しく改善することができる。特定の実施形態において、標的エピトープ抗原をコードするAd5 [E1-, E2b-]ベクター及び免疫学的融合パートナーによる併用療法は、対照と比較して、アデノウイルスベクターを投与された対象において、約1.5〜20倍以上の標的抗原特異的CTL活性の増加を含む免疫応答の惹起をもたらすことができる。別の実施形態において、免疫応答の惹起は、標的エピトープ抗原をコードするAd5 [E1-, E2b-]ベクター及び免疫学的融合パートナーを投与された対象における、対照と比較して約1.5〜20倍以上の標的特異的CTL活性の増加を含む。さらなる実施形態において、免疫応答の惹起は、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、インターロイキン-2 (IL-2)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、又は他のサイトカインなどのサイトカイン分泌を測定するELISpotアッセイにより測定される場合、対照と比較して約1.5〜20倍以上の標的抗原特異的細胞性免疫活性の増加を含む。さらなる実施形態において、免疫応答の惹起は、本明細書に記載されるアデノウイルスベクターを投与された対象における、適当な対照と比較して1.5〜5倍の標的特異的抗体産生の増加を含む。別の実施形態において、免疫応答の惹起は、アデノウイルスベクターを投与された対象における、対照と比較して約1.5〜20倍以上の標的特異的抗体産生の増加を含む。
【0243】
1つの実施形態において、そのような免疫学的融合パートナーは、結核菌由来Ra12断片など、マイコバクテリウム種に由来する。マイコバクテリウム種由来の免疫学的融合パートナーは、配列番号43〜配列番号51に記載された配列のいずれか1つであってもよい。Ra12組成物、並びに異種ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列の発現及び/又は免疫原性の増強においてRa12 組成物を使用するための方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,009,042号に記載されている。簡単には、Ra12は、結核菌MTB32A核酸の部分配列であるポリヌクレオチド領域を指す。MTB32Aは、結核菌の病原性及び非病原性株の遺伝子によりコードされた32kDaのセリンプロテアーゼである。MTB32Aのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列が記載されている(例えば、米国特許第7,009,042号; Skeikyら、Infection and Immun. 67:3998-4007 (1999)参照。これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。MTB32Aコード配列のC末端断片は、高レベルで発現することができ、精製プロセス全体を通して可溶性ポリペプチドとして残る。さらに、Ra12は、Ra12が融合される異種免疫原姓ポリペプチドの免疫原性を増強し得る。Ra12融合ポリペプチドは、MTB32Aのアミノ酸残基192〜323に対応する14kDa C末端断片を含むことができる。他のRa12ポリヌクレオチドは、一般的に、Ra12ポリペプチドの一部をコードする少なくとも15、30、60、100、200、300、又はそれ以上のヌクレオチドを含むことができる。Ra12ポリヌクレオチドは、ネイティブ配列(すなわち、Ra12 ポリペプチド又はその一部をコードする内因性配列)を含んでもよく、又はそのような配列の変異体を含んでもよい。Ra12ポリヌクレオチド変異体は、コードされた融合ポリペプチドの生物活性が、ネイティブRa12ポリペプチドを含む融合ポリペプチドと比べて実質的に減少しないように、1つ以上の置換、付加、欠失及び/又は挿入を含有してもよい。変異体は、ネイティブRa12 ポリペプチド又はその一部をコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも70%、80%、又は90%の同一性、又はそれ以上を有することができる。
【0244】
特定の態様において、免疫学的融合パートナーは、グラム陰性菌であるインフルエンザ菌B型の表面タンパク質、タンパク質Dに由来することができる。タンパク質D由来の免疫学的融合パートナーは、配列番号52に記載された配列であってもよい。いくつかの場合において、タンパク質D誘導体は、該タンパク質の最初の約三分の一(例えば、最初のN末端100〜110アミノ酸)を含む。タンパク質D誘導体は脂質化されてもよい。特定の実施形態内で、リポタンパク質D融合パートナーの最初の109残基が、追加の外因性T細胞エピトープを有するポリペプチドを提供するためにN末端に含まれる。該エピトープは、大腸菌における発現レベルを増加させることができ、発現エンハンサーとして機能することができる。脂質尾部は、抗原提示細胞への抗原の最適な提示を確保することができる。他の融合パートナーには、インフルエンザウイルス、NS1 (ヘマグルチニン)由来の非構造タンパク質が含まれ得る。典型的には、N末端の81個のアミノ酸が使用されるが、Tヘルパーエピトープを含む種々の断片が使用され得る。
【0245】
特定の態様において、免疫学的融合パートナーは、LYTAとして知られるタンパク質、又はその一部(特にC末端部分)であってもよい。LYTA由来の免疫学的融合パートナーは、配列番号53に記載された配列であってもよい。LYTAは、(LytA遺伝子によってコードされた)アミダーゼLYTAとして知られるN-アセチル-L-アラニンアミダーゼを合成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に由来する。LYTAは、ペプチドグリカン骨格中の特定の結合を特異的に分解する自己溶菌酵素である。LYTAタンパク質のC末端ドメインは、コリン又はDEAEなどのいくつかのコリン類似体への親和性に関与する。この特性は、融合タンパク質の発現に有用なプラスミドを発現する大腸菌C-LYTAの開発に利用されている。C-LYTA断片をアミノ末端に含有するハイブリッドタンパク質の精製が使用され得る。別の実施形態内で、LYTAの反復部分が融合ポリペプチドに組み込まれ得る。反復部分は、例えば、残基178で始まるC末端領域で見出すことができる。1つの特定の反復部分は、残基188〜305を組み込む。
【0246】
いくつかの実施形態において、標的抗原は、IFN-γ、TNFα、IL-2、IL-8、IL-12、IL-18、IL-7、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-23、IL-32、M-CSF (CSF-1)、IFN-α、IFN-β、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-11、IL-17A、IL-17F、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28A、B、IL-29、IL-30、IL-31、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36α、β、λ、IL-36Ra、IL-37、TSLP、LIF、OSM、LT-α、LT-β、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4-1BBL、Trail、OPG-L、APRIL、LIGHT、TWEAK、BAFF、TGF-β1、及びMIFの群から選択されるサイトカインを含む、本明細書で「免疫原性成分」とも呼ばれる免疫学的融合パートナーに融合される。標的抗原融合は、IFN-γ、TNFαIL-2、IL-8、IL-12、IL-18、IL-7、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-23、IL-32、M-CSF (CSF-1)、IFN-α、IFN-β、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-11、IL-17A、IL-17F、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28A、B、IL-29、IL-30、IL-31、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36α、β、λ、IL-36Ra、IL-37、TSLP、LIF、OSM、LT-α、LT-β、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4-1BBL、Trail、OPG-L、APRIL、LIGHT、TWEAK、BAFF、TGF-β1、及びMIFの1つ以上と実質的な同一性を有するタンパク質を作製することができる。標的抗原融合は、IFN-γ、TNFα、IL-2、IL-8、IL-12、IL-18、IL-7、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-23、IL-32、M-CSF (CSF-1)、IFN-α、IFN-β、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-11、IL-17A、IL-17F、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28A、B、IL-29、IL-30、IL-31、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36α、β、λ、IL-36Ra、IL-37、TSLP、LIF、OSM、LT-α、LT-β、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4-1BBL、Trail、OPG-L、APRIL、LIGHT、TWEAK、BAFF、TGF-β1、及びMIFの1つ以上と実質的な同一性を有するタンパク質をコードする核酸をコードすることができる。いくつかの実施形態において、標的抗原融合は、IFN-γ、TNFα、IL-2、IL-8、IL-12、IL-18、IL-7、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-23、IL-32、M-CSF (CSF-1)、IFN-α、IFN-β、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-11、IL-17A、IL-17F、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28A、B、IL-29、IL-30、IL-31、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36α、β、λ、IL-36Ra、IL-37、TSLP、LIF、OSM、LT-α、LT-β、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4-1BBL、Trail、OPG-L、APRIL、LIGHT、TWEAK、BAFF、TGF-β1、及びMIFの群から選択されるサイトカインを含む、本明細書で「免疫原性成分」とも呼ばれる1つ以上の免疫学的融合パートナーをさらに含む。IFN-γの配列は、配列番号54に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。TNFαの配列は、配列番号55に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-2の配列は、配列番号56に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-8の配列は、配列番号57に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-12の配列は、配列番号58に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-18の配列は、配列番号59に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-7の配列は、配列番号60に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-3の配列は、配列番号61に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-4の配列は、配列番号62に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-5の配列は、配列番号63に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-6の配列は、配列番号64に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-9の配列は、配列番号65に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-10の配列は、配列番号66に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-13の配列は、配列番号67に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-15の配列は、配列番号68に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-16の配列は、配列番号95に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-17の配列は、配列番号96に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-23の配列は、配列番号97に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。IL-32の配列は、配列番号98に記載される配列であってもよいが、これに限定されない。
【0247】
いくつかの実施形態において、標的抗原は、IFN-γ、TNFαIL-2、IL-8、IL-12、IL-18、IL-7、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-23、IL-32、M-CSF (CSF-1)、IFN-α、IFN-β、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-11、IL-17A、IL-17F、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28A、B、IL-29、IL-30、IL-31、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36α、β、λ、IL-36Ra、IL-37、TSLP、LIF、OSM、LT-α、LT-β、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4-1BBL、Trail、OPG-L、APRIL、LIGHT、TWEAK、BAFF、TGF-β1、及びMIFの群から選択されるイトカインを含む、本明細書で「免疫原性成分」とも呼ばれる免疫学的融合パートナーに融合又は連結される。いくつかの実施形態において、標的抗原は、IFN-γ、TNFαIL-2、IL-8、IL-12、IL-18、IL-7、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-23、IL-32、M-CSF (CSF-1)、IFN-α、IFN-β、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-11、IL-17A、IL-17F、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28A、B、IL-29、IL-30、IL-31、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36α、β、λ、IL-36Ra、IL-37、TSLP、LIF、OSM、LT-α、LT-β、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4-1BBL、Trail、OPG-L、APRIL、LIGHT、TWEAK、BAFF、TGF-β1、及びMIFの群から選択されるサイトカインを含む、本明細書で「免疫原性成分」とも呼ばれる免疫学的融合パートナーを有する細胞において共発現される。
【0248】
いくつかの実施形態において、標的抗原は、CpG ODN (非限定的な例示的配列は、配列番号69に示されている)、コレラ毒素(非限定的な例示的配列は、配列番号70に示されている)、細菌ADP-リボシル化外毒素由来の切断型Aサブユニットコード領域(非限定的な例示的配列は(非限定的な例示的配列は、配列番号71に示されている)に示されている、細菌ADP-リボシル化外毒素由来の切断型Bサブユニットコード領域(非限定的な例示的配列は、配列番号72に示されている)、Hp91 (非限定的な例示的配列は、配列番号73に示されている)、CCL20 (非限定的な例示的配列は、配列番号74に示されている)、CCL3 (非限定的な例示的配列は、配列番号75に示されている)、GM-CSF (非限定的な例示的配列は、配列番号76に示されている)、G-CSF (非限定的な例示的配列は、配列番号77に示されている)、LPSペプチド模倣体(非限定的な例示的配列は、配列番号78〜配列番号89に示されている)、志賀毒素(非限定的な例示的配列は、配列番号90に示されている)、ジフテリア毒素(非限定的な例示的配列は、配列番号91に示されている)、又はCRM197(非限定的な提示的配列は、配列番号94に示されている)を含む、免疫学的融合パートナーに融合又は連結される。
【0249】
いくつかの実施形態において、標的抗原は、IL-15スーパーアゴニストを含む免疫学的融合パートナーに融合又は連結される。インターロイキン15 (IL-15)は、ウイルス感染後に分泌される天然に存在する炎症性サイトカインである。分泌されたIL-15は、エフェクター免疫細胞上のIL-15の同族受容体を介したシグナル伝達により機能を実行することができ、故に、エフェクター免疫細胞活性の全体的な増強をもたらすことができる。
【0250】
細胞性免疫応答を刺激及び維持するIL-15の幅広い能力に基づき、IL-15は、特定のがんを治癒する可能性がある有望な免疫治療薬であると考えられている。しかし、IL-15の臨床開発における重大な制限には、標準的哺乳動物細胞発現系における低い産生収量、及び短い血清半減期が含まれ得る。さらに、遊離IL-15サイトカインよりむしろ、同じ細胞により共発現されるタンパク質を含むIL-15:IL-15Rα複合体が、IL-15βγc受容体を有する免疫エフェクター細胞の刺激に関与している可能性がある。
【0251】
これらの短所に取り組むために、IL-15Rβγcに結合する能力が増大し、生物活性が増強した新規IL-15スーパーアゴニスト変異体(IL-15N72D)が同定された。マウス又はヒトどちらかのIL-15Rα及びFc融合タンパク質(免疫グロブリンのFc領域)を等モル濃度のIL-15N72Dに加えると、IL-15N72D:IL-15Rα/Fcスーパーアゴニスト複合体が、IL-15依存的細胞増殖を支持する半有効濃度(EC50) (遊離IL-15サイトカインのそれより10倍超低かった)を示すほど、IL-15生物活性のさらなる増加をもたらすことができる。
【0252】
いくつかの実施形態において、IL-15スーパーアゴニストは、新規IL-15スーパーアゴニスト変異体(IL-15N72D)であってもよい。特定の実施形態において、マウス又はヒトどちらかのIL-15Rα及びFc融合タンパク質(免疫グロブリンのFc領域)を等モル濃度のIL-15N72Dに加えると、IL-15N72D:IL-15Rα/Fcスーパーアゴニスト複合体が、IL-15依存的細胞増殖を支持する半有効濃度(EC50) (遊離IL-15サイトカインのそれより10倍超低くなり得る)を示すほど、IL-15生物活性のさらなる増加をもたらすことができる。
【0253】
故に、いくつかの実施形態において、本開示は、IL-15依存的細胞増殖を支持するEC50が、遊離IL-15サイトカインのそれより2倍超低い、3倍超低い、4倍超低い、5倍超低い、6倍超低い、7倍超低い、8倍超低い、9倍超低い、10倍超低い、15倍超低い、20倍超低い、25倍超低い、30倍超低い、35倍超低い、40倍超低い、45倍超低い、50倍超低い、55倍超低い、60倍超低い、65倍超低い、70倍超低い、75倍超低い、80倍超低い、85倍超低い、90倍超低い、95倍超低い、又は100倍超低いIL-15N72D:IL-15Rα/Fcスーパーアゴニスト複合体を提供する。
