特許第6983832号(P6983832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983832パーソナル音響システム及びその可撓性イヤーピースマウント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983832
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】パーソナル音響システム及びその可撓性イヤーピースマウント
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   H04R1/10 103
【請求項の数】24
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-82537(P2019-82537)
(22)【出願日】2019年4月24日
(62)【分割の表示】特願2017-547988(P2017-547988)の分割
【原出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2019-154053(P2019-154053A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2019年5月21日
(31)【優先権主張番号】14/660,292
(32)【優先日】2015年3月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506236233
【氏名又は名称】コス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブレア,ニコラス,スタンフォード
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−094224(JP,U)
【文献】 特開平05−199579(JP,A)
【文献】 特開2005−277617(JP,A)
【文献】 特開平02−203698(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02512105(GB,A)
【文献】 米国特許第4471496(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0207320(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0257775(US,A1)
【文献】 特開平08−047074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響素子及び第1のマウントを備えるイヤーピースと、
一体的に形成されたサブアセンブリと、
を備えており、
前記サブアセンブリは、第2のマウントを備えるバンドと、前記第1のマウントと前記第2のマウントの間に介在する弾性部材とを備えており、
軸方向通路が前記弾性部材を通って規定されており、前記イヤーピースの一部が前記軸方向通路内に延びて前記第1のマウントと前記第2のマウントとを径方向に揃えて、更なる留め具なしで前記弾性部材を前記イヤーピースに接続する、アセンブリ。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記イヤーピースの一部の周りにスナップ嵌めされる、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記弾性部材は、熱可塑性エラストマー及びシリコーンからなる群から選択される材料から構成されており、前記バンドは、金属及びプラスチックからなる群から選択される材料で構成されており、前記イヤーピースは、金属及びプラスチックからなる群から選択された材料から構成されている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
ヘッドホンアセンブリの製造方法であって、
前記ヘッドホンアセンブリのバンドの端部に弾性グロメットを成形する工程と、
摩擦嵌めによって前記弾性グロメットを前記ヘッドホンアセンブリのイヤーピースのマウントに接続する工程と、
含んでおり、
前記弾性グロメットは第1の材料から構成されており、前記バンドは前記第1の材料とは異なる第2の材料から構成されており、
前記マウントは、前記弾性グロメットを通るように規定された軸方向通路内に配置され、
前記イヤーピースは、電気音響スピーカを含んでいる、方法。
【請求項5】
前記成形する工程は、同時成形工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記バンドの反対側の端部に第2の弾性グロメットを成形する工程と、
前記第2の弾性グロメットを前記ヘッドホンアセンブリの第2のイヤーピースの第2のマウントに接続する工程と、
を含んでおり、
前記第2のイヤーピースは、第2の電気音響スピーカを備える、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記成形する工程は、同時成形プロセスを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記バンドは射出成形部分を備えており、
前記射出成形部分は、第1の弾性率を有する第1の材料で構成されており、
前記弾性グロメットは、第2の弾性率を有する第2の材料で構成されており、
前記第2の弾性率は、前記第1の弾性率よりも小さい、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
第1のマウントを備えるヘッドバンドと、
第2のマウント及び電気音響スピーカを備えるイヤーピースであって、前記第2のマウントは円周取付面を備えている、イヤーピースと、
前記イヤーピースに前記ヘッドバンドをフレキシブルに接続する弾性グロメットと、
を備えており、
前記弾性グロメットは、前記第1のマウントと前記第2のマウントの間に介在しており、
前記弾性グロメットは、内側取付面と、前記弾性グロメットを通る軸方向通路を形成する環状形状を備えており、
前記第2のマウントは前記軸方向通路内に延び、前記内側取付面は前記円周取付面の周りに配置されて、前記第1のマウントと前記第2のマウントを径方向に揃えて、前記弾性グロメットを前記イヤーピースに接続する、アセンブリ。
【請求項10】
前記円周取付面は溝を備えており、前記弾性グロメットの一部は、少なくとも部分的に前記溝内に配置され、前記溝内で摩擦嵌めされる、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記溝は、外側ノッチ付き形状を備えており、