【0254】
いくつかの実施形態において、IL-15スーパーアゴニストは、ALT-803としても知られる、2つのIL-15N72D分子及び二量体の可溶性IL-15Rα/Fc 融合タンパク質の生物学的に活性なタンパク質複合体である。ALT-803の組成物並びにALT-803を作製及び使用する方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0374790号に記載されている。N末端にいわゆる「スシ」ドメイン(Su)を含有する可溶性IL-15Rα断片は、高親和性サイトカイン結合に関与する構造エレメントの大部分を有し得ることが知られている。可溶性融合タンパク質は、ヒトIL-15RαSuドメイン(成熟ヒトIL-15Rαタンパク質のアミノ酸1〜65)を、Fcドメイン(232個のアミノ酸)を含有するヒトIgG1 CH2-CH3領域と連結させて生成することができる。このIL-15RαSu/IgG1 Fc融合タンパク質は、IgG1ドメインを介したジスルフィド結合による二量体形成、及び標準的なプロテインA親和性クロマトグラフィー方法を用いる精製の容易さという利点を有し得る。
【0255】
いくつかの実施形態において、ALT-803は、二量体IL-15Rαスシドメイン/ヒトIgG1 Fc融合タンパク質に対する高親和性と関連するヒトIL-15変異体の2つのタンパク質サブユニットからなる可溶性複合体を有してもよい。IL-15変異体は、ヘリックスC N72Dの72位でAsnからAspに置換している、成熟ヒトIL-15サイトカイン配列を含む114アミノ酸ポリペプチドである。ヒトIL-15Rスシドメイン/ヒトIgG1 Fc融合タンパク質は、Fcドメイン(232個のアミノ酸)を含有するヒトIgG1 CH2-CH3領域と連結されたIL-15Rサブユニットのスシドメイン(成熟ヒトIL-15Rαタンパク質のアミノ酸1〜65)を含む。N72D置換は別にして、タンパク質配列の全てはヒトである。該サブユニットのアミノ酸配列に基づき、2つのIL-15N72Dポリペプチド(例示的なIL-15N72D配列は配列番号92に示されている)及びジスルフィド連結ホモ二量体IL- l5RαSu/IgG1 Fcタンパク質(例示的なIL-15RαSu/Fcドメインは配列番号93に示されている)を含む複合体の計算された分子量は、92.4kDaである。いくつかの実施形態において、標的抗原及びALT-803をコードする組換えベクターは、標的抗原をコードするのに本明細書に記載されたいずれの配列も有することができ、ALT-803をコードするのに、配列番号92、配列番号93、配列番号93、及び配列番号93をいずれの順番でも有することができる。
【0256】
各IL-15N720ポリペプチドは、約12.8kDaの計算された分子量を有し、IL-15RαSu/IgG 1 Fc融合タンパク質は、約33.4kDaの計算された分子量を有する。IL-15N72D及びIL-15RαSu/IgG 1 Fcタンパク質は両方ともグリコシル化され得、サイズ排除クロマトグラフィーによる約114kDaのALT- 803の見かけの分子量をもたらす。ALT-803について決定された等電点(pI)は、約5.6〜6.5にわたり得る。故に、融合タンパク質はpH7で負に荷電され得る。
【0257】
PSA及び/又はPSMAをコードするAd5 [E1-, E2b-]ベクター及びALT-803による併用療法は、両方の治療的部分の組合せが、どちらかの療法単独より、免疫応答を相乗的に追加刺激するように作用するような、免疫応答の追加刺激をもたらすことができる。例えば、PSA及び/又はPSMA抗原をコードするAd5 [E1-, E2b-]ベクター及びALT-803による併用療法は、抗原特異的エフェクターCD4+及びCD8+ T細胞の刺激、感染細胞の殺傷に対するNK細胞応答の刺激、抗体依存性T細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、又は抗体依存性細胞食作用(ADCP)機構を介した感染細胞の殺傷に対する好中球若しくは単球細胞応答の刺激の相乗的増強をもたらすことができる。PSA及び/又はPSMA抗原をコードするAd5 [E1-, E2b-]ベクター及びALT-803による併用療法は、上記の応答のいずれか1つ、又は上記の応答の組合せを相乗的に追加刺激して、それを必要とする対象への投与後の生存転帰を著しく改善することができる。
【0258】
本明細書に記載されたいずれの免疫原性増強剤も、本明細書に記載された任意の組換えベクターを用いて、免疫原性増強剤及び標的抗原を同じ組換えベクターで発現させて、標的抗原に融合又は連結することができる。
【0259】
そのような免疫原性増強剤をコードする核酸配列は、配列番号43〜配列番号98のいずれか1つであってもよく、表1にまとめられている。
【0260】
【表1】
【0261】
いくつかの実施形態において、標的抗原及び免疫学的融合パートナーをについての核酸配列は、任意の核酸によって隔てられない。他の実施形態において、リンカーをコードする核酸配列が、本明細書に記載された任意の標的抗原をコードする核酸配列と、本明細書に記載された任意の免疫学的融合パートナーをコードする核酸配列の間に挿入されてもよい。故に、特定の実施形態において、標的抗原、リンカー、及び免疫学的融合パートナーを含有するウイルスベクターで免疫後に産生されたタンパク質は、目的とする標的抗原とこれに続くリンカーを含み、免疫学的融合パートナーで終わり、故にリンカーを介して目的とする標的抗原の免疫原性を高める免疫学的融合パートナーに標的抗原を連結する融合タンパク質となり得る。いくつかの実施形態において、リンカー核酸の配列は、約1〜約150核酸長、約5〜約100核酸長、又は約10〜約50核酸長であってもよい。いくつかの実施形態において、核酸配列は、1つ以上のアミノ酸残基をコードしてもよい。いくつかの実施形態において、リンカーのアミノ酸配列は、約1〜約50、又は約5〜約25アミノ酸残基長であってもよい。いくつかの実施形態において、リンカーの配列は10アミノ酸未満を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、ポリアラニンリンカー、ポリグリシンリンカー、又はアラニン及びグリシンの両方を有するリンカーであってもよい。
【0262】
そのようなリンカーをコードする核酸配列は、配列番号99〜配列番号113のいずれか1つであってもよく、表2にまとめられている。
【0263】
【表2】
【0264】
XIV.共刺激分子
PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの標的抗原を含有する組換えアデノウイルス系ベクターワクチンの使用に加えて、共刺激分子を当該ワクチンに組み込んで免疫原性を増大させることができる。免疫応答の開始は、APCによるネイティブT細胞の活性化のための少なくとも2つのシグナルを必要とする(DamleらJ Immunol 148:1985-92 (1992); GuinanらBlood 84:3261-82 (1994); HellstromらCancer Chemother Pharmacol 38:S40-44 (1996); HodgeらCancer Res 39:5800-07 (1999))。抗原特異的第一シグナルは、ペプチド/主要組織適合性複合体(MHC)を介してT細胞受容体(TCR)を通じて送達され、T細胞を細胞周期に入らせる。第二シグナル、又は共刺激物質シグナルは、サイトカイン産生及び増殖のために送達され得る。
【0265】
専門の抗原提示細胞(APC)の表面で通常見出される少なくとも3つの異なる分子、すなわち、B7-1 (CD80)、ICAM-1 (CD54)、及びLFA-3 (ヒトCD58)が、T細胞活性化のための第二のシグナルを提供できると報告されている(DamleらJ Immunol 148:1985-92 (1992); GuinanらBlood 84: 3261-82 (1994); WingrenらCrit Rev Immunol 15: 235-53 (1995); ParraらScand. J Immunol 38: 508-14 (1993); HellstromらAnn NY Acad Sci 690: 225-30 (1993); ParraらJ Immunol 158: 637-42 (1997); SperlingらJ Immunol 157: 3909 -17 (1996); DubeyらJ Immunol 155: 45-57 (1995); CavalloらEur J Immunol 25: 1154 -62 (1995))。
【0266】
これらの共刺激分子は、異なるT細胞リガンドを有する。B7-1はCD28及びCTLA-4分子と相互作用し、ICAM-1はCD11a/CD18 (LFA-1β2インテグリン)複合体と相互作用し、及びLFA-3はCD2 (LFA-2)分子と相互作用する。それ故に、好ましい実施形態において、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの標的抗原をコードする1つ以上の核酸を含有する組換えアデノウイルスベースのベクターワクチンと組み合わされる場合、特異的標的抗原に対する抗腫瘍免疫応答をさらに増大/増強するB7-1、ICAM-1、及びLFA-3をそれぞれ含有する組換えアデノウイルスベクターを有することが望ましいであろう。
【0267】
XII.免疫経路チェックポイント調節因子
ある特定の実施形態において、免疫経路チェックポイント阻害剤、すなわち免疫チェックポイント阻害剤は、本明細書に開示されたアデノウイルスベクターを含む組成物と組み合わされる。ある特定の実施形態において、患者は、本明細書に記載されたワクチン又は医薬組成物と合わせて、免疫経路チェックポイント阻害剤を受け取った。さらなる実施形態において、組成物は、1つ以上の免疫経路チェックポイント調節因子と投与される。活性化シグナルと阻害シグナルのバランスは、Tリンパ球と病変細胞の相互作用を制御し、T細胞受容体(TCR)による抗原認識を通じてT細胞応答が開始される。阻害経路及びシグナルは、免疫経路チェックポイントと呼ばれる。正常な状況では、免疫経路チェックポイントは、自己免疫の制御及び防止において重要な役割を果たし、また病原性感染への応答における組織損傷から保護する。
【0268】
特定の実施形態は、がん及び感染疾患の予防及び/又は治療のための、免疫経路チェックポイント阻害経路を調節するウイルスベクターベースのワクチン及び組成物を含む併用免疫療法を提供する。いくつかの実施形態において、調節は、遺伝子又はタンパク質の発現又は活性を増大させる。いくつかの実施形態において、調節は、遺伝子又はタンパク質の発現又は活性を低下させる。いくつかの実施形態において、調節は、遺伝子又はタンパク質のファミリーに影響を与える。
【0269】
一般に、免疫阻害経路は、リガンド-受容体相互作用により開始される。疾患において、疾患は、対象における免疫耐性を誘導する機構として免疫チェックポイント経路を利用できることが現在明らかになっている。
【0270】
所与の疾患による対象における免疫耐性又は免疫阻害経路の誘導は、1つ以上の免疫阻害経路を調節することが知られているsiRNAs、アンチセンス、小分子、模倣体、リガンドの組換え形態、受容体若しくはタンパク質、又は抗体(Ig融合タンパク質であってもよい)などの分子組成物により遮断することができる。例えば、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原 4 (CTLA4)及びプログラム細胞死タンパク質1 (PD1)などの免疫チェックポイントタンパク質の遮断薬での予備的臨床所見は、抗腫瘍免疫の増強への見込みを示している。
【0271】
病変細胞は、複数の阻害性リガンドを発現でき、疾患浸潤性リンパ球は、複数の抑制性受容体を発現できるため、免疫経路チェックポイントタンパク質の二重又は三重遮断は、抗疾患免疫を増強する可能性がある。本明細書に提供される併用免疫療法は、以下の免疫チェックポイントタンパク質、すなわち、PD1、PDL1、PDL2、CD28、CD80、CD86、CTLA4、B7RP1、ICOS、B7RPI、B7-H3 (CD276としても知られる)、B7-H4 (B7-S1、B7x及びVCTN1としても知られる)、BTLA (CD272としても知られる)、HVEM、KIR、TCR、LAG3 (CD223としても知られる)、CD137、CD137L、OX40、OX40L、CD27、CD70、CD40、CD40L、TIM3 (HAVcr2としても知られる)、GAL9、A2aR、及びアデノシンの1つ以上を標的化する免疫経路チェックポイント調節因子を含む1つ以上の組成物を含むことができる。
【0272】
いくつかの実施形態において、分子組成物はsiRNAsを含む。いくつかの実施形態において、分子組成物は小分子を含む。いくつかの実施形態において、分子組成物はリガンドの組換え形態を含む。いくつかの実施形態において、分子組成物は受容体の組換え形態を含む。いくつかの実施形態において、分子組成物は抗体を含む。いくつかの実施形態において、併用療法は、1つ超の分子組成物及び/又は分子組成物の1つ超のタイプを含む。当業者によって理解されるように、免疫チェックポイント阻害経路の今後発見されるタンパク質も、本開示によって包含されることが想定される。
【0273】
いくつかの実施形態において、併用免疫療法は、CTLA4の調節のための分子組成物を含む。いくつかの実施形態において、併用免疫療法は、PD1の調節のための分子組成物を含む。いくつかの実施形態において、併用免疫療法は、PDL1の調節のための分子組成物を含む。いくつかの実施形態において、併用免疫療法は、LAG3の調節のための分子組成物を含む。いくつかの実施形態において、併用免疫療法は、B7-H3の調節のための分子組成物を含む。いくつかの実施形態において、併用免疫療法は、B7-H4の調節のための分子組成物を含む。いくつかの実施形態において、併用免疫療法は、TIM3の調節のための分子組成物を含む。いくつかの実施形態において、調節は発現の増加又は増強である。他の実施形態において、調節は発現の欠如の減少である。
【0274】
2つの非限定的な例示的免疫経路チェックポイント阻害剤には、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4 (CTLA-4)及びプログラム細胞死タンパク質-1 (PD1)が含まれる。CTLA-4は、もっぱらT細胞上で発現することができ、ここでCTLA-4は初期のT細胞活性化を制御する。CTLA-4は、共刺激性T細胞受容体CD28と相互作用し、T細胞活性を阻害するシグナル伝達をもたらすことができる。TCR抗原認識が起こると、CD28シグナル伝達は、いくつかの場合において活性化T細胞をもたらすTCRシグナル伝達を増強し得、CTLA-4はCD28のシグナル伝達活性を阻害する。本開示は、がん及び感染疾患の予防及び/又は治療のための抗CTLA-4モノクローナル抗体と組み合わせた、本明細書に提供される免疫療法を提供する。本開示は、がん及び感染疾患の予防及び/又は治療のためのCTLA-4分子組成物と組み合わせた、本明細書に提供されるワクチン又は免疫療法を提供する。
【0275】
プログラム死細胞タンパク質リガンド-1 (PDL1)は、B7ファミリーのメンバーであり、様々な組織及び細胞型に分布している。PDL1は、T細胞活性化及びCTL媒介性溶解を阻害するPD1と相互作用することができる。様々なヒト腫瘍におけるPDL1の著しい発現が示されており、PDL1発現は、腫瘍が宿主の抗腫瘍免疫応答を逃れる重要な機構の1つである。プログラム死リガンド1 (PDL1)及びプログラム細胞死タンパク質-1 (PD1)は、免疫経路チェックポイントとして相互作用する。この相互作用は、抗腫瘍免疫応答の鈍化及びその後の腫瘍進行をもたらす主要な寛容機構であり得る。PD1は活性化T細胞に存在し、PD1の主要なリガンド、PDL1は、腫瘍細胞及び抗原提示細胞(APC)、並びにB細胞を含む他の細胞でしばしば発現される。HPV関連頭頚部がんをはじめとする様々なヒト腫瘍において、PSL1の顕著な発現が示されている。PDL1は、T細胞上のPD1と相互作用し、T細胞活性化及び細胞傷害性Tリンパ球(CTL)媒介性溶解を阻害する。本開示は、がん及び感染疾患の予防及び/又は治療のための抗PD1又は抗PDL1モノクローナル抗体と組み合わせた、本明細書に提供される免疫療法を提供する。
【0276】
特定の実施形態は、がん及び感染疾患の予防及び/又は治療のためのPD1又は抗PDL1分子組成物と組み合わせた、本明細書に提供される免疫療法を提供することができる。特定の実施形態は、がん及び感染疾患の予防及び/又は治療のための抗CTLA-4及び抗PD1モノクローナル抗体と組み合わせた、本明細書に提供される免疫療法を提供することができる。特定の実施形態は、抗CTLA-4及びPDL1モノクローナル抗体と組み合わせた、本明細書に提供される免疫療法を提供することができる。特定の実施形態は、がん及び感染疾患の治療のための、抗CTLA-4、抗PD1、抗PDL1モノクローナル抗体、又はそれらの組合せと組み合わせた、本明細書に提供されるワクチン又は免疫療法を提供することができる。
【0277】
免疫経路チェックポイント分子は、T細胞によって発現され得る。免疫経路チェックポイント分子は、免疫応答を下方調節又は阻害するための「ブレーカー」として効果的に機能することができる。免疫経路チェックポイント分子には、免疫細胞を直接阻害する、プログラム死1 (PDCD1又はCD279としても知られるPD1又はPD-1、受託番号NM_005018)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4 (CD152としても知られるCTLA-4、GenBank受託番号AF414120.1)、LAG3 (CD223としても知られる、受託番号NM_002286.5)、Tim3 (A型肝炎ウイルス細胞受容体2 (HAVCR2)としても知られる、GenBank受託番号JX049979.1)、B及びTリンパ球関連(BTLA) (CD272としても知られる、受託番号NM_181780.3)、BY55 (CD160としても知られる、GenBank受託番号CR541888.1)、TIGIT (IVSTM3としても知られる、受託番号NM_173799)、LAIR1 (CD305としても知られる、GenBank受託番号CR542051.1)、SIGLECIO (GenBank受託番号AY358337.1)、ナチュラルキラー細胞受容体2B4 (CD244としても知られる、受託番号NM_001166664.1)、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、CD96、CRTAM、SIGLEC7、SIGLEC9、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、FAS、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIFL、ILIORA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT1、FOXP3、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、GUCY1B3が含まれるが、これらに限定されない。例えば、PD1は、アデノウイルスベクターベースの組成物と組み合わされてそれを必要とする患者を治療することができる。
【0278】
標的化され得る追加の免疫経路チェックポイントは、アデノシンA2a受容体(ADORA)、CD276、Vセットドメイン含有T細胞活性化阻害剤1 (VTCN1)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1 (IDO1)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体、3ドメイン、長い細胞質尾部1 (KIR3DL1)、T細胞活性化(VISTA)のVドメイン免疫グロブリン抑制因子、サイトカイン誘導性SH2含有タンパク質(CISH)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1 (HPRT)、アデノ随伴ウイルス組み込み部位1 (AAVS1)、又はケモカイン(C-Cモチーフ)受容体5 (遺伝子/偽遺伝子) (CCR5)、又はそれらの任意の組合せであり得る。
【0279】
表3は、網羅するものではなく、本明細書に記載されるアデノウイルスベクターベースの組成物の効率を改善するために不活性化され得る、例示的な免疫経路チェックポイント遺伝子を示す。免疫経路チェックポイント遺伝子は、表3に列挙されたそのような遺伝子、並びに共抑制性受容体機能、細胞死、サイトカインシグナル伝達、アルギニントリプトファン飢餓、TCRシグナル伝達、誘導性T-reg抑制、転写因子制御性枯渇又はアネルギー(transcription factors controlling exhaustion anergy)、及び低酸素媒介性寛容に関与する他の遺伝子から選択することができる。