前記弾性グロメットは、前記弾性グロメットが前記イヤーピースに対して回転するのを防止するために、前記外側ノッチ付き形状に対応する内側ノッチ付き形状を備えている、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記弾性グロメットは、第1の材料から構成されており、前記第1のマウントは第2の材料から構成されており、前記第2の材料は前記第1の材料とは異なっている、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記弾性グロメット及び前記ヘッドバンドは、同時成形されたサブアセンブリを備えている、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記第1のマウントは環状の内面を備えており、前記弾性グロメットは溝を備えており、前記環状の内面は、前記溝内に少なくとも部分的に配置される、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記溝は、外側ノッチ付き形状を備えており、前記環状の内面は、前記外側ノッチ付き形状に対応する内側ノッチ付き形状を備える、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記弾性グロメットは、熱可塑性エラストマー及びシリコーンからなる群から選択される材料で構成されている、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項17】
少なくとも1つのリリーフ開口が、第1の側から第2の側へと前記弾性グロメットを通って規定されている、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項18】
第1の端部及び第2の端部を備えるバンドと、
第1の電気音響スピーカ及び第1の環状取付面を備える第1のイヤーピースと、
第2の電気音響スピーカ及び第2の環状取付面を備える第2のイヤーピースと、
前記バンドの第1の端部を前記第1のイヤーピースにフレキシブルに接続する第1の弾性グロメットと、
前記バンドの第2の端部を前記第2のイヤーピースにフレキシブルに接続する第2の弾性グロメットと、
を備えており、
前記第1の弾性グロメットは、第1の内側取付面と、前記第1の弾性グロメットを通る第1の軸方向通路を形成する第1の環状形状とを含んでおり、前記第1のイヤーピースの一部が前記第1の軸方向通路内に延びて、前記第1の内側取付面が前記第1の環状取付面の周りに配置されて、前記第1の環状取付面と前記第1の端部とを径方向に揃えて、前記第1の弾性グロメットを前記第1のイヤーピースに接続し、
前記第2の弾性グロメットは、第2の内側取付面と、前記第2の弾性グロメットを通る第2の軸方向通路を形成する第2の環状形状とを含んでおり、前記第2のイヤーピースの一部が前記第2の軸方向通路内に延びて、前記第2の内側取付面が前記第2の環状取付面の周りに配置されて、前記第2の環状取付面と前記第2の端部とを径方向に揃えて、前記第2の弾性グロメットを前記第2のイヤーピースに接続する、アセンブリ。
【請求項19】
第1のマウントを備えるバンドと、
電気音響スピーカ、耳係合面及び第2のマウントを備えるイヤーピースであって、前記イヤーピースは、前記耳係合面と前記第2のマウントの間に延びるテーパー状の輪郭を規定しており、前記第1のマウントと前記第2のマウントは径方向に重なる、イヤーピースと、
前記第1のマウントと前記第2のマウントの中間に配置された弾性グロメットであって、前記弾性グロメットは、軸方向通路を形成する環状形状を規定し、前記第2のマウントは前記軸方向通路内に延びて、前記弾性グロメットを前記イヤーピースに接続する、弾性グロメットと、
を備える、アセンブリ。
【請求項20】
前記イヤーピースが円錐台形状を含む、請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項21】
前記弾性グロメットが第1の材料で構成されており、前記第1のマウントが前記第1の材料とは異なる第2の材料で構成されており、前記弾性グロメットと前記バンドが同時成形サブアセンブリを形成する、請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項22】
複数のリリーフ開口が、前記弾性グロメットを通って第1の側から第2の側へと延びる、請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項23】
前記弾性グロメットに対する前記イヤーピースの回転を防止するように構成されたノッチ付き形状を更に備える、請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項24】
前記弾性グロメットに対する前記バンドの回転を防止するように構成されたノッチ付き形状を更に備える、請求項19に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、パーソナル音響システム用の可撓性イヤーピースマウントと、その製造方法及び組立方法と関する。
【発明の概要】
【0002】
パーソナルヘッドホンアセンブリ又は他のタイプのパーソナル音響システムは大抵の場合、バンドと、当該バンドの各端部に接続された少なくとも1つの音響スピーカを含んでいる。バンドは、ヘッドバンドであってよく、当該ヘッドバンドは、ユーザの頭及び/又は首に対して(例えば、それにわたって)配置されて、ユーザの耳に対して(例えば、耳にわたって、又は、耳の中若しくは上に)音響素子を保持するように構成されている。イヤーピースがユーザの耳の上に、耳にわたって、及び/又は耳の周りにぴったりとフィットすると、ユーザの快適さ、音響要素の音質、及び/又は他の目的が改善されることがよくある。人間の頭の形状及び大きさは様々であり、パーソナル音響システムの位置付け及び適合具合に関する個人的嗜好も様々であるので、大勢の人々に快適に適応する及び/又は適合するイヤホンを設計することは大抵の場合、困難である。
【0003】
上記の議論は、当該分野における関連技術の様々な態様を説明することのみを意図したものであって、特許請求の範囲を否定するものとして解釈されるべきではない。
【0004】
一般的な態様において、本発明は、ヘッドバンド、イヤーピース及びバンドをイヤーピースにフレキシブルに接続する弾性グロメットを含んでいる、パーソナル音響システムのようなアセンブリに関する。ヘッドバンドは、第1のマウントを備えており、イヤーピースは、第2のマウントと電気音響スピーカとを備えている。弾性グロメットは、第1のマウントと第2のマウントの間に介在している。弾性グロメットは可撓性を有してよく、つまり、ヘッドバンド又はイヤーピースよりも可撓性を有してよく、ユーザの頭の位置又は動きによって引き起こされる力又は負荷のような小さな外力及び荷重に応答して、弾性グロメットは撓む又は変形する。他のコンポーネント(バンドやイヤホン等)はそうではないであろう。従って、このような小さな外力は、ヘッドバンドとイヤーピースの間の位置及び姿勢の相対的な変化をもたらし、パーソナル音響システムを装着したときにユーザの快適度及び/又はフィット感を向上させる。様々な実施形態において、アセンブリは更に、第2のイヤーピースと、第2のイヤホンにヘッドバンドをフレキシブルに接続する第2の弾性グロメットとを備えてよい。
【0005】
別の一般的な態様では、本発明は、そのようなヘッドホンアセンブリを製造する方法に関している。製造方法は、ヘッドホンアセンブリのバンドの端部に弾性グロメットを成形する工程と、ヘッドホンアセンブリのイヤーピースのマウントに弾性グロメットを接続する工程とを含んでよい。イヤホンは、電気音響スピーカを備える。弾性グロメットとヘッドホンアセンブリのバンドとを同時成形(co-molding)することにより、弾性グロメットとバンドの間に耐久性があって密接な接続が形成される。
【0006】
本発明のこれらの利点とその他の利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書に記載の実施形態の様々な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。構成と動作方法の両方に関する様々な実施形態は、しかしながら、それらの利点と共に、添付の図面と併せて、以下の説明に従って理解することができるであろう。
【0008】
図1図1は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づくパーソナル音響システムの斜視図である。
【0009】
図2図2は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づく図1のパーソナル音響システムの正面図である。
【0010】
図3図3は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づく図1のパーソナル音響システムの一部の斜視図である。
【0011】
図4図4は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づく図1のパーソナル音響システムのイヤーアセンブリ及びバンドの端部の分解斜視図である。
【0012】
図5図5は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づく図4のイヤーアセンブリとバンドの端部とを、図3の線3−3に沿って破断した縦断面図である。
【0013】
図6図6は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づく図4のイヤーアセンブリとバンドの端部とを、図3の線3−3に沿って破断した縦断の詳細図である。
【0014】
図7図7は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づく図4のイヤーアセンブリ及びバンドの端部の別の縦断面図であって、ニュートラル姿勢にあるイヤーアセンブリを示している。
【0015】
図8図8は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づく図4のイヤーアセンブリ及びバンドの端部の別の縦断面図であって、固定姿勢にあるイヤーアセンブリを示している。
【0016】
図9図9は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づくパーソナル音響システムの一部の斜視図である。
【0017】
図10図10は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づくパーソナル音響システムの一部の分解斜視図である。
【0018】
図11図11は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づくパーソナル音響システムの一部の斜視図である。
【0019】
図12図12は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づく図11のパーソナル音響システムの一部の斜視図である。
【0020】
図13図13は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づいており、図11に示す線11−11に沿って破断したパーソナル音響システムのイヤーアセンブリの断面斜視図である。
【0021】
図14図14は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づいており、図11に示す線11−11に沿って破断した、図13に示すパーソナル音響システムのイヤーアセンブリの縦断面図である。
【0022】
図15図15は、本発明の少なくとも1つの実施形態に基づいており、図11に示す線11−11に沿って破断した、図13に示すパーソナル音響システムのイヤーアセンブリの別の断面斜視図である。
【0023】
本明細書に記載される例は、本発明の様々な実施形態を少なくとも1つの形態で例示しており、そのような例示は、如何なる方法でも請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
パーソナル音響システムは、バンドと、当該バンドに動作可能に結合された少なくとも1つの音響素子とを含んでよい。例えば、パーソナル音響システムは、例えば、バンドの各端部に少なくとも1つのイヤーピースを含んでよく、各イヤーピース内に少なくとも1つの音響要素を配置及び/又は収容してよい。イヤーピースは、バンドに結合されてよい。例えば、バンドは、1対のイヤーピースを含んでよく、各イヤーピースは、ユーザの耳の一方に配置するように構成されてよい。システムのイヤーピースは、バンドにフレキシブルに装着されてもよく、これにより、バンドがユーザの頭に対して及び/又はユーザの頭の周りに配置されると、イヤーピースの位置及び姿勢が、ユーザの頭及び/又は首の形状と大きさに対して、更には、ユーザの配置の好みに調整できる。例えば、イヤーピースは、バンドの各端部にフレキシブルに装着されてよい。バンドがユーザの頭に配置されると、フレキシブルに装着されたイヤーピースは、回転、関節動作、シフト、及び/又は枢転し、ユーザに適合して、ユーザの耳の付近、上、周り、及び/又はユーザの耳に快適にフィットする。
【0025】
幾つかの例では、少なくとも1つのピボットリンク装置及び/又はボールジョイントを、バンドと各イヤーピースの間に介在させることで、イヤーピースがバンドにフレキシブルに接続されてよい。ピボットリンク装置及び/又はボールジョイントは移動及び/又は回転して、ユーザの頭に対するイヤーピースの位置決めと姿勢の調整を行う。しかしながら、幾つかの状況では、そのような可動リンケージ及び/又はジョイントは、例えば、長期及び/又は過酷な使用の結果として、摩耗及び/又は故障しやすいことがある。さらに、複数の可動部品を有する複雑な機械アセンブリは、製造及び/又は組立てに費用と時間がかかり、パーソナル音響システムのコストを増加させる可能性がある。