【0280】
【表3】
【0281】
アデノウイルスベースの組成物及び免疫経路チェックポイント調節因子の組合せは、どちらかの薬剤単独と比較して、治療患者における疾患の感染、進行、又は症状の低減をもたらし得る。別の実施形態において、アデノウイルスベースの組成物及び免疫経路チェックポイント調節因子の組合せは、どちらかの薬剤単独と比較して、治療患者の全生存の改善をもたらし得る。いくつかの場合において、アデノウイルスベースの組成物及び免疫経路チェックポイント調節因子の組合せは、どちらかの薬剤単独と比較して、治療患者における疾患特異的T細胞応答の頻度又は強度を増加させ得る。
【0282】
特定の実施形態は、アデノウイルスベクターベースの組成物の性能を改善するための免疫経路チェックポイント阻害の使用も提供することができる。特定の免疫経路チェックポイント阻害剤は、アデノウイルスベクターベースの組成物の時間で投与することができる。特定の免疫経路チェックポイント阻害剤は、アデノウイルスベクターベースの組成物の投与後に投与することもできる。免疫経路チェックポイント阻害は、アデノウイルスワクチン投与と同時に生じてもよい。免疫経路チェックポイント阻害は、ワクチン接種の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、又は60分後に生じてもよい。免疫経路チェックポイント阻害はまた、アデノウイルスベクターベースの組成物の投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24時間後に生じてもよい。いくつかの場合において、免疫阻害は、ワクチン接種の1、2、3、4、5、6、又は7日後に生じてもよい。免疫経路チェックポイント阻害は、アデノウイルスベクターベースの組成物の投与前又は投与後いつでも生じてもよい。
【0283】
別の態様において、抗原及び免疫経路チェックポイント調節因子をコードする1つ以上の核酸を含むワクチンを含む方法が提供される。例えば、対象の細胞における免疫経路チェックポイントタンパク質、例えばPD1又はPDL1、及びこの天然の結合パートナーの下方制御から恩恵を受けるであろう状態を有する対象を治療する方法が提供される。
【0284】
免疫経路チェックポイント調節因子は、任意の抗原をコードする1つ以上の核酸を含むアデノウイルスベクターベースの組成物と組み合わせることができる。例えば、抗原は、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの腫瘍抗原、又は本明細書に記載された任意の抗原であってもよい。
【0285】
免疫経路チェックポイント調節因子は、ワクチンなどのアデノウイルスベクターベースの組成物と組み合わされる場合、相乗効果を生み得る。免疫経路チェックポイント調節因子は、アデノウイルスベクターベースの組成物と組み合わされる場合、有益な効果も生み得る。
【0286】
XVI.がん
本明細書に記述されるアデノウイルスベクターを含む組成物は、過形成、異形成、新形成、前がん、及びがんの間、又は原発腫瘍及び転移腫瘍の間など、諸段階の疾患を評価又は処置するために使用され得ることが明確に想定される。
【0287】
本明細書で使用される場合、「新生物細胞」及び「異常増殖」という用語は互換的に使用することができ、及び相対的に自律的増殖を示し、その結果、細胞増殖制御の著しい喪失を特徴とする異常な増殖表現型を示す細胞を指す。新生物細胞は、悪性又は良性であり得る。特定の態様において、異常増殖は異形成及びがんの両方を含む。新生物は、良性、前がん性(上皮内がん又は異形成)、又は悪性(がん)であり得る。新生物細胞は、しこり(すなわち、腫瘍)を形成する場合又はしない場合がある。
【0288】
「異形成」という用語は、初期の上皮内新生物の場合のように、細胞の異常性が発生組織に限定される場合に使用され得る。異形成は、初期の新生物プロセスを示し得る。「がん」という用語は、未制御細胞増殖を伴う様々な疾患の広範な群を含む悪性新生物を指し得る。
【0289】
転移、又は転移性疾患は、1つの臓器又は部分から別の非隣接臓器又は部分へのがんの広がりを指し得る。故に生じた疾患の新たな出現が転移と呼ばれ得る。
【0290】
開示される方法及び組成物によって評価又は処置され得るがんとしては、特に膵管腺がんを含む膵臓のがん細胞が挙げられるが、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、上咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃(stomach)、精巣、舌、又は子宮の細胞及びがん細胞を挙げることもできる。
【0291】
さらに、がんは、具体的に以下の組織型であってもよいが、これらに限定されない:新生物、悪性;がん腫;がん腫、未分化;巨細胞がん及び紡錘体細胞がん;小細胞がん;乳頭がん;扁平上皮がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;毛質性上皮がん;移行上皮がん;乳頭状移行上皮がん;腺がん;ガストリノーマ、悪性;胆管がん;肝細胞がん;混合型肝細胞がん及び胆管がん;索状腺がん;腺様嚢胞がん;腺腫性ポリープ内腺がん;腺がん、家族性結腸ポリポーシス;固体がん;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞腺がん;乳頭状腺がん;色素嫌性がん;好酸性がん;好酸性腺がん;好塩基性がん;透明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞性腺がん;乳頭状及び濾胞性腺がん;非被包性硬化性がん;副腎皮質がん;類内膜がん;皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳垢腺がん;粘液性類表皮がん;嚢胞腺がん;乳頭状嚢胞腺がん;乳頭状漿液嚢胞腺がん;粘液性嚢胞腺腺がん;粘液性腺がん;印環細胞がん;浸潤性腺管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;パジェット病、乳腺;腺房細胞がん;腺扁平上皮がん;扁平上皮化生を伴う腺がん;胸腺腫、悪性;卵巣間質性腫瘍、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;男性ホルモン産生細胞腫、悪性;セルトーリ細胞がん;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;パラガングリオーマ、悪性;乳房外パラガングリオーマ、悪性;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑の悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質性肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;がん肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胎生期がん;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛がん;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽細胞腫;乏突起神経膠腫;乏突起神経膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞がん、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉腫;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;及び有毛細胞白血病。
【0292】
XVII. 処置の方法
本明細書に記述される複製欠損アデノウイルスベクターは、本明細書に記述される1つ以上の標的抗原に対する免疫応答を発生させるために、いくつかのワクチン設定で使用することができる。いくつかの実施形態では、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの任意の標的抗原に対する免疫応答を発生させる方法が提供される。
【0293】
アデノウイルスベクターは、Adに対して既存の免疫を有する対象において免疫応答を発生させるために使用され得、かつ、アデノウイルスベクターを使用した複数ラウンドの免疫化を含むワクチン接種レジメン、すなわち前世代のアデノウイルスベクターを使用して行うことができないレジメンにおいて使用され得るという予期せぬ所見のために、特に重要である。
【0294】
一般に、免疫応答を発生させることは、液性応答及び/又は細胞性応答の誘導を含む。目的の標的抗原に対する免疫応答を増大させることが望ましい場合がある。
【0295】
免疫応答を発生させることは、ある特定の免疫系細胞の活性及び/若しくは数の低下、又はある特定のサイトカイン若しくは他のエフェクター分子のレベル及び/若しくは活性の低下を含み得る。免疫応答(例えば、細胞数、サイトカイン発現、細胞活性)の変化を検出するための様々な方法が利用可能であり、いくつかの態様において有用である。この文脈で有用である例示的な方法としては、細胞内サイトカイン染色(ICS)、ELISpot、増殖アッセイ、クロム放出アッセイ若しくは同等のアッセイを含む細胞傷害性T細胞アッセイ、及び任意の数のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用した遺伝子発現解析又はRT-PCRベースのアッセイが挙げられる。
【0296】
免疫応答を発生させることは、対照と比較して本明細書に記述されるアデノウイルスベクターを投与された対象における標的抗原特異的CTL活性の1.5〜5倍の増大を含み得る。別の実施形態では、免疫応答を発生させることは、対照と比較してアデノウイルスベクターを投与された対象における標的特異的CTL活性の約2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、15、16、17、18、19、20倍、又はそれより多くの増大を含む。
【0297】
免疫応答を発生させることは、適切な対照と比較して、標的抗原をコードする核酸を含む本明細書に記述されるアデノウイルスベクターを投与された対象における、標的抗原特異的HTL活性、例えばヘルパーT細胞の増殖の、1.5〜5倍の増大を含み得る。別の実施形態では、免疫応答を発生させることは、対照と比較した標的特異的HTL活性の約2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、15、16、17、18、19、20倍、又はそれより多くの増大を含む。この文脈において、HTL活性は、特定のサイトカイン、例えばインターフェロン-γ(IFN-γ)、インターロイキン-1(IL-1)、IL-2、IL-3、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、若しくは他のサイトカインの産生の、上述のような増大、又は減少を含み得る。これに関して、免疫応答を発生させることは、Th2型応答からTh1型応答への推移、又はある特定の実施形態では、Th1型応答からTh2型応答への推移を含むことがある。他の実施形態では、免疫応答を発生させることは、主としてTh1又はTh2型応答の刺激を含み得る。
【0298】
免疫応答を発生させることは、適切な対照と比較して、本明細書に記載のアデノウイルスベクターを投与した対象において標的特異的抗体産生の1.5〜5倍の間の増加を含み得る。別の実施形態において、免疫応答を発生させることは、対照と比較してアデノウイルスベクターを投与した対象における標的特異的抗体産生の約2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、15、16、17、18、19、20倍又はそれ超の増加を含む。
【0299】
したがって、ある特定の実施形態では、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの目的の標的抗原に対する免疫応答を発生させるための方法であって、a)E2b領域に欠失を有する複製欠損アデノウイルスベクター、及びb) PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの標的抗原をコードする核酸を含むアデノウイルスベクターを個体に投与することと;アデノウイルスベクターを個体に少なくとも1回再投与することにより、標的抗原に対する免疫応答を発生させることとを含む、方法が提供される。ある特定の実施形態では、投与されるベクターがguttedベクターではない方法が提供される。特定の実施形態では、標的抗原は、野生型タンパク質、その断片、変異体、又は変異体断片であり得る。いくつかの実施形態では、標的抗原は、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの腫瘍抗原、その断片、変異体、又は変異体断片を含む。
【0300】
さらなる実施形態では、Adに対して既存の免疫を有する個体において標的抗原に対する免疫応答を発生させるための方法であって、a)E2b領域に欠失を有する複製欠損アデノウイルスベクター、及びb)標的抗原をコードする核酸を含むアデノウイルスベクターを個体に投与することと、アデノウイルスベクターを個体に少なくとも1回再投与することにより、標的抗原に対する免疫応答を発生させることとを含む、方法が提供される。特定の実施形態では、標的抗原は、野生型タンパク質、その断片、変異体、又は変異体断片であり得る。いくつかの実施形態では、標的抗原は、例えばPSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせ、その断片、変異体、又は変異体断片を含む。
【0301】
Adに対する既存の免疫に関して、これは、Ad抗体の存在に関して試験する抗体ベースアッセイなどの、当技術分野で公知の方法を使用して決定することができる。さらに、ある特定の実施形態において、本明細書に記載の方法は、最初に個体がAdに対して既存の免疫を有することを決定するステップ、次に、本明細書に記載のE2b欠失型アデノウイルスベクターを投与するステップを含み得る。
【0302】
一実施形態は、個体における1つ以上の標的抗原に対する免疫応答を惹起する方法であって、複製欠損アデノウイルスベクターを含む第一のアデノウイルスベクターを個体に投与するステップであって、アデノウイルスベクターが、E2b領域において欠失を有し、及び少なくとも1つの標的抗原をコードする核酸を有する、ステップ、複製欠損アデノウイルスベクターを含む第二のアデノウイルスベクターを個体に投与するステップであって、アデノウイルスベクターが、E2b領域において欠失を有し、及び少なくとも1つの標的抗原をコードする核酸を有する、ステップを含み、第二のアデノウイルスベクターの少なくとも1つの標的抗原が、第一のアデノウイルスベクターの少なくとも1つの標的抗原と同じ又は異なる、方法を提供する。特定の実施形態において、標的抗原は、野生型タンパク質、その断片、変異体、又は変異体断片であり得る。一部の実施形態において、標的抗原は、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの腫瘍抗原、その断片、変異体、又は変異体断片を含む。
【0303】
このように、ある特定の実施形態は、同じE2b欠失型アデノウイルスベクターによる複数回の免疫、又は異なるE2b欠失型アデノウイルスベクターによる複数回の免疫を企図する。各々の例において、アデノウイルスベクターは、本明細書において他所で記載の1つ以上の標的抗原をコードする核酸配列を含み得る。ある特定の実施形態において、方法は、1つの標的抗原をコードするE2b欠失型アデノウイルスによって複数回免疫するステップ、及び同じアデノウイルスベクターの複数回の再投与によって、標的抗原に対する免疫応答を誘導するステップを含む。一部の実施形態において、標的抗原は、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの腫瘍抗原、その断片、変異体、又は変異体断片を含む。
【0304】
さらなる実施形態において、方法は、1つ以上の標的抗原をコードする第一のアデノウイルスベクターによって免疫するステップ、次いで第一のアデノウイルスベクターによってコードされる抗原と同じ又は異なり得る1つ以上の標的抗原をコードする第二のアデノウイルスベクターを投与するステップを含む。この点において、コードされる標的抗原の1つが異なっていてもよく、又はコードされる抗原の全てが異なっていてもよく、又は一部が同じで、一部が異なっていてもよい。さらに、ある特定の実施形態において、方法は、第一のアデノウイルスベクターを複数回投与するステップ、及び第二のアデノウイルスを複数回投与するステップを含む。この点において、方法は、第一のアデノウイルスベクターを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回、又はそれ超投与するステップ、及び第二のアデノウイルスベクターを1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回又はそれ超投与するステップを含む。投与の順序は、第一のアデノウイルスを1回又は複数回連続して投与するステップ後に、第二のアデノウイルスベクターを1回又は複数回連続して投与するステップを含み得る。ある特定の実施形態において、方法は、第一及び第二のアデノウイルスベクターを1回投与毎、2回投与毎、3回投与毎等に交互に投与するステップを含む。ある特定の実施形態において、第一及び第二のアデノウイルスベクターは、同時に投与される。他の実施形態において、第一及び第二のアデノウイルスベクターは、逐次的に投与される。一部の実施形態において、標的抗原は、PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの腫瘍抗原、その断片、変異体、又は変異体断片を含む。
【0305】
当業者に容易に理解されるように、2つ超のアデノウイルスベクターを本明細書に記載の方法において使用してもよい。3、4、5、6、7、8、9、10個、又はそれ超の異なるアデノウイルスベクターを、本明細書に記載の方法において使用してもよい。ある特定の実施形態において、方法は、1つ超のE2b欠失型アデノウイルスベクターを一度に投与するステップを含む。この点において、目的の複数の標的抗原に対する免疫応答は、各々が1つ以上の標的抗原をコードする核酸配列を含む、複数の異なるアデノウイルスベクターを同時に投与するステップによって惹起することができる。
【0306】
アデノウイルスベクターは、がん腫又は肉腫(例えば、固形腫瘍、リンパ腫、及び白血病)などのがんに対する免疫応答を惹起するために使用することができる。アデノウイルスベクターは、がん、例えば神経系のがん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、白血病、形質細胞腫、腺腫、神経膠腫、胸腺腫、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん、腎臓がん、腎細胞がん、子宮がん、膵臓がん、食道がん、肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、精巣がん、胃がん、多発性骨髄腫、肝腫、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)、又は他のがんに対する免疫応答を惹起するために使用することができる。
【0307】
本明細書に記載の感染疾患又はがんのいずれかの症状を治療又は改善する方法も同様に提供される。治療方法は、本明細書に記載の感染疾患又はがんに罹っている又は罹るリスクを有する個体に、アデノウイルスベクターを1回以上投与するステップを含む。そのため、ある特定の実施形態は、そのような疾患を発症するリスクを有する個体において感染疾患又はがんに対してワクチン接種する方法を提供する。リスクを有する個体は、ある時点で感染病原体に曝露されている可能性があるか、若しくは過去に曝露されているが、まだ感染症の症状を有していない個体、又はがんを発症する遺伝的素因を有するか、若しくは感染病原体に対して特に感受性がある個体であり得る。本明細書に記載の感染疾患又はがんに罹っている個体は、本明細書における治療を誘導するために使用され得る標的抗原を発現及び/又は提示すると決定されていてもよい。例えば、例が、標的抗原を発現及び/又は提示すると見出され得、標的抗原、その変異体、断片、又は変異体断片をコードするアデノウイルスベクターをその後投与してもよい。