【0026】
その他の例では、本明細書でより詳細に説明されるように、弾性部材を備える可撓性マウントをバンドと各イヤーピースの間に介在させることで、各イヤーピースをバンドにフレキシブルに接続することができる。弾性部材は、弾性部材の撓み及び/又は変形を可能にするエラストマー材料を含んでよく、弾性部材が撓んだり変形したりすると、イヤーピースに対するバンドの相対位置及び向きが変化する。例えば、弾性部材の弾性率は、パーソナル音響システムにおける隣接する構成要素の弾性率よりも小さくされ得る。特に、弾性部材の弾性率は、バンド、イヤーピース、並びに/或いは、バンド及び/又はイヤーピースの取付部分の弾性率よりも小さくてよい。このように、弾性部材は、小さな外力や負荷(例えば、使用者の頭の位置又は動きによって引き起こされる力又は負荷)に応答して撓み又は変形し、その他の構成要素(例えば、バンドとイヤーピース)は撓み又は変形しない。これにより、小さい外力によって、バンドとイヤーピースの間の位置及び姿勢の相対的変化がもたらされて、ユーザの快適性レベルが向上し、及び/又は、パーソナル音響システムを装着したときにフィットする。
【0027】
バンドとイヤーピースの間の弾性部材が、ニュートラル形態と、少なくとも1つの曲った又は変形した形態との間で撓むと、イヤーピースはバンドに対して移動できる。例えば、イヤーピースは、バンドに対して様々な角度で方向づけることができる。その結果、イヤーピースは、ユーザの耳に対して調整自在に配置される。幾つかの例では、エラストマー部材を含む可撓性マウントには、可動リンク装置及び/又はジョイントがなく、故に、摩耗及び/又は早期故障が阻止されている。また、このような可撓性マウントは、適切な調節可能性を提供する一方で低プロファイルを画定してよい。さらに、可動リンク装置及び/又はジョイントがない可撓性マウントは、コスト効率よく製造及び/又は組み立てられるので、パーソナル音響システムのコストが低減される。
【0028】
図1乃至図8を参照すると、パーソナル音響システム100、更には、そのサブアセンブリと構成要素が示されている。パーソナル音響システム100は、バンド120と、バンド120の各端部にあるイヤーピース160と、イヤホン160をバンド120に接続する可撓性マウント140とを含む。パーソナル音響システム100は、音響ヘッドホンシステム、ノイズ除去若しくは軽減システム、ノイズ分離システム、及び/又はその他の適切な様々な用途での使用に適合させることができる。可撓性マウント140は、バンド120と各イヤーピース160の間に介在して配置され、各イヤーピース160をバンド120にフレキシブルに固定する。各イヤホン160と可撓性マウント140は、パーソナル音響システム100のイヤーアセンブリ110を形成する。図示の実施形態では、パーソナル音響システム100は、1対のイヤーアセンブリ110を含んでいる。他の例では、パーソナル音響システム100は、単一のイヤーアセンブリ110を含んでいてもよい。
【0029】
主として図1及び図2を参照すると、バンド120は、第1の端部122と、第1の端部122の反対側にある第2の端部124とを含んでいる。ヨーク、即ち取付部分126は、各端部122,124から延びている。ヨーク126は、可撓性マウント140に係合するための取付面及び/又は構造を提供する。例えば、図1及び図2に示すヨーク126は、内側取付面130を形成し、内側取付面130は、可撓性マウント140の1つをその内側に保持する。ヨーク126の弾性率は、ヨーク126に結合される可撓性マウント140の弾性率よりも大きい。様々な例において、パーソナル音響システム100のバンド120及び/又はヨーク126は、金属及び/又はプラスチック材料(例えば、剛性又は非エラストマープラスチック材料)で構成されていてもよい。
【0030】
様々な例では、バンド120は、バンド120の長さを調整できるように、互いに嵌め合わされるか、別の方法で連結された複数の構成要素を含んでよい。例えば、図1及び図2に示されたバンド120は、バンド120の中心に向かう調節スライド128を含んでおり、調節スライド128は、第1の端部122と第2の端部124の間の距離を調節するように構成されている。他の例では、バンド120は、単一部品であってよい。
【0031】
様々な例においては、ヨーク126は、図4に示すように、バンド120から延びる円形及び/又は半円形リングを備えてよい。そのような例では、ヨーク126の内側取付面130は、可撓性マウント140のための環状取付面を形成する。可撓性マウント140は、そのような環状取付面の内周内に少なくとも部分的に配置されてよい。本明細書で説明するように、可撓性マウント140は、溝接続(例えば、可撓性マウント140とヨーク126の間のさねはぎ(tongue-and-groove)接続)によってヨーク126に結合されてよい。他の例では、ヨーク126はバンド120と一体的に形成されてよい。付加的又は代替的に、ヨーク126は、本明細書でより詳細に説明するように、留め具、接着剤、及び/又は追加の結合手段によってバンドに接続されてよい。
【0032】
各イヤーアセンブリ110のイヤーピース160は、ハウジング162と、取付部164と、ユーザ係合部168とを含んでいる。主として図4を参照すると、ユーザ係合部168は、取付部164に対向して配置されており、ユーザが装着すると、ユーザ係合部168はユーザの頭に面し、取付部164はユーザの頭から離れるように延在する。ハウジング162は、ユーザ係合部168と取付部164の間に配置される。他の例では、ハウジング162は、ユーザ係合部及び/又は取付部164の少なくとも一部を形成してよい。ハウジング162は、例えば、電気音響スピーカのような少なくとも1つの音響要素166(図5乃至図8)を収容する及び/又受け入れるように構成されてよい。様々な例において、ハウジング162内の電気音響スピーカ166は、イヤーピース160から延びる電線導管102(図1及び図2)に結合されてよい。電線導管102は、イヤーピース160のハウジング162内に収容された電気音響スピーカ166にオーディオプレーヤ装置(図示せず)からの電気信号を伝達するように構成されてよく、電気音響スピーカ166は音声に変換する。他の例では、パーソナル音響システム100のイヤホン160の1つは、図1及び図2に示す電線導管102を含んでよく、パーソナル音響システム100の他方のイヤーピース160は、イヤーピース160の間のバンド120を通って延びる第2の導管によって、システム100と繋がれてよい。そのような例では、バンド120を通って延びる第2の導管は、可撓性部材140内に画定されたチャネルを通って導かれてよい。導管は、可撓性部材140内のチャネルを通って延びて、バンド120の反対側の端部に取り付けられたイヤーピース160に達してよい。使用中、可撓性部材140は、本明細書で説明するように、第2の導管の周りで撓むように構成されてよい。様々な例では、イヤーピース160及び/又はその取付部164は、金属及び/又はプラスチック材料(例えば、剛性又は非エラストマープラスチック材料)で構成されてよい。取付部164の弾性率は、可撓性マウント140の弾性率よりも大きい。