【0308】
ある特定の実施形態は、標的抗原、又はその断片、変異体、若しくは変異体断片をコードする核酸のin vivoでの送達のためのアデノウイルスベクターの使用を企図する。対象に注射すると、核酸配列が発現され、その結果、配列によってコードされる抗原に対する免疫応答が得られる。アデノウイルスベクターワクチンは、「有効量」、すなわち本明細書において他所で記載の免疫応答を誘発するために選択された投与経路又は複数の投与経路において有効であるアデノウイルスベクターの量で投与することができる。有効量は、標的感染病原体又はがんに対する宿主の保護又は治療を促進するために有効な免疫応答を誘導することができる。各ワクチンの用量におけるベクターの量は、典型的なワクチンに一般的に関連する有意な副作用を示すことなく、免疫応答、免疫保護応答、又は他の免疫治療応答を誘導する量として選択される。ワクチン接種後、対象を、ワクチン治療の有効性を決定するためにモニターしてもよい。ワクチン接種の有効性のモニタリングは、当業者に公知の任意の方法によって行ってもよい。一部の実施形態において、抗体レベルを検出するために、血液又は体液試料をアッセイしてもよい。他の実施形態において、循環中の血液細胞又はリンパ組織細胞から細胞性免疫応答を検出するために、ELISpotアッセイを実施してもよい。
【0309】
ある特定の実施形態において、1〜10の間の用量を52週間の間、投与してもよい。ある特定の実施形態において、6用量を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20週間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、20、22、23、若しくは24カ月、又はそこから誘導可能な任意の範囲若しくは値の間隔で投与し、その後定期的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20週間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、20、22、23、若しくは24カ月、又はそこから誘導可能な任意の範囲若しくは値の間隔でブースターワクチン接種をさらに行ってもよい。代替のプロトコールは、個々の患者にとって適切であり得る。そのため、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれ超の用量を1年間の間、又はそれより短い若しくは長い期間の間、例えば35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100週間の間投与してもよい。用量は、1、2、3、4、5、若しくは6週間の間隔、又はそれより長い間隔で投与してもよい。
【0310】
ワクチンは、約4時間未満の期間、より好ましくは約3時間未満の期間の間注入することができる。例えば、最初の25〜50mgを、30分以内、好ましくはさらには15分以内に注入し、残りを続く2〜3時間の間に注入することができる。より一般的には、投与されるワクチン構築物の用量を、2又は3週間毎に1用量として投与してもよく、これを全体で少なくとも3用量繰り返してもよい。又は、構築物を、週に2回、4〜6週間投与してもよい。投与スケジュールを任意選択で、他の間隔で繰り返すことができ、用量及びスケジュールを適切に調節して、様々な非経口経路を通して用量を投与してもよい。本明細書に記載の組成物は、任意の数の関連する治療モダリティと共に(例えば、前、同時、又は後に)患者に投与することができる。
【0311】
適した用量は、上記のように投与した場合に、本明細書において他所で記載の標的抗原免疫応答を促進することができるアデノウイルスベクターの量である。ある特定の実施形態において、免疫応答は、基底(すなわち、無処置)レベルより少なくとも10〜50%上である。ある特定の実施形態において、免疫応答は、基底レベルより少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、110、125、150、200、250、300、400、500、又はそれ超上である。そのような応答は、患者における標的抗原抗体を測定することによって、又はin vitroで患者の腫瘍若しくは感染細胞を殺滅することができる細胞傷害性エフェクター細胞のワクチン依存的生成によって、又は免疫応答をモニターする当技術分野で公知の他の方法によってモニターすることができる。そのようなワクチンはまた、非ワクチン接種患者と比較してワクチン接種患者において当該疾患の臨床転帰の改善をもたらす免疫応答を引き起こすことができるはずである。一部の実施形態において、臨床転帰の改善は、疾患を治療する、疾患の症状を低減する、疾患の進行を変化させる、又は生命を延長させるステップを含む。
【0312】
本明細書に提供する任意の組成物を、個体に投与してもよい。「個体」は、「対象」又は「患者」と互換的に使用され得る。個体は、哺乳動物、例えばヒト又は動物、例えば非ヒト霊長類、齧歯類、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ロバ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、又はヒツジであり得る。実施形態において、個体は、ヒトである。実施形態において、個体は、胎児、胚、又は小児である。一部の例において、本明細書に提供する組成物は、ex vivoで細胞に投与される。一部の例において、本明細書に提供する組成物は、疾患又は障害を治療する方法として個体に投与される。一部の実施形態において、個体は、遺伝疾患を有する。一部の例において、個体は、疾患、例えば本明細書に記載の任意の疾患を有するリスクを有する。一部の実施形態において、個体は、不十分な量のタンパク質又は不十分な活性のタンパク質によって引き起こされる疾患又は障害を有するリスクが増加している。個体が、疾患又は障害を有する「リスクが増加している」場合、方法は、防止的又は予防的治療を伴う。例えば、個体は、家族の病歴のために、そのような疾患又は障害を有するリスクが増加し得る。典型的に、そのような疾患又は障害を有するリスクが増加している個体は、予防的治療から利益が得られる(例えば、疾患又は障害の発生又は進行を防止又は遅らせることによって)。
【0313】
一部の例において、対象は疾患を有しない。一部の例において、本明細書に記載の治療は、疾患の発生前に投与される。対象は検出されない疾患を有し得る。対象は、低い疾患負荷を有し得る。対象はまた、高い疾患負荷を有し得る。ある特定の例において、対象は、分類尺度に従って本明細書に記載の治療を投与され得る。分類尺度は、グリーソン分類であり得る。グリーソン分類は、腫瘍組織が正常な前立腺組織とどれほど異なるかを反映している。これは、1から5の尺度を使用する。医師は、がん細胞のパターン及び増殖に基づいて、がんに数値を与える。数値が低ければ、がん細胞はより正常に見え、グレードはより低い。ある特定の例において、低いグリーソンスコアを有する患者に治療を投与してもよい。好ましくは、グリーソンスコア3以下の患者に、本明細書に記載の治療を投与してもよい。
【0314】
様々な実施形態は、選択された患者集団におけるPSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの1つ以上の特定の標的抗原に対する免疫応答を惹起するための組成物及び方法に関する。したがって、本明細書に記載の方法及び組成物は、前立腺がん、がん腫又は肉腫、例えば神経系のがん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、白血病、形質細胞腫、腺腫、神経膠腫、胸腺腫、乳がん、結腸直腸がん、腎臓がん、腎細胞がん、子宮がん、膵臓がん、食道がん、肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、精巣がん、胃がん、多発性骨髄腫、肝腫、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)を含むがこれらに限定されないがんを有する患者を標的としてもよく、又は他のがんを治療の標的とすることができる。
【0315】
一部の例において、標的の患者集団は、結腸直腸腺がん、転移性結腸直腸がん、進行PSA、PSMA、MUC1、MUC1c、MUC1n、T若しくはCEA発現がん、前立腺がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、肝臓がん、乳がん、肺がん、膀胱がん、又は膵臓がんを有する個体に限定され得る。選択されたがん、例えば結腸直腸腺がんの組織学的に確認された診断を使用してもよい。特定の疾患進行期又は進行を選択してもよく、例えば1つ以上の転移性、再発性のステージIII又はステージIVのがんを有する患者を、本明細書に記載の方法及び組成物による治療のために選択してもよい。一部の実施形態において、患者は、フルオロピリミジン、イリノテカン、オキサリプラチン、ベバシズマブ、セツキシマブ、又はパニツムマブを含む治療を含むがこれらに限定されない他の治療を受けている必要があってもよく、任意選択でそれらの治療を通して進行していてもよい。一部の例において、そのような治療を受けることを個体が拒絶しても、患者を、本明細書に記載の方法及び組成物による治療に関する適格プールに含めることができる。一部の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療を受ける個体は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、18、21、又は24カ月の推定余命を有する必要があり得る。本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療を受ける患者のプールは、年齢が限定され得る。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、30、35、40、50、60歳より上又はそれより高齢の個体は、本明細書に記載の方法及び組成物による治療にとって適格であり得る。別の例では、75、70、65、60、55、50、40、35、30、25、20歳より下又はそれより若い個体は、本明細書に記載の方法及び組成物による治療にとって適格であり得る。
【0316】
一部の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療を受ける患者は、適切な血液機能、例えば以下の1つ以上を有する個体に限定される:白血球(WBC)数が、1マイクロリットルあたり、少なくとも1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000個、又はそれ超、ヘモグロビンレベルが、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14g/dL、又はそれ超、血小板数が、1マイクロリットルあたり、少なくとも50,000、60,000、70,000、75,000、90,000、100,000、110,000、120,000、130,000、140,000、150,000個、又はそれ超、PT-INR値が0.8、1.0、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.8、2.0、2.5、3.0、又はそれ超より小さいか又はそれに等しく、PTT値が、1.2、1.4、1.5、1.6、1.8、2.0×ULN又はそれ超より小さいか又はそれに等しい。様々な実施形態において、血液機能の指標の限界は、異なる性別及び年齢群、例えば、0〜5、5〜10、10〜15、15〜18、18〜21、21〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、又は80歳超の群の個体に関して異なるように選択される。
【0317】
一部の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療を受ける患者は、適切な腎機能及び/又は肝機能、例えば、以下の1つ以上を有する個体に限定される:血清中クレアチニンレベルが、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2mg/dL又はそれ超より低いか又はそれに等しく、ビリルビンレベルが、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2mg/dL又はそれ超であるが、ギルバート症候群の上限、例えば1.5、1.6、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、又は2.4mg/dLより低いか又はそれに等しい値が許容され、ALT及びAST値が、1.5、2.0、2.5、3.0×正常値上限(ULN)又はそれ超より低いか又はそれに等しい。様々な実施形態において、腎機能又は肝機能の指標の限界は、異なる性別及び年齢群、例えば0〜5、5〜10、10〜15、15〜18、18〜21、21〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、又は80歳超の群の個体に関して異なるように選択される。
【0318】
一部の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療の候補である個体のK-ras変異状態を決定することができる。予め選択したK-ras変異状態を有する個体を、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療に関する適格患者のプールに含めることができる。
【0319】
様々な実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療を受けている患者は、同時の細胞傷害性化学療法若しくは放射線療法を行っていない個体、現在の脳転移若しくは脳転移の病歴がない個体、自己免疫疾患、例えば炎症性腸疾患、全身性紅斑性狼瘡、強直性脊椎炎、強皮症、多発性硬化症、甲状腺疾患及び白斑など、しかしこれらに限定されない疾患の病歴がない個体、重篤な併発性の慢性若しくは急性疾患、例えば心疾患(NYHAクラスIII又はIV)若しくは肝疾患を有しない個体、起こり得るプロトコール遵守に対する医学的若しくは心理学的障害を有しない個体、非黒色腫皮膚がん以外、子宮頸部上皮内がん以外、制御された表在性膀胱がん以外、若しくは治療されている他の上皮内がん以外の同時の(又は最後の5年以内)の二次悪性疾患を有しない個体、尿路感染症、HIV(例えば、ELISAによって決定し、ウェスタンブロットによって確認する)、及び慢性肝炎を含む活動性の急性若しくは慢性感染症を有しない個体、又は同時のステロイド療法(又は他の免疫抑制薬、例えばアザチオプリン若しくはシクロスポリンA)を行っていない個体に限定される。一部の例において、任意のステロイド療法(化学療法又はコントラスト強調試験の前投薬として使用する場合を除く)を少なくとも3、4、5、6、7、8、9、又は10週間中断した患者は、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療に関する適格患者のプールに含めてもよい。一部の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療を受ける患者は、甲状腺疾患及び白斑を有する個体を含む。
【0320】
様々な実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療に関する個体又は候補個体からの試料、例えば血清又は尿試料を回収してもよい。試料は、治療前、治療中、及び/又は治療後に、例えば治療開始前の2、4、6、8、10週間以内に、治療開始から1週間、10日、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、又は12週間以内に、治療開始前の2、4、6、8、10週間以内に、治療開始から1週間、10日、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、9週間、又は12週間以内に、治療中に1週間、10日間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、9週間、又は12週間の間隔で、治療後に1カ月、3カ月、6カ月、1年、2年の間隔で、治療後1カ月、3カ月、6カ月、1年、2年、又はそれ超以内に、6カ月、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年間又はそれ超の期間、回収してもよい。試料を、本明細書に記載の血液学、腎機能、又は肝機能指標のいずれかに関して、並びに当技術分野で公知の適したその他の指標、例えば妊娠可能女性に関するβ-HCGに関して試験してもよい。その点において、血球数分類(cell blood count with differential)、PT、INR及びPTT、Na、K、Cl、CO2、BUN、クレアチニン、Ca、総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、アルカリホスファターゼ、AST、ALT、及びグルコースを測定する検査を含む血液及び生化学検査が、ある特定の態様において企図される。一部の実施形態において、HIV抗体、肝炎BsAg、又はC型肝炎抗体の存在又は量を、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療に関する個体又は候補個体からの試料において決定する。
【0321】
標的抗原に対する抗体又はAd5ベクターに対する中和抗体などの生物マーカーを、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療に関する個体又は候補個体からの血清などの試料において試験することができる。一部の例において、血液試料などの1つ以上の試料を、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療に関する個体又は候補個体から回収して保管することができる。回収した試料を、免疫学的評価に関してアッセイすることができる。本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療に関する個体又は候補個体を、イメージング試験において、例えば胸部、腹部、又は骨盤のCTスキャン又はMRIを使用して評価することができる。イメージング試験は、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療前、治療中、又は治療後に、治療中、及び/又は治療後に、例えば治療開始前の2、4、6、8、10週間以内に、治療開始から1週間、10日、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、又は12週間以内に、治療開始前の2、4、6、8、10週間以内に、治療開始から1週間、10日、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、9週間、又は12週間以内に、治療中に1週間、10日、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、9週間、又は12週間の間隔で、治療後に1カ月、3カ月、6カ月、1年、2年の間隔で、治療後1カ月、3カ月、6カ月、1年、2年、又はそれ超以内に、6カ月、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年、又はそれ超の期間、実施することができる。
【0322】
本明細書に記載の組成物及び方法は、治療中に、様々な用量及び投与レジメンを企図する。患者に、1つ以上の複製欠損アデノウイルス又はアデノウイルスベクター、例えば本明細書に記載の標的抗原に対する免疫応答を個体において惹起することができる標的抗原を含むAd5[E1-,E2B-]-ベクターを投与してもよい。
【0323】