【0033】
イヤーピース160は、ユーザの耳の上及び/又はその周囲にフィットするように構成及び適合されてよい。例えば、各イヤーピース160は、ユーザの耳の周りに配置される円錐形又は円錐台形のカップを形成してよい。ユーザ係合部168が、ユーザの耳に対して、その周囲に、及び/又はその付近に配置されると、カップ状及び/又は実質的に円錐形の形状によって、スピーカ166からユーザの耳へと音波が向けられる。例えば、ユーザ係合部168は、ユーザの頭に対して少なくとも部分的に配置するための外周及び/又は縁を規定してよい。更に、バンド120がユーザの頭上に配置されると、ユーザの耳は、イヤーピース160によって画定されるカップ内に少なくとも部分的に配置されてよい。特定の例では、ユーザ係合部168は、従順な及び/又は柔軟な材料を含んでよい。例えば、ユーザ係合部168は、クッションを含むことができ、並びに/或いは、例えば発泡体のような従順な及び/又は柔軟な材料から製造されてよい。このようなクッションは、バンド120がユーザの頭に対して配置されると、及び/又はイヤホン160がユーザの耳に対して配置されると、ユーザの頭及び/又は耳に当たって係合するように配置されてよい。
【0034】
本明細書で説明するように、各可撓性マウント140は、イヤーピース160の1つをバンド120にフレキシブルに結合することができる。幾つかの例では、可撓性マウント140は、複雑な機械的アセンブリ及び/又は追加の留め具なしで、イヤーピース160とバンド120の間で結合され得る。例えば、環状のさねはぎ構成及び/又は摩擦嵌合要素が、イヤーピース160の1つ及び/又はバンド120に可撓性マウント140を固定する。可撓性マウント140は、イヤーピース160及び/又はバンド120の可撓性の低い部分に当たって係合状態に配置されてよい。幾つかの例では、可撓性マウント140は、イヤーピース160の一方及び/又はバンド120と一体的に形成されてよい。
例えば、可撓性マウント140は少なくとも部分的に、イヤーピース160及び/又はバンド120の周りに並びに/或いは、バンド120及び/又はイヤーピース160の何れかに、同時成形及び/又は射出成形されてもよい。付加的に又は代替的に、可撓性マウント140は、イヤーピース160及び/又はバンド120の何れかにスナップ嵌めされてよい。幾つかの例では、可撓性マウント140は、イヤーピース160及び/又はバンド120の何れかに接着されてよい。
【0035】
図4は、説明を目的として、イヤーアセンブリ110と、バンド120の第1の端部122とを分解図で示している。この図は、イヤーピース160の取付部164が、可撓性マウント140用の外側取付面を規定する溝170を含み得ることを示している。溝170は、取付部164の外周の周りに延びている。図示された実施形態では、溝170は、可撓性マウント140が結合できる環状の円周取付面を形成する。例えば、溝170は、可撓性マウント140の少なくとも一部を受け入れて、可撓性マウント140をイヤーピース160に接続する寸法及び構造を有している。
【0036】
可撓性マウント140をイヤーピース160に固定するために、可撓性マウント140は、イヤーピース160の取付部164の周囲に少なくとも部分的に配置され、溝170内に少なくとも部分的に保持されるように構成されている。様々な例において、溝170の幅は、可撓性マウント140を受容し、しっかりと保持するのに十分である。幾つかの例では、可撓性マウント140は、溝170内にきつく嵌合してよい。様々な例において、可撓性マウント140の一部、例えば環状突出部及び/又はリッジは、溝170内にしっかりと嵌合するように構成されてよい。幾つかの例では、可撓性マウント140の少なくとも一部は、溝170内に圧縮的に嵌合されてよい。様々な例では、可撓性マウント140の少なくとも一部は、溝170内にスナップ嵌め及び/又は摩擦嵌めされてよい。
【0037】
様々な例において、可撓性マウント140は、イヤーピース160と一体的に形成されてよい。例えば、可撓性マウント140は、イヤーピース160の上に、及び/又は少なくとも部分的にイヤーピース160の周りに成形されてよい。幾つかの例では、可撓性マウント140及びイヤーピース160は同時成形されてよい。例えば、イヤーピース160及び/又はその取付部164は、射出成形技術を用いて第1のモールド内に形成されてよい。その後、射出成形された部分、例えばイヤーピース160が、第2のモールド内に配置されてよい。可撓性マウント140を形成するためのエラストマー材料が、射出成形部分とともに第2のモールドに追加される。可撓性マウント140は、第2のモールド内の射出成形部分の周りに成形される。幾つかの例では、エラストマー材料に熱及び/又は圧力を加えて、第2のモールド内で射出成形部分の周囲にエラストマー材料を成形し、エラストマー材料と射出成形部分を一体化されてよい。そのような例では、可撓性マウント140とイヤーピース160は、例えば、パーソナル音響システム100の同時成形サブアセンブリを形成してよい。付加的に又は代替的に、可撓性マウント140とイヤーピース160の間に配置された接着剤を用いるなどして、可撓性マウント140をイヤーピース160に接着することで、可撓性マウント140がイヤーピース160に接着されてよい。付加的又は代替的に、クリップなどの機械的留め具で、可撓性マウント140をイヤーピース160に固定してよい。
【0038】
本明細書で説明するように、可撓性マウント140は、取付部164及び/又はその環状取付面のような、イヤーピース160の少なくとも一部の周りに配置されるように構成されている。幾つかの例では、可撓性マウント140は、リングを及び/又は実質的に環状の部分を形成してよい。例えば、可撓性マウント140は、イヤーピース160の取付部164の周りに環状グロメットを備えてよい。図4に示す実施形態を主として参照すると、可撓性マウント140は、イヤーピース160の取付部164の周囲に嵌合するように構成された環状部材又はグロメットを形成している。さねはぎ構成により、可撓性マウント140は、イヤーピースの取付部164に固定されてよい。様々な例では、可撓性マウント140の内側部分及び/又は表面は、内側取付面を含んでよく、取付部164の外側部分及び/又は表面は、外側取付面を含んでよい。例えば、可撓性マウント140の内側部分は、取付部164内の溝170内に保持されてよい。他の例においては、可撓性マウント140は溝を備えており、イヤーピース160の取付部164から突出するリッジが、可撓性マウント140の溝内に挟まれて維持されてよい。