様々な実施形態において、複製欠損アデノウイルスは、そのような免疫応答を行うために適した用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×108個のウイルス粒子〜約5×1013個のウイルス粒子の用量で投与される。場合により、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×109〜約5×1012個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×108個のウイルス粒子〜約5×108個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約5×108個のウイルス粒子〜約1×109個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×109個のウイルス粒子〜約5×109個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約5×109個のウイルス粒子〜約1×1010個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×1010個のウイルス粒子〜約5×1010個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約5×1010個のウイルス粒子〜約1×1011個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×1011個のウイルス粒子〜約5×1011個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約5×1011個のウイルス粒子〜約1×1012個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×1012個のウイルス粒子〜約5×1012個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約5×1012個のウイルス粒子〜約1×1013個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×1013個のウイルス粒子〜約5×1013個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×108個のウイルス粒子〜約5×1010個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×1010個のウイルス粒子〜約5×1012個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×1011個のウイルス粒子〜約5×1013個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×108個のウイルス粒子〜約1×1010個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×1010個のウイルス粒子〜約1×1012個のウイルス粒子の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスは、免疫化1回あたり約1×1011個のウイルス粒子〜約5×1013個のウイルス粒子の用量で投与される。一部の例において、複製欠損アデノウイルスは、免疫1回あたり、1x109、2x109、3x109、4x109、5x109、6x109、7x109、8x109、9x109、1x1010、2x1010、3x1010、4x1010、5x1010、6x1010、7x1010、8x1010、9x1010、1x1011、2x1011、3x1011、4x1011、5x1011、6x1011、7x1011、8x1011、9x1011、1x1012、1.5x1012、2x1012、3x1012、又はそれ超のウイルス粒子(VP)より高いか又はそれに等しい用量で投与される。一部の例において、複製欠損アデノウイルスは、免疫1回あたり、1x109、2x109、3x109、4x109、5x109、6x109、7x109、8x109、9x109、1x1010、2x1010、3x1010、4x1010、5x1010、6x1010、7x1010、8x1010、9x1010、1x1011、2x1011、3x1011、4x1011、5x1011、6x1011、7x1011、8x1011、9x1011、1x1012、1.5x1012、2x1012、3x1012、又はそれ超のウイルス粒子より低いか又はそれに等しい用量で投与される。様々な実施形態において、本明細書に記載の所望の用量は、製剤緩衝液の適した容量で、例えば、約0.1〜10mL、0.2〜8mL、0.3〜7mL、0.4〜6mL、0.5〜5mL、0.6〜4mL、0.7〜3mL、0.8〜2mL、0.9〜1.5mL、0.95〜1.2mL、又は1.0〜1.1mLの容量で投与される。当業者は、容量が、これらの値のいずれかを境界とする任意の範囲内(例えば、約0.5mL〜約1.1mL)に入り得ることを認識する。ウイルス粒子の投与は、適した多様な送達経路を通して行うことができ、例えば投与は、注射(例えば、皮内、筋肉内、静脈内、又は皮下)によって、鼻腔内(例えば、吸入によって)、ピルの形態(例えば、嚥下、膣又は直腸送達のための坐剤)であり得る。一部の実施形態において、皮下送達が好ましく、樹状細胞に対してより大きいアクセスを提供することができる。
【0324】
個体へのウイルス粒子の投与を繰り返してもよい。ウイルス粒子の繰り返し送達は、スケジュールに従ってもよく、或いは、必要に応じて行ってもよい。例えば標的抗原、例えばPSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの腫瘍抗原、その断片、変異体、又は変異体断片に対する個体の免疫を試験して、必要に応じて追加の送達を補充してもよい。一部の実施形態において、送達スケジュールは、定期的な間隔でウイルス粒子の投与を含む。スケジュール通りの期間及び/又は投与前に評価した必要性に基づく投与期間の1つ以上を含む関節への送達レジメンを設計してもよい。例えば、治療レジメンは、3週間毎に1回の皮下投与などの投与、その後死亡を含む任意の理由により治療から外れるまで3カ月毎に別の免疫療法治療を含み得る。別の例のレジメンは、3週間毎に3回の投与の後に3カ月毎に3回の別の組の免疫療法治療を含む。
【0325】
別の例のレジメンは、第一の投与回数の第一の頻度での第一の期間、第二の投与回数の第二の頻度での第二の期間、第三の投与回数の第三の頻度での第三の期間等を含み、任意選択で、必要に応じて不定回数の投与による1回以上の期間を含む。各期間の投与回数は、独立して選択することができ、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、又はそれ超であり得る。各期間の投与頻度もまた、独立して選択することができ、例えば、ほぼ毎日、2日毎、3日毎、週に2回、週に1回、2週間に1回、3週間毎、毎月、6週間毎、2カ月毎、3カ月毎、4カ月毎、5カ月毎、6カ月毎、1年に1回等であり得る。治療は、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、36カ月、又はそれ超の総期間を要し得る。
【0326】
免疫間の予定される間隔は、免疫間の間隔が、間隔の5分の1、4分の1、3分の1、又は2分の1まで改訂されるように変更してもよい。例えば、3週間の間隔のスケジュールの場合、20〜28日間(3週間-1日〜3週間+7日)の間で免疫を繰り返してもよい。最初の3回の免疫に関して、2回目及び/又は3回目の免疫が遅れる場合、その後の免疫は、免疫間に最少量の緩衝液を考慮に入れてシフトさせてもよい。例えば、3週間の間隔のスケジュールの場合、ある免疫が遅れると、その後の免疫は、前回の免疫後17、18、19、又は20日より早期に起こらないように予定してもよい。
【0327】
本明細書に記載の組成物は、様々な状態、例えば室温、氷中、又は凍結状態で提供することができる。組成物は、適したサイズの容器、例えば2mLバイアルのバイアルで提供され得る。一実施形態において、抽出可能なワクチン1.0mLを含む2mlバイアルは、5×1011個の総ウイルス粒子/mLを含む。温度及び湿度を含む保存条件は異なり得る。例えば、治療に使用するための組成物を、室温、4℃、-20℃、又はそれより低い温度で保存してもよい。
【0328】
様々な実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物に従う治療を受けている個体について、一般的な評価を行う。1つ以上の任意の試験を、必要に応じて又は予定通りに、例えば0、3、6週間目等に行ってもよい。異なる組の試験を、免疫しない時点と比較して、免疫と同時に行ってもよい。
【0329】
一般的な評価は、病歴、ECOGパフォーマンススコア、カルノフスキーパフォーマンスステータス、及び主治医による体重を用いた全身理学的検査の1つ以上を含み得る。最後の診察以降に患者に投与している又は投与した他の任意の治療、薬剤、生物製剤、又は血液製剤を記録してもよい。患者を、任意の有害反応に関してモニターするために、診療所において、ワクチンの投与後適した期間、例えばおよそ30分間追跡してもよい。
【0330】
ある特定の実施形態において、ワクチンの各投与後の局所及び全身の反応源性を、選択した期間、例えば3日間(免疫の当日及びその後2日間)毎日評価してもよい。日記カードを使用して、症状を報告してもよく、定規を使用して、局所反応源性を測定してもよい。免疫注射部位を評価してもよい。胸部、腹部、及び骨盤のCTスキャン又はMRIを行ってもよい。
【0331】
様々な実施形態において、血液学及び生化学評価を、本明細書に記載の方法及び組成物に従う治療を受けている個体について実施する。1つ以上の任意の試験を、必要に応じて又は予定通りに、例えば0、3、6週目等に行ってもよい。異なる組の試験を、免疫しない時点と比較して、免疫と同時に行ってもよい。血液学及び生化学評価は、血液化学検査及び血液検査、CBC分類(CBC with differential)、Na、K、Cl、CO2、BUN、クレアチニン、Ca、総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、アルカリホスファターゼ、AST、ALT、グルコース、及びANAの1つ以上を含み得る。
【0332】
様々な実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物に従う治療を受けている個体について、生物マーカーを評価する。1つ以上の任意の試験を必要に応じて又は予定通りに、例えば0、3、6週目等に実施してもよい。異なる組の試験を、免疫しない時点と比較して、免疫と同時に行ってもよい。
【0333】
生物マーカー評価は、適切な容量、例えば約5mlの血清試料から本明細書に記載の標的抗原又はウイルスベクターに対する抗体を測定するステップの1つ以上を含んでもよい。バイオマーカーは、決定され利用可能であれば、再検討してもよい。
【0334】
様々な実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物に従う治療を受けている個体に、免疫学的評価を行う。1つ以上の任意の試験を、必要に応じて又は予定通りに、例えば0、3、6週目等に行ってもよい。異なる組の試験を、免疫しない時点と比較して、免疫と同時に行ってもよい。
【0335】
末梢血、例えば、約90mLを、各免疫前及び免疫の少なくとも一部の後の時点で採取し、試験中及び/又は特定の回数の免疫後の特定の時点で免疫応答に及ぼす効果が存在するか否かを決定してもよい。免疫学的評価は、ELISpot、増殖アッセイ、マルチパラメータフローサイトメトリー分析、及び細胞傷害アッセイを使用して標的抗原に対するT細胞応答に関して末梢血単核球(PBMC)をアッセイするステップの1つ以上を含み得る。各採血からの血清を保管して、送付し、決定してもよい。
【0336】
様々な実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物に従う治療を受けている個体について、腫瘍の評価を行う。1つ以上の任意の試験を、必要に応じて又は予定通りに、例えば治療前、0、3、6週目等に行ってもよい。異なる組の試験を、免疫しない時点と比較して、免疫と同時に行ってもよい。腫瘍の評価は、治療前、免疫の少なくとも一部の後の時点、及び選択した回数、例えば、第一の治療の2、3、又は4回の終了後およそ3カ月毎、及び例えば治療から外れるまで行われる、胸部、腹部、又は骨盤のCT又はMRIスキャンの1つ以上を含み得る。
【0337】
PSA、PSMA、MUC1、Brachyury、CEA、又はその組み合わせなどの標的抗原に対する免疫応答は、ELISpot、サイトカインフローサイトメトリー、又は抗体応答などの、免疫応答の1つ以上の適した試験を使用して、個体の末梢血試料などの試料から評価してもよい。陽性の免疫応答は、T細胞応答を測定することによって決定することができる。T細胞応答は、抗原を含む6個のウェルにおけるバックグラウンドに関して調節したスポットの平均数が、6個の対照ウェルにおけるスポットの数を10超え、抗原を含む6個のウェルの単一の値と6個の対照ウェルの間の差が、スチューデントt検定を使用してp≦0.05のレベルで統計学的に有意であれば陽性であると考えることができる。免疫原性アッセイは、各々の免疫の前で、治療期間中の予定される時点で行ってもよい。例えば、治療の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18、20、24、30、36、又は48週目付近での免疫原性アッセイの時点は、この時点で予定された免疫がなくとも予定してもよい。一部の例において、個体は、少なくとも最小回数の免疫、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9回又はそれ超の免疫を受けていれば、免疫応答に関して評価可能であると考えられ得る。
【0338】
一部の実施形態において、疾患の進行又は臨床応答の決定は、測定可能/評価可能な疾患を有する患者においてRECIST1.1基準に従って行う。一部の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療は、治療を受けている個体における完全奏効(CR;標的病変に関して全ての標的病変の消失、又は非標的病変に関して全ての非標的病変の消失及び腫瘍マーカーレベルの正常化)に影響を及ぼす。一部の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療は、治療を受けている個体における部分奏効(PR;標的病変のベースライン長径和を参照とした、標的病変の長径和の少なくとも30%の減少)に影響を及ぼす。
【0339】
一部の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療は、治療を受けている個体における安定疾患(SD;標的病変に関して治療開始以降の最小の長径和を参照として、PRに適格となるほど十分な縮小がなく、PDに適格となるほど十分な増加がないこと)に影響を及ぼす。一部の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療は、治療を受けている個体における不完全奏効/安定疾患(SD;非標的病変に関して1つ以上の非標的病変の存続及び/又は正常上限を超える腫瘍マーカーレベルの維持)に影響を及ぼす。一部の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する治療は、治療を受けている個体における進行疾患(PD;標的病変に関して、治療開始以降に記録された最小の長径和を参照として、標的病変の長径和の少なくとも20%の増加、若しくは1つ以上の新規病変の出現、又は非標的病変に関して1つ以上の非標的病変の存続、及び/若しくは正常上限を超える腫瘍マーカーレベルの維持)に影響を及ぼす。
【0340】
キット
本明細書に記載された組成物、免疫療法又はワクチンは、キットの形態で供給することができる。本開示のキットは、治療レジメン情報を含む投与量及び投与に関する説明書をさらに含むことができる。
【0341】
いくつかの実施形態において、キットは、記載された免疫療法又はワクチンを提供する組成物及び方法を含む。いくつかの実施形態においてキットは、キット内容物を投与する上で有用な内容物、及び内容物を調製する方法に関する説明書をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、キットは、適当な実験室検査により治療前及び治療後に患者のモニターを行う、又は結果及び患者データを医療スタッフとやりとりするためのソフトウェアをさらに含むことができる。
【0342】
キットを含む内容物は、乾燥又は液体形態であってもよい。それらが乾燥形態であるならば、キットは乾燥材料を可溶化する溶液を含んでもよい。キットは、液体又は乾燥形態でトランスファー因子も含むことができる。いくつかの実施形態において、トランスファー因子が乾燥形態であるならば、キットはトランスファー因子を可溶化する溶液を含む。キットは、内容物を混合及び調製する容器も含むことができる。キットは、例えば針、チューブ、アプリケーター、吸入剤、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼器、又は任意のそのような医学的に承認された送達ビヒクルのような投与を補助する器具も含むことができる。本明細書に記載されるキット又は薬物送達システムは、典型的には、商業的販売及び流通用に本開示の組成物を密閉して含有する手段も含む。
【0343】
上述の種々の実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本明細書で参照され、かつ/又は出願データシートに列記された米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許公開文献はすべて、各個別の公開文献、特許、又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0344】
実施形態の態様は、種々の特許、出願、及び公開文献の概念を用いてなおもさらなる実施形態を提供するために必要であれば、改変してもよい。
【0345】
これら及び他の変更は、上記に詳述された記述を考慮のうえ、諸実施形態に行ってよい。概して、続く特許請求の範囲において使用される用語は、本明細書及び特許請求の範囲において開示される特定の実施形態に特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、むしろ、そのような特許請求の範囲が権利を付与される均等物の全範囲と併せて可能性のあるすべての実施形態を含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示により限定されない。
【実施例】
【0346】
以下の例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の例に開示された手法は、本発明の実践において十分に機能することが本発明者によって発見された手法であり、故に本発明の実践における好ましい形態を構成すると見なすことができることが当業者によって理解されるべきである。しかし、当業者は、開示された特定の実施形態において多くの変更が行われ、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく同様又は類似の結果を依然として得ることができることを、本開示に照らして理解するべきである。
【0347】
[実施例1]
マウスにおけるAd5[E1-,E2b-]-PSAワクチン
この実施例は、マウスモデルにおけるAd5[E1-,E2b-]-PSAワクチンの前臨床試験について記述する。研究は、BALB/cマウスモデルでの、がんワクチンとしてのAd5[E1-,E2b-]-PSAの使用を評価するために行った。Ad5[E1-,E2b-]-PSAは、マウスにおいて、PSAに対して強力なCMIを誘発した。研究は、PSA発現がんのマウスモデルで、ワクチンの抗腫瘍活性を示すためにも行った。これらのデータは、Ad5[E1-,E2b-]-PSAのin vivo送達が、PSA発現がんに対してPSA指向型抗腫瘍免疫性を誘発できることを示す。
【0348】
前臨床研究を、BALB/cマウスモデルで行って、Ad5[E1-,E2b-]-PSAワクチンの免疫原性を実証した。
【0349】
Ad5[E1-,E2b-]-PSA免疫化後のCMI応答の誘発
Ad5[E1-,E2b-]-PSAによる多数の同種免疫化後のフローサイトメトリーによってCMI誘発を評価するために、Ad5免疫BALB/cマウス(n=5/群)の群を、3回SCで、1週間の間隔で、Ad5[E1-,E2b-]-PSAの1010VPにより免疫化した。対照マウスには緩溶液のみ注射した。最後の免疫化から2週間後、脾細胞を回収し、PSAタンパク質に曝露し、IFN-γ又はIL-2分泌脾細胞に関してELISpotによりCMI応答を評価した。
【0350】
PSA指向型CMI応答はワクチン接種により誘発されたが、対照マウスでは誘発されなかった(図1A及び1B)。CMI応答の特異性を、無関係のHIV-gag又はサイトメガロウイルス(CMV)抗原を使用して、ELISpotアッセイで実証した(図2A及び2B)。抗体応答も試験し、PSA指向型抗体応答が、対照マウスではなく免疫化マウスで検出された(図3)。
【0351】