【0039】
可撓性マウント140は、低弾性率を有する材料からなる。例えば、可撓性マウント140は、エラストマー材料を含んでいるのが好ましい。可撓性マウント140は、熱可塑性エラストマー及び/又はシリコーンで構成されてよい。幾つかの例では、可撓性マウント140は、天然ゴム及び/又は合成ゴムで構成されてよい。可撓性マウント140のエラストマー材料は、荷重が加えられると可撓性マウント140の撓み及び/又は弾性変形を可能にする。可撓性マウント140には弾力性がある。特に、可撓性マウント140は、応力の下で繰り返し湾曲し、応力が除去された後に元の形状に戻るように構成されている。様々な例において、可撓性マウント140は、例えば、変形していない長さの2倍まで繰り返し変形できる。幾つかの例では、エラストマー材料は、例えば、約60のショア硬さであり、約685psiの引張強度であり、約0.003in/inの収縮率であり、約57pliの引裂強さであり、及び/又は約300%の伸び率であってよい。
【0040】
可撓性マウント140は、バンド120に結合するように構成される。例えば、可撓性マウント140は、バンド120の端部122,124においてヨーク126に結合してよい。主に図6を参照すると、可撓性マウント140は、可撓性マウント140の周りに延在しており、ヨーク126のための環状取付面を形成する環状の円周溝150を含んでいる。例えば、溝150は、ヨーク126を受け入れるような寸法及び構造にされてよい。ヨーク126は、内側取付部及び/又は表面を含んでよく、可撓性マウント140は、ヨーク126の内側取付部及び/又は表面に取り付けられるように構成された外側取付部及び/又は表面を含んでよい。
【0041】
ヨーク126は、イヤーピース160の周りに少なくとも部分的に配置され、可撓性マウント140によってイヤーピース160に接続される。例えば、ヨーク126の少なくとも一部は、可撓性マウント140の溝150に少なくとも部分的に保持されて、可撓性マウント140がバンド120に固定される。様々な例では、溝150の幅は、ヨーク126を受け入れてしっかりと保持するのに十分であってよい。幾つかの例では、ヨーク126は、溝150内にきつく嵌合してよい。他の例では、環状突出部及び/又はリッジのようなヨーク126の一部は、溝150内にしっかりと嵌合するように構成されてよい。幾つかの例では、ヨーク126の少なくとも一部は、溝150内に圧縮的に嵌合してよい。様々な例では、ヨーク126の少なくとも一部は、溝150内にスナップ嵌め及び/又は摩擦嵌合してよい。
【0042】
幾つかの例では、可撓性マウント140は、バンド120と一体的に形成されてよい。例えば、可撓性マウント140は、バンド120及び/又はそのヨーク126に、及び/又は少なくとも部分的にバンド120及び/又はそのヨーク126の周りに成形されてよい。幾つかの例では、可撓性マウント140とバンド120は同時成形されてよい。例えば、バンド120及び/又はそのヨーク126は、射出成形技術を用いて第1のモールド内に形成されてよい。次に、射出成形部分、例えばヨーク126が、第2のモールド内に配置される。可撓性マウント140を形成するためのエラストマー材料は、射出成形部分とともに第2のモールドに追加されてよい。可撓性マウント140は、第2のモールド内の射出成形部分の周りに成形されてよい。幾つかの例では、エラストマー材料に熱及び/又は圧力を加えて、第2のモールド内の射出成形部分の周囲にエラストマー材料を形成することで、エラストマー材料と射出成形部分を一体化することができる。このような例では、可撓性マウント140及びヨーク126は、例えば、パーソナル音響システム100の同時成形サブアセンブリを形成してよい。付加的に又は代替的に、可撓性マウント140は、ヨーク126に接着されてよい。例えば、可撓性マウント140をバンド120に接着させるために、可撓性マウント140とヨーク126の間に接着剤を配置してよい。付加的又は代替的に、例えばクリップのような機械的留め具が、可撓性マウント140をバンド120及び/又はそのヨーク126に固定してよい。
【0043】
本明細書に記載されているように、さねはぎ構成により、可撓性マウント140をバンド120のヨーク126に固定することができる。様々な例において、可撓性マウント144の外側部分及び/又は表面は、外側取付面を備えてよく、ヨーク126の内側部分及び/又は表面は、内側取付面を備えてよい。例えば、ヨーク126の内側部分は、可撓性マウント140の溝150内に保持されてよい。他の例では、ヨーク126は溝を含んでよく、可撓性マウント140から突出したリッジは、ヨーク126の溝内に挟まれて保持されてよい。
【0044】
図7及び図8は、可撓性マウント140は、外力又は応力の下で撓み及び/又は変形するように構成できることを示している。例えば、可撓性マウント140は、外部荷重がイヤーピース160に加えられると、ニュートラルな姿勢(図7)と少なくとも1つの湾曲姿勢(図8)との間で変形できる。パーソナル音響システム100がユーザの頭に対して位置決めされると、ユーザの頭は、外部負荷をイヤーピース160に加える。可撓性マウント140は、アセンブリ100がユーザの頭に置かれる前後でニュートラル姿勢を取ることができ、アセンブリ100がユーザの頭の周りで位置決めされると、湾曲姿勢を取ることができる。イヤーピース160は、可撓性マウント140が撓むと、バンド120に対して移動するように構成されている。そのような例では、イヤーピース160は、ユーザ用の自己調整式イヤーピースとして機能する。例えば、ユーザの頭及び/又は他の外力によって力F1及び/又はF2(図7)がイヤーピース160に加えられると、可撓性マウント140は曲がって、力F1,F2に応答したイヤーピース160の移動を吸収することができる。
【0045】
可撓性マウント140には、十分に弾力性があり、力F1,F2がイヤーピース160から除去されると、湾曲していない、即ちニュートラルの姿勢(図7)を再開又は実質的に再開する。可撓性マウント140は、イヤーピース160に加えられる力の配置、方向及び大きさに基づいて、複数の異なる湾曲姿勢をとるように構成されてよい。このようにして、可撓性マウント140は、バンド120に対するイヤーピース160の姿勢に適応性及び/又は調整可能性を提供する。さらに、可撓性マウント140は、イヤーピース160がバンド120に対して関節接合する(articulate)ことができる複数の自由度を提供してよい。
【0046】
図9は、バンド120及びイヤーピース160を含んでおり、可撓性マウント240がバンド120とイヤーピース160の間に配置されたパーソナル音響システム200を示している。可撓性マウント240は、可撓性マウント140に関して本明細書に記載されているような溝構成、接着剤、留め具、及び/又は成形技術などの適切な方法で、バンド120及びイヤーピース160に結合している。可撓性マウント240は、バンド120にイヤーピース160をフレキシブルに接続しており、イヤーピース160がバンド120に対して枢転する、シフトする、揺れる、及び/又は回転するように構成されている。例えば、可撓性マウント240は、ニュートラル姿勢と少なくとも1つの湾曲姿勢との間で移動することができる。可撓性マウント240は、熱可塑性エラストマー及び/又はシリコーンのようなエラストマー材料で構成されている。
【0047】
様々な例では、可撓性マウント240は、可撓性マウント240に荷重が加えられると、可撓性マウント240の変形及び/又は撓みを吸収する及び/又は容易にするように選択された形状を規定していてよい。例えば、可撓性マウント240は、少なくとも1つのリリーフ構造242を含んでよい。図9に示す可撓性マウント240を見ると、複数のリリーフ構造242が可撓性マウント240に規定されている。リリーフ構造242は、可撓性マウント240を少なくとも部分的に貫通する開口を備えている。幾つかの例では、開口は、第1の側(前側)から第2の側(後側)に可撓性マウント240を通って延びていてよい。リリーフ構造242は、可撓性マウント240の更なる撓みを可能にして、マウント240の材料及び/又は重量を低減することができる。
【0048】
幾つかの例では、パーソナル音響システムは、パーソナル音響システムの種々な構成要素及び/又はサブアセンブリの回転を防止できる少なくとも1つの回転抑制体を含んでよい。例えば、回転抑制体は、これらの構成要素間の相対回転を防止するために、イヤーピースとパーソナル音響システムの可撓性マウントの間に配置される。付加的に又は代替的に、回転抑制体は、これらの構成要素間の相対回転を防止するために、パーソナル音響システムのヨークと可撓性マウントとの間に配置されてよい。
【0049】
図10は、そのような回転抑制体を有するパーソナル音響システム300を示す。図10に示すパーソナル音響システム300は、図10は、図1乃至図8に示されたパーソナル音響システム100と、図9に示されたパーソナル音響システム200とに多くの点で類似している。例えば、図10に示すパーソナルスピーカ300は、可撓性マウント340を介してバンド320にフレキシブルに取り付けられたイヤーピース360を含んでいる。イヤーピース160と同様に、イヤーピース360は、取付部364と、少なくとも1つの電気音響要素のためのハウジング362と、ユーザ係合部368とを含んでいる。更に、バンド320は、第1の端部及び第2の端部を含んでよく、ヨーク326は、例えば、バンド120と同様に、各端部から延びてよい。可撓性マウント340は、取付部364内の環状溝370及び可撓性マウント340内の環状溝350のような溝構成によって、イヤーピース360のヨーク326と取付部364との間に配置することができる。
【0050】
図10に示すパーソナル音響システム300はまた、複数の回転抑制体を含んでいる。例えば、イヤーピース360は、溝370に歯又はノッチ372のパターンを含んでおり、可撓性マウント340は、内側取付面354に沿って、対応するパターンの歯又はノッチ352を含んでいる。ノッチ352とノッチ372の寸法は、イヤーピース360に対する可撓性マウント340の回転が抑制及び/又は抑止されるようにして互いに嵌合するように決められている。図10を更に参照すると、ヨーク326は、内側取付面330に沿った歯又はノッチ328のパターンを含んでおり、可撓性マウント340は、歯又はノッチの対応するパターンを溝350内に含んでいる。溝350のノッチとヨーク326のノッチ328は、ヨーク320に対する可撓性マウント340の回転が抑制及び/又は抑止されるように互いに嵌合する寸法にされている。
【0051】
幾つかの例では、単一のノッチが使用されて、相対的な構成要素の回転が防止及び/又は阻止されてよい。他の例では、図10に示すように、2つ以上のノッチが使用されて、構成要素の相対的な回転が防止及び/又は阻止されてよい。そのような例では、ノッチは、相互係止要素の取付部及び/又は表面の周囲に等間隔で配置されてよい。ノッチは、相対回転運動を防止するために、ノッチと対応する突起、及び/又は、様々な相互係止構造を規定してよい。付加的に又は代替的に、様々な構成要素の相対的な回転が、例えば、接着剤及び/又は留め具によって抑制されてよい。
【0052】
様々な例において、可撓性マウントは、パーソナル音響システムのイヤーピースとヨークの間に保持されてよい。図11乃至図15は、バンド420のイヤーピース460とヨーク426との間に保持されたパーソナル音響システム400の可撓性マウント440を示している。イヤーピース160及びイヤーピース360と同様に、イヤーピース460は、取付部464と、少なくとも1つの音響要素用のハウジング462と、ユーザ係合部468とを含んでいる。更に、バンド420は、例えば、バンド120及びバンド320と同様に、第1の端部及び第2の端部と、各端部から延びるヨーク426とを含んでいる。様々な例において、可撓性マウント440は、例えば、熱可塑性エラストマー及び/又はシリコーンのようなエラストマー材料を含んでいる。可撓性マウント440は弾力的であるので、外部負荷が加えられると、ニュートラル姿勢から湾曲姿勢に変形することができ、外部負荷が除かれると、ニュートラル姿勢に戻る。図11乃至図15の実施形態を参照すると、複数のリリーフ構造442が可撓性マウント440に規定されており、可撓性マウント440の撓み及び/又は変形が更に容易にされている。
【0053】
可撓性マウント440は、バンド420のヨーク426に接続される。例えば、可撓性マウント440は、ヨーク426と一体的に形成されてよい。幾つかの例では、可撓性マウント440及びヨーク426は、同時成形及び/又は射出成形されたサブアセンブリを形成する。可撓性マウント440は、ヨーク426の内側取付面内に少なくとも部分的に配置することができる。付加的に又は選択的に、可撓性マウント440は、例えば、接着剤及び/又はファスナでヨーク426に固定されてよい。
【0054】
幾つかの例では、可撓性マウント440は、内側取付部444を含んでいる。内側取付部444は、径方向内側に突出するフランジを規定している。様々な例では、内側取付部444は、イヤーピース460の取付部464とクリップ490との間に保持されるように構成されている。例えば、複数のばね部材及び/又は片持ちアーム492を含むクリップ490は、イヤーピース460の取付部464と係合するように構成されている。クリップ490がイヤーピース460と係合している場合、図13乃至図15に示すように、可撓性マウント440のフランジ444は、クリップ490とイヤーピース460の間に保持されてよい。