感染したヒトDCが、IFN-γを分泌するようにヒト抗原特異的T細胞系を刺激し得るか否かを決定するために、特異的に感染したDCを、抗原特異的T細胞株と共にインキュベートし、刺激の尺度としてIFN-γ分泌活性に関して試験をした。ヒトDCにAd5ベクターを感染させ、48時間インキュベートし、洗浄し、ヒト抗原特異的T細胞の刺激に使用した。表4に示されるように、ヒト樹状細胞(HLA-A2供与体から)の、トランス遺伝子をコードする組換えAd5-PSAベクターによる感染は、PSA特異的T細胞株を活性化してIFN-γを生成することができる。
【0352】
これらの上記結果は、Ad5[E1-,E2b-]-PSAワクチンが、PSA指向型免疫応答の誘発に有効であることを実証する。
【0353】
【表4】
【0354】
Ad5[E1-,E2b-]-PSAワクチンの抗腫瘍活性
Ad5[E1-,E2b-]-PSAワクチンの抗腫瘍活性を、PSA発現がんのマウスモデルで試験した。BALB/cマウスを、Ad5[E1-,E2b-]-nullの1×1010VPにより(空ベクター対照)又はAd5[E1-,E2b-]-PSAワクチンの1×1010VPにより、2週間の間隔で、皮下(SC)で3回免疫化した。最後の免疫化(ワクチン接種)から2週間後、マウスに5×105個のPSA発現マウス腫瘍細胞を移植した。全てのマウスを腫瘍成長に関してモニターし、腫瘍体積を計算して、Ad5[E1-,E2b-]-PSAによる予備免疫化が、対照マウスではなく免疫化マウスで腫瘍の成長を阻害したか否かを決定した。腫瘍体積は、式V=(腫瘍の幅2×腫瘍の長さ)/2により計算した。Ad5[E1-,E2b-]-PSAにより免疫化されたマウスは、Ad5[E1-,E2b-]-nullを注射した対照マウスに比べ、より遅い腫瘍成長を経験した(図4)。これらの研究は、Ad5[E1-,E2b-]-PSAベクタープラットフォームが、PSA発現腫瘍を治療する免疫療法剤として利用される可能性を有することを示す。
【0355】
ELISPOTによる抗原特異的応答の評価
脾細胞を、実験の終わりに回収し(腫瘍接種後37日目)、ex vivoでPSAペプチドプール、陰性対照(SIV-Nefペプチドプール)、又は陽性対照(コンカナバリンA(Con A))に曝露した。サイトカイン分泌を、図14に示されるように、ELISPOTアッセイを使用して、ex vivoで刺激後に測定した。データを、脾細胞106個当たりのスポット形成細胞(SFC)の数として報告し、エラーバーはSEMを示す。図14Aは、ex vivo刺激後のIFN-γ分泌細胞を示す。図14Bは、ex vivo刺激後のIL-2分泌細胞を示す。図14Cは、ex vivo刺激後のグランザイムB分泌細胞を示す。
【0356】
細胞内サイトカイン染色及びフローサイトメトリーによる抗原特異的応答の評価
脾細胞を、実験の終わりに回収し(腫瘍接種後37日目)、ex vivoでPSAペプチドプール、又は陰性対照抗原(培地又はSIV-Nefペプチドプール)に曝露した。細胞を、図15に示されるように、表面マーカーに関して及び細胞内サイトカイン分泌に関して染色し、フローサイトメトリーにより分析した。図15Aは、IFN-γを分泌するCD8β+脾細胞のパーセントを示す。図15Bは、IFN-γを分泌するCD4+脾細胞のパーセントを示す。図15Cは、IFN-γ及びTNF-αを分泌するCD8β+脾細胞のパーセントを示す。図15Dは、IFN-γ及びTNF-αを分泌するCD4+脾細胞のパーセントを示す。
【0357】
ELISAによるPSAに対する抗原特異的抗体の評価
血清を、実験の終わりに回収し(腫瘍接種後37日目)、図16に示されるように、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して抗体の存在に関して分析した。図16Aは、PSAに対するIgG特異的抗体の質量を示す。図16Bは、PSAに対するIgG1特異的抗体の質量を示す。
【0358】
Ad5[E1-,E2b-]-PSAワクチンの毒性の評価
広範な前臨床毒性学研究を実施して、BALB/cマウスにおけるSC注射後のAd5[E1-,E2b-]-PSAの毒性を評価する。毒性の終点を、注射後の様々な時点で評価する。動物に、体質量(body mass)の相違により臨床試験で使用されるものと一致する用量で、ビヒクル対照又はAd5[E1-,E2b-]-PSAのいずれかを、1、22、及び43日目に最大3回のSC注射を施用する。評価は、体重に対する影響、体重増加、食物消費病理学、血液内科分析、血液化学分析に関する効果、及び凝固時間に関する試験からなる。
【0359】
まとめると、Ad5[E1-,E2b-]-PSAは、堅牢な免疫応答を誘発させる治療ワクチン標的PSAである。Ad5[E1-,E2b-]-PSAは、IFN-γ及びIL-2分泌脾細胞に関するELISpotアッセイで評価されるように、マウスのPSAに対して強力なCMIを誘発させた。更に、ヒト抗原特異的T細胞株を、Ad5[E1-,E2b-]-PSAに感染させたヒトDCにより刺激した。
【0360】
重要なのは、Ad5[E1-,E2b-]-PSAワクチンが、PSA発現がんの前臨床マウスモデルで抗腫瘍活性を発生させたことである。
【0361】
[実施例2]
進行期前立腺がんを有する個体におけるAd5[E1-,E2b-]-PSAワクチンの第I/IIa相研究
この実施例は、進行期前立腺がんを有する個体におけるAd5[E1-,E2b-]-PSAワクチンの第I/IIa相研究について記述する。目標は、その他のAd5系で見出された障害を克服するAd5ベクター系を利用する、PSAに対するこの治療用ワクチンを、臨床的に試験をすることである。臨床研究の結果は、免疫療法剤としてこのAd5[E1-,E2b-]-PSAワクチンを使用する安全性及び免疫原性を確立することができる。
【0362】
研究の特定の目的は、進行期の前立腺がんを有する患者における、Ad5[E1-,E2b-]-PSA免疫療法剤による治療的免疫療法の安全性及び実現可能性を評価することである。Ad5[E1-,E2b-]-PSAは、抗腫瘍T細胞媒介型免疫応答を誘発するように設計される。
【0363】
Ad5[E1-,E2b-]-PSAは、初期1(E1)、初期2b(E2b)、及び初期3(E3)遺伝子領域の除去と、ヒト前立腺特異的抗原(PSA)遺伝子の挿入とによって修飾されたアデノウイルス血清型5(Ad5)ベクターである。得られた組換え複製欠損ベクターは、ベクター生成にin transで必要とされるE1及びE2b遺伝子機能を供給する、新たに工学操作された所有権のある(proprietary)のヒト293をベースにした細胞系(E.C7)で、増殖する。遺伝子導入挿入は、このプロトコルでは提案されず、生成物はエピソームで機能し、エピソームのままである。
【0364】
非盲検用量増加第I/IIa相研究を、PSA発現前立腺がんを有する、合計で最大24名の患者に実施する。5×109、5×1010、及び5×1011アデノウイルスVP投薬レベルを評価する。第I相では、患者を、3又は6名の患者の連続投薬レベルコホートに参加させ、用量制限毒性(DLT)をモニターする。各患者に、3週間ごとにSC注射によりAd5[E1-,E2b-]-PSAを与えて、3回免疫化する。用量増加に関するDLTの評価を、コホート内の全ての患者がワクチンの最後の容量を受けてから少なくとも3週間後に治験来院した後に、行う。このワクチンの任意の成分に対してアレルギー反応の病歴を持つ患者は、試験に含めない。
【0365】
製品の詳細
Ad5[E1-,E2b-]-PSAワクチンは、抽出可能なワクチン1mLが入っている2mLのアンバーバイアルに充填した無色透明の液体である。合計で、製品の1mL中に5.0×1011個のVPがある。各バイアルはゴム栓で密封され、白色フリップオフシールを有する。製品のエンドユーサーは、親指でキャップの白色プラスチック部分を取り払い/引き剥がして、ゴム栓を露出させ、次いで注射針で栓に穴を開けて液体を引き出す。ゴム栓を、アルミニウムクリンプシールでバイアルに固定する。
【0366】
Ad5[E1-,E2b-]-PSAは、トランスフェクトした細胞内のPSAの高レベル発現を特徴とする。
【0367】
投薬及び投与
Ad5[E1-,E2b-]-PSAの用量は、どのコホートに患者が参加するかに応じて、5×109、5×1010、又は5×1011VPである。最大耐用量は、用量増加研究で決定される。
【0368】
Ad5[E1-,E2b-]-PSAワクチンを、≦20℃で保存する。注射の前に、適切なバイアルを冷凍庫から取り出して、制御された室温(20〜25℃、68〜77°F)で少なくとも20分間且つ30分以下で解凍させ、その後、2〜8℃(35〜46°F)で保持する。ワクチンは、冷凍庫から取り出した後、2〜8℃(35〜46°F)で冷蔵したままにした場合に少なくとも8時間安定である。
【0369】
解凍したバイアルをかき混ぜ、次いで無菌技術を使用して、薬剤師が適切な体積(1mL)を、1mL注射器を使用してバイアルから引き出す。ワクチンを、1〜1/2インチ、20〜25ゲージ針を使用して、可能な限り早く注射する。ワクチンを直ぐに注射できない場合は、注射器を2〜8℃(35〜46°F)で保存する。
【0370】
ワクチンの全ての注射は、上腕での皮下注射により、注射部位をアルコールで前処理した後に、1mLの体積として与えられる。いずれかの腕を、各注射ごとに使用する。
【0371】
注射器内に、ある用量を調製し、その用量を投与する場合、プロトコルで指定された全用量が投与されることを確実にするために、その用量が投与された後に針の中に残る可能性がある溶液の体積が、考慮される。
【0372】
Ad5[E1-,E2b-]-PSAワクチンを、2mLの単回用量バイアルに、滅菌透明溶液として供給する。各バイアルは、1mL当たり5×1011VPで提供された単回用量のワクチンを含む。各バイアルは、1.3mLの合計体積を含有する。生成物を、使用まで≦-20±10℃で保存する。
【0373】
Ad5[E1-,E2b-]-PSAの個々のバイアル(所望の数で)を、段ボール箱に包装し、ドライアイス(<-20℃)上で、温度モニタリングデバイスを含めた状態で翌日配達便で輸送する。受け取ったら、目立つ損傷又は欠陥に関してパッケージの中身を検査する。輸送された中身を取り出し、Ad5[E1-,E2b-]-PSAバイアルが入っている段ボール箱を、<-20℃に温度制御された冷凍庫内に置く。受取人は、電力スイッチを切ることによって温度モニタリングデバイスを停止させる(温度モニタリングデバイスを取り扱い及び運用するための取扱い説明書が、パッケージと共に提供される)。
【0374】
用量調製のための取扱い説明(5×109ウイルス粒子)
0.9%滅菌生理食塩液の5.0mLバイアルから、流体0.05mLを取り出し、4.95mLを残す。次いでAd5[E1-,E2b-]-PSAと標識されたバイアルから0.05mLを取り出し、この体積を5mLの滅菌生理食塩液バイアルに送出する。5mLの希釈薬物を反転させることによって内容物を混合する。次いで希釈薬物1mLを引き出し、皮下注射によって患者に送達する(用量調製の詳細な説明は、添付文書に記述されている)。
【0375】
用量調製のための取扱い説明(5×1010ウイルス粒子)
0.9%滅菌生理食塩液の5.0mLバイアルから、流体0.5mLを取り出し、4.5mLを残す。次いでAd5[E1-,E2b-]-PSAと標識されたバイアルから0.5mLを取り出し、この体積を5mLの滅菌生理食塩液バイアルに送出する。5mLの希釈薬物を反転させることによって内容物を混合する。次いで希釈薬物1mLを引き出し、皮下注射によって患者に送達する(用量調製の詳細な説明は、添付文書に記述されている)。
【0376】
用量調製のための取扱い説明書(5×1011ウイルス粒子)
バイアルから内容物1mLを引き出し、いかなるその他の処置もせずに、患者に、皮下注射により送達する。
【0377】
[実施例3]
多標的ワクチンの生成
この実施例は、1種超の抗原標的を含む多標的ワクチンの生成について記述する。
【0378】
多標的ベクターの生成
Ad5[E1-,E2b-]-Brachyury、Ad5[E1-,E2b-]-PSA(及び/又はPSMA)、及びAd5[E1-,E2b-]-MUC1を構築し、生成する。手短には、トランス遺伝子を、相同組換えをベースにした手法を使用してAd5[E1-,E2b-]ベクターのE1領域にサブクローニングする。複製欠損ウイルスが、E.C7パッケージング細胞株で増殖し、CsCl2精製され、力価測定される。ウイルス感染力価を、E.C7細胞単層上のプラーク形成単位(PFU)として決定する。VP濃度は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)破壊、並びに260nm及び280nmでの分光光度法によって決定される。
【0379】
配列番号1又は配列番号35のようにヒトPSA抗原をコードする配列が構築され、その後、Ad5ベクターにクローニングされて、Ad5[E1-,E2b-]-PSA構築物を作製する。同様に、配列番号11のようにヒトPSA抗原をコードする配列が構築され、その後、Ad5ベクターにクローニングされて、Ad5[E1-,E2b-]-PSMA構築物を作製する。
【0380】
ヒトBrachyuryタンパク質(T, NM_003181.3)をコードする配列は、エンハンサーT細胞HLA-A2エピトープ(WLLPGTSTV; 配列番号7)の導入、及びDNA結合に関わる25アミノ酸断片の除去によって、修飾される。得られる構築物を、次にAd5ベクターにサブクローニングして、Ad5[E1-,E2b-]-Brachyury構築物を作製する。
【0381】
MUC1分子は、2つの領域: MUC1の大きい細胞外ドメインであるN末端(MUC1-n)と、3つの領域:小さい細胞外ドメイン、1回膜貫通ドメイン、及び細胞質尾部を有するC末端(MUC1-c)とからなるものであった。細胞質尾部は、シグナル伝達タンパク質と相互作用する部位を含有しており、侵襲性及び転移性の、がん遺伝子及びがん転移性の駆動因子として働く。Ad5[E1-,E2b-]-MUC1の構築のため、8個のアゴニストエピトープを含むMUC1トランス遺伝子全体を、Ad5ベクターにサブクローニングするだろう。Ad5[E1-,E2b-]-MUC1ベクターに含まれるアゴニストエピトープは、HLA-A2(N末端のエピトープP93L、VNTR領域のV1A及びV2A、並びにC末端のC1A、C2A、及びC3A)、HLA-A3(エピトープC5A)、及びHLA-A24(C末端のエピトープC6A)に結合する。
【0382】
Tri-Ad5ワクチンは、1010VPのAd5[E1-,E2b-]-Brachyury、Ad5[E1-,E2b-]-PSA(又は代替として、Ad5[E1-,E2b-]-PSMA)、及びAd5[E1-,E2b-]-MUC1を、1:1:1の比で組み合せることによって(合計で3×1010VP)、生成される。
【0383】
多標的ワクチンのGLP生成
下記は、医薬品安全性試験実施基準(GLP)を使用した臨床グレードの多標的ワクチンの生成を示す。Ad5[E1-,E2b-]-PSA(及び/又はPSMA)、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1、及びAd5[E1-,E2b-]-Brachyury生成物を、5Lの細胞バイオリアクター内に生成することができる。
【0384】
手短には、E.C7製造細胞株のバイアルを解凍し、T225フラスコに移し、最初に、10% FBS/4mM L-グルタミンを含有するDMEM中5% CO2中で、37℃で培養する。増殖後、E.C7細胞を、10層のCellSTACKS(CS-10)を使用して増殖し、FreeStyle無血清培地(SFM)に移行させる。E.C7細胞を、5%CO2中37℃で、24時間にわたりSFM中で培養して、細胞バイオリアクター内で目標密度5×105細胞/mLにする。次いでE.C7細胞にAd5[E1-,E2b-]-PSA、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1、又はAd5[E1-,E2b-]-Brachyuryをそれぞれ感染させ、48時間培養するだろう。
【0385】
中流加工(Mid-stream processing)を、回収の30分前に行い、ベンゾナーゼヌクレアーゼを培養物に添加して、濃縮するのにより良好な細胞ペレット化を促進させる。遠心分離によるペレット化後、上澄みを廃棄し、ペレットを、1%ポリソルベート-20を含有する溶解緩衝液に、室温で90分間再懸濁する。次いで溶解物を、ベンゾナーゼで処理し、反応を、5M NaClを添加することによって停止させるだろう。スラリーを遠心分離し、ペレットは廃棄するだろう。溶解産物は濾過によって清澄化され、2カラムイオン交換手順に供されるだろう。
【0386】
ワクチン生成物を精製するために、2カラム陰イオン交換手順を行う。第1のカラムにQセファロースXL樹脂を充填し、消毒し、ローディングバッファーで平衡にする。清澄化した溶解物を、カラム上に投入し、ローディングバッファーで洗浄する。ワクチン生成物を溶出し、Ad5[E1-,E2b-]-PSA(及び/又はPSMA)、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1、又はAd5[E1-,E2b-]-Brachyuryを含有する主要な溶出ピーク(溶出液)を、次のステップに前進させる。第2のカラムにはSource 15Q樹脂を充填し、消毒し、ローディングバッファーで平衡にする。第1の陰イオン交換カラムからの溶出液を、第2のカラムに供し、ワクチン生成物を、100%緩衝液A(20mM Tris、1mM MgCl2、pH8.0)から開始して50%緩衝液B(20mM Tris、1mM MgCl2、2M NaCl、pH8.0)までランする勾配で溶出する。Ad5[E1-,E2b-]-PSA(及び/又はPSMA)、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1、又はAd5[E1-,E2b-]-Brachyuryを含有する溶出ピークを回収し、2〜8℃で一晩保存する。ピーク溶出画分を、製剤緩衝液(20mM Tris、25mM NaCl、2.5%(v/v)グリセロール、pH 8.0)に対する濃度及びダイアフィルトレーションに関して、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)システムを通して処理する。処理後、最終ワクチン生成物を滅菌濾過し、一定分量に分配し、≦-60℃で保存する。100%純度近くの高度に精製された生成物が、典型的には生成され、これらの生成物と同様の結果が予測される。
【0387】
生成されるVP生成物の濃度及び総数は、分光光度法により決定される。生成物の純度は、HPLCによって評価される。感染活性は、キットを使用して、感染性粒子に関するAd5ヘキソン染色アッセイを行うことによって決定される。
【0388】
ウェスタンブロットを、ベクターをトランスフェクトしたA549細胞からの溶解物を使用して行って、PSA、PSMA、MUC1、又はBrachyury発現を検証する。品質管理試験を行って、最終ワクチン生成物がマイコプラズマを含まず、微生物汚染度がなく、1mL当たり2.5未満の内毒素単位(EU)である内毒素レベルを示すことを決定する。免疫原性を確認するために、個々のベクターを、以下に記述されるように(実施例4)マウスで試験する。
【0389】
[実施例4]
多標的PSA(及び/又はPSMA)、MUC1、Brachyuryウイルスベクターの免疫原性
この実施例は、PSA(及び/又はPSMA)、MUC1、及びT(即ち、Brachyury)に対して多標的ワクチンを使用した免疫原性の結果について記述する。各ウイルスベクター生成物を、本明細書に記述されるように、純度、感染度、及び抗原発現に関して試験をし、それぞれが、これらの基準に合格した。
【0390】
ワクチン接種及び脾細胞調製
メスC57BL/6マウス(n=5)に、SCで1010VPのAd5[E1-,E2b-]-Brachyury若しくはAd5[E1-,E2b-]-PSA(及び/又はPSMA)若しくはAd5[E1-,E2b-]-MUC1、又は1010VPの3種の全ウイルスの組合せを1:1:1の比で(PSA及び/又はPSMA、MUC1、及びBrachyuryを有するTri-Ad5)を注射する。対照マウスには、3×1010VPのAd-null(トランス遺伝子挿入物なし)を注射する。用量を、注射緩衝液(20mM HEPES、3%スクロースを含む)25μlに溶かして投与し、マウスに、14日間の間隔で3回、ワクチン接種する。最終の注射から14日後、脾臓及び血清を回収する。血清を-20℃で凍結する。脾細胞懸濁液を、脾臓を70μMのナイロンセルストレイナー(BD Falcon、San Jose、CA)に通して穏やかに破砕することにより発生させる。赤血球を、赤血球溶解緩衝液(Sigma-Aldrich、St. Louis、MO)の添加により除去し、脾細胞を2回洗浄し、R10(L-グルタミン(2mM)、HEPES(20mM)、ペニシリン100U/ml、及びストレプトマイシン100μg/ml、及び10%ウシ胎児血清が補われたRPMI 1640)に再懸濁する。脾細胞を、ELISPOT及びフローサイトメトリーによりサイトカイン生成に関してアッセイを行う。
【0391】
免疫原性研究:
Ad5[E1-,E2b-]ベクターによる免疫化は、用量依存的であり、1用量当たり1×1010VPが使用される。C57Bl/6マウスの群(N=5)を使用する。
【0392】
この研究では、C57Bl/6マウスに、1×1010ウイルス粒子(VP)Ad5[E1-,E2b-]-null(空ベクター対照)を含むtri-免疫化で、又はAd5[E1-,E2b-]-PSA(及び/又はPSMA)、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1、及びAd5[E1-,E2b-]-Brachyuryの1:1:1混合物を含有する1×1010VPで、1週間の間隔又は2週間の間隔で3回、皮下注射する。
【0393】
最後の免疫化から2週間後、脾細胞をPSA、MUC1、又はBrachyuryペプチドプールにそれぞれ曝露した後、IFN-γ分泌細胞(SFC)に関して、ELISpotアッセイを用いてCMI活性を決定する。
【0394】
多標的ベクターに対する有意なCMI応答は、免疫化マウスで検出される。細胞内サイトカイン染色を利用するフローサイトメトリーを、PSA及び/又はPSMAペプチドに曝露した後に脾臓細胞で行って活性化したCD4+及びCD8+ T細胞の量を評価する。
【0395】
手短には、IFN-γ分泌脾細胞(SFC)に関してELISpotアッセイにより評価されるPSA、PSMA、MUC1、及びBrachyuryに対するCMI応答は、対照マウス(Ad5-null空ベクターを注射)ではなく多標的免疫化マウスで検出される。ELISpotアッセイ応答の特異性は、無関係のSIV-nef又はSIV-vifペプチド抗原に対する反応性の欠如によって確認される。陽性対照は、コンカナバリンA(Con A)に曝露された細胞を含む。
【0396】
抗腫瘍免疫療法研究:
研究は、確立されたPSA、MUC1、又はBrachyury発現腫瘍をそれぞれ持ったマウスでの免疫療法研究における、Ad5[E1-,E2b-]をベースにした3価ワクチン(Tri-Ad5、即ち、Ad5[E1-,E2b-]-PSA(及び/又はPSMA)、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1、及び/又はAd5[E1-,E2b-]-Brachyury)の抗腫瘍能力を試験するために実施する。この研究では、Ad5[E1-,E2b-]-ベースの3価ワクチンの個々の成分の抗腫瘍活性を評価する。
【0397】
in vivo腫瘍治療研究では、C57Bl/6マウスの群(n=7)の右脇腹に、5×105PSA(及び/又はPSMA)、MUC1、及び/又はBrachyury発現マウス腫瘍細胞を皮下注射する。明らかな腫瘍が検出された後、マウスに、Ad5[E1-,E2b-]-null(トランス遺伝子なし、例えば空ベクター)、Ad5[E1-,E2b-]-PSA(及び/又はPSMA)、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1、及び/又はAd5[E1-,E2b-]-Brachyuryのそれぞれ1×1010VPを、1週間の間隔で3回の皮下注射によって処置する。対照マウスには、アデノ-nullの3×1010VPを注射する。腫瘍体積を計算し、腫瘍成長曲線をプロットする。7〜10マウス/群が、治療の統計的評価に十分である。腫瘍研究は、腫瘍が1500m3に達したとき又は重度に潰瘍化したときに終了する。
【0398】
有意な抗腫瘍活性を示すため、且つ免疫療法と免疫経路チェックポイント調節剤、例えば抗チェックポイント阻害剤抗体とを組み合せるため、より多くの数のマウスを処置して、抗腫瘍活性が高まるか否かを決定する。
【0399】
[実施例5]
ワクチン接種後のPSA抗体活性
この実施例は、ワクチン接種後のPSA抗体活性の誘発について記述する。PSA抗体活性は、Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3をワクチン接種したマウスの血清から評価する。PSA IgGレベルは、Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3を3回ワクチン接種したマウスにおいてELISAにより決定された通りである。
【0400】
マウスの同じ群におけるPSA発現腫瘍細胞に対する補体依存性細胞障害(CDCC)を、試験対象によって実証する。細胞毒性活性は、ワクチン接種したマウスで観察されるが、対照マウス又は補体のみに曝露された細胞では観察されない。
【0401】
[実施例6]
Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3併用免疫療法臨床試験
この実施例は、併用療法としてのAd5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3の臨床試験について記述する。臨床試験は、前立腺がん患者の免疫療法のため、Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチンと抗-PDL1抗体との組合せを用いる。研究の第I相部分は、前立腺がんの患者におけるAd5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3による免疫化の安全性を決定する。研究の第II相部分は、免疫化に対する患者免疫応答と、抗-PDL1抗体と組み合せてAd5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチンで前立腺がんを治療する臨床上の実現可能性を評価する。
【0402】
研究集団は、PSA陽性の前立腺がんであると病歴上確認された診断がなされた患者からなる。Ad5[E1-,E2B-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチンの3つの投薬レベルの安全性(第I相成分)と、Ad5[E1-,E2B-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチンを、前立腺がんを治療するための抗PDL1抗体と組み合せて使用する安全性及び適切性(第II相成分)を、研究により決定する。
【0403】
第I相研究の薬物は、3回の免疫化のために3週間ごとの皮下(SC)注射によって与えられたAd5[E1-,E2B-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3である。第II相研究の薬物は、3回の免疫化のために3週間ごとの皮下(SC)注射により与えられた抗-PDL1抗体と組み合せたAd5[E1-,E2B-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3である。安全性を、各コホートにおいて、先のコホートの最後の患者がその最初の注射を受けてから少なくとも3週間後に評価する。投薬スキームは、投薬レベルで治療された患者の<33%がDLTを経験した場合(例えば、3名のうち0名、6名のうち≦1名、12名のうち≦3名、又は18名のうち≦5名の患者)、安全であると見なされる。
【0404】
[実施例7]
Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-PSMA/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-Brachyury/B7-1/ICAM-1/LFA-3、及び抗-PDL1抗体の併用免疫療法臨床試験
この実施例は、Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-PSMA/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-Brachyury/B7-1/ICAM-1/LFA-3、及び抗-PDL1抗体の、併用療法としての臨床試験について記述する。臨床試験は: Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチン、Ad5[E1-,E2b-]-PSMA/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチン、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチン、Ad5[E1-,E2b-]-Brachyury/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチン、及び抗-PDL1抗体の組合せを、進行期のPSAを発現する前立腺がん患者の免疫療法のために用いる。研究の第I相部分は、前立腺がんの患者での、Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-PSMA/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチン、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-Brachyury/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチンによる免疫化の安全性を決定する。研究の第II相部分は、免疫化に対する患者の免疫応答と、Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-PSMA/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチン、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-Brachyury/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチンを抗-PDL1抗体と組み合せたものによる、前立腺がんの治療の臨床上の実現可能性とを、評価する。
【0405】
研究集団は、PSA陽性であると病歴上確認された前立腺がんの診断がなされた患者からなる。Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-PSMA/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチン、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-Brachyury/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチンの3つの投薬レベルの安全性(第I相成分)と、Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-PSMA/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチン、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-Brachyury/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチンを、前立腺がんを治療するための抗-PDL1抗体と組み合せて使用することの安全性及び適切性(第II相成分)とが、研究により決定される。
【0406】
第I相研究の薬物は、3回の免疫化のために3週間ごとに皮下(SC)注射により与えられる、Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-PSMA/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチン、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-Brachyury/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチンの組合せである。第II相研究の薬物は、3回の免疫化のために3週間ごとに皮下(SC)注射により与えられる、Ad5[E1-,E2b-]-PSA/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-PSMA/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチン、Ad5[E1-,E2b-]-MUC1/B7-1/ICAM-1/LFA-3、Ad5[E1-,E2b-]-Brachyury/B7-1/ICAM-1/LFA-3ワクチンを抗-PDL1抗体と組み合せたものである。安全性は、各コホートにおいて、先のコホートの最後の患者がその最初の注射を受けた後から少なくとも3週間後に評価する。投薬スキームは、投薬レベルで治療された患者の<33%がDLTを経験した場合(例えば、3名のうち0名、6名のうち≦1名、12名のうち≦3名、又は18名のうち≦5名の患者)、安全であると見なされる。
【0407】
[実施例8]
Ad5[E1-,E2b-]-PSA及び/又はAd5[E1-,E2b-]-PSMAによるがんの治療
この実施例は、PSA発現及び/又はPSMA発現がんを含めたがんの治療を必要とする対象における、その治療について記述する。PSA又はPSMAをコードするAd5[E1-,E2b-]ベクターを、皮下に、1×109〜5×1011ウイルス粒子(VP)の用量を、それを必要とする対象に投与する。ワクチンは、合計で3回投与し、各ワクチン接種は、3週間の間隔を空けて離す。その後、ブースター注射を2カ月ごとに(隔月で)行う。対象は、任意の動物、例えばマウス、ヒト、又はヒト以外の霊長類などの哺乳動物である。ワクチンを投与すると、PSA発現又はPSMA発現がんに対して細胞及び液性応答が開始され、がんが排除される。
【0408】
[実施例9]
Ad5[E1-,E2b-]-PSA及び/又はAd5[E1-,E2b-]-PSMAと共刺激分子とのがんの併用治療
この実施例は、PSA発現及び/又はPSMA発現がんの併用治療を必要とする対象における、その治療について記述する。PSA又はPSMAをコードするAd5[E1-,E2b-]ベクターを、その必要がある対象に、1×109〜5×1011ウイルス粒子(VP)の用量で、共刺激分子と組み合せて皮下に投与する。ワクチンは、合計で3回投与し、各ワクチン接種は3週間の間隔を空けて離す。その後、隔月にブースター注射を投与する。共刺激分子は、B7-1、ICAM-1、又はLFA-3である。対象は、任意の動物、例えばマウス、ヒト、又はヒト以外の霊長類などの哺乳動物である。ワクチン及び共刺激分子を投与すると、細胞及び液性応答がPSA発現又はPSMA発現がんに対して開始され、がんが排除される。
【0409】
[実施例10]
Ad5[E1-,E2b-]-PSA及び/又はAd5[E1-,E2b-]-PSMAとチェックポイント阻害剤とのがんの併用治療
この実施例は、PSA発現及び/又はPSMA発現がんを含めたがんの治療を必要とする対象における、その治療について記述する。PSA及び/又はPSMAをコードするAd5[E1-,E2b-]ベクターを、それを必要とする対象に、チェックポイント阻害剤と組み合せて皮下に1×109〜5×1011ウイルス粒子(VP)の用量で投与する。ワクチンを、合計で3回投与し、各ワクチン接種は3週間の間隔で離す。その後、隔月でブースター注射を投与する。チェックポイント阻害剤は、アベルマブなどの抗-PDL1抗体である。アベルマブは、10mg/kgとラベルされる添付文書の通りに投薬され投与される。対象は、任意の動物、例えばマウス、ヒト、又はヒト以外の霊長類などの哺乳動物である。ワクチン及びチェックポイント阻害剤を投与すると、細胞及び液性応答がPSA発現又はPSMA発現がんに対して開始され、がんが排除される。
【0410】
[実施例11]
Ad5[E1-,E2b-]-PSA及び/又はAd5[E1-,E2b-]-PSMAと工学操作されたNK細胞とのがんの併用治療
この実施例は、PSA発現及び/又はPSMA発現がんを含めたがんの併用治療を必要とする対象における、その治療について記述する。PSA及び/又はPSMAをコードするAd5[E1-,E2b-]ベクターを、それを必要とする対象に、共刺激分子と組み合せて皮下に1×109〜5×1011ウイルス粒子(VP)の用量で投与する。ワクチンは、合計で3回投与し、各ワクチン接種は、3週間の間隔を空けて離す。その後、隔月でブースター注射を投与する。対象には更に、工学操作されたNK細胞、特に活性化NK細胞(aNK細胞)を投与する。aNK細胞を、治療当たり2×109細胞の用量で、-2、12、26、及び40日目に注入する。その必要がある対象は、大腸がんなどのCEA発現がん細胞を有する。対象は、ヒト又はヒト以外の霊長類などの任意の哺乳動物である。
【0411】
[実施例12]
Ad5[E1-,E2b-]-PSA及び/又はAd5[E1-,E2b-]-PSMAとALT-803とによるがんの併用治療
この実施例は、PSA発現及び/又はPSMA発現がんを含めたがんの併用治療を必要とする対象における、その治療について記述する。PSA及び/又はPSMAをコードするAd5[E1-,E2b-]ベクターを、その必要がある対象に、共刺激分子と組み合せて皮下に、1×109〜5×1011ウイルス粒子(VP)の用量で投与する。ワクチンは、合計で3回投与し、各ワクチン接種は、3週間の間隔を空けて離される。その後、隔月でブースター注射を投与する。対象に、それぞれ1、2、4、5、7、及び8週目に、SCで10μg/kgの用量で、ALT-803などのスーパーアゴニスト/スーパーアゴニスト複合体も投与する。その必要がある対象は、大腸がんなどのCEA発現がん細胞を有する。対象は、ヒト又はヒト以外の動物などの任意の哺乳動物である。
【0412】
[実施例13]
Ad5[E1-,E2b-]-PSA及び/又はAd5[E1-,E2b-]-PSMAと低用量化学療法剤とのがんの併用治療
この実施例は、PSA発現及び/又はPSMA発現がんを含めたがんの併用治療を必要とする対象における、その治療について記述する。PSA及び/又はPSMAをコードするAd5[E1-,E2b-]ベクターを、その必要がある対象に、共刺激分子と組み合せて皮下に、1×109〜5×1011ウイルス粒子(VP)の用量で投与する。ワクチンは、合計で3回投与し、各ワクチン接種は、3週間の間隔を空けて離される。その後、隔月でブースター注射を投与する。
【0413】
対象には、低用量化学療法剤を投与する。化学療法剤は、シクロホスファミドである。化学療法剤は、臨床ケア基準の投薬量よりも少ない用量で投与される。例えば、化学療法剤は、合計で8週間にわたり、2週間ごとに1〜5日及び8〜12日目に、1日2回(BID)、50mgを投与する。その必要がある対象は、大腸がんなどのCEA発現がん細胞を有する。対象は、ヒト又はヒト以外の動物などの、任意の哺乳動物である。
【0414】
[実施例14]
Ad5[E1-,E2b-]-PSA及び/又はAd5[E1-,E2b-]-PSMAと低線量放射線とのがんの併用治療
この実施例は、PSA発現及び/又はPSMA発現がんを含めたがんの併用治療を必要とする対象における、その治療について記述する。PSA及び/又はPSMAをコードするAd5[E1-,E2b-]ベクターを、その必要がある対象に、共刺激分子と組み合せて皮下に、1×109〜5×1011ウイルス粒子(VP)の用量で投与する。ワクチンは、合計で3回投与し、各ワクチン接種は、3週間の間隔を空けて離される。その後、隔月でブースター注射を投与する。
【0415】
対象には、低線量放射線も投与する。低線量放射線は、臨床ケア基準の投薬量よりも低い用量で投与される。8Gyでの同時体幹部定位放射線治療(SBRT)を、8、22、36、50日目に行う(4用量に関して2週間ごと)。放射線は、SBRTを使用して全ての実現可能な腫瘍部位に投与される。その必要がある対象は、大腸がんなどのCEA発現がん細胞を有する。対象は、ヒト又はヒト以外の動物などの、任意の哺乳動物である。
【0416】
本発明の好ましい実施形態について、示し且つ本明細書に記述してきたが、そのような実施形態は単なる例として提供されることが、当業者にとって明らかであろう。数多くの変形例、変更例、及び置換例が、本発明から逸脱することなく当業者には生ずるであろう。本明細書に記述される本発明の実施形態に対する様々な代替例を、本発明を実施するのに用いてもよいことが、理解されるべきである。下記の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義するものとし、これらの特許請求の範囲及びそれらの均等物に含まれる方法及び構造がそれによって包含されるものとする。
本発明は以下の態様も提供する。