【0055】
幾つかの例では、クリップ490は、イヤーピース460の取付部464と係合するようにスナップ嵌めされてよい。更に、フランジ444は、クリップ490とイヤーピース460の取付部464との間に規定された溝へと延びてよい。このような例では、クリップ490が取付部464にロックされると、可撓性マウント440、ひいてはそれに接続されたヨーク426は、イヤーピース460にフレキシブルに結合される。ユーザの頭の形状及び/又はユーザの配置の好みに基づいてイヤーピース460の配置を調整できるように、可撓性マウント440は、バンド420に対するイヤーピース460の関節動作を可能にしてもよい。
【0056】
パーソナル音響システム400を組み立てるために、可撓性マウント440は、本明細書に記載された様々な成形技術のうちの少なくとも1つを用いて、ヨーク426と一体的に形成されてよい。例えば、ヨーク426は、射出成形プロセスで形成でき、その後、可撓性マウント440が、ヨーク426と同時成形されてよい。他の例では、可撓性マウント440は、本明細書に記載された様々な結合手段のうちの少なくとも1つによってヨーク426に結合されてよい。その後、イヤーピース460の取付部464によって規定された溝の一部に、可撓性マウント440のフランジ444が位置するように、可撓性スリーブ440が、イヤーピース460と当接係合して配置されてよい。クリップ490は、次に、取付部464と係合するようにスナップ嵌めされて、可撓性マウント440をイヤーピース460との当接係合状態に保持することができる。例えば、片持ちアーム492が、イヤーピース460の取付部464の少なくとも1つの開口に挿入されてよい。クリップ490がイヤーピース460に係合すると、可撓性マウント440とそれに接続されたバンド460がイヤーピース460に固定される。様々な例では、組立方法は、バンド420の反対側の端部に第2のイヤーピースを取り付ける工程を含んでよい。
【0057】
故に、様々な実施形態では、本発明は、ヘッドバンド、イヤーピース、及びバンドをイヤーピースにフレキシブル接続する弾性グロメットを含むアセンブリに関する。ヘッドバンドは、第1のマウントを備え、イヤーピースは、第2のマウント及び電気音響スピーカを備える。弾性グロメットは、第1のマウントと第2のマウントの間に介在する。アセンブリはまた、ヘッドバンドの反対側の端部に同様に接続された第2のイヤーピースを備えてよい。
【0058】
種々の実施において、第1のマウントは環状の内面を備えており、第2のマウントは環状の外面を備えている。第2のマウントの環状の外面は、溝を備えてよく、この場合、弾性グロメットは、少なくとも部分的に溝内に配置されてよい。同様に、弾性グロメットは、溝を備えてよく、環状の内面は、少なくとも部分的に溝内に配置されてよい。また、第1及び第2のマウントの何れか又は両方は、場合によっては、イヤーピース又はヘッドバンドに対する弾性グロメットの回転を防止するノッチ付き形状を有してよい。
【0059】
弾性グロメット及び第1のマウントは、異なる材料から構成されているのが好ましい。弾性グロメットは、例えば、熱可塑性エラストマー又はシリコーンを含んでよく、ヘッドバンド及びイヤーピースは、剛性の非エラストマープラスチック又は鋼を含んでよい。
【0060】
さらに、弾性グロメット及びヘッドバンドは、同時成形されて、一体的に形成されたサブアセンブリを備えてよい。そのような実施形態では、ヘッドホンアセンブリは、ヘッドホンアセンブリのヘッドバンドの端部に弾性グロメットを成形(例えば、同時成形)し、イヤーピースのマウントに弾性グロメットを接続することによって製造されてよい。ヘッドバンドの他端に第2のイヤホンを備えたヘッドホンアセンブリにも、同じプロセスが使用されてよい。
【0061】
本明細書に記載されており、添付の図面に示されている実施形態の全体的な構造、機能、製造及び使用の完全な理解を提供するために、多数の詳細が具体的に示されている。しかしながら、当業者であれば、そのような具体的な詳細がなくともこれらの実施形態が実施され得ることを理解するであろう。他の例では、周知の動作、部品及び要素は、本明細書に記載された実施形態を分かり難くしないように、詳細に記載されてはいない。当業者であれば、本明細書に記載されており、図示された実施形態は非限定的な例であって、故に、本明細書に開示された特定の構造的及び機能的詳細は代表的且つ例示的であり得ることは理解されるであろう。変形及び変更は、特許請求の範囲から逸脱することなくなされ得る。例えば、1つの例示的な実施形態に関連して図示又は説明された特徴は、少なくとも1つの他の実施形態の特徴と組み合わせられてよい。そのような改変や変更は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。したがって、この出願は、その一般的な原則を使用して、開示された実施形態の任意の変形、使用、又は適合に及ぶことが意図されている。さらに、この出願は、関連技術における既知又は通常の実施内にて、本開示からのそのような逸脱に及ぶことが意図されている。
【0062】
用語「備える」(「と「備える」などの任意の形態)、「有する」(と「有している」などの任意の形態)、「入れる」(と「入れている」などの任意の形態)、「収容する」(と「収容している」などの任意の形態)は、オープンエンドな連結動詞である。結果として、1つ以上の要素を「備える」、「有する」、「含む」又は「収容する」システム、デバイス又は装置は、それらの1つ以上の要素を持っているが、これらの要素のみを持っている場合に限定されない。同様に、1つ以上の特徴を「備える」、「有する」、「含む」又は「収容する」というシステム、デバイス、アセンブリ、又は装置の要素は、それらの1つ以上の特徴を持っているが、これらの特徴のみを持っている場合に限定されない。
【0063】
引用されて本明細書において組み込まれた特許、刊行物若しくは他の開示資料の全体又は一部は、組み込まれた資料が既存の定義、所説、又は本明細書で開示されたその他の資料と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれる。このように、そして必要な程度まで、本明細書に明示的に記載された開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれている相反する資料よりも優先する。本明細書において引用により組み込まれると述べているが、既存の定義、所説又は本明細書で開示された他の開示資料と相反する資料又はその一部は、組み込まれる資料と既存の開示資料との間で相反しない範囲でのみ組み込まれるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15