1] 前立腺特異的抗原(PSA)をコードする核酸配列、及び/又は前立腺特異的膜抗原(PSMA)をコードする核酸配列を含む、複製欠損ウイルスベクターを含む組成物であって、前記PSAが、配列番号1若しくは配列番号34に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有し、又は前記PSMAが、配列番号11に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する組成物。
[2] 前記ベクターが、配列番号35に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するPSAをコードする核酸配列、又は配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一であるPSAをコードする核酸配列を含む、[1]に記載の組成物。
[3] 前記ベクターが、配列番号36に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するPSMAをコードする核酸配列を含む、[1]に記載の組成物。
[4] Brachyury抗原をコードする第2の核酸配列を含む第2の複製欠損ウイルスベクター、MUC1抗原をコードする第3の核酸配列を含む第3の複製欠損ウイルスベクター、又はこれらの組合せを更に含む、[1]に記載の組成物。
[5] 前記Brachyury抗原が、HLA-A2、HLA-A3、HLA-A24、又はこれらの組合せに結合する、[4]に記載の組成物。
[6] 前記Brachyury抗原が、WLLPGTSTV(配列番号7)に記載のアミノ酸配列を含む修飾Brachyury抗原である、[4]又は[5]に記載の組成物。
[7] 前記Brachyury抗原が、配列番号5、配列番号6、又は配列番号42に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む修飾Brachyury抗原である、[4]から[6]のいずれか一に記載の組成物。
[8] 前記第2の複製欠損ベクターが、配列番号3、配列番号4、配列番号4の13から1242位、配列番号42に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む、[4]から[7]のいずれか一に記載の組成物。
[9] 前記第2の複製欠損ベクターが、配列番号12(ma修飾Brachyury抗原をコードする配列を有するAdベクター)、配列番号12の1033〜2083位、又は配列番号42に対して少なくとも80%同一、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一のヌクレオチド配列を含む、[4]から[8]のいずれか一に記載の組成物。
[10] 前記MUC1抗原が、配列番号10又は配列番号41に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一である配列を含む、[4]から[9]のいずれか一に記載の組成物。
[11] MUC1抗原をコードする前記第3の核酸配列が、配列番号8、配列番号9、又は配列番号41に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%の同一性を含む、[4]から[10]のいずれか一に記載の組成物。
[12] 前記MUC-1抗原が、HLA-A2、HLA-A3、HLA-A24、又はこれらの組合せに結合する、[4]から[11]のいずれか一に記載の組成物。
[13] 前記複製欠損ウイルスベクター、前記第2の複製欠損ウイルスベクター、及び/又は前記第3の複製欠損ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターである、[4]から[12]のいずれか一に記載の組成物。
[14] 前記アデノウイルスベクターが、E1領域、E2b領域、E3領域、E4領域、又はこれらの組合せに欠失を含む、[13]に記載の組成物。
[15] 前記アデノウイルスベクターが、E2b領域に欠失を含む、[13]又は[14]に記載の組成物。
[16] 前記アデノウイルスベクターが、E1領域、E2b領域、及びE3領域に欠失を含む、[13]から[15]のいずれか一に記載の組成物。
[17] 前記組成物が、少なくとも1×109個のウイルス粒子〜少なくとも5×1012個のウイルス粒子を含む、[1]から[16]のいずれか一に記載の組成物。
[18] 前記組成物が、少なくとも5×109個のウイルス粒子を含む、[1]から[17]のいずれか一に記載の組成物。
[19] 前記組成物が、少なくとも5×1010個のウイルス粒子を含む、[1]から[18]のいずれか一に記載の組成物。
[20] 前記組成物が、少なくとも5×1011個のウイルス粒子を含む、[1]から[19]のいずれか一に記載の組成物。
[21] 前記組成物が、少なくとも5×1012個のウイルス粒子を含む、[1]から[20]のいずれか一に記載の組成物。
[22] 前記組成物又は前記複製欠損ウイルスベクターが、共刺激分子をコードする核酸配列を更に含む、[1]から[21]のいずれか一に記載の組成物。
[23] 前記共刺激分子が、B7、ICAM-1、LFA-3、又はこれらの組合せを含む、[22]に記載の組成物。
[24] 前記共刺激分子が、B7、ICAM-1、及びLFA-3の組合せを含む、[22]又は[23]に記載の組成物。
[25] 前記組合せが、同じ複製欠損ウイルスベクター内に配置された複数の共刺激分子をコードする複数の核酸配列を更に含む、[1]から[24]のいずれか一に記載の組成物。
[26] 前記組成物が、別の複製欠損ウイルスベクター内に配置された複数の共刺激分子をコードする複数の核酸配列を更に含む、[1]から[25]のいずれか一に記載の組成物。
[27] 前記組成物が、1つ以上の追加の標的抗原又はその免疫学的エピトープをコードする核酸配列を更に含む、[1]から[26]のいずれか一に記載の組成物。
[28] 前記複製欠損ウイルスベクターが、1つ以上の追加の標的抗原又はその免疫学的エピトープをコードする核酸配列を更に含む、[1]から[27]のいずれか一に記載の組成物。
[29] 前記1つ以上の追加の標的抗原が、腫瘍ネオ抗原、腫瘍ネオエピトープ、腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、組織特異的抗原、細菌抗原、ウイルス抗原、酵母抗原、真菌抗原、原生動物抗原、寄生虫抗原、マイトジェン、又はこれらの組合せである、[27]又は[28]に記載の組成物。
[30] 前記1つ以上の追加の標的抗原が、CEA、葉酸受容体アルファ、WT1、HPV E6、HPV E7、p53、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、BAGE、DAM-6、-10、GAGE-1、-2、-8、GAGE-3、-4、-5、-6、-7B、NA88-A、NY-ESO-1、MART-1、MC1R、Gp100、PSCA、PSMA、PAP、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、Cyp-B、Her2/neu、BRCA1、BRACHYURY、BRACHYURY(TIVS7-2、多型性)、BRACHYURY(IVS7 T/C多型性)、TBRACHYURY、T、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC1 (VNTR多型性)、MUC1c、MUC1n、MUC2、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-3、WT1、AFP、β-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CDK-4/m、Her2/neu、Her3、ELF2M、GnT-V、G250、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、Annexin II、CDC27/m、TPI/mbcr-abl、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RARα、若しくはTEL/AML1、又はこれらの修飾変異体、スプライス変異体、機能性エピトープ、エピトープアゴニスト、又はこれらの組合せである、[27]から[29]のいずれか一に記載の組成物。
[31] 前記1つ以上の追加の標的抗原がCEAである、[27]から[30]のいずれか一に記載の組成物。
[32] 前記1つ以上の追加の標的抗原が、CEA、Brachyury、及びMUC1である、[27]から[30]のいずれか一に記載の組成物。
[33] CEAが、配列番号37又は配列番号38に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一である、[32]に記載の組成物。
[34] 前記1つ以上の追加の標的抗原がHER3である、[27]から[30]のいずれか一に記載の組成物。
[35] 前記1つ以上の追加の標的抗原が、HPV E6又はHPV E7である、[27]から[30]のいずれか一に記載の組成物。
[36] 前記複製欠損ウイルスベクターが、選択可能マーカーを更に含む、[1]から[35]のいずれか一に記載の組成物。
[37] 前記選択可能マーカーが、lacZ遺伝子、チミジンキナーゼ、gpt、GUS、又はワクシニアK1L宿主域遺伝子、又はこれらの組合せである、[36]に記載の組成物。
[38] 前立腺特異的抗原(PSA)をコードする核酸配列、前立腺特異的膜抗原(PSMA)をコードする核酸配列、Brachyury抗原をコードする核酸配列、MUC1抗原をコードする核酸配列、又はこれらの組合せを含む、1種以上の複製欠損ウイルスベクターを含む組成物。
[39] 前立腺特異的抗原(PSA)をコードする核酸配列、Brachyury抗原をコードする核酸配列、及びMUC1抗原をコードする核酸配列を含む、1種以上の複製欠損ウイルスベクターを含む組成物。
[40] 前立腺特異的膜抗原(PSMA)をコードする核酸配列、Brachyury抗原をコードする核酸配列、及びMUC1抗原をコードする核酸配列を含む、1種以上の複製欠損ウイルスベクターを含む組成物。
[41] 前立腺特異的抗原(PSA)をコードする核酸配列、前立腺特異的膜抗原(PSMA)をコードする核酸配列、Brachyury抗原をコードする核酸配列、MUC1抗原をコードする核酸配列、及びCEA抗原をコードする核酸配列を含む、1種以上の複製欠損ウイルスベクターを含む組成物。
[42] 前記複製欠損ウイルスベクターが、免疫学的融合パートナーをコードする核酸配列を更に含む、[1]から[41]のいずれか一に記載の組成物。
[43] [1]から[42]のいずれか一に記載の組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
[44] [1]から[42]のいずれか一に記載の組成物を含む、宿主細胞。
[45] 腫瘍ワクチンを製造する方法であって、[43]に記載の医薬組成物を製造することを含む方法。
[46] それを必要とする対象において免疫応答を増強する方法であって、治療有効量の、[1]から[42]のいずれか一に記載の組成物又は[43]に記載の医薬組成物を、前記対象に投与することを含む、方法。
[47] それを必要とする対象においてPSA発現又はPSMA発現がんを治療する方法であって、治療有効量の、[1]から[42]のいずれか一に記載の組成物又は[43]に記載の医薬組成物を、前記対象に投与することを含む、方法。
[48] 前記医薬組成物を前記対象に再度投与することを更に含む、[46]又は[47]に記載の方法。
[49] 免疫チェックポイント阻害剤を前記対象に投与することを更に含む、[46]から[48]のいずれか一に記載の方法。
[50] 前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD1、PDL1、PDL2、CD28、CD80、CD86、CTLA4、B7RP1、ICOS、B7RPI、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、KIR、TCR、LAG3、CD137、CD137L、OX40、OX40L、CD27、CD70、CD40、CD40L、TIM3、GAL9、ADORA、CD276、VTCN1、IDO1、KIR3DL1、HAVCR2、VISTA、又はCD244を阻害する、[49]に記載の方法。
[51] 前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD1又はPDL1を阻害する、[49]又は[50]に記載の方法。
[52] 前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD1又は抗PDL1抗体である、[49]から[51]のいずれか一に記載の方法。
[53] 前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PDL1抗体である、[49]から[52]のいずれか一に記載の方法。
[54] 投与経路が、静脈内、皮下、リンパ内、腫瘍内、皮内、筋肉内、腹腔内、直腸内、膣内、鼻内、口内、膀胱内注入による、又はスカリフィケーションによるものである、[46]から[53]のいずれか一に記載の方法。
[55] 増強される免疫応答が、細胞性又は液性応答である、[46]から[54]のいずれか一に記載の方法。
[56] 増強される免疫応答が、B-細胞増殖、CD4+T細胞増殖、CD8+T細胞増殖、又はこれらの組合せの増強である、[46]から[55]のいずれか一に記載の方法。
[57] 増強される免疫応答が、IL-2生成、IFN-γ生成、又はこれらの組合せの増強である、[46]から[55]のいずれか一に記載の方法。
[58] 増強される免疫応答が、抗原提示細胞の増殖、機能、又はこれらの組合せの増強である、[46]から[55]のいずれか一に記載の方法。
[59] 前記対象が、アデノウイルスベクターを既に投与されている、[46]から[58]のいずれか一に記載の方法。
[60] 前記対象が、アデノウイルスベクターに対して既存の免疫性を有する、[46]から[59]のいずれか一に記載の方法。
[61] 前記対象が、アデノウイルスベクターに対して既存の免疫性を有すると決定される、[46]から[60]のいずれか一に記載の方法。
[62] 前記対象に、化学療法、放射線、異なる免疫療法、又はこれらの組合せを施用することを更に含む、[46]から[61]のいずれか一に記載の方法。
[63] 前記対象が、ヒト又はヒト以外の動物である、[46]から[62]のいずれか一に記載の方法。
[64] 前記対象が、がんに関して既に治療されている、[46]から[63]のいずれか一に記載の方法。
[65] 前記治療有効量を投与することが、少なくとも3回繰り返される、[46]から[64]のいずれか一に記載の方法。
[66] 前記治療有効量を投与することが、1用量当たり1×109〜5×1012個のウイルス粒子を含む、[46]から[65]のいずれか一に記載の方法。
[67] 前記治療有効量を投与することが、1用量当たり5×109個のウイルス粒子を含む、[46]から[66]のいずれか一に記載の方法。
[68] 前記治療有効量を投与することが、1用量当たり5×1010個のウイルス粒子を含む、[46]から[67]のいずれか一に記載の方法。
[69] 前記治療有効量を投与することが、1用量当たり5×1011個のウイルス粒子を含む、[46]から[68]のいずれか一に記載の方法。
[70] 前記治療有効量を投与することが、1用量当たり5×1012個のウイルス粒子を含む、[46]から[69]のいずれか一に記載の方法。
[71] 前記治療有効量を投与することが、1、2、又は3週ごとに繰り返される、[46]から[70]のいずれか一に記載の方法。
[72] 前記治療有効量を投与することに続き、同じ組成物又は医薬組成物を含む、1回以上のブースター免疫化がなされる、[46]から[71]のいずれか一に記載の方法。
[73] 前記ブースター免疫化が、1、2、又は3カ月ごとに施用される、[72]に記載の方法。
[74] 前記ブースター免疫化が、3回以上繰り返される、[72]又は[73]に記載の方法。
[75] 前記治療有効量を投与することが、3回にわたり1、2、又は3週ごとに繰り返される一次免疫化であり、その後、3回以上にわたり1、2、又は3カ月ごとに繰り返されるブースター免疫化がなされる、[46]から[74]のいずれか一に記載の方法。
[76] 前記対象に、工学操作されたナチュラルキラー(NK)細胞の集団を含む医薬組成物を投与することを更に含む、[46]から[75]のいずれか一に記載の方法。
[77] 前記工学操作されたNK細胞が、KIR(キラー細胞抑制受容体)の発現が本質的に欠如するよう修飾された1つ以上のNK細胞、高親和性CD16変異体を発現するよう修飾された1つ以上のNK細胞、及び1つ以上のCAR(キメラ抗原受容体)を発現するよう修飾された1つ以上のNH細胞、又はこれらの任意の組合せを含む、[76]に記載の方法。
[78] 前記工学操作されたNK細胞が、発現KIRが本質的に欠如するよう修飾された1つ以上のNK細胞を含む、[77]に記載の方法。
[79] 前記工学操作されたNK細胞が、高親和性CD16変異体を発現するよう修飾された1つ以上のNK細胞を含む、[77]に記載の方法。
[80] 前記工学操作されたNK細胞が、1つ以上のCARを発現するよう修飾された1つ以上のNK細胞を含む、[77]に記載の方法。
[81] 前記CARが、腫瘍ネオ抗原、腫瘍ネオエピトープ、WT1、HPV-E6、HPV-E7、p53、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、BAGE、DAM-6、DAM-10、葉酸受容体アルファ、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-8、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7B、NA88-A、NY-ESO-1、MART-1、MC1R、Gp100、PSA、PSM、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、CEA、Cyp-B、Her2/neu、Her3、BRCA1、Brachyury、Brachyury(TIVS7-2、多型性)、Brachyury(IVS7 T/C多型性)、TBrachyury、T、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC1(VNTR多型性)、MUC1c、MUC1n、MUC2、PRAME、P15、PSCA、PSMA、RU1、RU2、SART-1、SART-3、AFP、β-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CDK-4/m、ELF2M、GnT-V、G250、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、アネキシンII、CDC27/m、TPl/mbcr-abl、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RARα、TEL/AML1、又はこれらの任意の組合せに関するCARである、[77]又は[80]に記載の方法。
[82] 細胞が、前記複製欠損アデノウイルスベクターを含む、[46]から[81]のいずれか一に記載の方法。
[83] 前記細胞が、樹状細胞(DC)である、[82]に記載の方法。
[84] 治療有効量のIL-15、又はIL-15をコードする核酸配列を含む複製欠損ベクターを含む、医薬組成物を投与することを更に含む、[46]から[83]のいずれか一に記載の方法。
[85] 前記対象が前立腺がんを有する、[46]から[84]のいずれか一に記載の方法。
[86] 前記対象が、進行期の前立腺がんを有する、[46]から[85]のいずれか一に記載の方法。
[87] 前記対象が、切除不能な、局所進行性の、又は転移性のがんを有する、[46]から[86]のいずれか一に記載の方法。
[88] 前記治療有効量の、[1]から[42]のいずれか一に記載の組成物又は[43]に記載の医薬組成物を投与することが、PSA抗原をコードする第1の核酸配列を含む第1の複製欠損ウイルスベクター、PSMA抗原をコードする第2の核酸配列を含む第2の複製欠損ウイルスベクター、Brachyury抗原をコードする第3の核酸配列を含む第3の複製欠損ウイルスベクター、MUC1抗原をコードする第4の核酸配列を含む第4の複製欠損ウイルスベクターを、1:1:1:1の比で含む、[46]から[87]のいずれか一に記載の方法。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
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